アナログ電子回路講座5 how to design analog circuit with bipolar junction transistors 5
TRANSCRIPT
バイポーラアナログ電子回路講座5
感性アナログ研究室山本健司
第5回
• pn接合の復習→トランジスタの動作の理解• トランジスタの基本回路(接地方式)• 電流増幅率• 静特性• Ebers-Moll方程式
実際のトランジスタ製品
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz2/d1tech/d1elec/d1elek/IPA-tec100.htm
リリリリリリリリリ ID rId4 リリリリリ リリリリリリリリリリリリリリリリリリ
引用:
2SC2120
2SA950
2SC1815
pn接合の復習エネルギー帯理論で、pn接合において、空乏層の電界が阻止しているキャリ
アの拡散を、順方向電圧をかければ開始させることができることがわかった.
n形半導体
伝導電子(多数キャリア)
p形半導体
伝導電子(少数キャリア)
エネルギー(eV)
同じ準位で同じ存在確率
同じ準位で同じ存在確率
フェルミ準位
正孔(多数キャリア)
正孔(少数キャリア)
伝導帯
禁制帯
価電子帯
順方向バイアス電圧をかけると下がる
すると、n形領域から伝導電子が、p形領域から正孔が流れだす図-①
キャリアの濃度を変化させれば,電流は流れるのでは?
n形半導体
伝導電子(多数キャリア)
p形半導体
エネルギー(eV)
同じ準位で濃度が違う
同じ準位で濃度が違う
フェルミ準位
正孔(少数キャリア)
伝導帯
禁制帯
価電子帯
同じエネルギー準位で濃度が違うので拡散する→順方向電流
電源の方向に注意
拡散
拡散
正孔(多数キャリア)
伝導電子(少数キャリア)
順方向電圧を印加するということは、キャリアのエネルギー準位を変える
→同じエネルギー準位のキャリアの濃度差ができる
→拡散により電流が流れる
ということで、順方向電流が流れる
キャリアの濃度を増やしたり、減らしたりすることでも電流は流れるのではないだろうか?
図-②
n形半導体
伝導電子(多数キャリア)
p形半導体
エネルギー(eV)
フェルミ準位
正孔(少数キャリア)
伝導帯
禁制帯
価電子帯
すると、n形領域から正孔が、
p形領域から伝導電子が流れだす(ダイオードにとっては逆方向の電流)
正孔(多数キャリア)
伝導電子(少数キャリア)拡散
拡散
電源の方向に注意
p形の少数キャリア濃度が高い
n形半導体の少数
キャリア濃度が高い
少数キャリア濃度を変化させる
図-③
図-④
B
N P N
E C
B
CE
n~Nd
順方向電圧 順方向電圧
p(x)
p~Na
n(x)
n~Nd
p(x)
キャリア濃度
Pno
Pno*exp(Vbc/Vt)
n:電子濃度 p:正孔濃度Nd:ドナー密
度Na:アクセプタ密度
空乏層 空乏層
VbcVbe
Ie → ← IcIb↑
x
npn構造 ベースを十分長く作り,2つの接合に順方向電圧を印加した場合 仮にベース領域が十分長い(何に対して十分長いか
は講義で説明する)npn構造を作ったとする.図は2
つできたpn接合ダイオードに順方向電圧を印加したところ.真中の図はエネルギー準位図ではなくて、キャリア濃度のグラフ.n形とp形で、キャリアの種類に
よって上(高濃度)に描かれているか、下(低濃度)に描かれているか、注意してみてみよう.
空乏層近くでは、少数キャリアが順方向電圧によって増加している.たとえば、図中のコレクタの空乏層端の正孔濃度は、Pno*exp(VBC/VT)である.ここで、Pnoは空乏層から十分離れたところでのコレクタ領域(n形)における少数キャリア(正孔)の濃度.すなわち熱平衡濃度である.
ベース領域が十分長いので、空乏層の間近で増えているキャリアの濃度がベース領域の中間では、通常のキャリア濃度に落ち着いている.(*)
この条件(ベースが十分に長くて、2つのpn接合が
順方向電圧を印加されている)では単に2つのダイオードがつながっただけの結果となる.
(*)ベースとエミッタとの間の空乏層をを例にとると、空乏層のベース側において、空乏層の近くで増加した電子(少数キャリア)は、拡散し、拡散電流を作る.空乏層から離れるにしたがって正孔(多数キャリア)と再結合してしまい、その後は多数キャリアがその電流をドリフト電流(電界に引っ張られて移動する電子が担う電流)として担う.
図-⑤
B
N P N
E C
n~Nd
順方向電圧 順方向電圧
p(x)
p~Na
n(x)
n~Nd
p(x)
キャリア濃度
Pno
Pno*exp(Vbc/Vt)
n:電子濃度
p:正孔濃度
Nd:ドナー密度Na:アクセプタ密度
空乏層 空乏層
Ie → ← IcIb↑
n(x)=K*exp(-x/Ld) --- (A)K:定数Ld~100 u(ミクロン)m 程度の定数(どの程度の距離で濃度が下がってくるかの目安となる)
x
さらにベース領域の空乏層間際の電子濃度を見てみる.この電子はエミッタから順方向電圧によって注入された電子で、空乏層間際では高い濃度をしめすが、ベースの中に行くにしたがって、アクセプタの密度によって決定された熱平衡濃度に落ち着く(図のベース領域の平らな部分.どうしてそうなるかは前ページの脚注参照).
この濃度の下がり方も指数関数であらわされる(図中の式(A)).Ldは濃度の下がり方を表す定数で、100ミクロンメートル(μm)程度である.
npn構造 ベースを十分長く作り,2つの接合に順方向電圧を印加した場合 2
図-⑥
我々はすでに、pn接合ダイオードの電圧・電流関係式を知っている.エミッタ・ベースのpn接合の飽和電流をIES、ベース・コレクタ間のそれをICSとすれば、エ
ミッタ電流とコレクタ電流は左の式になる.
<電流と電位の表記に注意>
素子に流れ込む電流を正にとっている.また、電圧を表す変数で、VBEは、エミッタ
を基準にしたときのベースの電位のことである.したがって、VBCはコレクタを基準
にしてベース電位がどれだけ高いかを示す変数である.
B
N P N
E C
B
CE
n~Nd
順方向電圧 順方向電圧
p(x)
p~Na
n(x)
n~Nd
p(x)
キャリア濃度
Pno
Pno*exp(Vbc/Vt)
n:電子濃度 p:正孔濃度Nd:ドナー密
度Na:アクセプタ密度
空乏層 空乏層
VbcVbe
Ie → ← IcIb↑
x
npn構造 ベースを十分長く作り,2つの接合に順方向電圧を印加した場合 3
npn構造ベース構造を狭く、ベース・コレクタ間に逆方向電圧を印加した場合
(実際のトランジスタの構造と使い方)
B
N P N
E C
B
CE
n~Nd
順方向電圧 逆方向電圧
p(x)
n~Nd
p(x)
キャリア濃度
Pno
n:電子濃度
p:正孔濃度
Nd:ドナー密度Na:アクセプタ密度
空乏層 空乏層
VbcVbe
Ie → ← IcIb↑
x
拡散電流
→ ←αr*Ir αf*If
←If Ir→
ベース領域においては電子濃度のみ描いた
2つの仮定:
①ベースの幅を、エミッタから注入された電子が正孔と再結合しきれないうちにコレクタとの空乏層に達してしまうほど狭くする.
②ベース・コレクタ接合に逆電圧を印加する.
ベース領域において、電子の濃度に勾配があるところでは拡散電流が生じている.この拡散電流(すなわち電子)がベース・コレクタ空乏層にそのままたどり着くと、コレクタに印加された逆電圧によって強められた空乏層の電界によってコレクタに引きずり込まれる.電子は負の電荷を持っているから、より電位の高いコレクタ領域の方に引っ張られる
一番下の等価回路のようにあらわされるのだが、等価回路についてはこれから説明する.
図-
N P Nベース領域(p形
)の電子濃度
x
ベース部分を拡大
B-C間は逆方向電圧なので濃度~ゼロ
ベース電圧によって増減する(指数
関数)
拡散電流は電子濃度の傾きに比例
ベース領域
(A) (B)
n(A)
図-⑧
エミッタ・ベース間に加えられた順方向電流によってエミッタからベースに注入された電子の空乏層直近の濃度は、ベース・エミッタ間電圧が上がるにしたがって指数関数で増加する.(図中(A)
(ID=Is*exp(VD/VT)を覚えたが、ダイオードの電流がこのように指数関数になる原因がこれ)ところで、ベース・コレクタのpn接合では、この空乏層に逆電圧がかかっているために、飽和電流しか流れていないが、これはベース領域のコレクタ側(図の(B))にはほとんど少数キャリア(電子)がないことに起因している.し
たがって、上図のように、(A)での少数キャリアの勾配はキャリアが増加すれば、増加する.また、この傾きは、指数関数のx=0近辺なので、ほとんど直線になる.つまり、
ベース領域の少数キャリア(電子)濃度の勾配 dn/dx ∝ (A)での少数キャリア濃度 n(A) -----(1)
N P Nベース領域(p形)
の電子濃度
x
ベース部分を拡大
B-Cは間逆方向電圧なので濃度~ゼロ
ベース電圧によって増減する(指数関数)
拡散電流は電子濃度の傾きに比例
ベース領域
(A) (B)図-⑧(再掲)
拡散電流は、濃度の勾配に比例するので、拡散電流をIDとすれば、拡散電流 JD ∝ ベース領域の少数キャリア(電子)濃度の勾配 dn/dx ----- ( 2 )
(2)に(1)を使えば、拡散電流 ∝ (A)での少数キャリア濃度 n(A) ---- ( 3 )
(A)でのキャリア濃度とダイオードに流れる電流は比例関係にあるので、(3)式は、拡散電流 JD ∝ exp(VBE/VT)
そして、拡散電流はそのほとんどがコレクタに吸収されるので、コレクタ電流 ∝ exp(VBE/VT) ---- ( 4 )
となる.これを覚えておき、次ページからの式の組み立てを追ってみよう.
等価回路を考える
代表的な値αF~0.99αR~0.5
B
CE
VbcVbe
→ ←αr*Ir αf*If
←If Ir→
ベース・エミッタ間のダイオードとしての電圧・電流特性
ベース・コレクタ間のダイオードとしての電圧・電流特性
IEの式の第一項のαF倍
がコレクタに流れ込むことを表す項
ベース・コレクタ間に順方向電圧を印加し、ベース・エミッタ間に逆方向電圧を印加したときに、コレクタ側ダイオード電流のαR倍が
エミッタに流れる.これまでの説明の逆の電圧での動作を示す.
--- (5)
--- (6)
式で書くと(5)、(6)式のようになる.4つの項の意味を考えれば簡単.αFはエミッタ電流がど
れだけたくさんコレクタに流れ込むかを表す係数.αRはエミッタと
ベースをひっくり返して使った時にαFに相当する係数.
図-⑨
という相互関係が一般的に成り立つ.ISはそのトランジスタの持つ飽和電流特性と考えてよい.(5),(6)式は以下のように書ける
Ebers-Moll 方程式
--- (8)
--- (7)
(7), (8)式をEbers-Moll方程式といい、トランジスタのほぼすべての実用的な状態を表すことができる.
動作モードの名前 E-B接合電圧
ベース・エミッタ接合に印加される電圧
B-C接合電圧
ベース・コレクタ接合に印加される電圧
カットオフ 逆 逆
順方向アクティブ(活性)
順 逆
逆方向活性 逆 順
飽和 順 順
カットオフ
順方向アクティブ
逆方向アクティブ
飽和
pn接合への電圧のかけ
方によって、4つの領域に分けられる.このうち、順方向アクティブ領域が一番多くつかわれる領域である.これから勉強する回路はほとんどがこの領域での解析である.接地方式についての分類、解説があるが、信号の加え方が違い、用途がちがうのであるが、直流電圧の印加方向は変わらない.
図-⑩
トランジスタの動作領域
順方向アクティブモードの等価回路
順方向アクティブ領域においては、VBE>0、VBC<0であるので、(5)、(6)式は、
exp(VBC/VT)<<1
--- (5)
--- (6)
--- (7)
--- (8)指数関数の項を消去できそうである.(7)式より指数関数の項について整理し、それを(8)式に代入してみよう.
(7)式を変形して、指数関数の項を他の項で表した.
(9)式を(8)式に代入した
--- (9)
--- (10)αF,αRは高々1の定数.ICSで括り、ICOを(11)式のようにまとめておく
--- (11)
--- (12)
式変形をさらに進める
(11)式を(10)式に代入して(12)式を得る.
ベース電流IBとコレクタ電流の関係 微分形でも
コレクタ電流とベース電流の比をβFとすれば、左の等価回路を得る.βFは、
として、αFから求められる.一般的なトランジスタでαFは0.99程度であるから、βFは100程度になる.ベース電流の100倍のコレクタ電流が流れるということ.
トランジスタというかたまりに、キルヒホッフの第一法則(電流の代数和=0)を適用すると、IC + IB - IE = 0 ---- (13)
βFを微分形で計算してみると...
分母の微分:微分は線形作用なので、項別に微分できる
直流等価回路
E
C
B
←I E
→IB
hFE*IB
IC
C
B
E
npn形
←
等価回路
E C
←Ie
B
E C
B
αF*Ie+ICO
(A)回路図シンボル(npn)トランジスタ
(B)npnトランジスタの(11)式から得られる等価回路
(A)
(B)
図-⑪
エミッタ電流IEはベースエミッタ間電圧の指数関数になることはここでも成り立っている.
(12)式を等価回路で表すと、図-⑪の(B)となる.(*注意)エ
ミッタ電流の向きを実用的な向きに定義しなおした)
エミッタ電流で制御される制御形定電流源がコレクタにある.
通常はIC0は無視できる.
ベース電流によってコレクタ電流を制御することが多いので、次ページでその場合について考える.
接地方法トランジスタの回路には3種類の使い方があり、接地方法で区別されている.接地
が目的ではない.入出力方法の分類としての呼称である.それぞれの信号の入出力方法において,接地するのが便利なトランジスタの端子の名前を回路形式の名称として使っている.
(a)ベース接地回路と、(b)エミッタ接地回路について説明する
∼Load
∼
Load
∼
Load
(a) ベース接地回路 (b)エミッタ接地回路 (c)コレクタ接地回路(エミッタフォロワ)
負荷インピーダンス(信号の出力先)
入力信号源
ベース接地回路
←直流等価回路
E C
←IE
B
E C
B
IC=αF*IE
回路図シンボル(npn)トラ
ンジスタ
小信号エミッタ電流増幅率(交流エミッタ電流増幅率).
エミッタ電流の微小変化分に対するコレクタ電流の微小変化分をエミッタ電流増幅率と呼び,αで表す.
あるときのエミッタとコレクタの電流値(電流計で測定した場合その読みそのもの)の比をhFBで表す.微小変化分に関する値ではないので注意.これが、今日勉強したαF(右の等価回路).
E C
B
←IE IC=αF*IE←
↑IB=IE-IC
𝛼𝛼 =Δ𝐼𝐼𝐶𝐶Δ𝐼𝐼𝐸𝐸
= ℎ𝑓𝑓𝑓𝑓
ℎ𝐹𝐹𝐹𝐹 =𝐼𝐼𝐶𝐶𝐼𝐼𝐸𝐸
エミッタ接地回路
等価回路
E
C
B
E
C
B
→
←I E
→IB
βF*Ib
↓IC
IBの微小変化分に対するICの微小変化分の比をβと表す.小信
号エミッタ接地電流増幅率あるいは交流エミッタ接地電流増幅率と呼ぶ.
あるときのベースとコレクタの電流値(電流計で測定した場合その読みそのもの)の比をhFEで表す.微小変化分に関する値ではないので注意.これが、今日勉強したβF(右の等価回路).
EC
B
←I E
IC =βF *
IB←
IB=IE-IC→
𝛽𝛽 =Δ𝐼𝐼𝐶𝐶Δ𝐼𝐼𝐹𝐹
= ℎ𝑓𝑓𝑓𝑓
ℎ𝐹𝐹𝐸𝐸 =𝐼𝐼𝐶𝐶𝐼𝐼𝐹𝐹