1 9 9 2年 大学生ゼヽゥボげゐきぷみかぱゐぜタ日常生活くぜむく …

9
社会心理学研究 7 巻第 1 1992 , 45~ 53 大学生におけるソーシャルサポートの日常生活スト レスに対する効果 ' ,2 信宏 (東京大学) The effects of social support on daily life stress in students Nobuhiro SHIM A ( o yo m υ e zfy) The purpose of this study is to investigate the effect of social support in Japanese university students (male= 220, female= 204), that is , both a main effect (direct effect) on psychological well-being and a buffering effect against daily life stress. A stress measure consists of four subscales, and a social support measure is designed with subscales measuring three support sources, family support, same sex friends support, and opposite sex friends support. In male students, same sex friends support had a main effect, and the other two subscales had no main effects and had buffering effects only against existential stress. In female students, all subscales had main effects, and family support had an inverse buffering effect that had a relation between social support and psychological well-being under tow stress, not under high stress. Key words キーワード social support, stress,psychological well-being, main effect (direct effect) and buffering effect, Japanese students ソーシャルサポート、 スト レス、 心理的健康、 主効果 (直接効果) と緩衝効果、 日本人大学生 ソーシャルサポート とは、 コミ ュニティ心理学のパイ オニア、 Caplan, G によって概念化されたものであり (Caplan, 1974) 、 家族や友人、 隣人な ど、 あ る個人を取 り巻く様々な人々からの有形 ・ 無形の援助を指すもので ある。 Caplan によれば、ソーシャルサポート が十分に得 られるときに、 人はスト レスフルな状況に最もよく対処 するという。 欧米においては、 すでに1970年代から、 ソーシャルサ ポート の持つ、 スト レスの悪影響を和らげる効果、 心理 ・ 身体的健康状態 と の関連性が注目 さ れ始めて いた (Cobb, 1976 など) 。近年では、初期の頃と比べると、研 究の質も洗練されてきており、 スト レスの種類、 サポー ト の定義のしかたや内容、 心理的健康状態の種類、 およ び被験者の持つ諸特性 (性別や社会経済的地位、 自我の 強さや社会的能力などのパーソナリティ要因など) によ ってソーシャルサポートの持つ効果が異なるこ とがわか っている ( 詳細は、 嶋、 1990 a 参照) 我が国においても、 近年になってソーシャルサポート に対する関心が高まってきており、 欧米での先行研究の 紹介や理論的考察 ( 久田、 1987 ; ・ 南 ・ 稲葉、 1989) や実証的な研究 ( 久田 ・ 箕口 ・ 千田、 1989など) 行なわれるようになってきた。 しかしながら、 欧米での研究と比べ、 我が国では研究 の蓄積は少な く ( 浦ら、 1989参照) 、 ソーシャルサポート とは何かという定義の間題をはじめとして、 ソーシャル ポート の効果の現われ方 ( 主効果 : main effect ~ スト レ スのレベルにかかわらずソーシャルサポートが高い人ほ ど健康状態を良好に保てる、という 効果と緩衝効果 : buf- fering effect 一低ス ト レス下では、サポート と健康状態は 無関係であるが、 高スト レス下ではサポート が高い人ほ ど健康状態を良好に保てる、 と いう 効果の 2 種類が考え られている) 、測 定 方法 な ど に つ い て 明 ら か に さ れ て い な いものが多い。 中でも、 ソーシャルサポート研究の成果を臨床場面に 応用する際に重要になって く ると思われる、「どのよ う な スト レスフルな状況において、 どのよう なサポート が有 効なのか」、という点についてはこれまでに解明されてき ていることは少ない。 ひと口にスト レスといっても、 物理的なスト レスなの か、 心理的なスト レスなのか、 あるいは急性的なスト レ スなのか、 慢性的なスト レスなのかなど、 その内容、 種 類には様々なものがある。 一例を挙げれば、 Holmen & Rahe (1967) の研究に代表されるよ う な、 現在の生活に 大きな変化をもたらすものと しての ゛生活事件″ (life 1) 本論文は、 l989年に東京大学教育学研究科に提出し た 修士論文の一部をもとに書き改めたものである。 論文 の作成に当たってご指導頂きました近藤邦夫東京大学 敎育学部助教授に感謝いたします。 2) 本研究の一部は、 第31 回日本社会心理学会 ( l 990) において発表された。 45

Upload: others

Post on 18-Dec-2021

4 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

社会心理学研究 第 7 巻第 1 号1 9 9 2年, 45~ 53

大学生 におけ るソ ーシャルサポー ト の日常生活ス ト レスに対 す る効果 ' ,2

嶋 信 宏 (東京大学)

The effects of social support on daily life stress in students

Nobuhiro SHIM A (「o yo mυe zfy)

The purpose of this study is to invest igate the effect of social suppor t in Japanese universi ty students (male= 220, female= 204), that is , both a main effect (direct effect) on psychological well-being and a buffering ef fect against dai ly li fe stress. A stress measure consists of four subscales, and a social suppor t measure is designed wi th subscales measur ing three support sources, family support, same sex fr iends support, and opposite sex fr iends suppor t.

In male students, same sex fr iends suppor t had a main effect, and the other two subscales had no main effects and had buffering effects only against existential stress. In female students, al l subscales had main effects, and family suppor t had an inverse buffering ef fect that had a relation between social suppor t and psychological well-being under tow stress, not under high stress.

Key words

キ ーワ ー ド

social suppor t, stress,psychological well-being, main ef fect (direct effect) and buffering effect, Japanese studentsソ ーシャルサポート 、 スト レス、 心理的健康、 主効果 (直接効果) と緩衝効果、 日本人大学生

問 題

ソ ー シャルサポート と は、 コ ミ ュ ニ テ ィ 心理学のパイ

オニア、 Caplan, G によ っ て概念化 さ れたもので あ り

(Caplan, 1974) 、 家族や友人、 隣人など、 ある個人を取

り巻 く 様々な人々からの有形 ・ 無形の援助を指す もので

あ る。 Caplan によ れば、 ソ ー シャルサポー ト が十分 に得

られる と き に、 人はス ト レスフルな状況に最 も よ く 対処

す る と いう 。

欧米 において は、 すで に1970年代 から、 ソ ー シ ャルサ

ポート の持つ、 ス ト レ スの悪影響 を和 ら げる効果、 心理

的 ・ 身体的健康状態 と の関連性が注目 さ れ始めて いた

(Cobb, 1976 など) 。近年では、初期の頃と比べる と、研

究の質 も洗練 さ れて き て お り 、 ス ト レスの種類、 サポー

ト の定義の し かたや内容、 心理的健康状態の種類、 およ

び被験者の持つ諸特性 (性別や社会経済的地位、 自我の

強さや社会的能力な どのパーソナ リ テ ィ 要因な ど) によ

って ソ ー シャルサポー ト の持つ効果が異な る こ と がわか

っている (詳細は、 嶋、 1990 a 参照)。

我 が国 にお いて も 、 近年 にな っ て ソ ー シャ ルサポー ト

に対す る関心が高ま っ て き てお り 、 欧米 での先行研究の

紹介や理論的考察 (久田、 1987 ; 浦 ・ 南 ・ 稲葉、 1989な

ど) や実証的な研究 (久田 ・ 箕口 ・ 千田、 1989など) も

行な われる よ う にな っ て き た。

し かし なが ら、 欧米での研究 と比べ、 我が国では研究

の蓄積は少な く (浦 ら、 1989参照) 、 ソ ー シ ャルサポー ト

と は何かと いう 定義の間題 をは じめ と し て、 ソ ー シ ャル

ポート の効果の現われ方 (主効果 : main ef fect ~ スト レ

スの レベルにかかわ らず ソ ー シ ャルサポー ト が高い人ほ

ど健康状態 を良好に保てる、という 効果 と緩衝効果 : buf - fer ing ef fect一低ス ト レス下では、サポート と健康状態は

無関係であ るが、 高ス ト レ ス下ではサポート が高い人ほ

ど健康状態を良好に保てる、 と いう 効果の 2 種類が考え

ら れて い る ) 、測定方法 な どにつ い て明 ら かに さ れて いな

い も のが多い。

中で も、 ソ ー シ ャルサポー ト 研究の成果 を臨床場面 に

応用す る際に重要 にな っ て く る と 思われる、「 どのよ う な

ス ト レスフ ルな状況において、 どのよ う なサポー ト が有

効なのか」、と い う 点についてはこ れま で に解明 さ れて き

て い る こ と は少 な い。

ひと 口にス ト レ ス と い っ て も、 物理的 な ス ト レ スなの

か、 心理的な ス ト レ スなのか、 あ る いは急性的な ス ト レ

スなのか、 慢性的な ス ト レスなのかな ど、 その内容、 種

類には様々な ものがある。 一例を挙げれば、 Holmen & Rahe (1967) の研究に代表さ れるよ う な、 現在の生活に

大きな変化を も たらすものと し ての ゛生活事件″ ( li fe

1) 本論文は、 l989年に東京大学教育学研究科に提出し た

修士論文の一 部 を も と に書 き 改め た もので あ る。 論文

の作成に当 た っ て ご指導頂 き ま し た近藤邦夫東京大学

敎育学部助教授に感謝いた し ま す。

2) 本研究の一部は、 第31 回日本社会心理学会 ( l990年)に おい て 発表 さ れた。

45

event) を対象とするのか、 あるいは、 Lauarus, R. S. ら(Kanner, Coyne, Schaefer & Lazarus, 1981) の提唱

す る ' 日常生活苛立 ち事″ (dai l y hassles) のよ う に日常

生活の中でのよ り 細かい出来事を問題 と す るのか、 と い

う よ う に、 ス ト レ ス を おどのよ う に と ら え る かと い う 見

方には多様な ものがあ る。 そのよ う な、 それぞれのス ト

レ スの持つ性質 を無視 し て、 ソ ーシ ャルサポート はス ト

レ スの惡影響 を和 ら げる と 論ず るのも 意味のあ る こ と で

はな いで あろ う 。

一方、 ソ ー シ ャルサ ポー ト の方 も、 家族か らのサポー

ト か友人から のサポー ト か、 あ る いは、 情緒的 なサポー

ト か情報的なサポー ト かな ど、 その提供源や内容な どに

様々な ものがあ り 、 ス ト レ スの悪影響 を和 ら げる効果 も

それぞれの場合で異な っ て く る と 考え ら れる。 例えば、

Wills (1985) は、 ソ ーシャルサポート を esteem sup- por t、 informat ional support、 instrumental support、social companionship の 4 つの機能に分け、それぞれの

サポート が主効果、 緩衝効果のいずれを もつかと いう こ

と を検証 し て い る。 こ のよ う に ス ト レ ス と サポー ト の間

の適合性 (matching) に注目す るこ と が必要 と な ろ う

(Cohen & Wil ls, 1985 参照)。そ こ で、 本研究 にお いて は、 ス ト レ ス と ソ ー シャ ルサ

ポー ト を多次元的 に測定 し、 どのよ う な ス ト レ スに対 し

て、 どのよ う なサポー ト が効果 を もつのかと いう 、 ス ト

レ ス と サポー ト のマ ッチ ング関係を探索的に明 ら かにす

る こ と を目的 と す る。 ある種のス ト レ スに対 し、 ある種

のソ ー シ ャルサポー ト が有効であ る と い う こ と が解明 さ

れて いけば、 そのス ト レ ス に苦 し んで い る人に対す る具

体的な援助法を考え る際に役立つ と考え られるからであ

る。

方 法

被験者

首都圈の四年制及び短期大学の学生 424名 (男子220 名、 女子204名)。

・ 測定用具

a ス ト レ スの測定

ス ト レ スの測定方法についてはこ れま で様々な もの

が開発、 工夫 さ れて きて いる (植村、 1985参照) 。 本研

究では、 こ れら を考慮 し た上で、 ス ト レスの種類を大

学生が日常生活のなかで経験す るこ と が多いであろ う

と考え られるものに限定 し、Lazarus らの提唱する゛日

常生活苛立ち事″ (dai ly hassles) 的な項目 (Kanner et a1., 1981) を中心に、 Holmes らの ゛生活事件″尺

度 (Holmes & Rahe, 1967)、 Newcomb, M. D らの

作成 し た青年を対象と す る多次元ス ト レス測定質間紙

(Newcomb, Huba, & Bentler, 1981) などを参考に

し、 さ ら に大学生48名に対 し て実施 し た自由記述式の

46

ス ト レ スに関す る調査を も と に し て、 ス ト レ ス項目を

決定し た。 こ のよ う にして決定さ れた56項目を、 大学

生502名 (男子359名、 女子143名) に対 し実施 し、 項日

分析の結果、 以下のよ う な 4 つの下位尺度、 合計32項

目から成 る ス ト レス質問紙を作成 し た。

①実存的 ス ト レス ゛自分の将来についての不安″

など、 自己の生き方、 人格にかかわるよ う な ス ト

レ ス

②対人ス ト レス ゛嫌いな人と もつき合わなければ

な ら ないこ と″ な ど、 対人関係の中で不愉快なこ

と を経験 させ ら れるよ う な ス ト レ ス

③大学・学業 ス ト レス ゛成績が思わし く ないこ と″

など、 大学生活や学業面で経験さ れる ス ト レス

④物理 ・ 身体的ス ト レス ゛生活条件の悪さ″など、

物理的な ス ト レ スや健康面についてのス ト レ ス

以上の 4 つの下位尺度について、 各 8 項日ずつ、 合

計32項目に対 し、 それぞれのス ト レスを最近 3 か月の

間 に経験 し た り感 じ た り し たこ と があ る か、 ま た経験

し た り 感 じ た り し たこ と があ る場合、 それがどの程度

気にな っ たかについて、 5 段階で評定 させた。

な お、 各下位尺度の内的一貫性 は、 α= .72~ .85 で、 32項目全体では、 α= .89であった。

b ソ ー シャルサポー ト の測定

欧米 においては、 ソ ー シャルサポー ト の測定法は数

多く 開発されてきている(House & Kahn, 1985; Tardy, 1985 など参照) が、 我国においては今のと こ ろ数少な

い (本間 ・ 阿部 ・ 宇野 ・ 堀野、 1988な ど)。 対人関係に

おけ る文化差な ど を考慮す る と 、 欧米 で開発さ れた も

のをそのまま日本語に翻訳 し ただけでは不十分なもの

と な るであろ う と考え られる。 そこ で本研究では、 以

下の点 に注意 し て、 大学生 を対象 と し た ソ ー シャルサ

ポート 質問紙を作成 し た。

まず、 サポート 源と し て、 家族、 同性の友人、 異性

の友人を別々にし て評定を求めたこ と であ る。 従来の

サポート の多次元的測定方法では、 サポー ト の機能面

(情緒的か情報的か、 な ど) に注目 し たものが多い (例えば、 Cohen & Hoberman, 1983 など)。 しかし、 日

本の大学生を対象と し た研究では、 因子分析など を行

な っ て も、 機能ご と にサポー ト 項目が分かれる こ と は

少な く (久田 ・ 千田 ・箕口、 1989など参照) 、 サポート

の機能ご と にその効果の差異を調べる根拠が十分でな

いから であ る。 ま た、 サポー ト 源と し て、 家族、 同性

の友人、 異性の友人を と り あげたのは、 こ れらが大学

生の ソ ー シ ャルサポー ト ネ ッ ト ワー ク におい て重要 な

位置を占めるこ と が多いからであ る (嶋、 1989、 1990 b 参照)。

ま た、 項目の内容 と し ては、 援助を直接に意図 し た

行動ばかり でな く 、 興味や関心を共有する、 娯楽活動

を共にするなどのソーシャルコ ンパニオンシップ (Rook, 以上 3 つの質問紙を、 原則 と し て心理学の授業時間中

1987 参照) も含め、 広義の ソ ーシ ャルサポート を測定 に配布 し、 回答 を求めた。

するこ と を日指 した (Appendix 参照) 。 ・ 分析方法

項目数は、 家族、 同性の友人、 異性の友人そ れぞれ まず、 ス ト レ ス と ソ ー シ ャルサポー ト そ れぞれの下位

について各12項目ずつ、 合計で36項目。 評定方法は、 尺度の得点を算出 し た上で、 こ れら と G H Q 得点の相関

それぞれの項目の内容が自分 と 家族 (あ るいは、 同性 を求めた。 さ ら に、 w i lcox (1981) などにならい、 階層

の友人、 異性の友人) と の間に当てはま るかど う かを、 的重回帰分析 を行な っ た。 G H Q 得点 を基準変数と し、

5 段階で評定 させた。 ス ト レ スの指 標 と し て ス ト レ ス質問紙 によ る各 ス ト レ ス

本質問紙の信頼性は、家族サポー ト でα= .92、同性 得点 を説明変数と し て投入 し、 次いで、 ソ ー シヤルサポ

友人サポー ト で α= .92、異性友人サポー ト で α= .96 - ト の指標 と し て、 家族、 同性の友人、 異性の友人それ

で あ っ た。 ぞれのサポート 得点 を投入し た。 そ し て最後に、 ス ト レ

C 心理的健康状態の測定 ス と ソ ー シャルサポー ト の交互作用 と し て、 こ れらの積

心理的健康状態の指標には、 GHQ (General Heal th を投入し、 そ れぞれの説明変数の寄与の有意性 を検定 し

Questionnaire) を用いた。 こ れは、 神経症傾向などの た。 サポート 得点が有意な寄与を示せば主効果が、 ス ト

精神的健康状態について測定す る もので、 本研究では、 レス と ソ ー シャルサポー ト の交互作用が有意な寄与 を示

身体的症状、 不安と 不眠、 社会的活動障害、 う つ状態 せば緩衝効果があ るこ と が示唆 さ れる。

の 4 つの下位尺度から成る、 Goldberg, D. P. らの短縮結 果

版 (Goldberg & Hil ler, 1979) を用いた。 なお、 本研

究にお いては、GHQ 得点が高いほど精神的に健康であ ス ト レ ス と ソ ー シャルサポー ト 得点の男女別の平均得

る と な るよ う に得点 を算出 し ている。 点は Table t のよ う にな っ た,・ 手続き

Tab l e l

ス ト レ ス と ソ ー シ ャ ル サ ポ ー ト の下 位尺 度 の 平 均 値

男 子 女子

実 存的 ス ト レ ス

対人 ス ト レ ス

大学 ・ 学業ストレス

物理 ・ 身体的ストレス

家 族 サ ポ ー ト

同 性友 人 サ ポ ー ト

異性友人 サ ポー ト

l 4. l ( 6. 44)

l t . 2 ( 7. 27)

l 5. 3 ( 6. 46)

10. 6 ( 5. 94)

31. 3 ( 9.' l 4)

41. 5 ( 9. 08)

29. 2 ( l 3. 02)

l6. l ( 6. 291

l 2. 6 ( 7. l71

l 4. 4 ( 5. 51)

l t . 7 ( 6. 00)

39. 8 ( 9. 40)

46. 6 ( 7. 68)

32. 0 ( l t . 94)

◆◆

●●

◆◆

※ ・ カ ッ コ 内 の数値は 標準 差

- 右端 の構は 男 女 差

平 均得点 の差に つ い て の t 検定 を行 な っ た

*◆は p < . 01 * は p < . 05 を 表 わ す

男女間で平均値の差について t 検定を行な っ た と こ ろ、 物理 ・ 身体的ス ト レスで女子の方が有意に得点が高かつ

ス ト レ ス につ い ては、 実存的 ス ト レ ス、 対 人 ス ト レ ス、 た , ま た、 ソ ー シ ャ ルサ ポ ー ト につ い て は、 家族、 同性

47

の友人、 異性の友人の各サポー ト 得点 と も女子の方が高

く な る傾向が見ら れた。 次に、 サポー ト 得点間で t 検定

を行ない平均値の差を比較 し たと こ ろ、 男女 と も同性友

人サポー ト 得点が他の 2 つのサポート 得点よ り も高く (いずれも P < .01) 、 女子の場合はさ ら に家族サポー ト > 異

性友人サポー ト と い う 差 も見 ら れた ( P < .01) 。 ま た、

サポー ト 得点の分散 を比較す る と 、 男女 と も 異性友人サ

ポー ト 得点の分散が他の 2 つのサポート 得点の分散よ り

も有意に大 き かっ た (いずれも P < .01)。

次に、 ソ ー シャルサポー ト と ス ト レス及びG H Q 得点

の相関係数を求めた も のが T able 2 で あ る。 男女 と も、

')

r-

48

ス ト レス と G H Q 得点の間にははっ き り と し た相関関係

があ る こ と が見て取 れる ( r = .257~ .577、 いずれも

P < .01)。 一方、 ソーシャルサポート と G H Q 得点の関

係は、 女子についてはいずれのサポー ト と も G H Q 得点

と相関があった ( r = .178~ .210、 いずれも P < .01) が、 男子の場合は同性友人サポー ト のみがG H Q 得点 と

有意な相関があ っ た ( r = .199、 P < .01)。 ま た、 ス ト

レ ス と ソ ー シ ャルサポー ト の関係 につい ては、 一部の組

み合わせ を除いては相関は低 く 、 本研究で用いたス ト レ

ス質問紙 と ソ ー シャルサポー ト 質問紙の間に、 内容面で

のオーバ ーラ ッ プ は少な い と い う こ と が言え る。

Tab l e 2 ス ト レ ス、 ソ ー シ、, ル 'り- ポ ー ト 及 び (」 l l (、, l ll 点の i川;tl

◆ - f 実存的 対 人 大学学 物 lilt身 家 動 同 性表 t 性 表 G、l Q ストレス ストレス 業ストレス 体スト、,ス り i ート 人サ ート 人サi ート

実存的 ス ト レ ス

対人 ス ト レ ス

大学 ・ 学業

ス ト レ ス

物 理 ・ 身 体

ス ト レ ス

家 族

サ ポ ー ト

同性友人 -り- ポ ー ト

異性友人

サ ポ ー ト

G l l Q

. 514 481 . 392 -. 027 -. l 84 - . I ll8 - . 577 ● l ● 0 ◆● ●◆ ◆ ●◆

. 547 . 211 . 352 - . 064 - . 098 . 053 - . 447

. 533 . 260 . 387 . 099 - . 094 - . 237 - . 346

. 436 . 499 . 369 . 033 . 037 . 007 . 391

. 093 . 070 . 054 . 056 . 280 . l l 8 . l 99 ●● ◆◆

. 074 . 012 . 030 . l 38 . 302 . 354 . 210

- . l 68 . 072 - . 048 . 003 . l 33 . 530 . l78

- . 446 - . 436 - . 57 -. 388 . 032 . l 99 . 070 ●● l ◆ ● l ●● ◆◆

◆ - ・ ・ ・ ・ P < . 0 5 ●◆ ・ ・ ・ ・ P < . 0 1

次に、階層的重回帰分析 を行な っ た結果が T able 3 であ る。 表から わかる通 り 、 ス ト レ スの G H Q 得点に対す

る寄与は男女 と もすべてのス ト レスで有意と な っ てい る

( R 2= .07~ .33、 いずれも P < .01)。

サポー ト につ いては、 家族サポー ト は男子の場合は有

意な寄与を示 していないが、 女子の場合は有意、 同性友

人サポー ト は男女 と も有意、 異性友人サポー ト について

は、 女子の一部の場合にのみ有意 と な っ て いる。

ス ト レ ス と サポー ト の交互作用は、 男女合わせて全部

で24の組み合わせの う ち、 男子の実存的ス ト レ ス X家族

サポー ト 、 実存的 ス ト レ ス x 異性友人サ ポー ト 、 対人ス

ト レス x 同性友人サポー ト 、 及び女子の物理 ・ 身体的ス

ト レス x 家族サポー ト の組み合わせのみ有意 と な っ た。

Tab l e 3 ス ト レ ス、 ソ ー シ ャ ルサポー ト 、 G H Q の重回帰分析

男 子 女 子

R二累積 R二変化 R二累積 R二変化

実 存的 ス ト レ ス A 家族サ ポー ト B ( A ) x ( B )

. 19 . 19 ** . 33 . 33 *●

. 20 . 01 . 37 . 04 *●

.23 . 03 ●● .37 . 00

実存的 ス ト レ ス A 同性友人サ ポー ト B

(A ) x ( B )

. l 9 . 19 ◆● . 33 . 33 '◆

.25 . 06 ●● . 35 . 02 ◆

. 26 . 01 . 35 . 00

実存的 ス ト レ ス A 異性友人サ ポ ー ト B ( A ) x ( B )

. l9 . 19 ** . 33 . 33 ●*

. 20 . 01 . 34 . 01 . 22 . 02 ' . 34 . 00

対人 ス ト レ ス A 家族サ ポー ト B ( A ) X ( B )

. 18 . 18 ◆◆ .20 . 20 ●●

. 19 . 01 . 23 . 03 ** . 19 . 00 . 23 . 00

対人 ス ト レ ス A 同性友人サポ ー ト B ( A ) X ( B )

. 13 . 18 '◆ . 20 . 20 *◆

. 22 . 04 ●● .23 . 03 *●

. 25 . 03 ' * . 23 . 00

対人 ス ト レ ス A 異性友人サ ポ ー ト B ( A ) x ( B )

. l 8 . 18 *● . 20 . 20 *●

. 19 . 01 . 25 . 05 ** . 20 . 01 . 25 . 00

男 子 女 子

R二累積 R二変化 R二累積 R二変化

大学学業 ス ト レ ス A 家族サポー ト B ( A ) x ( B )

. 07 . 07 * ' . 12 . 12 **

. 08 . 01 . l8 . 06 ●●

. 08 . 00 . IS . 01

大学学業 ス ト レ ス A 同性友人サポー ト B ( A ) X ( B )

.07 . 07 ◆● . 12 . 12 ●◆

. l2 . 05 ●● .16 . 04 ** . 12 . 00 . !6 . 00

大学学業ス ト レ ス A 異性友人サ ポー ト B ( A ) X ( B )

. 07 . 07 ●● .12 . l2 ◆◆

.07 . 00 . 13 . 01

.07 . 00 . 13 . 00

物理身体ス ト レ ス A 家族サポー ト B ( A ) X ( B )

. 14 . 14 *● . l5 . 15 ●*

. 15 . 01 .20 . 05 *◆

. 16 . 01 . 22 . 02 ' 物理身体 ス ト レ ス A 同性友人サ ポー ト B ( A ) X ( B )

. 14 . l4 ●● . IS . !5 ●* . 21 . 07 ●● .21 . 06 ◆◆

.21 . 00 . 22 . 01

物理 身体 ス ト レ ス A 異性友人サ ポー ト B ( A ) x ( B )

. l4 . 14 '● . 15 . 15 ●●

. l5 . 01 . 19 . 04 ●●

.15 . 00 . IS . 00

表中の数値は . 明率の累積 と 競明率の変化

i 与 が有意 ';: も の :二つ いて t_ 、 * ・ ・ ・ p く . S i 、 ◆' ・ ・ ・ i, < . 01 で 表示 し た

次に、 こ れら交互作用の有意と な った 4 つの組み合わ

せについて、 サポート 得点の高い群、 低い群 (中央値に

よ り二分 し た) のそれぞれの下位群 ごと に、 X 軸を ス ト

レス得点、 Y 軸をG H Q 得点と し たと きのY のX への回

帰直線 を求め た。 交互作用が有意 と な るのは、 ス ト レ ス

のレベルによ り サポート の効果が異な る と いう こ と を意

味するだけであり、 必ず し も仮定さ れる緩衝効果がある

と いう こ と を意味す るわけではないから であ る。 その結

果、 男子の 3 つの組み合わせについては、 ス ト レ ス レベ

ルが低いと きには低サポート 群と 高サポー ト 群 と でG H Q 得点には差が見 ら れないが、 ス ト レス レベルが高い と

低サポート 群の方がG H Q 得点が低い (健康状態が惡い) と いう 仮定 さ れた緩衝効果が見出 さ れた。 し かし、 女子

の物理 ・ 身体的ス ト レス x 家族サポー ト については、 こ

れとは反対の緩衝効果、 すなわち、 スト レスレベルが低

いと きには低サポート 群は高サポート 群よ り G H Q 得点

が低いが、 高ス ト レス下では両群のG H Q 得点に差が見

ら れないと いう 現象が見ら れた (Fig. 1 参照) 。 さ らに、

女子の物理 ・ 身体的ス ト レス x 家族サポート について、

物理 ・ 身体的ス ト レス得点の高低によ り、 被験者を高ス

ト レス群 (ス ト レス得点> 平均点十.5or)、 中スト レス群

(平均点一 .5,f ≦スト レス得点≦平均点十.5σ)、低スト レ

ス群 ( ス ト レス得点 く平均点一 .50') の 3 群に分け、 それ

ぞれの群でのG H Q 得点と家族サポート 得点との相関を

求めた。 す る と 、 低 ス ト レ ス群、 中 ス ト レ ス群 におい て

は、こ の 2 変数の相関はそれぞれ .417、.308 と有意で あっ

たが、 高ス ト レス群では、 相関は見 ら れず ( r = - .020)、やは り 高ス ト レス下では、 ソ ー シャルサポー ト と 健康状

態は関連がない と い う こ とが見出 さ れた。

49

G i l Q得点

r,

低 物 理 ・ 身体的 ス ト レ ス 高

F i g. l 家族 サポー ト の低辞 ・ 高辞 こ' と の G H Q 得点 の物理 ・ 身 体的 ス ト レ ス

得点 への回帰直線 ( 女 子 )

考 察

ソ ー シ ャルサポー ト 得点 を見 る と 、 男女 いずれも同性

友人サポート の得点が最も高かった。 大学生と いう 被験

者層にと っ て、 家族や異性の友人よ り も、 同性の友人と

の相互作用が最も多いと いう こ と が言え るだろ う 。 また

女子の場合は、 家族サポー ト の得点が異性友人サポー ト

の得点よ り も 高 く な っ てい るが、 男子の方にはこ のよ う

な傾向は見 ら れなかっ た。 こ れは、 女子の被験者の方が

家族と同居 し てい る者 ( 自宅生) の比率が高かっ た と い

う こ と にもよ るだろ う が、 女子の方が男子よ り も家族関

係が密であ る と い う こ と が考え ら れる。 ま た、 男女 と も

異性友人サポート の得点が最 も低いが、 得点の分散 を見

た場合、 他の二つのサポート よ り も分散が大 き く 、 異性

友人サポート は個人差が非常に大き いと いう 特徴を もつ

と い う こ と がわか る。

こ れらの得点の男女差 を見る と 、 いずれのサポー ト 得

点 と も女子の方が高得点 と な っ てい る。 こ のよ う な傾向

は、 欧米の研究で も (Leavy, 1983 参照) 見出さ れてお

り 、 日本の場合で も、 五種類のサポー ト 源の う ち、 父親

50

と 先生か らのサポー ト では性差が見 ら れな い も のの、 母

親、 き よ う だ い、 友達からのサポー ト で女子の方がサポ

ート を受けやすいと いう 報告があ る (久田ほか、 1989) 。

こ のよ う な性差が生 じ る背景には、 男子には、 困難な問

題に遭遇 し た場合で も、 他者からの援助を受けずに独力

でそ れを解決す るこ と が期待 さ れがちで ある と い う 、 社

会的 ・ 文化的要因があ る ためだ と考え ら れる。 なお、 こ

のよ う な対人交渉 に関す る ス コ アが女子の方が高 く な る

と いう 傾向は、 ソ ー シ ャルサポー ト だけではな く 、 自己

開示性な ど について も見 ら れる と いう (Cozb y, 1973 ; 榎本, 1987)。

次に、 ソ ー シャルサポー ト の持つ ス ト レ ス緩和効果 で

あ る が、 効果の現われ方は性別 によ っ て かな り 異な っ て

い た。

まず、 主効果は、 男子の場合同性友人サポー ト のみが

有意な主効果 を持 つて いたのに対 し、 女子では異性友人

サポー ト の一部 を除いてすべてのサポー ト が有意な主効

果 を持 っ て い た , すな わち、 ソ ー シャルサポー ト の持つ

心理的健康状態に対す る主効果は女子の方に大 きな意味

を も つ と い う こ と が言え る。 こ れは、 ソ ー シヤルサポー

ト の得点自体が女子の方が高いと いう こ と と合わせて、

女子に と っ ての対人関係の重要性 を示唆す る もの と なろ

う 。 こ のよ う な性差が生 じ るのは、 先に触れたよ う に、

対人関係に対する態度に、 男子と女子と では異なる社会

的 ・ 文化的期待が課せられているため、 男子の場合、 低

サポート の状態で も比較的心理的に不適応にな り にく い

と い う こ と があ る ためで あ ろ う 。

ま た、 三種類のサポー ト 源を比較 し てみた場合、 男女

と も同性友人サポー ト が心理的健康状態を予測す る もの

と し て重要で ある と い う こ と は共通 し て いるが、 女子で

は、 家族サポー ト の方が寄与は高 く な る傾向が見 ら れた。

サポー ト 得点自体は同性友人サポー ト の方が家族サポー

ト よ り も高かっ たにも かかわらず、 心理的健康状態を予

測す る も の と し ては家族サポー ト の方が優れていた と い

う こ と は、 女子にと っ て健康状態 と最 も密接でかつ重要

な関係は家族との間のものである と いう こ と にな る。 女

子に と っ ての家族サポー ト の重要性は他の研究 (例えば、

久田 ・ 丹羽, 1986など) にも見出さ れており、 大学生女

子と 家族と の結びつ きの強 さ が反映 さ れて い る と 言え る。

一方、 緩衝効果は男子の方に多 く 見 ら れた。 男子の場

合、 家族サポー ト と 異性友人サポート は主効果 を全く 持

たなかっ たが、 実存的 ス ト レ スに対 し てはいずれも緩衝

効果を持 っていた。 実存的 ス ト レスは、 大学 ・ 学業 ス ト

レスに次いで得点が高 く 、 し かも、 大学 ・ 学業ス ト レス

が比較的具体的な ものご と に対す る ス ト レ スで あ り 、 そ

れゆえ に対処の仕方も発見 しやすいと考え られるのに比

べ、 個人の生 き方そのも のに関す る ス ト レ スであ り 、 は

っ き り と し ない漠然と し た不安感や無力感 を も たらす、

対処の し に く いス ト レ スで あ る と 考え ら れる。 さ ら に、

心理的健康状態 との相関も、 四種類のス ト レスの中で最

も高い もの と な っ てお り 、 最 も脅威であ る と 認知 さ れる

ス ト レ スであ ろ う 。 つま り 、 実存的ス ト レスが高いと い

う こ と は、 セルフ エ ス テ イームや統制感が危機 に さ ら さ

れる状況で あ り 、 こ れらが脅かさ れないよ う な低 ス ト レ

スの状況では意味を持たないよ う な家族や異性の友人と

い う サポー ト ネ ッ ト ワーク も、 ス ト レ スへの対処のため

に有効な も の と な っ て く る ため と考え ら れる。

女子の場合の緩衝効果は男子と は違 っ た結果 と な っ た。

物理 ・ 身体的スト レスがあま り 高く ない状況では、 家族

サポー ト がス ト レ スへの対処に役立つが、 ス ト スがあま

り 高 く な る と サポー ト があ っ て も役立 たな い と い う こ と

にな る ためで あ ろ う か。 こ れと類似の現象は、 久田 ・ 箕

口 ・ 千田 (1986) にも見出さ れているが、 欧米の研究に

はあま り 見 ら れないよ う で あ る。

以上のよ う に、 本研究に おいて は、 ソ ー シャ ルサポー

ト の持つ主効果 と と も に、 男子の家族サポー ト 、 異性友

人サポー ト のよ う に、 あ る特定のス ト レ ス (こ こ では実

存的 ス ト レ ス) が高い と き にのみ有効であ る と い う よ う

な、 緩衝効果 におけ る ス ト レス と サポー ト のマ ッチ ング

が見 ら れた。 今後は、 さ ら に ス ト レ スの種類 を增やす、

あ る いは、 ソ ー シ ャルサポー ト も家族、 友人 と い う よ う

な大まかな分け方だけでな く 、 父親、 母親、 き よ う だい

親友、 恋人、 な どのよ う に細か く と らえ て い く 、 さ ら に

は機能面 に も 注目す る な ど、 そ れぞれのス ト レ スーサポ

ト の関連性 を見てい く こ と が必要 と な っ て く るだろ う

ただ し、 本研究で得 ら れたソ ー シャルサポー ト の心理

的健康状態に対す る説明率 ( R 2) は、 いずれも高いもの

と は言えず (最も高いもので も主効果で 7 %、 緩衝効果

で 3 %) 、 ス ト レスの寄与 ( 7 ~ 33%) と比べ る と 小 さ

い。 こ の数値は、 サポー ト の測定方法の工夫 な どによ り

高め ら れる と も考 え ら れる が、 ソ ー シ ャルサポー ト が心

理的健康状態の決定因と し て持つ役割を過大視し てはな

ら ないで あ ろ う 。

また、 本研究は相関研究であ るので因果関係ま で論ず

る こ と はで き な い。 ソ ー シ ャルサポー ト があ る ため に健

康で い ら れるのではな く 、 心理的に適応 し てい るから こ

そ良好なサポー ト 関係 を保て るのかも し れない。 こ れを

解明す るには縦断的研究、 あるいは実験的研究が必要 と

なろ う 。

我が国 におけ る ソ ー シャルサポー ト 研究には、 現状 で

は、 様々な概念的、 理論的、 方法的な未解決の間題が残

さ れてい る。 こ れら を ひと つ ひ と つ解決 し てい く こ と に

よ り 、 ソ ー シャルサポート の持つ真の意味が明ら かに さ

れてい き、 さ ら にそ れら から得 ら れた知見 を現実の日常

生活の中に還元 し てい く こ と がで き るであろ う 。

引用文献

キ ャプ ラ ン (著) 近藤喬一 ・ 增野肇 ・ 宮田洋三郎

(訳) , 1979, 『地域ぐ るみの精神衛生』 星和書

店 (Caplan, G., 1974, Suf)port system and communtty mental health. Behavioral Publi-cations)

Cobb, S., 1976, Social suppor t as a moderator ofl i fe stress. Psyc osomatzc Medzc2ne, 38, 300-314.

Cohen, S. & Hoberman, H., 1983, Positive events and social supports as buffers of li fe change stress fo na of A P le SoaaPsychology, 13 99-125.

Cohen, S. & Wills, T. A., 1985, Stress,social suppor t, and the buf fer ing hypothesis. Psy-c o ogzca tez , 98, 310-357.

Cozby, P. C., 1973, Self-disclosure: A l i terature review. Psyc o oglca tezn, 79, 73-91.

榎本博明, 1987, 青年期 (大学生) における自己

51

52

開示性 とその性差について . 心理学研究, 58,91-97.

Goldberg, D. P. & Hiller, V. F., 1979, A scaled version of the General Health Questionnaire.Psyc o oglca Medlczne, 9, 139-145.

久田 満, 1987, ソ ーシャルサポート 研究の動向

と今後の課題、 看護研究, 20. 170-179.久田 満 ・ 箕口雅博 ・ 千田茂博, 1986, ソーシャ

ルサポー ト のス ト レス緩和効果. 日本心理学会

第50回大会発表論文集, 729.久田 満 ・ 箕口雅博 ・ 千田茂博, 1989, 大学生に

おけ る ソ ーシ ャルサポー ト に関す る研究. 日本

心理学会第53回大会発表論文集, 314.久田 満 ・ 丹羽郁夫, 1986. 大学生の生活スト レ

スに関する研究(2)- ソ ー シ ャルサポー ト およ び

Posit ive Events のス ト レス緩和効果一. 日本社

会心理学会第27回大会発表論文集, 173-174.久田 満 ・ 千田茂博 ・ 箕口雅博, 1989, 学生用ソ

ー シャル ・ サポー ト 尺度作成の試み(1). 日本社

会心理学会第30回大会発表論文集, 143 -144 .Holmes, T. H. & Rahe, R. H., 1967, The social

readjustment rat ing scale. Journal ofPsychosomattc Research, 11, 213-218.

本間道子 ・ 阿部洋子 ・ 宇野儀子 ・ 堀野緑, 1989,ソ ー シャル・サポー ト 尺度の日本語版の試み 予

備的調査( I ) . 日本女子大学紀要, 38, 83-98. House, J. S. & Kahn, R. L., 1985, Measures and

concepts of social suppor t. In S. Cohen & S.L. Syme (Eds), Social support and health.Academic Press.

Kanner, A. D., Coyne, J. G., Shaefer, C., &Lazarus, R. S., 1981, Comparisons of two modes of stress measurement: Di ly hassles and uplif ts versus major l ife events. Journal of e aυzo a Med cz'no, 4, 1-39.

Leavy, R. L., 1983, Social support and psycho-logical disorder : A review. Jourrta1 of Com -

mum ty Psycho1ogy, 11, 3-21.Newcomb, M. D., Huba, G. J., & Bentler, D. M.,

1981, A multidimensional assessment of stres-sful l ife events among adolescents: Der iva-tion and correlates. Journal of Hlealth an dSocta1 Behaυdor, 22. 400-415.

Rook, K. S., 1987, Social suppor t versus com -

panionship: Effects on life stress, loneliness and evaluation by others. Jouγna1 of Person.a zty and Socaa Psyc o ogy, 52, 1132-1147.

嶋 信宏, 1989, SSMS (Social Support Matrix

Scale) によ るソ ーシャルサポート ネ ッ ト ワークの

測定. 日本心理学会第53回大会発表論文集,316.

嶋 信宏, 1990 a , ソ ーシャルサポート 研究の現

状と臨床場面への応用. 東京大学教育学部心理

教育相談室紀要, 12, 63-72.嶋 信宏, 1990 b , SSMS (Social Support Matrix

Scale)によ る ソ ーシャルサポート ネ ッ ト ワークの

測定(2)一個人像の把握一. 日本心理学会第54回

大会発表論文集, 286.Tardy, C. H., 1985, Social suppor t measure-

ment. Amencan fo na of Comm m'tv Psy-cho1ogy, 13, 187-202.

植村勝彦, 1985. スト レ ツサーの社会心理学的測

定. 石原邦雄 ・ 山本和郎 ・ 坂本IIL (編) , 『生活

ス ト レスと は何か』 (講座 生活ス ト レスを考え

る 1 ) , 垣内出版, 128-152.浦 光博 ・ 南 隆男 ・ 稲葉昭英, 1989, ソ ーシャ

ル ・ サポート 研究一研究の新 し い流れと将来の

展望一. 社会心理学研究, 4 , 78-90.Wilcox, B. L., 1981, Social support, l ife stress,

and psychological adjustment: A test of the buffering hypothesis. Amen can Jottrna1 ofCommuntly Psychology, 9, 371-386.

Wills, T. A., 1985, Supportive functions of inter-personal relationships. In. S. Cohen & S. L.Syme (Eds), Socta1 st,tpPort an d health. Aca-demic Press.

Appendixソ ー シャルサポー ト 質間紙の項目

1 . お し やべり など を し て楽し い時を過ごす

2 . 一緒に遊びに出かけた りす る

3 . 共通の趣味や関心 を持 っている

4 . プ ライ ベート なこ と について話し合う

5 . お互いの気持や感情 をわかり 合え る

6 . 個人的な悩み事について話し合え る

7 . いろ いろ な情報のや り と り をす る

8 . 困 っ た と き に助言 し て も ら っ た り 、 相手が困 っ て

いる と き には助言 し てあげた り す る

9 . わから ないこ と を聞いたり 、 教えた り し あう

10. 忙 し い と き に手伝 っ て も ら っ た り 、 相手が忙 し い

と き には手伝 っ て あげた り す る

11. 必要 な と き に、 お金や物の貸 し借 り をす る

12. プ レセ' ン ト を あげた り 、 も ら っ た り し あ う

家族、 同性の友人、 異性の友人それぞれと の関係 につ

いて、 以上の 1 ~ 12の各項目がどの く ら い当てはま るか

を、 1 (全く 当てはまらない) ~ 5 (非常に良く 当ては (1990年9 月11 日受稿, 1991年8 月9 日掲載決定) まる) までの 5 段階で評定させた。

53