20091113 cc edu_titech_nov2009release
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Open Resources と CC Japan
渡辺智暁・生貝直人( クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
理事 )2009.11.13 於 : 東京工業大学
(* 本発表資料のライセンスは最終ページをご覧下さい。 )
自己紹介
・クリエイティブ・コモンズ・ジャパン 国際的調整、ライセンス改訂、事業企画に
関する相談、各種イベント、他・国際大学 GLOCOM 米国の情報通信産業・政策、情報社会論・ウィキペディア日本語版(最近は休眠中) 権利処理、違法コンテンツ削除対応、 運営・方針策定各種、他 (自治への参画)
本日の概要
・クリエイティブ・コモンズとは何か?・ クリエイティブ・コモンズの課題・教育分野における可能性と先進事例・応用事例とその整理(生貝担当)
クリエイティブ・コモンズとは何か
文化をとりまく技術環境の変化
アマチュア、ボランティアが創作活動に参加
デジタル技術とデジタル・コンテンツ: 著作物の複製が簡単・無劣化に
ブロードバンド網とその普及: 著作物の流通が簡単・低コストに
ブログ、ウィキ、デジカメ、 CD バーナー、他: 著作物の制作コストも低減
→ 制作・流通とも、著しく安価になった
環境の変化
PC 、各種フリーソフト: 著作物の加工コストも低減
→ 既存の作品の加工の可能性が飛躍的に増大掲示板、メーリングリスト、ウィキ、 SNS 、
他 コミュニケーション用プラットフォーム: 遠隔・非同期コラボレーションが容易に
→ 集合知的な創作活動の基盤
文化の変化
いわゆる「一億総クリエイター時代」→ 専門家の世界に、アマチュアやボラン
ティアが参入し、産業を圧迫する部分もメディア事業、流通の分散化(創作だけではなく、広報や配信にも一般
人が進出)違法コピーの規模拡大も、一部産業の圧迫
を加速
時代の変化 II
多くのアマチュア・コンテンツの中には優れた作品・情報が入っていることも。
→ ランキング、タグづけ、レコメンデーション・エンジン、検索などを通じた「発見」のメカニズムが重要に
複数のアマチュア、ボランティアが集まって優れた作品を創作する例も。
→ ウィキのようなコラボレーション用プラットフォームが重要に;豊富な素材、それを組み合わせるツールも重要に
コンテンツ産業と一般クリエイターの意識のズレ
・権利ビジネスに携わっている産業界は、権利保護への強い意欲
・一般人クリエイターは、必ずしも「売るため」にコンテンツを作っているわけではない。自分の作品が強く保護されることに必ずしも興味を示さない
Ex. 「自由に他人に紹介してくれて OK 」、「あなたのサイトに掲載して OK 」、「改良して OK 」、「金儲けでなければどうにでも使って OK 」、…
著作権に関する意識のズレ一般人の著作権に関する意識と法制度にはズレがあることも
・出典・クレジットを明記すれば自由に転載しても構わない・丸写しはダメだが文章表現を変更したり、要約すれば構わ
ない・非営利目的・無償での利用なら OK・作者の利益になるような利用なら転載も含めて OK・政府や地方公共団体のものは自由に利用してよい・創意工夫を凝らしていない文章などについては著作権を気
にする必要はない→ 違法コピーの原因の一端; 制度が一般人の持つ規範・選好とズレていることの是
非?
制度の変化
・情報諸産業は戦略的な重要性を増し、知財保護強化の流れ
・違法コピー対策(技術的保護手段解除の違法化)
・コンテンツ産業保護政策などの登場(輸入権)
→必ずしも「一億人のクリエイター」にとって都合のよい政策ではない。
ビジネスの変化
・違法コピー問題・ DRM の導入(ソフトウェア、音楽、放送)・一部のコンテンツ産業は一般クリエイターとの競
合関係に・一般人の創作活動の場やツールを提供する事業者
が台頭、オープン戦略を採用する例も
・作品等を自由に使えるようにする戦略がアーティストやプラットフォーム事業者に利益をもたらす例も
解決策としての CC
・著作権制度を正面から変更するのは大仕事
既存のビジネスモデルを破壊されることへの抵抗も大きい
・「希望する人」が著作権の制約を緩くすることは可能。(利用許諾の付与)
→ ライセンスの開発
クリエイティブ・コモンズの課題
CC の願い
著作物(知的活動の所産)の創作、流通、加工を促進したい。今の技術が持っているポテンシャルを引き出せるような法的環境をつくりたい。
CC のねらい
・著作者、利用者にわかりにくいライセンスは NG
→ アイコンの組み合わせで要点を表示、コモンズ証で要点を記述、ライセンス本文もわかりやすく書く。 FAQ も重要。
・ライセンスがたくさんあると、著作者は何を選べばいいかわからない
→ ライセンス選択用のツールを提供
CC のねらい
・ライセンスがたくさんあると、理解するのが大変
→ ライセンスの共用部分を多くする。共用でない部分もモジュール化する。
Ex. 非営利 + 改変不可そもそもライセンスの数を増やしすぎない。
(悩みどころでもある)
CC のねらい
ライセンスの種類が多いと…○著作者は自分の望みどおりのライセンスが含まれている可能性が高い
× 著作者は選ぶのが大変× 著作物の利用者はライセンスを読んで理解
するのが大変(作品ごとに別のライセンスを読まなければならない ! )
×互いに組み合わせが可能でない作品が増える(「コモンズ」の分断)
CC のねらい
ライセンスの種類が少ないと…○わかりやすい× 要望にあうライセンスがないために、著
作者はライセンスを使わない○異なる作品が同一ライセンス下にある可
能性が高く、互いに組み合わせやすい
CC のねらい
取引費用の低減・アイコンの組み合わせでライセンスの要点を表現
・種類は多す過ぎず、少な過ぎず・本文もわかりやすく書く・検索をしやすいようにメタデータを付与
権利処理問題対策としての CC作品の新しい用途を思いつく(テレビ番組のオンライン利
用、「電車男」の出版・映画化) →権利者を探して許諾をとるコストが非常に高い
ウィキ上で数十人の参加者が入れ替わり一つの文章を執筆・改訂していく→あらかじめ許諾をとっておかなければ再利用が困難になりがち
→ わかりやすく、中立的な第三者によるライセンスが有効な場面。
他に、「著作権者不明の場合の裁定制度」「補償金制度」等がある。 Google ブック検索和解案もこの一例。
コモンズ
・個別のコラボレーション、個別の作品が独自のライセンスを採用する→二次利用者にとってはわかりにくい。(複数のライセンスを扱うコスト、リスク)
ex. 歌、舞台美術、脚本などがそれぞれ違うライセンスにおかれている時に、それらを組み合わせたミュージカルは上演可能か? あるプログラムと、画像と音楽と小説を活用してゲームを作ってもよいか?
→汎用性・共通性の高いライセンス体系があることが有効。検索や機械的処理にも役立つ。
CC”JP” について
CC は現在世界 52 の国・法管轄で展開 (各国の著作権法に即してライセンスを調
整、法的有効性と実質的同一性の両方をねらう)
8 の国・法管轄でローンチへ向けた準備中日本では GLOCOM がホストとなって発足、現在は独立の NPO 法人
日本向けのライセンスの改訂、国内での普及促進活動を展開中
教育分野における活用
教育分野における活用
・教材の提供(オープンコースウェア) 日本では JOCW が精力的に展開 (※東工大は設立メンバー)・教科書作成の試みも 日本では FTEXT が数学教科書を開発・研究成果の提供(オープンアクセス) 機関リポジトリ型は多くの大学でも取り組み・ジャーナルのオープン化
教育分野における活用
・シラバス、教科書に加えて講義ノートや講義ビデオに対するニーズが増えつつある
・学内での諸システム連携により、認証や整形などの手続きのコストを減らせる
・公開される資料が増えるにつれて、その活用に視点が移る : 検索、組み合わせ、評価、コミュニティ形成、他 …ここではライセンスが重要になる
先進事例: Connexions
米国ライス大の取り組み・教材となる様々な「モジュール」を共有・組み合わせ・共有用のインターフェース
を用意・ CC ライセンスが適用されており、組み
合わせや共有にあたって個別の許諾取得は不要
先進事例: JOCW 横断検索
マルチメディア教育センター 「能力開発 学習ゲートウェイ」( NIME-glad )
JOCW のメンバー機関のコースウェアを横断的にキーワード検索できるようにしたもの。
先進事例: eduCommons
オープンコースウェアのためのソフトウェア
・オープン・ソースで提供されている・ウィキ作成機能、ソーシャルブックマー
クとの連携なども可能・ファイルのとりまとめ、著作権の権利処
理、などバックエンド機能とサイト構築とをカバー
オープン化の先にあるもの
基本的な教材の開発・配布は低コストに自習の効果は大きくなるカスタマイズは現場に接している人の仕事自主的な勉強のコミュニティー形成の可能
性もある「教えることで学ぶ」アプローチがより有力に
この資料のライセンスこの発表資料を 2 種類のライセンスで提供し、利用者が選べるように
するために、利用許諾に関する注意書きを以下に記します。
・ この発表資料は、 CC-BY 2.1 JP (http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ ) でライセンスされています。
・ この発表資料は、 CC-BY-SA 2.1 JP (http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ ) でライセンスされています。
参考までに、本作品のタイトルは「 Open Resources と CC Japan 」で、原著作者は渡辺智暁です。本作品に係る著作権表示はなく、許諾者が本作品に添付するよう指定した URI もありません。