20141012(parent's influence on marriage)

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現代日本における結婚の変容 配偶者選択の個人化に着目して打越文弥 文学部社会学専修課程 1

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現代日本における結婚の変容 ―配偶者選択の個人化に着目して―

打越文弥 文学部社会学専修課程

1

Quiz

直系家族 家督権を持つ家長と相続権を持つ長男を中心とする世代間秩序

個人化 伝統的な社会制度から解放され,個人が再生産の単位となること

同類婚 同じ社会的背景(学歴、年齢など)を持つもの同士の結婚

2

Quiz

直系家族 家督権を持つ家長と相続権を持つ長男を中心とする世代間秩序

個人化 伝統的な社会制度から解放され,個人が再生産の単位となること

同類婚 同じ社会的背景(学歴、年齢など)を持つもの同士の結婚

3

Quiz

直系家族 家督権を持つ家長と相続権を持つ長男を中心とする世代間秩序

個人化 伝統的な社会制度から解放され,個人が再生産の 単位となること

同類婚 同じ社会的背景(学歴、年齢など)を持つもの同士の結婚

4

問題関心

ランダムに生じない人々の結合はどのよ

うなメカニズムから生じているのか?

人々の結合によって社会はどのように 

維持・変動するか?

5

研究の目的

共同体の中に埋め込まれた制度である

配偶者選択が個人化していく過程を  

記述すること

6

配偶者選択の分析枠組み

7

配偶者選択の分析枠組み

8

個人化の中の家族と結婚

日本の家族における個人化

地域やイエのような共同体から解放され,

近代家族のような新しい集団を形成し,

結果としてその近代家族すらも解体する

9

直系家族と近代家族

直系家族

•  家の継承を目的と

する組織

•  家督権を有する家

長と長男による秩序

と支配関係

•  結婚への介入

近代家族

•  夫婦と子どもを基礎

とする核家族

•  相互に強い愛情を

もって結びつき,信

頼しあう家族

•  自由恋愛を許容 10

結婚と個人化 

11

見合い vs 恋愛の二項対立

国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(旧:出産力調査)」第7回から第14回調査より作成

見合いと恋愛は対立しない

大正時代:個人の意思を尊重しながら適切な配偶者に導く

(阪井 2013)

戦後:親の意向を考慮しつつ配偶者と交際

(Edwards 1990)

"Unions that began through a miai introduction but later blossomed into passionate love did not seem to the

couples to be accurately described as miai marriages" (ibid. 57)

12

親の影響力と自律性(autonomy)

Rosenfeld, Micheal. (2009) The Age of Independence. HUP.

教育程度が高くなると本人の自律性を

促進させ,他人に対してもその人の選択

を尊重するような価値観を醸成しやすい。

13

親の影響力と自律性(autonomy)

Rosenfeld, Micheal. (2009) The Age of Independence. HUP.

アメリカでは,青年期と成人期の間に  

位置する独立したライフステージの段階

に自律性が増すと考えられている。

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使用するデータと変数

East Asian Social Survey (EASS)を使用し, 

日本社会での配偶者選択に対して,いつ、

なぜ個人の選択性が増したかを検討

出会いの機会:見合い,紹介,自分で

従属変数:親の影響力「あなたが配偶者の方との結婚を決めた時、

あなたの親の意見はどの程度影響しましたか。」 (4件法を0/1に)

検証仮説:高学歴であれば親からの影響は受けない

15

見合いと親からの影響力

16

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0"

10"

20"

30"

40"

50"

60"

70"

1920+29" 1930+39" 1940+49" 1950+59" 1960+69" 1970+79"

���� �

見合いと親からの影響力

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1920+29" 1930+39" 1940+49" 1950+59" 1960+69" 1970+79"

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1分で分かるロジスティクス回帰

2つの変数の間の関係が知りたい e.g.収入と生活満足(量的)

親の学歴と子の学歴(質的)

18

1分で分かるロジスティクス回帰

2つの変数の間の関係が知りたい e.g.収入と生活満足(量的)

親の学歴と子の学歴(質的)

相関をとる クロス表を見る 19

関連を予測する

回帰分析 1次関数で関係を表現

Y = a+ bX + e

X(従属変数)が1増えるごとに、

それに伴ってY(独立変数)は平均的にb増加する20

関連を予測する

Xが1増えるごとに、

それに伴ってYは 

平均的に36.6増加

21

関連を予測する

Xが1増えるごとに、

それに伴ってYは 

平均的に36.6増加

誤差による乖離

要因による予測

22

従属変数が質的(0 or 1)のとき

23

従属変数が質的(0 or 1)のとき

24

従属変数が質的(0 or 1)のとき

P(Y=1) となる確率を従属変数に置く

P(Y=1) = a+ bX + e 質的変数から連続変数となる But, 確率は0-1の範囲しかとらない→予測値が それ以外の値の場合がある。

25

確率のオッズの対数をとる

オッズ odds 1から確率を引いたもので確率を割った値 オッズの自然対数をとると、従属変数の予測値は[-∞,+∞] となる。

26

ln P(Y =1)1−P(Y =1)"

#$

%

&'= a+ bX + e

見合いと親からの影響力

27

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���� �

使用するデータと変数

East Asian Social Survey (EASS)を使用し, 

日本社会での配偶者選択に対して,いつ、

なぜ個人の選択性が増したかを検討

出会いの機会:見合い,紹介,自分で

親の影響力:「あなたが配偶者の方との結婚を決めた時、あなたの

親の意見はどの程度影響しましたか。」

検証仮説:高学歴であれば親からの影響は受けない

28

記述統計

29

多変量解析では結婚時の年齢とコーホートダミーを投入する。 スペースの関係上、スライドの表には後者が載っていない

多変量解析(男性)

30

多変量解析(女性)

31

予測確率

32

0"

0.1"

0.2"

0.3"

0.4"

0.5"

0.6"

0.7"

0.8"

20" 21" 22" 23" 24" 25" 26" 27" 28" 29"

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50�������� 60�������� 70��������

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20�������� 30�������� 40��������

50�������� 60�������� 70��������

ここまでの分析結果

結婚年齢を統制すると男性でみられた  

学歴の効果は有為とならない

女性に関して1950年代以前に生まれた

人ではコーホート効果が見られない

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本当に個人化しているのか?

親はどのように介入するか? 仮説1:親が子どもの結婚そのものに反対する

仮説2 :親が子どもの結婚相手に対して介入する

仮説2:結婚を通じた地位達成

親側の2つの戦略:子どもに比べて上位の社会的地位

の結婚相手を見つけることで上昇婚をする,あるいは

子どもより下の地位の結婚相手との下方婚を回避する.

34

親の影響と結婚のパターン

親の影響力の強さ 男性: (1)>(2)>(4)>(3) 女性: (3)=(1)>(2)>(4)

学歴による結婚パターンを4つに分類 (1)低学歴同類婚 (2)上昇婚 (3)下降婚 (4)高学歴同類婚

35

多変量解析の結果

男性:親の結婚への影響力は地位の 

下降回避と結びつく

女性:親の影響力は下降回避とは結び

つかないが、収入の低い男性との結婚

には負に働く→結婚自体への反対?

36

高学歴同類婚を1、下降

婚を0とするロジスティク

ス回帰(男性) 同類婚よりも、下方婚の 場合に親の影響力は有

意に小さい

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紹介/自分での場合 配偶者の収入が高い 場合に親の影響力は 有意に減少する 親が関わったと考えられる見合い結婚においては,この負の関係は見えない.

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結論

•  顕在的な影響力→減少 •  潜在的な影響力→まだ残る

男性にとって、結婚は地位維持としての機能を持つ?(同類婚連鎖の議論も踏まえて。) 女性の「自由」な配偶者選択に対して,親の意見が影響している。

→家族社会学の「選択する家族」への理論的批判 →と結婚を通じた家族戦略(田渕: 2012)の可能性

39

Acknowledgement

East Asian Social Survey (EASS) is a collaborative work of Chinese General Social Survey (CGSS), Japanese General

Social Survey (JGSS), Korean General Social Survey (KGSS) and Taiwan Social Change Survey (TSCS) which was launched in 2006. Surveys in the CAFS project have incorporated EASS

2006 family module with slight modifications according to local contexts.

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文献

阪井裕一郎,2013,『家族主義と個人主義の歴史社会学』,慶応義塾大学大学院社会学研究科博士論文.

田渕六郎,2012,「少子高齢化の中の家族と世代間関係—家族戦略論の視点から—」,『家族社会学研究』24(1), 37-49.

Edwards, W. 1990. Modern Japan through its weddings: Gender, person, and society in ritual portrayal. Stanford University Press.

Rosenfeld, M. 2009. The Age of Independence. HUP.

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