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一般社団法人 日本心不全学会 1 Eiran Z. Gorodeski, MD, MPH, FHFSA 1 Parag Goyal, MD, MSc 2 Zachary L. Cox, PharmD, FHFSA 3 Jennifer T. Thibodeau, MD, MSCS, FHFSA 4 Rebecca E. Reay, ACNP-BC, CHFN 5 Kismet Rasmusson, DNP, FNP, FHFSA 6 Joseph G. Rogers, MD 7 Randall C. Starling, MD, MPH, FHFSA 5 1. Case Western Reserve University School of Medicine and University Hospitals Cleveland Medical Center, Cleveland, OH; 2. Weill Cornell Medical Center, New York, NY; 3. Lipscomb University College of Pharmacy and Vanderbilt University Medical Center, Nashville, TN; 4. University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX; 5. Cleveland Clinic, Cleveland, OH; 6. Intermountain Medical Center Heart Institute, Salt Lake City, UT 7. Duke University Health System, Durham, NC. 原文 Virtual Visits for Care of Patients with Heart Failure in the Era of COVID-19: A Statement from the Heart Failure Society of America DOI: https://doi.org/10.1016/j.cardfail.2020.04.008 日本心不全学会が米国心不全学会から許可を得て翻訳し、翻訳内容に関する責任は日本心不全学会が負 います。 COVID-19 時代の心不全患者のケアのためのオンライン診療。 アメリカ心不全学会からの提言 抄録 COVID-19 パンデミックに対応して、米国の連邦政府および州政府は、感染の拡大を減らす手段と して、幅広い自宅待機勧告を実施してきた。その結果、米国の多くの医療システムや医療行為は、 心不全患者のケアの柱である外来診療所の受診を抑制している。このような状況の中で、双方向性 のオーディオ/ビデオシステムを用いたオンライン診療が、革新的で必要な代替手段として浮上して きている。本提言では、オンライン診療の利点と課題を概説し、オンライン診療の実現可能性を高 めた政策と償還の変化を列挙する。COVID-19 時代のオンライン診療の研究、オンライン診療のケ アのプラットフォームとモデルおよび、オンライン診療の将来を見据えたビジョンについて説明す る (J Cardiac Fail 2020;00:19)

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一般社団法人 日本心不全学会 1

Eiran Z. Gorodeski, MD, MPH, FHFSA1 Parag Goyal, MD, MSc 2 Zachary L. Cox, PharmD, FHFSA3

Jennifer T. Thibodeau, MD, MSCS, FHFSA4 Rebecca E. Reay, ACNP-BC, CHFN5

Kismet Rasmusson, DNP, FNP, FHFSA6 Joseph G. Rogers, MD7 Randall C. Starling, MD, MPH,

FHFSA5

1. Case Western Reserve University School of Medicine and University Hospitals Cleveland Medical

Center, Cleveland, OH;

2. Weill Cornell Medical Center, New York, NY;

3. Lipscomb University College of Pharmacy and Vanderbilt University Medical Center, Nashville,

TN;

4. University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX;

5. Cleveland Clinic, Cleveland, OH;

6. Intermountain Medical Center Heart Institute, Salt Lake City, UT

7. Duke University Health System, Durham, NC.

原文 Virtual Visits for Care of Patients with Heart Failure in the Era of COVID-19:

A Statement from the Heart Failure Society of America

DOI: https://doi.org/10.1016/j.cardfail.2020.04.008

日本心不全学会が米国心不全学会から許可を得て翻訳し、翻訳内容に関する責任は日本心不全学会が負

います。

COVID-19 時代の心不全患者のケアのためのオンライン診療。

アメリカ心不全学会からの提言

抄録

COVID-19 パンデミックに対応して、米国の連邦政府および州政府は、感染の拡大を減らす手段と

して、幅広い自宅待機勧告を実施してきた。その結果、米国の多くの医療システムや医療行為は、

心不全患者のケアの柱である外来診療所の受診を抑制している。このような状況の中で、双方向性

のオーディオ/ビデオシステムを用いたオンライン診療が、革新的で必要な代替手段として浮上して

きている。本提言では、オンライン診療の利点と課題を概説し、オンライン診療の実現可能性を高

めた政策と償還の変化を列挙する。COVID-19 時代のオンライン診療の研究、オンライン診療のケ

アのプラットフォームとモデルおよび、オンライン診療の将来を見据えたビジョンについて説明す

る (J Cardiac Fail 2020;00:19)

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一般社団法人 日本心不全学会 2

序章

コロナウイルス感染症 2019(COVID-19)は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-

2)を原因とする非常に伝染性の高い感染症である。COVID-19 パンデミックは、米国の患者、臨床

医、医療システムに未曾有の危機をもたらしている。これに対応して、米国連邦政府と州政府は、

感染拡大を抑えるための手段として、広範な自宅待機勧告を実施し、非必須事業には一時的に営業

停止を命じている。本稿執筆時点では、COVID-19 の継続的な蔓延を緩和する唯一の方法として、

社会的距離をおくことが知られているが、現在のところ有効なワクチンや治療法はない。患者の感

染リスクや病気の伝搬を減らし、医療資源を節約し、入院を必要とする多くの重症 COVID-19 患者

にケアを提供するために必要な人員を確保するため、米国の多くの医療機関では、心不全などの慢

性疾患患者の⾧期的なケアの柱である外来診療所を縮小している。このような状況の中で、双方向

性のオーディオ/ビデオシステムを用いたオンライン診療が、対面診療に代わる革新的で必要な代替

手段として提案されている。

オンライン診療は、一般的に利用されている家庭用機器を使用して、患者と臨床医との間

でリアルタイムに双方向性の遠隔医療対話を行うためのプラットフォームを提供する。オンライン

診療を早期から利用した医療者は、その実施の容易さ、時間とコストを節約する可能性、診療への

アクセスの増加と医療機関への外出を回避する利便性に関する患者の満足度、を実感している 1-5。

米国退役軍人省は、これまで遠隔医療の活用をリードしてきた。2019 年度には、99,000 人以上の退

役軍人が自宅で専用アプリである VA Video Connect を使用し、294,000 件の面談を実施した 6。こ

れらの大部分はメンタルヘルスのためのものであったが、その経験から、慢性疾患のケアにオンラ

イン診療を広く活用することについて実現可能であることが示されている。

最近、オンライン診療の有効性が、心不全患者の退院後ケアにおけるオンライン診療対対

面の外来診療の無作為化臨床試験(Virtual Visits in Heart Failure Care Transitions(VIV-HF);

NCT03675828;Late Breaking Clinical Trial presentation at the Heart Failure of Society of America's

Annual Scientific Meeting 2019 in Philadelphia, PA)で示された。このパイロット試験の目的は、心

不全の入院後に病院から在宅へ移行する患者(n=108)を対象に、対面診療をオンライン診療で代

替することの実現可能性と安全性を検証し、オンライン診療がどの程度まで予約不来院率を低下さ

せることができるかを評価することであった。その結果、オンライン診療群の予約不来院率は訪問

診療群よりも低い傾向にあったが(オンライン診療群 34.6%対対面診療群 50%、RR0.69、95%CI0.44

~1.09、P=0.12)、再入院、救急外来受診、死亡については両群間で有意差はなく、有害事象は見ら

れなかった。7 しかし、その有望性にもかかわらず、COVID-19 パンデミック以前の米国の医療環

境におけるオンライン診療の広範な利用は、臨床医と患者双方の機械への不慣れな問題、対面診療

をオンライン診療で代用することの安全性への懸念、臨床医の確立されたワークフローへの組み込

みにくさ、法律上の問題、保険償還の制限などの、いくつかこれまでと異なることがあったために

制限されていた。8

COVID-19 のパンデミックの状況下では、社会的な距離をとることの重要性が高いため、

これらの障壁の多くは現在ではなくなっている。本声明の目的は、COVID-19 パンデミックの時代

におけるオンライン診療の提供について、心不全臨床医に実用的な指針を提供することである。ま

ず、オンライン診療の利点と価値、臨床上の課題、そして最近の COVID-19 に関連した政策や診療

報酬の変更がオンライン診療の利用を促進していることを概説する。次に、現在存在するオンライ

ン診療プラットフォームの概要を説明し、オンライン診療を用いたケアモデルを説明する。最後に、

オンライン診療の短期的および⾧期的な将来的な意義について概説する。

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一般社団法人 日本心不全学会 3

現在の公衆衛生上の緊急事態において、オンライン診療には複数の潜在的な利点がある(表 1)。

患者の立場にたつと、オンライン診療は、これまで大幅に制限されていた、あるいは全くなくなってしま

った医療へのアクセスを提供する。医学的なアドバイスや病状に関する指導を継続的に受けられるプラ

ットフォームを提供することで、オンライン診療は患者の健康を維持し、対面による感染リスクを減ら

しながら、病気による苦痛を軽減するために不可欠なものとなっている。医療施設への訪問時の付き添

いが制限されている現在、オンライン診療は、心不全患者に不可欠なセルフケアを支援する介護者にも

影響が及ぶ。9 患者の中には難しい話をする際、これまで対面での診療では立ち会うことができない家族

と、快適な自宅に居ながら一緒に話し合えるほうが気楽と感じる方もいるだろう。臨床医の立場では、オ

ンライン診療は、医学的に複雑な患者に対しても自宅で安全にサービスを提供し続けることを可能にす

るものである。対面診療を行わない場合における患者と医師の信頼関係を維持するためには、対面での

診療能力は特に重要となるであろう。医療システムの観点からは、遠隔でのサービスを提供することで、

急性期の入院治療を必要とする重症 COVID-19 症例の急増に対する医療資源について再配分可能となる。

また、オンライン診療は、病院、診療所、および米国の医療システム全体の財政面を維持しながら診療報

酬でのサービスを提供することを可能にする。最後に、オンライン診療は、データ収集のために患者との

接触が必要な研究の継続を確保し、被験者の安全性を確保するために活用することができる。

表 1. オンライン診療のメリットと価値

グループ 潜在的なメリット

患者

アクセスを提供する

医療アドバイスを受ける

SARS-CoV-2 への感染暴露を減らす

苦痛を減らす

介護者を巻き込む

臨床医 患者さんへサービスを提供する

SARS-CoV-2 への感染暴露を減らす

患者と医療者のつながりを維持する

ヘルスケアシステム リソースの再配分

収益を生む

研究への取り組みを支援する

オンライン診療のメリットと価値

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一般社団法人 日本心不全学会 4

オンライン診療を成功させるためには、患者が自らすすんで実行でき、さらに機器が有効に使え

なければならない。したがって、オンライン診療は、特定の状況下ではいくつかの困難を伴う可能性があ

る。患者の中には、機械に不慣れであったり、ビデオでの対話を苦手に感じたりして、オンライン診療へ

の参加に消極的な人もいるかもしれないが、オンライン診療が主流になるにつれて、このような感情は

少なくなるだろう。オンライン診療では、全身の身体所見をとることは困難であるが、それでも重要な所

見の多くはとることはでき、既存のそしてこれから開発される診断技術やウェラブルがこれらのギャッ

プを埋める可能性がある。臨床医や患者の中には、いくらビデオを使用しても、オンライン診療では患者

-医師のコミュニケーションに関して、対面での診察と同じではない、何かが失われていると感じる人も

いるであろう。患者の中には、インターネットへのアクセスが制限されていたり、オンライン診療に参加

するためのコンピュータやスマートデバイスを持っていない場合もある。(貧困層が多い都心部や地方の

貧しい高齢者など)。患者によっては、地理的にも経済的にも WiFi を手に入れるのが難しい場合もある

が、将来的には、ユビキタスセルラーネットワークを介して「ホットスポット」が提供され、インターネ

ットへのアクセスの障壁がほとんどなくなると予想される。一部の医療システムでは、遠隔医療が健康

格差を拡大させないように、これらの技術に投資し、機器や接続性を提供している。10,11

高齢者は、このような問題をかかえる一般的な集団のひとつとみなされるかもしれない。米国で

現在心不全患者の半数以上が 70 歳以上の高齢者であることから、この点は特に重要なことである。12 し

かし、最近のデータによると、スマートフォンを所有する高齢者が増加しており、病院や診療所のサポー

トチームによって、より新しい技術の使用方法を指導することができる可能性がある。13 これらの課題を

克服するためのもう一つのアプローチとして、オンライン診療の技術プラットフォームを、すでに患者

に馴染みのある医療機関の電子ポータルやアプリに統合することも考えられる。患者と臨床医は、オン

ライン診療を実施する際に、オンライン診療を開始できないといった接続の問題や、オーディオ/ビデオ

の問題など、技術的な困難に遭遇することがある。この問題の一部には、COVID-19 の危機的状況の中

で、同時にプラットフォームを使用しようとするユーザーの量が予想以上に多かったことが原因である

可能性がある。時間の経過とともに、ソフトウェアのアップグレードがこれらの問題に対処し、プラット

フォームがより多くのユーザーの数と容量に対応できるようになることが望まれる。これらの技術的な

問題が発生した場合には、電話での訪問に切り替えることが合理的な解決策である。

米国執行部、米国議会、米国保健福祉省(Department of Health and Human Services: HHS)お

よび州政府を含むいくつかの機関は規則や規制を緩和し、オンライン診療の実現可能性を高めた。

COVID-19 の公衆衛生上の緊急事態に対応するため、「2020 年コロナウイルス準備・対応補足予算法」

が米国議会でほぼ全会一致の支持を得て可決され、2020 年 3 月 6 日に大統領によって署名された。14 こ

の法案は、コロナウイルス公衆衛生上の緊急事態の間、米国保健福祉省が遠隔医療サービスに関する特

オンライン診療への挑戦

COVID-19 時代のオンライン診療の実現性を高める政策転換

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一般社団法人 日本心不全学会 5

定のメディケアの制限や要件を一時的に免除することを可能にした。その後、2020 年 3 月 13 日、大統

領は COVID-19 のアウトブレイクを米国の国家的緊急事態と宣言し、HHS が社会保障法第 1135 条に基

づき、メディケア、メディケイド、および 1996 年に規定された医療保険の携行性と責任に関する法律

(Health Insurance Portability and Accountability Act:HIPAA)の特定の要件を一時的に免除する権限

を行使することを認めた。15 米国保健福祉省と州が行った具体的なステップを以下に記載し、主要な政

策変更の概要を表 2 に示す。

HHS は、遠隔医療の実践に直接影響を与える医師免許やプライバシーに関連する様々な規則

を緩和した。第一にサービスを提供する州で、医師とその他の医療専門家の両方がライセンスを保持し

ているという要件は、連邦政府によって免除された。16 第二に、HIPAA のプライバシー規則が停止さ

れた。具体的には、HHS は、遠隔医療技術とその使用方法の両方に関連して、HIPAA の規則に違反

した場合には、その執行上の裁量を行使し罰則を課さないことを示した。17 HIPAA に準拠していない

と判断されていた場合でも、臨床医は非公開のオンライン診療のプラットフォームを介して医療を提供

することができるようになったため重要である。短期的には、この柔軟性の向上がオンライン診療の利

用拡大につながる可能性がある。⾧期的には、安全を確保し、パンデミック後に実践し慣習化できるよ

うに可能な限り HIPAA に準拠したプラットフォームを使用することを推奨する。COVID-19 パンデミ

ックの発生に伴い、各州はオンライン診療への障壁を取り除くために様々な措置を講じてきた。これら

は、メディケイドの償還、免許と在宅の適格性に関連している。コネクテッド・ヘルス政策センター

は、これらの包括的な州別の要約を管理しており、そのウェブサイト

(https://www.cchpca.org/resources/covid-19-related-state-actions)に掲載されている。

COVID-19 公衆衛生緊急事態以前は、オンライン診療の保険償還は制限されていた。わずかな

例外を除いて、メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は特定の状況下でのみ遠隔医療

訪問のための償還を行っていた。患者は再診で地方に住んでいなければならず、オンラインの発信元は

医療施設内からでなければならなかった。多くの民間保険会社は、緊急ケアのためのオンライン診療(す

なわち、対面式の救急外来や緊急ケアの受診の代替)を償還しているが、プライマリーケアや専門ケアの

ためのオンライン診療を償還している保険者は少数であった。その間、一部の病院は、特定のハイリスク

患者(心不全を含む)に対してオンライン診療の提供を開始しており、バンドルペイメントモデルによる

⾧期的な節約が最終的にオンライン診療の関連費用を補うことになると期待して施設のリソースを費や

した一方で、一部の病院は患者からの直接の現金支払いによりオンライン診療を提供している。

オンライン診療の診療報酬の最近の変化

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一般社団法人 日本心不全学会 6

表 2. COVID-19 時代の遠隔医療関連政策の変化

トピック 主な政策変更:COVID-19

パンデミック

オンライン診療の意味合い

ライセンス HHS が専門家は、他の州で

同等のライセンスを取得し

ている場合は、サービスを

提供する州でライセンスを

保持しなければならないと

いうヘルスケアの要件を免

HHS は、最終的な州レベル

での決定において、地方の

ライセンス要件を放棄する

よう州に要請

州を越えてオンライン診療

を介して医療を実践するこ

とが可能となる

個人情報保護 HHS が HIPAA ルールを停

以前は HIPAA に準拠して

いないとされていたオンラ

イン診療のプラットフォー

ムの使用が可能になる

患者さんの所在地 CMS は遠隔医療のための地

方と地域の制限を免除

患者の所在地に関係なく、

臨床医が遠隔医療サービス

の報酬を受けられるように

します。

既存の関係 CMS は、遠隔医療サービス

は医師との関係性が確立し

た患者にのみ提供できると

いう要件を免除

臨床医は遠隔医療で新患の

患者さんを診ることができ

る。

処方箋 DEA は、遠隔医療による規

制薬物の処方に関する規則

を緩和

臨床医はオンライン診療で

規制薬物を処方することが

できる。

CMS, Centers for Medicare & Medicaid Services; DEA, Drug Enforcement Administration; HHS, US

Department of Health & Human Services; HIPAA,

Health Insurance Portability and Accountability Act.

2020 年 3 月、COVID-19 公衆衛生緊急事態と 1135 条の免除の発表に続いて、いくつかの重要

な遠隔医療関連の償還変更が生じた。CMS は、「遠隔医療訪問」と呼ばれるオンライン診療は、訪問の目

的、患者の地理的な位置、以前に通院していたかどうかなどの制限なしに、COVID-19 の危機の間、対

面での訪問と同じ料金で償還されることを発表した。 Aetna、Cigna、Humana、Blue Cross Blue Shield

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一般社団法人 日本心不全学会 7

などの複数の民間保険プロバイダーがこれに追随している。遠隔医療サービスに対する受益者負担金の

免除は、プロバイダーによって異っている。

現時点で償還のためには、オンライン診療のための書類は対面での外来診療の書類と同様のも

のであるべきである。臨床医は患者の同意を得て、バーチャル(音声/ビデオ)訪問が完了したことを明

確に文書化することを推奨される。

臨床医は、訪問に要した時間を分単位で文書化すべきである。現行の手続き用の請求コードと関連する

改正を表 3 に示す。将来的に、オンライン診療のための電子カルテの文書化は、画像のキャプチャまた

はビデオインタラクションのストリーミングクリップ、会話の主要な構成要素の自動転写、および意味

を判断して情報を要約するための自然言語処理の使用を含む可能性がある。

表 3. オンライン診療の請求コード。

新患の評価や治療のための外来受診 CPT Code 99201-99205* Place of service

02 for Telehealth (Medicare), or, Modifier

GT (Medicare/Medicaid) Modifier 95

(Commercial payers)

通院患者の評価や治療のための外来受診 CPT Code 99201-99205* Place of service

02 for Telehealth (Medicare), or, Modifier

GT (Medicare/Medicaid) Modifier 95

(Commercial payers)

救急、初期入院のコンサルト G0425 – G0427

療養病床での定期フォローのコンサルト G0406 – G0408

HHS によると、COVID-19 の全国的な公衆衛生上の緊急事態の間、患者に遠隔医療を提供する

ために音声またはビデオ通信技術を使用したいと考えている医療提供者は、患者と通信するために利用

可能な非公開の遠隔通信製品を使用することができる。エンド・ツー・エンドの暗号化を採用しており、

個人が通信している相手のみが通信内容を見ることができる。一方、パブリック・フェイシング・プラッ

トフォーム(Facebook Live、Twitch、TikTok など)は、一般に公開されているか、コミュニケーション

への広範囲または無差別のアクセスを許可するように設計されている。表 4 は、いくつかのオンライン

診療に使用される可能性のある一般的なプラットフォームである。

オンライン診療のプラットフォーム

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一般社団法人 日本心不全学会 8

表 4. COVID-19 公衆衛生緊急時に利用されたオンライン診療プラットフォーム。

名称 注意点

消費者向けアプリ Apple FaceTime

Facebook Messenger video

chat

Google Hangouts video Zoom

Skype

・ビデオチャットができる人

気のアプリ

・安全性は低いが COVID-19

の危機の間に許可されている。

・医療提供者は、これらのサー

ドパーティ製アプリケーショ

ンがプライバシーを侵害する

可能性があることを患者に通

知することが奨励されている。

・使用可能なすべての暗号化

とプライバシモードを有効に

する必要がある。

・利用することにより、個人情

報(メールアカウント、電話番

号など)が漏洩する可能性があ

る。

特殊な技術プラットフォーム Skype for Business / Microsoft

Teams

Updox

VSee

Zoom for Healthcare

Doxy.me

Google G Suite Hangouts Meet

Cisco Webex Meetings /

Webex

Teams

Amazon Chime

GoToMeeting

Spruce Health Care Messenger

American Well

MDLive

BlueJeans for Healthcare

Doximity

・HIPAA 準拠技術プラットフ

ォームの一部リスト

・通常は、遠隔医療サービスの

提供のための HIPAA ビジネス

アソシエイト契約が必要であ

るが、これは COVID-19 の危

機の一部として破棄された。

・コストや機能のばらつき

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一般社団法人 日本心不全学会 9

オンライン診療は、HFpEF や HFrEF を含むあらゆる心不全患者、そして左室補助装置(LVAD)

装着患者、心臓移植患者を含むすべてのステージの心不全(A~D)を評価するために使用することがで

きる。オンライン診療を介して行われる臨床評価には、臨床状態の評価、投薬の見直しと管理、副作用の

スクリーニング、ガイドラインに沿った治療の調節、および服薬アドヒアランス、食事、運動に関するカ

ウンセリングが含まれる。

一般的に、外来受診は緊急性の高いものと日常的なものに分類される。緊急性の高い分類には、

新規または悪化した心不全症状のための外来受診や、最近 LVAD を植え込んだ患者や心臓移植を受けた

患者の受診が含まれる。呼吸困難の訴えを管理しトリアージするためにオンライン診療を使用すること

は、COVID-19 の危機時には特に重要であると考えられる。ステージ D 期の心不全に近づいている患者

や強心薬を必要とする患者も、悪化の可能性があるため優先度が高い。定期的な診察には、投薬調節、検

査、または定期訪問のためのものが含まれる可能性がある。全国の多くの心不全プログラムは、すでに対

面診療をオンライン診療に変更しており、患者は以前に予定されていた同じ日時に受診できるようにな

っている。

緊急診療と定期診療の両方をオンライン診療で実施するかは資材の利用可能性次第である。緊

急の診察と定期の診察を明確に区別するアルゴリズムは、資源を割り当てるのに役立つかもしれない。

各診療所応じて効果的なトリアージを行うために、事務職員および/または看護師を訓練すべきである。

また、臨床医はオンライン診療を使って緊急の訴えをスクリーニングし、対面診療が必要な患者を決定

することもできる。

重要なことは、医師、アドバンスプラクティショナー、認定ソーシャルワーカーを含む様々な臨

床家がオンライン診療を実施し、償還を受けることができることである。18 薬剤師もオンライン診療を

提供することができるが、請求は指導医を通じて行わなければならない。19 隔離を必要とするが診療を

おこなうのに十分な健康状態にある臨床医は、対面での貢献は限られるが、オンライン診療を実施する

ために追加の人員を提供することができる。オンライン診療は患者と臨床医とチームの間で行われるこ

とが望ましいが、臨床医が同僚の患者と一緒にオンライン診療を行うことが必要な場合もある。

オンライン診療によるケアモデル オンライン診療で受診すべき患者は?

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一般社団法人 日本心不全学会 10

オンライン診療は、従来の対面訪問に近い形で設計することができる(表 5)。これらの訪問の

間に、さまざまな担当者が病歴の聴取、服薬の照合、アレルギー歴の確認、システムレビューを実行し、

引き続き患者の自己申告によるバイタルサインを記録することができる。心不全患者は服用する薬の数

が多く、それと関連した投薬過誤や有害事象のリスクを考えると、ビデオによる投薬レビュー(図 1)に

オンライン診療を活用することは、特に魅力的である。20 これを行うために、臨床医は患者に薬瓶をカメ

ラの前にかざしてもらうことで視覚化して確認することができる。通常の対面式の診療では、薬瓶を持

参することは少なく、その点で、実際にはオンライン診療は通常の対面式よりも優れているかもしれな

い。

特に患者が現代のスマートフォンやタブレットで利用可能な高品質のビデオ機器を使用する場

合には、身体診察の基本的な構成要素は遠隔医療を介して実行することができる(図 1)。これらの構成

要素には、覚醒や見当識を含む全身外観や下腿浮腫のような末梢性浮腫の徴候を観察することならびに

頸静脈の遠隔評価による体液量の状態評価が含まれる。頸静脈の評価は、適切な角度と照明を得るため

に、第三者が患者の頸部に対してカメラの位置を相対的に移動させて行うのが最善である。最近のデー

タでは、ビデオ拡大技術を用いた頸静脈の評価は、侵襲的に測定された右心房圧と相関があることが実

証されている。21 心室充満圧の上昇と関連した起坐呼吸と屈曲呼吸の評価も遠隔で行われる。22.23 オンラ

イン診療は、部屋から部屋への歩行や階段昇降による運動耐容能の評価も可能である。最後に、オンライ

ン診療を使用して、末梢に挿入された中心カテーテルラインの部位や他のカニューレ、ペースメーカー

や ICD の植え込み部位のような創部を観察することも可能である。

オンライン診療を行う診療所の臨床ワークフローはどのようになっているか?

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一般社団法人 日本心不全学会 11

5. オンライン診療を成功させるための準備

オンライン診療前 ・ オンライン診療に使用するプラットフォームと技術を決定し、患者が参加

できるようにする。

・ 患者がオンライン診療に同意していることを確認する(口頭または書面)

・ ウェブカム、スマートフォン、または タブレットの正面にたち部屋の照

明を調整する。

・ ビデオとオーディオが適切に機能していることを確認する。

・ オンライン診療の間、別の画面に表示するか分割画面構成を使用し、電子

カルテを開いてライブレビューを行うことを検討する。

・ オンライン診療のエチケットに従う:プライベートの専用の部屋で訪問を

行い、背景に雑音や気が散るものがないことを確認し、話さないときは音

声接続をミュートにする。

・ サポートスタッフと協力して、事前に患者に連絡を取り、バイタルサイン

の取得、投薬の確認、臨床医が電話をかける時間の確認を行う。これは診

療所によって異なる。

オンライン診療中 ・ 患者の音声とビデオの接続が確立されていることを確認する。

・ 視覚的なアイコンタクトを維持します。

・ 患者が開始する準備ができていることを確認する。気が散るようなことが

あれば、それを最小限に抑えるように依頼する。

・ 患者が初めてオンライン診療を使用するかどうかを判断し、不安があるか

を確認する。患者には、何らかの問題があればいつでも中断できることを

知ってもらう。

・ 身体診察のためにカメラを患者さんに操作してもらう。

・ 臨床検査の必要性に対応する。

・ ティーチバックを使用し、患者に重要な指示、投薬の変更、およびフォロ

ーアップ計画を書き留めてもらう。自己管理を強化させる。

・ 診察の最後には、次回の診察に生かすため患者さんにどのように感じたか、

何がうまくいったか、何が良くなる可能性があるかを話し合って終わる。

オンライン診療後 電子カルテでの文書化:オンライン診療の証明書を用いて実施したオンライン

診療、費やした時間、診察内容、誰が同席していたか。記録の特定の名称を考

慮する(例:心不全バーチャル訪問)。

・ 薬物の最新情報やケアのための具体的な指示を患者に電子メール、郵便ま

たはメッセージで伝える。

・ 必要に応じて、検査データを手配する。

・ 請求書を作成する。

・ ・次回の訪問の計画を立てる。

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図 1. 心不全専門医(右下隅)と患者とのオンライン診療のスクリーンショット。

(A) ビデオによる服薬確認

(B) 足首の浮腫の有無を診察

(C) 頸部の視診

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すでにいくつかの遠隔モニタリング機能が心不全患者のケアに使用されており、オンライン診

療の間に収集されたデータを補完することができる。24 最も基本的なものは、電子体重計と血圧カフを用

い た体 重 と 血圧 の遠 隔モ ニタ リ ング で あ る。 肺 動 脈に 埋め 込 まれ た血 行動 態 モ ニタ ーで ある

CardioMEMS は、肺動脈圧を遠隔で送信することで、病院の再入院を減らし、生活の質を向上させるこ

とが示されており、治療を決定するために遠隔診療に加えて使用される可能性がある。25.26 同様に、不整

脈イベントを評価するための ICD の記録精査は、追加の情報を提供することができる。リストウォッチ、

スマートフォン、パッチ、ヘッドバンド、メガネ、ネックレス、ベストなどの心臓モニタリング用のウェ

アラブルデバイスを、オンライン診療を介して提供される臨床管理に組み込むことができるかどうかは

不明であり、今後の検討が必要である。27-29

オンライン診療は、COVID-19 パンデミックにおいて、特に高リスク集団で重要性が高まって

いるアドバンス・ケア・プランニングについて、患者と介護者が考えるための特別な機会を提供する。患

者(およびその介護者)が自宅で快適に過ごしている間にこれらの会話を行うことは、これらの議論のた

めの最適な環境を提供するかもしれない。COVID-19 の危機が進展するにつれ、急性疾患になることに

関連した問題が多くの心不全患者の頭の中にあるかもしれない。したがって、オンライン診療の間にケ

アの希望を話し合うことが適切であろう。日常的に話し合う際には、以下のような質問をするとよいだ

ろう。

・ 代理意志決定者を選任しましたか?

意思決定ができなかった場合に、あなたに代わって意思決定を行うことができます。

・ 事前指示書を記入しましたか?

・ あなたが病気になり、自分で判断できなくなった場合、あなたのケアの希望がどのようなものである

かを、あなたの代理意志決定者や家族は知っていますか?

・ 医療委任状がありますか?

これは、あなたが意志決定をおこなうことができない場合に、あなたに代わりに意思決定を行う権限を

与える法的文書です。

オンライン診療の補助

アドバンス・ケア・プランニング

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オンライン診療の主要な目標の 1 つは、SARS-CoV-2 ウイルスに感染する可能性のある他者へ

の曝露を減らすことである。この目標に沿って、社会的な距離を置きながら薬剤を入手するための患者

の戦略を考慮することも同様に重要である。患者の自宅に薬を届けることは、曝露を減らすための 1 つ

の方法である。過去に郵便配達薬局サービスを利用していたことがある患者は約 20%であり、このこと

は、現在の公衆衛生危機で初めて患者の大多数にはこのプロセスを紹介する必要があることを意味して

いる。30 全国規模の郵便配達薬局は多くの患者にとって⾧期的な解決策になるかもしれないが、新規患

者や処方箋の場合は、通常、配送までに 1~2 週間の遅延が発生する。したがって、近隣であれば同日、

もしくは翌日には配達が可能な独立したもしくはチェーンの薬局を利用するのが賢明かもしれない。注

目すべきは、COVID-19 の危機の間、様々な薬局チェーンが配達料を免除していることである。これら

のサービスを利用したくない、あるいは利用できない患者には、ドライブスルーで受け取りが可能な薬

局を選択することで、ある程度の社会的距離を置くことができるかもしれない。

臨床医は、適切な場合には 90 日分の薬を処方し、患者がすべての薬剤を共通のスケジュールで

再充填できる様に支援し、患者が薬局に行く回数を減らすことを検討すべきである;特に COVID-19 で

は、このような取り組みに対する伝統的な法的・行政的障壁の多くが取り除かれた。CMS パート D のス

ポンサーと商業薬局の福利厚生管理者の両方は、早期の再充填に関する制限を緩和し、現在では、充填さ

れる薬の最大供給日数(最も一般的には 90 日)を許可している。さらに、多くの州では、患者がプロバ

イダーからの再充填の承認を待っているときに、薬局が慢性投与されている非管理薬を 30 日分緊急供給

することを許可するなど、薬の入手を容易にするための緊急措置を実施している。薬物アクセスに影響

を 与 え る 薬 局 関連 の州 の 行 動を 州 別 に 分 類 した リ スト は、 National Alliance of State Pharmacy

Associations のウェブサイト(https://naspa.us/resource/covid-19-information-from-the-states)で継続

的に更新されている。

本声明は、主に心不全の成人患者の継続的な外来ケアのためのオンライン診療の活用に焦点を

当てているが、これらの原則は入院患者にも適用される。個人用保護具の不足が懸念されることを考え

ると、オンライン診療は入院患者の治療に従事する臨床医にとって有益であり、すでに米国内のいくつ

かの医療システムで導入されている。アプローチは様々だが、最も一般的なのは病院支給のものか、患者

自身のスマートフォンやタブレットを使用することである。使用されていると報告されているソフトウ

ェアプラットフォームには、Apple FaceTime、Cisco Jabber、Microsoft Team などがあり、中には複数の

チームメンバーが接続して一緒にバーチャルラウンドを行うことができるものもある。これらの診察は、

感染暴露を制限しながら身体診察に関する有用な情報を提供できる Bluetooth 聴診器やポイント・オブ・

ケア超音波技術を使用することで、より充実したものになるかもしれない。注目すべきは、入院治療のた

めのオンライン診療は保険償還対象となり(表 3)、対面での診療と同等である。コンサルタントが病院

の外にいて、患者が入院している場合、外来のオンライン診療として請求することができる。

オンライン診療後の薬局での検討

入院患者における遠隔医療の利用

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COVID-19 は、一部の病院を呼吸器症候群や呼吸不全の患者で飽和状態にし、その後、医療界

は、心不全のような慢性疾患を有する多くの患者に日常的なケアを提供するためにオンライン診療に頼

ることを余儀なくされた。重要なことは、生存者は回復に⾧期の時間を必要とする可能性が高く、これら

の患者がどこで回復してリハビリを行うのかは不明であるということである。現在のところ、多くのリ

ハビリテーション施設や⾧期療養施設では、感染が懸念されるため、COVID-19 陽性の患者を受け入れ

ていない。したがって、米国の一部の病院では、COVID-19 の急増の期間がすぎても、ベッドが埋まっ

たままになる可能性がある。さらに、最近のデータでは、COVID-19 陽性患者の少なくとも 20%が医療

従事者であることを示唆しており、これは現役の労働者への酷使につながる。したがって、オンライン診

療のような資源効率の良い戦略を継続することが、短期的もしくは中期的には必要かもしれない。

医療従事者や患者へ COVID-19 の心理的影響がどのような影響を与えるかは、特にリスクが高

い患者群である心不全などの慢性疾患において不明である。重要な考慮点は、COVID-19 の危機が去っ

た後も、患者は対面での診察や移動に不安を持ち続け、ある程度の社会的距離を保ちたいと考えている

可能性があるということである。その結果、心不全患者の多くはオンライン診療を好んで継続する可能

性がある。COVID-19 が流行する前は、臨床医がオンライン診療を学んだり、取り入れたりするきっか

けはほとんどなかった。現在では、多くの臨床医がオンライン診療を学び、使用することを余儀なくされ

ている。その結果、COVID-19 パンデミックの後には、臨床医はオンライン診療をより受け入れやすく

なるかもしれないし、実際、オンライン診療を好む臨床医もいるかもしれない。

このような期待を念頭に置いて、米国の医療システムでは、今後、特に心不全患者に対してオン

ライン診療によるケアモデルが標準となっていくと考える。多くの心不全患者、特に高齢の障害者や田

舎に住む患者は、他の障壁の中で運動耐容能の低さ、交通手段の不備、酸素運搬の難しさなどの理由で、

対面診療に参加することが困難な場合が多い。このような患者にとってはオンライン診療の方が便利で

あり、患者を連れてくるために仕事を休まなければならないこともある介護者にとっても同様である。

COVID-19 の公衆衛生上の緊急事態に対応して開発され、本文書で議論されている政策と償還

慣行は、オンライン診療の継続的な使用に対応するために残っているかもしれないし、さらに進化して

いくかもしれない。もしそうでなかったとしても、CMS が恐らくは対面診療よりも低い診療報酬率であ

るが、オンライン診療の利用を奨励し続ける可能性はあると思われる。バイオセンシング・ウェアラブル28.31 やその他の診断ツールなど、オンライン診療と連携した遠隔医療技術の採用が増えるかもしれない。

オンライン診療の使用により、アドヒアランスが改善されるかどうか、不来院率が減少するかどうか、診

察室の経費が減少するかどうか、入院患者から外来患者へのケアの移行が改善されるかどうか、あるい

は心不全患者の ER 受診や入院/再入院を防ぐことができるかどうかはまだ不明である。このことは、ア

ウトカムデータの収集の必要であることを強調している。考えると恐ろしいことではあるが、次のパン

デミックが発生したときには、オンライン診療システムを導入している私たちはより適切な対応ができ

るようになるだろう。いずれにしても、COVID-19 のパンデミックは、現在の危機を超えて十分に取り

入れられるべき異なる方法による心不全ケアの提供について学ぶ貴重な機会を生み出した。

COVID-19 パンデミック解決後のオンライン診療の将来

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開示

関連する利益相反はありません。

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