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看護場⾯における確認不⾜を引き起こす 要因の認識に関する検討 左婉馨 *1 兵藤好美 *1 ⽥中共⼦ *2 五福明夫 *1 Consideration about recognition of factors causing lack of confirmation in the nursing scene Zuo Wanxin *1 , Yoshimi Hyodo *1 Tomoko Tanaka *2 and Akio Gofuku *1 Abstract - In the work process of nurses with high risk, it is very urgent to take countermeasures against the “lack of confirmation” of the main factors. Therefore, the purpose of this study is to clarify the details of the factors leading to the lack of confirmation, grasp the number of near misses, and to explore what kind of factors the individual characteristics of the nurse who acts as a stopper. We recruited 500 nurses on the Web and asked about the frequency of near misses due to lack of confirmation, the awareness of the causes of lack of confirmation, self-evaluation of stoppers, and the reasons why near misses did not lead to accidents. As a result, three factors were extracted regarding the recognition of the factors of lack of confirmation: "lack of consciousness", "inability to concentrate", and "lack of knowledge / experience". Three factors were extracted for self-evaluation of stopper characteristics: "awareness," "verification," and "cautiousness". In order to reduce the lack of confirmation, it is necessary to secure and allocate appropriate personnel and create an environment where treatment can be concentrated. Nurses should also raise knowledge and the awareness of the importance of confirmation. In addition, it is necessary to improve the clinical judgment of new nurses in order to prevent near misses. And it is thought that new nurses will become more confident by accumulating experience and affirming their abilities from their superiors, seniors and colleagues. Keywords : lack of confirmation, stoppers, nurse 1.はじめに 1999 横浜市⼤病院の患者取り違え事故をきっかけに、⽇本 でも医療事故に対する関⼼が⾼まり、安全な医療を求めるよう になった。厚⽣労働省は、 2001 年に医療安全対策ネットワーク 事業を開始し、 2004 年には⽇本医療機能評価機構において、医 療事故事例等の収集が開始された。 2019 年に医療事故に関係した当事者職種( 重複解答可) の報告 数が 5,673 件で、前年度 (4,565 ) より増加している 1 。その約半 数である 2,673 件に、看護師の関与が認められる。嶋森 (2004) 看護師の⽴場について、次のように述べている。看護師は医師と 並んで患者に直接医療を提供する役割を担っている 2 。そして看 護師は患者の最もそばにいて、最も医療事故の当事者になりや すい⽴場にある 2 。この意味で、看護師は、医療事故に関与する リスクが最も⾼い職種であると⾔えよう。 看護師は、⾼度な判断を要する頭脳労働も⾁体労働も担い、し かも複数の業務を同時にこなさなければならない。治療のあら ゆる段階に関与する可能性があり、患者との接触時間が⻑く、⼼ 理的な負担も⼤きい。さらに近年は、医療の⾼度化や在院⽇数の 短縮化、医療に対するニーズの多様化が進んでいる。今後、看護 業務がより複雑化することが予測される。こういった看護師業 務上の特性や看護業界を取り巻く状況が、医療事故や医療場⾯ でのヒヤリハットに少なからず影響していくものと考えられる。 ⽇本医療機能評価機構における医療事故情報収集等事業・平 28 年年報によると、 2016 1 ⽉〜 12 ⽉医療事故として報告 *1:岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科 *2:岡山大学大学院社会文化科学研究科 *1: Graduate School of Interdisciplinary Science and Engineering in Health Systems , Okayama University *2: Graduate School of Humanities and Social Sciences, Okayama University 〈研究ノート〉 29

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看護場⾯における確認不⾜を引き起こす

要因の認識に関する検討 左婉馨*1 兵藤好美*1 ⽥中共⼦*2 五福明夫*1

Consideration about recognition of factors causing lack of confirmation in the nursing scene

Zuo Wanxin *1, Yoshimi Hyodo*1 Tomoko Tanaka *2 and Akio Gofuku*1

Abstract - In the work process of nurses with high risk, it is very urgent to take countermeasures against

the “lack of confirmation” of the main factors. Therefore, the purpose of this study is to clarify the details

of the factors leading to the lack of confirmation, grasp the number of near misses, and to explore what kind

of factors the individual characteristics of the nurse who acts as a stopper. We recruited 500 nurses on the

Web and asked about the frequency of near misses due to lack of confirmation, the awareness of the causes

of lack of confirmation, self-evaluation of stoppers, and the reasons why near misses did not lead to

accidents. As a result, three factors were extracted regarding the recognition of the factors of lack of

confirmation: "lack of consciousness", "inability to concentrate", and "lack of knowledge / experience".

Three factors were extracted for self-evaluation of stopper characteristics: "awareness," "verification," and

"cautiousness". In order to reduce the lack of confirmation, it is necessary to secure and allocate appropriate

personnel and create an environment where treatment can be concentrated. Nurses should also raise

knowledge and the awareness of the importance of confirmation. In addition, it is necessary to improve the

clinical judgment of new nurses in order to prevent near misses. And it is thought that new nurses will

become more confident by accumulating experience and affirming their abilities from their superiors,

seniors and colleagues.

Keywords : lack of confirmation, stoppers, nurse

1.はじめに

1999年 横浜市⼤病院の患者取り違え事故をきっかけに、⽇本でも医療事故に対する関⼼が⾼まり、安全な医療を求めるようになった。厚⽣労働省は、2001 年に医療安全対策ネットワーク事業を開始し、2004 年には⽇本医療機能評価機構において、医療事故事例等の収集が開始された。

2019 年に医療事故に関係した当事者職種(重複解答可)の報告数が5,673件で、前年度(4,565件)より増加している 1。その約半数である 2,673件に、看護師の関与が認められる。嶋森(2004)は看護師の⽴場について、次のように述べている。看護師は医師と並んで患者に直接医療を提供する役割を担っている 2。そして看

護師は患者の最もそばにいて、最も医療事故の当事者になりやすい⽴場にある 2。この意味で、看護師は、医療事故に関与するリスクが最も⾼い職種であると⾔えよう。 看護師は、⾼度な判断を要する頭脳労働も⾁体労働も担い、しかも複数の業務を同時にこなさなければならない。治療のあらゆる段階に関与する可能性があり、患者との接触時間が⻑く、⼼理的な負担も⼤きい。さらに近年は、医療の⾼度化や在院⽇数の短縮化、医療に対するニーズの多様化が進んでいる。今後、看護業務がより複雑化することが予測される。こういった看護師業務上の特性や看護業界を取り巻く状況が、医療事故や医療場⾯でのヒヤリハットに少なからず影響していくものと考えられる。 ⽇本医療機能評価機構における医療事故情報収集等事業・平成 28年年報によると、2016年 1⽉〜12⽉医療事故として報告

*1:岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科

*2:岡山大学大学院社会文化科学研究科*1: Graduate School of Interdisciplinary Science and Engineering in

Health Systems , Okayama University *2: Graduate School of Humanities and Social Sciences, Okayama

University

〈研究ノート〉

29- 29 -

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された 3,428件の発⽣要因件数(複数回答)のうち、最も多いのは「確認を怠った」(11.3%)3であったという。次いで「患者側」(11.2%)、「観察を怠った」(10.5%)の順 3とある。なお藤井ら(2020)は、病院における「確認不⾜」という要因が、薬剤、治療処置、検査、療養上の世話など、インシデント分類のすべての項⽬で⾼い割合を⽰す 4ことを指摘している。

現在、戦略的ヒューマンエラー対策において、最も効果が⼤きいのは⼯学的対策であり、最も期待できない対策は⼈間の⼼理に対する対策である 5と⾔われている。危険の排除として、第⼀に環境整備を優先すべきであることに異論はないだろう。しかしながら、エラーを最⼩確率に留めるためには、もとよりリスクの⾼い看護師の作業過程において、エラー発⽣に⼤きな役割を果たす「確認不⾜」への対策を講じることが、喫緊の課題といえる。中村ら(2016)は、医療事故やインシデントを未然に防ぐためには、その事例を確実かつ素早く把握し、その背景にあるエラーが⽣じた原因を分析し、適切に対処することが有効である 6と述べている。確認不⾜によるインシデントの原因について、藤井ら(2020)は、夜勤などの交替勤務を実施していること、看護師としての経験年数や指⽰の読み取りが不確実なことが影響する 4と述べている。また、⻄⼭ら(2016)は思い込みや、間違いであるはずがないと⾏動を進めることが確認不⾜につながる 7と指摘している。さらに、渡部ら(2010)は「思い込みや錯覚」、「単調な動作の繰り返しによる意識の低下」、「近道・省略本能」、「中途業務が⼊ったり他業務を優先したりしてしまう」といった⾏動が、確認不⾜の要因である 8と報告している。しかしながら、看護師がどのような場⾯において確認不⾜に陥りやすいのか、包括的視点における分析は⾒当たらない。 ヒューマンエラーを皆無にすることは難しいが、エラーの早

期発⾒やエラーが⽣じそうな状態を改善することはできる。チーズの⽳を抜けて進⾏していく⽮を⽌めるもの、すなわちストッパーとなる存在があれば、事故への進⾏過程が⽌められる。その機能をよく発揮する看護師を、ハイストッパーナースと仮称した。 その⾃⼰評価が⾼い者は、確認不⾜のヒヤリハットは少ないのか。確認不⾜要因の認識とストッパー特性との関係はあるのか。確認不⾜に陥る要因に関して、事故防⽌能⼒の⾼い⼈はどんな認識を持っているのかを知ることは、事故防⽌にとって⼤事な側⾯であると考えた。 そこで本研究では、確認不⾜に⾄る要因の詳細を明らかにすると共に、ストッパーとなるナースの個⼈特性との関連についても探索することを⽬的とする。

2.研究⽅法

2.1 調査⽅法と対象者 クロス・マーケティング社の有するパネルを利⽤し、Web 上にて調査への参加者を募り、回答サンプルを得た。サンプルを収集するための回答画⾯の作成と回答データの収集については、クロス・マーケティング社に委託した。回答者の設定として、回答時点において看護師として現職を有することを条件とした。

2.2 調査期間 調査期間は2020年3⽉6⽇〜3⽉9⽇であった。 2.3 調査内容 2.3.1 属性 属性として、性別、年齢、居住地域、勤務年数、所属部署、職

位を尋ねた。 2.3.2 確認不⾜によるヒヤリハットの頻度 対象者が、2019年度(‘19年 4⽉〜’20年 2⽉)の間に確認不⾜によるヒヤリハットを起こしたと⾃覚し、記憶している回数の報告を求めた。

2.3.3 確認不⾜の要因に関する認識 確認不⾜の要因に関する認識を問う20項⽬を設定した。これらは、医療機能評価機構のホームページに掲載された、2010 年から2019年3⽉までの間に、看護師の確認不⾜により起きたとされる 128 件の医療事故の情報を参照し、その背景要因とされるものをもとに作成した。評定法は、 「1:全くあてはまらない」、「2:あまりにあてはまらない」、「3:どちらとも⾔えない」、「4:やや当てはまる」、「5:⼤変当てはまる」の 5 件法とした。

2.3.4 ストッパー特性に関する⾃⼰評価 ストッパーとして機能する看護師の個⼈特性について、⾃⼰評定を求める 20 項⽬を設定した。これらは、⽥中ら(2013)が報告した医療事故のハイストッパーナースにみられる特性 9をもとに作成した。確認、理論性、発信、予測、感性、俯瞰の要素を含む。「1:全くあてはまらない」、「2:あまりにあてはまらない」、「3:どちらとも⾔えない」、「4:やや当てはまる」、「5:⼤変当てはまる」の 5 件法とした。

2.4 分析⽅法 対象者の属性は、記述的統計を⽤いて整理した。属性間における回答の差は、t検定もしくは1要因の分散分析によって検討し、有意⽔準は両側 5%とした。 確認不⾜の要因に関する認識 20 項⽬に対して、主因⼦法・

Promax回転による因⼦分析を⾏った。また、属性による回答の差は t検定もしくは1要因の分散分析によって検討した。確認不⾜の要因に関する認識の20項⽬それぞれにおいて、平均値を基準とし、評価得点が平均値以上の看護師を⾼群、平均値以下の看護師を低群に分け、ヒヤリハット件数に差があるかどうか、t検定を⽤いて検討した。 ストッパー特性に関する⾃⼰評価20項⽬に対しては、主因⼦

法・Promax回転による因⼦分析を⾏った。また、ストッパー特性の因⼦ごとに、項⽬ごとに、勤務年数による差があるかどうかを 1 要因の分散分析によって検討した。ストッパー特性の⾃⼰評価20項⽬それぞれにおいて、平均値を基準とし、評価得点が平均値以上の看護師を⾼群、平均値以下の看護師を低群に分け、ヒヤリハット件数に差があるかどうか、t検定を⽤いて検討した。

1要因の分散分析を⾏った場合、Levene検定にて等分散を確認した後分析を⾏い、Bonferroni法による多重⽐較を⽤いた。

統計解析には、統計ソフト SPSS Statistics 25.0を使⽤した。 2.5 倫理的配慮 本研究は岡⼭⼤学⼤学院保健学研究科看護学分野倫理審査委

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員会の承認(T19-04)を得て実施した。調査実施にあたっては、調査は無記名であること、⾃由意思による研究協⼒であること、プライバシーは保護されることを Web 画⾯上で説明し、回答をもって同意したものとみなした。

3.研究結果

3.1 対象者の属性 回答かつ分析の対象とした回答者 500 名の属性は、以下の通りであった。性別は⼥性88.4%、男性11.6%で、年代は20代から60代に及ぶが、30代と40代が半数を占めた。勤務年数は0.9年から50.1年までだったが、20年以上が33.8%と3割を超えており、平均16.0年(SD±9.5)であった。所属部署は26の科に及ぶが、内科系が35.8%と3割を超えていた。職位については、看護師87.0%、主任(副看護師⻑)7.4%、師⻑1.8%、安全管理者1.0%、その他2.8%であった(表1)。

3.2 確認不⾜によるヒヤリハット経験の数 今回回答者となった看護師 500名が、2019年度に起こしたと認識するヒヤリハットで、確認不⾜によると考えているものの総数は4,390件であった。こうした確認不⾜のヒヤリハットの⼀⼈あたりの経験回数をみると、分析対象者500名のうち、3回以上の者が267名(53.4%)と最も多く、次いで1〜2回の者が121名(24.2%)、0 回の者が 112 名(22.4%)であった。すなわち 388 名(77.6%)は確認不⾜のヒヤリハットを経験していた。回答者全体における平均経験回数は8.8回(SD±14.8)であった(表2)。

3.3 属性内訳ごとにみた確認不⾜のヒヤリハット経験の数 属性間の差について検討したところ、性別、年齢、勤務年数、

勤務部署におけるヒヤリハット件数には、有意な差は認められなかった(表3)。

3.4 確認不⾜の要因の認識に関する因⼦分析 確認不⾜の要因に関する認識 20 項⽬に対して主因⼦法・

Promax 回転による因⼦分析を⾏った。固有値の減衰状況(10.670,1.713,1.003,0.819,…)と因⼦の解釈可能性から3因⼦を 抽出した(表4)。

第1因⼦は注意散漫、確認に関する認識不⾜、薬剤の類似性、確認⽅法の不適切、思い込みといった10項⽬で構成されていることから、「認識不⾜」因⼦と命名した。第2因⼦は多忙、中断業務、慣れといった7項⽬で構成されていることから、「集中不可」因⼦と命名した。第3因⼦は専⾨知識・経験不⾜、確認に関するルールを知らなかったといった 3 項⽬で構成されていることから、「知識経験不⾜」因⼦と命名した。

信頼性の検証については20項⽬全体の、Cronbachのα係数は0.95である。また、 因⼦それぞれの Cronbachのα 係数については、「認識不⾜」でα=.94、「集中不可」でα=.92、「知識経験不⾜」α=.83と⼗分な値が得られた(表4)。

3 つの因⼦に相当する項⽬の平均値を算出し、「認識不⾜」因⼦得点(平均 3.84、SD 0.84)、「集中不可」因⼦得点(平均 4.31、SD 0.70)、「知識経験不⾜」因⼦得点(平均 3.87、SD 0.83)とした。

表2 2019年の確認不⾜によると考えられるヒヤリハット経験回数別にみた経験者の数 n=500

回数/人 人数(%)

0 回 112(22.4)

1〜2 回 121(24.2)

3 回以上 267(53.4)

合計 500(100.0)

(延べ4,390 件中)

表1 回答かつ分析対象者の属性 n=500 属性 ⼈数 %

性別 男性 58 11.6

⼥性 442 88.4

20 代 76 15.2

30 代 179 35.8

40 代 154 30.8

50 代以上 91 18.2

地域

北海道 41 8.2

東北 35 7.0

関東 133 26.6

中部 69 13.8

近畿 75 15.0

中国・四国 60 12.0

九州 87 17.4

勤務年数

0〜5 年未満 56 11.2

5〜10 年未満 103 20.6

10〜15 年未満 99 19.8

15〜20 年未満 73 14.6

20 年以上 169 33.8

所属部署

内科系 179 35.8

外科系 67 13.4

外来 48 9.6

⼿術室 21 4.2

集中治療室 22 4.4

その他 163 32.6

職位

看護師 435 87.0

主任(副師⻑) 37 7.4

師⻑ 9 1.8

医療安全管理者 5 1.0

その他 14 2.8

看護場面における確認不足を引き起こす要因の認識に関する検討

31- 31 -

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表4 確認不⾜の要因の認識に関する因⼦分析 (Promax回転後の因⼦パターン) 項⽬番号・内容 Mean(SD) I Ⅱ Ⅲ

13.形や⾊が似ていた時 3.73(1.11) 0.91 -0.09 -0.05

14.間違いやすい配列だった時 3.79(1.06) 0.88 -0.03 -0.06

15.単調な動作の繰り返しで、意識が低下した時 3.83(1.08) 0.82 0.03 -0.08

17.他のことに注意が向いていた。他のことを考えていた時 3.99(1.00) 0.74 0.20 -0.1

12.記憶だけに頼った時 3.79(1.03) 0.73 0.01 0.08

16.重要性に関する認識が不⾜していた時 3.80(1.07) 0.71 -0.04 0.18

19.他の⼈がやってくれたので、確認しなくても⼤丈夫だと思った時

3.87(1.11) 0.70 0.07 0.01

11.体調不良で注意散漫だった時 3.69(1.08) 0.67 -0.04 0.12

18.確認するまでもなく確かだと思い込んだ時 4.02(1.01) 0.65 0.19 -0.02

8.声だし、指差し確認をしなかった時 3.89(1.02) 0.42 0.22 0.08

2.時間切迫で、急がされた時 4.39(0.87) -0.15 0.93 0.04

1.業務が重なり、多忙だった時 4.45(0.87) -0.07 0.88 -0.05

9.焦っていた時 4.35(0.88) 0.13 0.76 -0.05

10.思い込みをしてしまった時 4.44(0.77) 0.04 0.75 0.00

6.中途業務が⼊った時 4.20(0.90) 0.17 0.64 -0.03

5.いつもやっているからという慣れがあった時 4.23(0.89) 0.09 0.55 0.14

7.注意を払わずに、⽬を通した時 4.11(0.94) 0.26 0.43 0.16

4.専⾨知識が不⾜していた時 3.70(1.12) -0.14 0.07 0.97

3.病院の確認に関するルールを知らなかった時 3.47(1.18) 0.19 -0.06 0.60

20.専⾨的な経験が不⾜していた時 3.74(1.05) 0.44 -0.07 0.49

因⼦相関⾏列 I Ⅱ Ⅲ

I − 0.69 0.69

Ⅱ − 0.55

Ⅲ −

表3 属性内訳ごとにみた確認不⾜ヒヤリハット経験の数 n=500

属性 ヒヤリハット 件数 Mean(SD)

性別 男性 700 12.07(16.49)

⼥性 3690 8.35(14.50)

年齢 20 代 639 8.41(12.02)

30 代 1520 8.49(14.90)

40 代 1299 8.44(13.06)

50 代以上 932 10.24(18.94)

勤務年数 0〜5 年未満 573 10.23(15.46)

5〜10 年未満 1014 9.84(15.22)

10〜15 年未満 519 5.24(8.11)

15〜20 年未満 679 9.30(15.17)

20 年以上 1605 9.50(16.84)

所属部署 内科系 1636 9.14(14.93)

外科系 578 8.63(13.04)

外来 230 4.79(13.37)

⼿術室 165 7.86(12.02)

集中治療室 262 11.91(10.70)

その他 1519 9.32(16.35)

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表5確認不⾜要因の認識にみられる勤務部署の差

(項⽬ごと

)

項⽬

番号

・内

部署

等分

F値

df (5,

494)

科系

科系

⼿術

集中

治療

(n=1

79)

(n=6

7)

(n=4

8)

(n=2

1)

(n=2

2)

Mea

n(SD

) M

ean(

SD)

Mea

n(SD

) M

ean(

SD)

Mea

n(SD

)

1.業務

が重

なり

、多

忙だ

った

4.46(

0.84)

4.3

3(1.0

5)

4.33(

1.04)

4.2

4(1.0

9)

4.36(

1.05)

0.4

3 0.4

8

2.時間

切迫

で、

急が

され

た時

4.4

0(0.8

5)

4.21(

1.05)

4.2

1(1.0

5)

4.24(

1.00)

4.3

6(1.0

0)

0.41

0.80

3.病院

の確

認に

関す

るル

ール

を知

らな

かっ

た時

3.5

0(1.1

3)

3.37(

1.25)

3.3

8(1.2

7)

3.48(

1.17)

3.6

4(1.2

6)

0.71

0.32

4.専⾨

知識

が不

⾜し

てい

た時

3.6

6(1.1

2)

3.55(

1.20)

3.8

5(1.1

9)

3.62(

1.20)

3.5

5(1.1

4)

0.85

0.55

5.いつ

もや

って

いる

から

とい

う慣

れが

あっ

た時

4.2

6(0.8

6)

3.91(

1.03)

4.2

9(0.9

2)

3.95(

0.92)

3.7

7(1.0

7)

0.73

3.19*

6.中途

業務

が⼊

った

4.16(

0.95)

4.1

8(0.8

5)

4.10(

0.95)

3.8

6(1.1

1)

4.23(

0.81)

0.7

4 0.6

0

7.注意

を払

わず

に、

⽬を

通し

た時

4.1

1(0.9

7)

4.03(

0.95)

4.0

2(1.0

0)

4.00(

0.84)

3.9

1(0.9

2)

0.74

0.30

8.声だ

し、

指差

し確

認を

しな

かっ

た時

3.8

5(1.0

4)

3.91(

1.00)

3.9

2(1.0

1)

3.67(

1.20)

3.8

6(0.9

9)

0.50

0.26

9.焦っ

てい

た時

4.3

1(0.9

3)

4.15(

0.93)

4.3

5(0.8

4)

4.33(

1.02)

4.3

2(1.0

0)

0.80

0.49

10.思

い込

みを

して

しま

った

4.39(

0.83)

4.2

8(0.8

1)

4.52(

0.83)

4.4

3(0.8

7)

4.45(

0.80)

0.9

3 0.6

3

11.体

調不

良で

注意

散漫

だっ

た時

3.7

3(1.0

8)

3.46(

1.01)

3.6

5(1.2

3)

3.43(

1.12)

3.3

6(1.1

4)

0.61

1.28

12.記

憶だ

けに

頼っ

た時

3.8

5(1.0

0)

3.46(

1.01)

3.7

7(1.1

0)

3.57(

1.17)

3.5

5(1.0

6)

0.59

2.05

13.形

や⾊

が似

てい

た時

3.7

6(1.0

9)

3.66(

1.04)

3.7

3(1.2

0)

3.57(

0.98)

3.4

5(1.1

4)

0.87

0.52

14.間

違い

やす

い配

列だ

った

3.81(

1.05)

3.6

1(1.0

1)

3.90(

1.06)

3.7

6(1.0

0)

3.59(

0.96)

0.9

2 0.8

0

15.単

調な

動作

の繰

り返

しで

、意

識が

低下

した

3.86(

1.13)

3.6

4(1.0

3)

3.79(

1.13)

3.8

6(0.6

6)

3.32(

1.36)

0.0

2 1.4

9

16.重

要性

に関

する

認識

が不

⾜し

てい

た時

3.7

7(1.0

8)

3.64(

1.06)

3.7

9(1.2

0)

3.95(

0.81)

3.3

6(1.2

9)

0.08

1.03

17.他

のこ

とに

注意

が向

いて

いた

。他

のこ

とを

考え

てい

た時

3.9

9(1.0

4)

3.85(

0.93)

3.8

1(1.2

0)

3.95(

0.70)

3.8

2(1.1

4)

0.04

0.46

18.確

認す

るま

でも

なく

確か

だと

思い

込ん

だ時

4.0

4(1.0

1)

3.93(

0.98)

3.9

2(1.0

7)

3.71(

1.01)

3.6

4(1.2

9)

0.12

1.18

19.他

の⼈

がや

って

くれ

たの

で、確

認し

なく

ても

⼤丈

夫だ

と思

った

3.92(

1.08)

3.7

9(1.1

4)

3.58(

1.30)

3.9

5(1.0

2)

3.68(

1.29)

0.0

5 1.0

3

20.専

⾨的

な経

験が

不⾜

して

いた

3.75(

1.02)

3.6

9(1.0

5)

3.63(

1.32)

3.8

6(1.0

6)

3.41(

1.22)

0.0

9 0.6

5

* :p<

.05; *

*:p<.

01

看護場面における確認不足を引き起こす要因の認識に関する検討

33- 33 -

- -0123456789

Page 6: 0123 456*7%82(9:3

表6 確認不⾜要因の認識にみられる確認不⾜のヒヤリハット件数⾼低群間の差

項⽬番号・内容 ヒヤリハット件数

Mean(SD) t値 df(498)

認識不⾜

13.形や⾊が似ていた時 得点低群 10.87(16.48)

2.14* 得点⾼群 7.71(13.73)

14.間違いやすい配列だった時 得点低群 9.11(15.53)

0.34 得点⾼群 8.63(14.45)

15.単調な動作の繰り返しで、意識が低下した時 得点低群 9.34(15.68)

0.56 得点⾼群 8.54(14.39)

17.他のことに注意が向いていた。他のことを考えていた時

得点低群 8.46(14.88) 0.27

得点⾼群 8.88(14.77)

12.記憶だけに頼った時 得点低群 9.88(15.65)

1.11 得点⾼群 8.26(14.34)

16.重要性に関する認識が不⾜していた時 得点低群 9.16(14.23)

0.40 得点⾼群 8.60(15.04)

19.他の⼈がやってくれたので、確認しなくても⼤丈夫だと思った時

得点低群 8.78(15,45) 0.01

得点⾼群 8.78(14.52)

11.体調不良で注意散漫だった時 得点低群 9.51(15.11)

0.82 得点⾼群 8.38(14.60)

18.確認するまでもなく確かだと思い込んだ時 得点低群 8.07(13.88)

1.42 得点⾼群 10.03(16.21)

8.声だし、指差し確認をしなかった時 得点低群 8.25(12.79)

0.50 得点⾼群 8.99(15.50)

集中不可

2.時間切迫で、急がされた時 得点低群 6.85(11.05)

2.70** 得点⾼群 10.25(16.95)

1.業務が重なり、多忙だった時 得点低群 7.09(12.44)

2.06* 得点⾼群 9.86(16.02)

9.焦っていた時 得点低群 6.72(11.42)

2.99** 得点⾼群 10.55(16.97)

10.思い込みをしてしまった時 得点低群 6.99(12.55)

2.44* 得点⾼群 10.11(16.13)

6.中途業務が⼊った時 得点低群 7.72(13.09)

1.81 得点⾼群 10.21(16.71)

5.いつもやっているからという慣れがあった時 得点低群 7.65(12.36)

1.88 得点⾼群 10.26(17.36)

7.注意を払わずに、⽬を通した時 得点低群 8.01(13.69)

1.43 得点⾼群 10.03(16.34)

知識経験不⾜

4.専⾨知識が不⾜していた時 得点低群 7.91(12.40)

0.93 得点⾼群 9.21(15.83)

3.病院の確認に関するルールを知らなかった時 得点低群 8.55(13.94)

0.31 得点⾼群 8.96(15.44)

20.専⾨的な経験が不⾜していた時 得点低群 7.79(13.07)

1.11 得点⾼群 9.32(15.62)

*: p<.05; **: p<.01

34

統合科学 創刊号(2021)

- 34 -

- -0123456789

Page 7: 0123 456*7%82(9:3

表7 ストッパー特性に関する因⼦分析(Promax回転後の因⼦パターン) 項⽬番号・内容 Mean(SD) I Ⅱ Ⅲ

18.何気ない会話からも、「情報」を拾うことが得意な⽅である 3.30(0.96) 0.89 -0.07 -0.12

17.何か変、いつもと違うなど「細かい」ことに気づく⽅である 3.35(0.91) 0.83 0.03 -0.05

19.視界を広く持ち「まず全体」を「⼀通り点検」するようにしている

3.30(0.94) 0.75 0.07 -0.01

15.ポイントを押さえた「速い判断」が得意な⽅である 3.06(1.02) 0.7 0.05 -0.17

20.これは〜だったはず、など記憶との違いに気づく⽅である 3.35(0.87) 0.62 0.15 -0.04

16.「環境」が整っていないと嫌で、気になる 3.39(0.95) 0.34 0.16 0.24

7.他⼈が⾏ったことを「信⽤しない」⽅である 3.14(0.98) 0.31 0.07 0.25

12.⾃分の疑問や状態を、「知らせる」ようにしている 3.52(0.88) -0.05 0.86 -0.14

10.わからないことは、⾃分が理解できるまで「尋ねる」 3.57(0.89) -0.08 0.81 0.04

11.仕事で疑問に思ったことは、「指摘する」ようにしている 3.43(0.91) 0.07 0.76 -0.17

9.常に「なぜか」と論理的に考えるようにしている 3.44(0.93) 0.19 0.57 0.09

8.予想と違うことがあれば、その「理由」を探して納得する 3.43(0.88) 0.11 0.56 0.14

13.教科書の知識や経験したパターンから、変化を予測するようにしている

3.33(0.89) 0.28 0.48 0.05

14.頭の中で、危険の発⽣を「シミュレーション」するようにしている

3.44(0.95) 0.32 0.39 0.07

5.「⼼配」症である 3.44(1.07) 0.06 -0.06 0.8

3.「神経質」である 3.15(1.08) 0.2 -0.12 0.76

2.「気が⼩さい」⽅である 3.32(1.10) -0.26 0.01 0.75

6.何事においても「⾃信がない」 3.18(1.07) -0.34 0.07 0.73

4.些細なことも「気になる」⽅である 3.33(1.03) 0.17 -0.03 0.71

1.「⾃分で」「何度も」「納得がいくまで」念⼊りに確認しないと気が済まない

3.48(0.92) 0.3 0.17 0.35

因⼦相関⾏列 I Ⅱ Ⅲ

I − 0.75 0.36

Ⅱ − 0.34

Ⅲ −

表8 ストッパー特性の⾃⼰評価にみられる勤務年数の差(下位尺度別)

下位尺度 勤務年数

等分散 F値 df(4,495)

多重⽐較 0〜5年 (n=56)

5〜10年 (n=103)

10〜15年 (n=99)

15〜20年 (n=73)

20年以上 (n=169)

気づき 3.06(0.77) 3.13(0.73) 3.29(0.54) 3.34(0.78) 3.39(0.66) 0.01 4.00 ** 0〜5年,5〜10年<20年以上 検証 3.23(0.64) 3.33(0.67) 3.40(0.58) 3.58(0.61) 3.49(0.66) 0.81 3.54** 0〜5年<15〜20年 ⽤⼼深さ 3.36(0.75) 3.32(0.77) 3.33(0.75) 3.40(0.75) 3.28(0.75) 1.00 0.41

*: p<.05; **: p<.01

看護場面における確認不足を引き起こす要因の認識に関する検討

35- 35 -

- -0123456789

Page 8: 0123 456*7%82(9:3

表9 ストッパー特性の自己評価にみられる勤務年数の差(項

目ごと)

項⽬

番号

・内

勤務

年数

等分

F値

df(4

,495)

重⽐

0〜5年

5〜

10年

10

〜15

15〜

20年

20

年以

(n=5

6)

(n=1

03)

(n=9

9)

(n=7

3)

(n=1

69)

Mea

n(SD

) M

ean(

SD)

Mea

n(SD

) M

ean(

SD)

Mea

n(SD

)

1.「⾃

分で

」「何

度も

」「納

得が

いく

まで

」念

⼊り

に確

認し

ない

と気

が済

まな

3.36(

0.94)

3.3

1(0.9

6)

3.42(

0.88)

3.6

5(0.8

9)

3.59(

0.89)

0.9

3 2.6

0*

2.「気

が⼩

さい

」⽅

であ

3.36(

1.05)

3.3

8(1.0

6)

3.42(

1.12)

3.3

7(1.1

5)

3.18(

1.11)

0.7

3 1.0

3

3.「神

経質

」で

ある

3.0

0(1.1

6)

3.08(

1.09)

3.1

8(1.0

3)

3.25(

1.12)

3.1

8(1.0

5)

0.74

0.6

4.些細

なこ

とも

「気

にな

る」

⽅で

ある

3.3

4(1.0

1)

3.21(

1.04)

3.2

9(0.9

9)

3.45(

1.03)

3.3

6(1.0

5)

0.96

0.72

5.「⼼

配」

症で

ある

3.4

2(1.1

2)

3.50(

1.07)

3.5

1(1.0

6)

3.52(

1.07)

3.3

2(1.0

6)

0.98

0.81

6.何事

にお

いて

も「

⾃信

がな

い」

3.3

9(1.1

1)

3.38(

1.01)

3.2

1(1.0

3)

3.13(

1.14)

2.9

8(1.0

6)

0.72

3.10*

20

年以

上<

5〜10

7.他⼈

が⾏

った

こと

を「

信⽤

しな

い」

⽅で

ある

3.0

3(1.1

3)

3.03(

1.01)

3.0

8(0.9

0)

3.28(

0.95)

3.2

3(0.9

5)

0.32

1.31

8.予想

と違

うこ

とが

あれ

ば、

その

「理

由」

を探

して

納得

する

3.3

4(0.9

6)

3.34(

0.93)

3.3

8(0.7

9)

3.63(

0.85)

3.4

6(0.8

9)

0.42

1.52

9.常に

「な

ぜか

」と

論理

的に

考え

るよ

うに

して

いる

3.2

2(1.0

7)

3.38(

0.87)

3.3

4(0.7

9)

3.60(

0.96)

3.5

5(0.9

7)

0.04

2.32

10.わ

から

ない

こと

は、

⾃分

が理

解で

きる

まで

「尋

ねる

3.46(

0.84)

3.4

5(0.8

7)

3.51(

0.87)

3.7

2(0.8

0)

3.66(

0.95)

0.5

3 1.7

4

11.仕

事で

疑問

に思

った

こと

は、

「指

摘す

る」

よう

にし

てい

3.10(

1.03)

3.3

3(0.9

3)

3.36(

0.80)

3.6

1(0.8

4)

3.58(

0.91)

0.3

6 4.3

6**

0〜5年

<15

〜20

年,20

年以

12.⾃

分の

疑問

や状

態を

、「

知ら

せる

」よ

うに

して

いる

3.3

1(1.0

0)

3.42(

0.89)

3.4

9(0.7

8)

3.67(

0.82)

3.6

3(0.8

8)

0.31

2.40*

13.教

科書

の知

識や

経験

した

パタ

ーン

から

、変

化を

予測

する

よう

にし

てい

3.00(

0.93)

3.1

6(0.9

0)

3.32(

0.75)

3.5

1(0.8

6)

3.50(

0.93)

0.3

1 5.3

1**

0〜5年

<15

〜20

年,20

年以

上;

5〜10

年<

20年

以上

14.頭

の中

で、

危険

の発

⽣を

「シ

ミュ

レー

ショ

ン」

する

よう

にし

てい

3.19(

0.99)

3.2

6(0.9

5)

3.47(

0.81)

3.6

9(0.9

2)

3.51(

0.99)

0.4

3 3.6

5**

0〜5年

,5〜10

年<

15〜

20年

15.ポ

イン

トを

押さ

えた

「速

い判

断」

が得

意な

⽅で

ある

2.9

5(1.1

8)

3.01(

0.99)

3.0

4(0.8

8)

3.11(

1.15)

3.1

1(0.9

8)

0.00

0.4

16.「

環境

」が

整っ

てい

ない

と嫌

で、

気に

なる

3.2

5(0.9

4)

3.44(

0.94)

3.4

2(0.8

2)

3.40(

1.09)

3.4

0(0.9

7)

0.04

0.39

17.何

か変

、い

つも

と違

うな

ど「

細か

い」

こと

に気

づく

⽅で

ある

2.9

8(1.0

4)

3.09(

0.91)

3.3

5(0.7

5)

3.47(

0.95)

3.5

9(0.8

5)

0.08

8.22*

* 0〜

5年

,5〜10

年<

15〜

20年

,20年

以上

18.何

気な

い会

話か

らも

、「

情報

」を

拾う

こと

が得

意な

⽅で

ある

3.0

5(1.0

2)

3.07(

0.97)

3.4

2(0.8

4)

3.36(

1.04)

3.4

4(0.9

2)

0.21

3.96*

* 5〜

10年

<20

年以

19.視

界を

広く

持ち

「ま

ず全

体」

を「

⼀通

り点

検」

する

よう

にし

てい

3.00(

1.03)

3.1

1(0.9

5)

3.31(

0.77)

3.4

4(1.0

0)

3.48(

0.92)

0.1

2 4.6

7**

0〜5年

,5〜10

年<

20年

以上

20.こ

れは

〜だ

った

はず

、な

ど記

憶と

の違

いに

気づ

く⽅

であ

3.14(

1.04)

3.1

8(0.9

0)

3.44(

0.69)

3.3

1(0.8

5)

3.50(

0.87)

0.0

8 3.4

9**

5〜10

年<

20年

以上

*: p<

.05; *

*: p<

.01

36

統合科学 創刊号(2021)

- 36 -

- -0123456789

Page 9: 0123 456*7%82(9:3

3.5 確認不⾜の要因に関する認識にみられる属性の差 属性による確認不⾜の要因認識の因⼦を検討したところ、年齢、勤務年数、部署に関しては、1要因の分散分析において有意な差が⾒られなかった。 勤務部署による差異を詳しく分析する意図から、確認不⾜の要因の項⽬ごとに 1要因の分散分析を⾏なった。その結果、「5.いつもやっているからという慣れがあった時」において、有意な差が⾒られたが、多重⽐較では有意差は認められなかった(表5)。

3.6 確認不⾜要因の認識の⾼低群間における 確認不⾜のヒヤリハット件数の差

確認不⾜の要因に関する認識の20項⽬それぞれにおいて、評価得点を⾼低群に分け、ヒヤリハット件数に差があるかどうか、t検定を⽤いて検討した。その結果、「1.業務が重なり、多忙だった時」(t(498) =2.06, p<.05)、「2.時間切迫で、急がされた時」(t(498)=2.7, p<.01)、「9.焦っていた時」(t(498) =2.99, p<.01)、「10.思い込みをしてしまった時」(t(498) =2.44, p<.05)で⾼群のほうが低群より、有意にヒヤリハット件数が多かった。しかし、「13.形や⾊が似ていた時」(t(498) =2.14, p<.05)のみは、低群のほうが有意に⾼かった(表6)。

3.7 ストッパー特性に関する因⼦分析 ストッパー特性に関する⾃⼰評価20項⽬に対して主因⼦法・

Promax 回転による因⼦分析を⾏った。固有値の減衰状況(7.989,2.961,1.128,0.947,…)と因⼦の解釈可能性から3因⼦を抽出した。 第 1 因⼦は違うことに気がつく、情報を拾うことが得意であるといった7項⽬で構成されていることから、「気づき」因⼦と命名した。第2因⼦は疑問に対する態度、事前予測、シミュレーションといった7項⽬で構成されていることから、「検証」因⼦と命名した。第3因⼦は「神経質」、「⼼配症」、⾃信がない、細かい点にまで気を配る、念⼊りに確認しないと済まないといった6項⽬で構成されていることから、「⽤⼼深さ」因⼦と命名した。 信頼性の検証については、20項⽬全体のCronbachのα係数は

0.91であった。各因⼦については、「気づき」α=.86、「検証」α=.89、「⽤⼼深さ」α=.84と⼗分な値が得られた(表7)。

3 つの因⼦に相当する項⽬の平均値を算出し、「認識不⾜」因⼦得点(平均 3.84、SD 0.84)、「集中不可」因⼦得点(平均 3.45、SD 0.70)、「知識経験不⾜」因⼦得点(平均 3.31、SD 0.78)とした。

3.8 勤務年数によるストッパー特性の差 ストッパー特性の因⼦ごとに、勤務年数による差があるかどうかを1要因の分散分析によって検討した。その結果、「気づき」因⼦において0~5年未満、5~10年未満より20年以上のほうが顕著に⾼かった(F(4, 495) =4.00, p<0.01)。「検証」因⼦においては0~5年未満と⽐して、15~20年未満のほうが顕著に⾼かった(F(4, 495) =4.56, p<0.01)。また、「⽤⼼深さ」因⼦では、勤務年数の得点差は有意ではなかった(F(4, 495) =0.22, n.s.)(表8)。 ストッパー特性項⽬ごとに、勤務年数に関する 1 要因の分散分析を⾏なった。その結果を表9に⽰した。

3.9 ストッパー特性の⾼低群間における確認不⾜の ヒヤリハット件数の差

ストッパー特性の⾃⼰評価20項⽬それぞれにおいて、評価得点を⾼低群に分け、確認不⾜によると本⼈が考えるヒヤリハットの件数に差がみられるかを、t検定を⽤いて検討した。その結果、「5.「⼼配」症である」で、⾼群の⽅が低群より確認不⾜のヒヤリハット件数が有意に多かった(t(498) =2.25, p<.05)。

3.10 確認不⾜要因の認識とストッパー特性および ヒヤリハット件数の関連

確認不⾜要因の認識とストッパー特性およびヒヤリハット件数の関連について相関分析を⾏った。その結果、確認不⾜要因の認識の下位尺度(意識不⾜、集中不可、知識経験不⾜)とストッパー特性要因の下位尺度(気づき、検証、⽤⼼深さ)間には、有意な弱い正の相関が⾒られた(表10)。しかしながら、確認不⾜要因の認識、ストッパー特性のいずれも、ヒヤリハット件数との間に有意な相関は認められなかった。

4.考察

4.1 確認不⾜に⾄る要因の認識における因⼦構造 看護場⾯において確認不⾜をもたらす要因になりうる、と対象者が認識する度合いを評定してもらった 20 項⽬からは、「認識不⾜」、「集中不可」、「知識経験不⾜」という3因⼦が抽出された。まず「認識不⾜」については、以下のように考えられる。 半崎ら(2012)は、看護学⽣が体験したヒヤリハットを分析した結果、要因の多くは注意⼒の⽋落や、学⽣だけで⾏える技術範囲の認識不⾜であった 10と述べている。「過信とは過⼤な信頼を抱くことであり、適正な警戒⼼を持って事象や状況を⾒定める努⼒を怠ること」11とされる。すなわち安全だと過信している場合は、危険が存在することを考えておらず、安全確認の認識が薄いことから確認不⾜に⾄り、ヒヤリハットにつながるという流れが考えられる。 その対策として、看護師における確認の重要性に関する認識を⾼めることが必要になろう。そこで「確認不⾜」に関する有効な対策の⼀つとして、鉄道や航空、製造や建設業などの産業において⾏っている指差呼称による確認が考えられる。(財)鉄道総合

尺 度

下位尺度 意識不足 集中不可知識経験不足 気づき 検証 用心深さ

意識不足 ― .724**

.738**

.189**

.255**

.304** 0.035

集中不可 ― .738**

.137*

.237**

.270** 0.070

知識経験不足 ― .145**

.225**

.232** 0.020

気づき ― .764**

.369** -0.051

検証 ― .582** 0.009

用心深さ ― 0.021

ヒヤリハット数 ―

表10  確認不足の要因認識とストッパー特性との関連(相関)

ヒヤリハット数

** p<.01 , * p<.05

ストッパー特性の自己評価確認不足の要因に関する認識

看護場面における確認不足を引き起こす要因の認識に関する検討

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技術研究所(1996)が公表した指差し呼称の効果の検証実験によると、「指差し呼称」する場合は「何もしない」場合に⽐べ、誤りの発⽣率が 6分の 1以下になった 12。スタッフ間のダブルチェックで注意を喚起しあう仕組みを持つことも、有効だろう。 「集中不可」に関しては、以下のように考えられる。加賀⼭ら

(2016)は、⾃⾝でコントロールしている作業⼯程の中に、他者からの要因で作業中断や業務に集中できない状態が⽣じた場合、「インシデントが発⽣しやすい」と⾃覚することが重要である 13

と述べている。すなわち、看護師が治療に集中できる環境を整えることの重要性を、⽰しているといえよう。 「知識経験不⾜」に関しては、以下のように考えられる。仲下ら(2016)は、看護学⽣のインシデントの発⽣原因には「判断誤り」が最も多く、次いで「指導者への報告・連絡・相談の不⾜」、「知識不⾜」、「観察不⾜」、「技術の未熟」などが関わったと報告している 14。⼒量不⾜が危険であることは学⽣も現職も同様であり、看護師⾃⾝が知識、能⼒を⾼めることは基本的に重要といえる。研修を受講すれば知識の獲得を促すことが期待できるという意味では、院内の研修会を定期に開催することなどが推奨される。

4.2 確認不⾜の要因認識における⾼低群による ヒヤリハット経験の差異

確認不⾜をもたらしうる要因として各項⽬をどの程度認識しているか、その認識の⾼低群間で、確認不⾜によると本⼈が考えるヒヤリハットの経験回数の差が認められたものがある。「業務が重なり、多忙だった時」、「時間切迫で、急がされた時」、「焦っていた時」、「思い込みをしてしまった時」の4項⽬において、⾼群のほうが低群に⽐べて有意に⾼い値を⽰した。 この結果を⽀持する研究として、以下がある。早⼄⼥ら(2011)は、忙しい場⾯や焦っている場⾯では、半数以上の看護師が指差呼称を省略していたと報告している 15。安達ら(2014)は、看護師は⽇常的に多重課題を求められることが多いこと、時間的切迫や作業量過多などの時間的圧⼒があること、周囲からのプレッシャーという社会的圧⼒もあることを指摘し、これらの環境要因が違反を⽣起させるとして注意を促している 16。⻄⼭ら(2016)は、思い込みや気持ちの焦りが確認不⾜の背景にあることを、報告している 7。 そこで実際にヒヤリハットにつながった⾏動としての多忙、時間切迫に起因する確認不⾜による事故を起こしにくい環境を作るには、そのアプローチとしてまず多忙な勤務状況の改善に向けて、適正な⼈員の確保と配置の⼯夫をすることが考えられる。加えて時間切迫の緩和策には、業務量の削減や、他の看護師に応援を依頼できる環境の整備が求められる。 個⼈特性としての思い込みについて、嶋森(2004)は、⾏動をモニターすることにより、思い込みによるエラーの防⽌につながる 17と指摘し、⾃分の⾏動を常にチェックし、修正を⾏って事故を防⽌していると考えられる。 多忙さや焦りがヒヤリハットをもたらすと認識している⼈に、実際にヒヤリハットの件数が多かったことは、経験から得た理解を反映したものと思われる。⼀⽅で、⾊や形の類似がヒヤリハットに繋がるとの認識が低い者に、実際のヒヤリハット件数が

多かったという結果は、詳細にわたる注意が不⾜している場合、ヒヤリハットに繋がる⾯があることを⽰唆する。

4.3 確認不⾜の要因認識に反映された勤務部署の特性 「5.いつもやっているからという慣れがあった時」という確認不⾜要因の認識に関する項⽬において、有意差が⾒られた。部署によってこの項⽬に関する意識が違った。

4.4 ストッパー特性の因⼦構造 ストッパー特性の⾃⼰評価20項⽬に関する因⼦分析では、「気づき」、「検証」、「⽤⼼深さ」という3因⼦が抽出された。事故の起こし易さの研究に終始するのではなく、ポジティブ⼼理学の着想を応⽤して、事故への流れを⽌めることに優れた看護師がいると想定するのが、ストッパーナースの発想であった。その⼈達はこれらの特性を発揮して、いわば何枚も並んだスイスチーズの⽳あき壁の隙間に遮断板を挿⼊するようにして、⽮が通り抜けていくのを⽌める。気づきや検証や⽤⼼深さが、事故への流れを妨げる⾏為となって、ストッパー機能を発揮していく。 安藤ら(2007)は、医療安全には、リスクに気づき表現することやその気づきを援助に⽣かす能⼒を育むことが重要である 18と述べている。そしてヒヤリハット報告を教材として活⽤すること、看護師のリスクに対する感性を育て、看護技術教育にもなる18としている。これは「気づき」の重要性を指摘している点で、今回の結果を⽀持する知⾒といえる。 ⽤⼼深く点検する姿勢が事故を防ぐという研究報告 19も、今回の結果を⽀持する。今回の⾒⽅を逆⽅向から⽀持する知⾒としては、迫⽥ら(2007)が、疑問に思っていても黙って指⽰に従ってしまう態度が強い看護師は、ヒヤリハットの報告が多い 20ことを報告している。つまり気になることを放置すればヒヤリハットを招くことになるが、今回の因⼦に⾒られた、疑問を持つ「検証」や何度も確認する「⽤⼼深さ」を意味する⾏為が実⾏されれば、インシデントの抑⽌が期待できることになる。看護師が⽬の前の現象について何故なのかを常に考える知的好奇⼼を持ち、分からなければ聞く勇気を持つよう⼼がけることで、検証や⽤⼼深さの発揮に結びつくことが期待される。

4.5 ストッパー特性と確認不⾜のヒヤリハット経験 ストッパー特性の項⽬ごとに⾃⼰評定の値の⾼低群を設定し、確認不⾜のヒヤリハットの経験件数の差をみた。「5.「⼼配」症である」という特性の⾃⼰評価得点が⾼いほうが、経験数は有意に⾼かった。「⼼配」症を⾃認する⼈は、何度も確認をしないと落ち着かないという⼼理があるものと推測されるが、本研究においてはそのような⼈はより多くの確認不⾜によるヒヤリハットを体験していた。多くのヒヤリハット事態を引き起こしてしまうという意味なのか、多く気づくことができるという意味なのかは、さらなる検討を要する。

4.6 ストッパー特性と属性 ストッパー特性の「気づき」因⼦と「検証」因⼦には、勤務年数による有意差がみられた。経験年数が浅い看護師より、勤務年数が⻑い看護師のほうが、ストッパー特性が⾼い値を⽰した。すなわちストッパーとなる能⼒が経験によって⾼まる能⼒である可能性、またはこれらの能⼒に優れた者が勤務を⻑年継続した

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可能性が考えられよう。 臨床判断能⼒とはさまざまなデータの分析と統合によって患者情報や看護場⾯を解釈し、現在の状態や起こりうる危険性を診断し、看護活動を決定する判断するための極めて重要な能⼒である 21。ストッパー特性の項⽬において、「教科書の知識や経験したパターンから、変化を予測するようにしている」「頭の中で、危険の発⽣を「シミュレーション」するようにしている」、「視界を広く持ち「まず全体」を「⼀通り点検」するようにしている」もその能⼒を表現できる。次の研究には、経験が臨床判断を磨くとの⾒⽅が⽰されている。

飯塚ら(2011)は、臨床判断には、それをいかに⾏うのかという看護師の技ともいえる側⾯が含まれており、看護師の業務遂⾏においてはこの点が重要だと指摘したうえで、このような知識は看護師個⼈の経験によるところが⼤きい 22と述べている。新⼈看護師は勤務年数が短く、まだ経験知も浅い。⼀層の研鑽が求められてはいるが、現実には個⼈の努⼒任せにするだけでは眼前の危険を回避できないため、先輩や職場からの⽀援が不可⽋と考えられる。 「6.何事においても「⾃信がない」」という評定項⽬では、勤続年数が0〜5年の看護師の得点が20年以上より有意に⾼かった。新⼈看護師は看護⼒の未熟さのため医療事故を引き起こすリスクが⾼いという思いや経験不⾜の認識で⾃信がないと考えられる。⼭崎ら(2008)は、⽇々の看護実践の積み重ねが、看護師としての実践能⼒への⾃信をもたらし、職業継続を⽀えていると述べている 23。新⼈看護師は⾃分の経験を増やし、上司、先輩や同僚から能⼒を認められる経験が加わることで、⾃分に⾃信を向上させると考えられる。それによって、疑問を抱いた場合に指摘するようになったり、⾃分で危険予測できるようなったり、ストッパー特性を発揮できるようになる。

先⾏研究においては、中堅看護師が成⻑への期待をもつ⼀⽅で⾃信が低く、⼼理的に不安定な状態にあるため、中堅看護師に対して、その努⼒を認めていることが伝わるように、労いや励ましといった声かけをすることが重要である、との指摘がなされている 24。

4.7 確認不⾜要因の認識とストッパー特性および ヒヤリハット件数の関連

確認不⾜要因の認識とストッパー特性の関連に関する分析において、確認不⾜要因の下位尺度とストッパー特性の下位尺度の間には、有意な弱い正の相関が⾒られたことから、互いの要因間には何らかの関連があると推察される。 ただ、確認不⾜要因の認識の⾼い⼈達はストッパー特性の値が⾼いのか、ストッパー特性の値が⾼い⼈達は確認不⾜要因の認識が⾼いのか、現時点では、その⽅向性すなわち因果関係まで特定することはできない。今後さらに分析を進め、この点を明らかにする必要がある。 また、確認不⾜要因の認識にしてもストッパー特性にしても、ヒヤリハット件数との間に有意な相関が⾒出されておらず、この2つの要因はヒヤリハット件数の増減にあまり関連を持たない可能性が考えられる。その理由がどこにあるのか、さらに探究

が必要と思われる。

5.まとめ

確認不⾜要因の認識について「意識不⾜」、「集中不可」、「知識・経験不⾜」という 3 因⼦、ストッパー特性について「気づき」、「検証」、「⽤⼼深さ」という3因⼦が抽出された。 確認不⾜をもたらしうる要因として、「業務が重なり、多忙だった時」、「時間切迫で、急がされた時」、「焦っていた時」、「思い込みをしてしまった時」の 4 項⽬において、評価得点高群の方が、ヒヤリハット件数に関し有意に高い値を示した。確認不⾜を減らすためには、多忙な勤務状況の改善、適正な⼈員の確保と配置、および治療に集中できる環境づくりが求められているといえる。 ストッパー特性の「気づき」因⼦と「検証」因⼦においては、経験年数が浅い看護師より、勤務年数が⻑い看護師のほうが、ストッパー特性が有意に⾼かった。新⼈看護師は個⼈の努⼒および先輩や職場からの⽀援で⾃分の能⼒を伸ばし、ストッパー特性を持つ看護師に育っていくことが⽰唆される。 確認不⾜要因の下位尺度とストッパー特性要因の下位尺度の間には、有意な弱い正の相関が⾒られたことから、互いの要因間には何らかの関連があるとみて、さらなる探求が課題である。

6.今後の課題

本研究では、確認不⾜の要因認識の尺度としての妥当性はまだ⼗分とは⾔えず改善の余地がある。今後は質問項⽬を⼀層洗練させ、確認不⾜についての有⽤な測定ツール開発を進めていきたい。

参考⽂献

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看護場面における確認不足を引き起こす要因の認識に関する検討

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Supplement

看護場面における確認不足に関する調査

1、これまで体験した確認不足によるヒヤリハットの事例として、最も印象に残るものを一つ、思い出してくださ

い。

1) 簡潔な題をお願いします。

2) その事例について、いつ、どこでなどの詳細を、下記に具体的にお書きください。

いつ(時間帯):

例:18:00頃

どこで:

例:病室で

誰が:

例:看護師の自分が

何を:

例:患者の薬を

どのように、どうした:

例:普段自宅で飲んでいた薬の回収結果を確認せず、病院が処方した降圧薬を与薬した。

どうなった:

例:結果的に過剰与薬となり、いっとき気分不良となったが、まもなく回復した。

3) 上記の事例で、確認不足に至った要因として、何が考えられるでしょうか。

何が影響していたか、どういうことが誘因になったか、広く考えてください。自分や他の人のこと、職場環

境など、直接的な原因や背景の状況を含めて、なるべく多く挙げてみてください。

4) 上記の事例で、大きな事故につながらずにすんだ理由として、何が考えられるでしょうか。

事故への流れを止めたものは何か、何が間違いの発見や回復策をし易くしていたのか、役に立ったと思うこ

とを、なるべく多く挙げてみてください。

5) ほかに「確認不足に陥りやすいとき」として思いつくことがあれば、自由にお書きください。

2. ご自分の経験から、どんな時に確認不足に陥りやすいと思われますか。以下の内容に関し、

看護場面における確認不足を引き起こす要因の認識に関する検討

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当てはまると思う程度をお答えください。「全く当てはまらない」から「大変当てはまる」の

うち、該当するものを一つだけ選んでください。(それぞれひとつずつ)

① 業務が重なり、多忙だった時 1 2 3 4 5

② 時間切迫で、急がされた時 1 2 3 4 5

③ 病院の確認に関するルールを知らなかった時 1 2 3 4 5

④ 専門知識が不足していた時 1 2 3 4 5

⑤ いつもやっているからという慣れがあった時 1 2 3 4 5

⑥ 中途業務が入ってしまった 1 2 3 4 5

⑦ 注意を払わずに、目を通した時 1 2 3 4 5

⑧ 声だし、指差し確認をしなかった時 1 2 3 4 5

⑨ 焦っていた時 1 2 3 4 5

⑩ 思い込みをしてしまった時 1 2 3 4 5

⑪ 体調不良で注意散漫だった時 1 2 3 4 5

⑫ 記憶だけに頼った時 1 2 3 4 5

⑬ 形や色が似ていた時 1 2 3 4 5

⑭ 間違いやすい配列だった時 1 2 3 4 5

⑮ 単調な動作の繰り返しで、意識が低下した時 1 2 3 4 5

⑯ 重要性に関する認識が不足していた時 1 2 3 4 5

⑰ 他のことに注意が向いていた。他のことを考えていた時 1 2 3 4 5

⑱ 確認するまでもなく確かだと思い込んだ時 1 2 3 4 5

⑲ 他の人がやってくれたので、確認しなくても大丈夫 1 2 3 4 5

だと思った時

⑳ 専門的な経験が不足していた時 1 2 3 4 5

大変あてはまる

やや当てはまる

どちらともいえない

あまり当てはまらない

全く当てはまらない

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3. 仕事をしているときのご自分について、以下のことはどのくらい当てはまるでしょうか。「全く当てはまらな

い」から「大変当てはまる」のうち、一つだけ選んでください。(それぞれひとつずつ)

① 「自分で」「何度も」「納得がいくまで」念入りに 1 2 3 4 5

確認しないと気が済まない

② 「気が小さい」方である 1 2 3 4 5

③ 「神経質」である 1 2 3 4 5

④ 些細なことも「気になる」方である 1 2 3 4 5

⑤ 「心配」症である 1 2 3 4 5

⑥ 何事においても「自信がない」 1 2 3 4 5

⑦ 他人が行ったことを「信用しない」方である 1 2 3 4 5

⑧ 予想と違うことがあれば、その「理由」を探して納得する 1 2 3 4 5

⑨ 常に「なぜか」と論理的に考えるようにしている 1 2 3 4 5

⑩ わからないことは、自分が理解できるまで「尋ねる」 1 2 3 4 5

⑪ 仕事で疑問に思ったことは、「指摘する」ようにしている 1 2 3 4 5

⑫ 自分の疑問や状態を、「知らせる」ようにしている 1 2 3 4 5

⑬ 教科書の知識や経験したパターンから、変化を予測する 1 2 3 4 5

ようにしている

⑭ 頭の中で、危険の発生を「シミュレーション」している 1 2 3 4 5

⑮ ポイントを押さえた「速い判断」が得意な方である 1 2 3 4 5

⑯ 「環境」が整っていないと嫌で、気になる 1 2 3 4 5

⑰ 他のことを考えていた時何か変、いつもと違うなど 1 2 3 4 5

「細かい」ことに気づく方である

⑱ 何気ない会話からも、「情報」を拾うことが得意な方である 1 2 3 4 5

⑲ 視界を広く持ち「まず全体」を「一通り点検」する 1 2 3 4 5

ようにしている

⑳ これは~だったはず、など記憶との違いに気づく方である 1 2 3 4 5

大変あてはまる

やや当てはまる

どちらともいえない

あまり当てはまらない

全く当てはまらない

看護場面における確認不足を引き起こす要因の認識に関する検討

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4. あなたご自身の日頃の業務において、下記の行動をすることで間違いを防げた、という経験はどのくらいあ

りますか。「全くない」から「よくある」のうち、該当するものを一つだけ選んでください。なお、②③④で

「ややある」「よくある」とお答えになった方は、なぜそうしているのか、主な理由として思いつくことを理

由の欄にお書きください。 (例:気になった、指導があった、事故例があった、など)

① 直ぐ自分で気づいた 1 2 3 4 5

② 念のため確認して分かった 1 2 3 4 5

理由:

③ よく分からないことを調べ直した 1 2 3 4 5

理由:

④ よくわからないことを人に聞いた 1 2 3 4 5

理由:

⑤ 同僚が指摘してくれた 1 2 3 4 5

⑥ 上司が指摘してくれた 1 2 3 4 5

⑦ 機器のアラームやエラー警告が鳴った 1 2 3 4 5

⑧ 患者が気づいたり直したりした 1 2 3 4 5

⑨ その他: 1 2 3 4 5

5. あなたご自身についてお尋ねします。

1)あなたの性別をお知らせください。

①男性 ②女性 ③その他

2)あなたの年齢をお知らせください。

①20代 ②30代 ③40代 ④50代 ⑤60代以上

3)看護師・准看護師として勤務している累計の年数をお知らせください。

年 ヶ月

4)現在の病院での勤務年数をお知らせください。

大変あてはまる

やや当てはまる

どちらともいえない

あまり当てはまらない

全く当てはまらない

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統合科学 創刊号(2021)

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年 ヶ月

5)現在の部署での勤務年数をお知らせください。

年 ヶ月

6)あなたのお勤めの部署をお知らせください。

①内科系 ②外科系 ③外来

④手術室 ⑤集中治療室 ⑥その他( )

7)あなたの現在の職位をお知らせください。

① 看護師 ②主任(副師長) ③師長

④医療安全管理者 ⑤その他( )

8)あなたの職場において、確認不足によるヒヤリハットの体験はありましたか。

2019年度(‘19年4月~’20年2月)の間でどれくらいあったかお知らせください。

なかった場合は0件とお答えください。

看護場面における確認不足を引き起こす要因の認識に関する検討

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