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Page 1: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

女性起業家事例1 株式会社GAIA ●企業名称: 株式会社GAIA ●代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 ●創 業: 2006年 ●業 種: 自然食レストラン、惣菜のテイクアウト・ケータリング、弁当の販売・配達、他 ●経 緯: 離婚や病気を患った経験を経て、「収入、不安、健康」への想いから創業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 株式会社GAIA 規模 正社員5名、パート10名 所在地 福井県福井市高木中央2丁目4115 拠点等 地元・福井での店舗運営のほか、中国・上海にも進出。現地の森ビルにも店舗を持つ。 事業領域 ・野菜を中心とした自然食レストランの運営

・手づくり惣菜のテイクアウト、ケータリング ・弁当の販売、配達 他

思い 強み

・離婚を機に子どもを連れて地元の福井へ戻り、パートとして働いていたが、それだけでは子供を養っていけるだけの収入が得られないことを実感。また、病気を患った経験もあり、健康や食事への意識はもともと高いものがあった。 ・そうした中、収入、健康、不安(子供の進学等)という3つの思いから、創業を思い立つことになる。創業を決意後、調理師学校に通い、1年あまりで野菜ソムリエ、調理師、雑穀エキスパートの3つの資格を取得。雑穀エキスパートは福井県で4名ほどしか取得していない、希少な資格である。 ・やりたいことをやってみるタイプであり、正社員として企業に雇われるという道は、特に考えたことはなかった。もともと好奇心が強く、やりたいことがいくつもあり、自分の思いを叶えるには創業が一番いいと考えた。性格にも合い、辛いことも多いが経営は面白いはず、という信念もあった。

需要 【方々での「女性向けの弁当」PR、メディア露出によって需要が拡大】 ・県内の経営者が集まる様々な交流会に参加し、自社のPRを進めた。また、行く先々で「女性のための弁当」を強調して販売することで差別化に成功し、徐々にファンが増加。業態自体が全国的にも珍しく、注目は高まっていった。 ・福井では女性経営者が珍しいこともあり、テレビや雑誌、新聞にも頻繁に取り上げられたことも、需要の拡大を後押しすることとなる。

女性視点 【同世代の女性に訴求、社内の労働環境の充実】 ・女性が満足すれば、その夫や子供も連れてきてくれて売上が拡大するとの確信のもと、営業ターゲットを自分達と同じ世代(30代から 40代の子育て世代)の女性に絞った。 ・社内向けの取り組みとしては、女性が働きやすい環境の構築に力を入れている。産休、育休のほか、子供の学校行事などでも従業員が休みやすいような体制を整えていきたい。

資金調達 ・資金ゼロからのスタートとなったが、商工会議所や国金、信用金庫等へ相談を持ち掛け、また類似事業の経験および実績を詳細に説明することで、1,700万円の調達にこぎ着けることができた。

支援者、家族

・以前、雑穀店を経営していた時、県の産業支援センターの経営コンサルタントに事業の相談を持ち掛けたことがあった。その際に事業計画から資金の調達方法まで幅広く教わることができた。非常に世話になったため、当社立ち上げの際にもまずは産業支援センターへ相談に行ったほど。商工会議所や金融機関へ出向いたのは、その後のことである。

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●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○

●坪川社長の成長ストーリー

●坪川社長 ●Veg.yard店舗概観 ●Veg.yard店舗内観

◆最初に立ち上げたのは雑穀レストラン。料理教室で先生だった知人と立ち上げた。 1年半ほど経て合同会社化するなど滑り出しは順調だったが、扱うものが雑穀だけで、 食に不可欠な「楽しみ」が欠けていると思い、現在の GAIA の立ち上げを決意する。

◆その後の職場のパン屋で知り合った5名と共同で、株式会社GAIAを立ち上げた。メンバーの中で自分が最年長であり、どうせ会社を作るなら最初から株式会社で行こう、という意識があったため、株式会社での創業とした。

創業前

メッセージ: 女性は想いがあっても行動しない人が多い。考えることと実行することは違うこと。とにかく行動してほしい。

創業時

転換期

◆元々あった手持ちの200万円は先の店の立ち上げで使い切っていたため、資金ゼロからのスタートとなった。商工会議所、国金、信用金庫等に相談し、また前職での実績も詳細に説明することで、1,700万円の調達にこぎ着けることができた。

◆当初の入居物件は元ラーメン屋。内覧時には床下はシロアリだらけ、天井はネズミの死骸だらけという状態だったが、駐車場があり、車社会の福井では集客に有利だと見込み、結局、1,700万円の設備投資を決め、場所を借りた。

食に「楽しみ」を

◆調達した資金は設備投資で使い切ってしまう。宣伝も全くできなかったため、開店初日の売上げは2万円に過ぎなかった。

◆1~2ヶ月目で資金が不足し、給料の支払いも難しくなった。そこで従業員を集め、続けるか辞めてもらうかの選択を迫らざるを得なくなったが、そこで全員が「一緒に続ける」と宣言。この従業員たちを絶対に養っていこう、必ず成功しようと決意した瞬間である。今振り返ってみれば、この時の従業員たちの言葉が、非常に重要な転機となっている。

◆福井の小さな会社から世界に挑戦すべく、上海進出を果たした。フェアトレード制度で発展途上国の生産者、女性を救いたいという想いや、現地の人に就労の場を提供するという形での国際貢献意欲も背景にある。

◆フェイスブックを通じての情報発信効果もあり、知らないうちに色々な方面から 自社事業への注目を集めるようにもなっている。

◆現在は事業の転換期にあたり、店舗の移転等も検討している。 ◆現状は女性の力だけで経営しているが、男性の参画について全く頭にないわけではない。男性の力が入ると大きく変わるのではないかという期待もある。一方で、女性だけでどこまで行けるか、試してみたい気持ちも強い。両者の葛藤で悩んでいるところである。

福井から世界へ

成長期に 向けて

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女性起業家事例2 株式会社農環 ●企業名称: 株式会社農環 ●代表者名: 那須 信子 氏 ●創 業: 平成15年 ●業 種: 古紙の収集・運搬、洋服リフォーム技術専門校「縫工房」の運営、洋服お直し・リフォーム・リメ

イク、障害者等就労困難者等の就労支援 ●経 緯: 母子家庭の母親として働く中、社会的弱者が働くことで生き甲斐を持てる社会を創ろうと創業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 株式会社農環 規模 従業員数20名 所在地 滋賀県栗東市上砥山851-6 拠点等 所在地に法人本部ならびに洋服リフォーム技術専門校「縫工房」、お直し・リフォーム・かけつぎ

の店舗とNPO法人就労ネットワーク滋賀(以下、「ネットワーク滋賀」という。)のオフィスがある。ネットワーク滋賀では、障害者就労サービス事業を 2 カ所、ニート・ひきこもり等の就労に向けた相談支援を行う地域若者サポートステーションを県内 2 カ所で展開。

事業領域 ・古紙の収集・運搬、洋服リフォーム技術専門校「縫工房」の運営、洋服直し・リフォーム・リメイク、障害者等就労困難者等の就労職業支援および斡旋を事業の4本柱としている。 ・就労が困難になりがちな母子家庭のお母さんや、障害のある方などが広く関わることで、経営理念でもある「だれもが共に働き、共に歩み、共に暮らせる地域づくり」の実現を目指す。 ・第12期にあたる今年度の業績予測では、古紙の収集・運搬事業が3,300万円の売上となっており、売上全体の52.4%を占めている。 ・従業員数は 20名。うち 7割が母子家庭のお母さんである。最高齢で 79歳の女性がいる。

思い 強み

・自分が母子家庭になり、就職や労働の面で働く母親の大変さを知ったこと、社団法人勤務時代に障害者が置かれた賃金や労働環境の実態を知り、社会的弱者が自立するには行政支援だけではなく民間の力も必要だと考えたことから、創業へ向かうこととなった。

需要 ・道具も経営資源も何もない中でのスタートであったが、自分達が今持っているモノの中で何とかしていくにはまず規模の拡大が必要だと考えた。 ・積極的に事業をPRしていけば周囲の理解も進み、不要になったリサイクル品を積極的に持参してもらえると考えた。その考えは福祉事業とも結びつくものである。どうせ捨てるものであれば、福祉に貢献したいと考える人は多いだろうとの見込みもあった。

女性視点 ・女性は話し上手でコミュニケーション力が強く、アピールする力が強い。女性に対して上手くアピールできると、女性から女性へと仲間内で口コミで伝わり、売上に繋げやすい。

資金調達 ・公的機関の助成金や融資は色々と探したが、利用できるものを上手く見つけられなかった。逆にそのことによってコンサルティング力が磨かれ、様々な人からの協力も得ることができ、現在につながる礎が築かれたと考えている。

支援者、家族

・創業時には、福祉事業を民間の発想で進める会社ということで、当時働いていた社団法人からのバックアップを受けることができた。また、そこのスタッフとの話し合いの中でアイデアが生まれ、人の紹介を受けることもができた。その他にも、過去に知り合った人達から情報を得たり、相談に乗ってもらったりした。 ・創業時の会社の管理面では、税理士の世話になった。また、車での営業でドライバーを雇うため、事故などのトラブルに備えて社労士にもアドバイスをもらった。 ・身近なカフェの店主なども経営者という意味では同じ立場であり、話を聞くだけでも参考になることは多かった。積極的にコミュニケーションを取ることで、有益な情報を吸収してきた。

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●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○ ○ ●那須社長の成長ストーリー

◆社団法人時代の同僚3名と共に創業。資金集めに苦労したが、資本金1円から創業できる「最低資本金規制特例制度」の存在を知り、平成15年5月、当時29歳で資本金100万円で農環を設立。(同制度の利用は、滋賀県の女性では那須氏が最初)

◆当初は回収車で各地を飛び回り、飛び込みでの地道な活動となった。チラシなどの営業ツールは持たず、訪問で営業していた。

メッセージ: やるからには一生の覚悟で。ライフワークでやっていけることを考え、未来に対する夢と希望を持つことが大切。

創業前

創業時

転換期

◆経営方針、事業方針を具体化するため、NPO法人就労ネットワークと協力し、理念の実現にふさわしい事業の在り方を追求し、新法人の設立、事業の再編を進めていく。

◆古紙の収集・運搬事業では、市況の変動に柔軟に対応できるよう、コストパフォーマンスの更なる向上を図っていく。また、洋服のリフォーム・修繕事業では、本社店舗を含む3店舗の営業と従業員の配置の見直しを進めると同時に、新規営業拠点も開設していく。

成長期に 向けて

◆業績は順調に伸びたが、1年半ほど経った頃に頭打ちに。子育ても大変な時期だったため投げ出したくなることもあったが、従業員から「那須さんだから付いてきた」と言われ、自分の立場を再認識。背水の陣で仕事に取り組み、業績も再び拡大に向かうこととなった。

◆創業手続きを手探りのまま急いで行ったため、会社全体の意識の統一や進むべき方向性もきちんと定まっていなかった。そこで経営理念、事業方針の策定を行った。それによって会社全体の方向性が定まり、業績も好転することとなった。

◆古紙の収集・運搬事業では、利益率の向上を図り、対象エリアを限定することにした。 その結果、自動車の走行距離の短縮、燃料費の削減が実現し、利益率が上昇した。

経営理念の策定で事業が好転

◆高校卒業後、ハウスメーカーに就職。結婚を機に退社するも、その4か月後、事故で夫を亡くす。その後身ごもっていた息子を出産し、母子家庭となった。しばらくは悲しみが続いたが、「息子には自分しかいない」と思い直し、懸命に働くことを決意。

◆働くのであれば、自分のためだけではなく他人のためになるような仕事をしたいと考え、障害福祉関連の社団法人に就職。障害者の就労支援等の業務に携わった。

◆そこで働く中、障害を持つ人たちの月当たりの平均賃金が 1 万 5 千円程度しかないことに疑問を抱くようになる。障害者の自立を促すような社会の風潮があるにも関わらず、その給料では自立は無理だと感じたことと、職場環境自体も決して良いものではないことに問題意識を持ち、それらの問題を解消したいという想いが膨らんでいった。また、自分と同じ境遇にある母子家庭の母親たちも含め、社会的に弱い立場にある人達が働くことを通して生き甲斐を感じられる社会を作りたいと考えるようになった。

社会的弱者に 生き甲斐を

●那須社長 ●新店舗:服のリフォーム&リメイク専門店 BoBin(ボビン)イオンタウン湖南店

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女性起業家事例3 Cerca Travel株式会社(チェルカトラベル株式会社) ●企業名称: Cerca Travel株式会社(チェルカトラベル株式会社) ●代表者名: 井上 ゆき子氏 ●創 業: 平成18年 ●業 種: 旅行業務、旅行用品販売、旅相談 ●経 緯: 旅行会社での勤務を経て、「女性がキレイになる旅」をテーマに創業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 Cerca Travel株式会社(チェルカトラベル株式会社) 規模 従業員5名(そのうち2名はパート勤務) 所在地 京都市中京区壬生賀陽御所町8番地2 拠点等 京都市内にオフィスを構える 事業領域 ・「女性がキレイになる旅」をテーマに、女性の旅をバックアップ。女性顧客に対するオーダーメイ

ド型旅行手配を行うほか、女性に特化した旅行パッケージ商品の企画販売も行う。話題の商品として「失恋タクシー」「ソロウエディング」がある。

思い 強み

・当初、起業をしようという選択肢はなかった。旅行業界で経験を積み、勤務時間の長さと満足感のバランスが取れていないと思う中、将来について先輩の男性経営者に相談したところ、起業も一つの選択肢と勧められ、初めて起業に思いがいたった。旅行業界は、女性経営者はほとんどいないため、最初は思いもよらず、そこで「起業」という新しい扉が開いた感じがした。 ・自分が旅行業界で何を得意分野として提供できるか?と考えた場合、女性の旅を安全にサポートしたい、そして遠慮せずに楽しんでもらいたいと考えるようになった。特に旅行に慣れていないと、憧れの高級ホテル等に「泊まっていいのかしら?」と思ってしまう女性も少なくないが、そんな躊躇も無くして欲しい。また、女性の場合、友達と一緒に旅行する人も多いが、1人旅には自分の好きな旅を遠慮なく、思い切り楽しめるという素晴らしさもある。そんなことから、もっと女性の1人旅を安全に楽しんでもらいたいという思いがあった。

需要 ・「失恋タクシー」は、京都という土地柄を活かし、女性の一人旅を支えるツアー商品で、他にはない得意分野を持とうと考えて、提案してみたところ話題になった。 ・現在、当社のツアー商品として話題になっている「ソロウエディング」は、社員の何気ない一言から出てきたもの。結婚願望のない人だが、「ウエディングドレスは着たいんですよね」とある時、ぽつっと言ったのがきっかけになった。商品を出してみると、当初のターゲットとなっていた 30 代後半~40 代の女性層とは別に、若い女性から「若くて綺麗な時にウエディングドレス姿の写真を残しておきたい」というニーズも出てきた。 ・自分達の思いからアイディアを出し、「こういう人が他にもいるはず」として商品を出すと話題になり、ブレイクするというのが今までの当社のスタイル。ニーズを確信してというより、提案型だと思う。ネーミングのインパクトもある。ネーミングは相当練っている。 ・話題になる商品ができると、それで検索してくれた人がHP全体をみてくれ、他商品にも興味を持ってくれる。キラーコンテンツは、当社の他の商品への販売促進にも有効となりうる。

女性視点 ・女性だからというのは、会社員時代からあまり意識したことがない。お客様へのおもてなしとして必要なことは男女で違うとは思えないが、その表現方法は違っている方が有効だと思う。

資金調達 ・資金調達は公的金融機関を利用している。事業計画や申請書類をつくるのは比較的得意な方で、ビジネスプランを理解されやすいという点は強みかもしれない。

支援者、家族

・家族だけでなく、誰も周りの人から起業に反対されることがなかった。起業する人とみられていたかもしれない。子どもが「あんなに楽しそうに仕事をしているお母さんをみていると、こちらも楽しくなる」と言っていたことを人づてで聞いた時は、とても嬉しかった。

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◆自分自身の成長に関心がある。自分が社長として成長すれば、利益率が向上する。その追求という意味での成長志向は持っている。

◆自分とアルバイトの人1人の2人で、平成 18年に創業。失恋タクシーで話題になってブレイクした。当初は女性起業家での取材が多かったが、今は事業面での取材の方が多い。

◆創業当初からメディアに取り上げてもらえた。「京おんな塾」での人のつながりから、修了生の中で起業した実例として、メディアに紹介してもらったこともあった。

◆もとから起業志望だったわけではない。旅行業界で経験を積み、将来のポジションも見え、深夜まで働いていたが、本当に定年までしたい仕事か?と考えると違うと思った。仕事の大変さと満足度が比例していなかった。

◆先に独立していた旅行業界の男性経営者に、将来について相談すると、何気なく「独立も考えてみたらどうか」とアドバイスされ、初めて起業に思いが至った。旅行業界は、女性経営者はほとんどいないため、最初は思いもよらず、「起業」という新しい扉が開いた感じがした。

◆アドバイスを受けてすぐに検索し、ASTEMの「京おんな塾」があることを知り、すぐに申し込み、勤務しながら夜間・土曜日に受講した。

◆「京おんな塾」ではコーディネータの先生に厳しく指導されたが、連続講座で学ぶ中で、講師との人間関係ができ、アドバイスを外からの目で見られたことが良かった。自分 一人でぼんやりとした夢を持っているだけでなく、他者の目で評価してもらえた点 は大きかった。いつも怒られている講師から、その中で「案がおもしろい」と言っても らえたのは大きな自信となった。

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○

●井上社長の成長ストーリー

●井上社長 ●失恋タクシー ●京町家オフィスの様子

メッセージ: 流されるより、流れよう ―人の流れに流されるのでなく自分で流れをつくる

創業時

転換期

京おんな塾でビジネスプランをブラッシュアップ

創業前

◆創業当初は妙な自信があったが、旅行業は5年毎に資格更新があり、決算内容も問われる。このため、2年目くらいからこのままではいけないと自覚を持ち、オリジナリティを持つための改革が必要と思い、独自の商品を提案しようという気持ちが強まっていった。

◆話題になる商品ができると、それで検索してくれた人が、HPをみて他商品も見てくれる。「失恋タクシー」はきっかけになる商品であり、そこから他の商品へと広がっている。

◆利用者が口コミで増えて、一人旅をセッティングした人が結婚すればハネムーンの 手配になり家族旅行になりと、オーダーメイド型の旅行手配の固定客が増えていった。

キラーコンテンツから多面的に展開

成長期に 向けて

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女性起業家事例4 株式会社タケックス・ラボ ●企業名称: 株式会社タケックス・ラボ ●代表者名: 代表取締役社長 岡田 久幸(くみ) 氏 ●創 業: 2002年 ●業 種: 竹を原料とした抗菌剤・食品添加物・医薬品等の研究開発および製造販売 ●経 緯: 竹に囲まれた生活の中で竹の持つ効能に気付き、研究開発を立ち上げ、会社設立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 株式会社タケックス・ラボ 規模 従業員20名 所在地 大阪府吹田市江坂町1-13-48インタープラネット江坂ビル3F 拠点等 本社の他に、京都に研究開発拠点 「タケックスR&Dセンター」 (京都府宮津市) 事業領域 ・ライフサイエンス事業(竹を原料とした抗菌剤・食品添加物等の研究開発、製造販売)

・マテリアル事業(竹を原料とした建築資材・機能性素材等の研究開発、製造販売) ・コンサルティング事業(竹資源の有効利活用のためのコンサルティング、技術供与)

思い 強み

・高校時代に自身の病気により、長い入院生活を経験した。自分自身も病気に苦しんだが、入院していた子ども達やその親の苦しみを見る中で、食の安全性の大切さに気付いた。 ・家業が竹を使った建材の会社だったため、竹に囲まれて育った。竹は皮を剥すとすぐにカビが生える、いつも竹を足で扱う竹職人は水虫ができないと言われており、竹の皮が持つ抗菌等の効能に興味が高まっていった。 ・家業の一事業部門として立ち上げ、自身が担当者として、竹原料の製品の研究開発、製造販売を進めるべく、大学の研究室を訪ね歩き、徐々にデータを積み上げていった。 ・創業後は事業規模拡大のため様々な企業へ出向き、事業構想を語りつつ出資依頼を持ちかける。「自分は何も持っていない。」ことを強みに変え、大胆な攻めの姿勢を貫いてきた。

需要 【抗菌効果の高さ、持続性で類似製品と差別化、一般消費者や海外市場への展開も】 ・除菌効果のある一般的なアルコール製品とは異なり、竹原料のものは効果に持続力があり、水滴が手についていても使用可能。当社製品はアルコール製品に比べて単価が高くなるが、食中毒や感染に敏感な企業・業界、除菌に気を遣う業界で購入されている。 ・BtoCに関してはOEM供給がメインではあるが、口コミで評判が広まりニーズも出てきたため、ECサイトでの販売も開始。 ・「食の安全」は世界の共通課題で、すでに香港・台湾で事業展開しているが、今後は東南アジアへの進出も検討している。

女性視点 【母親としての「食の安全」への目線】 ・高校時代の入院生活の中で、子供を亡くし悲しむ親の姿を何度も見てきた。自身も母親となり、事業を通した「食の安全」に貢献したいとの意識が、より強まった。 ・女性起業家は個性と運が備わっていれば、ある程度の成功は可能だと思う。自身は積極的なキャラクターを前面に出しつつ、多方面へ研究や出資の協力依頼をして回った。それによって運を引き込むことができたと感じている。

資金調達 ・中堅の製薬メーカーや著名な経営者等に直談判し、出資してもらうことに成功。中小企業基盤整備機構の「新連携支援」事業やベンチャーキャピタルも活用。

支援者、家族

・入院先の主治医、大学の研究者、父が経営していた会社の支援者、学会で知り合った社長、銀行系ファンドの出身で再婚相手の夫と、自分の夢や事業計画を大胆に語り積極的に働きかけることで、様々な協力を得ることができた。

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◆高校時代は病気を患い入院し、病院で主治医と管理栄養士さんと話をするのを楽しみにするような生活を送っていた。食の安全について様々な話を聞き、また病気の子供やその親の苦しみを身近に感じる環境に身を置く中で、「食の安全」をライフワークとすることを決意。

◆父が竹を使った建材の会社を経営していたため、竹は常に身近な存在で、 竹の持つ抗菌作用に興味を持ち、竹の研究に乗り出す。主治医から紹介 された大学の医学部で研究。その後、地元高知で父の会社の一事業部 として、事業化を任されるようになる。

◆しかし、父の会社が立ち行かなくなり、負債を引き継ぐ形で大阪にて独立、創業。創業前に証券会社で勤務していたため、IPOの流れや経営者との折衝方法を学ぶことができた。

◆学会で知り合った製薬会社の社長や、知人の紹介を受けた著名な経営者に出資や受託生産について直接、申し込みを行った。今から思えば、相当大胆な行動だが、自分なりのビジョンと信念があったおかげで、応じてもらえたのではないかと思う。

◆これで、資本を増やし量産体制面の問題も解決した。「あの人が出資し た企業」というような話題性も高まった。この結果、銀行からの融資が 順調になるという好循環が起こり、業界内でのポジションも飛躍した。

◆また、「新連携」の申請では中小機構の担当者2名から、厳しい指導と 励ましを受け、事業計画を見直すことができた。自社の事業計画を外部から客観的に評価してもらうことは非常に重要。

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○

●岡田社長の成長ストーリー

●岡田社長 ●本社に陳列された製品

創業前

メッセージ: なりたい自分の将来像をしっかりとイメージし、それに向けて今何ができるかを考える。

創業時

転換期

◆事業は順調に拡大していったものの、当初の想定程には伸びなかった。そこで、取引先に出向き、直接、ユーザーから自社製品の課題について意見をもらった。その結果、小規模企業としての信用力の欠如、高価格、量産体制の未整備が取引の阻害要因と判明。

◆創業後、ノロウイルスの流行で自社製品の需要が拡大する一方で競合も増えているが、様々な局面を乗り越えて事業は成長中。国内での事業を確立させつつ、今後は東南アジア等の海外市場への進出も視野に入れている。

◆将来的にはIPOを実現したい。自分の力で会社を立ち上げ大きくすることはできたが、安定的に経営していくことを考えると違う力が必要。理念は継承しつつ、会社の発展段階ごとに必要な人材が経営にあたるような体制を取るべきと考えている。

成長期に 向けて

必要な支援を外部から受け、事業計画を客観的に見直す。

病気の経験と家業から竹に着目。

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女性起業家事例5 株式会社エストロラボ ●企業名称: 株式会社エストロラボ ●代表者名: 代表取締役 東山 香子 氏 ●創 業: 2006年3月 ●業 種: 細穴放電加工 ●経 緯: 海外協力活動を志向していたが、声をかけられた前職社長の勧めを受け、ものづくりでの起業

も社会貢献と考え創業。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 株式会社エストロラボ (屋号:細穴屋) 規模 従業員5名(社長含む) 所在地 東大阪市荒本西4-2-25 拠点等 事務所を併設した東大阪の工場を拠点としている 事業領域 ・細穴放電加工を主事業としている。金属に穴を開ける際、通常のドリルとは違い電気を使っ

た放電加工機を使用する。自社製品をつくるのではなく、加工請負型の製造業。 思い 強み

・社会貢献活動への関心が強く、もともとは会社経営よりも海外青年協力隊での活動に興味があったが、事情があり断念。前職の社長から起業を勧められ、起業も社会貢献の一環との思いで経営者となる。当初は自身含め、仲間3名での創業であった。 ・非常にニッチな分野であり、数年に1回しか発注がない顧客も多い技術分野である。男性が主のものづくり分野で、事業後継者がなく廃業する企業が多い中、女性の創業は異色の存在であり、メディア等で広く取り上げられたこともあって、事業を拡大。女性の雇用を増やし、女性の社会進出にも貢献していきたいという思いもある。

需要 【技術力、メディアでの発信、口コミで拡大】 ・前職(放電加工機メーカー)で、放電加工の仕事は全国から発注があることを見てきたため、本気で取り組めば何とかなるという気持ちで事業開始。 ・ニッチ分野で技術力を磨きあげ、大手メーカーからの受注が決まったことを契機に事業は急拡大。リーマンショックを境に低迷期に入るも、女性だけの町工場という珍しさもあり、新聞やテレビなど多くのメディアで取り上げられたことで知名度が上昇、業績も回復。最初は物珍しさから声を掛けてきた顧客も多かったが、継続的な取引になっている。 ・当初は製造業の工場が多い地域でチラシを一軒一軒配付するところから営業をスタートしたが、現在は特別な営業活動は行わず、主に口コミや問合せから全国的な取引がある。

女性視点 【女性ならではの真面目さへの信頼、男社会の業界での女性の創業への注目】 ・女性は納期を厳守するなど、生真面目さが特徴。中小の加工工場は納期等が緩くなりがちのようで、真面目な顧客対応で信用を得て、他社との差別化に繋がっている。 ・男社会の業界であるため、女性というだけで覚えてもらいやすい。新聞で見たというところから問合せがあり、信頼関係を築いて、安定的な取引となるケースも多い。 ・後継者不足の業界であり、新規参入自体が歓迎され、年配の社長に可愛がってもらい、技術を教えてもらった。女性という条件や女性の視点は事業を行う上でプラスに働いている。

資金調達 ・中小企業向けの支援制度を活用してきた。もっと活用したいところだが、中小企業の規模の定義が大きすぎる気がしている。小規模事業者に対しては、事業税率を更に下げるなど、起業直後の税負担を抑えられるようにすれば、創業直後の企業の成長は速まると考えている。

支援者、家族

・公的機関の創業支援コーナーで、事業計画書の書き方など多大な支援を得られた。 ・父が鉄工所を経営していたため、相談に乗ってもらうことができた。また、力仕事が不可欠な世界のため、現在は兄に入社してもらい、従業員中、唯一の男性として頼るところもある。

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◆社会貢献への意識が強く、当初は海外青年協力隊での勤務に興味を持っていた。20 代後半で協力隊に合格したが、訓練中の検査で病気が発覚したため断念。

◆病気が治ったため、海外貢献への再挑戦を考えていたところ、当時の勤務先の社長から「細穴放電加工は女性向きの仕事。女性だけでやれば目立つし、儲かる。」と勧められ、また知人から「起業こそ社会貢献」と助言を受けたことがきっかけとなり、仲 間とともに起業。女性を雇用することによる女性の社会進出促進という 形で、社会貢献できると方向転換。

◆アルバイト時代の人脈を頼って、銀行の融資を受け、創業から3年目に大手家電メーカーからの受注が決まって、ようやく事業の目処が立った。ニッチ分野での技術が 評価され、HPを見て、一度来てほしいと連絡が入ったのがきっかけ。

◆その頃、新聞で取り上げられ、記事が出た後に全国紙やテレビで取り上げ られる回数が増え、問合せが増えて事業が拡大。

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○

●東山社長の成長ストーリー

●東山社長 ●会社入口と屋号「細穴屋」

◆しかし、2008年に起こったリーマンショックの影響で、大手企業からの発注が完全に止まった。その他取引先からの発注も減少し、苦境に陥った。

◆その中で、全国紙に掲載されたことがきっかけとなり、再び受注が増え始める。また、その記事を見て元SEの女性が入社し、彼女が作ったソフトにより顧客管理負担が激減するという効果もあった。そのソフトは今では社外販売も行っている。

創業前

メッセージ: 起業希望者は全力で応援する。やりたいなら起業すべき、起業にはそれだけの価値がある。

創業時

転換期1

◆自身と前職の同僚、同級生の3名で事業を開始。公的支援機関の「創業塾」で学びつつ、経営手法を身に付ける。図面の読み方や加工方法等のスキルは、周囲の男性の先輩達の親身なアドバイスもあり改善していった。ただ、工場へのチラシ配付などの地道な営業もしてみたが、思うような発展は見られず、特に資金面では苦労が続いた。

起業は社会貢献につながるとの意識

◆女性の働き方は一定ではない。子育てや介護などのサイクルがある。その上で自社事業を展開していくには、一定の適正規模があると考えている。細穴加工の他に、ソフト開発等の他事業展開も見越しつつ、将来的には女性を活用して、30 人規模まで拡大していきたい。在宅勤務等も取り入れていきたい。

成長期に 向けて

転換期2

新聞記事が発 端となり、注目 が集まり営業 開拓

Page 11: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

女性起業家事例6 株式会社プロアシスト ●企業名称: 株式会社プロアシスト ●代表者名: 代表取締役 生駒 京子 氏 ●創 業: 1994年 ●業 種: IT ●経 緯: 会社勤務、専業主婦の経験を経て創業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 株式会社プロアシスト 規模 従業員 150名 所在地 大阪市中央区高麗橋2-3-9 星和高麗橋ビル1階 拠点等 大阪本社、東京事務所、名古屋事務所、けいはんなラボ 事業領域 ・組込みシステム開発、ソフトウェア開発、ハードウェア開発、自社ソフトやシステムの販売 思い 強み

・1994年の設立以来、主に大手メーカーの R&D分野のアウトソーシングを手掛け、多くの企業から高い評価を得てきた。大手メーカーが研究を加速できるようにしよう、大手メーカーを支援し、世界一の会社になってもらいたい、といった思いで開始した事業である。 ・インターネットがまだ一般に普及していなかった 20 年前からインターネット事業にも着手するなど、創業当初からグローバルな視野を持って成長してきた。2011年には中国・蘇州に現地法人を設立し、現地進出企業のR&Dのサポートと中国市場の販路拡大を進めている。2008年にはインドの著名IT企業グループと技術提携し、2009 年 4 月から共同開発に着手するなど、常に世界を意識した経営を実践してきた。

需要 【口コミでR&Dのアウトソーシング事業を拡大、自社製品開発へ】 ・創業当初は大手メーカーのR&D分野のアウトソーシングのみを行っていた。大手メーカーを中心に口コミで案件が持ち込まれることが多い。 ・10期目にあたる 2004年からは社員の声に応えて、メーカーとして独自製品の開発も始めることとした。現在では組込みシステムの開発やソフトウェア・ハードウェア開発、アプリケーションシステムの開発など幅広く手掛けている。また、15期にあたる2009年からは、製品販売面にも注力し、「位置計測システム」などの開発や、B to C事業を手がけている。薬剤師向け等の e ラーニングのシステム開発や、コンテンツも含めたシステムの企画運営を展開。 ・新規事業は、常に自社のコア技術を活かせるか否か、自分が経営者として判断できるか否かで進出を決めてきた。コアと離れすぎている事業には手を出していない。

女性視点 【自身の経験から社員を大切にする会社に】 ・創業に至るまでに、自身が専業主婦の経験を経ている。その経験から、女性には出産や育児などターニングポイントが多いが、その時々のバランスを取ることができれば、仕事を続けていけると考えている。 ・このため、育児休暇制度の充実など、女性社員に対しては万全の支援を行っている。「社員は家族」との思いをもとに、全社体制での事業拡大を図っている。

資金調達 ・創業 10年目に中小機構のプロジェクトに採択され、3年間で 3億円の補助金を活用したことで研究開発が促されることになった。それまで下請けメーカーとして歩んできた 10 年から、ものづくりメーカーとなる次の 10年への一歩を踏み出す上での基礎を形成できた。

支援者、家族

・大手企業に勤務していた頃、大手IT企業に出向していた時期があり、その上司と一緒に仕事をする中で営業やマネジメントを学んだ。クライアントに対して製品の優位性を背景にプロフェッショナルとして自信を持って、提案するスタイルは、お願い的な営業とは一線を画しており、学ぶところが大きかった。

Page 12: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

◆大学卒業後、エンジニア職として大手企業に勤務。大手IT企業や家電メーカーへの出向を経験、マネジメントを学ぶ。結婚を機に退職し、専業主婦に。その後、30 代半ばで創業。最初は自宅アパートを事務所として使用。

◆当初の会社の形態は有限会社で、当時から組織図を書き、「世界一の 有限会社」を目指し事業を開始。8期目に入ったとき、従業員に結婚の お祝いを尋ねたところ、株式会社にしてほしいと申し出があり、それに応え る形で株式会社にした。

◆10 期目の 2004 年に、それまでR&Dのアウトソーシング中心できたが、ものづくりメーカーとして製品開発事業を始めることとなった。アシストだけの仕事から一歩外へ踏み出し、自社の技術力を試したいとする社員の声に応えたものである。

◆2008年には、インドの著名IT企業グループと技術提携し、2009年 4月には共同開発に着手した。自社の事業は大手メーカーのR&Dをサポートするものであり、仕事を外部に発注するオフショア開発は必要なかったため、当初は申し出を断っていた。しかし、担当が何度も訪れるなか、自社の事業モデルを詳細に説明すると、パートナーとして組みたいと技術提供の申し出を受けこととなったため、インド本社を訪れ、正式な契約に至った。

◆技術系の企業では、自社製品を「あったらいいな」の思いだけをベースに開発し、失敗していることが多い。当社では、これまで蓄積してきたコア技術と新規事業分野の距離感がどの程度かで判断(距離感が遠すぎると進出しない)してきた。コア技術の範囲内で新規開発へ乗り出すことで、イノベーションを生み出しつつ成長を続けることに成功している。

◆2020年の東京五輪へ向けて、ビジネスを加速させたい。今後は訪日客 が増え、日本への注目も高まり、グローバルビジネスへ向けてチャンスが拡大 すると期待している。

◆中小企業は大企業よりも圧倒的に数が多い。規模は小さくても、1社 1社 が成長すると日本全体へ与えるインパクトは巨大。自社が中小企業のリーディングカンパニーとなれるよう前進していきたい。

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○ ○

●生駒社長の成長ストーリー

●生駒社長 ●本社ビル外観

創業前

メッセージ: 共に世界へ出ましょう。

創業時

転換期

成長期に 向けて

会社員時代の 知識と経験を活かし、専業主婦から起業

東京五輪を機にグローバル展開で成長を加速

Page 13: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

女性起業家事例7 CIELO ●企業名称: 手染めの店 CIELO ●代表者名: 代表 黒坂 由美子 氏 ●創 業: ネットショップの開設は 2003年、実店舗のオープンは 2010年から ●業 種: 雑貨(手染め糸、手染め糸を使ったアクセサリー)の企画デザイン、販売、講座開催 ●経 緯: 副業からネットショップ展開、派遣職の派遣終了を契機に独立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 手染めの店 CIELO 規模 従業員2名(子育て中で 9時~15時勤務の女性も在籍) 所在地 大阪府吹田市千里山西1-40-7 大黒堂ビル3F-A 拠点等 独立前から個人でネットショップを運営し、実店舗をオープンしたことで独立。

Ciero http://www.zakkaya-cielo.com/(手染め糸の販売) Katarina http://www.katarina.jp/(手染め糸を使ったストラップ等の販売)

事業領域 ・手染め糸の染色、販売(実店舗、ネットショップ) ・手染め糸を使った手づくりのための手芸講座の開催 等

思い 強み

・手染め糸を企画・デザインし、糸そのものにも特徴のあるものを生産委託、出来上がってきたオリジナルの糸を自身が染色し、ユニークな名称を糸につけた上で全国のユーザーに販売。 ・素材の使い方を提案し、顧客と共有したいので、全国各地でWSを実施している。 ・「他で見たことがないような糸」という高い評価をユーザーや百貨店のバイヤーから受けている。百貨店のバイヤーから、ATCで毎年開催されている「OSAKA アート&てづくりバザール」に大きめのブースを借りて出展した際にブースに注目され、期間限定で百貨店に出店。

需要 【ネットショップでの手染め糸の購入者からの問い合わせで、需要を確認、口コミで拡大】 ・派遣職で経理としてメーカーで勤務していた時期に、個人の副業として、台所で自分で染めた糸を使って副業でミサンガを製作し、個人のネットショップで販売していた。 ・購入者から、ミサンガそのもの以外に、「他では見たことのない糸なので、入手先を教えてほしい」との問い合わせが多くあり、糸を分けてほしいという依頼が多くなっていった。 ・そこで、自分の糸が他にないものだと自信になり、前職を退職後(リーマンショック後のリストラ)、アルバイトをしながら販売を続けていたが、販売実績が増えるにつれ、実店舗についての問い合わせも増えたため、4年前に実店舗をオープン。

女性視点 【女性の感性を活かす、女性のニーズに応える】 ・計画や理論でなく、こういうものを作りたいという想いや、感性を大事に展開してきた。たとえば、糸に全てユニークな名前をつけ販売している点(品番でなく)も、女性には受ける。(最近の新商品例では「一番星と丘の家」、「いにしえからの便り」等) ・女性は集まって手作りをするのも好きなため、全国各地のギャラリーや教室でWSを開催し、自社の糸を使ってもらえるよう開拓もしている。

資金調達 ・これまでは自己資金で全部やってきた。今後、店舗の改装をしたい、ギフトショーにも出てみたいと希望はある。投資が必要で、助成や融資に関心はあるが、どのような制度があるのか、情報はわかっていない。有利な助成や賞金があるようなコンテストがあるなら、知りたい。

支援者、家族

・最大の支援を受けたのは、百貨店のバイヤー。展示会で興味を持って、百貨店への出店を勧めてくれ、値札のつけ方一つから、細かく教えてくれた。チャンスを拡大してくれた相手。

・シングルマザーで息子を育てるために仕事をしてきた。ネットショップは子供からのアドバイスや支援があり、成人しクリエイティブな仕事をしている子どもとの会話の中で、ヒントを得ることもある。

Page 14: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○ ○

●黒坂代表の成長ストーリー

●黒坂代表 ●実店舗 Cielo の看板 ●Cielo店内

◆銀行員として勤務後、派遣職で経理としてメーカーで勤務。 個人の副業として、自分で染めた糸を使って当時流行していたミサンガを手作りし、個人のネットショップで販売。もともと手づくりで何かつくるのは好きだった。

◆リーマンショック時に、派遣先の事情でリストラがあり、自身も職を失ったが、シングルマザーであったので、偶然見つけたアルバイトをしながら、副業のネットショップを継続。

◆このため、実店舗の開設前に、ネットショップを息子の助言を受けつつ、独学で立ち上げ、既に7年間運営していたという時期があった。

創業前

メッセージ: 女性の力は口コミ、ネットワーク力、底力と実は大きい。私もできる!と気づいてほしい。

創業時

転換期

◆ネットショップで販売していたミサンガの糸について問い合わせが増え、糸を販売するようになり、実店舗がどこにあるかの問い合わせが増え、4年前に実店舗をオープン。

◆最初は心斎橋の貸しスペースに出店し、手ごたえを感じた。都心は保証金も高いため、自宅にも近い住宅街の現在地で開設した。

◆ネットショップが窓口となり、全国に手染めの糸に共感するファンがいる。売上はネットショップが 7割、実店舗が3割。予想以上に実店舗まで来てWSに参加したり、 買い物に来てくれる顧客が多い。(売上はネットショップが7割)

創 業 前 に実績あり

◆3年前にATCで開催されている「OSAKA アート&てづくりバザール」 に出展。それまでにも小さなブースで出展していたが、思い切って大きめ のブースを2ブース借りて出展(6万円)したところ、反響が大きくなり驚いた。

◆大勢の人がブースに来てくれたが、その中に百貨店の女性のマーケティング部長がおられ、百貨店に期間限定で出店することになった。百貨店に評価されたことで、自分のやってきたことを認めてもらった気がして、とても嬉しかった。

◆また、これまでとは違うたまたま目にして足を止めてくれたお客さんがどういう商品に手を伸ばすかを、ネット経由でなく、リアルな場で学ぶことができた。

◆これまでずっと独学で自分の感性で事業を進めてきたが、憧れの女性経営者もいるので、経営について学びたいと思い、商工会議所のセミナーに参加するようになってきた。今後、交流の場に参加して、他の女性起業家がどのようにされてきたのかを学びたい。

ネットショップ→店舗→展示会→百貨店出店とステップアップ

成長期に 向けて

Page 15: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

女性起業家事例8 有限会社 re・make ●企業名称: 有限会社 re・make ●代表者名: 代表取締役 岡山 栄子 氏 ●創 業: 2003年3月 ●業 種: 療術業、エクササイズスタジオの運営、健康食品・アロマ・ハーブ関連商品販売 ●経 緯: 手に職をつけようと、リフレクソロジーの資格を取得後に創業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 有限会社 re・make 規模 従業員数6名 所在地 大阪府箕面市牧落 1-19-19 拠点等 大阪(箕面、豊中、北堀江、堺)、兵庫(宝塚)でサロン、ショップを展開。 事業領域 ・「自然療法サロンの運営」、「天然ゆずのケア商品の販売」、「自然療法教育」が事業の3本

柱。天然ゆずは、箕面産の実生ゆず(接木せず種から育てたゆず)を利用したもの。 思い 強み

・離婚し、子供を育てるために手に職をつけようと考えた。学校に通いリフレクソロジーの資格を取り、マンションの一室を借りて事業開始。 ・サロンの社会的地位を向上させたい、エステサロン等による高額なイメージや警戒感をなくしたい、サロンを女性に限らず男性でも誰でも気軽に訪れることができるような存在にしたいという思いのもと、事業を推進してきた。 ・結婚前に8年間ほど会計事務所に勤務していたが、そこでの勤務を通して、事業計画など創業するにあたって大切な点について認識できていたことは大きな強みとなった。

需要 【雑誌掲載で大反響、女性の体質改善ニーズを確信する】 ・創業間もない時期に、女性誌「SAVVY」の北摂版創刊号が癒しをテーマに特集を組んだ。そこで自社のことが一番大きく掲載され、またその反響も大きく、記事を見たと言って来店する人が2年以上も継続することとなった。 ・そうした中、働く女性には単なる癒しだけでなく、病気にならない、疲れにくくなるような体質改善へのニーズが大きいことを実感。仕事に邁進する女性が増えていくなか、自分の体調を管理することへの意識もますます高まるはずであり、ニーズは今後も拡大するものと確信できた。

女性視点 【「yuragist」の育成を通した女性支援】 ・自然療法教育(「yuragist」の育成)に取り組んでいるが、背景には資格ビジネスに振り回されている女性を救いたいという想いがある。アロマ、サロンの分野は女性の創業が多いが、ほとんどが1年以内に廃業している。そして別の資格を取得して創業、また失敗、そしてまた別の資格を取り別の分野で創業、の繰り返しとなってしまっている事例が目立つ。資格は取得後の支援はない。知識の習得だけでなく、しっかりとした実践経験を積ませたい。

資金調達 ・クラウドファンディングに応募し、大阪の第一号として採択された。地域資源と女性創業者の組み合わせという点が評価されたようである。 ・会社設立時に国金の融資を活用。一般的に女性創業者は融資を受けることに抵抗があるものだが、特に抵抗なく活用することができた。会計事務所時代に、そういう世界に触れて慣れていたためだと思われる。

支援者、家族

・中小企業診断士からは、多方面で支援を受けることができた。大阪府下で女性として初めて経営革新計画の認定を受けることができたことや、ゆずのアロマオイルの研究を始め「おおさか地域創造ファンド」に採択されたのも、診断士の助言がきっかけである。

Page 16: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

◆当初は個人サロンとして創業したが、平成17年3月に法人化。これも会計事務所の所長が中小企業を指導する際に、「事業は社長と切り離し、法人としての人格を持たせなければ成長しない」と言うことをよく聞いていて、その教えに従ったためである。また、創業時には、客として来店していた会計事務所の女性所員のサポートも受けることができた。

◆平成25年12月に「一般社団法人 yuragist協会」を設立。実生ゆずを使った癒しのセルフケアのサポートを行う人材(yuragist)の本格的な育成に乗り出している。

◆ブランド力の更なる向上、販路の一層の拡大を目指す。

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○ ○

●岡山社長の成長ストーリー

●岡山社長 ●ゆらぎスタイル ●製品には箕面産の実生ゆずを使用

◆結婚前に8年間ほど会計事務所で勤務していた。所長が経営指導もできるレベルの会計士であり、企業訪問に同行し話を聞いている中で、創業にあたって必要な条件を知らず知らずのうちに認識できるようになっていった。

◆その後、離婚して子ども育てるために手に職をつけようと思い、学校に通いリフレクソロジーの資格を取り、マンションの一室を借りて事業を開始。チラシを撒くなどして営業活動も進める。なお、公的機関などに相談することはなかった。

創業前

メッセージ: 事業が形になった後までのビジョンを見定めることが重要。そこから逆算して実行すれば、事業はぶれない。

創業時

転換期

会計事務所での経験が活きた

◆法人化の4年後、豊中商工会議所の中小企業診断士から、自社サービスの更なる拡大にあたっては事業の見直しの意味も含めて経営革新に挑戦すべきとのアドバイスを受けた。そこで、行政に認定されることで、自社サービスのみならず業界全体の地位やイメージの向上にもつながると判断し、計画の立案を決心する。

◆平成21年5月に大阪府下の女性で初となる経営革新計画の認定を受けたことで、自社サービスの導入が格段に進めやすくなった。公的機関による認定の力は非常に大きい。

◆また、サロンとは別事業で健康食品の販売も行っていたところ、使用されていた原料が原因で死者が出るという事故があり、当社も被害者の側ではあったが、風評から売上が落ちてしまうという出来事があった。

◆その際、前出の中小企業診断士から、今度は箕面の地域資源である実生ゆず を使った国産のアロマオイルの製造を提案されたことを受け、「おおさか地域創 造ファンド」を活用したモノづくりに乗り出すことを決意する。

◆ファンドの採択が決まり商品化を進めたものの、ゆずは保管が難しく事業化へ向けての壁にぶつかる。そのことを産学連携ビジネスマッチングフェアで正直にプレゼンしたところ、阪大工学部の助けを得ることができることになった。そして、阪大の力も得たことで、新製品としてゆずのアロマオイルを開発することができた。

産官学の支援も 活用し事業拡大

成長期に 向けて

Page 17: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

女性起業家事例9 株式会社アルビス ●企業名称: 株式会社アルビス ●代表者名: 代表取締役 福 富美子 氏 ●創 業: 1988年 ●業 種: トータルドキュメンテーションサービス ●経 緯: 前職の翻訳会社で培ったノウハウをもとに創業。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 株式会社アルビス 規模 従業員50名 所在地 大阪市西区阿波座 1丁目 11番 17号 西本町有楽ビル 4階 拠点等 大阪本社のほか、東京と福岡にオフィスを構える 事業領域 ・翻訳・通訳サービス、動物医薬コンサルティング、人材派遣・人材紹介 思い 強み

・スカウトをきっかけに東京の翻訳会社に転職し、大阪支社長として支社の立ち上げに携わった。その後、同社が倒産したため、自身が創業。 ・翻訳サービスからスタートし、獣医師である弟の参画により動物医薬にも事業領域を拡大。また、企業からの要請を機に人材の派遣・紹介も行うようになった。 ・翻訳とDTP(翻訳絡みのパンフレット等の文書作成)が売上の半分を占める。家電メーカーの輸出製品用取扱い説明書の翻訳業務が多い。 ・動物医薬関連は、英語に堪能な獣医師8名が担当。全員が正社員である。動物薬の薬事申請、またその際に発生する翻訳が主な業務。動物医薬に関する学会やセミナー等の開催支援、さらに外資系動物医薬メーカーのコールセンター業務など、動物医薬の知識と英語の高いスキルが必要とされる事業も行っている。

需要 【顧客のグローバル化で多言語展開、獣医師が手掛ける専門性の高い翻訳にニーズあり】 ・翻訳は当初は英語メインのサービス展開だったが、アジアの経済成長に応じてアジア言語にも対応するようになった。また、家電メーカーがEU重視へと動いたことで、欧州各国語へも対応。その後も対応言語は徐々に拡大を続けている。顧客メーカーの成長、海外展開の拡大に歩調を合わせて事業拡大してきた。 ・獣医で博士号を持つ弟の参画で動物医薬分野にも進出。海外で学位を取得した人材も採用した。ペットブームを背景に動物用医薬品のニーズが増大したこともあり、同分野でも事業が拡大。本業の翻訳事業も相乗効果で成長し、会社全体の売上規模は倍増した。動物医薬関連の翻訳を獣医師が手掛ける翻訳会社は、現在でも珍しい存在である。

女性視点 【覚えられやすい女性の強みを活かして営業開拓、女性のきめ細かさもアピールできる】 ・女性は、営業でアポを取得しやすく、飛び込みで訪問しても面会してもらえる確率が高いという面がある。また、翻訳業という業種では、女性のきめ細かさをプラスと見てもらえる傾向があり、女性も活躍しやすい。 ・女性ならではの特徴を活かして、創業時には飛び込み営業を繰り返し、訪問企業の特定の部署で信頼を得て、そこから他部署も紹介してもらう形で営業先を広げていった。また、事業のネタ探しなどの目的で起業家の交流会などにも積極的な参加を続けた。

資金調達 ・頼りにできる銀行支店長との出会いがあり、主に都市銀行で融資を受けてきた。他には日本政策金融公庫を活用。他の公的機関の利用や補助金等の利用はない。

支援者、家族

・カナダの大学で博士号を取得した弟が帰国し、事業に参画。動物医薬コンサルティング領域の成長を牽引した。 ・都市銀行支店長には、融資に限らず事業計画の作り方なども教えてもらい、恩人の一人。

Page 18: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

◆大手菓子メーカーの社長秘書として勤務し、海外出張、英文の翻訳、通訳などの日常業務をこなす中、英語の重要性を認識し、スキルを習得していった。

◆20代後半でスカウトをきっかけに東京の翻訳会社に転職。大阪支社長 として支社の立ち上げに携わるも、同社があいにく倒産。

◆その後、顧客の後押しもあり、30代前半で創業。 ◆英語を中心とした翻訳サービスから、顧客の海外進出に合わせて多言語展開を行う。積極的な営業活動の積み重ねも奏功した。

◆創業当初の元手は自己資金でまかなっていたが、徐々に銀行からの借り入れも必要になっていた。その中で出会った大手都市銀行の地元支店長には、資金の融資のみならず決算書の読み方、事業計画の作り方等、多面的で指導を受けることができた。

◆銀行からは営業先の紹介までしてもらい、事業開始後1年で黒字化を達成。それを機に融資も一層うまく行くようになった。

◆カナダで博士号を取得した獣医師の弟が帰国して事業参画。動物医薬コンサルティング事業を開始する。海外で学位を取得して帰国しても職に就けない 人材(ポスドク)が多いことに気づき、積極採用。

◆日本の動物薬メーカーは外資系が多く、トップの多くは外国人で、 同窓の社員も多く、人脈を活かした営業活動を進めている。

◆社員に獣医師が増えたことで、会社の事業全体の方向性がユニークなものとなっただけでなく、ペットブームを背景に動物用医薬品のニーズが急拡大していた背景も手伝い、会社全体の売上が倍増することとなった。英語のスキルの高い獣医師が動物薬関連の翻訳やコールセンターで対応する業態は珍しく、他社との差別化につながっている。

◆女性の獣医師も採用、働ける時間でローテーションを組み、子育て中の就業を支援。

◆IT とメディアが融合したグローバリゼーションの流れは急速で、今後はこれまで以上に世界規模での言語処理が必要となってくる。世界の言語に対応できる GLOBAL COMMUNICATORS として、全世界からの情報受信および日本から全世界に向けての情報発信を掲げ事業を推進していきたい。

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○

●福社長の成長ストーリー

●福社長 ●株式会社アルビス 組織図

創業前

メッセージ: 翻訳関連の営業面では女性は男性より間違なく有利。その点の事業への活用は必須。

創業時

転換期

成長期に 向けて

支社を立ち上げた経験を活かして創業。

海外留学後の獣医師を採用、他社と差別化。

Page 19: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

女性起業家事例10 NPO法人ノーベル ●企業名称: NPO法人ノーベル ●代表者名: 代表理事 高 亜希 氏 ●創 業: 2009年11月 ●業 種: 病児保育サービス ●経 緯: 子育て中の女性の働きにくさを解決するべく、東京のNPO法人での修行を経て創業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 NPO法人ノーベル 規模 正社員12名、保育士18名、その他ボランティアスタッフ 所在地 大阪市中央区内本町2-4-12 中央内本町ビルディング701 拠点等 大阪市中央区の本部を拠点に、大阪市全域、吹田市全域および東大阪市、豊中市、堺市

の一部に訪問型の病児保育サービスを提供。 事業領域 ・共済型の訪問型病児保育事業

・ソーシャルプロモーション事業

思い 強み

・自身の周りで、子育て中の同僚女性が次々に退職していく現状を目の当たりにし、疑問に思った。子どもはよく急に熱を出すが、病児に対応できる施設が絶対的に不足し、職場の理解も十分ではなく、母親が子供の世話のために仕事を休める雰囲気がない。それ以来、女性の働きにくさについてずっと考えてきたことが原点。 ・自身もいずれ「起業したい」という気持ちがあったため、創業。結婚して子供を産んで、家族との時間を大切にしたい、同時に仕事も続けたい、という女性の希望を叶えたい。 ・地域密着型・共済型の病児保育事業を展開している。地域全体で子育て世帯を育てていくという理念のもと、急病の子供を預かっている。対象は小学校6年生までで、当日朝 8 時までの申込みには 100%対応(類似サービスでは、当日依頼は対応していないことが多い)。

需要 【仕事と子育ての両立に悩む親に病児保育サービスを提供、ニーズを取り込み拡大】 ・自身が社会人として働き始めた中で、子育て中の同僚女性が退職していく現状から、育児と仕事の両立が女性にとっては当たり前ではなかったことに気付かされ、その問題を自分の力で解決したいと考えた。 ・子育てと仕事を両立させたい女性からの支持を受け、事業は順調に拡大している。保育所の数が足りないために子どもを預けられず働けない女性、子どもが急に病気になっても仕事を休めず苦労する女性、また最近では子育てに参加する男性からのニーズも高まっている。

女性視点 【子どもを持つ女性の働き方をサポート】 ・女性の働き方と社会のあり方について考えてきたことを原点に、子どもを産んでも当たり前に働き続けられる社会の実現を目指す。 ・働く母親の悩みを解決すべく立ち上げた事業だが、自身は未婚で子供がしょっちゅう発熱することすら知らなかった。だからこそ、先入観を持たずに事業を進めることができた。

資金調達 ・創業当初は助成金の確保にも苦労していたが、社会起業家を支援する財団法人から融資を受けることができ、事業拡大が可能になった。その後事業が拡大するにつれ、資金調達も順調に運ぶようになっている。

支援者、家族

・財務ならこの人、マーケティングならこの人というように、各領域で頼ることができる専門家がいる。自分にない専門性を持つ人との関係構築は、経営者にとって大変重要。 ・父が経営者であったため、当初、創業については反対されつつも、助言を得ることができた。

Page 20: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○

●高代表の成長ストーリー

●ノーベルのオフィス入り口と高代表 ●病児保育風景(1対1の自宅保育)

◆創業以前は旅行会社、人材紹介会社での勤務経験がある。出産した 同僚女性の退職が続いたことがきっかけで、女性が仕事と家庭を両立できる社会を作りたいと思い立つ。自身も、いずれは起業したいという気持ちがあった。

◆病児保育が不足している現状を知り、20 代後半の時、東京のNPO法人で修行させてもらった。経験も資格もなかったため、当初は見習いでの勤務であった。

◆2009年4月に大阪に戻り、まずはネットワーク作りのため、ブログを開設して大阪で病児保育事業を開始する旨を宣言。同時に病児保育施設や障害者施設でボランティアとして働き、経験を積む。

創業前

メッセージ: 創業したいなら、とにかく動き回ること。机上の勉強をいくら続けていても何も始まらない。

創業時

転換期

◆決心したとおり、2009年11月に法人設立し、2010年2月にサービスイン。起業家は勉強よりも動く方が大切と信じ、とにかく動き回った。

◆とくに注力したのはマーケティング。病児保育事業は社会にどれだけ価値が認められるかが重要。企業等へ営業に出向くよりも、メディアやWEBを通しての情報発信を続けた。

◆創業2年目で、事業拡大のため融資を受けることにした。利用したのは社会起業家への支援を展開している財団法人の制度。人的ネットワークを担保に、無利子で融資を受けることができ、運転資金を確保できたため、職員の採用などの面で有効に活用できた。

◆2013年、拠点を共同オフィスから現オフィスに移転。家賃が跳ね上がることが不安ではあったが、事業規模も拡大することで賄えるはずと決意して移転。結果的に事業規模も大きく拡大。何事も先を見越して決断するのが経営だと気付いた。

◆現在は活動エリアの拡大に応じて、収入も順調に増えている状況。昨年、行政との連携も始まった。今後は寄付金等も取り込んでいけるよう、事業をさらに拡大させていきたい。

◆以前から継続している社会の価値観を変える啓発活動には、引き続き注力していく。病児保育事業の拡大には、社会的な認知度の向上が不可欠。

◆今年から「社会起業家を目指す若者のためのビジネスプランコンペ」を 運営するNPOの理事を務めている。NPOは組織力が弱いので、 横の連携をとってノウハウの共有が必要。将来的には多くの団体と連携 して集合体を作りたい。また、NPOを立派なビジネスに育てていきたい。

成長期に 向けて

現場で経験を積み、ノウハウを蓄積。

融資やオフィス拡大と、先を見越した決断も成長のためには必要。

Page 21: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

女性起業家事例11 株式会社チャイルドハート ●企業名称: 株式会社チャイルドハート ●代表者名: 代表取締役 木田 聖子 氏 ●創 業: 個人での創業は 1992年、会社設立は 2000年 12月 ●業 種: 乳幼児の保育事業及び教育の研究、インターネットを利用した乳幼児の保育及び教育に関

する情報の提供サービス ●経 緯: 専業主婦経験後、パートとして勤務、個人で幼児教室を経営し、会社を設立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 株式会社チャイルドハート 規模 従業員 78名(子育て等の女性のライフスタイルに合わせて、時短正社員等を選択可能) 所在地 神戸市西区今寺3番地の22 拠点等 JR舞子駅前に舞子園、JR加古川駅前に加古川園の2園を拠点として開設 事業領域 ・保育サロンの運営、プリスクールの運営、企業内等保育園の運営、子育て支援サービス

・保育園設立・運営に関わるコンサルティング 等 思い 強み

・専業主婦、パート勤務、個人の創業を経て、会社を設立。自分のライフスタイルに合わせ、会社を設立し、自然に規模を拡大。子どもが大きくなった時期に、地元商工会議所の「神戸起業塾」の1期生に応募し、会社の設立方法や事業計画等について学んだ。 ・規模拡大を目指すのでなく、自分のキャパややりたい事があり、従業員も含めて今、幸せと感じている点を守るためにはどう経営していくかを大事にしている。 ・現在、取り組みの方向は3つある。①企業内保育園の受託運営、②小規模保育(認可の保育園)を増やす方向で事業展開、③働く女性への支援。

需要 【自身の経験と個人で幼児教室を展開していた経験から親のニーズを把握】 ・インターネット・カメラで園の様子をリアルタイムで届けるサービスを始めた当時は、保育園等での窒息死や虐待事件などがあった頃。園が外から見えないから、そういう事件が起こると考え、見える化のためにインターネット・カメラを開発した。 ・情報は発信していれば必ず返ってくる。

女性視点 【主婦の家計管理の感覚は経営につながる】 ・主婦として培った家計管理の感覚を、経営にそのまま活かせる点は大きなメリット。持っているお金の中で貯金し、考えながら使うという家計管理は、経営と共通している。 ・もう一つは、マネジメント力。家族のわがままを聞きながら、喧嘩せずにやっていく方法を身につけている。家族は一番小さい社会。近所付き合いも営業能力につながっている。

資金調達 ・最初の5年間は資金繰りが非常に大変だった。必要な事業は残るはずと考え、もし難しければ会社を小さくして、自分が保育士になり、働いて返していけばよいと考えていた。 ・財団法人の運営するファンドや銀行系ファンドからの出資(両者とも償還ありで返済済)、エンジェル(個人投資家)からの出資を受けて、やってきた。地銀からは融資を受けることができたが、融資を断られた銀行もあった。

支援者、家族

・地元商工会議所「起業塾」1期生として学び、そのときにお世話になったキーパーソンがいて、ずっと同じ方に相談してきた(ベンチャー支援アドバイザー)。よく怒られながら指導されており、それが良い刺激になっている。当社の周りには、多くの素晴らしいブレーンがいる。 ・弁護士や中小企業診断士等、アドバイザーから紹介を受け、自分の感覚に合う先生に依頼できた。

・今でも定期的に、同塾のコーディネータであった大学の先生方、アドバイザーの方と一緒に、半年に1回、事業展開について相談をしている。 ・息子が会社に参画することになり、今後の展開を一緒に進めたい。

Page 22: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

◆創業後、最初の5年間は運転資金が不足し、資金繰りが大変だった。 創業補助金も全面的に活用し、資金を確保した。今から考えると補助金 をもらうために事業計画書をきっちりと書くことで、経営として、今何が必要か ということが整理できた。補助金をもらうことによって、自然に経営計画を見直 すことが可能となった。

◆公的な補助金やファンドの出資を受けたことは信頼や会社のブランディングにもつながった。ベンチャーの会社はブランドがないが、公的な補助金に認定され、ファンドから出資を受けることによって、中身としては経営計画ができ、外に対してはブランディングができた。

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○ ○ ○

●木田社長の成長ストーリー

●木田社長 ●舞子園 ●インターネット・カメラ

(舞子園から明石大橋を望む)

◆専業主婦を3年間経験した後、パートとして勤務し、その後、個人で 幼児教室を経営。急に会社を作ったわけではなく、ずっと個人でできるところから始めていったので、創業がいつだったという印象もなく、創業が大変だったとも感じていない。自分のライフスタイルに合わせて、自然に小さい会社から大きい会社になっていった。

◆個人で7年間事業を行っていたときはパートの延長だった。会社組織にしようとしたとたん、登記簿謄本や、税金の支払い、司法書士などが必要となり、分からないことが多かった。

◆新聞で「神戸起業塾」を知り、1期生として学び、得たものが大きい。

創業前

メッセージ: まず、一歩を踏み出すことが大事。だめなら戻り、無理をしないでバランスを取ればいい。

創業時

転換期

◆会社設立を進める中で困ったことが発生するたびに、商工会議所のベンチャー支援アドバイザーの女性担当者に相談した。担当が替わることがなく、ずっとその方が担当していただき、人脈の広い方で非常に助けられた。現在も、アドバイザーから紹介を受けた弁護士や講師でもあった中小企業診断士の先生方に指導を受けている。

◆起業塾で中小企業診断士の講師から、事業計画書や収支計画を自分で考えて作るということを学んだ。300ページにわたる保育園運営マニュアルも指導を受けて作成できた。

主婦、パート勤務、個人創業を経て起業

◆どのような問合せや依頼でも対応するのがポリシー。いろいろな業界の方と会うと視野が広がり、忘れた頃に事業につながることがある。

◆チェーン展開等の方法で大きくするつもりはないが、問合せや相談に乗り、困っているお母さん方の役に立ち、共鳴できるところがあれば一緒に行動するというスタイルを取っていきたい。働く女性の支援に関する研修やコンサルティングも始めたところ。

人のつながりを大切にし、ブレーンの助言を得る。 補助金申請で事業計画を練る。

成長期に 向けて

Page 23: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

女性起業家事例12 株式会社レック ●企業名称: 株式会社レック ●代表者名: 代表取締役 高橋 泉 氏 ●創 業: 1989年 ●業 種: 冠婚葬祭関連サービス ●経 緯: 自分の商いの才能を活かし、震災後の神戸の役に立ちたい、との信念のもと成長を志向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 株式会社レック(KSGグループ) 規模 従業員 519名(グループ全体) 所在地 兵庫県神戸市中央区東川崎町1丁目 3-3 神戸ハーバーランドセンタービル 18F 拠点等 神戸本社のほか、全国に支店・営業所を展開。海外にも事業所、協力店あり。 事業領域 ・冠婚葬祭業を中心に、国内外で 8法人、17事業部を展開 思い 強み

・幼少期から家業の手伝いを通して、商売感覚を磨いてきた。線香を販売した際に客から褒められた時の感激は、現在でも事業を行っていく上でのモチベーションとなっている。 ・エステ事業と婚礼衣装で創業し、事業が軌道に乗り始めた1995年に、阪神大震災で被災する。家業を手伝う中、体育館で多数のご遺体を目の当たりにし、大きな衝撃を受けた。 ・そこで、神戸の地から夢と希望にあふれた企業を成長させると決意し、デザインアルバム(写真撮影のスタイルを記念写真から一変)を提案。現在では冠婚葬祭領域全般をカバー。

需要 【専門雑誌への広告掲載で、問合せが急増】 ・震災からの復興を進める中、95 年に「ラヴィファクトリー事業部」発足。全国で初めてとなるデザインアルバムの販売を開始した。専門雑誌等への掲載を機に問合せが急増。事業が急拡大し、当社以外のサービスを含めて、現在は婚礼写真の 80%がデザインアルバムと主流になった。 ・また、再婚の方をはじめ利用者の多様な価値観から小規模な結婚式のニーズがあると考え、2000 年に「小さな結婚式事業部」発足。初婚の方も含めて低額でアットホームな挙式は社会ニーズに合致し、現在では年間挙式数 9,000件を数えるまでに至っている。 ・その他、家族葬や電報サービスなど、幅広く事業展開中。今後は首都圏や関西圏以外への進出、海外からのインバウンド促進を目標に掲げる。「小さな結婚式事業部」では金沢に進出し、歓迎された。インバウンドでは香港や台湾、上海から新郎新婦が来日、日本でのアルバム撮影を行うなど実績を挙げつつある。

女性視点 【自身の経験も踏まえて新規事業を提案、「チーム戦」で成長を拡大】 ・「小さな結婚式事業部」は、自身の離婚経験を活かして立ち上げた経緯がある。低額挙式ニーズの拡大だけでなく、今後の日本の離婚率上昇まで見越しての立ち上げとなった。 ・一般的に女性起業家は生真面目であり、それだけに事業を自分の目の届く範囲内で完結させようとする傾向があるように思う。 ・自身は社員を信じ、大きな権限を与えることで、会社一丸となって事業を拡大させてきた。事業は「チーム戦」という意識のもと、会社を成長させてきた。

資金調達 ・中小企業金融公庫、商工中金といった公的金融機関を活用してきた。特に阪神大震災後、運転資金が不足していた時期に融資を受けられたことが、現在につながっている。

支援者、家族

・一般的には、良き男性パートナーを見つけることは女性起業家にとって大切なことではないか。 ・社員中心で外部のメンターは頼ってこなかったが、地元信金の支店長には資金繰りの相談や金融機関からみた中小企業の財務評価のポイントを教えてもらい、とても勉強になった。

Page 24: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

◆子供の頃から家業の手伝いをしつつ、客への対応など、商才を磨いてきたように思う。ある時、線香を割引して販売して褒められ、その純粋な嬉しさが、起業の原点になった。

◆「少年よ、大志を抱け」という言葉がある。小2の時に初めて聞いたとき、なぜ「少女よ、大志を抱け」ではないのか、少女は大志を抱けないのか、と疑問に思った。幼少期からそういった面があり、起業家に向かっていった。

◆1989 年、20 代後半で創業。兵庫県神戸市、三田市を中心にレンタル衣装や美容、エステサロン事業を展開する。

◆創業当初から将来は 100 億円規模の企業にすると紙に目標を書いていた。どうせやるなら、という気持ちと、社員が自分の会社を一流と誇りに思えるようにしたいためである。

◆電報を当時、1社しか扱えないことに疑問を持ち、小泉政権時の規制 改革を機に率先して総務省と交渉。民間から初めて電報市場に参入。

◆2012年には、これも全国で初となる写真撮影のインバウンド事業を開始。 香港など海外の新郎新婦の日本国内での写真撮影サービスを展開。

◆事業が軌道に乗り始めていた 95年、阪神大震災で被災する。体育館で 多くの被災者のご遺体を目にし、地元神戸の地から夢と希望にあふれた企 業を創る決意をする。

◆その後全国で初めて立ち上げたデザインアルバムの「ラヴィファクトリー事業部」は、 専門雑誌等への掲載を機に急拡大。現在は婚礼写真の 80%がデザインアルバム。

◆「小さな結婚式事業部」は、薄利の事業になりがちで、後発の各社が撤退を続ける中、同社は小規模挙式を日本の文化とするべく耐え忍んだ。4~5 店舗目から黒字化に成功し、メディア等で取り上げられたことで事業を拡大。業界トップへと成長した。

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○

●高橋社長の成長ストーリー

●高橋社長 ●「小さな結婚式」風景 ●海外展開も加速する

創業前

メッセージ: 少女よ、大志を抱け

創業時

転換期 震災後の神戸から夢と希望をとの決意。

◆今後は、地方進出とインバウンドに注力する。「小さな結婚式事業」を地方主要都市に展開、インバウンド面では、香港や欧米から来日する形での撮影実績があるが、アウトバウンドとして、日本人の海外撮影も増やしていく事業にも着手した。

◆売上面での目標として 300 億を掲げるが、一番の目標は「レックはこういう会社」だと社員と顧客に理解してもらえる社風を確立すること。そのためには経営理念の徹底と、サービスの一層の普及が必要である。

さらなる成長に向けて

拡大期

業界初の事業を展開、規制緩和も獲得。

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女性起業家事例13 株式会社 Women’s Future Center ●企業名称: 株式会社 Women’s Future Center ●代表者名: 代表取締役 栗本 恭子 氏 ●創 業: 2014年6月 ●業 種: キッズスペース付コワーキングスペースの運営・管理 他 ●経 緯: 女性創業塾への参加を経て、フリーランスやWEBデザイナーとして培ったスキルを活かし創業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 株式会社 Women’s Future Center 規模 従業員数2名(栗本氏、パート1名) 所在地 奈良県奈良市三条本町 3-9 拠点等 ・所在地でコワーキングスペースを提供。創業スクールとプロ会員向けのビジネス支援を兼ねた

機能を持つ。女性が自由に集まり、子育てや仕事の課題等について話し合い、交流できる。 事業領域 ・女性創業支援、スキルアップ、子育て、癒し、といったテーマでイベント・講座を開催。交流の

中で生まれたネットワークを基に、新しい事業の創出や各自のスキルアップを後押しする。 思い 強み

・子育て支援サークルでのボランティア経験から、女性を支援する仕事に関心を持った。また、同時に創業したいという思いもあり、双方を実現する手段として現在の業態を構想。 ・最終的に現在の業態で創業しようとした決心できたのは、母親たちと話す中で、彼女たちの働きたいとするモチベーション、労働へのニーズを感じ取ることができたからである。とはいえ、実務で必要となるスキルの壁も同時に感じることとなったため、それを取り払えるシステムがあれば母親達を仕事へ向かわせる支援も大幅に進むものとの確信を得ることができた。

需要 【個人では難しい課題でも、プロを交えた集団では解決を図れる仕組み】 ・会員数は現在225名を超えている。毎月百数十名はコンスタントに施設に集まっている。様々なジャンルのプロから全くの未経験者まで、会員の専門性やスキルは幅広い。 ・1人では孤独で子育ての負担も大きいが、グループを作って仕事をしていれば、たとえ自分が病気になったとしても他の人が子供の面倒を見てくれるような互いの助け合いが期待できる。そういったコーディネートの安心感から、実際に大勢の会員が集まることとなったのであり、グループの形成は特に子育て世代の母親が働く上では非常に重要だと実感している。

女性視点 【全国でも珍しい、母親の働く姿を見ながら子供が育つ場所】 ・母親には子供同伴で学びたいというニーズが大きい。また、母親が働いたり学んだりする姿を間近で見ながら子供が育つという環境は、非常に貴重なものである。

資金調達 ・金融機関では、日本政策金融公庫、京都銀行から融資を受けた。京都銀行は自社施設の隣にある。京都銀行は現在近畿で企業向け融資額がトップの地銀で、融資に積極的な銀行。奈良に支店を出した直後ということもあり、積極的に支援してくれた。

支援者、家族

・女性創業塾の内容が良く、毎回の課題を一つずつこなすうちに、自分のやりたいことの形が見えてきた。その後、近畿経済産業局のミラサポにて中小企業診断士の個別相談を受け、事業計画づくりに取り組んだ。また、その間も常に、細かな相談は奈良県商工会連合会の相談員に持ち掛け、対応してもらっていた。 ・奈良県商工会連合会が取り組んでいるフェイスブックを通した活動では、他の創業希望者と交流を持ち、講座がない時にも互いに励まし合うことができるなど心の支えとなった。 ・顧問税理士からは資金面の支援を受けることができた。また、他には日本結婚教育カウンセラー協会の先輩起業家の支援も得ることができた。 ・こういった周囲の有力者との繋がりをアピールすることで、会員が増えてきたという側面もある。

Page 26: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

◆当初から株式会社としての創業とした。これは、過去に色々な仕事に就いてきた中 で、助成金がなくなった時点で潰れる会社を見てきた経験による。また、長期的に 事業を展開していくには株式会社の方が好ましいし、人を育てる事業である以上は簡単に廃業するわけにはいかず、自立した経営のもと長期的に事業を行っていきたいとする希望もあった。さらに、会員が株式会社を立ち上げる際にもアドバイスできる、との気持ちもあった。

◆もともとは2名で事業を立ち上げる予定であったが、いよいよ事務所を借りて事業開始という段階で、パートナーの女性が自分は本当にやりたいことをやるという理由で撤退する。開業資金の負担が倍になり、一人でやることにもなったが、奈良県商工会連合会の相談員に相談し、事業計画を練る上での協力を得られ、その結果、補助金も受けることができた。同氏にはメンタル面でも相当助けられたと感じている。

(2014年6月創業。まだ転換期は迎えていない。) ◆クラウド・ファンディングには関心がある。コミュニティ・カレッジの立ち上げにぜひ活用したい。 ◆母親の働く姿を見ながら子供が育つような場所は全国でも少ない。コワーキングスペースとしての施設の売り込みに注力したい。

◆女性が交流できる生きたネットワークを作りたい。その様子を見て共鳴した人が入会し、更なる出会いが生まれ、会員同士が得意な講座を紹介しあうような好循環を生み出したい。

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○

●栗本代表の成長ストーリー

●栗本代表 ●Women’s Future Center内部での講座の様子

◆育児中にフリーランスとして企業のブログ執筆を行うも、リーマンショックの影響で失業。その後専門学校へ通いWEB デザイナー資格を取得、企業のホームページ制作部門へ就職。

◆子育て支援サークルのボランティア経験から、女性を支援する仕事に関心があった。また同時に創業して稼ぎたいという思いもあり、双方を実現する手段として現在の業態を構想。

◆そして、奈良県商工会連合会開催の女性創業塾の存在を知り、参加する。その内容が良く、毎回の課題を一つずつこなすうちに、自分のやりたいことの形が見えてきた。

◆その後、近畿経済産業局のミラサポにて中小企業診断士の個別相談を受け、事業計画作りに着手。その間も常に、細かな相談は奈良県商工会連合会の相談員に持ち掛けた。相談をする中で、フリーランスとWEBデザイナーとして培ったスキルを活かした形で創業することを決意するに至った。

創業前

メッセージ: 自分を引き上げてくれる人をあえて求めよ。

創業時

転換期

奈良県商工会 連合会の 手厚い支援

子供同伴で学びたい母親が多い

成長期に 向けて

Page 27: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

女性起業家事例14 株式会社ふみこ農園 ●企業名称: 株式会社ふみこ農園 ●代表者名: 成戸 文子 氏 ●創 業: 平成5年 ●業 種: 食品の製造販売等 ●経 緯: 家業とは異なるオリジナル製品の開発販売を行うために設立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 株式会社ふみこ農園 規模 従業員数20名 所在地 和歌山県有田郡有田川町野田 594-1 拠点等 所在地のほか、インターネット上でも商品を直販。 事業領域 ・紀州南高梅の製造販売及び、梅加工品の製造販売、土瓶蒸し等の製造販売、その他紀

州特産品、農作物の販売。 ・和歌山県産品を使った食品企画販売、楽天等にて通販専門店を展開。紀州南高梅干し、梅スイーツ、あんぽ柿、各種フルーツ、松茸の土瓶蒸し等の加工品を企画製造販売。

思い 強み

・嫁ぎ先の「ナルト製麺」での仕事を手伝う中で、バイヤーとのやり取りを通して、自社の麺は値段だけで勝負していることに気付く。今後も麺だけでの勝負は難しいと感じ、オリジナル製品の企画開発を行うことにした。日々営業に出ていたせいもあり、その思いは強かった。

需要 ・2年ほどかけ、梅うどんを開発。色のついたうどんを開発すべく進めてきて、商品が完成した際に贈答品として販売できると思い、贈答用の箱を2万個注文した。 ・予想に反して注文は入らなかったのだが、どういうわけか、大手製薬メーカーからその年のお歳暮に使いたいと連絡が入り、一挙に5000個売れたこともあった。おそらく、あちこちの展示会に出ていたので、その際に目に留まったのだと思う。 ・各地で百貨店の店頭販売も行った。ある時、お客さんに梅うどんが赤色なので、「気持ち悪い、ミミズみたい」と言われ、涙が出たこともある。ただ、それはお客の正直な感想であり、受け止めるべきだと思った。バイヤーさんやお客さんとの人とのやりとりの中で、開発ができたと思う。 ・梅うどんにおまけでつけていた梅干が美味しいと評判で、梅干の販売にも踏み切った。

女性視点 ・事業の成功と引き換えに、家族に問題が出るようではだめだと思う。家族が一体になって事業を進めたい。自分の場合は息子が製麺工場の跡を継ぎ、娘が当社に戻り、HPを一から作り、商標出願も勉強してできるようになってくれた。家庭を守れないようでは会社も守れない。 ・お姑さんが非常に賢い人で、「商売は取り戻せるが、子育ての失敗は取り戻せない」と教えられたため、子どもが小さい間は子育て最優先でやってきた。本格的にふみこ農園の事業を拡大してきたのは、下の子が中学校に入学してから。

資金調達 ・当社も株式会社ナルトも、日本政策投資銀行からの近代化資金を利用させてもらっている。最初に借りた資金をきちんと返済してきたことが、評価につながっていると聞いている。 ・和歌山県の「わかやま中小企業元気ファンド」は、商工会議所の方に教えてもらい、6年前に採択され、設備投資を行った。国の資金をもらったのだから、世の中に必ず商品を出さないといけないと、社内でも言って、努力した。

支援者、家族

・麺製造の時代から、バイヤーさんに売り込んでいたので、人的ネットワークはあった。 ・和歌山県の工業試験場に研究開発面で支援を受けたほか、食品の扱い方の面で保健所にも指導してもらっている。また、農家にも助けてもらっているほか、県の中央会等、行政からも色んな指導を頂き、大いに助けられている。模倣被害の裁判の際(後述)、和歌山県発明協会に助けてもらった。

Page 28: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○

●成戸社長の成長ストーリー

●成戸社長 ●松茸の土瓶蒸し ●国産 梅グラッセ

◆40 年前に「株式会社ナルト製麺」(現ナルト、和歌山県有田川町)に嫁ぐ。社長の他には職人が1人だけの小さな麺工場であった。自身は和歌山市内のまちなかの出身で、銀行でOLをしていたため、最初は戸惑うことばかりだった。

◆3年間、工場を手伝ううちに、製麺を覚え工場の戦力になっていった。とにかく 何でもやって覚えた。また、当時、麺は一山いくらで売られていたが、そこに油揚げ とネギをつけ、お出汁とセットで売ろうと考えた。えびの天ぷらやチャーシューも教えてもらいながら自分で料理し、セット麺をスーパーに卸すようになっていった。25 年の間はそのように、自営業の中で下積みをやってきたような状態。その間に力を蓄えた。

創業前

メッセージ: 女性にとって、家庭を守り会社を守ることは、両方とも大切

創業時

転換期

家業で実力を磨いた

◆農産品は収穫が3ヶ月間に集中する。多様な商品を用意しておかないと、 収穫期以外は仕事がなくなってしまう。多くの商品開発を継続していきたい。

◆地域の役に立ちたいという気持ちが根底にある。和歌山の産品を世界に発信したい。

◆ある中堅食品メーカーに、松茸の土瓶蒸しの模倣商品を出されたことがある。相手企業の社長に一生懸命、手紙を書き開発の苦労についても訴えたが、何の反応もなかった。

◆相手は当社の 100倍規模の会社だったが、泣き寝入りはせず裁判を起こし、当社が勝訴した。相手は小さな会社で足元をみたのかもしれないが、日本の法律、裁判はちゃんと対応してくれると実感した。その時は、和歌山県の発明協会にいろいろ相談し、助けていただいた。たとえ小さな企業でも、手続きを踏めば、模倣品対策ができることがよくわかった。

積極的な商品開発を継続していく

成長期に 向けて

◆オリジナル製品の開発販売を、従来の麺工場と分けるためにふみこ農園を設立、最初から株式会社にした。当時、ナルト製麺は10名くらいの規模になっていたが、このままでは将来が厳しいと思い、いざという時のために、別会社にしておいた。

◆ある年の税務調査の際、ふみこ農園は会社組織で経理・税務に対応できていたことから、「両方の会社をみた方がいい」と薦められ、自分が元のナルト製麺とふみこ農園の両方の経営にあたることになった。なお、ナルト製麺は現在、息子が引き継いでくれている。

Page 29: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

女性起業家事例15 スターフードジャパン株式会社 ●企業名称: スターフードジャパン株式会社 ●代表者名: 代表取締役 新古 祐子 氏 ●創 業: 2010年3月 ●業 種: 地域食材の企画・販売・輸出入 ●経 緯: 嫁ぎ先の家業である醤油会社での経理、営業を経て創業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ●事業概要 項 目 概 要

会社名 スターフードジャパン株式会社 規模 従業員数3名 所在地 和歌山県和歌山市田中町 5-1-8 拠点等 ・和歌山市内のオフィスを拠点とし、近畿二府四県に中部(愛知・三重)を加えた一帯と、

一部で宮城などの遠方の顧客を対象として活動している。 事業領域 ・地域食材の企画、生産から販売、輸出入までを、一気通貫してプロデュースを行っている。

主な顧客としては、加工メーカー、農家、日本に食品を販売したい外国企業、海外に食品を販売したい日本企業などが挙げられる。商品企画や販路の開拓といった面で悩みを持つ顧客に対してコンサルティングをし、地域メーカーと一緒に伴走するスタイルをもつプロデュース的な立ち位置のビジネスでもある。業態としては「農商工連携」に近い。

思い 強み

・自分がおいしいと感じていて地域で愛されている饅頭等の産品は、生産者がいなくなると世の中から消えてしまう。素晴らしい産品は長く受け継がれていってほしいし、売り方を一つ変えるともっと伸びる地域産品もあるのではないか、といった思いや経験が、企業の「企画力・販売力」をサポートしたいという考えにつながり、創業に至った。

需要 【家業での営業を担当する中で創業のヒントを見つける】 ・嫁ぎ先の家業であった醤油会社を地域の土産物屋から脱皮させ、大きく飛躍させようと努力していた中で、現場をよく知っているアドバイザーの存在がいなかったことで、自身も歯がゆい思いをしていた。 ・また、販路の拡大や会社のアピールなど、営業を続ける中で苦労してきた点は他社も同様に苦労しているのではないかと考えるなど、食材を扱う企業が抱えている課題や支援ニーズに気付かされる機会も多かった。

女性視点 【作り手、買い手が女性であり、女性の感性が活きる業態】 ・自社の業態上、作り手と買い手の双方が女性というケースが多いため、その間に入るのも女性が望まれる傾向がある。女性の農家は女性のプロデューサーに担当してもらいたいという希望があるため、その点は自社の強みとして活かせる部分だと認識している。

資金調達 ・200万円の資本金をもとに創業したが、融資などの制度などは何も利用しておらず、その後資本金に追加した300万円も含め、資本は全て自己資金で賄ってきた。

支援者、家族

・事業の先駆者が地元にいないこともあり、特定の人は決めず、その時々で様々な人からアドバイスを受けてきた。自分がやろうとしていることに近いことをしている人に相談を持ち掛ける形で、問題を解決してきた。 ・相談窓口などの利用経験はない。また、ドラッカー、コトラーなどの経営本を読んでも内容は全て経験上自分で理解しているものばかりで、あまり目新しい情報は手に入れることはできなかった。 ・将来的には、自分の考えを具現化してくれるようなパートナーが欲しい。当社事業は社会貢献事業であり、そういった事業は女性向きであるため、できれば女性のパートナーが望ましい。

Page 30: 女性起業家事例1 株式会社GAIA...女性起業家事例1 株式会社GAIA 企業名称: 株式会社GAIA 代表者名: 代表取締役 坪川 晶子 氏 創 業: 2006年

◆塾講師の経験は、他と差別化するための資料作成能力や、子どもの学習意欲を支援する=他社の自立を支援するという意味で、創業後にも非常に役立つこととなった。

◆自分の力でコンサルティングを続ける一方、他人も活用しつつ仕組みを作って売っていくための方策を練っている。

◆また、自社と家業の醤油会社がうまく共存できるような仕組みも検討中である。 ◆拡大志向はある。当社の事業は士業と同じで、コンサルティング業。フランチャイズ形式で巨大化しているコンサルティング会社の先例もあり、当社も事業拡大できるものと確信している。

●ビジネスモデルの分類 モノづくり サービス ソーシャルビジネス 該当 ○

●新古社長の成長ストーリー

●新古社長 ●魅力ある地元食材を世界へ

◆醤油会社に嫁ぎ、人出不足もあり徐々に家業に駆り出された。始めは、工場員として工場内の業務の共有化を図り、次に店舗店員として社員の見本となるようマナーを教えた。又、事務員不足な事から経理と労務を担当し、最後は、営業をするに至った。

◆家業は、地域の有名企業ということもあり、かつては営業なしで成り立っていた 会社だが、地域の高齢化などの環境変化もあり、「待ち」から「攻め」へと方針 転換する必要性に迫られたため、自身が営業に出ることとなる。

◆未経験から始め、試行錯誤の中での営業であったが、アプローチ先のターゲットを絞り、また「フードアナリスト」資格の取得効果もあり、自身で売上1億円を挙げるまでになっていく。

◆営業活動を通して、アドバイザー的な存在がいないことで歯がゆい思いをし、販路の拡大や会社のアピールなど、自身が営業を続ける中で苦労してきた点は他社も同様に苦労しているのではないかと考えるなど、食材を扱う企業が抱えている課題や支援ニーズに気付かされる機会が多かった。また、売り方を変えることで、消えるはずの運命の産品も残していけるとの想いもあり、企業の企画や販売をサポートする事業に関心を持つようになった。

創業前

メッセージ: ニーズをシーズに変える。必要から生まれる仕事は、社会的にも認められやすい。社会的に意味のない事業は、長続きしない。

創業時

転換期

嫁ぎ先での仕事の中に創業のヒント

◆和歌山県経営者協会「キラリ!輝く女性ビジネス大賞」の第二回大賞を受賞した。他薦でエントリーされたものだが、新聞やテレビ、雑誌での露出が増え、それが自社の支援ツールとしても活用できるなど、受賞の効果は大きかった。 家業との共存も

成長期に 向けて


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