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新商品・ソリューション・サービス解説 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 129 貿易帳票ソリューション Trade Documentation Solutions グローバル化が進展し国際競争が激化している昨 今、企業は市場を海外に求めると同時に生産拠点の海 外シフトを加速しており、グローバル視点での効率的 で確実な貿易戦略が求められている。貿易では各国に 応じたさまざまな法令、税制、規制対応が必要であり、 業務は複雑である。このような環境下で、リードタイ ム短縮、業務コスト低減とコンプライアンス遵守実現 が国際競争力を強化し、業績に直結する時代になって きた。貿易プロセスでは、事務代行、運送、金融、保 険などの業者と絡み合い、証跡として大量の帳票が必 要となる。 ここに、富士ゼロックスの誇る文書管理技術をベー スに、文書ベースの業務プロセス可視化技術、電子帳 簿保存法対応等を組み合わせ、貿易帳票業務をトータ ルにサポートするソリューションとして具現化した。 本ソリューションは、業務効率化、コスト低減、コン プライアンス強化に大きく貢献する。 Abstract In today’s age of globalization and intense global competition, companies are seeking new markets abroad and accelerating the transfer of production bases overseas. This situation requires an efficient and secure trade strategy. Companies engaging in international trade must handle complicated tasks while complying with each country’s laws, tax system, and regulations. Under these circumstances, a shorter lead time, cost reduction, and regulatory compliance are directly linked to improved international competitiveness and business performance. Trade operations involve various industries, including outsourcing services, transportation, finance, and insurance. Companies must consequently use a number of trade documents as evidence. Fuji Xerox has developed a trade document management solution that combines Fuji Xerox’s document management technology with work process visualization technology. This solution contributes significantly to higher business efficiency, cost reduction, and improved compliance. 執筆者 小林 晴法(Harunori Kobayashi田口 亮治(Ryoji Taguchi村上 亮介(Ryosuke Murakami木暮 洋輔(Yosuke Kogure高塚 洋平(Yohei Takatsukaソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部 Solutions Development, Solution Service Development Group【キーワード】 貿易帳票、ペーパーレス、電子化、Apeos PEMaster Evidence Tracker、進捗管理、可 視化 Keywordstrade document, paperless, digitization, Apeos PEMaster Evidence Tracker, progress management, visualization

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Page 1: 14-D2 小林 K11 20150318 - Fuji Xerox...新商品・ソリューション・サービス解説 貿易帳票ソリューション 富士ゼロックス テクニカルレポート

新商品・ソリューション・サービス解説

富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 129

貿易帳票ソリューション Trade Documentation Solutions

要 旨

グローバル化が進展し国際競争が激化している昨

今、企業は市場を海外に求めると同時に生産拠点の海

外シフトを加速しており、グローバル視点での効率的

で確実な貿易戦略が求められている。貿易では各国に

応じたさまざまな法令、税制、規制対応が必要であり、

業務は複雑である。このような環境下で、リードタイ

ム短縮、業務コスト低減とコンプライアンス遵守実現

が国際競争力を強化し、業績に直結する時代になって

きた。貿易プロセスでは、事務代行、運送、金融、保

険などの業者と絡み合い、証跡として大量の帳票が必

要となる。

ここに、富士ゼロックスの誇る文書管理技術をベー

スに、文書ベースの業務プロセス可視化技術、電子帳

簿保存法対応等を組み合わせ、貿易帳票業務をトータ

ルにサポートするソリューションとして具現化した。

本ソリューションは、業務効率化、コスト低減、コン

プライアンス強化に大きく貢献する。

Abstract

In today’s age of globalization and intense globalcompetition, companies are seeking new marketsabroad and accelerating the transfer of productionbases overseas. This situation requires an efficientand secure trade strategy. Companies engaging ininternational trade must handle complicated taskswhile complying with each country’s laws, tax system,and regulations. Under these circumstances, a shorterlead time, cost reduction, and regulatory complianceare directly linked to improved internationalcompetitiveness and business performance. Tradeoperations involve various industries, includingoutsourcing services, transportation, finance, andinsurance. Companies must consequently use anumber of trade documents as evidence.

Fuji Xerox has developed a trade documentmanagement solution that combines Fuji Xerox’sdocument management technology with work processvisualization technology. This solution contributessignificantly to higher business efficiency, costreduction, and improved compliance.

執筆者 小林 晴法(Harunori Kobayashi) 田口 亮治(Ryoji Taguchi) 村上 亮介(Ryosuke Murakami) 木暮 洋輔(Yosuke Kogure) 高塚 洋平(Yohei Takatsuka) ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部

(Solutions Development, Solution Service Development Group)

【キーワード】

貿易帳票、ペーパーレス、電子化、Apeos

PEMaster Evidence Tracker、進捗管理、可

視化

【Keywords】

trade document, paperless, digitization, Apeos

PEMaster Evidence Tracker, progress

management, visualization

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新商品・ソリューション・サービス解説

貿易帳票ソリューション

130 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015

1. はじめに

グローバル・ビジネスのさらなる進展に伴い、

企業間の国際競争が激化する中、多くの企業は

新たな市場の開拓および国際競争力強化に向け

た戦略を展開している。その一方で、貿易業務

は「関税法」や「外為法(外国為替及び外国貿

易法)」などといった輸出入に関するさまざまな

法律・税制・規制に対応する貿易コンプライア

ンスへの準拠が必須条件となっている。このよ

うな環境下で、各企業はリードタイム短縮、業

務コスト低減、コンプライアンス遵守の実現に

取り組んでいる。

貿易業務は、社内外のさまざまな関係者が絡

む複雑な業務であり、関係者間でやり取りされ

る必要書類の伝達には納期遵守と正確性が求め

られる。また、税関監査を考慮した厳密な書類

の保存・管理も必要である。各企業にとって、

貿易業務の 適化を促進するためには、帳票の効

率的なハンドリングが大きな課題となっている。

貿易帳票ソリューションは、富士ゼロックス

の文書情報マネジメント1)に関する技術・ノウ

ハウに加え、「言行一致」というコンセプトのも

と、自社内の実践から得たノウハウを 大限に

活かし、帳票管理をベースとした貿易業務の課

題解決を支援する。

本論文では、各企業が抱える貿易業務の共通

課題と当社が提供する貿易帳票ソリューション

の概要、また本ソリューションを支える技術に

ついて説明する。 後にソリューションの適用

事例を紹介する。

2. 貿易業務の共通課題

ここでは貿易業務の特徴と、企業の多くが抱

える共通課題について述べる。

2.1 貿易業務の特徴

1)複雑な業務プロセス

貿易業務は契約から支払いまでの一連の

プロセスにおいて、営業担当者や貿易担当

者などの社内関係者に加え、海貨業者、通

関業者、取引先など国内外の社外関係者と

も連携しながら進める業務である。また、

貨物の種類、輸送方法、相手国などによっ

て必要な手続きや必要書類が異なるため、

非常に複雑な業務プロセスとなっている。

2)紙主体の業務プロセス

貿易業務では、上述の関係者間で多種大

量の帳票をやり取りすることによって業務

が進められる。図1に、輸出業務における代

表的な帳票のやり取りの例を示す。図1に

加え、企業内においても、部門ごとに書類

の作成や承認を行い、関連部門間での書類

のやり取りが頻繁に行われている。

このように、企業や部門にまたがる業務

であることや、業務プロセスの複雑さから、

システム化が難しく、依然として紙主体の

非効率な業務となっている。

3)書類の確実な保存と管理

貿易取り引きで発生する書類の多くは、

国税関係書類に該当し、関税法等の税法で

保管が義務づけられている。また、税関の

事後調査において、帳簿や関係書類などの

確認が行われるため、発生した書類の確実

な保存と管理が非常に重要である。

2.2 共通課題

上述のような特徴から、多くの企業は以下の

課題を抱えている。

課題①:業務の見える化

貿易業務は非常に複雑でノウハウが必

要なため、案件ごとに専門知識を有する

貿易部門のエキスパートが実務を担当す

図1 一般的な輸出業務のフロー Flow of general trade business

輸出者 海貨業者 通関業者

税関

船会社 取引先

P/O送付P/O受理DHC_P

P/O

INV発行

DHC_PINV DHC_P

INV

P/L発行

DHC_PP/L

NA

CC

SDHC_P

INV

DHC_PP/L

輸出申請

DHC_PE/D

DHC_PE/D

DHC_PE/D

DHC_PP/L

B/L発行

ブッキング

DHC_PB/L

DHC_PB/L

DHC_PP/L

DHC_PINV

DHC_PE/D

帳票受理

インボイス単位のフ

イリング

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新商品・ソリューション・サービス解説

貿易帳票ソリューション

富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 131

る。前述のように、貿易業務は複数の社

内外関係者と帳票のやり取りによって業

務が進められるが、相手先によって、宅

配便、メール、ファクスといったさまざ

まな媒体が利用されている。そのため、

担当者は帳票を紙に出力し、振り分け、案

件ごとにファイリングして管理している。

このように業務を特定の担当者が抱え込

んでしまうことから、担当者以外が各案件

の進捗状況を把握することが困難になる。

また、多数の拠点・部門にまたがる業

務であることから、拠点や部門ごとにシ

ステムが分断されていることが多い。こ

の場合、業務全体を俯瞰することが困難

になる。

業務の効率化や継続的改善を行うため

には、業務の見える化が重要な課題と

なっている。

課題②:リードタイム短縮

市場のさらなるグローバル化に伴い、

貿易業務量が大幅に増加する一方で、製

造業をはじめ、国内外の競合に勝ち抜く

ために、輸出入のリードタイムを短縮す

ることが非常に重要となっている。紙

ベースの業務プロセスでは、効率化の限

界に達しており、リードタイム短縮に向

けて、ITを駆使した抜本的な業務の改革

が必要になっている。

課題③:コスト削減

ドキュメントコストの抑制

貿易取り引きで発生する書類は、1つの

輸出入単位に対して20種類以上となる

場合もある。それらの文書を印刷・複写

するため、多くの出力・配布コストがか

かっている。また、帳簿や関係書類に関

しては、保管義務があるため、保管スペー

スなどのコストも増加する一方である。

貿易業務量の増加に伴い、文書の出力・

保管コストの抑制が課題となっている。

生産性の向上

貿易業務は、通常貿易部門のメンバー

が実務を担当し、複数の案件を同時に遂

行する。その場合、複数の案件から都度

送付される文書類の仕分け、確認、送付

等の作業に大きな負荷がかかっている。

業務量の増加にあたっては、これらの

作業効率を上げ、案件あたりの処理コス

トを低減させることが重要な課題となっ

ている。

課題④:コンプライアンス遵守

書類の確実な保管と検索性の向上

貿易関係書類には保管義務があり、税

関の事後調査において書類の確認が行わ

れる。各企業では、案件ごとにファイリ

ングした書類を、棚や倉庫等で保管して

いる。事後調査のときには、保管してい

る紙帳票を搬出し、膨大な帳票の中から

書類を探さなければならず、多くの工数

がかかっている。また、書類の抜け漏れ

や紛失のリスクも抱えている。

業務量の増加に伴い、管理すべき書類

も増え続けるため、確実な保管に加え、

保管した書類の検索性を向上させること

も重要な課題となっている。

自社の輸出入情報の全件把握

企業の多くは、社内の貿易管理システ

ムや表計算ソフト等を利用し、貿易部門

が輸出入情報を管理している。

しかし、営業現場等が国際宅配便など

を利用し、イレギュラーな輸出入を行っ

た場合、貿易部門の統制下にない輸出入

行為が発生する。このような輸出入行為

は、コンプライアンス上問題であり、監

査の指摘事項になる。これは企業にとっ

て大きなリスクとなるため、貿易管理に

おいて自社の輸出入の全件を正確に把握

することは重要な課題となっている。

3. 貿易帳票ソリューション

ここでは前章で述べた課題に対する、アプロー

チと、提供するソリューションについて述べる。

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新商品・ソリューション・サービス解説

貿易帳票ソリューション

132 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015

3.1 課題解決のアプローチ

従来の基幹システムは、データとその流れを

管理することで、定型業務の効率化につながっ

た。しかし、ドキュメントと人手による非定型

業務は定型業務より多く存在し、この領域も共

に解決しない限り本当の意味での生産性向上は

実現できない(図2)。

我々は、業務の主要な工程間では文書が発生

すると考え、文書の生成状況とその流れを管理

することで、従来は困難であった非定型業務の

システム化を可能とした。

さらに、基幹システムのデータを取り込んで

一元管理することにより、定型/非定型業務全

体の進捗状況を見える化し、業務の全体 適を

実現した。

3.2 貿易帳票ソリューション

貿易帳票ソリューションが、貿易業務の課題

をどのように解決するのかを述べる。また、図3

にソリューションの概要図を示す。

課題①:業務の見える化

[解決方法]

貿易帳票ソリューションでは、貿易業務

で扱う帳票類を電子化し、文書管理システ

ムである、Apeos PEMaster Evidence

Manager®に格納する。

Apeos PEMaster Evidence Tracker®

は、文書の格納状況と、ERP(Enterprise

Resource Planning)などの基幹システム

から出力された案件情報を取り込み、個々の

案件の進捗状況を業務プロセスの形式で見

える化する。また、個々の文書が必要となる

条 件 を Apeos PEMaster Evidence

Trackerに設定しておくことで、個々の案件

に必要な文書とその格納状況が、視覚的に表

示される。その結果、必要な作業や文書格納

の抜け漏れを一目で確認できるようになる。

課題②:リードタイム短縮

[解決方法]

文書を電子化して共有することで、紙文

書のやり取りが不要となる。また、1つの

案件に対して複数の部門が並行して作業を

進められるようになる。さらに、部分的な

定型作業を自動化することで、手作業で処

理していた時間を大幅に削減することが可

基幹システム

基幹システムから分断された煩雑なドキュメントフロー

雑然と導入されたIT機器

見えにくい(非定型業務)

見える(定型業務)

DHC _P

DH C_P

DHC _P

DHC_P

DHC_P

DHC _P

DHC _PDHC_P

業務プロセス

図2 非定型業務 Non-routine tasks

図3 貿易帳票ソリューションの概要図 Trade documents solution diagram

InvoiceNo

担当者 取引先 進捗 状態 I/V P/L C/O E/D

4096584 富士一郎 A社 100%

0353965 富士次郎 B社 66% 不要

946254 富士三郎 C社 50%

DH C _P

NACCS 連携

WebUI操作

Q R コード によるスキャン入力

各種帳票

NACCS 端末

NACCS 輸出申告

NACCS連携機能

電子化支援ツール

Apeos PEMasterEvidence Entry

基幹システム

DHC_P

DHC_P

DHC_PDHC_P

DHC_P

DHC_PDHC_P

DHC_P

DHC_PPDF

属性情報

DHC_PCSV

DH C _P

DHC_PPDF

輸出入許可書等

DHC_PPDF

属性情報

DHC_PCSV

文書管理システム

プロセス管理 (          )

DHC_P

DHC_P各種帳票

DHC_P

DHC_P各種帳票

基幹システム連携 Apeos PEMaster Evidence Tracker

Drag&Drop

Apeos PEMasterEvidence Manager

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新商品・ソリューション・サービス解説

貿易帳票ソリューション

富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 133

能となる。

定型作業の1例としては、“必要な帳票が

そろった時点で、海貨業者や通関業者など

に対象帳票を送信する”というような業務

がある。

課題③:コスト削減

[解決方法]

ドキュメントコストの抑制

海貨業者や取引先との帳票のやり取りを

電子メールで行うこととし、発生する電子

帳 票 を Apeos PEMaster Evidence

Manager に 格 納 す る 。 ま た 、 Apeos

PEMaster Evidence Trackerの画面を各

部門で共有することで、無駄な印刷や複写

のコストが削減できる。

さらに、保管帳票の原本電子化を実現す

ることで、大量の紙文書を安全に保管する

コストが不要となる。当社は、貿易帳票類

の電子帳簿保存法2)(正式名称:電子計算

機を使用して作成する国税関係帳簿書類の

保存方法等の特例に関する法律)に対応す

るソリューションを提供している。3), 4)

生産性の向上

電子メールでの帳票のやり取りを自動化

することで、帳票の送付や仕分けにかかっ

ていた作業が不要となる。

帳票の特性や取引先企業の都合などで紙

帳票として受領した場合は、QRコード®を

用いたスキャン登録によって、効率的に

Apeos PEMaster Evidence Managerに

格納することが可能である。

ま た 、 Apeos PEMaster Evidence

Trackerの画面をWebブラウザーを通じ

て、いつでも、どこからでも個々の案件の

進捗状況を確認できるので、担当者への問

い合わせが不要となる。

課題④:コンプライアンス遵守

[解決方法]

書類の確実な保管と検索性の向上

Apeos PEMaster Evidence Tracker

の画面では、個々の案件で必要な文書とそ

の格納状況が一目でわかるので、保管義務

のある文書の抜け漏れを防止することがで

きる。また、税関による事後調査では、指

定 さ れ た 案 件 に 関 す る 書 類 を Apeos

PEMaster Evidence Trackerの画面から

ただちに提示することができる。

自社の輸出入情報の全件把握

国際宅配便を簡単に利用できるように

なったことで、貿易管理部門の統制下にな

い輸出入が行われる場合がある。この問題

に対し、貿易に関わる手続きをオンライン

で処理するシステムであるNACCS®*1か

ら、自社に関するすべての輸出入許可書を

取得することで、自社の輸出入情報の全件

を把握することが可能となる。また、

NACCS®から取得した輸出入情報と基幹

システムの情報とをApeos PEMaster

Evidence Tracker上で突き合わせること

で、統制下にない業務を検出することが可

能である。

4. 適用する技術、商品

本章では、貿易帳票ソリューションを実現す

る商品と技術について述べる。

貿易帳票ソリューションは、文書管理システム

であるApeos PEMaster Evidence Manager、

業務プロセスの状況を見える化するApeos

PEMaster Evidence Tracker、紙文書を電子

化するApeos PEMaster Evidence Entry、企

業間連携を電子化するツール群、および、貿易

業務を扱うノウハウで構成されている。

4.1 文書管理

貿易帳票ソリューションを実現するうえで、

さまざまなプレーヤー、業務から発生する情報

を一元管理し、情報量や利用者が増加しても安

定した性能や運用を可能にするコンテンツデー

*1 NACCS ( Nippon Automated Cargo and Port

Consolidated System):入出港する船舶・航空機およ

び輸出入貨物について、税関や関係行政機関に対する手続

きや関連する民間業務をオンラインで処理するシステム

Page 6: 14-D2 小林 K11 20150318 - Fuji Xerox...新商品・ソリューション・サービス解説 貿易帳票ソリューション 富士ゼロックス テクニカルレポート

新商品・ソリューション・サービス解説

貿易帳票ソリューション

134 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015

タベースが必要不可欠である。当社のエンター

プライズ領域向けの文書管理ソフトウェアであ

るApeos PEMaster Evidence Managerは、

大量の文書を長期間にわたって安全に保管する

だけでなく、文書を扱う業務を支援する、さま

ざまな機能を提供する。

4.1.1 管理体系

Apeos PEMaster Evidence Managerは、

キャビネット/ドロワー/フォルダー/ドキュ

メントといった階層構造で管理することができ、

部門単位や社外の取引先単位、業務単位で柔軟

な管理体系を構築することができる。

また、各階層や個々の文書ごとに、閲覧、ダ

ウンロード、印刷、などの操作権限を設定でき

るため、きめ細やかなセキュリティー管理を行

うことが可能である。

4.1.2 検索機能

Apeos PEMaster Evidence Managerでは、

ドキュメントやフォルダーに対して属性情報を

付与することができる。あらかじめ定義されて

いるシステム属性に加えて、ユーザーが用途に

合わせて定義したユーザー属性が設定可能であ

り、任意の属性を検索条件として指定した検索

を行うことができる。

また、検索エンジンコンポーネントとの連携

により、文書中のテキストを対象にした全文検

索を行うことができる。

4.1.3 ドキュメントライフサイクル

大量の文書を長期間にわたって保存する場合、

文書の状態に応じて公開範囲を変更したり、保

管期間が終了した時点で廃棄したり、といった

管理が必要となる。

Apeos PEMaster Evidence Managerでは、

文書のライフサイクルを属性情報や状態遷移に

連動して管理することができる。作成中、承認

済み、公開、廃棄、といった任意の状態を定義

し、それぞれの状態におけるアクセス権限を設

定することができる。また、日時や管理年限な

どによって文書の公開期限を設定しておくこと

で、保存義務期間を終了した文書を自動的に廃

棄することができる。

4.1.4 電子化と原本性保証

貿易業務で扱う多くの文書は国税関係書類に

該当するため、さまざまな税法においてその保

存義務が課せられている。Apeos PEMaster

Evidence Managerの原本性保証オプション

を利用することで、e-文書法*2による要件への

対応を実現している。

Apeos PEMaster Evidence Manager原本

性保証オプションでは、コンテンツデータベー

スに登録されたドキュメントに対して電子署名、

タイムスタンプを付与する。また、ドキュメン

トの改ざん検知、改ざん不可能な第三者による

認証を提供し、原本性保証を実現している。

4.1.5 文書ワークフロー

貿易業務においても、文書の承認や回覧と

いった定型業務が存在する。このような定型業

務では、各作業の確実な実施を支援し、正しい

手順/経路で業務を遂行したことを記録するこ

とで、業務品質の向上につなげることができる。

Apeos PEMaster Evidence Managerでは、

文書の回覧、改訂、承認、といった操作を簡単

に行える、文書ワークフローを利用することが

できる。

また、この文書ワークフローの実行履歴は、

帳票などの文書と同様に、業務の成果物である

証跡情報として扱うことができる。

4.2 見える化

貿易業務では、業務の見える化が大きな課題

である。Apeos PEMaster Evidence Tracker

は、個々の帳票の格納状況を監視することで、

貿易業務全体の進捗状況を見える化する(図4)。

テーブル状に表示された画面の、各行が個々

の案件に相当し、各列が文書の種類に相当する。

各案件の特性に応じて、個々の文書が必要か

不要か、登録済みか未登録か、納期に遅れてい

ないか、といった状況がアイコンの種別で表示

されるので、案件ごとの進捗状況を一目で把握

できる。また、必要なのに登録されていない文

書が一目で確認できるため、次にやるべき作業

*2 e-文書法:法人税法や商法、証券取引法などで紙による原

本保存が義務づけられている文書や帳票の電子保存を容

認する法律

Page 7: 14-D2 小林 K11 20150318 - Fuji Xerox...新商品・ソリューション・サービス解説 貿易帳票ソリューション 富士ゼロックス テクニカルレポート

新商品・ソリューション・サービス解説

貿易帳票ソリューション

富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 135

が明確になる。

また、Apeos PEMaster Evidence Tracker

は基幹システムなどで管理されているデータを

取り込むことができる。これにより基幹システ

ムで管理されている受発注などの情報と、帳票

類を一元管理することができ、業務全体の見え

る化が可能となる。

4.3 紙文書の登録

貿易業務では、帳票の特性や連携する取引先

の都合などで、紙文書を排除しきれない場合が

ある。また、業務プロセスを電子的に行うこと

に大きな効果が見込めない場合、業務プロセス

そのものは紙文書で行い、成果物を電子化する

という場合もある。

貿 易 帳 票 ソ リ ュ ー シ ョ ン で は 、 Apeos

PEMaster Evidence Entry®を用いて、貿易業

務で発生する紙文書を、電子データに変換して

Apeos PEMaster Evidence Managerに取り

込む機能を提供している。

Apeos PEMaster Evidence Entryでは、当

社のデジタル複合機ApeosPortと連携してお

り、複合機の操作パネルからタッチ操作で、紙

文書をApeos PEMaster Evidence Manager

に登録することを可能にしている。

また、Apeos PEMaster Evidence Entry連

携オプションを利用することで、QRコード®が

印刷された帳票シートを、登録したい紙文書と

重ねて複合機から取り込むことで、ユーザーが特

別な操作をすることなく登録することができる。

4.4 企業間連携

貿易業務では、企業をまたぐ文書のやり取りが

頻繁に発生し、その多くが人手を介して行われて

いる。貿易ソリューションでは、これらのやり取

りを自動化し、リードタイム短縮やコンプライア

ンス強化を図るためのツール群を提供している。

その1つに、電子メールを用いた、電子帳票

の送受信機能を提供しており、必要な書類がそ

ろったらただちにメールに帳票を添付して送信

したり、受信したメールに添付されている帳票

を 自 動 的 に Apeos PEMaster Evidence

Managerに登録することを可能にしている。

NACCS®とも連携しており、NACCS®から、

自社の貿易行為に関する帳票を自動的にダウン

ロ ー ド し 、 属 性 情 報 を 付 与 し て 、 Apeos

PEMaster Evidence Managerに登録するこ

とができる。

5. 事例紹介

ここでは、A社に適用した貿易帳票ソリュー

ションの事例を紹介する。

5.1 お客様の課題

A社は、創業当初より海外企業との取り引き

に注力しており、特に輸出による売り上げはこ

こ30年で3倍に増加している。これまで、海外

市場における営業力強化とサポート体制の拡充

を目指し、海外に子会社・代理店を設置するな

ど、海外営業力強化を図ってきた。その一方で、

販路拡大によりますます複雑になるプロセスと、

業務増加への対応が必要になっていた。

A社の抱えていた業務課題を以下に示す。

1)業務量の増加と複雑化への対応

2)問い合わせや監査時の対応工数効率化

過去5年分の帳票を数カ所の倉庫に分散

保存していたため、お客様からの問い合わ

せや監査時の証憑提示などのたびに、膨大

な紙文書の中から必要な情報を探しだす必

要があり、この作業が業務を圧迫していた。

3)納入後のサポートスピードアップ

A社の商品は、船舶の安全航海に必要不可

図4 進捗状況の見える化 Visualization of progress

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新商品・ソリューション・サービス解説

貿易帳票ソリューション

136 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015

欠な商品が多く、販売・納入はもちろん、サ

ポートにおいてもスピードが求められていた。

5.2 適用したソリューション

ソリューションの導入は以下のステップで行

われた。

Step1)業務プロセスの 適化・標準化

業務の効率化を 大にするため、単純に成

果物を電子化するのではなく、可能な限り

電子的に業務を行えるよう、業務プロセス

の 適化・スリム化を実施した。

Step2)システム構築

Step1)で 適化した業務プロセスに基づ

いてシステムを構築した。システム構成の

概要を図5に示す。

導入したソリューションのポイントを以下に

示す。

① 情報の一元管理

基幹システム(ERP)で作成・管理されて

いる帳票類や情報と、各現場で都度発生する

帳票類を文書管理システムであるApeos

PEMaster Evidence Managerで一元管理

する。貿易業務に必要な帳票や情報を適切な

管理体系で統合管理することで、検索性の向

上に加え、セキュリティーの向上も実現した。

② 電子化による作業の効率化と自動化

標準化した業務プロセスのうち、承認作業

の よ う な 定 型 業 務 を Apeos PEMaster

Evidence Managerのワークフローオプ

ションを用いて、電子的に正確かつ効率的に

行える仕組みを実現した。また、必要な帳票

がそろった時点で、社内関係部門や通関業者

などに対象帳票を自動配信することで、作業

の効率化を実現した。

③ 業務の見える化

Apeos PEMaster Evidence Trackerを

用いて、帳票の格納状況をベースに業務の進

捗状況のビジュアル化を実現した。文書の登

録や承認ワークフローの起動などは、Apeos

PEMaster Evidence Trackerのユーザーイ

ンターフェイスから行う。これにより、担当

者のファイリング作業や問い合わせ対応の効

率化に加え、関係者からも容易に進捗確認が

可能となった。

取引先等

D H C _ P

D H C _ P

Apeos PEMaster Evidence Tracker

登録 表示

登録 表示

登録 表示

登録 表示 登録 表示 登録 表示

登録 表示 登録 表示 登録 表示

登録 表示 登録 登録

D H C _ P

D H C _ P

D H C _ P

D H C _ P

D H C _ P

• 文書登録

問い合わせ対応

• 進捗管理

• 承認作業

• 監査対応

• 分析

E R P

貿易帳票ソリューション構築範囲

帳票・データの格納・管理

ワークフロー(承認等)

登録プログラム

帳票登録 属性登録

ユーザーインターフェイス提供 業務の進捗状況の可視化

各種帳票

PDFデータ

Excelデータ

属性情報

CSVデータ

社内システム

メールサーバー

登録

登録

登録

登録

登録

登録

登録

登録

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登録

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Apeos PEMaster Evidence Manager

ERPから出力

図5 システム概要図 System configuration

Page 9: 14-D2 小林 K11 20150318 - Fuji Xerox...新商品・ソリューション・サービス解説 貿易帳票ソリューション 富士ゼロックス テクニカルレポート

新商品・ソリューション・サービス解説

貿易帳票ソリューション

富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 137

④ 保存帳票の原本電子化

電子帳簿保存法や為替法などの要件を満た

し、帳票の電子保存を実現した。

5.3 導入効果

ソリューションの導入により、以下の効果が

得られた。

① 貿易・物流に関連する工数を45%削減

② 保管帳票の紙保存を75%削減

③ 年間約1000万円のコスト削減

上記に加え、本システムのデータや帳票を関

連部門で共有することにより、情報伝達や問い

合わせ対応の時間を大幅に削減できた。正確か

つ迅速な問い合わせ対応はお客様満足度の向上

にもつながっている。

6. おわりに

本論文では、貿易業務を対象に、文書ベース

のプロセス管理技術を適用し、定型/非定型業

務の全体 適を目指すソリューションについて

紹介した。「人手を介した文書中心のプロセス」

において、「見えない」業務を「見える化」する

取り組みは、業務革新のベースになると考える。

今後は、本技術の適用領域を拡大し、各種業

務に必要なツール整備とあわせて、お客様のよ

り良い業務環境構築を支援していく。

7. 商標について

QRコードは、株式会社デンソーウェーブの

登録商標です。

NACCSは、輸出入・港湾関連情報処理セン

ター株式会社の登録商標です。

Apeos PEMaster Evidence Tracker 、

Apeos PEMaster Evidence Entry、Apeos

PEMaster Evidence Manager、ApeosPort

は、富士ゼロックス株式会社の登録商標です。

その他の商品名、会社名は、一般に各社の商

号、登録商標または商標です。

8. 参考文献

1) 桂林浩ほか: “モノづくりを革新するドキュ

メントソリューションを支える技術”, 富士

ゼロックステクニカルレポート, No.24,

(2015).

2) 電子帳簿保存法について:

https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeih

o-kaishaku/joho-zeikaishaku/dennsh

ichobo/jirei/index.htm

3) 前阪学: “「貿易帳票管理システム構築」に

よる輸出入帳票の電子化と法対応”, 日本

文書情報マネジメント協会 月刊IM, 5月

号, pp.6-9, (2014).

4) 森口亜紀, 前阪学: “村田製作所における「貿

易帳票管理システム構築」による輸出関連

書類の電子化および法対応”, 日本文書情

報マネジメント協会 月刊IM, 8月号,

pp.8-11, (2012).

筆者紹介

小林 晴法 ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部に所属

専門分野:構造化文書、ソフトウェアエンジニアリング

田口 亮治 ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部に所属

専門分野:文書管理、グループウェア

村上 亮介 ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部に所属

専門分野:ソフトウェア開発、WEBアプリケーション

木暮 洋輔 ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部に所属

専門分野:ソフトウェア開発、情報工学

高塚 洋平 ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部に所属

専門分野:ソフトウェア開発、情報工学