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25 【中学校】社会 平成31年2月12日(火)深谷市立藤沢中学校 授業者 大竹 真人 教諭 授業のポイント (1) 生徒の主体性を引き出す導入の工夫。 ICTを効果的に活用した資料提示や、生徒の興味・関心をひ く発問など、導入を工夫し、生徒の主体的な学びを引き出す。 (2) 単元を貫く課題と関連させた本時の課題の設定。 単元を貫く課題と関連させ、本時の課題を設定する。その際、 本時で「何を学ぶのか(本時の目標)」ということを教師がしっか りと意識をし、複数の資料をもとに、生徒との対話を通して課題 を設定していく。 (3) 個人から集団へ、集団から個人へ学びをつなげる。 資料をじっくり読み取り、自分で考える時間を確保する。 その後、わからなかったことや疑問に思ったことなどを、「ペアやグ ループでの対話」を通して、明らかにしていく。さらに、教師が、 根拠となる資料を明らかにしたり、子供同士の考えをつなげたり することにより、集団の考 えを高めていく。 集団の学びの充実には、 学級経営(支持的風土)が 大切である。

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【中学校】社会

平成31年2月12日(火)深谷市立藤沢中学校

授業者 大竹 真人 教諭

1 授業のポイント

(1) 生徒の主体性を引き出す導入の工夫。

ICTを効果的に活用した資料提示や、生徒の興味・関心をひ

く発問など、導入を工夫し、生徒の主体的な学びを引き出す。

(2) 単元を貫く課題と関連させた本時の課題の設定。

単元を貫く課題と関連させ、本時の課題を設定する。その際、

本時で「何を学ぶのか(本時の目標)」ということを教師がしっか

りと意識をし、複数の資料をもとに、生徒との対話を通して課題

を設定していく。

(3) 個人から集団へ、集団から個人へ学びをつなげる。

資料をじっくり読み取り、自分で考える時間を確保する。

その後、わからなかったことや疑問に思ったことなどを、「ペアやグ

ループでの対話」を通して、明らかにしていく。さらに、教師が、

根拠となる資料を明らかにしたり、子供同士の考えをつなげたり

することにより、集団の考

えを高めていく。

集団の学びの充実には、

学級経営(支持的風土)が

大切である。

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2 参加者の感想

3 授業の様子

・日頃から、情熱をもって子供たちに接し、授業づくりをされている様子が伝わって

きた。子供たちが意見交流できる場をたくさん設けているので、困ったら相談する、

仲間とともに解決する授業スタイルが確立されていると感じた。

・既習事項と本時の学習内容を比較したり、複数の資料を相互に関連付けて読み取ら

せたりと、入念な教材研究と資料提示のしかたが工夫されており、まさに生徒の「主

体的・対話的で深い学び」を促す授業だった。

・授業全体を通して、生徒も先生も表情がよかった。生徒たちが堂々と発表したり身

を乗り出してお互いに聞き合ったりする姿を見て、日頃の授業実践や学級経営のたま

ものだと感じた。

・1時間の中で「主体的・対話的で深い学び」すべてを実現しようとするのではなく、

単元を通して「深い学び」になるように、「主体的な学び」「対話的な学び」を位置付

けていくのが望ましい。

(4) 「まとめ」から「振り返り」につなげる。

単元を貫く課題につながるように、本時のまとめを行う。教師

は生徒の考えを活用しながら、まとめをするが、その際、課題に

正対したまとめになるように留意する。

「振り返り」を書くことを通して、生徒に自分の学びを捉え直さ

せる。

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第1学年1組 社会科学習指導案

平成31年2月12日(火)

5校時[藤沢公民館大会議室]

指導者 大 竹 真 人 1. 単元名 中世の日本

2. 単元について

(1) 生徒観

ア 埼玉県学力・学習状況調査から(省略)

イ 授業実践前に行ったアンケート調査(省略)

県学調やアンケート結果(省略)から、本校の生徒は学習面全般に課題があり、基礎的基本的な学習内容の確実

な理解と思考力・判断力・表現力の育成、そして学習意欲を高めることが強く求められていることがわかる。

ただ、歴史的分野の学習に対する意欲は全般に高く、これまでの学習でも意欲的に、誠実に、しっかりと学習に

向かうことができている。「古代までの日本」の学習や地理的分野の学習を通して、社会科全般の関心意欲の涵養、

思考力・判断力・表現力の育成、知識・技能の習得を着実に果たしてきた生徒が多い。特に、協働的な学習過程に

ついて習熟してきており、有効な学習過程となりうる。

一方「中世の日本」の学習に関して既習事項の定着に不安を持っている生徒が多く、自分の考えを文章にして表

現することを苦手と感じている生徒も多い。また、地域の歴史に興味を持っている生徒が少なく、意欲の面も含め、

個別の支援を必要とする生徒もいるなど、適切な手だてを講じる必要がある。

(2)教材観

ア 学習指導要領での取り扱い(省略)

イ 小学校の「中世の日本」の学習とのつながり(省略)

ウ 板石塔婆について

板石塔婆とは、板碑ともよばれ、主に供養塔として使われる石碑の一種である。特に典型的なものとしてイメー

ジされる武蔵型板碑は、秩父産の緑泥片岩を加工して造られるため、青石塔婆とも呼ばれる。中世に主に作られ、

造立者は武士・農民・僧などで、念仏や題目、阿弥陀仏を表す梵字、宋の禅宗の経文などが刻まれている。

(3)指導観

下のア~オを指導の手立て(単元の指導の工夫)として、次のような力を生徒に育みたい

【本単元の指導で生徒に育みたい力】

①地域の歴史に対して興味・関心・愛着をもつ

②「古代までの日本」と「中世の日本」を比較し、資料に基づいて問(課題)に答える力

③絵図や年表、文書等「中世の日本」の学習ならではの資料を読み取る力

④「中世の日本」の歴史的事象を理解する力

⑤「中世の日本」を大観して,その時代の特色を資料に基づいて多面的・多角的に考察し,表現する力

⑥仲間と協働して学ぶ力・学び合う力

ア 「中世の日本」の特色のとらえ方(単元計画の工夫)

本単元は新学習指導要領の「(2)中世の日本」を中世の特色を大きくとらえさせる観点から1つの単元としてま

とめ構成し、政治・国際関係・社会の様子・文化の 4 つの視点で単元を再構成することで以下のように時代を捉え

させたいと考えた。

政治の面では、律令制度を根幹とする天皇や貴族中心の政治から、封建制度を基盤とする武士政権へと政治の担

い手が大きく変化を遂げたことを捉えさせたい。

国際関係については、日明貿易が象徴するように、東アジアを中心に世界と密接に関わりをもった時代と理解さ

せる。

社会の様子については、惣村や一揆に象徴される成長した民衆の姿や手工業をはじめとする産業の発達、堺を代

表とする自治都市の出現など、激動の時代を力強く生き抜き成長していった人々の生活を理解させたい。

武家の文化が生まれた鎌倉期、現代に続く文化に成熟した室町期の文化を感じさせたい。

イ 「(1)古代までの日本」の学習内容と比較する視点を生かす(歴史的な見方・考え方)(省略)

単元を貫く課題を「中世とはどんな時代だろうか?」と設定し、社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせて、

各時間で「古代までの日本」の学習内容と比較させる。また、たとえば、中世の武士の生活やその台頭について学

ぶ学習では、中世の武士の館と古代の貴族の屋敷とを比較したり、中世の農民の成長について学ぶ学習では、租庸

調などの税を納める支配された古代の農民像と惣村での結びつきを深め、自治的な生活をした中世の農民像と比較

したりさせる。その学習過程で、類似や差異などを明確にしたり、その変化の理由を考えたりすることで、中世の

特色を深く理解できるようにする。

ウ 板石塔婆の教材化

中世の日本の特色をとらえる 4 つの視点を集束する地域教材として板石塔婆を利用する。今回取り扱う板石塔婆

は現在の埼玉県、とりわけ荒川流域を中心に、主に死者の供養を目的に造立された武蔵型の板石塔婆を指す。板石

塔婆の作られた時期(中世に作られ、南北朝時代に最も多い)や場所、造立の理由、造立者(武士・農民・僧など)、

刻まれた銘(念仏や題目、阿弥陀仏を表す梵字、宋の禅宗の経文など)等を手がかりとして中世の特色に迫る授業

を行う。板石塔婆は、埼玉県において中世の日本を知るのに貴重な歴史的史料である。しかしながら、その史学的

研究がその途上であることや、生徒にとっては馴染みのない事象であることは否めない。だから、地域教材である

板石塔婆を生徒の意欲を喚起し、中世の学習内容を束ねる中心的資料という役割を持たせる。生徒に板石塔婆を学

習させるのではなく、板石塔婆を手がかりとして中世を探る学習を主眼に置く。

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エ 主体的・対話的で深い学びの具現化

平成30年度埼玉県小・中学校教育課程説明・協議会資料「主体的・対話的で深い学びの実現6則」を受けた授

業改善の視点の例を土台にして、社会科授業の場面において具現化する。

主体的 対話的 深い学び

学ぶことに興味や関心をもち、自己のキ

ャリア形成の方向性と関連づけながら、

見通しをもって粘り強く取り組み、自己

の学習活動を振り返って次につなげる

子供同士の協働、教職員や地域の人と

の対話、先哲の考え方を手がかりに考

えること等を通じ、自己の考えを広げ、

深める

見方・考え方を働かせながら、知識を相互に

関連づけて深く理解したり、情報を精査して

考えを形成したり、問題を見いだして解決策

を考えたり、思いや考えを基に創造したりす

ることに向かう

子どもの姿

・目標の理解

・学習の見通しをもつ(学習方法・解決

方法)

・教材(資料)に興味をもつ

・自分の学びを振り返る

・ペア、グループ等で話し合う

・先生と対話する

・資料を深く読み取る

・ゲストティーチャーと対話する

・授業の学習課題について答えを説明する

・仲間の意見や先生の話を聞き、考えを深め

・自分の考えを文章等でまとめる

教師の手立て

・目標の提示

・見通しをもたせる

(学習方法・解決方法)

・教材、教具の工夫

・振り返りの場の設定

・対話的な学習場面の設定

(グループワーク・ペア学習)

・異なる考えに気づかせる

・資料、史料を深く読み取らせる

・先生やゲストとの対話の場の

設定(読み取り)

・問題解決的な学習をしくむ

・多様な答えや考え方を導く課題(問い)の

設定

・「見方・考え方」を働かせる発問

・思考を深める板書

・自分の考えを文章等でまとめる学習の充実

(描写・要約・説明・記録・報告)

本実践について(本時を例に)

・単元を貫く課題の把握と本時の目標の

確認

・見通しをもたせる

学習方法:資料の読み取りと活用

古代との比較

解決方法:資料の並び替え

級友との学び合い

・ワークシート、ICT 器具の使用

・振り返りの視点として「学習する前と

今で、新しく何がわかったのか」を書

・資料、史料を深く読み取らせ個人の

意見を持つ(資料との対話)

・4人のグループワーク

・異なる考えに気づかせ、グループと

しての意見の練り合い

・形成的な評価の場として、先生との

対話の場をもつ

・全体として、グループの意見を吟味

する場の設定

・「見方・考え方」を働かせるために、古代

との比較を常に意識させる。

・多様な答えや考え方を導く学習になるよう

に、4 つの資料を組み合わせる学習場面の

設定

・思考を深める構造的な板書

・課題解決的な学習の解として、自分の考え

を文章等でまとめる学習(説明)

オ 1単位時間の授業を「主体的・対話的で深い学び」にデザインする

【(3)指導観アイウのイメージ図 ~板石塔婆を中心資料・古代と比較~】

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3.単元の指導

(1)目標

○ 課題解決のために資料を読み取り、仲間と学び合うとともに、郷土にかかわる歴史的事象に対する関心を高め、

郷土の伝統や文化を尊重する態度をもつ。(関・意・態)

○ 武家社会のなりたちと日本の封建社会のしくみや文化の動きを、武士や民衆の活力を背景に多面的・多角的に

捉え、時代の流れと特色を考察する。(思・判・表)

○ 絵図や年表、地図などの複数の歴史的資料を適切に選び、課題解決のために読み取ることができる。(技)

○ 武家政権の成立とその後の政治、社会、文化の動きを我が国の歴史とかかわる東アジア世界の歴史を背景に理

解し、知識を身に付ける。(知・理)

(2)評価規準

関心・意欲・態度 思考・判断・表現 技能 知識・理解

・課題解決のために、資料の読み

取り、仲間との学び合い、発表

など様々な学習を意欲的・協働

的に行うことができる。

・歴史的文化的遺産を尊重し、当

時の人々の生き方に関心をも

つことができる。

・郷土の伝統や文化を尊重してい

・武家社会の成り立ちと日本

の封建社会のしくみや文

化の動きを、武士や民衆の

活力を背景に多面的多角

的に捉え、時代の流れと特

色を考察している。

・学習課題を的確に捉え、当

時の社会や文化を踏まえ

考察している。

・絵図や年表、地図などの複

数の歴史的資料を適切に

選び、課題解決のために読

み取ることができる。

・武家政権の成立の過程とそ

の後の政治、文化、社会の

動きに関する資料や情報

を整理し、適切に選択して

活用することができる。

・武家政権の成立とその後

の政治、社会、文化の動

きを我が国の歴史とかか

わる東アジア世界の歴史

を背景に理解し、知識を

身に付けている。

・郷土の歴史的な事象を中

世の歴史の中に位置づけ

ることができる。

(3)指導計画 (13時間扱い)

・学習活動 〈主な学習内容〉

◎期待する生徒の反応(振り返りの記述例)

評価の観点 ・指導上の留意点

◇評価規準【観点】(方法) 関 思 技 知

・板石塔婆を見て、考える活動を通して、その特徴をつかみ、石

造物の調査の仕方について理解する。

・板石塔婆の年代別分布や分布図、刻まれた銘文などについて考

え、中世における板石塔婆の歴史的価値を知る。

・板石塔婆に関する疑問や発見をもとに、単元を貫く学習課題を

設定する。

・板石塔婆については、単元の学習の

中核の資料として位置付けるが、

個々の板石塔婆の詳細な内容には

深入りしないようにする。

・中世の日本の学習に意欲的に取り組

めるように、板石塔婆だけでなく畠

山重忠等の郷土の資料を提示する。

◇板石塔婆等の地域教材を意欲的に

読み取り、級友とその価値について

意見交流している。

【関】(観察、ワークシート)

省略

7(本時)

・技術の進歩によって農業が著しく発

展したことや、それに伴って人々の

生活が向上したこと、団結し、力を

高めていったことに気付かせる。

◇絵図などの資料を適切に活用し、農

民の活力ある生活を多面的・多角的

に捉え、考察し、説明している。

【思】(発言、ワークシート)

◇中世の農民について、ノートやワー

クシートにまとめ、その特色を理解

している。

【知】(発言、ワークシート)

・「月次風俗図屏風」や「正長の土一揆の記録」などの複数の資

料を読み取り、活用し、確かな理解のもと農業などの発達と農

民の成長を説明する。

・古代の農民と比較して考える。

省略

課題 中世の農民の様子はどのようなものだったのだろうか?

目標 複数の資料を関連させ、中世の農民の様子について理解し、説明できる

◎古代の農民は、天皇に支配されたのに対して、中世の農民は団結し、自

分たちの生活を守る自治的な生活をしていた。村おきてをつくり、時に

は土一揆をおこして領主に抵抗をした。板石塔婆を農民が集団で造った

ことはその自治的な惣村が造られていたことの証であるといえる。

単元を貫く課題「中世とはどのような時代だろうか? ~【板石塔婆】・【古代との比較】を通して学ぼう~」

◎板石塔婆が、地域の特色ある史料であり、かつ中世の日本の特色を示す

ものであると知った。石造物から、歴史がわかるということに興味を持

った。家の近くでも探してみたい。そして中世の学習を頑張りたい。

課題 板石塔婆とは何だろうか?

目標 板石塔婆への理解と興味を高め、単元の学習に意欲的に取り組むことができる。

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4.本時の指導(7/13) (1) 本時の目標

複数の資料を関連させ,中世の農民の様子について理解し、説明できる(知・思)

(2)展開 学習

過程 学 習 活 動 〇学 習 内 容 ・指導上の留意点 ◇評価【評価項目】(方法)

導入

1 今までの学習を振り返り、単元を貫く課題を確認す

る。

2 古代の農民の姿と中世の農民の姿を比べる。

〇古代の農民・・・厳しく管理されていた農民

中世の農民・・・さらに厳しく管理されている

・・・反抗するようになる(予想)

3 本時の目標と課題を確認する。

・単元を貫く課題に触れ、本時の学習への意欲を高める。

・古代の既習事項を生かし、古代と中世の農民像を比較す

ることで中世の農民の様子を予想できるようにする。

4 中世の農民にとって、危機的な状況はどんな状況だ

ったか考える。

〇農民にとっての危機的な状況

・・・気候が寒冷化し、農作物が育たなくなり、

生活が苦しくなる状況。

・地理的分野の学習を生かすように助言する。

・資料を提示し、中世が寒冷期で、農民にとって危機的な

状況であったことを説明する。

展開

5 本時の学習のポイントと流れを確認する。

6 資料Aと資料Cを関連させて読み取る。

※資料A 伏見村の草刈

資料C 農民の様子(肥料や農具の進歩)

〇資料Aと資料Cから導き出せる農民の様子

・・・牛や馬を使って耕作したり、草木を燃やして

灰を肥料にしたりするなど、効率的に農業に

取り組み、収穫量を増やせるようになった。

7 資料A~Eを読み取り、課題について考える。

※資料B 村おきて(寄り合い、共有地の使用)

資料D 田植え(月次風俗図屏風)

資料E 正長の土一揆

・教師と生徒の対話の中で、資料を根拠にして、農民の成

長を捉えさせる。

・個人で考える時間を十分に確保する。ただし、必要に応

じて友達の考えも参考にするよう促す。

・各資料から読み取れることを明確にするように助言する。

・それぞれの資料の関連を考えさせる。

・記述できた生徒は、教師の評価をうけさせるようにする。

目標 複数の資料を関連させ、中世の農民の様子について理解し、説明できる

課題 中世の農民は厳しい時期をどのように生き抜いたのか?

単元を貫く課題「中世とはどのような時代だろうか? ~【板石塔婆】・【古代との比較】を通して学ぼう~」

課題 中世の農民は厳しい時期をどのように生き抜いたのか?

( キーワード:寄合・収穫量・反抗 )

【学習の流れ】

個人 →(話し合う) →全体(発表・吟味) →まとめ・ふりかえり

【学習のポイント】

・資料を読み取り、中世の農民の様子を読み取る。

・資料を関連づけて、中世の様子を説明できるようにする。

・A~Eの資料は、すべて中世の農民の資料である。

・「中世の日本」の教科書の該当部分は原則見ないようする。

・いままでの学習内容はノート・教科書で復習してよい。

課題解決の A 基準

以下の内容が書かれていること

・ルールをつくり協力して生活していたこと

・農業を進歩させたこと

・ときには権力者に反抗したこと

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・机間指導の中で形成的評価を充実する。

理解が十分な生徒(グループ)への手立て

農民の様子について資料から読みとれる内容をもとに説明できるようにさせる。

古代の農民の様子と比べさせる。中世の農民の特色を通して、中世の日本の特色を考えさせる。

理解が不十分な生徒(グループ)への手立て

一つひとつの資料をじっくりと読み取らせて、農民の様子をとらえさせる。

資料の読み取りの視点を示し、資料から見えること、伝わってくることを列挙させる。

仲間の支援を積極的にうけるように声かけする。

意欲的ではない生徒(グループ)への手立て

教員による個に応じた声がけを行う。

支援者となっている生徒が積極的に関わるように指導する。

〇資料A~Eから読み取れる中世の農民の姿

〇社会が不安定で、支配者層の力が弱まる中で、農

民たちが団結・協力し、農業を発展させるなどして、

力をたくわえることができるようになったから。

・数名の生徒に、記述した内容を発表させ、それを全体で

吟味し、模範的な解答をつくりあげるようにする。その

際、根拠となる資料を明確にさせるようにする。

◇絵図などの資料を適切に活用し、農民の活力ある生活を

多面的・多角的に捉え、考察し、説明している。

【思】(発言、ワークシート)

・早く解答を導き出せた生徒には、発展的な問いを考えさ

せる。

まとめ

8 本時の課題について、発展的な問いの解答も踏まえ

て個人で再考する。その後、板書や友だちの考えも

踏まえて、加筆し、「中世の農民」について、ノー

トにまとめる。

・本時の課題への解答に、発展的な問いの解答をふまえて、

再考させることで、さらに考えを深められるようにする。

その際、今日学習したことと「古代までの日本」で学習

したことを関連づけて考えるように指導する。

・模範的な生徒の意見をICTで提示し、全体で共有させ

る。

◇中世の農民について、ノートやワークシートにまとめ、

その特色を理解している。

【知】(発言、ワークシート)

9 自己評価カードに本時の授業の振り返りを記入す

る。

・振り返りの視点として「学習する前(予想)と今で、新

しく何がわかったのか」を書くように伝える。(学びの捉

え直し)

(3) 板書計画

【課題の解(例)】

中世の農民は、惣という自治組織をつくり、寄合

や村おきてなどを通じてまとまり、農業を進歩させ

生産量を高めた。時には団結して土一揆をおこし支

配者に反抗すらした。

発展的な問い なぜ農民は“中世で”成長したのか?(古代=支配された農民)

【生徒の振り返り(例)】私は、授業の最初は「争いをして生き延びた」と考えたけれど、学習を通して、村として自治

的なまとまりをつくり、時には土一揆さえ起こすようになったことがわかりました。そのまとまりを高めるものとして村

おきてがあったと知りました。古代の農民の姿とは全く違う、たくましく成長した中世の農民について深く理解すること

ができました。

【まとめ(例)】

中世とは、社会が不安定になり、古代と比べて農

民たちを支配する力が弱まった時代である。農民た

ちは、惣という自治組織をつくり、団結・協力しな

がら、農業を発展させ、力をたくわえるようになっ

た。そして、土一揆を起こして、支配者層に反抗す

るようにもなった。