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特許紹介 42 特許 第6200695号 発明の名称:油浸型ソレノイド 発明者:清水 博明 ―自動組立に適した新型ソレノイド― 油圧ショベルなどの建設機械の電気制御化が急速に進展する 状況において,その駆動源として使用される油圧機器を制御す る電磁比例カートリッジ弁の重要性がますます拡大している. 電磁比例カートリッジ弁は,油圧を制御するバルブと,電気 信号でバルブを動かすソレノイドとで構成される.従来の電磁 比例カートリッジ弁においては,組立工数が多いため高コスト であるという問題があった. 本発明は,自動組立に適した構造を実現することで,組立工 数を大幅に低減して低コスト化を図るものである. 本発明のソレノイドは,図1 に示すように,磁極一体ケース に可動鉄心やコイルモールドなどの部品を一方向から挿入し, 最後にカシメを行うだけのシンプルな構造であり,TIG溶接・ インサート成形・ナット固定などの手間のかかる工程をすべて 排除した.このように自動組立に適した構造とすることで,低 コスト化を実現した. 特許 第5462764号 発明の名称:減圧弁 発明者:二宮 誠,野道 薫,鈴木 豊 ―高耐久性・高信頼性を実現する水素減圧弁― 当社は,低炭素社会実現の一環として,図1 に示すような FCV用の高圧水素減圧弁(減圧弁)を自動車メーカーに提供 している.FCVでは,タンクに貯留された高圧の水素ガスを 低圧にして燃料電池に供給する.減圧弁はこの減圧を行う役割 を担っており,安定した圧力で確実に水素を燃料電池に供給す ることが求められる.このため,減圧弁には高耐久性と高信頼 性が必要とされる. 減圧弁は,主に弁体とシリンダ部のあるハウジングから構成 され,シリンダ部に対して弁体が往復動作することで,水素ガ スの減圧を行う.弁体とシリンダ部との間の摩擦抵抗が大きい と,減圧弁の動作や耐久性に影響が及ぶことから,摩擦抵抗を 抑えることが課題であった. 本発明は,図2 に示すように,弁体とシリンダ部の間に転が り軸受を設けることで,両者の間の摩擦抵抗を極小化している. また,水素ガスが転がり軸受に触れると腐食などの問題が発生 するが,転がり軸受とガス流路の間にシールを設けることで, 転がり軸受を水素ガスから分離・保護している.このようにし て,減圧弁の高耐久性と高信頼性を実現している. 図 2  高圧水素減圧弁の内部構造 図 1  高圧水素減圧弁「KGPR65D」 図 1  新型ソレノイドの組立工程 ⒜ 磁極一体ケースへの一方向からの部品挿入 ケースのカシメ 可動鉄心 磁極一体ケース ガイドパイプ カバー コイルモールド (コイルと樹脂の一体成形) † FCV(燃料電池車)の走行において,高精度なガスコントロー ル技術によりCO2排出量ゼロの実用化に寄与する水素減圧弁. 転がり 軸受 シール ハウジング 弁体 シリンダ部 シール

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Page 1: 特許紹介 - Kawasaki Heavy Industries特許紹介 42 特許 第6200695号 発明の名称:油浸型ソレノイド 発明者:清水 博明 ―自動組立に適した新型ソレノイド―

特許紹介

42

特許 第6200695号発明の名称:油浸型ソレノイド発明者:清水 博明

―自動組立に適した新型ソレノイド―

 油圧ショベルなどの建設機械の電気制御化が急速に進展する状況において,その駆動源として使用される油圧機器を制御する電磁比例カートリッジ弁の重要性がますます拡大している. 電磁比例カートリッジ弁は,油圧を制御するバルブと,電気信号でバルブを動かすソレノイドとで構成される.従来の電磁

比例カートリッジ弁においては,組立工数が多いため高コストであるという問題があった. 本発明は,自動組立に適した構造を実現することで,組立工数を大幅に低減して低コスト化を図るものである. 本発明のソレノイドは,図 1に示すように,磁極一体ケースに可動鉄心やコイルモールドなどの部品を一方向から挿入し,最後にカシメを行うだけのシンプルな構造であり,TIG溶接・インサート成形・ナット固定などの手間のかかる工程をすべて排除した.このように自動組立に適した構造とすることで,低コスト化を実現した.

特許 第5462764号発明の名称:減圧弁発明者:二宮 誠,野道 薫,鈴木 豊

―高耐久性・高信頼性を実現する水素減圧弁―

 当社は,低炭素社会実現の一環として,図 1に示すようなFCV用の高圧水素減圧弁(減圧弁)を自動車メーカーに提供している.FCVでは,タンクに貯留された高圧の水素ガスを低圧にして燃料電池に供給する.減圧弁はこの減圧を行う役割を担っており,安定した圧力で確実に水素を燃料電池に供給することが求められる.このため,減圧弁には高耐久性と高信頼性が必要とされる. 減圧弁は,主に弁体とシリンダ部のあるハウジングから構成

され,シリンダ部に対して弁体が往復動作することで,水素ガスの減圧を行う.弁体とシリンダ部との間の摩擦抵抗が大きいと,減圧弁の動作や耐久性に影響が及ぶことから,摩擦抵抗を抑えることが課題であった. 本発明は,図 2に示すように,弁体とシリンダ部の間に転がり軸受を設けることで,両者の間の摩擦抵抗を極小化している.また,水素ガスが転がり軸受に触れると腐食などの問題が発生するが,転がり軸受とガス流路の間にシールを設けることで,転がり軸受を水素ガスから分離・保護している.このようにして,減圧弁の高耐久性と高信頼性を実現している.

図 2 高圧水素減圧弁の内部構造図 1 高圧水素減圧弁「KGPR65D」

図 1 新型ソレノイドの組立工程

⒜ 磁極一体ケースへの一方向からの部品挿入 ⒝ ケースのカシメ

可動鉄心

磁極一体ケース

ガイドパイプ

カバー

コイルモールド(コイルと樹脂の一体成形)

可動鉄心

磁極一体ケース

ガイドパイプ

カバー

コイルモールド(コイルと樹脂の一体成形)

†  FCV(燃料電池車)の走行において,高精度なガスコントロール技術によりCO2排出量ゼロの実用化に寄与する水素減圧弁.

図 2 高圧水素減圧弁の内部構造

転がり軸受

シール

ハウジング

弁体

シリンダ部シール

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