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物理学実験指導書 2019年度

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物理学実験指導書

2019年度

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物理学実験実施予定表

各実験テーマの実施予定日

No. 月日 実験

(3F基礎物理学実験室)

シミュレーション

(2F情報処理演習室)

開始

ページ 担当者

1 4月 9日 受講人数確認、AB 班分け作業(3F基礎物理学実験室)

岡沼

2 16日 全体ガイダンス(実験指導書配付。実験手順、レポート作

成方法説明など。L4 教室) 1

3 23日 電子回路(A) 電子回路(B)

4

4 5月 7日 電子回路(B) 電子回路(A)

5 14日 力学 A(A) 力学 A(B)

12 石原

馬場 6 21日 力学 A(B) 力学 A(A)

7 28日 熱(A) 熱(B)

21 藤本

8 6月 4日 熱(B) 熱(A)

9 11日 電磁気(A) 電磁気(B)

25 岡沼

10 18日 電磁気(B) 電磁気(A)

11 25日 波(A) 波(B)

33 山口

12 7月 2日 波(B) 波(A)

13 9日 放射線関係実験(A) 放射線関係実験(B)

※2 馬場

山口 14 23日 放射線関係実験(B) 放射線関係実験(A)

15 30日 予備日(レポート提出、掃除、再実験など)

※1 実験テーマ後の(A, B)はクラス/グループ名を示す。 ※2 当日指導書を配付する。

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物理学実験及びレポート作成に関する注意事項

1.実験の出欠確認

1.正当な理由(教務で認められた理由)で休む場合は、必ず事前に授業担当者へ連絡するこ

と。連絡なく実験を休んだ場合、再実験は認められない。また共同実験者にも必ず連絡をし

ておくこと。

2.再実験は、原則として実験最終日に行う。

3.出欠の確認は実験開始時および終了時に行う。

2.実験の準備

実験に必要な器具等は実験室に用意してあるが、得られた測定値を評価・吟味するために、次

のものを必ず用意しておくこと。

① 電卓(関数計算機能を持つもの)

② 定規

③ 専用の実験ノート(講義用ノートでも良い。紙片を禁じる。)

④ グラフ用紙(特殊メモリのグラフ用紙は、担当者が準備する。)

⑤ USBフラッシュメモリ(データ保存用、容量は500 MB以上)

3.実験室での注意事項

物理実験で危険なものは比較的少ないが、多人数が狭い場所で同時に実験を行うので、事故を

防ぎ円滑に実験を進めるために、以下の点に注意すること。

1.薬品などで汚れてもよい実験に適した服装をすること。

2.実験に関係ない物を実験室に持ち込まない、または、所定の場所に置くこと。

3.高圧コイルをはじめとして高圧の配線、あるいは電圧は低くても大電流が流れる可能性が

ある配線があるので、裸線や端子金属部分には触れないこと。

4.実験指導書に書かれている注意事項を厳守し、実験担当者の指示に従うこと。

4.実験中の注意事項

1.実験装置の接続あるいは結線が完了しても、決して電源スイッチ入れず、必ず実験担当者

の点検を受けること。

2.実験機器の電源プラグをコンセントに入れる,もしくは,はずす場合は必ず機器の電源ス

イッチがOFFになっていることを確認してから行うこと。

3.実験中に誤って実験器具類を破損したとき、また、故障が生じたときは、速やかに担当者

に報告すること。報告がないと、後で使用する人たちに多大な迷惑を掛けることになる。

4.実験が終了しても直ちに配線を解かずに結果を計算・検討し、必要があればグラフ等を描

き、結果が適正であることを確かめること。

5.実験終了時、必ず実験担当者の許可を得ること。(無断で終了し、帰宅しない。)

5.レポートの提出について

1.同一分野の実験とシミュレーション実習終了後、1通のレポートにまとめて授業担当者に

提出すること。

2.提出日は、同一分野の実験とシミュレーション実習が終了した日から1週間後とする。提

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出日に遅れたレポートは正式に提出されたレポートとは認められず、評価は零点となる。

3.病気で書けなかったとしても、締め切り日の延期を認めない。そのような事態を想定して、

早めにレポートを書くこと。ただし、何日(1週間以上)も休まざるを得ない場合は締め切

りの延期を認めることもあるので、授業担当者に相談すること。

4.提出したレポートが勘違いや計算間違いなどで不十分の場合、レポート再提出となること

がある。

5.再提出の場合は、指摘された箇所を消さずに、訂正を赤色ペンで行うこと。

6.再提出レポートの締め切り日は、授業担当者により決定される。なお、再提出レポートを

提出しない場合は、レポート未提出として扱われる。

6.実験レポートの書き方

A.体裁について

1.レポート表紙は実験とシミュレーション実習の終了時に授業担当者から配られる。必ず、

配布されたものを表紙として使用すること。(コピーまたは、自作のものは受け取らない)

2.レポート用紙、グラフ用紙は各自で用意すること。

3.レポート用紙の「左上」をステープラー(ホッチキス)で綴じること。(クリップ止めを禁

じる)

4.本文にはページ番号を記載する。(下段中央, -1- のように)

B.計算結果及び表・グラフの作成

1.図(グラフを含む)は、図の下に図番号と図の説明文(例えば、図1 ○○○○○のように)

を、また図中の余白には測定条件など必要事項を記入する。

グラフの横軸・縦軸には必ず数値と単位を書き目盛線を入れる。

2.表は、表の上に表番号と、表の説明文(例えば、表1 △△△△△のように)を入れ、測定

条件や実験結果がわかるようにしておくこと。

3.同一図面上に特性の異なる多数の曲線を描くときは、測定点を○,×,△,□等で区別する

こと。

4.図、グラフ及び表(文章を含む)を、パソコンを使用して作成しても良い。

C.レポートの内容

1.レポートの内容は、実験項目ごと概ね下記の順に記載する。

① 目的

② 理論(指導書を丸写しにしないこと)

③ 実験方法(実験図、使用機器・器具等の名称を含む)

④ 測定結果及び計算結果の表(測定値と計算値の別を明確にする)

⑤ 諸結果のグラフ(横軸・縦軸には必ず数値と単位を書き目盛線を入れる)

⑥ 課題解答及び考察(この部分が重要であり、レポートの評価を決定する)

2.実験指導書に記載されている「検討課題」について解答すること。

3.得られた実験結果が、予想された結果(あるいは理論値)と異なる場合は、その原因を考察

し記載せよ。

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メモ

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1.コンデンサの充放電特性測定

1.目的

コンデンサの充電及び放電特性を測定し、電子回路におけるコンデンサの働きを理

解する。また、積分回路・微分回路についての理解を深める。

2.コンデンサの充放電特性

(a)充電特性

図1(a)に、CR充電回路を示す。E (V)は直流電源の電圧、S1はスイッチである。VR (V)及びVC (V)は、各々R ( )及びC (F) の両端の電圧である。i (A)及びq(C)はスイッ

チが閉じられた後に流れる電流及び電荷である。いま、時刻t = 0でスイッチSを閉じ

ると、t≧ 0において次式が成り立つ。

1 ,dq E dqq idt CR R dt

(1)

この(1)式(1階線形微分方程式)を、スイッチを閉じる前に電荷q = 0であったとい

う初期条件で解くと、電荷q及び電流i は次式のように求めることができる。

1 11 exp , expEq CE t i tCR R CR

(2)

従って、VR 及びVC は(2)式より次式のように得られる。

R C1 1exp , 1 expqV i R E t V E t

CR C CR (3)

図1(b)に、(3)式のVR 及びVC の概略を示す。図中、 = CR (s)を時定数(time constant)といい、VRあるいはVCが最終値の63.2%に達する時刻で定義される。 はCR回路の

充放電特性の目安として用いられ、値が大きければVC は緩やかに増加する。

(b)放電特性

図2(a)にCR放電回路を示す。スイッチS1を閉じて十分時間がたった後にS1を開い

てスイッチS2を閉じると、コンデンサに貯まっていた電荷はC-R-S2 の経路で放電

する。いま、時刻t = 0でS1を開いてS2を閉じると、t≧ 0において次式が成り立つ。

1 0,dq dqq i

dt CR dt (4)

VR

VC

i

E

S1

+q

-q

R

C

0 =CR

VR

VC

E

t (s)

E

0.632E

(a) (b) 図1 CR充電回路と各部電圧の概略

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(4)式をt = 0でq = CEの初期条件(S1 を閉じた後十分時間が経過したため、(2)式よ

りq = CE )で解くと,電荷q及び電流i は次式のように求めることができる。

1 1exp , expEq CE t i t

CR R CR (5)

従って、VR 及びVC は(5)式より次式のように得られる。

R C1 1exp , expqV i R E t V E t

CR C CR (6)

図2(b)に、(6)式のVR 及びVC の概略を示す。時定数 = CR (s) を小さくすると、VR 及びVC は短時間にゼロに達する。

3.実験方法

[使用器具]

1.ディジタルオシロスコープ(DS-5102) 2.発振器(FG-274) 3.ブレッドボード(EIC-102B) 4.抵抗及びコンデンサ(各種)

5.USBフラッシュメモリ(各自持参)

[測定手順]

A.発振器(FG-274)の内部抵抗測定

① 図3(a)の様に発振器出力端子にDS-5102のプローブCH1端子を接続せよ。 ② ディジタルオシロ(DS-5102)及び発振器(FG-274)の電源スイッチをオン。 ③ FG-274を周波数1 kHzの方形波で、AMPLつまみを任意に設定する。 (ディジタルオシロの画面に1サイクル程度の波形を表示させる。)

④ DS-5102のCURSORSボタンを2度押して、カーソル機能を有効にする。 ⑤ FUNCTIONつまみでカーソルを波形の最大値に合わせ、CurA= の表示値を読

んで記録する。これをE0m (V)とする。 ⑥ 発振器のAMPLつまみを変化させずに、発振器出力端子に抵抗100 を接続し、

抵抗両端にDS-5102のプローブCH1端子を接続する。(図3(b)) ⑦ カーソル機能を利用して波形の最大値を読んで記録する。これをE1m (V)とする。 ⑧ 以上のE0m 及びE1m より、次式を用いて発振器の内部抵抗r ( )を求める。

0m

1m

1 100ErE

(7)

VR

VC

i

E

S1

+q

-q

R

CS2

E

-E

0

VR

VC

t (s)=CR

0.632E

(a) (b) 図2 CR放電回路と各部電圧の概略

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B.コンデンサの充放電特性測定

① 図4(a)の様に抵抗1k と Fのコンデンサを直列に繋いで発振器出力端子を

接続する。DS-5102のプローブCH1には発振器出力電圧、CH2にはコンデンサ

電圧が観測できるように接続する(CH1, CH2のグラウンドに注意) ② 抵抗の一端をブレッドボードから引き抜き、抵抗とコンデンサの接続を解く。 ③ 発振器の出力電圧を周波数1 kHzの方形波で、波高値を10 V (0-10 V)に設定する。

設定は、DS-5102のCH1(DC)を見ながら、発振器のAMPLつまみとOFFSET調整つまみ(OFFSETつまみを引くと調整可能)で行う。(図4(b)参考)なお、

方形波電圧の立ち上がり部分及び立ち下がり部分が、それぞれ図1(a)及び図2

(a)の電源部を等価的に表している。 ④ CH1に表示された電圧波形をUSBフラッシュメモリに保存する。

1) SAVE/RECALLボタンを押して、画面中にメニュー項目を表示させる。

2) Type項目からWaveform右のボタンを押して、CSVを選択する。(FUNCTIONつま

みを回して選択し、つまみを押して決定)

3) メニュー項目からExternalを選択(ボタンを押す)する。

4) ファイル編集画面が表示されたら、New Fileを選択し、File Nameを入力する。(入

力は、FUNCTIONつまみを回して選択し、つまみを押して決定する。例えば、ファ

イルネームを” source.csv”とする。)

5) メニュー項目からSaveボタンを押して保存完了。

6) 波形が静止している場合は、TRIGGERのAUTOボタンを押す。

R = 1 k C = 0.1 F

CH2

CH1

発振器

OUT

(a) (b)

図4 コンデンサの充放電特性測定

(a) (b)

図3 発振器の内部抵抗測定

1 k 0.1 F

CH2

発振器

OUT

CH1

DS-5102のCH1プローブと

FG-274のプラス端子を接続

抵抗を接続しない。

抵抗を

接続

FG-274のオフセットを調整して

0 - 10 Vの方形波電圧にする。

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⑤ 抵抗とコンデンサを接続(元の状態に戻す)し、CH1とCH2を表示させる。 ⑥ CH1及びCH2の電圧波形をUSBフラッシュメモリに保存する。保存操作の手順

は、④の1)~6)に同じ。保存ファイルネームを例えば”0.1u1kr.csv”とする。 ⑦ 抵抗Rの値を100 , 2 k 及び10 k とし、上記の⑤, ⑥を繰り返せ。保存ファ

イルネームを、例えば”0.1u100r.csv”, ”0.1u2kr.csv”及び”0.1u10kr.csv”とする。

⑧ コンデンサの値を Fとして上記①~⑦を繰り返せ。保存ファイルネームは、

例えば”0.2u100r.csv”, ”0.2u1kr.csv” , ”0.2u2kr.csv”及び”0.2u10kr.csv”とする。

⑨ コンデンサの値を Fとして上記①~⑦を繰り返せ。保存ファイルネームは、

例えば”0.47u100r.csv”, ”0.47u1kr.csv”, ”0.47u2kr.csv”及び”0.47u10kr.csv”とする。

※データチェック(以下のデータが存在することを□にチェックして確認せよ。)

□E0m, E1m □source.csv □0.1u1kr.csv □0.1u100r.csv □0.1u2kr.csv □0.1u10kr.csv □0.2u100r.csv □0.2u1kr.csv □0.2u2kr.csv □0.2u10kr.csv □0.47u100r.csv □0.47u1kr.csv □0.47u2kr.csv □0.47u10kr.csv

4.提出課題(各課題をそれぞれ1ページ以内にまとめること。)

[1] 得られたデータから発振器出力電圧E(④より)及び抵抗とコンデンサの値を変

えた場合のコンデンサ両端電圧VCのグラフを作成せよ。(図5参照) 考察1:R =2 k , C = 0.1 Fで得られた充放電特性をR =10 k で得る場合に

は、コンデンサC の値をいくらにすればよいか?

考察2:積分回路、微分回路として利用するための回路条件を考察せよ。

[2] R =1 k , C = 0.1 Fの場合におけるVCと、(3)式を用いた計算した波形(充電と

放電の開始時間に注意)を比較するグラフを作成せよ。(図6参照)

考察1:VCに関する測定結果と計算結果に差異があればその理由を考察せよ。

[3] (7)式を導け。

提出レポートは表紙と提出課題(実験[1]~[3]と計算[1]~[3])のみとすること。

目的、理論、実験方法等の記載は不要。

(E, VC: 2 V/div., 0.1 ms/div.) (VC: 2 V/div., 0.1 ms/div.)

E

CV100 1k

2k

10k

CV

測定値

------ 計算値

図5 VCの測定結果例(C=0.1uF) 図6 VCの測定値と計算値の比較例(C=0.1uF)

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2.コンデンサの充放電特性計算

1.目的

前回の実験では、コンデンサの充電特性及び放電特性を測定した。ここでは、コン

デンサの充放電回路で成り立つ微分方程式を差分方程式に変換し、表計算ソフトを利

用して近似的に解く方法について習得し、前回得た測定結果との比較を行う。

さらに、抵抗・コンデンサ・インダクタンス直列回路の電気現象(過渡現象)につ

いても近似的に解く方法を習得する。

2.差分法によるコンデンサの充放電特性計算

関数F(t)の微分または微係数は傾きを表し、次式のように定義される。

0

( ) ( ) ( )limt

dF t F t t F t

dt t

(1)

数値的に行う微分はt を有限の大きさとして比の値を計算するので、有限差分法と

よばれる。t とt +t の2点で傾きを求める(1)式のような数値微分法は前進差分法と

よばれ、次式に示すようにt -t とt との間で傾きを求める場合を後退差分法とよば

れる。 ( ) ( )F t F t t

t

(2)

ここでは、この後退差分法を用いて微分方程式の数値解を求める。

(a)充電特性

図1(a)に示すように、抵抗R ()とコンデンサC (F)で構成された回路で、スイッチ

S1を時刻t = 0で閉じると、t≧0でのVC (=q/C )について次式が成り立つ。

1,C C

C

dV dVE dqV i C

dt CR CR dt dt

(3)

(3)式を(2)式に示す後退差分方程式に変換すると、次式のように表すことができる。

( ) ( 1) ( 1) ( ) ( 1)( ) ( ) ( )

1, ,C n C n C n C n C n

C n C n n

V V E t CR V V VEV V i C

t CR CR t CR t

(4)

VC(n)はn番目のVCの値、VC(n-1)はn-1番目のVCの値、tはVC(n)とVC(n-1)の時間差である。

(4)式は古いVC(n-1)の値が判れば、新しいVC(n)の値が求められることを示している。

VR

VC

i

E

S1

+q

-q

R

C

VR

VC

i

E

S1

+q

-q

R

CS2

(a) (b) 図1 CR充電, 放電回路

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(b)放電特性

図1(b)に示す回路において、時刻t = 0でS1を開いてS2を閉じると、t≧0でのVC (=q/C )において次式が成り立つ。

10,C C

C

dV dVdqV i C

dt CR dt dt

(5)

(5)式を後退差分方程式に変換すると、次式のように表すことができる。

( ) ( 1) ( ) ( 1)( ) ( ) ( 1) ( )

10, ,C n C n C n C n

C n C n C n n

V V V VCRV V V i C

t CR t CR t

(6)

また、この場合の条件より時刻t = 0におけるVCをVC(0)とすれば、VC(0) = E である。 (c)Excelを用いた充電・放電特性計算

[充電特性](図2のExcelワークシートを参照)

後退差分法による計算値

① あらかじめワークシート内にR, C, E, t, CRの値を入力しておく。(A, B列)

(ここでは、R = 2k, C = 0.1F, E = 10 V, t = 100sとした。)

② 時刻を0からt間隔で、コピー機能を使用して入力する。(D列)

③ (4)式を参考にVC(n)を計算する。(E列)

例えば、E4のセルは、 =($B$4*$B$5+$B$7*E3)/($B$5+$B$7) ④ (4)式を参考にi (n)を計算する。(F列)

例えば、F5のセルは、 =$B$3*(E5-E4)/$B$5

⑤ D列の時刻に対するVC及びi を、次式を用いて計算する。(H, I列)

1 11 exp , expC

EV E t i t

CR R CR

(7)

[放電特性](図3のExcelワークシートを参照)

後退差分法による計算値

⑥ あらかじめワークシート内にR, C, E, t, CRの値を入力しておく。(A, B列)

(ここでは、R = 2k, C = 0.1F, E = 10 V, t = 100sとした。)

⑦ 時刻を0からt間隔で、コピー機能を使用して入力する。(D列)

⑧ 時刻t = 0におけるVC(n)の値を10 (V)とする。

⑨ (6)式を参考にVC(n)を計算する。(E列)

例えば、E6のセルは、 =$B$8*E5/($B$6+$B$8) ⑩ (6)式を参考にi (n)を計算する。(F列)

例えば、F7のセルは、 =($B$4/$B$6)*(E7-E6)

⑪ D列の時刻に対するVC及びi を、次式を用いて計算する。(H, I列)

1 1exp , expC

EV E t i t

CR R CR

(8)

図4及び図5に充放特性及び放電特性の計算結果例を示す。図中、破線はそれぞれ(7)

式及び(8)式による理論値である。

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3.コンデンサの充放電特性計算実習

上記の解説を参考に、周波数1 kHzで波高値が10 V (0-10 V)の方形波電圧(1.コ

ンデンサの充放電特性(実験)で設定した電圧)をCR回路に加えた場合のコンデン

サ両端の電圧及び回路電流を表計算ソストExcelで計算し、その結果グラフを作成せ

よ。ただし、R = 2 k, C = 0.1 F, E = 10 V, t = 100sとする。

① 充電特性計算Excelワークシート(図2)を利用。時刻t を20msecまで延長する。

② G列を追加し、0≦t<1msecのセル値をB4セル値($B$4), 1ms≦t<2msの値を0

図4 充電特性計算結果例 図5 放電特性計算結果例

図2 充電特性計算のExcelワークシート

図3 放電特性計算のExcelワークシート

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とする。以降は1msecごとに同様の処理を繰り返す。図6参照。

③ E, F列の元セル内参照先$B$4を同一行のG列セル値に変更する。

④ t に対するVc(n)及びi (n)のグラフを作成する。実験結果とほぼ同一期間である

0.0158sec≦t<0.0209sec間の結果例を、図7に示す。

⑤ R = 100 1 k, 10 kについて同様の計算処理を行え。

4.RLC直列回路の過渡現象計算実習

図8にRLC直列回路を示す。この回路で成り立つ微分方程式を(9)式に示す。時刻t

= 0でスイッチSを閉じたとき、t≧0(20msec程度まで)において回路に流れる電流

を、後退差分法を用いて計算しグラフ化せよ。ただし、E = 10 V, R =10 , L = 20 mH, C = 10 Fとする。

2

2

1,

d q dq dqL R q E i

dt C dtdt (9)

(参考)2

1 1 22 2

2,

( )n n n n nq q q q qdq d q

dt t dt t

5.提出課題(各課題をそれぞれ1ページ以内にまとめること。)

[1]コンデンサの充放特性および放電特性のExcelワークシート(図2,図3参照)

と計算結果(図4,図5参照)を作成せよ。

考察1:差分法による計算値VC(n)と理論値VC を比較し、両者に差異があれ

ばその理由を考察せよ。 [2]コンデンサの充放電特性計算実習で作成したExcelワークシート(図6参照)

と計算結果(図7参照)を、R = 100 1 k, 2 k, 10 kについて作成せよ。 [3]RLC直列回路の過渡現象計算で作成したExcelワークシートと電流i、電荷qの

波形グラフを作成せよ。

考察1:電流i の周期を求めよ。

提出レポートは表紙と提出課題(実験[1]~[3]と計算[1]~[3])のみとすること。

目的、理論、実験方法等の記載は不要である。

図6 充放電特性計算のExcelワークシート例 図7 計算結果例

E

R

C+q

-q

i

SL

図8 RLC直列回路

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物理学実験(力学 A)

1.実験の目的 この実験では,単振り子の力学的特性を簡単なセンサーを用いて確認し,力学法則の妥

当性について理解を深めることを目的とする.

2.実験器具

実験で用いる主な実験器具は「単振り子装置」と簡易センサー「ビースピ BeeSpi」である. ●「単振り子装置」(ケニス振子実験器 SF)は振り子の糸の長さを変えることができ(5~55cm),重りとして,2 種類の金属球(小球 16mmφ,大球 19mmφ)が用意されている.重りは 2 本

の糸で吊り下げられており,振り子の振動面を一定に保つよう工夫がされている.「角度計」

により振り子の糸の角度のおおよそを知ることができる. ●「ビースピ BeeSpi」(60×60×50mm,約 55g,単 4 乾電池 2 個使用)は以下の項目を測定で

きる簡易センサーである. 速度:0~999.9cm/s、0~99.99m/s、0~99.99km/h ラップタイム:0~99.99sec 積算ラップタイム:0~99.99sec 時計機能,メモリー機能

速度の測定は本体内側にある約 39mm 離れて配置された2対のフォトインタラプタ(赤

外線 LED とフォトセンサーで光がさえぎられるのを検知する)で、物体の通過時間の差を

測定し、速度をデジタル表示する.ラップタイム(通過時間)の測定は 1 対のフォトインタラ

プタを最初に物体が通過してから,次に通過するまでの時間を計測する.(片方のフォトイ

ンタラプタはラップタイムの測定には用いられない.) 積算ラップタイムは物体が通過す

るごとの通過時間を積算する. 測定モードの切り替えは「メインボタン」を 1.5 秒間押すことにより,「時計モード」⇒「速

度測定モード」⇒「ラップタイム測定モード」⇒「積算ラップタイム測定モード」に切り替わ

る.

3.実験課題

(1) 振り子の周期の測定 「単振り子装置」と「ビースピ」を用いて,振り子の運動の周期を測定し,物理学で学んだ

力学的知見を確認する.周期の測定は「ビースピ」を「ラップタイム測定モード」か「積算ラッ

プタイム測定モード」で行う.2対のフォトインタラプタのうち,どちらの対がラップタイ

ムに関係するか実験により確認した上で,振り子の重りがフォトインターラプタを適切に

通過するよう工夫する必要がある.

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1) 重りとして小球を用い,振り子の糸の長さ L を変えて周期 T を調べる. 縦軸を振り子の

糸の角度 ( )t ,横軸を時間 t として,実験により観測される振り子の運動の時間的変化の

概略をスケッチし,周期 T との関係を明示せよ. 2) 重りを大球に変えて,周期に対する影響を調べよ. 3) 重りと糸の長さ L を固定し,振り子の振れ幅を変えた時の周期の変化について調べよ.

(2) 位置エネルギーと運動エネルギーの関係 「単振り子装置」と「ビースピ」を用いて,位置エネルギーと運動エネルギーに関する物理

学で学んだ力学的知見を確認する.速度の測定は「ビースピ」を「速度測定モード」で行う. 1) 振り子を適当な角度から離し,「ビースピ」で振り子が最下部( ( ) 0t )を通過するときの

速度を測定し,位置エネルギーと運動エネルギーの関係が成立しているかどうか確認せよ. 2) 位置エネルギーと運動エネルギーの保存則が成立しているものとし,(重力加速度が未知

と仮定し)1)の実験結果から重力加速度を推定せよ. 参考:振り子の運動方程式

図 1 に示す単振り子を考える.時刻 t における振り子の糸の

鉛直方向からの角度を ( )t (radian), 運動軌道上の距離 ( )x t と

するとき, ( ) ( )x t L t であることを考慮すると,振り子の運動

方程式は

2

2

( )( ) sind x tx t gdt L

または 2

2 ( ) sin ( )d gt tdt L

で与えられる.角度 ( )t が十分小さいときには,近似

sin ( ) ( )t t が成立し,上の二つの運動方程式は,それぞれ,次のように簡単化される.

2

2 ( ) ( )d gx t x tdt L

または 2

2 ( ) ( )d gt tdt L

上式はよく知られている単振動の微分方程式であり,その解は角周波数および周期がそれ

ぞれ

gL, 2 LT

g

で与えられる正弦波振動であり,その振幅と位相は初期条件により決定される.

P

m

( )tL

図 1

( )x t

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物理学実験(力学 B)

1.実験の目的 この実験では,科学技術用ソフトウェア Scilab を用いて単振り子の運動を含む力学系の

運動方程式の解を求め,実際の物理系の運動との比較を行う.

2.実験器具 Scilab は INRIA (フランス国立コンピュータ科学・制御研究所)が中心となり開発されて

いる高機能な科学技術ソフトウエアであり,現在,フリーウェアとして配布されており,

インターネットから用意に入手可能である. 本実験では Scilab がインストールされた PC が必要である.計算機室の全ての PC には

インストール済みであり,デスクトップ上にある Scilab のアイコンをクリックすると

Scilab のコンソールが起動される.コンソールを用いて直接計算を行うことができるが,

作成したプログラムの保存等を考えると,テキストエディタを用いるのが便利である.テ

キストエディタはコンソール上部の一番左のアイコンをクリックするか「アプリケーショ

ン」→「エディタ」で起動される. Scilab の常微分方程式ソルバ ode は

( ) [ , ( )]d x t f t x tdt

の形の微分方程式の近似解を求めるために用いられる.上式における ( )x t はベクトルであ

っても良い.Ode は ode(x0,t0,t,f)の形で用いられ,t0 は初期時間,x0 は初期時間におけ

る x の値(初期条件), t1 は終端時間であり,dt は初期時間から終端時間までの x を計算す

る刻み時間である. 極めて簡単な例に対して,Scilab により微分方程式を解(近似解)を求める方法を具体的に

説明しよう. まず,以下のテキストをエディター画面に入力しよう(コロン:とセミコロン;を間違わ

ないように注意,//は計算に関係しないコメント行) //簡単な微分方程式 //x'=x,x(0)=1 //微分方程式右辺の定義 function xdot=f(t,x) xdot=x; endfunction //初期条件の定義

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x0=1; //時間に関する定義(t0:初期時間,t1:終端時間 ,dt 時間刻み) t0=0;t1=1;dt=0.01; t=t0:dt:t1; //微分方程式ソルバ x=ode(x0,t0,t,f); //表示 plot(t,x) テキストエディタで,上記ファイルを適当な場所へ,適当な名前を付けて保存し,「実行」

→「Scilab へロード」をクリックすると,計算結果のグラフが表示される. 上記の“プログラム”は初期条件 (0) 1.0x を満足する微分方程式

( ) ( )d x t x tdt

の 0 1t における解を求めるものである.明らかに,初期条件を満たす解は ( ) tx t e で与

えられ, (1)x eである. 次に振り子の非線形運動方程式

2

2 ( ) sin ( )d gt tdt L

の近似解を計算してみよう. 常微分方程式ソルバーode は1階のベクトル微分方程式の近似解を求めるように作られ

ている.上の振り子の運動方程式は 2 階の微分方程式であり,このままでは ode を用いる

ことはできない.そこで,2階の運動方程式を1階のベクトル方程式に次のように変換する.

1 2 1( ) ( ), ( ) ( )dt t t tdt

と新しい変数 1 2( ), ( )t t を定義すると,明らかに次の関係が成立する.

1 21

2 1

( ) ( ), ( ) ( )

( ) ( / )sin ( )t td t tt g L tdt

上の結果を用いると,振り子の運動方程式の解は,例えば,以下のように計算できる. //振り子の非線形方程式 //物理パラメータの入力

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g=9.8; L=9.8; //微分方程式右辺の定義 function qdot=f(t,q) qdot=[q(2); -(g/L)*sin(q(1))]; endfunction //初期条件 q0=[1;0]; //計算時間に関する情報 t0=0;t1=10;dt=0.001; t=t0:dt:t1; //微分方程式ソルバ q=ode(q0,t0,t,f); //表示(ベクトル x の第1要素のみ表示) plot2d(t,q(1,:)); 上の例では変数 q(1)が 1( )t に q(1)が 2 ( )t に対応している,

3.実験課題単振り子の実験との比較 1) 単振り子の実験(実験 A)を既に行ったグループ所属の学生は,上の非線形運動方程式の

数値解を求めるファイルの物理パラメータと初期条件を適宜変更し,実験と同じ条件(振り

子の長さ,初期角度)で,振り子の運動方程式を解き,実験結果と比較せよ.単振り子の実

験を行っていないグループ所属の学生は振り子の長さ(20~50cm 程度の範囲)や初期角度を

いくつか(大,中,小)設定し非線形運動方程式の解を求めよ. 2) 上の非線形運動方程式の数値解を求めるファイルを適宜改変し,初期角度が十分小さい

場合に成立する単振動の微分方程式 2

2 ( ) ( )d gt tdt L

の数値解を求めるものとし,1)で行った計算結果と比較せよ.

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物理学実験(力学 C)

1.目的 この実験では,Scilab に含まれる Xcos と呼ばれている力学系のシミュレーション機能を用いて微分方

程式の解を「基本演算要素」を図的に組み合わせることにより求められることを学ぶ.

2.Xcos の使用例 Xcos は Scilab に含まれている.Scilab のアイコンをクリックし,Scilb コンソールを立ち上げ,xcosとタイプし,リターンキーを押す(あるいは Scilab メニュの「アプリケーション」→「Xcos」)と,Xcos の「パ

レットブラウザー」および作図領域となるウインドウが現れる. 「パレットブラウザー」用意されている演算の「基本要素」をマウスで作図領域にドラッグし,線で結び

つけることで「プログラミング」が完了する.作図完了後,作図パレットのメニュ「シミュレーション」→

「セットアップ」で設定を変更(ほとんどの場合これが必要)後,「開始」をクリックすると計算が開始される. 例1:

図1.微分方程式を解くための設定画面 簡単な例として微分方程式

0( ) ( ), (0)d x t ax t x xdt

(*)

の解を求めてみよう.この場合,パレットから基本演算要素をマウスでドラッグし,図1のような作図

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をする.ここで,各要素は次のような意味を持つ. ・左の三角形で表される要素は「ゲイン要素」であり,パレットブラウザーの左側のペインにある

「Mathematical Operations」の中にある GAINBLK_f である.この要素は入力側矢印に対応する入力信

号を定数倍して出力側矢印に出力する.ゲインの大きさは要素をダブルクリックすると現れるウインド

ウに入力する.上の微分方程式を解くためには,ゲインは定数 a とする.図1では 1a としている. ・中央の要素は記号から判るように「積分要素」であり,パレットブラウザーの左側のペインにある

「Continuous time systems」の中にある INTEGRAL_m である,名前の通り,入力側矢印に対応する入

力信号を「積分」して出力側矢印に出力する.この要素をダブルクリックするといくつかのパラメータを

設定するウインドウが現れる.この機能を用いて積分器の初期値として微分方程式の初期値を設定する. ・右側の要素は「スコープ」と呼ばれ,パレットブラウザーの左側のペインにある「減らす(これは日本語化

のバグ)」の中にある CSCOPE である,この要素はこれにつながれた左側の信号をグラフとして記録(横軸

は時間)する機能があり,ダブルクリックすると出力するグラフに関するいくつかのパラメータを設定す

るウインドウが現れる. ・右上部の時計状の要素は「クロック」と呼ばれ,パレットブラウザーの左側のペインにある「ソース」の

中にある CLOCK_c である,この要素は,Xcos では「スコープ」を利用するためには必須である.ダブル

クリックすると,微分方程式を解くための刻み時間を設定するウインドウが現れる.デフォルトでは 0.1のようであり,問題に応じて,より小さく設定する必要がある. 図1と微分方程式(*)との関係 図1の設定と微分方程式との対応は次の通りである.「スコープ」につながっている「積分要素」の出力

が微分方程式の解 ( )x t に対応する.従って,「積分要素」の入力側の信号は ( )x t の時間微分 ( ) /dx t dt に対応

する.一方,図1から,この信号は ( )ax t (図では 1a )である.すなわち,図1は微分方程式(*)の図的

表現となっている. 要素のつなぎ方 図1を作成するに当たって,各要素を結ぶ線の入力作業に「慣れ」が必要である.要素間を直線で結ぶ

のは容易である.例えば,積分器の出力側の矢印をクリックしたまま,スコープの入力側まで線を引き,

ダブルクリックすれば良い.「積分要素」の出力から「スコープ」入力に至る信号を分岐し,左の「ゲイン要

素」につなぐのは少々面倒である.一例として,「ゲイン要素」入力矢印をクリックしたまま左へ直線を引

き(緑色の線が現れる),適当な所でクリックし,そのまま下へマウスを動かし(この間,線は現れない),適当な所でクリックすると前のクリックした点から下へ直線が引かれる.さらにマウスを右に移動させ

「積分要素」の出力から「スコープ」入力に至る信号を分岐したい位置の下方でクリック後,分岐点までマ

ウスを移動(この間,線は現れない),分岐点でクリックすると図1が完成する. シミュレーションの実行 図の完成後,ゲイン要素をダブルクリックし,微分方程式のパラメータ a の値を設定し,積分要素を

ダブルクリックし,積分要素の Initial Condition として微分方程式の初期条件 0x を設定する.次にクロ

ックをダブルクリックし,微分方程式を解くための刻み時間を設定する.0.001 等十分小さな値でよい.

さらに「スコープ」をダブルクリックし,Refresh Rate を解を求める最大時間として設定し直す(デフ

ォルト値は 30 秒?)また,グラフの縦軸の最大,最小値(Ymax, Ymin)を設定する.最後に,作図パ

レットのメニュ「シミュレーション」→「セットアップ」で最上部にある「最終統合時間」をスコープで設定

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した Referesh period と同じ時間に設定する.以上の設定が完了したら,メニュ「シミュレーション」→「実

行」で解のグラフが現れる. 注意:Scilab version 5.20 での Xcos では Referesh Rate を 2 秒以下に設定できないようである.従って,

図 1 で 1a , 0 1x とすると実験 B の最初の例題と同じ問題を解くことになるが,実験 B の 0 1t での

グラフと同じグラフを出力することはできない.もちろん,例えば,0 3t でのグラフを書かせること

はできるが,この場合,グラフ縦軸の最大値 Ymax を十分大きく設定しておく必要がある. 例 2:

図 2 単振り子の非線形運動方程式を解くための設定画面

図 2 は実験 B で行った振り子の非線形微分方程式を解くための設定である.「Trig function」はパレッ

トブラウザー左側ペインの「Mathematical Operations」の中にあり,入力信号に対応する正弦波関数を発

生する要素である.ダブルクリックすると現れるウインドウにより,その詳細を設定できる.デフォル

トでは sin 関数となっているので,設定を変える必要はない.「ゲイン要素」の図的な反転は要素を右クリ

ックして現れるメニュの「フォーマット」→「反転」により行える. 「スコープ」につながっている「積分要素」の出力が振り子の角度 ( )t である.従って,右の積分器の入力

は ( ) /d t dt であり,これは左側の「積分要素」の出力に等しい.すなわち,左側の「積分要素」の入力は ( )t

の 2 階微分 2 2( ) /d t dt に等しい.図 2 の「ゲイン要素」を /g L となるように選べば(図では / 1g L ),図

から, 2 2( ) /d t dt は ( / )sin ( )g L t に等しい.すなわち,図 2 は振り子の非線形運動方程式に対応してい

る.初期角度は右側の積分器の初期値として与える. 図 2 で「Trig function」の部分を取り除き,「ゲイン要素」の出力を左の「積分要素」に直結すると「線形化

した微分方程式」,すなわち,単振動の微分方程式を解くための設定画面となる.

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例 3:

図 3 一般的な 2 階線形微分方程式を解くための設定画面 図 3 は 2 階線形微分方程式

2

1 0 0 0020

( ) ( ) ( ) 0, (0) , ( )t

d d dx t a x t a x t x x x t xdt dtdt

を解くための設定であることが理解されよう.(左のシグマを含む要素は「加算要素」であり,パレットブ

ラウザーの左側ペインの「一般的ブロック」の中にある BIGSOM_f である.) 3.課題 1) 実験 B において Scilab での解いたものと同じ問題を Xcos を用いて解き,Xcos を用いることの優劣に

ついて考察せよ. 2) 例 3 の 2 階線形微分方程式において係数 0 1,a a 及び初期状態 0 00,x x の値を適当に与え,刻み時間 (クロ

ックをダブルクリックして設定)が解に与える影響(制度,計算時間等)について考察せよ.

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熱:液体の冷却 (ニュートンの冷却法則)

1 目的

液体が熱を放射によって失う時間的割合について考察する.ここでは,コップに入れたお湯が冷めていく様

子を観察し,この際の時間と温度の間の法則性について理解を深める.

2 実験をはじめる前に

お湯は,時間とともに,どのような冷め方をするのか予想してみよう.

時間とともに,一定の速さで冷めていく?

最初は急激に冷めるが,途中からはゆっくり冷めていく?

横軸を時間,縦軸を水温として,どのようなグラフになるか予想してみよう.

3 実験内容

3.1 基礎物理学実験室での実験

3.1.1 使用機器

図 1のような,マグカップ,温度計,ストップウォッチを使用する.

図 1: 使用機器

3.1.2 実験手順

1) 室温を測る.

2) ポットからマグカップの 8分目くらいまでお湯を入れる.

3) マグカップに温度計を入れる.

4) お湯の温度が 70◦Cから 40◦Cまで下がっていく間の時間経過を 1◦C刻みで記録する.

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3.2 コンピュータ実習室での実験

3.2.1 微分方程式による記述

時間を x[sec],水温を y[◦C]とするとき,以下の2つの場合についての方程式を考える.

1) 時間とともに,一定の速さで冷めてくいく場合 

2) 最初は急激に冷めるが,途中からはゆっくり冷めていく場合

1)の場合,水温の変化 (率)dy

dxは,時間に無関係で一定 c1 > 0 と考えると,

dy

dx= −c1

のように表される.一方で,2)の場合,水温の変化 (率)dy

dxは,室温 ye と 水温 y との差に比例すると考え

ると,dy

dx= −c2(y − ye)

のように表される.ただし,c2は,c2 > 0なる定数 (比例定数)とする.

3.2.2 実験手順

Scilabを用いて,以下の実験を行う.

1) 次の条件を満たす c1, c2を探す (試行錯誤的に求めてもよいし,微分方程式を解いて導出してもよい.上

記方程式における c1, c2, yeには,具体的な数値を入力する.そして,出力されるグラフを見ながら,適切な

c1, c2を探し出す).ただし,Scilabによる微分方程式の解の導出における時間刻みは 1[sec]とする.

a) 室温 ye = 20 [◦C]b) 時刻 x = 0 [sec.] の時の水温は y = 70 [◦C]c) 時刻 x = 600 [sec.] の時の水温は およそ y = 50 [◦C]

2) 上で求めた c1, c2を用いて,x = 0から x = 3600 までの,水温の変化を表すグラフをそれぞれ求める.

3.2.3 Scilabの簡易マニュアル

1) デスクトップ上の Scilab のアイコンをクリックし,Scilabを起動する (図 2).

図 2: Scilabの起動画面

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2) [アプリケーション (A)]→[エディタ (E)]から,エディタを起動する (図 3).

図 3: Scilabエディタの起動

3) コマンドの入力と実行: [実行]→[Scilabへロード](図 4).

図 4: コマンドの入力と実行

コマンド例 : たとえば,dx

dy= −cxy − 5

を以下の条件:

(a) c = 3.5

(b) x = 0[sec.] のとき y = 50◦C(c) x = 0 から x = 1000の範囲で,時間刻み 0.2[sec.]

で解くとき,

−− > deff(”ydot=f(x,y)”,”ydot=-3.5*x*y-5”)

−− > y0=50;x0=0;x=0:0.2:1000;

−− > y=ode(y0,x0,x,f);

−− > plot(x,y)

また,たとえば,dx

dy= −c(y − ye)

を以下の条件:

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(a) c = 0.0003, ye = 20

(b) x = 0[sec.] のとき y = 70◦C(c) x = 0 から x = 5000の範囲で,時間刻み 1.0[sec.]

で解くとき,

−− > deff(”ydot=f(x,y)”,”ydot=-0.0003*(y-20)”)

−− > y0=70;x0=0;x=0:1.0:5000;

−− > y=ode(y0,x0,x,f);

−− > plot(x,y)

4) グラフの保存 (PNG形式):[ファイル (F)]→[エクスポート (E)](図 5).

図 5: グラフの保存

4 レポート

レポートでは,次のことに留意すること.

1) ニュートンの冷却の法則について調べる.

2) 基礎物理学実験室における実験結果を以下の2つの方法でグラフにまとめる.

a) 横軸に時間,縦軸に水温

b) 横軸に時間,縦軸に log(水温-室温)

3) コンピュータ実習室における実験結果をまとめる.

4) 上の 1)-3)をふまえ,本実験全体を考察する.

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1.トランスの磁化特性測定

1.目的

市販の電源トランスの磁化特性を測定することにより、電源トランスを構成する鉄

心の磁気飽和やヒステリシス現象を理解する。

2.磁化特性測定の原理

磁化特性とは、外部から加えられた磁界の強さHと鉄心内部に発生する磁束の密度

Bの関係を表すもので、B-H曲線と呼ばれ、鉄心材料の特性を表す目安の一つである。

図1(a)に、鉄心の磁化特性を測定するための原理回路を示す。図において、は断

面積がS(m2)で長さがℓ(m)の鉄心である。N1は一次巻線、N2は二次巻線である。二次

巻線には積分回路が接続される。

いま、図示のように一次巻線に交流圧電源v を接続し、N1に電流i1(A)が流れた場

合を考える。巻線に電流が流れると、周囲には「右ネジの法則」に従う向きに磁界が

発生する。この磁界の強さH (A/m)は、「アンペアの周回路の法則」H ℓ=N1i1(ただ

し、積分回路に流れ込む電流をゼロとする。)より次式のように得られる。

1 1N iH

(1)

(1)式より、磁界の強さH はN1i1(これを起磁力という)に比例することがわかる。 一方、二次巻線N2の両端に誘導される電圧e2 は、「ファラデーの電磁誘導の法則」

に従う。e2及び積分回路の出力電圧e3は、N2を通過する磁束を (Wb)及び積分回路の

ゲインをk として、次式のように表すことができる。

2 2 2 3 22

1,

de N e dt e k e dt

dt N

(2)

従って、磁束密度B(Wb/m2)は、磁束 の面積密度であり、(2)式より次式のように得

られる。

3

2

1 eB

S S kN

(3)

(3)式より、磁束密度B は積分回路の出力電圧e3に比例することがわかる。

図1(b)に、一般的な鉄心の磁化特性を示す。図中の番号(0~6)は特性の軌跡順序を

N1 N2

e2v e3

積分回路H

BS

磁心

k

i1

(a) (b) 図1 鉄心の磁化特性を測定するための原理

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26

0

6

8

10

12 V100 V

0126

42

42

42

2100

巻線数

使用端子

積分回路

380 k

3.6 F4.7 R1

R2

C2e2

e3

図2 試料鉄心と積分回路 図3 試料鉄心の端子間巻線数

示したもので、0~1の区間を初磁化特性という。磁界の強さを正あるいは負の方向に

大きくさせると磁束密度の変化の割合が小さくなり、ゼロになる(1あるいは4付近)

ことを磁気飽和といい、磁界の強さを増加させた場合と減少させた場合で軌跡が異な

ることをヒステリシスという。また、Brを残留磁気、Hcを保磁力という。

3.実験方法

本実験では、起磁力N1i1と磁束 の関係を鉄心の磁化特性として測定する。

[使用器具]

1.ディジタルオシロスコープ(DS-5102) 2.発振器(FG-274) 3.試料鉄心

(TOEI J-1202) 4.抵抗およびコンデンサ 5.USBフラッシュメモリ(各自持参)

[測定手順]

A.e3-N1i1特性の測定(e3は磁束 に比例した電圧である。)

① 図4の様に結線せよ。(DS-5102のプローブCH1をR1両端、CH2をC2両端に接続) ② ディジタルオシロ(DS-5102)及び発振器(FG-274)の電源スイッチをオン。 ③ FG-274を周波数20 Hz正弦波とし、AMPLつまみを 大(右回し)に設定する。

(ディジタルオシロの画面に4サイクル程度の波形を表示させる。) ④ ディジタルオシロ(DS-5102)の初期設定。

1) CH1を選択し、ZERO OFFSETボタンを押してカーソルのゼロ位置調整を行う。(CH2も同様にゼロ位置調整を行う)

2) HORIZONRAL項目のMENUボタンを押して、Disp.Typeの項目をX-Yに設定する。 ⑤ 表示されたX-Y曲線データをUSBフラッシュメモリに保存。

1) SAVE/RECALLボタンを押して、画面中にメニュー項目を表示させる。

2) Type項目からWaveform右のボタンを押して、CSVを選択する。(FUNCTIONつま

みを回して選択し、つまみを押して決定)

06

8

10

12 V100 V

0126

42

42

42

2100

380 k

3.6 F4.7 R1

R2

C2e2

e3

CH1

シンクロスコープ

(プローブ)

CH2

発振器DS-5102

(赤線)

(黒線)

PG-274

図4 実験回路

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27

3) メニュー項目からExternalを選択(ボタンを押す)する。

4) ファイル編集画面が表示されたら、New Fileを選択し、File Nameを入力する。(入

力は、Functionつまみを回して選択し、つまみを押して決定する。例えば、ファイル

ネームを” flux20.csv”とする。)

5) メニュー項目からSaveボタンを押して保存完了。

B.e2-N1i1特性の測定(e2は磁束d/dt に比例した電圧である。)

※ここで得られたデータを、次週のシミュレーション実習に使用する。

① 図4の実験回路でDS-5102のCH2プローブをe2が観測できるように結線せよ。 (波形が静止している場合は、TRIGGERのAUTOボタンを押す。) ② DS-5102のHORIZONTALのMENUボタンを押して、Disp.TypeをX-YからY-T

に変更する。 1) CH2の表示(e2)が画面から外れる場合は、まずCH2のプローブ先端のスライドつまみ

を切り替えて10:1に変更し、次いでCH2のProbe項目を1xから10xに変える。 2) CH2のVERTICAL項目でPUSH FINE/COARSEつまみを調整してe2波形を画面内に

納める。 ③ DS-5102のHORIZONTAL項目で調節つまみ(下)により、波形が2サイクル

程度表示されるように調節する。 ④ CH1, CH2の波形データ(CSV形式)をUSBフラッシュメモリに保存する。(保存

操作手順は、上記A.を参照せよ。保存ファイル名を例えば”wave20.csv”とする。) C.e3の値と磁束 の換算のための測定

① FG-274のAMPLつまみを、上記A.及びB.の50%以下に減ずる。 ② DS-5102のCURSORSボタンを2度押して、カーソル機能を有効にする。

3) CH2の表示(e2)が画面から外れる場合は、まずCH2のプローブ先端のスライドつまみ

を切り替えて10:1に変更し、次いでCH2のProbe項目を1xから10xに変える。 4) CH2のVERTICAL項目でPUSH FINE/COARSEつまみを調整してe2波形を画面内に

納める。 ③ FUNCTIONつまみでカーソルをe2(CH2)の 大値に合わせ、CurA= の表示値

を読み、記録する。これをE2m (V)とする。 E2m = (V) ④ FG-274のAMPLの位置(50%以下)を変えないで、DS-5102のCH2プローブを

e3が観測できるように変更する。 ⑤ カーソル機能を利用してe3(CH2)の 大値を表示させ記録する。これをE3m (V)

とする。 E3m = (V) ⑥ 以上の結果より、磁束とe3の値の換算を次式で行う。

2m3

2 3m

1

2

Ee

fN E

(4)

ただし、N1 = 126, N2 = 2100 である。

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D.FG-274の周波数を変えた場合の磁化特性の測定

① 発振器FG-274の周波数を30 Hzおよび40Hzの正弦波とし、上記、A~Cの実験

を繰り返せ。このとき、AおよびBで得られたデータ名を例えば、Aでは

flux30.csvおよびflux40とし、Bではwave30.csvおよびwave40.csvとせよ。

※データチェック(以下のデータが存在することを□にチェックして確認せよ。)

□flux20.csv □wave20.csv □E2m, E3m(at 20Hz) □flux30.csv □wave30.csv □E2m, E3m(at 30Hz) □flux40.csv □wave40.csv □E2m, E3m(at 40Hz)

4.提出課題(各課題をそれぞれ1ページ以内にまとめること。)

flux20.csv, flux30.csv, flux40.csv及びE2m, E3m(at 20Hz, 30Hz, 40Hz)を用いて、

[1]各周波数における、起磁力N1i1と磁束 のExcelワークシート(図5参照)を作

成して、-N1i1特性(図6参照)を描け。

考察1:発振器(交流電源)の周波数を高くすると、-N1i1特性はどのよう

な形に変化するか?(実験結果から明確にできない場合は文献等を調

査して解答すること。)

[2]なぜ、実験手順C.の測定によってe3の値と磁束の換算が可能なのか考察せよ。

[3](4)式を導け。

提出レポートは表紙と提出課題(実験[1]~[3]と計算[1]~[3])のみとすること。

目的、理論、実験方法等の記載は不要である。

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

25

-30 -20 -10 0 10 20 30

図5 データ整理表例(f=20 Hz) 図6 -N1i1特性例(f=20 Hz)

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2.トランスの磁化特性計算

1.目的

前回の実験では、トランスの一次巻線を流れる電流に比例した電圧と二次巻線の誘

導電圧を測定し、CSV形式のデータを得た。ここでは、このCSV形式データから磁化

特性を計算する方法を習得し、前回得た実験結果との比較を行う。

2.磁化特性計算について

(a)磁束の計算

図1(a)にトランスの原理構成を示す。N1は一次巻線、N2は二次巻線である。i1(A)は一次巻線を流れる電流であり、e2(V)は二次巻線の誘導電圧、 (Wb)は鉄心内の磁束

である。このe2と は「ファラデーの電磁誘導の法則」に従い、次式のように表すこ

とができる。

22 2 2 2

( )d Nde N N e dtdt dt (1)

N2 を磁束鎖交数という。(1)式よりN2 はe2を積分することにより得られることがわ

かる。ここでは、N1i1(起磁力という)と磁束 の関係をトランスの磁化特性とする。

いま、図1(b)に示すように、e2が微小時間 t (s)ごとに離散的(e20, e21, e22, e23,…)

に与えられているものとして、積分の代わりに総和を用いて磁束鎖交数を求める。

まず、図2(a)に示すように、離散的な各e2 の値(e20, e21, e22, e23,…)と tで囲ま

れた長方形の面積を考えると、例えば、5番目のN2 5 は次式のように得られる。

4

2 5 2 20 21 22 23 240

ii

N e t e t e t e t e t e t (2)

同様に、6番目のN2 6 は(2)式を用いて、

5 4

2 6 2 2 25 2 5 250 0

i ii i

N e t e t e t N e t (3)

(3)式より、6番目のN2 6 は、一つ前である5番目のN2 5に5番目のe25 t のを加えた

ものであることがわかる。これをデータの数だけ繰り返すと、図2(a)に示すように離

散的なN2 が得られる。しかし、このN2 は全体的に正の値に偏っている。

そこで次に、図2(b)に示すように、正(あるいは負)の値に偏った離散的なN2 か

N1 N2

e2

磁心

i1

R1

N1i1

e2

t

e20

e21

e22

e23e24 e25

t

e26

(a) (b) 図1 磁化特性測定回路と二次巻線の誘導電圧

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30

ら最大値(Max)と最小値(Min)の値を読み取り、その平均値を全てのN2 の値から減

ずると、求める磁束鎖交数N2、従って、磁束が得られる。

(b)誘導電圧e2の補正

上記、(a)の操作で磁束鎖交数N2を計算すると、図3に示すように、時間の経過と

共に波形が上昇(あるいは下降)する場合がある。これは、元のe2データに直流成分

が混入(ディジタルオシロスコープのオフセット?)しているためである。ここでは、

N2の第1計算結果(図3中のN2)から直流成分を求め、元のe2データから減ずる。

図3において、T (s)は周期(周波数の逆数)である。N2の第1計算結果から1周

期の磁束鎖交数の変動N2 を読み取り、元のe2データからN2 /T の値を減ずる。

3.計算手順

本計算では、前回の実験(1.トランスの磁化特性測定)で得たCSVデータ

(wave20.csv, wave30.csv, wave40.csv)を使用する。

図4に、計算手順に対応するMS-Excelワークシートを示す。なお、図中の①~⑩の

列は下記の手順番号と一致している。

[操作手順]

① MS-Excelでデータファイル(例えばwave20.csv)を読み込む。

e21t

t

e22te23t

e24t

e25t

N25

t

N26

e20t

N26 =N25+e25t

N2

N25

t

N2

Max

Min

(Max+Min)/2

N25- (Max+Min)/2

(a) (b) 図2 誘導電圧e2データの積分過程

t

N2

TN2

0

N2 /T

e2

e26

e26'

e2'e2'=e2 - (N2 /T )

図3 誘導電圧e2データの補正

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② 時間を0から増大するように変更する。(オリジナルのデータでは負の時間から

始まっている。) ③ 起磁力N1i1を計算する。CH1のデータはR1i1(V)である。

④ e2t を計算する。(t はオリジナルデータから読む。)

⑤ (3)式の関係から、N2 を順次計算する。図5(a)のA波形は時間に対するN2 の第1計算結果(例)である。右下がりになっている。

⑥ 図5(a)のA波形から1周期における変動分N2を読み取り、N2 /T の値を

①のCH2データから減ずる。 ⑦ e2’t を計算する。

⑧ (3)式の関係から、N2 を順次計算する。図5(a)のB波形は補正後のN2 の第

2計算結果(例)ある。右下がり傾向が改善されたが、ゼロ点がずれている。

⑨ ⑧の列から最大値(Max)と最小値(Min)を読み取り、図2(b)に示すような操作

を行って、ゼロ点を補正する。図5(a)のC波形は補正後のN2 の第3計算結

果(例)ある。

⑩ ⑨列をN2で割り、磁束を得る。(さらに105 倍している)

図5(b)に、③列をX軸とし、⑩列をY軸として描いたトランスの磁化特性計算

結果(例)を示す。

⑪ MS-Excelでデータファイル(例えばwave30.csvおよびwave30.csv)を読み込む。

上記②~⑩を繰り返し、トランスの磁化特性計算結果表を作成する。

図4 磁束の計算過程

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩

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4.提出課題

wave20Hz.csv, wave30Hz.csvおよびwave40Hz.csvのデータを用いて、

[1]磁束生成用のExcelワークシート(図4参照)を作成せよ。

[2] Excelワークシートより、磁束鎖交数N2の補正過程波形(A, B, C)(図5(a)参照)を作成せよ。

[3] Excelワークシート(図4参照)より、-N1i1特性(図5(b)参照)を描け。

考察1:-N1i1特性の計算結果と実験結果(トランスの磁化特性測定)を比

較せよ。差異がある場合はその原因を考察せよ。

※課題[1]~[3]と実験結果(トランスの磁化特性測定)を周波数ごとに1ページ内

にまとめて提出すること。

提出レポートは表紙と提出課題(実験[1]~[3]と計算[1]~[3])のみとすること。

目的、理論、実験方法等の記載は不要である。

-0.6

-0.5

-0.4

-0.3

-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12

N2

(Wb)

Time (s)

A B

C

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

-60 -45 -30 -15 0 15 30 45 60

20 (Hz)f

5M

agn

etic

flu

x(

10W

b)

1 1

Magnetomotive force(A)N i

(a) (b)

図5 磁束鎖交数N2と-N1i1特性の計算結果例(f=20 Hz)

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光 1.目的 原子の発光スペクトルの分光測定を通して、光の基本的な特性である波の干渉

効果を理解するとともに原子構造について考える。 2.原理

光の波動性と粒子性 光の正体が波であるのか粒子であるのかという議論は 17世紀のニュートンとホイヘ

ンスの論争までさかのぼることができる。ニュートンは太陽の光が真空中を通って地

球に到達することから、何もない空間を移動できるのは光が粒子であるからだと主張

した。これに対し、ホイヘンスは空間には非常に希薄なエーテルという流体が満ちて

おり、光はエーテルを伝わる波であると想定した。現在では、光は何も存在しない真

空中を伝わることのできる波(電磁波)であるとともに、ミクロな物理を対象とする

量子力学の観点からは光子という粒子として取り扱えることがわかっている。 光が波としての特徴をはっきりと持っていることがわかったのは、19 世紀初めに行

われたヤングによる光の干渉実験である。ヤングは図 1 のように同一光源から出た光

を2つの穴(二重スリット S1、S2)に導き、その後方にスクリーンをおいて光強度の

分布を調べた。もし光が粒子であればスクリーン上には S1、S2の後方近いところに集

中した強度分布を取るはずである。しかし、実験結果は明暗が交互に現れるものとな

った。これはちょうど水波が2つの穴を通った際におこる結果と同様であり、このこ

とから光は波(光波)として扱えるとされた。また、マックスウェルにより電磁気学

の理論的帰結として電磁波が予言され、光は電磁波の 1 種であることも確認された。

その後、20 世紀に入って量子力学が形成されるまで、光の粒子性が認識されることは

なかった。

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ヤングの実験(簡単な説明) ここでヤングの行った光の干渉実験について、まず高校レベルの説明をしておこう。

図 1 ヤングの実験における光の干渉

光が波であるとすれば、その波は場所によって異なる振幅をもつことになる。スクリー

ン上に現れる明るい部分(明線)は2つの光の波の山と山、谷と谷がちょうど重なる部

分であろう。また山と谷が重なれば暗い部分(暗線)となるだろう。すなわち図 1 のス

クリーン上における任意の P 点では明線と暗線の条件は次のように記述できる。

S1P ~ S2P 22m

2m 1

ただし m は任意の整数である。2m のとき明線(山と山、谷と谷が重なる)、(2m+1)のとき暗線(山と谷が重なる)となる。 ここで S1と S2の間隔を d、面 S1S2からスクリーンまでの距離を L、図のO点から P

点までの距離を x とすると

xddxLdxLPSPS 222

22

222

2

2

1

S1P S2P2xd

S1P S2P

S1P S2P 2Lから

S1P S2PxdL

S1P ~ S2PxdL 2

2m2m 1

x L2d

2m2m 1

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これより、例えば m=0での明線は x=0、m=1での明線はLd

となる。

よって明線の間隔Δx は x Ld

となる。

しかし、この高校レベルでの説明では明線と暗線の間ではどの程度、光の強度が変わ

っているのかといった議論をすることはできない。そこでより正確な説明を行う。 ヤングの実験(複素関数を用いた説明) 1つの光波が r の位置に作る電場を E(r)とすると、E(r)は次式で表すことができる。

ikrAr expE

ここで i は虚数単位、k は波数で波の波長をλとすると

2k

である。また A は波の振幅であるが、これ以降は簡単にするため A =1 として扱う。各

場所における光の強度 I(r)は電場の 2 乗となり、すなわち 2rErI

と表せる。二重スリットにおいて、S1、S2から P 点までの距離 r1、r2は

22

2

22

1 2,

2dxLrdxLr

であり、P 点における2つの波の重ね合わせは 21 expexpP ikrikrE

となるから、P 点での光の強度 I(P)は

21

2121

2121

2121

21*

212

212

cos122expexp

12

expexp2expexpexpexp

expexpexpexpexpexpPP

rrk

rrikrrikrrikrrik

ikrikrikrikrikrikrikrikrikrikrI E

ここで、複素数の絶対値の二乗は複素共役(虚数単位 i を-i に変えたもの)との積にな

ることに注意せよ。またオイラーの式 xixix sincosexp

を用いて指数関数を cos 関数に変換している。 上述のように

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Lxdrr 21

と近似すれば

xLdkI cos12P

となり、スクリーン上で光強度は cos 関数的に分布することがわかる。なお本実験で数

値計算する際には、このような近似は用いなくても結果がでる。

回折格子 ガラス板の片面に多数の細い筋を等間隔に引いたものを回折格子という。筋では光は

散乱されるので、筋と筋の間がスリットとみなすことができる。筋と筋の間隔 d を格

子定数という。多数のスリットを通過した光が強めあう方向は図2で表されるように md sin となる場合である。

図 2 回折格子における光の干渉

上述の複素関数を用いた議論は、回折格子のようにスリットの数が増えた場合でも適

用できる。P 点における各スリットからの波の重ね合わせは、 n

niiikrexpPE

となる。ただし riは各スリットから P 点までの距離である。また回折格子の中央のス

リットを i =0 とし、両端を i =±n とした。2 重スリットの場合と同様に 2PP EI

を計算することで強めあっている場所以外での光強度も含めた分布を確認することが

できる。

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光のスペクトル 分光器を通して光をみると、もともとどのような色からできていた光なのかがわ

かる。これはもともとの色が波長順に並んでみえるからである。これを光のスペク

トルという。水銀灯の光を分光器を通してみるとだいたい図3のように見える。こ

のように特定の色の光だけ見える場合、線スペクトルと呼んでいる。それに対して

白熱灯では虹と同じように色合いがだんだんと変わっていく。この場合を連続スペ

クトルという。線スペクトルは気体の原子を光らせた場合に特徴的なもので、この

スペクトルからどのような原子が光を出しているのかわかる。

図3 水銀の線スペクトル

ボーアモデル

一番簡単な元素である水素のスペクトルを観察すると図4のようなスペクトルが確

認できる。

図4 水素のスペクトル

図 4(a)は人間の目に見える可視光線領域でのスペクトルであり、バルマー系列と呼

ばれる。図 4(b)のように水素は赤外領域、紫外領域にもスペクトルを持ち、それぞれ

パッシェン系列、ライマン系列と呼ばれる。このような水素スペクトルの波長に対し

バルマーは規則性を見いだし、現象論的にではあるが下記のように定式化した。 1 c R 1

m21n2

m、n:整数(n>m) R:リュードベリ定数(1.097x107m-1) バルマー系列:m=2に相当

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38

しかし、そのメカニズムの解明にまで踏み込むことはできなかった。この問題は 20 世

紀になって量子力学の黎明期に活躍したボーアにより解かれることとなった。下記に

ボーアの水素原子モデルを説明する。 ボーアは水素原子に対して、下記の仮定をおいた。 ・電子は原子核からのクーロン力と遠心力とがつりあった円運動をしている

すなわち k e2

r2 m v 2

r

e:電子の電荷、m:電子の質量、v:電子の速さ、r:軌道半径 k:クーロン力における定数

・その軌道半径 r は軌道の長さ2πr が電子波の波長λの整数倍になるものしか取

り得ない→2πr=nλ=n(h/mv) (n=1,2,3,………)(図5参照)

図5 ボーアの原子モデル 図6 軌道間遷移

このとき、水素のもつ電子のエネルギー準位は下記のように導出される。

k e2

r2 mev 2

r と 2 r n h

mev を r と v の連立方程式と見て解く

r h 2

4 2kmee2 n2

v 2 ke2

h1n

電子の持つ全エネルギーE=運動エネルギー+クーロンエネルギー

12

mev2 k e2

r2 2k 2mee

4

h21n2

ここで、me=9.1x10-31kg、 e=1.6x10-19C、 h=6.6x10-34J・s、 k=9.0x109Nm2/C2 を代入すると

Jn

E

mnr

218

211

1102.2

103.5

このように電子のエネルギー準位が求められた後、水素が発する光は電子が軌道間を

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39

移動(遷移)したときに、そのエネルギーの差分として放出されるとする(図 6 参照)。 すなわち n 番目の軌道の電子が m 番目に落ちた場合には下記のようになる。

E En Em2 2k 2mee

4

h21n2

1m2 h h c

さらに波長λの逆数を求めると 1 2 2k 2me4

h21n2

1m2

1hc

2 2k 2me4

h3c1n 2

1m2 1.1 107 1

m21n2

となり、バルマーが発見した規則性と同一の結果となる。バルマー系列は電子が2よ

り大きな n を持つ Enの軌道から E2の軌道に落ちてくる遷移といえる。

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エクセルによる複素関数の取り扱い 本実験ではエクセルで光波の重ね合わせをシミュレーションする。この際、通常の

関数ではなく、複素数を扱える複素関数を取り扱う必要がある。以下に関数のコマン

ドを示す。 複素数 x+iy COMPLEX(x,y) (例)2+3i <==> COMPLEX(2,3) 共役複素数 IMCONJUGATE(A) (例)2-3i <==> IMCONJUGATE(COMPLEX(2,3))

計算式 エクセル関数

A+B IMSUM(A,B)

A-B IMSUB(A,B)

A×B IMPRODUCT(A,B)

A/B IMDIV(A,B)

An IMPOWER(A,n)

|A| IMABS(A)

ln(A) IMLN(A)

eA IMEXP(A)

√A IMSQRT(A)

sin(A) IMSIN(A)

cos(A) IMCOS(A)

表 1 複素数計算の関数

(例) exp(2i) <==>IMEXP(COMPLEX(0,2))

(例)

22exp i

<==>IMABS(IMEXP(COMPLEX(0,2)))*IMABS(IMEXP(COMPLEX(0,2)))

付録 あるセルを常に参照したい場合 $ をつける。 (例) A1 セルを参照 $A$1 としておけばドラッグしても A1 を参照し続ける (例) $A1 の場合、ドラッグすると A 列は変わらず 1 行が2,3・・・行と変わる

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41

3.実験方法

A. 分光実験

分光器を作ろう 用意するもの

ボール紙、調光用フード(←工作用紙から切り取る) スリット用ラシャ紙、スケール用グラフ用紙、回折格子

のり、セロテープ、カッター、黒いビニールテープ

図7 手作り分光器の設計図

作り方 (1) ボール紙を組み立てて箱にする(のりしろ部分をのりでぬって、張り合わせる)。 (2) 張り合わせた部分から光もれがないかチェック(あれば黒いビニールテープでと

める)。

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(3) スケール用窓にスケール用グラフ用紙をつける。スリットの位置から測った目盛

りを決めておくとよい。 (4) 調光用フードを開閉できるようにセロテープでつける。 (5) スリット用ラシャ紙をカッターで真っ二つに切り、隙間が 0.5mm から 1mm くら

いになるようにつける。 (6) 回折格子を貼った台紙を向きに注意して回折格子用窓に取り付ける。 (7) さあスリットを電灯にむけて、回折格子用窓からのぞいてみよう。

いろいろな灯りのスペクトル観察

※下記の観察においては、色鉛筆等を用いてスペクトルのスケッチを残すこと。その際、

分光器の目盛りも記述すること。

(1) 水銀灯(見えたスペクトルをスケール用方眼紙にチェック) ① スリットからチェックした各スペクトルまでの距離を測り、どの波長の色に対応

しているか確かめる。 ② 分光器の目盛りと実際の波長の関係をグラフにしてみることができる。横軸に分

光器の目盛り、縦軸に実際の波長をとって観測した水銀スペクトルの点を打って

いこう。例えば分光器の目盛りで5cmのところに緑色があれば、横軸5cm、

縦軸 546.1nm のところに点を打とう。打てたら全体の点をだいたい通るような

一本の直線を引く。 ③ このグラフができれば、自作の分光器の目盛りと実際の波長を換算することが可

能になる。 (2) ナトリウム灯のスペクトルを観察しなさい。一本の黄色の線スペクトル(D 線)

が観察できるであろう。(1)で作成したグラフを用いてこの線スペクトルの波長

を求めてナトリウムの D 線の波長(λ=589nm)と比較しなさい。 (3) 白熱灯 (4) 蛍光灯の光を観察し、白熱灯とどのように違うか調べなさい。

以下は時間に余裕があれば行うこと

(5) 水素放電管のスペクトルを観察しバルマー系列の線スペクトルの波長を求めなさ

い。なお放電管部分には高電圧がかかっているので触らないように注意すること。 (6) 白熱灯とスリットの間に過マンガン酸カリ溶液を置き、どの波長が強く吸収され

るか調べなさい。

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B. エクセルによるシミュレーション 2 重スリットによる光の干渉 (1) 図 1 において、d=0.1mm、L=1000mm として、波長 0.0006mm (600nm)の光を

入射した際にスクリーンに映る光の強度分布を-10mm<x<10mm の範囲で計算し、

グラフ化しなさい。参考例を図 8 に示す。 (2) (1)で光の波長を 400nm にした場合に、強度分布はどうなるか確認しなさい。

波長λmm スリット間距離dmm スリット-スクリーン間距離Lmm

0.0006 0.1 1000

スクリーン位置第一スリットからの波 第二スリットからの波 合成波の絶対値二乗(光強度)10 0.645382871506258-0.763859246960025i 0.333337216794902+0.942807668562061i 0.989915549

9.99 -0.34270925775269-0.939441517419046i 0.981985949240188+0.188953950725692i 0.9719062769.98 -0.985462710816938-0.169891864400071i 0.660197082371419-0.751092412708494i 0.9540097689.97 -0.638298327469303+0.769789091342486i -0.312367645414896-0.949961290841871i 0.9362278139.96 0.348432640401137+0.937333822660365i -0.976892483435016-0.213731316863411i 0.9185623619.95 0.985961213807643+0.166974503643399i -0.681285112385735+0.732018166196411i 0.9010153479.94 0.63843676633945-0.769674278760844i 0.282221755614563+0.959349196412773i 0.8835886889.93 -0.345319290363484-0.938485262379149i 0.968885769410035+0.247508314677959i 0.8662842969.92 -0.984862174680167-0.173339253731671i 0.708500433290798-0.705710376873368i 0.8491040659.91 -0.645795002413972+0.763510847897486i -0.242668245148342-0.970109335485761i 0.8320498779.9 0.333337216794902+0.942807668562061i -0.957022521064756-0.290013610326926i 0.815123441

9.89 0.981985949240188+0.188953950725692i -0.741057515354167+0.671441552882385i 0.7983269339.88 0.660197082371419-0.751092412708494i 0.193475072041443+0.981105191352364i 0.7816620269.87 -0.312367645414896-0.949961290841871i 0.940127195609418+0.340823790360315i 0.7651305479.86 -0.976892483435016-0.213731316863411i 0.777911658222469-0.628373656355491i 0.7487341559.85 -0.681285112385735+0.732018166196411i -0.134463335977642-0.990918569448451i 0.732474959.84 0.282221755614563+0.959349196412773i -0.916816151046727-0.399309585634836i 0.7163544129.83 0.968885769410035+0.247508314677959i -0.817723951485949+0.575610579442565i 0.7003746099.82 0.708500433290798-0.705710376873368i 0.065575019629426+0.997847642077988i 0.6845369899.81 -0.242668245148342-0.970109335485761i 0.885534563434025+0.464573500066148i 0.6688435849.8 -0.957022521064756-0.290013610326926i 0.858826546584812-0.512266495958116i 0.653295818

9.79 -0.741057515354167+0.671441552882385i 0.0130458769727687-0.999914898925909i 0.6378956859.78 0.193475072041443+0.981105191352364i -0.844609549034313-0.535382769315613i 0.622644585

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

-15 -10 -5 0 5 10 15

系列1

図 8 2 重スリットの計算例

多重スリットによる光の干渉 (1) 格子定数 d=0.1mm の回折格子が L=1000mm のスクリーン上に映す光の強度分布

を計算する。光の波長を 0.0006mm (600nm)とする。本来回折格子は非常に多数の

スリットがあるが、この計算では中央から±3 番目までのスリット(計7つのスリ

ット)から来る光の重ね合わせを計算することとする。スクリーンに映る光の強度

分布を-10mm<x<10mm の範囲で計算し、グラフ化しなさい。参考例を図 9 に示す。 (2) (1)で光の波長を 400nm にした場合に、強度分布はどうなるか確認しなさい。 波長λmm スリット間距離dmm スリット-スクリーン間距離Lmm

0.0006 0.1 1000

スクリーン位置 (N=3)スリットからの波 (N=2)スリットからの波 (N=1)スリットからの波 (N=0)スリットからの波3 2 1 0

10 0.813185368961615+0.582004772924382i -0.776439642635572+0.630191622717999i -0.304434980548028-0.952533118909113i 0.985961213807643+0.166974503643399i9.99 0.89769141571981-0.440624695339428i 0.177085993650503+0.984195382458592i -0.979082347689449-0.203464386178313i 0.63843676633945-0.769674278760844i9.98 0.0380529923981728-0.999275722595893i 0.947075472490697+0.321010980196195i -0.659521231639332+0.7516859350932i -0.345319290363484-0.938485262379149i9.97 -0.8610500643835-0.508520192937479i 0.739727155413482-0.672906929332637i 0.328090472406171+0.944646305193799i -0.984862174680167-0.173339253731671i9.96 -0.857255142202293+0.514891853856445i -0.229162213402332-0.973388247282935i 0.983284305171604+0.182076838733528i -0.645795002413972+0.763510847897486i

(N=-1)スリットからの波 (N=-2)スリットからの波 (N=-3)スリットからの波 合成波の絶対値二乗(光強度)-1 -2 -3

-0.681285112385735+0.732018166196411i -0.134463335977642-0.990918569448451i 0.792323975933849+0.61010057954437i 1.0878449170.282221755614563+0.959349196412773i -0.916816151046727-0.399309585634836i 0.936421314222931-0.35087764572426i 1.1217893360.968885769410035+0.247508314677959i -0.817723951485949+0.575610579442565i 0.197335328815196-0.98033604850653i 1.1531585360.708500433290798-0.705710376873368i 0.065575019629426+0.997847642077988i -0.727014336860069-0.68662227898599i 1.181799313-0.242668245148342-0.970109335485761i 0.885534563434025+0.464573500066148i -0.967733050066593+0.251977665297561i 1.207572959

図 9 7 つのスリットの計算例

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ボーアモデル (1) ボーアモデルにおいて n=1 から n=10 までの水素の電子軌道半径とエネルギー準位

を求め、グラフ化しなさい。参考例を図 10 に示す。 (2) バルマー系列における線スペクトルをエネルギーの低い順に 6 本算出し、各光の波

長を求めなさい。

n r(x10^11m) E(x10^18J)1 5.3 -2.22 21.2 -0.553 47.7 -0.24444

図 10 ボーアモデルによる軌道半径とエネルギー準位の計算例 4.検討課題

① 作成した分光器で光スペクトルが観察されるメカニズムを考えよ。 ② 分光器に用いた回折格子の格子定数は 0.002mm である。計算により水銀灯の線ス

ペクトルが分光器のどの位置に見えるかを算出し、実験で作成した「分光器の目盛

りと光の波長の関係のグラフ」と比較しなさい。 ③ スリットの数が増えるにともない、スクリーン上の光の強度分布はどのように変化

していくかシミュレーションで確かめながら考察しなさい。 ④ ボーアモデルにおいて n=1 に遷移する電子のスペクトル(ライマン系列)は人間の

目では観察できないが、作成した分光器のどの位置にあると考えられるか考察しな

さい。

5.発展課題 ① 蛍光灯が白色光を出す理由を考えなさい。なぜ「蛍光」灯と呼ばれるのだろうか? ② 白熱灯の光が連続スペクトルである理由を考えなさい。

6.参考文献 ① 高校の教科書・参考書 「物理 I」「物理 II」 ② 「光学入門」共立出版 青木貞雄著 ③ 「ファインマン物理学 II 光 熱 波動」岩波書店 富山小太郎訳 ④ 「六訂 物理学実験」三省堂 吉田卯三郎他著 ⑤ 「光学のすすめ」オプトロニクス社 光学のすすめ編集委員会著

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----------------------------------------------------------切り取り線--------

実験終了時の TA 確認チェック表

学籍番号( ) 氏名( )

各実験終了時に、TA の確認サインを得ること。

No. 月日 実験テーマ TA の確認サイン

1 4月24日

2 5月 8日

3 5月15日

4 5月22日

5 5月29日

6 6月 5日

7 6月12日

8 6月19日

9 6月26日

10 7月 3日

11 7月10日

12 7月17日

13

14

※TA の確認を得ないで帰宅することを禁ずる。