業績管理と 管理者教育 目標管理 -...

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業績管理と 目標管理 管理者教育 管理者に求められる2つの管理能力 1.高まる管理者による役割遂行の重要性 2.管理者に求められる責務 部門の成績を把握する「業績管理」 1.効果的な業績管理のためのステップ 2.業績管理体制の構築 3.損益分岐点の考え方を活用した業績管理 4.業績改善のための具体策 個人の成績を把握する「目標管理」 1.ドラッガーにより提唱された目標管理 2.目標管理導入で生まれる5つのメリット 3.目標管理実行のための3つのプロセス 目標管理をうまく活用できないときの修正方法 1.目標管理制度の見直し 2.目標管理の失敗と改善方法の具体例

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Page 1: 業績管理と 管理者教育 目標管理 - bizup.jp向ㄥへの善循環をㆺり出すことがポイントとなります。これが、業績管理です。 しかし、業績管理の場である「㆟議」が単なるㅖ算と実績の差異確認の場になる場合も

業績管理と目標管理

管理者教育

Ⅰ 管理者に求められる2つの管理能力1.高まる管理者による役割遂行の重要性

2.管理者に求められる責務

Ⅱ 部門の成績を把握する「業績管理」1.効果的な業績管理のためのステップ

2.業績管理体制の構築

3.損益分岐点の考え方を活用した業績管理

4.業績改善のための具体策

Ⅲ 個人の成績を把握する「目標管理」1.ドラッガーにより提唱された目標管理

2.目標管理導入で生まれる5つのメリット

3.目標管理実行のための3つのプロセス

Ⅳ 目標管理をうまく活用できないときの修正方法1.目標管理制度の見直し

2.目標管理の失敗と改善方法の具体例

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管理者教育 業績管理と目標管理

現在の日本は以前のような経済成長が見込めず、他社との差別化を明確に打ち出さなけ

れば、市場での競争で生き残ることができない時代に入ってしまっています。

その差別化を生み出す源泉は人材力です。そして、経営陣が打ち出す基本方針や戦略を消

化し、具体的な戦術に展開して組織内に浸透させるのが管理者の役割です。

このような理由で、管理者の役割遂行の重要性が非常に高まっているといえます。

管理者の職務とは「管理者という職位に与えられた権限をもとに、組織あるいはチーム

を通して、企業目標を達成するための活動を行うこと」と定義されます。

管理者に求められる経営管理という役割を具体化すると、次のようになります。

■管理者の三大責務

(1)部門業績目標達成の責任

①上席者は常に数値目標の達成を意識すること

②業務品質向上と業績は同時に向上させなくては意味がない

③品質を理由に数値目標から逃げようとしてはいけない

(2)業務管理の責任

①ヒトの組み合わせによる効率化を図る

②納期管理のため進捗チェックと適切な軌道修正指示を出す

③品質管理のためのチェック体制を整備する

(3)部下の育成

①基本はしつけから始まる

②あいさつ、4S、報・連・相は上席者が率先垂範する

③仕事力=やる気×能力

④部下のやる気を高めるにはコミュニケーション力が大切

⑤部下の能力を高めるためには、自分自身の能力向上が必要

管理者は、部下と会社という相反しがちな2つの立場に目を配りながら、職務を遂行し

ていかなくてはなりません。

1 高まる管理者による役割遂行の重要性

管理者に求められる2つの管理能力 Ⅰ

2 管理者に求められる責務

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管理者教育 業績管理と目標管理

管理者の3大責務のうち、最も重要な役割が「業績目標達成責任」です。

企業は適正な利益を挙げ続けなければ、存続していくことができません。

そのために、経営者、経営幹部は戦略を立案し、中期ビジョン(中期経営計画)を掲げ

ます。

管理者は、その戦略に基づき、年度の部門売上、部門利益の目標を設定します。しかし、

毎年目標は設定しているものの、未達成が当たり前になっているという企業は決して少な

くありません。

これは、目標設定から先のサイクルをうまく回せている管理者が少ないためです。

このサイクルをうまく回すために必要となってくるのが、部門目標を個人目標へと落とし

込んでいく作業です。個人目標の総和によって部門目標が達成されるよう、目標の連鎖を

作り上げることが大切なのです。

そこで、次章においてまず部門全体の「業績管理」の行ない方、そして第3章および第

4章において部門を構成する個人が「目標管理」を行なう手法を見ていくことにしましょ

う。

経営者側の

立場で活動する

組織・チーム

として成果を出す

企業全体の成果創出を目指す行動

部門最適ではなく

企業の全体最適を考える

部下の活動への関与

自分のことだけでなく

部下のことも考える

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管理者教育 業績管理と目標管理

昨今では、社員全員の創意工夫、改善意欲、業績向上への執着心を醸成し、全メンバー

が経営参画意識を持つことが重要だと叫ばれています。

そのためには、年度経営計画の進捗チェック、月次計画の進捗チェック、さらには、も

っと細かい「小さな仮説」→「実践」→「検証」→「軌道修正」のサイクルを回し、業績

向上への善循環を作り出すことがポイントとなります。これが、業績管理です。

しかし、業績管理の場である「会議」が単なる予算と実績の差異確認の場になる場合も

少なくありません。前月の実績を確定するのに時間がかかり、月末近くになってようやく

前月の検討会が開かれるのでは、業績管理の効果は半減してしまいます。

そのため、以下のようなステップを踏み業績管理の質を高めていかなければなりません。

部門の成績を把握する「業績管理」 Ⅱ

1 効果的な業績管理のためのステップ

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管理者教育 業績管理と目標管理

業績管理体制構築のためにまずやらなければならないことは、業績管理指標を設定する

ことです。つまり業績責任を客観的に判断できる定量数値を何にするのかということです。

指標は下記の通り2つに大別できます。

企業活動の結果は利益とキャッシュによって捉えられます。よって

これらは「結果指標」であり、これらの結果を生み出した要因を分

析し、対策を打たなければなりません。

経常利益を上げている企業では、「結果指標」だけでなく、「プロセ

ス指標(要因指標の目標を達成するための活動を明確にしたもの)」

も重点的に管理し、常に小さな改善、創意工夫を行っています。

新規顧客拡大では、今年度増客による増収をどれだけ見込むのか、

その増収部分を商品やサービス単価で割ると何件の増客が必要なの

かがわかります。見込み客のうち、自社の顧客となる確率が 10%

であれば、20 件の増客を達成するためには 200 件の見込み客の確

保が必要となります。そのためには何件の新規アポイント数が必要

となるか、といったものがプロセス指標となります。

また、既存顧客に対しては、従来どおり取引を継続できたかという

点がポイントです。既存顧客を守るために顧客の取り巻く環境を把

握し、ニーズを的確に捉え、ライバル企業の動きを察知し、課題を

解決する商品・サービスの提案を行ない、顧客シェアを高め、顧客

を失う原因となるクレームの減少を図ります。

2 業績管理体制の構築

結果指標

プロセス指標

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管理者教育 業績管理と目標管理

前項で見た「結果指標」を確認するためには、目標数値がどうやって算出されるかを理

解しておく必要があります。多くの場合において、売上目標は損益分岐点の考え方を利用

して算出されています。

損益分岐点とは、収益の額と費用の額が等しくなる点、すなわち利益も損失も生じてい

ない売上高、いわゆる採算点をいいます。また、売上金額だけでなく、工場の操業度や販

売個数などによって表すこともできます。損益分岐点売上高は、以下のように固定費を限

界利益率で除して求めます。

損益分岐点売上高 =

固定費

限界利益率

昨年度または計画している売上高が、損益分岐点売上高と比較してどの位置にあるのか

を示すのが損益分岐点比率であり、100%から損益分岐点比率を差し引いたものが経営安

全度です。これらは、以下の算式で表されます。

損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際売上高(%)

経営安全度 = (売上高 - 損益分岐点売上高) ÷ 実際売上高(%)

損益分岐点比率は低いほど、現状または想定している売上高が損益分岐点売上高を上回

っていることを意味し、損益構造上望ましいといえます。

経営安全度については、高ければ現状または想定している売上高が損益分岐点売上高に

3 損益分岐点の考え方を活用した業績管理

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管理者教育 業績管理と目標管理

対して余裕を持っていることを表しています。

損益分岐点を求める算式により、損益分岐点を図表化することができます。

この図表により損益分岐点を可視化できるばかりだけでなく、利益を増加させる方法を

コスト面からイメージすることができます。

損益分岐点の考え方を活用すると、目標とする利益を実現するために必要な売上高、す

なわち「必要売上高」を算出することができます。

損益分岐点売上高の計算式の分子に目標利益を加えることによって、必要売上高を求め

る計算式に変わります。

必要売上高 =

目標経常利益 + 固定費

限界利益率

売上目標と実際の達成額に乖離がある場合には、業績向上の方法を考えなければなりま

せん。業績を向上させるには、利益、売上を確保し、債権回収、在庫回転を管理すること

が必要不可欠です。

利益を確保するには売上高の確保、経費の削減が考えられます。その中で固定費は戦略

的に拡大させる費用、圧縮可能な費用、適正労働分配率でコントロールする総額人件費に

分けて考え、一律に削減しないように留意します。「ムダ」「ロス」につながるものは削減

4 業績改善のための具体策

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管理者教育 業績管理と目標管理

し、将来への投資と捉えられるものは積極的に拡大するといったメリハリをつけた管理が

ポイントです。管理者は、常にこの視点を持ち目標達成のために何をすべきか考えます。

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管理者教育 業績管理と目標管理

部門全体の収益など、業績内容を把握するのが業績管理ならば、部門を構成する構成員

の個々の目標や成績内容を把握するのが目標管理です。

「目標管理」とは、組織目標と個人目標を統合し、各従業員に自主管理させていくこと

によって、組織目標を達成するマネジメントの手法です。ドラッガーによって 1950 年代

初頭に考案され、「MBO(Management By Objectives)」とも呼ばれています。

目標には組織目標と個人目標とがありますが、会社組織は人の集まりであり、会社組織

自体が経営計画を達成するために動くことはできません。実際に動くのは、その組織に属

する社員一人ひとりです。そのため、経営計画に連動した「目標管理」という仕組みが大

変重要になります。

目標管理制度は、企業目標を定めた後に、従業員全員がその企業目標を実現するのに役

立つような個人目標を立てることから始まります。

立てた目標は、「目標管理カード」といった紙などに、「目標の具体的な内容」「スケジュ

ール感」について言葉にして書き出します。そして期末には、その目標を達成できたかど

うか、従業員自身で評価を行います。

管理者は、企業目標を従業員一人ひとりに伝え、適切な目標を立てさえること、進捗状

況を把握すること、期末の面談で正しい評価を行うことなどといった作業を行います。

目標管理を取り入れることで、以下のようなメリットを望むことができます。

■目標管理導入のメリット

①社員の意欲増進

●人間は自己実現の欲求が顕在化したとき、仕事に積極的になる。

●目標管理で感じる自己実現と承認がやる気へと繋がる。

②社員の能力開発

●目標が定まると「工夫」するようになる。

●会社の求める能力に沿った計画的な人材育成が可能になる。

③管理者層の活性化

●管理者自身が行っているマネジメント業務の一部を部下に任せることができる。

●マネジメントの流れが「仕組み」となっているため管理能力がさほど要求されない。

個人の成績を把握する「目標管理」 Ⅲ

1 ドラッガーにより提唱された目標管理

2 目標管理導入で生まれる5つのメリット

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管理者教育 業績管理と目標管理

④経営計画の行動化

●上層部だけのものになりがちな経営計画を末端の社員まで行き届かせられる。

⑤納得できる人事考課の実践

●人事考課制度に直結させやすく、社員から不満が出にくい。

目標管理とは、単なる過去の業績を評価するための制度ではありません。事業を通した

組織活力の向上、仕事を通した人材力の向上を実現させる経営手法です。

「今やるべきことに徹底的に取り組む」目標管理を機能させることで、人材力とチーム

活力を高めることができます。

ここでは、目標管理の運用プロセスを見ていき、パワーアップさせるヒントを紹介しま

す。

目標管理は、以下の通り「計画(Plan)」「行動(Do)」「評価(See)」のサイクルで回

ります。

3 目標管理実行のための3つのプロセス

部下

参画

自己統制

自己評価

動機づけ

プロセス

P:目標設定

D:目標遂行

S:成果評価

意思疎通

管理者

要望

権限移譲

管理者評価

統率力発揮

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管理者教育 業績管理と目標管理

上記のように、行動者たる部下とそれを管理する上司では、それぞれのシーンにおいて

しなければならないことが異なります。

管理者の仕事を具体的に示すと、以下の通りになります。

①部門の目標をたてる

部下の参画を得て自部門の目標をたてる

②組織する

目標を実現するために部下を組織化し、その必要な配置を決める

③部下を動機付けする

目標を実現する過程では、普段より部下と意見を交わし、そして部下に情報を与え、

また助言や助力等をする

④業績を評価する

自ら部門全体の成果を評価し、また部下の業績を評価する

⑤部下を育成する

上記の①~⑤の過程の中において、部下自らが成長しようとする環境を整え、また正

しく導く

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管理者教育 業績管理と目標管理

目標管理制度というと、「社員から望ましいチャレンジ行動を引き出すための仕組み」と

して活用を図るなど、導入当初は前向きな要素が多いのですが、運用を経るうちに、少し

ずつそういった良い要素が減っていき、ついには業績を査定するための仕組みになってし

まった——というのは多くの企業で見られる現象です。

目標管理制度の導入と、適切な運用によって、社員は、自己の能力開発を積極的に図っ

ていくことを促され、上司はマネジメント能力の伸張を促されるといった育成面が重要な

要素となっています。

昨今、行き過ぎた成果主義が弊害をもたらした事で、目標管理制度自体も大きく見直し

が迫られています。既に目標管理を導入している企業の多くも、最終的なアウトプットで

ある業績だけではなく、能力面やプロセス面にも、改めて着目した制度への移行を進めて

いるケースが増加しています。

■目標管理制度を取り巻く環境に大きな変化が起こっている(成果主義の軌道修正)

具体例

●売上ノルマから顧客満足へ:某化粧品会社

●評価の尺度に「後輩育成」を導入:某製薬会社

●自部門への貢献度も評価の対象に:某コンピュータメーカー

●定量的要素より定性的プロセスを重視:某総合商社

目標管理をうまく活用できないときの修正方法 Ⅳ

1 目標管理制度の見直し

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管理者教育 業績管理と目標管理

■目標管理が人材育成につながらない理由

①目標以外の仕事が見えなくなる

②目標で仕事の全てをカバーできない

③部門業績への関心が薄い

④維持目標が上がってくる

⑤ただのノルマ管理となってしまう、逆に達成しやすい目標設定ばかりになってしまう

目標は特定化、焦点化されておりクローズアップされよく見えます。

一方、目標以外の仕事は関心が薄れ「見えない」ようになります。

広い視野で本人の仕事が見渡せ、かつ漏れなく把握できるようにす

るには、一般的に行われている人事評価の「正確度」「迅速度」「チ

ームワーク」といった評価項目で把握します。ただし、評価項目で

把握しようとすると、評価者が評価をして、それで終わりというこ

とになりがちです。これら評価項目についても目標管理と同じよう

に「やることの確認」「やっていることの確認」「やったことの確認」

のサイクルを回す必要があります。

仕事を以下の3つの特性に分類しながら、それぞれの特性が受け持

つ得意分野で業績を漏れなく把握してギャップを埋めていきます。

①「変化」「前進」「改善」「改革」など、数値化できる業務

②業務部門の業績に関係してくる業務

③定常・基本業務・必須業務

2 目標管理の失敗と改善方法の具体例

目標以外の

仕事が

見えなくなる

目標で仕事の

全てをカバー

できない

目標以外の仕事も実際にはこなさなければならないにも関わら

ず、目標を設定することにより、仕事の特定の部分が焦点化さ

れる。焦点化された目標以外の仕事がぼやけたり、見えなくな

ったりする。

「仕事の領域」「評価の領域」「目標管理の領域」にギャップがあ

り、目標管理の領域で本人の仕事を全てカバーすることができ

ない。また、目標管理だけで本人の成果(業績)を把握すること

ができない。

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管理者教育 業績管理と目標管理

管理職は部門業績責任者としての役割が期待され、一般社員は部門

構成員として部門業績に貢献することが期待されます。従ってそれ

ぞれの部門業績に対する役割に応じて個人業績とします。

下図は管理者、一般社員の業績に占める部門業績の割合を表したも

のです。管理者は部門業績責任者ですから「部門目標」のウエイト

は高くなります。しかし「部門目標」が 100%ではありません。こ

れに対しメンバーは、個人にかかわる項目の比重が高くなります。

ただし、部門構成員として部門業績に貢献することが期待されるの

で、「部門目標」が 0%にはなりません。

■管理職、一般社員の業績把握、部門目標の占める位置

部門業績へ

関心が薄い

目標管理における「会社目標→部門目標→個人目標」の連鎖

が重視されず、目標に対する関心が個人目標ばかりに向けら

れ、部門に対する関心が希薄になる。

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管理者教育 業績管理と目標管理

目標は、現在より一段とレベルを上げるもの、問題を解決するもの

であるべきです。つまり「変化」「前進」「改善」「改革」といったも

のが目標といえます。維持目標を排し、チャレンジ目標を設定する

ためには、次の施策が必要です。

①成果把握の仕組みを変える

「変化」「前進」「改善」「改革」のような特定業務、売上・利益等

数値化できる業務に特化させ、定常・基本業務、必須業務は慎重

に選定された業績評価項目で評価する仕組みにします。下位等級

では個人目標の比重はそれほど高くなく、個別面評価項目のウエ

イトの方が大きくなるように設定します。

②「達成指向性」の難易度評価を入れる

個別面の評価項目の中に「達成志向性」があります。これはチャ

レンジングな目標を設定したかどうかを評価する項目です。この

評価項目を入れることによりチャレンジングな目標設定を促しま

す。また個人目標の評価の中に難易度評価を入れることも考えら

れます。

③目標設定時の指導強化

目標の設定時に上司は部下の個人目標に維持目標が上がっていた

ら「このような目標をいつまでやっているのだ、早く卒業するよ

うに」と指導します。

現状維持目標が

上がってくる

自分の仕事を全部評価して欲しいと考え、「いつもやっている

通常業務をいつも通りにしっかりとやります」といった維持目標

をあげてくる。

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管理者教育 業績管理と目標管理

この問題は管理職の意識、目標管理の運用によって改善できます。

まず「やることの確認」を一番重要なものと位置づけることです。

そして「やることの確認」での議論や話し合いを、合意を得るまで

上司・部下間で徹底的に行います。

①部門目標策定への参画とメンバーへの分担・調整

会社の目標、上位部門目標に基づいて当該部門の目標を設定しま

す。この段階がノルマ的であるのは会社全体の目標設定の考え方

とも関係し、一管理職の努力では限界があります。そこで、上位

部門長とよく相談して、会社の目標設定の考え方を変えるよう努

力していくことが必要です。

部門目標の設定は、部門メンバーが参画して行うようにします。

皆で徹底的に話し合って部門目標を設定することと、部門メンバ

ーに部門目標への所有感を持ってもらうためです。

部門目標が設定されたら、部門目標分担・調整のミーティングを

開き、部門目標分担マトリックス表などで分担を決めます。その

場合、押し付けにならないように留意します。

②個人目標の設定

上司は、部門の方針や目標、部下に期待するところをしっかり伝

えます。部下はそれに基づいて自分の意思で個人目標を設定しま

す。

③目標設定時の上司からの指導強化

部下の個人目標を承認するのは管理者の役割です。不足している

ところ、物足りないところはキチンと指摘し、部下が心底から納

得するまで徹底的に話し合うことが必要です。

「ノルマ管理」

「達成しやすい目

標の設定」

個人目標の積み重ねで部門目標を達成するという、「目標の連

鎖」を意識しすぎることで、目標管理がノルマ管理になってしま

う。また、逆に自己管理を尊重しすぎ、達成しやすい目標ばか

り設定してしまう。