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若手座談会 33 平成20年度 厚生労働省 医系技官 Con Con v v er er sa sa tion tion ○佐々木 本日は皆さん忙しい中、どうもあり がとう。早いもので入省から1年になるけど、こ の1年間はいかがでしたか?入省前に何をしてい たかも含めて、振り返ってください。 ○堀岡 1年前は患者さんを診ていたなんて信 じられないくらい濃厚な1年間でした。 入省前は、大学院で地域医療などを研 究していました。全く違う世界に入って、最初 は戸惑いましたけれども、今は少しずつ慣れて きました。 ○蛭川 臨床医の5年目だと比較的自分の裁量 で治療方針を決めることができましたが、この1 年は、一から周りの合意形成をし政策づくりを していくというプロセスで、仕事の進め方が大 きく変わりました。 ○本間 入省前は1年目は雑用しかさせてもら えないのかなと思っていましたが、初めから多 くの仕事を任せてもらえて、大変ではありまし たが、すごく楽しく充実した1年だったと思いま す。 ○赤羽根 正直なところ、まだ、自分の仕事が形 になっているわけではありませんが、何年間か後 には確実に医療現場に反映されるような仕事がで きていると思うので、やりがいを感じています。 ○佐々木 この1年で、医系技官になって本当 に良かったなというのは何かな。 中央省庁で、制度づくりに携わること ができるというのは、なかなか経験できないこ とをさせていただいていると思っています。 ○有賀 入省早々に、省内外の人たちと研修で ご一緒し、医師とは全然違うものの見方や発想 に気づかされました。その意味では本当に新鮮 な1年だったと思います。 ○堀岡 病院の頃と比較にならないくらい、チ ームとして他の職種の人たちと協力しなければ 何もできない職場です。たとえば、医系技官で ある僕らが政策の青写真を描いても、通知など の形で文字にして実現していく際には、事務官 の方々の助けが必要でした。そういった意味で、 他の職種の人たちと協力するということの重要 さがわかった気がします。 ○本間 行政の仕事では、たくさんの方が、そ れぞれの立場から主張される意見をしっかりと 受け止めて、それを政策としてまとめあげてい くことが求められます。これは、臨床や研究の 現場とは全く違うことだし、またこの仕事の楽 しさだと思います。 ○赤羽根 臨床をやっていたときは、1日や1週 臨床や研究から行政の世界に飛び込むと、仕事の内容はもちろん、生活全体が一変します。 どのような生活が待っているのか、興味・関心をお持ちの方も多いのではないでしょうか。そ こで、19年度に採用された医系技官に集まってもらい、入省後の1年を振り返ってもらうこ とにしました。

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Page 1: Conversation - mhlwConversation 佐々木 本日は皆さん忙しい中、どうもあり がとう。早いもので入省から1年になるけど、こ の1年間はいかがでしたか?入省前に何をしてい

若手座談会

33 平成20年度厚生労働省医系技官

ConConvverersasationtion

○佐々木 本日は皆さん忙しい中、どうもあり

がとう。早いもので入省から1年になるけど、こ

の1年間はいかがでしたか?入省前に何をしてい

たかも含めて、振り返ってください。

○堀岡 1年前は患者さんを診ていたなんて信

じられないくらい濃厚な1年間でした。

○   入省前は、大学院で地域医療などを研

究していました。全く違う世界に入って、最初

は戸惑いましたけれども、今は少しずつ慣れて

きました。

○蛭川 臨床医の5年目だと比較的自分の裁量

で治療方針を決めることができましたが、この1

年は、一から周りの合意形成をし政策づくりを

していくというプロセスで、仕事の進め方が大

きく変わりました。

○本間 入省前は1年目は雑用しかさせてもら

えないのかなと思っていましたが、初めから多

くの仕事を任せてもらえて、大変ではありまし

たが、すごく楽しく充実した1年だったと思いま

す。

○赤羽根 正直なところ、まだ、自分の仕事が形

になっているわけではありませんが、何年間か後

には確実に医療現場に反映されるような仕事がで

きていると思うので、やりがいを感じています。

○佐々木 この1年で、医系技官になって本当

に良かったなというのは何かな。

○   中央省庁で、制度づくりに携わること

ができるというのは、なかなか経験できないこ

とをさせていただいていると思っています。

○有賀 入省早々に、省内外の人たちと研修で

ご一緒し、医師とは全然違うものの見方や発想

に気づかされました。その意味では本当に新鮮

な1年だったと思います。

○堀岡 病院の頃と比較にならないくらい、チ

ームとして他の職種の人たちと協力しなければ

何もできない職場です。たとえば、医系技官で

ある僕らが政策の青写真を描いても、通知など

の形で文字にして実現していく際には、事務官

の方々の助けが必要でした。そういった意味で、

他の職種の人たちと協力するということの重要

さがわかった気がします。

○本間 行政の仕事では、たくさんの方が、そ

れぞれの立場から主張される意見をしっかりと

受け止めて、それを政策としてまとめあげてい

くことが求められます。これは、臨床や研究の

現場とは全く違うことだし、またこの仕事の楽

しさだと思います。

○赤羽根 臨床をやっていたときは、1日や1週

臨床や研究から行政の世界に飛び込むと、仕事の内容はもちろん、生活全体が一変します。どのような生活が待っているのか、興味・関心をお持ちの方も多いのではないでしょうか。そこで、19年度に採用された医系技官に集まってもらい、入省後の1年を振り返ってもらうことにしました。

Page 2: Conversation - mhlwConversation 佐々木 本日は皆さん忙しい中、どうもあり がとう。早いもので入省から1年になるけど、こ の1年間はいかがでしたか?入省前に何をしてい

間の仕事は、ある程度流れが決まっていました。

例えば、月曜日はカテの日で、水曜日は内視鏡

で、となっていましたし、患者さんもある程度

自分がいる科の専門に限られていました。今は、

毎日いろんなことが起こって、それに応じて対

処しています。その意味では、新しいことに対

処する力がより求められていると実感していま

す。

○蛭川 この1年の一番の収穫は、政策がどん

なきっかけで発案され、合意形成され、最終的

には大臣や首相官邸まで了解を得ていくのかと

いう意思決定のプロセスを目の当たりにするこ

とできたことです。行政のみならず政治の動き

も体感でき、民主主義とはどういうものか、ど

ういう仕組みで今の日本が成り立っているのか

ということを、垣間見ることができました。

○佐々木 仕事ぶりはとても充実しているよう

だけど、週末などの私生活はどうかな。ちなみ

に私は独身の頃、宝塚歌劇によく通ってました。

○蛭川 山登りとかしたいなと思っています。

私はなかなか行けませんが、医系技官でも結構

登っている方がいらっしゃるみたいですね。

○赤羽根 久しぶりに東京に戻って来ました

が、地下鉄が新しく出来たりして乗るのが面白

くて、ついでに嫁と一緒に博物館とか美術館と

か映画とかに出掛けています。

○堀岡 研修医のときは結構きつい仕事だなと

思っていましたが、診療報酬改定の仕事はもっ

ときついですね(笑)。でも改定作業が一段落し

たので、これからは、夜の異業種交流会の回数

をもう少し増やしたいと思っています。

○有賀 診療報酬改定を担当するまでは、比較

的余裕があり、土日の2日間は何をしようが自由

という感じでした。その頃は、ショッピングセ

ンターめぐりとか、ちょっと遠出をしてみたり

とかしていました。

○   私のポストだと、医療分野のIT化など

に関する政策の普及啓発のために、講演が週末

も結構あります。先週も富山と名古屋に行って

きました。でも、大臣も先日おっしゃっていま

したが、ワーク・ライフバランスは非常に大切

だと思っています。しっかり働き、しっかり自

分の時間も楽しむということが非常に大切だと

思っています。

○蛭川 私も結核行政を講演する機会がありま

した。何年も現場での経験がある人に対して、

着任して数か月しか経っていない私が結核医療

若手座談会

34平成20年度厚生労働省医系技官

佐々木 昌弘(ささき まさひろ)平成6年卒(平成8年入省)

司会

堀岡 伸彦(ほりおか のぶひこ)平成17年卒

洋介(たかさき ようすけ)平成14年卒

本間 政人(ほんま まさと)平成17年卒

赤羽根 直樹(あかはね なおき)平成17年卒

有賀 玲子(あるが れいこ)平成17年卒

蛭川 雄太郎(ひるかわ ゆうたろう)平成14年卒

Page 3: Conversation - mhlwConversation 佐々木 本日は皆さん忙しい中、どうもあり がとう。早いもので入省から1年になるけど、こ の1年間はいかがでしたか?入省前に何をしてい

の何たるかを説明することは、おこがましいな

という気はしましたが、それがまた行政マンの

役割なんだろうと今は思っています。

○佐々木 それこそが我々の職場の醍醐味で、

1年目でもそのような役割が務まるように、日々

周りが盛り立ててくれているということはある

よね。一方で、立ち往生してしまったことはあ

ったかな。

○赤羽根 僕はもう日々立ち往生ですが(笑)、

特に最初、厳しいなと思ったのは、報道関係の

人からの電話です。記者の余りの勢いに押され

てしまい、自分でも何を言っているか解らない

ような状態に陥ってしまいました。そのときは、

隣の席の課長補佐が引き取ってくれて、事なき

を得ました。

○佐々木 上司の話があったけど、一緒に仕事

したいな、こんな人が医系技官になって欲しい

なというのはどんな人なのかな。

○   国家公務員として中央省庁に勤めてい

るということを自覚して、前を向いて進んで行

こう、日本を良くしていこうという意識のある

人と一緒に仕事をしたいと思いますね。

○有賀 チームとして仕事をするので、意思の

疎通がスムーズにできる人だといいですね。た

だ、価値観、考え方とか、どの立場に立つかと

いうのは、いろんな人がいてもいい気がします。

○堀岡 まず熱い思いがあって正直な人という

のが、絶対条件だと思っています。また、いろ

んな立場の人の意見を受け止めようという姿勢

でないと、自分の独善的な考えに偏ってしまい、

良い仕事はできないと思います。

○本間 逆の面も一つあると思っています。今

の官僚は、様々なプレッシャーがかかるので、

そんな中でも、逆にぶれない信念も大事かなと

思っています。確かにいろんな人の考えを理解

する必要はあるけれども、医系技官が科学的な

根拠に基づき作り上げた政策であるなら、簡単

に譲歩してはいけないのではないかと思ってい

ます。それをなくしてしまうと、医系技官とし

ての存在価値もなくなってしまいますしね。

○蛭川 卒後臨床研修が必修化されたので、医

系技官は少なくても2年間の臨床研修を受けてか

ら入省することになっています。全員が2年以上

の現場経験を持つ職種は、中央省庁の中でも極

めてわずかですよね。大事な原則というか守る

べきものは、役所の中だけでは絶対に分からな

いと思うので、この現場経験は医系技官の強み

としなければいけないと思います。

○赤羽根 僕もちょっと有賀さんの意見に近く

て、いろんな人が来てくれたらいいと思ってい

ます。このパンフレットを読んでくれている時

点でセレクトされている部分が結構あって、臨

床医として又は研究者として死ぬまでやってい

こうという人はまず読んでもくれない。僕はそ

ういう人も、何かの間違いで(笑)医系技官に

なって、行政に携わってくれないかなと期待す

るところもあります。

○佐々木 いろんな人がいていいけれども、先

ほど堀岡さんからも話があったように、「熱い思

い」「パッション」は必要かも知れないね。

ところで、普段の仕事の悩みは。

○蛭川 いま担当している新型インフルエンザ

は、もし発生すれば、国内で数十万人の死亡が見

込まれ、社会的なインパクトがものすごく大きな

ものになるわけですが、自分の今の1~2時間の作

業に未来の多くの方の命がかかっているかもしれ

ないと思うことは、なかなかの重圧です。

35 平成20年度厚生労働省医系技官

ConConvverersasationtion

Page 4: Conversation - mhlwConversation 佐々木 本日は皆さん忙しい中、どうもあり がとう。早いもので入省から1年になるけど、こ の1年間はいかがでしたか?入省前に何をしてい

○有賀 私たちはよく「国民の視点を大事に」

とか言われますが、あまりに多くの声を聞くの

で、本当に真剣に考えれば考えるほど、何が国

民の視点なのか解らなくなります。

○佐々木 その悩みこそ重要で、政策立案の当

事者であるみんながその意識を持っているのは

嬉しく思う。案件によって国民の視点や国民の

声は違うから、絶対的な答を示すことはできな

いけれど、国民の意見の取捨選択も含め、悩み

ぬいた上で、政策を打ち出していくことが、医

系技官には求められていると思う。

(この後、臓器移植のこと、人の命のことを語り、

夜は更けていく)

○佐々木 あっ、もうこんな時間になっちゃっ

た。最後に、このパンフレットを読んでいる方

に一言。

○堀岡 熱い志と、人に正直に何ごとも答える

という姿勢を忘れないでいれば、周囲の人は解

ってくれて、結果的に自分の思いも達成しやす

くなると思いますので、そういう人を求めてい

ます、僕は。

○本間 医系技官を希望する方は、それなりの

思いがあると思いますが、仕事としてやる以上

は、その思いを実現できたかどうかという「結

果」を求められます。その結果に関して自分の

中で甘いラインを引けばそれでも済ませられま

すが、そこをどこまでも追い込もうという強い

思いを持っている人に入ってもらいたいと思い

ます。

○有賀 そのための議論を、受け止めてくれる

受け皿というのは結構あると思います。今日み

たいな場でも議論をしてもらえるし。私は、医

師の中に、こういう行政の仕事をしている人も

いるということを知っていただけるだけでもあ

りがたいと思ってます。中に一緒に入っていた

だければ、それはもっと心強いと思います。

○赤羽根 このパンフレットを読んで、「ちょ

っと面白いな」と思ったら是非、厚生労働省に

実際に足を運んで話を聞きにきて欲しいと思い

ます。また、興味のない人たちにも配って読ま

せてあげてください。

○蛭川 医系技官の仕事は、正直言ってきつい

ことが多くて、「志」だけでは務まらないような

気もしますが、医師の専門性を活かせる道の一

つとして、是非、チャレンジしてもらいたいと

思います。

○   いろんな厳しいことがあるのは事実で

すが、自らの努力により日本にイノベーション

をもたらす事のできる職業というのはあまり他

にないと思います。時につらいこともあります

が、やりがいのある仕事だと思うので、是非、

いらしてください。

○佐々木 今日は同期入省の強い絆を再確認す

ることができたように思います。同じパンフレ

ットを読んで入った仲間というのは、本当に一

生同期なんだよね。だから、このパンフレット

を読んでいる皆さんも、自分たちの同期と来年4

月一緒に仕事ができるという期待を持って、是

非、厚生労働省の門を叩いて欲しいと思うし、1

年後、こういう形でまた座談会をやってもらえ

ればと思います。皆さん、今日はどうもありが

とうございました。

○参加者一同 ありがとうございました。

若手座談会

平成20年度厚生労働省医系技官 36