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2008/11/13 1 Cloud 時代の到来 早稲田大学 丸山不二夫 はじめに Cloudは、現在進行中の歴史的な変化である。 その意味で、筆者は、Cloudの「厳密な」定義 を与ええようとは思わない。けだし、未来や歴 史を定義することなどできないからである。 いろんなCloud概念があって構わない。 歴史的なアプローチを通じて、多くのCloud念の中から、共通のコアの部分を見つけ出し てみよう。 Agenda 我々は、どういう時代にいるのか? Cloudの時代の始まり Cloudとは何か? Scale-outするシステム Cloud OSの登場 この40年以上ものあいだ、IT技術の革新 のドライビング・フォースは、Mooreの法則 であった。同時に、Mooreの法則は、経済 的には多くの負荷を、ITベンダに与えるこ とにもなった。あと10数年で、Mooreの法 則は、その終焉を迎えようとしている。その 最後を飾るのは、高機能なMobile Deviceかもしれない。 我々は、どういう時代にいるのか? --- Mooreの法則の諸帰結 IBMシステム/360 196340年前 40年前

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Page 1: Cloud - ITmediastream.itmedia.co.jp/enterprise/pdf/pdf_4_1226530334.pdfCloud 時代の到来 早稲田大学 丸山不二夫 はじめに Cloudは、現在進行中の歴史的な変化である。その意味で、筆者は、Cloudの「厳密な」定義

2008/11/13

1

Cloud 時代の到来

早稲田大学

丸山不二夫

はじめに

Cloudは、現在進行中の歴史的な変化である。

その意味で、筆者は、Cloudの「厳密な」定義を与ええようとは思わない。けだし、未来や歴史を定義することなどできないからである。

いろんなCloud概念があって構わない。

歴史的なアプローチを通じて、多くのCloud概念の中から、共通のコアの部分を見つけ出してみよう。

Agenda

我々は、どういう時代にいるのか?

Cloudの時代の始まり

Cloudとは何か?

Scale-outするシステム

Cloud OSの登場

この40年以上ものあいだ、IT技術の革新のドライビング・フォースは、Mooreの法則であった。同時に、Mooreの法則は、経済的には多くの負荷を、ITベンダに与えることにもなった。あと10数年で、Mooreの法則は、その終焉を迎えようとしている。その最後を飾るのは、高機能なMobile Deviceかもしれない。

我々は、どういう時代にいるのか?--- Mooreの法則の諸帰結

IBMシステム/3601963年

40年前 40年前

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System/360 Announcement

Powerful main memories - - containingup to 524,000 characters of information - - range from 2.5 millionths-of-a-second down to one millionth-of-a-second.A key development provides 8,000,000

characters in bulk core storage

The computer's historic limitations on memory size are overcome by this development.http://www-03.ibm.com/ibm/history/exhibits/mainframe/mainframe_PR360.html

40年前

http://www.intel.com/technology/silicon/mooreslaw/index.htm

Moore’s Law40th Anniversary2005年

1965年

Mooreの法則 回路の集積度

パフォーマンスMooreの法則 価格Mooreの法則

原油の価格が、1.5年で半分になったとしたら、石油業界はやっていけるだろうか?

情報1bitを蓄えるのに必要な電子の数

X

Moore則の限界Mooreの法則

Multi-Core /Scale-outへ

東大大型計算機センターのHITAC8800/8700

30年前

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3

• 主メモリー 4MB• スワップ用ドラム 16MB• ファイル用ドラム 8MB• 集団ディスク 2.13GB• IOプロセッサー 8MB/sec

30年前

東大大型計算機センターのHITAC8800/87001975年東大大型計算機センターのHITAC8800/8700

30年前

1977年

30年前

TRS-80

• CPU Z80 1.8Mz• Memory 4KB

20年前

Sun3/260

• CPU 68020 25MH• Memory 4MB• Disk 120M

約2,000万円

1987年 wakhok丸山研究室

10年前

System全体でMemory 8GDisk 1TStorage 2T

1999年 wakhokシステム 10年前

Memory 1G x 8

87,589,200円Disk 1T

61,256,000円

Backend 3T

16,966,000円

CPU 400MHz x 8

1999年 wakhokシステム

カタログ価格

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現在

Memory 4GDisk 0.5TCPU 2.4GHz x 2

56,800円!

現在

Disk 1T

9,480円!

ネットワークの進化(Gilder則)

Log Growth

100

10,000

1M2x/6-9mo

2x/18mo

Y 97 99 01 03 05 07

コンピュータの進化(Moore則)がを上回る。

Scale-upからScale-outへ

1980年以来の変化

マイクロプロセッサのパフォーマンスは、1万倍以上 (1 MHz 3.5GHz, 8 bit 64 bit)

メガバイトあたりのメモリの値段は、3万分の一 ($3,500 10 cents)

一般ユーザのネットワーク接続のスピードは、100万倍 (96 baud 100Mbps)

メガバイトあたりのディスクの値段は、 360万分の一 ($1,200 .033 cents)

20世紀末に、ネットワークの世界では二つの大きな変化が進行する。一つは、インターネットの登場とその爆発的な普及であり、もう一つは、携帯電話の登場と、その爆発的な普及である。

20世紀末に起きたこと

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25

系列1

1993/06 1995/06

1993年 1994年 1995年

6月10月

3月

800K

1200K

400K

インターネットの爆発

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5

コンピュータの数より携帯の数のほうが多い

“You Are Here”

10^10

10^9

10^8

„95 „97 „99 „01 „03 „05 „07

Computer

MAD (Mass Access ConsumerDevices)

携帯電話の急速な普及

CRAY-1 Memory 4M CPU 80MHz 500万$Android Memory 192M CPU 528MHz 178$

2008年 1075年

CloudとMobile Device

Cloudの時代の始まり

Cloudは、インターネットCloudから生まれた。無数の個人がWebをプラットフォームとしてネットワークへ参加する中で、ネットワークがサービスを提供するという考えは一般化した。エンタープライズで主流のWebアプリも、SOAの考え方も、基本的には、同じ考えに基づいている。

小さなCloud

Request

Response

invoke

小さなCloud

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大きなインターネットCloud

Web2.0 Summit2006 11/7-9

Cloud概念の登場

Web2.0 Summit 2006

Microsoft : Debra ChrapatyIt’s all about the Infrastructurehttp://conferences.oreillynet.com/presentations/web2con06/chrapaty.ppt

Google : Marrisa MayerA Secret Google Discovered …http://conferences.oreillynet.com/presentations/web2con06/mayer.ppt

Amazon : Jeff BezosWeb Scale Computinghttp://conferences.oreillynet.com/presentations/web2con06/bezos.ppt

Cloud

Cloud という偉大な経験

世界中の人々が、いつもインターネットのcloudにつながっていると信じています。

それはまさに、我々が望んでいたことです。我々の顧客は、望んだものを、望んだ時間に、望んだデバイス上で得ることが出来るのです。

我々の顧客は、サービスや情報がcloudから来ると考えています。-- この経験こそ、まさに、我々が彼らに持たせようとしたものなのです。

“It's All About the Infrastructure”, Web2.0 Summit

Debra Chrapaty, MicroSoft

Cloudの実体

ネットワークのインフラ

多数のサーバ

データセンタ

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ネットワーク上の多様なサービスの展開

インターネットの爆発から、わずか10数年の間に、驚くほど多様なネットワーク上のネットワークサービスが展開されている。こうした変化を技術の進化としてだけではなく、新しいサービスの登場として捉える視点が重要である。

すべては、Googleから始まった!

これは、Webアプリか?

検索サービス巨大なクラスタが提供するサービス

これは、Webアプリか?

動画コンテンツ配信サービス

これは、Webアプリか?

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論理的に可能な経路 N=n(n-3)/2

n=10,000 N=50,000,000

Long Tailの可能性

個人データの保存+個人データの自由な交換

マッシュアップされたサービス

SaaS (Software as a Service)

サービスとしてのソフトウェアネットワーク上を流れる情報の止むことのない増大

コンピュータの処理能力は増大したのだが、処理すべき情報の量は、それを上回るスピードで増大を続けている。インターネットの爆発とは、ネットワーク上に流れる情報の量の爆発的な増加であった。

その傾向は、今も、止むことはない。

Googleのビジョン

全世界の情報を、組織し、アクセス可能にするという夢は、ほとんど達成可能なところにまで来ている!

Webのスケール

Googleは、数十億のwebドキュメントにindexを付けている Web pages: ライバル社の3倍以上

Images: 20億以上の画像イメージ

News: 4500のソースから。 常に更新されている

File types: 3500万以上のnon-HTML文書

UseNet messages: 10億以上のメッセージ

数ペタバイトのデータ

ドキュメントは、35以上の言語でindex

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ネットワークを流れる情報の量メディア別

Internet Radio

64kbps 21GB/一月

Youtube

512kbps 166GB/一月

HDTV

4000kbps 1296GB/一月

ネットワークを流れる情報の量ネットワーク帯域別

1M (ADSL…)

22時間/10GB 324GB/一月

4M (e-Mobile…)

6時間/10GB 1296GB/一月

20M (FTTH…)

1時間/10GB 6480GB/一月

一月のデータ転送の上限1G ?データ通信上限設定が20G/月 あるいは 250GB/月の場合

Internet Radio

104%/20GB上限 8%/250GB上限

Youtube

829%/20GB上限 66%/250GB上限

HDTV

518%/20GB上限 6480%/250GB上限

Cloudとはなにか?

Cloudとは何か? -- 広い意味で

ネットワークを通じて、サービスを提供するシステム。

ネットワークで結合された、多数のサーバ群で構成されたシステム。

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Cloudとは何か? -- 疑問

ネットワークを通じて、サービスを提供するシステム。

WebアプリやSOAとどう違うのか?

ネットワークで結合された、多数のサーバ群で構成されたシステム。

自社やデータセンタのサーバーとどう違うのか?

Cloudとは何か? -- 違いは?

ネットワークを通じて、サービスを提供するシステム。

サービス提供のスタイルが違う。

ネットワークで結合された、多数のサーバ群で構成されたシステム。

規模と結合のスタイルが違う。

Cloudのサービス提供のスタイル

ユーザは、サーバ施設を所有せずに、Cloudからのサービスのみを受け取る。

サーバ導入に伴う固定的な経費がいらない。

利用の多寡に応じた、従量制の課金体系。

ユーザは、サーバ施設の保守・管理の人的負担とコストから解放される。

かつ、ユーザは、Cloudのサービス内容を、自由に構成できる。

あるいは、サービスの実装を知る必要がない。

Cloudのネットワークの特徴

大規模化を徹底して推進する。

スケールメリットによるコスト・ダウン。

ダウン時間なしの高可用性。

ネットワーク上の多数のマシンとリソースを協調動作可能にするCloud OS。

安価なマシンを多数並べる、Scale-outのデザイン。

Cloudの成立と巨大化と寡占化の進行

Cloudが、誰にも必要な新しい社会インフラになる半面で、その巨大化と寡占化が進行している。

「世界には、5つのコンピュータがあればいい。」

Cloudの主要なプレーヤ達

Google

Amazon

MocroSoft

IBM

Yahoo

e-Bay

Akamai

MySpace

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世界第四位のサーバー・メーカー?

Dell

HP

IBM

北米におけるGoogleデータセンターの位置(推定)

GoogleのデータセンタGoogle の場合、データセンターの運営は同社の強みであるとして、データセンターの数などの詳細を企業秘密としており、正式に公表はしていない。しかしながらデータセンターに関するニュースを配信する” Data Center Knowledge”によると、2008 年3 月現在、同社の米国内におけるデータセンターの数は16 ヶ所(それに加えて3 ヶ所を建設中)であり、また、米国外では、尐なくとも17 ヶ所のデータセンターを所有すると推定されている。この中でも、米国内では、オレゴン州ダレス、ジョージア州アトランタ(2 ヶ所)、バージニア州レストンに位置するデータセンターは特に重要な施設と見られている。また、米国外の分布は、判明している範囲内では、ヨーロッパに12 施設、アジアに3 施設、ロシアと南アメリカにそれぞれ1 施設などと欧州地域が多い。なお、現在、同社は、マレーシアや台湾地区など、アジア地区でのデータセンターの新設に焦点を当てているとの報道もある。

Newyork JETRO/IPA の市川類氏のレポートから

Microsoftのサーバー増設の取組

Microsoft も、Google と同様、データセンターの数を公開していないが、同社のGlobal Foundation Services 担当副社長によると、サーバ数は現在毎月1 万台単位で増加9しているとしており、今後数年間は、サーバの増加数が月間2 万台まで成長すると見込んでいる。

また、同社は2008 年6 月、アイオワ州デモインで、新データセンターの建設に着工すると発表した。他にも同社は現在、イリノイ州ノースレークで、5 億ドルを投じて55 万sqf のデータセンターの建設を行っている他、テキサス州サンアントニオやアイルランドのダブリンでもデータセンターを建設中とされる。

Newyork JETRO/IPA の市川類氏のレポートから

IBMのデータセンタ設置の取組

IBMは、ノース・カロライナ州のリサーチ・トライアングルにアウトソーシング向けのデータ・センターを新設する。これに伴い、同社は、総額3億 6000万ドルを費やす計画だ。同センターでは、水冷式コンピュータを大量に導入することで電力消費量を極力抑えるという。同センターの機能の大半は、顧客各社の緊急用バックアップ・システムに使われるが、同時に、クラウド・コンピューティング・サービスにも使われる予定。【8月4日WSJ】

IBMは、世界各国に新たに13の専用センター「ビジネス・レジリエンス・センターズ」を新設する。新たに施設を設立する場所には、香港、北京、上海、東京ほか、欧米各地の主要都市が含まれている。同社によると、この分野における投資では、これまでで最大規模になるという。施設は年内に稼働を開始する予定。センターでは、データの保存、複製、復旧に加えて、クラウド・コンピューティングを使ったビジネス・アプリケーションを提供していく。【8月21日Computer World】

Newyork JETRO/IPA の市川類氏のレポートから

HP、Yahoo!、Intel、大規模クラウドコンピューティング研究事業を発表

米Hewlett-Packard(HP)、米Yahoo!、米Intelは7月29日、主に研究と教育利用を目的とした、オープンソースのクラウドコンピューティングテスト環境「Cloud Computing Test Bed」の開設を発表した。教育機関や政府機関が、コンピューティングリソースを必要なときに必要なだけ、低コストで利用できるようにするのが狙い。

3社はクラウドコンピューティングに関するソフトウェア、データセンター管理、ハードウェア上の課題などを研究する分散型のテスト環境を提供する。クラウドアプリケーションとサービスの研究も支援する。

HP、Yahoo!、Intelは、シンガポールの情報通信開発庁(IDA)、米イリノイ大学アーバナシャンペーン校、独カールスルーエ工科大学と提携し、研究イニシアチブを形成。イリノイ大学とともに、米国科学財団(NSF)も参加している。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0807/30/news020.html

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Scale-outするシステム

Cloudのシステムの最大の特徴は、システム

に対する要求の増大に対して、サーバを高機能化=Scale-upするのではなく、多数のマシンを並べるScale-outする戦略を取っていることである。

$10,000

machine

$1000machi

ne

Scale-up と Scale-out

価格

$500machi

ne

# MachinesScale Up

$500machi

ne

$500machi

ne

$500machi

ne

価格

$500machi

ne

Scale Out

性能は、価格にリニアにスケールする

Scale-up: Scale-out

Googleは、なぜ、安いPCを使うのか?

33倍ほど、PCクラスのサーバのほうがコストパフォーマンスがいい

“ENIAC は、17,468 個の真空管 、7,200個のクリスタルダイオード、 1,500 個のリレー、 70,000の抵抗、10,000 のコンデンサを含み、約500万のはんだ付け箇所があった。

システム障害--昔からの古い問題

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“真空管は大体二日でひとつは壊れた。問題を解くのは、15分以内に行わなければならなかった。“

1954年には、失敗せずに動かせた最長連続期間は116時間(約5日間)であった。

システム障害--昔からの古い問題

3-year MTBFだとしても, 1000台のうち一台は、毎日だめになるという計算になる。

最小のGoogleのアプリケーションでも、2000台のマシンを必要とする。

こうした障害をソフトでどう対応するか?データの多重化と冗長化は、この規模ではどうしても必要となる。

システム障害—Scale-outの新しい問題

システム障害についてのGoogle流の考え方の一例

だから、なぜ、高価な信頼性の高いハードのことで思い悩むのか?

信頼性の高いハードは、ソフトウェア技術者を怠け者にする

障害に強いソフトウェアが、安いハードを役に立つものに変えるのだ

Ben Jai, Google Platforms Architect「Googleはなにをしているのか?」より

システム障害についてのCloudの考え方のポイント

沢山のマシンから構成されるシステムでは、障害は、確率的には必ず起きるものである。

障害が起きるのは、当然のことであるという前提にたってシステムを構成すること。

本当に安いマシンで大丈夫か? Scale-upでも障害は起こりえる!

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「あり得ないことが起きた」 ここで問題。

稼働率が、99.9%のシステムがあったとしよう。このシステムの稼働率を99.99%にするためには、おおよそ、どれくらいのコストがかかるだろうか?

解答: 2倍のコストがかかる

99.9%の稼働率の同じシステムを二つ用意して、一方がダウンしたら、もう一方に切り替えるようにする。

このシステムがダウンするのは、両方のシステムが、同時にダウンした場合だけ。

その確率は、0.1% x 0.1% =0.01%

よって、このシステムの稼働率は、99.99%になる。

Cloudの先駆、GoogleScale-outするシステム(1)

Cloudの特徴であるScale-outするシステムは、歴史的には、Googleの大規模分散システム GFS,BigTable,MapReduce等によって、初めて実現された。

それは、ネットワークに登場し始めた無数の個人たちが生成する、情報の急速な拡大を、ターゲットとしていた。

Googleのビジョン、再び

全世界の情報を、組織し、アクセス可能にするという夢は、ほとんど達成可能なところにまで来ている !

Googleの提供するサービス

検索サービス 地図情報サービス 乗り換え検索 Youtube Gmail Blog Google Group Gtalk カレンダー 写真共有 ドキュメント共有 ……

Google App Engine Open Social Google Gear GDATA 様々のAPI ……

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GFS chunkserver

Linux File System

GFS chunkserver

Linux File System

Application

GFS Client

GFS Architecture

Chunk 2ef0GFS Master

File NameSpace

/foo/bar

(file name,chunk index)

(chunk handle,chunk location)

(chunk handle,byte range)

chunk data

Instruction to chunkserver

Chunkserver state

・・・・・・・・

・・・・

GFS=Googleの分散ファイルシステム

Googleの分散データベース=BigTableTablets の分割

“aaa.com”

“cnn.com”

“cnn.com’sports.html

“webside.com”

“zuppa.com’menu.html”

“language:” “contents:”

BigTable Tabletsの分割

“aaa.com”

“cnn.com”

“cnn.com/sports.html

“webside.com”

“yahoo.com/kids.html”

“yahoo.com/kids.html”

“zuppa.com’menu.html”

“language:” “contents:”

Tablets Split

Googleの分散アルゴリズム=MapReduce

CloudのEnterprise利用Scale-outするシステム(2)

Google型の大規模分散システムのみが、Cloudのアーキテクチャーではない。

実践的には、Web Multi-Tier ApplicationのScale-Out戦略は重要であり、Cloudのアーキテクチャーにも大きな影響を与えている。

Cloudのエンタープライズ分野での活用の、新しい焦点となりつつある。

Web Appli Multi-tier のScale-out戦略

Web Server Business LogicDaa Base

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17

・・・・・・・

Web Appli Multi-tier のScale-out戦略

Load Balancer

Web Server Business Logic

Daa Base

・・・・・・・

Web Appli Multi-tier のBottle Neck

Load Balancer

Web Server Business Logic

Daa Base

Multi-tier の分散メモリーCache

・・・・・・・

Load Balancer

Web Server Business Logic

Daa Base

分散メモリーCache / Data Grid

Oracle Coherencehttp://coherence.oracle.com/display/COH33UG/Coherence+3.3+Home

IBM Object Gridhttp://www.ibm.com/developerworks/downloads/ws/wsdg/learn.html?S_TACT=105AGY09

GiGaSpacehttp://www.gigaspaces.com/

Terracottahttp://terracottatech.com/

Key/Value の形式

Cloud上の分散データベース

On MemoryHash

Persistency

Cloud 上の分散データベース

Google: BigTable + Google App Enginehttp://labs.google.com/papers/bigtable-osdi06.pdf

Microsoft: SSDS(SQL Server Data Service)http://www.microsoft.com/sql/dataservices/default.mspx

Amazon: SimpleDBhttp://www.amazon.com/SimpleDB-AWS-Service-Pricing/b?ie=UTF8&node=342335011

Amazon: Dynamohttp://www.allthingsdistributed.com/2007/10/amazons_dynamo.html

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Cloud OSの登場

Cloudでの最近の注目

すべき動きは、マイクロソフト社が、Cloudへの本格参入を宣言したことである。同社のWindows Azureは、

画期的なものである。今後のレクチャーでも取り上げていく予定である。

Google Basic Computing Cluster

Job 0Task

BigMemory JobTask

GFSChunkServer

WorkqueueSlave

Job NTask

BigMemory JobTask

GFSChunkServer

WorkqueueSlave

Machine 1 Machine N

GFSMaster

WorkqueueMaster

ハードを選んで、組み立てる デバイスドライバを見つける ファイルシステムを書く ジョブスケジューラを書く アプリのインストーラを書く …

とんでもなく手間がかかる!

PC上のアプリを次のような手順で開発することを想像してみよう

ハードからは抽象化されたアプリの実行環境

アクセスコントロール付きの共有ファイルシステム

共有プールからのリソースの割り当て 強力な開発環境のサポート 他のシステムとのインターオペラビリティ ……..

PCでの解答は?Operating System

Cloudサービスの開発も、現在では非常に手間がかかる!

Business logic

Datacenter

ハードのエラーへの対応

ストレージの容量の追加

トラフィックの増大に対応する

サービスのエラーの診断

OSにパッチを当てる

ソフトの更新を行う

新しいlocaleに拡張する

Service “glue”and operations

Cloudで欠けていたものは?CloudのためのOperating System

….Service 1 Service 2 Service NService 3

……

Page 19: Cloud - ITmediastream.itmedia.co.jp/enterprise/pdf/pdf_4_1226530334.pdfCloud 時代の到来 早稲田大学 丸山不二夫 はじめに Cloudは、現在進行中の歴史的な変化である。その意味で、筆者は、Cloudの「厳密な」定義

2008/11/13

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PCのOSが提供するのと同じ機能。ただし結合されたサーバ上で。 抽象的な実行環境 共有ファイルシステム リソースの割り当て 開発環境

さらに、 Utility computing 24時間/7日の可用性 従量制課金 簡単で、見通しのよい管理

Cloud OSが提供すべきものは何か?

サービス管理の自動化 ルールを定義してコードを与える プラットフォームはルールに従って、サービスを配備しモニタし管理する

強力なサービスのホスティング環境 全てのハードウェア:

servers; load balancers; … 仮想化と直接の実行

スケーラブルで可用性の高いCloudストレージ Blobs, tables, queues, …

豊富で、かつ身近な開発環境

Windows AzureCloud OS が可能としたもの

まとめ

Cloud技術は、IT技術の絶えざる高性能化・低価格化のなかで、技術が新しい歴史の段階にさしかかったことを示している。

そうした技術を利用して、我々があるいは機械が産み出す情報も、爆発的に増大している。

ITの世界はカンブリア紀を迎えようとしている。

まとめ

Cloud技術の核心は、多数のマシンを協調動作させる、Scale-outの技術である。

Cloudの焦点は、コンシューマ向けのサービスからエンタープライズ向けのサービスに変わりつつある。

Cloud化は、明白な経済的なメリットを伴っている。昨今の世界的な不況は、Cloud化を推進する強力な梃子となるであろう。