5 2階線形微分方程式
本節では常微分方程式論のワントピックスとして応用上重要な 2階線形微分方程式の理
論を概説する.
5.1 2階線形微分方程式
2階線形微分方程式とは次の形の方程式である
y′′ + P (x)y + Q(x)y = R(x) (1)
この方程式を R の区間 I で考える. P (x), Q(x) および R(x) は I 上連続な関数である. 工
学上よく現れる 2階の方程式は
(p(x)y′)′ + q(x)y = f(x) (2)
の形をしている. 実際, c ∈ I を任意に固定し, p(x) = eR x
c P (t)dt > 0 とおくことによって,
(1)は (2)に書き換えられる. 逆に (2) は (1)に容易に書き換えることができる. これを
Lioville変換という.本節のうち, 定数係数の微分方程式の解説 (5.3節)以外は (2)の形の
方程式を扱うことにする. (1)における R(x) あるいは (2)における f(x) が恒等的に 0で
あるとき, 方程式は斉次であるといい, そうでないときは非斉次であるという.
5.2 基本解系 · ロンスキアン
まず斉次方程式
(p(x)y′)′ + q(x)y = 0 (3)
を区間 I = [a, b] の上で考える. まず Ly = (p(x)y′)′ + q(x)y とおく. まず次のことに注意
する.
補題 5.1 u, v ∈ C2(I), C を定数とすると
L(y1 + y2) = Ly1 + Ly2
L(Cy1) = CLy1
56
問 5.1 補題 5.1を証明せよ.
問題 (3)の解の集合について考察しよう. u(x), v(x) がともに (3)の解であるとすると,
補題 5.1より, 任意の定数 C1, C2 に対して C1u1(x) + C2u2(x) も (3)の解である. まず次
の定義をする.¶ ³
定義
(1) u(x), v(x) が線形独立であるとは C1u(x) + C2v(x) ≡ 0 のとき, C1 = C2 = 0 が成り立つことである. そうでないとき, つまり (C1, C2) \= (0, 0) なる C1, C2 に対してC1u(x) + C2v(x) ≡ 0 となるとき, u(x), v(x) は線形従属であるという.
(2) (3) の 2つの解 u(x), v(x) が線形独立であるとき, u(x), v(x) は基本解 (系)という.µ ´
2つの関数 u(x), v(x) に対して
W (u, v)(x) =
∣∣∣∣u(x) v(x)u′(x) v′(x)
∣∣∣∣
を u(x), v(x) のロンスキアンという. ロンスキアンについて次が成り立つ.
命題 5.2
(1) W (u, v)(x0) \= 0 ならば u(x), v(x) は線形独立である.
(2) u(x), v(x) が線形従属ならば W (u, v) = 0 である.
証明
(1) 定数 C1, C2 に対し C1u(x)+C2v(x) ≡ 0とおく,両辺を微分して C1u′(x)+C2v
′(x) ≡ 0.
この 2つの式より{
C1u(x) + C2v(x) = 0C2u
′(x) + C2v′(x) = 0
行列を用いて書き, x = x0 とおくと(
u(x0) v(x0)u′(x0) v′(x0)
)(C1
C2
)=
(00
)
ロンスキアンに関する条件から, 両辺(
u(x0) v(x0)u′(x0) v′(x0)
)−1
が存在するので, 両辺左から
かけると t(C1, C2) = t(0, 0) が得られる.
57
(2) 線形従属であるので, ある定数 C が存在して u(x) = Cv(x) あるいは v(x) = Cu(x) と
書けることから明らかである. 2
命題 5.2(2)の逆は一般には成り立たない (問 5.3参照). しかし, u(x), v(x) が (3) の解
であるときは成り立つ.
命題 5.3 u(x), v(x) がともに (3)の解であるとすると, ある定数 C > 0 があって
W (u, v)(x) = Cp(x)
と書ける.
問 5.2上の命題を証明せよ.
系 5.4 u(x), v(x) がともに (3)の解であるとする. このとき次が成り立つ:
(1) u(x), v(x) は線形独立であるならば W (u, v) は決して 0にならない.
(2) W (u, v) がある x0 で 0になれば, u(x), v(x) は線形従属である.
問 5.3 次の関数 u(x), v(x) はロンスキアン W (u, v) が 0だが, 線形独立であることを
示せ.
u(x) =
{x2 x = 00 x < 0
, v(x) =
{0 x = 0x2 x < 0
問 5.4 定数係数の方程式 y′′ + ay′ + by = 0 の 2つの解 u(x), v(x) のロンスキアンはあ
る定数 C > 0 があってW (u, v) = Ce−ax とかけることを示せ (Hint: ロンスキアン W が
W ′ + aW = 0 を満たすことを示せばよい).
このとき, (3)の任意の解は C1u(x) + C2v(x) として書けることを示す. まずは補題を用
意しよう.
補題 5.5 I = [a, b] 上の初期値問題
Lu = 0, u(x0) = A, u′(x0) = B
には解がただ 1つ存在する.
この補題は初期値問題の解の一意性という常微分方程式論の重要な結果を用い, その証
明には紙数を要する.
58
系 5.6 (3) の解 u(x) が
u(x0) = 0, u′(x0) = 0
を満たせば, u ≡ 0 が成り立つ.
これで, 次の定理が証明できる.
定理 5.7 u1, u2 ∈ C2(I) が (3) の基本解であれば (3)の任意の解 u は, 定数 C1, C2
を用いて
u(x) = C1u1(x) + C2u2(x)
とただ一通りに書ける.
つまり, 斉次方程式の解は 2つの線形独立な解を探せばよいことになった. しかし, 定数
係数の場合など特別な場合を除いては, 一般に線形独立な 2つの解を探すのは難しい. しか
し, 1つの解 u(x) が見つかれば, もう 1つの解 v(x) で, u(x), v(x) が線形独立になるもの
を見つけることが出来る.¶ ³
例題 5.1 u を x = c を含む区間における (3) の恒等的に 0でない解とするとき, v として
v(x) = u(x)
∫ x
c
dsp(s)u2(s)
とおくと, v も (3) の解であり, u(x), v(x) は線形独立であることを示せ.µ ´
解 代入して確かめることもできるが, 定数変化法で v の式を導く. Cu(x) は (3) の解で
あるので, 任意定数 C を U に変えた関数 v(x) = U(x)u(x) とおくと v′(x) = U ′(x)u(x) +
U(x)u′(x). p(x)v′(x) = p(x)U ′(x)u(x) + U(x)(p(x)u′(x)).
(p(x)v′(x))′ = (p(x)U ′(x))′u(x) + 2p(x)U ′u′ + U(x)(p(x)u′(x))′
ここで, u(x) は (3) の解であるから
(p(x)v′(x))′ + q(x)v(x) = (p(x)U ′(x))′u(x) + 2p(x)U ′(x)u′(x) + U(x)(p(x)u′(x))′ + q(x)U(x)u(x)
= (p(x)U ′(x))′u(x) + 2p(x)U ′(x)u′(x) + U(x){(p(x)u′(x))′ + q(x)u(x)}− (p(x)U ′(x))′u(x) + 2p(x)U ′(x)u′(x)
となる. Lv = 0とおくと, (pU ′)′u+2pU ′u′ = 0. 両辺に uをかけると, (pU ′)′u2+2(pU ′)uu′ =
59
0 より
ddx
((pU ′)u2) = 0
を得る. よって, (pU ′)u2 = C. C = 1 として U ′ = 1pu2 であるから, U =
∫ x
c
dsp(s)u2(s)
.
注 y′′ + P (x)y′ + Q(x)y = 0 の形の場合は
v(x) = u(x)
∫ x
c
e−R s
c P (t)dt
u(s)2 ds
となる.
5.3 定数係数の方程式
係数がとくに定数係数の場合は容易に基本解系を得ることができる. ここでは次の形の
方程式を考える:
y′′ + ay′ + by = 0 (4)
まず, 簡単ではあるが, 次のことに注意する.
命題 5.8 任意の複素数 λ に対して eλ 6= 0 である.
証明 λ = µ + iν とおく (µ, ν は実数). このとき, eλ = eµ(cos ν + i sin ν) であるから
|eλ| = eµ > 0 より eλ は決して 0にならない. 2
次に (4) の基本解を y = eλx の形で求めよう. y′ = λeλx, y′′ = λ2eλx より
(λ2 + aλ + b)eλ = 0
を得る. 命題 5.8 より
λ2 + aλ + b = 0 (5)
となる. この 2次方程式の解を (4)の特性方程式という. 特性方程式の解は a2 − 4b の符号
によって, 3通りに分かれる.
(1) a2 − 4b > 0 のとき, (5) は 2つの相異なる実数解 λ = λ1, λ2 をもつ. eλ1x は eλ2x は
ロンスキアンを計算することによって, 線形独立であることがわかるので, 基本解系と
なる.
60
(2) a2 − 4b = 0 のとき, (5) は 2重解 λ = λ0 = − a2をもつ. このとき, eλ0x は (4)の解で
あるが, もう一つの線形独立な解を得る必要がある. 例題 5.1の後の注によれば, も
う一つの解は
eλ0x
∫ x
0
e−R s0 adt
(eλ0s)2ds = e−
a2x
∫ x
0
e−as
(e−(a/2)s)2ds = eλ0x
∫ x
0
ds = xea2x = xeλ0x
となる. ロンスキアンを計算することにより, eλ0x と xeλ0x は線形独立となることがわ
かるので, 基本解系となる.
(3) a2− 4b < 0 のとき, (5) は 2つの相異なる虚数解 λ1 = µ + iν,λ2 = µ− iν をもつ. この
とき, eλ1x = eµx(cos νx + i sin νx), eλ2 = eµx(cos νx− i sin νx) となる. ここで実数値関
数の基本解系を得るために,
eλ1x + eλ2x
2= eµx cos νx, eλ1x − eλ2x
2i= eµx sin νx
に注意すれば eµx cos νx, eµx sin νx が基本解系となることがわかる.
以上まとめておこう.
命題 5.9 定数係数の 2階線形微分方程式 y′′ + ay′ + by = 0 の基本解系は対応する特性方程式
λ2 + aλ + b = 0
の解によって次のようになる.
(1) 特性方程式が相異なる実数解 λ = λ1, λ2 をもつとき, 基本解系として eλ1x, eλ2x
をとることができる.
(2) 特性方程式が 2重解 λ = λ0 をもつとき, 基本解系として eλ0x, xeλ0x をとることができる.
(3) 特性方程式が相異なる虚数解 λ = µ± iν をもつとき, 基本解系として eµx cos νx,
eµx sin νx をとることができる.
5.4 定数変化法による非斉次方程式
ここでは非斉次方程式
y′′ + P (x)y′ + Q(x)y = f(x) (6)
61
あるいは
(p(x)y′)′ + q(x)y = f(x) (7)
について学ぶ. まず, 対応する斉次方程式
y′′ + P (x)y′ + Q(x)y = 0 (8)
あるいは
(p(x)y′)′ + q(x)y = 0 (9)
の一般解は基本解系 u1, u2 を用いて y = C1u1(x) + C2u2(x) (C1, C2 は任意定数)と表され
ることに注意する. このことを踏まえ, まず次のことを確認しよう:
命題 5.10 非斉次方程式 (7)の解の 1つ (特殊解)を w とすると, (7) の任意の解は
y = w + C1u1 + C2u2
で表される. つまり,
非斉次方程式の一般解 = 非斉次方程式の特殊解 + 斉次方程式の一般解
と表される.
証明 (7) の任意の解を v とする. Lu = (p(x)u′)′+ q(x)u とおくと, L(v−w) = Lv−Lw =
f(x)− f(x) = 0. よって v −w は斉次方程式の一般解であるので v −w = C1u1 + C2u2 と
かける. よって v = w + C1u1 + C2u2. 2
命題 5.10により, 非斉次方程式の一般解を求めるためには, 何でもよいから非斉次方程
式の解を 1つ求めれば, それに斉次方程式の一般解をたすだけで非斉次方程式の一般解が
得られる.
ここでは, 斉次方程式の一般解 C1u1(x) + C2u2(x) (C1, C2 は任意定数) に対して C1,
C2 の任意定数を関数 U1, U2 に変え, 非斉次方程式の解を得る方法学ぶ. この方法を定数変
化法という. (9)の基本解系を u1, u2 としよう. このとき, (9) の一般解は y = C1u1 + C2u2
とかける (C1, C2 は任意定数). ここで C1, C2 を関数 U1, U2 に変えた y = U1u1 + U2u2 が
(7)を満たすように U1, U2 を定めてみよう. まず, 積の微分公式から
y′ = U ′1u1 + U1u
′1 + U ′
2u2 + U2u′2 = (U ′
1u1 + U ′2u2) + (U1u
′1 + U2u
′2)
62
となる. ここで, まず U ′1, U ′
2 に関する上の式の四角形で囲まれた部分について次を課す:
U ′1u1 + U ′
2u2 = 0. (10)
このとき y′ = U1u′1 + U2u
′2 となる. ここで, p(x)y′ = U1(p(x)y′) + U2(p(x)y′) より
(p(x)y′)′ =U ′1(p(x)u′1) + U1(p(x)u′1)
′ + U ′2(p(x)u′2) + U2(p(x)u′2)
′
= {U ′1(p(x)u′1) + U ′
2(p(x)u′2)} + U1(p(x)u′1)′ + U2(p(x)u′2)
′ (11)
ここで, (11) より
(p(x)y′)′ + q(x)y
= {U ′1(p(x)u′1) + U ′
2(p(x)u′2)} + U1(p(x)u′1)′ + U2(p(x)u′2)
′ + q(x)(U1u1 + U2u2)
= {U ′1(p(x)u′1) + U ′
2(p(x)u′2)} + U1{(p(x)u′1)′ + q(x)u1}+ U2{(p(x)u′2)
′ + q(x)u2}
ここで, u1, u2 は (9)の解であるので (p(x)u1)′+q(x)u1 = 0, (p(x)u′2)
′+q(x)u2 = 0. よって
(p(x)y′)′ + q(x)y = {U ′1(p(x)u′1) + U ′
2(p(x)u′2)}
以上より, y が (7) の解であるためには上の四角形で囲まれた部分が f(x) であること, つ
まり
{U ′1(p(x)u′1) + U ′
2(p(x)u′2)} = f(x) (12)
を得る. (10), (12)は U ′1, U ′
2 に関する連立方程式であるので, 行列を用いて表すと(
u1 u2
p(x)u′1 p(x)u′2
)(U ′
1
U ′2
)=
(0
f(x)
)
ここで係数行列の行列式は p(x)W (u1, u2) である. p(x) > 0 であり, u1, u2 は基本解系であ
るので 系 5.4 より, p(x)W (u1, u2) は決して 0にならない. よって, 係数行列の逆行列を両
辺左からかけて(
U ′1
U ′2
)= 1
p(x)W (u1, u2)
(p(x)u′2 −u2
p(x)u′1 u1
)(0
f(x)
)= 1
p(x)W (u1, u2)
(−u2f(x)u1f(x)
)
つまり,
U ′1(x) =
−u2(x)f(x)
p(x)W (u1, u2), U ′
2(x) =u1f(x)
p(x)W (u1, u2)
63
を得る. 両辺, 積分して
U1(x) = U1(c) +
∫ x
c
−u2(s)f(s)
p(s)W (u1, u2)ds, U2(x) = U2(c) =
∫ x
c
u1(s)f(s)
p(s)W (u1, u2)ds
となる. U1(c), U2(c) を任意の定数 C1, C2 として
y =
(C1 +
∫ x
c
−u2(s)f(s)
p(s)W (u1, u2)ds
)u1(x) +
(C2 +
∫ x
c
u1(s)f(s)
p(s)W (u1, u2)ds
)u2(x)
=u1(x)
∫ x
c
−u2(s)f(s)
p(s)W (u1, u2)ds + u2(x)
∫ x
c
u1(s)f(s)
p(s)W (u1, u2)ds + C1u1(x) + C2u2(x)
これが求める一般解である.
注 命題 5.3により, K = p(x)W (u1, u2) は定数であることに注意する.
¶ ³
例題 5.2 次の方程式の一般解を求めよ.
y′′ + y = 1cos x
µ ´
解 斉次方程式 y′′ + y = 0 の特性方程式 λ2 + 1 = 0 の解は λ = ±i. よって, 斉次方
程式の一般解は C1 cos x + C2 sin x. 2つの線形独立な解 cos x, sin x のロンスキアンは
W (cos x, sin x) =
∣∣∣∣∣cos x sin x
− sin x cos x
∣∣∣∣∣ = 1. よって, 非斉次方程式の一般解は
u(x) = cos x
∫ − sin x 1cos x
1dx + C1
+ sin x
∫ cos x 1cos x1
dx + C2
= cos x
∫− sin xcos x
dx + C1 cos x + sin x
∫dx + C2 sin x
= cos x log | cos x|+ C1 cos x + x sin x + C2 sin x
= cos x log | cos x| + x sin x + C1 cos x + C2 sin x (C1,C2 は任意定数)
5.5 境界値問題 · Green関数
境界値問題は自然現象の解析や工学の諸問題における様々な場面で現れる重要なトピッ
クスである。ここでは, 常微分方程式の境界値問題とそのGreen関数について学ぶ.
バイオリンの弦のような弾性をもつ限を両端を固定して張っておき, 垂直方向に外力 f
を働かせれば, 弦は垂直方向にたわむ. その弦の形状を議論しよう. 弦は以下の図のように
64
x 軸上の 2点 x = a, x = b で固定されており, 外力 f は x 軸に垂直な一定方向を向いてお
り, その大きさは場所 x の関数であるとする. このような状況のもとでは弦の各点におけ
る張力は一定であり, 弦のたわみが微小である場合, そのたわみは次の方程式に従うことが
知られている.
a b x
f
u(x)
u′′ = −f(x)
ただし u(x) は点 x における弦の変位 (符号は外力の向きと合わせる)を表す. また, 単位を
とりなおして, 弦の性質に依存する定数が 1となるようにしてある. 与えられた f に対し
て, 上の方程式の解 y が求まれば弦のたわみの形状が決まることになる. また弦は x = a,
x = b で固定されているので, x = a, x = b における変位は 0, つまり境界条件
u(a) = u(b) = 0
を満たさなければならない.¶ ³
例題 5.3 次の境界値問題の解を求めよ.
{ −u′′(x) = f(x)u(a) = u(b) = 0
(13)
µ ´
解対応する斉次方程式 −u′′ = 0 の解で u(a) = 0 を満たすものを u1, u(b) = 0 を満たす
ものを u2 とすると (このような u1 と u2 をとるのがポイント!),
u1(x) = x− a, u2(x) = b− x
となり, これらは線形独立である. 実際, ロンスキアンを計算すると
W (u1, u2) =
∣∣∣∣u1 u2
u′1 u′2
∣∣∣∣ =
∣∣∣∣x− a b− x
1 −1
∣∣∣∣ = a− b 6= 0
−u′′ = 0 の一般解は C1u1 + C2u2 とかけるが, 定数変化法により, C1, C2 を関数に変え,
u = U1u1 + U2u2 が −u′′ = f の形で解をみつける. 先述の定数変化法によれば
U ′1(x) = − u2(x)f(x)
K= − (b− x)f(x)
b− a, U ′
2(x) =−u1(x)f(x)
K=
(x− a)f(x)
b− a
65
となる. ここで, U ′1(ξ) を [x, b] 上積分し, U ′
2(ξ) を [a, x] 上で積分すると
U1(b)− U1(x) = −∫ b
x
(b− ξ)f(ξ)
b− adξ, U2(x)− U2(a) =
∫ x
a
(ξ − a)f(ξ)
Kdξ
つまり
U1(x) = U1(b) +
∫ b
x
(b− ξ)f(ξ)
b− adξ, U2(x) = U2(a) +
∫ x
a
(ξ − a)f(ξ)
b− adξ
よって
u(x) = (x− a)
{U1(b) +
∫ b
x
(b− ξ)f(ξ)
b− adξ
}+ (b− x)
{U2(a) +
∫ x
a
(ξ − a)f(ξ)
b− adξ
}
かつ u(a) = u(b) = 0 をみたすとすると U1(b) = 0, U2(a) = 0 を得る. 以上より,
u(x) = (x− a)
∫ b
x
(b− ξ)f(ξ)
b− adξ + (b− x)
∫ x
a
(ξ − a)f(ξ)
b− adξ (14)
を得る. これが実際に解となるのは直接計算によって確かめることができる. ここで,
G(x, ξ) =
(x− a)(b− ξ)
(b− a)(a ≤ x ≤ ξ)
(b− x)(ξ − a)
(b− a)(ξ ≤ x ≤ b)
とおくと
u(x) =
∫ b
a
G(x, ξ)f(ξ)dξ
と書くことができる. 関数 G を境界値問題 (13)のGreen関数という.
次に一般の境界値問題について Grenn 関数を構成しよう. 2 階の微分作用素 Lu =
(p(x)u′)′ + q(x)u とおく.
境界値問題
(p(x)u′)′ + q(x)u = f(x)a1u(a) + a2(p(a)u′(a)) = 0b2u(b) + b2(p(b)u′(b)) = 0
(15)
を考える. ここで, 実数の組 (a1, a2), (b1, b2) は a21 + a2
2 6= 0, b21 + b2
2 6= 0 を満たすものとす
る. よって, 境界条件は α, β を用い,{
cos α · u(a)− sin α · p(a)u′(a) = 0cos β · u(b)− sin β · p(b)u′(b) = 0
(16)
66
とくことができる. 今後は (16)を境界条件とする. この境界値問題のGreen関数を構成し
よう. さて, 考える境界値問題の斉次方程式
(p(x)u′)′ + q(x)u = 0 (a < x < b)
の解で,
u1(a) = sin α, p(a)u′(a) = cos α
を満たす解 u1(x) と,
u2(b) = sin β, p(b)u′2(b) = cos β
を満たす解 u2(x) を考える (これらは存在する). これらが, 線形独立であると仮定しよう.
斉次方程式の一般解は任意定数 C1, C2 を用いて
u(x) = C1u1(x) + C2u2(x)
と書けるが, C1, C2 を関数に変える定数変化法を用いることにより, 非斉次方程式
(p(x)u′)′ + q(x)u = f(x)
の一般解は
y = C1u1(x) + C2u2(x) + 1K
{u1(x)
∫ x
a
f(ξ)u2(ξ)dξ +
∫ b
x
f(ξ)u1(ξ)dξ
}
と書くことができる. ただし,
K = p(x){u′1(x)u2(x)− u1(x)u′2(x)}
であり, これは I = [a, b] 上定数である (命題 5.3 ).
問 5.5 関数 U(x) = 1K
{u1(x)
∫ x
a
f(ξ)u2(ξ)dξ +
∫ b
x
f(ξ)u1(ξ)dξ
}は (p(x)u′)′+ q(x)u =
f(x) の特殊解であることを確かめよ.
上の u を変形して
u(x) = u1(x)
{C1 + 1
K
∫ x
a
f(ξ)u2(ξ)
}+ u2(x)
{C2 + 1
K
∫ b
x
f(ξ)u1(ξ)dξ
}
67
と書くと
u′(x) = u′1(x)
{C1 + 1
K
∫ x
a
f(ξ)u2(ξ)dξ
}+ u′2(x)
{C2 + 1
K
∫ x
a
f(ξ)u1(ξ)dξ
}
となるが, これらを用いて, 境界条件を満たすように C1, C2 を決める. まず, cos α · u(a)−sin α · p(a)u′(a) = 0 を代入して
cos α · u(a)− sin α · u′(a)
= {cos α · u2(a)− sin α · p(a)u′2(a)}{
C2 + 1K
∫ b
a
f(ξ)u1(ξ)dξ
}
ここで u1 と u2 は線形独立であるから, cos α · u2(a)− sin α · p(a)u′2(a) 6= 0 となる (問 5.6
参照). よって
C2 = − 1K
∫ b
a
f(ξ)u1(ξ)dξ
と定まる. x = b における境界条件からも同様にして
C1 = − 1K
∫ b
a
f(ξ)u2(ξ)dξ
と定まる. 以上より
u(x) = − 1K
{u(x)
∫ b
x
f(ξ)u2(ξ)dξ + u2(x)
∫ x
a
f(ξ)u1(ξ)dξ
}
とおくと, u は方程式および境界条件を全てみたす. ここで
G(x, ξ) =
− 1
Ku1(x)u2(ξ) (a ≤ x ≤ ξ)
− 1K
u1(ξ)u2(x) (ξ < x ≤ b)(17)
とおくことにより
u(x) =
∫ b
a
G(x, ξ)f(ξ)dξ
と書くことができる. G(x, ξ) を境界値問題 (15)のGreen関数という.
問 5.6 上の u1, u2 について, u2 が
cos α · u2(a)− sin α · p(a)u′2(a) = 0
68
を満たせば, u1 と u2 は線形従属, つまり少なくとも一方が 0でないある定数 C1, C2 があっ
て, C1u1 + C2u2 = 0 が成り立つことを下記の手順で示せ. ただし, 次の事実は証明せずに
用いてよい.
定理 任意の定数 A, B に対して初期値問題
(p(x)u′)′ + q(x)u = 0
u(a) = A, u′(a) = B
はある h > 0 があって, 区間 [a, a + h) 上ただ 1つ存在する. 特に, A = B = 0 の場合,
解は u ≡ 0 のみである.
(1) U(x) = C1u1(x) + C2u2(x) とおくとき,
(U(a)
p(a)U ′(a)
)=
(u1(a) u2(a)
p(a)u′1(a) p(a)u′2(a)
)(C1
C2
)
となることを示せ.
(2) u1(a) = sin α, p(a)u′1(a) = cos α であることを思い出し, 少なくとも一方が 0でないあ
る定数 C1, C2 が存在して, 対応する U が U(a) = 0, p(a)U ′(a) = 0 をみたすことを示
せ. Hint: 正方行列 A に対して,連立方程式 Ax = 0 が自明でない解を持つための必要
十分条件は |A| = 0 であることを用いよ.
(3) 上の定理を用いて, (2)の C1, C2 に対して C1u1(x) + C2u2(x) ≡ 0 となる, つまり u1,
u2 は線形従属であることを示せ.
ここで, Green関数の性質をまとめておこう.
69
定理 5.10 (Green関数の性質) Green関数 G(x, ξ) は以下の性質を持つ.
(1) G(x, ξ) は (x, ξ) について連続で, 対称性 G(x, ξ) = G(ξ, x) を持つ.
(2) ξ ∈ [a, b] を固定したとき, G(x, ξ) は x の関数として, x = ξ 以外で微分可能で,
(p(x)Gx(x, ξ))x + q(x)G(x, ξ) = f(x)
をみたす.
(3) ξ ∈ (a, b) を固定したとき, G(x, ξ) は x の関数として, 境界条件を満たす:
cos α ·G(a, ξ)− p(a) sin α ·Gx(a, ξ) = 0
cos β ·G(b, ξ)− p(b) sin β ·Gx(b, ξ) = 0
(4) ∂G∂xは x \= ξ に対して連続, x = ξ で不連続であり
∂G∂x
(ξ + 0, ξ)− ∂G∂x
(ξ − 0, ξ) = − 1p(ξ)
の跳躍 (jump)がある.
定理 5.11 境界値問題 (15)の解はGreen関数 (17) G(x, ξ) を用いて
u(x) =
∫ b
a
G(x, ξ)f(ξ)dξ
と表される.
注意 関数 f に対して, 上の定理の式の右辺を対応させる写像
(Gf)(x) =
∫ b
a
G(x, ξ)f(ξ)dξ
を G を積分核とする積分作用素という.
問 5.7 例題 8.1で構成したGreen関数が上の定理の性質を満たすことを確かめよ.
注意 上の定理の性質をみたす 2変数関数 G(x, ξ) は境界値問題に対してただ 1つに決ま
ることが知られているので, 上の性質をみたす 2変数関数 G(x, ξ) をGreen関数と定義する
方法もある.
注意 Green関数の構成の際, 関数 u1 と u2 は線形独立であると仮定したが, 必ずしもそう
70
でない. 線形従属となってしまう場合は, 上の方法でGreen関数は構成できない (後述の定
理 (可解条件)を参照).¶ ³
例題 5.4 境界値問題
{u′′ + u = f(x)u′(0) = u(π) = 0
のGreen関数を求めよ. また, f(x) = cos x のとき, 上の境界値問題の解を求めよ.µ ´
注 α = π2
, β = 0 の場合である.
解初期値問題
u′′ + u = 0, u(0) = 1, u′(0) = 0
の解を u1, 初期値問題
u′′ + u = 0, u(π) = 0, u′(π) = 1
の解を u2 とする. u′′ + u = 0 の一般解は u(x) = C1 cos x + C2 sin x より u1(x) = cos x,
u2(x) = sin x となる. ここで, K = u′1(x)u2(x)− u1(x)u′2(x) = −1 となるので,
G(x, ξ) =
{cos x sin ξ (0 ≤ x ≤ ξ)cos ξ sin x (ξ < x ≤ π)
また, f(x) = cos x のとき, 解は
u(x) =
∫ π
0
G(x, ξ)f(ξ)dξ =
∫ x
0
(cos ξ sin x) cos ξdξ +
∫ π
x
(cos x sin ξ) cos ξdξ
= sin x
∫ x
0
cos2 ξdξ + cos x
∫ π
x
sin ξ cos ξdξ = sin x
∫ x
0
1 + cos 2ξ2
dξ + cos x
∫ π
x
sin 2ξ2
dξ
= sin x
[ξ2
+sin 2ξ
4
]x
0
+ cos x
[− cos 2ξ
4
]π
x
= x2
sin x− 14
cos x + sin 2x sin x + cos 2x cos x4
= x2
sin x− 14
cos x +cos(2x− x)
4= x
2sin x
となる.
問 5.8 境界値問題{
u′′ + u = f(x)u(0) = u′(π) = 0
71
のGreen関数を求めよ. また, f(x) = sin x のとき, 上の境界値問題の解を求めよ.
問 5.9 境界値問題{
u′′ − u = f(x)u(0) = u(1) = 0
のGreen関数を求めよ.
さて, 次の境界値問題を考えよう.{
u′′ + u = f(x)u(0) = u(π) = 0
(18)
今までと形はよく似ているが, 同じ方法でGreen関数を構成しようとするとすぐに躓くこ
とがわかる. 実際, α = 0, β = 0 の場合であるから
u′′ + u = 0, u(0) = 0, u′(0) = 1
の解を u1,
u′′ + u = 0, u(π) = 0, u′(π) = 1
の解を u2 とおくと, u′′ + u = 0 の一般解が u(x) = C1 cos x + C2 sin x であるから, これよ
り, u1(x) = sin x, u2(x) = − sin x となってしまい, u1 と u2 が線形独立とならない, 実際,
この場合 f が∫ π
0
f(x) sin xdx \= 0
を満たすとき, 解を持たない. 実際, 解が存在したとして, それを u とすると, 部分積分を
繰り返し∫ π
0
f(x) sin xdx =
∫ π
0
{u′′(x) + u(x)} sin xdx =
∫ π
0
u′′(x) sin x +
∫ π
0
u(x) sin x
= [u′(x) sin x]π0 −
∫ π
0
u′(x) cos xdx +
∫ π
0
u(x) sin xdx
=−∫ π
0
u′(x) cos xdx +
∫ π
0
u(x) sin xdx
= [−u(x) cos x]π0 −∫ π
0
u(x) sin xdx +
∫ π
0
u(x) sin xdx = 0
となるからである. また f ≡ 0 としたとき, 境界値問題の解は u(x) = C sin x (C は任意定
数)となり, 一意的でない. この場合, 境界値問題 (18)が解をもつ必要十分条件は∫ π
0
f(x) sin xdx = 0
72
となること, つまり, f が sin x と直交することであることが調べる.
これは, 5.6節で述べる, 対応する固有値問題が 0を固有値にもつ場合である. この場合,
f がその 0固有値に対応する固有関数と直交することが, 境界値問題の解が存在する必要十
分条件となることが知られている. 証明無しで紹介しておこう.
定理 5.12 境界値問題
(p(x)u′)′ + q(x)u = f(x)cos α · u(a)− sin α · p(a)u′(a) = 0cos β · u(b)− sin β · p(b)u′(b) = 0
(19)
について, 対応する問題
(p(x)u′)′ + q(x)u = 0cos α · u(a)− sin α · p(a)u′(a) = 0cos β · u(b)− sin β · p(b)u′(b) = 0
(20)
の [a,b]上恒等的に 0でない解 ϕ が存在するとき, (19)が解を持つための必要十分条件は
∫ b
a
f(x)ϕ(x)dx = 0
が成り立つことである.
定理 5.13 (Fredholmの交代定理) 任意の f に対して境界値問題 (19)の解が存在して一意であるための必要十分条件は (20)の解が u ≡ 0 となることである.
5.6 Strum-Lioville型固有値問題
工学で重要となる関数は, 次のパラメータ λ を含む方程式の解としてしばしば現れる.
(p(x)ϕ′)′ + {q(x) + λr(x)}ϕ = 0, x ∈ (a, b) (21)
ここで, p, q, r は [a, b] 上の連続関数で, p(x) > 0, r(x) > 0 を仮定する. この方程式に対
し, 境界条件
cos α · ϕ(a)− sin α · p(a)ϕ′(a) = 0 (22)
cos α · ϕ(a)− sin α · p(a)ϕ′(a) = 0 (23)
を課す. まず, どのような λ に対しても ϕ ≡ 0 は解となる. また ϕ が解とすると, 方程式
の線形性からその定数倍も解となる.
73
ところで, ϕ, ψ を (21)の (22)を満たす解 (初期値問題の解ということになる)とすると,
cos α · ϕ(a)− sin α · p(a)ϕ′(a) = 0
cos α · ψ(a)− sin α · p(a)ψ′(a) = 0
これを行列を用いて書くと(
ϕ(a) p(a)ϕ′(a)ψ(a) p(a)ψ′(a)
)(cos α− sin α
)=
(00
)
を得る. t(cos α, sin α) は零ベクトルではないので, 左辺の行列の行列式が 0となる. その行
列の行列式は p(a)W (ϕ, ψ)(a) に等しいことに注意すると, p(a)W (ϕ, ψ)(a) = 0 となる. こ
こで, 系 5.4より, ϕ と ψ は線形従属, つまりある定数 C > 0 が存在して ϕ = Cψ と書
けることになる. 以上の議論から (21),(22)を満たす解は定数倍を除き, 一意に定まること
になる. よって, (22), (23)を同時に満たす解は一般には期待できず, 特別な λ の値に対し
てのみ存在することがわかる. ϕ ≡ 0 はどのような λ に対しても解であったから, 特別な
λ 以外は, 問題の解は ϕ ≡ 0 の定数倍, つまり ϕ ≡ 0 しか存在しないことになる. そこで,
ϕ 6≡ 0 が存在するような λ を固有値, 対応する関数 ϕ を固有関数という. このことを具体
例でみていこう.¶ ³
例題 5.5 次の Strum-Lioville型固有値問題の固有値と固有関数をすべて求めよ.
{y′′ + λy = 0y(0) = y(L) = 0
µ ´
解 方程式は 2階の定数係数の常微分方程式であるから, 特性方程式 α2 + λ = 0 の解を用
いて基本解系が求まる.
まず λ < 0 の場合を考える. 特性方程式の解は α = ±√−λ. よって基本解系は y1(x) =
e√−λx, y2(x) = e−
√−λx となるので一般解は
y(x) = C1e√−λx + C2e
−√−λx
となる. 境界条件より
y(0) = C1 + C2 = 0
y(L) = C1e√−λL + C2e
−√−λL = C1e√−λL = 0
74
これより C1 = C2 = 0 なので λ < 0 のときの解は y ≡ 0 しかない.
λ = 0 の場合, 基本解系は y1(x) = 1, y2(x) = x となるが, この場合も同様にして y ≡ 0
を得る.
最後に λ > 0 のとき, 特性方程式の解は α = ±√
λi となるので基本解系は y1(x) =
cos(√
λx), y2(x) = sin(√
λx) となる. よって一般解は
y(x) = C1 cos(√
λx) + C2 sin(√
λx)
となる. これが境界条件を満たすことから
y(0) = C1 = 0
y(L) = C1 cos(√
λL) + C2 sin(√
λL) = C2 sin(√
λL) = 0
より sin(√
λL) = 0 つまり λ =(nπ
L
)2
(n = 1, 2, · · · ) を得る.
よって固有値問題の固有値および固有関数は
λ = λn =(nπ
L
)2
, y = yn(x) = Cn sinnπx
L
となる. 2
問 5.10 次の Strum-Liouville型固有値問題の固有値と固有関数をすべて求めよ.
{y′′ + λy = 0y′(0) = y′(L) = 0
最後に, Strum-Liouville型固有値問題の固有関数の性質について述べておこう. まず, は
じめの定理は Strum-Lioville型固有値問題の固有値の存在に関する定理である. 証明は長い
議論を必要とするため, 省略する.
定理 5.14 Strum-Liouville型固有値問題の固有値は無限個存在し, すべて実数である.
その中に最小の固有値 λ0 が存在し, すべての固有値は順に
λ0 < λ1 < λ2 < · · ·
と並べることができ, limn→∞
λn = ∞ となる. また, 各固有値に対応する固有関数は定数
倍を除きただ 1つ存在する. また, λn に対応する固有関数 ϕn は (a, b) 内に n 個の零点をもつ.
次は固有関数の直交性といわれる性質である.
75
定理 5.15 (固有関数の直交性) Strum-Liouville型固有値問題 (21),(22),(23)の異なる固有関数は重み r(x) に関して直交する. つまり, (λm, ϕm), (λn, ϕn) を固有値と固有関数の組で λm 6= λn とすると
∫ b
a
r(x)ϕm(x)ϕn(x)dx = 0
が成り立つ.
証明 方程式より
(p(x)ϕ′m)′ + q(x)ϕm + λmr(x)ϕm = 0
(p(x)ϕ′n)′ + q(x)ϕn + λnr(x)ϕn = 0
である. 第 1式に ϕm を, 第 2式に ϕn をかけて差をとると
(p(x)ϕ′m)′ϕm − (p(x)ϕ′n)′ϕn + (λm − λn)r(x)ϕmϕn = 0
となる. 両辺を [a, b] 上積分する. まず部分積分して∫ b
a
(p(x)ϕ′m(x))′ϕn(x)dx = [p(x)ϕ′m(x)ϕn(x)]ba −∫ b
a
p(x)ϕ′m(x)ϕ′n(x)dx
∫ b
a
(p(x)ϕ′n(x))′ϕm(x)dx = [p(x)ϕ′n(x)ϕm(x)]ba −∫ b
a
p(x)ϕ′n(x)ϕ′m(x)dx
であることに注意すると
[p(x){ϕ′m(x)ϕn(x)− ϕm(x)ϕ′n(x)}]ba + (λm − λn)
∫ b
a
r(x)ϕm(x)ϕn(x)dx = 0
第 1項が 0であることを示せば証明がおわる. まず ϕ′m(a)ϕn(a)− ϕm(a)ϕ′n(a) = 0 を示そ
う. 境界条件より
cos α · ϕm(a)− sin α · p(a)ϕ′m(a) = 0
cos α · ϕn(a)− sin α · p(a)ϕ′n(a) = 0
行列を用いると(
ϕm(a) p(a)ϕ′m(a)ϕn(a) p(a)ϕ′n(a)
)(cos α− sin α
)=
(00
)
とかけるが, t(cos α,− sin α) は決して零ベクトルではないので, 左辺の行列の行列式が 0と
なる. つまり, p(a){ϕm(a)ϕ′n(a) − ϕ′m(a)ϕn(a)} = 0 となる. x = b における境界条件も同
様である.
76
以上より
(λm − λn)
∫ b
a
r(x)ϕm(x)ϕn(x)dx = 0
を得る. λm 6= λn より,
∫ b
a
r(x)ϕm(x)ϕn(x)dx = 0
2
77