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264
微分方程式演習 大学  Contents Part 1. 基礎事項の復習 6 1. 学から 6 1.1. 6 1.2. 8 Part 2. 微分方程式とは 11 2. 11 2.1. 11 2.2. 11 Part 3. 変数分離形とその応用 14 3. 14 3.1. :変 14 3.2. 16 3.3. 19 3.4. 21 4. 23 4.1. 23 4.2. による 24 5. えをして く変 26 5.1. ベルヌーイ 26 5.2. 27 5.3. リッカチ 28 5.4. 29 1

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Page 1: Contents...2 京都大学 澤野嘉宏 Part 4. テーラー展開を用いた微分方程式の解法 31 6. テーラー展開を用いた微分方程式の解法 31 6.1. 基本事項:テーラー展開

微分方程式演習

京都大学 澤野嘉宏

Contents

Part 1. 基礎事項の復習 6

1. 微分積分学からの準備 6

1.1. 微分 6

1.2. 積分 8

Part 2. 微分方程式とは 11

2. 微分方程式の作成 11

2.1. 基本事項:微分方程式の解 11

2.2. 常微分方程式の作成 11

Part 3. 変数分離形とその応用 14

3. 変数分離形 14

3.1. 基本事項:変数分離形の考え方 14

3.2. 変数分離形 16

3.3. 初期値問題 19

3.4. 関数方程式 21

4. 定数変化法 23

4.1. 基本事項:定数変化法の解の公式の導出 23

4.2. 定数変化法による方程式の解法 24

5. 置き換えをして解く変数分離形の微分方程式 26

5.1. ベルヌーイ形の方程式 26

5.2. 同次形 27

5.3. リッカチ形 28

5.4. 置き換えの総合練習 291

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2 京都大学 澤野嘉宏

Part 4. テーラー展開を用いた微分方程式の解法 31

6. テーラー展開を用いた微分方程式の解法 31

6.1. 基本事項:テーラー展開 31

6.2. 具体的な関数のテーラー展開 32

6.3. テーラー展開の微分方程式への応用 33

Part 5. 線形微分方程式 35

7. 2階線形微分方程式 35

7.1. 基本事項:2階の定数係数線形微分方程式 35

7.2. 定数係数常微分方程式の具体的な解き方 37

7.3. 2階線形定数微分方程式 38

7.4. 積分方程式 40

8. 複素数 42

8.1. 複素数値関数 42

8.2. 複素数値関数の計算 44

9. 本書における多項式に関する重要事項 45

9.1. 基本事項:多項式の性質 45

9.2. 多項式の割り算 47

9.3. 既約多項式 49

10. 高階の定数係数線形微分方程式 50

10.1. 基本事項:高階の定数係数線形微分方程式 50

10.2. 高階線形微分方程式 55

11. 重ね合わせの原理 59

11.1. 基本事項:重ね合わせの原理 59

11.2. 重ね合わせの原理 61

Part 6. 変数係数線形微分方程式 65

12. 線形代数の用語 65

12.1. 基本事項:線形代数の用語 65

12.2. 線形空間と微分方程式との関連 66

13. 変数係数微分方程式 68

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微分方程式演習 3

13.1. 基本事項:2階変数係数微分方程式とロンスキアン 68

13.2. ロンスキアン 70

13.3. 変数係数線型方程式の解法 71

Part 7. 連立定数線型方程式 72

14. 行列計算 72

14.1. 基本事項:行列の掛け算と基本公式 72

14.2. 行列の計算 75

15. 連立定数線型方程式 76

15.1. 基本事項:定数係数微分方程式の解法 76

15.2. 連立微分方程式 81

15.3. 代入法による連立微分方程式の解法 85

15.4. 解の可視化 86

Part 8. ラプラス変換による微分方程式の解法 88

16. ラプラス変換 88

16.1. 広義積分 88

16.2. 定義など 89

16.3. ラプラス変換 89

Part 9. 完全形の常微分方程式 93

17. 線積分 93

17.1. 基本事項:偏微分と線積分 93

17.2. 線積分の計算 94

18. 完全形の常微分方程式 95

18.1. 基本事項:完全形の常微分方程式 95

18.2. 完全形の常微分方程式 99

Part 10. 解の漸近的な挙動 101

19. 平衡点 101

20. 極限軌道 102

21. ポアンカレ・ベンディクソンの定理,ポアンカレ指数 102

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4 京都大学 澤野嘉宏

Part 11. 自然科学への応用 104

22. 物理への応用 104

23. 化学への応用 106

24. 生物,人口学への応用 108

25. 経済学への応用 111

26. 工学への応用 112

Part 12. 解の一意性,存在定理 113

27. 解の一意性,存在 113

27.1. 基本事項1:一意性とは一般に数学においてどのようなものか? 113

27.2. 基本事項2:微分方程式の解の存在 114

27.3. 一意性の意味合い 118

27.4. 解の構成 119

27.5. 関数の定義 121

27.6. 微分不等式 123

Part 13. 厳密な実数論 125

28. 実数の性質 125

28.1. 基本事項1:集合,関数の記号 125

28.2. 基本事項2:集合の上限,下限 126

28.3. 基本事項3:実数列の極限 128

28.4. 数列の収束に関する問題 136

29. 関数の性質 140

29.1. 基本事項1:関数の連続性 140

29.2. 基本事項2:一様収束 141

29.3. 関数列の収束に関する問題 143

30. 追記:数式を打ち込む方法 145

Part 14. 解答 146

31. 1節 146

32. 2節 152

33. 3節 155

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微分方程式演習 5

34. 4節 165

35. 5節 168

36. 6節 175

37. 7節 179

38. 8節 186

39. 9節 187

40. 10節 190

41. 11節 195

42. 12節 202

43. 13節 204

44. 14節 208

45. 15節 210

46. 16節 227

47. 17節 230

48. 18節 231

49. 19節 234

50. 22節 238

51. 23節 241

52. 24節 242

53. 25節 246

54. 26節 247

55. 27節 248

56. 28節 260

57. 29節 263

58. 30節 264

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6 京都大学 澤野嘉宏

Part 1. 基礎事項の復習

1. 微分積分学からの準備

ここでは,微分方程式を解くために必要な基礎となる計算方法を復習する.

1.1. 微分.

問題 1.1. 次の xの関数を微分せよ. ただし,a > 1とする.

(1) xa  ただし,aは実数.(2) 14 sinx+ 17 cosx+ 6(3) tanx(4) ax  【ヒント】ax = eloga x

(5) x ex 【ヒント】d

dx(f(x)g(x)) = f ′(x)g(x) + f(x)g′(x)

(6) log x

(7)ex

x【ヒント】

d

dx

(uv

)=u′ v − u v′

v2(8) exp(x2) 【ヒント】合成関数の微分 f(g(x))′ = f ′(g(x))g′(x)

(9) yについての関数 x = tan yを区間(0,π

2

)で考える.逆関数が考えられるが,その逆関

数 y = g(x)の微分を求めよ.d

dxArc tanx を計算することになる.arc tanxと書くと,

tanxの逆関数一般をあらわすことになるが,Arc tanxと書くと,ここで述べた g(x)と同一になる.

(10) log(x+√1 + x2) 【ヒント】普通に計算していくだけだが,計算していくと約分できる

ので注意.(11) (x > 1で考える.)log(x+

√x2 − 1) 【ヒント】普通に計算していくだけだが,計算し

ていくと約分できるので注意.

(12)1

2

(x√

1 + x2 + log(x+√1 + x2)

)【ヒント】普通に計算していくだけだが,計算して

いくと約分できるので注意.

【注意】exp(a) = eaという風に理解する.以下に例を挙げる.exp(x+y) = exp(x) exp(y), exp(4) =e · e · e · e = e4 など.

問題 1.2. 次の関数の 2階微分を求めよ.

(1) 5x3 + 3x2

(2) log x

問題 1.3. 次の微分に関する問に答えよ.

(1) (f(x)g(x))′′ を計算せよ.

(2)dn

dxnex を計算せよ.

(3) nを整数として,nを 4で割ったときの余りを kとする.dn

dxnsinxを計算せよ.

(4) nを整数として,nを 4で割ったときの余りを kとする.dn

dxncosxを計算せよ.

問題 1.4. f(x)g(x)の 6階微分まで求める表を続けて作れ.

(1) (f(x)g(x))′ = f ′(x)g(x) + f(x)g′(x)(2) (f(x)g(x))′′ = f ′′(x)g(x) + 2f ′(x)g′(x) + f(x)g′′(x)

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微分方程式演習 7

(3) (f(x)g(x))′′′ = f ′′′(x)g(x) + 3f ′′(x)g′(x) + 3f ′(x)g′′(x) + f(x)g′′′(x)(4) (f(x)g(x))′′′′ = f ′′′′(x)g(x) + 4f ′′′(x)g′(x) + 6f ′′(x)g′′(x) + 4f ′(x)g′′′(x) + f(x)g′′′′(x)(5) 途中まで作成

(f(x)g(x))′′′′′ = f ′′′′′(x)g(x) + 4f ′′′′(x)g′(x) + 6f ′′′(x)g′′(x) + 4f ′′(x)g′′′(x) + f ′(x)g′′′′(x)

+ f ′′′′(x)g′(x) + 4f ′′′(x)g′′(x) + 6f ′′(x)g′′′(x) + 4f ′(x)g′′′′(x) + f(x)g′′′′′(x)

=

(6) (f(x)g(x))′′′′′′ =

問題 1.5. y = C1 eA t cosB t+ C2 e

A t sinB t につき,y′′ − 2Ay′ + (A2 + 4B2)y を計算せよ.

問題 1.6. f ∈ C1(R)であるとする.つまり,f は微分可能であり,f, f ′は連続関数であるとする.このとき,f ′ = 0ならば f は定数関数であることを証明せよ.

問題 1.7. f : R→ Rが連続のとき,g(x) =∫ x

0

f(y) dyは C1(R)-級であることを証明せよ.ま

た,導関数 g′(x)を求めよ.

問題 1.8. f : R→ Rが C1(R)級で,ある定数M が存在して |f ′(x)| ≤M を満たしているとする.このとき不等式 |f(x)− f(y)| ≤M |x− y|を証明せよ.この不等式を満たしている関数をリプシッツ連続な関数という.

問題 1.9. f : R→ R(f は定義域と値域が実数全体の関数であるということを表す.)を連続関

数とするとき,d2

dt2

∫ t

0

s f(t− s) ds を計算せよ.

問題 1.10. F (x), G(x) を二つの与えられた定義域が実数全体の C1-級関数とする.C1-級関数とは微分可能で微分も滑らかな関数のことを言う.このとき,次の二つは同値であることを証明せよ.

(1) F (x) = G(x)がすべての xに対して成り立つ.(2) F ′(x) = G′(x)がすべての xに対して成り立つ.さらに,ある点 x = aで F (a) = G(a)が成り立つ.

問題 1.11. 次の漸化式で与えられる数列は収束することを示せ.

an+1 = 5√an + 1, a1 = 8

【ヒント】初めに方程式 x = 5√x+ 1が x > 0で解をひとつだけもつことを証明して,そして

|an+1 − α| <1

5|an − α|

を証明する.最後に,数列の収束を示す.

問題 1.12.

(1) a, bは実数で a < bを満たしているとする.f : (a, b) → R (f は定義域が (a, b)で値域が実数全体の関数であるということを表す.)を微分可能な関数とする.f ′(x) = 0がす

べての a < x < bで成り立つとき,f(x) = f

(a+ b

2

)が成り立つことを証明せよ.

(2) y = sinxを区間(0,π

2

)で考える.逆関数が考えられるが,その逆関数 x = g(y)の微分

を求めよ.

問題 1.13.

(1) f(x) =

∫ x

0

(x− t) sin(t6) dt に関して,f(0)と f ′′(x)を求めよ.

(2) F (x) =

∫ x

0

(x− t) sin(t2) dt とおくとき,F (0), F ′(0), F ′′(x)を求めよ.

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8 京都大学 澤野嘉宏

1.2. 積分.

問題 1.14. 次の不定積分を求めよ.積分定数 C をつけるのを忘れずに.

(1) aを実数とする.∫xa dx

(2)

∫5 sinx+ 8 cosx dx

(3)

∫tanx dx

(4)

∫ax dx,ただし,a > 1とする.

(5)

∫x ex dx

(6)

∫log x dx

(7)

∫(2x+ 3)4 dx

(8)

∫x exp(x2) dx

(9)

∫ √x2 + 1 dx

問題 1.15. 次の不定積分を求めよ.積分定数 C をつけるのを忘れずに.

(1)

∫x e−x dx.

(2)

∫ax dx. ただし,a > 1とする.

(3)

∫ex sinx dx.

問題 1.16. 次の不定積分を求めよ.積分定数 C をつけるのを忘れずに.

(1)

∫x ex dx

(2)

∫log x dx

(3)

∫ex sin 3x dx

問題 1.17. 次の積分を求めよ.ただし,Arctan とArcsinはそれぞれ主値をあらわすものとする.∫dx

x2 + 1= Arctanx+ C,

∫dx√1− x2

= Arcsinx+ C

(1)

∫dx

x2 + x【ヒント】部分分数分解

(2)

∫dx

x2 + 6x+ 8【ヒント】部分分数分解

(3)

∫x dx

x2 − 4【ヒント】(x2 − 4)′ = 2x

(4)

∫dx

x2(x+ 1)【ヒント】部分分数分解

(5)

∫dx

x2 − 1【ヒント】部分分数分解

(6)

∫dx

x2 + 1

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微分方程式演習 9

(7)

∫x3dx

x2 + 1【ヒント】部分分数分解

(8)

∫dx

x2(x− 1)【ヒント】部分分数分解

(9)

∫dx

x3 + 1【ヒント】部分分数分解

【メモ】たとえば,1

x2(x+ 1)=

A

x2+B

x+

C

x+ 1,

1

x3 + 1=

A

x+ 1+

B + C x

x2 − x+ 1の形の分解を

する.

問題 1.18. 次の定積分を求めよ.

(1)

∫ 1

0

ex dx

(2)

∫ 2

0

√4− x2 dx

(3)

∫ 1

0

dx

1 + x2

a > 0とする.積分∫ a

0

√a2 − x2 dx などは対応する図形の面積を考える.

問題 1.19. 放物線 y =1

2x2 の 0 ≤ x ≤ 1に相当する部分の曲線の長さ Lを求めよ.

問題 1.20. 次の不定積分を求めよ.積分定数 C をつけるのを忘れずに.

(1) aを実数とする.∫xa dx 【ヒント】a = −1のときとそうでないときとで場合わけ.

(2)

∫5 sinx+ 8 cosx dx

(3)

∫tanx dx 【ヒント】tanx =

sinx

cosx,∫f ′(x)

f(x)dx = log |f(x)|+ C

(4) a > 1とする.∫ax dx

(5)

∫x ex dx 【ヒント】

∫x ex dx =

∫x (ex)′ dx

(6)

∫log x dx 【ヒント】

∫log x dx =

∫(x)′ log x dx

(7)

∫(2x+ 3)4 dx 【ヒント】2x+ 3 = tとおけ.

(8)

∫x exp(x2) dx 【ヒント】x2 = tとおけ.

(9)

∫ √x2 + 1 dx 【ヒント】微分して

√x2 + 1になる問題が問題 1.1にある.

問題 1.21. 次の積分を求めよ.

(1)

∫cos2 x dx

(2)

∫sin2 x dx

(3)

∫sin5 x dx

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10 京都大学 澤野嘉宏

(4)

∫cos3 x sinx dx

(5)

∫tanx dx

(6)

∫1

tanxdx

問題 1.22. 次の積分を求めよ.

(1)

∫dx√x2 + 1

(2)

∫dx√x2 − 4

(3)

∫ √x2 + 1dx

問題 1.23. 半径 2の球体をもってきて中心を通る軸を決める.その軸に沿って半径 1のドリルを持ってきて球体を掘削する.すると,そろばんの珠状?の立体が出来るがその体積 V を求めよ.

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微分方程式演習 11

Part 2. 微分方程式とは

2. 微分方程式の作成

2.1. 基本事項:微分方程式の解. (a, b)で定義された関数 y = f(x)が微分方程式 F (y, y′, x) = 0の解であるとは,f(x)は一回微分可能で,x ∈ (a, b)に対して,F (f(x), f ′(x), x) = 0が成り立つことを言う.F (y, y′, y′′, x) = 0の解などについても同じように定義する.

例 1. f(x) = xn は f ′(x) = nxn−1 の解である.

2.2. 常微分方程式の作成.

例題 1. A,B, ω は定数であるとする.y = A cos(ωt) + B sin(ωt)の時d2

dt2y + ω2y = 0 を証明

せよ.

例題 1の解答. y′ = −Aω sin(ωt) + Bω cos(ωt), y′′ = −Aω2 cos(ωt) − Bω2 sin(ωt) より,y′′ +ω2y = ω2(A cos(ωt) +B sin(ωt))−Aω2 cos(ωt)−Bω2 sin(ωt) = 0 となる.

問題 2.1. 以下,A,B,C, a, bは定数であるとする.次の問に答えよ.

(1) y = C e2x の時 y′ = 2y を証明せよ.(2) y = Aea x cos(bx) +B ea x sin(bx)の時 y′′ − 2ay′ + (a2 + b2)y = 0 を証明せよ.(3) 関数 yを

y =

0 (x ≤ a)(x− a)2 (x ≥ a).

で定義するとき y′ = 2√|y|を証明せよ.

(1) y = C e2x のときy′ =

2y =

したがって,

が成立する.(2) y = Aea x cos(b x) +B ea x sin(b x)の時

y′ =      cos(b x) +      sin(b x)

y′′ =      cos(b x) +      sin(b x)

となる.実際に,y′ を計算すると

となる.y′′ を計算すると

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12 京都大学 澤野嘉宏

(3) 場合1 x > aのときy = 2(x− a)2

であるから,y′ を計算すると,y′ =

となる.したがって,y′ =

が成り立つ.場合2 x < aのとき

y = 0

であるから,y′ を計算すると,y′ =

が成り立つ.場合3 x = aのとき右側微分 y′(a+ 0)を計算すると,

y′(a+ 0) = limh↓0

y(a+ h)− y(a)h

=

が成り立つ.左側微分 y′(a− 0)を計算すると,

y′(a+ 0) = limh↓0

y(a− h)− y(a)−h

=

が成り立つ.y′(a+ 0)  y′(a− 0)なのでy′(a) =

がなりたつ.y(a) = だから,y′ =

が成り立つ.

問題 2.2. y = ex sinxのとき,関数 y(4)と関数 yは比例関係にあるが,その比例定数を求めよ.解答の際は y(4) = a yの形で表したときの aの値を答えよ.

問題 2.3. 次の問いに答えよ.

(1) p(x) = sin 3xとする.h(x) = ex p(x)のとき,恒等式

h(6)(x)− 6h(5)(x) + a h(4)(x)− 20h(3) + 15h′′(x)− 6h′(x) + b h(x) = 0

を満たしている定数 a, bの値の組を一つ求めよ.(2) p(x) = 54x5 + 72x4 + 36x3 + 84x2 − 102とする.h(x) = ex p(x)のとき,恒等式

h(6)(x)− a h(5)(x) + b h(4)(x)− c h(3) + 15h′′(x)− 6h′(x) + h(x) = 0

を満たしている定数 a, b, cの値の組を一つ求めよ.

問題 2.4. y = ex sinxのときに,y′′′′′′′′(8回) = 16y を証明せよ.【ヒント】いろいろなやり方があるが,

y′ =√2ex sin

(x+

π

4

)を示す.

問題 2.5. y = x ex sinxのとき,y′′′′ − 4y′′′ + 8y′′ − 8y′ + 4y = 0 を証明せよ.【注意】式を展開するとわかるように (t2 − 2t+ 2)2 = (t2 + 2)2 − 4t(t2 + 2) + 4t2 = t4 − 4t3 + 8t2 − 8t+ 4 だから,特性方程式を用いれば確かに計算できるが,特性方程式を用いずに計算する方法 (直接代入など) を試みよ.

問題 2.6. 曲線族 y = Cx3が満たす微分方程式を求めよ.また,直交曲線族を求めて,図示せよ.

問題 2.7. 定数 a, bに対して,f(x) = (ax+ bx2)ex とする.

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微分方程式演習 13

(1) f ′(x)を求めよ.(2) y = f(x)が y′ = y + ex を満たすように a, bを求めよ.以後,a, bをここで求めた値とする.

(3) 極値を求めよ.(4) f ′′(x)を求めよ.(5) y = f(x)のグラフを書け.

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14 京都大学 澤野嘉宏

Part 3. 変数分離形とその応用

3. 変数分離形

3.1. 基本事項:変数分離形の考え方. 関数 y = f(x)が x0 を含む (a, b)という xの区間で方程式

(3.1) f ′(x) = g(x)h(f(x))

つまり,

(3.2) y′ = g(x)h(y)

を満たしているとしよう.このとき,変数変換 y = f(t)によって

(3.3)

∫ X

x0

1

h(f(t))f ′(t) dt =

∫ f(X)

f(x0)

dy

h(y)

が得られる.一方で,y′

h(y)=

f ′(x)

h(f(x))= g(x)だから,これを x0 からX まで積分して

(3.4)

∫ X

x0

f ′(t)

h(f(t))dt =

∫ X

x0

g(x) dx

が得られる.(3.3) と (3.4) をまとめて∫ f(X)

f(x0)

dy

h(y)=

∫ X

x0

g(x) dx

が得られる.X = xとしたいが,積分変数の xと混乱しないように気をつけないといけない.積分変数の xのほうを tと書き換えて,

(3.5)

∫ x

x0

g(t) dt =

∫ f(x)

f(x0)

dy

h(y).

これは微分を含まない形である.このようにして,微分を含む方程式(=微分方程式)(3.1)や(3.2) を (3.5)のように微分を含まないようにする計算方法を変数分離という.(3.5)を見てもわかるように変数が分離されているからである.

勉強していくうちにいくつかの疑問が生じるかもしれない

考えられる疑問の例

(1) h(y)で割り算しているが 0でないとどうしていえるか?(2) f(x)の定義域は与えられた方程式から割り出せるか?定義域とはいったいどういうものか?

このような“穴”が見つかってしまうと変数分離法は完全ではないということになる.

そうは言っても微分方程式を解けないと始まらないので,とりあえず重要な例を別の角度から眺めてみよう.

定理 1. f : (a, b) → Rが微分可能で導関数が恒等的に 0に等しいならば,f(x)は定数である.つまり,f ′(x) ≡ 0ならば,f(x) = c(定数)である.

【注意】f(x) ≡ g(x)はすべての xに対して f(x) = g(x)という意味で使う.f(x) = g(x)と書くと方程式と区別がつかなくなるときがあるからこういう書き方をする.

例 2.

(1) sin 2x ≡ 2 sinx cosx.(2) x3 − 1 = 0は x3 − 1 ≡ 0とは書いてはならない.

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微分方程式演習 15

証明. x, c ∈ (a, b)とする.平均値の定理より f(x)− f(c) = f ′(d)(x− c)となる dが xと cの間に存在する.f ′(d) = 0だから,f(x) = f(c)となる.

[定理 1の結論] f ′(x) = 0は変数分離法で解いたものが解である.

実際に,(3.5)において,g(x) ≡ 0, h(y) ≡ 1としておいてみると,∫ f(x)

f(x0)

dt = 0

だから,f(x) = f(x0)となる.

定理 2. f : (a, b) → Rが微分可能で,連続な導関数 g をもつとする.また,c ∈ (a, b)とする.このとき,

f(x) = f(c) +

∫ x

c

g(t) dt

が成り立つ.したがって,

f ′(x) = g(x)を解くと,f(x) = f(c) +

∫ x

c

g(t) dtもしくは f(x) =

∫g(t) dt

である.特に,g(x) = G′(x)が成り立つなら(つまり,G(x)が g(x)の不定積分のときは)

(3.6) f(x) = G(x) + C

となる.

【用語】(3.6)のCのことを積分定数とも言うが,微分方程式の科目ではCを任意定数という.

証明. F (x) = f(x)− f(c)−∫ x

c

g(t) dt とおくと,微積分学の基本定理より 

d

dx

∫ x

c

g(t) dt = g(x)

だから,F ′(x) = f ′(x)−g(x) = g(x)−g(x) = 0が得られる.したがって,定理 1よりF (x) = F (c)である.F (x)の定義式に x = cを代入して分かるように F (c) = 0であるから,F (x) = 0である.従って,移項することにより

f(x) = f(c) +

∫ x

c

g(t) dt

が成り立つ.

[定理 2の結論] f ′(x) = g(x)は変数分離法で解いたものが解である.

実際に,(3.5)において,h(y) ≡ 1としておいてみると,∫ f(x)

f(x0)

dt =

∫ x

x0

g(t) dt

だから,f(x) = f(x0) +

∫ x

x0

g(t) dtとなる.

yが xの関数のとき,微分方程式では y = y(x)と書くことも多い.

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16 京都大学 澤野嘉宏

3.2. 変数分離形.

例題 2. 次の微分方程式を解け.

(1) y′ = y(2) y′ = tan y

例題 2の解答.

(1)dy

dx= y より,

∫dy

y=

∫dx.∴  log |y| = x+C.logを戻して |y| = ex+C となる.絶

対値をはずして y = ±eC ex.±eC を C と置き換えて,y = C ex.このままだと C = 0は除外されているが,C = 0つまり y = 0も微分方程式の解なので,y = C ex が答え.(C は任意定数)“±eC を C と置き換えて,(中略)このままだと C = 0は除外されているが,C = 0

つまり y = 0も微分方程式の解なので,”となっているのはこの問題特有の現象で一般にはうまくいかない.きれいになる場合を除いてこの操作をしなくてよい.

(2) dx, dy を一つの数みたく扱って∫

dy

tan y=

∫dx まで計算するのは,先ほどと一緒.こ

れを計算していくと log | sin y| = x + C が出てきて,| sin y| = ex+C が得られる.絶対値をはずして ±eC を C で置き換えて sin y = C ex が得られる.このままだと C = 0は除外されているが,C = 0つまり sin y = 0(y = mπ, mは整数)も微分方程式の解なので,sin y = C ex が答え.(C は任意定数)【注意】cosの逆関数があって,さらに変形できると思うかもしれないが分枝の問題

があるのでこのままでよい.一般的に,変数分離形の微分方程式はこのように陰関数表示されているものが多い.対数をほどく,平方根をとるなどの場合はこのような操作をして分かりやすくしたほうがよいが,一般的に出来ないことも多いのではっきり出来そうなときだけやればよい.

例題 3. y′ = x5y2 を解け.

例題 3の解答.

∫dy

y2=

∫x5 dx より,−1

y=

1

6x6 + C =

x6 + C

6. (真ん中の項の C と右辺の

C は違う.置き換えている.)したがって,y =−6

x6 + C. 【注意】ここで,y =

−6x6

+C は間違え

であるからくれぐれも注意すること.

問題 3.1. 次の常微分方程式を解け.

(1) y′ = x2y(2) y′ = (sinx)y(3) y′ = y3

(4) y′ = (log x)y(5) y′ = −(tanx)y

問題 3.2. 次の微分方程式を変数分離法を用いて解け.

(1) y′ = tan y(2) y′ = y2

(3) y′ =1

log y(4) y′ = x(y2 + 1)(5) y′ = −x2 y

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微分方程式演習 17

問題 3.3. 次の微分方程式を解け.

(1) y′ = 3y(2) y′ = x y(3) y′ = y2

問題 3.4. 次の微分方程式を変数分離法を用いて解け.

(1) y′ = ey

(2) y′ = y2

(3) y′ =3

log y

問題 3.5.

(1) 次の不定積分を計算せよ.∫ex sinx dx

(2) N を tの関数として N ′(t) = et sin t を解け.(3) 変数分離法で y′ = ex(sinx)y を解け.

問題 3.6. 次の微分方程式を解け.

(1) y′ = y2

(2) y′ = y sinx(3) y′ = y e12x

(4) y′ = y cosx(5) y′ = y−1

(6) y′ = x y−1

(7) y′ = x y2

(8) y′ = ey

(9) y′ = y + 3(10) y′ = x(y + 1)

問題 3.7. 次の微分方程式を解け.

(1) y′ = y2 (2x+ 3)4

(2) y′ = y x ex

(3) y′ = y ex cos 3x(4) y′ = y−1 tanx(5) y′ = (log x) y−1

(6) y′ = x ex y2

(7) y′ = ey+x

(8) y′ = (tan y)(x log x)−1

(9) y′ = y(y + 3)ex

(10) y′ = [ex sinx](y + 1)

問題 3.8. 次の微分方程式を変数分離法を用いて解け.

(1) y′ = y(2) y′ = 2y(3) y′ = xy(4) y′ = tan y(5) y′ = sin y(6) y′ = ey

(7) y′ = (sinx)y(8) y′ = (cosx)y2

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18 京都大学 澤野嘉宏

問題 3.9. f ∈ C1(R)であるとする.つまり,f は微分可能であり,f, f ′は連続関数であるとする.このとき,f ′ = 0ならば f は定数関数であることを利用して C1(R)級関数 yで y′ = yを満たすものを z = e−xyと置き換えて求めよ.(この考え方を応用すれば,変数分離形のときにやる割り算の欠点を克服できる.)

問題 3.10. f(x)を滑らかな関数として y′ = f(x)yを解け.∫f(x) dxを用いてよい.【例】y′ = ex

2

y

を解くと,y = C exp

(∫ex

2

dx

). このように不定積分をあいまいにして解くことができる状態

を求積可能という.

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微分方程式演習 19

3.3. 初期値問題. 微分方程式を解くと定数 C が出てくるが,C を決定できる方法がある.x = aのときの yの値 y(a)を与えることである.

例題 4. xに関する方程式 y = y(x)の初期値問題 y′ = y, y(0) = 1を解け.

例題 4の解答. y′ = y より,∫dy

y=

∫dx.∴  log |y| = x+ C.logを戻して |y| = ex+C とな

る.絶対値をはずして y = ±eC ex.±eC を C と置き換えて,y = C ex.このままだと C = 0は除外されているが,C = 0つまり y = 0も微分方程式の解なので,y = C ex が答え.(C は任意定数)x = 0のときに,y = 1だから,1 = C e0.したがって C = 1となる.以上より y = exが解である.

問題 3.11. 変数分離法で初期条件つきの微分方程式 y′ = (2x+ 5)3y, y(0) = 7 を解け.

問題 3.12. y′ = x2 yをとけ.まず,一般解を求めよ.また,初期条件 y(1) = 4のもと,解を求めよ.

問題 3.13. 次の微分方程式を変数分離法を用いて解け.

(1) y′ = 2y, y(1) = 2(2) y′ = xy, y(1) = 1

問題 3.14. Sを定数とする.変数分離形の方程式 y′ = 4yを解け.y(0) = Sの初期条件で同じ方程式を解け.

問題 3.15. 次の初期値問題を解け.

(1) y′ + y tanx = 0, y(0) = 2

(2) y′ + x y = 0, y(0) =1

2π(3) y′ = x− y, y(0) = 0

【メモ】∫x ex dx = x ex − ex + C

問題 3.16. 次の変数分離の方程式を解け.

(1) y′ = x4y3

(2) y′ = 4y(3) y′ = x tan y(4) y′ = 3x2y, y(0) = 3

(4)には初期条件がついている.

問題 3.17. 次の微分方程式を解け.

(1) y′ = y, y(0) = 4(2) y′ = y, y(1) = 12(3) y′ = 2x y, y(0) = 3

問題 3.18. 次の初期条件がついた微分方程式を解け.

(1) y′ = x y, y(0) = 1(2) y′ = 6(x+ 1)y, y(3) = 4(3) y′ = x2 (y + 2), y(0) = 3(4) y′ = y sinx, y(0) = 1(5) y′ = y2, y(0) = 1(6) y′ = x3 y, y(0) = 3

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20 京都大学 澤野嘉宏

(7) y′ = 4(x+ 2)(y + 1), y(2) = 3(8) y′ = 2(x− 3)y2, y(4) = 3(9) y′ = y, y(5) = 7(10) y′ = ex y, y(0) = 0

問題 3.19. 微分方程式 f(π2

)= C0 > 0,y′ sinx+(sinx−cosx)y = 0について次の問に答えよ.

(1) 微分方程式の解 y = f(x)を求めよ.ただし,y = f(x)は実数全体で微分可能な関数であると仮定してよい.

(2) n ∈ Zとする.Vn を nπ ≤ x ≤ (n+ 1)πの y = f(x)の部分を x軸に 1回転させて得られる立体の体積とするとき,Vn を求めよ.

(3)∞∑

n=0

Vn = πを満たすように定数 C0 を求めよ.

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微分方程式演習 21

3.4. 関数方程式.

問題 3.20. すべての実数 x, yに対して,

(3.7) f(x+ y) = f(x) + f(y)

を満たす関数 f(x)を考える.

(1) すべての有理数 αに対して f(αx) = αf(x)を証明せよ.(2) f が微分可能だと仮定して,すべての実数 xに対して f(x) = f(1)xを証明せよ.(3) f が原点でのみ微分可能だと仮定して,すべての実数 xに対して f(x) = f(1)xを証明せよ.

(4) f が原点でのみ連続だと仮定してすべての実数 xに対して f(x) = f(1)xを証明せよ.(5) 方程式 (3.7)のみを仮定すると関数方程式 (3.7)の解はどのように表されるか?

問題 3.21. 次の条件を満たす C∞級関数 g : (−π/2, π/2)→ R,つまり何回でも微分できる関数を求めよ.以下,下にヒントがついているがそれに従わなくてもかまわない.

α, β ∈(−π2,π

2

), α+ β ∈

(−π2,π

2

)のとき g(α+ β) =

g(α) + g(β)

1− g(α)g(β)

さらに,g′ > 0, g′(0) = 1を満たしているとする.

(1) g(0)を求める.

(2) limh→0

g(x+ h)− g(x)h

を求める.

(3) (2)で得られた関係式から変数分離法で gを求める.

問題 3.22. f : R→ Rを C2-級とする.u(x, y) = f(x2 − y2) と定義する.

(1) uxxuyy − (uxy)2 を計算せよ.

(2) k ∈ Nに対して uxxuyy − (uxy)2 = −(x2− y2)k を満たすような f が存在するならば,そ

れをすべて求めよ.

問題 3.23. 座標平面に点 P (−1, 0), Q(1, 0)をとる.r1 =√(x+ 1)2 + y2, r2 =

√(x− 1)2 + y2

とおく.滑らかな関数 f1, f2を用いて φ(x, y) = f1(r1) + f2(r2) と表される関数 φが P,Qを除く

すべての点で∂2φ

∂x2+∂2φ

∂y2= 0 を満たすとする.

(1) 上のような φの一般形を求めよ.

(2) とくに原点において∂φ

∂x+∂φ

∂y= 0 が成立するような φはどのように書けるか?このと

きの φは原点において極大値,極小値をとるか?

問題 3.24. 区間 [0,∞)で定義された連続微分可能な実数値関数全体を C1[0,∞) で表す.w ∈

C1[0,∞)に対しての汎関数を J [w] =

∫ ∞

0

w′(x)2 + w(x)2 dx で定める.関数空間 (関数集合)X

をX = w ∈ C1[0,∞) : w(0) = 1, J [w] <∞ と定義する.このとき,J [w]はX において最小値をとることを示し,その最小値と最小値を与えるX の元をすべて求めよ.

問題 3.25. 関数 f, g : R→ Rについて次のことが成立している.

(1) f(0) = 0, g(0) = 1で,f, gは x = 0で微分可能である.さらに,f ′(0) = 1, g′(0) = 0 が成り立つ.

(2) f(x+ y) = f(x)g(y) + g(x)f(y), g(x+ y) = g(x)g(y) + f(x)f(y)

このとき,f, gを求めよ.

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22 京都大学 澤野嘉宏

問題 3.26. a ∈ [0, 2π)を実数定数とする.原点を通る曲線 y = f(x)について,xの増分を∆x,yの増分を∆y = f(x+∆x)− f(x)とすると,

∆y = cos(2x+ a) sin∆x+D(x,∆x)

が成り立つとする.ここで,D(x,∆x)は

lim∆x→0

D(x,∆x)

(∆x)2= sin 2x

を満たす.このとき,f を求めよ.

問題 3.27. f : R→ (−π/2, π/2)はすべての実数で定義された関数で,次の条件を満たしているとする.

(1) x, y ∈ Rが xy = 1とすると,f(x) + f(y) = f

(x+ y

1− xy

)が成り立つ.

(2) f は原点で微分可能でその微分係数は 1である.

このとき,f を求めよ.

問題 3.28. f は 0 ≤ x ≤ 1で定義された連続な関数で,0 < x < 1で微分可能であるとする.fが次の条件を満たしているとする.

(a) f(0) = 0, f(1) = 1.(b) f ′(x) > 0, x ∈ (0, 1)

さらに,

F (u) =

∫ 1

0

|f(x)− u| dx, 0 ≤ u ≤ 1

と定める.次の各々の場合について,f を求めよ.

(1) F ′(u) = 2u2 − 1の場合.(2) F ′(u) = 2f(u)− 1の場合.

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微分方程式演習 23

4. 定数変化法

4.1. 基本事項:定数変化法の解の公式の導出. 定理 2を応用すると,微分方程式で変数分離でないものも解けるので,整理しておこう.この解法は定数変化法という.

定理 3. A,B : (a, b)→ Rを連続関数とする.c ∈ (a, b)を固定する.このとき,微分方程式

y′ = A(x)y +B(x)

の解は

y(x) = exp

(∫ x

c

A(t) dt

)y(c) +

∫ x

c

exp

(−∫ s

c

A(t) dt

)B(s) ds

である.

証明. 関数 z(x)を

(4.1) y(x) = z(x) exp

(∫ x

c

A(s) ds

)つまり,z(x) = y(x) exp

(−∫ x

c

A(s) ds

)とおく.(4.1)の両辺を微分してみると,y′ = A(x)y +B(x)より,

z′(x) = y′(x) exp

(−∫ x

c

A(s) ds

)−A(x)y(x) exp

(−∫ x

c

A(s) ds

)= B(x) exp

(−∫ x

c

A(s) ds

)である.定理 2より (普通に積分することで)

(4.2) z(x) = z(c) +

∫ x

c

B(t) exp

(−∫ t

c

A(s) ds

)dt

である.一方で,(4.1)に x = cを代入して,

(4.3) z(c) = y(c) exp

(−∫ c

c

A(s) ds

)= y(c).

(4.2)と (4.3)より,

z(x) = y(c) +

∫ x

c

B(t) exp

(−∫ t

c

A(s) ds

)dt

したがって,(4.1)の第一式にこの z(x)を代入して

y(x) = exp

(∫ x

c

A(t) dt

)y(c) +

∫ x

c

exp

(−∫ s

c

A(t) dt

)B(s) ds

が得られた.

この方程式の解の公式を覚えるのはかなり紛らわしく間違えやすい.導出方法を頭に入れて,具体的に計算していくほうがよいであろう.

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24 京都大学 澤野嘉宏

4.2. 定数変化法による方程式の解法.

例題 5. 次の方程式を解け.

(1) y′ − y = 0(2) y′ − y = x

例題 5の解答.

(1) y′ = y より,∫dy

y=

∫dx.∴  log |y| = x+ C.logを戻して |y| = ex+C となる.絶

対値をはずして y = ±eC ex.±eC を C と置き換えて,y = C ex.(2) (1)で出てきた任意定数Cを xの関数C(x)に置き換える.すなわち,y = C(x) exを代入すると y′ − y = C ′(x)ex = xが得られる.したがって,C ′(x) = x e−xである.これを積

分してC(x) =

∫x e−x dx =

∫x (−e−x)′ dx = −x e−x+

∫e−x dx = −x e−x−e−x+C.

よって,y = C(x) ex = −x− 1 + C ex が求める解である.

問題 4.1. 各問題につき 2つの微分方程式を解け.1つ目の方程式の解をひとつ y0 を求める,2つ目の方程式を解くべく,y = C(x)y0 とおいて C(x)についての微分方程式を導くこと.

(1) (a) y′ − y = 0.(b) y′ − y = x.

(2) (a) y′ − xy = 0.(b) y′ − xy = x.

(3) (a) y′ +y

x= 0

(b) y′ +y

x= x3

問題 4.2. 次の方程式を解け.

(1) y′ − x y = 0(2) y′ − x y = x

問題 4.3. 次の微分方程式を解け.

(1) y′ + y cotx = cosecx

(2) (1 + x2)y′ = xy +√1 + x2

【注意】cotx =1

tanx, cosecx =

1

sinx

問題 4.4. 次の微分方程式を解け.

(1) y′ = 2x yを解け.(2) y′ = 2x y − x3 を解け.

問題 4.5. 定数変化法を用いて y′ + 6y = xを解け.

問題 4.6. 定数変化法で次の微分方程式を解け.

(1) (a) y′ = y(b) y′ = y + x

(2) (a) y′ = 5y(b) y′ = 5y + sinx

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微分方程式演習 25

問題 4.7. 定数変化法(もしくは重ね合わせの原理で)y′ + 6y = 6 を解け.

問題 4.8. 次の初期条件がついた微分方程式を解け.【ヒント】∫

sin(log x) dx,

∫cos(log x) dx

を計算する必要があるときは x = ev とおいてみよ.

(1) y′ = (log x) y, y(1) = 3(2) y′ = y e2x(cos 3x+ 2 sin 3x), y(0) = 3(3) y′ = 6y + 36x, y(0) = 1(4) y′ = x2 (y + 2), y(0) = 3(5) y′ = y sin(log x), y(1) = 1(6) y′ = y2, y(0) = 1(7) y′ = 4(x+ 2)(y + 1), y(2) = 3(8) y′ = 2(x− 3)y2, y(4) = 3(9) y′ = y cos(log x), y(1) = 7(10) y′ = ex y, y(0) = 0

問題 4.9. 次の等式 (x+2)P ′(x) +P (x) = 9x2 +8x− 3を満たす多項式関数 P (x)を求めよ.【注

意】多項式関数とは,1

x+ 2+ x+ 3 のような分母に xがくる式を含まない.これは有理式と呼

ばれるものである.

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26 京都大学 澤野嘉宏

5. 置き換えをして解く変数分離形の微分方程式

5.1. ベルヌーイ形の方程式. κ = 0, 1とする.微分方程式 y′ + a(x)y = b(x)yκ は z = y1−κ とすると,z′ = (1− κ)y−κ であるから,z′ + (1− κ)a(x)z = b(x) の形になる.

例題 6. y′ + y = e−xy2 を解きたい.次の問に答えよ.

(1) z = y−1 と置換すると方程式は −z′ + z = e−x となることを示せ.(2) −z′ + z = e−x の両辺に e−x をかけて両辺を積分せよ.(3) 元の方程式を解け.

例題 6の解答.

(1) z′ = −y′ · y−2 だから,−z′ + z = y′y−2 + y−1 = y−2(y′ + y) = e−x

(2) e−x(−z′ + z) = e−2x だが,左辺は −z e−x の微分だから,z e−x =1

2e−2x + C. よって,

e−x を移項して z =1

2e−x + C ex.

(3) y =1

z=

2 ex

1 + 2C e2x

問題 5.1. y′ + y = e−xy3 を解きたい.次の問に答えよ.

(1) z = y−2 と置換すると方程式は −1

2z′ + z = e−x となることを示せ.

(2) 元の方程式を解け.

問題 5.2. y′ + y = x y−1 を解きたい.次の問に答えよ.

(1) z = y2 と置換すると方程式は1

2z′ + z = xとなることを示せ.

(2) 元の方程式を解け.ただし,y = ±√zと考えてよい.

問題 5.3. 次の微分方程式の解を求めよ.特異解も求めよ.

(1) y′ = x3y3 − 2xy. ただし,y(x0) = y0 とする.(2) y′ + 2xy = 2x3y3.

問題 5.4. 次の微分方程式を解け.

(1) y′ = y, y(0) = 1(2) y′ = x y, y(0) = 2(3) y′ = 3y, y(1) = 3(4) y′ + x ey = 0, y(0) = 1

(5) y′ +y

x= ex, y(1) = 1

(6) y′ = −x y + x y3, y(1) =1

2

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微分方程式演習 27

5.2. 同次形. 微分方程式 y′ = f(yx

)は z =

y

xとおくことで,x z′ + z = f(z)という形になる.

問題 5.5.

(1) y′ =1

2

(y

x+x

y

)に関して z =

y

xとおいて zに関して解き,yを求めよ.

(2) xy2y′ = x3 + y3 をとけ.

問題 5.6. y′ = (x− y)2 をとけ.【ヒント】z = x− yとおくこと.

問題 5.7. 微分方程式 y′ =2x+ y − 4

x+ 2y − 1を解きたい.

(1) 2x+ y = 4, x+ 2y = 1を解け.その解を α, β とする.(2) u = x− α, v = y − β とおいて方程式を書き改めよ.(3)

u

v= w−1 とおいて方程式をもう一度書き改めよ.

(4) 与えられた方程式を解け.

問題 5.8. t = 1の近傍で定義されている微分方程式 t2dx

dt=t2 + x2

2を初期条件 x(1) = 0のも

とで解け.

問題 5.9. 次の微分方程式の解を求めよ.特異解も求めよ.

(1) y2 + x2y′ = xyy′,ただし,x > 0.

(2) y′ =(yx

)2+

2y

x. ただし,y(x0) = y0 とする.

問題 5.10. f(x, y) =y

x

( yx2

+ 1)とおく.微分方程式 y′ = f(x, y) を解きたい.

(1) 恒等式 f(λx, λay) = λa−1f(x, y) を満たす aを求めよ.(2) y = xazとおいて方程式を書き改めよ.(3) z, yを求めよ.

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28 京都大学 澤野嘉宏

5.3. リッカチ形. y′ = y2 + a(x)y + b(x)の形の微分方程式は y0 という特別な解が見つかったとき,z = y − y0 とおくことで,ベルヌーイ形になる.

問題 5.11. リッカチ形の方程式 y′ = y2 + (4− x)y − 2x+ 5を解きたい.

(1) y = x− 2は一つの解であることを示せ.(2) w = y − x+ 2とおくと方程式は w′ = w2 + xwになることを確認せよ.(3) z = w−1 として方程式をもう一度書き改めよ.(4) 元の方程式を解け.

∫ex

2/2dxを用いて現してよい.

問題 5.12. 微分方程式 x(1− x3)y′ = x2 + y − 2xy2, 0 < x < 1を考える.

(1) y0 = x2 が解であることを証明せよ.(2) ほかの解が求積できることを証明せよ.

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微分方程式演習 29

5.4. 置き換えの総合練習.

問題 5.13. p(x), G(x), A(x)は与えられた関数とする.また,α, β は定数とする.次の微分方程式は,指示された置き換えをすることで積分によって解けることを示せ.

(1) y′ = p′(x)G

(dy

dx

):置き換え y = p(x)z

(2) y′ = αy +A(x)G(e−αxy) :置き換え y = eαxz

(3) y′ = 2xy +A(x)G(e−x2

y) :置き換え y = exp(x2)z

(4) y′ =αy

x+A(x)G

( y

):置き換え y = xαz (ただし,x > 0で考えること.)

(5) y′ =y

x+A(x)

x+ y:置き換え y = x z

(6) y′ =y

x+A(x)(x2 + y2 + xy) :置き換え y = xz

(7) y′ = y +A(x)(1 + 2e−xy + e−2xy2) :置き換え y = ex z

(8) y′ =2x

x2 + 1y +A(x)

[1 +

y

x2 + 1+

y2

(x2 + 1)2

]:置き換え y = (x2 + 1)z

(9) y′ =y

x log x+A(x)

[1 +

2y

log x+

y2

(log x)2

]:置き換え y = z log x(ただし,x > 0で考

えること.)

(10) y′ =sinhx

coshxy +A(x)

[1 +

2y

coshx+

y2

(coshx)2

]:置き換え y = z coshx

(11) y′ =p′(x)

p(x)y + x2

(α+

βy2

p(x)2

):置き換え y = p(x)z

(12) y′ = αA(x) +

[p′(x)

p(x)+ b

A(x)

p(x)

]y + β

A(x)

p(x)2y2 :置き換え y = p(x)z

(13) y′ = aA(x) +

[p′(x)

p(x)+ b

A(x)

p(x)

]y + β

A(x)

p(x)2y2 :置き換え y = z p(x)

(14) y′ =y

x+A(x)(x2 + y2)(x+ y)3 :置き換え y = x z

(15) y′ = −yx+

A(x)

1 + xy + 2x2y2:置き換え y =

z

z

出典:T. Tada and S. Saitoh, A Method by Separation of Variables for the First Order NonlinearOrdinary Differential Equations, Journal of Analysis and Applications, 2, (2004), no. 1, 51-63.より採録.

問題 5.14. 次の微分方程式において置き換えを実行して,できる限り解け.

(1) y′ =y

x+

ex

x+ y:置き換え (y = x z)

(2) y′ = −2x− 2y2

x3:置き換え (y = x2z)

(3) y′ =y

x+x2 + y2

x+ y:置き換え (y = x z)

(4) y′ = −2x− 6x−5y3:置き換え (y = x2 z)(5) y′ = ex + e−xy2:置き換え (y = x−1z)

(6) y′ =3

2x−2 +

y2

2+ xy3:置き換え (y = x−1z)

(7) y′ = 6x+2x

(x2 + 1)2y2:置き換え (y = (x2 + 1)z)

(8) y′ = −yx+ 2x2exy:置き換え (y = x−1z)

(9) y′ = −yx+ x2(1 + exy):置き換え (y = x−1z)

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30 京都大学 澤野嘉宏

(10) y′ = −yx+ (x+ y) exp

(−yx

):置き換え (y = xz)

(11) y′ =2y

x+ x2 exp

(− y

x2

):置き換え (y = x2z)

(12) y′ = xy + ex

1 +y

exp

(x2

2

) +y2

exp(x2)

:置き換え (y = exp

(x2

2

))

(13) y′ = y + x

(1 +

y

ex+

y2

e2x

):置き換え (y = ex z)

(14) y′ = y cosx+ x

(3 +

y

exp(sinx)+

2y2

exp(2 sinx)

):置き換え (y = exp(sinx))

(15) y′ =(2y + sinx) cosx

y + sinx:置き換え (y = z sinx)

(16) y′ =y

x+ (x+ 1) cos

(yx+π

4

):置き換え (y = x z)

出典:T. Tada and S. Saitoh, A Method by Separation of Variables for the First Order NonlinearOrdinary Differential Equations, Journal of Analysis and Applications, 2, (2004), no. 1, 51-63.より採録.

問題 5.15. 次の微分方程式を解け.ただし,a > 0で p(x), F (x), G(x)は与えられた関数とする.

(1) y′ =p′(x)

p(x)y + F (x)G

(y

p(x)

)(2) y′ =

p′(x)

p(x)y + F (x)

(a2 − y2

p(x)2

)(3) y′ =

p′(x)

p(x)y + F (x)

(a2 +

y2

p(x)2

)(4) y′ =

p′(x)

p(x)y + F (x) sin

y

p(x)

(5) y′ =p′(x)

p(x)y + F (x) cos

y

p(x)

(6) y′ =p′(x)

p(x)y + F (x) sin

y

p(x)cos

y

p(x)

(7) y′ =p′(x)

p(x)y + F (x) tan

y

p(x)

(8) y′ =p′(x)

p(x)y + F (x) cos2

y

p(x)

(9) y′ =p′(x)

p(x)y − F (x) sin2 y

p(x)

(10) y′ =p′(x)

p(x)y + F (x)

(1− y2

p(x)2

) 12

(11) y′ =p′(x)

p(x)y − F (x)

(1− y2

p(x)2

) 12

すべての問題において,y = p(x)z とおきなおしてみると有効であろう.出典:T. Tada andS. Saitoh, A Method by Separation of Variables for the First Order Nonlinear Ordinary Differ-ential Equations, Journal of Analysis and Applications, 2, (2004), no. 1, 51-63. より採録.

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微分方程式演習 31

Part 4. テーラー展開を用いた微分方程式の解法

6. テーラー展開を用いた微分方程式の解法

テーラー展開を用いた微分方程式の解法は案外強力なので,ここではそれに関してまとめる.まずは,テーラー展開とは何かを簡単にまとめる.

6.1. 基本事項:テーラー展開. テーラー展開とは,

f(x) = f(a) + (x− a)f ′(a) + · · ·+ (x− a)n

n!f (n)(a) + · · ·

の形をした展開である.

定理 4. n = 1, 2, · · · につき,f が n回微分可能なときには,

f(x) = f(a) + (x− a)f ′(a) + · · ·+ (x− a)n−1

(n− 1)!f (n−1)(a) +

1

(n− 1)!

∫ x

a

(x− s)n−1f (n)(s) ds

が成り立つ.

証明. n = 1のときは微分積分学の基本定理だから,これは認めてしまう.n ≥ 2のときは部分積分により,∫ x

a

(x− s)n−2f (n−2)(s) ds =

∫ x

a

(−(x− s)n−1

n− 1

)′

f (n−1)(s) ds

=(x− a)n−1

n− 1f (n−1)(a) +

1

n− 1

∫ x

a

(x− s)n−1f (n)(s) ds

が成り立つから数学的帰納法で証明ができる.

テーラー展開の公式を得るためには,

limn→∞

1

(n− 1)!

∫ x

a

(x− s)n−1f (n)(s) ds = 0

が必要であるが,そのためにはどのような条件が必要か?それに答えるために,次の計算結果を引用する.

補題 1. 任意の R > 0につき, limn→∞

Rn

n!= 0 が成り立つ.

見出しにある補題とは,定理などを証明するときに必要とする道具である.補助定理などとも言われる.

証明. Rについて挟み撃ちの原理を用いたい.N > 2RとなるN をひとつ取る.実際に,Rの整

数部分を [R]と書くとき,N = 2[R] + 2と取ればよい.n > N のとき,0 ≤ Rn

n!≤ RN

N !

(1

2

)n−N

であるから,確かに limn→∞

Rn

n!= 0 が成り立つ.

定理 5. f : (A,B)→ Rは何回でも微分可能であるとする.もし,定数M,Rが存在して,

(6.1) |f (n)(x)| ≤MRn

が A < x < B でなりたつならば,任意の A < x < bに対して,

f(x) = f(a) + (x− a)f ′(a) + · · ·+ (x− a)n−1

(n− 1)!f (n−1)(a) + · · ·

が成り立つ.

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32 京都大学 澤野嘉宏

証明.

∣∣∣∣ 1

(n− 1)!

∫ x

a

(x− s)n−1f (n)(s) ds

∣∣∣∣ ≤ MRn

n!(B −A)n が成り立つから,補題 1より明らか

である.

6.2. 具体的な関数のテーラー展開.

例題 7. sinxのテーラー展開を求めよ.【注意】重要な式なのできちんと暗記しておくこと.

例題 7の解答.

(1) k = 0, 4, 8, 12, . . .のときdk

dxksinx = sinx.

(2) k = 1, 5, 9, 13, . . .のときdk

dxksinx = cosx.

(3) k = 2, 6, 10, 14, . . .のときdk

dxksinx = − sinx.

(4) k = 3, 7, 11, 15, . . .のときdk

dxksinx = − cosx.

∴sinxの k回微分は x = 0で

(1) k = 0, 2, 4, 6, 8, 10, 12, . . .のとき 0(2) k = 1, 5, 9, 13, . . .のとき 1(3) k = 3, 7, 11, 15, . . .のとき −1

となる.これより,(6.1)は確認できて

sinx = x− 1

6x3 +

1

120x5 · · ·+ (−1)k

(2k + 1)!x2k+1 + · · · =

∞∑k=0

(−1)kx2k+1

(2k + 1)!

となる.

問題 6.1. テーラー展開の公式

f(x) = f(0) + f ′(0)x+f ′′(0)

2!x2 + · · ·+ f (n)(0)

n!xn + · · ·

を用いて,次の関数のテーラー展開を求めよ.

(1) ea x

(2) cosx(3) log(1− x)(4)

1

1− x問題 6.2. テーラー展開の公式

f(x) = f(0) + f ′(0)x+f ′′(0)

2!x2 + · · ·+ f (n)(0)

n!xn + · · ·

を用いて,次の関数のテーラー展開を求めよ.(答えを暗記しているものがあれば直接答えだけで構わない)

(1) ea x

(2) cosx(3) sinx(4) log(1− x)(5) (1− x)−1

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微分方程式演習 33

6.3. テーラー展開の微分方程式への応用. テーラー展開とは何かを説明したので,テーラー展開による微分方程式の解法を説明する.

次の例題を考えてみよう.

例題 8. f ′(x) + f(x) = x3 を満たす多項式関数で 3次式のものを求めよ.

3次式とわかってしまえば,次のようにして解くことが出来る.

例題 8の解答. f(x) = a x3+b x2+c x+dとおくと,右辺= a x3+(b+3a)x2+(c+2b)x+(c+d)となるから,連立方程式 a = 1, b+3a = 0, c+2b = 0, c+ d = 0 を解けばよい.したがって,この連立方程式は a = 1, b = −3, c = 6, d = −6が解であるので,f(x) = x3 − 3x2 +6x− 6となる.

さらに次の例題を考えてみよう.

例題 9. f ′(x) + f(x) = x2 を満たす多項式関数を求めよ.

先ほどと違うのは次数を指定されていないところである.

例題 8の解答. f(x) = an xn + an−1x

n−1 + · · · + a0 とおく.ここで,an = 0である.すると,f ′(x) + f(x) = an x

n + (an−1 +nan)xn−1 + · · · となっているので,n = 2でないと右辺は x2に

なることが出来ない.n = 2とすれば,例 8と同じようにして f(x) = x2 − 2x+ 2と求まる.

f(x) = an xn + an−1x

n−1 + · · ·+ a1 x+ a0 = a0 + a1 x+ a2 x2 + · · ·+ an x

n とおいてみる発想が出てくると,f(x) = a0 + a1 x+ a2 x

2 + · · ·+ an xn + · · · とおく発想も自然と生まれてくる.

例題 10. f ′(x) + f(x) = 2ex を満たす関数でテーラー展開可能なものを求めよ.

例題 10の解答. f(x) =

∞∑n=0

an xn とおくと,

f ′(x) + f(x) =∞∑

n=0

nan xn−1 +

∞∑n=0

an xn

=

∞∑n=1

nan xn−1 +

∞∑n=0

an xn

=

∞∑n=0

(n+ 1)an+1 xn +

∞∑n=0

an xn

=∞∑

n=0

((n+ 1)an+1 + an)xn

となる.ex =

∞∑n=0

xn

n!であるから,(n + 1)an+1 + an = 2n!−1 となる.bn = n!an とすると,

bn+1 + bn = 2である.bn+1− 1 = −(bn− 1)であるから,bn− 1 = b0(−1)nとなる.したがって,

an = 1 + b0(−1)n

n!, f(x) =

∞∑n=0

(1 + b0

(−1)n

n!

)xn = ex + b0e

−x

となる.b0 は任意定数である.

例題 10を定数変化法を用いて計算しなおしてみて検算してみよう.

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34 京都大学 澤野嘉宏

問題 6.3. 次の問に答えよ.

(1) f(x)のテーラー展開の公式を書け.(2) 微分方程式 f ′(x) = 3f(x) をときたい.f(x) の n 回微分は f (n)(x) と書くことにして

f (n)(x)は 3nf(x)に,したがって,f (n)(0)は 3nf(0) になることを示せ.(3) (2)より f (n)(0) = 3nf(0)となるがこれを (1)のテーラー展開の公式に代入して整理せよ.(4) 既知のテーラー展開の公式を用いて微分方程式の解を f(x)であらわせ.

問題 6.4. 微分方程式 f ′(x) = f(x) を初期条件 f(0) = 4の仮定の下解け.また,この解の極限lim

x→−∞f(x), lim

x→∞f(x), を計算せよ.

問題 6.5. 微分方程式 f ′(x) = −8f(x) を f(0) = 9の仮定の下解け.さらに,この解に対しての極限 lim

x→−∞f(x), lim

x→∞f(x), を計算せよ.

問題 6.6. 微分方程式 f ′(x) = −f(x) + 4 を f(0) = 1 の仮定の下解け.また,この解の極限lim

x→−∞f(x), lim

x→∞f(x), を計算せよ.

問題 6.7. 微分方程式 f ′′(x) = 9f(x) を f(0) = 1, f ′(0) = 3の仮定の下解け.また,この解の極限 lim

x→−∞f(x), lim

x→∞f(x), を計算せよ.

問題 6.8. x′′ − t x′ + a x = 0 の x(0) = 1, x′(0) = 0を満たしている級数解を求めよ.

問題 6.9. 指数関数 et にまつわるいくつもの性質を調べたい.eを t回かけたものと考えられるが,tが無理数だと意味がわからなくなる.そこで,etとは微分方程式 y′ = yを初期条件 y(0) = 1を与えたもとでの解として定義する.微分方程式の解の存在定理により,y′ = y, y(0) = 1を満たすすべての実数に対して定まっている関数 y(t)が存在すると仮定して次の問に答えよ.ただし,

y′ = y, y′′ = y, · · · は用いても構わないが, d

dtet = et は用いてはならない.

(1) テーラー展開 f(x + y) =∞∑j=0

f (j)(x)yj

j!を用いて,y(t)をテーラー展開すると, y(t) =

∞∑j=0

tj

j!になることを示せ.

(2) 加法定理 y(s+ t) = y(s)y(t) を示せ.(3) y(1)の値を小数第 2位まで求めよ.

問題 6.10. 次の微分方程式の解をテーラー展開によって求めよ.(1− t2)x′′(t)− 2t x′(t) + 30x(t) = 0

x(0) = 0, x′(0) = 15

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微分方程式演習 35

Part 5. 線形微分方程式

7. 2階線形微分方程式

7.1. 基本事項:2階の定数係数線形微分方程式. ここでは,2階微分方程式

y′′ + a y′ + b y = 0

を解くことを考える.ここで,a, bは実数定数である.

初めに 1階微分方程式 y′ = a y は y = C eax と解けることを復習しておく.

一般の a, bだと扱いにくいので,代数的な処理をしておくと便利である.実数 a, bの対は

(1) : a2 − 4b > 0, (2) : a2 − 4b = 0, (3) : a2 − 4b < 0

を満たす場合に分割される.それぞれのケースが方程式

(7.1) t2 + at+ b = 0

の解の性質を記述していることに注意する.

(1) a2 − 4b > 0のとき,t =−a±

√a2 − 4b

2が方程式 (7.1)の解である.したがって,

α = −a+√a2 − 4b

2, β = −a−

√a2 − 4b

2

とおくことによって,α+ β = −a, αβ = b となる実数の対 (α, β)が取れることになる.

(2) a2−4b = 0のとき,t =−a2が方程式 (7.1)の(重)解である.したがって,a = −2α, b =

α2 とおける.

(3) a2 − 4b < 0のとき,t =−a±

√4b− a2i2

が方程式 (7.1)の解である.

α = −a2, β =

√4b− a22

とおくことで,a = −2α, b = α2 + β2 となる α, β で β > 0となるものが取れる.

それぞれのケースについて具体的に見ていくことにしよう.

(1)  a2− 4b > 0のとき. この場合は,y′′− (α+β)y′+αβy = 0 を解くことになる.z = y′−αyとおくと,

z′ = y′′ − αy′ = β(y′ − αy) = βz

であるから,y′ − αy = z = C1 eβx である.α, β を入れ替えて同様に考えると任意定数が C1 と

は違うことに注意して y′ − βy = C2 eαx が得られる.α = β であるから,連立方程式

y′ − αy = C1 eβx, y′ − βy = C2 e

αx

を解いて,

y =C1

β − αeβx +

C2

α− βeαx および y′ =

C1 β

β − αeβx +

C2 α

α− βeαx

が得られる.(y′ は実際には不要である.)定数をおきなおして y = C1 eαx + C2 e

βx である.

このように,一般解 yを表すときの C1, C2を係数としている関数 eαx, eβx を基本解系という.

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36 京都大学 澤野嘉宏

(2)  a2 − 4b = 0のとき. y′′ − 2αy′ + α2y = 0を解くことになる.

この場合は z = e−αxyとおくと

z′′ = e−αx(y′′ − 2αy′ + α2y) = 0

であるから,z は一次関数である.(z′′ = 0を 2回 xに関して積分せよ.)(任意)定数 C1, C2 を用いて,z = C1 + C2 xと表せる.ゆえに y = eαxz = eαx(C1 + C2 x) となる.

この場合の基本解系は eαx, x eαx である.

(3)  a2 − 4b < 0のとき. y′′ − 2αy′ + (α2 + β2)y = 0を解くことになる.実際に必要になるので,テーラー展開に関して復習しておく.

cosx = 1− 1

2!x2 +

1

4!x4 − 1

6!x6 + · · ·(7.2)

sinx = x− 1

3!x3 +

1

5!x5 − 1

7!x7 + · · ·(7.3)

であった.この場合は z = e−αxyとおくと

z′′ = e−αx(y′′ − 2αy′ + α2y) = −β2z

となる.z′′ = −β2z を k 回 x に関して微分して,z(k+2) = −β2z(k) となる.x = 0 を代入することで,z(k+2)(0) = −β2z(k)(0) が得られる.したがって,z の x = 0 での高次微分係数はk = 0, 1, 2, · · · に対して

(7.4) z(2k+1)(0) = (−β2)kz′(0), z(2k)(0) = (−β2)kz(0)

である.

このことを踏まえて,zの x = 0でのテーラー展開

z(x) =∞∑j=0

xj

j!z(j)(0) =

∞∑j=0

x2j

(2j)!z(2j)(0) +

∞∑j=0

x2j+1

(2j + 1)!z(2j+1)(0)

に (7.4)を代入すると,(7.2)と (7.3)も用いて,

z(x) =

∞∑j=0

(−1)j(βx)2j

(2j)!z(0) +

1

β

∞∑j=0

(−1)j(βx)2j+1

(2j + 1)!z′(0) = z(0) cosβx+

z′(0)

βsinβx

が得られる.したがって,z(0) = C1, z′(0) = βC2 とおいて z(x) = C1 cosβx + C2 sinβx. これ

より,

y(x) = eαxz(x) = eαx(C1 cosβx+ C2 sinβx).

この場合の基本解系は eαx cosβx, eαx sinβx である.

以上をまとめて,実定数係数 2回微分方程式 y′′ + a y′ + b y = 0の解き方のフローチャートを作ることができる.

[第一段階] t2 + at+ b = 0を解く.

[第二段階] 方程式の解によって場合わけをする.(1) t = α, β のときは,y = C1 e

αx + C2 eβx である.

(2) t = α(2重)のときは,y = C1 eαx + C2 x e

αx である.(3) t = α± βiのときは,y = C1 e

αx cosβx+ C2 eαx sinβx である.

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微分方程式演習 37

7.2. 定数係数常微分方程式の具体的な解き方. この節では,先ほどやったとき方を数字を入れて実践し,また数列の漸化式問題と比較することを目的とする.

例題 11. 次の問いに答えよ.

(1) aを定数として y′ = ayを解け.(基本となるので,答えを心得ておくこと!)(2) y′′ − 5y′ +6y = 0を解きたい.z = y′− 3y, w = y′− 2y として,z, wの関係式を求めよ.(3) z, w, yを求めよ.C1, C2 を用いて任意定数を表すこと.

例題 11の解答.

(1)dy

dx= a y より,

∫dy

y=

∫a dx.∴  log |y| = a x+ C.logを戻して |y| = ea x+C とな

る.絶対値をはずして y = ±eC ea x.±eC を C と置き換えて,y = C ea x.このままだと C = 0は除外されているが,C = 0つまり y = 0も微分方程式の解なので,y = C ea x

が答え.(C は任意定数)(2) y′′ = 5y′ − 6yを用いると

z′ = y′′ − 3y′ = 5y′ − 6y − 3y′ = 2y′ − 6y = 2z

w′ = y′′ − 2y′ = 5y′ − 6y − 2y′ = 3y′ − 6y = 3w

(3) 1.2.を用いると z = C1 e2x w = C2 e

3x となる.(別の方程式を解いているので定数を違える必要がある.)よって (z =)y′ − 3y = C1 e

2x, (w =)y′ − 2y = C2 e3x 引き算して

−y = C1 e2x − C2 e

3x となる.これを整理して y = −C1 e2x + C2 e

3x が得られる.さらに,−C1 を C1 と改めて y = C1 e

2x + C2 e3x が y′′ − 5y′ + 6y = 0の解である.

問題 7.1. 微分方程式 y′′ − 7y′ + 12y = 0を解け.【ヒント】z = y′ − 3y, w = y′ − 4y とおいて,z′ = 4z, w′ = 3wを示す.

問題 7.2. この問題では数列の理論と漸化式の理論を比較することを考える.

(1) 2階線形微分方程式 y(0) = α, y′(0) = β,y′′+Ay′+B y = 0を考える.t2+At+B = 0を特性方程式,t2 + At + B = 0の解を特性根という.複素数の範囲で考えることにして次の問いに答えよ.注意:初期値を代入して正確な解を求めるのが問題ではなく,α, βの値は定数として与えられているという認識で考えること.(a) 特性方程式が重解 t = t0 を持つときに解はどのような形をしているか?一般論を構築せよ.ヒント:t0 = 0のときにどのような解の形をしているか?ヒント:z = et0 xy と置き換えて z に関する情報を得よ.その結果,定数をうまくまとめなおせば y = et0 x(C0 + C1 x) となることが分かる.これが一般論ということになる.

(b) 特性方程式が異なる解 t = t0, t1を持つときに解はどのような形をしているか?一般論を構築せよ.【ヒント】z = y′ − t0 y, w = y′ − t1 yとおけ.その結果,定数をうまくまとめなおせば y = C0 e

t0 x +C1 et1 x となることが分かる.これが一般論と

いうことになる.(2) 数列 an∞n=1 が漸化式 an+2 + Aan+1 + B an = 0, a1 = α, a2 = β を満たしているとする.t2 +At+B = 0を特性方程式,t2 +At+B = 0の解を特性根という.複素数の範囲で考えることにして次の問いに答えよ.(a) 特性方程式が重解 t = t0 を持つときに解はどのような形をしているか?一般論を構築せよ.ヒント:t0 = 0のときにどのような解の形をしているか?ヒント:bn = t0

nan と置き換えて bn に関する情報を得よ.(b) 特性方程式が異なる解 t = t0, t1を持つときに解はどのような形をしているか?一般論を構築せよ.【ヒント】bn = an+1 − t0 an, cn = an+1 − t1 an とおけ.

(c) A = B = 4, α = 1, β = 2として an を求めよ.

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38 京都大学 澤野嘉宏

7.3. 2階線形定数微分方程式.

例題 12. 次の微分方程式を解け.

(1) y′ − 73y = 0(2) y′′ − 50y′ + 625y = 0(3) y′′ − 50y′ + 624y = 0(4) y′′ − 50y′ + 626y = 0(5) y′′ − 56y′ + 785y = 0(6) y′′ − 56y′ + 784y = 0(7) y′′ − 56y′ + 783y = 0

例題 12の解答. はじめに,固有方程式を求めるべく,y′′を t2で,y′を tで,yを 1で置き換える.

(1) y′ − 73y = 0の固有方程式は t− 73 = 0.固有値は,t = 73である.よって,y = C e73x

が答え.(2) y′′ − 50y′ + 625y = 0の固有方程式は t2 − 50t+ 625 = 0.固有値は,t = 25(2重解).よって,y = C1 e

25x + C2 x e25x が答え.

(3) y′′− 50y′ +624y = 0の固有方程式は t2− 50t+624 = 0.固有値は,t = 24, 26.よって,y = C1 e

24x + C2 e26x が答え.

(4) y′′− 50y′ +626y = 0の固有方程式は t2− 50t+626 = 0.固有値は,t = 25± i.よって,y = C1 e

25x sinx+ C2 e25x cosxが答え.

(5) y′′− 56y′ +785y = 0の固有方程式は t2− 56t+785 = 0.固有値は,t = 28± i.よって,y = C1 e

28x sinx+ C2 e28x cosxが答え.

(6) y′′ − 56y′ + 784y = 0の固有方程式は t2 − 56t+ 784 = 0.固有値は,t = 28(2重解).よって,y = C1 e

28x + C2 x e28x が答え.

(7) y′′− 56y′ +783y = 0の固有方程式は t2− 56t+783 = 0.固有値は,t = 27, 29.よって,y = C1 e

27x + C2 e29x が答え.

問題 7.3. 次の方程式を解け.

(1) y′ − 14y = 0(2) y′′ − 24y′ + 45y = 0(3) y′′ + 8y′ + 16y = 0(4) y′′ + 11y′ + 5y = 0(5) y′′ − y′ + y = 0

問題 7.4. 次の微分方程式を解け.

(1) y′′ − 90y′ + 2018y = 0(2) y′′ − 90y′ + 2025y = 0(3) y′′ − 90y′ + 2032y = 0

また,(2)を初期条件 y(0) = 1, y′(0) = 46のもと解け.

問題 7.5. 次の微分方程式を解け.

(1) y′′ − 36y′ + 340y = 0(2) y′′ + 22y′ + 317y = 0(3) y′′ − 90y′ + 2146y = 0(4) y′′ + 28y′ + 200y = 0(5) y′′ − 48y′ + 600y = 0(6) y′′ + 44y′ + 500y = 0(7) y′′ − 106y′ + 3833y = 0

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微分方程式演習 39

(8) y′′ + 56y′ + 820y = 0

(9) y′′ − 2√6y′ + 10y = 0

(10) y′′ + 76y′ + 1640y = 0

問題 7.6. 次の微分方程式を解け.

(1) y′′ − 37y′ + 340y = 0(2) y′′ − 117y′ + 3422y = 0(3) y′′ − 99y′ + 1944y = 0(4) y′′ + 148y′ = 0(5) y′′ − 19y′ − 290y = 0(6) y′′ + 37y′ − 414y = 0(7) y′′ − 172y′ + 7360y = 0(8) y′′ − 50y′ + 561y = 0

(9) y′′ − 3√5y′ − 20y = 0

(10) y′′ − 107y′ + 2860y = 0

問題 7.7. 次の微分方程式を解け.

(1) y′′ − 36y′ + 324y = 0(2) y′′ + 52y′ + 676y = 0(3) y′′ + 70y′ + 1225y = 0(4) y′′ − 198y′ + 9801y = 0(5) y′′ + 220y′ + 12100y = 0

(6) y′′ − 4√7y′ + 28y = 0

(7) y′′ + 8√3y′ + 48y = 0

(8) y′′ − 162y′ + 6561y = 0(9) y′′ + 58y′ + 841y = 0(10) y′′ − 2002y′ + 1002001y = 0

問題 7.8. 次の微分方程式を解け.

(1) y′′ − 39y′ + 360y = 0(2) y′′ + 59y′ + 864y = 0(3) y′′ + 182y′ + 8281y = 0

(4) y′′ −√5y′ − 210y = 0

(5) y′′ − 12y′ + 36y = 0(6) y′′ − 94y′ + 2234y = 0(7) y′′ − 3y′ − 550y = 0(8) y′′ − 44y′ + 488y = 0(9) y′′ − 38y′ + 361y′ = 0(10) y′′ − 10y′ − 20y = 0

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40 京都大学 澤野嘉宏

7.4. 積分方程式. ここでは,学習した線型方程式を応用して積分方程式を解いてみる.

例題 13.

∫ x

0

t y(t) dt = y(x) + 2を満たしている連続関数 y(x)を求めよ.

例題 13の解答. y(x) =

∫ x

0

t y(t) dt − 2 で右辺は微分可能だから,y も微分可能であることに

注意する.x = 0 を代入して,∫ 0

0

t y(t) dt = y(0) + 2 である.一般に∫ a

a

g(t) dt = 0 だか

ら,y(0) = −2 である.両辺を微分すると,x y(x) = y′(x) である.変数分離形のこの方程

式を解くと,y(x) = C exp

(1

2x2). ここで,途中で得られた初期条件 y(0) = −2 を代入して

y(x) = −2 exp(1

2x2).

問題 7.9. 条件∫ x

0

t y(t) dt = y(x) + 1を満たしている連続関数 y(x)を求めよ.

問題 7.10. 次の条件∫ t

0

s h(t− s) ds = h(t)+4t+6 を満たしている連続関数 h = h(t)を求めよ.

問題 7.11. 次の条件∫ t

0

s h(t − s) ds = −h(t) + 4t + 6 を満たしている連続関数 h = h(t)を求

めよ.

問題 7.12. f(x)を C1-級関数とする.このとき,関数方程式 f(x) +

∫ x

0

f(t) dt = x を解け.

問題 7.13. 無限回微分可能な関数 y(x)が次の方程式∫ x

0

t y(x − t) dt = y(x) + 4 を満たしてい

る.このとき,次の問に答えよ.

(1) y(0)を求めよ.(2) y′(0)を求めよ.(3) y(x)を求めよ.

問題 7.14. 無限回微分可能な関数 y(x)が次の方程式∫ x

0

t y(x− t) dt = −y(x) + 4 を満たしてい

る.このとき,次の問に答えよ.

(1) y(0)を求めよ.(2) y′(0)を求めよ.(3) y(x)を求めよ.

問題 7.15. 無限回微分可能な関数 y(x)が次の方程式∫ x

0

t y(x− t) dt = −2∫ x

0

y(t) dt− y(x) + 4

を満たしている.このとき,次の問に答えよ.

(1) y(0)を求めよ.(2) y′(0)を求めよ.(3) y(x)を求めよ.

問題 7.16. 無限回微分可能な関数 y(x)が次の方程式∫ x

0

t y(x− t) dt = −2∫ x

0

y(t) dt− y(x) + 4

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微分方程式演習 41

を満たしている.このとき,次の問に答えよ.

(1) y(0)を求めよ.(2) y′(0)を求めよ.(3) y(x)を求めよ.

問題 7.17. 次の方程式を解け.ただし,f は何回でも微分可能であるとする.

(1)

∫ x

0

t f(x− t) dt = −∫ x

0

f(t) dt− f(x) + 4

(2)

∫ x

0

t f(x− t) dt = −2∫ x

0

f(t) dt− f(x) + 4

(3)

∫ x

0

t f(x− t) dt = f(x) + 4

問題 7.18. 無限回微分可能な関数 y(x)が次の方程式∫ x

0

t y(x− t) dt = 2

∫ x

0

y(t) dt− y(x) + 4

を満たしている.このとき,次の問に答えよ.

(1) y(0)を求めよ.(2) y′(0)を求めよ.(3) y(x)を求めよ.

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42 京都大学 澤野嘉宏

8. 複素数

8.1. 複素数値関数. 複素数とは z = a + b i, a, b ∈ R と表される数のことをいい,i2 = −1 という規則で計算することが出来るものである.a, bのことをそれぞれ実部 (real part),虚部 (imaginarypart)といい

a = Re(z), b = Im(z),

と表す.微分方程式 (10.1)の係数は最終的に実数の場合を扱うが,y′ + i y = 0など複素数での係数も同様に扱えることに注意する.

定義 1. 複素数値関数とは複素数に値を取る関数のことである.f(x)を複素数値関数とするとき

f(x) = Re f(x) + i Im f(x)

と実部と虚部に分けて表記する.微分や積分は実部,虚部それぞれで別々に行って後で足す.

例 3.

(1) tは実数変数とする.f(t) = cos t+ i sin t, g(t) = t2 + i t などは複素数値関数である.一方で,実数に値をとるような関数 f(t) = et, f(t) = cos t+sin t などは実数値関数である.

(2) tは実数変数とする.微分は f ′(t) = (Ref)′(t) + i (Imf)′(t) で定義する.複素数の極限

f ′(x) = limh→0

f(x+ h)− f(x)h

として定義しても構わない.

(3) x は実数変数とする.f(x) = 3x + i cosx に対して Re f(x) = 3x, Im f(x) = cosx でf ′(x) = 3− i sinxである.

(4) tを実数変数として f(t) = t2 + i t のとき,f ′(t) = 2t+ i となる.

(5) xは実数変数とする.f(x) = x+ ix2 とするとき,∫ 1

0

f(x) dx =1

2+i

3である.

指数関数,三角関数のテーラー展開を考えて,次のように定義する.

定義 2. 複素数の指数関数を x, y ∈ Rに対して,ex+iy := ex(cos y + i sin y) で定義する.

【注意】定義は『:=』もしくは『≡』で表す.=には定義を表すことがあるが,恒等式,方程式,単なる等式などと区別するために :=,≡を用いることがある.

例 4. eπi = cosπ + i sinπ = −1である.

定理 6. z, wを複素数とするとき ez+w ≡ ez ew が成り立つ.

証明. z = Re(z) + i Im(z), w = Re(w) + i Im(w) と実部と虚部を用いて両辺を計算すると,

左辺 = ez+w = eRe(z+w)+i Im(z+w) = eRe(z+w) (cos Im(z + w) + i sin Im(z + w)) .

一方で,三角関数の加法定理より,

右辺 = eRe(z)(cos Im(z) + i sin Im(z))eRe(w)(cos Im(w) + i sin Im(w))

= eRe(z)+Re(w)(cos Im(z) + i sin Im(z))(cos Im(w) + i sin Im(w))

= eRe(z+w)(cos Im(z) cos Im(w)− sin Im(z) sin Im(w))

+ eRe(z+w)(i sin Im(z) cos Im(w) + i cos Im(z) sin Im(w))

= eRe(z+w) (cos Im(z + w) + i sin Im(z + w)) .

よって,ez+w = ez ew が成り立つ.

複素数値関数の微分に関する基本事項をまとめておく.結論から言うと実数のときと同じであるが,大事な事実だけを列挙しておく.

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微分方程式演習 43

定理 7. xを実数変数とする.

(1) f(x), g(x)を複素数値関数で微分可能とする.このとき,

(f(x)g(x))′ = f ′(x)g(x) + f(x)g′(x)

が成り立つ.(2) f(x), g(x)を複素数値関数で微分可能とする.このとき,

(f(x) + g(x))′ = f ′(x) + g′(x)

が成り立つ.

(3) αを複素数とするとき,d

dxeαx = αeαx が成り立つ.

証明.

(1) 掛け算を実行するとわかるように

Re [f(x)g(x)] = Re f(x)Re g(x)− Im f(x)Im g(x)

Im [f(x)g(x)] = Re f(x)Im g(x) + Im f(x)Re g(x)

であるから,

d (Re [f(x)g(x)])

dx= Re f ′(x)Re g(x) + Re f(x)Re g′(x)− Im f ′(x)Im g(x)− Im f(x)Im g′(x)

d (Im [f(x)g(x)])

dx= Re f ′(x)Im g(x) + Re f(x)Im g′(x) + Im f ′(x)Re g(x) + Im f(x)Re g′(x)

したがって,

d(f(x)g(x))

dx= Re f ′(x)Re g(x) + Re f(x)Re g′(x)− Im f ′(x)Im g(x)− Im f(x)Im g′(x)

+ i Re f ′(x)Im g(x) + Re f(x)Im g′(x) + Im f ′(x)Re g(x) + Im f(x)Re g′(x)= Re f ′(x) · g(x) + i Im f ′(x) · g(x) + i Im f(x) · g′(x) + Re f(x) · g′(x)= f ′(x)g(x) + f(x)g′(x).

となる.(2) (1)の要領をまねして計算すればよい.(3) α = a+ biと表す.(つまり,a = Reα, b = Imαとおく.)

eαx = e(a+bi)x = eax(cos bx+ i sin bx)

であるから,定義に従って実部と虚部に分けて計算すると

d

dxeαx = eax(a cos bx− b sin bx) + ieax(a sin bx+ b cos bx)

である.α eαx = (a+ bi)eax(cos bx+ i sin bx) を具体的に展開すると

α eαx = eax(a cos bx− b sin bx) + ieax(a sin bx+ b cos bx)

になるから,d

dxeαx = αeαx が成り立つ.

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44 京都大学 澤野嘉宏

8.2. 複素数値関数の計算.

例題 14. 複素数の範囲で e3π4 i と

∫e(1−i)x dx を計算せよ.

例題 14の解答. eiθ = cos θ + i sin θであるから

e3π4 i = cos

(3π

4

)+ i sin

(3π

4

)= − 1√

2+

i√2,

∫e(1−i)x dx =

1

1− ie(1−i)x + C.

問題 8.1. 複素数を用いた計算に関する次の問いに答えよ.

(1) e32πi を計算せよ.

(2)

∫e(1+i)x dxを計算せよ.

(3)

∫ex sinx dxを計算せよ.(ヒント,上の計算の虚部を考える.)

問題 8.2. 複素数を用いた計算に関する次の問いに答えよ.

(1) e34πi を計算せよ.

(2)

∫e(1−2i)x dxを計算せよ.

(3)

∫ex sin 2x dxを計算せよ.(ヒント,上の計算の虚部を考える.)

問題 8.3. 複素数を用いた計算に関する次の問いに答えよ.

(1) e54πi を計算せよ.

(2)

∫e(1−4i)x dxを計算せよ.

(3)

∫ex sin 4x dxを計算せよ.(ヒント,上の計算の虚部を考える.)

問題 8.4. 微分方程式 y′ = e6x cos 7x および y′ = e2x cos 3x を解け.必要ならば,複素数もしくは複素数値関数の実部を取るという記号 Re を用いてかまわない.例:

Re (3 + 5i) = 3, Re ((x+ iy)2) = x2 − y2

ただし,答には Re を用いず,実数値関数の形でこたえること.

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微分方程式演習 45

9. 本書における多項式に関する重要事項

9.1. 基本事項:多項式の性質. ここでは,多項式に関して必要な基礎事項をまとめる.初めに,割り算とは何かから復習する.多項式 A(X)を B(X)で割り算するとは,B(X)よりも次数が低い剰余と呼ばれる多項式R(X) と商と呼ばれる多項式Q(X)を用いてA(X) = B(X)Q(X)+R(X)と表されることである.この Q(X)と R(X)は整数の割り算と同じように筆算で求められるが,その方法には深入りしない.実際に,ほとんど本書では使わないからである.

次に,剰余の定理を復習しよう.

定理 8. αを定数とする.P (X)を (X − α)で割り算したときの剰余 (あまり)は P (α)で与えられる.

証明. あまりは 0次でないといけないから,定数多項式 Rを用いて P (X) = (X − α)Q(X) + Rと表される.この恒等式でX = αとすると,P (α) = Rが得られる.したがって,P (α)が余りである.

1次式の割り算を特に考えたいのであるが,係数がRだと,X2 + 1のように因数分解が出来ないものが出てくる.Cにするとこのような問題が解消される.

定理 9 (代数学の基本定理). P (X)が複素数係数の多項式のとき,

P (X) = β(X − α1)(X − α2) · · · (X − αn), β = 0

という因数分解が出来る.ここで,nは P (X)の次数.

もしくは,同一の因子をまとめてしまって次のようにして表わしてもよい.

定理 10 (代数学の基本定理). 複素係数多項式 P (X)は複素数 αと相異なる複素数 β1, · · · , βk を用いて P (X) = α(X − β1)n1 · · · (X − βk)nk と因数分解する.

例 5 (複素数係数の多項式の因数分解の例).

(1) X3 − 3iX2 − 3X + i = (X − i)3 である.(2) X2 +1は実数係数の範囲ではこれ以上因数分解できないが,複素数係数では,X2 +1 =

(X − i)(X + i)と因数分解される.

これは有名な定理なので認めてしまう.20通りの証明があるらしい.澤野は3種類くらいしか見たことがない.

定理 11. 定数ではない多項式 P (X)と Q(X)が複素数の範囲で共通根を持たないとする.このとき,ある多項式 R(X)と S(X)が存在して

(9.1) P (X)R(X) +Q(X)S(X) = 1

が成り立つ.

証明. (9.1)のようにある多項式 R(X)と S(X)が存在して T (X) = P (X)R(X) +Q(X)S(X)と表される多項式全体の集まりをM とおく.M の中で 0でない多項式のうち次数が最低のものをV (X)とおく.M の中の多項式だから,当然ある多項式 R(X)と S(X)が存在して

(9.2) P (X)R(X) +Q(X)S(X) = V (X)

が成り立つ.

主張 1. P (X)は V (X)で割り切れる.つまり,P (X)を V (X)で割ると余りが出ない.

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46 京都大学 澤野嘉宏

主張 1の証明. (背理法で)もしそうではないと仮定しよう.P (X)を V (X)で割り算してP (X) =V (X)W (X)+U(X)と割り算するとU(X)の次数は V (X)より低くなってしまう.ここで,U(X)は余りで,W (X)は商である.すると,

(9.3) U(X) = −V (X)W (X) + P (X) = P (X)(1−R(X)W (X)) + (−S(X)W (X))Q(X)

となる.R∗(X) = 1 − R(X)W (X), S∗(X) = −S(X)W (X)とおく.先ほどの計算結果 (9.3)から U(X) = R∗(X)P (X) + S∗(X)Q(X) ∈M であるから V (X)がM の中で次数が最低であることに反する.

主張 2. Q(X)も V (X)で割り切れる.

主張 2の証明. P (X)のときと同じである.

したがって,主張 1と 2より,V (X)の根があると P (X), Q(X)の共通根となる.仮定によって,これはありえないから,V (X) = c = 0 となる.P (X)[c−1R(X)] +Q(X)[c−1S(X)] = 1 であるから,R(X), S(X)をおきなおせば定理にあるような多項式が取れる.

【注意】主張とは証明中などに現れる証明の方針を示したものである.主張を証明しないと定理の証明が完成しない.

定義 3. 複素数係数の多項式 P (X)とQ(X)の最大公約式とは P (X)とQ(X)を割ることができる複素数係数の多項式の中で最高次数のものをさす.

先ほどの定理は汎用性があるので,共通因数をもつ場合に書き改めておこう.

定理 12. P (X)と Q(X)が 0でない複素係数多項式とする.S(X)を最大公約式とすると,

S(X) = P (X)T (X) +Q(X)V (X)

と多項式 T (X), V (X)を用いて表される.

証明. P (X), Q(X)を S(X)で割った多項式に先ほどの定理を適用すればよい.

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微分方程式演習 47

9.2. 多項式の割り算.

問題 9.1. 次の方程式を解け.虚数解が出てくる場合は,それをもすべて書くこと.重解の場合は重複度を込めて書くこと.(x = 1, 3(5重), 5など)

(1) t2 − t− 2 = 0(2) t2 − t− 1 = 0(3) t2 + t+ 1 = 0(4) t2 + 4t+ 5 = 0(5) t3 − 1 = 0(6) t3 − 3t2 + 3t− 1 = 0(7) t4 − 4t3 + 6t2 − 4t+ 1 = 0(8) t6 − 729 = 0(9) t5− 1 = 0  ただし,cos 72, sin 72,cos 144, sin 144 とこれらの値に絶対値が等しい数は,具体的に計算しなくて構わない.

(10) t4 − 16 = 0(11) t3 − 6t2 + 11t− 6 = 0(12) t3 − t2 − t+ 1 = 0(13) t6 = 64(14) t12 − 3t8 + 3t4 − 1 = 0(15) t12 − 4t9 + 6t6 − 4t3 + 1 = 0

【因数分解の公式】

(1) (x+ y)3 = x3 + 3x2 y + 3x y2 + y3

(2) (x− y)3 = x3 − 3x2 y + 3x y2 − y3(3) (x− y)(x2 + x y + y2) = x3 − y3(4) (x+ y)(x2 − x y + y2) = x3 + y3

(5) (x+ y)4 = x4 + 4x3 y + 6x2 y2 + 4x y3 + y4

(6) (x− y)4 = x4 − 4x3 y + 6x2 y2 − 4x y3 + y4

【k乗根に関する公式】a > 0とするとき,

tk = ak ⇐⇒ t = a

(cos

2πj

k+ i sin

2πj

k

), j = 0, 1, 2, . . . , k − 1.

問題 9.2. 次の方程式を解け.

(1) t3 = 64(2) t4 = 81(3) t8 − 2t4 + 1 = 0

例題 15. 次の二つの多項式に関して左側にある多項式を右側の多項式で割ったときの余りを求めよ.

(1) xn, (x− 4)(2) xn, (x− 3)(x− 4)(3) xn, (x+ 4)2

例題 15の解答.

(1) 商となる多項式 P (x)と余り Rの関係は xn = (x− 4)P (x) +R である.x = 4を代入して余り R = 4n

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48 京都大学 澤野嘉宏

(2) 商となる多項式 P (x)と余りR1, R2の関係は xn = (x− 3)(x− 4)P (x) +R1x+R2 である.x = 4を代入して 4R1 +R2 = 4n. x = 3を代入して 3R1 +R2 = 3n. この連立方程式を解いて R1 = 4n − 3n かつ R2 = 4 · 3n − 3 · 4n.よって,

R1x+R2 = (4n − 3n)x+ 4 · 3n − 3 · 4n

が余り.(3) 商となる多項式 P (x)と余り R1, R2 の関係は

(9.4) xn = (x+ 4)2P (x) +R1x+R2

である.x = −4を代入して −4R1 +R2 = (−4)n. (9.4)を微分してnxn−1 = 2(x+ 4)P (x) + (x+ 4)2P ′(x) +R1.

この微分して得られた式に x = −4を代入して R1 = n (−4)n−1. この連立方程式を解いて R1 = n (−4)n−1 かつ R2 = −n (−4)n + (−4)n.よって,

R1x+R2 = n (−4)n−1x− n (−4)n + (−4)n

が余り.

問題 9.3. 次の二つの多項式に関して左側にある多項式を右側の多項式で割ったときの余りを求めよ.

(1) x3 + 3x, (x− 2)(2) xn, (x+ 3)(3) xn, (x+ 6)(x− 2)(4) xn, (x− 5)2

(5) xn, (x− 3)2

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微分方程式演習 49

9.3. 既約多項式.

定義 4. x変数の多項式全体をR[x]で表す.(定数係数以外の因子で因数分解されていないとき,)x変数の多項式 P (x)が既約であるとは,その多項式がそれ以上実数係数で因数分解されないものとする.

問題 9.4. 次の多項式は(実数の範囲で,有理数の範囲で)既約であるか?該当するほうに丸をつけよ.

(1) x2 − 4x+ 1(a) 実数の範囲で既約(である.でない.)(b) 有理数の範囲で既約(である.でない.)

(2) x− 7(a) 実数の範囲で既約(である.でない.)(b) 有理数の範囲で既約(である.でない.)

(3) x3 − 7x2 + 2(a) 実数の範囲で既約(である.でない.)(b) 有理数の範囲で既約(である.でない.)

(4) x3 − 23(a) 実数の範囲で既約(である.でない.)(b) 有理数の範囲で既約(である.でない.)

(5) x2 − 12x+ 50(a) 実数の範囲で既約(である.でない.)(b) 有理数の範囲で既約(である.でない.)

問題 9.5. 例に倣って,次の多項式を複素数Cの範囲で因数分解せよ.

例:x2 + x+ 1 =

(x+

1 +√3i

2

)(x+

1−√3i

2

).

(1) x2 − 3x+ 2(2) x3 − 1(3) x4 − 1

問題 9.6. 次の問に答えよ.

(1) (a x+ b)(x+ 1) + c (x2 + 1) = 1 を満たす実数 a, b, cを求めよ.(2) P (x)(x− 2) +Q(x)(x3 + 1) = 1 を満たす多項式 P (x), Q(x)を一つ求めよ.(3) x3 − 1と x4 + x2 + 1の最大公約式を求めよ.

【ヒント】(2)では,割り算 x3 + 1 = P (x)(x− 2) +R を実行してみよ.

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50 京都大学 澤野嘉宏

10. 高階の定数係数線形微分方程式

10.1. 基本事項:高階の定数係数線形微分方程式. 今度は一般の定数係数線形微分方程式

(10.1) y(n) +

n∑k=1

an−k+1y(k) = 0

を解くことを考える.係数は複素数であっても構わない.

例 6. たとえば,次のような方程式を解こうとしている.

(1) y′′′′ + 4y′′ + 5y′ − 10y = 0(2) y(n) + 2y(n−1) + 3y(n−2) + · · ·+ (n+ 1)y = 0

これらの方程式の解き方を考察するのがこの節の目的である.2階と同じように対応する代数方程式へ帰着される.

定理 13. yを実数変数 xの複素数値関数とするとき,y(n) = 0ならば,yは xの n− 1次式であ

る.逆も成り立つ.つまり,y(n) = 0 ⇐⇒ y =n∑

j=1

Cj xj−1 である.

証明. 実数値関数のときと同じである.(もしくは実部と虚部に分けて,直接証明してもよい.)

微分を分解して考えたいので,多項式に微分演算記号を代入するという操作を定義しておくと便利である.多項式とは X2 + 5X のように項が 2つ以上あるものはもちろん,1, X,X2 などの単項式も多項式ということにする.

定義 5. 多項式 P (X) = a0Xn + a1X

n−1 + · · ·+ an =

n∑k=0

akXn−k に対して

P

(d

dx

)y = a0

dny

dxn+ a1

dn−1y

dxn−1+ · · ·+ an y

と定める.

例 7. P (X) = Xn のとき,P(d

dt

)y =

dny

dtn. 特に,単項式 y = tm のときは

P

(d

dt

)y =

dny

dtn=

dn

dtntm = m (m− 1) · · · (m− n+ 1)tm−n

となる.

例 8. P (X) = (X − α)n とする.この場合はP (X) = Xn − nαXn−1 + · · ·+ (−α)knCkX

n−k + · · ·+ (−α)n

だから,微分方程式 P

(d

dt

)y = 0 を解くことは,

dny

dtn− nαd

n−1y

dtn−1+ · · ·+ (−α)knCk

dn−ky

dtn−k+ · · ·+ (−α)ny = 0

を解くことに相当する.

定理 14. 多項式 P (X), Q(X)と xの関数 yに関して

(P +Q)

(d

dx

)y = P

(d

dx

)y +Q

(d

dx

)y, PQ

(d

dx

)y = P

(d

dx

)Q

(d

dx

)y

が成り立つ.ただし,(P +Q)(X) = P (X) +Q(X), PQ(X) = P (X)Q(X)である.

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微分方程式演習 51

(特別な場合の)証明. 多項式 P,Qに関する線形性より明らかである.長く書くと面倒なので,P (X) = X4, Q(X) = 2X3 のときに,確認する.このときの証明を見れば一般のときはどのようになるかは明らかであろう.

(P +Q)

(d

dx

)y = y(4) + 2y(3), P

(d

dx

)y = y(4), Q

(d

dx

)y = 2y(3)

であるから,最初の式が成り立つ.

PQ

(d

dx

)y = 2y(7), P

(d

dx

)Q

(d

dx

)y = (2y(3))′′′′ = 2y(7)

より2番目の式も成り立つ.

(一般の場合の)証明. はじめの式は,具体的に

P (X) = a0Xn + a1X

n−1 + · · ·+ an, Q(X) = b0Xn + b1X

n−1 + · · ·+ bn

と表してみればよい.ただし,次数が P,Qで異なるかもしれないが,0を適当に補って同じ形をしていると考えるとやりやすい.

R(X) = (a0 + b0)Xn + (a1 + b1)X

n−1 + · · ·+ (an + bn)

だから

R

(d

dt

)y = (a0 + b0)

dny

dt+ (a1 + b1)

dn−1y

dtn−1+ · · ·+ (an + bn)y

P

(d

dt

)= a0

dny

dtn+ a1

dn−1y

dtn−1+ · · ·+ any

Q

(d

dt

)= b0

dny

dtn+ b1

dn−1y

dtn−1+ · · ·+ bny

したがって,確かに微分作用素としての等式 R

(d

dt

)= P

(d

dt

)+Q

(d

dt

)が成り立っている.

第二式を証明するには,線形性を用いて P (X) = Xn, Q(X) = Xm のときを特に考えればよい.定理 15の証明を参考にせよ.

定理 15. P (X)を多項式,α ∈ Cとするとき,

(10.2) P

(d

dx

)eαxy = eαxP

(α+

d

dx

)y

が成り立つ.ここで,P(α+

d

dx

)とは Pα(X) = P (X + α)で定義される新しい多項式 Pα(X)

に対して Pα

(d

dx

)を考えたものである.

証明. すべての関数 yに対して (10.2)が成り立つような多項式全体のなす集合をM とする.つまり,

M =

P (X) : P (X)はすべての関数 yに対して P

(d

dx

)eαxy = eαxP

(α+

d

dx

)yを満たす

とするとき,

(1) X ∈M つまり, d

dxeαxy = eαx

(α+

d

dx

)y

(2) β を定数とするとき,β ∈M(3) P (X), Q(X) ∈M のとき,(P +Q)(X) = P (X) +Q(X) ∈M(4) P (X), Q(X) ∈M のとき,(PQ)(X) = P (X)Q(X) ∈M

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52 京都大学 澤野嘉宏

が成り立つ.それぞれの根拠を記す.

(1) 積の微分より明らかである.(2) 両辺は βeαxyであるから明らかである.(3) 定義に従って計算していく.

(P +Q)

(d

dx

)eαxy = P

(d

dx

)eαxy +Q

(d

dx

)eαxy

= eαxP

(α+

d

dx

)y + eαxQ

(α+

d

dx

)y

= eαx(P +Q)

(α+

d

dx

)y

(4) 定理 14を用いて定義に従って計算していく.

(PQ)

(d

dx

)eαxy = P

(d

dx

)[Q

(d

dx

)eαxy

]= P

(d

dx

)[eαxQ

(α+

d

dx

)y

]= eαxP

(α+

d

dx

)Q

(α+

d

dx

)y

= eαx(PQ)

(α+

d

dx

)y

最後の等号ですべての関数に対して (10.2)が成り立つことを用いている.

(1)~(4)があればどの多項式もM に属することがわかるので,(10.2)が成り立つと証明できた.

定理 16. P (X) = (X − α)n とするとき,P(d

dx

)y = 0 が成り立つような関数 yは

y = eαx × (xの n− 1次式)

に限る.つまり,任意定数を用いて

y = eαx

n∑j=1

Cj xj−1

となる関数に限る.

n = 2のときに,この定理を書き下すのも一興であろう.

証明. Q(X) = Xn とすると,

dn

dxn[e−αxy] = Q

(d

dx

)[e−αxy] = e−αxP

(d

dx

)y = 0.

ここで,一つ目の等号はQ

(d

dx

)の定義より,二つ目の等号は定理 15より得られ,三つ目の等

号はこの定理の仮定である.ゆえに,定理 13より e−αxy = xの n− 1次式 であるから移項して証明が完成した.

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微分方程式演習 53

今までの記号を使ってやりたいことを整理すると一般には P

(d

dx

)y = 0 を解きたいことに

なるが,P (X) = (X − α)n のときを除いてまだわからない.一般の多項式に対しての線形微分方程式を考えたい.

命題 1. P (X), Q(X)を互いに素な多項式とする.U(X) = P (X)Q(X)とおく.このとき,

U

(d

dx

)y = 0

の解 yは

P

(d

dx

)y = 0, Q

(d

dx

)y = 0

の解の和に一意的に分解する.

分解可能性の証明. はじめに

U

(d

dx

)y = 0

の解 yが与えられたとする.P (X)と Q(X)が互いに素であるから,定理 11より,

P (X)T (X) +Q(X)V (X) = 1

と表せるので,

y1 = Q

(d

dx

)V

(d

dx

)y, y2 = P

(d

dx

)T

(d

dx

)y

おく.すると,y1 に P

(d

dx

)を作用させて,

P

(d

dx

)y1 = P

(d

dx

)Q

(d

dx

)V

(d

dx

)y = U

(d

dx

)V

(d

dx

)y = V

(d

dx

)U

(d

dx

)y = 0

である.したがって,y1 は P

(d

dx

)y = 0 の解である.また,同様にして y2 は Q

(d

dx

)y = 0

の解である.y = y1 + y2 であるから所望の分解が得られた.

一意性の証明. y∗1 は P

(d

dx

)y = 0 の解で,y∗2 は Q

(d

dx

)y = 0 の解が y = y∗1 + y∗2 を満たし

ていると仮定する.y1 = y∗1 と y2 = y∗2 を示す.このとき,T (X)P (X) + V (X)Q(X) = 1であるから,

y1 − y∗1 = T

(d

dx

)P

(d

dx

)(y1 − y∗1) + V

(d

dx

)Q

(d

dx

)(y1 − y∗1)

= −V(d

dx

)Q

(d

dx

)(y2 − y∗2)

= 0

が成り立つ.ゆえに,y1 = y∗1 である.同様に,y2 = y∗2 も得られる.

以上のことを組み合わせると次の定理が得られる.

定理 17. α1, · · · , αk を相異なる複素数とするとき,P (X) = (X − α1)n1 · · · (X − αk)

nk に対応する微分方程式

P

(d

dx

)y = 0

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54 京都大学 澤野嘉宏

の解は

y =k∑

j=1

nj∑l=1

Cj,lxl−1 exp(αjx)

と表される.

eiθ = cos θ + i sin θ より,この定理を実数の言葉で書くと次のようになる.

定理 18. α1, · · · , αk を実数,β1, β2, · · · , βm を実数,γ1, γ2, · · · , γm を正の実数とする.また,α1, · · · , αk, β1 + iγ1, · · · , βm + iγm

が相異なるとする.このとき,多項式

P (X) = (X − α1)n1 · · · (X − αk)

nk((X − β1)2 + γ12)l1 · · · ((X − βm)2 + γm

2)lm

に対応する微分方程式

P

(d

dx

)y = 0

の解は任意定数 Ca,b,Da,b,Ea,b を用いて

y =k∑

a=1

na∑b=1

Ca,bxb−1eαax +

m∑a=1

la∑b=1

(Da,bx

b−1 exp(βax) cos γax+ Ea,bxb−1 exp(βax) sin γax

)と表される.

この場合の基本関数系は

xb−1eαax, 1 ≤ a ≤ k, 1 ≤ b ≤ na,xb−1 exp(βax) cos γax, 1 ≤ a ≤ m, 1 ≤ b ≤ la,xb−1 exp(βax) sin γax, 1 ≤ a ≤ m, 1 ≤ b ≤ la

ということになる.

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微分方程式演習 55

10.2. 高階線形微分方程式. 定数係数線形微分方程式の解き方の原則.

(1) 微分回数の次数 kと同じ次数の単項式 tk に置き換えて,固有方程式を解く.解をたとえば,t = λとすると,eλx が解の一部.(用語:この解の一部を解空間の基底という)

(2) 固有方程式の根が虚数のときは,ea+bi = ea(cos b+ i sin b)でもって cos, sinに分解する.(3) 重解のときは,それに対応する解の一部を 1, x, x2, . . .などで膨らませる.(4) 出てきたパーツを係数 C1, C2, . . .などを用いて結合する.(5) 二階の場合特に,固有方程式の解が

(a) 異なる実数解 t = a, bのときは,y = C1 ea x + C2 e

bx である.(b) 重解 t = aのときは,y = C1 e

a x + C2 x ea x である.

(c) 異なる実数解 t = a± biのときは,y = C1 ea x sin bx+ C2 e

a x cos bx である.

例題 16. 次の微分方程式を解け.

(1) y′′′ − 8y = 0(2) y′′′ − 6y′′ + 12y′ − 8y = 0(3) y′′′ + 6y′′ + 11y′ + 6y = 0(4) y′′′′ + 2y′′ + y = 0(5) y′′′′ − y′ = 0(6) y′′′ − 6y′′ + 12y′ − 8y = 0(7) y(6) + 6y(4) + 11y(2) + 6y = 0(8) y(6) + 6y(4) + 9y(2) + 4y = 0

例題 16の解答. はじめに,固有方程式を求めるべく,y′′′ を t3 で,y′′ を t2 で,y′ を tで,yを1で置き換える.

(1) y′′′− 8y = 0の固有方程式は t3− 8 = 0.固有値は,t = 2,−1+√3i,−1−

√3i.よって,

y = C1 e2x + C2 e

−x sin√3x+ C3 e

−x cos√3x が答え.

(2) y′′′ − 6y′′ + 12y′ − 8y = 0の固有方程式は t3 − 6t2 + 12t− 8 = 0.固有値は,t = 2(3重解).よって,y = C1 e

2x + C2 x e2x + C3 x

2 e2x が答え.(3) y′′′+6y′′+11y′+6y = 0の固有方程式は t3+6t2+11t+6 = 0.固有値は,t = −1,−2,−3.よって,y = C1 e

−x + C2 e−2x + C3 e

−3x が答え.(4) y′′′′ + 2y′′ + y = 0の固有方程式は t4 + 2t2 + 1 = 0.固有値は,t = ±i(2重解).よって,y = C1 sinx+ C2 x sinx+ C3 cosx+ C4 x cosxが答え.

(5) y′′′′−y′ = 0の固有方程式は t4− t = 0.固有値は,t = 1, (−1+√3i)/2, (−1−

√3i)/2, 0.

よって,y = C1 ex + C2 e

−x/2 sin(√3x/2) + C3 e

−x cos(√3x/2) + C4 が答え.

(6) y′′′ − 6y′′ + 12y′ − 8y = 0の固有方程式は t3 − 6t2 + 12t− 8 = 0.固有値は,t = 2(3重解).よって,y = C1 e

2x + C2 x e2x + C3 x

2 e2x が答え.(7) y(6) + 6y(4) + 11y(2) + 6y = 0の固有方程式は t6 + 6t4 + 11t2 + 6 = 0.左辺は

(t2 + 1)(t2 + 2)(t2 + 3)

と因数分解されるから,固有値は,t = ±i,±√2i,±

√3i.よって,

y = C1 cosx+ C2 sinx+ C3 cos√2x+ C4 sin

√2x+ C5 cos

√3x+ C6 sin

√3x

が答え.(8) y(6) + 6y(4) + 9y(2) + 4y = 0の固有方程式は t6 + 6t4 + 11t2 + 6 = 0.固有値は,t = ±i(それぞれ2重解)±2i.よって,

y = C1 cosx+ C2 sinx+ C3 x cosx+ C4 x sinx+ C5 cos 2x+ C6 sin 2x

が答え.

問題 10.1. 次の方程式を解け.

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56 京都大学 澤野嘉宏

(1) y′ − 3y = 0(2) y′′ − 5y′ + 6y = 0(3) y′′ − 4y′ + 4y = 0(4) y′′ − 4y′ + 5y = 0(5) 2y′′ − 4y′ + 6y = 0(6) y′′′ − 3y′ + 2y = 0

問題 10.2. 次の微分方程式を解け.

(1) y′′ − 4y′ + 3y = 0(2) y′′ − 4y′ + 4y = 0(3) y′′ − 4y′ + 5y = 0(4) y′′ + 4y = 0(5) y′′ + y′ = 0(6) y′′′ − y = 0(7) y′′′′ − y = 0(8) 2y′′ + y = 0(9) y′′′ − 6y′′ + 11y′ − 6y = 0(10) y′′′ − 3y′′ + 3y′ − y = 0

問題 10.3. 次の微分方程式を解け.

(1) y′ − 11y = 0(2) y′′ − 7y′ + 6y = 0(3) y′′ − 16y′ + 64y = 0(4) y′′ − 4y′ + 5y = 0(5) 13y′′ − 26y′ + 39y = 0(6) y′′ − 50y′ = 0(7) y′′ − 81y = 0(8) y′′′′′ − 5y′′′ + 2y′′ = 0(9) y′′ − 24y′ + 23y = 0

問題 10.4. 次の微分方程式を解け.

(1) y′ − 13y = 0(2) y′′ − 5y′ + 4y = 0(3) y′′ − 6y′ + 9y = 0(4) y′′ − 8y′ + 7y = 0(5) 3y′′ − 6y′ + 9y = 0(6) y′′ − 174y′ = 0(7) y′′ − 169y = 0(8) y′′′′ − 5y′′ + 2y′ = 0(9) y′′′ − 5y′′ + 8y′ − 4y = 0

問題 10.5. 次の微分方程式を解け.

(1) y′′ − y = 0(2) y′′ + 4y′ + 10y = 0(3) y′′ − 32y′ + 256y = 0(4) y′′ + 5y′ + 6y = 0(5) y′′′ − 5y′ + 2y = 0(6) y′′′ − 4y′ = 0(7) y′′′′′′ + 3y′′′′ + 3y′′ + y = 0(8) y′′′′ + 4y′′ + 4y = 0(9) y′′′ − y′′ + y′ − y = 0

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微分方程式演習 57

問題 10.6. 次の微分方程式を解け.

(1) y′′′ − y′′ − y′ + y = 0(2) y′′ + 5y′ + 8y = 0

問題 10.7. 次の方程式を解け.

(1) y′′ − 10y′ + 24y = 0(2) y′′ − 10y′ + 25y = 0(3) y′′ − 10y′ + 26y = 0(4) y′′′ − y′′ − y′ + y = 0

問題 10.8. 次の微分方程式を解け.

(1) y′′ − 4y′ + 3y = 0(2) y′′ − 4y′ + 4y = 0(3) y′′ − 4y′ + 5y = 0(4) y(4) − 2y(2) + y = 0

問題 10.9. 次の微分方程式を解け.

(1) y′′ − 14y′ + 48y = 0(2) y′′ − 14y′ + 49y = 0(3) y′′ − 14y′ + 50y = 0(4) y′′ + 10y′ + 28y = 0(5) y′′ + 10y′ + 25y = 0(6) y′′ + 10y′ + 19y = 0(7) y(12) − 3y(8) + 3y(4) − y = 0

問題 10.10. 定数係数常微分方程式 (1)

y(n) + a1y(n−1) + a2y

(n−2) + · · ·+ any = 0 · · · (1)

に対応する特性方程式が有理数の範囲で次のように因数分解された.方程式 (1)の一般解を求めよ.特性方程式を因数分解した結果:

λ6(λ− 4)5(λ− 5)2(λ2 − 6λ+ 7)3(λ2 − 4λ+ 5)2(λ2 + 1)2(λ− 1)(λ4 − 2) = 0

専用解答用紙

y = ← λ6による寄与

+(C1,2 + C2,2 x+ C3,2 x2 + C4,2 x

3 + C5,2 x4)e4x ← (λ− 4)5による寄与

← (λ− 5)2による寄与

← (λ2 − 6λ+ 7)3による寄与

← (λ2 − 4λ+ 5)2による寄与

← (λ2 + 1)2による寄与

← (λ− 1)による寄与

← (λ4 − 2)による寄与

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58 京都大学 澤野嘉宏

問題 10.11 (今までのまとめ). 次の方程式を解け.初期値が付いている場合はその初期値に適合した形で考えること.

(1) y′ = x y, y(0) = 1(2) y′′ = 5y′ − 4y, y(0) = 1, y′(0) = 2

(3) y′ =y2

x3(4) y′′′′ − 8y′′ + 16y = 0(5) y′′ + 2y′ + 5y = 0(6) y′′ + 4y′ + 4y = x+ 1(7) y′′′ + 5y′′ = 0

問題 10.12. 定数係数線形微分方程式の解の表示と一意性に関して考える.

(1) P (x), Q(x) ∈ R[x]とする.集合X = R(x)P (x)+S(x)Q(x) |R(x), S(x) ∈ R[x]の 0でない多項式で次数が最小なものを V (x)とおく.このときX = R(x)V (x) |R(x) ∈ R[x]を証明せよ.

(2) P (x), Q(x)は以下共通因子を持たないとして考える.R(x), S(x) ∈ R[x]を用いて,1 =R(x)P (x) + S(x)Q(x)と表せることを証明せよ.

(3) 線形微分方程式の特性方程式が P (λ)Q(λ)と因数分解されたとする.この線型方程式の解は P (λ)が特性方程式となる線型方程式の解 y1 と Q(λ)が特性方程式となる線型方程式の解 y2 との和で一通りに表せることを証明せよ.

(4) P (x) = (x− α)n の時,特性方程式が P (λ)になる方程式の一般解を求めよ.

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微分方程式演習 59

11. 重ね合わせの原理

11.1. 基本事項:重ね合わせの原理.

定理 19. 関数 f(x), g(x)を所与とする.微分方程式

(11.1) y′′ + a y′ + b y = f(x)

(11.2) y′′ + a y′ + b y = g(x)

の解をそれぞれ y1, y2 とすると y1 + y2 は

(11.3) y′′ + a y′ + b y = f(x) + g(x)

の解である.

証明. 仮定と結論を書き下す.

[仮定] y′′1 + a y′1 + b y1 = f(x), y′′2 + a y′2 + b y2 = g(x)

[結論] (y1 + y2)′′ + a (y1 + y2)

′ + b (y1 + y2) = f(x) + g(x)

書き下せばわかるように証明は簡単だから省略する.

この定理を一般化すると,次の定理が得られる.証明は同じなので省略する.

定理 20. 関数 f(x), g(x)を所与とする.また,a1(x), a2(x), · · · , an(x)を変数係数とする微分方程式

(11.4) y(n) + a1(x) y(n−1) + · · ·+ an(x) y = f(x)

(11.5) y(n) + a1(x) y(n−1) + · · ·+ an(x) y = g(x)

の解をそれぞれ y1, y2 とすると y1 + y2 は

(11.6) y(n) + a1(x) y(n−1) + · · ·+ an(x) y = f(x) + g(x)

の解である.

これらの定理を用いて,与えられた関数 f(x)に対して定数係数の微分方程式

y(n) + a1y(n−1) + · · ·+ any = f(x)

を実際に解く.

定理 20より次のようにするとよいとわかる.

(1) まず,

(11.7) y0(n) + a1y0

(n−1) + · · ·+ any0 = f(x)

となる y0 を求める.(2) 定数係数の微分方程式

y(n) + a1y(n−1) + · · ·+ any = 0

を別個に解いて,その解を

(11.8) y = C1E1(x) + C2E2(x) + · · ·+ CnEn(x)

と表す.

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60 京都大学 澤野嘉宏

(3) 元の微分方程式に

(11.9) y(n) + a1y(n−1) + · · ·+ any = f(x)

に戻って,(11.7)で得られた y0 と (11.8)で得られた解を足し合わせて

y = C1E1(x) + C2E2(x) + · · ·+ CnEn(x) + y0

が (11.9)の答えとなる.

そこで,y0 を如何にして求めるかが問題になるが,いくつかの特殊な場合には次の方法が有効である.

(1) f(x) = eαxのとき.y0 = C eαxとおいて方程式と整合するにように C を決める.これがうまくいくとは限らないが,半々くらいの確率でこの方法でうまくいくと思われる.

(2) f(x) = C1 cosαx+C2 sinαxのとき.y0 = D1 cosαx+D2 sinαxとおいて方程式と整合するにようにD1, D2を決める.これがうまくいくとは限らないが,やはり半々くらいの確率でこの方法でうまくいくと思われる.

(3) f(x)が xの n次多項式のとき.(3-a) y0 も同じ次数の多項式とおく.(3-b) an = 0のときは次のような大胆な方法がある.便宜上 a0 = 1とおく.1 +

n−1∑j=0

ajan

(d

dx

)n−j y0 =

f(x)

an

と変形して

y0 =1

an

1 +

n−1∑j=0

ajan

(d

dx

)n−jf(x) =

∞∑m=0

− n−1∑j=0

ajan

(d

dx

)n−jm

f(x)

an

と表す.例えば,y′ + y = x3 の解の計算方法は

y =1

1 +d

dx

x3 =

(1− d

dx+

d2

dx2− d3

dx3+

d4

dx4− · · ·

)x3 = x3 − 3x2 + 6x− 6

である.

(3-b)の方法以外は視察による方法といわれる.

一般には次の定理を用いる.

定理 21. Q(X) は多項式で,複素数 α は Q(X) = 0 の解ではないとする.多項式 P (X) =

(X − α)mQ(X) に対応する方程式 P

(d

dx

)y = C eαx の特解は y = Dxm eαx である.ここで,

D =C

m!Q(α)である.

証明. 定理 15を用いると,P(d

dx

)xm eαx = eαxP

(d

dx+ α

)xm となる.したがって,

P

(d

dx

)xm eαx = eαxQ

(d

dx+ α

)(d

dx

)m

xm = m!eαxQ

(d

dx+ α

)1 = eαxm!Q(α)

だから,定数を割り算で調節すれば定理の証明が出来る.

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微分方程式演習 61

11.2. 重ね合わせの原理.

例題 17. y′ − xy = xに関する問いに答えよ.

(1) y = −1は方程式の解であることを示せ.(2) 与えられた方程式を解け.

特別解が問題文中に与えられている場合はそれを活用するとよい.

例題 17の解答.

(1) (−1)′ − x(−1) = xだから.(実際に計算すること.)(2) y = z − 1とおく.y′ − xy = z′ − x(z − 1) = xだから,z′ − x z = 0.この方程式を解い

て z = C exp

(1

2x2)したがって,y = C exp

(1

2x2)− 1

例題 18. y = Aexの形(Aは定数)をしている y′′−6y′+8y = exの解を求めて,y′′−6y′+8y = ex

の一般解を求めよ.

特別解の形は見当がつきそうなので,特別解を問題のヒント(“ y = Aexの形(Aは定数)をしている”)から計算して求める.

例題 18の解答. y = Aexのとき y′′−6y′+8y = 3Aex よってA =1

3と定まる.y′′−6y′+8y = 0

の解は y = C1 e2x + C2 e

4x だから,y = C1 e2x + C2 e

4x +1

3ex が y′′ − 6y′ + 8y = ex の解であ

る.

例題 19. y′′′ − 3y′ = 3xを解け.

右辺が多項式であることから,特別解が多項式であるという見当がつく.

例題 19の解答. y = −1

2x2 は解である.よって,y = z − 1

2x2 とおくと,z′′′ − 3z′ = 0. この方

程式を解くと z = C1 exp(√3x) + C2 exp(−

√3x) + C3 であるから,

y = C1 exp(√3x) + C2 exp(−

√3x) + C3 −

1

2x2.

問題 11.1. y′ − y = 2− xに関する問いに答えよ.

(1) y = a x+ bの形の解を見つけよ.(2) 与えられた方程式を解け.

問題 11.2. 次の方程式を解け.

(1) y′ − 6y = −6 【ヒント】定数関数で解になるものがあるので,それをまずは求める.(2) 6階微分方程式 y′′′′′′ = yを解け.

問題 11.3. 次の問に答えよ.任意定数には C1, C2, · · · , C6 を用いよ.

(1) 複素数の範囲で t3 = 125を解け.(2) y(6) − 250y(3) + 1252y = 0を解け.(3) y(6) − 250y(3) + 1252y = 1253xを解け.

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62 京都大学 澤野嘉宏

問題 11.4. 次の微分方程式を解け.各問題につきはじめに定数をA,B,C,Dを求めて特解を求める.そのあと重ね合わせの原理で解を求めること.さらに,最後の問題に限って y(0) = y′(0) = 1となる解を求めること.注意:任意定数は統一のため C1, C2 を用いること!

(1) y′′ − 6y′ + 8y = 6e2x (y = Axe2x)(2) y′′ − 6y′ + 9y = 54x+ 108 (y = Ax+B)(3) y′′ − y = 4x (y = Ax+B)(初期条件を入れて計算するのを忘れずに!)

(4) y′ = −yx+ sinx (y = A cosx+B sinx+ C x sinx+Dx cosx)

(5) y′ = −y + x2 (y = x2 +Ax+B)

問題 11.5. 次の微分方程式を解け.各問題につきはじめに定数をA,B,Cを求めて特解を求める.そのあと重ね合わせの原理で解を求めること.さらに,最後の問題に限って y(0) = y′(0) = 1となる解を求めること.注意:任意定数は統一のため C1, C2 を用いること!

(1) y′′ − 6y′ + 8y = 36e2x (y = Axe2x)(2) y′′ − 6y′ + 9y = 540x+ 108 (y = Ax+B)(3) y′′ − y = 24x (y = Ax+B)(初期条件を入れて計算するのを忘れずに!)

問題 11.6. 次の微分方程式を解け.各問題につきはじめに定数をA,B,Cを求めて特解を求める.そのあと重ね合わせの原理で解を求めること.さらに,最後の問題に限って y(0) = y′(0) = 1となる解を求めること.注意:任意定数は C1, C2 を用いること!

(1) y′′ − 6y′ + 8y = 3e2x (y = Axe2x)(2) y′′ − 3y′ + 2y = sinx (y = A sinx+B cosx)(3) y′′ − 3y′ + 2y = ex (y = Axex)(4) y′′ − a2 y = x ea x (y = Ax2 ea x +B xea x)(5) y′′ + 2y′ + y = e−x (y = Ax2 e−x)(【ヒント】z = ex yとして置き換えるとわかりやすい)

(6) y′′ + 2y′ + y = x2 (y = Ax2 +B x+ C)(7) y′′ − 6y′ + 9y = x+ ex (y = Ax+B + C ex)(8) y′′ − 6y′ + 9y = cosx (y = A cosx+B sinx)(9) y′′ − 2y′ = 1 + x (y = Ax2 +B x)(10) y′′ − y = x (y = Ax+B)

(初期条件を入れて計算するのを忘れずに!)

一般には特解を求めるのは,直感である.

問題 11.7. 各問題につき指示に従って問題の常微分方程式を解け.

(1) y′ − y = 2− x(a) y = a x+ bの形の解を見つけよ.(b) 与えられた方程式を解け.

(2) y′ − xy = x(a) y = −1は方程式の解であることを示せ.(b) 与えられた方程式を解け.

(3) y′ + 4y = sinx(a) 関数 y = a sinx+ b cosxのとき y′ + 4yを計算せよ.(b) 与えられた方程式を解け.

問題 11.8. 次の問に答えよ.

(1) 複素数の範囲で方程式 λ4 − 98λ2 + 2401 = 0を解け.(重解であるときは重複度も明記すること)

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微分方程式演習 63

(2) 微分方程式 y(4) − 98y(2) + 2401y = 0を解け.(3) 微分方程式 y(4) − 98y(2) + 2401y = 2401xを解け.

問題 11.9. 次の問に答えよ.

(1) 複素数の範囲で方程式 λ12 − 4λ9 + 6λ6 − 4λ3 + 1 = 0を解け.(2) 微分方程式 y(12) − 4y(9) + 6y(6) − 4y(3) + y = 0を解け.(3) 微分方程式 y(12) − 4y(9) + 6y(6) − 4y(3) + y = 98x2 − 1023を解け.

問題 11.10. すべての実数 xに対して定義された関数 f(x)が f ′(x), f ′′(x)を持ち,次の条件を満たすものとする.

f ′′(x) + f(x) = x(11.10)

f ′(0) = a(11.11)

f(0) = b(11.12)

f(x)を求めよ.

問題 11.11. 重ね合わせの原理で次の微分方程式を解け.

(1) (a) y′ − 7y = 0(b) y′ − 7y = −7

(2) (a) y′′ − 4y′ + 3y = 0(b) y′′ − 4y′ + 3y = sinx

問題 11.12. 次の問に答えよ.

(1) 複素数の範囲で方程式 λ4 − 50λ2 + 625 = 0を解け.(重解であるときは重複度も明記すること)

(2) 微分方程式 y(4) − 50y(2) + 625y = 0を解け.(3) 微分方程式 y(4) − 50y(2) + 625y = 10000xを解け.

問題 11.13. 次の問に答えよ.(重解であるときは重複度も明記すること)

(1) 複素数の範囲で方程式 λ9 − 24λ6 + 192λ3 − 512 = 0を解け.(2) 微分方程式 y(9) − 24y(6) + 192y(3) − 512y = 0を解け.(3) 微分方程式 y(9) − 24y(6) + 192y(3) − 512y = 72x2 − 57x+ 203を解け.

問題 11.14. 次の代数方程式と微分方程式を解け.

(1) (a) λ4 + λ2 + 1 = 0(b) y′′′′ + y′′ + y = −3x+ 8

(2) (a) λ6 − 2λ3 + 1 = 0(b) y′′′′′′ − 2y′′′ + y = x2

(3) (a) λ6 − 3λ4 + 3λ2 − 1 = 0(b) y′′′′′′ − 3y′′′′ + 3y′′ − y = −4x

【参考】因数分解

X4 +X2 + 1 = X4 + 2X2 + 1−X2 = (X2 + 1)2 −X2 = (X2 −X + 1)(X2 +X + 1).

問題 11.15. a ∈ (0, 2)とする.x : (0,∞)→ Rを C1-級としてさらに,t = 1では C2-級で微分方程式

x(+0) = x′(+0) = 0, x′′(t) + a x′(t) + x(t) =

1 (t > 1)0 (0 < t < 1)

次のことを証明せよ.

(1) limt→∞

x(t) = 1

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64 京都大学 澤野嘉宏

(2) すべてのT > 1に対してパラメーター aによらない定数 c > 0が存在して,supt≥T|x(t)−1| >

c が成り立つ.

問題 11.16. (1), (2)では一般解を求めて,(3)で初期値問題を解くこと.

(1) x′′ − 4x′ + 4x = 0(2) x′′ − 4x′ + 4x = 8t3

(3) x′′ − 4x′ + 4x = 8t3, x(0) = 3, x′(0) = −5

(2)では先ず,x(t) = a t3 + b t2 + c t+ dの特殊解を求めること.

問題 11.17. (1), (2)では一般解を求めて,(3)で初期値問題を解くこと.

(1) x′′ − 2x′ + 5x = 0(2) x′′ − 2x′ + 5x = 10 sin t(3) x′′ − 2x′ + 5x = 10 sin t, x(π) = x′(π) = 0

(2)では先ず,x(t) = a cos t+ b sin tの特殊解を求めること.

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微分方程式演習 65

Part 6. 変数係数線形微分方程式

12. 線形代数の用語

線形代数の用語をここでまとめておく.

12.1. 基本事項:線形代数の用語.

定義 6. V が線形空間であるとは加法,(複素数の)スカラー倍という演算が備わっていて次の条件を満たすことである.

(1) すべての x, y ∈ V に対して,x+ y = y + x(2) すべての x, y, z ∈ V に対して,x+ (y + z) = (x+ y) + z(3) 零元もしくは零ベクトルと呼ばれる 0 ∈ V が存在して,すべての xに対して,

x+ 0 = 0 + x = x

(4) すべての x ∈ V に対して,−xと書かれる V の元が存在して,x+ (−x) = (−x) + x = 0が成り立つ.

(5) すべての a, b ∈ C, x ∈ V に対して,a · (b · x) = (ab) · x が成り立つ.(6) すべての a ∈ C, x, y ∈ V に対して,a(x+ y) = ax+ ay が成り立つ.(7) すべての a, b ∈ C, x ∈ V に対して,(a+ b)x = ax+ bx が成り立つ.(8) すべての x ∈ V に対して,1 · x = x が成り立つ.

定義 7. 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk が一次独立であるとは

スカラーλ1, λ2, · · · , λkにつきk∑

j=1

λkvk = 0 =⇒ λ1 = λ2 = · · · = λk

が成り立つことである.

定義 8. 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk が V を生成するとは

すべての v ∈ V に対して v =k∑

j=1

λjvkとなるスカラーλ1, λ2, · · · , λkが存在する

が成り立つことである.

定義 9. 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk が V の基底であるとは

v1, v2, · · · , vkは一次独立で v1, v2, · · · , vkは V を生成する

が成り立つことである.

定義 10. 線形空間 V の次元とは条件

v1, v2, · · · , vk が V の基底である

を満たす自然数 kのことである.

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66 京都大学 澤野嘉宏

12.2. 線形空間と微分方程式との関連. 繰り返しになるものも多いが反復して書くことが重要なのであえて用語なども繰り返し練習する.

問題 12.1. 文章の続きを完成させよ.

V を有限次元ベクトル空間としてその部分集合X が基底であるとは

問題 12.2. 文章の続きを完成させよ.

V を有限次元ベクトル空間としてその部分集合 A = xjkj=1 が一次独立であるとは

問題 12.3. 次の数学用語を説明した説明文の空白を埋めよ.ただし,複素数は考えず,実数のみを考えているとする.

(1) V を線形空間であるとは次の 3つの性質を満たすことである.(a) 加法,スカラー倍

+ : V × V → V, · : R× V → V

という演算が備わっている.(b)(c)

(2) 線形空間 V の元 v1 と v2 が一次独立であるとは(3) 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk が一次独立であるとは(4) 線形空間を v1, v2, · · · , vk が生成するもしくは張るとは

専用解答用紙

(1) V を線形空間であるとは次の 3つの性質を満たすことである.(a) 加法,スカラー倍

+ : V × V → V, · : R× V → V

という演算が備わっている.(b)(c)

(2) 線形空間 V の元 v1 と v2 が一次独立であるとは

(3) 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk が一次独立であるとは

(4) 線形空間を v1, v2, · · · , vk が生成するもしくは張るとは

問題 12.4. 次の線形代数の用語を説明した文章の空白を埋めよ.

[一次独立] 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk ∈ V に対して,これらが線形独立であるとは,次の条件を満たすことである.

(12.1)

[基底] 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk ∈ V に対して,これらが V の基底をなすとは,

v1, v2, · · · , vk は [ ](漢字4文字)であり,かつ V を [ ](漢字2文字)していることである.

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微分方程式演習 67

[次元] 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk ∈ V,が V の [ ]をなすとき,kのことを線形空間の次元という.

[一次独立] 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk ∈ V に対して,これらが線形独立であるとは,次の条件を満たすことである.

専用解答用紙

一次独立 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk ∈ V に対して,これらが線形独立であるとは,次の条件を満たすことである.

基底 線形空間V の元 v1, v2, · · · , vk ∈ V に対して,これらがV の基底をなすとは,v1, v2, · · · , vkは [ ](漢字4文字)であり,かつ V を [ ](漢字2文字)していることである.

次元 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk ∈ V,が V の [ ]をなすとき,kのことを線形空間の次元という.

問題 12.5. 関数の集合 V を V = y | y は微分方程式 y(5) − 3y(2) + 29y = 0の解. とする.このとき,V は線形空間であることを証明せよ.線形空間としての次元はいくらか?

問題 12.6. 関数 ex と e2x は一次独立であることを証明せよ.

問題 12.7. 次の関数系は一次独立であるか? 理由をつけて答えよ.

(1) sinx, cosx(2) 2x, 3x, 4x

(3) 2x− 4, 12x(4) 62x− 57, 45x− 12, 333x− 157(5) x, ex, xex

(6) sinx, cosx, sin(x+

π

4

)(7) x+ 2, x+ 4

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68 京都大学 澤野嘉宏

13. 変数係数微分方程式

13.1. 基本事項:2階変数係数微分方程式とロンスキアン. 今度は,2階変数係数微分方程式

y′′ + p(x)y′ + q(x)y = 0

を考える.次の定理は認めてしまう.

定理 22. I をRの区間とする.p.q : I → Rを C∞-級(微分は何回でも出来る)関数とする.このとき,y(0) = a, y′(0) = bとなる y′′ + p(x)y′ + q(x)y = 0 の解が唯一存在する.

証明は解の存在と一意性を用いる.

仮に微分方程式 y′′ + p(x)y′ + q(x)y = 0の解がひとつ求まると,もうひとつも計算できる.

定理 23. I をRの区間とする.p.q : I → Rを C∞-級関数とする.J を I に含まれる区間とする.y′′ + p(x)y′ + q(x)y = 0の解 y(x) = v(x)が v = 0を満たしているとする.このとき,変換y(x) = v(x)z(x)で z = z(x)の微分方程式に直すと,J での微分方程式 z′′ + r(x)z′ = 0に変換される.ここで,r : J → Rは p, q, vを用いて表される適当な関数である.

証明. v′′(x) + p(x)v′(x) + q(x)v(x) = 0である.したがって,

y′′ + p(x)y′ + q(x)y = 2z′(x)v′(x) + z′′(x)v(x) + p(x)v(x)z′(x) = 0

となる.これより,r(x) = −2z′(x)v′(x) + p(x)v(x)

v(x)とおけばよい.

得られた解が一次独立であるかどうかは重要な問題であるが,ロンスキアン(ロンスキー行列式)を用いてそれを判定できる.

定義 11. I を R の区間とする.y1, y2 : I → R を微分可能な関数とするとき,W (y1, y2) =y1y2

′ − y1′y2 をロンスキアンという.

例 9. 具体的な関数の対に対してロンスキアンを計算してみる.

(1) y1(x) = ex, y2(x) = e2x のとき,W (y1, y2)(x) = y1(x)y2(x)′ − y1(x)′y2(x) = e3x.

(2) y1(x) = 3e2x, y2(x) = e2x のとき,W (y1, y2)(x) = y1(x)y2(x)′ − y1(x)′y2(x) = 0.

実際にどうやって得られた解が一次独立かどうかを判定するかは次の定理が示してくれる.

定理 24. I を R の区間とする.y1, y2 : I → R を微分可能な関数とするとき,W (y1, y2) =y1y2

′ − y1′y2 が x = x0 で 0でないなら,y1, y2 が一次独立である.

証明. a, b ∈ Rが ay1 + by2 ≡ 0を満たしていたとする.このとき,ay1(x0) + by2(x0) = 0 とay′1(x0)+by

′2(x0) = 0が成り立つ.したがって,この a, bに関する連立方程式を解いて,a = b = 0

が得られる.よって,y1, y2 は一次独立である.

特に,y1, y2 が y′′ + p(x)y′ + q(x)y = 0の解であるなら,次のことが言える.

定理 25. I をRの区間とする.y1, y2 : I → Rを微分可能な関数とする.y1, y2が y′′ + p(x)y′ +

q(x)y = 0の解であるなら,W (y1, y2) = y1y2′− y1′y2は

d

dxW (y1, y2) = −p(x)W (y1, y2) を満た

している.

証明.d

dxW (y1, y2) = y1y2

′′ − y1′′y2 = −p(x)(y1y2′ − y1′y2) = −p(x)W (y1, y2).

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微分方程式演習 69

ロンスキアンはこのようにして一次独立性の判定に役立つが,次のようにして微分方程式の解を与える公式にも現れる.

定理 26. a, b : I → Rを C∞-級関数とする.y′′ + a(x)y′ + b(x)y = 0の解で一次独立なものy1, y2 をとる.すると,y′′ + a(x)y′ + b(x)y = f(x)の解は次のように表される.

y = c1(x)y1(x) + c2(x)y2(x), c1(x) = −∫

f(x)y2(x)

W (y1, y2)(x)dx, c2(x) =

∫f(x)y1(x)

W (y1, y2)(x)dx.

証明. y = c1(x)y1(x) + c2(x)y2(x)として微分方程式 y′′ + a(x)y′ + b(x)y = f(x)に代入すると,

c′′1(x)y1(x) + c′′2(x)y2(x) + 2c′1(x)y′1(x) + 2c′2(x)y

′2(x) + c′1(x)y1(x) + c′2(x)y2(x) = f(x)

がえられる.したがって,c′1(x)y1(x)+c′2(x)y2(x) = 0, c′1(x)y

′1(x)+c

′2(x)y

′2(x) = f(x)とおくと,

c′1(x) = −f(x)y2(x)

W (y1, y2)(x), c′2(x) =

f(x)y1(x)

W (y1, y2)(x)

が得られる.

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70 京都大学 澤野嘉宏

13.2. ロンスキアン.

問題 13.1. 次の関数形 y1, y2 のロンスキー行列式 y1y′2 − y′1y2 を求めよ.また,y1, y2 が一次独

立であるか否かを調べよ.

(1) y1 = e3x, y2 = xe3x

(2) y1 = x2, y2 = x|x|

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微分方程式演習 71

13.3. 変数係数線型方程式の解法.

問題 13.2. I をRの開区間として,f, a1, a2 : I → Rは C∞-級関数とする.定数線形微分方程式 y′′ + a1(x)y

′ + a2(x)y = f(x)の y(x0) = y′(x0) = 0となる特別解は 2変数関数K(x, η)を適

当に取ると y =

∫ x

x0

K(x, η)f(η) dη と表されることを示せ.

問題 13.3. 次の微分方程式 y′′ + p(x)y′ + q(x)y = 0について考える.

(1) 一つの解 y0 を考える.y = y0uとおく.uの満たすべき微分方程式を求めよ.(2) uを具体的に求めて,微分方程式 y′′ + p(x)y′ + q(x) = 0の解を求めよ.

問題 13.4. exが微分方程式 y′′ − (x+ 1)y′ + x y = 0の解であることを踏まえて,残りの解を求めよ.

問題 13.5. x′′ + tx′ − x = 0について,(1)~(3)に答えよ.

(1) x(t) ≡ tは特殊解であることを示せ.(2) 一般解を求めよ.(3) φ(t), ψ(t) は φ(0) = a, φ′(0) = b, ψ(0) = c, ψ′(0) = d を満たしているとする.関数

w(t) = φ(t)ψ′(t)− φ′(t)ψ(t) を求めよ.

問題 13.6. a, b, f : R→ Rはなめらかな関数である.さらに,

x′′(t) + a(t)x′(t) + b(t)x(t) = 0

の基本解系 φ,ψを φ(0) = ψ′(0) = 0, φ′(0) = ψ(0) = 1 となるようにとる.このとき,

x′′(t) + a(t)x′(t) + b(t)x(t) = f(t), x(0) = x′(0) = 0

を解け.解はW (t) ≡ φ(t)ψ′(t)− φ′(t)ψ(t) と φ,ψ, f を用いて表すこと.

【注意】基本解系とは線形空間の基底のことである.

問題 13.7. (0,∞)で定義されている解を求めよ.ただし,xは変数 tの関数であるとする.

(1) x′′ +1

2tx′ +

1

4tx = 0

(2) x′′ +

(1− 2

t

)x′ +

2− tt2

x = 0

(3) x′′ +3

tx′ − 3

t2x = 0

(4) x′′ +2 + t2

tx′ +

(1− 2

t

)x = 0

(5) tx′′ + x′ − x = 0

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72 京都大学 澤野嘉宏

Part 7. 連立定数線型方程式

14. 行列計算

14.1. 基本事項:行列の掛け算と基本公式. ここでは,行列計算を復習しておく.3× 3以上のときも本質は同じなので,余り深入りしないで,2× 2行列の場合を考える.

2× 2行列の足し算は成分ごとに計算すればよかったが,掛け算は

(14.1)

(a11 a12a21 a22

)(b11 b12b21 b22

)=

(a11b11 + a12b21 a11b12 + a12b22a21b11 + a22b21 a21b12 + a22b22

)という規則で与えられて,一般には

(1) AB = BAとなる.(2) AB = 0でも A,B 両方が 0とならない.

などの性質を持つ不思議な演算であった.成分はRでもCでも構わない.微分方程式との関連

で考えるときはRで考えることが多い.また,単位行列 0 =

(0 00 0

)は A0 = 0A = 0を満たし

ている.さらに,単位行列 E =

(1 00 1

)は AE = EA = Aを満たしていることに注意する.

次の性質は 14.1より明らかである.

定理 27.

(a11 00 a22

)(b11 00 b22

)=

(a11b11 0

0 a22b22

). したがって,特に n = 1, 2, · · · に対し

て,(a11 00 a22

)n

=

(a11

n 00 a22

n

)が成り立つ.

本書では次の性質はよく使うのでまとめておく.

定理 28. A,B を可換な正方行列とする.つまり,AB = BAとする.さらに,k, l,m ∈ Nとする.

(1) AkBl = BlAk.

(2) (A+B)m =m∑j=0

mCjAj Bm−j .

特に,α ∈ Cのとき,(A+ αE)m =m∑j=0

mCjαm−jAj .

証明.

(1) 数学的帰納法によって次の 2つを示す.(a) AkB = BAk.(b) AkBm = BmAk.これらを示すのはルーチンワークであるので省略する.

(2) 数学的帰納法で示す.m = 1のときは明らかである.m =M のときに,

(A+B)M =

M∑j=0

MCjAjBM−j

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微分方程式演習 73

が成り立つとする.すると,

(A+B)M+1 =

M∑j=0

MCjAj+1BM−j +

M∑j=0

MCjBAjBM−j

が成り立つ.(1)より,(A + B)M+1 =

M∑j=0

MCjAj+1BM−j +

M∑j=0

MCjAjBM+1−j とな

る.和を分解して

(A+B)M+1 =M−1∑j=0

MCjAj+1BM−j +

M∑j=1

MCjAjBM+1−j +BM+1 +AM+1

=M∑j=1

(MCj+1 + MCj)AjBM+1−j +BM+1 +AM+1

が得られる.二項係数の関係から MCj+1 + MCj = M+1Cj だから,

(A+B)M+1 =

M∑j=1

M+1CjAjBM+1−j +BM+1 +AM+1 =

M+1∑j=0

M+1CjAjBM+1−j

よって,(2)がm =M + 1に対しても成り立つと証明された.

定理 29. A =

(a bc d

)とすると,A2 − (a+ d)A+ (ad− bc)E = 0が成り立つ.

証明. 成分を入れて計算すると,

A2 − (a+ d)A+ (ad− bc)E

=

(a bc d

)(a bc d

)− (a+ d)

(a bc d

)+ (ad− bc)E =

(1 00 1

)=

(a2 + bc ab+ bdac+ cd bc+ d2

)−(a2 + ad ab+ bdac+ cd ad+ d2

)+

(ad− bc 0

0 ad− bc

)= 0

次の定理は計算結果を覚えるのではなく,証明にあるような計算方法を習得すること.

定理 30. A =

(a bc d

)とおく.方程式 λ2 − (a+ d)λ+ ad− bc = 0 の解を α, β とおく.

(1) α = β のときは,An =αn

α− β(A− βE) +

βn

β − α(A− αE).

(2) α = β つまり,方程式 λ2 − (a+ d)λ+ ad− bc = 0 の解が重解のとき,

An = nαn−1(A− αE) + αnE.

証明.

(1) この場合は xnを (x− α)(x− β)で割り算することからはじめる.2次式で割り算しているから,あまりは 1次式である.したがって,

xn = (x− α)(x− β)P (x) +K x+ L

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74 京都大学 澤野嘉宏

のような割り算の形をしている.x = αを代入して

αn = (α− α)(α− β)P (α) +K α+ L = K α+ L

x = β を代入して

βn = (β − α)(β − β)P (β) +K β + L = K β + L

したがって,連立方程式K α + L = αn, K β + L = βn が得られた.この連立方程式を解くと,

K =αn − βn

α− β, L =

β · αn − α · βn

β − αが得られる.つまり,多項式 P (x) を用いた変数 x に関する恒等式 xn = (x − α)(x −

β)P (x) +αn − βn

α− βx+

β · αn − α · βn

β − αが得られる.

ここで,行列 Aを xに代入して

An = (A− αE)(A− β E)P (A) +αn − βn

α− βA+

β · αn − α · βn

β − αE

= (A2 − (α+ β)A+ αβE)P (A) +αn − βn

α− βA+

β · αn − α · βn

β − αE

= (A2 − (a+ d)A+ (ad− bc)E)P (A) +αn − βn

α− βA+

β · αn − α · βn

β − αE

= 0 · P (A) + αn − βn

α− βA+

β · αn − α · βn

β − αE

=αn − βn

α− βA+

β · αn − α · βn

β − αE

=αn

α− β(A− βE) +

βn

β − α(A− αE)

となる.以上の計算をまとめて,An =αn

α− β(A− βE) +

βn

β − α(A− αE) である.

(2) (A− αE)2 = 0であるから,2項定理より,

An =n∑

j=0

nCjαn−j(A− αE)j

=

1∑j=0

nCjαn−j(A− αE)j

= nC1αn−1(A− αE) + nC0α

n−0E

= nαn−1(A− αE) + αnE.

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微分方程式演習 75

14.2. 行列の計算.

例題 20. A =

(3 4−3 1

), B =

(3 105 −9

)のとき AB を計算せよ.

例題 20の解答. AB =

(3 4−3 1

)(3 105 −9

)=

(3 · 3 + 4 · 5 3 · 10 + 4 · (−9)−3 · 3 + 1 · 5 −3 · 10 + 5 · (−9)

)=(

29 −6−4 −75

).

問題 14.1. 行列に関する次の問に答えよ.

(1) A =

(2 15 2

), B =

(4 78 0

)のとき AB を計算せよ.

(2) A =

(4 10 4

)のときAnを計算せよ.【ヒント】2× 2行列N をN =

(0 10 0

)と置

くとN2 = 0で A = 4E +N だから二項展開を用いるとよい.

(3) A =

(−2 00 9

)のとき An を計算せよ.【ヒント】A2, A3, · · · を計算する.

(4) a, bを定数とするとき,A =

(a 00 b

)のとき An を計算せよ.

問題 14.2. 次の計算をせよ.ただし,E = I =

(1 00 1

), O =

(0 00 0

)とおいている.

(1) A =

(1 34 6

), B =

(5 93 −6

)のとき,AB, B A.

(2) C =

(0 10 0

)のとき,C2.

(3) X =

(a bc d

)のとき,X2 − (a+ d)X + (a d− b c)E.

問題 14.3. 次の行列の n乗を計算せよ.必要に応じて好きな方法を用いてよい.

(1) A =

(2 11 2

)(2) A =

(2 10 2

)(3) A =

(5 10 2

)(4) A =

(5 1−2 2

)(5) A =

(4 1−1 6

)(6) 次の問に答えよ.

(a) 次の数列 an : 1, 0, 0, 0, 1, 0, 0, 0, 1, 0, 0, 0, 1, 0, 0, 0, · · · を表す数列 an∞n=1 の一般項をできるだけ簡単な形で書け.

(b) A =

(0 1−1 0

)に対して,An を与える式をできるだけ簡単な形で書け.

【問題 (2)のヒント】2× 2行列 N を N =

(0 10 0

)とおく.すると,2項定理により,展開式

A = (2E +N)n =

n∑j=0

nCj(2E)n−jN j が成立するが,N2 = 0に注意せよ.

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76 京都大学 澤野嘉宏

15. 連立定数線型方程式

15.1. 基本事項:定数係数微分方程式の解法. ここでは,tの関数 x, yに関する微分方程式(x′

y′

)=

(a bc d

)(xy

), つまり

d

dt

(xy

)=

(a bc d

)(xy

)(15.1)

の解法について考える.ただし,a, b, c, dは定数であるとする.行列を用いないで (15.1)を表すとx′ = a x+ b yy′ = c x+ d y

という連立方程式を表していることになる.

(15.1)を踏まえて,A =

(a bc d

), x =

(xy

)とおいてみると,(15.1)は x′ = Ax と表される

ことに注意する.

ところで,αを定数として,今までやってきた一階線形定数係数微分方程式 x′ = αx の解はx(t) = C etα であるから,はじめの連立方程式も x = C et A のような表し方があると思われる.すると,次の問題点が発生する.

et A = exp(t A) = Exp(tA)は行列 Aに対してどのように定めればよいか?

そもそも指数関数とはなにか実数に対してもあまり理解できていない.そこで,etをテーラー展

開を用いて考えることをする.テーラー展開の公式 et =

∞∑j=0

tj

j!を思い出す.すると,自然に et A

の定義がわかってくる.このテーラー展開の式の tに行列 tAを代入して

et A =∞∑j=0

tj

j!Aj = E + tA+

t2

2!A2 + · · ·+ tj

j!Aj + · · ·

と定めるのである.

大事なことなので,定義としてまとめておく.

定義 12. Aを n× n正方行列とするとき, et A =∞∑j=0

tj

j!Aj と定める.

注意 1.

(1) Aのサイズは 2× 2でなくてもよい.(2) 無限和の収束に関しては,第 29節で詳しく論ずる.

指数関数の公式. このように定めた et A に関して次の加法定理が成り立つ.

定理 31. t, s ∈ Rのとき,n× n行列の等式として,e(t+s)A = et AesA

証明. 和の順番を取り替えることによって,

e(t+s)A =∞∑j=0

(t+ s)j

j!Aj =

∞∑j=0

j∑k=0

tksj−k

k!(j − k)!Aj .

和の取替えなどは第 29節で詳しく論ずるので,ここで,j − k = lとおくと,

e(t+s)A =∞∑k=0

∞∑l=0

tksl

k!l!Ak+l =

∞∑k=0

tk

k!Ak

∞∑l=0

sl

l!Al = et AesA

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微分方程式演習 77

が成り立つ.

このように定めた et A に関して次の公式が成り立つ.

定理 32.d

dtet A = Aet A = et AA が成り立つ.

証明. 実際に計算してみると

d

dtet A =

d

dtexp(tA) =

d

dt

∞∑j=0

tj

j!Aj =

∞∑j=0

j tj−1

j!Aj(*1)

=∞∑j=1

j tj−1

j!Aj(*2) =

∞∑j=1

tj−1

(j − 1)!Aj(*3) =

∞∑j=1

tj−1

(j − 1)!Aj−1A(*4)

=

∞∑j=0

tj

j!Aj

A

となる.最後の無限和の意味を考えれば,証明が完結する.ただし,(*1)~(*4)の式変形の意図,根拠は次のとおりである.

(*1) 微分と,和∞∑j=0

の順番入れ替え.d

dt

∞∑j=0

tj

j!Aj =

∞∑j=0

d

dt

tj

j!Aj

(*2) j = 0に対応する和は 0だから,∞∑j=0

· · · =∞∑j=1

· · · が成り立っている.

(*3) j ≥ 1のときに,j!

j= 1 · 2 · · · · · (j − 1) · j ÷ j = 1 · 2 · · · · · (j − 1) = (j − 1)!

(*4) 数列 aj∞j=0 に対して∞∑j=1

aj−1 =∞∑j=0

aj = a0 + a1 + · · ·+ aj + · · · が成り立つ.

以上より,d

dtet A = et AA が証明された.同様に,

d

dtet A = Aet A も証明される.

行列に値をとる関数に対してもライプニッツ則(積の微分)は同様に成り立つ.つまり,A(t), B(t)を k × l,l ×m に値をとる tの関数であるとした時,

d

dtA(t)B(t) = A′(t)B(t) +A(t)B′(t).

さらに,A′(t) = 0となる行列に値をとる関数は A(t) = A0 と tによらない関数のみであるのもスカラーの場合と同じである.

連立微分方程式の解の公式. さて,微分方程式の話に戻る.連立方程式 (15.1),つまり

x′ = a x+ b y

y′ = c x+ d y

を再考する.定数変化法のアイデアをまねて,変数 x, yをX,Y に取り替えて(XY

)= exp

(−t(a bc d

))(xy

), つまり

(X(t)Y (t)

)= exp

(−t(a bc d

))(x(t)y(t)

)

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78 京都大学 澤野嘉宏

とおいてみると,ライプニッツ則(積の微分)により,

d

dt

(XY

)=

d

dtexp

(−t(a bc d

))(xy

)+ exp

(−t(a bc d

))d

dt

(xy

)= − exp

(−t(a bc d

))(a bc d

)(xy

)+ exp

(−t(a bc d

))(a bc d

)(xy

)= 0

したがって,X,Y は tについての定数関数である.つまり,定数 C1, C2を用いて(XY

)≡(C1

C2

)である.これより,

(C1

C2

)= exp

(−t(a bc d

))(xy

)となる.

最後に,定理 31より(xy

)= exp

(t

(a bc d

))exp

(−t(a bc d

))(xy

)が成り立つから,これ

を整理して (xy

)= exp

(t

(a bc d

))(XY

)= exp

(t

(a bc d

))(C1

C2

)

が得られる.まとめると,(xy

)= exp

(t

(a bc d

))(C1

C2

)となる.

注意 2. ここでは,よく犯しがちな記号に関する誤りを指摘しておく.

(1) A2−(a+d)A+(ad−bc)E = 0もしくはA2−(a+d)A+(ad−bc)I = 0をA2−(a+d)A+(ad− bc) = 0と書くのは 1を単位行列 E, I と同じにして書く習慣がある以上間違えとも言い切れないが,通常の線形代数の場合はほとんどこのような習慣を認めていない.したがって,A2− (a+ d)A+ ad− bc = 0とは書かないほうが良い.A2− (a+ d)A+ ad− bcに現われている項のうち,A2,−(a+ d)Aは行列で ad− bcだけはスカラーである.

(2) 行列の積 exp

(−t(a bc d

))(xy

)を(xy

)exp

(−t(a bc d

))と書いてはならない.同様

に exp

(t

(a bc d

))(xy

)を(xy

)exp

(t

(a bc d

))と書いてはならない.なぜなら,行列

の掛け算の意味がなくなってしまうからである.

例 10. exp(t E) =∞∑j=0

(t E)j

j!=

∞∑j=0

tj

j!E = etE.

例題 21. A =

(1 00 0

)とする.また,B = E −Aとおく.A2 = 0より,exp(tA) = E + tAで

ある.同様に,exp(tB) = E + tBである.一方で例 10より,exp(t (A+B)) = exp(t E) = etEである.したがって,exp(t (A+B)) = exp(tA) exp(tB) となる.

注意 3. 同様な計算により,t を変数とする関数の成分の n × n 行列 A(t) に対して,A′(t) =BA(t), A(0) = E の解は A(t) = exp(tB)である.

定理 15.1. A,B を可換な正方行列とする.つまり,AB = BAとする.

(1) A exp(tB) = exp(tB)A.(2) exp(t A) exp(tB) = exp(t(A+B)).

証明.

(1) exp(tB)の定義式より明らかである。

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微分方程式演習 79

(2) f(t) = exp(tA) exp(tB) および g(t) = exp(t (A+B)) とおく.(1)より,

f ′(t) = A exp(tA) exp(tB) + exp(tA)B exp(tB)

= (A+B) exp(tA) exp(tB)

= (A+B)f(t)

となる.f(0) = E であるから,注意 3より f(t) = exp(t (A+B))が得られた.

具体的な計算 I(与えられた行列から行列の固有値を計算する). すると,今度は係数 a, b, c, dが与

えられたときに具体的に解く方法が必要となる.それには定義式 et A =

∞∑j=0

tj

j!Aj に戻ってシグ

マの中身を具体的に計算していく必要がある.

二つの場合に分けて考える.

ケーリー・ハミルトンの公式よりA2− (a+ d)A+(ad− bc)E = 0 2× 2行列のときに成り立つが,これに相当する方程式(固有方程式)λ2 − (a+ d)λ+ (ad− bc) = 0 の解を λ = α, βとおく.

具体的な計算 II:α = β の場合. 定理 30より,(A− αE)2 = A2 − 2αA+ α2E = 0だから,

An =

1∑j=0

nCjαn−j(A− αE)j = nC1α

n−1(A− αE) + nC0αn−0E = nαn−1(A− αE) + αnE

が得られる.

これを指数関数の定義に代入して

exp(tA) =∞∑j=0

tj

j!Aj =

∞∑j=0

tj

j!

(αjE + j αj−1(A− αE)

)= exp(αt)E +

∞∑j=0

tj

j!j αj−1(A− αE) = exp(αt)E +

∞∑j=1

tj

j!j αj−1(A− αE)

= exp(αt)E +∞∑j=1

tjαj−1

(j − 1)!(A− αE) = exp(αt)E +

∞∑j=1

tj−1αj−1

(j − 1)!t (A− αE) exp(αt)E

= exp(αt)E + t exp(αt)(A− αE)

である.これより,(15.1)の一般解が(xy

)= t exp(αt)(A− αE)

(C1

C2

)+ exp(αt)

(C1

C2

)と表せ

ることになる.

具体的な計算 II:α = β の場合. 定理 30より,An =αn

α− β(A− βE) +

βn

β − α(A− αE) である

から,

exp(t A) =∞∑

n=0

1

n!· α

ntn

α− β(A− βE) +

1

n!· β

ntn

β − α(A− αE)

=

exp(αt)

α− β(A− βE) +

exp(βt)

β − α(A− αE)

が得られる.

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80 京都大学 澤野嘉宏

具体的な計算 IV. α, βが複素数の場合は具体的な計算 II,IIIで示した方法が使えるが,係数が実数の場合は有効な計算方法がある.係数が実数の場合は解は互いに共役なので,τ ∈ R, ω ∈ R\0としてα, β = τ±ω iとあらわせる.A = τE+Bとおくと,B2 = (A−τE)2 = A2−2τA+τ2E = −ω2Eとなる.したがって,

exp(tB) =∞∑j=0

t2j

(2j)!B2j +

∞∑j=0

t2j+1

(2j + 1)!B2j+1

=

∞∑j=0

(−1)j(ωt)2j

(2j)!E +

1

ω

∞∑j=0

(−1)j(ωt)2j+1

(2j + 1)!B

= cos(ωt)E +sin(ωt)

ωB

となる.以上より

exp(tA) = exp(tτE + tB) = exp(tτE) exp(tB) = exp(tτ) cos(ωt)E +exp(tτ) sin(ωt)

ωB

が得られる.

具体的な計算例はこれから先に実践するが,問題 15.2には計算間違えの防止方法が載っている.

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微分方程式演習 81

15.2. 連立微分方程式.

問題 15.2. 行列 Aが以下のように与えられているときおのおのの場合の exp(tA)を計算せよ.

(1) A =

(2 11 2

)(2) A =

(2 10 2

)(3) A =

(5 10 2

)(4) A =

(5 1−2 2

)(5) A =

(4 1−2 6

)(6) A =

(2 1−1 2

)問題 15.3. 次の方程式を解け.微分は時刻 tによるものである.

(1) x′ = 2x+ 3y, y′ = x+ 4y(2) x′ = 2x− y, y′ = x+ 4y

問題 15.4. 次の問に答えよ.

(1) 行列 Aを A =

(6 −11 4

)で定めるとき,An, exp(t A),

(x′

y′

)= A

(xy

)の一般解を求

めよ.さらに,初期条件(x(0)y(0)

)=

(1212

)に対する解を求めよ.

(2) 行列 Aを A =

(8 51 4

)で定めるとき,An, exp(tA),

(x′

y′

)= A

(xy

)の一般解を求め

よ.さらに,初期条件(x(0)y(0)

)=

(1212

)に対する解を求めよ.

(3) 行列 Aを A =

(8 00 4

)で定めるとき,An, exp(tA),

(x′

y′

)= A

(xy

)の一般解を求め

よ.さらに,初期条件(x(0)y(0)

)=

(1212

)に対する解を求めよ.

問題 15.5. 次の問に答えよ.

(1) 行列 Aを A =

(8 −22 4

)で定めるとき,An, exp(t A),

(x′

y′

)= A

(xy

)の一般解を求

めよ.さらに,初期条件(x(0)y(0)

)=

(1628

)に対する解を求めよ.

(2) 行列 Aを A =

(8 81 6

)で定めるとき,An, exp(tA),

(x′

y′

)= A

(xy

)の一般解を求め

よ.さらに,初期条件(x(0)y(0)

)=

(1830

)に対する解を求めよ.

(3) 行列 Aを A =

(7 00 9

)で定めるとき,An, exp(tA),

(x′

y′

)= A

(xy

)の一般解を求め

よ.さらに,初期条件(x(0)y(0)

)=

(1015

)に対する解を求めよ.

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82 京都大学 澤野嘉宏

問題 15.6. 連立微分方程式 x = Axを次の初期条件の下で解け.ただし,記号は x = t(x1, x2)縦

ベクトル.x = t(x1dt,x2dt

)をその微分とする.また,x(0) = t(x1(0), x2(0))を初期条件とする.

初期条件と Aはそれぞれ

(1) x(0) = t(3, 5),A =

(2 11 2

)(2) x(0) = t(4, 7),A =

(2 10 2

)(3) x(0) = t(−1, 2),A =

(5 10 2

)(4) x(0) = t(0, 1),A =

(5 1−2 2

)であたえられる.

記号 t は縦横をそっくり入れかれるという意味の記号.

例:t(3, 7) =

(37

), t

(3 47 5

)=

(3 74 5

)問題 15.7. 連立微分方程式 y′1 = 5y1 − y2, y′2 = 3y1 + y2 の一般解を求めよ.

問題 15.8.

(1) 行列 Aを A =

(6 −11 4

)で定めるとき,An を求めよ.

(2) 行列 Aを A =

(8 51 4

)で定めるとき,An を求めよ.

(3) D =

(λ 00 µ

)のとき,exp(tD)を求めよ.

問題 15.9. 各問題で与えられた A =

(a bc d

)に対して t2 − (a + d)t + ad − bc = 0の解はす

べて整数であることを確認して次の行列の n乗,exp(tA)を計算せよ.さらに,(x′

y′

)= A

(xy

)を解け.最後に初期条件を代入して計算せよ.計算方法はいろいろあるが必要に応じて好きな方法を用いてよい.

(1) 初期条件:x(0) = 4, y(0) = 5 ,行列:A =

(3 21 4

)(2) 初期条件:x(0) = 5, y(0) = 2 ,行列:A =

(4 10 4

)(3) 初期条件:x(0) = 5, y(0) = 6 ,行列:A =

(8 3−3 2

)(4) 初期条件:x(0) = −1, y(0) = 8 ,行列:A =

(10 22 10

)(5) 初期条件:x(0) = 1, y(0) = 2 ,行列:A =

(−3 13 −5

)(6) 初期条件:x(0) = −7, y(0) = −5 ,行列:A =

(4 21 3

)(7) 初期条件:x(0) = 0, y(0) = 2 ,行列:A =

(5 1−1 7

)

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微分方程式演習 83

(8) 初期条件:x(0) = 5, y(0) = 6 ,行列:A =

(9 22 6

)(9) 初期条件:x(0) = 16, y(0) = 7 ,行列:A =

(9 18 11

)(10) 初期条件:x(0) = 1, y(0) = 1 ,行列:A =

(16 5−5 26

)問題 15.10. 行列 Aを次のように与えるとする.それぞれの場合に関して

An, exp(tA),d

dt

(xy

)= A

(xy

)の一般解,初期条件

(x(0)y(0)

)=

(35

)を与えたときの解

を求めよ.

(1) A =

(0 01 0

)(2) A =

(5 55 5

)(3) A =

(11 −11 13

)(4) A =

(19 −11 1

)(5) A =

(3 00 7

)(6) A =

(4 00 4

)

問題 15.11. 次の連立方程式(x′

y′

)=

(2 −11 4

)(xy

)−(5445

)を解け.

問題 15.12. 次の連立方程式

x′y′z′

=

−12 −7 −1420 12 204 2 0

xyz

を解け.問題 15.13. M =

0 2 1−1 −3 −11 1 −1

に対して,exp(tM)を求めよ.

問題 15.14. exp(tM) = e2t

2 1 −11 2 −13 3 −2

+ et

−1 −1 1−1 −1 1−3 −3 3

となるM が存在すればそれを

求めよ.

問題 15.15. x(t), y(t)を未知関数とする微分方程式

dx

dt= −|y|, dy

dt= |x|, x(0) = 2, y(0) = 0

を t ≥ 0の範囲で解け.

問題 15.16. tに関する微分と考えて次の問に答えよ.

(1) 次の連立方程式を解け.x′ = 2x+ 3y

y′ = 6x− y

x(0) = 3

y(0) = 0

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84 京都大学 澤野嘉宏

(2) 次の連立方程式を解け.x′ = 2x+ y

y′ = 2y + z

z′ = 2z

x(0) = a

y(0) = b

z(0) = c

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微分方程式演習 85

15.3. 代入法による連立微分方程式の解法. 行列を用いた連立方程式の解法は上述したが,かなり計算量が多くて大変である.代入法で計算すると計算量が激減する.

例 11. 行列を用いずに代入法で x′ = y, y′ = 25x を解け.ただし,tに関する連立微分方程式と考えること.

例題 11. x′ = y の両辺を微分して,x′′ = y′ である.したがって,x′′ = y′ = 25x となる.x′′ − 25x = 0の解は x = C1 e

5t + C2 e−5t である.したがって,y = x′ = 5C1 e

5t − 5C2 e−5t と

なる.

問題 15.17. x′ = y, y′ = x を解け.ただし,tに関する連立微分方程式と考えること.

問題 15.18. x′ = y, y′ = −x を解け.ただし,tに関する連立微分方程式と考えること.

問題 15.19. x′ = −y, y′ = −x を解け.ただし,tに関する連立微分方程式と考えること.

問題 15.20. x′ = −2y, y′ = −2x を解け.ただし,tに関する連立微分方程式と考えること.

問題 15.21. x′ = y, y′ = −4x を解け.ただし,tに関する連立微分方程式と考えること.

問題 15.22. x′ = 6y, y′ = 6x を解け.ただし,tに関する連立微分方程式と考えること.

問題 15.23. 次の微分方程式 y′ = y + z, z′ = 3y − zの一般解を求めよ.さらに y(0) = z(0) = 1なる初期条件のもとではどうか?ただし,tに関する連立微分方程式と考えること.

問題 15.24. 次の微分方程式 y′ = y + z, z′ = 3y − zの一般解を求めよ.さらに y(0) = z(0) = 1なる初期条件のもとではどうか?ただし,tに関する連立微分方程式と考えること.

問題 15.25. 代入法などで次の tに関する微分の連立微分方程式を解け.

(1) x′ = y, y′ = x(2) x′ = 0, y′ = x(3) x′ = 3x, y′ = x

問題 15.26. 代入法などで次の tに関する微分の連立微分方程式を解け.

(1) x′ = 2y, y′ = 2x(2) x′ = 0, y′ = 2x(3) x′ = 4x, y′ = x

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86 京都大学 澤野嘉宏

15.4. 解の可視化. 現象を記述する微分方程式を解く際に,解いた解から何が言えるかを考察することは非常に大切である.ここでは現象を記述する微分方程式は扱わないが,微分方程式の解から何が言えるかを考察する練習として,解の視覚化,つまり可視化をする.

例題 22. x(t), y(t)に関する連立微分方程式

x′ = −yy′ = −x

を考える.

(1) 初期値によらずに x(t)2 − y(t)2 は tに関して一定であることを示せ.(2) 次の初期値が与えられた時に x(t), y(t)はどのような軌跡をたどるか?(向き,軌跡の方程式を式で答えよ.)(a) (x(0), y(0)) = (3, 2)(b) (x(0), y(0)) = (4,−3)

例題 22の解答.

(1)d

dt(x2 − y2) = 2x

d

dtx− 2y

d

dty = −2xy + 2xy = 0.

(2) とりあえず,微分方程式を解く.A =

(0 −1−1 0

)とすると,A2 = E より,

An =1 + (−1)n

2A+

1− (−1)n

2E =

1

2(A+ E) +

(−1)n

2(A− E)

よって, (xy

)=et

2

(−x(0) + y(0)x(0)− y(0)

)− e−t

2

(−x(0)− y(0)−x(0)− y(0)

)初期値を代入して軌跡をたどればよいが,1.がその際に役に立つ.

(a) x =5e−t + et

2, y =

5e−t − et

2

2.5 5 7.5 10 12.5 15 17.5

-10

-5

5

10

15

下から上へと流れる.

(b) x =e−t + 7et

2, y =

e−t − 7et

2

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微分方程式演習 87

5 10 15 20

-15

-10

-5

5

10

下から上へと流れる.

問題 15.27. x(t), y(t)に関する連立微分方程式

x′ = −y(15.2)

y′ = x(15.3)

を考える.

(1) 初期値によらずに x(t)2 + y(t)2 は tに関して一定であることを示せ.(2) 次の初期値が与えられた時に x(t), y(t)はどのような軌跡をたどるか?(式で答えよ.)

x, y平面上に図示せよ.(a) (x(0), y(0)) = (3, 2)(b) (x(0), y(0)) = (4,−3)(c) (x(0), y(0)) = (−1, 1)

問題 15.28. x(t), y(t)に関する連立微分方程式

x′ = y(15.4)

y′ = x(15.5)

を考える.

(1) 初期値によらずに x(t)2 − y(t)2 は tに関して一定であることを示せ.(2) 次の初期値が与えられた時に x(t), y(t)はどのような軌跡をたどるか?(式で答えよ.)x, y平面上に図示せよ.(a) (x(0), y(0)) = (3, 2)(b) (x(0), y(0)) = (4,−3)

問題 15.29. 次の命題の真偽を判定せよ.

(1) 連立微分方程式 x′ = y, y′ = −xの解の軌跡はx2 + y2

が時刻によらないから,円周上を動くと考えられる.(2) 連立微分方程式 x′ = y, y′ = xの解の軌跡は

x2 − y2

が時刻によらないから,tが実数全体を動くとき (x, y)の軌跡は

x2 − y2 = A, Aは定数

の全体を動くと考えられる.

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88 京都大学 澤野嘉宏

Part 8. ラプラス変換による微分方程式の解法

16. ラプラス変換

16.1. 広義積分. ここでは,∫ ∞

0

e−x dx などの積分を扱う.

問題 16.1. 次の積分を求めよ.答えが∞になる場合がある.左辺の積分は右辺で表される量であると解釈せよ.

(1)

∫ 1

0

log x dx = limε↓0

∫ 1

ε

log x dx

(2)

∫ ∞

0

e−x dx = limR→∞

∫ R

0

e−x dx

(3)

∫ ∞

0

x e−x dx = limR→∞

∫ R

0

x e−x dx

(4)

∫ ∞

1

x−2 dx = limR→∞

∫ R

1

x−2 dx

(5)

∫ 1

0

x−12 dx = lim

ε→0

∫ 1

ε

x−12 dx

(6)

∫ ∞

1

dx

x= lim

R→∞

∫ R

1

dx

x

(7)

∫ ∞

0

e−2x dx = limR→∞

∫ R

0

e−2x dx

ただし,次のことは用いて構わない.

(1) aが実数のとき, limx→∞

xa e−x = 0 が成り立つ.

(2) limx→0

x log x = 0

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微分方程式演習 89

16.2. 定義など. ラプラス変換の定義

Lf(s) =∫ ∞

0

f(t)e−t s dt = limR→∞

∫ R

0

f(t)e−t s dt.

ラプラス変換の計算方法

(1) Lf(s) =∫ ∞

0

f(t)e−t s dt = limR→∞

∫ R

0

f(t)e−t s dt を計算する.

(2) ラプラス変換の表を見る.

逆ラプラス変換の計算方法

(1) 逆ラプラス変換の表を見る.

関数 f(t) ラプラス変換 Lφ(s)

11

s

tnn!

sn+1

eat1

s− acosωt

t

ω2 + t2

sinωtω

ω2 + t2

coshωts

s2 − t2sinhωt

ω

s2 − t2tnf(t) (−1)nφ(n)(s)f(t)

t

∫ ∞

s

φ(n)(u) du

eatf(t) φ(s− a)f ′(t) sφ(s)− f(0)∫ t

0

f(u) du φ(s− a)

f(t− a) e−asφ(s)

f(at)1

aφ(sa

)(2) 微分と極限を交えた公式を用いる場合もあるが,ここではそれは省略.

16.3. ラプラス変換.

例題 23. n = 0, 1, 2, · · · とするとき,次の計算をせよ.

(1) limR→∞

Rn e−R を計算せよ.

(2)

∫ ∞

0

tn e−t dt = limR→∞

∫ R

0

tn e−t dt を計算せよ.

(3) tn e−a t のラプラス変換 L[tn e−a t](s) =

∫ ∞

0

tn e−a te−t s dt を求めよ.ただし,s > −a

としてよい.

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90 京都大学 澤野嘉宏

【注意】ガンマ関数 Γ(x) =

∫ ∞

0

tx−1 e−t dt, x > 0 を用いると,∫ ∞

0

tn e−t dt が計算しやすい.

ガンマ関数の公式:

(1) nが自然数のとき,Γ(n) = (n− 1)!.ただし,0! = 1と定義する.(2) Γ(x) = (x− 1)Γ(x− 1), x > 1

例題 23の解答.

(1) 自然数N,nはN > nを満たすとする.e = 2.718281828 · · · だから,二項展開

(a+ b)n = nC0an + nC1a

n−1b+ · · ·+ nCkan−kbk + · · ·+ nCnb

n

をも用いて,

0 ≤ Nn e−N =Nn

eN≤ Nn

(1 + 1)N≤ Nn

N∑j=0

NCj

.

j = n+ 1以外の項をそぎ落として,

0 ≤ Nn e−N ≤ Nn

NCn+1=

(n+ 1)!

N

(1− 1

N

)· · ·(1− n

N

) .一般に自然数とは限らない実数 R に対して [R] で整数部分を表す.[R] は R の小数部分をそぎ落としただけなので,R − 1 < [R] ≤ Rが成り立つ.先ほどの不等式を N =[R] + 1, R > nで用いて,

0 ≤ Rn e−R ≤ e(1 + [R])n e−[R]−1 ≤ ([R] + 1)−1e · (n+ 1)!(1− 1

[R] + 1

)· · ·(1− n

[R] + 1

)R→∞で最右辺は 0になるから, lim

R→∞Rn e−R = 0 が得られる.

(2) an =

∫ ∞

0

tn e−t dt とおく.定義にしたがって計算していくと,

(16.1) a0 = limR→∞

∫ R

0

e−t dt = limR→∞

[−e−t

]R0= lim

R→∞1− e−R = 1

である.また,n = 1, 2, · · · ならば部分積分すれば

an =

∫ ∞

0

tn e−t dt = limR→∞

∫ R

0

tn (−e−t)′ dt = limR→∞

([−tn e−t

]R0+ n

∫ R

0

tn−1 e−t dt

).

n = 1, 2, · · · なので,積分の下端を代入すると 0になる.(1)から,

(16.2) an = limR→∞

(−Rn e−R + n

∫ R

0

tn−1 e−t dt

)= nan−1

(16.2)を多用して

an = nan−1 = n(n− 1)an−2 = · · · = n(n− 1) · · · 2 · 1 · a0 = n! · a0が得られるが,(16.1)より a0 = 1だから,これを代入して an = n!となる.したがって,∫ ∞

0

tn e−t dt = an = n!

が得られる.

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微分方程式演習 91

(3) u = (s+ a)tなる変換を施して

L[tn e−a t](s) =

∫ ∞

0

tn e−(a+s)t dt =

∫ ∞

0

un e−u du

(a+ s)n+1=

n!

(a+ s)n+1.

ここで,最後の等号を得るために an = n!を用いた.

問題 16.2. 次のラプラス変換を求めよ.

(1) t2

(2) cos a t(3) sin a t(4) t ea t

(5) ea t cos b t(6) ea t sin b t(7) e−2t + 2 e−5t

問題 16.3. sin at, cos at, eat, t, 1のラプラス変換を求めよ.

問題 16.4. (0,∞)で定義された関数 f(t)のラプラス変換の定義を書き,f(t) = 1のラプラス変換を求めよ.

(1) ラプラス変換の定義  Lf(p) =(2) ラプラス変換の計算  L1(p) =

問題 16.5. 次の関数の逆ラプラス変換を求めよ.

(1)3s+ 9

s2 + 7s+ 10

(2)1

s2 + s

例題 24. 次の問に答えよ.

(1) L[y′](s) = sLy(s)− y(0)を示せ.(2) L[y′′](s) = s2Ly(s)− sy′(0)− y(0) を示せ.(3) et, t et のラプラス変換を求めよ.(4) ラプラス変換を用いて y′′ − 2y′ + y = 0の一般解を求めよ.

ただし,yは十分に条件がよいとする.

例題 24の解答.

(1) 定義にしたがって計算すると,

L[y′](s) =∫ ∞

0

y′(t)e−ts dt = limR→∞

∫ R

0

y′(t)e−ts dt

= limR→∞

([y(t)e−ts

]R0+ s

∫ R

0

y(t)e−ts dt

)

= −y(0) + limR→∞

y(R)e−Rs + s limR→∞

∫ R

0

y(t)e−ts dt

= −y(0) + s limR→∞

∫ R

0

y(t)e−ts dt(初めの極限は 0になると仮定してよい.)

= sLy(s)− y(0)

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92 京都大学 澤野嘉宏

となる.(2) (1)より,L[y′′](s) = sLy′(s) − y′(0) であるから,(1)で得られた式と組み合わせればよい.

(3) 例題 23を参照のこと.(s− 1)−1, (s− 1)−2 となる.(4) (1),(2)より与えられた方程式のラプラス変換を取ると,

s2Ly(s)− s y(0)− y′(0)− 2sLy(s)− 2y(0) + Ly(s) = 0

である.これを整理して,Ly(s) = s− 2

(s− 1)2y(0) +

1

(s− 1)2y′(0). ここで,微分して

s− 2

(s− 1)2y(0) +

1

(s− 1)2y′(0) =

1

(s− 1)2y(0)− 1

(s− 1)2y(0) +

1

(s− 1)2y′(0)

になる関数は (3)より,y(0)et−y(0)t et+y′(0)t etであるから,y(t) = y(0)et−y(0)t et+y′(0)t et となる.

問題 16.6. ラプラス変換を用いて次の方程式を解け.

(1) y′′ − 3y′ + 2y = 0, y(0) = 3, y′(0) = 1(2) y′′ + y = t, y(0) = 1, y′(0) = 3(3) y′′ − y′ − 6y = 3t2 + t− 1, y(0) = −1, y′(0) = 6

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微分方程式演習 93

Part 9. 完全形の常微分方程式

17. 線積分

17.1. 基本事項:偏微分と線積分. f(x, y)を開長方形 (a, b)× (c, d)で定義された関数のとき,

∂f

∂x(x, y) = lim

h→0

f(x+ h, y)− f(x, y)h

,∂f

∂y(x, y) = lim

h→0

f(x, y + h)− f(x, y)h

と定める.

例 12. f(x, y) = x2 y3 のとき,∂f

∂x(x, y) = 2x y3,

∂f

∂y(x, y) = 3x2 y2 である.

解の存在と一意性において重要なので次の命題を掲げておきたい.

命題 2. f(x, y)は (a, b)× (c, d)で定義されており,yについて偏微分可能で∣∣∣∣∂f∂y (x, y)∣∣∣∣ ≤M, a < x < b, c < y < d

を満たしているとする.このとき,

|f(x, y)− f(x, y′)| ≤M |y − y′|が成立する.

証明. 平均値の定理より,f(x, y) − f(x, y′) = (y − y′) ∂∂yf(x, z) となる z が y と y′ の間に存在

する.したがって,

|f(x, y)− f(x, y′)| = |y − y′| · |f(x, z)| ≤M |y − y′|

が得られる.

注意 4. リプシッツ条件とは,実軸上で定義された関数 f に対して f によって決まる C = Cf が存在して,すべての x, yに関して

|f(x)− f(y)| ≤ C |x− y|が成り立つことを言う.知らない人(数学者)も多いが,f がリプシッツ条件を満たしていればほとんどの点”で微分可能であることが知られている.微分方程式の解の存在を示す際に使われる重要な概念である.

注意 5. 通常のリプシッツ条件は

(17.1) |f(x, y)− f(x′, y′)| ≤M(|x− x′|+ |y − y′|)のことを言うが,微分方程式でのリプシッツ条件は

(17.2) |f(x, y)− f(x, y′)| ≤M |y − y′|をさす.

関数 P (x, y)と Q(x, y)を領域Dで定義された関数としよう.

このとき,C1-級曲線 γ = (γ1, γ2) : [a, b]→ Dによってパラメータづけされる曲線Cに対して∫C

P (x, y) dx+Q(x, y) dy =

∫ b

a

P (γ1(t), γ2(t))γ′1(t) dt+

∫ b

a

Q(γ1(t), γ2(t))γ′1(t) dt

と定める.

線積分の計算のポイントをまとめる.

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94 京都大学 澤野嘉宏

(1) 与えられた曲線に正しいパラメータを与える.向きが違うと符号が反対になるので注意すること.

(2) 計算の際に dx, dyを正しく変換すること.

17.2. 線積分の計算.

問題 17.1. 曲線 C として C : x2 + y2 = a2, a > 0 (反時計回りに一周)に対して次の線積分の値を計算せよ.

(1)

∫C

x dy − y dx,

(2)

∫C

x dy − y dxx2 + y2

.

問題 17.2. 次の線積分

I =

∫C

(x+ y)dx+ (x− y)dy

を求めよ. ここで,C は y = x4 上 A = (−1, 1) から B = (1, 1) へ向かう曲線である.

-1 -0.5 0.5 1

0.02

0.04

0.06

0.08

0.1

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微分方程式演習 95

18. 完全形の常微分方程式

18.1. 基本事項:完全形の常微分方程式.

定義 13. R2 の部分集合Dが領域であるとは,次の 2条件を満たすことである.

(1) 任意の (a, b) ∈ D に対して,ある ε > 0が存在して,(x − a)2 + (y − b)2 < ε2 ならば,(X,Y ) ∈ Dとなる.

(2) 任意の (a, b) ∈ D と (a∗, b∗) ∈ D に対して,連続関数 X : [0, 1] → R, Y : [0, 1] →R が存在して,“全ての t ∈ [0, 1] に対して (X(t), Y (t)) ∈ D”と“ (X(0), Y (0)) =(a, b), (X(1), Y (1)) = (a∗, b∗)”が成り立つことである.

例 13. 円D = x2+y2 < 1は領域である.実際に,それぞれの条件は次のようにして確かめられる.(a, b) ∈ Dが与えられたとする.ε = 1−

√a2 + b2 とすることで,図形 (x−a)2+(y−b)2 < ε2

とDを書いてみればわかるように,(x− a)2 + (y− b)2 < ε2 ならば,(X,Y ) ∈ Dとなる.また,(a, b) ∈ D, (a∗, b∗) ∈ D が与えられたとき,X(t) = t a∗ + (1− t)a, Y (t) = t b∗ + (1− t)b とおくことで,(X(t), Y (t)) ∈ D, (X(0), Y (0)) = (a, b), (X(1), Y (1)) = (a∗, b∗) が成り立つ.同じ要領で,境界のない円板は中心と半径によらずすべて領域であるとわかる.

例 14. 正方形D = 0 < x, y < 1は領域である.実際に,それぞれの条件は次のようにして確かめられる.(a, b) ∈ Dが与えられたとする.ε = min(x, 1−x, y, 1−y)とすることで,図形 (x−a)2+(y−b)2 < ε2 とDを書いてみればわかるように,(x−a)2+(y−b)2 < ε2 ならば,(X,Y ) ∈ Dとなる.また,(a, b) ∈ D, (a∗, b∗) ∈ D が与えられたとき,X(t) = t a∗+(1−t)a, Y (t) = t b∗+(1−t)bとおくことで,(X(t), Y (t)) ∈ D, (X(0), Y (0)) = (a, b), (X(1), Y (1)) = (a∗, b∗) が成り立つ.同じ要領で,境界のない正方形,もっと一般に長方形は中心と辺の長さによらずにすべて領域であるとわかる.

定義 14. f(x, y)をR2 の領域Dで定義された関数とする.

(1) f(x, y)が D で連続であるとは,f(x, y) = lim(h,k)→(0,0)

f(x + h, y + k) が存在することで

ある.

(2) 極限が存在する限り,fx(x, y) = limh→0

f(x+ h, y)− f(x, y)h

と定義する.

(3) 極限が存在する限り,fy(x, y) = limk→0

f(x, y + k)− f(x, y)k

と定義する.

(4) fx(x, y)が存在すると仮定する.極限が存在する限り,

fxx(x, y) = limh→0

fx(x+ h, y)− fx(x, y)h

と定義する.(5) fy(x, y)が存在すると仮定する.極限が存在する限り,

fyx(x, y) = limh→0

fx(x+ h, y)− fx(x, y)h

と定義する.(6) fx(x, y)が存在すると仮定する.極限が存在する限り,

fxy(x, y) = limk→0

fx(x, y + k)− fx(x, y)k

と定義する.(7) fy(x, y)が存在すると仮定する.極限が存在する限り,

fyy(x, y) = limh→0

fy(x, y + k)− fy(x, y)k

と定義する.

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96 京都大学 澤野嘉宏

(8) f が C1-級であるとは,すべての (x, y) ∈ Ωに対して fx(x, y), fy(x, y) が両方とも存在して連続関数となることである.

(9) f が C1-級であるとは,すべての (x, y) ∈ Ωに対して

fx(x, y), fy(x, y), fxx(x, y), fxy(x, y), fyx(x, y), fyy(x, y)

がすべて存在して,上の 6つの関数が連続関数となることである.

“偏微分は交換する”つまり,つぎの定理が成り立つ.

定理 33. f(x, y)をR2の領域Dで定義された級関数とする.Dで fx, fy, fxy, fyxが与えられたとする.fxy, fyx が両方とも連続ならば,fxy = fyx が成り立つ.

証明. f(x+a, y+ b)−f(x+a, y)−f(x, y+ b)+f(x, y) に対して平均値の定理を使う.gy,b(x) =f(x, y + b)− f(x, y) とおくと,

f(x+ a, y + b)− f(x+ a, y)− f(x, y + b) + f(x, y) = gy,b(x+ a)− gy,b(x)が成り立つから,gy,b(x)に対して平均値の定理を用いて,0 < θx,y,a,b < 1となる θx,y,a,b で

gy,b(x+ a)− gy,b(x) = a g′y,b(x+ θx,y,a,ba)

が成り立つ.つまり,

f(x+ a, y + b)− f(x+ a, y)− f(x, y + b) + f(x, y)

= a fx(x+ θx,y,a,ba, y + b)− a fx(x+ θx,y,a,ba, y)

となる.さらに,hx,θx,y,a,b,a(z) = fx(x+ θx,y,a,ba, z) に平均値の定理を用いて,

f(x+ a, y + b)− f(x+ a, y)− f(x, y + b) + f(x, y) = a b fxy(x+ θx,y,a,ba, y + φx,y,a,bb)

なる φx,y,a,b ∈ (0, 1)が見つけられる.変数の順番を逆にすれば,

f(x+ a, y + b)− f(x+ a, y)− f(x, y + b) + f(x, y) = a b fyx(x+ θ∗x,y,a,ba, y + φ∗x,y,a,bb)

なる θ∗x,y,a,b, φ∗x,y,a,b ∈ (0, 1)が見つけられる.以上より,

fxy(x+ θx,y,a,ba, y + φx,y,a,bb) = fyx(x+ θ∗x,y,a,ba, y + φ∗x,y,a,bb)

となる.θx,y,a,b, φx,y,a,b, θ∗x,y,a,b, φ

∗x,y,a,b ∈ (0, 1)だから,

lima,b→0

(x+ θx,y,a,ba, y + φx,y,a,bb) = lima,b→0

(x+ θ∗x,y,a,ba, y + φ∗x,y,a,bb) = (a, b)

である.したがって,fxy, fyx は連続であるから,

fxy(x, y) = lima,b→0

fxy(x+ θx,y,a,ba, y + φx,y,a,bb)

= lima,b→0

fyx(x+ θ∗x,y,a,ba, y + φ∗x,y,a,bb)

= fyx(x, y)

が成り立つ.

そこで,この問題の逆を考えよう.

[問題] Q,RをR2 の領域Dで定義された C1-級関数とする.両立条件

[両立条件]∂Q

∂y=∂R

∂x

が成り立つとすると,∂P

∂x= Q,

∂P

∂y= R が成り立つような C2-級関数 P が存在

するか?

一般にはこの問題の答えは『否』である.

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微分方程式演習 97

命題 3. Q(x, y) =y

x2 + y2, R(x, y) = − x

x2 + y2とする.

(1) 両立条件∂Q

∂y=∂R

∂xが成り立つ.

(2)∂P

∂x= Q,

∂P

∂y= R が成り立つような C2-級関数 P は存在しない.

証明.

(1)∂Q

∂y=∂R

∂x=

x2 − y2

(x2 + y2)2だからである.

(2) 仮にそのような関数が存在したとする.

すると,I =

∫ 2π

0

(−Q(cos θ, sin θ) sin θ +R(cos θ, sin θ) cos θ) dθ に対して,

I =

∫ 2π

0

(−∂P∂x

(cos θ, sin θ) sin θ +∂P

∂y(cos θ, sin θ) cos θ

)dθ

=

∫ 2π

0

∂θP (cos θ, sin θ) dθ

= 0.

ところが,実際には∫ 2π

0

(−Q(cos θ, sin θ) sin θ +R(cos θ, sin θ) cos θ) dθ = −∫ 2π

0

dθ = −2π

であるから,この命題にある P が存在すると仮定して矛盾が得られた.

そこで,領域に条件をつけてみる.

定義 15. 領域 D が単連結であるとは,任意の D 内の 2 つの C1-曲線 γ0, γ1 : [a, b] → D でγ0(a) = γ1(a)および γ0(b) = γ1(b)が成り立つものに対してあるC1-級関数H : [a, b]× [0, 1]→ Dが存在して,t ∈ [a, b]および i = 0, 1に対して γi(t) = H(t, i)が成立することである.

例 15. 境界のない円板つまり開円板は単連結である.実際に,任意の開円板内Dの 2つの C1-曲線 γ0, γ1 : [a, b]→ D で γ0(a) = γ1(a)および γ0(b) = γ1(b)が成り立つものをとる.C1-級関数H : [a, b]× [0, 1]→ Dを

H(t, s) = (1− s)γ0(t) + sγ1(t)

と定義する.すると,t ∈ [a, b]および i = 0, 1に対して γi(t) = H(t, i)が成立する.したがって,円板は単連結である.

例 16. 開円板から中心を取り除いた領域 D は単連結ではない.実際に,相似変換と平行移動を組み合わせて D = 0 < x2 + y2 < 1と仮定してよい.γ0(t) = (cos t, sin t), 0 ≤ t ≤ π とγ1(t) = (cos t,− sin t), 0 ≤ t ≤ π に対して,仮に単連結の条件にあるようなH が取れるとH の像は原点を含まないといけないはずである.ところが,Dは (0, 0)を除いてあるからDは単連結ではないということになる.

初めに与えた問題にある程度の答えを与えておこう.

定理 34. Q,RをR2の単連結領域Dで定義された C1-級関数とする.両立条件∂Q

∂y=∂R

∂xが成

り立つとすると,∂P

∂x= Q,

∂P

∂y= R が成り立つような C2-級関数 P が存在する.

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98 京都大学 澤野嘉宏

証明. 証明は線積分を用いて証明される.初めに,(x0, y0) ∈ Dを固定する.(x0, y0)から (x, y)へいたる折れ線からなる曲線 C を取って

P (x, y) =

∫C

Q(X,Y ) dX +R(X,Y ) dY

と定める.このとき,大事なことは D が単連結であるために,P (x, y)は C によらないことが証明できることである.実際に,C1, C2 を (x0, y0)から (x, y)へいたる二つの曲線とする.必要なら (x0, y0)から (x, y)へいたる別の曲線 C3 で C1, C2 と始点と終点でしか交わらないものを考えることで,C1 と C2 は始点と終点でしか交わらないとしてよい.さらに,C2 の終点と始点を逆にした逆向き曲線を考え,C1 の始点と終点をつないで,D内のループを考える.必要ならばC1, C2 を入れ替えてこのループは反時計回りであるとしてよい.このとき,C1 と向きを入れ替えた曲線 C2 は領域D0 の境界であるとして,ストークスの定理より∫

C1

Q(X,Y ) dX +R(X,Y ) dY −∫C2

Q(X,Y ) dX +R(X,Y ) dY

=

∫D0

(−∂Q∂x

(X,Y ) +∂R

∂y(X,Y )

)dX dY = 0

となる.したがって,P (x, y)は C の取り方によらない.

この P に対して

∂P

∂x= lim

h→0

P (x+ h, y)− P (x, y)h

=1

h

∫ h

0

Q(s+ x, y) ds = Q(x, y)

となる.また,

∂P

∂y= lim

h→0

P (x, y + h)− P (x, y)h

=1

h

∫ h

0

R(x, s+ y) ds = R(x, y)

であるから,P が求めるべきものである.

【注意】証明を見てわかるように,求めるべき解 P がどのようにして求められるかもわかる.

最後に,この問題の一意性に関して言及しておこう.

定理 35. Dを一般の領域とするとき,∂P

∂x=∂P

∂y= 0 となる C1-級関数 P は定数関数しかない.

証明. (x0, y0)を固定点として,すべての (x, y) ∈ Dに対して P (x, y) ≡ P (x0, y0) を示す.Dは領域だから,C1-級曲線 γ が存在して (x, y)と (x0, y0)が曲線 γ = (γ1, γ2) : [a, b]→ Dで結ばれる.偏微分が消えるという仮定から,

P (x, y) = P (γ(b))− P (γ(a)) + P (x0, y0)

=

∫ b

a

∂P

∂x(γ(t))γ′1(t) dt+

∫ b

a

∂P

∂y(γ(t))γ′2(t) dt+ P (x0, y0)

= P (x0, y0)

が得られる.

さて,単連結領域Dで定義されたQ(x, y)と R(x, y)が両立条件を満たしているとして,微分方程式 Q(x, y) dx+R(x, y) dy = 0 を再び考える.

このとき,Q(x, y)+R(x, y)dy

dx= 0だが,単連結領域Dで定義されているQ(x, y)とR(x, y)が

両立条件を満たしているので,Q(x, y) =∂P

∂x, R(x, y) =

∂P

∂yとおける.従って,

∂P

∂x+∂P

∂y

dy

dx= 0

となる.これを xについて積分すると P (x, y) = P (x, y(x)) = C が得られる.

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微分方程式演習 99

18.2. 完全形の常微分方程式.

例題 25. (4x2 + 2x2y2) dx− (x2y + y) dy = 0 を解け.

例題 25の解答. 変数分離形の一種である.dx, dy を一つの数(変数)だと思って xを含むのと

yを含むのを分離する.x2 dx

x2 + 1=

y dy

2y2 + 4. 積分して,x− tan−1 x =

1

4log(y2 + 2) +C. −4C を

C で表して,y2 + 2 = e4x−4 tan−1 x+C = exp(4x− 4 tan−1 x+ C). ゆえに,

y = ±√e4x−4 tan−1 x+C − 2 = ±

√exp(4x− 4 tan−1 x+ C)− 2.

問題 18.1. ex dx− ey dy = 0を解け.

問題 18.2. 次の微分方程式は完全形であることを証明し,その方程式を解け.

(1) (3x2 + 2y)dx+ (2x+ 2y)dy = 0

(2) (2xex2

+ sin y)dx+ x cos ydy = 0

(3)(2x log y +

y

x

)dx+

(log x+

x2

y

)dy = 0

問題 18.3. (x, y) = (0, 0)として考える.y

x2 + y2dx− x

x2 + y2dy = 0 を解け.

問題 18.4. 次の方程式を解け.

(1) 2xy dx+ x2 dy = 0(2) ey sinxdx− ey cosxdy = 0

問題 18.5. 次の微分方程式 x(x2 + y2 − 1) dx+ y (x2 + y2 + 1) dy = 0 を線積分を用いて解け.

問題 18.6. D = (x, y) ∈ R2 : x > y > 0 で定義された実数値関数 f(x, y)は全微分可能で,次の条件 (18.1)と (18.2)を満たしているとする.

f(λx, λ y) = f(x, y), λ > 0, (x, y) ∈ D(18.1)

1

x

∂f

∂x+

1

y

∂f

∂y=

1

x2 + y2, (x, y) ∈ D(18.2)

以下の問に答えよ.

(1) (18.1)より,x∂f

∂x+ y

∂f

∂y= 0 が導かれることを示せ.

(2) 全微分 df を極座標を用いて表せ.(3) f(x, y)を求めよ.

問題 18.7. f ∈ C3 とする.x = 0のときは f(x) > 0で,f(1) = 1を満たす.xy平面において原点の周りを正の向きに一周する任意の区分的に滑らかな閉曲線 Γに対して,∫

Γ

1

f(x) + f(y)(x dy − y dx)

が一定値 αをとるとき,αの値と関数 f(x)を求めよ.

問題 18.8. R3 の領域∆ = (x, y, z) ∈ R3 : x > y > z > 0

で定義された正の値をとる微分可能な関数 f(x, y, z)が次の条件を満たしているとする.

(1) (x, y, z), (x+ h, y + h, z + h) ∈ ∆ のとき,f(x+ h, y + h, z + h) = f(x, y, z).

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100 京都大学 澤野嘉宏

(2) ある実数 αが存在して

f(λx, λ y, λ z) = λαf(x, y, z), (x, y, z) ∈ ∆, λ > 0

が成り立つ.

(3) x2∂f

∂x+ y2

∂f

∂y+ z2

∂f

∂z=

3(x+ y + z)f

g = log f の全微分を考えることによって,f を求めよ.

問題 18.9. R2 \ (0, 0)上のなめらかな 1次微分形式

ω = f(x, y) dx+ g(x, y) dy

が次の 3条件を満たすとする.

(1) dω = 0.

(2)√x2 + y2 = 1のとき,ω = x dx+ y dy.

(3)√x2 + y2 = 2のとき,ω = −x dx− y dy.

次の問に答えよ.

(1) ωはR2 \ (0, 0)上の完全形式であることを示せ.(2) ωは 1 <

√x2 + y2 < 2上で消えることを証明せよ.

問題 18.10. xmyn の形の積分因子を求めて,dy

dx=xy − y2

xy − 1を解け.

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微分方程式演習 101

Part 10. 解の漸近的な挙動

19. 平衡点

微分方程式によって記述される現象の極限状態を考えることがよくある.たとえば,物体が空気抵抗を受けて落下すると,時刻が十分たつと等速直線運動をするというのもこの一例である.

問題 19.1. 次の微分方程式 dx

dt= y − y3

dy

dt= −x+ x3

の平衡点を求め,軌道の概形を描け.

問題 19.2. 以下のような常微分方程式の初期値問題を考える.x′(t) = λ− αx(t)− β x(t)z(t)y′(t) = β x(t)z(t)− γ y(t)z′(t) = δ y(t)− ε z(t)

ただし,λ, α, β, γ, δ, ε > 0 は定数であり,α ≤ γ とする.0 < t <∞に対して初期条件x(0) = x(0+) > 0, y(0) = y(0+) > 0, z(0) = z(0+) > 0

を与えると一意的に解が得られると仮定する.

(1) t > 0として x(t) > 0, y(t) > 0, z(t) > 0を示せ.

(2) x(0) + y(0) ≤ λ

αであれば,x(t) + y(t) ≤ λ

α, t > 0 を示せ.

(3) (x, y, z) = (λ/α, 0, 0)という自明な定常解が存在するが,それ以外の正の定常解が存在するための必要十分条件を求めよ.

(4) (3)の条件が満たされるなら,(x, y, z) = (λ/α, 0, 0)は不安定であることを証明せよ.

問題 19.3. β, γ, δ, µ, bをすべて正の定数とする.以下の連立常微分方程式の初期値問題を考える.

dx

dt(t) = −β x(t)v(t)

dy

dt(t) = β x(t)v(t)− γ y(t)

du

dt(t) = b− (µ+ δ y(t))u(t)

dv

dt(t) = δ y(t)u(t)− µ v(t)

ただし,初期条件は

x(0) = x0 > 0, y(0) = y0 ≥ 0, u(0) = u0 > 0, v(0) = v0 ≥ 0

とする.この微分方程式には解が唯一存在すると仮定してよい.

(1) t > 0に対して x(t) > 0, y(t) ≥ 0, u(t) > 0, v(t) ≥ 0 であることを証明せよ.

(2) 任意の α > 0に対して,P ∗ :=

(α, 0,

b

µ, 0

)が平衡点になることを示せ.さらに,パラ

メーター R0 を R0 :=αβ δ b

γ µ2と定めると,P ∗ は R0 < 1のとき,局所漸近安定であり,

R0 > 1のとき不安定であることを示せ.

(3) x∞ = limt→∞

x(t) は有限確定であることを示せ.さらに,J =

∫ ∞

0

y(t) dt を x∞ で表せ.

(4) x∞ > 0であることを示せ.

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102 京都大学 澤野嘉宏

20. 極限軌道

まず,定義を与える.

定義 16. 自励系,つまり

(20.1)d

dtx(t) = f(x(t)), x(0) = a

の形をしている微分方程式がR全体で定義されているとする.γ = x(t) : t ∈ R とおく.

(1) ∞に発散する単調増大数列 tkk∈Nがあって, limk→∞

x(tk) と表される点全体を正極限集

合といい,L+(γ)で表す.(2) −∞に発散する単調増大数列 tkk∈Nがあって, lim

k→∞x(tk) と表される点全体を負極限

集合といい,L−(γ)で表す.(3) L+(γ)の点を通る解軌道を極限軌道という.(4) L+(γ)がただ一つの孤立した周期解の極限軌道からなるとき,L+(γ)を (極限)周期軌道という.

次の性質が成り立つ.

定理 36. L+(γ)について次のことが成り立つ.

(1) L+(γ)は閉集合である.(2) ω ∈ L+(γ)とすると,ωを初期値とする解はすべて L+(γ)に含まれる.(3) γ+ = x(t) : t ≥ 0が有界であるとすると,L+(γ)は弧状連結コンパクト集合である.さらに,x(t)と L+(γ)の距離は 0に収束する.

問題 20.1. c > 0を定数とする.x′′ + x− cx2 = 0の解で,x(0) = 0, x′(0) = a をみたすものをx(t, a)とおく.

(1) x(·, a)が周期関数になるための aの条件を求めよ.(2) x(·, a)が周期関数になるとき,その周期 T を表す式を求めよ.

問題 20.2. (x, y) ∈ Rn \ (0, 0) を極座標表示する.dr

dt= r sin

1

r,dθ

dt= 1

を考える.この方程式の極限軌道を求めよ.

21. ポアンカレ・ベンディクソンの定理,ポアンカレ指数

問題 21.1. 次の方程式の平衡点 (x, y) = (0, 0)における指数を求めよ.さらに,周期軌道を持たないことを証明せよ.

(1) x′ = x(2y3 − x3), y′ = y(y3 − 2x3).(2) x′ = y2 − x4, y′ = x3y.

ただし,x, yは時間 tの関数であるとする.

問題 21.2. x, yは時間 tの関数であるとする.

x′ = f(x, y), y′ = g(x, y)

とおく.f(x, y)が次の (1)と (2)として与えられたとして,それぞれの場合に関して以下の問に答えよ.

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微分方程式演習 103

(a) 平衡点をすべて特定せよ.

(b) V =∂f

∂x+∂g

∂yを計算せよ.

(c) 周期軌道を持たないことを示せ.

(1) f(x, y) = 2y + x+ x3, g(x, y) = x+ y3.(2) f(x, y) = y, g(x, y) = −x− y(1 + x2 + x4).

問題 21.3. 微分方程式

x′ = x+ y + x(x2 + 2y2), y′ = −x+ y + y(x2 + 2y2)

は極限周期解をもつことを示せ.ただし,x, yは時間 tの関数であるとする.

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104 京都大学 澤野嘉宏

Part 11. 自然科学への応用

22. 物理への応用

問題 22.1. 油滴などは落下する際に落下速度 vに正比例した空気抵抗を持つとする.これを式で

表すとmdv

dt= mg − kv で与えられる.ここで g は重力加速度mは油滴の質量である.次の問

に答えよ.

(1) 初速度を v0 として問題の微分方程式を解け.(2) 十分に時間がたつと落下速度はどのような値になるか?

問題 22.2. ばね定数 kのばねに質量mのおもりをつけて,摩擦のない床におく.ばねの変位がxのとき,力は k xが変位とは反対の方向にかかるので

(22.1) md2x

dt2= −k x

が成り立つ.微分方程式 (22.1)を用いてこの運動の周期を求めよ.さらに,

E(t) =1

2m

(dx

dt

)2

+1

2k x2

が時間によらない保存量であることを確かめよ.

問題 22.3. 風などが吹いている中に熱いコーヒーを置く.コーヒーは 100度に熱したとして温度が 10度の外気にさらしておくと,何分でさめるか?ここで,コーヒーが 20度になったら,さめてしまったということにする.温度変化に関する次のデーターを参照せよ.

(1) 100度のコーヒーは 1分後 80度になった.

(2) コーヒーの温度を T,外気温を T0とするときdT

dt= k(T −T0)なる関係が知られている.

ただし,kは負の定数.

また,答えは次の選択肢から選べ.[a]4分 [b]5分 [c]7分 [d]9分 [e]12分 

数値表 log10 2 = 0.3010, log10 3 = 0.4771, log10 7 = 0.8451

問題 22.4. 風などが吹いている中に熱いお茶を置く.お茶は 100度に熱したとして温度が 20度の外気にさらしておくと,何分でさめるか?ここで,お茶が 30度になったら,さめてしまったということにする.温度変化に関する次のデーターを参照せよ.

(1) 100度のお茶は 4分後 60度になった.

(2) お茶の温度を T,外気温を T0とするときdT

dt= k(T − T0)なる関係が知られている.た

だし,kは負の定数.

問題 22.5. 自己インダクタンスが L(H)であるコイルと電気容量が C(F )であるコンデンサーの両端をそれぞれをつないで,円形の回路を作る.次の問いに答えよ.

(1) 電流を I として電圧降下の式を作れ.(2) この電気回路から交流が得られるが,周期はいくらか?

問題 22.6. 圧力 p(N/m2),温度 T (K),体積 V (m3)の気体X を考える.nモルの気体があるとする.この気体の定積モル比熱を Cv とする.Qを気体に与えた熱,W を気体にした仕事,U を気体の内部エネルギーとして,内部エネルギーの変化量を dU と表せば,

(22.2) dU = Q+W, dU = nCvdT, W = −pdV, pV = nRT

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微分方程式演習 105

なる関係がある.この気体が外部との熱のやり取りをしないとき,Q = 0が成り立つが,このとき T, V の関係を求めよ.

問題 22.7. ばね定数 kの質量が無視できるばねに質量mのおもりを取り付ける.重力加速度をgとする.

(1) 摩擦のない床にその系を置くとき,物体を変位させると単振動するが,その周期はいくらか?

(2) おもりをつけて自然長を保ったまま,手を離すと単振動するが,このときの運動を記述せよ.ただし,時間が秒で x軸を鉛直下向きに取る.

問題 22.8. 振動を表す方程式に関して考える.先ほどと同じように振動を表す方程式を

(22.3) y′′ + k2y = 0

で現すことにする.この方程式に余計な項が加わった

(22.4) y′′ + k2y = A sinωx

を考える.k, ω > 0として,次の問いに答えよ.

(1) 方程式 (22.3)の一般解を求めよ.(2) ω = kの時 y = a sinωx+ b cosωxの形をした (22.4) の特殊解を求めよ.(3) ω = kの時,方程式 (22.4) の一般解を求めよ.(4) ω = kの時 y = ax sinωx+ bx cosωxの形をした (22.4) の特殊解を求めよ.(5) ω = kの時,方程式 (22.4) の一般解を求めよ.(6) この方程式 (22.4)を元にアメリカのタコマ橋が崩壊した理由を説明せよ.

問題 22.9. コップの底にあるブランデーの芳香成分が,コップの中を拡散して,定常的にコップの口から大気中に放散されているとき,コップの中の気体中の芳香成分のコップの底から高さ zに関する分布を求めたい.Fickの法則に基づいて次のように計算した.はじめに,Fickの法則に

より,濃度勾配dC

dzは拡散流束N(z)を用いてN(z) = −D dC

dz. z, z + dzの間の流出分を考える

とN(z + dz)−N(dz) = 0 を得る.これをテーラー展開を用いて整理すると

(22.5)dC2

dz= 0

が得られる.底面 z = z1での濃度を C1として,コップの口 z = z2での濃度を C2とする.すなわち,C(z1) = C1, C(z2) = C2 とおく.これを踏まえて,次の問に答えよ.

(1) 微分方程式dC2

dz= 0, C(z1) = C1, C(z2) = C2 を解け.

(2) 0 ≤ z ≤ 1および C1 = 3, C2 = 5とする.濃度とコップの底面からの高さの関係をグラフに表せ.

問題 22.10. 底でつながっている同じ形のタル A,Bの一方 Bにさらに底から穴をあける.タルには Bのほうには水が 100リットル,Aのほうには 10パーセントの食塩水が 100リットル入っているとする.このとき,流出する溶液の濃度 yパーセントを時間 tの関数で表せ.

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106 京都大学 澤野嘉宏

23. 化学への応用

問題 23.1. 化学反応に関して考える.今特に

k1A→ k2B + k3 C

となる反応を考える.この分解速度は

d[A]

dt= −k [A]a

で与えられる.この aのことを反応次数,この反応を a次反応という.五酸化二窒素の分解を考える.

2N2O5 → 4NO2 +O2

実験で次のデーターを得た.この反応の反応次数 aを求めよ.

t 0 1 2 3 · · ·[N2O5] 0.001 0.0005 0.00025 0.000125 · · ·

問題 23.2. 深さ Lのビーカーに NaOH溶液が入っていて,この上面から CO2 が定常的に溶け込んでいる.ビーカーの深さ方向における CO2 の分布を求めたい.次のようにしてこの問題を解いた.

(1) はじめに,厚さ dzの円板を考える.高さ zでの CO2の濃度を C(z)で表す.zでは単位

面積当たり,CO2の濃度はD

(dC

dz

)であらわされる.(この法則を Fickの法則という)

また,z + dzでは

D

(dC

dz

)(z + dz) = D

(dC

dz

)+Ddz

(d2C

dz2

)の CO2 の供給がある.(この法則を Fickの法則という)さらに,反応

2NaOH+CO2 → Na2CO3 +H2O

による損失は k > 0を用いて k C dzと表される.したがって,

k C dz = D

(dC

dz

)(z + dz)−D

(dC

dz

)(z)

が得られる.整理すると

(23.1) Dd2C

dz2= k C

が得られる.(2) さらに,外気の CO2の濃度は C0で一定であり,ビーカーの底では CO2が縦に動かないから微分が消えると思われる.以上のことをまとめると,

(23.2) C(0) = C0,dC

dz(L) = 0

が得られる.

これに関して以下の問に答えよ.

(1) 微分方程式 (23.1) を条件 (23.2) のもとに解け.(2) k = D = C0 = L = 1として,C = C(z), 0 ≤ z ≤ Lのグラフを描け.

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微分方程式演習 107

問題 23.3. ラスコー洞窟から検出される木炭の 1950年における毎分 1グラムあたりの崩壊数は0.97であり,現在生きている木のそれは 6.68である.木炭の形成された年代を求めよ.

ただし,次の事実が知られているのでそれを仮定することにする.

宇宙船によって大気中に中性子が生み出されて,それが窒素と結びついて 14C を作る.宇宙船の衝撃の強さは過去から現在まで一定している.生きている生物は大気中と平行した 14C を取り込んでいるが,生物が死ぬと生物には 14C は取り込まれず,14C は自然崩壊していく.『崩壊数はその時点での原子数に比例する.』半減期は 5568年である.

この仮説をもとにしてこの問題を次のように解いた.N を原子数とすると.『・・・』は

(23.3)dN

dt= −λN

と定式される.

(1) 5568年という半減期を用いて λの大きさを特定せよ.ただし,log 2 = 0.69 · · · を用いること.また,正解は最も近いものを次の選択肢から選べ.

(a)1

8000, (b)

1

800, (c)

1

5000, (d)

1

50

(2) すこし乱暴であるが,log6.68

0.97= 2 と仮定して木炭の年代を特定せよ.正解は最も近い

ものを次の選択肢から選べ.

(a) 1000年前, (b) 10000年前, (c) 100000年前, (d) 1000000年前

問題 23.4. 化学反応 A → B + C に関して考える.逆反応はほとんど起きないと仮定する.[A] = [A](t)は時刻 tにおける [A]の濃度とするとき,Aの消耗速度は

(23.4)d[A]

dt= −k [A]a

で与えられる.ここで,k > 0 は定数で a は自然数の定数とする.身近な反応の多くの場合,a = 1, 2であることが知られている.aを反応次数という.過酸化水素の分解

A = H2O2, B = H2O, C =1

2O2

に関して,濃度を調べたところ次のデーターを得た.過酸化水素の反応次数はいくらか?理由を

t 0 1 2 3 · · ·[H2O2] 100 50 25 12.5 · · ·

つけて答えよ.ただし,初めの濃度を 100として,濃度が 50になった時刻を 1と正規化しているので注意せよ.【ヒント】(23.4)を a = 1, 2に対して解け.

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108 京都大学 澤野嘉宏

24. 生物,人口学への応用

問題 24.1. 次の 1階微分方程式は変動する環境の下で,生物人口の増殖を記述するモデル方程式である.

(a) :dx

dt= x(t)(α(t)− β(t)x(t)), t > 0

ここで,x(t)は時刻 tにおける人口数,α(t)は人口増加率,β(t)は環境容量を表す.α(t),β(t)は与えられたR上の連続関数で,β(t) > 0とする.以下の問に答えよ.

(1) x(0) > 0であれば,x(t)は t > 0に対して常に正であることを示せ.(2) x(t), y(t)を (a)の二つの解とする.x(0) > y(0) > 0であれば,x(t) > y(t) > 0であることを示せ.

(3) x(t), y(t)を (a)の二つの解とする.x(0), y(0) > 0であれば, limt→∞

y(t)

x(t)が存在すること

を示せ.

(4) x(t)を (a)の解とする.もし,∫ ∞

0

β(s)x(s) ds = ∞ のときは,任意の解 y(t) > 0に対

して∫ ∞

0

β(s)y(s) ds =∞ が成り立つことを示せ.さらに, limt→∞

y(t)

x(t)= 1 も成り立つこ

とを示せ.

問題 24.2. 1次元空間に分布した個体群における伝染病伝播のモデルとして以下の微分方程式系を考察する.

∂u

∂t= −β σ u(x, t)

∫ ∞

−∞λ(x− y)v(y, t) dy

∂v

∂t= −γ v(x, t) + β σ u(x, t)

∫ ∞

−∞λ(x− y)v(y, t) dy

∂w

∂t= γ v(x, t)

ここで,β は感染率,σは個体群密度,γ は回復率で,いずれも正の定数とする.u(x, t)は位置xにおける感受性個体群割合,v(x, t)は位置 xにおける感染個体群割合,w(x, t)は位置 xにおける感染から回復した個体群の割合とする.また,λ(z)は距離 |z|の感染個体と感受性個体の間の接触率であり,非負有界連続関数で,∫ ∞

−∞λ(z) dz = 1, λ(−z) = λ(z), z ∈ R

であると仮定する.初期条件を

u(x, 0) = 1− ε(x), v(x, 0) = ε(x), w(x, 0) = 0

として与える.ただし,εは a, α > 0を定数として

ε(x) = αχ|x|≤a(x)

で与えられる.以下では,与えられた初期条件に対して,このシステムは一意的で大域的な解を

もつことを前提にして考えてよいものとする.また,パラメータ R0 を R0 =βσ

γで定める.

(1) 上記の初期条件の下で,

0 ≤ u(x, t) ≤ 1, 0 ≤ v(x, t) ≤ 1, 0 ≤ w(x, t) ≤ 1, t > 0, x ∈ (−∞,∞)

を満たすことを示せ.

(2) W (x, t) =

∫ ∞

−∞λ(x− y)w(y, t) dy とおくとき,初期条件とW (x, t)を用いて,u(x, t)を

表せ.

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微分方程式演習 109

(3) w(x, t)は以下の方程式を満たすことを示せ,

1

γ

∂w(x, t)

∂t+ w(x, t) = 1− (1− ε(x)) exp(−R0W (x, t))

(4) 各点 xにおいて,

u∞(x) = limt→∞ u(x, t)

v∞(x) = limt→∞ v(x, t)

w∞(x) = limt→∞ w(x, t)

が存在して

u∞(x) > 0

v∞(x) = 0

w∞(x) > 0

であること

を示せ.(5) R0 > 1と仮定する.方程式 x = 1− exp(−R0 x)はただ一つの正の根を持つことを示せ.その正の根を pとすれば,

infx∈R

w∞(x) ≥ p

であることを示せ.

問題 24.3. a, b > 0とする.ロジスティック方程式dy

dx= (a − b y)y を解いて lim

x→∞y(x) を求め

よ.ただし,y(x)は −∞ < x <∞で定義されていて 0 < y(x) <a

b, −∞ < x <∞ を満たして

いるとしてよい.

問題 24.4. ある種の病原菌はその個体数N に正比例した増殖速度を持つとする.これを式で表す

とdN

dt= kN となる.時刻 t = 0においてこの病原菌はN0個存在したとして,次の問に答えよ.

(1) 問題の微分方程式を解け.(2) k = log 2 = 0, 699 · · · , N0 = 1000として,N0個の病原菌が体の中に入ったとする.tの単位を h(時)であるとする.N = 1010で病気が発病するとすると仮定すると潜伏期間はどのくらいか?潜伏期間は時刻 0から N = 1010 になる時刻 T までの時間とする.次の選択肢の中からもっとも適当なものを選べ.[a]6時間 [b]1日 [c]一週間 [d]一ヶ月 [e]一年

問題 24.5. [軍隊の攻撃力] 運動会で行われる騎馬戦に関する作戦を考える.ルールは1クラス10組の馬を作って,敵のクラスと対戦する対戦形式のゲームである.馬の上には人が乗っていて,その人は自分のクラスがわかるはちまきをつける.そのはちまきをとられたら,ルールとして退散して二度とゲームには戻れない.ゲームはどちらかのクラスが全滅するまで行い,生き残ったほうのクラスは生き残った馬の数だけ得点が反映される.その得点は1騎につき,10点とする.1組,2組がそれぞれ対戦したとして,つぎの問いに答えよ.

(1) 1組の攻撃力をa1,時刻 tにおける騎馬数を y1 = y1(t)とする.2組の攻撃力をa1, a2 > 0,時刻 tにおける騎馬数を y2 = y2(t)とする.このとき,y1, y2は次の方程式の解として与えられる.

(24.1) y′1 = −a2y2, y′2 = −a1y1, y1(0) = 10, y2(0) = 10

a1 = a2 を仮定して,この微分方程式を解け.(2) 一般の a1, a2 に対して,微分方程式を解け.(3) a1y1

2 − a2y22 を時間 tで微分することで a1y12 − a2y22 は時間に無関係な量であること

を示せ.

(1)の状況では攻撃力に差がないので,相打ちの状況で運動会の競技として意味がなくなってしまう.1組は運動会に向けていろいろ画策して作戦を練った.(4)と (5)の状況をそれぞれ考える.

(1) 1組は特訓して,その結果攻撃力の関係が a1 = 2a2となった.1組は勝負の結果何点とることができるか?

(2) 1組は特訓している時間がなかったが,奇襲攻撃をたくらんだ.奇襲攻撃は成功して試合開始後に2組の1騎からはちまきを取った.a1 = a2として,このまま2クラスの攻撃力が同じであるとすると,1組は勝負の結果何点とることができるか?

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110 京都大学 澤野嘉宏

問題 24.6. 患者にある薬を時間間隔 T で同量ずつ与え続けるものとする.与えられた薬の量に比例して患者の血液中の薬の濃度は決まるものとする.一方,患者の血液からは半減期 τ で薬が失われていく.投薬治療を始めてから十分長時間たったときの患者の血液中の薬の濃度の最小値が,1回あたりに与えられる薬により決まる濃度の 10倍に保たれるようにするためには,T は半減期の何倍とすればよいか?ただし,投薬と吸収までに要する時間は T, τ より十分に小さいものとする.

問題 24.7. p(t, x)を時刻 tにおける年齢 xの人口の密度とすると,年齢構造をもつ人口の成長モデルは以下のような 1階偏微分方程式の境界値問題として表される.

∂p(t, x)

∂t+∂p(t, x)

∂x+ µ(x)p(t, x) = 0

p(t, 0) =

∫ a

0

m(x)p(t, x) dx

ここで,aは人口の再生産年齢の上限を示す正の定数,µ(x)は x歳での瞬間的死亡率であり,m(x)は x歳での年齢別出生率を意味している.µ(x),m(x)は [0, a]上で非負の連続関数であり,恒等的には 0でないとする.

(1) 次の集合∑

= λ ∈ C : p(t, x) = eλtq(x)の形をした解が存在する の特徴づけを与えよ.(2)以降の問題が解きやすくなるような工夫をすること.

(2)∑∩R は一点集合になること,および λ0 ∈

∑∩R とすると,λ ∈

∑\λ0 ならば,

Re (λ) < λ0 となることを示せ.(3) 定数m,µをm = sup

0≤x≤am(x), µ = inf

0≤x≤aµ(x)で定める.λ ∈

∑ならば,Re (λ) ≤ m−µ

となることを示せ.(4)

∑= λjj∈J とあらわすことにする.j ∈ J に対して,

uj(x) = exp(−λj x)ℓ(x)

vi(x) =1

ui(x)

∫ a

x

exp(−λj y)ℓ(y)m(y) dy

ℓ(x) = exp

(−∫ x

0

µ(ξ) dξ

)とする.このとき,

∫ a

0

ui(x)vj(x) dx = δij

∫ a

0

x e−λjxℓ(x)m(x) dx を示せ.

問題 24.8. ウサギは個体数 xに応じて増加するが,狐により捕食されて減少する.一方,狐はウサギがいないときは個体数 yに応じて死滅するが,ウサギの数に応じて増加する.このことを微分方程式で表すと

dx

dt= a x− b x y

dy

dt= −c x+ d x y

と表される.ただし,a, b, c, d > 0で,ad− bc = 0と仮定する.

(1) 平衡点を求めよ.(2) 平衡点の性質を調べよ.

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微分方程式演習 111

25. 経済学への応用

問題 25.1. 一国の総所得あるいは総生産量のことを国民所得といい,Y (t)と書くことにする.ここで,tは時間を表し,Y (t)は tの関数であることを意味する.国民所得の増加率のことを経済

成長率といい,dY (t)

dt

1

Y (t)で定義される.ある国の経済成長率は時間を通じて一定であり,

(25.1)dY (t)

dt

1

Y (t)= n, n > 0

が成り立つ.この国の財政は常に赤字であり,それ故毎年国債を発行せねばならない.この国の

国債発行残高(=政府債務)をD(t)とおけば,(経常)財政赤字は,dY (t)

dtで表される.この国

の年々の財政赤字は国民所得に比例しており,

(25.2)dD(t)

dt= aY (t), 0 < a < 1

が成り立つ.この国の政府は国民から国民所得の一定割合を租税として取り立てている.徴税額を T (t),税負担率を β とすれば,

(25.3) T (t) = β Y (t), 0 < β < 1

が成り立つ.他方,政府は国債所有者に利子を支払わねばならない.利子率 iは時間と通じて一定であると仮定すれば,政府の利子費用 I(t)は

(25.4) I(t) = iD(t)

で表される.

(1) (25.1)を解いて Y (t)を求めよ.ただし,初期条件を Y0 とする.(2) (25.2)を解いてD(t)を求めよ.ただし,初期条件をD0 とする.

(3) limt→∞

I(t)

T (t)> 1 が成り立つとき,この国の財政は究極的に破綻するということにすれば,

この国の財政が破綻するのはどういう場合か?

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112 京都大学 澤野嘉宏

26. 工学への応用

問題 26.1. 断面積 C[m2]のタンクに時刻によらない一定の流入量 u[m3/s]で水が注がれている.タンクの底には排水管があり,水位 x[m]に比例した流出量 y[m3/s]で水が流れている.

入ってくる量−出て行く量 =タンクにたまる量 つまり  u− y = Cdx

dt

が成り立つ.Rを排水管の抵抗を表す定数として y =x

Rと表せる.したがって,

(26.1) u− x

R= C

dx

dt

が得られる.これについて次の問に答えよ.

(1) 微分方程式 (26.1)を解け.(2) lim

t→∞x を求めよ.

(3) Rが 2倍の大きさになると,(2)の極限値は何倍になるか?

問題 26.2. 次の微分方程式は,ある電気回路に現れる非線形振動を記述するモデルである.

∗dxdt

= y + (1− x2)x, dydt

= −εx.

ここで,t ≥ 0であり,ε > 0は正定数である.y軸上の勝手な初期値 x(0) = 0, y(0) = a = 0から出発する解は再び y軸に到達することを既知とする.初めて到達する点を (0, b)とおくと,a 7→ bによって写像 b = f(a)が定義される.

(1) f は aの奇関数であることを証明せよ.(2) もしも,c+ f(c) = 0となる c > 0が存在するならば,(0, c)を通る解は周期解である.(3) ε≪ 1のとき,∗の解曲線の概形を推測して xy平面に書け.(4) ε > 0のとき,大きい正の数 aに対しては a+ f(a) > 0となり,小さい正の数 aに対しては a+ f(a) < 0となることを (3)で描いた概形を用いて示せ.

(5) ε≪ 1のとき,∗は少なくとも一つの周期解をもつことを示せ.

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微分方程式演習 113

Part 12. 解の一意性,存在定理

27. 解の一意性,存在

27.1. 基本事項1:一意性とは一般に数学においてどのようなものか?.

一意性とは. 数学では条件を満たしているものが 1つに定まる場合を一意的に定まるという.

たとえば,性質 P を満たすものが a, bとあって実際には性質 P を満たすものが一意的のとき,a = bが成り立つ.性質 P が一意的であるということを証明したければ,一般的には a, bが性質P を満たしていれば,a = bとなることをいうことになる.

次のような例に出くわしたことがあるであろう.

a x+ b y = A

cx+ d y = B

の解は a d− b c = 0のときに,一意解が存在する.

微分方程式の講義では次の例を扱った.

(1) 一意性を満たしていない例:

f ′(x) =1

x, f(1) = 1,

を満たしている x = 0で定義された関数 f(x)は一意的には決まらない.(2) 一意性を満たしている例:A = aiji,j=1,2,...,N を定数行列として

d xidt

=N∑j=1

aijxj , i = 1, 2, . . . , N, xi(0) = xi,0

を満たしているベクトル値関数 (x1(t), x2(t), . . . , xN (t))は一意的に定まる.すなわち,

d xidt

=N∑j=1

aijxj , i = 1, 2, . . . , N, xi(0) = xi,0

d yidt

=N∑j=1

aijyj , i = 1, 2, . . . , N, yi(0) = xi,0

ならば,xi(t) = yi(t), i = 1, 2, . . . , N となる.(3) 一意性を満たしている例:微分方程式の解の一意性を応用していくと次のようなことがわかる.

x(N)(t) + a1 x(N−1)(t) + · · ·+ aN x(t) = 0, x(0) = x0, x

(1)(0) = x1, · · · , x(N−1)(0) = xN−1

を満たしている関数 x(t)は一意的に定まる.すなわち,

x(N)(t) + a1 x(N−1)(t) + · · ·+ aN x(t) = 0, x(0) = x0, x

(1)(0) = x1, · · · , x(N−1)(0) = xN−1

y(N)(t) + a1 y(N−1)(t) + · · ·+ aN y(t) = 0, y(0) = x0, y

(1)(0) = x1, · · · , y(N−1)(0) = xN−1

ならば,x(t) = y(t)である.

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114 京都大学 澤野嘉宏

27.2. 基本事項2:微分方程式の解の存在. F (x, y)を二変数関数として,

(27.1)df(x)

dx= F (x, f(x)), f(a) = b

の形の微分方程式に解が存在するかどうかを考える.

例 17.df(x)

dx= xや

df(x)

dx= f(x)に対しては解の存在があることや方程式の解法を説明したのは

言うまでもない.もちろん,二つを混合したdf(x)

dx= f(x)+xも解をもつということも説明済みで

ある.積分が難しい(できるかどうかわからないけど)df(x)

dx= (x+1)(x+2)(x+3) · · · (x+100)

やdf(x)

dx= exp(x2) なども計算方法としては理解できる.(このような解法を求積可能という.)ま

た,df(x)

dx=

1

x,df(x)

dx= f(x)2 +1 のように,積分できたとしても実軸全体で解が存在していな

いものもある.(何しろ,f(x) = log x+ C, tanxがそれぞれの解なので)このように特異な例もすべて考えていくことにする.

だんだん,このような例を見ていると“具体的”というのがどの程度なのかわからなくなってしまうが,先ほどの積分の例を見ても分かるように,(27.1)の問題においては,何らかの関数が与えられればそれで良しとする.

(27.1)を積分して積分形で書き換える.

(27.2) f(x)− f(a) =∫ x

a

df(t)

dtdt =

∫ x

a

F (t, f(t)) dt

つまり,

(27.3) f(x) = f(a) +

∫ x

a

F (t, f(t)) dt = b+

∫ x

a

F (t, f(t)) dt

としておく.大事なことであるが,(27.3)を微分すれば,(27.1)に戻れるし,x = aを (27.3)に代入すれば f(a) = bが得られることに注意しよう.

解の構成に関するアイデアをここで整理する.関数の列fn+1(x) = b+

∫ x

a

F (t, fn(t)) dt, f1(x) =

b を考える.fn(x)n∈Nが n→∞のときに,収束していれば limn→∞

fn(x) = f(x) と極限を書く

ことにして

f(x) = limn→∞

fn+1(x) = limn→∞

b+

∫ x

a

F (t, fn(t)) dt = b+

∫ x

a

F (t, f(t)) dt.

この式を微分すればわかるように,これで解 f(x)を構成することができたことになる.

これはたとえば,√71という数を計算するときに漸化式 an+1 =

1

2

(an +

71

an

), a1 = 9 で定

めると limn→∞

an =√71だから,a100, a1000 などは

√71の近似を与えるということと似ている.

このように,関数でも実数でも実体のあるものから初めて所望の関数に近づけていくことができる.

微分方程式の解の存在と一意性. 今まで行ったことを具体的に実行するために不等式が必要になるので,すこし整理しておく.

補題 2 (グロンウォール (Gronwall)). a, φ : [t0, t1]→ R を連続関数とする.また,a(t) ≥ 0, t0 ≤t ≤ t1 を仮定する.

φ(t) ≤∫ t

t0

a(s)φ(s) ds, t0 ≤ t ≤ t1

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微分方程式演習 115

が成り立てば,φ(t) ≤ 0, t0 ≤ t ≤ t1 が成り立つ.

証明. いま,Φ(t) =

∫ t

t0

a(s)φ(s) ds とおく.すると,

Φ′(t) = a(t)φ(t) ≤ a(t)Φ(t)

が成り立つ.したがって,

d

dt

(exp

(−∫ t

t0

a(s) ds

)Φ(t)

)= exp

(−∫ t

t0

a(s) ds

)(Φ′(t)− a(t)Φ(t)) ≤ 0

したがって,

exp

(−∫ t

t0

a(s) ds

)Φ(t) = Φ(t0) +

∫ t

t0

d

du

(exp

(−∫ u

t0

a(s) ds

)Φ(u)

)du ≤ 0

が得られる.以上より,φ(t) ≤∫ t

t0

a(s)φ(s) ds = Φ(t) exp

(∫ t

t0

a(s) ds

)≤ 0 となる.

定理 37. F : (a, b)× (c, d)→ Rは次の条件を満たしている連続関数とする.

|F (t, x)− F (t, y)| ≤ L|x− y|, |F (t, x)| ≤M0, t ∈ (a, b), x, y ∈ (c, d).

このとき,関数列 xn∞n=1 を次のようにして定める.ただし,(t0, x0)は (a, b)× (c, d)内の任意の点である.

x0(t) = x0

xn+1(t) = x0 +

∫ t

t0

F (s, xn(s)) ds, t ∈ (a, b) ∩(t0 +

d− x0M0

, t0 +x0 − cM0

)この関数列 xn(t)∞n=0 に関して次のことが言える.

(1) n = 0, 1, · · · に対して xnは (a, b)∩(t0 +

d− x0M0

, t0 +x0 − cM0

)で定められた c < xn(t) <

dを満たしている関数列である.(2) 関数列 xn(t)∞n=0 は一様収束している.以後,一様収束先を x(t)と記すことにする.(3) xは (a, b)× (c, d)で C1 級である.(4) A < t1 < B とする.仮に,y(t)が (A,B)で定義された C1 級関数で

c < y(t) < d, y′(t) = F (t, y(t)), y(t1) = x1

を満たしていれば,x(t) = y(t)が t ∈ (a, b) ∩ (A,B)で成り立つ.

証明.

(1) 帰納法で証明していく.(a) n = 0のときは,x0(t) = x0 より明らかである.(b) c < xk(t) < dが成り立つとして,t > t0 のときは

xk+1(t) = x0 +

∫ t

t0

F (t, xk(t)) dt

≤ x0 +∫ t

t0

M0 ds

= x0 +M0(t− t0) < x0 + (d− x0) = d

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116 京都大学 澤野嘉宏

および,

xk+1(t) = x0 +

∫ t

t0

F (t, xk(t)) dt

≥ x0 +∫ t

t0

−M0 ds

= x0 −M0(t− t0) > x0 + (c− x0) = c

より c < xk+1(t) < dが成り立つ.t ≤ t0 のときは,

xk+1(t) = x0 +

∫ t

t0

F (t, xk(t)) dt

≤ x0 +∫ t

t0

(−M0) ds

= x0 +M0(t0 − t) < x0 + (d− x0) = d

および,

xk+1(t) = x0 +

∫ t

t0

F (t, xk(t)) dt

≥ x0 +∫ t

t0

M0 ds

= x0 +M0(t− t0) > x0 + (c− x0) = c

より c < xk+1(t) < dが成り立つ.(2) リプシッツ条件より,

xn+2(t)− xn+1(t) = x0 +

∫ t

0

F (s, xn+1(s)) ds−(x0 +

∫ t

0

F (s, xn(s)) ds

)=

∫ t

t0

F (s, xn+1(s))− F (s, xn(s)) ds

である.したがって,積分の三角不等式∣∣∣∣∫ a1

a0

F (t) dt

∣∣∣∣ ≤ ∫ max(a0,a1)

min(a0,a1)

|F (t)| dt より,

|xn+2(t)− xn+1(t)| ≤∫ max(t0,t)

min(t0,t)

|F (s, xn+1(s))− F (s, xn(s))| ds

≤ L∫ max(t0,t)

min(t0,t)

|xn+1(s)− xn(s)| ds

が得られる.ここで,M = supu∈(a,b)∩

(t0+

d−x0M0

,t0+x0−cM0

) |x1(t)− x0(t)| とおいて,

(27.4) |xn+1(t)− xn(t)| ≤M Ln|t− t0|n

n!, t ∈ (a, b) ∩

(t0 +

d− x0M0

, t0 +x0 − cM0

)

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微分方程式演習 117

を示そう.M の定義より,n = 0のときの (27.4)は明らかである.仮に n = kに対して(27.4)が成り立ったとすると,

|xk+2(t)− xk+1(t)| ≤ L∫ max(t0,t)

min(t0,t)

|xk+1(s)− xk(s)| ds

≤ L∫ max(t0,t)

min(t0,t)

M Lk|s− t0|k

k!ds

=M Lk+1|t− t0|k+1

(k + 1)!

より,n = k + 1でも確かに (27.4)が証明された.このようにして証明された (27.4)により,

∞∑n=1

|xn+1(t)− xn(t)| ≤∞∑

n=1

M Ln|t− t0|n

n!=M eL|t−t0| −M <∞

だから,lim

n→∞xn(t)

が一様収束することがわかる.

(3) xn+1(t) = x0 +

∫ t

t0

F (s, xn(s)) ds において,n→∞とすると,xn(t)∞n=0 が一様収束

することにより

x(t) = limn→∞

xn+1(t) = limn→∞

x0 +

∫ t

t0

F (s, xn(s)) ds = x0 +

∫ t

t0

F (s, xn(s)) ds

が得られる.つまり,

(27.5) x(t) = x0 +

∫ t

t0

F (s, x(s)) ds

がわかった.x(t)は右辺の形から (a, b)∩(t0 +

d− x0M0

, t0 +x0 − cM0

)でC1級で,(27.5)

の両辺を微分することで微分方程式

x′(t) = F (t, x(t)), x(t0) = x0

を満たすことがわかる.(4) I = (a, b) ∩ (A,B) とおく.t1 ∈ I に対して,

y(t) = x(t1) +

∫ t

t1

F (s, y(s)) ds, x(t) = x(t1) +

∫ t

t1

F (s, x(s)) ds

である.ここで,t > t1 とすると,

|x(t)− y(t)| ≤∫ t

t1

|F (s, y(s))− F (s, x(s))| ds ≤ L∫ t

t1

|x(s)− y(s)| ds

が得られる.したがって,グロンウォールの不等式 (補題 2)より,

|x(t)− y(t)| ≡ 0, t ∈ I ∩ (t1,∞)

が得られる.つまり,x(t) = y(t)がすべての t ∈ I ∩ (t1,∞) に対していえた.

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118 京都大学 澤野嘉宏

27.3. 一意性の意味合い.

問題 27.1. それぞれの問題につき,下線部を引いた箇所が正しければを間違えていれば×をつけよ.また,その理由を数学的に説明せよ.

(1) y(x), z(x)を 0 < x < 1, 8 < x < 9に対して定義されている微分可能な xの関数とする.

y′(x) = 1 + y(x)2, z′(x) = 1 + z(x)2, y(0) = 0, z(0) = 0

を満たしているならば,y(x) = z(x)がすべての 8 < x < 9に対して成り立つ.(2) y(t), z(t)をすべての tに対して定義された微分可能な関数とする.

y′(t) = 1979y(t) + 21z(t), z′(t) = 1029y(t) + 971z(t), y(0) = z(0) = 1,

ならば,y(t) = e3000t, z(t) = e3000t である.(3) y(x), z(x)を 0 < x < 1, 14 < x < 15に対して定義されている微分可能な xの関数とする.

y′(x) = 1 + y(x)2, z′(x) = 1 + z(x)2, y(0) = 0, z(0) = 0

を満たしているならば,y(x) = z(x)がすべての 14 < x < 15に対して成り立つ.(4) y(t), z(t)をすべての tに対して定義された微分可能な関数とする.

y′(t) = 1925y(t) + 75z(t), z′(t) = 803y(t) + 1197z(t), y(0) = z(0) = 1,

ならば,y(t) = e2000t, z(t) = e2000t である.

問題 27.2. 微分は tの微分と考える.x(0) = y(0) = z(0) = 25を満たしている微分可能な関数がx′ = 709x+ 814y + 1477z

y′ = 1607x− 300y + 1693z

z′ = x+ 2987y + 12z

を満たしていれば,x = y = z = 25e3000t を満たしていることを証明せよ.

問題 27.3. 次の命題の真偽を判定せよ.

(1) 定数線形微分方程式 y′′ + a y′ + b y = 0において,y(0) = y(1) = 0ならば,yは常に 0になる.

(2) yは 0以外で定義されている微分可能な関数で x = 0で y′ =1

xを満たす.この微分方程

式の初期値問題を決定するためには y(1)の値だけ与えられても不十分でたとえば y(−1)の値が必要である.

問題 27.4. x ∈ C1(R),dx

dt=√|t x|, x(0) = 0 を満たす解は一意的か?

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微分方程式演習 119

27.4. 解の構成.

問題 27.5. 微分方程式の解の構成について考える.

(1) y′ = y, y(0) = 1 を解け.(2) 関数列 yn を次の漸化式で定める.

yn ≡ 1, yn+1(x) = 1 +

∫ x

0

yn(t) dt

次の問に答えよ.

(a) yn(x) =n∑

k=0

xk

k!を示せ.

(b) limn→∞

yn(x) を計算せよ.

(c) 方程式 y(x) = 1 +

∫ x

0

y(t) dt を解け.

問題 27.6. y = exのグラフを区間 [0, 1]で,折れ線で近似するのに次のような方法をとる.まず,区間 [0, 1]を n等分し,その分点を

x0 = 1, x1 =x0n, x2 =

2x0n, · · · , xk =

k x0n, · · · , xn =

nx0n

= x0

とする.

(1) y = ex の点 (0, 1)における接線 y = f1(x) = x+ 1を 0 ≤ x ≤ x0

n の範囲で引く.(2) 点

(x0

n , f1(x0

n

))を通る傾き f1

(x0

n

)の線分

y = f2(x) = f1

(x0n

)(x− x0

n

)+ f1

(x0n

)を x0

n ≤ x ≤x0

n の範囲で引く.このとき,f2

(2x0n

)=(1 +

x0n

)2となる.

(3) 点 ( 2x0

n , f2(2x0

n

)) を通る傾き f2

(2x0

n

)の線分

y = f3(x) = f2

(2x0n

)(x− 2x0

n

)+ f2

(2x0n

)を 2x0

n ≤ x ≤3x0

n の範囲で引く.このとき,f3

(3x0n

)=(1 +

x0n

)3となる.

(4) 以下,この操作を繰り返す.

このとき,fn(x0) =(1 +

x0n

)nを示せ.また, lim

n→∞fn(1) = exp(x0) を示せ.

問題 27.7. x(t)を未知関数とする微分方程式

(27.6) tdx

dt= x2 − 1

を考える.

(1) t0 > 0のとき,x(t0) = x0 の解は t > 0の範囲で一意的であることを示せ.(2) (27.6)のすべての解,すなわち実数全体で定義されているものを求めよ.

問題 27.8. 微分方程式dx

dt= t x+ 2t− t3, x(0) = 0 を逐次近似法によって求めよ.

問題 27.9. 次の微分方程式の延長不能な解を考えよ.

(1)dx

dt= x

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120 京都大学 澤野嘉宏

(2)dx

dt= x2

(3)dx

dt= 1 + x2

問題 27.10. Rで定義された C2-級実数値関数 y(x)が,2階微分方程式

y y′′ = 1 + (y′)2, y(0) = 1

を満たすものとする.

(1) y(x) > 0を示せ.(2) cを与えられた実数とし,y′(0) = cとするとき,y(x)を求めよ.

問題 27.11. 微分方程式 x′(t) = f(t, x(t))について以下の近似列をピカールの近似列ということにする.

x0(t) ≡ x0xn+1(t) ≡ x0 +

∫ t

t0f(τ, xn(τ)) dτ.

(1) x′ = 2t(x+ 1), x(0) = 0に対してピカールの近似列 xn∞n=1を求めよ.さらに,それがx(t) = exp(t2)− 1に収束することを示せ.

(2) x′(t) = t2 + x(t)2, x(0) = 1についてピカールの近似列の 1番目 x1(t)と 2番目 x2(t)を求めよ.

(3) x′(t) = et+x(t)2, x(0) = 0についてピカールの近似列の 1, 2, 3番目 x1(t), x2(t), x3(t)を求めよ.

問題 27.12. 与えられた閉区間 I を含む開区間で次の微分方程式が解をもつことを示せ.

(1) x′ = x2 + cos(t2), x(0) = 0, I = [−1/2, 1/2].(2) x′ = 1 + x+ x2 cos(t2), x(0) = 0, I = [−1/3, 1/3].(3) x′ = t+ x2, x(0) = 0, I = [−2− 2

3 , 2−23 ].

(4) x′ = x2 + exp(−t2), x(0) = 0, I = [−1/2, 1/2].

(5) x′ = x2 + exp(t2), x(0) = 0, I = [−a, a]. ただし,a =

√2

1 + (1 +√2)2

.

(6) x′ = t2 + x2, x(0) = 0, I = [−2− 12 , 2−

12 ].

問題 27.13. a : R→ Rは C1-級の単調増加な奇関数で,a(1) = 1を満たすものとする.次の微分方程式

d2y(t)

dt2+ a(y) = 0, y(0) =

dy

dt(0) = 1

の解 y(t)について以下の問に答えよ.

(1) y(t)は零点を持つことを示せ.(2) y(t)は 8より小さい周期を持つことを示せ.

問題 27.14. f : R → Rを f(a) = 0となるような実数値 C1-級関数とする.R上で定義された実数値関数 u = u(x)は常微分方程式

du

dx(x) + f(u(x)) = 0

を満たす.次のことを示せ.

(1) u(0) > aのとき,u(x) > aが任意の x ∈ Rに対して成り立つ.(2) f(u) > 0, u > a と f(u) < 0, u < a が成り立つとする.このとき, lim

x→∞u(x) = a が成

り立つ.

(3) 正の数 c > 0が存在してdf

du≥ c ならば,lim sup

x→∞

1

xlog |u(x)− a| ≤ −c である.

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微分方程式演習 121

27.5. 関数の定義. 微分方程式の解の存在を逆手にとって新しい関数を作り出すことが出来る.sin, cosなどの関数も作れるので,実際に,微分方程式からスタートして関数を作って性質を調べてみよう.

問題 27.15. 連立定数係数線形微分方程式の解の存在定理を以下に示す.

定理 38. a, b, c, dを実数定数とする.どんな初期条件 x(0), y(0)を与えても

x′ = a x+ b y, y′ = c x+ d y

は実数全体で定義されている解 (x(t), y(t))を持つ.さらに,

X ′ = aX + b Y, Y ′ = cX + d Y, x(0) = X(0), y(0) = Y (0)

を満たしていれば,x(t) ≡ X(t), y(t) ≡ Y (t) となる.

この定理を用いて三角関数 sin, cosを定義せよ.さらに,加法定理

sin(α+ β) = sinα cosβ + sinβ cosα, cos(α+ β) = cosα cosβ − sinα sinβ

を証明せよ.

問題 27.16. 連立定数係数線形微分方程式の解の存在定理とパラメーターの連続性の定理を以下に示す.

定理 39. 定数係数連立微分方程式

y′1 = a(t)y1 + b(t)y2, y′2 = c(t)y1 + d(t)y2, y1(0) = α, y2(0) = β

は tの関数 a, b, c, dと定数 α, βが与えられると方程式の解は実数全体で定義されていてその解はα, β, tの連続関数である.

y′′ − 2αy + α2y = 0を次のようにして解いた.特性方程式が重解のときの解の公式を知らないとして次の問いに答えよ.

(1) 微分方程式 y′′ − (α + β)y′ + αβy = 0, y(0) = A, y′(0) = B は α, β が異なるときどのように表されるか?

(2) yを (1)のものとして,β → αとすることで解を求めよ.

問題 27.17. 微分方程式を用いて新しい関数を定義することができる.今,微分方程式の解の存在と一意性に関する次の定理を得たとして,三角関数を定義しよう.

定理 40. AをN 次実正方行列,yをN 次たてベクトルとする.このとき,y′ = Ayは任意の初期値 y(0) = vに対して唯一の解を持つ.

この定理をN = 2のときに書き下すと

定理 41. 変数 tについての定数係数連立微分方程式

y′1 = ay1 + by2, y′2 = cy1 + dy2, y1(0) = α, y2(0) = β

は定数 a, b, c, d, α, βが与えられると方程式の解は実数全体で定義されていて,もう一組同じ形の方程式

z′1 = az1 + bz2, z′2 = cz1 + dz2, z1(0) = α, z2(0) = β

があると,y1 = z1, y2 = z2 である.

関数 f, g : R→ Rを次の微分方程式の解として定義する.

f ′(x) = g(x), f(0) = 0, g′(x) = −f(x), g(0) = 1

この方程式の解が f(x) = sinx, g(x) = cosxであることはすでに学習済みだが,加法定理などは一切使わずに今定義した f(x), g(x)の性質を調べることにする.

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122 京都大学 澤野嘉宏

(1) (a) 新しい関数 κ1(x), κ2(x), τ1(x), τ2(x)を

κ1(x) = f(x+ α)

κ2(x) = g(x)f(α) + f(x)g(α)

τ1(x) = g(x+ α)

τ2(x) = g(x)g(α)− f(x)f(α)で定義する.このとき,

d

dx

(κ1(x)τ1(x)

)=

(0 1−1 0

)(κ1(x)τ1(x)

)d

dx

(κ2(x)τ2(x)

)=

(0 1−1 0

)(κ2(x)τ2(x)

)(κ1(0)τ1(0)

)=

(κ2(0)τ2(0)

)を証明せよ.

(b) 関数等式

f(α+ β) = f(α)g(β) + g(α)f(β)

g(α+ β) = g(α)g(β)− f(α)f(β)を証明せよ.

(2) 今定義した関数が本当に sin, cosと一致するのを示すには,(f(t), g(t))が座標平面の単位円周上にあり,t = 0から t = θ > 0 曲線 (f(t), g(t))の長さを測ると θ > 0であることが証明されればよい.θ < 0の時は f(−x) = −f(x)と g(−x) = g(x)より証明される.そこで,(a) 恒等式 f(θ)2 + g(θ)2 = 1を証明せよ.【ヒント】微分方程式の活用.(b) 座標平面上に曲線 x(t) = (f(t), g(t))を 0 ≤ t ≤ θの範囲で定義する.ただし,θ > 0.このとき,x(t)の長さを求めよ.

問題 27.18. 次の定理を用いて問に答えよ.

定理 42. 線形微分方程式 y(n) + a1 y(n−1) + · · ·+ an y = 0 は初期条件 y(0), y′(0), . . . , y(n−1)(0)

を与えると解が存在する.さらに,y(n)+ a1 y(n−1)+ · · ·+ an y = 0 は初期条件 y(0) = 0, y′(0) =0, . . . , y(n−1)(0) = 0 なら y(x) = 0となる.

以下,x, yを実数とする.

(1) 微分方程式の解の存在,一意性定理を用いて指数関数 ex を定義せよ.(2) 加法定理 ex+y = ex ey を証明せよ.(3) ex = 0を証明せよ.

問題 27.19. 微分方程式を用いて eπ とはどのような数かを説明せよ.

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微分方程式演習 123

27.6. 微分不等式.

問題 27.20. φ, ηは [0, T ]上の連続関数 ηは [0, T ]で定義されており,不等式

η′(t) ≤ φ(t)η(t) + ψ(t),

を満たす C1-級の正値関数とする.さらに,ψ(t) ≥ 0, 0 ≤ t ≤ T を仮定する.このとき,

η(t) ≤ exp

(∫ t

0

φ(s) ds

)[η(0) +

∫ t

0

ψ(s) ds

]が成り立つことを示せ.

問題 27.21. ξは [0, T ]上の非負連続関数で不等式

ξ(t) ≤ C1

∫ t

0

ξ(s) ds+ C2

を満たしているとする.ここで,C1, C2は定数である.すると,ξ(t) ≤ C2 eC1 t(1 +C1 t)が成り

立つことを示せ.

問題 27.22.

(1) a > 0,b0, b1 が定数のとき,

φ(t) ≤ b0 + b1 (t− t0) + a

∫ t

t0

φ(s) ds, t0 ≤ t ≤ t1

が成り立つならば,

φ(t) ≤ b0 exp(a(t− t0)) +b1a(exp(a(t− t0))− 1)

が成り立つことを示せ.(2) φを実数連続で定義された連続関数とする.a, b0, b1 ≥ 0を定数として

φ(t) ≤ b0 + b1 |t− t0|+ a

∣∣∣∣∫ t

t0

φ(s) ds

∣∣∣∣が成り立つとせよ.このとき,

φ(t) ≤ b0 exp(a|t− t0|) +b1a(exp(a|t− t0|)− 1)

を証明せよ.

問題 27.23. k : (a, b)→ Rを連続関数とする.また,τ ∈ (a, b)を固定点とする.

(1) C1-級関数 x : (a, b)→ Rが x′(t) + x(t)2 + k(t) ≥ 0を満たしているとする.C2-級関数f : (a, b)→ Rを

f(t) = exp

(∫ t

τ

x(s) ds

)とおく.f ′′(t) + k(t)f(t) ≥ 0を示せ.

(2) C1-級関数 x : (a, b)→ Rが x′(t) + x(t)2 + k(t) ≤ 0を満たしているとする.C2-級関数f : (a, b)→ Rを

f(t) = exp

(∫ t

τ

x(s) ds

)とおく.f ′′(t) + k(t)f(t) ≤ 0を示せ.

(3) 0を取らない C2-級関数 f : (a, b) → Rが f ′′(t) + k(t)f(t) ≥ 0を満たしていたとする.

このとき,F (t) =f ′(t)

f(t)とおけば,F ′′(t) + F ′(t)2 + k(t) ≥ 0が成り立つことを示せ.

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124 京都大学 澤野嘉宏

(4) 0を取らない C2-級関数 f : (a, b) → Rが f ′′(t) + k(t)f(t) ≤ 0を満たしていたとする.

このとき,F (t) =f ′(t)

f(t)とおけば,F ′′(t) + F ′(t)2 + k(t) ≤ 0が成り立つことを示せ.

問題 27.24. φ : [1,∞)→ [0,∞)は連続関数,f : [1,∞)→ Rを C1-級関数とする.

(a)

∫ ∞

1

φ(x) dx <∞

(b) f ′(x) ≤ φ(x)f(x), x ≥ 1

が成り立つなら f は 1 ≤ x <∞において上に有界であることを示せ.

特殊な形のリッカチ形にまつわる不等式

問題 27.25. k : (a, b)→ Rを連続関数とする.また,c ∈ (a, b)とする.

(1) C1-級関数 x : (a, b)→ Rが x′(t) + x(t)2 + k(t) = 0を満たしているとする.

f(t) = exp

(∫ t

c

x(s) ds

)とおくと,f ′′(t) + k(t)f(t) = 0 を満たしていることを示せ.

(2) C2-級関数 f : (a, b)→ Rが f ′′(t) + k(t)f(t) = 0, f(t) = 0を満たしているとする.このとき,

x(t) =f ′(t)

f(t)

とおけば,x′(t) + x(t)2 + k(t) = 0が成り立つ.

問題 27.26. λ > 0, τ,K ∈ Rとする.初期条件 F (τ) = K の下で次の微分方程式を解け.

(1) F ′(t) + F (t)2 + λ2 = 0(2) F ′(t) + F (t)2 = 0(3) F ′(t) + F (t)2 − λ2 = 0

問題 27.27. k1, k2 : (a, b) → Rを k1(t) ≤ k2(t)を満たしているような連続関数とする.また,C1-級関数 F1, F2 : (a, b)→ Rが微分方程式

F ′1(t) + F1(t)

2 + k1(t) = 0, F ′2(t) + F2(t)

2 + k2(t) = 0

を満たしているとする.a < τ < bを固定点とする.

(1) 必要ならば,η(t) = (F1(t)−F2(t)) exp

(∫ t

τ

F1(s) + F2(s) ds

)とおいて次の問に答えよ.

(a) F1(τ) ≤ F2(τ) のとき,F1(t) ≤ F2(t), τ ≤ t < b が成り立つ.(b) τ < t0 < bが存在して,F1(t0) = F2(t0)と F1(τ) ≤ F2(τ) 成立するとき,F1(t) =

F2(t), k1(t) = k2(t), τ ≤ t ≤ k0 が成り立つ.(2) 必要ならば,先ほどの ηを用いて次の問に答えよ.

(a) F1(τ) ≥ F2(τ) のとき,F1(t) ≥ F2(t), τ ≥ t > a が成り立つ.(b) τ > t0 > aが存在して,F1(t0) = F2(t0)と F1(τ) ≤ F2(τ) 成立するとき,F1(t) =

F2(t), k1(t) = k2(t), τ ≥ t ≥ t0 が成り立つ.(3) C1-級関数 G1, G2 : (a, b)→ Rが微分方程式

G′1(t) +G1(t)

2 + k1(t) ≤ 0, G′2(t) +G2(t)

2 + k2(t) ≥ 0

を満たしているとする.(1),(2)と類似の結果を与えて証明せよ.

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微分方程式演習 125

Part 13. 厳密な実数論

28. 実数の性質

本書では,実数の性質を用いる場面は少なかったが,ここで,きちんとまとめておくことにする.

28.1. 基本事項1:集合,関数の記号.

(1) R:実数の全体からなる集合をあらわす.(2) Q:有理数の全体からなる集合をあらわす.(3) Z:整数の全体からなる集合をあらわす.(4) N:自然数の全体からなる集合をあらわす.(5) C:複素数の全体からなる集合をあらわす.

そのほか

(1) [a, b]:両端を含めた閉区間(2) (a, b]:右だけ含めた半開区間(3) [a, b):左だけ含めた半開区間(4) (a, b):両端を除いた開区間(5) (a,∞),(−∞, b]:意味は類推すること.

次のように使う.ノートをとるときに漢字を書かないですむので,楽である.

例 18. x ∈ R:これは xが実数であることをいっている.

例 19. x ∈ Z ∩ [12, 76]:これは xが 12以上 76以下の自然数であることをいっている.

関数とはある集合から数(実数,複素数,有理数,正の数,偶数など)への対応を表す.”ある集合”を定義域といい,数の集合を値域という.たとえば,関数 f の定義域が正の数全体で,値域が 2, 4, 5の時,f : [0,∞) → 2, 4, 5と表す.定義域は過不足なく与えなくてはいけないが,値域は過剰に大きくてもいい.

注意 6. 関数は本来 f, gなどで表すのが,流儀である.しかし,多くの大学入試問題,高校の教科書などでは f(x), g(x)と表している.f(x)は f の xに対応する値のことで,これを関数値といって区別する.したがって,今までの高校の数学などでは,関数値と関数をごちゃ混ぜにしていたということになる.たとえば,sinは関数だが,sinxは関数値である.

注意 7. 通常の高校数学の問題では関数の値域は過不足なく求めなくてはいけないが,大学でやる数学では過剰に値域が大きいことが多い.

例 20. ガウス記号 [·].これは実数から実数への関数ともみなせるし,整数の全体への関数とみなせる.これを [·] : R→ Rと表す.

注意 8. 関数であることを強調すべくこのように ·をつけることもある.

例 21. 対数関数 log.これは正の数から実数への関数とみなせる.これを log : [0,∞) → Rと表す.

例 22. 指数関数 e·.これは実数から正の数への関数とみなせる.これを e· : R→ (0,∞)と表す.実数から,実数への関数ともみなせるので,e· : R→ Rと表す.

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126 京都大学 澤野嘉宏

28.2. 基本事項2:集合の上限,下限. ∞,−∞という記号を導入しておこう.

定義 17.

(1) ∞は実数ではないが,すべての実数 aに対して a <∞が成り立っていると約束する.(2) −∞は実数ではないが,すべての実数 aに対して a > −∞が成り立っていると約束する.(3) aが実数もしくは,±∞であることを強調するべく a ≤ ∞, a ≥ −∞, −∞ ≤ a ≤ ∞ なる書き方をする.

定義 18. 集合 Aにつき,次の条件を満たしているM ≤ ∞のことを上界という.

条件:  a ∈ Aのときはいつでも a ≤M が成り立つ.

例 23.

(1) ∞はあらゆる集合の上界である.(2) A = [0, 1]のとき,1以上の数はすべて Aの上界である.(3) A = [0, 1)のとき,1以上の数はすべて Aの上界である.(4) Aが自然数全体の集合のとき,∞以外には上界は存在しない.

定義からM が上界でないとは,

何らかの (少なくとも一つの)a ∈ Aに対して a > M

が成り立つということになる.

実数の連続性というのは次の条件のことである.

定義 19. 実数の連続性とは,与えられた集合Aの上界には最小値M が存在するという性質である.すなわち,次のような実数M がひとつだけ定まる.

(1) (M は上界である.)a ∈ Aのときに,a ≤M が成り立つ.(2) (M は上界の最小値である.つまり,M より小さい上界は存在しない.)M ′ < M とすると,a > M ′ となる a ∈ Aが存在する.

この数M を supAと書く.

例 24.

(1) Aが自然数全体の集合のとき,∞以外には上界は存在しないから,supA =∞である.(2) A = [0, 1]のとき,2は Aの上界である.Aの上限は 1,つまり,supA = 1である.(3) A = [0, 1)のとき,2は Aの上界である.Aの上限は 1,つまり,supA = 1である.

命題 4. 集合 Aについて次のことが成り立つ.

(1) すべての a ∈ Aに対して,a ≤M が成り立つならば,supA ≤M である.(2) supA ≤M ならば,すべての a ∈ Aに対して,a ≤M が成り立つ.

証明.

(1) 仮定からわかることは,M はAの上界であるということである.supAはAの上界の最小値であるので,当然上界のひとつであるM 以下である.したがって,supA ≤ M となる.

(2) a ≤ supAより明らかである.

命題 5. k > 0,Aを集合とすると,supk a : a ∈ A = k supA がなりたつ.

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微分方程式演習 127

証明. 右辺で表される量をM とおく.命題の証明をするためには,

(1) a ∈ Aのときに,k a ≤M が成り立つ.(2) M ′ < M とすると,k a > M ′ となる a ∈ Aが存在する.

を確認すればよい.

不等号の向きを逆にして考えて,次の下界という概念を得る.

定義 20. 集合 Aにつき,次の条件を満たしているm ≥ −∞のことを下界という.

a ∈ Aのときはいつでも a ≥ mが成り立つ.

定義 21. 実数の連続性とは,与えられた集合 Aの下界には最大値mが存在するという性質である.すなわち,次のような実数mがひとつだけ定まる.

(1) (mは下界である.)a ∈ Aのときに,a ≥ mが成り立つ.(2) (mは下界の最小値である.つまり,mより大きい下界は存在しない.)m′ > mとすると,a < m′ となる a ∈ Aが存在する.

この数mを inf Aと書く.

命題 6. A ⊂ Rにつき,次が成り立つ.

(28.1) inf A = − sup−a : a ∈ A

証明. 右辺に現れている量をmとおく.mが inf Aであることを証明したいが,定義にあるように 2つの条件を調べれればよい.

(1) 任意に a ∈ Aを与えたときに,a ≥ mが成り立つ.(2) m′ > mとすると,a < m′ となる a ∈ Aが存在する.

はじめの条件 (1)を検証する.任意に a ∈ Aを与える.すると,少なくとも,

(28.2) −a ≤ −m = sup−b : b ∈ A

が成り立つ.*脚注 なぜなら,−a ∈ −b : b ∈ A だからである.(28.2)に戻って整理すると,a ≥ m が得られる.これで (1)は証明できた.

次に条件 (2)を検証する.m′ > mとすると,−m′ < −m = sup−b : b ∈ A だから,あるa ∈ Aが存在して,−m′ < −a が成り立つ.これは,m′ > aを意味するから,(2)も証明できた.

以上,(1),(2)が証明できたので,m = inf Aつまり inf A = − sup−a : a ∈ A が証明できた.

例 25. A = (3, 8)のとき,−A = (−8,−3)であるが,

supA = 8, sup(−A) = −3, inf A = 3, inf(−A) = −8

であるから,inf A = − sup(−A), inf(−A) = − supAが成り立っている.

命題 7. 集合 Aに関して,inf A ≤ supA が成り立つ.

* 本当なら,これは−a ≤ −m = sup−a : a ∈ A

と書きたいが,これだと左辺の a は任意に取ってきている特定の元であるが,右辺の a は A 内を自由に取りうるのでつりあわない.そこで,

−a ≤ −m = sup−b : b ∈ Aと書いているのである.文字が違えば,性質が違うのはうなづけるであろう.

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128 京都大学 澤野嘉宏

証明. a ∈ Aに対して,a ≤ supAと −a ≤ − inf Aが成り立つからである.

命題 8. A ⊂ B ならば,supA ≤ supB,inf A ≥ inf B である.

命題 4と同じようにして次のことがなりたつことが示せる.

命題 9. 集合 Aについて次のことが成り立つ.

(1) すべての a ∈ Aに対して,a ≥ mが成り立つならば,inf A ≥ mである.(2) inf A ≥ mならば,すべての a ∈ Aに対して,a ≥ mが成り立つ.

命題 5と同じようにして次のことがなりたつことを示せる.

命題 10. k > 0,Aを集合とすると,infk a : a ∈ A = k inf A がなりたつ.

28.3. 基本事項3:実数列の極限.

定義 22 (数列の記号).

(1) 実数列は一般に無限,有限に応じて anJn=1, an∞n=1などと書く.たとえば,10項からなる有限数列 a1, a2, a3, · · · , a10 は an10n=1 と表す.

(2) 無限数列を ak∞k=1 や ak∞k=1 でもって表す.無限級数は∞∑

n=1

an で表す.

定義 23. 実数列 an∞n=1 が与えられたとする.

(1) an∞n=1 が単調増大であるとは,a1 ≤ a2 ≤ a3 ≤ · · · が成り立つことである.(2) an∞n=1 が単調減少であるとは,a1 ≥ a2 ≥ a3 ≥ · · · が成り立つことである.

定義 24. 実数列 an∞n=1 が与えられたとする.

(1) an∞n=1 の上限,下限を

supn∈N

an = supan : n ∈ N

infn∈N

an = infan : n ∈ N

と定める.

supn≥k

an = supan : n ≥ k

infn≥k

an = infan : n ≥ k

なども同様である.(2) an∞n=1 の上極限,下極限を

lim supn→∞

an = infk∈N

(supn≥k

an

)lim infn→∞

an = supk∈N

(infn≥k

an

)と定義する.

(3) an∞n=1 の極限を lim supn→∞

an = lim infn→∞

an のときに,

limn→∞

an = lim supn→∞

an = lim infn→∞

an

と定める.もし,lim supn→∞

an = lim infn→∞

an のときは, limn→∞

an は存在しないという.

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微分方程式演習 129

【注意】k ∈ Nに対して,ck = supn≥k

an とおくと,ckk∈N は単調減少数列である.

lim supn→∞

an = infk→∞

ck

と定義していることになる.

例 26. 数列 ann∈N を次のようにして与える.

(1) an = (−1)n のとき,

lim supn→∞

(−1)n = infn∈N

(supk≥n

(−1)k)

= infn∈N

1 = 1

lim infn→∞

(−1)n = supn∈N

(infk≥n

(−1)k)

= supn∈N−1 = −1

limn→∞

(−1)nは存在しない

(2) an =1

nのとき,

lim supn→∞

1

n= inf

n∈N

(supk≥n

1

k

)= inf

n∈N

1

k= 0

lim infn→∞

1

n= sup

n∈N

(infk≥n

1

k

)= sup

n∈N0 = 0

limn→∞

1

n= lim sup

n→∞

1

n= lim inf

n→∞

1

n= 0

命題 11. 実数列 an∞n=1, bn∞n=1 が与えられたとする.

(1) an ≤ bn, n = 1, 2, · · · ならば,supn≥k

an ≤ supn≥k

bn(28.3)

infn≥k

an ≤ infn≥k

bn(28.4)

である.特に an ≤ bn, n = 1, 2, · · · ならば,supn∈N

an ≤ supn∈N

bn(28.5)

infn∈N

an ≤ infn∈N

bn(28.6)

が成り立つ.(2) an ≤ bn, n = 1, 2, · · · ならば,

lim supn→∞

an ≤ lim supn→∞

bn(28.7)

lim infn→∞

an ≤ lim infn→∞

bn(28.8)

が成り立つ.

証明. sup, lim supが出てくるに関する主張の証明を修正すれば,inf, lim inf に関する主張の証明も出来るので,(28.3), (28.5), (28.7) を証明する.

(1) (28.3)の証明:命題 4と supn≥k

bn = supbn : n ≥ k(= Mkとおく) より,bn ≤ Mk がす

べての n ≥ k に対して成り立つ.an ≤ bn ≤ M だから,an ≤ M, n ≥ k である.したがって,Mk は an : n ≥ kの上界であるから,

supn≥k

an = supan : n ≥ k ≤Mk

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130 京都大学 澤野嘉宏

が得られる.(2) (28.5)の証明:(28.3)において k = 1とする.

supn≥1

an = supn∈N

an, supn≥1

bn = supn∈N

bn

であるから結論が得られる.(3) (28.7)の証明:

lim supn→∞

an = infk∈N

(supn≥k

an

) (∵ lim supの定義より)

≤ infk∈N

(supn≥k

bn

) (∵ (28.3),(28.6)より)

= lim supn→∞

bn (∵ lim supの定義より)

より証明できる.

命題 12. 実数列 an∞n=1 が与えられたとする.

(1) −∞ ≤ lim infn→∞

an ≤ lim supn→∞

an ≤ ∞

(2) lim infn→∞

an = − lim supn→∞

(−an)

(3) κ > 0ならば,lim supn→∞

κ an = κ lim supn→∞

an, lim infn→∞

κ an = κ lim infn→∞

an

証明.

(1) lim supn→∞

an ≤ ∞ と lim infn→∞

an ≥ −∞ は明らかである.実際に,∞はいかなる数よりも

大きいから.また,−∞はいかなる数よりも小さいから.真ん中の不等号を証明しよう.任意の n, n′ について inf

k≥n′ak ≤ amax(n,n′) ≤ sup

k≥nak だから, inf

k≥n′ak ≤ sup

k≥nak が成り立

つ.命題 4より lim infn→∞

an = supn′∈N

(infk≥n′

ak

)≤ sup

k≥nak となる.したがって,命題 9より

lim infn→∞

an ≤ infn∈N

(supk≥n

ak

)= lim sup

n→∞an となる.

(2) inf A = − sup−a : a ∈ A が一般の集合に対して成り立つから明らかである.(3) 命題 5,10より明らかである.

命題 13. 実数列 an∞n=1, bn∞n=1 が与えられたとする.

(1) lim supn→∞

(an+ bn) ≤ lim supn→∞

an+lim supn→∞

bn. つまり,和の上極限は上極限の和以下である.

(2) lim infn→∞

(an + bn) ≥ lim infn→∞

an + lim infn→∞

bn. つまり,和の下極限は下極限の和以上である.

(3) limn→∞

bn が存在するならば,lim supn→∞

(an + bn) = lim supn→∞

an + limn→∞

bn

(4) limn→∞

bn が存在するならば,lim infn→∞

(an + bn) = lim infn→∞

an + limn→∞

bn

数列 an = (−1)n, bn = (−1)n+1 が示すように命題 13の (1),(2)において等号が成立しないこともあるので注意しよう.

証明.

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微分方程式演習 131

(1) はじめに,

(28.9) supk≥n

(ak + bk) ≤ supk≥n

ak + supk≥n

bk

が成り立つことを確認しておく.実際,もしm ≥ nの時には

am + bm ≤ supk≥n

ak + supk≥n

bk

だからである.次に,

(28.10) infn∈N

(supk≥n

ak + supk≥n

bk

)= inf

n∈N

(supk≥n

ak

)+ inf

n∈N

(supk≥n

bk

)である.

infn∈N

(supk≥n

ak + supk≥n

bk

)≥ inf

n∈N

(supk≥n

ak

)+ inf

n∈N

(supk≥n

bk

)の証明は (28.9)と同じであるが,逆向きは次のようにして背理法で示される.仮に,逆向きの不等式が成り立たないとする.すなわち,

infn∈N

(supk≥n

ak + supk≥n

bk

)> inf

n∈N

(supk≥n

ak

)+ inf

n∈N

(supk≥n

bk

)であると仮定する.すると,ある実数M と正の数 δが存在して,

infn∈N

(supk≥n

ak + supk≥n

bk

)> M + 2δ > M > inf

n∈N

(supk≥n

ak

)+ inf

n∈N

(supk≥n

bk

).

inf の条件から,n1, n2 ∈ Nが存在して

infn∈N

(supk≥n

ak

)≤(supk≥n1

ak

)≤ inf

n∈N

(supk≥n

ak

)+ δ

infn∈N

(supk≥n

bk

)≤(supk≥n2

bk

)≤ inf

n∈N

(supk≥n

bk

)+ δ

が成り立つ.この式において,n1 = n2かもしれない.n1, n2が不揃いだと扱いにくいので,少し工夫をする.n′ = max(n1, n2)とすると,

infn∈N

(supk≥n

ak

)≤(supk≥n′

ak

)≤(supk≥n1

ak

)≤ inf

n∈N

(supk≥n

ak

)+ δ

infn∈N

(supk≥n

bk

)≤(supk≥n′

bk

)≤(supk≥n2

bk

)≤ inf

n∈N

(supk≥n

bk

)+ δ

となる.つまり,

infn∈N

(supk≥n

ak

)≤(supk≥n′

ak

)≤ inf

n∈N

(supk≥n

ak

)+ δ

infn∈N

(supk≥n

bk

)≤(supk≥n′

bk

)≤ inf

n∈N

(supk≥n

bk

)+ δ

A > B を満たす数 −∞ ≤ A,B ≤ ∞ が与えられると,A と B の間に数 C が存在して A > C > B が成り立つことは数直線を描けば明らかであろう.

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132 京都大学 澤野嘉宏

が得られる.これより,

infn∈N

(supk≥n

ak + supk≥n

bk

)≤(supk≥n′

ak

)+

(supk≥n′

bk

)*

≤ infn∈N

(supk≥n

ak

)+ δ + inf

n∈N

(supk≥n

bk

)+ δ

≤M + 2δ

< infn∈N

(supk≥n

ak + supk≥n

bk

)が得られる.最右辺と最左辺を比べてみるとわかるように

infn∈N

(supk≥n

ak + supk≥n

bk

)< inf

n∈N

(supk≥n

ak + supk≥n

bk

)が得られているからこれはある数が自分自身より大きいということを示しているので矛盾である.したがって,(28.10)が示された.(28.9)と (28.10)より,

lim supn→∞

(an + bn) = infn∈N

[supk≥n

(ak + bk)

]∵ (28.9)

≤ infn∈N

(supk≥n

ak + supk≥n

bk

)= inf

n∈N

(supk≥n

ak

)+ inf

n∈N

(supk≥n

bk

)= lim sup

n→∞an + lim sup

n→∞bn

が得られた.(2) (1)の不等式を要所要所で逆にすればよい.もしくは,lim inf

n→∞an = − lim sup

n→∞(−an) を用

いて (1)の結果を焼きなおす.(3) (1)より lim sup

n→∞(an + bn) ≤ lim sup

n→∞an + lim sup

n→∞bn = lim sup

n→∞an + lim

n→∞bn が成り立つ

が,それ以外に,

lim supn→∞

an = lim supn→∞

(an + bn)− bn

≤ lim supn→∞

(an + bn) + lim supn→∞

(−bn)

= lim supn→∞

(an + bn)− lim infn→∞

bn

= lim supn→∞

(an + bn)− limn→∞

bn

が成り立つので,結局,

lim supn→∞

(an + bn) ≤ lim supn→∞

an + limn→∞

bn ≤ lim supn→∞

(an + bn)

が得られる.したがって,lim supn→∞

(an + bn) = lim supn→∞

an + limn→∞

bn となる.

(4) (3)をまねよ.

命題 14. 収束する実数列 an∞n=1, bn∞n=1 が与えられたとする.

(1) kを実数とするとき, limn→∞

k an が存在して, limn→∞

k an = k limn→∞

an

(2) limn→∞

an, limn→∞

bn が存在するならば, limn→∞

(an + bn) = limn→∞

an + limn→∞

bn

証明. 命題 12,13より明らかである.

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微分方程式演習 133

命題 15. 実数 αと数列 ann∈N につき,次の命題は同値である.

(1) limn→∞

an = α

(2) 任意の ε > 0に対して,あるN ∈ Nが存在して,n > N のときに,|an −α| < ε が成り立つ.

証明. (1) limn→∞

an = α を仮定する.すると,この場合の定義により,

α = supn≥N

(infk≥n

ak

)= inf

n≥N

(supk≥n

ak

)である.さて,証明すべき命題にあるように任意に εをあたえる.すると,N1, N2 ∈ Nが存在して,

infk≥N1

ak > α− ε, supk≥N2

ak < α+ ε

が成り立つ.N = max(N1, N2)とすると,

infk≥N

ak > α− ε, supk≥N

ak < α+ ε

だから,n ≥ N のときに,α− ε < an < α+ εが成り立っている.(2) 任意の ε > 0に対して,あるN ∈ Nが存在して,n > N のときに,|an −α| < ε が成り立つと仮定する.すると,α− ε < an < α+ ε, n > N が得られる.したがって,

α− ε ≤ infk≥N+1

ak ≤ supk≥N+1

ak ≤ α+ ε

である.α− ε ≤ supk≥N+1

ak ≤ α+ ε より,α− ε ≤ lim supn→∞

an ≤ α+ ε となる.同様に,

α− ε ≤ lim infn→∞

an ≤ α+ ε

も得られる.以上より,

−ε < lim supn→∞

an − α < lim infn→∞

an − α < ε

が得られる.ε > 0は任意だから,

α = lim supn→∞

an = lim infn→∞

an

となる.よって, limn→∞

an = α が得られた.

命題 16. 数列 ann∈N につき,次の命題は同値である.

(1) limn→∞

an が存在する.

(2) 任意の ε > 0に対して,あるN ∈ Nが存在して,n,m > N のときに,|an − am| < ε が成り立つ.

証明.

(1) α = limn→∞

an が存在すると仮定する.すると,この場合の定義により,

α = supn≥N

(infk≥n

ak

)= inf

n≥N

(supk≥n

ak

)である.さて,証明すべき命題にあるように任意に εをあたえる.すると,N1, N2 ∈ Nが存在して,

infk≥N1

ak > α− ε

2, supk≥N2

ak < α+ε

2

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134 京都大学 澤野嘉宏

が成り立つ.N = max(N1, N2)とすると,

infk≥N

ak > α− ε

2, supk≥N

ak < α+ε

2

だから,n,m ≥ N のときに,

α− ε

2< am, an < α+

ε

2

が成り立っている.したがって,|an − am| < ε が成り立つ.(2) 任意の ε > 0に対して,あるN ∈ Nが存在して,n,m > N のときに,|an − am| < ε が成り立つと仮定する.すると,

aN+1 − ε < am < aN+1 + ε, m > N

より,aN+1 − ε ≤ lim inf

n→∞an ≤ lim sup

n→∞an ≤ aN+1 + ε

これより,0 ≤ lim sup

n→∞an − lim sup

n→∞an ≤ 2ε

である.ε > 0は任意なので,

lim supn→∞

an = lim supn→∞

an

となる.つまり, limn→∞

an が存在する.

以下,定義などもれた部分をまとめる.

定義 25.

(1) 無限数列 ak∞k=1 が αに収束するとは,以下の条件が成立することである.条件:すべての正の数 ϵに対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,|an − α| ≤ ϵが成立する.

[注意] lim supn→∞

an = lim infn→∞

an と同値である.

(2) 無限数列 ak∞k=1 がコーシー列であるとは以下の条件が成立することである.条件:すべての正の数 ϵに対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 n,mに対して,n,m > N ならば,|an − am| ≤ ϵが成立する.

[注意] lim supn→∞

an = lim infn→∞

an と同値である.しかし,コーシー列は収束先を特

定しないで収束列を表現できるので,よく使われる.

(3) 無限級数∞∑k=1

ak が S に収束するとは以下の条件が成立することである.

条件:すべての正の数 ϵに対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,∣∣∣∣∣

n∑k=1

ak − S

∣∣∣∣∣ ≤ ϵ が成立する.

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微分方程式演習 135

(4) 無限級数∞∑k=1

ak が絶対収束するとは以下の条件が成立することである.

条件:∞∑

n=1

|an|が収束する.

(5) 無限数列 ak∞k=1 が∞に発散するとは,以下の条件が成立することである.条件:すべての正の数K > 0に対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,an > K が成立する.

[注意] lim infn→∞

an =∞ と同値である.

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136 京都大学 澤野嘉宏

28.4. 数列の収束に関する問題.

問題 28.1. 必要に応じて次の定理を用いて以下の数列が収束することを証明せよ.

(定理1) 複素数列 an∞n=1 について∞∑

n=1

|an| < ∞ ならば,∞∑

n=1

an は収束する.この仮定を満た

す数列を絶対収束する数列という.(定理2) 複素数列 an∞n=1 についてそれが収束すれば,評価 |an| ≤M が成立する.(定理3) 複素数列 an∞n=1 について定理1の仮定を調べるには“ある定数M が存在してすべて

の自然数mに対して”m∑

n=1

|an| < M ”を調べればいい.

次の級数が収束することを証明せよ.

(1)

∞∑n=1

4n

n!

(2)

∞∑n=1

(−1)n

nsただし,s > 1とする.

(3)∞∑

n=1

n2(1

2

)n

(4)∞∑

n=1

1

n4 − 3n+ 5

問題 28.1の専用解答用紙

(1) n ≥ 9のとき,4n

n!≤ 107

2nを示す.

定理1を用いて定理の仮定を確認すると次のようになる.

したがって,問題の級数は収束する.(2) 定理1を用いる.定理1の判定法に従うと,

を証明すればよいことになる.しかし,今判定すべき式は

(3) はじめに定数M が存在して,n2

2n≤M 3n

4nを満たすことを示す.実際,

だからである.この数列は有界である.実際,

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微分方程式演習 137

したがって,定数M が存在して,n2

2n≤M 3n

4nが成立する.この不等式を用いて,定理

1を用いると定理の仮定は次のように確かめられる.

(4) 自然数 nに対する次の不等式が不等式が成立する.

1

n4 − 3n+ 5≤ 1

n2

実際,

したがって,このとき定理1と問題 [ ]が使えて,問題の級数は収束するとわかる.

問題 28.2. 数列の収束に関する用語に関する文章を完成させよ.

(1) 無限数列 ak∞k=1 が αに収束するとは,以下の条件が成立することである.条件:

(2) 無限数列 ak∞k=1 がコーシー列であるとは以下の条件が成立することである.条件:

(3) 無限級数∞∑k=1

ak が S に収束するとは以下の条件が成立することである.

条件:

(4) 無限級数∞∑k=1

ak が絶対収束するとは以下の条件が成立することである.

条件:(5) 無限数列 ak∞k=1 が∞に発散するとは,以下の条件が成立することである.条件:

問題 28.2の専用解答用紙

(1) 無限数列 ak∞k=1 が αに収束するとは,以下の条件が成立することである.条件:

(2) 無限数列 ak∞k=1 がコーシー列であるとは以下の条件が成立することである.条件:

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138 京都大学 澤野嘉宏

(3) 無限級数∞∑k=1

ak が S に収束するとは以下の条件が成立することである.

条件:

(4) 無限級数∞∑k=1

ak が絶対収束するとは以下の条件が成立することである.

条件:

(5) 無限数列 ak∞k=1 が∞に発散するとは,以下の条件が成立することである.条件:

問題 28.3. 次の問いに答えよ.

(1) M =8!

48とする.M ≤ 108 であることを証明せよ.

(2) n ≥ 8のときn!

4n≥ 2n−8M を証明せよ.

(3) limn→∞

n!

4nを計算せよ.

問題 28.4. 次の問いに答えよ.

(1) 4n ≥ n(n− 1)

23n−2 を証明せよ.

(2) limn→∞

4n

nを計算せよ.

問題 28.5. 次の数列の極限を求めよ.挟み撃ちの原理などをたくみに使え.

(1) limn→∞

nkrn ただし,|r| < 1

(2) limn→∞

rn

n!

問題 28.6.∞∑

n=1

sn が収束する実数 sの範囲を求めよ.

問題 28.7.

∞∑n=1

n sn が収束する実数 sの範囲を求めよ.

問題 28.8.∞∑

n=1

1

nsが収束する実数 sの範囲を求めよ.

問題 28.9. 数列 an∞n=1, bn∞n=1の極限に関して成り立つものと成り立たないものを分類せよ.

α = limn→∞

an, β = limn→∞

bn

が存在すると仮定して考える.常に成り立つものを選べ.

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微分方程式演習 139

(1) α, β が実数値(±∞でない)とするとき, limn→∞

an bn = αβ.

(2) αが正の実数値(±∞でない)β =∞ とするとき, limn→∞

an bn =∞.(3) α = 0,β =∞とするとき lim

n→∞an bn = 0.

(4) α = 0,β =∞とするとき limn→∞

an bn = 1.

(5) α = 0,β =∞とするとき limn→∞

an bn =∞.(6) α = 0,β =∞とするとき lim

n→∞an bn = −1.

(7) α = 0,β =∞とするとき limn→∞

an bn = −∞.(8) α = β =∞とするとき, lim

n→∞(an + bn) =∞.

(9) α = β =∞とするとき, limn→∞

(an − bn) =∞(10) α = β =∞とするとき, lim

n→∞(an − bn) = 0.

(11) α = β =∞とするとき, limn→∞

(an − bn) = −1.(12) α = β =∞とするとき, lim

n→∞(an − bn) = −∞

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140 京都大学 澤野嘉宏

29. 関数の性質

29.1. 基本事項1:関数の連続性.

定義 26. f(t)を 0 < t ≤ t0 で定められた関数とする.f(t)が単調減少のとき,

limt↓0

f(t) = inf0<t≤t0

f(t)

と定める.

定義 27. aを含む開区間 I で定義された関数 f(x)に対して,

limx→a

f(x) = α

であるとは,

limδ↓0

(sup

x∈I, |x−a|<δ

|f(x)− α|

)= 0

であることと定める.

命題 17. f, g を aを含む開区間 I で定義された関数とする.

α = limx→a

f(x), β = limx→a

g(x)

とおく.

(1) limx→a

k f(x) = k α

(2) limx→a

f(x) + g(x) = α+ β

証明.

(1) 定義に従って計算していくと

limδ↓0

(sup

x∈I, |x−a|<δ

|k f(x)− k α|

)= |k| lim

δ↓0

(sup

x∈I, |x−a|<δ

|f(x)− α|

)= 0

より明らか.(2) (x− δ0, x+ δ0) ⊂ I とする.仮定より,

inf0<δ<δ0

(sup

x∈I, |x−a|<δ

|f(x)− α|

)= inf

0<δ<δ0

(sup

x∈I, |x−a|<δ

|g(x)− β|

)= 0

したがって,inf の条件より,κ > 0が任意に与えられると,δ1, δ2 < δ0 がとれて,

supx∈I, |x−a|<δ1

|f(x)− α|, supx∈I, |x−a|<δ2

|g(x)− β| < κ

2

となる.したがって,δ3 = min(δ1, δ2)に対して

supx∈I, |x−a|<δ3

|f(x)− α|, supx∈I, |x−a|<δ3

|g(x)− β| < κ

2

となる.これより,

supx∈I, |x−a|<δ3

|f(x) + g(x)− α− β| ≤ supx∈I, |x−a|<δ3

(|f(x)− α|+ |g(x)− β|)

≤ supx∈I, |x−a|<δ3

|f(x)− α|+ supx∈I, |x−a|<δ3

|g(x)− β|

≤ κ

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微分方程式演習 141

以上より,

inf0<δ<δ0

(sup

x∈I, |x−a|<δ

|f(x) + g(x)− α− β|

)≤ sup

x∈I, |x−a|<δ3

|f(x) + g(x)− α− β| ≤ κ

となる.これは任意の κ > 0に対して,

inf0<δ<δ0

(sup

x∈I, |x−a|<δ

|f(x) + g(x)− α− β|

)≤ κ

であることを意味している.κ > 0は任意だから,

limδ↓0

(sup

x∈I, |x−a|<δ

|f(x) + g(x)− α− β|

)= inf

0<δ<δ0

(sup

x∈I, |x−a|<δ

|f(x) + g(x)− α− β|

)= 0

つまり, limx→a

f(x) + g(x) = α+ β が得られた.

定義 28. 開区間 I で定義された関数 f(x)が連続であるとは,

limx→a

f(x) = f(a), a ∈ A

が成立することと定める.

29.2. 基本事項2:一様収束. 関数 fn : R → Rが各 n = 1, 2, 3, . . .に対して与えられたとする.関数列とは数列と似ているが,数列は数の並びだったのに対して,関数列は関数のならびになっているもので,数列と同じく (fn)

∞n=1 などと表す.

定義 29. 区間 I で定義された関数列 fn∞n=1 が f に一様収束するとは,

limn→∞

(supx∈I|f(x)− fn(x)|

)= 0

が成り立つことである.

定理 43. 区間 I で定義された連続関数列 fn∞n=1 が f に一様収束するなら f も連続である.

証明. 三角不等式を多用して

|f(x)− f(y)| ≤ |f(x)− fn(x) + fn(x)− fn(y) + f(y)− fn(y)|≤ |f(x)− fn(x)|+ |fn(x)− fn(y) + f(y)− fn(y)|≤ |f(x)− fn(x)|+ |fn(x)− fn(y)|+ |f(y)− fn(y)|

すなわち,

|f(x)− f(y)| ≤ |f(x)− fn(x)|+ |fn(x)− fn(y)|+ |f(y)− fn(y)|

を得る.これより,

|f(x)− f(y)| ≤ |f(x)− fn(x)|+ |fn(x)− fn(y)|+ |f(y)− fn(y)|

≤(supz∈I|f(z)− fn(z)|

)+ |fn(x)− fn(y)|+

(supz∈I|f(z)− fn(z)|

)= 2

(supz∈I|f(z)− fn(z)|

)+ |fn(x)− fn(y)|

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142 京都大学 澤野嘉宏

これの両辺の lim supδ→0

supy∈I

|x−y|<δ

を考えて,

lim supδ→0

|f(x)− f(y)| ≤ lim supδ→0

2

(supz∈I|f(z)− fn(z)|

)+ |fn(x)− fn(y)|

= 2

(supz∈I|f(z)− fn(z)|

)+ lim sup

δ→0|fn(x)− fn(y)|

= 2

(supz∈I|f(z)− fn(z)|

)を得る.すなわち,

(29.1) lim supδ→0

supy∈I

|x−y|<δ

|f(x)− f(y)| ≤ 2

(supz∈I|f(z)− fn(z)|

)

これの両辺の lim supn→∞

を考えて,

lim supδ→0

supy∈I

|x−y|<δ

|f(x)− f(y)|

= lim supn→∞

lim supδ→0

supy∈I

|x−y|<δ

|f(x)− f(y)|

≤ lim sup

n→∞2

(supz∈I|f(z)− fn(z)|

)≤ 2 lim sup

n→∞

(supz∈I|f(z)− fn(z)|

)= 0

ここで,はじめの等号が成り立つのは第二項が nにはよらない定数実数列の極限を考えているからであり,第二の不等号は (29.1)による.最後の等号はまさに一様収束の定義である.この不等式の最左辺と最右辺を見比べると,

(29.2) lim supδ→0

supy∈I

|x−y|<δ

|f(x)− f(y)|

≤ 0

が得られる.絶対値の中身は必ず 0以上だから,

(29.3) lim supδ→0

supy∈I

|x−y|<δ

|f(x)− f(y)|

≥ 0

が得られる.(29.2) と (29.3) を組み合わせて lim supδ→0

supy∈I

|x−y|<δ

|f(x)− f(y)|

= 0 が得られる.

定理 44. 区間 I = [a, b]で定義された連続関数列 fn∞n=1 が f に一様収束するなら

(29.4) limt→∞

∫ b

a

fn(t) dt =

∫ b

a

f(t) dt

が成り立つ.

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微分方程式演習 143

証明. 三角不等式

∣∣∣∣∣∫ b

a

g(t) dt

∣∣∣∣∣ ≤∫ b

a

|g(t)| dt より,∣∣∣∣∣∫ b

a

fn(t) dt−∫ b

a

f(t) dt

∣∣∣∣∣ =∣∣∣∣∣∫ b

a

fn(t)− f(t) dt

∣∣∣∣∣≤∫ b

a

|fn(t)− f(t)| dt

≤∫ b

a

(sup

a≤v≤b|fn(v)− f(v)|

)dt

= (b− a)(

supa≤v≤b

|fn(v)− f(v)|)

であるから,(29.4) が得られる.

命題 18. (1) (fn)∞n=1 が f に各点収束するとは次の条件が成立することである.

条件: すべての実数 xとすべての ϵ > 0に対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,|fn(x)− f(x)| < ϵが成立する.

(2) (fn)∞n=1 が f に一様収束するとは次の条件が成立することである.

条件: すべての ϵ > 0に対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,すべての実数 xに対して|fn(x)− f(x)| < ϵが成立する.

(3) (fn)∞n=1 が f に広義一様収束するとは次の条件が成立することである.

条件: すべての L > 0とすべての ϵ > 0に対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N でありなおかつすべての実数 xに対して |x| ≤ Lならば,|fn(x)− f(x)| < ϵが成立する.

定義式の論理的関係から次がわかる.

命題 19. (fn)∞n=1 が f に一様収束するならば,(fn)

∞n=1 が f に広義一様収束する.(fn)

∞n=1 が f

に広義一様収束するならば,(fn)∞n=1 が f に各点収束する.

例 27. (fn)∞n=1 を fn(x) = 1/nで定義する.このとき,この関数列は 0に一様収束する.

例 28. (fn)∞n=1 を fn(x) = x/nで定義する.このとき,この関数列は 0に一様収束しない.で

も,0に各点収束している.

例 29. (fn)∞n=1 を fn(x) = sinx/(x2 + n)で定義する.このとき,この関数列は 0に一様収束

する.

29.3. 関数列の収束に関する問題.

問題 29.1. 関数列の用語に関する次の空白を埋めよ.

(1) (fn)∞n=1 が f に各点収束するとは次の条件が成立することである.

条件:

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144 京都大学 澤野嘉宏

(2) (fn)∞n=1 が f に一様収束するとは次の条件が成立することである.

条件:(3) (fn)

∞n=1 が f に広義一様収束するとは次の条件が成立することである.

条件:

専用解答用紙

(1) (fn)∞n=1 が f に各点収束するとは次の条件が成立することである.

条件:

(2) (fn)∞n=1 が f に一様収束するとは次の条件が成立することである.

条件:

(3) (fn)∞n=1 が f に広義一様収束するとは次の条件が成立することである.

条件:

問題 29.2. R上の関数列 (fn)∞n=1 を fn(x) = 1/nで定義する.このとき,この関数列は 0に一

様収束する.このことを説明せよ.

問題 29.3. R上の関数列 (fn)∞n=1 を fn(x) = x/nで定義する.このとき,この関数列は 0に一

様収束しない.でも,0に各点収束している.このことを説明せよ.

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微分方程式演習 145

30. 追記:数式を打ち込む方法

問題 30.1. 友人に数学の質問をするときに,数式を打ち込みながら質問が出来ると便利である.ここでは,数式を打ち込む練習をする.

数式を打ち込むときは次のルールに従う.

(1) 数式はすべて半角小文字でうつ.(2) 数式を打つ場合は,打ちたい数式を$で挟む.(3) 下に添え字をつけたいときはアンダーバー をつけて表現する.(4) 上に添え字をつけたいときは^をつけて表現する.(5) 複数の文字を打ち込むときは{   }ではさむ.(6) 分数は¥frac{8}{9}のようにして分子,分母の順番で書く.

以下の問に答えよ.ただし(   )ではさまれたものは半角小文字で実際に書いていることにする.

(1)“ ex − x”は($e^x-x$)と表す.では 2a + 3x はどのように表すか?(2)“ e2x”は($e {^2x}$)とあらわす.では“ e3x

2−2”はどのように表すか?(3)“ a1x

212”は($a_1x_{12}^ 2$)もしくは($a_1x^2_{12}$)と

表す.では,“ C1x21”はどのように表すか?

(4)“ 2× 4÷ 5 = 85 ”は($2¥times 4 ¥div 5=¥frac{8}{5}$)

と表す.では,a2 × a3 ÷ (ab)3 = a2

b3 はどのように表すか?(5) sin, cos, log, tan, expははじめに¥をつけて表す.たとえば,expは($¥exp$)である.では,

“ C1 sin 2x+ C2 cos 2x,ただし,ここで C1, C2 は任意定数”

はどのように表せばよいか?

(6)“2x+ 3x

3x − 6 sinx”はどのように表せばよいか?

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146 京都大学 澤野嘉宏

Part 14. 解答

31. 1節

問題 1.1.

(1) (xa)′ = a xa−1

(2) (14 sinx+ 17 cosx+ 6)′ = 14 cosx− 17 sinx

(3) (tanx)′ =1

cos2 x(4) (ax)′ = ax log a(5) (x ex)′ = (x+ 1)ex

(6) (log x)′ =1

x

(7)

(ex

x

)′

=ex

x− ex

x2

(8) (exp(x2))′ = 2x exp(x2)

(9) g′(x) =1

x2 + 1(10) 計算結果は簡単だけど,約分できることに注意する.

(log(x+√1 + x2))′ =

1

x+√1 + x2

·(1 +

x√1 + x2

)=

1

x+√1 + x2

· x+√1 + x2√

1 + x2

=1√

1 + x2

(11) 計算結果は簡単だけど,約分できることに注意する.

(log(x+√x2 − 1))′ =

1

x+√x2 − 1

·(1 +

x√x2 − 1

)=

1

x+√x2 − 1

· x+√x2 − 1√

x2 − 1

=1√

x2 − 1

(12) 計算結果は簡単だけど,約分できることに注意する.(1

2

(x√

1 + x2 + log(x+√1 + x2)

))′

=1

2

√1 + x2 +

x2

2√x2 + 1

+1

2

1√1 + x2

=1

2

√1 + x2 +

x2 + 1

2√x2 + 1

=√x2 + 1

問題 1.2.

(1) (5x3 + 3x2)′′ = 30x+ 6

(2) (log x)′′ = − 1

x2

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微分方程式演習 147

問題 1.3.

(1) (f(x)g(x))′′ = f ′′(x)g(x) + 2f ′(x)g′(x) + f(x)g′′(x)

(2)dn

dxnex = ex

(3) k = 0のときdn

dxnsinx = sinx

k = 1のときdn

dxnsinx = cosx

k = 2のときdn

dxnsinx = − sinx

k = 3のときdn

dxnsinx = − cosx

(4) k = 0のときdn

dxncosx = cosx

k = 1のときdn

dxncosx = − sinx

k = 2のときdn

dxncosx = − cosx

k = 3のときdn

dxncosx = sinx

問題 1.4.

(1) (f(x)g(x))′ = f ′(x)g(x) + f(x)g′(x)(2) (f(x)g(x))′′ = f ′′(x)g(x) + 2f ′(x)g′(x) + f(x)g′′(x)(3) (f(x)g(x))′′′ = f ′′′(x)g(x) + 3f ′′(x)g′(x) + 3f ′(x)g′′(x) + f(x)g′′′(x)(4) (f(x)g(x))′′′′ = f ′′′′(x)g(x) + 4f ′′′(x)g′(x) + 6f ′′(x)g′′(x) + 4f ′(x)g′′′(x) + f(x)g′′′′(x)(5) (f(x)g(x))′′′′′

= f ′′′′′(x)g(x) + 4f ′′′′(x)g′(x) + 6f ′′′(x)g′′(x) + 4f ′′(x)g′′′(x) + f ′(x)g′′′′(x)

+ f ′′′′(x)g′(x) + 4f ′′′(x)g′′(x) + 6f ′′(x)g′′′(x) + 4f ′(x)g′′′′(x) + f(x)g′′′′′(x)

= f ′′′′′(x)g(x) + 5f ′′′′(x)g′(x) + 10f ′′′(x)g′′(x) + 10f ′′(x)g′′′(x)

+ 5f ′(x)g′′′′(x) + f(x)g′′′′′(x)

(6) (f(x)g(x))′′′′′′

= f ′′′′′′(x)g(x) + 6f ′′′′′(x)g′(x) + 15f ′′′′(x)g′′(x) + 20f ′′′(x)g′′′(x)

+ 15f ′′(x)g′′′′(x) + 6f ′(x)g′′′′′(x) + f(x)g′′′′′′(x)

問題 1.5. 3B2 (C1 eA t cosB t+ C2 e

A t sinB t)

問題 1.6. 任意の x, y に対して平均値の定理より (z − x)(z − y) ≤ 0 を満たす z が存在してf(x)− f(y) = f ′(z)(x− y) だから,f ′(z) = 0より f(x) = f(y)つまり f は定数となる.

問題 1.7. 微積分学の基本定理により g′ が存在して g′ = f だから g′ は f の連続性より連続.gは微分可能なのだからもちろん連続である.したがって gは C1 級.

問題 1.8. 任意の x, y に対して平均値の定理より (z − x)(z − y) ≤ 0 を満たす z が存在してf(x)− f(y) = f ′(z)(x− y) だから,|f ′(z)| ≤M より |f(x)− f(y)| ≤M |x− y|となる.

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148 京都大学 澤野嘉宏

問題 1.9. 変数変換,積の微分,微分積分学の基本定理を組み合わせる.

d2

dt2

∫ t

0

s f(t− s) ds = d2

dt2

∫ t

0

(t− u) f(u) du

=d2

dt2

(t

∫ t

0

f(u) du−∫ t

0

u f(u) du

)=

d

dt

(∫ t

0

f(u) du+ t f(t)− t f(t))

=d

dt

∫ t

0

f(u) du = f(t)

問題 1.10. (1)から (2)は明らかである.(2)を仮定すると F ′(x) = G′(x)より (F −G)′(x) = 0

である.したがって,F (x)−G(x) = C が成り立つ.x = aを代入して C = 0が成り立つ.

問題 1.11. 関数 f(x)を f(x) = x− 5√x+ 1で定める.x > 0のときに,f ′(x) = 1− 1

5(x+1)−

45 > 0

だから,f(x) は単調増加である.f(0) = −1, f(2) = 2 − 5√3 > 0 であるから,f(x) = 0 は

(0, 2)に唯一の解 αをもつ.an+1 − α = 5√an + 1 − 5

√α+ 1 であるが,平均値の定理より,an

と α の間に 5√an + 1 − 5

√α+ 1 =

1

5(cn + 1)−

45 (an − α) となる cn が存在する.したがって,

an+1 −α =1

5(cn +1)−

45 (an −α) となる cnが anと αの間に存在する.an ≥ 0は明らかだから,

cn ≥ 0である.両辺の絶対値を取ると |an+1 − α| ≤1

5|an − α|. 特に,|an − α| ≤

1

5n−1|a1 − α|

が成立する.これより, limn→∞

an = αが成り立つ.

問題 1.12.

(1) 微分積分学の基本定理を用いる.

(31.1) f(x)− f(α+ β

2

)=

∫ x

α+β2

f ′(t) dt = 0

より明らかである.

(2) x = sin yを xで微分して,1 =dy

dx· cos y. cos y =

√1− sin2 y =

√1− x2だから,これ

を整理して,dy

dx=

1√1− x2

.

(3) z = e−axyとおくと,z′′ = −b2 z を満たしている.これを yの式に翻訳すると答えが得られる.

問題 1.13.

(1) f(0) = 0, f ′′(x) = sin(x6)(2) F (0) = 0, F ′(0) = 0, F ′′(x) = sin(x2)

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微分方程式演習 149

問題 1.14.

(1)

∫xa dx =

1

a+ 1xa+1 + C (a = −1のとき)∫

x−1 dx = log |x|+ C (a = −1のとき)

(2)

∫5 sinx+ 8 cosx dx = −5 cosx+ 8 sinx+ C

(3)

∫tanx dx = − log | cosx|+ C

(4)

∫ax dx =

ax

log a+ C

(5)

∫x ex dx =

∫x (ex)′ dx = (x− 1)ex + C

(6)

∫log x dx =

∫(x)′ log x dx = x(log x− 1) + C

(7)

∫(2x+ 3)4 dx =

(2x+ 3)5

10+ C

(8)

∫x exp(x2) dx =

1

2exp(x2) + C

(9)

∫ √x2 + 1 dx =

1

2

(x√

1 + x2 + log(x+√1 + x2)

)+ C

問題 1.15.

(1) (x− 1)ex + C

(2)ax

log a+ C

(3)1

2ex(sinx− cosx) + C

問題 1.16.

(1) (x− 1)ex + C(2) x log x− x+ C

(3)1

10ex(sin 3x− 3 cos 3x) + C

問題 1.17.

(1)

∫dx

x2 + x= log

∣∣∣∣ x

x+ 1

∣∣∣∣+ C

(2)

∫dx

x2 + 6x+ 8=

1

2log

∣∣∣∣x+ 2

x+ 4

∣∣∣∣+ C

(3) 公式∫f ′(x)

f(x)dx = log |f(x)|+ C を利用する.

∫xdx

x2 − 4=

1

2log |x2 − 4|+ C

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150 京都大学 澤野嘉宏

(4) すぐできる計算1

x(x+ 1)=

1

x− 1

x+ 1を生かして計算するとよい.両辺に

1

xをかけて

1

x2(x+ 1)=

1

x2− 1

x(x+ 1)だから,

1

x2(x+ 1)=

1

x2− 1

x+

1

x+ 1. この計算をもとに

して∫dx

x2(x+ 1)=

∫dx

x2−∫dx

x+

∫dx

x+ 1= − 1

x− log |x|+ log |x+ 1|+ C.

(5)

∫dx

x2 − 1=

1

2log

∣∣∣∣x− 1

x+ 1

∣∣∣∣+ C

(6)

∫dx

x2 + 1= Arctanx+ C

(7)

∫x3dx

x2 + 1=

∫x− x

x2 + 1dx =

1

2x2 − 1

2log(x2 + 1) + C

(8)

∫dx

x2(x− 1)=

1

x− log |x|+ log |x− 1|+ C

(9) 部分分数に分解すると1

x3 + 1=

1

3

1

x+ 1+

1

3

−x+ 2

x2 − x+ 1となる.前半の項の積分は簡単

だが,後半はめんどうである.∫

dx

x2 − x+ 1,

∫(2x− 1)dx

x2 − x+ 1の二つは計算できる.実際,∫

f ′(x)

f(x)dx = log |f(x)|+ C だから∫

dx

x2 − x+ 1=

2√3Arctan

2x− 1√

3

+ C,

∫(2x− 1)dx

x2 − x+ 1= log(x2 − x+ 1) + C

だからである.そこで1

x3 + 1=

1

3

1

x+ 1+

1

6

−2x+ 1

x2 − x+ 1+

1

2

1

x2 − x+ 1と分解する.こ

れより,∫dx

x3 + 1=

1

3

∫dx

x+ 1− 1

6

∫(2x− 1)dx

x2 − x+ 1+

1

2

∫dx

x2 − x+ 1

=1

3log |x+ 1| − 1

6log(x2 − x+ 1) +

1√3Arctan

1√3(2x− 1)

+ C

問題 1.18.

(1)

∫ 1

0

ex dx = e− 1

(2)

∫ 2

0

√4− x2 dx = 領域 x2 + y2 ≤ 4, x, y ≥ 0の面積 = π

(3)

∫ 1

0

dx

1 + x2=[tan−1 x

]π4

0=π

4

問題 1.19. L =

∫ 1

0

√1 + x2 dx =

[x√1 + x2 + log(x+

√1 + x2)

2

]10

=

√2 + log(1 +

√2)

2.

問題 1.20.

(1)

∫xa dx =

1

a+ 1xa+1 + C (a = −1のとき)= log |x|+ C (a = −1のとき)

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微分方程式演習 151

(2)

∫5 sinx+ 8 cosx dx = −5 cosx+ 8 sinx+ C

(3)

∫tanx dx = − log | cosx|+ C

(4)

∫ax dx =

ax

log a+ C

(5)

∫x ex dx =

∫x (ex)′ dx = (x− 1)ex + C

(6)

∫log x dx =

∫(x)′ log x dx = x(log x− 1) + C

(7)

∫(2x+ 3)4 dx =

(2x+ 3)5

10+ C

(8)

∫x exp(x2) dx =

1

2exp(x2) + C

(9)

∫ √x2 + 1 dx =

1

2

(x√

1 + x2 + log(x+√1 + x2)

)+ C

問題 1.21.

(1)

∫cos2 xdx =

1

4(2x+ sin 2x) + C

(2)

∫sin2 xdx =

1

4(2x− sin 2x) + C

(3)

∫sin5 xdx = − cosx+

2

3cos3 x− 1

5cos5 x+ C

(4)

∫cos3 x sinxdx = −1

4cos4 x+ C

(5)

∫tanxdx = − log | cosx|+ C

(6)

∫1

tanxdx = log | sinx|+ C

問題 1.22.

(1)

∫dx√x2 + 1

= log(x+√x2 + 1) + C

(2)

∫dx√x2 − 4

= log |x+√x2 − 4|+ C

(3)

∫ √x2 + 1dx =

1

2

(√x2 + 1 + log(x+

√x2 + 1)

)+ C

問題 1.23. 立体は

(x, y) : x2 + y2 ≤ 4, y ≥ 1 = (x, y) : −2 ≤ x ≤ 2, 1 ≤ y ≤√4− x2

を回転させて得られる立体だから,

V = π

∫ √3

−√3

(4− x2)− 12 dx = π

∫ √3

−√3

3− x2 dx = π3√3

∫ 1

−1

1− u2 du = 4√3π.

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152 京都大学 澤野嘉宏

32. 2節

問題 2.1.

(1)d

dxy = 2C e2x

(2) e−axy = A cos(bx) +B sin(bx) を二回微分する.すると,

a2 e−axy − 2a e−axy′ + e−axy′′ = −b2(A cos(bx) +B sin(bx))

となる.したがって,

a2 e−axy − 2a e−axy′ + e−axy′′ = −b2 e−axy

これを整理するとy′′ − 2a y + (a2 + b2)y = 0

がでる.(3) 微分の計算をすると

y(x)′ = limh→0

y(x+ h)− y(x)h

=

0 (x ≤ a)2(x− a) (x ≥ a).

この式より明らかに等号が成り立つ.特に,x = aのときは

limh→+0

h2

h= 0, lim

h→−0

0

h= 0

で二者が一致するから

y(a)′ = limh→0

y(a+ h)− y(a)h

= 0

となる.

問題 2.2. a = −4

問題 2.3. それぞれに 2通りの解法を与える.

(1) a = 15, b = 730 が答えである.(解法1)h(x) の定義式を直接代入しても出来るが,h′′(x) − 2h′(x) + 10h(x) = 0 に注目する.t6 − 6t5 + at4 − 20t3 − 15t2 + 6t + b を(t2 − 2t+ 10)で割り算すると (−32a+ 480)t+ (b+ 60a− 1630) が余りであるから,商を P (t)とすると

h(6)(x)− 6h(5)(x) + a h(4)(x)− 20h(3)(x) + 15h′′(x)− 6h′(x) + bh(x)

=

(d6

dt6− 6

d5

dt5+ a

d4

dt4− 20

d3

dt3+ 15

d2

dt2− 6

d

dt+ b

)h(x)

= P (D)

(d2

dt2− 2

d

dt+ 10

)h(x) + (−32a+ 480)

d

dth(x) + (b+ 60a− 1630)h(x)

= (−32a+ 480)d

dth(x) + (b+ 60a− 1630)h(x)

= (−32a+ 480)h′(x) + (b+ 60a− 1630)h(x)

= (−32a+ 480)ex(sin3x+ 3cos3x) + (b+ 60a− 1630)exsin3x

= 96(−a+ 15)excos3x+ (b+ 28a− 1150)sin3x

だから,これが0になるためにはa = 15, b = 730(解法2)もしくは,e−xh(x) = sin3xの両辺を 6回微分して (e−xh(x))(6) = −729e−xh(x)を得るから,整理して a = 15, b = 730を得る.

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微分方程式演習 153

(2) a = 6, b = 15, c = 20が答えである.(解法1)多項式の係数が色々あるが,特に関連がなさそうである.(D− 1)6h(x) = 0 の解はC1e

x+C2 x ex+C3x

2 ex+C4x3 ex+C5 x

4ex+C6 x

5ex だから,

h(6)(x)− 6h(5)(x) + 15h(4)(x)− 20h(3) + 15h′′(x)− 6h′(x) + h(x) = 0

が得られる.これより a = 6, b = 10, c = 20 (解法2)もしくは,e−xh(x) = sin3x の両辺を 6 回微分して (e−xh(x))(6) = 0 を得るから,整理して a = 6, b = 15, c = 20 を得る.

問題 2.4. yを微分すると,y′ =√2ex sin

(x+

π

4

)より,

y′′ = (√2)2ex sin

(x+

4

), y′′′ = (

√2)3ex sin

(x+

4

), · · ·

などが続いて得られる.特に 8回微分をすると,

y′′′′′′′′ = (√2)8ex sin

(x+

4

)= 16ex sinx = 16y

これによって結論が得られた.

注意 9.

(1) 注意:数学的帰納法で y(n) = (√2)n sin

(x+

4

)を示してもよい.

(2) 合成の代表的な例 sinx+ cosx =

√2 sin

(x+ π

4

)cosx− sinx =

√2 cos

(x+ π

4

)実際に計算するときの例

a cosx+ b sinx =√a2 + b2

(a√

a2 + b2cosx+

b√a2 + b2

sinx

)=√a2 + b2 (sinφ cosx+ cosφ sinx)

=√a2 + b2 sin(x+ φ)

ただし,sinφ =a

a2 + b2, cosφ =

b

a2 + b2とおいている.

問題 2.5. 一番明快な方法は t = 1 + i が方程式 t4 − 4t3 + 8t2 − 8t+ 4 = 0 の解であることを確かめる方法である.これは次のようにして確かめられる.t = 1 + iのとき計算すると

t4 = −4, 8t2 = 16i, −4t3 = 8− 8i, −8t = −8− 8i

だから,確かに t4 − 4t3 + 8t2 − 8t+ 4 = 0 を満たしている.さて,これを確認した後は,多項式 Q(t) = t4 − 4t3 + 8t2 − 8t + 4 を因数分解してみる.t = 1 + i で Q(t)は 0なので,共役なt = 1− iでも Q(t)は 0になるから

t4 − 4t3 + 8t2 − 8t+ 4 = (t2 − 2t+ 2)P (t)

と割り算できることがわかる.P (t) = t2 − 2t + 2は実際に計算すれば確かめられる.さて,微分方程式 y′′′′ − 4y′′′ + 8y′′ − 8y′ + 4y = 0 はこのことより,一般解は

y = C1 ex cosx+ C2 e

x sinx+ C3 x ex cosx+ C4 x e

x sinx

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154 京都大学 澤野嘉宏

と表されることがわかった.今考えているのは y = x ex sinxだから,C1 = C2 = C3 = 0, C4 = 1の場合の特別なケースである.したがって,当然 y = x ex sinxは y′′′′−4y′′′+8y′′−8y′+4y = 0を満たしている.

問題 2.5の別解. はじめに z = e−xyとおいてみる.すると,z′ = x cosx+ sinx

z′′ = −x sinx+ 2 cosx

z′′′ = −x cosx− 3 sinx

z′′′′ = x sinx− 4 cosx

となる.したがって,

z′′′′ + 2z′′ + z = x sinx− 4 cosx− 2x sinx+ 4 cosx+ x sinx = 0

が成り立つ.これをもとに戻してみると

(e−xy)′′′′ + 2(e−xy)′′ + e−xy = 0

であるから,これをきちんと整理すれば y = x ex sinxは

y′′′′ − 4y′′′ + 8y′′ − 8y′ + 4y = 0

を満たしているとわかる.

問題 2.6. xy′ = 3yが求める微分方程式で,直交曲線族を求めたければ,y′ =−x3yを解けばよい

ので,3

2y2 +

1

2x2 = C が答えである.

問題 2.7.

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微分方程式演習 155

33. 3節

問題 3.1.

(1) y = C exp

(1

3x3)

(2) y = C exp(− cosx)

(3) y = ±√

1

C − 2xただし,− 1

2y2= 2x+ C も許容範囲.実際に解いてみる.

dy

dx= y3∫

dy

y3=

∫dx

− 1

2y2= x+ C

これで,許容範囲の箇所まで計算できた.(4) y = C xx e−x ただし,y = C ex log x−x も許容範囲.(5) この問題が一番混乱するので,実際に解いてみよう.

dy

dx= −(tanx)y∫

dy

y=

∫− sinx

cosxdx

log |y| = log | cosx|+ C

log |y| = log |eC cosx|y = ±eC cosx

ここで,±eCを C でおきなおして y = C cosx が得られる.

注意 10 (最後の問題にのみ通用する注意). a > 0を定数とする.bは実数とする.最後の問題は他とは見かけは似ているが,恐ろしく難しい問題である.試験においては,このような混乱が起きる問題は出題しませんが,教科書などでは現にこの手の問題を含むものが確かにある.

(1) elog a = exp(log a) = a(2) log eb = log exp(b) = b(3) この講義ではレポートをこめて変数分離系の問題はすべてこのように解いても構わないが,非常に厄介な問題がある.変数分離系の問題として出題した場合は,以下の議論はしなくて構わない.ただし,後に学習する一意性の問題が絡むときは考える必要があるので,そのとき強調する.たとえば,

y′ = −(tanx)y, y(0) = 5

を解けと言われたとき,y(x) = 5 cosx としたいのであるが,

y(x) =

5 cosx −π

2 < x < π2

0 その他

でも解になってしまうのである.というのも,tanxはすべての xに対して定義されているのではないからである.実際に,tanxは

mπ − π

2< x < mπ +

π

2, mは整数

となるような xでしか定義できない.したがって,区間(−π2,π

2

)では 5 cosxとなるが,

そのほかの区間では自由に条件をつけて微分方程式を解きなおす必要が出てくる.した

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156 京都大学 澤野嘉宏

がって,| cosx| = cosx, − cosx とすることなどが許されるかどうかまで考えないといけない.

問題 3.2.

(1) sin y = C ex

(2) y = − 1

x+ C(3) y(log y − 1) = x+ C

(4) y = tan

(x2

2+ C

)(5) y = C exp

(−x

3

3

)

問題 3.3.

(1) y = C e3x

(2) y = C exp

(1

2x2).

(3) y = − 1

x− C

問題 3.4.

(1) −e−y = x+ C

(2) y =1

x+ C(3) y log y − y = 3x+ C

問題 3.5.

(1)1

2ex(sinx− cosx) + C

(2) N(t) =1

2et(sin t− cos t) + C

(3) y(x) = C exp

1

2ex(sinx− cosx)

問題 3.6. 計算の流れとともに答えを記す.

(1) 以下の点に注意せよ.(a) (の箇所において)通分するときに間違えないように.

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微分方程式演習 157

y′ = y2

dy

y2= dx

−1

y= x+ C

y =−1x+ C

(2) 以下の点に注意せよ.(a) 特になし.

y′ = y sinx

dy

y= sinx

log |y| = − cosx+ C

y = C e− cos x = C exp(− cosx)

(3) 以下の点に注意せよ.(a) (の箇所において)指数関数と分数の位置が正確にわかるようにせよ.

y′ = y e12x

dy

y= e12x dx

log |y| = 1

12e12x + C

y = C exp

(1

12e12x

)

(4) 以下の点に注意せよ.(a) 特になし.

y′ = y cosx

dy

y= cosx dx

log |y| = sinx+ C

y = C esin x

(5) 以下の点に注意せよ.(a) (の箇所において)平方根をはずすときは,±をつけることを忘れずに.

y′ = y−1

yy′ = 1

1

2y2 = x+ C(ここでとめても可)

y = ±√2x+ C

(6) 以下の点に注意せよ.(a) (の箇所において)平方根をはずすときは,±をつけることを忘れずに.

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158 京都大学 澤野嘉宏

y′ = y−1x

yy′ = x

1

2y2 =

1

2x+ C(ここでとめても可)

y = ±√x2 + C

(7) 以下の点に注意せよ.(a) (の箇所において)通分するときに間違えないように.

y′ = x y2

dy

y2= x dx

−1

y=

1

2x2 + C

y = − 2

x2 + C

(8) 以下の点に注意せよ.(a) (の箇所において)対数をとってさらに計算するなら,対数のとり間違えに注意せよ.

y′ = ey

e−y dy = dx

−e−y = x+ C

(9) 以下の点に注意せよ.(a) 公式 y′ = a y ⇐⇒ y = C ea xを使える.y + 3 = Y とおけば,Y ′ = aY だから.直接解くときは次の通り.

y′ = y + 3

dy

y + 3= dx

log |y + 3| = x+ C

y + 3 = C ex

y = C ex − 3

(10) 以下の点に注意せよ.(a) 特になし.

y′ = x(y + 1)

dy

y + 1= x dx

log |y + 1| = 1

2x2 + C

y = −1 + C exp

(1

2x2)

問題 3.7. 答えのみを記す.

(1) y = − 10

(2x+ 3)5 + C(2) y = C exp (x ex − ex)

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微分方程式演習 159

(3) y = C exp

(ex

10(cos 3x+ 3 sin 3x)

)(4) y2 = −2 log | cosx|+ C(5) y2 = 2x log x− 2x+ C

(6) y = − 1

x ex − ex + C

(7) e−y =1

2x2 + C

(8) sin y = C log x

(9) y =3

exp(3ex + C)− 1

(10) y = C exp

(1

2ex (sinx− cosx)

)− 1

問題 3.8.

(1) y = C ex

(2) y = C e2x

(3) y = C e12x

2

(4) log | sin y| = −x+ C もしくは sin y = C e−x

(5) はじめに不定積分を計算する.∫dy

sin y=

∫sin y dy

sin2 y

=

∫sin y dy

sin2 y

=

∫sin y dy

1− cos2 y

=1

2

∫sin y dy

1− cos y+

1

2

∫sin y dy

1 + cos y

=1

2log(1− cos y)− 1

2log(1 + cos y) + C

これを整理して1

2log

1− cos y

1 + cos y= x+ C もしくは

1− cos y

1 + cos y= C e2x

となる.(6) −e−y = x+ C(7) y = C exp(− cosx)(8) y−1 = C sinx

問題 3.9. z = −e−xy + e−xy′ = −e−xy + e−xy = 0 より,z は定数したがって,y = C ex となる.C は任意定数.

問題 3.10. y = C exp

(∫f(x)dx

)

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160 京都大学 澤野嘉宏

問題 3.11. y(x) = 7 exp

1

8(2x+ 5)4 − 625

8

問題 3.12. y = C exp

(1

3x3)y = 4 exp

(1

3(x3 − 1)

)

問題 3.13.

(1) y = C e2x, y = 2 e2x−2

実際に詳しく計算してみる.

y′ = 2y:これがスタート

dy

dx= 2y:微分記号の書き換え

1

y

dy

dx= 2:変数分離のための準備∫

1

y

dy

dxdx =

∫2 dx:xで積分∫

1

ydy =

∫2 dx:右辺において積分の変数変換を実行

log |y| = 2x+ C:積分の公式を具体的に適用

|y| = e2x+C:指数関数に直した (X = log Y =⇒ Y = EX)

y = ±eC e2x:絶対値をはずすy = C e2x:±eC は定数だから,C で改めた

C を任意定数というが,x = 1, y = 2 を代入すると 2 = C e2 つまり,C = 2e−2 が得られる.したがって,y = 2 e−2e2x = 2 e2(x−1) が従う.

(2) y = C exp

(x2

2

)y = exp

(x2 − 1

2

)実際に詳しく計算してみる.

y′ = x y:これがスタート

dy

dx= x y:微分記号の書き換え

1

y

dy

dx= x:変数分離のための準備∫

1

y

dy

dxdx =

∫x dx:xで積分∫

1

ydy =

∫x dx:右辺において積分の変数変換を実行

log |y| = 1

2x2 + C:積分の公式を具体的に適用

|y| = e12x

2+C:指数関数に直した (X = log Y =⇒ Y = EX)

y = ±eC e 12x

2

:絶対値をはずす

y = C e12x

2

:±eC は定数だから,C で改めた

C を任意定数というが,x = 1, y = 1 を代入すると 1 = C e12 つまり,C = e−

12 が得ら

れる.したがって,y = e−12 e

12x

2

= e12 (x

2−1) が従う.

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微分方程式演習 161

問題 3.14. y = C e4x, y = S e4x

問題 3.15.

(1) y = 2 cosx

(2) y =1

2πexp

(−1

2x2)

(3) y = x− 1 + e−x

問題 3.16.

(1) y =±1√

−2

5x5 + C

=±√5√

−2x5 + C

(2) y = C e4x

(3) sin y = C ex2

2 = C exp

(x2

2

)(4) y = 3 exp(x3)

問題 3.17.

(1) y = 4ex

(2) y = 12ex−1

(3) y = 3ex2

問題 3.18. 答えのみを記す.

(1) y = exp

(1

2x2)

(2) y = 4 exp(3(x+ 1)2 − 48

)(3) y = −2 + 5 exp

(1

3x3)

(4) y = exp(− cosx+ 1)

(5) y = − 1

x− 1

(6) y = 3 exp

(1

4x4)

(7) y = 4 exp(2(x+ 2)2 − 32

)− 1 = 4 exp

(2x2 + 8x

)− 1

(8) y = − 1

(x− 3)2 − 43

=−3

3x2 − 18x+ 23

(9) y = 7ex−5

(10) y = exp(expx− 1)

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162 京都大学 澤野嘉宏

問題 3.20.

問題 3.21.

(1) α = β = 0として,

g(0) =2g(0)

1− g(0)2分母を払って

g(0)− g(0)3 = 2g(0)

この3次方程式を解いて g(0) = 0が得られる.

(2) g′(x) = limh→0

g(x+ h)− g(x)h

= limh→0

g(h) + g(h)g(x)2

h(1− g(x)g(h))= g(x)2 + 1

(3)

∫d(tan−1 g(x)) = x + C g(x) = tan(x + C)が得られる.g(0) = 0を代入して C = 0.

よって,g(x) = tanxがわかった.

問題 3.22.

(1) 偏導関数を計算すると,

ux = 2xf ′(x2 − y2)uxx = 2f ′(x2 − y2) + 4x2f ′′(x2 − y2)uy = 2xf ′(x2 − y2)uxx = −2f ′(x2 − y2) + 4y2f ′′(x2 − y2)uxy = −4xyf ′′(x2 − y2)

であるから,

uxxuyy − uxy2 = 8(y2 − x2)f ′′(x2 − y2)f ′(x2 − y2)− 4f ′(x2 − y2)2.(2) 微分方程式 8r f ′′(r)f ′(r) + 4f ′(r)2 = rk を解けばよい.したがって,

r f ′(r)2 =1

k + 1rk+1

となる.これより,

f ′(r) = ±√

1

k + 1r

k2

となる.f ∈ C2であるためには,k ≥ 3でないといけない.このときは,4通りの f ′(r)が考えられる.

f ′(r) = ±√

1

k + 1r

k2 χ[0∞)(r)±

√1

k + 1|r| k2 χ[0∞)(−r)

したがって,

f(r) = ± 2

k + 2

√1

k + 1r

k2+1χ[0∞)(r)±

2

k + 2

√1

k + 1|r| k2 χ[0∞)(−r)

が得られる.

問題 3.23.

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微分方程式演習 163

(1) いくつかの微分を計算してみる.

∂2

∂x2F (√

(x− 1)2 + y2) =∂

∂x

(x− 1√

(x− 1)2 + y2F ′(√(x− 1)2 + y2)

)

= (x− 1)2F ′′(√(x− 1)2 + y2) +

y2F ′(√(x− 1)2 + y2)

(√

(x− 1)2 + y2)3

同様に,

∂2

∂y2F (√(x− 1)2 + y2) = y2F ′′(

√(x− 1)2 + y2) +

(x− 1)2F ′(√(x− 1)2 + y2)

(√(x− 1)2 + y2)3

であるから,(∂2

∂x2+

∂2

∂y2

)F (√(x− 1)2 + y2) = F ′′(

√(x− 1)2 + y2) +

F ′(√(x− 1)2 + y2)√

(x− 1)2 + y2.

同様にして(∂2

∂x2+

∂2

∂y2

)F (√(x+ 1)2 + y2) = F ′′(

√(x+ 1)2 + y2) +

F ′(√(x+ 1)2 + y2)√

(x+ 1)2 + y2.

したがって,問題の微分方程式を満たしていれば,定数 Aが存在して,

f ′′1 (√(x+ 1)2 + y2) +

f ′1(√(x+ 1)2 + y2)√(x+ 1)2 + y2

= A

および

f ′′2 (√(x− 1)2 + y2) +

f ′2(√(x− 1)2 + y2)√(x− 1)2 + y2

= −A

最初の方程式を解く.f ′′1 (r1) +f ′1(r1)

r1= A より,

d

dr1r1f

′1(r1) = Ar1

であるから,r1f ′1(r1) =1

2Ar1

2 + C となるが,f1 ∈ C∞(R)より,C = 0で f ′1(r1) =

1

2Ar1 +D となる.したがって,

f1(r1) =1

4Ar1

2 +D

である.f2 についても同様に求めると

f2(r2) = −1

4Ar2

2 +D′

となるから,φ(x, y) =M(r1

2 − r22) +D′′ = 4M x+D′′

となる.(2) M = 0の場合で極値は取らない.

問題 3.24. 最小値を与えるような wが存在するかどうかわからないが,そのような wが存在するとして考える.w0 で J が最小値を取るとする.u ∈ C1[0,∞)を w0 − u ∈ X となるように取るとする.すると,

J [w0 − t u]− J [w0] = −2t∫ ∞

0

w0(x)u(x) + w′0(x)u

′(x) dx− t2∫ ∞

0

u(x)2 + u′(x)2 dx

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164 京都大学 澤野嘉宏

である.したがって,任意の u ∈ C1[0,∞)に対して∫ ∞

0

w0(x)u(x) + w′0(x)u

′(x) dx = 0

が成り立たないといけない.

D(0,∞)の意味では w0 = w′′0 となる.すると,D ∋ τ に対して τw0 ∈ H2,∞(R)がいえる.こ

れより τw0 ∈ H4,∞(R)がいえる.したがって,w0 ∈ C2((0,∞))となる.【注意】この段落に書いてあることがわからない場合は w0 ∈ C2((0,∞))を仮定して読み進めるとよい.

再び∫ ∞

0

w0(x)u(x) + w′0(x)u

′(x) dx = 0 に戻って,部分積分すると u ∈ D(0,∞)に対して∫ ∞

0

(w0(x)− w′′0 (x))u(x) dx = 0

が得られる.したがって,w0 = w′′0 である.この条件を満たすX の解は w0(x) = e−x だけであ

る.逆に考えることで,w0は J [w0]の最小解を与えることがわかる.ちなみに最小値は J [w0] = 1である.

問題 3.25.

問題 3.26.

問題 3.27. f(x) = tan−1 x

問題 3.28.

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微分方程式演習 165

34. 4節

問題 4.1.

(1) (a) y = C ex

(b) y = C ex − x− 1

(2) (a) y = C e12x

2

(b) y = C e12x

2 − 1 【参考】t = −1

2x2 とおくと∫

x e−12x

2

dx =

∫−et dt = −et + C = −e− 1

2x2

+ C

ここでの C は積分定数.次のようにして解いても構わない.

dy

y + 1= x dx, log |y + 1| = 1

2x2 + C, y = C exp

(1

2x2)− 1.

(3) (a) y =C

x

(b) y =C

x+

1

5x4

問題 4.2.

(1) y = −1が解であることは代入して確認できる.(2) y = C e

12x

2

− 1

問題 4.3.

(1) はじめに,y′ + cotx y = 0 を解くとy′

y= −cosx

sinx. したがって,

log |y| = C − log | sinx|

これより,y =C

sinx.

元の方程式を解くべく, y =C

sinx→ y =

C(x)

sinxとする.

y′ + cotx y =C ′(x)

sinx− C(x) cosx

sin2 x+C(x) cosx

sin2 x=C ′(x)

sinx

より,元の方程式から C ′(x) = 1. よって C(x) = x + C.代入して y =x+ C

sinx. (実際

には代入しそびれている人が結構いるはず.注意!)

(2) はじめに,(1+x2)y′ = x yを解く.すると,y′

y=

x

1 + x2より,log |y| = 1

2 log(x2+1)+C.

だから,y = C√x2 + 1 となる.

さて,元の方程式に戻って

y = C√x2 + 1→ y = C(x)

√x2 + 1

と置きなおす.すると,

y′ = C ′(x)√x2 + 1 +

xC(x)√x2 + 1

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166 京都大学 澤野嘉宏

だから,√x2 + 1 = (1 + x2)y′ − x y

= (1 + x2)

(C ′(x)

√x2 + 1 +

xC(x)√x2 + 1

)− xC(x)

√x2 + 1

これより,C ′(x) =1

x2 + 1となる.したがって,

C(x) = tan−1 x+ C

元に戻して,y =√x2 + 1 ·

(tan−1 x+ C

).

【参考】問題 (1)は機転を利かせて (sinx)y′ +(cosx)y = 1 と変形すると早い.右辺がd

dx(sinx)y

だから.

問題 4.4.

(1) y = C ex2

(2) y = C(x)ex2

を代入すると,C ′(x)ex2

= −x3 である.x2 = tと置換すると,

C(x) = −∫x3e−x2

dx = −1

2

∫t et dt =

1

2(t e−t + e−t) + C =

1

2(x2 + 1)e−x2

+ C

したがって,y = C(x)ex2

=1

2(x2 + 1) + C ex

2

が答え.

問題 4.5. y = C e−6x +1

6x− 1

36

問題 4.6.

(1) (a) y = C ex

(b) y = C ex − x+ 1(2) (a) y = C e5x

(b) y = C e5x +e5x

26(5 sinx− cosx)

問題 4.7. y = C e−6x + 1

問題 4.8. 答えのみを記す.

(1) y = 3 exp(x log x− x+ 1) = 3xx e−x+1

(2) y = 3 exp

(e2x

13(−4 cos 3x+ 7 sin 3x+ 4)

)(3) y = −1− 6x+ 2e6x

(4) y = 5 exp

(1

3x3)− 2

(5) y = exp

(1

2x(sin log x− cos log x) +

1

2

)(6) y = − 1

x− 1

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微分方程式演習 167

(7) y = −1 + 4 exp(2(x+ 2)2 − 32)

(8) y =−1

(x− 3)2 − 43

(9) y = 7 exp

(1

2x(sin log x+ cos log x)− 1

2

)(10) y ≡ 0

問題 4.9. 次のようにして解くとよい.はじめに,d

dx((x+ 2)P (x)) = 9x2 + 8x− 3 と問題を見

る.(ここがポイント)次にこれを積分して

(34.1) (x+ 2)P (x) = 3x3 + 4x2 − 3x+ C

とする.積分定数をいかにして決めるかがポイントになるが,x = −2を代入して 0 = −24+16+6 + C だから,C = 2である.あとは割り算して

P (x) =3x3 + 4x2 − 3x+ 2

x+ 2= 3x2 − 2x+ 1

が得られる.

注意 11. (34.1)より安直に考えると,C を C + 2で置き換えて

P (x) =C

x+ 2+ 3x2 − 2x+ 1

が得られるが,C = 0でないと多項式関数ではなくなってしまう.

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168 京都大学 澤野嘉宏

35. 5節

問題 5.1.

(1) z′ = −2y−3y′ = −2y−3(y − e−xy3) = −2z + 2x e−x これを移項する.(2) zを求めるためには 3通り位方法がある.

【解法1】定数変化法はじめに,

−1

2z′ + z = 0

を解くと,z = C e2x となる.したがって,元の方程式を解くべく z = C(x)e2x とおいてみる.すると,

−1

2z′ + z = −C(x)e2x − 1

2C ′(x)e2x + C(x)e2x = −1

2C ′(x)e2x = e−x

となる.C ′(x) = −2 e−3xよって,C(x) =2

3e−3x+C.これを代入して z = C(x)e2x =

2

3e−x + C e2x.

【解法2】重ね合わせの原理 z =2

3e−x が解であるとわかるので,−1

2z′ + z = 0 の一般解

z = C e2x と合わせて z =2

3e−x + C e2x が元の方程式の解である.

【解法3】積の微分を巧妙に使う (e−2xz)′ = −2 e−2xz + e−2xz′ = −2 e−3x だから,e−2xz =2

3e−3x + C. よって,z =

2

3e−x + C e2x となる.

z =2

3e−x + C e2x で y = ±

√3

e−x + C e2x

問題 5.2.

(1) z′ = 2yy′ = 2y(−y + xy−1) = −2z + x(2) zを求めるには,3通り位方法がある.

【解法1】定数変化法はじめに,1

2z′ + z = 0

を解く,すると,z = C e−2x となる.したがって,元の方程式を解くべく z =C(x)e−2x とおいてみる.すると,

1

2z′ + z = −C(x)e−2x +

1

2C ′(x)e−2x + C(x)e−2x =

1

2C ′(x)e−2x = z

となる.整理して,C ′(x) = 2x e2x. よって,積分して C(x) = x e2x − 1

2e2x + C.

これを z = C(x)e−2x に代入して z = C(x)e−2x = x− 1

2+ C e−2x.

【解法2】重ね合わせの原理 z = x − 1

2が解であるとわかるので,

1

2z′ + z = 0 の一般解

z = C e−2x と合わせて z = x− 1

2+ C e−2x が元の方程式の解である.

【解法3】積の微分法を巧みに用いる.(e2xz)′ = 2 e2xz + e−2xz′ = 2x e2x だから,積分して

e2xz = x e2x − 1

2e2x + C. よって z = x− 1/2 + C e−2x となる.

z = x− 1/2 + C e−2x で y = ±√x− 1/2 + Ce−2x

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微分方程式演習 169

問題 5.3.

(1) y ≡ 0でないと仮定して y′+2xy = 2x3y3の両辺に y−3をかけると y−3y′+2xy−2 = 2x3

となる.z = y−2とすると,z′ = −2y−3y′ = 4xz−4x3 である.この方程式の解は x2+1

2

であるから,z = x2 +1

2+ C exp(2x2) となる.したがって,

y = ±

√2

2x2 + 1 + C exp(2x2).

y ≡ 0はこの形に表せない解であるからこれは特異解である.(2) y′ = x3y3 − 2xy を y−3 で割って −2y−3y′ = −2x3 + 4xy−2 となる.y−3 = z として,

z′ = −2x3+4xzが得られる.z =1

2x2+

1

2が特別解であるから,z = C exp(2x2)+

1

2x2+

1

2が解である.以上より,

y = 3

√2

C exp(x2) + x2 + 1

が解である.最初に,y ≡ 0を除外していたが,これは特異解である.

問題 5.4.

(1) y = ex

(2) y = 2 exp

(1

2x

)(3) y = 3 exp(3x− 3)

(4) −ey + 1

2x2 = −e

(5) x y = (x− 1)ex + 1(6) log(1− y) + log(y + 1)− 2 log y + x2 = 2 log 3 + 1.

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170 京都大学 澤野嘉宏

問題 5.5.

(1) xz′ + z =z

2+

1

2z(2) z =

y

xとおく.x3z2(z + xz′) = x3 + x3z3 より

問題 5.6. 段階に分けて計算する.

(1) 方程式の書き換え(代入問題の基本となるのでしっかりと習得するように):はじめにz = −y+xを y = −z+xと書き換えて問題文の y′ = (y−x)2 に代入すると,1−z′ = z2

が得られる.

(2) 既知の方程式の解法(どの方程式に帰着させるか考える):1−z′ = z2より,dz

1− z2= dx.

したがって,dz

1− z+

dz

1 + z= 2dx となる.これを積分して log

∣∣∣∣1 + z

1− z

∣∣∣∣ = 2x+ C. 整理

して z = x− yを代入して 1 + x− y1− x+ y

= C e2x が得られる.

問題 5.7.

(1) α = 7/3, β = −2/3

(2)dv

du= (2u+ v)/(u+ 2v)

(3)v

u= wより,v = uw.したがって,

dv

du= w+u

dw

du.一方 (2)より,

2 + w

1 + 2w= w+u

dw

du.

ゆえに,−2w2 + 2

2w + 1= u

dw

du.

(4)du

u=

(2w + 1)dw

−2w2 + 2部分分数分解して,

dv

v=

(3

4· 1

1− w− 1

4· 1

w + 1

)dw.積分して,

u4 = C(1−w)−3(w+1)−1.ゆえに,(u−v)3(u+v) = C.(x−y−3)3(x+y−5/3) = Cを得る.

問題 5.8. y(t)を x(t) = y(t)tとなるように定める.このとき,

t21 + y(t)2

2= t2x′(t) = t2(y′(t)t+ y(t))

であるから,ty′(t)+y(t) =1 + y(t)2

2となる。したがって,

2y′(t)

(y(t)− 1)2=

1

tとなる.これを積分

して− 2

y(t)− 1= C+log tとなる.初期条件に迎合させてC = 2となるので,y(t) = 1− 2

2 + log t

が得られる.xに戻して x(t) = y(t)t = t− 2t

2 + log tとなる.

問題 5.9.

(1) y2+x2y′ = xyy′より,(x−1y)2+y′ = (x−1y)y′である.z = x−1yとおいて,y′ = xz′+zを代入すると,z2+xz′+ z = xzz′+ z2が得られる.これを整理して xz′+ z = xzz′であ

るから,(z− 1)z′ = −xzとなる.したがって,∫

1

z− 1 dz = x+C.(ただし,z ≡ 0で

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微分方程式演習 171

はないと仮定している.)つまり,log |z| − z = x+C を得る.log |x−1y| −x−1y = x+C

となる.変数分離形の方程式 z′ = − xz

z − 1を解くときに,z ≡ 0の可能性があるがこれ

を無視していたので,z ≡ 0が解であるかどうかを考えてみると確かにこれが解なので,z ≡ 0に相当する y ≡ 0も解である.y ≡ 0は log |x−1y| − x−1y = x+ C の C を調節して得られる解ではないので,特異解ということになる.

(2) y/x = zとおく.z′ = xy′ + y = x(z2 + 3z)であるから,dz

z− dz

z + 3= 3dx

したがって, zz+3 = C exp(3x) となる.z ≡ −3は特異解である.yの言葉に直して,

y = −3x, y

y + 3x= C exp(3x)

が答である.

問題 5.10.

(1) a = 2

(2) z′ =z2 − zx

(3) z =1

Cx+ 1, y =

x2

Cx+ 1

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172 京都大学 澤野嘉宏

問題 5.11.

(1) y = x− 2を代入すると

y2 + (4− x)y − 2x+ 5 = y(y + 4− x)− 2x+ 5 = (x− 2) · 2− 2x+ 5 = 1 = y′

(2) y′ = w′ + 1, y = w + x− 2 を代入すると

w′ + 1 = (w + x− 2)2 + (4− x)(w + x− 2)− 2x+ 5

したがって,

w′ = −1 + (w + x− 2)2 + (4− x)(w + x− 2)− 2x+ 5

= (w + x− 2)(w + 2)− 2x+ 4

= w2 − 4 + 2x+ wx− 2x+ 4

= w2 + wx

(3) z′ = −w′/w2 = −1− xz(4) 先ほどと同様 3通りある方法のうちどれかで解く.定数変化法を用いて解くことにすると z′ = −xz からスタートすることになる.したがって,z = C exp(−x2/2) が出てくるので初めの方程式を解くべく z = C(x) exp(−x2/2) とおく.

−1 = z′ + xz

= −xC(x) exp(−x2/2) + C ′(x) exp(−x2/2) + xC(x) exp(−x2/2)= C ′(x) exp(−x2/2)

したがって,C ′(x) = − exp(x2/2)

以上より,

C(x) = −∫

exp(x2/2) dx

z = −e−x2/2C(x) = −e−x2/2

∫exp(x2/2) dx

w =1

z= − ex

2/2∫exp(x2/2) dx

y = w + x− 2 = − ex2/2∫

exp(x2/2) dx+ x− 2

これが正解.

問題 5.12.

(1) 直接代入して両辺が 2x2(1− x3)に一致する確認すればよい.両辺は 2x2 − 2x5 になる.(2) x(1− x3)y′ = x2 + y − 2xy2 と x(1− x3)y′0 = x2 + y0 − 2xy0

2 より,

x(1− x3)(y − y0)′ = (y − y0)− 2x(y − y0)(y − y0 + 2y0).

ここで,z = y − y0 とおく.x(1− x3)z′ = z − 2xz(z + 2y0) となる.さらに,w = z−1

とすると,

−x(1− x3)w′ = w − 2x(1 + 2y0w) つまり  w′ = − 2x

x4 − x3− 4x3 − 1

x4 − x3w.

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微分方程式演習 173

F (x) =

∫ x

1/2

4t3 − 1

t4 − t3dtとすると,(exp(F (x))w)′ = −2x exp(F (x))

x4 − x3であるから,G(x) =

−∫ x

1/2

2y exp(F (y))

y4 − y3dy とおけば,exp(F (x))w = G(x) + C となる.順番に紐解いて y

の式に直せば確かに計算ができた.

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174 京都大学 澤野嘉宏

問題 5.13.

問題 5.14.

問題 5.15.

(1)

∫dz

G(z)=

∫F (x)

p(x)dx+ C

(2)1

2alog

∣∣∣∣ap(x) + y

ap(x)− y

∣∣∣∣ = ∫ F (x)

p(x)dx+ C

(3) − 1

2alog

∣∣∣∣ap(x) + y

ap(x)− y

∣∣∣∣ = ∫ F (x)

p(x)dx+ C

(4) y = a p(x) tan

(a

∫F (x)

p(x)dx+ C

)(5) tan

y

2p(x)= C exp

∫F (x)

p(x)dx

(6) tan

(y

2p(x)+π

4

)= C exp

∫F (x)

p(x)dx

(7) sin

y

p(x)= C exp

∫F (x)

p(x)dx

(8) tan

y

p(x)= C exp

∫F (x)

p(x)dx

(9) cot

y

p(x)= C exp

∫F (x)

p(x)dx

(10) y = p(x) sin

[∫F (x)

p(x)dx+ C

](11) y = p(x) cos

[∫F (x)

p(x)dx+ C

]

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微分方程式演習 175

36. 6節

問題 6.1.

(1) eax = 1 + ax+a2x2

2+a3x3

6+ · · ·+ anxn

n!+ · · ·

(2) cosx = 1− x2

2+x4

24− x6

720+ · · ·+ (−1)n

(2n)!x2n + · · ·

(3)

log(1− x)′ = −11− x

, log(1− x)′′ = −1(1− x)2

,

log(1− x)′′′ = −2(1− x)3

, log(1− x)′′′′ = −6(1− x)4

, · · ·

よりdn

dxnlog(1− x) = − (n− 1)!

(1− x)n

となる.したがって,log(1− x) = −x− 1

2x2 − 1

3x3 − 1

4x4 − · · · − 1

nxn − · · ·

(4) (1

1− x

)′

=1

(1− x)2,

(1

1− x

)′′

=2

(1− x)3(1

1− x

)′′′

=6

(1− x)4,

(1

1− x

)′′′′

=24

(1− x)5, · · ·

よりdn

dxnlog(1− x) = n!

(1− x)n+1

となる.したがって,1

1− x= 1 + x+ x2 + x3 + x4 + · · ·+ xn + · · ·

問題 6.2.∞∑k=0

を用いる表し方とそうでない表し方両方が出来るのが望ましい.

ea x = 1 + a x+a2 x2

2+ · · ·+ =

∞∑k=0

ak xk

k!

sinx = x− 1

6x3 +

1

120x5 · · ·+ =

(−1)k

(2k + 1)!x2k+1 + · · ·

cosx = 1− 1

2x2 +

1

24x4 − · · · =

∞∑k=0

(−1)kx2k

(2k)!

log(1− x) = −x− 1

2x2 − 1

3x3 − 1

4x4 − · · · = −

∞∑k=1

1

kxk

1

1− x= 1 + x+ · · ·+ xn + · · · =

∞∑k=0

xk

n回微分がきちんと計算できるものなので,数学的帰納法を用いて検証するか,類推をするなどして計算しておくのが好ましい.実際に計算すると次のようになる.

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176 京都大学 澤野嘉宏

(1)dn

dxneax = an eax

(2)dn

dxnsinx = sin

(x+

π

2

)(3)

dn

dxncosx = cos

(x+

π

2

)(4)

dn

dxnlog(1− x) = −(n− 1)!

(1− x)n

(5)dn

dxn1

1− x=

n!

(1− x)n+1

具体的な論証は必要であるが,大学生ならこの程度は類推で十分であろう.

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微分方程式演習 177

問題 6.3.

(1) 省略(2) f (n)(x)は 3nf(x)になることは帰納的に分かる.

(3) 整理した式は次のようになる.f(x) = f(0) + 3f(0)x+9f(0)

2x2 + · · ·+ 3nf(0)

n!xn + · · ·

(4) (3)より f(x) = f(0)

(1 + 3x+

9

2x2 + · · ·+ 3n

n!xn + · · ·

)= f(0)e3x.

問題 6.4. 微分方程式 f ′(x) = f(x) の解は

f(x) = f(0)

(1 + x+

1

2x2 + · · ·+ 1

n!xn + · · ·

)= 4ex

したがって limn→−∞

f(x) = 0, limn→∞

f(x) =∞.

問題 6.5. 微分方程式 f ′(x) = −8f(x) の解はの解は先ほどと同じように考えて

f(x) = f(0)

(1− 8x+

64

2x2 + · · ·+ (−8)n

n!xn + · · ·

)= 9e−8x

したがって limn→−∞

f(x) =∞, limn→∞

f(x) = 0 である.

問題 6.6. 微分方程式 f ′(x) = −f(x) + 4 を n回微分して n ≥ 1ならば f (n+1)(x) = −f (n)(x).よって n 1ならば f (n+1)(0) = −f (n)(0) さらに f ′(0) = −f(0) + 4 = 3である.ゆえに f(0) = 1であって,n 1ならば f (n)(0) = 3(−1)n である.

f(x) = 4− 3 + 3x− 3

2x2 + · · ·+ 3(−1)n−1

n!xn + · · · = 4− 3e−x

よってlim

n→−∞f(x) = −∞, lim

n→∞f(x) = 4

となる.

問題 6.7. 与えられた式を 2n 回微分すると f2n(x) = 9f (2n−2)(x). よって x = 0 を代入してfn(0) = 3n を得る.問題 6.5とおなじようにやって

f(x) = e3x, limn→−∞

f(x) = 0, limn→∞

f(x) =∞,

である.

問題 6.8. x(t) =∞∑j=0

aj tj とおくと,(j + 2)(j + 1)aj+2 = (j − a)aj したがって,a1 = 0より

a2j+1 = 0がわかる.一方

a2j =2j − 2− a2j(2j − 1)

a2j−2 =(2j − 2− a)(2j − 4− a)2j(2j − 1)(2j − 2)(2j − 3)

a2j−4 = · · · = a0(2j)!

j∏k=1

(2k − 2− a)

だから,a0 = 1 を代入して a2j =1

(2j)!

j∏k=1

(2k − 2 − a) が得られる.したがって,級数解は

x(t) = 1 +

∞∑j=1

t2j

(2j)!

j∏k=1

(2k − 2− a) と求まる.

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178 京都大学 澤野嘉宏

問題 6.9.

(1) y(j)(0) = 1を代入する.

(2) (1)を用いて計算していく.y(s+ t) =∞∑j=0

y(s)tj

j!= y(s)y(t)

(3) 2.71

問題 6.10. 63t5 − 70t3 + 15t

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微分方程式演習 179

37. 7節

問題 7.1. y = C1 e3x + C2 e

4x

問題 7.2.

(1) (a) A = −2t0, B = t02 のケースである.したがって,微分方程式

y′′ − 2t0 y′ + t0

2y = 0

を考えていることになる.z = e−t0 xyとおく.y = et0 xzを代入して

y′′ − 2t0 y′ + t0

2y = et0z′′ + 2t0 et0z′ + t0

2z − 2t0et0z′ − 2t0

2et0z + t02z = et0z′′

であるから,z′′ = 0つまり,zは xの二次式である.したがって,

y = et0 xz = et0 x(C1 + C2 x)

である.(b) 指示されたようにおきなおすと

z′ = t1 z

w′ = t0 w

である.これは講義でやったように

z = C1 et1 x, w = C0 e

t0 x

と表される.したがって,

y′ − t0 y = C1 et1 x, y′ − t1 y = C0 e

t0 x

である.これより,

y =C1

t1 − t0et1 − C0

t1 − t0et0 x

が結論付けられる.(2) (a) 同じようにして考えると,3項間漸化式

an+2 − 2t0 an+1 + t02 an = 0

を考えていることになる.t0 = 0と仮定する.bn = t0−nanとおいてみる.すると,

an+2 − 2t0 an+1 + t02 an = t0

n+2(bn+2 − 2bn+1 + bn) = 0

が得られる.したがって,

bn+2 − 2bn+1 + bn = 0

である.これはbn+2 − bn+1 = bn+1 − bn

と変形すればわかるように,

bn+1 − bn = b2 − b1 = t0−2a2 − t0−1a1

となる.したがって,等差数列の公式より

bn = (t0−2a2 − t0−1a1)(n− 1) + b1

が得られる.bn を消去して

an = (t0n−2a2 − t0n−1a1)(n− 1) + t0

n−1a1

が得られる.t0 = 0のときは,n ≥ 3とすれば,

an = (t0n−2a2 − t0n−1a1)(n− 1) + t0

n−1a1

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180 京都大学 澤野嘉宏

は依然として正しい.実際に両辺は 0だから.したがって,

an = (t0n−2β − t0n−1α)(n− 1) + t0

n−1α(t0 = 0もしくは n ≥ 3のとき)

an = α(n = 1のとき)

an = β(n = 2のとき)

(b) 二通りのおき方を考える.

an+1 − t0 an = bn, an+1 − t1 an = cn

すると,bn+1 = t1 bn, cn+1 = t0 cn

である.したがって,

bn = t1n−1b1 = t1

n−1(a2 − t0 a1)cn = t0n−1c1 = t0

n−1(a2 − t1 a1)が得られる.そして

an+1 − t0 an = t1n−1(a2 − t0 a1)

an+1 − t1 an = t0n−1(a2 − t1 a1)

以上より,

an =t1

n−1(a2 − t0 a1)t1 − t0

− t0n−1(a2 − t1 a1)

t1 − t0が得られる.

(c) (1)のケースで,t0 = −2, a1 = 1, a2 = 2のケースで,

an = ((−2)n−22− (−2)n−1)(n− 1) + (−2)n−1

= −2(−2)n−1(n− 1) + (−2)n−1

= (−2)n(n− 1) + (−2)n−1

= n (−2)n + 3(−2)n−1

(d) (2)のケースで,t0 =−1−

√3i

2, t1 =

−1 +√3i

2, a1 = a2 = 1のケースで,

an =1√3i

(−1 +

√3i

2

)n−13−√3i

2− 1√

3i

(−1−

√3i

2

)n−13 +√3i

2

注意 12.

(1) (c)は次のようにして解いても構わない.

an = A (−2)n +B (−2)n nの形から定数 A,B を決めてしまう.

(2) (d)は次のようにして解いても構わない.

an = A

(−1 +

√3i

2

)n

+

(−1−

√3i

2

)n

の形から定数 A,B を決めてしまう.

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微分方程式演習 181

問題 7.3.

(1) y = C e14x

(2) y = C1 e(12−3

√11)x + C2 e

(12+3√11)x

(3) y = C1 e2x + C2 x e

2x

(4) y = C1 e− 11−

√101

2 x + C2 e− 11+

√101

2 x

(5) y = e12x

(C1 cos

√3

2x+ C2 sin

√3

2x

)

問題 7.4.

(1) 初期条件なしの場合

(1) y = C1 e(45−

√7)x + C2 e

(45+√7)x

(2) y = C1 x e45x + C2 e

45x

(3) y = e45x(C1 sin√7x+ C2 cos

√7x).

(2) (2)において初期条件ありの場合 y = x e45x + e45x 実際に,上の C1, C2 に対して

y′(x) = C1 e45x + 45C1 x e

45x + 45C2 e45x

が成り立つので,C1 = 1, C1 + 45C2 = 46

が成立するからである.

問題 7.5.

(1) y = (C1 cos 4x+ C2 sin 4x)e18x

(2) y = (C1 cos 14x+ C2 sin 14x)e−11x

(3) y = (C1 cos 11x+ C2 sin 11x)e45x

(4) y = (C1 cos 2x+ C2 sin 2x)e−14x

(5) y = (C1 cos 2√6x+ C2 sin 2

√6x)e24x

(6) y = (C1 cos 4x+ C2 sin 4x)e−22x

(7) y = (C1 cos 32x+ C2 sin 32x)e53x

(8) y = (C1 cos 6x+ C2 sin 6x)e−28x

(9) y = (C1 cos 2x+ C2 sin 2x)e√6x

(10) y = (C1 cos 14x+ C2 sin 14x)e−38x

問題 7.6.

(1) y = C1 e17x + C2 e

20x

(2) y = C1 + C2 e−148x

(3) y = C1 e58x + C2 e

59x

(4) y = C1 e27x + C2 e

72x

(5) y = C1 e−10x + C2 e

29x

(6) y = C1 e(−18+4

√185)x + C2 e

−(18+4√185)x

(7) y = C1 e80x + C2 e

92x

(8) y = C1 e17x + C2 e

33x

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182 京都大学 澤野嘉宏

(9) y = C1 e4√5x + C2 e

−√5x

(10) y = C1 e52x + C2 e

55x

問題 7.7.

(1) y = (C1 + C2 x)e18x

(2) y = (C1 + C2 x)e−26x

(3) y = (C1 + C2 x)e−35x

(4) y = (C1 + C2 x)e99x

(5) y = (C1 + C2 x)e−110x

(6) y = (C1 + C2 x)e2√7x

(7) y = (C1 + C2 x)e−4

√3x

(8) y = (C1 + C2 x)e81x

(9) y = (C1 + C2 x)e−29x

(10) y = (C1 + C2 x)e1001x

問題 7.8.

(1) y = C1 e15x + C2 e

24x

(2) y = C1 e−27x + C2 e

−32x

(3) y = C1 e−81x + C2 x e

−81x

(4) y = C1 e−6

√5x + C2 e

7√5x

(5) y = C1 e6x + C2 x e

6x

(6) y = C1 e−47x cos 5x+ C2 e

−47x sin 5x(7) y = C1 e

−22x + C2 e25x

(8) y = C1 e22x cos 2x+ C2 e

22x sin 2x(9) y = C1 e

−19x + C2 x e−19x

(10) y = C1 e(5+3

√5)x + C2 e

(5−3√5)x

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微分方程式演習 183

問題 7.9. y(x) =

∫ x

0

t y(t) dt− 1 で右辺は微分可能だから,yも微分可能であることに注意する.

x = 0を代入して,

0 =

∫ 0

0

t y(t) dt = y(0) + 1

である.はじめの式の両辺を微分すると,x y(x) = y′(x) である.変数分離形のこの方程式を解

くと,y(x) = C exp

(1

2x2)初期条件 y(0) = −1を代入して y(x) = − exp

(1

2x2)

問題 7.10. h(t) = −5et − e−t

問題 7.11. h(t) = 6 cos t+ 4 sin t

問題 7.12. f(0) = 0である.f(x) = 1− ex.

問題 7.13.

(1) x = 0を代入して,y(0) = −4となる.

(2) 与えられた方程式を微分して xy(0) +

∫ x

0

ty′(x − t) dt = y′(x) となる.x = 0を代入し

て,y′(0) = 0である.(3) y′′(x) = y(x)であるから,y(x) = −2ex − 2−x となる.

問題 7.14. 初めに x = 0を代入して y(0) = 4 がわかる.次に,∫ x

0

(x − s) y(s) ds = −y(x) + 4

を微分して関係式∫ x

0

y(s) ds = −y′(x) を得るから,y′(0) = 0である.さらに,この式を微分す

れば y′′(x) = −y(x) となるから y(x) = C1 cosx+ C2 sinx となる y(0) = 4, y′(0) = 0となるように C1 = 4, C2 = 0 とすれば,y(x) = 4 cosx もわかる.

【答え】 y(0) = 4, y′(0) = 0, y(x) = 4 cosx.

問題 7.15.

(1) y(0) = 4(2) y′(0) = 0(3) y(x) = 4e−x + 4x e−x

問題 7.16.

(1) y(0) = 4(2) y′(0) = −8(3) y(x) = 4e−x − 4x e−x

問題 7.17.

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184 京都大学 澤野嘉宏

(1) x = 0を代入して f(0) = 4である.また,変数変換をして方程式を∫ x

0

(x− t)f(t) dt = −∫ x

0

f(t) dt− f(x) + 4

と改める.これを微分して(積の微分法より)∫ x

0

f(t) dt = −f(x)− f ′(x)

である.これより f ′(0) = −f(0) = −4が得られる.もう一度微分すれば,f ′′(x) + f ′(x) + f(x) = 0

が得られるので,

f(x) = C1 exp(−x2

)cos

(√3x

2

)+ C2 exp

(−x2

)sin

(√3x

2

)初期条件を代入して

C1 = 4, −1

2C1 +

√3

2C2 = −4

が得られる.したがって,C2 = − 4√3である.代入して

f(x) = 4 exp(−x2

)cos

(√3x

2

)− 4√

3exp

(−x2

)sin

(√3x

2

)が得られる.

(2) x = 0を代入して f(0) = 4である.また,変数変換をして方程式を∫ x

0

(x− t)f(t) dt = −2∫ x

0

f(t) dt− f(x) + 4

と改める.これを微分して(積の微分法より)∫ x

0

f(t) dt = −2f(x)− f ′(x)

である.これより f ′(0) = −2f(0) = −8が得られる.もう一度微分すれば,f ′′(x) + 2f ′(x) + f(x) = 0

が得られるので,f(x) = C1 exp(−x) + C2 x exp(−x)

初期条件を代入してC1 = 4, −C1 + C2 = −8

が得られる.したがって,C2 = −12 である.代入してf(x) = 4 exp(−x)− 12x exp(−x)

が得られる.(3) x = 0を代入して f(0) = −4である.また,変数変換をして方程式を∫ x

0

(x− t)f(t) dt = f(x) + 4

と改める.これを微分して(積の微分法より)∫ x

0

f(t) dt = f ′(x)

である.これより f ′(0) = 0が得られる.もう一度微分すれば,

f ′′(x)− f(x) = 0

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微分方程式演習 185

が得られるので,f(x) = C1 e

x + C2 e−x

初期条件を代入してC1 + C2 = −4, C1 − C2 = 0

が得られる.したがって,C1 = C2 = −2 である.代入してf(x) = −2ex − 2e−x

が得られる.

問題 7.18.

(1) y(0) = 4(2) y′(0) = 8(3) y(x) = 4ex + 4x ex

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186 京都大学 澤野嘉宏

38. 8節

問題 8.1.

(1) e32πi = −i

(2)

∫e(1+i)x dx =

1

1 + ie(1+i)x + C

(3)

∫ex sinx dx =

1

2ex(sinx− cosx) + C

問題 8.2.

(1) − 1√2+

i√2

(2)1 + 2i

5e(1−2i)x + C

(3)1 + 2i

5e(1−2i)x =

ex

5(cos 2x+ 2 sin 2x) + i

ex

5(2 cos 2x− sin 2x) より,∫

ex cos 2x dx− i∫ex sin 2x dx =

ex

5(cos 2x+ 2 sin 2x) + i

ex

5(2 cos 2x− sin 2x) + C

虚部を比較して,∫ex sin 2x dx =

ex

5(sin 2x− 2 cos 2x) + C が得られる.

問題 8.3.

(1)1√2(−1− i)

(2)1

1− 4ie(1−4i)x + C

(3)1

17ex(sin 4x− 4 cos 4x) + C

問題 8.4.

(1) y =1

85e6x(6 cos 7x+ 7 sin 7x) + C

(2) y =1

13e2x(2 cos 3x+ 3 sin 3x) + C

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微分方程式演習 187

39. 9節

問題 9.1.

(1) t = −1, 2

(2) t =1±√5

2

(3) t =−1±

√3i

2

(4) t =−4±

√42 − 4 · 52

= −2± i

(5) t = 1,−1±

√3i

2(6) t = 1(3重)(7) (t− 1)4 = 0と因数分解できるので,t = 1(4重)(8) 因数分解してみる.t3を一つのかたまりと見て (t3 − 27)(t3 + 27) = 0 とする.今度は 3次式の因数分解をする.(t− 3)(t+ 3)(t2 + 3t+ 9)(t2 − 3t+ 9) = 0 と因数分解できるの

で,複号任意で t = ±3, ±3± 3√3i

2が解である.次の問題 (9)も参照のこと.

(9) t = 1, cos 72 + i sin 72, cos 144 + i sin 144, cos 216 + i sin 216,cos 288 + i sin 288 となる.

注意 13. 一般に,tn = 1 の複素数解は

t = cos

(2k

)+ i sin

(2k

)= cos

(360k

n

)

+ i sin

(360k

n

)

, k = 0, 1, . . . , n− 1

である.

(10) (t2 − 4)(t2 + 4) = (t− 2)(t+ 2)(t+ 2i)(t− 2i) = 0より t = ±2,±2i(11) t = 1, 2, 3(12) t = 1(2重),−1(13) t = ±2,±1±

√3

(14) 今度は T = t4 として,T 3 − 3T 2 + 3T − 1 = 0 を得るから,(T − 1)3 = 0 つまり,T = 1 3重. ここで,方程式 t4 = 1を解くと,t4 − 1 = (t2)2 − 1 = (t2 − 1)(t2 + 1) =(t− 1)(t+ 1)(t2 + 1) を得るので,これより t = ±1,±i(すべて3重)が得られる.

(15) はじめに,t3 = T とおいてみると問題の方程式は T 4 − 4T 3 + 6T 2 − 4T + 1 = 0 と表せる.(x+ y)4 = x4 + 4x3 y + 6x2 y2 + 4x y3 + y4 だから,T 4 − 4T 3 + 6T 2 − 4T + 1 = 0を因数分解すると,(T − 1)4 = 0 と因数分解される.これより,T = 1 4重 が得られる.t3 = 1 4重 を解いてみると t3 − 1 = (t − 1)(t2 + t + 1) = 0 より答えは,t = 1

(4重),t =−1 +

√3i

2(4重),t =

−1−√3i

2(4重)

問題 9.2.

(1) t = 4,−2±√3i

(2) t = ±3,±3i(3) t = ±1,±i(それぞれ2重)

問題 9.3. 原則的には“ P (X)を (X − α)で割ったときの余りは P (α)である.”という剰余の定理を用いる.

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188 京都大学 澤野嘉宏

(1) 14(2) (−3)n

(3)2n − (−6)n

8x+

6 · 2n + 2 · (−6)n

8(4) n · 5n−1x− (n− 1)5n

(5) n · 3n−1x− (n− 1)3n

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微分方程式演習 189

問題 9.4.

(1) (a) 実数の範囲で既約でない.(b) 有理数の範囲で既約である.

(2) (a) 実数の範囲で既約である.(b) 有理数の範囲で既約である.

(3) (a) 実数の範囲で既約でない.(b) 有理数の範囲で既約である.

(4) (a) 実数の範囲で既約でない.(b) 有理数の範囲で既約である.

(5) (a) 実数の範囲で既約である.(b) 有理数の範囲で既約である.

問題 9.5.

(1) (x− 1)(x− 2)

(2) (x− 1)

(x+

1 +√3i

2

)(x+

1−√3i

2

)(3) (x− 1)(x+ 1)(x+ i)(x− i)

問題 9.6.

(1) a = −1

2, b =

1

2, c =

1

2(2) 答えは一通りではないが,一例を挙げると次のものが得られる.

P (x) = −1

9(x2 + 2x+ 4), Q(x) =

1

9

実際には次のようにしてやる.はじめに

x3 + 1割る (x− 2) = x2 + 2x+ 4あまり 9

であることに注意すると,

x3 + 1 = (x− 2)(x2 + 2x+ 4) + 9

が得られる.これを整理すると

−x2 + 2x+ 4

9(x− 2) +

1

9(x3 + 1) = 1

が得られるから P (x), Q(x)が何かがわかる.(3) 最大公約式とは両方を割り切る最大次数の多項式のことである.したがって,

x3 − 1 = (x2 + x+ 1)(x− 1)

x4 + x2 + 1 = x4 + 2x2 + 1− x2 = (x2 + x+ 1)(x2 − x+ 1)

より x2 + x+ 1 が得られる.

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190 京都大学 澤野嘉宏

40. 10節

問題 10.1. C,C1, C2, C3 は任意定数を表すとする.

(1) y = C e3x

(2) y = C1 e2x + C2 e

3x

(3) y = C1 e2x + C2x e

2x

(4) y = C1 e2x cosx+ C2 e

2x sinx

(5) y = C1 ex sin

√2x+ C2 e

x cos√2x

(6) y = C1 ex + C2x e

x + C3e−2x

【注意】

(1) C1, C2, C3 の順序は順不同.(2) (5)は 2で割ってもかまわない.方程式だから.

問題 10.2. (1) y = C1 ex + C2 e

3x

(2) y = C1 e2x + C2x e

2x

(3) y = C1 e2x cosx+ C2 e

2x sinx(4) y = C1 cos 2x+ C2 sin 2x(5) y = C1 + C2 e

−x

(6) y = C1 ex + C2 e

− 12x cos

(√3

2x

)+ C3e

− 12x sin

(√3

2x

)(7) y = C1 e

x + C2 e−x + C3 sinx+ C4 cosx

(8) y = C1 cos

(√2

2x

)+ C2 sin

(√2

2x

)(9) y = C1 e

x + C2 e2x + C3e

3x

(10) y = (C1 + C2x+ C3x2)ex

問題 10.3.

(1) y = C e11x

(2) y = C1 ex + C2 e

6x

(3) y = (C1 + C2 x)e8x

(4) y = e2x(C1 cosx+ C2 sinx)

(5) y = ex(C1 cos(√2x) + C2 sin(

√2x))

(6) y = C1 + C2 e50x

(7) y = C1 e9x + C2 e

−9x

(8) y = C1 + C2 x+ C3 e−2x + C4 e

(−1−√2)x + C5 e

(−1+√2)x

(9) y = C1 ex + C2 e

23x

問題 10.4.

(1) 固有方程式 t− 13 = 0を解くと t = 13なので y = C1e13x

(2) 固有方程式 t2 − 5t+ 4 = 0を解くと t = 1, 4なので y = C1ex + C2e

4x

(3) 固有方程式 t2−6t+9 = 0⇔ (t−3)2 = 0を解くと t = 3(2重解)なので y = C1e3x+C2xe

3x

(4) 固有方程式 t2 − 8t+ 7 = 0を解くと t = 1, 7なので y = C1ex + C2e7x

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微分方程式演習 191

(5) 固有方程式 3t2− 6t+9 = 0を解くと t = 1pm212 iなので y = ex(C1 sin 2

12x+C2 cos 2

12x

(6) 固有方程式 t2 − 174t = 0を解くと t = 0, 174なので y = C1 + C2e174x

(7) 固有方程式 t2 − 169 = 0を解くと t = pm13なので y = C1e13x + C2e

−13x

(8) y = C1 + C2 x+ C3 exp((−1 +√2)x) + C4 exp((−1−

√2)x)

(9) y = C1 ex + C2 e

2x + C3 x e2x

問題 10.5.

(1) y = C1 ex + C2 e

−x

(2) y = C1 e−2x cos

√6x+ C2 e

−2x sin√6x

(3) y = C1 e16x + C2 x e

16x

(4) y = C1 e−2x + C2 e

−3x

(5) 方程式を実際に解いてみよう.

t3 − 5t+ 2 = 0

はじめに t = 2が解であることがわかる.したがって,

t3 − 5t+ 2 = (t− 2)(a t2 + b t+ c)

と表せることがわかる.(a) t3 の係数を比較して a = 1(b) 定数項を比較して c = −1(c) 今までの値を代入した上で t2 の係数を比較して b − 2 = 0.したがって,b = 2である.

つまり,t3 − 5t+ 2 = (t− 2)(t2 + 2t− 1)

このように計算すればきっと早くできるはず.特性方程式の解が t = 2,−1±√2なので,

y = C1 e2x + C2 e

−(1+√2)x + C3 e

−(1−√2)x

(6) y = C1 + C2 e2x + C3 e

−2x

(7) 特性方程式を解いてみよう.

t6 + 3t4 + 3t2 + 1 = (t2 + 1)3

だから,t = i,−iがそれぞれ3重解として現れる.したがって,y = (C1 + C2 x+ C3 x

2) sinx+ (C4 + C5 x+ C6 x2) cosx

が答えである.(8) y = (C1 + C2 x) sin

√2x+ (C3 + C4 x) cos

√2x

(9) y = C1 ex + C2 sinx+ C3 cosx

問題 10.6.

(1) y = C0 e−x + C1 e

x + C2 x ex

(2) y = e−52x

(C0 sin

√7

2x+ C1 cos

√7

2x

)

問題 10.7.

(1) y = C1 e4x + C2 e

6x

(2) y = C1 e5x + C2 x e

5x

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192 京都大学 澤野嘉宏

(3) y = e5x(C1 cosx+ C2 sinx)(4) y = C1 e

x + C2 e−x + C3 x e

x

問題 10.8. (1) y = C1 ex + C2 e

3x

(2) y = C1 e2x + C2 x e

2x

(3) y = C1 e2x cosx+ C2 e

2x sinx(4) y = C1 e

x + C2 x ex + C3 e

−x + C4 x e−x

問題 10.9. (1) y = C1 e6x + C2 e

8x

(2) y = C1 e7x + C2 x e

7x

(3) y = C1 e7x cosx+ C2 e

7x sinx

(4) y = C1 e−5x cos

√3x+ C2 e

−5x sin√3x

(5) y = C1 e−5x + C2 x e

−5x

(6) y = C1 e−(5−

√6)x + C2 e

−(5+√6)x

(7)

y = ex(C0 + C1 x+ C2 x2) + e−x(C3 + C4 x+ C5 x

2)

+ cosx(C6 + C7 x+ C8 x2) + sinx(C9 + C10 x+ C11 x

2)

問題 10.10. 問題は微分方程式

(d

dx

6)( d

dx− 4

)5(d

dx− 5

)2

(d

dx

2

− 6d

dx+ 7

)3(d

dx

2

− 4d

dx+ 5

)2(d

dx

2

+ 1

)2(d

dx− 1

)(d

dx

4

− 2

)y = 0

の解は何かを問うている.また,方程式のどの部分からそのような解が発生するかを追求しなくてはいけない.はじめに,互いに素な多項式の積が与える微分方程式はそれぞれの因子が与える微分方程式の解の和に分解できることに注意する.すると,微分方程式(群)

(d

dx

6)y1 = 0(

d

dx− 4

)5

y2 = 0

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微分方程式演習 193

(この方程式はヒントに出てくる) (d

dx− 5

)2

y3 = 0(d

dx

2

− 6d

dx+ 7

)3

y4 = 0(d

dx

2

− 4d

dx+ 5

)2

y5 = 0(d

dx

2

+ 1

)2

y6 = 0(d

dx− 1

)y7 = 0(

d

dx

4

− 2

)y8 = 0

の解をそれぞれ列挙していくことになる.問題文にあるのは例として2個目の方程式の解を記述しているとわかる.最後に注意すべきは

y1 = C1 + C2 x+ C3 x2 + C4 x

3 + C5 x4 + C6 x

5

y3 = C1 e5x + C2 x e

5x + C3 x2 e5x

などとしないことである.任意定数を別個に扱う必要があるからである.以上を踏まえて,

y =(C1,1 + C2,1x+ C3,1x2 + C4,1x

3 + C5,1x4 + C6,1x

5) ← λ6

+ (C1,2 + C2,2x+ C3,2x2 + C4,2x

3 + C5,2x4)e4x ← (λ− 4)5

+ (C1,3 + C2,3x)e5x ← (λ− 5)2

+ (C1,4 + C2,4x+ C3,4x2) exp((3−

√2)x)

+ (C1,5 + C2,5x+ C3,5x2) exp((3 +

√2)x) ← (λ2 − 6λ+ 7)3

+ (C1,6 + C2,6x)e2x sinx

+ (C1,7 + C2,7x)e2x cosx ← (λ2 − 4λ+ 5)2

+ (C1,8 + C2,8x) sinx

+ (C1,9 + C2,9x) cosx ← (λ2 + 1)2

+ C10ex ← (λ− 1)

+ C1,11 exp(4√2x) + C2,11 exp(−4

√2x)

+ C1,12 sin(4√2x) + C2,12 cos(

4√2x) ← (λ4 − 2)

C2,2 の代わりに C22 , C

(2)2 などを使ってもよい.

問題 10.11. (1) y = exp

(x2

2

)(2) y =

2

3ex +

1

3e4x

(3) 通分の個所をまちがえている答案が散見されるので,詳しく説明する.

y′

y=

1

x3

積分して

−1

y= − 1

2x2− C

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194 京都大学 澤野嘉宏

(次がポイント)通分してから

y =2x2

1 + 2C x2=

2x2

1 + C x2

(4) y = C1 e2x + C2 e

−2x + C3 x e2x + C4 x e

2x

(5) y = e−x(C1 cos 2x+ C2 sin 2x)(6) はじめに,y = a x+ bの形の解を探す.このときに,なぜこのような解を探すかというと方程式の右辺が一次式だからである.

y′′ + 4y′ + 4y = 4a x+ (4a+ 4b) = x+ 1

より a =1

4, b = 0である.y′′ + 4y′ + 4y = 0の一般解と重ね合わせて

y =1

4x+ C1 e

−2x + C2 x e−2x

(7) y = C0 + C1 x+ C2 e−5x

問題 10.12.

(1) はじめに,X ⊃ R(x)V (x) |R(x) ∈ R[x]

を証明する.V (x) = R0(x)P (x) + S0(x)Q(x)とおく.すると,

R(x)V (x) = R(x)R0(x)P (x) + S0(x)R(x)Q(x)

であるから,X ⊃ R(x)V (x) |R(x) ∈ R[x]

が証明できる.逆に,多項式

R(x)P (x) + S(x)Q(x)

を V (x)で割ると次数の関係から V (x)で割り切れる.このことより,

X ⊂ R(x)V (x) |R(x) ∈ R[x]

が証明できる.(2) 前問題で V (x) = 1の場合だから.(3) yを解としたとき,

y = R(D)P (D)y + S(D)Q(D)y

とした分解が可能で

y1 = S(D)Q(D)y, y2 = R(D)P (D)y

となる分解が可能である.この分解しかありえないことは

y1 = R(D)P (D)y1 + S(D)Q(D)y1

= S(D)Q(D)y1

= S(D)Q(D)y2 + S(D)Q(D)y1

= S(D)Q(D)y

だから y1 が自動的に確定して,y2 = y − y1 も確定する.(4) y = eαx(C0 + C1 x+ · · ·+ Cn−1 x

n−1)

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微分方程式演習 195

41. 11節

問題 11.1.

(1) y = x− 1(2) y = C ex + x− 1

問題 11.2.

(1) y = 1 + C e−6x

(2)

y = C0 ex + C1 e

−x

+ e12x

(C2 cos

√3

2x+ C3 sin

√3

2x

)+ e−

12x

(C4 cos

√3

2x+ C5 sin

√3

2x

)

問題 11.3. 任意定数には C1, C2, · · · , C6 を用いよ.

(1) t = 5,−5± 5

√3

2(2) y = e5x (C0 + C1 x+ C2 sinx+ C3 x sinx+ C4 cosx+ C5 x cosx)(3) y = 125x+ e5x (C0 + C1 x+ C2 sinx+ C3 x sinx+ C4 cosx+ C5 x cosx)

問題 11.4.

(1) y = −3x e2x + C1 e2x + C2 e

4x

(2) y = 6x+ 16 + C1 e3x + C2 x e

3x

(3) y = −4x+ C1 ex + C2 e

−x が一般解で,y = −4x+ 3ex − 2e−x が特別解.

(4) y =C

x+x cosx− sinx+ C

xが一般解で,y =

x cosx− sinx+ C

xが特別解.

(5) y = C e−x + x2 + 2x+ 2 が一般解で,y = x2 + 2x+ 2 が特別解.

問題 11.5.

(1) y′′ = A(4x+ 4)e2x, −6y′ = A(−12x− 6)e2x, 8y = A8x e2x であるから,

y′′ − 6y′ + 8y = −2Ae2x = 36e2x

したがって,A = −18である.これより,y = −18e2x が特別解である.よって,y = −18e2x + C1 e

2x + C2 e4x

が得られる.(2) y = 60x+ 52 + C1 e

3x + C2 x e3x

(3) y = −24x+ C1 ex + C2 e

−x が一般解で,特別解は

C1 + C2 = 2, C1 − C2 = 26

をといて,C1 = 14, C2 = −12である.したがって,y = −24x+ 14ex − 12 e−x

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196 京都大学 澤野嘉宏

である.

問題 11.6. A,B,C は定数を, C1, C2 は任意定数を表す.

(1) (a) 特解の決定: y = Axe2xのとき,y′′ − 4y′ +4y = 0だから,y′′ − 6y′ +8y = 3 e2x

に代入して −2y′ + 4y = 3 e2x となる.y = Axe2x を微分すればわかるように

y′ = 2y + Ae2x だから −2y′ + 4y = −2Ae2x となる.よって,A = −3

2とすれば,

y′′ − 6y′ + 8y = 3 e2x を満たす.(b) 斉次方程式の解: y′′ − 6y′ + 8y = 0を解くと y = C1 e

2x + C2 e4x が得られる.

(c) 元の方程式の解: 特解 y = −3

2x e2x と斉次方程式 y = C1 e

2x +C2 e4x を足し合わ

せて y = −3

2x ex + C1 e

2x + C2 e4x

(d) 答え: A = −3

2, y = −3

2x ex + C1 e

2x + C2 e4x

(2) (a) 特解の決定: y = A sinx + B cosxとする.y′′ + y = 0であるから,これを用いて y′′ − 3y′ + 2y = sinxから 2回微分を消去すると −3y′ + y = sinxとなる.したがって,

−3(A cosx−B sinx) +A sinx+B cosx = (A+ 3B) sinx+ (−3A+B) cosx

= sinx

が得られる.これより,

A+ 3B = 1, −3A+B = 0

だから,A =1

10, B =

3

10がしたがう.よって特解は y =

1

10(sinx+3 cosx)となる.

(b) 斉次方程式の解: y′′ − 3y′ + 2y = 0の解は y = C1 ex + C2 e

2x である.

(c) 元の方程式の解: 特解 y =1

10(sinx+3 cosx) と斉次方程式の解 y = C1 e

x+C2 e2x

を足し合わせて,y =1

10sinx+

3

10cosx+ C1 e

x + C2 e2x が元の方程式の答え.

(d) 答え: A =1

10, B =

3

10, y =

1

10sinx+

3

10cosx+ C1 e

x + C2 e2x

(3) (a) 特解の決定: y = Axexとする.このとき y′′−2y′+y = 0であるから,y′′−3y′+2y =ex から二回微分を消去すると −y′ + y = ex である.y′ = y + Aex であるから,代入することで A = −1であるとわかる.∴y = −x ex が特解である.

(b) 斉次方程式の解: y′′ − 3y′ + 2y = 0の解は y = C1 ex + C2 e

2x である.(c) 元の方程式の解: 特解 y = −x ex と斉次方程式の解 y = C1 e

x + C2 e2x を足し合

わせて,y = −x ex + C1 ex + C2 e

2x が元の方程式の答え.(d) 答え:A = −1, y = −x ex + C1 e

x + C2 e2x

(4) 場合1:いったん a = 0を仮定する.(a) 特解の決定: y = Ax2 ea x +B xea x とする.

y = Ax2 ea x +B xea x

y′ = aAx2 ea x + (2A+ aB)x ea x +B ea x

y′′ = a2Ax2 ea x + a(4A+ aB)x ea x + (2A+ 2aB) ea x

よって,y′′ − a2 y = 4aAx ea x + (2A+ 2aB) ea x

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微分方程式演習 197

a = 0だから,A =1

4a, B = − 1

4a2となる.さらに,特解は y =

x2 ea x

4a− x ea x

4a2で

ある.(b) 斉次方程式の解: a = 0だから,y = C1 e

a x + C2 e−a x が答えである.

(c) 元の方程式の解: 特解 y =x2 ea x

4a− x e

a x

4a2と斉次方程式の解 y = C1 e

a x+C2 e−a x

を足し合わせて y =x2 ea x

4a− x ea x

4a2+ C1 e

a x + C2 e−a x が答えである.

(d) 答え: A =1

4a, B = − 1

4a2, y =

x2 ea x

4a− x ea x

4a2+ C1 e

a x + C2 e−a x

場合2: a = 0のときは,方程式 y′′ = x を直接解いて y =1

6x3 + C1 x+ C2.

(5) この問題はひと工夫すれば直接解ける.(a) (ex y)′′ = 1より

y =1

2x2 ex + C1 x e

−x + C2 e−x

(b) 答え: A =1

2, y =

1

2x2 ex + C1 x e

−x + C2 e−x

(6) (a) 特解の決定: y = Ax2 +B x+ C とする.y′′ + 2y′ + yを計算する

y = C +B x+Ax2

2y′ = 2B + 4Ax

+) y′′ = 2A

y′′ + 2y′ + y = (2A+ 2B + C) + (4A+B)x+Ax2

よって A = 1, B = −4, C = 6となる.これより特解は y = x2 − 4x+ 6である.(b) 斉次方程式の解: y′′ + 2y′ + y = 0の答えは y = C1 e

−x + C2 x e−x

(c) 元の方程式の解:特解 y = x2 − 4x+ 6 と斉次方程式の解 y′′ + 2y′ + y = 0と足し合わせて y = x2 − 4x+ 6 + C1 e

−x + C2 x e−x

(d) 答え: A = 1, B = −4, C = 6, y = x2 − 4x+ 6 + C1 e−x + C2 x e

−x

(7) (a) 特解の決定: y = Ax+B + C ex とする.

9y = +9C ex + 9B + 9Ax

−6y′ = −6C ex − 6A

+) y′′ = C ex

y′′ − 6y′ + 9y = 4C ex + (−6A+ 9B) + 9Ax

よって,A =1

9, B =

2

27, C =

1

4となる.特解は y =

1

9x+

2

27x+

1

4ex である.

(b) 斉次方程式の解: y′′ − 6y′ + 9y = 0の解は y = C1 e3x + C2 x e

3x

(c) 元の方程式の解: 特解 y =1

9x+

2

27x+

1

4ex と斉次方程式の解 y = C1 e

3x+C2 x e3x

を足し合わせて y =1

9x+

2

27x+

1

4ex + C1 e

3x + C2 x e3x

(d) 答え: A =1

9, B =

2

27, C =

1

4, y =

1

9x+

2

27x+

1

4ex + C1 e

3x + C2 x e3x

(8) (a) 特解の決定: y = A cosx+B sinxとする.関係式 y′′+y = 0を用いて y′′−6y′+9y =cosxから二回微分を消去すると

−6y′ + 8y = cosx

である.y = A cosx+B sinx を代入して

6(A sinx−B cosx) + 8(A cosx+B sinx) = cosx

よって6A+ 8B = 0, 8A− 6B = 1

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198 京都大学 澤野嘉宏

である.これを解くと A =2

25, B = − 3

50であるから,y =

2

25cosx− 3

50sinx

(b) 斉次方程式の解: y′′ − 6y′ + 9y = 0の解は y = C1 e3x + C2 x e

3x

(c) 元の方程式の解:特解 y =2

25cosx− 3

50sinxと斉次方程式の解 y = C1 e

3x+C2 x e3x

を足し合わせて y =2

25cosx− 3

50sinx+ C1 e

3x + C2 x e3x

(d) 答え: A =2

25, B = − 3

50, y =

2

25cosx− 3

50sinx+ C1 e

3x + C2 x e3x

(9) (a) 特解の決定: y = Ax2 +B xを y′′ − 2y′ = 1 + xに代入すると

2A− 2B − 4Ax = 1 + x

これより,A = −1

4, B = −3

4となる.したがって,特解は y = −1

4x2− 3

4x である.

(b) 斉次方程式の解: y′′ − 2y′ = 0の解は y = C1 + C2 e2x である.

(c) 元の方程式の解: 特解 y = −1

4x2 − 3

4x と斉次方程式の解 y = C1 +C2 e

2x を足し

合わせて y = −1

4x2 − 3

4x+ C1 + C2 e

2x

(d) 答え: A = −1

4, B = −3

4, y = −1

4x2 − 3

4x+ C1 + C2 e

2x

(10) (a) 特解の決定: yが一次式のときは y′′ = 0だから,−y = xとなるように定めればよい.したがって,y = −xが特解である.

(b) 斉次方程式の解: y′′ − y = 0の解は y = C1 ex + C2 e

−x である.(c) 元の方程式の解: 特解 y = −xと斉次方程式の解 y = C1 e

x +C2 e−xを足し合わせ

て y = −x+ C1 ex + C2 e

−x である.(d) 初期条件を入れた場合:

y = −x+ C1 ex + C2 e

−x, y′ = −1 + C1 ex − C2 e

−x

だから,初期条件を代入すると 1 = −0 + C1 + C2, 1 = −1 + C1 − C2 である.

C1 + C2 = 1, C1 − C2 = 2を解くと C1 =3

2, C2 =

1

2である.

(e) 答え: A = −1, B = 0, y = −x+ C1 ex + C2 e

−x, y = −x+3

2ex − 1

2e−x

問題 11.7.

(1) C は任意定数を表す.(a) y = x− 1(b) y = x− 1 + C e−x,

(2) (a) y = −1を代入して両辺が等しいことを証明すればよい.

(b) y = −1 + C exp

(−x

2

2

)(3) (a) y = (a+ 4b) cosx+ (4a− b) cosx

(b) y =4

17sinx− 1

17cosx+ C e−4x

問題 11.8.

(1) λ = ±7(それぞれ 2重)(2) y = C1 e

7x + C2 x e7x + C3 e

−7x + C4 x e−7x

(3) y = C1 e7x + C2 x e

7x + C3 e−7x + C4 x e

−7x + x

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微分方程式演習 199

問題 11.9.

(1) λ = 2,−1 +√3i(それぞれ 3重)

(2)

y = C1 e2x + C2 x e

2x + C3 x2 e2x + (C4 e

−x + C5 x e−x + C6 x

2 e−x) sin√3x

+ (C7 e−x + C8 x e

−x + C9 x2 e−x) cos

√3x

(3)

y = C1 e2x + C2 x e

2x + C3 x2 e2x + (C4 e

−x + C5 x e−x + C6 x

2 e−x) sin√3x

+ (C7 e−x + C8 x e

−x + C9 x2 e−x) cos

√3x+ 98x2 − 1023

問題 11.10. 一般解は f(x) = x + C1 cosx + C2 sinx である.f(0) = C1, f′(0) = 1 + C2 だか

ら,この初期条件に適合させるようにすると f(x) = x+ b cosx+ (a− 1) sinx となる.

問題 11.11.

(1) y = C e7x

(2) y = C e7x + 1(3) y = C1 e

x + C2 e3x

(4) y = A cosx+B sinxを特解であると予想する.

y′′ − 4y′ + 3y = −4y′ + 2y = (−4B + 2A) cosx+ (4A+ 2B) sinx

だから,y = A cosx+B sinxが方程式の解であるためには

4A+ 2B = 1, −4B + 2A = 0

が必要十分条件である.したがって,A =1

5, B =

1

10が得られる.

∴y = C1 ex + C2 e

3x +1

5cosx+

1

10sinx

問題 11.12.

(1) λ = ±5(それぞれ2重)(2) y = C1 e

5x + C2 e−5x + C3 e

5x + C4 x e−5x

(3) y = C1 e5x + C2 e

−5x + C3 e5x + C4 x e

−5x + 16x

問題 11.13.

(1) λ = 2,−1±√3i (重複度はすべて3重)

(2)

y = (C1 + C2 x+ C3 x2)e2x

+ (C4 + C5 x+ C6 x2)e−x sin(

√3x) + (C7 + C8 x+ C9 x

2)e−x sin(√3x)

(3)

y = −72x2 − 57x+ 203

512+ (C1 + C2 x+ C3 x

2)e2x

+ (C4 + C5 x+ C6 x2)e−x sin(

√3x) + (C7 + C8 x+ C9 x

2)e−x sin(√3x)

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200 京都大学 澤野嘉宏

問題 11.14.

(1) (a) 問題のヒントにある因数分解より λ = ±1

2±√3

2が得られる.

(b) 特解が y = −3x+ 8 だから

y = C1 exp(x2

)cos

(√3x

2

)+ C2 exp

(x2

)sin

(√3x

2

)

+ C3 exp(−x2

)cos

(√3x

2

)+ C4 exp

(−x2

)sin

(√3x

2

)− 3x+ 8

(2) (a) λ = 1,−1

2±√3

2i (それぞれ2重)

(b) 特解が y = x2 だから

y = C1 exp(−x2

)cos

(√3x

2

)+ C2 exp

(−x2

)sin

(√3x

2

)

+ C3 x exp(−x2

)cos

(√3x

2

)+ C4 x exp

(−x2

)sin

(√3x

2

)+ C5 e

x + C6 x ex + x2

(3) (a) λ = 1,−1 (それぞれ3重)(b) 特解が y = 4x だから

y = C1 e−x + C2 x e

−x + C3 x2 e−x + C4 x

2 ex + C5 ex + C6 x e

x + 4x

【注意】この問題にしか通用しないが,特解の出し方には規則性がある.

問題 11.15.

(1) x(t) = 0, t ≤ 1であるが,これが C1-級であるように微分方程式を解く.t > 1では一般解

x(t) = exp(−a2t)(

C1 cos

(√4− a22

t

)+ C2 sin

(√4− a22

t

))+ 1

が得られる.これが C1-級であるためには

C1 = −1, −a2C1 +

√4− a22

C2 = 0

でなくてはいけない.従って,

C1 = −1, C2 = −√4− a2a

となる.t > 1では

x(t) = − exp(−a2t)(

cos

(√4− a22

t

)+

√4− a2a

sin

(√4− a22

t

))+ 1

これより, limt→∞

x(t) = 1 は明らかである.

(2)

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微分方程式演習 201

(a)√4− a2 · T ≥ 1

10のとき,

T0 = mint ≥ T : t√4− a2 ∈ 2πZ

とおく.すると,T ≤ T0 ≤ 61T

が成り立つ.

|x(T0)− 1| = exp(−a2T0

)≥ exp (−32T a) ≥ exp(−64T ) > 0

が成立する.

(b)√4− a2 · T ≤ 1

10のとき,つまり,a ≥

√4− 1

102T 2のとき.

cos

(√4− a22

T

)+

√4− a2a

sin

(√4− a22

T

)

≥ cos

(√4− a22

T

)−√4− a2a

cos

(√4− a22

T

)

≥ 2a2 − 4

a(a+√4− a2)

cos1

10≥ 1

5cos

1

10

となる.

問題 11.16.

(1) x(t) = C1 e2t + C2 t e

2t

(2) x(t) = 6 + 9t+ 6t2 + 2t3 + C1 e2t + C2 t e

2t

(3) x(t) = 6 + 9t+ 6t2 + 2t3 − 3e2t − 8t e2t

問題 11.17.

(1) x(t) = cos t+ 2 sin t+ C1 et cos 2t+ C2 e

t sin t(2) x(t) = cos t+ 2 sin t(3) x(t) = cos t+ 2 sin t+ et−π cos 2t+ et−π sin t

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202 京都大学 澤野嘉宏

42. 12節

問題 12.1. V を有限次元ベクトル空間としてその部分集合 A = xjkj=1 が基底であるとは一次独立であり,かつ V を生成することである.

問題 12.2. V を有限次元ベクトル空間としてその部分集合 A = xjkj=1 が一次独立であるとは

スカラー a1, · · · , akがk∑

j=1

aj xj = 0を満たすとき a1 = a2 = · · · = ak = 0

が成り立つ.

問題 12.3. (1) V を線形空間であるとは次の 3つの性質を満たすことである.(答え)(a) 加法,スカラー倍という演算が備わっている.(b) a ∈ R, v ∈ V → a v ∈ V(c) v ∈ V, w ∈ V → v + w ∈ V

(2) 線形空間 V の元 v1 と v2 が一次独立であるとは(答え)v1, v2 が 0ではなく,実数 aを用いて v1 = a v2 とも v2 = a v1 とも現されないこと.

(3) 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vkが一次独立であるとは(答え)実数 a1, a2, · · · , akが a1 v1+a2 v2 + · · ·+ ak vk = 0満たすならば,a1 = a2 = · · · = ak = 0であること.

(4) 線形空間を v1, v2, · · · , vkが生成するもしくは張るとは(答え)すべての V の元 vは k個の実数 a1, a2, · · · , ak を用いて v = a1 v1 + a2 v2 + · · ·+ ak vk と現されること.

問題 12.4. [一次独立] 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk ∈ V に対して,これらが一次独立であるとは,次の条件を満たすことである.

(42.1) [条件]実数 a1, a2, · · · , ak がk∑

j=1

ajvk = 0⇒ a1 = a2 = · · · = ak = 0

[基底] 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk ∈ V に対して,これらが V の基底をなすとは,

v1, v2, · · · , vkは一次独立 (漢字4文字)であり,かつ V を生成 (漢字2文字)していることである.

[次元] 線形空間 V の元 v1, v2, · · · , vk ∈ V,が V の基底をなすとき,kのことを線形空間の次元という.

問題 12.5. u ∈ V かつ v ∈ V のとき,u(5) − 3u(2) + 29u = 0かつ v(5) − 3v(2) + 29v = 0である.よって足し合わせることで,(u+ v)(5)− 3(u+ v)(2) +29(u+ v) = 0 したがって,u+ v ∈ Vである.また,a ∈ R かつ u ∈ V のとき,式 u(5) − 3u(2) + 29u = 0 において両辺を a倍して(a u)(5) − 3(a u)(2) + 29a u = 0 したがって,au ∈ V である.以上より,V は線形空間であるとわかる.

問題 12.6. 関係式 aex + be2x = 0がすべての xに関して成り立つから特に x = 0, 1を代入してa+ b = 0, a e+ b e2 = 0が成立.これより,a = b = 0 よって,ex, e2x は一次独立.

問題 12.7. いくつかの問題は証明方法を示す.証明方法が示されていないものは示されている方法をまねて証明すること.

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微分方程式演習 203

(1) sinx, cosxは一次独立である.実際,関係式 a sinx+ b cosx = 0において x = 0, π2 を代入して a = b = 0がわかる.

(2) 2x, 3x, 4xは一次独立である.実際,関係式 a2x + b3x + c4x = 0において,両辺を 4xで割ることで,a 1

2x + b 3x

4x + c = 0がわかる.この式において x → ∞とすれば,c = 0がわかるから,c = 0 を代入して芋づる式に議論を繰り返していけばいい.

(3) 2x− 4, 12xは一次独立である.(4) 62x−57, 45x−12, 333x−157は一次独立ではない.実際,62x−57, 45x−12, 333x−157の生成する線形空間は x, 1の生成する線形空間と同じでその線形空間の次元は 2である.したがって,もし,62x − 57, 45x − 12, 333x− 157は一次独立であると仮定すると,線形空間の次元が 3になり,矛盾する.

(5) x, ex, xex は一次独立である.

(6) sinx, cosx, sin(x+

π

4

)は一次独立ではない.実際に,sin

(x+

π

4

)を加法定理を用いて

残りの二者で表せるから.(7) x+ 2, x+ 4は一次独立である.

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204 京都大学 澤野嘉宏

43. 13節

問題 13.1.

(1) W (y1, y2) =

∣∣∣∣ e3x 3e3x

xe3x e3x + 3xe3x

∣∣∣∣ = ∣∣∣∣e3x 3e3x

0 e3x

∣∣∣∣ = e6x.よって,関数系は一次独立である.

(2) (|x|x)′ = 2|x|に注意して,W (y1, y2) =

∣∣∣∣ x2 2x|x|x 2|x|

∣∣∣∣ = 0. しかし,y1, y2は一方が他方の

定数倍では表されないから関数系は一次独立である.

問題 13.2. 与えられた斉次方程式 y′′ + a1(x)y′ + a2(x)y = 0 の解 y1, y2 で y1(0) = y′2(0) =

1, y′1(0) = y2(0) = 0 となる解を取る.y′′ + a1(x)y′ + a2(x)y = f(x) の解を見つけるべく

y = C1(x)y1(x) + C2(x)y2(x) を考える.ここで,C1, C2 に自由度があるので,

(43.1) C ′1(x)y1(x) + C ′

2(x)y2(x) = 0, C ′1(x)y

′1(x) + C ′

2(x)y′2(x) = f(x)

なる束縛を与えておく.すると,

y′ = C1(x)y′1(x) + C2(x)y

′2(x), y

′′ = C1(x)y′′1 (x) + C2(x)y

′′2 (x) + f(x)

が得られる.したがって,y = C1(x)y1(x) + C2(x)y2(x) に対して,

y′′ + a1(x)y′ + a2(x)y

= C1(x)(y′′1 (x) + a1(x)y

′1(x) + a2(x)y1(x)) + C2(x)(y

′′2 (x) + a1(x)y

′2(x) + a2(x)y2(x))

= f(x)

となる.C ′1, C

′2 を具体的に計算してみると,

C ′1(x) =

f(x)y1(x)

y1(x)y′2(x)− y2(x)y′1(x), C ′

2(x) =−f(x)y2(x)

y1(x)y′2(x)− y2(x)y′1(x)したがって,C1(x0) = C2(x0) = 0なる束縛条件の下では

y =

∫ x

x0

C1(x)f(η)y1(η)

y1(η)y′2(η)− y2(η)y′1(η)− C2(x)

f(η)y2(η)

y1(η)y′2(η)− y2(η)y′1(η)dη

=

∫ x

x0

C1(x)y1(η)− C2(x)y2(η)

y1(η)y′2(η)− y2(η)y′1(η)f(η) dη

と表される.

問題 13.3.

(1) y′′0 + p(x)y′0 + q(x)y0 = 0より,

y′′ + p(x)y′ + q(x)y = y′′0u+ 2y′0u′ + y0u

′′ + p(x)y′0u+ p(x)y0u′ + q(x)y0u

= (2y′0 + p(x)y0)u′ + y0u

′′

であるから,(2y′0 + p(x)y0)u′ + y0u

′′ = 0

(2) u′ = C exp

(∫ x

a

2y′0(s) + p(s)y0(s)

y0(s)ds

). であるから,

u(x) = C1 + C2

∫ x

a

(exp

(∫ u

a

2y′0(s) + p(s)y0(s)

y0(s)ds

))du

となる.

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微分方程式演習 205

問題 13.4. y = ez が解であるので,z = e−x yとおくと,

y′′ − (x+ 1)y′ + x y = ex(z′′ + 2z′ + z)− (x+ 1)ex(z′ + z) + x ex z

= ex(z′′ + 2z′ + (x+ 1)z)− (x+ 1)ex(z′ + z)

= ex(z′′ + (1− x)z′).

したがって,z′′ = (x− 1)z′ となる.これより,

z = C1

∫exp

((x− 1)2

2

)dx+ C2, y = C1 e

x

∫exp

((x− 1)2

2

)dx+ C2 e

x.

問題 13.5.

(1) 代入して確かめるだけなので省略.(2) x = t yと変換する.すると,x′ = y + t y′, x′′ = 2y′ + t y′′ であるから,

0 = x′′ + t x′ − x = 2y′ + t y′′ + t y + t2 y′ − t y = 2y′ + t y′′ + t2 y′

となる.したがって,t y′′ = −(t2 + 2)y′ となる.これより,

y′ =C

t2exp

(−1

2t2)つまり y = C1

∫ t

1

1

s2exp

(−1

2s2)ds+C2 = C1 exp

(− t

2

2

)+C1E(t)+C2.

したがって,x = C1 t exp

(− t

2

2

)+ C1 t E(t) + C2 t.

(3) w′(t) = φ(t)ψ′′(t)− φ′′(t)ψ(t) = −t(φ(t)ψ′(t)− φ′(t)ψ(t)) = −t w(t) であるから,積分

して w(t) = w(0) exp

(−1

2t2)

= (ad− bc) exp(−1

2t2)となる.

注意 14. 0の近傍での解を求めるべく,x =∞∑

n=0

an tn とする.a−1 = 0という解釈の下,

x′′ =

∞∑n=2

n(n− 1)an tn−2 =

∞∑n=0

(n+ 2)(n+ 1)an+2tn, t x′ =

∞∑n=0

nan tn

であるから,(n + 2)(n + 1)an+2 + (n − 1)an = 0 が得られる.(1) で求めた x = t つまりa0 = a2 = a3 = · · · = 0, a1 = 1という解以外に,a0 = 1, a1 = 0を満たしている解を求める.与えられた漸化式より,a2n−1 = 0が得られる.

(−2n)(−2n+ 2) · · · (−2)× (2n− 1)a2n = (−2n+ 2) · · · (−2)× (2n− 3)a2n−2.

a2 =a02

=1

2であるから,(−2n)(−2n + 2) · · · (−2) × (2n − 1)a2n = (−2) × 1 · a2 = −1. した

がって,a2n =(−1)n−1

2nn!· 1

2n− 1, n = 0, 1, · · · が得られる.an の表示式を代入して,

x(t) =∞∑

n=0

(−1)n−1

2nn!· 1

2n− 1t2n.

問題 13.6. x(t) = c1(t)φ(t) + c2(t)ψ(t)とおく.すると,

x′′(t) + a(t)x′(t) + b(t)x(t)

= c′′1(t)φ(t) + c′′2(t)ψ(t) + 2c′1(t)φ′(t) + 2c′2(t)ψ

′(t) + a(t)(c′1(t)φ(t) + c′2(t)ψ(t))

が成り立つ.したがって,c′1(t)φ(t) + c′2(t)ψ(t) ≡ 0

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206 京都大学 澤野嘉宏

を仮定すると,c′1(t)φ

′(t) + 2c′2(t)ψ′(t) = f(t)

が成り立つ.これより,

c′1(t) = −ψ(t)f(t)

W (t), c′2(t) =

φ(t)f(t)

W (t)

となる.c1(0) = c2(0) = 0を仮定して x(t)を求めると,

x(t) = −φ(t)∫ t

0

ψ(s)f(s)

W (s)ds+ ψ(t)

∫ t

0

φ(s)f(s)

W (s)ds

が得られる.

問題 13.7. べき級数を用いて解く場合は x(t) =∞∑

k=−∞

aktk とする.

(1) 【べき級数を用いて解く方法】

x′′+1

2tx′+

1

4tx =

∞∑k=−∞

((k + 1)(k + 2)ak+2 +

1

2(k + 2)ak+2 +

1

4ak+1

)tk であるから,

(2k + 4)(2k + 3)ak+2 = −ak+1.

これを解くと,ak =(−1)k

(2k)!a0. よって,x = c1 cos

√t となる.

これだと不十分 (解空間の次元が 2なのに,1次元分しか解を得ていない)なので,フロベニウスの方法を用いる.【フロベニウスの方法を用いて解く方法】べき級数をさらに広げて,

x(t) =

∞∑k=0

aktk+ρ, a0 = 0

とおいてみる.すると,

x′(t) =

∞∑k=0

(k + ρ)aktk+ρ−1

= ρa0tρ−1 +

∞∑k=0

(k + 1 + ρ)ak+1tk+ρ

x′′(t) =∞∑k=0

(k + ρ)(k + ρ− 1)aktk+ρ−2

= ρ(ρ− 1)a0tρ−2 + (ρ+ 1)ρa1t

ρ−1 +

∞∑k=0

(k + 2 + ρ)(k + 1 + ρ)ak+2tk+ρ

であるから,

x′′ +1

2tx′ +

1

4tx =

∞∑k=0

((k + 2 + ρ)(k + 3/2 + ρ)ak+2 + ak+1/4)tk+ρ

+ ρ(ρ− 1/2)a0tρ−2 + ((ρ+ 1)(ρ+ 1/2)a1 + a0/4)t

ρ−1

となる.よって,

ρ(ρ− 1/2)a0 = ((ρ+ 1)(ρ+ 1/2)a1 + a0/4) = 0

(2k + 2ρ+ 4)(2k + 2ρ+ 3)ak+2 = −ak+1, k ≥ 0

が得られる.よって,次の場合が考えられる.(a) ρ = 0の場合.この場合は,x(t) = a0 cos

√t なる解が得られる.

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微分方程式演習 207

(b) ρ = 1/2の場合.x = c1 cos

√t+ c2 sin

√t となる.

【注意】x(t) =∞∑

k=−∞

aktk+θ, 2θ /∈ Z の場合は解が存在しない.実際に,

ak = (−1)k2θ(2θ + 1) · · · (2θ − 2k − 1)a0, k < 0

となるので,級数が収束しない.(2) 【べき級数を用いて解く方法】(k2 + k)ak+2 + kak+1 = 0 より,x = c1t+ c2te

−t

(3) 【べき級数を用いて解く方法】tkの係数は (k2+6k+5)ak+2である.よって,x = c1t+c2t−3

(4)

x′′ +

(2 + t2

t

)x′ +

(1− 2

t2

)x

=∞∑

k=−∞

(k + 2)(k + 1)ak+2tk +

∞∑k=−∞

2(k + 2)ak+2tk +

∞∑k=−∞

(k + 1)aktk −

∞∑k=−∞

2ak+2tk

=∞∑

k=−∞

((k + 1)ak + (k2 + 5k + 4)ak+2

)となる.よって,

(k + 1)ak + (k2 + 5k + 4)ak+2 = 0, k ∈ Z

が得られる.これは ak + (k + 4)ak+2 = 0, k ∈ Z \ −1 と同値である.k = −4とすると,a−4 = 0が得られる.以下,順番に k = −6,−8, · · · を代入して,a−2k = 0, k ≥ 2が

得られる.よって,x = c1

∞∑k=0

(−1)kt2k+1

(2k + 3)!!+ c2

∞∑k=0

(−1)kt2k−2

(2k)!!

(5) 【べき級数を用いて解く方法】(k + 1)2ak+1 − ak = 0より,x = c1

∞∑k=0

tk

(k!)2となる.

フロベニウスの方法を実行しようとすると,問題が生じる.固定するべき ρが二つ出てくるが,整数の違いしかないために,異なる解を見出すことができないのである.そこで,z =

y∑∞

k=0tk

(k!)2 なる変換をする.x = c1

∞∑k=0

tk

(k!)2+c2

(log t

∞∑k=0

tk

(k!)2− 2

∞∑k=1

tk

(k!)2

(1 +

1

2+ · · ·+ 1

k

))

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208 京都大学 澤野嘉宏

44. 14節

問題 14.1.

(1) AB =

(16 1436 35

)(2) An =

(4n n4n−1

0 4n

)(3) An =

((−2)n 0

0 9n

)(4) An =

(an 00 bn

)

問題 14.2.

(1) AB =

(14 −938 0

), B A =

(41 69−21 −27

)(2) C2 = 0(3) X2 − (a+ d)X + (a d− b c)E = 0

問題 14.3. ちょっとした筆算で出来る問題もあるが,正確に計算していかないといけないものも中にはある.

(1) はじめに,A2 − 4A+ 3E = 0 であるから,割り算“ xn ÷ (x− 1)(x− 3)”を実行する.

xn = (x− 1)(x− 3)P (x) + αx+ β

とする.すると,α+ β = 1, 3α+ β = 3n であるから,α =3n − 1

2, β =

3− 3n

2が得ら

れる.したがって,

An = (A− E)(A− 3E)P (A) + αA+ β E = (A2 − 4A+ 3E)P (A) + αA+ β E

= αA+ β E =3n − 1

2A+

3− 3n

2E =

3n

2

(1 11 1

)− 1

2

(−1 11 −1

)(2) 慣れてきたら次のようにやるのが望ましい.

An =

(2E +

(0 10 0

))n

=

n∑k=0

nCk2n−k

(0 10 0

)k

= nC02nE + nC12

n−1

(0 10 0

)=

(2n n2n−1

0 2n

)(3) はじめに,ケーリー・ハミルトンの定理より A2 − 7A + 10E = 0 である.したがって,

xn ÷ (x− 2)(x− 5)を考える.

xn = (x− 2)(x− 5)P (x) + αx+ β

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微分方程式演習 209

これに x = 2, 5を代入して α, βを求めると α =5n − 2n

3, β =

2 · 5n − 5 · 2n

3である.し

たがって,

An = (A− 2E)(A− 5E)P (A) + αA+ β E

= (A2 − 7A+ 10E)P (A) + αA+ β E

= αA+ β E

=5n − 2n

3A+

2 · 5n − 5 · 2n

3E

=5n

3

(3 10 0

)+

2n

3

(0 −10 3

)(4) はじめに,ケーリー・ハミルトンの定理より A2 − 7A + 12E = (A − 3E)(A − 4E) = 0である.したがって,xn ÷ (x− 3)(x− 4)を考える.

xn = (x− 3)(x− 4)P (x) + αx+ β

これに x = 2, 5を代入して α, β を求めると

α = 4n − 3n, β = −3 · 4n + 4 · 3n

である.したがって,

An = (A− 3E)(A− 4E)P (A) + αA+ β E

= (A2 − 7A+ 12E)P (A) + αA+ β E

= (4n − 3n)A− (3 · 4n − 4 · 3n)E

= 4n(

2 1−2 −1

)+ 3n

(−1 −12 2

)(5) 慣れてきたら次のようにやるのが望ましい.

An =

(5E +

(−1 1−1 1

))n

=

n∑k=0

nCk5n−k

(0 10 0

)k

= nC05nE + nC15

n−1

(−1 1−1 1

)= 5n

(1 00 1

)+ n5n−1

(−1 1−1 1

)(6)

(a) an =1 + in + (−1)n + (−i)n

4.

(b) An = (an+3 − an+1)E + (an+2 − an)A.

模範解答にあるようにまとめると分かりやすい。模範解答にある下線部を引いた行列は必ず行列式が 0になる.これは基本事項でやった計算結果からわかる.したがって,もし模範解答のようにまとめて出てきた行列式が 0にならないなら計算間違いを犯したことになる.簡単な確認だが,これは計算間違い発見に結構役立つ.

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210 京都大学 澤野嘉宏

45. 15節

問題 15.2. これは問題 14.3をきちんとできると多くの場合は機械的に出来る.使うべき公式:∞∑j=0

αj

j!= eα,

∞∑j=0

j αj

j!= α eα, exp(tA) = exp(tA) =

∞∑j=0

Aj

j!

をうまく使う.

(1) exp(t A) =e3t

2

(1 11 1

)− et

2

(−1 11 −1

)(2) exp(t A) = e2t

(1 00 1

)+ te2t

(0 10 0

)(3) exp(t A) =

e5t

3

(3 10 0

)+e2t

3

(0 −10 3

)(4) exp(t A) = e4t

(2 1−2 −1

)+ e3t

(−1 −12 2

)(5) A2 − 10A+ 26E = 0であるから,

exp(tA) = exp(5t) exp(t(A− 5E))

= exp(5t)(cos tE + sin t(A− 5E))

= (exp(5t) cos t)E + (exp(5t) sin t)

(−1 1−2 1

).

(6) A2 − 4A+ 5E = 0であるから,

exp(tA) = exp(2t) exp(t(A− 2E))

= exp(2t)(cos tE + sin t(A− 2E))

= (exp(2t) cos t)E + (exp(2t) sin t)

(0 1−1 0

).

【行列の指数関数を計算するときの注意】

模範解答にあるようにまとめると分かりやすい。模範解答にある下線部を引いた行列は必ず行列式が 0になる.これは基本事項でやった計算結果からわかる.したがって,もし模範解答のようにまとめて出てきた行列式が 0にならないなら計算間違いを犯したことになる.簡単な確認だが,これは計算間違い発見に結構役立つ.

問題 15.3. それぞれ行列を用いて解く方法と何人かの人がやっていたように代入して解く方法があり,方法によって答えの表示が異なる.それぞれの解法で答えがどう出てくるのかを説明して得られた解を比較してみよう.

C1, C2, D1, D2 は任意定数を表す.

(1) 行列を用いて解く方法

x′ = 2x + 3y, y′ = x + 4y を行列表示する.(x′

y′

)=

(2 31 4

)(xy

)とする.

A =

(2 31 4

)とおく.Anを計算する.ケーリーハミルトンの公式より,A2−6A+5E = 0

だから,xn を対応する多項式 (x− 1)(x− 5) = x2 − 6x+ 5で割り算する.

xn = (x− 1)(x− 5)P (x) + αx+ β.

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微分方程式演習 211

x = 1, 5を代入して α+ β = 1, 5α+ β = 5n この連立方程式を解いて,

α =1

4(5n − 1), β =

1

4(5− 5n)

となる.これより,

An = (A− E)(A− 5E)P (A) + αA+ βE

= (A2 − 6A+ 5E)P (A) +1

4(5n − 1)A+

1

4(5− 5n)E

=5n

4(A− E) +

1

4(5E −A)

=5n

4

(1 31 3

)+

1

4

(3 −3−1 1

)さらに指数関数を用いて計算すると

exp(tA) =∞∑

n=0

tnAn

n!

=

∞∑n=0

tn

n!

5n

4

(1 31 3

)+

1

4

(3 −3−1 1

)

=1

4

( ∞∑n=0

(5t)n

n!

)(1 31 3

)+

1

4

∞∑n=0

tn

n!

(3 −3−1 1

)=e5t

4

(1 31 3

)+et

4

(3 −3−1 1

)以上より,(

xy

)= exp(tA)

(C1

C2

)=e5t

4

(1 31 3

)(C1

C2

)+et

4

(3 −3−1 1

)(C1

C2

)=e5t

4

(C1 + 3C2

C1 + 3C2

)+et

4

(3C1 − 3C2

C1 − C2

)となる.もしくは,行列の記法をやめて

x =1

4(C1 + 3C2)e

5t +3

4(C1 − C2)e

t

y =1

4(C1 + 3C2)e

5t − 1

4(C1 − C2)e

t

となる.代入して解く方法ここでは,二つの解法の違いがわかるようにD1, D2で任意定数を表す.x = y′−4yを

x′ = 2x+3yに代入する.y′′− 4y′ = 2y′− 8y+3y これより,y′′− 6y′ +5y = 0 となる.y = D1 e

5t+D2 et が得られて,x = 5D1 e

5t+D2 et−4D1 e

5t−4D2 et = D1 e

5t−3D2 et

x = D1 e5t − 3D2 e

t

y = D1 e5t +D2 e

t

比較:二つを並べて書いてみれば,二者が一致するのは一目瞭然である.

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212 京都大学 澤野嘉宏

行列

x =1

4(C1 + 3C2)e

5t +3

4(C1 − C2)e

t

y =1

4(C1 + 3C2)e

5t − 1

4(C1 − C2)e

t

代入

x = D1 e5t − 3D2 e

t

y = D1 e5t +D2 e

t

行列を用いて解く方法

x′ = 2x− y, y′ = x+ 4yを行列表示する.

(x′

y′

)=

(2 −11 4

)(xy

)

とする.

A =

(2 −11 4

)

とおく.An を計算する.ケーリーハミルトンの公式より,A2 − 6A+ 9E = 0 だから,xn を対応する多項式 (x− 3)2 = x2 − 6x+ 9で割り算する.

xn = (x− 3)2P (x) + αx+ β.

x = 3を代入して 3α+ β = 3n. 微分して

nxn−1 = 2(x− 3)P (x) + (x− 3)2P ′(x) + α

この式に x = 3を代入して α = n · 3n−1. したがって,α = n · 3n−1, β = (1− n)3n となる.これより,

An = (A− 3E)2P (A) + αA+ βE

= (A2 − 6A+ 9E)P (A) + n · 3n−1A+ (1− n)3nE= n · 3n−1(A− 3E) + 3nE

= n · 3n−1

(−1 −11 1

)+ 3n

(1 00 1

)

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微分方程式演習 213

さらに指数関数を用いて計算すると

exp(t A) =∞∑

n=0

tnAn

n!=

∞∑n=0

tn

n!

n · 3n−1

(−1 −11 1

)+ 3n

(1 00 1

)

=

∞∑n=0

n · 3n−1tn

n!

(−1 −11 1

)+

∞∑n=0

3ntn

n!

(1 00 1

)

=∞∑

n=1

n · 3n−1tn

n!

(−1 −11 1

)+

∞∑n=0

3ntn

n!

(1 00 1

)

= t∞∑

n=1

3n−1tn−1

(n− 1)!

(−1 −11 1

)+

∞∑n=0

3ntn

n!

(1 00 1

)

= t∞∑

n=0

3ntn

n!

(−1 −11 1

)+

∞∑n=0

3ntn

n!

(1 00 1

)= t e3t

(−1 −11 1

)+ e3t

(1 00 1

)以上より, (

xy

)= exp(tA)

(C1

C2

)= t e3t

(−1 −11 1

)(C1

C2

)+ e3t

(1 00 1

)(C1

C2

)= t e3t

(−C1 − C2

C1 + C2

)+ e3t

(C1

C2

)となる.もしくは,行列の記法をやめて

x = −(C1 + C2)t e3t + C1 e

3t

y = (C1 + C2)t e3t + C2 e

3t

となる.

代入して解く方法

ここでは,二つの解法の違いがわかるようにD1, D2で任意定数を表す.x = y′−4yをx′ = 2x−yに代入する.y′′ − 4y′ = 2y′ − 8y− y これより,y′′ − 6y′ +9y = 0 となる.y = D1 e

3t +D2 t e3t

が得られて,x = 3D1 e3t +D2 e

3t + 3D2t e3t − 4D1 e

3t − 4D2 t e3t = (−D1 +D2) e

3t −D2t e3t

x = D1 e3t +D2 t e

3t, y = (−D1 +D2) e3t −D2t e

3t 【比較】よく見てみると,やはり両者は一致している.

(1) 【行列によって得られた答え】x = −(C1+C2)t e3t+C1 e

3t, y = (C1+C2)t e3t+C2 e

3t.(2) 【代入法によって得られた答え】x = D1 e

3t +D2 t e3t, y = (−D1 +D2) e

3t −D2t e3t

問題 15.4. (a)An の計算,(b)exp(tA)の計算,(c)微分方程式の一般解,(d)微分方程式の初期条件を代入した解のみを記す.

(1) (a) An = n · 5n−1

(1 −11 −1

)+ 5n

(1 00 1

).

(b) exp(tA) = t e5t(1 −11 −1

)+ e5t

(1 00 1

).

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214 京都大学 澤野嘉宏

(c)

(xy

)=

(C1 e

5t(t+ 1)− C2 t e5t

C1 t e5t + C2 e

5t(1− t)

).

(d)

(xy

)= 12e5t

(11

)(2) (a) An =

9n

6

(5 51 1

)+

3n

6

(1 −5−5 1

),

(b) exp(tA) =e9t

6

(5 51 1

)+e3t

6

(1 −5−5 1

)(c)

(xy

)=

1

6

(C1 (5e

9t + e3t) + C2 (5e9t − 5e3t)

C1 (e9t − e3t) + C2 (e

9t + 5e3t)

).

(d)

(xy

)=

(20e9t − 8e3t

4e9t + 8e3t

)(3) (a) An =

(8n 00 4n

).

(b) exp(tA) =

(exp(8t) 0

0 exp(4t)

).

(c)

(xy

)=

(C1 e

8t

C1 e4t

).

(d)

(xy

)=

(12e8t

12e4t

).

問題 15.5. (a)An の計算,(b)exp(tA)の計算,(c)微分方程式の一般解,(d)微分方程式の初期条件を代入した解のみを記す.

(1) (a) An = n 6n−1

(2 −22 −2

)+ 6n

(1 00 1

).

(b) exp(tA) = t e6t(2 −22 −2

)+ e6t

(1 00 1

).

(c)

(xy

)= t e6t

(2C1 − 2C2

2C1 − 2C2

)+ e6t

(C1

C2

).

(d)

(xy

)= t e6t

(−24−24

)+ e6t

(1628

).

(2) (a) An =10n

6

(2 81 4

)− 4n

6

(−4 81 −2

).

(b) exp(tA) =e10t

6

(2 81 4

)− e4t

6

(−4 81 −2

).

(c)

(xy

)=e10t

6

(2C1 + 8C2

C1 + 4C2

)− e4t

6

(−4C1 + 8C2

C1 − 2C2

).

(d)

(xy

)= e10t

(4623

)− e4t

(28−7

).

(3) (a) An =

(7n 00 9n

).

(b) exp(tA) =

(exp(7t) 0

0 exp(9t)

).

(c)

(xy

)=

(C1 exp(7t)C2 exp(9t)

).

(d)

(xy

)=

(10 exp(7t)15 exp(9t)

).

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微分方程式演習 215

問題 15.6. 使うべき公式:d

dt

(xy

)= A

(xy

)⇐⇒

(xy

)= exp(tA)

(x(0)y(0)

)

(1)

(x1x2

)= e3t

(44

)+ et

(−11

)(2)

(x1x2

)= e2t

(47

)+ te2t

(70

)(3)

(x1x2

)=e5t

3

(−10

)+e2t

3

(−26

)(4)

(x1x2

)= e4t

(1−1

)+ e3t

(−12

)

問題 15.7. 二通りの解法で

y1 =1

2(3C1 − C2)e

4t − 1

2(C1 − C2)e

2t, y2 =1

2(3C1 − C2)e

4t − 3

2(C1 − C2)e

2t

を導く.

(1) A =

(5 −13 1

)とおく.ケーリー・ハミルトンの定理よりA2− 6A+8E = 0 である.し

たがって,xn ÷ (x− 2)(x− 4)を考えることになる.

xn = (x− 2)(x− 4)P (x) + αx+ β

として x = 2, 4を代入して 4α+ β = 4n, 2α+ β = 2n を得るから,α =1

2(4n− 2n), β =

2n+1 − 4n したがって,

An =1

2(4n − 2n)

(5 −13 1

)+ (2 · 2n − 4n)E = 4n · 1

2

(3 −13 −1

)− 2n · 1

2

(1 −13 −3

)さらに,exp(tA) =

e4t

2

(3 −13 −1

)− e2t

2

(1 −13 −3

). あとは公式を用いるだけである.

(2) 第一式を y2 = −y′1+5y1 と変形してを y′2 = 3y1+y2 に代入すると−y′′1+5y′1 = 3y1+5y1−y′1 である.したがって,整理すれば y′′1 −6y′1+8y1 = 0 したがって,y1 = C1 e

2t+C2 e4t

である.第一式より

y2 = −y′1 + 5y1 = −2C1 e2t − 4C2 e

4t + 5C1 e2t + 5C2 e

4t = 3C1 e2t + C2 e

4t

以上より,y1 = C1 e2t +C2 e

4t, y2 = 3C1 e2t +C2 e

4t. しかるべく定数を置き換えると確かに答えが得られる.

問題 15.8.

(1) An =

(5E +

(1 −11 −1

))n

= 5nE+n 5n−1+

(1 −11 −1

)= n 5n−1

(1 −11 −1

)+5n

(1 00 1

)(2) 割り算 xn = (x− 3)(x− 9)P (x) + a x+ b を考えると,a =

9n − 3n

6, b =

3n+1 − 9n

2で

あるから,

An =9n − 3n

6A+

3n+1 − 9n

2E = 9n

A− 3E

6− 3n

A− 9E

6=

9n

6

(5 51 1

)+

3n

6

(1 −5−1 5

).

(3) exp(tD) =

(eλt 00 eµt

)

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216 京都大学 澤野嘉宏

問題 15.9. (1),(3)は詳しい解説を付ける.残りは,(a)Anの計算,(b)exp(tA)の計算,(c)微分方程式の一般解,(d)微分方程式の初期条件を代入した解のみを記す.はじめにどの問題もケーリー・ハミルトンの定理 A2 − (a+ d)A+ (ad− bc)E = 0 が何を具体的に示しているかを書き下す.そして,(この場合は重解でないなら)それに対応する多項式 P (x) = x2− (a+ d)x+ ad− bcを考える.

(1) ケーリー・ハミルトンの定理より,A2−7A+10E = 0. したがって,P (x) = x2−7x+10である.xn を割り算をして xn = (x − 2)(x − 5)P (x) +K x + L とすると,x = 2, 5を代入することにより,2n = 2K +L, 5n = 5K +Lが得られる.したがって,この連立方

程式を解くことによって,K =5n − 2n

3, L =

5 · 2n − 2 · 5n

3である.これより,

xn = (x− 2)(x− 5)P (x) +5n − 2n

3x+

5 · 2n − 2 · 5n

3

が得られる.したがって,xに行列 Aを代入すると,

An = (A− 2E)(A− 5E)P (A) +5n − 2n

3A+

5 · 2n − 2 · 5n

3E

= (A2 − 7A+ 10E)P (A) +5n − 2n

3A+

5 · 2n − 2 · 5n

3E

= 0 · P (A) + 5n − 2n

3A+

5 · 2n − 2 · 5n

3E

=5n − 2n

3A+

5 · 2n − 2 · 5n

3E.

成分を代入して,An =5n

3

(1 21 2

)+

2n

3

(2 −2−1 1

).次に指数関数の計算へうつる.

ex のテーラー展開 ex = 1 + x + · · · + xn

n!+ · · · と行列の指数関数 exp(tA) =

∞∑j=0

tj

j!Aj

を用いる.

exp(tA) =∞∑j=0

tj

j!

5j

3

(1 21 2

)+

2j

3

(2 −2−1 1

)

=

∞∑j=0

tj

j!· 5

j

3

(

1 21 2

)+

∞∑j=0

tj

j!· 2

j

3

(2 −2−1 1

)

=1

3

∞∑j=0

5jtj

j!

(

1 21 2

)+

1

3

∞∑j=0

2jtj

j!

(2 −2−1 1

)

=e5t

3

(1 21 2

)+e2t

3

(2 −2−1 1

)次に微分方程式

(x′

y′

)= A

(xy

)を解く.解の公式より(

xy

)=e5t

3

(1 21 2

)+e2t

3

(2 −2−1 1

)(x(0)y(0)

)=

1

3

(e5t(x(0) + 2y(0)) + 2e2t(x(0)− y(0))e5t(x(0) + 2y(0))− e2t(x(0)− y(0))

)初期条件を入れると

(xy

)=

1

3

(14e5t − 2e2t

14e5t + e2t

).

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微分方程式演習 217

(2)

(a) An = n · 4n−1

(0 10 1

)+ 4n

(1 00 1

).

(b) exp(tA) = t e4t(

0 10 0

)+ e4t

(1 00 1

).

(c)

(xy

)= y(0)t e4t

(10

)+ e4t

(x(0)y(0)

).

(d)

(xy

)= 2t e4t

(10

)+ e4t

(52

).

(3) ケーリー・ハミルトンの公式より A2 − 10A + 25E = 0 である.固有方程式の解が重解である.二項展開より,

An = (A− 5E + 5E)n =

n∑j=0

nCj5n−j(A− 5E)j E =

1∑j=0

nCj5n−j(A− 5E)j E.

成分を代入して計算すると,

An = nC15n−1(A− 5E)5nE = n · 5n−1

(3 3−3 −3

)+ 5n

(1 00 1

)次に指数関数を計算する.

exp(tA) =

∞∑n=0

tn

n!· n · 5n−1

(3 3−3 −3

)+

∞∑n=0

tn

n!· 5n(

1 00 1

)

=

∞∑n=1

tn

n!· n · 5n−1

(3 3−3 −3

)+ e5t

(1 00 1

)

= t

∞∑n=1

tn−1

(n− 1)!· 5n−1

(3 3−3 −3

)+ e5t

(1 00 1

)

= t

∞∑n=0

tn

n!· 5n(

3 3−3 −3

)+ e5t

(1 00 1

)= t e5t

(3 3−3 −3

)+ e5t

(1 00 1

)次に微分方程式

(x′

y′

)= A

(xy

)を解く.解の公式より(

xy

)= t e5t

(3 3−3 −3

)(x(0)y(0)

)+ e5t

(1 00 1

)(x(0)y(0)

)= 3(x(0) + y(0))t e5t

(1−1

)+ e5t

(x(0)y(0)

).

初期条件を入れると(xy

)= 33t e5t

(1−1

)+ e5t

(56

).

(4) (a) An =12n

2

(1 11 1

)+

8n

2

(1 −1−1 1

).

(b) exp(tA) =e12t

2

(1 11 1

)+e8t

2

(1 −1−1 1

).

(c)

(xy

)=e12t

2(x(0) + y(0))

(11

)+e8t

2(x(0)− y(0))

(1−1

).

(d)

(xy

)=

7e12t

2

(11

)+

9e8t

2

(−11

).

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218 京都大学 澤野嘉宏

(5) (a) An =(−6)n

4

(1 −1−3 3

)+

(−2)n

4

(3 13 1

).

(b) exp(tA) =e−6t

4

(1 −1−3 3

)+e−2t

4

(3 13 1

).

(c)

(xy

)=

(x(0)− y(0))4

e−6t

(1−3

)+

(3x(0) + y(0))

4e−2t

(11

).

(d)

(xy

)=

1

4e−6t

(−13

)+

5

4e−2t

(11

).

(6) (a) An =5n

3

(2 21 1

)+

2n

3

(1 −2−1 2

).

(b) exp(tA) =e5t

3

(2 21 1

)+e2t

3

(1 −2−1 2

).

(c)

(xy

)=

1

3

(e5t(2x(0) + 2y(0)) + e2t(x(0)− 2y(0))e5t(x(0) + y(0))− e2t(−x(0) + 2y(0))

).

(d)

(xy

)=

1

3

(−24e5t + 3e2t

−12e5t − 17e2t

).

(7) (a) An = n · 6n−1

(−1 1−1 1

)+ 6n

(1 00 1

).

(b) exp(tA) = t e6t(−1 1−1 1

)+ e6t

(1 00 1

).

(c)

(xy

)= (−x(0) + y(0))t e6t

(1−1

)+ e6t

(x(0)y(0)

).

(d)

(xy

)= 2t e6t

(11

)+ 2e6t

(01

).

(8) (a) An =5n

5

(1 −2−2 4

)+

10n

5

(4 22 1

).

(b) exp(tA) =e5t

5

(1 −2−2 4

)+e10t

5

(4 22 1

).

(c)

(xy

)=

1

5

(e5t(x(0)− 2y(0)) + e10t(4x(0) + 2y(0))e5t(−2x(0) + 4y(0)) + e10t(2x(0) + y(0))

).

(d)

(xy

)=

1

5

(−7e5t + 32e10t

14e5t + 16e10t

).

(9) (a) An =13n

6

(2 18 4

)+

7n

6

(3−82

).

(b) exp(tA) =e13t

6

(2 18 4

)+e7t

6

(3−82

).

(c)

(xy

)=

2x(0) + y(0)

6e13t

(14

)+

4x(0)− y(0)6

e7t(

4−2

).

(d)

(xy

)=

39

6e13t

(14

)+

57

6e7t(

4−2

).

(10) (a) An = n · 21n−1

(−5 5−5 5

)+ 21n

(1 00 1

).

(b) exp(tA) = t e21t(−5 5−5 5

)+ e21t

(1 00 1

).

(c)

(xy

)= 5(−x(0) + y(0))t e21t

(11

)+ e21t

(x(0)y(0)

).

(d)

(xy

)= e21t

(11

)

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微分方程式演習 219

問題 15.10. 一部,答えだけを示しているところがある.計算間違いを防ぐために,Anが出たらn = 0, 1を代入して間違えていないかを検証することが肝要である.

(1) A =

0 n ≥ 2A n = 1E n = 0

, exp(tA) = E + tA,

(xy

)=

(C1

C1 t+ C2

),

(xy

)=

(3

3t+ 5

).

(2) (a)Anの計算,(b)exp(tA)の計算,(c)微分方程式の一般解,(d)微分方程式の初期条件を代入した解の順番に答えを書いていく.(3)も同様.

(a) An =

10n

2

(1 11 1

)(n ≥ 1)

E (n = 0).

(b) exp(tA) =e10t

2

(1 11 1

)+

1

2

(1 −1−1 1

).

(c)

(xy

)=e10t

2

(C1 + C2

C1 + C2

)+

1

2

(C1 − C2

−C1 + C2

).

(d)

(xy

)= 4e10t

(11

)−(

1−1

).

(3) 順番に答えを書いていく.

(a) An = 12nE + n 12n−1

(−1 −11 1

)(b) exp(tA) = e12tE + t e12t

(−1 −11 1

)(c)

(xy

)= e12t

(C1

C2

)+ t e12t

(−C1 − C2

C1 + C2

)(d)

(xy

)= e12t

(35

)+ 8t e12t

(−11

)(4) はじめに A2 − 20A+ 20E = 0 に注意する.すると,

xn = (x2 − 20x+ 20)P (x) +Kn x+ Ln

の割り算の商Kn x+ Ln を計算することになる.α = 10 + 4√5, β = 10− 4

√5 とおく.

すると,連立方程式 αn = Kn α+ Ln, βn = Kn β + Ln が得られる.これを解くと,

Kn =αn − βn

α− β, Ln =

−β · αn + α · βn

α− β

したがって,

An = KnA+ LnE

=αn

α− β(A− β E)− βn

α− β(A− αE)

=(10 + 4

√5)n

8√5

(9 + 4

√5 −1

1 −9 + 4√5

)− (10− 4

√5)n

8√5

(9− 4

√5 −1

1 −9− 4√5

)続けて

exp(tA)

=exp(10 + 4

√5)t

8√5

(9 + 4

√5 −1

1 −9 + 4√5

)− exp(10− 4

√5)t

8√5

(9− 4

√5 −1

1 −9− 4√5

)(xy

)=

exp(10 + 4√5)t

8√5

((9 + 4

√5)C1 − C2

C1 − (9− 4√5)C2

)− exp(10− 4

√5)t

8√5

((9− 4

√5)C1 − C2

C1 − (9 + 4√5)C2

)さらに初期条件を入れると

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220 京都大学 澤野嘉宏

(xy

)=

exp(10 + 4√5)t

8√5

(22 + 12

√5

−42 + 20√5

)− exp(10− 4

√5)t

8√5

(22− 12

√5

−42− 20√5

)=

exp(10 + 4√5)t

4√5

(11 + 6

√5

−21 + 10√5

)− exp(10− 4

√5)t

4√5

(11− 6

√5

−21− 10√5

)

(5) 対角行列の性質(λ1 00 λ2

)(ρ1 00 ρ2

)=

(λ1ρ1 00 λ2ρ2

)を用いよ.An =

(3n 00 7n

)(6) A =

(4n 00 4n

)

問題 15.11.

(294

)が特別解である.一方で,

(2 −11 4

)n

=

(3E +

(−1 −11 1

))n

= 3nE + n 3n−1

(−1 −11 1

)

だから,exp

(t

(2 −11 4

))= e3tE + t e3t

(−1 −11 1

)となる.よって,重ね合わせの原理より,(

xy

)= e3t

(C1

C2

)+ t e3t

(−C1 − C2

C1 + C2

)+

(294

).

問題 15.12. A =

−7 1 −615 −1 451 0 8

とおく.A の特性多項式は λ3 − λ である.したがって,

λ = 0, 1,−1が固有値である.それぞれの固有ベクトルは

λ = 0 :

8−5−1

, λ = 1 :

7−5−1

, λ = −1 :

92−1

である.したがって,P =

8 7 9−5 −5 2−1 −1 −1

とおくと,

AP = P

0 0 00 1 00 0 −1

 つまり  A = P

0 0 00 1 00 0 −1

P−1.

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微分方程式演習 221

したがって,exp(tA) = P

1 0 00 et 00 0 e−t

P−1 である.これより,微分方程式の一般解は

xyz

= exp(tA)

C1

C2

C3

= P

1 0 00 et 00 0 e−t

P−1

C1

C2

C3

= P

1 0 00 et 00 0 e−t

C1

C2

C3

(ただし,定数を取り替えている)=

8 7 9−5 −5 2−1 −1 −1

C1

C2 et

C3 e−t

=

8C1 + 7C2 et + 9C3 e

−t

−5C1 − 5C2et + 2C3 e

−t

−C1 − C2 et − C3 e

−t

問題 15.13.

−(−1)n(−1 + n) −(−1)n (−1 + 2n + n) −(−2)n + (−1)n(−1)nn (−1)n (2n + n) (−2)n − (−1)n−(−1)nn −(−1)nn (−1)n

問題 15.14. M =

3 1 −11 3 −13 3 −1

問題 15.15.dy

dt= |x| より,yは単調増加である.さらに,x(0) = 2より,少なくとも 0 < t < t0

で x(t) > 1となるような t0が存在する.したがって,y(0) = 0より,y(t) > 0, t > 0 である.こ

れより,dx

dt= −|y| = y だから,xは単調減少である.

y(t) ≥ y(t0) > 0, t ≥ t0

より,

x(t) = x(t0) +

∫ t

t0

x′(s) ds = x(t0)−∫ t

t0

y(s) ds ≤ x(t0)− (t− t0)y(t0)

が得られる.したがって,xは符号を変える.

したがって,xは狭義単調減少だから,x(t1) = 0となる t1 > 0が唯一存在する.したがって,dx

dt= −y

dy

dt= x

(0 < t < t1),

dx

dt= −y

dy

dt= −x

(t1 < t <∞)

を満たしていないといけない.実際に計算すると,(xy

)=

(2 cos t2 sin t

) (0 < t <

π

2

),

(exp

(−t+ π

2

)− exp

(t− π

2

)exp

(−t+ π

2

)+ exp

(t− π

2

)) (π2< t <∞

)となる.

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222 京都大学 澤野嘉宏

次にこの方程式の解の一意性を証明しよう.(X,Y )が解だとして,これがdX

dt= −Y

dY

dt= X

(0 < t < t2),

dX

dt= −Y

dY

dt= −X

(t2 < t <∞)

なる条件を満たしていないといけない.

M := t > 0 : X(t) = 2 cos t, Y (t) = 2 sin tと定める.解の一意性より (0, t2) ⊂M に注意する.x(t2) = 0でないといけないから,

2 cos t2 = limε↓0

2 cos(t2 − ε) = limε↓0

x(t2 − ε) = x(t2) = 0

したがって,t2 =

π

2+ πk, k = 0, 1, 2, · · ·

が得られる.t2 =π

2でないと矛盾が起きるから,(X,Y ) = (x, y)が得られる.

問題 15.16.

(1)

(x(t)y(t)

)=

(e−4t + 2e5t −e−4t + e5t

−2e−4t + 2e5t 2e−4t + e5t

)(10

)=

(e−4t + 2e5t

−2e−4t + 2e5t

)となる.

(2)

x(t)y(t)z(t)

= e2t

1 tt2

20 1 t0 0 1

abc

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微分方程式演習 223

問題 15.17. C1, C2 は任意定数とする.x = C1 et + C2 e

−t, y = C1 et − C2 e

−t.

問題 15.18. C1, C2 は任意定数とする.x = C1 cos t+ C2 sin t, y = −C1 sin t− C2 cos t.

問題 15.19. C1, C2 は任意定数とする.x = C1 et + C2 e

−t, y = −C1 et + C2 e

−t.

問題 15.20. C1, C2 は任意定数とする.x = C1 e2t + C2 e

−2t, y = −C1 e2t + C2 e

−2t.

問題 15.21. C1, C2は任意定数とする.x = C1 cos 2t+C2 sin 2t, y = −2C1 sin 2t+2C2 cos t.

問題 15.22. C1, C2 は任意定数とする.x = C1 e6t + C2 e

−6t, y = C1 e6t − C2 e

−6t.

問題 15.23. A =

(1 13 −1

)とおく.ケーリー・ハミルトンの定理より,A2 − 4E = 0である.

これより割り算 tn = (t2−4)P (t)+α t+β を考える.α =2n − (−2)n

4, β =

2n + (−2)n

2が得られ

る.したがって,An =2n

4(A−2E)+

(−2)n

4(A+2E) =

2n

4

(1 −11 −1

)+(−2)n

4

(3 13 1

).した

がって,exp(tA) =e2t

4

(1 −11 −1

)+e−2t

4

(3 13 1

).これより,D1 = C1−C2, D2 = 3C1+C2

とおいて(yz

)=e2t

4

(1 −11 −1

)(C1

C2

)+e−2t

4

(3 13 1

)(C1

C2

)=e2t

4

(D1

D1

)+e−2t

4

(D2

D2

).

とくに C1 = C2 = 1のときは y = z = e2x である.

問題 15.24. A =

(1 13 −1

)とおく.A = 2E+

(−1 13 −3

)だから,ケーリー・ハミルトンの定理と

二項展開により,An = 2nE+n 2n−1

(−1 13 −3

).したがって,exp(tA) = etE+t et

(−1 13 −3

).

これより(xy

)= et

(C0

C1

)+ t et

(−C0 + C1

3C0 − 3C1

). 初期条件に適合させると

(xy

)= et

(11

).

問題 15.25. それぞれの問題ではじめに出てくる式を第一式,次に出てくる式を第二式と呼ぶことにする.

(1) 第一式の両辺を微分することにより,x′′ = y′ が得られる.これと第二式とあわせると,x′′ = y′ = x が従う.したがって,x′′ − x = 0であるから,x = C1 e

t + C2 e−t である.

再び第一式に戻って y = x′ = C1 et − C2 e

−t が得られる.よって,これまでに得られた計算を整理すると,x = C1 e

t + C2 e−t, y = C1 e

t − C2 e−t.

(2) 第一式より,x = C1 と表せる.第二式にこれを代入すると,y′ = C1 であるから,積分して y = C1 t+ C2 が得られる.よって,x = C1, y = C1 t+ C2.

(3) 第一式より,x = 3C1 e3t と表せる.第二式にこれを代入すると,y′ = 3C1 e

3t であるから,y = C1 e

3t + C2 が得られる.よって,x = 3C1 e3t, y = C1 e

3t + C2.

問題 15.26.

(1) x = C1 e2t + C2 e

−2t,y = C1 e2t − C2 e

−2t

(2) x = C1, y = 2C1 t+ C2

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224 京都大学 澤野嘉宏

(3) x = 4C1 e4t, y = C1 e

4t + C2

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微分方程式演習 225

問題 15.27. x2 + y2が定数であることを証明するためには,tで微分して 0になることを確かめること.

(1) x = 3 cos t− 2 sin t, y = 2 cos t+ 3 sin t

-3 -2 -1 1 2 3

-3

-2

-1

1

2

3

原点中心,半径√13の円,向きは反時計回り

(2) x = 4 cos t− 3 sin t, y = −4 sin t− 3 cos t

-4 -2 2 4

-4

-2

2

4

原点中心,半径 5の円,向きは反時計回り(3) x = − cos t− sin t, y = − sin t+ cos t

-1 -0.5 0.5 1

-1

-0.5

0.5

1

原点中心,半径√2の円,向きは反時計回り

問題 15.28. x2 − y2が定数であることを証明するためには,tで微分して 0になることを確かめること.

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226 京都大学 澤野嘉宏

(1) x =5et + e−t

2, y =

5et − e−t

2

2.5 5 7.5 10 12.5 15 17.5

-10

-5

5

10

15

x2 − y2 = 5の右半分,下から上へ

(2) x =et + 7e−t

2, y =

et − 7e−t

2

5 10 15 20

-15

-10

-5

5

10

x2 − y2 = 7の右半分,下から上へ

問題 15.29.

(1) 真(2) 偽

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微分方程式演習 227

46. 16節

問題 16.1.

(1)

∫ 1

0

log x dx = limε↓0

∫ 1

ε

log x dx = −1

(2)

∫ ∞

0

e−x dx = limR→∞

∫ R

0

e−x dx = 1

(3)

∫ ∞

0

x e−x dx = limR→∞

∫ R

0

x e−x dx = 1

(4)

∫ ∞

1

x−2 dx = limR→∞

∫ R

1

x−2 dx = 1

(5)

∫ 1

0

x−12 dx = lim

ε→0

∫ 1

ε

x−12 dx = 2

(6)

∫ ∞

1

dx

x= lim

R→∞

∫ R

1

dx

x=∞

(7)

∫ ∞

0

e−2x dx = limR→∞

∫ R

0

e−2x dx =1

2

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228 京都大学 澤野嘉宏

問題 16.2.

(1) これは例題 23で n = 2, a = 0のケースで2

s3.

(2) Reは関数の実部を取るという記号である.∫ ∞

0

e−t s cos(a t) dt = Re

(∫ ∞

0

dt

et (s+i a)

)= Re

[−e−t (s+i a)

s+ i a

]∞0

= Re

(1

s+ i a

)=

s

s2 + a2.

(3) Imは関数の実部を取るという記号である.∫ ∞

0

e−t s sin(a t) dt = −Im(∫ ∞

0

dt

et (s+i a)

)= Im

[e−t (s+i a)

s+ i a

]∞0

= Im

(−1

s+ i a

)=

a

s2 + a2.

(4) これは例題 23で n = 1で aを −aで置き換えたケースで 1

(s− a)2.

(5) 2番を生かして考える.

L[ea t cos(b t)](s) =

∫ ∞

0

e−s t+a t cos(b t) dt = L[cos(b t)](s− a) = s− a(s− a)2 + b2

.

(6) 3番を生かして考える.

L[ea t sin(b t)](s) =

∫ ∞

0

e−s t+a t sin(b t) dt = L[sin(b t)](s− a) = b

(s− a)2 + b2

(7) L[f + g](s) = Lf(s) + Lg(s)が成り立つので

L[e−2t + 2 e−5t](s) =1

s+ 2+

2

s+ 5=

3s+ 9

s2 + 7s+ 10

注意:一般には L[f · g](s) = Lf(s)× Lg(s) は不成立である.(4)を解く際に注意せよ.

問題 16.3. 順番にa

s2 + a2,

s

s2 + a2,

1

s− a,1

s2,1

s

問題 16.4. Lf(p) =∫ ∞

0

e−ptf(t) dt,L1(p) = 1

p

問題 16.5. 部分分数に分解して考える.

(1)3s+ 9

s2 + 7s+ 10=

1

s+ 2+

2

s+ 5だから,

L−1

(3s+ 9

s2 + 7s+ 10

)= L−1

(1

s+ 2

)+ L−1

(2

s+ 5

)= e−2t + 2 e−5t.

(2)1

s2 + s=

1

s− 1

s+ 1だから,L−1

(1

s2 + s

)= L−1

(1

s

)− L−1

(1

s+ 1

)= 1− e−t.

問題 16.6.

(1) y′′ − 3y′ + 2y = 0の (両辺の)ラプラス変換を取って L[y′′ − 3y′ + 2y](s) = 0 である.

s2Ly(s)− s y(0)− y′(0)− 3(sLy(s)− y(0)) + 2Ly(s) = 0

これを整理して Ly(s) = s y(0) + y′(0)− 3y(0)

s2 − 3s+ 2=

3s− 8

s2 − 3s+ 2=

5

s− 1− 2

s− 2. これよ

り,y(t) = L−1

(5

s− 1− 2

s− 2

)(t) = 5 et − 2 e2t.

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微分方程式演習 229

(2) y′′ + y = t の両辺のラプラス変換を取って s2Ly(s) + Ly(s) − s y(0) − y′(0) =1

s2.

y(0) = 1, y′(0) = 3を代入して Ly(s) = 1

s2+

s+ 2

s2 + 1. よって,逆ラプラス変換を考えて

y(t) = L−1

(1

s2+

s+ 2

s2 + 1

)= t+ cos t+ 2 sin t.

(3) 左辺のラプラス変換を計算すると

L[y′′ − y′ − 6y](s) = s2L[y](s)− s y(0)− y′(0)− sL[y](s) + y(0)− 6L[y](s)= (s2 − s− 6)L[y](s) + s− 7

になり,右辺のラプラス変換を計算すると

L[3t2 + t− 1

]=

6

s3+

1

s2− 1

s=−s2 + s+ 6

s3

となる.これより,L[y](s) =7− s

s2 − s− 6− 1

s3が得られる.ここでこの式の右辺を部

分分数分解をする.7− s

s2 − s− 6=

A

s− 3+

B

s+ 2. とする.この恒等式より,連立方程式

A+B = −1, 2A−3B = 7が得られる.この連立方程式を解くと,A =4

5, B = −9

5となる.

つまり,L[y](s) = 1

5

(4

s− 3− 9

s+ 2

)− 1

s3.これをもとに戻して y =

4

5e3t− 9

5e−2t− 1

2t2.

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230 京都大学 澤野嘉宏

47. 17節

問題 17.1. どちらの場合も曲線を x = a cos t, y = a sin tと表す.

(1)

∫C

x dy − y dx =

∫ 2π

0

a2 cos2 t+ a2 sin2 t dt = 2πa2.

(2)

∫C

x dy − y dxx2 + y2

= 2π.

問題 17.2. I =

∫ 1

−1

(t+ t4) + 4t3(t− t4) dt =∫ 1

−1

5t4 dt = 2.

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微分方程式演習 231

48. 18節

問題 18.1. ex − ey = C

問題 18.2.

(1) x3 + 2x y + y2 = C

(2) ex2

+ x sin y = C(3) (log x)y + x2(log y) = C

問題 18.3. y = a x

問題 18.4.

(1) x2y = C(2) ey cosx = C

問題 18.5.1

4x4 +

1

2x2y2 − 1

2x2 +

1

4y4 +

1

2y2 = C

問題 18.6.

(1) λに関して微分してみよ.

(2)∂f

∂x= − xy2

(x2 + y2)(x2 − y2),∂f

∂y=

x2y

(x2 + y2)(x2 − y2). したがって,

df =∂f

∂xdx+

∂f

∂ydy = − xy2

(x2 + y2)(x2 − y2)dx+

x2y

(x2 + y2)(x2 − y2)dy

である.これを極座標に変換すると

df =− cos θ sin2 θ + cos2 θ sin θ

cos2 θ − sin2 θdθ = − sin θ cos θ

sin θ + cos θdθ.

(3)

∫sin θ cos θ

sin θ + cos θdθ =

1

2

∫ (sin θ + cos θ − 1

sin θ + cos θ

)dθ であるが,∫

1

sin θdθ = log tan

θ

2+ C

であるから,∫sin θ cos θ

sin θ + cos θdθ = − cos θ + sin θ +

1√2log tan

2+π

4

]+ C

となる.したがって,θ = tan−1 y

xでもとに戻して,

f(x, y) = −√2 cos

(tan−1 y

x+π

4

)+

1√2log tan

[1

2

(tan−1 y

x

)+π

4

]+ C

となる.

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232 京都大学 澤野嘉宏

問題 18.7. 周回積分が一定値を取るための必要十分条件は

∂y

(−y

f(x) + f(y)

)= − ∂

∂x

(x

f(x) + f(y)

)である.したがって,

2

f(x) + f(y)− xf ′(x) + yf ′(y)

(f(x) + f(y))2= 0

つまり,2f(x) + 2f(y)− xf ′(x)− yf ′(y) = 0が得られる.これより,2f(x)− xf ′(x) = C が必要条件であるとわかる.この微分方程式を解くと f ∈ C1 であることから

f(x) = Ax2 +B

の形をしていないといけないことになる.もとの関数方程式 2f(x)+2f(y)−xf ′(x)− yf ′(y) = 0に代入して B = 0 が得られる.さらに初期条件に代入して A = 1 が得られる.したがって,f(x) = x2 である.Γは θ ∈ [0, 2π]→ (cos θ, sin θ)によって与えられるとして

α =

∫Γ

1

f(x) + f(y)(x dy − y dx) =

∫ 2π

0

dθ = 2π

が求めるべき一定値である.

問題 18.8. 仮定の式を偏微分してみると,∂f

∂x+∂f

∂y+∂f

∂z= 0, x

∂f

∂x+ y

∂f

∂y+ z

∂f

∂z= α f(x, y, z)

が得られる.X =1

f

∂f

∂x, Y =

1

f

∂f

∂y, Z =

1

f

∂f

∂zとおいて与えられた式を行列で書き直してみると 1 1 1

x y zx2 y2 z2

XYZ

=

23α(x+ y + z)

ここで, 1 1 1

x y zx2 y2 z2

−1

=1

(x− y)(y − z)(z − x)

yz(z − y) y2 − z2 z − yxz(x− z) z2 − x2 x− zxy(y − x) x2 − y2 y − x

となるので,XY

Z

=1

(x− y)(y − z)(z − x)

yz(z − y) y2 − z2 z − yxz(x− z) z2 − x2 x− zxy(y − x) x2 − y2 y − x

23α(x+ y + z)

=

α

3(x− y)(y − z)(z − x)

3(y2 − z2) + 2(x+ y + z)(z − y)3(z2 − x2) + 2(x+ y + z)(x− z)3(x2 − y2) + 2(x+ y + z)(y − x)

=

α

3(x− y)(y − z)(z − x)

(y − z)(−2x+ y + z)(z − x)(x− 2y + z)(x− y)(x+ y − 2z)

.

したがって,

dg =α(−2x+ y + z)

3(x− y)(z − x)dx+

α(x− 2y + z)

3(x− y)(y − z)dy +

α(x+ y − 2z)

3(y − z)(x− z)dz

= −α3

[(1

z − x+

1

y − x

)dx+

(1

x− y+

1

z − y

)dy +

(1

y − z+

1

x− z

)dz

]=α

3d log(x− y)(y − z)(x− z)

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微分方程式演習 233

となるから,f = log g = C ((x− y)(y − z)(x− z))

α3 .

問題 18.9.

(1) x2 + y2 = 1に沿って一周すると積分が 0になるからである.(2)

問題 18.10. (x− y) dx−(x− 1

y

)dy = 0 と変形出来て,

1

2x2−xy+ log |y| = C と求積される.

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234 京都大学 澤野嘉宏

49. 19節

問題 19.1. (i, j), i, j = 1,−1, 0が平衡点である.

(1) (0, 0)の挙動.高次の項を切り捨てると

dx

dt= −y, dy

dt= x

このときの平衡点は不安定である.

-0.1 -0.05 0.05 0.1

-0.1

-0.05

0.05

0.1

(2) (0, 1)の挙動.高次の項を切り捨てると

dx

dt= −2y + 2,

dy

dt= x

このときの平衡点は不安定である.

-0.75 -0.5 -0.25 0.25 0.5 0.75

1.2

1.4

1.6

1.8

2.2

2.4

2.6

(3) (0,−1)の挙動.高次の項を切り捨てると y3 = (y + 1 − 1)3 ≈ 3(y + 1) − 1 = 3y + 2だから,

dx

dt= −2y − 2,

dy

dt= −x

このときの平衡点は安定である.(4) (1, 0)の挙動.高次の項を切り捨てると x3 = (x− 1 + 1)3 ≈ 3x− 2だから,

dx

dt= y,

dy

dt= 2− 2x

このときの平衡点は不安定である.(5) (1, 1)の挙動.高次の項を切り捨てると

dx

dt= 2y − 2,

dy

dt= 2− 2x

このときの平衡点は不安定である.

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微分方程式演習 235

(6) (1,−1)の挙動.高次の項を切り捨てるとdx

dt= −2y − 2,

dy

dt= 2− 2x

このときの平衡点は不安定である.(7) (−1, 0)の挙動.高次の項を切り捨てると

dx

dt= y,

dy

dt= −2x− 2

このときの平衡点は不安定である.(8) (−1, 1)の挙動.高次の項を切り捨てると

dx

dt= 2− 2y,

dy

dt= −2x− 2

このときの平衡点は不安定である.(9) (−1,−1)の挙動.高次の項を切り捨てると

dx

dt= −2y − 2,

dy

dt= −2x− 2

このときの平衡点は不安定である.

問題 19.2.

問題 19.3.

(1) 次の等式に注意する.

x(t) = x0 exp

(−β∫ t

0

v(s) ds

)y(t) = e−γt

[y0 +

∫ t

0

eγsx(s)v(s) ds

]u(t) = exp

(−∫ t

0

(µ+ δy(s)) ds

)·[u0 +

∫ t

0

b

(exp

∫ u

0

(µ+ δy(s)) ds

)du

]v(t) = e−µt

[v0 +

∫ t

0

eµsy(s)u(s) ds

].

これより初めに,x(t), u(t)が正であるとわかる.残りの不等式を示すために場合わけをする.(a) y0 = 0, v0 = 0のとき:このときは,

x(t) ≡ x0, y(t) ≡ v(t) ≡ 0, u(t) ≡ u0e−µt +b

µ− b

µe−µt

だから,問題がない.(b) (y0, v0) = (0, 0)のとき:このとき,少なくともある δ > 0が存在して

y(t), v(t) > 0, 0 < t < δ

が成り立つ.そこで,

T = inft > 0 : y(t)v(t) < 0 <∞と仮定して矛盾を示す.T > δ は明らかである.さらに,y(t), v(t) ≥ 0, t ≤ T となっている.このようになっているので,y(T ) > y0, v(T ) > v0 が出てくる.これは T の定義に矛盾している.

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236 京都大学 澤野嘉宏

(2) 平衡点であることの証明は直接計算なので省略する.平衡点で線形化した方程式は

dx

dt(t) = −αβ v(t)

dy

dt(t) = αβ v(t)− γ y(t)

du

dt(t) = −bδ

µy(t)

dv

dt(t) =

µy(t)− µ v(t)

つまり,

dx

dt(t)

dy

dt(t)

du

dt(t)

dv

dt(t)

=

0 0 0 −αβ0 −γ 0 αβ

0 −bδµ

0 0

0bδ

µ0 −µ

x(t)y(t)u(t)v(t)

.

これの固有多項式を計算する.∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣

t 0 0 αβ0 t+ γ 0 −αβ

0bδ

µt 0

0 −bδµ

0 t+ µ

∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣= t

∣∣∣∣∣∣∣t 0 αβ0 t+ γ −αβ

0 −bδµ

t+ µ

∣∣∣∣∣∣∣ = t2[(t+ γ)(t+ µ)− bαβδ

µ

].

これの固有値がすべて 0以下であるのは R0 < 1のときで,R0 > 1のときは,正の固有値が含まれる.したがって,問題にあるような安定性になる.

(3) x∞ が有限確定であることは,x(t) = x0 exp

(−β∫ t

0

v(s) ds

)で v ≥ 0 より明らかで

ある.(4)

問題 20.1.

問題 20.2.

問題 21.1.

(1)(2) 平衡点は (0, 0)のみ

deg(f, y) =∑

x∈f−1(y)

sign(dfx).

回転数は −2.任意の周期起動において回転数は 1である.これが矛盾を導くことは明らかである.

問題 21.2.

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微分方程式演習 237

(1) (0, 0) と (1,−1) と (−1, 1) が平衡点である.また,V = 3x2 + 3y2 + 1 > 0 である.(Bendixonの定理を具体的に用いて)∫∫

D

(∂f

∂x+∂g

∂y

)dx dy =

∫γ

f dy − g dx

だから,仮に周期解があると仮定しよう.すると,γ : [a, a+T ]→ R2が存在して,系が自励系だから,Jordanの曲線定理によって γ はある C1-領域Dを囲んでいるといえる.向きがわからないので,∫∫

D

(∂f

∂x+∂g

∂y

)dx dy = ±

∫γ

(f(x, y) dy − g(x, y) dx)

としかならないが,右辺は微分方程式によって 0になってしまう.(2)

問題 21.3. DF(0,0) =

(1 1−1 1

)とする.この固有値は 1± iである.R(x, y) = x2+y2 とすると,

d

dtR(x, y) = 2x(x+ y − x(x2 + 2y2)) + 2y(−x+ y − y(x2 + 2y2)) = 2R(1− x2 − 2y2)

となる.D = (x, y) : 0 < x2 + y2 ≤ 3 を考える.

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238 京都大学 澤野嘉宏

50. 22節

問題 22.1.

(1) 問題に書いてあることよりmdv

dt= mg−k v, v(t) = v0 を解くことになる.変数分離形を

mdv

mg − k v= dt

−mk

log(mg − k v) = t+ C

mg − k v = C exp

(−k tm

)初期条件を代入して,C = mg−k v0だから,mg−k v = (mg−k v0) exp

(−k tm

).よっ

て,答はこれを整理して v =mg

k+(v0 −

mg

k

)exp

(−k tm

)(2)

mg

k

問題 22.2. 与えられた微分方程式を解くと,

x = C1 sin

√k

mt+ C2 cos

√k

mt

である.したがって,

T = 2π

√m

k

が周期である.さらに

d

dt

(1

2m

(dx

dt

)2

+1

2k x2

)= m

dx

dt

d2x

dt2+ k

dx

dtx

=dx

dt

(md2x

dt2+ k x

)= 0

であるから,1

2m

(dx

dt

)2

+1

2k x2

が時間によらない保存量であることが証明された.

注意 15.1

2m

(dx

dt

)2

+1

2k x2 が時間によらない保存量であることの証明は具体的に代入して

1

2m

(dx

dt

)2

+1

2k x2

=1

2m

(C1

√k

mcos

√k

mt− C2

√k

msin

√k

mt

)2

+1

2k

(C1 sin

√k

mt+ C2 cos

√k

mt

)2

=1

2k

(C1 cos

√k

mt− C2 sin

√k

mt

)2

+1

2k

(C1 sin

√k

mt+ C2 cos

√k

mt

)2

=1

2k(C1

2 + C22)

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微分方程式演習 239

のように計算してもよい.ただし,保存量の証明においては一般には具体的に代入が困難であったり,不可能であるものもあることを心得よ.

問題 22.3.dT

dt= k(T − T0)

を変数分離法を用いて解く.dT

T − T0= dt

だから,log |T − T0| = k t+ C

したがってT (t) = T = T0 + C exp(k t)

T (0) = 100, T0 = 10, T (1) = 80より

C = 90, exp(k t) =7

9

したがって,

T (t) = T = T0 + 90 exp(k)t = 10 + 90

(7

9

)t

冷めた時間は

20 = 90

(7

9

)t

つまり

t

(log10

7

9

)= log10

(1

9

)で求められる.

log107

9= log10 7− 2 log10 3 = −0.1091

log101

9= −0.9542

だから,t = log9/7 9 = log10 9/(log10 9− log10 7) = 0.9542/0.1091 = 8.8 · · · 分が正解.

問題 22.4. 12分

問題 22.5.

(1) とりあえず一つ式を立てる.−LdIdt = V と C dV

dt = I が得られる.(2)

d2I

dt2=

d

dt

dI

dt=

1

L

dV

dt= − 1

LCI

これより,

I = C1 sin

(t√LC

)+ C2 cos

(t√LC

)したがって,周期は 2π

√LC

問題 22.6. TVRCv = Const

問題 22.7. ˙は時間微分を表す.

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240 京都大学 澤野嘉宏

(1) mx = −k xより,x = A sin

√k

mt+B cos

√k

mt よって,周期 T = 2π

√m/kである.

(2) mx = mg − k xより,x(0) = x′(0) = 0だから,x =mg

k

(1− cos

√k

mt

)

問題 22.8.

(1) y = C1 cos kx+ C2 sin kx

(2) y =A

k2 − ω2sinωx

(3) y =A

k2 − ω2sinωx+ C1 sin kx+ C2 cos kx

(4) y = − A

2ωx cosωx

(5) y = − A

2ωx cosωx+ C1 sin kx+ C2 cos kx

(6) 橋の振動に関して常に方程式 (2)が成立している.kは橋の設計上決まる定数で,ωは外力つまり自然による力である.この事故は不運にも二つの定数が一致もしくは非常に近くなったために振動値が大きくなりすぎて橋がそれに耐えかねて崩壊してしまったと考えられる.

問題 22.9.

(1) C(z) = C1 +C2 − C1

z2 − z1(z − z1).

(2) C(z) = 3 + 2z

0.2 0.4 0.6 0.8 1

3.5

4

4.5

5

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微分方程式演習 241

51. 23節

問題 23.1. a = 1

問題 23.2.

(1) C(z) =C0

2

exp

(√k

Dz

)+ exp

(−√k

Dz

)(2) C(z) = cosh z

0.2 0.4 0.6 0.8 1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

問題 23.3.

(1) N(t) = exp(−λt)だから,1

2= exp(−5568λ) したがって,5568λ ≈ 0.7 となる.つまり,

(a)が正解.(2) 大体初めの 1/8になっている.したがって,半減期の 3倍なので,(b)が正解.

問題 23.4. a = 1

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242 京都大学 澤野嘉宏

52. 24節

問題 24.1.

問題 24.2.

問題 24.3. 仮定 0 < y(x) <a

b, −∞ < x < ∞ を用いて変数分離形の形 dy

y(a− b y)= dx に変

形する.aを両辺にかけてa b dy

b y(a− b y)= a dx. よって

b dy

b y+

b dy

(a− b y)= a dx. これを積分し

て log |y| − log |a − b y| = a x + C である.整理するとy

a− b y= C ea x が得られる.したがっ

てa

y− b = C e−a x. である.仮定 0 < y(x) <

a

b, −∞ < x < ∞ を用いてこれを整理すると

y =a

b+ C e−axで, lim

x→∞y(x) =

a

bが得られる.

問題 24.4. 微分方程式N ′ = kN を解く.変数分離法,特性方程式のどちらかが使える.1010 =103 exp(k t) で tを求めればよいが,

exp(k t) = exp(k)t = exp(log 2)t = 2t

より,2t = 107 となる.210 = 1024より,実際には

220 = 10048576≒ 106

したがって,t = 23時間が大体の正解となる.選択肢で一番近いのは b.つまり N = N0 exp ktで潜伏期は約一日である.

問題 24.5.

(1) y1 = y2 が予想される.y1 = y2 と仮定すると y1 = y2 = 10e−a1 t が得られる.したがって,逆に y1 = y2 = 10e−a1 t と定めると,確かに条件に適う.よって,一意性定理からこの関数の対が答えである.(2)で a1 = a2 として得られる答えでもある.

(2) 方法1:二通りの解法がある.

y′′1 − a1a2 y1 = 0

を解くと特性方程式 λ2 − a1a2 = 0より,

y1 = C1 exp(√a1a2t) + C2 exp(−

√a1a2t)

y2 = −y′1

a2= −C1

√a1a2

exp(√a1a2t) + C2

√a1a2

exp(−√a1a2t)

初期条件に適合するように C1, C2 を決めると

C1 + C2 = 10, C1 − C2 = −10√a2a1

これより,

C1 = 5

(1−

√a2a1

), C2 = 5

(1 +

√a2a1

)

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微分方程式演習 243

したがって,

y1 = 5

(1−

√a2a1

)exp(√a1a2t) + 5

(1 +

√a2a1

)exp(−

√a1a2t)

= 10 cosh(t√a1a2)− 10a2

sinh(t√a1a2)√

a1a2

y2 = 5

(1−

√a2a1

)exp(√a1a2t) + 5

(1 +

√a2a1

)exp(−

√a1a2t)

= 10 cosh(t√a1a2)− 10a1

sinh(t√a1a2)√

a1a2

注意:coshx =ex + e−x

2, sinhx =

ex − e−x

2

方法2:A =

(0 −a2−a1 0

)の n乗 An を計算する.

tn = (t2 − a1a2)P (t) + α t+ β

と割り算すると

α =(√a1a2)

n − (−√a1a2)n

2√a1a2

, β =(√a1a2)

n + (−√a1a2)n

2

したがって,

An =(√a1a2)

n − (−√a1a2)n

2√a1a2

(0 −a2−a1 0

)+

(√a1a2)

n + (−√a1a2)n

2E

=(√a1a2)

n

2

( √a1a2 −a2−a1

√a1a2

)+

(−√a1a2)n

2

( √a1a2 a2

a1√a1a2

)exp(tA)

=exp(√a1a2t)

2

( √a1a2 −a2−a1

√a1a2

)+

exp(−√a1a2t)2

( √a1a2 a2

a1√a1a2

)これより,(y1y2

)=e√a1a2t

2

( √a1a2 −a2−a1

√a1a2

)(1010

)+e−

√a1a2t

2

( √a1a2 a2

a1√a1a2

)(1010

)したがって,

y1 = 5

(1−

√a2a1

)exp(√a1a2t) + 5

(1 +

√a2a1

)exp(−

√a1a2t)

= 10 cosh(t√a1a2)− 10a2

sinh(t√a1a2)√

a1a2

y2 = 5

(1−

√a2a1

)exp(√a1a2t) + 5

(1 +

√a2a1

)exp(−

√a1a2t)

= 10 cosh(t√a1a2)− 10a1

sinh(t√a1a2)√

a1a2

(3) a1y12 − a2y22 を tで微分する.すると,

d

dta1y1(t)

2 − a2y2(t)2 = 2a1y1(t)y′1(t)− 2a2y2(t)y

′2(t)

= −2a1a2y1(t)y2(t) + 2a1a2y1(t)y2(t) = 0

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244 京都大学 澤野嘉宏

だから,a1y1(t)2 − a2y2(t)2 は時刻によらない.(4) 3で得られたことを具体的に式で書いてみる.

a1y1(t)2 − a2y2(t)2 = a1y1(0)

2 − a2y2(0)2

これより,a1 = 2a2, y1(0) = y2(0) = 10を代入して

a1y1(t)2 − a2y2(t)2 = 100a2

が得られる.時刻 tで y2(t) = 0つまり2組が全滅するとすると

y1(t) =

√100a2a1

=√50

したがって y1(t) = 5√2が得られるから,約 70点

(5) 3で得られたことを再び具体的に式で書いてみる.

a1y1(t)2 − a2y2(t)2 = a1y1(0)

2 − a2y2(0)2

今度は,a1 = a2, y1(0) = 10, y2(0) = 9を代入して

a1y1(t)2 − a1y2(t)2 = 19a1

が得られる.時刻 tで y2(t) = 0つまり2組が全滅するとすると

y1(t) =

√19a1a1

=√19 = 4.3

したがって,約 40点

問題 24.6. log2 10 ≈ 3.3倍.

問題 24.7.

(1) p(t, x) = eλtq(x)が解であるから,

(λq(x) + q′(x) + µ(x)q(x))eλt = 0.

したがって,任意の λ ∈ Cに対して

q(x) = exp

(−∫ x

0

λ+ µ(t) dt

)とおけば,

p(t, x) = eλtq(x) = exp

(λ(t− x)−

∫ x

0

µ(t) dt

)は微分方程式の解が得られるから,

p(t, 0) =

∫ a

0

m(x)p(t, x) dx

を調べればよい.これは,

exp(λt) =

∫ a

0

m(x) exp

(λ(t− x)−

∫ x

0

µ(t) dt

)dx

で解が与えられる.exp(λt)で両辺をわればわかるように,この条件は

1 =

∫ a

0

m(x) exp

(−λx−

∫ x

0

µ(t) dt

)dx

以上より∑=

λ ∈ C : 1 =

∫ a

0

m(x) exp

(−λx−

∫ x

0

µ(t) dt

)dx

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微分方程式演習 245

となる.

(2) λ ∈ Rの関数 φ(λ) =

∫ a

0

m(x) exp

(−λx−

∫ x

0

µ(t) dt

)dx は連続減少関数で

limλ→−∞

φ(λ) =∞, limλ→∞

φ(λ) = 0

であるから,中間値の定理より,∑∩Rは一点集合であるとわかる.

(3)(4)

問題 24.8.

(1) 0 = a x− b x y0 = −c y + d x y を解くと

(0, 0),( cd,a

b

)(2) A =

(fx(x, y) fy(x, y)gx(x, y) gy(x, y)

)=

(a− by −bxdy −c+ dx

)を平衡点でみる.

(a) (0, 0) :

(a 00 −c

)この行列の固有値は a,−cだから,これは鞍点である.

(b) (c/d, a/b) :

(0 −bc/d

ad/b 0

).この行列の固有値は±

√acだから,これは渦点である.

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246 京都大学 澤野嘉宏

53. 25節

問題 25.1.

(1) Y (t) = Y0 ent.

(2) D(t) =Y0a

n(ent − 1) +D0.

(3)in

aβ> 1.

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微分方程式演習 247

54. 26節

問題 26.1.

(1) x = Ru+K exp

(− 1

C R

).

(2) Ru(3) 2倍

問題 26.2.

A = (x, y) : x′ > 0, y′ < 0, B = (x, y) : x′ < 0, y′ < 0, C = (x, y) : x′ < 0, y′ > 0, D = (x, y) : x′ > 0, y′ > 0とおく.

(1) (x(t), y(t))が解であるとすると,(−x(t),−y(t))が解であるからである.(2) (x(t), y(t))が 0 ≤ t ≤ t0 で定義されていて,t0 で初めて y軸に戻るとする.二つの曲線

t 7→ (−x(t),−y(t)), (x(t+ t0), y(t+ t0))

は (0, f(c))からスタートしていて,同じ微分方程式を満たしている.解の一意性を仮定しているので x(t + t0) = −x(t), y(t + t0) = −y(t) となる.したがって,x(t + 2t0) =−x(t+ t0) = x(t), y(t+ 2t0) = −y(t+ t0) = y(t) が得られる.つまり,x, yは 2t0 周期である.

(3) 省略(4) 省略(5) (2),(4)より明らかである.

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248 京都大学 澤野嘉宏

55. 27節

問題 27.1.

(1) ×(2) (3) ×(4) ×

問題 27.2. tの関数 A,B,C を A = B = C = 25e3000t で定める.

709 + 814 + 1477 = 3000, 1607− 300 + 1693 = 3000, 1 + 2987 + 12 = 3000

だから A′ = 709A+ 814B + 1477C

B′ = 1607A− 300B + 1693C

C ′ = A+ 2987B + 12C

を満たしている.A(0) = B(0) = C(0) = 25だから,(x, y, z)と (A,B,C)はまったく同じ微分方程式を満たしている.解の一意性より,A = x,B = y, C = zとなる.

問題 27.3.

(1) 偽:a = 0, b = π2 として y = sinxを考えよ.【そのほかの解法】解の表示としては

y = C1 eαx + C2 e

βx

y = C1 eαx + C2 x e

αx

y = C1 eαx sinβx+ C2 e

αx cosβx

の 3つがある.問題は y(0) = y(1) = 0のとき,C1 = C2 = 0が言えるかどうかである.方程式 y(0) = y(1) = 0を割り算して,必要なら文字を置き換えて 3つの場合はそれぞれ

C1 eγ = 0

C1 + C2 = 0

C1 = 0

C1 + C2 = 0

C2 = 0

C1 sinβ = 0

の場合に帰着する.この中で唯一C1 = C2 = 0とならない可能性は最後の場合で,sinβ = 0ならば確かに,C1は 0でない.したがって,必ず y = 0つまり C1 = C2 = 0となるわけではない.

(2) 真:x = 0で定義されていないから,

y(x) =

α+ log x x > 0β + log(−x) x < 0

は y′ =1

x, x = 0を満たす.y(1)を与えると,α = y(1) が決まるが,β は決まらない.

たとえば,y(1) = 1, y′(x) =1

xを満たす yとしては,少なくとも次の 2つがある.

y1(x) =

1 + log x, x > 04 + log(−x), x < 0

y2(x) =

1 + log x, x > 02 + log(−x), x < 0

を考えよ.

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微分方程式演習 249

問題 27.4. 一意的ではない:x(t) ≡ 0, x(t) =1

9max(t, 0)3 はどちらも問題の方程式を満たして

いる.

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250 京都大学 澤野嘉宏

問題 27.5.

(1) 帰納法より明らかである.(2) lim

n→∞yn(x) = ex.

(3) y(x) = ex.

問題 27.6. 折れ線の角を(k x0n, ak

)で表す.すると,

ak+1 = ak + ak

((k + 1)x0

n− k x0

n

)= ak

(n+ x0n

)が得られる.したがって,fn(x0) = an =

(n+ x0n

)n

が得られる.

limn→∞

fn(x0) = limn→∞

(n+ x0n

)n

= exp(x0)

は明らかである.

問題 27.7. (1) 仮に t > 0で定められた二つの解 x, yがあったとする.すると,

tdx

dt= x2 − 1, t

dy

dt= y2 − 1

より,d(x− y)

dt=

x+ y

t(x − y) が得られる.いま,z(t) =

x(t) + y(t)

tと定めると,

d(x− y)dt

= z(x− y) であるから,x(t)− y(t) = C

∫ t

t0

z(s) ds, t > 0 を満たす.t = t0で

の値を代入して C = 0が得られる.したがって,これを代入して x(t) = y(t), t > 0である.さらに,もともとの微分方程式の解は

x− 1

x+ 1=x(t0)− 1

x(t0) + 1t2.

つまり,(x− 1)(x(t0) + 1) = (x(t0)− 1)(x+ 1)t2 である.以上より,解は一意的に存在する.

(2) いま,x : R→ Rで (x− 1)(x(t0) + 1) = (x(t0)− 1)(x+1)t2 を満たす t > 0で定義されている関数が見つかったとして,lim

t↓0(x(t)− 1)(x(t0) + 1) = 0 が得られる.したがって,

limt↓0

x(t) = 1もしくは,x(t0) = −1

を満たしている.いずれにせよ,

limt↓0

x(t) = ±1つまり x(t) = ±1, t > 0

が得られる.t < 0に対しても同様なことがいえるので,t = 0で連続になるようにするためには x ≡ 1,−1となる.

問題 27.8. 次の漸化式によって関数列 fn∞n=1 を定める.

fn+1(t) =

∫ t

0

s fn(s) ds+ t2 − 1

4t4, fn(0) = 0.

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微分方程式演習 251

しばらく,f1, f2, · · · を計算してみる.

f1(t) = t2 − 1

4t4, f2(t) =

1

4t4 − 1

24t6 + t2 − 1

4t4 = t2 − 1

24t4, f3(t) = t2 − 1

144t6, · · ·

となっている.そこで,

(55.1) fn(t) = t2 − 1

2nn!t2n

と予想してみる.n = 1, 2 のときは少なくとも予想 (55.1) は正しい.n = k のときに fk(t) =

t2 − 1

2kk!t2k だとすると,

fk+1(t) =1

4t4 − 1

2k+1(k + 1)!t2k+2 + t2 − 1

4t4 = t2 − 1

2k+1(k + 1)!t2k+2

だから,t = kのときも予想 (55.1)は正しい.したがって,f(t) = limn→∞

fn(t) = t2 が解であると

見当がつくが,実際にこれが解であることは代入すれば明らかである.

問題 27.9.

(1) x(t) ≡ et

(2) x(t) = − 1

t+ C, t = −C

(3) x(t) = Arc tan(t+ C).

問題 27.10.

(1) y(x) ≤ 0とすると,中間値の定理より y(x0) = 0となる x0 が存在するが,この x0 に対する微分方程式を具体的に書き下すと

0 = y(x0)y′′(x0) = 1 + y′(x0)

2 ≥ 1

となるから矛盾である.したがって,y(x) > 0となる.(2) 必要ならば,y(x)の代わりに,y(−x)を考えることで,c = y′(0) ≥ 0としてしばらく考

える.y′′ =1 + (y′)2

y> 0であるから,y′(x) > 0が x ≥ 0で得られる.

次のように変形する.y′y′′

1 + (y′)2=y′

y

であるから,xに関して積分して log(1 + (y′)2) = log y +D である.Dは任意定数である.初期条件に適合するようにDを決めておくとD = log(1 + c2) であるから,整理すると 1 + (y′)2 = (1 + c2)y となる.したがって,x ≥ 0で y′ =

√(1 + c2)y − 1 となる.

これを積分して√(1 + c2)y − 1 =

1 + c2

2x+D′ である.x = 0を代入して定数を決める

とD′ = cであるから,

y =1

1 + c2

[1 +

(1 + c2

2x+ c

)2].

ここで,もちろん (1 + c2)y(x) − 1 > 0 ならすべての解はこの式で与えられるはずだが,これは y(x) の式をみてもわかるように矛盾である.そこで,x0 = infx ∈ R :

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252 京都大学 澤野嘉宏

(1 + c2)y(x)− 1 > 0 とおくと,y′′ = 1 + c2

2> 0であるから,x0の付近で y′は符号を

変える.したがって,x ≤ x0 で y′ = −√(1 + c2)y − 1 となるから,すべての解は

y =1

1 + c2

[1 +

(1 + c2

2x+ c

)2].

で与えられる.c ≤ 0の時には先ほどの符号を変換する方法で c ≥ 0のときに帰着させると同じ式で与えられるとわかる.

問題 27.11.

(1) x1(t) =

∫ t

0

2s ds = t2. x2(t) =

∫ t

0

2s(1 + s2) ds = t2 +1

2t2. したがって,一般の nにつ

いて xn(t) =

n∑j=1

t2j

(2j)!ができるが,数学的帰納法で証明できる.以上より,テーラー展

開の公式を思い出せば xn(t)→ exp(t2)− 1が証明された.

(2) x1(t) = 1 +

∫ t

0

s2 + 1 ds = 1 +1

3t3 + t,

x2(t) = 1 +

∫ t

0

s2 +

(1 +

1

3s3 + s

)2

ds

= 1 +

∫ t

0

1

9s6 + 2s2 + 1 +

2

3s3 + 2s+

2

3s4 ds

= 1 +1

63t7 +

2

3t3 + t+

1

6t4 + t2 +

2

15t5.

(3) x1(t) =

∫ t

0

es ds = et − 1

x2(t) =

∫ t

0

es + (es − 1)2 ds =1

2e2t − et + 1

2+ t

x3(t) =

∫ t

0

es +

(1

2e2s − es + s

)2

ds

=1

48

(−143− 16e3t + 3e4t + 48et(3− 2t) + 16t3 + 12e2t(1 + 2t)

)

問題 27.12. いずれの問題も指定された区間での解を構成して解の存在定理より端点を超えて接続できるように拡張する.はどの問題でも定理を使えばできるから,を具体的にやる.

(1) xn を次のように定める.

x0(t) ≡ 0, xn(t) ≡∫ t

0

(xn−1(s)2 + cos(s2)) ds.

Mn = sup|t|≤< 1

2

|xn(t)|とすれば,Mn+1 ≤1

2Mn

2 +

∫ 12

0

cos(s2) ds より,Mn ≤ K が帰納

的にわかる.ここで,K は 2次方程式K =1

2K2 +

∫ 12

0

cos(s2) ds, の解のうち,小さい

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微分方程式演習 253

ほうである.簡単な計算により,0 < K <

∫ 12

0

cos(s2) ds がわかる.また,

sup|t|≤ 1

2

|xn(t)− xn+1(t)| ≤ K sup|t|≤ 1

2

|xn−1(t)− xn(t)|

となる.この不等式より xn∞n=1 が I 上で一様収束することは明らかである.さらに,このことがわかると漸化式において極限移行することで,極限関数が解であることがわかる.以下の問題においてすべてこのことは共通であるから省略する.

(2) はじめに与えられた区間で,|xn(t)| ≤ 1が成り立つことが示せる.また,

sup|t|≤ 1

3

|xn(t)− xn+1(t)| ≤ K sup|t|≤ 1

3

|xn−1(t)− xn(t)|, K =1

3+ 2

∫ 13

0

cos(s2) ds < 1

がわかる.(3) sup

t∈I|xn(t)| =Mnとおくと,Mn+1 ≤ 2−

73+2−

23Mn

2が成り立つ.方程式 θ = 2−73+2−

23 θ2

の解のうち,小さいほうをKとすると,213 = 1.259 · · · より,与えられた区間で,|xn(t)| ≤

K < 213 が成り立つことが示せる.また,

sup|t|≤ 1

3

|xn(t)− xn+1(t)| ≤ 213K sup

|t|≤ 13

|xn−1(t)− xn(t)|

がわかる.

(4) supt∈I|xn(t)| = Mn とおくと,Mn+1 ≤

∫ 12

0

e−s2 ds + 2−1Mn2 が成り立つ.方程式 K =∫ 1

2

0

e−s2 ds+2−1K2 の解のうち,小さいほうをKとすると,与えられた区間で,|xn(t)| ≤

K < 1が成り立つことが示せる.あとは以下同様.

(5) K = aK2+

∫ a

0

exp(t2) dtの小さいほうの解をK0とすると,L = 2aK0の値は 1を超えな

い.実際に,L = L2+2a

∫ a

0

exp(t2) dtであるが,2a∫ a

0

exp(t2) dt < a2(exp(a2)−1) < 1

である.最後の不等号を導くのに exp(a2)− 1 < 2a2を用いた.以下は,他と同じである.(6) supx∈I |xn(t)| < θ < 1となる θを見つける.

問題 27.13.

(1) x = y′ とする.

φ(y) =

∫ y

0

a(v) dv, H(x, y) =x2

2+ φ(y)

とする.dx

dt= −∂H

∂y,dy

dt=∂H

∂x

φ(y)は偶関数で,y > 0で単調増加である.

A = (x, y) : x > 0, y > 0, B = (x, y) : x < 0, y > 0とする.(x, y) ∈ Aのとき,

dx

dt= −a(y) < 0,

dy

dt= x > 0

となる.x(t)は単調減少で,y(t)は単調増加である.(x(0), y(0)) ∈ Aゆえ,

dx

dt= −a(y) < −a(y0) = −1

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254 京都大学 澤野嘉宏

よって,少なくとも t = 1までに y軸に交わる.従って,0 < t1 ≤ 1であって (x(t1), y(t1)) = (0, ∗)となる.

dx

dt= −a(y(t1)) < −a(y0)

より,ある t2 > t1 が存在して,(x(t2), y(t2)) ∈ B となる.このとき,dx

dt< 0,

dy

dt< 0

となる.ここで,dy

dt= x ≤ x(t2) < 0, t > t2

となるから,

t2 −y(t2)

x(t2)

より前には x軸に交わる.(2) まず,

H(x(0), y(0)) =1

2+ φ(1)

であり,任意の t > 0に対して

H(x(t), y(t)) =1

2+ φ(1)

を満たす.(1)と同じく x < 0, y = 0を満たす時刻が (1)の時刻より後にもう一つある.この点は (1)で求めた点と同一である.

(x(t), y(t))が解であるとすると,(−x(−t), y(−t)), (−x(t),−y(t)) も同じ方程式の解となる.

問題 27.14.

(1)(2)(3)

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微分方程式演習 255

問題 27.15. sin, cosは次の連立微分方程式の解X,Y にそれぞれ対応する.

X ′ = Y, Y ′ = −X, X(0) = 0, Y (0) = 1

sin, cosを用いて考えると,うっかり加法定理を使ってしまいそうになるからここでは,

X(α+ β) = X(α)Y (β) + Y (α)X(β)

Y (α+ β) = Y (α)Y (β)−X(α)X(β)

を証明することにする.β を実数として

Z(t) = X(t+ β)−X(t)Y (β)− Y (t)X(β)

W (t) = Y (t+ β)− Y (t)Y (β) +X(t)X(β)

と定める.

微分してみると,

Z ′(t) = X ′(t+ β)−X ′(t)Y (β)− Y ′(t)X(β)

= Y (t+ β)− Y (t)Y (β) +X(t)X(β)

=W (t)

W ′(t) = Y ′(t+ β)− Y ′(t)Y (β) +X ′(t)X(β)

= −X(t+ β) +X(t)Y (β) + Y (t)X(β)

= −Z(t)

ここで,から次の式へ移るのに,sin, cosの性質を用いずに X ′ = Y, Y ′ = −X だけを用いた.さらに,

Z(0) = X(β)−X(0)Y (β)− Y (0)X(β) = X(β)− 0 · Y (β)− 1 ·X(β) = 0

W (0) = Y (β)− Y (0)Y (β) +X(0)X(β) = Y (β)− 1 · Y (β) + 0 ·X(β) = 0

である.

したがって,Z ′(t) =W (t), W ′(t) = −Z(t), Z(0) =W (0) = 0が得られた.z(t) ≡ 0, w(t) ≡ 0とすると同じく z(0) = 0, w(0) = 0 が得られるので,問題に書いてある定理より,Z(t) ≡ z(t) ≡0, W (t) ≡ w(t) ≡ 0 が得られる.よって,加法定理が証明された.

問題 27.16.

(1) y = Aβeαx − αeβx

β − α+B

eαx − eβx

α− β(2) y = A(eαx − αxeαx) +Bxeαx

問題 27.17.

(1) (a) 直接計算していけばよい.(b) (κ1, τ1)と (κ2, τ2)が同じ形の微分方程式を満たしているから,κ1 = κ2, τ1 = τ2 である.

(2) (a) θ = 0の時は正しい,左辺を θ微分すると 0になるからほかの θでも正しい.(b) 曲線の長さの公式を用いて計算する.答えは θになる.

問題 27.18.

(1) y′ = y, y(0) = 1の解 y(x)を以ってして ex と定める.

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256 京都大学 澤野嘉宏

(2) 満たしている微分方程式と初期条件が完全に一致する.(3) もし,f(x) ≤ 0となる xが存在すると中間値の定理より,f(x0) = 0となる x0が存在する.したがって,f(x) = 0が解になってしまい,f(0) = 1と矛盾する.

問題 27.19. y′ = y, y(0) = 1の解 y(x)の y(π)の値.

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微分方程式演習 257

問題 27.20. 次の量を考える.

exp

(−∫ t

0

φ(s) ds

)η(t)− η(0) =

∫ t

0

[exp

(−∫ u

0

φ(s) ds

)η(u)

]′du.

積の微分を用いてさらに計算していくと,

exp

(−∫ t

0

φ(s) ds

)η(t)− η(0) =

∫ t

0

exp

(−∫ u

0

φ(s) ds

)(η′(u)− φ(u)η(u)) du

=

∫ t

0

exp

(−∫ u

0

φ(s) ds

)ψ(u) du

≤∫ t

0

ψ(u) du.

これを整理すれば,問題の不等式が得られる.

問題 27.21. C2 = 0のときは,ξ(t) = 0が得られることになるが,実際にそれを検証してみる.このときは,積分を繰り返して

(55.2) ξ(t) ≤ Cn1

(n− 1)!

∫ t

0

(t− s)n−1ξ(s) ds

が得られるので,これを実際に帰納法で証明する.n = 1のとき,

ξ(t) ≤ C1

∫ t

0

ξ(s) ds =Cn

1

(n− 1)!

∫ t

0

(t− s)n−1ξ(s) ds

だから,確かに (55.2)は正しい.したがって,

ξ(t) ≤ Cn1

(n− 1)!

∫ t

0

(t− s)n−1ξ(s) ds

が成り立つとすると,ξ(t) ≤ C1

∫ t

0

ξ(s) ds だから,∫ t

0

(t− s)n−1ξ(s) ds ≤ C1

∫ t

0

(t− s)n−1

(∫ s

0

ξ(u) du

)ds = C1

∫ t

0

(∫ s

0

(t− s)n−1ξ(u) du

)ds.

積分順序を交換して∫ t

0

(∫ s

0

(t− s)n−1ξ(u) du

)ds =

∫ t

0

(∫ t

u

(t− s)n−1ξ(u) ds

)dt =

1

n

∫ t

0

(t− u)nξ(u) du.

これを代入すれば,

ξ(t) ≤ Cn+11

n!

∫ t

0

(t− s)nξ(s) ds

が得られる.n→∞として ξ(t) ≤ 0が得られる.

C2 = 0の場合に移る.このときは,ζ(t) = C2 eC1 t(1+C1 t)とおくと,ζ(t) = C1

∫ t

0

ζ(s) ds+C2

であるから,

η(t)− ζ(t) ≤ C1

∫ t

0

η(s)− ζ(s) ds.

C2 = 0の場合を考えていることになるから,η(t) ≤ ζ(t)が得られる.

問題 27.22.

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258 京都大学 澤野嘉宏

(1) η(t) = φ(t)− b0 + b1 (t− t0)− a∫ t

t0

φ(s) ds とおいたときに,

η(t) ≤∫ t

t0

η(s) ds

が成り立つことを確かめよ.(2) (1)の対称移動を考えればよい.

問題 27.23. どの問題も f ′′(t) + k(t)f(t) = (x′(t) + x(t)2 + k(t)) exp

(∫ t

τ

x(s) ds

)より明らか

である.

問題 27.24.d

dx

[exp

(−∫ x

1

φ(t) dt

)f(x)

]= exp

(−∫ x

1

φ(t) dt

)(f ′(x)−φ(x)f(x)) ≤ 0 であ

るから,

(55.3) exp

(−∫ x

1

φ(t) dt

)f(x) ≤ f(1)

となる.したがって,f(1) ≥ 0のときには

f(x) ≤ f(1) exp(∫ x

1

φ(t) dt

)≤ f(1) exp

(∫ ∞

1

φ(t) dt

).

より f(x)は上に有界である.f(1) ≤ 0のときは f(x) ≤ 0だから,もちろん上に有界である.

問題 27.25.

(1) f ′(t) = x(t)f(t)より,f ′′(t) = x′(t)f(t) + x(t)f ′(t) = (x′(t) + x(t)2)f(t) = −k(t)f(t).

(2) x′(t) = −f′(t)2

f(t)2+f ′′(t)

f(t)= −x(t)2 + k(t)f(t).

問題 27.26.

(1) f(t) = exp

(∫ t

τ

F (s) ds

)とおく.f(τ) = 1, f ′(τ) = K である.また,f(t)は微分方程

式 f ′′(t) + λ2f(t) = 0 を満たす.したがって,f(t) = cosλ(t− τ) + K

λsinλ(t− τ) であ

る.F (t) =f ′(t)

f(t)であるから,F (t) = λ

K cosλ(t− τ)− λ sinλ(t− τ)λ cosλ(t− τ) +K sinλ(t− τ)

となる.

(2) 変数分離形で直接解いて,F (t) =K

t− τ + 1

(3) f(t) = exp

(∫ t

τ

F (s) ds

)とおく.f(τ) = 1, f ′(τ) = K である.また,f(t)は微分方程

式 f ′′(t) + λ2f(t) = 0 を満たす.したがって,

f(t) =exp(λ(t− τ)) + exp(−λ(t− τ))

2+K

λ

exp(λ(t− τ))− exp(−λ(t− τ))2

である.F (t) =f ′(t)

f(t)であるから,F (t) = λ

λ sinhλ(t− τ) +K coshλ(t− τ)λ coshλ(t− τ) +K sinhλ(t− τ)

となる.

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微分方程式演習 259

問題 27.27.

(1) (a) 微分方程式を利用して

η′(t) = (F ′1(t)− F ′

2(t) + F1(t)2 − F2(t)

2) exp

(∫ t

τ

F1(s) + F2(s) ds

)= (k2(t)− k1(t)) exp

(∫ t

τ

F1(s) + F2(s) ds

)≤ 0

が得られる.η(τ) = 0だから,η(t) ≤ 0つまり,F2(t) ≥ F1(t)となる.(b) η(t0) = 0をも仮定しているから,η(s) = 0, τ ≤ s ≤ t0 が得られる.

(2) (a) (1)と同様で,η(τ) = 0だから,η(t) ≥ 0つまり,F1(t) ≥ F2(t)となる.(b) (1)と同様.

(3) 省略.

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260 京都大学 澤野嘉宏

56. 28節

問題 28.1.

(1) n ≥ 9のとき,4n

n!≤ 107

2nを示す.

8n

n!≤ 8n

8!=

7n

7!≤ 107.

定理1を用いて定理の仮定を確認すると次のようになる.∞∑

n=1

107

2n= 2 · 107 <∞.

したがって,問題の級数は収束する.(2) 定理1を用いる.定理1の判定法に従うと,

∞∑n=1

∣∣∣∣ (−1)nns

∣∣∣∣ = ∞∑n=1

1

ns<∞

を証明すればよいことになる.しかし,今判定すべき式は∞∑

n=1

1

ns< 1 +

∞∑n=2

∫ n

n−1

t−s dt =s

s− 1<∞

より,問題の級数は収束するとわかる.

(3) はじめに定数M が存在して,n2

2n≤M 3n

4nを満たすことを示す.実際に,

2nn2

3n≤ n2

1 +n(n− 1)

2 · 4

≤ 16

だからである.したがって,定数M が存在して,n2

2n≤M 3n

4nが成立する.この不等式

を用いて,定理1を用いると定理の仮定は次のように確かめられる.∞∑

n=1

M3n

4n= 4M <∞

従って,問題の級数は収束する.(4) 自然数 nに対する次の不等式が不等式が成立する.

1

n4 − 3n+ 5≤ 1

n2

実際,n4 − 3n+ 5− n2 ≥ n4 − 4n2 + 5 ≥ 1

だからである.したがって,このとき定理1と問題 (2)が使えて,問題の級数は収束するとわかる.

問題 28.2.

(1) 無限数列 ak∞k=1 が αに収束するとは,以下の条件が成立することである.[条件] 任意の ε > 0 に対して,ある N ∈ N が存在して,k > N のときに,|ak − α| < ε が成立する.

(2) 無限数列 ak∞k=1 がコーシー列であるとは以下の条件が成立することである.

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微分方程式演習 261

[条件] 任意の ε > 0に対して,ある N ∈ Nが存在して,k, l > N のときに,|ak − al| < ε が成立する.

(3) 無限級数∞∑k=1

ak が S に収束するとは以下の条件が成立することである.

[条件] 任意の ε > 0 に対して,ある N ∈ N が存在して,k > N のときに,∣∣∣∣∣k∑

l=1

al − S

∣∣∣∣∣ < ε が成立する.

(4) 無限級数∞∑k=1

ak が絶対収束するとは以下の条件が成立することである.

[条件]∞∑k=1

|ak| <∞

(5) 無限数列 ak∞k=1 が∞に発散するとは,以下の条件が成立することである.[条件]任意のG > 0に対してあるK ∈ Nが存在して,k > Kに対して,ak > Gが成立することである.

問題 28.3. 数列に関する次の性質を復習する.数列 an∞n=1, bn∞n=1 につき

(56.1) an ≤ bn, n = 1, 2, . . . , limn→∞

an =∞

が成り立つならば, limn→∞

bn =∞ となる.ここで,仮定 (56.1)は

an ≤ bn, n = N + 1, N + 2, . . . , limn→∞

an =∞

N は 7などの適当な自然数に置き換えられる.

(1) M =1 · 2 · 3 · 4 · 5 · 6 · 7 · 84 · 4 · 4 · 4 · 4 · 4 · 4 · 4

≤ 10 · 10 · 10 · 10 · 10 · 10 · 10 · 101 · 1 · 1 · 1 · 1 · 1 · 1 · 1

= 108

(2)n!

4n=n · (n− 1) · . . . · 9

4 · . . . 4M ≥ 2 · 2 · . . . · 2 ((n− 8)回)×M = 2n−8M

(3)n!

4n≥ 2n−8M が n ≥ 8に対して成り立ち, lim

n→∞2n−8M =∞ だから

limn→∞

n!

4n=∞

問題 28.4.

(1) 二項定理より 4n = (1 + 3)n

= 1 + 3nC1 + . . .+ 3n−2nCn−2 + 3n−1

nCn−1 + 3n > 3n−2nCn−2 =

n(n− 1)

23n−2

(2)4n

n≥ 3n−2(n− 1)

2が n ≥ 1に対して成り立ち, lim

n→∞

3n−2(n− 1)

2=∞ だから

limn→∞

4n

n=∞

問題 28.5. ともに 0である.

問題 28.6. |s| < 1

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262 京都大学 澤野嘉宏

問題 28.7. |s| < 1

問題 28.8. s > 1

問題 28.9. 1, 2, 8

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微分方程式演習 263

57. 29節

問題 29.1.

(1) (fn)∞n=1 が f に各点収束するとは次の条件が成立することである.

条件: すべての実数 xとすべての ϵ > 0に対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,|fn(x)− f(x)| < ϵが成立する.

(2) (fn)∞n=1 が f に一様収束するとは次の条件が成立することである.

条件: すべての ϵ > 0に対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,すべての実数 xに対して|fn(x)− f(x)| < ϵが成立する.

(3) (fn)∞n=1 が f に広義一様収束するとは次の条件が成立することである.

条件: すべての L > 0とすべての ϵ > 0に対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N でありなおかつすべての実数 xに対して |x| ≤ Lならば,|fn(x)− f(x)| < ϵが成立する.

問題 29.2. (fn)∞n=1が f に一様収束するということを復習しよう.すべての ϵ > 0に対して,あ

る自然数 N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,すべての実数 xに対して |fn(x)− f(x)| < ϵが成立する.だから,一様収束していることを示すには ϵを正の数としてとってくる必要がある.すると懸案の式は次のように書き下せる.すべての ϵ > 0に対して,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,すべての実数 xに対して1/n < ϵが成立する.しかし,この式における結論では xが入る事はないから,”すべての ϵ > 0に対して,ある自然数 N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,1/n < ϵが成立する.”ということを証明することに他ならない.さて,正の数 ϵは,有効数字を表す要領で ϵ = a× 10nの形で表せる.ここで,0 ≤ 1 < 1であり,nは整数である.四捨五入をしているわけではないので,aは無理数であってもかまわない.与えられた整数 nに対して 1/N < 10nとなる自然数N をとってこられるのは容易であろう.このN が,”あるN が存在して”のN である.n > N のとき,正の数を割り算すると不等号の向きが変わるから,1/n < 1/N < ϵとなる.検証すべき事実”すべての自然数 nに対して,n ≤ N ならば,1/n < ϵが成立する.”だったから,確かに一様収束していると言えた.

問題 29.3.  各点収束: (fn)∞n=1が f に各点収束するということを復習しよう.すべての実数 x

とすべての ϵ > 0に対して,ある自然数 N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,|fn(x)− f(x)| < ϵが成立する.だから,各点収束していることを示すには x ∈ Rと ϵを正の数としてとってくる必要がある.すると懸案の式は次のように書き下せる.すべての実数 xとすべての ϵ > 0に対して,ある自然数 N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,|x|/n < ϵが成立する.x = 0なら,上の式は成立しているので,x = 0のときのみを集中して考えればよい.さて,正の数 ϵ/|x|は,有効数字を表す要領で ϵ/|x| = a× 10nの形で表せる.ここで,0 ≤ a < 1であり,nは整数である.四捨五入をしているわけではないので,aは無理数であってもかまわない.与えられた整数 nに対して 1/N < 10nとなる自然数N をとってこられ

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264 京都大学 澤野嘉宏

るのは容易であろう.このN が,”あるN が存在して”のN である.n > N のとき,正の数を割り算すると不等号の向きが変わるから,|x|/n < |x|/N < ϵとなる.検証すべき事実”すべての自然数 nに対して,n > N ならば,|x|/n < ϵが成立する.”だったから,確かに各点収束していると言えた. 一様収束: (fn)

∞n=1が f に一様収束するということを再復習しよう.すべての ϵ > 0に対して,

ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,すべての実数 xに対して |fn(x)− f(x)| < ϵが成立する.したがって,もし背理法で一様収束していれば,そのときは,すべての ϵ > 0に対して,ある自然数 N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,すべての実数 xに対して |x/n| < ϵが成立するはずである.すべての ϵ > 0に対して成立しているといっているから,特に ϵ = 1としても成立しているはずである.このときは,ある自然数N が存在して,すべての自然数 nに対して,n > N ならば,すべての実数 xに対して |x/n| < 1が成立するはずである.しかし,冷静になって考えてみるとすべての xに対して成立しているから,x = 2nとしても,|x/n| < 1が成立していないといけない.これは 2 < 1を導くから,明らかに矛盾である.

58. 30節

問題 30.1.

(1) $2^a+3^x$(2) $e {^3x^2-2}$(3) 正しいものと間違えたものを比較する.

(a) $C_1x {^21}$こちらは正解:C1x21 と出る.

(b) $C_1x^21$こちらは不正解:C1x21と出てしまう.

(4) $a^2 ¥times a^3 ¥div (ab)^ 3=¥frac{a^2}{b^3}$

(5) 2通りの正解を表示する.(a) $C_1¥sin 2x+C_2¥cos 2x$,ただし,ここで$C_1,C_2$は任意定数

(b) $C_1¥sin{2x}+C_2¥cos{2x}$,ただし,ここで$C_1,C_2$は任意定数

(6) $¥frac{2x+3^x}{3^x-6¥sin x}$