海外 lng...
TRANSCRIPT
JPEC レポート
1
平成25年5月31日
海外 LNG事業へ進出するアジア国営石油ガス企業
今年 3 月、中国石油天然ガス総公司(CNPC)は巨大
LNGプラントが計画されているモザンビークRovuma盆
地Area 4の権益20%を買収することに合意した。CNPC
は豪州での LNG 計画に続いてカナダでも LNG 計画に参
加しており、海外 LNG プロジェクトに参画することで輸
入ソースの確保を進めようとしている。中国の LNG 輸入
事業で先行する中国海洋石油総公司(CNOOC)は今年 2
月、151億ドルという巨費を投じてカナダNexenの買収に成功した。中国石油化工集団公
司(Sinopec)は昨年7月、豪州Australia Pacific LNG(APLNG)への参加権益を25%
に引き上げた。また、今年1月、世界最大のLNG輸入企業である韓国ガス公社(Kogas)
はモザンビークに続いて新たな LNG 供給源となる可能性の高い東地中海、キプロスの海
洋鉱区に参加した。すでに多くの海外LNG事業に参画しているマレーシアPetronasは昨
年12月、カナダでのシェールガスLNG計画のパートナーであるProgress Energyを買
収、今年3月には石油資源開発(JAPEX)の参加を得て、LNG計画を本格的に進めるこ
とになった。2011年からLNG輸入を開始したタイ石油公社(PTT)は昨年8月、モザン
ビークLNG計画の主力ガス田権益を保有する英国Cove Energyの買収に成功した。
マレーシアを除けば、いずれも LNG 輸入国で、LNG の安定受給をめざして、海外の
LNG プロジェクトに参加したものとみられる。また、LNG 輸出国であるマレーシアは、
Petronasがグローバルな事業展開の一環として海外LNG事業を推進、最近ではマレー半
島部でのガス需要拡大に対応すべくLNG輸入計画も進めている。
アジア主要国営石油ガス会社の海外LNGプロジェクトへの参加状況を紹介する。
1.韓国
1-1.韓国の天然ガス需給とLNG輸入
韓国は2004年より東海-1ガス田で商業生産を行っているが、東海-1の生産量は、国内
需要の1%程度しかなく、天然ガス需要のほぼ全量をLNG輸入で賄っている。
韓国は、日本に次ぐ世界第2位のLNG輸入国であり、国営ガス公社であるKogasは世
界最大のLNG輸入業者である。長期売買契約に基づくLNG輸入は、1986年にインドネ
シア産からスタートし、1991年よりマレーシア、1999年よりカタール、2000年よりオマ
ーン、2009年よりロシアとイエメンが加わった。(図-1参照)
2013年度 第6 回
1. 韓国 P.1
2. マレーシア P.5
3. 中国 P.8
4. 台湾 P.14
5. タイ P.16
JPEC レポート
2
輸入量は年々拡大、2001年に200億m3、2005年に300億m3、2010年に400億m3
を突破し、2011年は493億m3に達した。内訳はカタールが最大で111億m3、インドネ
シア 108 億m3、マレーシア 56 億m3、オマーン 50 億m3、ロシア 39 億m3、イエメン
37億m3と続いている。ほかに、ブルネイや豪州、アルジェリア、ナイジェリア、赤道ギ
ニア、エジプト、トリニダード・トバゴなどからも輸入している。(表-1参照)
JPEC レポート
3
Kogas は、平沢(1986 年稼動 296 万 m3)、仁川(1996 年稼動 288 万 m3)、統営
(2002 年稼動 248 万 m3)に LNG ターミナルを保有しているが、需要拡大に対応する
ため、2020 年までに 26.4 億ドルを投下して、タンク容量を 1,430 万m3とする計画で、
第 4ターミナルを江原道三陟に建設する。20万m3×9基、27万m3×3基を計画してお
り、1–4号タンクは大林産業/GS建設/慶南企業/東亜建設、5–7号は斗山重工/三星物産/大
宇建設/SK建設、8–9号は、現代建設/Posco建設/Seohee、10–12号は漢陽/ハンファ建設/
三扶土建/桃園E&Cが受注した。10–12号には、韓国技術で開発した世界最大級のタンク
を導入する。仁川でも 2016 年まで同地区に 20 万 m3×2 基のタンクを建設し、2018 年
までにさらに 1基を増設する。Kogasでは長期計画として、2020年以降に第 5ターミナ
ル建設を考えている。
民間ではLNG輸入が認可されたPOSCOが光陽近郊に輸入ターミナルを保有している。
年間受入量は170万トン、10万m3のタンク2基を有する。さらにGS Energyは忠清南
道保寧に 20 万 m3×5 基の LNG タンクを建設する計画を進めており、これに SK E&S
が参加し、2016年9月竣工を目指して年間受入量300万トンのターミナルを建設する。
1-2.韓国の海外LNGプロジェクト
Kogasに加えSKなど民間企業も世界各地のLNG事業に参加している。
1)カナダLNG Canada
Shell が 40%、Kogas、三菱商事、CNPC、が各 20%の企業連合がBritish Columbia
(BC)州KitimatでLNGプロジェクトを進めており、BC州のシェールガスを開発して
韓国、日本、中国などアジア市場に供給する。当初の年産能力は600万トン×2トレイン
の合計1,200万トンで、2020年頃の生産開始を見込んでいる。2013年2月にLNG輸出
ライセンスを取得、期間は25年間で、年間最大2,400万トンのLNG輸出が認められた。
2)モザンビークRovuma Area4開発-LNG計画
Eniが70%(うち20%をCNPCが買収)、KogasとスペインGalp Energia、モザン
ビークENHが各10%で参加するコンソーシアムは2013年2月までに72兆 cf以上のガ
ス埋蔵量を発見。隣接するArea1のAnadarko連合も巨大ガス資源を発見してLNG事業
を計画し、Eni 連合と共同で LNG 計画を進めることになった。LNG プラントは、2018
年までにCabo Delgado州で建設され、液化能力は年間2,000万トン。当初は年産500万
トン×2トレインとし、その後2トレインを追加する。プラントの基本設計(FEED:Front
End Engineering Design)は、1)日揮/Fluor、2)CB&I/千代田化工建設、3)Bechtel
が進めており、このなかから設計・調達・建設(EPC:Engineering , Procurement and
Construction)コントラクターを決定する。
3)豪州Prelude 浮体式LNG(Prelude FLNG)
Kogas は、Shell が進めている Prelude ガス田開発–FLNG プロジェクトからLNG の
全量を購入するとともに 10%のシェアで参加することに合意した。Browse Basin の
JPEC レポート
4
Preludeガス田を開発して液化するもので、年産 360万トン。生産開始は 2017年の予定
で、Technipと韓国の三星重工業にプラントのEPC業務が発注された。
4)豪州Gladstone LNG(GLNG)
Kogasが15%の権益で参加している。Queensland州Bowen/Surat Basinsの炭層ガス
(CSG)を420kmのパイプラインでGladstone沖Curtis島に送り、LNGとして輸出す
る。液化能力は年間約780万トン(2トレイン)、建設費は180億ドルで、稼働開始は2015
年の予定。Fluorが上流、Saipemがパイプライン、BechtelがLNGプラントを受注して
いる。Kogas以外の権益は、Santosが30%、PetronasとTotalが各27.5%。LNGは、
KogasとPetronasが年間各350万トン、Totalが150万トンを引き取る。
5)インドネシアDonggi-Senoro LNG(DSLNG)
三菱商事は2011年1月、最終投資決定(FID)を宣言するとともに、特定目的会社(SPC)
であるSulawesi LNG Developmentの出資へ変更し、Medcoの資金拠出分の一部をSPC
が引き受けることで、DSLNG への SPC 出資比率を 59.9%に引き上げ、SPC に Kogas
が25%出資することに合意した。残りは、PESから株式移管を受けたPertaminaが29%、
Medcoが11.1%。2014年後半より年間200万トンのLNGと2,500BPDのコンデンセー
トの生産を開始する予定で、天然ガスは Senoro-Toili/Matindokガス田から供給される。
三菱商事は、Senoro-Toili鉱区の権益を20%保有する子会社のTomori E&Pの株式49%
をKogasに譲渡した。
Luwukに建設される年産200万トンのLNGプラントと関連設備のEPC業務は、日揮
および現地子会社のJGC Indonesiaが約17億ドルで受注、2014年下期までに完成する。
6)カタールRas Laffan LNG
Rasgas 1に韓国連合のKorea RasGas LNG(Koras)が5%を出資している。Koras
には、Kogas、三星、現代、SK、LG、Daesung、Hanwhaが参加。パートナーは、Qatar
Petroleumが63%、ExxonMobilが25%、伊藤忠商事が4%、LNG Japanが3%で、液
化能力は年660万トン。Kogasは1995年10月に年間240万トンの長期契約で合意し、
1997年6月の25年契約で490万トンに引き上げた。その後、2007年3月に年間210万
トンを追加購入する20年契約に合意した。
7)オマーンOman LNG(OLNG)
Korea LNGが権益5%のうちを取得しており、内訳はKogasが1.2%、三星、現代、大
宇が各1%、SKが0.8%である。他は、オマーン政府が51%、Shellが30%、Totalが5.54%、
三菱商事と三井物産が各 2.77%、Partex が 2%、伊藤忠商事が 0.92%。能力は年産 330
万トン×2トレインで、Kogasは2000年から25年契約で年410万トンを輸入。
8)イエメンYemen LNG(YLNG)
同国中部Maribの天然ガスを 320kmのパイプラインで南部沿岸のBalhafまで運び、
年産680万トンのLNGプラントで液化する。LNGは、Kogasが年間200万トン、Suez
が 250 万トン、Total が 200 万トンを 20 年にわたって購入する。プラントは日揮
JPEC レポート
5
/KBR/Technipが建設した。韓国はKogasが6%、SKが9.55%、現代が5.88%の権益で
参画している。他の権益は、Totalが39.62%、Yemen Gas が16.73%、Hunt Oilが17.22%、
イエメン年金基金が5%。
9)キプロスLNG構想
Kogasは2013年1月、第2次鉱区入札の海洋3鉱区について、イタリアEniと共同で
探鉱・生産分与契約(EPSC)に調印、ブロック 2、ブロック 3 およびブロック 9 を Eni
が 80%、Kogasが 20%のシェアで獲得した。ブロック 9は、米国Noble Energyが天然
ガス探査を進めてきたブロック 12に接しており、ブロック 2とブロック 3はその北東に
位置、いずれも天然ガス資源のポテンシャルが大きいとされるLevantine堆積盆地に属し
ている。イスラエル側では2010年に、Noble EnergyによってLeviathanガス田が発見
されており、両国が共同でLNGプロジェクトを進める可能性もある。
10)ペルーPeru LNG
韓国勢は民間のSK Energyが参加している。太平洋岸のPampa MelchoritaにCB&I
がEPC業務を担当して年産445万トンのLNGプラントを建設、2010年6月から操業を
開始した。原料ガスは内陸の Camisea ガス田(ブロック 88)から Camisea–Lima パイ
プラインで輸送され、LNGは全量がRepsolに供給される。SKは2007年8月、LNG事
業の権益30%のうち10%を丸紅に売却し、権益は、Hunt Oilが50%、SKおよびRepsol
が各20%、丸紅が10%。Camiseaガス田は、PluspetrolとHunt Oilが各36%、SKが
18%、Tecpetrolが 10%、パイプラインは、Technitが 23.4%、Pluspetrol とHunt Oil
が各22.2%、SKとSonatrachが各11.1%、Tractbelが8%、Grana y Monteroが2%。
11)その他
Kogasは、ロシアGazpromと年産500万トン規模のLNGプラント、Nenets自治管区
のPechora LNGへの参加や極東でのLNG事業参加を検討している。
カナダ北極圏でKogasはMGM EnergyからMackenzie DeltaのUmiak SDL 131の
権益20%を買収、2020年頃の生産開始を目指すが、LNG計画も視野に入れているという。
豪州Wheatstone LNGでは年間150万トンのLNG購入とともに権益5%を取得するこ
とに基本合意し、権益分を含め計195万トンのLNGを確保した。
SK E&Sは、SantosとConocoPhillipsが探査を進めている豪州北西沖合ティモール海
NT/P61鉱区(Calditaガス田)およびNT/P69鉱区 (Barossaガス田)に参加、Darwin
の既存プラントを利用するのか、独自に FLNG プラントを建設するのか開発手法の検討
を進める。
2.マレーシア
2-1.天然ガス需給とLNG輸入
天然ガス生産は、BintuluでLNGプラントが完成し、日本向け輸出が開始された1983
JPEC レポート
6
年以降急速に拡大、1996年に300億m3、1999年に400億m3、2003年に500億m3、
2005年に 600億m3を突破し、2008年は 647億m3に達したが、最近は減少に転じてい
る。(図−2参照)
1983 年に Central Luconia ガス田からの天然ガス供給を受けて生産開始した Bintulu
のLNG コンプレックスも、すでに 8 トレインが建設され、液化能力は年間合計約 2,570
万トンに達している。Petronasは、Bintulu第 9トレイン建設を計画、EPC業務を日揮
に発注しており、2015年末には完成して液化能力が年間合計2,930万トンに達する。
また、サラワク州やサバ州の海洋で浮体式LNG(FLNG)プラント建設を計画、Bintulu
沖合のKanowitガス田に設置される年産120万トンのPetronas Floating LNG Project 1
(PFLNG 1)は、2015年後半に稼働予定で、EPC業務はTechnip/大宇造船海洋(DSME)
に発注されている。Murphy Oilが大水深鉱区のブロックHで発見したRotanおよびBiris
のガス資源を液化する年産 150 万トンの Rotan FLNG プロジェクトは、三井海洋開発
(Modec)/IHI/東洋エンジニアリング(Toyo)/CB&Iと日揮/三星重工(SHI)がFEED
を担当した。生産開始は2016年の予定。
一方、天然ガス生産の頭打ちとマレー半島のガス需要拡大に対応するため、Petronas
はLNG輸入を決定した。第1計画として、MelakaのSungai Udangに浮体式ターミナ
ルを建設している。Technip と WorleyParsons が FEED を実施し、WorleyParsons が
EPCI業務を担当した。輸入規模は年間380万トンで、第三者によるフリーアクセスが可
能とされる。
続いて、Sabah州でLahad Datu LNGターミナルを計画している。Sabah州では発電
燃料の確保に不安があり、LNG を導入して環境負荷の低い発電事業を進める。Petronas
と国営電力会社であるTNBとの共同事業で、LNG受入量は年間100万トン規模。
JPEC レポート
7
さらにJohor州Pengerangの石油・ガス・化学コンプレックス(RAPID)にLNGター
ミナルを設置することを計画しており、Dialog Groupが51%、Royal Vopakが49%を出
資する。
2-2.マレーシアの海外LNGプロジェクト
Petronasは積極的な海外戦略を進めており、世界屈指のLNG供給者としての実績を背
景に多くの海外LNG事業に参画している。
1)カナダPacific Northwest LNG
ブリティッシュコロンビア(BC)州北東部のAltares、Lily、Kahtaシェールガス鉱区
を開発して、生産したガスを太平洋岸のLelu島のLNGプラントで液化して輸出する計画。
最終投資決定(FID)は2014年後半、操業開始は2018年後半を予定しており、投資金額
は90–110億ドルになる見込み。2012年6月、Petronasは、パートナーのProgress Energy
を総額約 55 億カナダドルで買収することに合意したが、カナダ政府側の懸念もあって、
同年 12 月にようやく承認された。2013 年 2 月、石油資源開発(JAPEX)が同プロジェ
クトに10%の権益で参画することに基本合意した。
2013年5月には、1)KBR/日揮、2)Technip/韓国三星エンジニアリング/中国寰球工程
公司(HQCEC)、3)Bechtelの3グループにFEED業務が発注された。2014年末には、
このなかから EPC コントラクターが選定されることになっており、これまで日米欧企業
が独占してきた大型LNGプラント分野に韓国と中国が参入するのかどうか注目される。
2)豪州Gladstone LNG(GLNG)
Petronasが27.5%の権益で参加している。計画概要は韓国Kogasの項参照。
3)豪州Evans Shoal LNG
2007年9月にShellから豪州Timor海Bonaparte BasinのNT/P48鉱区(Evans Shoal
ガス田)の権益25%を買収、Evans Shoal LNGプロジェクトに参加した。他にShellが
25%、Eniが 40%、大阪ガスが 10%の権益を保有する。埋蔵量 20兆 cf以上とされる巨
大ガス田だが、経済性の確保が課題といわれる。
4)エジプトEgyptian LNG(ELNG)
Petronasは2001年12月、Shell Egypt Deepwater(SEDW)との間でMediterranean
Deep Water(NEMED)鉱区の権益12%の譲渡契約に調印して以来、エジプト天然ガス
事業への戦略的な取り組みを開始し、2003年4月にEdisonからWDDM鉱区とEgyptian
LNGの権益を17.5億ドルで買収した。Petronasは、同事業の第1トレインに権益35.5%
(他にBritish Gas(BG)が35.5%、フランスガス公社(Gaz de France :GdF)が5%、
Egyptian Gas HoldingとEgyptian General Petroleum Corporationが各12%)と第2
トレインに38%で参加している(BGが38%、Egyptian Gas HoldingとEgyptian General
Petroleum Corporation が各 12%)。Idku の LNG プラントは各年産 360 万トンで、
ConocoPhillips法によりEPCはBechtelが担当した。
JPEC レポート
8
5)その他
PetronasはイランPars Liquefied Natural Gas(Pars LNG)プロジェクトに20%の
権益で参加している。2005 年 5 月に同プロジェクトからの撤退を示唆したが、撤退はし
ておらず、2008年7月にTotalが、米国の制裁を理由に撤退することが明らかになった後
も、Petronas はプロジェクト推進の意向とされていた。Petronas とイランとの関係は
South Parsの開発が大きく、South Parsのフェーズ2および3(SP2&3)にはTotal、
Gazpromとともに参加した。原料ガスは、Totalが60%、Petronasが40%のシェアで開
発するSP11から供給するとされているが、LNG計画の早期実現は困難とされる。
モザンビークでは大水深のRovuma堆積盆地エリア 3および 6を保有しており、2012
年9月にTotalへ権益40%を譲渡した。合計1万5,250m2、水深最大2,500mの大水深鉱
区で、近隣では巨大ガス田開発・LNG計画が進められており、有望鉱区と目されている。
エジプトではSpanish Egyptian Gas Company(SEGAS)が建設したDamietta LNG
へのガス供給とLNG引取りに参加した。
英国ではWales西端、Milford HavenにLNGターミナルを建設したDragon LNGに
資本参加している。同ターミナルの権益は、BGが50%、Petronasが30%、4Gasが20%
で、PetronasとBGが同ターミナルの能力のうちそれぞれ半分の年間最大30億m3(220
万トン)分を利用する。ターミナルの容量は 16万m3×2基、取り扱い能力は年間 60億
m3(440万トン)。
また、英国ではBGから独立したCentricaの株式4%を獲得している。
3.中国
3-1.中国の天然ガス需給とLNG輸入
中国の天然ガス消費は、西気東輸や陝京パイプラインなど国内幹線パイプラインの建設、中
央アジアからの国際パイプライン建設、LNG輸入基地の相次ぐ完成で急速に拡大しており、
2008年にドイツを、2009年に日本や英国、2010年にカナダを上回り、2011年は前年比
21.5%増の1,307億m3となった。これは、世界の4.0%を占めるに過ぎないが、中国のガ
ス消費は、今後も大幅な上昇が続き、2010年代中期にはイランを抜き、米国、ロシアに次
いで世界第3位の消費国になるものとみられる。
中国は、1980年代まで四川盆地など一部の地域を除いて天然ガスを積極的に開発するこ
とはなく、資金、輸送インフラの不足、高い探査コストがその発展を妨げていた。その後、
中国は天然ガスの開発に力を入れ始め、ガス生産量は1990年の153億m3から、2000年
に272億m3、そして2010年には948億m3、2011年は1025億m3にまで拡大した。(図
-3参照)
JPEC レポート
9
企業集団別では、CNPC が中国全体の約 80%を占め、ガス田別では、かつては四川が約
80%を占めていたが、西気東輸や陝京パイプラインでタリムと長慶が大きく伸びている。
天然ガスの第12次5か年計画(12・5計画)は、2015年の天然ガス消費を2,300億m3、うち
輸入天然ガスを約800億m3としている。また、エネルギー発展12・5計画でも、1次エネ
ルギー消費に占める天然ガスの比率を2015年までに7.3%に引き上げるよう提起している。
ただ、計画通りに進んだとしても、世界平均の25%に比べ中国の天然ガス消費の比率はか
なり低い。また、現状では、LNG など輸入ガスの価格と国内販売価格は逆ざや状況とな
っており、中国の天然ガス拡大には価格形成メカニズムの改革が必要とされる。
LNG輸入は、CNOOCの広東省深圳市大鵬LNGターミナルが2006年6月に操業を開
始してその歴史が始まり、豪州、カタール、インドネシア、マレーシアを中心に 2011 年
で166億m3まで拡大している。(表-2参照)
広東省深圳市大鵬LNGターミナルに続き、2番目のCNOOC福建省莆田ターミナルは
2008年4月、3番目のCNOOC上海ターミナルは2009年10月に操業を開始し、CNPC
も2011年5月に江蘇省如東ターミナルが、11月に遼寧省大連ターミナルの操業を開始し、
2012 年 9 月には CNOOC の浙江省寧波ターミナルにカタールから LNG が到着した。
Sinopecも山東省青島で計画を進めており、LNGの調達にもメドをつけた。
続いて、CNOOCは、広東省深圳市迭福、広東省珠海、広東省粤東、福建省漳州市龍海、
海南省洋浦、天津港南疆港区(浮体式を採用)、江蘇省塩城濱海、広東省汕頭市、遼寧省営
口、河北省秦皇島で、CNPCは、河北省唐山曹妃甸、広東省深圳、広東省江門、広西自治
区欽州、Sinopec は広西自治区北海市鉄山港、広東省珠海黄芽島、広東省茂名、中油潔能
集団有限公司(SinoGas)は広東省汕頭市沖南澳島、新奧能源控股有限公司(ENN Energy)
は浙江省温州、第一能源有限公司はマカオ洋上ターミナルといった計画を打ち出している。
JPEC レポート
10
3-2.中国の海外LNGプロジェクト
(1)CNOOC
1)カナダNexen買収
2012年 7月、Nexenを 151億ドルで買収する契約に調印した。同社のSEC基準によ
る 2011年末の確認埋蔵量は 9億 boeで、推定埋蔵量は 11.22億 boe。カナダ政府基準に
よる2011年末のカナダにおける潜在的資源量は56億boe。カナダ投資法では3.3億カナ
ダドルを超える外国投資案件については、産業省の審査が必要で、中国国営企業による大
型資源企業の買収を懸念する声も強く、審査期間は2度にわたって延長されたが、12月7
日にカナダ政府の認可を取得し、買収に成功した。
カナダ西海岸では複数のシェールガス–LNGプロジェクトが計画されており、具体的に
はなっていないがNexenもLNG事業を追求している。同社はHorn River、Cordova、
Liardのシェールガスに関して国際石油開発帝石(Inpex)/日揮に40%の権益を譲渡し、
生産したガスを LNG としてアジア市場に供給することも視野に入れながら共同開発して
いく計画。
2)米国Chesapeake EnergyのEagle Fordシェールガス開発
2010年11月にChesapeake Energyがテキサス州南部に保有するEagle Fordシェール
ガス鉱区の権益 33.3%を 10.8 億ドルと調整金 4,000 万ドルを追加して買収した。主要資
産は、Webb、Dimmit、LaSalle、Zavala、Frio、McMullenで、10年後には日量40-50
万boe規模の生産に達するとみられる。
3)インドネシアTangguh LNGプロジェクト
福建LNG輸入プロジェクトのLNGをインドネシアのTangguh液化プラントから輸入
するのに伴い、CNOOCはBPから権益12.5%を2.75億ドルで取得した。また、CNOOC
JPEC レポート
11
とLNGジャパン(双日/住友商事)は、BGの保有していたTangguh LNGプロジェクト
の権益 10.7%を買収した。天然ガスを供給する 3鉱区のうち、Muturi鉱区のPS契約に
関するBGの保有権益50%の売却に伴うもの。CNOOCがBGから権益20.767%を、LNG
ジャパンが29.233%を買い取った。
4)豪州Queensland Curtis LNG(QCLNG)
英国BGグループとCNOOCは2009年5月、BGが進めているQueensland Curtis LNG
(QCLNG)プロジェクトの第1フェーズ(第1トレイン)に10%の権益でCNOOCが
参加するとともに、 CNOOCが20年間にわたり年間360万トンのLNGを購入すること
に合意、2010年3月に正式契約した。同プロジェクトは、Queenslandで計画されている
炭層ガス(Coal seam gas:CSG)液化計画の1つで、Surat BasinのWalloon CSGを開
発して、 Gladstone近郊のCurtis島に輸送し、液化してアジア太平洋圏に輸出しようと
いうもの。液化能力は年間740万トンあり、かなりの規模になる。
5)豪州North West Shelf LNG(NWS LNG)
広東LNG輸入プロジェクトに必要なLNGを豪州North West Shelf(NWS)LNGコ
ンソーシアムから購入することになったのに伴い、CNOOCはNWSプロジェクトの上流
権益の一部を取得するとともに供給事業へも参加することになった。これに基づき 2004
年 12 月、広東大鵬液化天然気有限公司(GDLNG)とNWS LNG は年間 330 万トンの
LNG 長期売買契約に正式調印し、CNOOC に同プロジェクトのガス生産ライセンスおよ
び探査の権益5.3%を譲渡する契約に調印した。
NWS LNGは、オペレーターのWoodside、BHP Billiton、BP、ChevronTexaco、Shell、
Japan Australia LNG(三菱商事/三井物産)が各6分の1の権益を保有しており、広東に
LNGを供給するChina LNG Joint Venture(CLNG JV)は、NWS LNGの既存パート
ナー6社が各12.5%、CNOOC Ltdが25%を保有する。
6)その他
CNOOCは東地中海LNG事業に関心を持っているといわれる。また、豪州Gorgon LNG
の権益12.5%取得と300億豪ドルのLNG購入は、価格交渉が難航し、撤退した。
(2)CNPC
1)モザンビークRovuma盆地Area 4
CNPCは2013年3月、Eniの子会社であるEni East Africaの株式28.57%を42.1億
ドルで取得することに合意した。Eni East AfricaはモザンビークRovuma盆地Area 4の
権益 70%を保有しており、CNPC は同鉱区の権益 20%を間接的に買収する。アフリカ東
海岸は、アジア市場へのアクセスが比較的容易であることからアジア各国の主要プレイヤ
ーが早くから注目、唯一出遅れていたのが中国企業であったが、関係者が口を揃えるよう
に「中国企業が現れるのは時間の問題」であった。(計画の概要はKogasの項参照)
JPEC レポート
12
2)豪州Arrow Energy買収とArrow LNG
2010年 8月CNPC傘下の中石油国際投資有限公司とShellは共同で、Arrow Energy
の株式100%を35億豪ドルで買収した。Arrowは豪州有数のCSG開発事業者で、CNPC
にとって初の豪州CSG投資。Arrow Energyは、Queensland州SuratとBowenのCSG
を開発して、Gladstone市沖合のCurtis島に建設するLNGプラントに送り、アジア市場
に供給する計画を進めている。プラント規模は、年産800万トン(年産400万トン×2ト
レイン)だが、最終的に年産 1,800 万トンとする計画。FEED は、千代田化工建設
/CB&I/Saipem のコンソーシアムが実施した。LNG プラントの EPC 商談には、千代田
/CB&I/Saipem のほか、Fluor/日揮/Clough、KBR/中国寰球工程公司(HQCEC)/John
Hollandが参加する。
ただ、Arrow LNGは同州4番目のCSG液化計画で、先行する3計画に比してかなり
遅れをとっており、人材不足や建設コスト高騰の影響を諸に受けることになる。このため
Shellは、最終投資決定(FID)を急がないとしており、CSG開発を先行して、Santosな
どのLNG計画とタイアップすることなども考えている。
また、Arrow Energyは2011年9月、豪州Bow Energyの全株式を総額5.35億豪ドル
で買収することに合意した。BowのCSG資源を獲得し、Arrow LNGプロジェクトの増
産計画に反映させるものとみられている。
3)豪州LNG Ltdへの資本参加とFisherman's Landing LNG
2011年5月、CNPC傘下の中国寰球工程公司(HQCEC)がLiquefied Natural Gas
Limited(LNG Ltd.)の株式19.9%を2,014万豪ドルで取得して筆頭株主となった。LNG
Ltdは、Queensland州Gladstoneで年産300万トン(150万トン×2トレイン)の
Fisherman's Landing LNGプロジェクトを計画しており、株式譲渡はその資金に充当され
る。LNG Ltdは、傘下のLNG Technology(LNGTech)が天然ガス液化技術として
Optimised Single Mixed Refrigerant(OSMR)プロセスを保有しており、HQCECは全
世界で同プロセスの優先的な使用権を獲得し、Fisherman's Landing LNGのプラント建設
のEPCコントラクターに指名された。フェーズ1で、設計液化能力が年間190万トン(保証
能力は同150万トン)のプラントを建設する。OSMRプロセスは、年産100–300万トンの
中規模LNGに適するとされる。
また、CNPCはMolopo EnergyがQueensland州Bowen Basinに保有する炭鉱の権益
100%を買収、Fisherman's Landing LNGにCSGを供給する。
4)豪州Browse LNG
CNPCは2012年12月、BHP BillitonからEast Browseの権益8.33%とWest Browse
の権益 20%を 16.3 億ドルで買収することに合意した。これにより Browse ガス田開発–
LNGプロジェクトは、Woodsideをオペレーターに、Shell、BP、Japan Australia LNG
(三井物産/三菱商事)、CNPCが進めることになった。しかし、Woodsideは 2013年 4
月、同プロジェクトに関して、最終投資決定(FID)を下すためにはWoodside の規定す
JPEC レポート
13
る商業的必要条件を満たしていないとして棚上を決定、今後、FLNG や小規模プラント、
Pilbaraの既存LNGプラント利用などのオプションを検討していくことになった。
同計画は、East BrowseとWest Browseの天然ガス田(Brecknock/Calliance/Torosa)
を開発して、海底パイプラインでKimberley地区James Price Pointに建設する液化プラン
トに送ってLNG生産・輸出事業を進めるというもので、液化能力はフェーズ1で年間1,200
万トン(400万トン×3トレイン)。すでに各セクションのFEEDは完了し、LNGプラン
トはデュアル FEED として千代田化工建設 /CB&I/Saipem とKBR/Leighton
Contractors/John Hollandが担当した。しかし、もともとBrowseでは30年以上前からガ
ス田が発見されていたが開発計画がまとまらず、Woodside以外のパートナーは投資リスク
の面から新規プラント建設には消極的とされていた。西豪州政府の圧力もあって、立地を
James Price Pointに決定して準備を進めてきたが、LNG計画が目白押しの豪州ではエン
ジニアが不足して人件費が高騰、炭素税導入や為替レート変動などが追い打ちをかけた。
5)カナダLNG Canada
CNPCは、Shell、三菱商事、Kogasと共同で、Kitimat LNG輸出プロジェクトを計画
している。(概要はKogasの項参照)
カナダでのガス資産に関して、CNPCは2011年2月、EnCanaとの間でCutbank Ridge
ガスプロジェクトの権益 50%を 54億ドルで買収することに合意したが、条件面で折り合
いがつかず、断念した。その後、2012年12月に傘下のPhoenix Duvernay Gasが、Encana
の保有する未開発エリアDuvernayの権益49.9%を21.8億カナダドルで買収した。
また、Shellとの間では2012年2月、非在来型資源開発の協力協定を結び、Groundbirch
シェールの権益20%を取得した。
(3)Sinopec
1)豪州Australia Pacific LNG(APLNG)
Sinopec は2011年3月、ConocoPhillipsとOrigin Energyが推進するCSGからのLNG
生産事業、APLNGからLNGを年間430万トン引き取るとともに、15%の権益で参加し
た。その後、2012年 2月に、権益を 25%に引き上げ、LNG引取量も年間 760万トンと
した。
同計画は、ConocoPhillips と豪州 Origin Energy が各 37.5%の権益を保有しており、
Surat/Bowen BasinsのCSGを開発し、Curtis島Laird PointのLNGプラントで液化し
て輸出する。第1、第2トレインの液化能力は各450万トンで、稼働開始は第1トレイン
が 2015 年央、第 2 トレインが 2016 年初頭を予定している。LNG プラントは、
ConocoPhillipsのカスケードプロセスに基づいてBechtelがEPC業務を担当する。
2)その他
SinopecはカナダDaylight Energyの全株式を22億カナダドルで買収した。中心的な
資産は、アルバータ州北西とブリティッシュコロンビア州北東における 69 の油ガス田。
JPEC レポート
14
同社はシェールガスをカナダ西海岸で計画されている LNG 輸出プロジェクト向けに供給
することが期待されている。
また、2012年1月、Devon Energyが保有する米国のシェールオイル・ガス資源の権益
の3分の1を24.4億ドルで買収した。対象は、Niobrara、Mississippian、Utica、Michigan、
Tuscaloosa Marine Shale(TMS)。
さらに、2013年2月日は米国第2の天然ガス開発会社であるChesapeake Energyから、
Oklahoma州北部のMississippi Lime油層の石油・天然ガス権益の50%を、10.2億ドル
で買収する契約に署名している。
4.台湾
4-1.台湾の天然ガス需給とLNG輸入
石油ガス資源は西岸の大陸棚に広がる堆積層に存在し、出礦坑、青草湖、錦水、鐵砧山、
官田、永和山、新營、八掌溪、白沙屯などが主要なもの。生産量は極めて限られた量しか
なく、鐵砧山、青草湖、錦水、出礦坑、官田で、計 48 坑のガス生産井が操業しており、
台湾中油股份有限公司(CPC)の2011年の生産実績は、天然ガスが42,400万m3(1987
年は122,270万m3)とコンデンセートが11,300KL(1987年は148,400KL)で、かつて
の勢いはない。
天然ガス需要は 1998 年まで一貫して上昇を続けて、1999 年は若干減となったが 2000
年の67億m3から再び上昇に転じ、2004年で100億m3を突破した。2009年は世界不況
の影響もあり前年の 121 億m3から若干減少して 118億m3となったが、景気回復ととも
に増加し、2011年は163億m3にまで増加した。(図-4参照)
JPEC レポート
15
台湾は第2次オイルショックを機に、石油依存率の高いエネルギー構造から脱し、原子
力発電とともにクリーンエネルギーである天然ガスへのシフトを推進、日本、韓国に続い
て1990年からLNGの輸入を開始した。LNG輸入関税の引き下げ、ガス火力発電所の新
設で大口需要が開拓され、輸入ターミナルも増強され、LNG輸入が拡大するのは確実で、
2020年までに年率7%の伸び率を示すと予測されている。
これまでにCPCが受け入れているLNG長期契約分は、インドネシアのBadak-Ⅲから
年間158万トン(契約期間1990–2009年)、同Badak-Ⅵから184万トン(2001–2017年)、
マレーシアのMLNG-Ⅱから225万トン(1995–2015年)、カタールRasGas-IIからの300
万トン(2008–2033 年)。加えて、オマーンやナイジェリア、エジプト、赤道ギニア、豪
州などからもスポットで入っている(表-3参照)。
今後は、RasGas-Ⅲからの150万トン(2013–2033年)やExxonMobilと合意したパプ
アニューギニア(PNG)からの120万トン(2013–2033年)、Shellと合意した200万ト
ン(2017–2037年)、豪州 Ichthys LNGからの174万トン(2017–2032年)が加わる。
CPCは南部の高雄県永安に台湾初のLNG輸入ターミナルを保有、2度にわたる増強工
事を実施している。さらにCPCは16万m3×3基のタンク増設を計画、2011年9月に経
済建設委員会(CEPD)の認可を取得した。増強工事は2018年までに竣工する。
CPCは、中部西海岸の台中県台中港に16万m3×3基のLNGタンク、気化設備および
関連機器、桟橋などからなるLNG受入ターミナル「台中液化天然氣廠」を新設した。EPC
業務は IHIとCTCI、東亜建設が担当し、2009年7月に正式稼働した。
また、第3ターミナル新設に台塑集団(Formosa Plastic Group:FPG)と台湾電力が
参加の意向を示しており、FPGは雲林県麦寮郷の第6ナフサクラッカーの用地にLNGタ
ーミナルを建設する考え。
JPEC レポート
16
4-2.台湾の海外LNGプロジェクト
1)カタールRasGasⅡ第5トレイン
CPCは2008年9月、RasGasIIの第5トレインの権益5%を取得した。RasGasIIは、
第3トレインから第5トレインまで計3トレインからなり、各トレインの生産能力は年470
万トンで、シェアは、Qatar Petroleumが70%とExxonMobilが30%。
なお、CPC はRasGasII から年間 300 万トンの LNG 購入契約を交わしており、台中
の新ターミナルで受入れて、うち168万トンを台湾電力(Taipower)が桃園県大潭に建設
した出力 420 万 kW という世界最大のガス複合発電プラント(三菱重工業/三菱電機が建
設)向けに供給している。
5.タイ
5-1.タイの天然ガス需給とLNG輸入
天然ガスは、約90%がオフショアからの生産で、ChevronのErawan、Satun、Funan、
タイ石油開発公社(PTTEP)の Bongkot などがある。天然ガス生産は 1981 年にタイ発
電公社(EGAT)の発電所向けとして Unocal によって開始された。天然ガス生産は順調
に拡大し、1994年に 100億m3を、2000年に 200億m3を、209年に 300億m3を突破
し、2011年は370億m3にまで増加した。(図-5参照)
Bongkotガス田が主力であったが、現在では多くの海洋ガス田が操業しており、さらに
タイ最大級のガス田となるArthitの開発キャンペーン2でガス生産はさらに拡大する。ま
た、マレーシアとの共同開発海域は埋蔵量 2,000 億m3と推定されており、今後も拡大す
JPEC レポート
17
る。
ただ、ガス確認埋蔵量は 1990 年代中期で 2,000 億m3程度から 2002 年末で 4,300 億
m3にまで増加したが、生産拡大のため減少傾向にあり、2011 年末現在で約 2,800 億 m3
にまで下がっている。
順調な生産増により、かつては全量を国産ガスで賄ってきたが、現在はミャンマーの
Yadanaガス田とYetagunガス田からのパイプラインガスで需要の約30%を補っている。
パイプラインガス輸入に続いてPTTはRayong県Map Ta PhutにLNG輸入ターミナ
ルを建設、2011年9月より操業を開始した。EPC業務は、GS E&CやKogas、漢陽、大
宇エンジニアリングからなる韓国連合が担当した。PTTは、すでに4億ドルを投下して年
1,000万トンへ増強する第2フェーズの計画を策定しており、2016年頃の完成を予定して
いる。これに続いて第2ターミナルの建設も検討しており、長期的には年間2,000万トン
のLNG輸入とハブ構想を進める。
5-2.タイの海外LNGプロジェクト
1)モザンビークRovuma Area1開発-LNG計画
Area1の権益8.5%を保有する英国Cove Energyを買収した。Shellとの激しい争いに
なったが、インド洋を挟んでアクセスが容易な LNG 事業となることから、タイ政府の支
援も得て買収に成功した。同鉱区は、オペレーターの Anadarko が 36.5%、三井物産が
30%、インドBharat Petroleumが10%、同Videoconが10%、モザンビーク国営ENH
が 15%、PTTが買収したCove Energyが 8.5%の権益で探査を続けている。6社連合は
2012年12月、2018年の生産開始を目指して、海底天然ガス生産設備およびLNGプラン
トのFEED業務を各3グループに発注するとともに、隣接するArea 4のオペレーターで
あるEniとの間で両鉱区に跨がるガス田を供給源とするLNG事業を共同で推進する覚書
を締結した。
天然ガス生産設備のFEEDは、1)Technip USA、2)Subsea 7(US)/Saipem、3)
McDermott/Allseas USAが、LNGプラントのFEEDは、1)日揮/Fluor、2)CB&I/千
代田化工建設、3)Bechtel が進める。海底天然ガス生産設備は、Prosperidade ガス田を
対象としたもので、3グループよりFEEDを受領後、このなかからEPCコントラクター
を選定する。LNGプラントの液化能力は年間2,000万トンで、当初は年産500万トン×2
トレインとし、その後追加2トレインを予定する。ガス生産設備と同様に3グループのな
かからEPCコントラクターを選定する。
2)豪州Cash-Maple FLNG
PTT傘下のPTTEP AustralasiaおよびPTT FLNGは2011年7月、SBM Offshoreお
よびLindeとの間で、豪州北部沖合ティモール海での浮体式LNGプラント(FLNG)建
設に向けて協力協定に調印、プレFEED作業を進めることになった。Cash-Mapleなどの
ガス田で生産した天然ガスを液化しようというもので、設置されるのは豪州のDarwinか
JPEC レポート
18
ら西に680kmで、インドネシア沿岸からは南東に200km、液化能力は年間200万トン。
その後、2012年にPTTは、Hoegh LNGおよびKBRにもプレFEED作業を発注、両グ
ループが競合することになった。さらに、実施段階に入れば、FLNGプラントは韓国の大
宇造船海洋(DSME)が担当することになる。
PTTは2011年3月から事前調査を開始しており、ガス埋蔵量が期待通りの規模に達し
ていることが判明すれば、2017年頃にはLNGの商業生産開始を開始する。
PTTは海外事業から年間300万トン程度のLNGを確保して行きたいとしており、傘下
の PTTEPとPTT Internationalの合弁会社として、FLNG事業を手がけるPTT FLNG
を設立、豪州で FLNG ユニットの開発を計画している。こうした方針に沿って PTTEP
はここ数年、豪州海域での探査に積極的で、Coogee Resourcesの買収(PTTEP Australasia
と名称変更)やOMVのティモール海鉱区の買収などで攻勢をかけている。
なお。Golar LNGと組んで豪州FLNGプロジェクトを進めようとしていたが、これに
ついては2010年2月に提携を解消している。
参 考
Statistical Review of World Energy各年版(BP)
各社年次報告書
ASEAN 諸国で相次ぐLNG 輸入プロジェクト1/2(JPECレポート2012年3月/4月)
中国の石油産業と石油化学工業 2012 年版(東西貿易通信社)
東アジアの石油産業と石油化学工業2012 年版(東西貿易通信社)
East & West Report各号(東西貿易通信社)
本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析し
たものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは [email protected] まで
お願いします。
Copyright 2013 Japan Petroleum Energy Center all rights reserved
次回の JPECレポート(2013年度 第7回)は
「IMO及び欧州における船舶燃料規制に関する最新動向」
を予定しています。