第3章 最終年度の事業方針 - maff.go.jp...box3.1.1...

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- 30 - 第3章 最終年度の事業方針 3.1 木材トレーサビリティ技術の改良課題 初年度事業でのインドネシア国内の木材伐採事業者 9 社における木材伐採搬出の実態調査、さらに 第 2 年度事業で 2 社の木材伐採事業者を対象とした実証試験、さらに日本での事例調査などを実施し てきた。これらの結果、二次元バーコードが木材流通トラッキング・ツールとして有効であることが確 認された。次のような木材トレーサビリティ技術の可能性が示唆される。 Box3.1.1 木材トレーサビリティ技術の可能性 (1) 二次元バーコードを木材流通トラッキング・ツールとして利用すると、市販のノート型パソコンやバーコー ド・リーダなど入力装置を活用することにより、エンド・ユーザーである木材伐採事業者独自のデータベース など大規模なシステムを構築することなく、現実の丸太トレーサビリティの品質向上が可能である。 (2) 二次元バーコードを木材流通トラッキング・ツールとして利用したエンドユーザーコンピューティング (EUC/EUD)により、電話回線など通信事情が良好でない森林地域での現状の現場操業方法を大きく変更す ることなく、比較的低い初期コストやランニング・コストで伐採事業許可区域からでる丸太全体のトレーサビ リティの品質向上ができる可能性がある。 (3) 原材料の丸太が二次元バーコードを添付している状況写真などの報告を求めるか、加工段階においても二次 元バーコードを活用して CoC を強化することにより、丸太を利用する加工業者や加工材の消費者(輸入業者を 含む)が、携帯電話などを利用して加工材の産地とプロセスの流れに関する情報を二次元バーコードから確 認できるようになる。これにより、木材流通事務書類にもとづく木材トレーサビリティの水準を国際市場要求 に応えることができるように支援することもできる。 最終年度においては、表 3.1.1 に示す課題の解決策を構築するための事業を進める。 表 3.1.1 木材トレーサビリティ技術の改良課題 実証課題 改良課題 アプローチ ラベル材質の改良 二次元バーコード活用の有効性 ラベルの耐久性、読み取り保証の向上 貯木環境における耐久性試験 機材パッケージの現場利便性の向上 現場環境、現場作業手順の実態への適用化 作業時間の短縮 EUC/EUD の効率性 現場ユーザーによる利用・実用化 エンド・ユーザー用マニュアル作成 改正規則の遵守・林業省データベー スによる書類整合性監査の品質向上 改正規則、林業省開発中のオンライン木材流 通事務情報システムへの整合の確保 プログラムの改良 3.2 最終年度事業の実施方法 (1) 木材トレーサビリティ・ツール及び利用技術の改良 第 2 年度の実証試験の結果及びインドネシア林業省の動向に基づいて、最終年度、表 3.2.1 に 示す改良課題についてツール・プログラムの改良を進めることとする。

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第 3 章 終年度の事業方針

3.1 木材トレーサビリティ技術の改良課題

初年度事業でのインドネシア国内の木材伐採事業者 9 社における木材伐採搬出の実態調査、さらに

第 2 年度事業で 2 社の木材伐採事業者を対象とした実証試験、さらに日本での事例調査などを実施し

てきた。これらの結果、二次元バーコードが木材流通トラッキング・ツールとして有効であることが確

認された。次のような木材トレーサビリティ技術の可能性が示唆される。

Box3.1.1 木材トレーサビリティ技術の可能性

(1) 二次元バーコードを木材流通トラッキング・ツールとして利用すると、市販のノート型パソコンやバーコー

ド・リーダなど入力装置を活用することにより、エンド・ユーザーである木材伐採事業者独自のデータベース

など大規模なシステムを構築することなく、現実の丸太トレーサビリティの品質向上が可能である。

(2) 二次元バーコードを木材流通トラッキング・ツールとして利用したエンドユーザーコンピューティング

(EUC/EUD)により、電話回線など通信事情が良好でない森林地域での現状の現場操業方法を大きく変更す

ることなく、比較的低い初期コストやランニング・コストで伐採事業許可区域からでる丸太全体のトレーサビ

リティの品質向上ができる可能性がある。

(3) 原材料の丸太が二次元バーコードを添付している状況写真などの報告を求めるか、加工段階においても二次

元バーコードを活用して CoC を強化することにより、丸太を利用する加工業者や加工材の消費者(輸入業者を

含む)が、携帯電話などを利用して加工材の産地とプロセスの流れに関する情報を二次元バーコードから確

認できるようになる。これにより、木材流通事務書類にもとづく木材トレーサビリティの水準を国際市場要求

に応えることができるように支援することもできる。

終年度においては、表 3.1.1 に示す課題の解決策を構築するための事業を進める。

表 3.1.1 木材トレーサビリティ技術の改良課題

実証課題 改良課題 アプローチ

ラベル材質の改良 二次元バーコード活用の有効性 ラベルの耐久性、読み取り保証の向上

貯木環境における耐久性試験

機材パッケージの現場利便性の向上現場環境、現場作業手順の実態への適用化

作業時間の短縮 EUC/EUD の効率性

現場ユーザーによる利用・実用化 エンド・ユーザー用マニュアル作成

改正規則の遵守・林業省データベー

スによる書類整合性監査の品質向上

改正規則、林業省開発中のオンライン木材流

通事務情報システムへの整合の確保 プログラムの改良

3.2 終年度事業の実施方法

(1) 木材トレーサビリティ・ツール及び利用技術の改良

第 2 年度の実証試験の結果及びインドネシア林業省の動向に基づいて、 終年度、表 3.2.1 に

示す改良課題についてツール・プログラムの改良を進めることとする。

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表 3.2.1 ツール・プログラムに関する主要な改良課題

改良課題 目的 ツール/

プ ロ グ ラ

改良案

発電機の不要化 ツール ① 自動車電源より引き込み

② 蓄電池(乾電池)使用化 現場利便性・

作業性の向上 機材の耐久性の向上

ツール ① 防水・防塵構造の製品情報の収集

② 防水・防塵方式の検討(カバン類にパッケージ

化など)

③ 携行方法の検討(首提げ式/腰下げ式/背負い式

など)

④ 悪天時の退避方式の検討(携帯用作業テントな

ど)

バ ー コ ー ド の 耐 久

性・

読取保証の向上

ラベルの破損を防止する ツール ① 合成紙(敗れにくい)の厚さ、材質の検討

ハンディターミナル型バーコー

ド・リーダとノート型パソコンの

データ転送を簡略化する。

ツール・プ

ログラム

① 無線によるデータ転送

② ハンディターミナル型バーコードリーダとバ

ーコード・プリンタを直結して出力

③ データ転送(エクスポート・インポート)をワ

ンタッチできるようにする。

作業者の操作ミス・

作業時間の軽減

ヒューマン・フレンドリーにする(ヒューマン・インターフェース設計10)。

プログラム ① 入力画面のメニュー方式化

② ヘルプ機能・ガイダンス機能の追加

③ 入力データのチェック機能の追加

④ 簡易 GPS による位置情報の入力及びチェック

機能の追加

⑤ 読み取り動作の誤用による誤確認の防止方法

の検討(確認メニューの追加など)

⑥ セキュリティ対策(ユーザー登録・認証など)

読み取りと書類作成の連動化の強

化/未整合丸太の分別促進

プログラム ① 山土場:丸太計測野帳-輸送丸太一覧表-伐採報

告書

② 林内貯木場:伐採報告書-輸送丸太一覧表-丸太

林産物一覧表-丸太移動報告書(LMKB)

③ 林内貯木場・工場貯木場:丸太林産物一覧表-

丸太移動報告書(LMKB)

林産物取扱規則の改定に準拠する プログラム ① 書類名の調整

② 出力様式の調整

③ 出力部数について申請部数同時出力可能化

④ 丸太伐採報告書の集計票出力の追加

⑤ 樹種入力により樹種グループの自動判別機能

の追加

⑥ 伐採時における丸太及び根株へのラベル添付

方法の検討

木材流通事務手続き

の効率化

林業省(開発中)オンライン木材流通

事務情報システムへの申請を容易

にする(オンライン木材流通事務情報

システムのプロトコールとの調整)。

プログラム ① データ保存様式の調整

② データ送信プログラムの追加

③ 伐採前立木調査におけるラベルの添付手法、立

木調査報告書(LHC)出力の追加方法の検討

④ 林外貯木場及び工場貯木場における丸太移動

報告書(LMKB)の出力の追加方法の検討

(2) ユーザー・マニュアルの開発

木材伐採事業者による導入開発を想定したマニュアル開発を行なう。

① 表 3.2.2 のような構成を中心に、基本コンテンツを検討してドラフト 1 を作成する。

② その後、現場適用試験におけるドラフト 1 の使用試験、木材伐採事業者の参加により木材伐採事業者の実

情に応じた事例ドラフト2の作成を行う。

10 人間の身体的、生理的かつ知的な特性とノート型パソコンのメカニカルな特性との整合を図り、両者の機能を十分に引き出

すために工夫されたインターフェース(ユーザーとシステムの接点)のこと。ヒューマンインターフェース設計は、主に入出

力画面の設計と入出力帳票の設計をさす。

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③ 上記②の結果を生かしつつ、普及セミナーなどにより木材伐採事業者へのコンサルテーションを行ないなが

ら、3 年間の経験の総合分析やインドネシア国内事情の動向を踏まえて、ドラフト 3 として見本を作成す

る。

表 3.2.2 エンド・ユーザー・マニュアルの構成(案)

構成(編/章) 目的 概要

概要 基本システムを理解する。 全体概要

操作 場所別の基本動作ができる。

① 入力

② ラベルの印刷と添付

③ 読み取り

④ 木材流通事務書類の作成

⑤ 林業省(開発中)オンライン木材流通事務情報システムへの申告

* 画面レイアウト、入出力のプロトコールも解説する。

資機材 資材・機器のトラブルを防ぐ。 ① 現場の実情におうじたツールパッケージの改良

② 基本動作以外の機器の使い方

③ ラベル、インクの耐久性と使い方

システム 企業の事情によりシステムを

改良できる。

① 伐採地からラベリングする場合

② 木材輸送パターンによるシステム変更の場合(林外貯木場の追加など)

③ 経営適正化のための情報を追加する場合(運転手名など)

プログラム プログラムを改良できる。 ① プログラム構成

② モジュール・プログラム(データ処理、プログラム制御構造など)

マネージメント 企業の事情により管理でき

る。

① 資機材の 低要件(仕様)

② 資機材の購入・維持業者のリスト

③ その他事例

(3) 現地適用化実証試験

木材伐採事業者による導入開発を想定した試験を行なう。2008 年 1 月から本格的にオンライ

ン木材流通情報システムの運用導入を図りたい林業省の政策目標を支援するために、時間的な制

約の中、以下の 2 試験を同時並行に実施するとともに、ツール・プログラムの改良も断続的に実

施する。そのため、資機材等一式の再度新規調達試験を行なう。

① 現場適用試験

第 2 年度と同様な試験を、長距離木材輸送経路をもつ伐採事業許可区域で行なう。中央カリマンタン州を

想定しているが、木材伐採事業者の受入れが難しい場合には、他の州での実施も検討する。主に、改良ツー

ルによる耐久性、改良ツール・プログラムの作業性およびエンド・ユーザー・マニュアル(ドラフト 1)の

利便性などを確認することを目的とする。

② ユーザー参加 EUC/EUD トライアル試験

業界団体などを通して、第 1 年度実態調査対象の木材伐採事業者(第 2 年度の試験対象の木材伐採事業

者が有望)を中心にエンドユーザーへ呼びかけ、実用化を想定した開発に協力する木材伐採事業者を募り行

なう。これにより、開発技術を理解するオピニオン・リーダー層の育成促進につなげる。目的は以下のとお

りである。

a) 木材伐採事業者の事情に応じたエンド・ユーザー・マニュアルを企業実例(ドラフト 2)として作成してみること

b) エンド・ユーザー・マニュアルの改良も兼ねて改良ツールの使用試験(第 2 年度事業で調達の機材一式の貸与[バ

ーコード・リーダーは山土場・林内貯木場は兼用、その他工場貯木場、計 2 機]を検討する)を約 5 ヶ月行なうこ

c) 改良ツールの使用試験と同時に、貯木環境条件によるラベルの耐久試験を行なうこと

ラベルの耐久試験は、第 2 年度実証試験のなかで丸太が数ヶ月にわたって野外あるいは水中に放置される可能性

があることが分かったため、二次元バーコードを印刷したラベルを野外と水中にそれぞれ放置し、定期的(例えば

1 ヶ月置き)に機械で読取り作業を繰り返し、二次元バーコードが機械で読み取れる 大期間を確認する。

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(4) 普及・広報及びユーザー・コンサルテーション

① 普及セミナーの開催

本事業で開発している二次元バーコードを活用した木材流通トラッキング・ツールの普及を兼

ねたコンサルテーションのための 1 日間のセミナーを 9 月初旬までに開催する。準備は、林業省

やインドネシア・エコラベル協会などインドネシア側の協力により行う(表 3.2.3 参照)。

表 3.2.3 普及セミナーのプログラム(案)

セミナー名「二次元バーコード活用による丸太トレーサビリティの向上」

時間 次第 担当(想定) 仮テーマ

日本

農林水産省林野庁代表 日本政府調達ガイドラインの意義

インドネシアの違法伐採の現状と対策

9:00-

10:15

基調講演

インドネシア国

林業省代表 インドネシアの木材合法性及び木材の CoC 確保に

関する政策

発表

インドネシア木材伐採事業者業界代表インドネシアにおける木材トレーサビリティに対

するニーズ

社団法人 日本森林技術協会

二次元バーコード活用の木材トレーサビリティ手

法の設計及び実証調査の概要

10:30-

12:00

発表・実演

インドネシア・エコラベル協会 二次元バーコード添付による丸太トラッキング手

法の試験及び改良、マニュアル開発の中間報告

13:30-

14:00

発表 インドネシア国

林業省林業生産総局

林業賦課金・林産物流通局

オンライン木材流通事務情報システムの開発及び

適用試験の中間報告

バネル・

ディスカッション

パネラー:

① 行政ユーザー代表

(州林業局など)

② エンド・ユーザー代表

(木材伐採事業者関連団体など)

③ 第三者ユーザー代表

(BRIK など)

④ 開発側

・ インドネシア国

林業省林業生産総局

林業賦課金・林産物流通

・ インドネシア・エコラベル

・ 社団法人 日本森林技術協会

バーコード活用の木材トレーサビリティにおける

強みと弱みの比較

14:15-

16:00

総括 インドネシア国

林業省代表

木材トレーサビリティに関する今後の課題と可能

注)セミナーの対象者としては、伐採事業者をはじめ、林業省関係者、州林業局、林業関連団体、環境 NGO などが

想定される。

② ユーザー・コンサルテーション

技術改良におけるユーザー参加の促進も兼ねて、第 1 年度の実態調査対象の木材伐採事業者の本社を中心

として、実演コンサルテーションなどを行ない、普及セミナーの開催の事前普及・広報を行なう。また、普

及セミナーの成果報告も兼ねて、 終年度事業の進捗状況の意見照会を E-mail にて行ない、技術改良に資

する。これらにより、開発技術を理解するオピニオン・リーダー層からフォロワー層への情報交換を促進し、

技術開発の普及促進につなげる。

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巻末資料

1. 検討委員会議事概要

2. 第 1 年次の丸太搬出現状(2005 年)調査結果の概要表

3. 有望な木材流通トラッキング・ツールの比較

4. インドネシア国林業省への初年度報告書説明・協議出席者リスト

5. 木材流通トラッキング・ツールの資機材基本パッケージと 2006 年調達資機材の諸元

6. 二次元バーコード印刷ラベル(実物大)の実証試験作成例

7. Format 1 丸太計測野帳 の様式(2003年林産物取扱規則)と実証試験作成例、新

様式(2006 年国有林林産物取扱規則)

8. Format 2 丸太伐採報告書 の様式(2003年林産物取扱規則)と実証試験作成例、新

様式(2006 年国有林林産物取扱規則)

9. Format 3 輸送丸太一覧表(DP-KB) の実証試験作成例

10. Format 4 丸太林産物一覧表 の様式(2003年林産物取扱規則)と実証試験作成例、

新様式(2006 年国有林林産物取扱規則)

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巻末資料1. 検討委員会議事概要

巻末資料 1.1 日・インドネシア違法伐採対策協力アクションプラン推進事業 第 4 回検討委員会

Ⅰ 開催日 平成 18 年 6 月 29 日(木)

Ⅱ 時間 午前 10 時から正午

Ⅲ 場所 社団法人日本森林技術協会 4 階会議室(湯島ビル)

Ⅳ 出席者

1.委員 近江克幸 日本合板工業組合連合会 専務理事

大橋泰啓 日本木材輸入協会 専務理事

岡崎時春 FoE ジャパン 代表理事

角谷宏ニ 社団法人全国木材組合連合会 常務理事

小林紀之(座長)日本大学大学院法務研究科 教授

藤間剛 森林総合研究所 国際研究推進室 室長

(氏名の五十音順)

2.林野庁 鈴木憲一 木材課 技術専門官

3.インドネシア

ウイスヌ プラストウォ

在日インドネシア共和国大使館 林業部長

アンドリ スマルヤディ

在日インドネシア共和国大使館 林業部

4.事務局 根橋達三 社団法人日本森林技術協会 理事長

鈴木康之 同上 主任研究員

西尾秋祝 同上 主任技師

Ⅴ 議事要旨

1.根橋理事長の挨拶

第 3 回検討委員会において検討した実証調査の実施の方向性に基づき、今年度行なう実証調査の実施方

法について事務局から提案するので、ご審議をお願いしたい。

2.ウイスヌ林業部長の挨拶。

違法伐採がインドネシアの森林資源に負の影響を与えており、この事業が違法伐採対策に貢献できるも

のと考えている。この会議に参加する機会を得たことに感謝する。

3.小林座長の挨拶

国民の森林資源に対する関心が高まっているなかで、違法伐採は残念な現象である。本事業を通してそ

の対策に役立ちたい。この事業で考えている二次元バーコードが使われるようになり、日本とインドネシ

ア間の木材貿易が健全に発展することを願っている。

4.事務局からの報告

配布資料の概要説明につづき、パワーポイントにより実証調査のやり方について、事務局案を説明した。

その概要は、次のとおりである。

1. 実証調査の目的は、木材トレーサビリティを確保するため、情報添付方法等に関する試験を行い、

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木材トレーサビリティ技術を改良する。

2. 実証調査は、山土場から林内貯木場を経由し工場貯木場で行なう。丸太の移送パターンの中で複雑

なものほど不審な材の流れがあるものと考えられるが、実証調査は、ツールが想定した動きをする

かを試験するものであるため、丸太の流れがシンプルなパターンで行ないたい。

3. 三種の試験を行なう。

① 試験1:丸太情報入力のためのハンディターミナル型バーコード・リーダ利用試験

② 試験2:二次元バーコードを使った丸太情報添付の実用性確認

③ 試験3:二次元バーコード情報から丸太林産物一欄表(DHH-KB)作成の利便性確認

これらの試験を行なうに当たっての作業の手順、必要機材の種類、ソフトの調整、打出し表の様式等に

ついて説明した。以上の作業は昨年度現地調査を依頼した LEI を再度活用して行なう。

ハンディターミナル型バーコード・リーダによって、二次元バーコードの読取りとそのデータのパソコ

ンへの転送について簡単な実演を行なった。

これまで二次元バーコードを印刷するラベルとして PET 樹脂のようなものを提案していたが、強度が

あり廉価であるユポ合成紙に変える可能性について述べた。

5.質疑応答の要旨

質疑応答をテーマ毎に整理すると次のとおりである。

5.1 機材関係

5.1.1 次の質問があった。

a. 機材調達は何処か。

b. 印字言語は何語か。

c. 普通の一次元バーコードと二次元バーコードとの違いは。

d. 二次元バーコードは携帯電話ででも読めるのか。

e. ハンディターミナル型バーコード・リーダなどの価格によっては、インドネシアでの普及に問題が

あるのではないか。

5.1.2 上記の指摘事項に対して次の回答があった。

a. 機材の不具合時の業者の対応を考慮してインドネシア国内で購入する。

b. 言語はインドネシア語を用いて標記する。

c. 普通の一次元バーコードと二次元バーコードの違いについて下記の点が指摘された。

• 普通の一次元バーコードは横方向にデータがあるのみで情報量が少ない。二次元バーコードは縦

横にデータが入っており、情報量が多い。

• 普通の一次元バーコードに入っている情報は数字と文字の羅列であるため、情報の意味が分から

ない。このためノート型パソコンに繋いでデータベースを検索する必要があり、電話回線、イン

ターネット設備の無い山奥地、島嶼では使用が困難である。一方、二次元バーコードはそのもの

に情報があるためデータベースを検索する必要がなく、その場で判読できる。

• 普通の一次元バーコードは傷が付くと読込めないが、二次元バーコードは同じ情報が数箇所に入

っているため、面積で 大 30%までの傷でも読み込みが可能である。筏組される丸太の場合は

木口同士がぶつかり傷を受けるが、この場合でも二次元バーコードは読込みの可能性が高い。

• 普通の一次元バーコードは正面からスキャンする必要があるが、二次元バーコードは斜めからで

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も読み込みが可能なため、作業が容易である。

d. 日本の携帯電話は二次元バーコードの一種である QR コードが読めるようになっている。しかし、

QR コードは日本国内で普及しているものでおり、海外では DetaMatrix コードの普及が進んでい

る。ここに持ってきたハンディターミナル型バーコード・リーダは QR コードも DetaMatrix コー

ドも読める。

e. 価格の問題はあるが、二次元バーコードの利用のみでなく、付随的に各種の丸太一欄表も作ること

もできるというメリットも強調したい。このメリットを確認するための試験も予定している。また、

事業者の意識に依るが、二次元バーコードを導入した青森県の漁協規模から類推すると、あながち

無理な価格ではないと考えられる。

5.2 実証調査の視点について

5.2.1 実証調査の視点について次の指摘があった。

a. 林業省職員との連携が重要である。

b. 工場から山元を見た視点に立ち、工場貯木場での合法性確認が必要ではないか(工場に違法な丸太

が入ってきているという現実に視点を置いて実証調査をやるべきではないか)。

c. 工場において、丸太の DHH-KB の内容が合板の証憑に如何にして転換されているのか知る必要が

ある。

5.2.2 上記の指摘に対して、次の議論があった。

a. 林業省職員を含めて作業をやることで将来につなげたい。特に伐採事業許可区域との関連の深い木

材生産総局(BPK)と連携が重要である。

b. 工場から山元を見た視点に立った工場貯木場での合法性確認については、次の議論があった。

• 一般的には山土場で玉切りし、次は工場で加工されるため、例外的な丸太の扱いについてはここ

では考えなくて良いのではないか。

• 工場から山元まで遡れるツールを考えようというのが本来の話であり、合法材をラベルで判別し

ようという方向性でこの実証調査を行なうということで始まった。

• 合法性証明のツール開発を目的としていることからすると、今の段階ではこの実証調査の内容で

良い。

• ラベルが付いていることで合法性を確認しようというのがこの方法である。工場の立場からする

と、このラベルが付いているものは山元まで追跡可能であり、このような丸太を購入するという

ことで違法材を除外できるということではないか。

• これまでの従来の方法では、現物の丸太と証憑との照合が難しいが、このラベルを使うことで照

合が容易になるということが言える。工場に入る時点での合法性を後押しすることになり、不審

な丸太の流通の抑止となる。

c. 実証調査としてはこの方法でやることにして、合板工場では丸太の証憑が如何に合板の証憑に転換

されているかを見ておき、DHH-KB の様式の改良の参考とする。

5.3 試料丸太の取扱について

5.3.1 試料丸太の取扱について次の質問と指摘があった。

a. 林内貯木場は一つのコンセションの中に幾つかあるのか。

b. 林内貯木場に集まる丸太全てにラベルを付ける必要がないか。ラベルを付けたものと付けないもの

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が混在すると試験が難しくないか。

5.3.2 試料丸太の取扱については次の議論があった。

a. コンセションには一つの林内貯木場であるが、山土場は複数ある。

b. 林内貯木場に集まる丸太全てにラベルを付ける必要がないかという指摘に対して、次の議論があっ

た。

• この実証調査では環境の厳しい中で、思惑通りに機材が機能するか、作業が進行するかなどを検

証することである。その点からすると、試料丸太本数を拡大して多くの山土場からの丸太にラベ

ルを付けなくても、特定の山土場からの丸太にラベルを付けることで試験は可能と考える。

• 特定の丸太群は実証調査の試料であるとしてロットとして林内貯木場の所定の場所に搬入しなけ

れば、チェックのし様がない。

• 山土場の状況はその場所で違うため、実態に合わせて行なうしかない。

• 試料丸太本数については、木材伐採事業者の都合もあることから 30 本になるか 50 本になるか

分からないが、作業にどれ程時間が懸かるかということも重要なポイントであるから、ある程度

まとまった本数であることが望ましい。

6. 今後の予定について

事務局では、7 月中旬に一度インドネシアに行き、実証調査の準備を行なう。

実証調査が本格的に始まるであろう 9 月に再度現地へ行く。

その後再度現地へ行き、合計 3 回を予定している。

再委託先からの報告書は 12 月 20 日にあがることを予定している。

来年 1 月末に今年度 2 回目の検討委員会を予定している。

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巻末資料 1.2 日・インドネシア違法伐採対策協力アクションプラン推進事業 第 5 回検討委員会

Ⅰ 開催日 平成 19 年 2 月 1 日(木)

Ⅱ 時間 午前 10 時から午後 1 時

Ⅲ 場所 ホテル聚楽 白鳥の間(中2階)(東京都千代田区神田淡路町 2-9)

Ⅳ 出席者

1.委員 近江克幸 日本合板工業組合連合会 専務理事

大橋泰啓 日本木材輸入協会 専務理事

岡崎時春 FoE ジャパン 代表理事

角谷宏ニ 社団法人全国木材組合連合会 常務理事

小林紀之(座長)日本大学大学院法務研究科 教授

藤間剛 森林総合研究所 国際研究推進室 室長

(氏名の五十音順)

2.林野庁 石島一郎 次長

森田一行 木材貿易対策室 室長

齋藤伸朗 木材利用課 調査官

本間卓也 木材利用課 技術専門官

3.インドネシア

ハリ ブディ プラストヨ

林業省 林業生産管理総局 林業賦課金・林産物流通局

林産物流通課長

トフィック アリミ

インドネシア・エコラベル協会(LEI)理事長

アラン プルバウィヤトナ

インドネシア・エコラベル協会(LEI)認証課長

テトラ ヤヌアリアディ

在日インドネシア共和国大使館 林業部長

アンドリ スマルヤディ

在日インドネシア共和国大使館 林業部

4.事務局 根橋達三 社団法人日本森林技術協会 理事長

本山芳裕 同上 理事

鈴木康之 同上 主任研究員

久納泰光 同上 主任技師

Ⅴ 議事要旨

V-1 挨拶

1. 林野庁石島次長

違法伐採は重要な問題であり、インドネシア側と協力して行なっている当事業は違法伐採対策の

柱に位置づけられる。第 5 回検討委員会が実り多い審議になることを期待する。

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2. 事務局根橋理事長

現地実証調査を報告するとともに試験ツールの実演を行なった後、林業省が開発中のオンライン

木材流通事務情報システムの説明を行う予定である。その後、来年に向けた方針を確認したい。

3. 在日インドネシア共和国大使館テトラ林業部長

この会議に参加する機会を得たことは光栄である。当事業は重要であり、有益なものになると思

う。当事業により相互理解と協力が深まることを期待する。

4. 小林座長

お忙しい中、ご出席いただき感謝する。午後 1 時まで限られた時間の範囲で、十分な検討がされ

るようにお願いしたい。

V-2 議事 1:現地実証調査報告(事務局)

配付資料の説明に続き、パワーポイントにより実証調査について説明した。その概要は次のとおり

である。

1. 実証調査の対象範囲

2. 試験ツール・システム

3. 必要機材

4. 現場試験

5. 現場の基本動作(ラベリングと木材流通事務に必要な文書/表の作成及び読み取り)の 5 プロセス

6. 結果として、基本動作及び読み取りに応じた木材流通事務に必要な文書/表の作成を現場にて実

証したが、電源、現場での携行性、機器の耐水性に関してまだ改良の余地があること

7. バーコードの耐久性または読み取り保証の改良のための経験は、一次元バーコードに類似するこ

8. 日本で丸太及び加工材のラベリングの事例からの経験、教訓

9. 2003 年の「林産物の流通事務に関する」林業大臣決定 126 号について、2006 年 8 月の林

業大臣令 55 号により「国有林からの林産物の流通事務」に改正、10 月に当規則の変更に関す

る林業大臣令により、2007 年 1 月 1 日から施行されたこと。

10. 林業省が 2008 年 1 月から本格導入を目標とし、「オンライン木材流通事務情報システム」を開

発中であること。こうした変化にともない、機材の新規購入など追加投資が必要なことなど木材

伐採事業者の木材ラベリングの適用に対する障害が減るため、木材流通トラッキング・ツールの

普及が容易になるものと予想されること。

11. 2008 年 1 月からの丸太トラッキングの本格導入の政策目標など状況の変化への対応に向けて、

来年度の実証調査の課題としては次のような項目があること。

① 林業省の情報システムへのアクセスもできるようにプログラムの改良を行う。

② ツール・パッケージを現場で使いやすく改良する。

③ 長距離輸送において現場試験やバーコードの耐久性試験を行う。

④ 9 月上旬までには木材伐採事業者など現場サイドを交えたセミナーを開催して、当ツール・

システムの広報とコンサルテーションを行なった後、セミナーでの意見にも答えつつ、基本

マニュアルの提案をする。

V-3 小林座長総括

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1. 現地試験にあたってインドネシア側の事情に配慮する一方、専門性も生かして活動しており、成

果が期待される。

2. 懸念されていた機材の購入など導入にあたっての制約がなくなってきたおり、普及が容易になる

ことが期待される。

V-4 議事 2: 試験ツール/システムの実演(LEI)

調達機材を用いて試験ツールについて説明した。その概要は次のとおりである。

1. ハンディターミナル型バーコード・リーダによる入力(2006 年 IWM 社を想定、4 本の丸太情報入

力済み、1 本の丸太情報[樹木番号:678、樹種:MK、材長:10.2m、元口直径:90cm、末口直径:78cm]を

新規入力)

2. 入力データをノート型パソコンに移送し、入力データを搭載する二次元バーコード付ラベルの印

3. 移送されたデータと連動して作成される木材流通事務書類のうち「丸太計測野帳」の印刷

4. カメラ機能付き携帯電話で読み取りが可能であることの説明(一部委員持参の携帯電話でラベル

内データの読み取り確認)。

5. 二次元バーコードの読み取り後、ノート型パソコンにデータを転送して、連動して作成される木

材流通事務書類のうち「丸太伐採報告書」の印刷

V-5 質疑応答:議事 1 と議事 2 について

1. 現場作業員への適用可能性について

1) (質問)現場で実際に簡単に適用できるかということを考えると、伐採現場で働いている方にも

やってもらったのか?実演しただけか?

2) (質問)現場の作業員の方がやってみて、どのくらい時間がかかったか?

上記について、以下のように事務局及びインドネシア側の補足説明があった。

① 機材類のパッケージをセッティングすることなど基本的に LEI がやって、一部の基本動作な

どは現場の方もやってみた。

② LEI がやる場合と現場作業員がやる場合では差がある。時間の計測は、次回の試験課題とし

たい。

③ 5 本離れた場所にある場合と 50 本まとまってある場合とではかかる時間が違ってくる。

(LEI)

④ 第 2 回試験地では、50 本の入力、ラベル貼り付けについて約 1 時間ぐらいであったよう

に記憶している。受け入れ企業から、基本マニュアルがあれば訓練をすればできると言わ

れた。東カリマンタンでは、林産物計測・検査技術員がデータ入力やラベルの貼り付けを

行なった。LEI とほぼ同じ時間でスムーズにやっていた。

2. 湿地での適用可能性について

1) (質問)山地と平坦な湿地の 2 箇所で作業工程は違うが、湿地でも障害はないか?

2) (質問)通常、現場では山側に丸太を積み上げるため、丸太の上に乗って作業することになるが

大丈夫か?

上記について、以下のように事務局の補足説明及び委員の意見があった。

① 湿地ではトロッコで運材するため、丸太を積み上げるのではなく、丸太を横に並べている。

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その上で作業をするのは難しくない。

② ベタに並べてマーキングして、それから丸太を積み上げている(委員)。

3. 手書きデータの必要性について

1) (質問) 入力する前に、従来のように手書きしておいてから入力するのか?ハンディターミナル

型バーコード・リーダに直接、入力するのか? 試験はどちらか?今後どうするか?

2) (意見) 手帳に手書きしておいてから入力した方が速いと思う。また、手書きのデータがあれば

入力ミスを点検するのに役立つ。

3) (質問) 今後、従来のように手書きしておいてから入力するのか?ハンディターミナル型バーコ

ード・リーダに直接、入力するのか?インドネシア側の意見は?

4) (質問) ハンディターミナル型コード・リーダに直接、入力する場合、どのようにミス(聞き間

違い、入力間違いなど)を防ぎ、これらの点検をどうするか?

5) (質問) 政府の検査官は、書類と丸太の比較検査をするのか?

6) (意見) この項目はマニュアル作りにおいて重要となる。

上記について、以下のように事務局の補足説明及びインドネシア側の意見があった。

① 試験では現行どおりに計測され丸太計測野帳が作成されているものについて、丸太のマー

キングを読み上げて、ハンディターミナル型バーコード・リーダで直接入力した。

② 今後のデータ入力方法の標準化については、皆さんのアイディアを参考にしたい。

③ 測定や計算などはミスしやすい。バーコードの作業についてはミスしにくい。ハンディタ

ーミナル型バーコード・リーダに直接、入力する方がいいと思う。そのため、バーコード

番号の入力が重要である。(LEI)

④ 入力されたデータは木材流通事務の承認・発行過程で政府の検査官により検査される。こ

のように何度も点検することになる。(林業省)

⑤ 現場では、政府の検査官が書類と丸太の比較検査をしていると思う。(林業省)

4. マニュアル作成方法について

1) (質問) どのようにしてマニュアルを作成していくか?

2) (意見) 原案を作成して、次回の委員会で提案してほしい。

3) (質問) マニュアルを検討する前に技術面で、委員から懸案事項はないか?

4) (意見) マニュアルの項目は重要であり、今後議論したい。

上記について、以下のように事務局の補足説明があった。

① これから LEI と議論したい。

② 来年度の実証にあたって、利用パターンを予想し、生じるだろうトラブルを予想して、マ

ニュアルの構成を検討することになる。

5. ラベルの破損・バーコードの耐久性について

1) (質問) 破損したラベルは、どのような輸送で、どのようにして起こったか?

2) (質問) ラベルの破損はよく起こるのか?

3) (質問) 今度工場までやる場合にどうなるか?

4) (質問) 雨と水につかっても、バーコードは読み取れるか?

上記について、以下のように事務局及びインドネシア側の補足説明、委員の意見があった。

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① 第 1 回試験地では、ローダーとトレーラーを使っているため起こったと思う。(LEI)

② 第 1 回試験地での破損率は 25 本の丸太中 1 本である。(LEI)

③ 第 2 回試験地では、ローダーを使っていないが、50 本の丸太中 1 本ラベルの破損が認め

られた。第 2 回試験地で見られたラベルの破損は、現場作業員が故意に取り去ったものと

推測している。(LEI)

④ 今回、工場貯木場まで試験している。林内貯木場や工場貯木場でローダーを使用する箇所

が多く、ラベルの破損が生じやすいと推測される。

⑤ ローダーを利用しても、木口があたる確率は小さいと思う。さらに二次元バーコードを利

用するし、両木口に各々1 枚ラベルをつければ、大丈夫だと思う(委員)。

⑥ 今回も、工場貯木場まで試験している。耐水性などバーコードの耐久性についての心配に

答えるため、次年度耐久性試験を行ないたいと思う。

⑦ 第 1 年度に事務局西尾氏が国内でマレーシアからの輸入材の事例調査をしている。その際

のラベルは、ほとんど読めるものであった。その他の例からも、大丈夫だと思う。(委員)

6. 林産物取扱法の改定について

1) (質問)人工林からの丸太も含むか?なぜ、林業省の極印は廃止になったのか?小径木の定義、

直径 30cm は今後も変わらないか?

上記について、以下のようにインドネシア側の補足説明があった。

① 人工林も含む。極印は誤用が多く、合法性の証明を保証できない。合法的な産地を証明して

いくことが重要で、現在、バーコード・システムなどを検討している。小径木の定義につい

てはロイヤリティなどの料率表と関連しており、料率表が改定になれば、小径木の定義も改

定される可能性もある。(林業省)

7. ポテンシャル・ユーザーについて

1) (質問)インドネシアで、バーコード・システムなどを適用していかなければいかない対象は

いくつぐらいあるか?どのようにイメージすればよいか?

2) (意見)次の議事でも、いっしょに議論できればいいと思う。

上記について、以下のようにインドネシア側の意見があった。

① システムが重要である。次に報告する情報システムと現場のバーコード・システムを接続

することが重要である。(林業省)

V-6 議事 3: 林業省オンライン木材流通事務情報システムの概要(林業省)

パワーポイントにより、林業省が開発中の木材流通事務情報システムについて説明した。その概要は

次のとおりである。

1. 情報システムの開発開始理由:インドネシアでは林産物のフローを政府が追跡するのは難しい

ことなど

2. 法規制の改定状況:現在、国有林産林産物取扱法(P.55)以外に、森林資源税や再造林基金の

改定も計画

3. インドネシアの国有林からの木材のフローとクリティカル・ポイント、木材流通事務手続きの

概要:政府検査官はバーコード・リーダを所持する計画

4. 合法丸太証明書の流れ

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5. データベースの利用:

① バーコードは立木調査時に立木に装着する。

② データは、データベースに記録される必要がある。

③ 各木材流通事務のプロセスでデータベースと比較参照検査して証明していく仕組みである。

④ 納税額の決定にも使用する。

⑤ 伐採報告書の発行前でまずバーコードの読取り検査、データがデータベースで有効か確認す

る。

⑥ 丸太一覧表を申請して、バーコードなど丸太を検査してから、合法丸太証明書を発行する。

これで合法丸太となる。

⑦ 合法丸太証明書と丸太が輸送される。輸送先に着いたら、合法丸太証明書と丸太が同じかデ

ータベースに照会して公式検査する。その先でも、同様である。

6. システムの運用

① サーバ(Lintas Alta)をジャカルタの林業省本館に置く。

② Web サイトを通じて、県、州、中央政府、ステークホルダーはだれでもアクセスできる。

③ 県レベルの林業局が木材輸送のフローを追跡することができる。州レベルの林業局でも同様

である。このシステムにより、書類に頼らずに確認することができる。

V-7 質疑応答:議事 3 について

1. データベースの運用について

1) (質問)データベースはジャカルタにあるのか?検査要員はかなりの人数になるが、経済的な

負担が大きいのでは?

2) (質問)新規雇用は必要ないか?

3) (質問)このような大きなデータベースをどのように利用していくのか?

4) (質問)システムは既に運用されているのか?

上記について、以下のようにインドネシア側の補足説明があった。

① 一から開発すると費用がかかるが、システム開発に着手しており、今後、機材と訓練につ

いては費用がかかる。インドネシアに 300 余りの県、33 州について、段階をふんで展開

していく。(林業省)

② 現在、現場に木材流通事務書類の承認・発行職員などが配置されており、彼らが検査して

いくため、新たに雇用する必要はない。人力でやっていたところに、技術を適用しただけ

である。(林業省)

③ 検査職員が何度も整合性を確認するために利用する。整合性がなければ、自動的に認識で

きる。(林業省)

④ 小規模で運用されている。木材伐採事業者の規模により、異なる。一次元バーコードを使

用している。(林業省)

2. BRIK の保証書類について

1) (意見)今までやっている手続きをコンピュータ化することで信頼性を高める。さらにステー

クホルダーがだれでも見えるようにすることは興味深い。

2) (質問)BRIK も工場側のデータを収集しているが、データベース・システムの仕組みが見えな

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い。BRIK のデータベース・システムも関連させて、さらにステークホルダーがだれでも見

えるようにしていくか?

3) (意見)CoC によりインドネシアの合法性の信頼性が高まる。丸太トレーサビリティのデータ

透明性が林業省の木材流通事務情報システムで促進されている。BRIK も同様にした方がよ

い。

4) (質問)いつ、第 3 者による合法性監査・認証制度ができるのか?

5) (質問)将来は、BRIK のシステムと合体する可能性があるのか?

6) (質問)以前は、まず丸太の SKSHH を発行し、加工後、加工品の SKSHH を発行し、これが

BRIK の保証書類の根拠となっていた。輸出書類との整合性すなわち BRIK の保証書類との

整合性が重要であると思う。今回、SKSHH が SKSKB となって丸太の合法性証明書類とな

ったが、続いて加工品についても合法性証明書類があるのか?

上記について、以下のようにインドネシア側の補足説明があった。

① BRIK は保証のために独占的にやっている。加工品である。(林業省)

② BRIK も同様にした方がよいと思う。小規模にやって、展開するのがよい。(林業省)

③ 木材合法性基準の標準化にかかる全国ステアリング・コミィティで議論されていることに、

第三者による合法性監査・認証制度がある。政府が合法と認証したものについて、ステーク

ホルダーがモニタリングしていくことは重要である。(LEI)

④ いつできるか、わからない。一つのオプションとして議論されている。新しい決定書がでる

までわからない。(LEI)

⑤ 大臣令は政令に準じなければならない。P55 が改定された大臣令である。(林業省)

⑥ BRIK も P55 に準じなければならない。(林業省)

⑦ SKSHH は一般用語となった。政府による合法性証明書類はある。証明は公務員が行なう。

伐採計画、伐採、計測、森林資源税と再造林基金の納入などが合法的に行なわれて条件が満

たされると、国有財産から私有財産となる。 初の輸送については、公務員が合法性証明書

類を発行している。加工品については、私有財産であるため、企業が発行していくことにな

る。合法性証明は原材料によることになる。原材料が合法であれば、加工品も合法であると

言える。(林業省)

3. 木材ラベリング方式の採用可能性について

1) (質問)バーコードなど木材ラベリングの開発・実証事例が他にあるか?

2) (質問)TFT 方式は実用化されていないか?

3) (質問)林業省は、二次元バーコードを使ったのか?

4) (質問)林業省の一次元バーコードとどう整合していくのか?

5) (質問)方式の選定は企業者側に委ねられているのか?

6) (質問)だれが方式を決定するのか?企業は林業省が指定した 1 方式に従うのか、企業それぞ

れか?

7) (質問)一次元バーコードと二次元バーコードなど各社ばらばらで、政府の情報システムを利

用していくことは難しいのでは?

8) (質問) 現在、林業省は一次元バーコードを使った適用試験をしているが、容易に二次元バ

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ーコードの方式に変わるのか?

9) (意見)林業省に採用して使ってもらうのがいい。二次元バーコードがいいということを理解

してほしい。もちろん、インドネシア側の判断であるが、使ってもらうために開発してきた

のであるから、ぜひ検討してほしい。

10) (質問)林業省のシステムが適用されるのが 2008 年 1 月か?いつが、ツール決定の 終期限

か?

上記について、以下のように事務局の補足説明、インドネシア側の意見があった。

① アメリカの NGO である TNC とインドネシアの木材伐採事業者である Sumalindo 社が一

次元バーコードを利用した試験、その後、Sumalindo 社は独自で改良しているという情報

がある。これ以外に、NGO の TFT(Tropical Forest Trust)が Trac Elite を推薦している

ということを聞いている。

② 以前、メール宣伝が多かった。Daisy 社と組んでいた時である。(林業省)

③ 8 社の適用試験でも独自の一次元バーコードを使って試験した。(林業省)

④ 我々の理解では、2008 年 1 月までにトラッキングを本格化することが林業省の政策目標で

ある。その際の木材ラベリング方式は、TNC-Sumalindo 方式でも TFT-Trac Elite 方式で

も我々の方式でもいい、なければ林業省が薦める単純な一次元バーコードを使う。昨年度予

算の適用試験対象の8社については、一次元バーコード関連の機材を買わなければならない。

二次元バーコードの適用にあたっても、一次元バーコードの機材と同じであり、普及する可

能性は残されている。今年度予算の適用試験対象及び残りについては、今年の 12 月までに

準備するわけで、二次元バーコードが普及する可能性はある。

⑤ まだ評価中で、どの方式を採用するか決定していない。我々は、一次元バーコードと二次元

バーコードのうち、どちらかいい方を選ばなければならない。うまく行けば、JAFTA 方式

が選定されることもある。(林業省)

⑥ まだ検討中である。トライ・アンド・エラーである。林業省が決定し、木材伐採事業者は従

わなければならない。(林業省)

⑦ 終的には林業省が決定し、決定したら、従わなければならない。(林業省)

⑧ 企業が選定できるのか、どのラベリング方式に指定するのか私には権限がない。(林業省)

⑨ 長所・短所を明らかにして、業界に説明して木材伐採事業者が納得しないと普及できない。

(林業省)

⑩ 技術的にはバーコード印刷については、新方式の方がよいのではないか。(LEI)

⑪ ハリー氏のプレゼンにあるように、現地で書類の情報と丸太の点検のためにバーコードを利

用していく。一次元バーコードのため、データベースにアクセスする必要があるだけで、二

次元バーコードだからデータベースにアクセスすることなく現地で書類の情報と丸太の点

検ができる。林業省情報システムを使って書類の整合性を時点的に確認していくことにおい

て、バーコードの違いは、林業省の情報システムに接続さえできれば、問題ではない。その

ために、次年度、林業省の情報システムに接続しやすいように、データ転送様式などの改良

を行ない、接続試験もしてみたいと思う。トラッキングのツールの違いは問題ではない。林

業省の指定を得る、業界の理解を得るというのは普及過程のことである。

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⑫ 検討してよければ、採用したい。上司にもこうした旨を報告したい。(林業省)

⑬ 林業大臣の政策としては、2008 年 1 月から開始したい。今年、適用試験を拡大してからと

なる。(林業省)

V-8 議事 4: 今後の方針について(事務局)

配付資料 No.3 の巻末にある目次案の説明に続き、配付資料 No.1 の 7 頁の課題をもとに、本日の

議論、林業省の情報を加えて次年度への課題としてまとめていくことを説明した。

1) (意見)マニュアルをどのように作成するかが重要である。マニュアル案をまず作成して現場に提

供して利用してみて、何度も改定してユーザー・フレンドリーとなるような方法がよい。

2) (質問)セミナーをやってからマニュアルを作成するのか?

3) (質問)次回の検討委員会はいつごろか?マニュアルは必要で、早く作った方がよい。

4) (意見)セミナーの開催以外は、題目だけで実行スケジュールが明確でない。どのようにしてマニ

ュアルを作成していくのか?など実現可能な、現実的な次年度の活動の提案がほしい。

5) (質問)インドネシア側の要望などあるか?

上記について、以下のように事務局の補足説明、インドネシア側の意見があった。

① 当初は、セミナーで業界の意見などを聞いてから、マニュアルを作ることを想定していた。皆

さんの意見も考慮すると、まずたたき台を作成してから、セミナーを行なうことになる。また、

マニュアルの改訂のための試験も必要となる。こうした改訂をへて 終案を提案していく方が

よいことになる。今年度はマニュアル作成方法について検討し、マニュアル案のたたき台につ

いては、次回の検討委員会で検討していただくことになる。

② 次回の検討委員会は、5 月末か 6 月始めになるだろう。

③ スケジュール案は作成してある。現地試験はセミナー前に長距離輸送で行なう。また、同時併

行で、耐久性試験も行なう。その前に、プログラム・ツールの改良を行なっておく。セミナー

前までにマニュアルの骨格案を作成していきたい。

④ 現在の問題は、緊急予算である。県・州レベルの政府機関に必要な機材の整備が急がれる。日

本の無償供与などあれば、よろしくお願いしたい。(林業省)

⑤ 現在開発中の二次元バーコードを活用したシステムは、いいものになると思う。(LEI)

⑥ 次年度の事業から公募(企画競争)になるため、3年度の具体的計画の事務局案は、報告書で

提案した後、次年度の事業実施者により次回の検討委員会で検討していくになる。

V-9 閉会挨拶:事務局(根橋理事長)