e book manifesto
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A mission statement of the EBook 2.0 Forum, a website and a social marketing project to promote the use of dynamic, interactive, and intelligent eBook.TRANSCRIPT
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オブジェクトテクノロジー研究所 編集兼発行人:鎌田 博樹
©2009-2010 Object Technology Institute, Inc.
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EBook 2.0 Manifesto February 2010
出版の再定義と再構築を目ざして― EBook 2.0 Forum が目ざすもの
オブジェクトテクノロジー研究所 鎌田博樹
出版はデジタルへの歴史的移行の最終段階に入った
文字組版にデジタル技術が導入された 1980 年代以来、出版は長い変動期に入ってい
ます。変化はまず制作現場で始まり、編集・出版・配布や広告にまで広がり、最終的
に読者が「読む」形をも変えるまでに至りました。すでにWebの普及によって対話型
マルチメディアが一般化しています。あらゆるコンテンツ出版のバリュープロセスが
デジタルなものとして完結したことの意義は非常に大きいものがあります。
ブックリーダやタブレット、スマートフォンなど、読むためのデバイスが安価に提供
され、Web サービスが多様なコンテンツやアプリケーション、ネットワーキングを、
ユビキタスに利用できるようになった 21 世紀は、紙を媒体とする出版がなお一定の
役割を果たすとしても、制作・流通・利用を含む出版のベースが、10年を経ずして完
全にデジタルに移行することは、もはや誰も否定し得なくなっています。
出版の再定義・プロセスの再構築が問われている
この移行は、<読者にとって意味のある情報を、利用しやすい形で提供する>方向に
導くものであり、無数のビジネスや技術革新の機会を提供する一方で、出版・印刷・
書店・放送・映像・ゲーム・広告など、従来のメディアのエコシステムに関係してい
る専門家には大きな影響を与えます。この(部分的にしか実現していない)プラスと(現
実の脅威としての)マイナスをどのように扱うかによって、移行の様相は異なったも
のとなるでしょう。
かつて常識であったことが通用せず、また苦心の末に修得した知識や技術の多くが無
用になる、あるいは使い方が分からなくなる。このような歴史的に困難な移行を成功
させるために最も必要なものは、協力と相互信頼を可能とするコミュニケーション
(情報共有と協調的創造)の環境です。出版の意味を再確認しながら、ユーザーにとっ
ての価値あるコンテンツとバリュープロセスを再構築していく必要があります。
E-Book(デジタルメディア)ビジネスは最初からグローバル
電子出版や電子書籍への取組みは、20年ほど前から日本で始まり、DTPやマルチメデ
ィア、ブック端末など何度かのブームがありました。しかし、ハードメーカーと印刷
会社が中心で、コンテンツと流通を含む出版じたいのデジタル化は、遅々として進み
ませんでした。では現在進行中のデジタル化は何が違うのでしょうか。
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EBook 2.0 Manifesto February 2010
現在の E-Book ビジネスは、最初から国際的広がりを持っています。Web 上の電子書
店も E-Readerも、最初からグローバリゼーション(多言語)を前提として開発されて
おり、いずれも容易にローカリゼーションが可能です。ある意味では日本のメーカー
や通信キャリア、サービスプロバイダーさえ介すことなく、世界中どこからでも日本
向けのコンテンツを発信することができる、つまり誰でも参加できるというのがこの
ビジネスの特徴です。それだけに、ゲームを例外としてほとんど日本市場の中で完結
していた(新聞・放送・広告等を含む)メディアビジネスは、グローバルな視野を持っ
て能動的に行動しない限り、その波に巻き込まれてしまうことは明らかです。
E-Book2.0 とは:インテリジェントでダイナミックなブック型コンテンツ
伝統的な出版は、文字や画像をページにレイアウトし、印刷・製本して書店を通じて
販売することでした。そして初期の(つまり現在の)E-Bookは、ページをそのまま電
子化しただけの単純なものです。しかし、デジタル時代の「本」の基本は、対話型の
ハイパーメディア・ドキュメントであり、文字や動画あるいはネット上のソフトウェ
アサービスやコンテンツとのライブリンクまで提供できます。著者や出版社と読者は
ソーシャルネットワーキングでコミュニケーションを維持することができ、複数のコ
ンテンツをダイナミックに再構成することもできます。そうした機能はまだ未開拓で
すが、読書体験を変え、知識のコミュニケーションとしての出版の付加価値を大きく
高めることが期待されています。
デジタルになることで、本は冊子体の紙という物理的実体を失いますが、その代わり
UX (User Experience)を高めるためのあらゆる付加価値をデザインし、追加していくこ
とができます。しかしそのためには、伝統的な編集・制作技法に代わる(あるいは拡
張する)表現技術 (digital storytelling)を開発・普及していくことが必要です。パイオ
ニアによる試行を経て、そうした環境は新たなプラットフォームの中に追加されてい
き、次世代の著者や編集者、E-Bookデザイナー、あるいは広告プランナーの道具箱と
して利用されていくでしょう。2010 年からの 10年は決定的な意味を持つと考えられ
ます。世界で起きていることが、すぐに日本のメディアビジネスに大きな機会と影響
を与えるようになるのです。
出版の再定義を通じた再構築
フルデジタル化によって、紙と印刷を中心に成立していた過去数世紀の出版のあり方
は大きく変わることは間違いありません。重要なことは、
1) 人類の知的資産としての従来のコンテンツを継承・発展させ
2) 知識情報の付加価値を創造的に拡大し
3) ユーザーニーズに対して意味を持つ形で提供する
という本質的な役割を、情報がメディアの物理的制約から自由になったデジタル時代
においてどのように実現するかという課題に答えることだと思われます。
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EBook 2.0 Manifesto February 2010
新しい出版には、ほとんどあらゆる人が、著者、読者、ユーザー企業、メディア企業、
メーカーなど様々な立場で関わることになるでしょう。ユーザーは知識情報のコミュ
ニケーションに関わる人すべてと言えます。市場として少なくとも次のようなものが
考えられています。
① メディア産業(書籍、ニュース、芸術・娯楽、広告、ゲーム)
② ビジネスコミュニケーション
③ テクニカルコミュニケーション
④ 教育・学術研究
⑤ ソーシャルコミュニケーション
出版の再構築を支援する国際的プラットフォーム:EBook2.0 Forum
EBook2.0 Forumは、content publishing としての出版の再構築を支援する国際的なプラ
ットフォームを提供するプロジェクトとして構想されました。それは、書籍や雑誌だ
けでなく、新聞、放送や映画、ゲーム、広告、印刷、ITを含めた、広義の出版に様々
な立場で関わる人々が、考え、対話し、行動するための情報とインテリジェンスを、
交流の場とともにご提供することを目ざしております。
EBook2.0 Forumは、まず 2009年 11月<デジタルメディアコミュニティのための技術
/市場動向分析とニュース>を提供するポータルサイトを立ち上げ、公的な活動を開
始しました。開始 2カ月余りで 1日 1,000あまりのページビューを獲得し、すでに多
くのブログ、Twitterなどで高い評価をいただいています。このサイトを土台として固
めるとともに、順次以下のような事業に取り組んでいきたいと考えております。
1) 情報サービス:技術、サービス、市場に関するニュースと分析記事の提供のほ
か、Web上の関連情報へのリンク、意味的検索・分析ツール
2) シンクタンク:コンテンツ、技術、製品、サービス、市場に関する調査とイン
テリジェンス。企業/サービス/技術/製品ディレクトリの提供
3) セミナー:国際的なエキスパートを招聘し、プロフェッショナルのためのセミ
ナーやカンファレンスを開催
4) トレーニング:E-Bookの編集・表現技術を確立・普及させるためのトレーニン
グ、eラーニングの提供
5) ソーシャルネットワーキング:デジタルメディアの分野、技術領域を超えたプロフ
ェッショナルのディレクトリと SNS
6) コミュニティ:メディアプロフェッショナルによる国際的なオンライン/オフ
ライン・フォーラム
7) インキュベーション:デジタルパブリッシングに関係するベンチャービジネスの
起業支援、マッチング等
を基本的な機能として提供することを目ざしています。
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EBook 2.0 Manifesto February 2010
新しいエコシステムの形成:EBook2.0 Forumに参加・協力していただきたい方々
従来の出版は、著者、クリエイターとメディアビジネス、印刷会社、ポストプロダク
ション、広告代理店、取次会社、書店などをキープレイヤーとして、印刷技術ベンダ
ー、電子機器ベンダー、ITベンダーがサポートし、そしてユーザーとしての読者、一
般企業、教育機関、官公庁といった、比較的安定した構造が支えていました。デジタ
ル化は、そうした構造を揺さぶり、再編を不可避としています。しかし、全体として、
出版産業が社会にもたらす価値はますます大きくなるのですから、デジタル化によっ
て成長機会は大きくなるということだけは確実です。
E-Bookの事業化においては、ビジネスとスタッフの大幅なリニューアルが不可欠とな
ります。そのままでは無用になるサービスやシステム、スキルがあり、また新たに必
要となるものがあります。Webビジネスとも絡みつつ、多くの新規参入企業、ベンチ
ャー企業が登場するでしょう。グローバルな視野を持った国際的なパートナーシップ
が大きな意味を持つことは言うまでもありません。
EBook2.0 Forumは、今後 10年間の移行プロセス(出版の再定義と再構築)を支援する
ためのプラットフォームとして構想されました。メディアプロフェッショナル、ITプ
ロフェッショナル、そしてビジネスプランナーが、コンテンツ、技術、製品、サービ
ス、人やファンドなどに関する情報・知識を交換することで、この歴史的な転換に寄
与することを願っております。多くの方々のご協力、ご利用を期待しております。
2010年 2月
E-Book2.0 Forumプロジェクト