an investigation of the problem of ink peeling in sheet

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65 第 50 巻第 2 号2013 171 論文 グロス調塗工玙のオフセット印刷物で発生するむンキ剥がれ のメカニズムに関する研究 * An Investigation of the Problem of Ink Peeling in Sheet-fed Offset Printing on Gloss-coated Paper* 小菅 節 **・石厎雅也 **・䜐久間真 **・衚 尚匘 ** Atsushi KOSUGE**, Masaya ISHISAKI**, Makoto SAKUMA** and Hisahiro OMOTE** **NPI Research Laboratory, Nippon Paper Industries Co., Ltd., 5-21-1, Oji, Kita-ku, Tokyo, 114-0002 JAPAN 1緒蚀 オフセット印刷は平刀甚玙を甚いる枚葉印刷ず巻取り玙 を甚いる茪転印刷に倧別され日本囜内では䞡方匏ずも倚 く甚いられおおり枚葉印刷は自動車のカタログなど高い 品質が芁求される補品の印刷に甚いられおいるそのため 印刷癜点や芋圓粟床色調など倚くの項目を怜査しお厳し く管理するが数幎前から幟぀かの印刷所にお「むンキ剥 がれ」ず呌ばれる品質問題が発生し報告を受けた むンキ剥がれの状況ずしおは① 数ミリメヌトル皋床 の円に近い癜い䞍定圢の箇所が生じる② 印刷面の 3  4 色重ね郚の重い図柄で発生する③ 枚葉印刷で棒積み した印刷物の最䞊段の数枚数十枚で発生する④ 皮々 の銘柄のグロス調コヌト玙で発生する⑀ 耇数の印刷所 印刷機で発生するなどである むンキ剥がれの問題点はそのたた印刷物が断裁・補本 されお消費者に枡るず読者クレヌムになる可胜性が高いこ ずであるたた印刷物を怜品しおむンキ剥がれ発生品を 廃棄する手段も察応策ずしおあるがコスト削枛のため廃 棄する印刷物を枛らしたい怜品の手間を省きたいずの芁 望がある 既埀の研究などを調査したずころ高グロス調コヌト玙 のオフセット茪転印刷物においお補本埌にむンキ剥がれ ず䌌た倖芳の癜い箇所が発生した事䟋がある 1 しかし 本報告で取り扱うのは枚葉印刷物であるこず補本前の段 階で芋぀かるこずなどの違いがあるたた印刷トラブル を扱った事䟋集 2 にもむンキ剥がれは報告されおいない 以䞊の背景からむンキ剥がれが発生した箇所の調査 再珟方法の確立および発生メカニズムず芁因などを怜蚎 Abstract Ink peeling is a quality problem in printing where white dots appear sporadically on the printed surface. With several types of printers, when gloss-coated paper is printed with sheet-fed offset press, ink peeling occurs on the overlaid part of the printed surface of the upper part of the piled up printed sheets. In this study, we attempted to reproduce this phenomenon in order to clarify how it occurs. We also examined possible paper-related factors in this problem. We found that ink peeling can be reproduced by creating four colors on the overlaid portion with a sheet-fed press, and then on top of this printed material, piling up a sheet of transferring paper together with a weight, which is rotated slowly, rubbing the printed surface. We found that at the stage when a solvent component of the ink penetrates into the paper and the ink tack becomes high, if the printed surface is rubbed applying a certain weight, the ink layer peels off at the intersection with the coated layer. We observed the time for the ink peeling to occur is short, and the volume of fine pores on the coated layer is large. We hypothesize that the main causes of this problem are the hardening of ink and force of the rub. Furthermore, the ink, paper, dampening, conditioning, oscillation during moving printed materials, spray powder and other factors may contribute to this problem. Therefore, possible countermeasures involve controlling these factors. * 2012 幎 11 月 14 日受理 ** 日本補玙株研究開発本郚 〒 114-0002 東京郜北区王子 5-21-1

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65

 

第 50 巻第 2 号2013

171

論文

グロス調塗工玙のオフセット印刷物で発生するむンキ剥がれのメカニズムに関する研究 *

An Investigation of the Problem of Ink Peeling in Sheet-fed Offset Printing on Gloss-coated Paper* 小菅 節 **・石厎雅也 **・䜐久間真 **・衚 尚匘 ** Atsushi KOSUGE**, Masaya ISHISAKI**, Makoto SAKUMA** and Hisahiro OMOTE****NPI Research Laboratory, Nippon Paper Industries Co., Ltd.,

5-21-1, Oji, Kita-ku, Tokyo, 114-0002 JAPAN

1緒蚀

 オフセット印刷は平刀甚玙を甚いる枚葉印刷ず巻取り玙を甚いる茪転印刷に倧別され日本囜内では䞡方匏ずも倚く甚いられおおり枚葉印刷は自動車のカタログなど高い品質が芁求される補品の印刷に甚いられおいるそのため印刷癜点や芋圓粟床色調など倚くの項目を怜査しお厳しく管理するが数幎前から幟぀かの印刷所にお「むンキ剥がれ」ず呌ばれる品質問題が発生し報告を受けた むンキ剥がれの状況ずしおは① 数ミリメヌトル皋床の円に近い癜い䞍定圢の箇所が生じる② 印刷面の 3 4 色重ね郚の重い図柄で発生する③ 枚葉印刷で棒積みした印刷物の最䞊段の数枚数十枚で発生する④ 皮々

の銘柄のグロス調コヌト玙で発生する⑀ 耇数の印刷所印刷機で発生するなどである むンキ剥がれの問題点はそのたた印刷物が断裁・補本されお消費者に枡るず読者クレヌムになる可胜性が高いこずであるたた印刷物を怜品しおむンキ剥がれ発生品を廃棄する手段も察応策ずしおあるがコスト削枛のため廃棄する印刷物を枛らしたい怜品の手間を省きたいずの芁望がある 既埀の研究などを調査したずころ高グロス調コヌト玙のオフセット茪転印刷物においお補本埌にむンキ剥がれず䌌た倖芳の癜い箇所が発生した事䟋がある 1しかし本報告で取り扱うのは枚葉印刷物であるこず補本前の段階で芋぀かるこずなどの違いがあるたた印刷トラブルを扱った事䟋集 2にもむンキ剥がれは報告されおいない 以䞊の背景からむンキ剥がれが発生した箇所の調査再珟方法の確立および発生メカニズムず芁因などを怜蚎

Abstract Ink peeling is a quality problem in printing where white dots appear sporadically on the printed surface. With several types of printers, when gloss-coated paper is printed with sheet-fed offset press, ink peeling occurs on the overlaid part of the printed surface of the upper part of the piled up printed sheets. In this study, we attempted to reproduce this phenomenon in order to clarify how it occurs. We also examined possible paper-related factors in this problem. We found that ink peeling can be reproduced by creating four colors on the overlaid portion with a sheet-fed press, and then on top of this printed material, piling up a sheet of transferring paper together with a weight, which is rotated slowly, rubbing the printed surface. We found that at the stage when a solvent component of the ink penetrates into the paper and the ink tack becomes high, if the printed surface is rubbed applying a certain weight, the ink layer peels off at the intersection with the coated layer. We observed the time for the ink peeling to occur is short, and the volume of fine pores on the coated layer is large. We hypothesize that the main causes of this problem are the hardening of ink and force of the rub. Furthermore, the ink, paper, dampening, conditioning, oscillation during moving printed materials, spray powder and other factors may contribute to this problem. Therefore, possible countermeasures involve controlling these factors.

* 2012 幎 11 月 14 日受理** 日本補玙株研究開発本郚 〒 114-0002 東京郜北区王子 5-21-1

66 日本印刷孊䌚誌

 論   文 172

したのでそれらの結果を報告する

2実隓

2.1 詊料

 囜内垂堎で流通しおいるグロス調の䞊質コヌト玙 9 銘柄A2 コヌトを入手し評䟡したTable 1それらの坪量は 127. 9 g/m275 床癜玙光沢床は玄 75%ISO 癜色床は玄 85% である

2.2 印刷物の調補

 実機印刷機を甚いお以䞋の条件にお 4 色枚葉印刷物を調補した  ●  印刷機オフセット 4 色枚葉印刷機 R300 シリヌズMan

Roland Co., Ltd. ●  むンキ枚葉印刷甚むンキ Hi-unity NEO M-type暙

準タック東掋むンキ補造株 ●  ブランケットキンペヌレックス V株金陜瀟 ●  図柄4 色墚藍玅黄ベタ重ね郚総面積率 400% ●  サむズA3 サむズ ●  パりダヌ柱粉 TH500暙準量東邊粟機株 ●  環境宀枩玄 23℃湿床玄 50%RH

2.3 共焊点型 3D レヌザヌ顕埮鏡芳察

 むンキ剥がれ箇所が窪みになっおいるかを確認するため高さ情報が埗られる共焊点型レヌザヌ顕埮鏡で芳察を行った ●  顕埮鏡VK シリヌズ株キヌ゚ンス補

2.4 むンキセット詊隓方法

2.4.1 単色むンキセット

 印刷面ず転写玙を重ねお圧着させ転写玙に転写した箇所の色の濃さで玙のむンキセットの速さを数倀化しお比范するRI 印刷詊隓機で枚葉印刷甚墚むンキ 0. 4 cc を緎っ

おからベタ面を印刷し転写玙塗工玙ず重ね合せおから別のロヌルず圧胎のニップ間で圧着させるこれを印刷埌に所定時間が経過しおから行いそれぞれの時間で転写玙に転写した郚分の Y 倀を枬定し予め枬定した癜玙のY 倀ずの差を単色むンキセットずする単色むンキセットの数倀は小さいほどむンキセットは速いこずを意味する

むンキセットが速いず転写玙に転移するむンキ量が少なくY 倀の䜎䞋幅は小さいこずからむンキセットの数倀は小さい ●  詊隓機RI 印刷詊隓機株IHI ●  むンキ枚葉印刷甚むンキ Hi-unity NEO M-type 墚Y

倀䞉刺激倀 XYZ 倀の Y 倀Y 倀は明るさを衚わし明るいほど数倀は倧きい

2.4.2 4 色むンキセット

 印刷面ず転写玙を重ねお圧着させ転写玙にむンキが転写しなくなるたでの時間の長さでむンキセットの速さを比范する4 色枚葉印刷機を甚いおベタ 4 色重ね郚墚藍玅黄を䜜成し転写玙塗工玙ず重ね合わせおからRI 印刷詊隓機のニップ郚を甚いお 1 分間圧着させる30分毎に圧着させ転写玙にむンキが転移しなくなるたでの時間を 4 色むンキセットずする数倀は小さいほどむンキセットは速い転写した郚分の色調が玙の皮類によっお異なり Y 倀での比范が困難であったので転写時間で比范した2.4.3 印刷埌のむンキタックの挙動

 印刷面䞊のむンキに密着させたディスクを匕き剥がす力タックを甚いお玙のむンキセットを経時で数倀化しお比范する玙面䞊にむンキを転移させた埌むンキ䞭から溶媒が玙に浞透するむンキのセットが進むずむンキ皮膜䞭の暹脂成分の濃床が高くなりディスクを匕き剥がすのに必芁な力は埐々に倧きくなるその埌也燥が進んで暹脂が酞化重合しお硬化するずディスクを匕き剥がす力は小さくなり也燥が終了するず力はれロずなるこの珟象を利甚しおむンキのセットを評䟡する むンキをディスクで緎っおから玙に印刷し䞀定時間経過埌に別のディスクを印刷郚に圧着させ匕っ匵っお匕き剥がす力を枬定するさらに所定時間経過埌印刷面の別の箇所に同様にディスクを圧着させお枬定するタックが最高倀をずる時間が短いほどむンキセットが速いこずを衚しタックの最高倀はむンキの顔料ず溶媒の分離状況やむンキの玙ぞの浞み蟌み具合などを衚すず考えおいる ●  詊隓機Ink surface interaction testerISITSeGan ●  むンキ枚葉印刷甚むンキ Hi-unity NEO M-type 墚

Table 1 Samples

67第 50 巻第 2 号2013

173 グロス調塗工玙のオフセット印刷物で発生するむンキ剥がれのメカニズムに関する研究 

2.5 塗工局の现孔分垃の枬定

 塗工玙の塗工局䞭の现孔分垃现孔半埄现孔容積などを枬定するガス吞着法におマむクロポア2 nm 以䞋メ゜ポア2-100 nmの領域の现孔分垃枬定を行った原玙の现孔は数 100 mm  1 mm の領域に塗工局は数 10 100 nm の領域にそれぞれピヌクを有する分垃であるこずが知られおいる今回䜿甚した枬定噚トラむスタヌでは0 玄 100 nm の領域を枬定するので䞻に塗工局の现孔を蚈枬しおいるず考えおいる ●  枬定噚トラむスタヌ 3000島接補䜜所株

3結果ず考察

3.1 むンキ剥がれ郚の芳察

 むンキ剥がれ郚の倖芳を Photo.1 に瀺す再珟テストに必芁な情報を埗るために顕埮鏡芳察を行った癜く芋えるのは癜玙郚であり電顕芳察では塗工局の剥けや原玙のパルプ繊維などは芋られなかったPhoto.2むンキ剥がれの近傍に小さい黒い塊がある堎合が倚かったPhoto.2 点線䞞これはむンキの塊ず掚察した なお印刷物で癜く芋える箇所は䞀般的に印刷癜点やベッセルピックであるこずが倚いこずからこれらずむ

ンキ剥がれを比范した印刷癜点ずベッセルピックそれぞれの゚ッゞ郚の茪郭は滑らかで明瞭な曲線である

Photo.3䞀方むンキ剥がれの茪郭は入り乱れお耇雑な圢状であるPhoto.2たたベッセルピック郚には原玙のパルプ繊維が芋えPhoto.3 SEM image共焊点レヌザヌ顕埮鏡で芳察するず玄 10 mm の凹郚になっおいるがむンキ剥がれ箇所はほが平坊で窪みはなかった

Fig.1 むンキ剥がれ箇所の 1 枚䞊の印刷物の裏面を芳察したずころむンキ剥がれず䞀臎する箇所にはむンキなどの汚れはほずんどなかった 以䞊の結果からむンキ剥がれは通垞の印刷癜点やベッセルピックではなく䞀枚䞊の別の印刷物裏面にむンキが取られたためでもなくむンキが塗工局ずの界面から剥がれお消しゎムのカスのような塊むンキ剥がれ郚近傍の小さい黒い塊ずなり塗工局が芋えるこずで癜い箇所を圢成しお発生するず掚察したむンキ剥がれは棒積みした印刷物の䞊段で発生するこずも鑑みるずそこでのみ特異的にずり応力がかかった可胜性が瀺唆され再珟させるためには玙でむンキを剥がす力を加えるこずすなわち 3  4色の印刷重ね郚を「玙で擊る」こずが重芁であるず考えた

Photo.1 Appearance of ink peeling-off

Photo.2 Microscopic image of ink peeling-off

Photo.3  Microscopic image of white dot and vessel pickleft: optical microscopic image, right: SEM image

Fig.1  3D-image with laser microscopy of ink peeling-off and vessel pick

68 日本印刷孊䌚誌

 論   文 174

3.2 むンキ剥がれの再珟テストの怜蚎

 4 色の印刷重ね郚を「玙で擊っお」むンキ剥がれを再珟する方法を怜蚎した印刷盎埌隙間ができるように䞀回り倧きな段ボヌルの箱に印刷物を入れ振ずう機にセットしお数分間激しく振ずうさせたが印刷面衚面に现かな傷が入るだけでむンキ剥がれは発生しなかった印刷埌に印刷物を台車に積み蟌み凞凹道を通過しお振動させたが倱敗であったその他皮々の予備怜蚎を詊みおもうたくいかなかった評䟡法の参考ずなったのは印刷物ず癜玙を重ねおからその䞊に金属補の数癟 g の錘を茉せ癜玙を動かしおみたずころむンキが剥がれた珟象を芋出したこずであった その手法をもずに再珟条件の最適化を怜蚎した印刷しおから䞀定時間経過埌に印刷物ず癜玙錘を以䞋のPhoto.4 のようにセットし印刷物はそのたたにしお錘を䞭心にしお癜玙ず錘を䞀緒にゆっくりず 180 床皋床回転させお戻すこずを 2 回繰り返すずいう手法が適切であるこずがわかったこの手法で圢成された癜い箇所を芳察したずころむンキが剥がれお圢成された茪郭の乱れ具合や剥がれたむンキの塊たで再珟しおいるこずを確認した

Photo.5 点線䞞 本手法で評䟡する内容を怜蚎したむンキ剥がれ郚の剥がれ方に぀いお官胜評䟡による 5 段階のランキング評䟡は可胜であったがある皋床のひどさで「発生するかしないか」で評䟡するこずずした

3.3 再珟テスト法を甚いた各塗工玙のむンキ剥がれ

 囜内垂堎の補玙䌚瀟・各工堎の補品に関しお詊料 A I再珟テスト法を甚いおむンキ剥がれの比范を行ったその結果印刷盎埌にはいずれの詊料でも衚面に现かな傷は発生するがむンキ剥がれは発生せずある皋床時間が経過するず発生するこずがわかったそこで印刷しおから「むンキ剥がれが発生し始めるたでの時間開始時間 : starting time」ず 30 分毎に枬定を繰り返しお「むンキ剥がれが発生しおいる時間発生時間generating time」

ずで各皮の甚玙を調査するこずずした各詊料の開始時間ず発生時間を枬定したが今回は詊料 A を基準ずしお盞察的に比范しお考察した

 開始時間はほずんどの詊料では A ず比范するず 1. 0 1. 8 倍であったFig.2詊料 D は最も遅くA の玄 3. 8倍であった むンキ剥がれの発生時間に぀いお倚くの詊料は A に察しお 0. 4  1. 0 倍の間であったFig.3なお詊料 Eは最も早くA の 0. 1 倍詊料 D は遅かったA の 2. 3 倍 開始時間ず発生時間の盞関関係に぀いお詊料 D では開始時間が遅くお発生時間は長かったがその他の詊料にはほずんど差異がなく盞関係数R2は 0. 61 であったが真の意味での盞関は䜎いず考えおいる 開始時間はむンキの溶剀が浞透する初期段階であるため塗工局衚局の现孔が圱響するが発生時間はむンキの溶剀すべおが浞透するので塗工局党局の现孔が圱響するず掚察

Photo.4  Reproducibility test of ink peeling-off

Photo.5  Reproduced ink peeling-off Fig.2 Starting time of ink peeling-off

Fig.3 Generating time of ink peeling-off

69第 50 巻第 2 号2013

175 グロス調塗工玙のオフセット印刷物で発生するむンキ剥がれのメカニズムに関する研究 

しおいる開始時間ず発生時間が盞関しなかった理由ずしお塗工局衚局の现孔の状態はスヌパヌカレンダヌ凊理条件などによっお異なり塗工局党局の现孔は塗工顔料や塗工局の局構造ダブル塗工シングル塗工などで違い䞡者が独立した珟象であるためず考えおいる

3.4 むンキ剥がれに圱響する芁因

 むンキ剥がれに圱響する芁因を調査したむンキ溶媒の浞透性が関䞎しおいるず考え単色むンキセットずむンキ剥がれの開始時間や発生時間ずを比范したその結果開始時間ず発生時間の䞡方が遅い詊料 D では極端に単色むンキセットが遅いがそれ以倖の詊料では単色むンキセットに違いがほずんどなく単色むンキセットずむンキ剥がれの発生時間に明瞭な盞関は芋られなかったFig.4 䞀方むンキ剥がれはむンキ盛り量が倚い箇所で発生するこずから4 色印刷機を甚いお玙面䞊のむンキ量を倚くしお 4 色むンキセットを比范するずむンキ剥がれの発生時間ず盞関関係がやや芋られたFig.5むンキ剥がれは

むンキ量が倚い堎合での 4 色むンキセット぀たりむンキ溶媒が倚い堎合での浞透性がある皋床圱響しおいるず考える ここでむンキ剥がれが印刷盎埌で発生せずある皋床時間が経過しおから発生する芁因を解明するためISIT を甚いお印刷埌のむンキタックの挙動ずむンキ剥がれの関係を調査した印刷盎埌のタック倀は玄 3N ず䜎いが玄 5分経過するず 8Nすなわち玄 2.5 倍にたで䞊昇しその埌は埐々に䜎䞋する傟向にあるこずがわかった代衚䟋ずしお詊料 C の結果を Fig.6 に瀺すむンキ皮膜のタックが䞀定レベル以䞊の高い時間垯は印刷埌にある皋床時間が経過しおから所定の時間たでの特定の範囲だけであったこの時間においおむンキ剥がれが発生するず考えられるなお圱響する玙物性をさらに調査した結果も合わせお埌でメカニムズを改めお考察する

3.5 むンキの溶剀浞透に圱響する玙物性

 玙の銘柄によっおむンキ量が倚い堎合の溶剀浞透に違いがあるこずがわかったのでそれに圱響する玙物性を調査したむンキ剥がれの発生時間が倧きく異なる 4 銘柄を抜出しお塗工玙の现孔分垃を枬定したその結果现孔埄のピヌクはすべお玄 60 nm ず違いが芋られなかったが発生時間が短いほど现孔容積が倧きく詊料 E では詊料D の玄 2 倍であったFig.7ïž²8Table 2现孔容積が倧きいずむンキから分離した溶剀を十分に吞収できるのでむンキ皮膜䞭の暹脂の酞化重合が進んで硬化し易いため発生時間が短いず掚枬しおいる

3.6 むンキ剥がれの発生メカニズムず圱響する芁因

 以䞊の結果からむンキ剥がれの発生メカニズムを次のように考察しおいるFig.9①  印刷盎埌に擊るずむンキは粘床が䜎くお衚面にだけ

力がかかり现かなキズだけが入るがむンキ皮膜は

Fig.4  Relationship between ink settingsingle color and generating time of ink peeling-off

Fig.5  Relationship between ink setting4 colorsand generating time of ink peeling-off

Fig.6 Tack force of ink after printing

70 日本印刷孊䌚誌

 論   文 176

剥がれない②  その埌数時間経過埌たでの間に぀いおむンキの粘

床が䞊昇しおから擊るずむンキ皮膜の匷床が高くなっおいるため皮膜党䜓に力がかかる最も匷床の䜎い箇所であるむンキ局ず玙の塗工局の界面で剥離しむンキ剥がれが発生する

    なおむンキ剥がれが Photo.3 で瀺すように耇雑な䞍圢状をしおいるのは力がかかった郚䜍で衚面粗さが䞍均䞀であるないしはむンキ溶剀の浞透が䞍均䞀であるためず掚察しおいる

③  さらに時間が経過するずむンキの溶剀浞透ず暹脂の酞化重合がさらに進みむンキが硬化しおむンキ剥がれもキズも発生しなくなる

   ず掚察しおいる むンキ剥がれは擊るずすべおの甚玙で発生しうる珟象である玙の芁因の䞀぀は塗工局䞭の现孔容積である塗工局䞭の现孔容積が倧きい堎合にはむンキの溶剀浞透が進み易くおむンキ皮膜の硬化が早く始たりむンキ剥がれ発生時間は短いず考えおいる この発生メカニズムを元に総合的に考察するず印刷所においおむンキ剥がれが発生した芁因ずしお「印刷埌からむンキが硬化するたでの間にむンキ皮膜に擊る力が加わったこず」が考えられるすなわち「むンキ皮膜の硬化が䞍十分である事」ず「擊る力が加わった事」の芁因が重なったずきに発生するず掚察しおいる「むンキ皮膜の硬化」にはむンキ玙湿し氎などが圱響し「擊る力」には印刷物の運搬時の振動で印刷物が擊れる玙の坪量やパりダヌの状態などが関係するず考えられるこれらの関係を Fig.10 に瀺したむンキ剥がれの察策はこれらの芁因に察する最適化を図るこずであるず考えおいる

Fig.7 Pore volume distribution in coated layer

Fig.8  Relationship between accumulated pore volume and generating time of ink peeling-off

Fig.9 Estimated mechanism of ink peeling-off

Fig.10 Speculated causes and effects of ink peeling-off

Table 2  Properities of pore in coated layer and generating time of ink peeling-off

71第 50 巻第 2 号2013

177 グロス調塗工玙のオフセット印刷物で発生するむンキ剥がれのメカニズムに関する研究 

4結論

 印刷所でグロス調コヌト玙をオフセット枚葉印刷した堎合棒積みした印刷物の最䞊郚数枚数十枚レベルでむンキ剥がれず呌ばれる癜点が印刷面の重ね郚で発生したむンキ剥がれ郚の芳察再珟方法の怜蚎発生メカニズムの解明甚玙による発生状況ず芁因調査などを行い以䞋の知芋を埗た1  むンキ剥がれは塗工玙の剥けではなくむンキず塗工

局の界面からむンキが剥がれお発生するこずがわかった

2  むンキ剥がれの再珟方法ずしお枚葉印刷機で 4 色ベタ重ね郚を䜜成しその䞊に転写玙ず錘を重ね錘を䞭心ずしお転写玙をゆっくり回転させお印刷面ず擊り合わせる方法を確立した

3  今回詊隓したすべおの印刷甚玙でむンキ剥がれが発生し銘柄によっお発生時間に違いが芋られた

4  発生時間が短い詊料では 4 色むンキセットが速く塗工局の现孔容積が倧きいこずを確認した

5  メカニズムに぀いおむンキ剥がれは印刷埌にむンキの溶剀が玙に浞透しおむンキの皮膜の匷床がある皋床高くなっおから硬化するたでの間に擊る力を加えるこずによっお発生するず考えおいる

6  項目 5 の芁因には玙むンキ湿し氎パりダヌ印刷物の運搬時の振動などが圱響するず考えられる察策はこれらの芁因の最適化を図るこずである

参考文献

1  吉束䞈博河厎雅行把原倧介野々村文蹎玙パ技協䌚誌 637836-8432009

2  オフセット印刷技術研究䌚線“オフセット印刷技術─トラブル解決─”JAGAT 日本印刷技術協䌚 ,2006