世界のプライベート ブランド市場動向 -...
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世界のプライベートブランド市場動向
現在の状況とこれからの展望
2014年11月 Copyright © 2014 The Nielsen Company 1
目 次
はじめに/
調査について .................................................................. 4
第一章:プライベートブランドと ナショナルブランド ............................................................... 7 プライベートブランド、ナショナルブランドの双方に望ましい状況......... 8 ナショナルブランドの勝利:ヘアケア…………………………………………..………..10 プライベートブランドの勝利:牛乳・乳飲料 ..................................... 11 品揃えの問題 ........................................................................... 12
第二章:地域別傾向 .........................................................14 先進市場.................................................................................. 14 欧州 .................................................................................... 15
北米 .................................................................................... 17
太平洋地域 ..........................................................................20
成熟市場におけるプライベートブランドの成長促進要素 ..............22
新興市場..................................................................................24 アジア .................................................................................. 25
注目市場:インド .................................................................... 27
中南米 .................................................................................28
中東/アフリカ ......................................................................30
2 世界のプライベートブランド市場動向
プライベートブランドの
長い物語
世界のプライベートブランド市場
消費者のプライベートブランドに対する印象は全世界で好
意的である一方、プライベートブランドの総売上に占める
割合は、欧州、北米、オーストラリアなどの先進市場でより
高い傾向にあるなど、地域ごとの差が顕著にみられます。
プライベートブランドが強さを発揮するのは購入頻度の
高い生活必需品と、消費者が商品の差別化をしにくい
カテゴリーです。
また、プライベートブランドの成長の陰で小規模/中規模
ブランドは市場から消えていきますが、カテゴリーリーダー
が脅かされることはほぼありません。
先進市場のプライベートブランドは、小売の統合と新たな
値引き販売の広がりがこれからの成長の原動力となるで
しょう。
一方、ブランド志向が高いアジアや中東では消費者の信
頼獲得が難しく、プライベートブランドは苦戦を強いられて
いるようです。 Copyright © 2014 The Nielsen Company 3
「ノーブランド商品は経済的に苦しい人々のためのもの」という発想も今や
昔です。最近のプライベートブランド(ストアブランドとも呼ばれます)は、ナ
ショナルブランドの安い代替品ではなく、品質は目に見えて向上し、様々
な価格帯の消費者ニーズを満たす製品ラインナップを展開しています。
消費者もこの変化を察知し、好意的に受け止めています。プライベートブラ
ンドに対する消費者の評価は驚くほど良好です。世界全体では消費者の
4人中3人(71%)がプライベートブランドの品質は向上していると感じていま
す。もとは経済的なニーズを満たすことで台頭してきたプライベートブランド
が、今では魅力的で信頼のおける多様な商品を展開し、世界中で多くの消
費者から支持されるようになりました。
そこで消費者がプライベートブランドの品質、価値、製品ラインナップや
パッケージをどのように捉えているのかを理解するために、ニールセン
では60の国と地域で3万人以上の消費者を対象にオンラインアンケー
トを実施しました。世界全体に共通していた傾向は以下の通りです:
• 消費者の大半は価格を重視し、プライベートブランドの購入を促す最
大の要因にもなっています。回答者の69%が最も安い価格で商品を
購入することが重要であると回答し、70%は節約のためにプライベー
トブランドを購入しています。
• しかしプライベートブランドの魅力は価格だけではありません。消費
者は品質と価格を追求し、プライベートブランドはその両方を満たし
ます。3人中2人(67%)がプライベートブランドには価格に見合った価
値が非常にあると感じ、62%がプライベートブランドの購入は賢い選
択であると答えています。
しかしこの熱烈な支持は実際の売上に結びついているのでしょうか。答え
は市場によって異なります。プライベートブランドの発展状況を見ると世界
は大きく二つに分けられ、欧州、北米、太平洋地域は先進市場、中南米、
アジア、中東・アフリカは新興市場といえるでしょう。プライベートブランドの
総売上に占める割合は、先進市場で15%以上である(欧州には45%に達す
る国さえある)のに対し、新興市場では10%に届きません。中国、インド、ブ
ラジルといった主要なマーケットでさえ、シェアは5%以下という状況です。
ある市場でのプライベートブランド成功事例から学べることは確かにありま
すが、どこでも通用する定型的なアプローチは存在しません。プライベート
ブランドの成功には、それぞれの市場に合わせた戦略が欠かせません。
このレポートではプライベートブランドの地域別の発展状況、成長の原動
力と課題、そしてナショナルブランドに及ぼす影響を検証してまいります。
グローバル調査について
本調査結果は、60の国と地域の消費者
を対象に実施されたインターネットによる
アンケートに基づいています。オンライン
によるアンケートでは、世界各地から驚
異的な規模で回答が得られるものの、 その回答者はインターネットユーザーに限ら
れ、総人口が反映されるものではありませ
ん。新興市場のインターネット普及率はまだ
上昇を続けている段階であり、利用者は対象
国の人口全体に比べると比較的豊かで若い
世代が多いことが特徴です。また、購買習慣
に関する内容は実測データではなく消費者
の回答に基づいています。
なお、本調査結果には実際の購買行動を
示すニールセン・リテールおよび消費者購
買データが補助的に使用されています。
4 世界のプライベートブランド市場動向
プライベートブランドに対する好意的な評価は
世界共通
「ある程度同意する/完全に同意する」と回答した人の割合 出典:Nielsen Global Survey of Private Label, Q1 2014
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世界平均 アジア太平洋 欧州 中東・アフリカ 中南米 北米
プライベートブランド製品の品質は向上している
節約のためにプライベートブランド製品を購入する
重要なのは、製品を最も安く購入することである
プライベートブランド製品は通常、きわめてお買い得である
プライベートブランド製品はナショナルブランドの代替品として優れている
プライベートブランド製品を買うのは賢い消費者である
プライベートブランドの発展状況は地域によって
大きく異なる
国別プライベートブランド売上シェア(%)
全体平均(加重平均)
16.5%
欧州
アジア太平洋
中南米
中東/アフリカ 北米
出典:Nielsen; 一部を除き2013年 * 2014年初~集計時点 ** 2014年直近12ヶ月間 注:各国の比較に一貫性を持たせるため、プライベートブランドのシェ
アは全てのカテゴリーに均等に重みづけを行った上で平均を算出して
います。データ集計方法は国によって異なります。 6 世界のプライベートブランド市場動向
第一章:
プライベートブランドと
ナショナルブランド
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Win-Winシナリオ:
プライベートブランド、
ナショナルブランドの
双方に望ましい状況
世界のプライベートブランドに共通する傾向として、売上総額およびシェアが
高いのは購入頻度の高い生活必需品と、消費者にとって商品の差別化が難
しい紙製品、処方薬、OTC医薬品などのカテゴリーであることが挙げられま
す。しかしながら、「生活必需品」の定義は国によって様々です。例えば米
国、欧州、オーストラリアといった先進市場では牛乳、パン、卵などがこれに
含まれます。一方インドの場合は、現地の一般的な食品であるギー(バター
オイル)、米、そしてパンの原料となるアタ粉が人々の生活に欠かせません。
共通点も確かに見受けられますが、各製品カテゴリーにおけるプライベート
ブランドの市場シェアは各国で大きく異なります。プライベートブランド先進
市場である欧州であればどこでも同じ購買傾向が見られるだろうと思いが
ちですが、製品カテゴリー別のプライベートブランドとナショナルブランドの
売上比率を見ると、大きな違いが浮き彫りになります。 8 世界のプライベートブランド市場動向
市場、カテゴリーで異なるプライベートブランドの現状
カテゴリー別の前年比売上 欧州の主要市場
アルコール ベビー 製菓 飲料 用品 スナック
プライベートブランド ナショナルブランド
イギリス ドイツ フランス イタリア スペイン
13.2% 6.5%
4.2% 4.0% 3.8% 5.1% 1.4% 1.7% 1.1%
-4.1%
16.4%
4.4% 3.7%
-1.6% -4.8%
-4.5%
-7.3%
-9.3%
-10.5% -10.4%
4.6%
8.6% 6.3%
2.9%
1.2% 0.1% 2.0%
0.5% 3.0%
0.7%
出典:Nielsen 前年比売上高(2012年8月~2013年7月と2013年8月~2014年7月の比較)
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ナショナルブランドの
勝利:ヘアケア
各国で売上シェアにばらつきはあるものの、ヘアケアカテゴリーでは概して
ナショナルブランドがプライベートブランドを上回る傾向にあります。米国では
ヘアケアの総売上高に占めるプライベートブランドのシェアはわずか2%です。
(2014年9月時点)
プライベートブランドはなぜ、このカテゴリーで苦戦を強いられているのでしょう
か。実はナショナルブランドに有利な要素がいくつも挙げられます:
• 新商品投入率の高さ:1年以内に投入された新商品の売上は、カテゴリーの年
間総売上高の4%超を占めています。ヘアケアの新商品には大きな売上(通常
は数百万ドル以上)が期待できますが、開発には膨大な投資が必要となり、
プライベートブランドが大手と競い合うのは難しい状況です。
• 製品の差別化がしやすい:フケ対策、カラーリング保護、ダメージ補修など、
メーカー各社は様々なニーズにこたえる製品を作り出します。市場には特徴の
異なる商品が数多く存在し、消費者もそれぞれの違いをよく認識しています。
• 強力なマーケティングサポート:ヘアケアは広告投資が非常に大きなカテゴリ
ーです。ナショナルブランドによる2012年度のパーソナルケアカテゴリーへの
広告投資は、およそ68億ドルでした。1
• 強力なブランド:ナショナルブランドによる新商品開発やマーケティング活動へ
の取り組みにより、消費者の間には強いブランド志向とロイヤルティが形成さ
れています。ニールセンのアンケートでは回答者の3人に1人(35%)が、シャン
プーはたとえ平均価格より高くてもお金をかける価値があると答えています。
また、シャンプーはすべての地域で「少し高いお金を払っても買いたい製品カ
テゴリー」の上位3位以内に入っています。
• 購入間隔が長く、値引きが活発:食品などの一般消費財と比べると、消費者が
ヘアケアを購入する機会はそれほど多くありません。購入も不定期であること
から、比較的高額なナショナルブランドに対するハードルも低くなります。また、
値引きも頻繁に行われるため、ナショナルブランドとプライベートブランドの店
頭での価格差は小さくなる傾向にあります。
1 AdAgeの集計データによる
10 世界のプライベートブランド市場動向
プライベートブランドの
勝利:牛乳・乳飲料
国により状況は異なりますが、先進国に限ると牛乳はプライベートブランドが
4割以上の売上シェアを占めることが多いカテゴリーです。
牛乳・乳飲料市場において、プライベートブランドがナショナルブランドに対して優位性を持つのは
なぜでしょうか。プライベートブランドブランドに有利な市場特性として、次の点が挙げられます:
• 差別化要素が少なく、ブランド力が弱い牛乳・乳飲料は消費者が製品間の違いを認識
しにくいカテゴリーです。メーカー数も多く、プライベートブランドにとっては類似品を
(しかも低価格で)作りやすいという特徴もあります。Got Milk?(ミルクある?)という
フレーズを使ったテレビCMは 米国で最も成功したとされる牛乳の販促キャンペーンで
すが、ここにもブランドは一切登場していません。
• 価格感度、購入頻度がともに高い:消費者は牛乳の価格にとても敏感です。先進国に
おいて牛乳は、選択に時間をかけず、失敗も少ないカテゴリーです。ブランドにこだわる
消費者は少なく、最も重視されるのは価格です。ブランドの切り替えも頻繁に発生しま
す。また、購入頻度が高いことから、消費者が価格の変化に気づきやすいという事実も
あります。米国市場における牛乳の平均価格はナショナルブランドが3.16ドルであるの
に対し、プライベートブランドは3ドルです。
• 新商品が少ない:ナショナルブランドによる牛乳・乳飲料の新商品投入はほとんどあり
ません。一般に生活必需品とされるカテゴリーでは新商品が少なく、牛乳・乳飲料の総
売上高に占める新商品の割合は0.5%に届きません。
ところで、先進市場では生活必需品として扱われる牛乳・乳飲料ですが、新興市場の多くではま
だその水準に達していません。牛乳はたとえ平均価格より高くてもお金をかける価値があると感
じる消費者は、中南米(43%)、アジア太平洋(41%)、中東・アフリカ(41%)で4割を超えているのに
対し、同様に回答した人は欧州で25%、米国では19%でした。世界全体の市場規模や浸透度、
そして先進市場におけるこれまでの成功事例を考慮すると、新興市場において牛乳・乳飲料は、
今後プライベートブランドの成長が大いに期待できるカテゴリーの一つと位置づけられるでしょう。
しかしそれが実現するかどうかは、小売店がナショナルブランドにも劣らない自社製品の品質を
消費者に納得させられるかどうかにかかっています。
また、プライベートブランドが強みを発揮する牛乳などの生活必需品カテゴリーでは需要が飽和
しつつあり、売上が大きく伸びる状況ではないということも認識しておく必要があります。小売店
が新たな機会を求めるのであれば、生活必需品に留まらず、今後高成長が期待できそうなカテゴ
リーや、プライベートブランドの売上シェアがまだ比較的小さいカテゴリーにまで手を広げていくこ
とも検討すべきでしょう。
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品揃えの問題
プライベートブランドの成長は店頭での品揃えに特に左右されます。すなわ
ち、供給主導型の市場と言うことができます。回答者全体の10人中6人(59%)
が、「製品の種類が増えればプライベートブランドの購入を増やす」と答えてい
ます。しかしながら、単純に品数を増やすことが売上の増加につながると考え
るのは誤りです。小売店は、いかに選択肢を増やすかではなく、正しい選択を
できるかどうかを考えなければなりません。そして結果的に生じる商品の取扱
い中止についても、慎重に決断する必要があります。
売上が伸び悩むナショナルブランドを利益率の高いプライベートブランドに置
き換えるという決断が下されるとき、たいてい犠牲になるのは中小ブランドで
す。プライベートブランドの成長がカテゴリーリーダーの立場を脅かすことは
まれで、その脅威を最も強く感じることになるのは市場で2番目、3番目のブラ
ンドです。イギリスの全カテゴリーを平均した売上構成比を例にとると、カテゴ
リーリーダーが40%、プライベートブランドが41%、それ以外のブランドが19%
です。米国では小売が細分化していることもあり、カテゴリーリーダーが
31%、プライベートブランドが17%、その他が52%です。小売店は棚に並べる
商品を慎重に見極める必要があります。市場浸透率が高い、購入頻度が高
い、あるいは強力なニッチブランドを商品構成から外してしまうと、競合店へ
の顧客流出につながりかねません。
では、プライベートブランド商品の取り扱い点数はどの程度が妥当なのでしょ
うか? 答えは市場とカテゴリーによって変わります。プライベートブランドに対
する受容性が高い米国や欧州では、消費者の品揃えへの意識も寛容で、
「小売店はプライベートブランド製品を並べすぎている」と感じる消費者は北
米で33%、欧州で35%にとどまります。一方、新興市場ではプライベートブラン
ドの数そのものが少ないことから、その存在は際立ちやすく、「小売店はプラ
イベートブランド製品を並べすぎている」と感じる消費者が多いという結果に
なりました。(アジア太平洋:50%、中東・アフリカ:60%、中南米54%) 逆の現
象として、新興市場では「小売店がナショナルブランドを大幅に削減している
ので複数の店で買い物をしなければならない」と感じる人が全体の半数を超
えています。
自社に最適な品揃えを判断するには、マーケットの変化と消費者動向を十
分に理解しておく必要があります。それぞれの市場で適切な品揃えは異なり
ますが、すべての消費者に共通して言えるのは、皆、比較して購入したいと
考えているということです。回答者の4人中ほぼ3人(73%)は、「価格を比較し
やすいよう、ナショナルブランドとプライベートブランドを隣り合わせに並べて
ほしい」と答えています。
単純に品数を増やす
ことが売上の増加に
つながると考えるの
は誤りです
12 世界のプライベートブランド市場動向
地域で異なる「最適な品揃え」
「ある程度同意する/完全に同意する」と 回答した人の割合
出典:Nielsen Global Survey of Private Label, Q1 2014
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価格を簡単に比較できるよう、ナショナルブランドとプライベートブランドを
隣り合わせに並べてあることが望ましい
小売店はプライベートブランドを並べすぎている
プライベートブランド促進のためにナショナルブランドを大幅に削減している
小売店があるので、複数の店で買い物をしなければならない
世界平均
アジア太平洋
欧州
中東・アフリカ
中南米
北米
第二章
地域別傾向
成熟市場
14 世界のプライベートブランド市場動向
欧州:プライベート
ブランドの最先端 プライベートブランドが最も発展しているのは欧州、中でも西欧諸国です。
一般消費財に限ると売上の3分の1をプライベートブランド製品が占めていま
す。スイスではプライベートブランドの総売上高に占める割合が45%と、地域お
よび世界全体で最も高くなっており、それぞれ41%のイギリスとスペインが僅差
で続きます。一方、プライベートブランド市場がまだ発展途上にある東欧・中欧
において、プライベートブランドの総売上高に占める割合は、ポーランドの24%
から最も低いウクライナの5%まで様々です。
プライベートブランドはもはや買い物かごの中には欠かせない生活必需品とな
り、欧州の消費者意識は大きく改善しています。プライベートブランドに関し
て、この地域では回答者の70%が「ナショナルブランド製品の代替品となりうる
ほど優れている」、69%が「お買い得である」と答えています。「プライベートブラ
ンドは品質を重視する場合には適していない」と思う人は3分の1に届きません
(30%)。
欧州でのこうした状況は、自社のプライベートブランドを成功させたいと考える
小売店にとっての模範例となり得るでしょう。小売各社は製造メーカーと同様
にプライベートブランドの管理に投資することで、ブランド力を育成し、製品認
知を向上させ、価値ある商品をボリュームゾーンからプレミアム価格まで幅広
く提供してきました。さらに消費者の未充足ニーズを満たすための新商品開発
にも力を入れています。
しかし同時に、欧州市場の現状はナショナルブランドに関する重要な事実も浮
き彫りにしています。何よりも、プライベートブランドの台頭はナショナルブラン
ドの終焉を意味するものではないという点に注目すべきでしょう。最もプライベ
ートブランドを重用する消費者においても、購入金額全体に占める割合は50%
に届くかどうかという水準で、大半の市場はすでに飽和状態に近づいていま
す。スイスとイギリスにおけるプライベートブランドの売上シェアはこの10年
間、45%前後で横ばいの状態です。
ニールセン リテール・インダストリー・インサイト ディレクターのジャン・ジャッ
ク・ファンデンヒードは次のように述べています。「成長力ではナショナルブラン
ドが優位性を持つ一方、プライベートブランドにはそもそもの伸びしろがありま
せん。新商品開発、分析、そしてマーケティングの組み合わせた取り組みは、
市場シェアの維持・確保のための効果的な戦略です。また、イギリスで企業が
展開した積極的なプロモーションも、プライベートブランドの成長減速につなが
るかもしれません。しかしそうした受け身の価格戦略は長期的に見て持続可
能とは言えないでしょう。」
欧州のほぼすべての市場で
プライベートブランドの
売上シェアが上昇 プライベートブランド売上シェア
2009年 上昇
低下
からの
変化 2013年 変化なし
-1 45% | スイス
+10 41% | スペイン
-2 41% | イギリス
+2 34% | ドイツ
+8 33% | ポルトガル
+3 30% | ベルギー
+1 29% | オーストリア
0 28% | フランス
+2 27% | オランダ
+3 25% | デンマーク
+3 25% | スウェーデン
+4 24% | ハンガリー
+10 24% | ポーランド
-2 22% | チェコ
+3 22% | フィンランド
-8 22% | スロバキア
+1 21% | ノルウェー
+2 17% | イタリア
+4 16% | ギリシャ
+2 14% | トルコ
+1 6% | ロシア
出典:Nielsen
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また、価格が圧倒的な差別化要素と言うことはできません。心理的な要素も大いに影響しており
消費者が決して妥協しないカテゴリーもいくつか存在します。例えば健康・美容のカテゴリーにおい
ては、プライベートブランド製品の価格が平均で40%も安いという状態であるにもかかわらず、総売
上高に占める割合は大きくありません。 さらに、たとえ経済状況が非常に厳しい状態であっても、消費者はたまの贅沢をやめられず、お気
に入りブランドの高額商品を手にします。
成功への戦略
• マーケティング活動でプライベートブランドの価値を高める
• プレミアム価格帯、売れ筋価格帯の両方を抑える
• 消費者ニーズを満たす新商品を作り出す
ほぼすべての市場でプライベートブランドの価格に対する意識が 品質への意識を上回るが、地域全体でともに高い傾向
「ある程度同意する/完全に同意する」と回答した人の割合 出典:Nielsen Global Survey of Private Label, Q1 2014
16 世界のプライベートブランド市場動向
プライベートブランド商品は通常、きわめてお買い得である
ほとんどのプライベートブランド製品の品質は、ナショナルブランド製品と同等である
北米:プライベート
ブランドへの意識は
高いが、市場は
伸び悩み プライベートブランドの売上シェアは米国で17.5%、カナダで18.4%と世界平均
の16.5%をやや上回ります。景気後退期を脱した米国では、市場シェアの維
持・拡大を目指すナショナルブランドが販売促進活動、新商品開発をともに
強化していることもあり、プライベートブランドの成長率は横ばいが続いてい
ます。同国のプライベートブランドの売上高シェアは2009年から2013年まで
の間でわずか1.3%の伸びにとどまりました。カナダでもプライベートブランド
市場は伸び悩んでいますが、その主な要因は消費者が値引きに敏感に反
応し、ナショナルブランドによる周到な価格戦略が売上に結びついていること
にあります。
北米ではプライベートブランド製品を買うことを恥ずかしいと思う感覚はすで
になくなっているようです。消費者の大半はプライベートブランド製品に満足
しており、「ナショナルブランド製品の代替品として優れている」(米国75%、
カナダ73%)、「極めてお買い得である」(米国74%、カナダ66%)、「ナショナル
ブランドと同等の品質である」(米国67%、カナダ61%)と感じています。
ニールセン コンシューマー・ショッパーインサイトの前シニア・バイス・プレジ
デントで現在は相談役を務めるトッド・ヘイルは次のようにコメントしていま
す。「プライベートブランドのさらなる成長には小売側の集中的で力強い取り
組みが不可欠です。自社ブランドで成功を収めているのは、組織が一体と
なって優れたオペレーションを展開し、店頭に並ぶカテゴリー内の全商品に
万遍なく利益が行きわたるよう、適切な商品を適切な価格で提供している
店舗です。最終的には、消費者がプライベートブランド、ナショナルブランド
のそれぞれに何を求めているのかを店側がきちんと把握できているかどう
かが鍵となります。」
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では、北米のナショナルブランドがプライベートブランドに対抗するにはどう
したらよいのでしょうか。ヘイルは次のように答えます。「メーカーはプライベ
ートブランドを主要なプレイヤーとして認めるべきでしょう。小売店は消費者
とのつながりを強化することで収益の強化を図っています。メーカーも協調
姿勢を示し、小売店がプライベートブランド、ナショナルブランドの両方から
収益を上げられるような取り組みに加担していくことが求められます。」
メーカーと小売の共同プロモーションも選択肢の一つです。例えばある製品
カテゴリーにおいて、ナショナルブランドを好む消費者とプライベートブランド
を好む消費者の両方が存在するのであれば、同じ週に同時にプロモーショ
ンを展開することもできるでしょう。メーカー側で小売店ブランドの商品を含め
た棚レイアウトを作成し、店舗へ提案しても良いかもしれません。
さらに、メーカーはプライベートブランドがまだ進出していないカテゴリーを探
し出し、今後のプライベートブランド商品展開に向けた可能性を店側とともに
模索していくべきでしょう。
成功への戦略
• ナショナルブランドとプライベートブランドの共同
プロモーションを展開する
• ナショナルブランドとプライベートブランドを並べた
商品棚レイアウトを採用する
• 空白地帯を埋めるプライベートブランド商品の開発
を模索する
18 世界のプライベートブランド市場動向
米国、カナダのプライベートブランド売上高シェアは横ばい、 しかし、価格・品質に対する意識はともに高水準を維持
プライベートブランド売上シェア
出典:Nielsen *2014年6月時点
カナダ
品質
価格
カナダ アメリカ カナダ アメリカ
プライベートブランド製品は 73% 75% ほとんどのプライベートブランドの 61% 67%
ナショナルブランド製品の 品質はナショナルブランド製品と
代替品として優れている 同等である
プライベートブランド製品は 66% 74% プライベートブランド製品は 27% 24%
通常、極めてお買い得である 品質を重視する場合には
適していない
出典:Nielsen Global Survey of Private Label, Q1 2014 注:「ある程度同意する/完全に同意する」と回答した人の割合
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カナダ 米国
太平洋地域:
かつてない認識の高まり オーストラリア、ニュージーランドにおけるプライベートブランド市場は北米や欧
州の一部地域に近い状態となっており、売上高シェアはオーストラリアで21%、
ニュージーランドで13%です。両国ではすべての世帯が過去1年間に何らかの
プライベートブランド製品を購入しており、オーストラリアにおける2014年5月まで
のプライベートブランド年間売上成長率は6.6%と、小売全体(2.4%)を上回る
ペースで成長しています。
また、2009年から2014年までの間に消費者の認識も大きく変化し、かつては安
さのための代替品であったプライベートブランドが品質の優れた製品と形容され
るまでになりました。消費者がナショナルブランドに代わる製品を求めている
今、プライベートブランドの存在感はこれまで以上に高まっています。「プライベ
ートブランドは優れた代替品である」と考える人は62%、「ほとんどのプライベート
ブランド製品の品質はナショナルブランド製品と同等」と捉える人は54%です。
ニールセン クライアント・サービスのアソシエイト・ディレクター、キャロリン・バル
ゲスのコメントです。「価格に敏感な消費者は当然のように低価格を期待し、も
はや価格だけで差別化をすることはできません。プライベートブランドというと、
かつては小売店が作り出した類似製品にすぎず、そこに他との差別化はありま
せんでした。しかし近頃は小売店も本格的にブランド作りに取り組み始め、安心
感を与える、個性的で他にはない商品を提供するようになりました。特にプレミ
アム価格帯商品は、他には決して存在しない商品を作り出すことのできるという
点で小売店にとって非常に価値ある存在です。他との違いを強調することでブラ
ンドの魅力が向上し、顧客ロイヤルティの形成にもつながります。」
では、今後プライベートブランドはどこまで成長し、どのように競争力を発揮する
のでしょうか?
まず注目すべきは、消費者の意識が改善する中にあっても品質への懸念は根
強く、特に「ブランド」ではなく店の名前が入った商品は敬遠される傾向があると
いう点です。さらに特定のカテゴリーではナショナルブランドが圧倒的な強さを誇
り、プライベートブランドの成長を妨げる要因となっています。
欧州と同様に、ナショナルブランドは積極的なプロモーションと大幅な値引きで
プライベートブランドとの価格差を埋め、市場シェアを守ろうとしています。それ
でも、長期的な成功のためには価格戦略以上のものが必要です。ナショナルブ
ランドは市場に並ぶプライベートブランド製品を意識しながら、効果的な商品ラ
インナップを展開すべきでしょう。売れ筋価格帯では「ベーシック」が売りのプラ
イベートブランドとは一線を画した力強い商品を、プレミアム価格帯ではプライベ
ートブランドを上回る「最も優れた」商品を提供していくことが求められます。
成功への戦略
• 他とは異なる独自の商品を
作り出す • ブランドイメージの構築により、
品質への懸念を払拭する • プレミアム価格帯、売れ筋価格
帯の両方を抑えた商品展開
20 世界のプライベートブランド市場動向
プライベートブランド市場はオーストラリアで拡大、ニュージーランドで縮小、
しかしより好意的なイメージを持つのはニュージーランドの消費者
プライベートブランド売上シェア
2010 2013~2014年調査時点* 2010年比
増減率
オーストラリア 14.0% 21.3%
+7.3
18.0% 13.0%
ニュージーランド -5
「完全に同意する/ある程度同意する」 と答えた回答者の割合
オーストラリア ニュージーランド
61% プライベートブランド製品は
67%
ナショナルブランドの代替品として優れている
59% プライベートブランド製品を購入するのは
60%
賢い消費者だと思う
59% プライベートブランド製品は通常、
62%
極めてお買い得である
54% ほとんどのプライベートブランドの品質は
56%
ナショナルブランド製品と同等である
出典:Nielsen *2014年6月時点
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成熟市場における
プライベートブランドの
成長促進要素
米国、カナダ、オーストラリア、そして欧州の一部市場におけるプライベートブラン
ドの今後の成長は、以下の共通要素によってもたらされることが期待されます:
• 市場の統合:プライベートブランドの売上高シェアが最も大きいスイスにおい
て、小売の統合が世界のどの国よりも進んでいるのは偶然ではありません。
実際に市場集中度の高さでは上位18か国中、15か国を欧州諸国が占めて
います。プライベートブランドは規模が大きいほど優位に展開できるビジネス
です。市場の統合が進み、小売店は強力なプライベートブランドの構築のた
めに必要な新商品開発、消費者調査、マーケティング活動への投資ができる
ようになりました。特に米国、イタリア、ポルトガル、ポーランド、ギリシャにお
いては小売大手3企業(欧州)あるいは5企業(米国)の売上高シェアが業界
全体の50%に届きません。今後市場の統合が進むことで、プライベートブラン
ドの成長も期待できるでしょう。
• 「格安店」の拡がり:格安を売りにする店では商品ラインナップの大半をプライ
ベートブランドが占めており、こうした店舗の存在が他店にも値下げ圧力をか
けています。また、米国では大手小売各社がこうした格安店舗に商品を提供
しようとする動きが見られます。
• 引き続き軟調な経済:プライベートブランドが景気後退の副産物ということは
ありませんが、その後の不況と軟弱な景気回復はプライベートブランドに絶
好の成長機会をもたらしました。消費者の多くが財布のひもを締め、安い商
品を買うようになりましたが、そのことがナショナルブランドとプライベートブラ
ンドの品質に思ったほどの差はないと気付かされるきっかけになりました。
• 新商品開発:プライベートブランド、ナショナルブランドの双方にとって新商品
開発は他との差別化の有効な手段です。かつてはナショナルブランドの強さ
の核心となる要素でしたが、最近では小売店も負けず劣らず、次々と生まれ
る消費者の新たなニーズに応える商品を作り出しています。先進的な欧州の
小売各社は、表彰を受けるほどのパッケージや高価格帯商品、消費者の価
値観に訴える商品(持続可能な生産方法のフェアトレード商品など)を提供し
ています。米国とオーストラリアの企業もこれに続いていますが、類似品の製
造から本当の意味での商品開発への移行に苦労している小売業者も少なく
ないようです。
22 世界のプライベートブランド市場動向
• 新たな流通チャネル:長い目で見ると、プライベートブランドの今後の成長
の鍵を握るのは、今はまだ一般消費財の取引が限定的なeコマース
(電子商取引)市場の発展です。コンビニエンスストアも飛躍的に拡大して
いますが、プライベートブランドに力を入れている企業はまだ少数派で、
これからの成長の原動力として期待できそうです。
先進市場におけるプライベートブランドの成長を促す要素は各国におおよそ共通
していますが、新興市場に目を向けると、小売環境から消費者の考え・行動まで
様々な違いが見られます。新興市場におけるプライベートブランドの成長はどこ
からもたらされるのでしょうか? 答えは地域によって異なります。 Copyright © 2014 The Nielsen Company 23
新興市場
24 世界のプライベートブランド市場動向
アジア:複雑な小売環境の中
で際立つブランドロイヤルティ アジアにおけるモダントレード(スーパー、コンビニエンスストアなどの近代
的な小売業態)やプライベートブランドの始まりは四半世紀前にさかのぼり
ます。大型ハイパーマーケットは1980年代にはアジアでの営業を始めてい
ました。現在、タイ都市部では消費者の9割が日常的にハイパーマーケット
を利用し、その65%は日用品を最もよく買う場所として利用しています。
Tescoは1998年にタイへの進出を果たした際に、その核心的な戦略としてプ
ライベートブランドを開発し販売を始めました。しかしながら、プライベートブ
ランドの売上高シェアは過去10年間でわずかに増加した程度で、ここ数年
ではナショナルブランドによるプロモーション強化のあおりを受けて減少に
転じています。
なぜプライベートブランド市場は大きくならないのでしょうか? 端的にいうと
アジアの消費者はブランド志向が強く、また、小売店側もプライベートブラン
ドで消費者の信頼を勝ち取るために必要なマーケティング投資を十分に行
ってきませんでした。アジア太平洋地域では「ナショナルブランド製品には高
い分だけ値打ちがある」と考える消費者が全体の58%に達し、世界平均を
10%、北米と欧州をそれぞれ20%、26%上回ります。さらに、低所得者層にお
いては、限られた予算の中で信頼のおけないプライベートブランド製品を購
入するのはリスクにさえなり得ると考えられています。インドネシア(59%)、
フィリピン(56%)、タイ(58%)では消費者のおよそ6割が、「新しいブランドの
製品を試す際は無駄な出費になるかもしれないことを覚悟する」と答えてい
ます。消費者としてはそうしたリスクを冒すよりも、いつもテレビで宣伝され
信頼できるブランドを選び、しかも最近は安売り価格で購入できることが多
い、と感じているような状況でしょう。
ニールセン リテーラーサービスのマネージング・ディレクター、ピーター・ゲ
イルは次のようにコメントしています。「小売各社はアジアの消費者にすぐ
に受け入れられるだろうと高をくくってプライベートブランドを立ち上げ、先
進市場で20年をかけて構築した信頼を作り上げるための投資をしません
でした。企業の多くが欧州市場と同じビジネスモデルをそっくりそのまま導
入し、本来必要な土台作りをおろそかにしたのです。新しいプライベートブ
ランド製品を放り込むだけでは大きな売上など期待できません。小売店に
は消費者の根本的なニーズに応えるための努力が求められています。」
アジア市場における
プライベートブランドの
売上シェアは軒並み低下 プライベートブランド売上シェア
2010年 上昇
低下
からの 2013/2014
変化 調査時点 変化なし
-0.5 8.1% | シンガポール
-1.7 5.1% | 香港
-2.2 4.5% | インド
-0.2 3.1% | 台湾
+0.5 1.3% | 中国
-2.8 0.8% | タイ
-0.1 0.6% | インドネシア
出典:Nielsen
Copyright © 2014 The Nielsen Company 25
結局のところ、これからのプライベートブランドの成長は小売店次第です。
プライベートブランドは手早く簡単に作り出せるものではありません。小売
店が成功に向けてそろそろ本気で取り組む時が来たと感じるのであれば、
明るい未来への期待も高まることでしょう。
成功への戦略
• ある市場・カテゴリーでの成功例がど
こでも通用すると思いこまず、各国の
消費者ニーズや嗜好をよく理解する。 • 必要な時間と資源を投じて消費者
を育て、プライベートブランドへの
信頼を構築する。
ブランド志向が高いアジアの消費者にとって、プライベートブランドの品質は懸念材料
「ある程度同意する/完全に同意する」と回答した人の割合 出典:Nielsen Global Survey of Private Label, Q1 2014
26 世界のプライベートブランド市場動向
ナショナルブランド製品を長く愛用している
プライベートブランド製品は、品質を重視する場合には適していない
注目市場
インド:アジアの
プライベートブランド
開拓者 インドはアジアの中で最も小売環境の発展が遅い市場と言っても過言では
ないでしょう。東南アジア諸国ではほぼ全域でモダントレードが小売全体の
5割を超えているのに対し、インドではわずか5%に留まります。
しかし、アジアにおいてプライベートブランドが最も成功している市場の一つ
はインドです。2012年から2014年9月までの間に、プライベートブランドは
27%の成長を遂げました。
何が成長をけん引しているのでしょうか? 最大の要因は、若者世代のブ
ランドに対するこだわりが弱く、新商品を積極的に受け入れる姿勢が強い
ことです。
ニールセン インドのアソシエイト・ディレクター、サルバニ・センは次のよう
に分析します。「消費者が買い物予算を圧縮し、価格に見合った価値ある
商品を求める中、プライベートブランド製品はモダントレードに積極的に参
加しながらもあまりブランドには詳しくない人たちの受け皿となっています。
それが、インド市場でプライベートブランドが成功している大きな理由で
す。さらに消費者はブランドに対してますます移り気で、簡単にブランドを
乗り換えます。ナショナルブランドの代替としてプライベートブランドが自然
と選ばれる今のような状況は、今後も続くでしょう。」
一部カテゴリーにおいては、消費者が直接小売店に相談しながら買い物で
きるという安心感を強みに、プライベートブランドが市場の勢力図を大きく変
えました。しかし、そうはならないカテゴリーも存在し、その典型がベビー用
品です。成功率を高めるには、店頭での認知を向上させること、商品の視
認性を高めること、そして価格に見合った価値ある商品を提供することが大
切です。そして、消費者の支持を得たプライベートブランドがこのまま躍進
を続けるとしても、ナショナルブランドは身構えるのではなく新商品開発に
注力し、独自の商品で消費者のブランドスイッチを防ぐべきです。
成功への戦略
• プライベートブランドを他と
の差別化に利用する • 店頭でのプライベートブランド
の存在感を高める • 価格に見合った価値をはっきりと
示す
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中南米:プライベートブランドが
一定の存在感を保つ 2010年から2014年にかけて、プライベートブランドの売上シェアは中南米地
域の調査対象国すべてで上昇しました。伸び率が最も大きかったのはチリ
とコロンビアで、それぞれ4年間で2.9ポイント増加しています。
プライベートブランドの品質も大きく改善されています。回答者の4分の3以
上(76%)がプライベートブランド製品の品質は向上したと感じており、特に
ペルー(84%)、メキシコ(79%)、チリ(78%)、コロンビア(78%)で多くの消費
者が好印象を持っているようです。さらに、3人中2人は「プライベートブラン
ド製品の品質はナショナルブランド製品と同等である」と答えています。
特に評価が高いのはベネズエラ(74%)とペルー(73%)で、低いのはアルゼ
ンチン(62%)です。
今後の成長を期待させる要素も、地域全体に共通しています。
景気が低迷する先進市場と同様、中南米の消費者も家計の支出を抑える
ために、より手ごろな価格の食料雑貨ブランドへの変更を検討しており、
アルゼンチン(59%)、チリ(41%)、コロンビア(36%)、ペルー(33%)では節約
のための手段として最も多くの支持を得ています。
価格帯にこだわらない、多様な商品ラインナップの展開もさらなる成長の原
動力となりそうです。中南米地域の回答者の71%が「製品の種類が増えれ
ばプライベートブランドの購入を増やすと思う」、78%が「プライベートブラン
ドに最安値の製品、ナショナルブランドと同じ価格帯の製品、プレミアム製
品があれば好ましい」と答えており、ともに世界平均(それぞれ59%、69%)
を上回ります。店頭の品揃えに関しては、他の地域と同様に十分な配慮が
求められます。ブランドへのこだわりが強い中南米の消費者が、自分たち
のお気に入りブランドの場所を奪ってまで、プライベートブランドを充実させ
てほしいと願うことはありません。
ブラジルでは地域密着型の小売店の存在が市場成長の機会にも、妨げ
にもなっています。プライベートブランドの多くが主力チェーン店に集中す
る一方、(少なくとも今は)プライベートブランドを持たない地域密着型の
小売店による売上が国内総売上高の40%を占めています。
プライベートブランドの堅調な
伸びが続く中南米 プライベートブランド売上シェア
2010年 上昇
低下
からの 2013/2014
変化 調査時点 変化なし
+2.9 15.0% | コロンビア
+2.9 10.3% | チリ
+0.8 8.7% | アルゼンチン
+0.7 7.6% | メキシコ
+0.2 5.0% | ブラジル
+2.2 3.0% | ベネズエラ
出典:Nielsen メキシコのみ2014年調査時点のデータ。他は2013年。
28 世界のプライベートブランド市場動向
今後も堅調な伸びが期待される中南米ですが、ナショナルブランドにはどのような影響があるでしょう
か。ニールセン 中南米地域のリテール部門バイス・プレジデント、エンリケ・ペネラの回答です。
「プライベートブランドの売上シェアは増え続けていますが、ナショナルブランドはまだその存在を脅威
と感じながらも現実として捉えられていないようです。今後プライベートブランドが価格帯を広げること
で、ナショナルブランドはシェアを維持するために新商品開発に注力せざるを得ないでしょう。最も大き
な影響を受けるのは低価格帯の、品質が疑わしいナショナルブランドです。品質の高さが認められ、消
費者との関係強化を怠らないブランドであれば、今後もその力強さを保ち続けられるはずです。」
成功への戦略
消費者ニーズを満たす新商品を作り出し、 新たな客層を開拓する
ブランドイメージの構築により、品質への懸念を払拭する
「ある程度同意する/完全に同意する」と回答した人の割合
プライベートブランド製品はナショナルブランド製品の代替として優れている
プライベートブランド製品は通常、極めてお買い得である ほとんどのプライベートブランドの品質は、ナショナルブランド製品と同等である
79%
76%
77%
78%
75%
73%
71%
69%
68%
64%
68%
59% 70% 61%
78%
75%
81%
75%
68% 78% 73%
73%
74%
62% 66% 63% 69% 70%
66% 56% 63% 65% 65% 72% 73%
アルゼンチン ブラジル チリ コロンビア メキシコ ペルー ベネズエラ 出典:Nielsen Global Survey of Private Label, Q1 2014
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• プライベートブランド製品を 3段階の価格設定で展開する
• 消費者ニーズを満たす新製品を作り出し、新たな客層を
開拓する
• ブランドイメージの構築により、品質への懸念を払拭する
プライベートブランド製品を購入するのは賢い消費者だと思う ナショナルブランド製品を長く愛用している
プライベートブランド製品は、品質を重視する場合には適していない
プライベートブランド製品の中にはナショナルブランドより品質が優れたものがある
プライベートブランドに対し、総じて好意的な印象を持つ中南米の消費者
中東/アフリカ:
プライベートブランド
導入の初期段階
南アフリカを除くと、中東/アフリカのプライベートブランド市場はまだ初期段
階にあります。プライベートブランドの売上高シェアは南アフリカで18%に達し
ていますが、今回の調査対象となった中東諸国ではいずれも1%に届きませ
ん。
まだ普及前とはいえ、中東/アフリカにおけるプライベートブランドの今後はど
のように展望できるでしょうか。ニールセンは、将来的にはプライベートブラン
ドの成長が期待できるものの、短期的にはナショナルブランドが勢力を保ち続
けるであろうと予測します。
プライベートブランドの成長はモダントレードの拡大に大きく左右されますが、
未だに浸透率は上がらず、場所も主に都市部に限定されています。地域内で
最大のプライベートブランド市場を抱える南アフリカでさえ、総売上高に占める
モダントレードの割合は30%です。
今後モダントレードが徐々に普及していく中でプライベートブランドの成功の鍵
を握るのは、現在市場に存在するプライベートブランド製品を主に取り扱うディ
スカウント店です。ディスカウント店は既にアフリカ北部に進出し始めていま
す。トルコ企業のBIMはモロッコ、エジプトにそれぞれ出店していますが、店頭
に並ぶ商品の半数以上がプライベートブランドです。対象的に中東地域には、
まだ有力なディスカウント店が存在しません。中東の消費者はショッピングモ
ールや大型スーパーマーケット、ハイパーマーケットを娯楽の場所と捉え、買
い物を楽しんでいます。Spinneys、Carrefour、Choithramsなどの小売各社は
プライベートブランド商品をこれまで以上に店頭に並べていますが、それでも
多くのカテゴリーにおける売上シェアは2桁に届きません。
また、プライベートブランドの成長には小売側が製造に必要な技術と商品供給
元を確保できるかどうかにもかかっています。この点は特に大きな問題となっ
ており、地域内で世界的な多国籍メーカーの品質と競い合えるような商品提
供力を持った企業を見つけるのは容易ではなさそうです。
30 世界のプライベートブランド市場動向
さらに、消費者のブランド志向と品質への懸念も小売店が乗り越えなければ
ならないハードルです。地域内には長い歴史を持つブランドが多数存在し、
プライベートブランドは知名度・信頼度の低さで苦戦を強いられてきました。
なじみのない製品の購入にはリスクが伴い、期待外れに終わる可能性のあ
る商品を試すほどの金銭的余裕がない消費者も大勢います。「新しいブラン
ドの製品を試す際は無駄な出費になるかもしれないことを覚悟する」と回答
した人は全体の55%にのぼり、他のどの地域よりも多くなっています。
ナショナルブランドには親しみがあり、品質においても安心できる点が大
きなロイヤルティにつながっています。中東/アフリカ地域でナショナルブ
ランドを愛用する消費者は57%と、世界平均の50%を超えています。アジ
アと同様、品質に対する懸念とブランドへの強いこだわりがプライベートブ
ランドの成長を阻んでいる大きな要因と言えるでしょう。小売店にはプライ
ベートブランドに対する安心感を形成するための投資が求められます。
ニールセン 中東・北アフリカ・パキスタン地域のリテールサービス・リーダー、
オヌール・ユクセルは次のようにコメントしています。「両者の違いを好意的
に受け止める意見もありますが、市場がこれから発展していくには、小売店
が新商品の売れ行きに目を配り、その情報を基に適切な商品を適切な価格
で提供しいていく必要があるでしょう。」製品を作れば売れる、ではなく、より
科学的なアプローチが求められています。
成功への戦略
• ブランドイメージの構築により、品質への懸念を
払拭する
• 低価格帯に留まらず、プレミアム価格帯、
売れ筋価格帯を含めて商品を展開する
• 消費者ニーズを満たす新商品を作り出し
新たな客層を開拓する
• 南アフリカでは品質を向上し、小売店の名前を
前面に押し出したパッケージングを採用する
Copyright © 2014 The Nielsen Company 31
ブランド志向が強い中東/アフリカの消費者
「ある程度同意する/完全に同意する」と回答した人の割合
ナショナルブランド製品は高い分だけ値打ちがある
ナショナルブランド製品を長く愛用している
プライベートブランドは、品質を重視する場合には適していない
新しいブランドの製品を試す際は無駄な出費になるかもしれないことを覚悟する
エジプト
パキスタン
サウジ
アラビア
南
アフリカ
アラブ
首長国連邦
56% 56%
48% 55%
64% 60%
53% 61%
51% 55%
48% 49%
41% 54%
32% 49%
48% 51%
45% 49%
出典:Nielsen Global Survey of Private Label, Q1 2014
32 世界のプライベートブランド市場動向
調査対象国・地域
欧州 アジア太平洋
市場 インターネット普及率
オーストリア 81% ベルギー 82% ブルガリア 53% クロアチア 71%
チェコ 74% デンマーク 95% エストニア 80% フィンランド 92% フランス 83% ドイツ 86% ギリシャ 60% ハンガリー 73% アイルランド 78% イスラエル 71%
イタリア 59% ラトビア 75% リトアニア 69% オランダ 94% ノルウェー 95% ポーランド 65% ポルトガル 62% ルーマニア 50% ロシア 61%
セルビア 57%
スロバキア 79% スロベニア 73% スペイン 75% スウェーデン 95% スイス 87% トルコ 46% イギリス 90% ウクライナ 42%
出典:Internet World Stats, December 31, 2013 Copyright © 2014 The Nielsen Company
市場 インターネット普及率
オーストラリア 87%
中国 46% 香港 75% インド 16%
インドネシア 22% 日本 86%
マレーシア 67% ニュージーランド 87% フィリピン 41% シンガポール 73%
韓国 85% 台湾 80% タイ 30%
ベトナム 44%
中南米
市場 インターネット普及率
アルゼンチン 75% ブラジル 54% チリ 67%
コロンビア 62% メキシコ 44% ペルー 39% ベネズエラ 45%
中東/アフリカ
市場 インターネット普及率
エジプト 50% パキスタン 15%
サウジアラビア 61% 南アフリカ 49% アラブ首長国 88%
連邦
北米
市場 インターネット普及率
カナダ 91%
アメリカ 84%
33
ニールセン グローバル調査について
『ニールセン プライベートブランドに関するグローバル調査』は、アジア太平
洋、欧州、中南米、中東・アフリカ、北米の60の国と地域で3万人以上の消費
者を対象に、2014年2月17日から3月7日にかけて実施されました。サンプル
数はインターネットユーザーをベースに、各国・地域の年齢や性別によって割
り当てられ、インターネットを利用する消費者を代表するように割り付けられ
ています。最大許容誤差は±0.6% です。今回のニールセン調査はインターネ
ットアクセスを持つ回答者のみを対象にしています。インターネット普及率は
国によって異なります。ニールセンは調査に使用するデータの基準をインタ
ーネット普及率60%以上、もしくはインターネットユーザー1,000万人以上と定
めています。世界消費者信頼感調査レポートを含むニールセングローバル
調査は2005年に創刊されました。
ニールセンについて
ニールセン N.V.(NYSE: NLSN)は世界的な情報・調査企業で、マーケティ
ング及び消費者情報、テレビ等のメディア情報、オンライン情報、モバイ
ル情報の分野でリーダー的地位を確立しています。アメリカ・ニューヨーク
とオランダ・ディーメンに本社を持ち、世界100カ国以上でビジネスを展開
しています。
詳細はホームページをご覧ください:www.nielsen.com
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