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Chapter I030 Film Exhibition Yearbook | 2017 Chapter I 031映画上映活動年鑑|2017 映画館での上映 4 | 諸外国との比較

ないにせよ、これらの数値をみる限り、日本人は他の国民に比較して映画館

で映画を見る本数が少なく、まだ観客開拓の余地があるということができる。

→ �g. 21–1, 2

映画館数・スクリーン数

スクリーン数は、アメリカが他の国に比べて圧倒的に多く、日本の10倍以上

の40,392スクリーンとなっている。ドイツとスウェーデン以外はいずれの国

も、この10年間でスクリーン数は増加している。

ドイツとスウェーデンは、10年前に比べると減少しているが、2013年以降は

増加に転じている。ヨーロッパでも、2013年前後に上映機材のデジタル化

という大きな変化があり、この時期にいくつかの映画館が閉館したものと考え

られる。

人口をスクリーン数で割った「1スクリーン当たりの人口」は、その数値が低

いほどスクリーンが多い、身近にスクリーンが存在しているとみることができ

る。この数字をみると、日本は36,559人に1スクリーンと、他の国に比べてス

クリーンが非常に少ない、身近に映画館が「ない」国だということができる。

最もスクリーン数が多いアメリカは8004人に1スクリーン、フランスは11,059

人に1スクリーンで、いずれの国も1スクリーン当たりの人口は2万人以下に

おさまっている。日本人の年間鑑賞回数の低さも、このスクリーンの少なさと

無関係ではないだろう。映画館が近くにないから映画館に行かない、行け

ない、だから観客数も増えないとみることもできる。

1スクリーン当たりの観客数・興行収入

1年間の観客数をスクリーン数で割った1スクリーン当たりの観客数をみる

と、最も多いのは韓国の84,280人、日本は51,898人で、韓国に次いで多

い。他の国 で々はイギリスとオーストラリアがかろうじて4万人を越えている

が、ドイツ、スウェーデンは2万人台、フランスは36,477人となっている。

後出の1スクリーン当たりの1年間の興行収入(2015年)をみると、日本が約

6317万円であるのに対して、ヨーロッパの映画館では、フランスは約2839

万円、ドイツは約3096万円と、日本の半分以下である。この数字は、この

10数年で大きく変化していないものと考えられる。それでも、映画館は減ら

ずに存在しつづけている。

ヨーロッパにおいては、映画館=興行館(日本のように休みなく毎日5―6回上映す

る映画館)というわけではない。「映画上映活動年鑑2016」で紹介したドイ

2007200820092010201120122013201420152016増減率(2007→2016)

アメリカ38,97438,83439,23339,54739,58039,66240,02439,95740,174

40,392104%

フランス5,3005,3325,4245,4785,4675,5085,5885,6475,741

5,842110%

ドイツ4,8324,8104,7344,6994,6404,6174,6104,6374,692

4,73998%

イギリス3,5143,6103,6513,6713,7673,8173,8673,9094,046

4,150118%

日本3,2213,3593,3963,4123,3393,2903,3183,3643,437

3,472108%

韓国1,9752,0042,0552,0031,9742,0812,1842,2812,424

2,575130%

オーストラリア1,9411,9801,9891,9941,9911,9972,0572,0412,080

2,121109%

スウェーデン933848848831830816774765802

80887%

2007200820092010201120122013201420152016

アメリカ––––––––––

フランス33,66035,67137,13137,66039,43536,95734,50137,00535,893

36,477

ドイツ25,95226,90230,90426,94227,93129,26128,13426,24529,668

25,554

イギリス46,21545,48547,52146,09145,55345,19342,79840,29242,486

40,554

日本50,66547,77949,85251,10143,34447,16146,98347,89448,481

51,898

韓国80,39575,26476,38064,49380,91293,65297,68894,28389,641

84,280

オーストラリア43,63742,72745,60146,13842,69243,01539,86438,51143,413

43,046

スウェーデン15,99118,06320,51419,04219,78221,98221,42921,28421,253

21,976

人口(千人)スクリーン数人口/スクリーン

アメリカ323,29840,392

8,004

フランス64,6055,842

11,059

ドイツ82,4924,739

17,407

イギリス65,6484,150

15,819

日本126,9323,472

36,559

韓国51,2462,575

19,901

オーストラリア24,3862,121

11,497

スウェーデン9,995808

12,370

諸外国との比較[スクリーン数](2007–2016)

�g. 22–1

諸外国との比較[1スクリーン当たりの観客数](2007–2016)

�g. 22–3

諸外国との比較[1スクリーン当たりの人口](2016)

�g. 22–2

諸外国との比較

ここでは、日本の映画館での上映の状況を諸外国と比較してみる。

観客数

2016年の観客数をみると、アメリカ・カナダの13億2000万人が特出してお

り、以下、韓国、フランス、日本と続くが、人口規模を勘案すると、他の国に

比べて日本は観客数が少ない。観客数を人口で割った国民1人当たりの

年間鑑賞本数は、日本は1.4本で、東日本大震災後2011年に1.1本に落

ち込んだ状況からは回復し、以前の数値に戻っているが、8ヶ国の中では最

下位となっている。韓国の4.3回が最も多く、続いてアメリカ・カナダとオース

トラリアが3.8回、フランスが3.2回と、日本人の倍以上、映画を見ているこ

とがわかる。

この10年間で観客数の増加率が高いのは、137%の韓国で、2007年の1

億5878万人から、約6千万人増加し、2億1702万人と日本を大きく上回っ

ている。フランスやスウェーデンでも20%近く観客が増加しており、ネット配

信等、映画館以外での映画鑑賞の手段が増え、充実していく中でも映画

館で映画を見る観客はほとんど減少していないことがわかる。

データの取り方が必ずしも一様であるとはいえず、単純に比較することはでき

各国のデータについては、以下を参照した。

アメリカ(及びカナダ)

アメリカ映画協会 Motion Picture Association of America(MPAA) “Theatrical Market Statistics”フランス

フランス国立映画センターCentre National du Cinema et de l’Image Animee (CNC) “Results” イギリス

英国映画協会 British Film Institute(BFI) “Statical Yearbook”ドイツ

ドイツ映画振興協会 Filmförderungsanstalt(FFA) “Die FFA-Förderungen”スウェーデン

スウェーデン映画協会 Svenska Filminstitutet “Facts and figures”オーストラリア

スクリーン・オーストラリア Screen Australia “Fact Finders”韓国

韓国映画振興委員会Korean Film Council (KOFIC) 「한국영화산업 결산」

人口(2016)

2007200820092010201120122013201420152016増減率(2007→2016)

アメリカ・カナダ3億5956万人1,400,0001,340,0001,420,0001,340,0001,280,0001,360,0001,340,0001,270,0001,320,000

1,320,00094%

韓国5124万人158,780150,830156,960129,180159,720194,890213,350215,060217,290

217,020137%

フランス6460万人178,500190,300201,600207,100217,200203,600193,700209,100205,400

213,100119%

日本1億2693万人163,193160,491169,297174,358144,726155,159155,888161,116166,630

180,189110%

イギリス6564万人162,400164,200173,500169,200171,600172,500165,500157,500171,900

168,300104%

ドイツ8249万人125,400129,400146,300126,600129,600135,100129,700121,700139,200

121,10097%

オーストラリア2438万人84,70084,60090,70092,00085,00085,90082,00078,60090,300

91,300108%

スウェーデン999万人14,92015,31717,39615,82416,41917,93716,58616,28217,045

17,757119%

2007200820092010201120122013201420152016

アメリカ・カナダ4.44.24.34.13.94.14.03.73.8

3.8

韓国3.23.03.22.93.23.84.24.24.2

4.3

フランス3.03.23.43.53.63.43.23.13.1

3.2

日本1.31.31.31.41.11.21.21.31.3

1.4

イギリス2.72.72.82.72.72.72.62.42.6

2.6

ドイツ1.51.61.81.61.61.71.61.51.7

1.5

オーストラリア4.04.04.14.13.83.83.53.33.8

3.8

スウェーデン1.61.71.91.71.71.91.71.71.7

1.8

-•アメリカ映画協会(Motion Picture Association of America, MPAA)は、観客数について、アメリカとカナダをあわせた数値を公表している。

諸外国との比較[観客数](2007–2016)

諸外国との比較[年間鑑賞本数](2007–2016)

�g. 21–1

�g. 21-2

単位:千人

映画館での上映Chapter I

4

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Chapter I032 Film Exhibition Yearbook | 2017 Chapter I 033映画上映活動年鑑|2017 映画館での上映 4 | 諸外国との比較

公開本数

いずれの国も公開本数は増えている。日本と韓国は公開本数が1000本

を越えており、特に韓国は2016年の公開本数が1520本と、この5年で

2.4倍と異常なほど増加しており(2012年631本→2016年1,520本)、その80%を

外国映画が占めている。

自国映画のシェアが50%を越えているのはフランスと日本だけである(フラ

ンス51%、日本53%)。日本では、1980年代末から2000年代初めにかけて

外国映画の公開本数が日本映画を大きく上回ることが続いたが、2008年

以降は日本映画の公開本数が外国映画を上回り、一時は観客が「内向き

になりすぎている」のではないかと懸念されたが、この数年、外国映画の公

開本数も増加し、2017年は邦洋の割合は、公開本数では5:5、興行収

入でも55:45と、他国に比べて非常にバランスの取れた状態となっている。

→ �g. 24

シネマ・コンプレックスの割合

全スクリーンに占めるシネコンの割合をみると、5ヶ国とも、2000年代半ばを

過ぎてもシネコンは増え続けている。最もシネコンの割合が高いのは韓国

で、全2,575スクリーン中2,428スクリーン、94.3%がシネコン、シネコン以

外のスクリーンはわずか147スクリーンとなっている。しかし、シネコン以外の

スクリーンは2014年の117スクリーンから30スクリーン増加しており、ここ数

年はシネコン以外のスクリーンも増えていることがわかる。日本はシネコン

の割合は87.7%と韓国を下回っているものの、シネコン以外のスクリーン数

は10年間で832スクリーンから427スクリーンに半減している。

フランス、イギリスでもシネコンは増加しているが、この10年間のシネコン以

外のスクリーン数の変化をみてみると、フランスでは約200スクリーンの減少

にとどまっており、イギリスでは逆に10スクリーン以上増加している。また、映

画館数をみると、両国ともシネコン以外の映画館がシネコンの館数を上

回っており、特にフランスには1835館、日本の8倍近い映画館が存在して

おり、この数値からも中小の市町村においても身近な場所に映画館が存在

していることがわかる。

→ �g. 25–1, 2

アメリカ

フランス

イギリス

日本

韓国

スクリーン数うちシネコン割合スクリーン数うちシネコン割合スクリーン数うちシネコン割合スクリーン数うちシネコン割合スクリーン数うちシネコン割合

2006 39,66828,527

71.9%5,3001,661

31.3%34402512

73.0%30622230

72.8%18801562

83.1%

2008 40,19429,743

74.0%5,4241,838

33.9%3,6102,689

74.5%3,3592,659

79.2%2,0041776

88.6%

2010 39,54731,202

78.9%5,4781,988

36.3%3,6712,767

75.4%3,4122,774

81.3%2,0031856

92.7%

2012 39,66233,276

83.9%5,5082,082

37.8%3,8172,851

74.7%3,2902,765

84.0%2,0811,967

94.5%

2014 39,95733,824

84.7%5,6472,219

39.3%3,9092,959

75.7%3,3642,911

86.5%2,2812,164

94.9%

2016 40,39234,316

85.0%5,8422,405

41.2%4,1503,209

77.3%3,4723,045

87.7%2,5752,428

94.3%

フランスイギリス日本韓国

シネコン209331343335

シネコン以外1,835

43523682

合計館数2,044

766579417

-シネコンの定義

フランス

8スクリーン以上の劇場

イギリス

シネコン…5スクリーン以上の映画上映専門施設

シネコン以外…一時的に映画を上映している施設も含む

日本

5スクリーン以上の映画上映専門施設

韓国

CGV、ロッテシネマ、メガボックスの系列劇場に7つの劇場を加えた劇場

諸外国との比較[シネマ・コンプレックスの割合スクリーン数](2006–2016)

�g. 25–1

諸外国との比較[シネマ・コンプレックスの割合映画館数](2016)

�g. 25–2

ツの映画館には、毎週月曜日は休館で1日の上映回数は2-3回という映

画館もあり、1日1回上映、あるいは週末のみ上映するという映画館も含まれ

ている。人口規模の小さな町の映画館では上映回数が限られ、観客数も

多くはない。また、週末の金、土、日しか上映しない映画館はボランティアの

スタッフで運営されていたりもする。このように、多様な映画館運営によって、

小さな町でも身近な場所にスクリーン(映画館)を保持することが可能となっ

ている。ドイツだけではなく、フランスやイギリス、スウェーデンでも、映画館

のあり方は日本のように一様ではない。運営主体も運営方法も様 で々あり、

多様なあり方を支えるための上映振興制度が存在している。年々、映画館

空白地域が広がりつつある日本でも、多様なスクリーンのあり方を可能にす

る上映振興策の導入を考える必要があるだろう。

→ �g. 22–1, 2, 3

入場料金・興行収入(2015)–

観客数では下位にある日本が、興行収入では、アメリカ、中国についで第

3位となっている。日本の入場料金は平均1303円と他国に比べると高い。

スウェーデンは1418円、イギリスは1237円となっており、日本だけが突出し

ているわけではないが、それでも他国と比較するとかなり高額である。

前項でも述べている通り、1スクリーン当たりの興行収入も日本は他国に比

べ、かなり高い。韓国、日本を除けば、イギリスとオーストラリアが約5000

万円となっているが、フランス、ドイツ、スウェーデンといったヨーロッパの国々

は約3000万円にとどまっている。これらの国 で々は、産業を含めた映画文

化を統括する組織があり、多様な映画館や上映活動を振興・支援する制

度が確立している。国レベル、地方レベル、市町村レベルで上映に対す

る振興策がこうじられているほか、ヨーロッパでは EU傘下の文化機関

「ヨーロッパ・シネマ」による支援もある。興行収入以外の収入(公的な支援や

他の事業収入等)が占める割合が日本に比べて非常に高い。公的な支援、

振興策は、単に金銭的な支援という以上の意味をもっている。映画館は、

地域との関連を重視したプログラムや若年層の観客開拓、映画教育プロ

グラムなど多様な活動が求められると同時に、そのような活動を行うことが可

能となり、映画館や上映者の地域における文化的な存在感を増すことにも

重要な役割を果たしている。

→ �g. 23

スウェーデン

オーストラリア

フランス

イギリス

日本

韓国

公開本数観客数(千人)

1本あたり入場者数公開本数観客数(千人)

1本あたり入場者数公開本数観客数(千人)

1本あたり入場者数公開本数観客数(千人)

1本あたり入場者数公開本数観客数(千人)

1本あたり入場者数公開本数観客数(千人)

1本あたり入場者数

2012

21917,93781,904

42085,900

204,524614

203,600331,596

647172,500266,615

983155,159157,842

631194,890308,859

2013

24916,58666,610

42182,000

194,774654

193,700296,177

698165,500237,106

1,117155,888139,560

905213,350235,746

2014

24816,28265,653

50578,600

155,644663

209,100315,385

712157,500221,208

1,184161,116136,078

1,095215,060196,402

2015

27317,04562,436

53990,300167,532

653205,400314,548

759171,900226,482

1,136166,630146,681

1,176217,290184,770

2016

30717,75757,840

60991,300

149,918716

213,100297,626

821168,300204,994

1,149180,189156,822

1,520217,020142,776

自国映画

45 | 15%

43 | 7%

364 | 51%

176 | 21%

610 | 53%

302 | 20%

外国映画

262 | 85%

566 | 93%

352 | 49%

645 | 79%

539 | 47%

1,218 | 80%

諸外国との比較[入場料金・興行収入](2015)

�g. 23

諸外国との比較[公開本数](2012–2016)

�g. 24

-『世界主要各国映画諸統計』(「映画年鑑2018」)参照| •ドルで掲載されている興行収入を、1ドル=112.19円(2017年)として計算

アメリカ中国日本イギリスインド韓国フランスドイツオーストラリアメキシコブラジルスウェーデン

平均入場料(円)936634

1,3031,237

86783806

1,0441,145

330456

1,418

興行収入(百万円)1,160,403

794,922217,119212,701177,339170,125163,012145,275103,39494,31877,80424,166

観客数(百万人)1,2401,254

167172

2,07221720213990

28617117

スクリーン数40,17431,6273,4374,115

11,1792,4245,7414,6922,0805,9773,022

802

1スクリーン当たり興行収入(万円)2,8882,5136,3175,1691,5867,0182,8393,0964,9711,5782,5753,013


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