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センシング技術(総論) (2003.09.10).doc

センシング技術(総論)

環境管理は多種多様な対象に関わる科学的・工学的な行為である。環境管理の中では、対象の正しい理解にもとづいて様々な物理量や情報量をセンシングし、合理的な行為を行うことが不可欠である。

本講座では、我々の周辺を囲み生活住環境のなかで日常的に使用されている物理量を取り上る。そして、その検出と計測の基本原理を解説する。 また、環境管理の中での応用と制御の手法も解説する(教示する)。

本講座の分冊

分冊1電気量の計測

分冊2温度の計測

分冊3音の計測

分冊4圧力の計測

分冊5光の計測

分冊6計測と制御

目次

1. 始めに

2. 様々なセンサーの基本と原理

2.1 センサーの各種検出対象とセンス原理,応用

2.2 基本センサーの物理法則と現象・効果一覧

2.3 実際のセンサーの特性

3. センシング:対象(物理量)+検出+変換(信号)

3.1 電気量

3.2 温度

3.3 音

3.4 圧力

3.5 光

4. 計測(測定):センシング+データ処理+説明(理解と検証)

4.1 計測に対する一般的注意事項

4.2 計測対象の種類

4.3 計測方法の種類

4.4 不確かさ

4.5 グラフ

(1) グラフの意味

(2) グラフの種類

4.6 単位と数値

(1) 基本的な単位

(2) 組立単位と桁記号

(3) 有効数字

(4) 物理定数

5. 制御:センシング+目標+追従

5.1 身の回りの制御のシステム

5.2 産業用の制御のシステム

5.3 シーケンス制御

5.4 フィードバック制御

5.5 フィードフォワード制御

ワークシート1

1. 始めに

「センサーは、人間の五感に対応する」とよく言われる。しかし、センサーと人間の五感との、本質的な相違点は、検出/計測した量のもつ価値をどのように判断するかにある。即ち、「知恵があるか無いか」が本質的な相違点である。人間は耳で聞いたり、目で見たりしているのではなく、頭で聞いたり、頭で見たりしている。例えば、雑踏の中でも自分の名前が呼ばれるとすぐ判るし、活字の中に、自分の名前があると、そこだけ瞬間にして読みとることが出来る。センサーは単機能であるが、人間の五感は、多機能である。一瞬の内に色々なことをセンシングすることが出来る。例えば、道路を歩く場合、人間は周囲の状況を総合判断して、最も安全で最適な経路を瞬時に判断し選択している。人間には取得した情報を判断する知能、や知恵があるからである。

よくいわれるように「最もよいロボットのお手本は人間である」。同じように、計測システムやセンシングシステムのお手本は 生物の検知器官である。 人間の感覚器官は他の動物に劣るものも多いが, 一般の機械から比べるとバランスの取れたセンサーシステムを持つ。 特に人間においては 頭脳をも その器官に含めて考えると 驚異的に素晴らしいセンシング技術を備えている。 古くから,例えば中国では,眼(がん)耳(じ)鼻(び) 舌(ぜつ)身(しん)意(い)といって 人間の六種の感覚器官を表現する。 この「意」という語彙は 宗教的啓示や推論を意味することが多いが,頭脳は他の5つの感覚器官のハードと異なり,そこから得られた情報を総合的に整理し ,過去の解析結果を合わせて結論を導出するソフトを示し, ここでは論理思考を示す。

 世の中で使用されている物理センサーでは、とても人間では出来ないことを実現しているものがある。磁気センサー、超音波センサーもそうであるが、遠く宇宙の彼方から発せられている信号もセンシングすることができ、さらには人間の体を輪切りにしたと同じ状態で、内部をセンシングすることが出来る。それらのセンシングの精度は、きわめて高い。これは信号のディジタル処理によって実現されている。

 一方、化学センサーを見ると、例えば、臭いのセンシングは満足に出来ていない。このことは「化学センサーが立ちおくれている」ということを意味しているわけではなく、「化学センサーは、センシングしなければならないものが、きわめて複雑であり、一度に複数のものを(例えば分子の種類など)一瞬の内にセンシングしなければならない」ためである。換言すると、物理センサーは「きわめて単純である」が、化学センサーは、「複雑で、人間の五感に、より近く、アナログ的」である。

 アナログ的と言うことは、精度は少々悪くても、一瞬の内に色々な情報量をセンシングすることが出来る特徴がある。人間の五感も精度においては余り信用出来ず、「曖昧さ」があるが、この「曖昧さ」は、「知能や知恵」によると考えられる。

整理すると、センシングするということは、以下の手順を実行することである。

1 何がどうなっているか調べるべき対象に接触もしくは近づく。

2 次に、それから信号を取り出す。

3 要とされる信号を必要とされる形で送る。

4 それを失わないように、蓄え、記録する。

5 記録を整理し、最後に何が言えるか判別し、私たちに伝える。

計測(測定):センシング+データ処理+説明(理解と検証)

計測とは、事物を量的にとらえるための方法・手段を選定し、実施し、その結果を用いて事物を理解する行為である。 直接測定では、測定量と関数関係にある他の量の測定によらず、測定量の値を直接求める。間接測定では、測定量と一定の関係にある幾つかの量について測定を行って、それから測定値を導き出す。比較測定では、同種類の量と比較して測定値を導き出す。

計測の行為の中では、測定量の大きさをその基準量と比較し、基準量の何倍であるかを求める。この、基準量を単位という。

制御:センシング+目標+追従

制御とは“対象とするもの(またはシステム)を自分の思うように繰ること”である。

制御では、「センシング+目標+追従」の自立的な繰り返しにより対象を繰ることが、基本的な行動の仕組みとして現れる。例えば、水槽の温度制御の簡単な例では、水槽の温度→温度センサー→温度調節計→ヒータ→水槽の温度と言った一連の操作の連鎖により、温度を一定に保つことができる。

検出→判断→操作と連なる一連の機器の機能(この場合は、温度センサー→温度調節計→ヒータ)を介して、定められた目標値に対し操作対象(温度)を一定に保つように自動的判断し、行動することを“自動制御”または“オートマチックコントロール”と言う。

2. 様々なセンサーの基本と原理

多くのセンサーは, 物理化学現象や効果を組み合わせ, エネルギーや情報の変換器を構成している。

次の表2.1に基本センサーの概略を示す。 また表2.2に基本センサーの物理法則を示す。

2.1 センサーの各種検出対象とセンス原理,応用

表2.1 基本センサーの概略

センサーのセンス原理,応用

検出対象

センス原理

センサー

応用例

長さ・位置 レベル 変位・歪み

(光,超音波)波の干渉 伝播時間 電気抵抗

レーザー干渉計,超音波干渉計,受信器と送信器,直線抵抗,エンコーダ

速度,位置制御や位置決め

速度

周波数変換,起電力変換,熱伝達

エンコーダ,ダイナモ,熱(冷)線

ロボット,気体風速計

力・圧力 トルク

歪み/電気抵抗,歪み/起電力,変位

ストレインゲージ,感圧素子,バネ

荷重計,圧力センサー

動力

摩擦や逆起電力に変換

発電機,動力計

動力計,荷重計

明るさ・色

半導体電子効果,屈折

分光器, CCD, 光Tr,  光Diode,フォトマル,PdS

火炎検知,侵入警報

温度

気液体の膨張,半導体効果,熱放射

熱電対,サーミスタ,抵抗線温度 計,赤外センサー,熱電堆

ヒータ,エアコン

濃度・成分

熱伝導度,粘性計測,化学反応,発光,吸光

TCD, FID, O2メータ,ケミルミ,赤外吸収CO2メータ

ガスクロ

湿度・水分

膨潤性,蒸発熱,赤外線吸収,容量変化,電気伝導度

毛髪,乾湿球,セラミックセンサー

エアコン

流量

速度・運動量に変換,体積測定

電磁流量計,羽根車式,差圧式,容積式,フロートメータ

流量計

形状画像解析

像の再構成,フラクタル解析

TVカメラ, フォトダイオードアレイ

OCR,粒径計測器

濁度・透明度

明度・色彩比較法

硬さ

痕跡法,超音波反射

ビッカース硬度計

比重・密度

比較法,重量法

弾性率

弾性変形法,音速計測

探傷

超音波反射,X線透過,画像処理

特定の専用センサーはなく,他の物理量のセンサーが使用される。

探傷器

火災・煙

赤外線検知,ガス検知

ニオイ・味覚

化学反応 (指標なし)

感触

(指標なし)

角度

(長さとして計測)

ロータリエンコーダ

加速度

(力計測)

加速度計

音波・振動

(圧力や変位として測定)

マイクロフォン

熱量

(温度として測定)

2.2 基本センサーの物理法則と現象・効果一覧

表2.2基本センサーの物理法則

対象

効        果

変 換

現 象

ゼーマン

磁気

磁界によるスペクトル分岐

ハッセンバック

磁気

強磁界によるスペクトル分岐減少

シュタルク

電界

電界によるスペクトル分岐

分光

波長による屈折率の差

ブリルアン

周波数

音による光の周波数シフト

ドップラー

周波数

運動する物体からの光波長シフト

回折

光が直進しない現象

パラメトリック

周波数

周波数

の光分化

ミー散乱

レーリ散乱

光の弾性衝突による励起発光

ラマン散乱

光の非弾性衝突による励起発光

コリジョン・ドラッグ

金属

超音波による起電力発生

ドウハースバンアルフェン

周波数

磁界による超音波吸収係数の変化

音響電気

電圧

音波による起電現象

ドップラー

周波数

運動する物体からの波長シフト

回折

物体の大きさによる周波数シフト

熱音響

音によって熱流の生じる現象

半導体

トンネル

電流

電流

薄い絶縁物を電気のながれる効果

アーリ

半導体現象

pn接合の空乏層の拡大

蓄積

半導体現象

pn接合で電圧逆転時の逆起電力

ツェナー

半導体現象

pn接合で逆電圧での電流増大

電子なだれ

半導体現象

pn接合で逆電圧での電流降伏

自己バイアス遮断

半導体現象

Trでのエミッタ周辺の電流集中

電界

電界現象

電界による蒸着膜限界厚さの低下

ガン

半導体

電流

高電圧によるマイクロ波の発生

圧力

圧力

物性

高圧による半導体物性の変化

ジョセフソン

超電

電流

超電導物質での無電圧時の電流

表皮

周波数

電磁

電気磁気が表皮部分に集中する現象

金属

アズベル・カナー

温度

電磁

極低温での高周波電界によるサイクロトロン共鳴

サイズ

金属

導電率

金属薄膜の厚さによる導電率の急変

ボルタ

物性

電位

異なる金属の接触電位の存在

カルゼッキ・オネスティ

粉体

導電率

金属粉末の導電率異変

磁性

マイスナー

温度

磁気

超電導物質中に磁界が入らない現象

バルクハウゼン

磁気

磁区の変化による音の発生

ファラディー

偏光

磁化物質中を通る光の偏光回転

磁歪(ジュール)

磁気

歪み

強磁性体中に磁界を加えると歪む

逆磁歪(ビラリ)

歪み

磁気

強磁性体を歪ませると磁界が変化

磁気熱量

磁気

常磁性体の磁界による発熱現象

光電

光伝導

抵抗

光による電気抵抗の低下

光電子放出

光電

電子

光による電子放出

デンバー

起電力

光による固体内起電力発生

ボッケルス

電界のよる屈折率変化

光電磁

光と磁界による起電力発生

ベックレル

光電

起電力

液体中の物質の光による起電力の発生

ケル(液晶)

屈折

電場磁場による複屈折現象

グッデン・ポール

光電

電界のよる光の増幅・減衰

ロゼフ

電界

半導体の接触点が発光する現象

ジュールトムソン

圧力

温度

断熱の圧力変化による温度変化

ゼーベック

温度

起電力

異種金属の温度による起電力発生

ペルチェ

電流

異種金属の電流による熱吸収発生

トムソン

温度

異種金属の温度差による熱吸収発生

パイロ電気

起電力

加熱した誘電固体の起電力発生

熱イオン

電子

高温の気体がイオン化する

グレビッチ

温度

電流

温度勾配による電流

磁電

磁気抵抗

電磁

抵抗

磁気による電気抵抗の増加現象

ホール

電磁

電位

磁気による電位差の発生現象

プレーナ・ホール

電磁

電位

磁気による直交電位差の発生現象

ズール

電磁

周波数

電界と磁界のある場合の正孔拡散異常

エッチングハウゼン

電磁

温度

電流のある場で磁界の作る温度勾配

磁光

ファラデー

磁界

偏光

磁場による光の偏光変化

振動性磁気光

磁界

周波数

磁界による光吸収係数の波長振動現象

コットン・ムートン

磁界

屈折

磁界のよる屈折率変化

熱磁

ネルンスト

熱磁

電位

熱流が電位差を作る現象

リーギ・ルデュック

磁界

温度

磁場が温度差を作る現象

磁歪

ピラリ

磁界

磁歪

強磁性体に磁場を加えると歪を生じる

ジュール

磁界

強磁性体に応力を加えると磁場を生じ

ウイーデマン

磁界

強磁性体に直交磁場を加えるとねじれ

強磁界によるヤング率の変化

圧電

圧電(ピエゾ)

圧力

電圧

強誘電体に力を加えると電圧を生じる

逆圧電(逆ピエゾ)

電圧

強誘電体に電圧を加えると歪を生じる

圧抵抗

圧力

抵抗

強誘電体に力を加えると抵抗変化する

歪抵抗

抵抗

材料に歪みを加えると抵抗変化する

電子放出

エジソン

真空中高温金属に電流の流れる現象

熱電子

電子

金属板を加熱による電子放出

ショット

雑音

熱電子の陽極への到達量の変動現象

フリッカ

雑音

熱電子の陰極からの放出量変動

ジュロット

音電

雑音

熱イオン管での陰極電子放出量変動

クラマー

温度

電子

低温金属からの電子放出

ショットキー

物性

電子

電界による表面仕事関数の低下

空間電荷

電界

電荷

放電中でのイオン停滞現象

誘電

中骨

物性

周波数

誘電体の高周波電界の中心集中現象

遅滞

電磁

界面近傍で分散力が急変する現象

ジョシー

誘電率

ガスコンデンサの光による誘電率変化

Johnson-Rahbeck

半導

薄半導体の電界による吸着力発生

放電

ベニング

気体

2種類の気体のよる放電電圧低下

マルター

物性

電子

金属酸化膜による効果の増大

周辺

放電

絶縁破壊電圧の周辺物質の影響

熱・磁気ピンチ

放電

形状

放電径が磁気や熱で絞られる

Ramsauer-Townsend

電子

電子の平均自由行程が分子以下になる

放射能

アウガー

X線

電子

X線による気体のイオン化

コンプトン

X線

X線

X線の非弾性衝突による長波長化

メスバウアー

原子核による線の放出吸収

化学

コットン

抵抗

屈折

光学活性物質の偏光による屈折率差

中性塩

イオン

化学

中性塩による反応速度の影響

飽和

電磁

磁気

高分子の核磁気共鳴吸収の飽和現象

直流

電気化学

この他にも, 力学での効果や現象である``弾性効果'',``低温効果'',``結晶効果'', 流体力学で用いられるコアンダ効果,カルマン渦現象などの効果や現象など 非常に多くの効果や現象が知られている。

2.3 実際のセンサーの特性

実際のセンサーには、計測対象となる物理・化学量に応じて、次のような特性がある。

· 計測可能の範囲(ダイナミックレンジ)

· 検出原理

· 繰り返し計測での精度

· 線形性

· ヒステリシス(履歴特性による非単価系)

· 出力信号の種類(電流か電圧か)と強度

· 計測出力の温度や電磁気による影響

センサーはそれぞれの使用法や計測の程度に合わせて, 上記の特性に対する要求度が異なる。

3. センシング:対象(物理量)+検出+変換(信号)

物理量

物理量とは、JIS Z8103-1990 によれば「物理学における一定の理論体系の下で次元が確定し、定められた単位の倍数として表現することが出来る量」をいう。ここで、量とは同じく「同種類のものについて相互に大きい、小さいの比較が出来る、つまり、大きさの性質を持つ事物や事物の状態の属性として抽象された概念」である。長さや重さは量であり数値と単位で表現される。

生物的なビタミンの効力もA・D及びEについては国際単位(IU)がきめられていて量であるが物理量ではない。また、色のような心理物理量、硬さ、表面粗さ、光沢などのような工業量、その他の種類の量があるが、それは物理量ではない。

密度は単位体積あたりの質量、速さは時間単位あたりの変位量である。即ち、密度は体積と質量、速さは長さと時間を用いて定義できる量である。例;速さ=長さ÷時間。このように、物理量は、互いに全てが独立でなく物理学の法則又は定義によって相互に関係付けられる。したがって、週数の互いに独立した物理量を選ぶと、他の量はそれらの物理量を選ぶと、他の量はそれらの量から定義によって表現できる。 

検出

検出とは測定量を信号として取り出すことと定義される。

測定量をそれと同じ種類の基準として用いる量と直接比較して測定することは、長さや時間などの基本量の場合を除いてはめったにない。一般的には、測定量とそれに正確に対応する量を測定し、それから逆に測定値を推知するのが普通である。たとえば、重量とばねの伸びは、弾性限界内で比例関係が成立する。ばねの伸びを測定することにより重量は推知できる。このことを、重量を検出する、または重量を変位量に変換して取り出すという。

変換(信号)

検出器とは変換機のうち、量を計器又は伝送器に伝える信号に変換する器具また物質をいう。

センサー(検出端);対象の状態に関する測定量を、信号に変換する系の最初の要素)

3.1 電気量

電気量とは何か

   

    

    

    

    

電気を通しやすい物質を導体で、通しにくい物質を絶縁体といいます。導体の中に電子(自由電子です)が入ってくると、その物質の電子を押しのけるのです。すると押しのけられた電子は別の電子を押しのける。物質のなかでこの現象(電子の入れ替わり)が連鎖的に次々に起きることで『電子の流れ』になる。導体とはこの電子が軌道を離れやすい物質(自由電子になりやすい電子が多い)で、絶縁体とはこの電子が他の電子を押しのけにくい、いいかえれば原子核と電子の結びつきが強力な物質(自由電子になりにくい)を指すのです。

電流とは電子の流れである。正確には電流の大きさとは、1秒あたりの電荷(電子)の移動量を指す。具体的には1秒間に1クーロンの電荷が移動する時、1A(アンペア)の電流が流れると定義する。

電子1個の電荷は1.6×10-19Q(クーロン)。

自由電子を作り出す力は、外部から与えられるある種のエネルギーに起因するが、結果として 発生した力は電子の移動すなわち電流となる。この電流を流す力を電圧という。

電圧と電流は、しばしば水に例えられて、水圧と水流に比較される。水の場合は 引力の影響によって高い位置(水位が高い)にある水が低い位置(水位が低い)にある水に 流れ落ちようとする。

同じように電気の場合も高い電位の場所から低い電位の場所へ電流が流れる と表現し、2つの場所の電位の差を電位差という。 電圧と電位差は同義語である。

電気の流れは向きが逆とはいえ電子の流れである。電流が生ずるためには電子を吸引する力が必要です。この力を電圧といいます。単位はV(ボルト)です。また、電圧と電流の積(掛算)を電力といいます。単位はW(ワット)です。 

電流と電荷 & 電力

 

電荷(charge)というのはプラスあるいはマイナスの電気を帯びた(帯電という)粒子です.実はこの粒子(particle)が移動することによってエネルギーを伝えることが出来ます.つまり,電荷の移動が電流であり,電流の大きさというのは単位時間当たりに移動する電荷の量ということになります.

単位時間当たりに移動する電荷量をQ[C](クーロン)とすると, I[A]=Q[C/sec]です.

電気の仕事:W[J](ジュール)電圧と仕事をするのに必要とした電荷量の積で定義されます.

W[J]=E[V]・Q[C]

電力:P[W](ワット)単位時間当たりにできる仕事の能力のことです.

P[W]=W[J]/t[sec]

 したがって,先の回路において抵抗R[Ω]に供給される電力Pは,

P[W]=W[J]/t[sec]=E[V]・Q[C]/t[sec]=E[V]・I[A]

のように,電圧と電流の積となります. 

電気量の計測

 日常生活空間で電気は最もポピュラーなエネルギー源として使用されている。電圧、電流、抵抗が三大要素であり、これに電力を加えた量の計測が日常的に行われている。また、ほとんどの物理量は電気信号に変換され計測(表示)されている。地球規模のテーマとなっている温暖化に対する対応策として電気エネルギー消費の削減は大きなテーマとなっており、電気量の計測は日常生活空間でも必要不可欠な要素である。

電圧計;回路の電圧を表示する計器

電流計:回路に流れている電流を表示する計器

 

直流電流・電圧計

積算電力計;消費電力をカウントする計器

消費電力の単位は1時間あたりの消費電力を使い、Wh という

       

電気量計測の対象となる物理量としては、電圧、電流、抵抗、電力などの量が直接的にセンシングされている。一方、熱/流れ/放射線/ひずみなどの物理量を計測したい場合には、物理量を電気信号に変換する最適なセンサーを選択し、そのセンサーからの電気信号をもとに計測が実施されている。すなわち、直接的にセンシングされる物理量より圧倒的に多くの量が電気量に変換されてセンシングされている。

例えば、温度を測定する場合、最も簡単な方法では、アルコールや水銀の熱膨張を利用した温度計を使用し、熱膨張変化と温度を関連づけた目盛りを読み取ることにより温度を知ることが出来る。しかし、温度を元に何らかの量(例えば一定温度に保つヒーターの場合では、温度を一定に保つためのヒーターの出力)を制御したい場合、またはより精密な測定を行うために、抵抗変化や出力電圧の変化を温度変化と関連づけて温度を測定する場合には、センサーの温度変化による物理量を電気信号に変換する。その時、必要な場合にはその信号を増幅して、それをもとに電圧の値を電圧計で読み取ったり、増幅器からのアナログ信号をデジタル量に変換(AD変換)するAD変換器を通して、コンピュータに取り込んで、測定・解析が行われる。

物理量

センサー

電気信号の種類

温度

熱電対

電圧

測温抵抗体

抵抗

サーミスタ

抵抗

湿度

セラミック/半導体

電導度→抵抗

圧力

半導体

抵抗

ひずみ

ストレーンゲージ

抵抗

速度・回転数

ダイナモ

電圧/電流(パルス)

流量

半導体

抵抗

超音波発振素子

電圧(パルス)→時間

感圧素子

電圧

このように、種々の物理量をセンサーにより電気信号に変換して、測定されることが極めて多い。

3.2 温度

温度とは何か

酸素、二酸化炭素、水、フロン、ナトリウム、塩、鉄、アルミニウム、ダイヤモンド、あらゆる物質は、その基本となる物質分子から構成された集合体です。物質分子の集合体であるあらゆる物質は、気相(気体)、液相(液体)、固相(固体)のいずれかの状態で存在します。 物質のこのような存在状態を、物質の系(システム)と呼びます。

私達の科学では、様々な物質の系を客観的に観測するための基本となる幾つかの物理量が考案されています。「温度」という「物理量」は、「物質の系が持つ運動エネルギー」を、誰もが客観的に観測出来るようにするために考案されました。

温度は多くの物理現象にかかわる代表的な物理量です。温度は、日常生活空間だけでなく、産業界でも非常に多くの分野で観測され利用されています。

物質の系と状態変化

物質は「物質の系が持つ運動エネルギー」によって、その状態を変えます。

状態変化…熱したり冷やしたりすると、固体⇔液体⇔気体と、その物質の状態が変わること

※物質そのものは変わらないので、質量は変化しない

固体

↓↑

一定の形と体積をもつ状態

(容器によって形も体積も変わらない)

↓↑

液体

↓↑

一定の体積をもつが形が自由に変わる状態

(容器によって体積は変わらないが形は変わる)

↓↑

気体

一定の形や決まった体積をもたない状態

(容器に合わせて一様に広がり、体積も変わる)

状態変化をもっと小さな世界で見てみます。 状態変化とは、その物質をつくっている粒子(分子または原子)の集まり方や運動状態が変化することです。

固体…分子の結びつきの力が強い

↓熱を得て

液体…分子は振動しながら移動

↓熱を得て

気体…分子は自由に飛びまわる

物理量としての、温度の定義

エネルギーに上限がないように,温度にも上限はない。また、エネルギーと同様に,温度は下限をもつ。 温度が低くなるにつれ,物質分子の運動は次第に緩慢になり,最終的に物質分子のは静止し(運動エネルギーがゼロ),最も安定な配置に落ち着く。最低温度 Kは絶対零度とよばれ,運動エネルギーがゼロの、絶対的な温度尺度の原点である。

絶対温度の尺度は,特定の物質に則してではなく,エネルギーとの関係において決まる.

エネルギーの単位[J]と絶対温度の単位[K]とを換算する因子が ボルツマン定数である.

理想気体のボルツマン定数は、

(気体定数、アボガドロ数)である。

ボルツマン定数を用いると,「物質の系が持つ運動エネルギー」は、「温度」という「物理量」で客観的に観測出来るようになる。

つまり,

となる。

温度の単位

温度は、暖かい寒い(熱い冷たい)といった人間の主観的感覚が基礎となっているが、それを客観的な尺度とするために数量化するところから科学は始まる。「温度」とは、分子の運動エネルギーの大きさを示すものです。現在「温度単位」として使用されているものには以下のようなものがあります。

a. ファーレンファイト(Fahrenheit,Gabriel Daniel) ドイツの実験科学者。温度計を研究し、種々の液体と沸点とが大気圧によって変化することを調べました。1714年アルコール温度計に変わって、初めて水銀温度計を作ったり、華氏目盛りを導入しました。温度単位は「」。また「華氏」とも書きますが、これはファーレンファイトの中国名「華倫海」に由来します。現在は、アメリカやイギリスで使用されています。現在使われている温度目盛りのファーレンハイト(F, 華氏)は、1724年当時得られた最低温度を0° Fとし、人間の体温を96°Fとして、その間を96等分したものである。

b. セルシウス(Celsius,Anders)スウェーデンの実験物理学者。1742年に水の氷点と沸点の間を100℃に分けることを提案しました。温度単位は「℃」。また「摂氏」とも書きますが、これはセルシウスの中国名「摂爾修」に由来します。セルシウス(t, 摂氏)温度は、1742年に水の凝固点を0℃、沸点を100℃として決められた。いずれも身近なものを数量化したところが注目される。このように客観的な実験データが基礎となり自然科学の研究が発展して行ったのである。

c. 絶対温度アイルランドの物理学者。ケルビン卿(Kelvin of Largs)が、1848年に温度計の物質の特性に依存しない温度目盛りを理論的に定義しました。温度単位は「K」。ケルビン温度ともいい、熱力学の法則に基づいています。絶対温度は物理現象を式で表す際に大変有効です。

3つの温度目盛り間の関係は、t=(5/9)F - 32, T=t + 273.15 で表される。

温度センサーの種類

温度は多くの物理現象にかかわる代表的な物理量です。温度は、日常生活空間だけでなく、産業界でも非常に多くの分野で観測され利用されています。

例えば、人間の機能は非常に狭い体温の範囲で維持されている。温度は生命維持にとってきわめて重要な情報である。

また、生活空間でも、炊飯器、冷蔵庫、エアコン、電子レンジなど多くの家庭電化製品を見ても温度センサーが内蔵され、温度管理を行う上で温度センサーはその存在を忘れて生活しており、温度センサーは空気のような存在になっている。

さらに、産業界においても、物質を反応させたり加工するとき、多くの物性値の温度依存性を利用して行われ、種々のものが生産されている。そのために、温度の管理、制御に目的の応じた温度センサーが多数使用されている。温度センサーはセンサーの中でも最も古いものです。家電製品の温度制御や化学工場での温度計測だけでなく、水位・湿度・流速・圧力などの計測制御にも用いられています。

温度センサーは、下記に示す通り一般に接触式と非接触式に分けられます。

接触式は、直接物体に接触して測定する方式で、センサーの構成が簡単で広く用いられています。主な代表例としては、白金測温抵抗体・サーミスタ・熱電対があります。非接触式は、物体から放射される赤外線を測定し、その赤外線の量から物体の温度を測定する方式で、センサーの構成は複雑です。主な代表例として、サーモパイルなどがあります。

温度センサーの種類

温度を測る時センサーと計測対象を物理的に接触させ、両方の温度が同じになっている必要がある。接触型温度センサーで最も普及しているのが、液体や気体の熱膨張を利用するガラス温度計やバイメタル式温度計である。その次が熱起電力現象を利用する熱電対である。特徴として、価格が安く高温で利用でき、精度がよい。温度がそれほど高くなく、精度が要求される場合は、電気抵抗の変化を利用する測温抵抗体センサーが使用される。サーミスタ温度センサーは形が小さく感度が高く、価格も安い。

高速で異動する物体や危険な場所などでは、温度センサーを接触させること自体が危険である。これらの場所では非接触で計測する必要がある。放射温度計が代表例である。

3.3 音

私達が音と呼ぶものは空気の振動である。あらゆる物体は擦ったり、叩いたりすれば音源となる。音源の振動が空気の振動となり、その振動を耳が受け取ったとき、音として聞くことができる。また、近年、距離の計測、速度の計測、生体の診断、非破壊検査、ソナー(魚群探知など)、音は通信手段としてだけでなく、センシング・計測の手段として使用されている。

音は大気圧の微少な圧力変化であるところから物理量を音圧といい、単位はパスカル(Pa)を用いる。ところが人間の聞くことのできる音圧は20μPaから200Paと1000万倍にもなり数字が大きくて不便なため、2つの量の比を表わす表示方法であるデシベル(dB)を用い、通常音圧レベルになおしてdBで表わす。音の測定で一番多いのは、音の大きさに関する測定である。騒音など、測定量の多くは絶対値によって商取引や法的な制裁などに直接的に影響するからである。

私達の周囲には種々雑多な音が取り込まれているが、これらの音すべてに反応することは不可能で、その中から各自が主観的に判断し、取り出して聴いている。その人に重要でない音は、重要な音に対し妨害的な働きをすることも多く、これが“無い方が良い音と判断され騒音と呼ばれる。

騒音は音自身の物理的属性によるよりも、聞く人の受け取り方にあり、一概には言えないが、大きすぎる音、不快な音質の音、注意をその方に向ける音等が一般的に騒音と判断される。音とは、空気の粗密によって伝搬する波動である。

騒音計は物理的意味あるいは感覚的意味において、音が大きいか小さいかを判定し、数値化する測定器である。ここで感覚的意味の音の大小は、音を聞く人の判断になるが、これでは種々不都合が生じるので、一般に大きな音は騒音と考え、物理量(音圧)に人の耳の感度を補正した値を騒音レベルといい、dBで表わす。

  

騒音計         

3.4 圧力

  

スポンジに色々な物体をのせてみる。するとへこみ方は面を押す力が大きいほど、押す面積が小さいほど押すはたらきは大きいことがわかる。よって面を押すはたらきは押す力に比例し、押す面積に反比例していることになる。

圧力とは物体と物体とがふれ合っている面(接触面)で、垂直に互いに押し合っているような力のことである。単位はg重/cm2やkg重/cm2が用いられる。

<国際単位系ではパスカル(Pa)が用いられる。1Pa=1N/m2>

          面を垂直に押す力[g重]圧力[g重/cm2]= ―――――――――――――          力を受ける面積[cm2]

・固体での圧力の伝わる向き木片を押すと、スポンジは押された向きに圧力を受ける。さらに木片を鉛直方向に押すとスポンジはさらにへこむが、木片の側面に手を触れても圧力は感じられない。圧力の伝わる向きは圧力を加える物体が固体ならば、加えた力と同じ向きに伝わると言える。

気体や液体中での圧力の伝わり方

気体中での圧力の伝わり方と液体中での圧力の伝わり方はほぼ同じである。(目で確認できる液体での例)たくさんの小さな穴を開けたボールに水を入れ手でボールを握ってみると水は穴から飛び出す。飛び出す水の向きは力を加えた向きだけではなく、すべての穴から出る。

液体中での圧力の伝わる向き

水槽に水を入れ静止させその中に平らな板を置くと圧力は板に対していつも垂直な向きにはたらく。水の一部に加えられた圧力はどの部分にも同じ強さで伝わる。また圧力の伝わる向きは垂直にはたらく。

圧力センサー

封入液を介して伝達された圧力により検出ダイアフラムに歪が発生します。この歪をダイアフラム上に設けた歪ゲージによって検出し圧力変化に比例した電気信号に変換して出力します。

3.5 光

物体は光を受け、吸収あるいは反射していますが(それ自体が放射する場合もあります)、反射する光はそれぞれの物体によって異なります。人間の目で「ものを見る」というのは、こうした物体からの光の反射の差をとらえ、色の違いとして識別していることになります。光は波の一種として知られていますが、人間の目でとらえられる光は、振動する際の波の大きさ(波長)が0.4~0.7μm (1μmは100万分の1m)にある可視光線です。

波長が0.4~0.7μm以外の場合、それは人間の目ではとらえることのできない紫外線やマイクロ波等です。可視光線を含め、これらを総称して「電磁波」と呼びます。電磁波は、波長の短い方から順に、γ線、エックス線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、などと呼ばれています。赤外線より波長の長い電磁波を電波と呼びます。

虹の七色は太陽光線が空中の水滴で屈折して反対の方向に出て行くとき,色によって角度を変えることから起こる現象ですが,われわれの目は赤から紫までの波長しか感じないので,この世は七色で彩 られていると思っています.

光の基本的な性質

光の本体は電磁波で,電子の激しい振動があるとそのエネルギーが空間の歪となって波状に広がり進んで行く現象です(図 1.1).

一秒間の振動数νが大きいほど波の保有するエネルギーも大きくなりますが,波の進行速度は一定なので,隣どうしの波の間隔すなわち波長λが短くなります.従って波長が短いほど光のエネルギーは大きく,波長が長いほどエネルギーは小さくなりま す(図1.2).

いろいろな波長が混ざり合った光の場合,横軸に波長を,縦軸に波長ごとの光の量を並べた図形をスペクトルと呼びますが,波長ごとの光の量は違うのが普通で,このとき図形は山や谷を持った複雑な曲線を描きます(図1.3).

なお物理学では電磁波は電子の振動だけでなく,一般的に荷電粒子の高速振動から発する放射エネルギーと定義していますが,われわれが普通扱うのは電子の振動によるものです. 

具体的には原子や分子が相互に激しく衝突したり,他から高エネルギーの電子や電磁波hνが飛び込んできたりして,それらの軌道電子が安定状態(基底状態)から高いエネルギーをもつ軌道に押し上げられ(励起状態),次の瞬間元の安定軌道に落ちてくるとき,軌道間のエネルギー差を光として空間に放出するものをいいます(図1.4).

このエネルギー差は光として放出する以外,熱の形で失われるものもあ ります(理論的な電子軌道論ではこれらを総括して軌道間のエネルギー遷移と呼んでいます).太陽表面は約6000度の水素ガスに覆われていますが,この温度で水素分子は相互に激しく衝突し,そのときに発する光を太陽の恵みとしてわれわれは受け取ってきました.

人間の目に見える光の範囲は赤から紫までのいわゆる可視光線ですが,多少個人差があるようで,特定の色が欠けて見える人もあります.昆虫は人間の可視光線より波長の短い紫外線がよく見えるらしく,紫外線ランプで呼び寄せて電撃を加える誘蛾灯を作っています.爬虫類は逆に波長の長い赤外線を感じるセンサーを持っていて,動物の体温から発する赤外線をめがけて襲いかかります.

可視光線というのは人間が自分の感覚で勝手に決めた波長範囲で,昆虫や爬虫類など他の生物は可視光線に違う波長範囲を主張するに違いありません.可視光線を中心として電磁波の広がりを示すと図1.5のようになりますが,全体から見た可視光線の範囲はほんの狭い領域であることが分かります.

光の計測

光の計測が主として目の感覚で行われていた時代は,可視光線の範囲の現象 しか取り上げられませんでしたが,少し波長の短い紫外線や長い赤外線で測定すれば今まで見えなかった現象を知ることができます.

砂糖と塩はどちらも白い粉末で,水に溶かしても無色で両者の区別がつきませんが,糖類は紫外線をよく吸収するので,昆虫などは独特の色として蜜を集めているのでしょう.昆虫に習って人間は紫外線に感じるセンサーを作って観察することを覚えました.

 光電管というものが20世紀の 始めに発明されて,光を電流として取り出すことが出来るようになりましたが,これで人間はそれまで気が付かなかった自然現象を理解するようになりました. 例えば日光浴で日焼けするのは人間に見える光のせいではなく,もっと短波長の紫外線が原因です.

光電管はかなり古い歴史を持っていますが,原理的には図1.6のように真空ガラス管の石英窓から光を入射させ,セシウム-アンチモン合金を塗った金属板に当てます.セシウムはアルカリ金属で,原子軌道の一番外側に孤立した一個の電子を持っていますが,電子軌道の安定にはあまり寄与していないので,光のような外部エネルギーが加わると簡単に原子から飛び出します.金属板を陰極とし,その前に陽極を配置すると,飛び出した電子は陽極に流れ込み外部の電気回路に電流が流れます.負荷抵抗から光の量に応じた出力を得ることができます.

光の応用(物質の特定やその存在量の特定)

どのような波長をどのくらい吸収するかは物質固有の特質です.これを測定すると物質の特定や存在量を知ることができます.

  可視光線より波長の長い赤外線も重要な情報源です.ストーブや焚き火の周囲にいると暖かいのは主として赤外線のせいですが,もう少し詳しくいうと赤外線を 人間の皮膚が吸収して原子や分子間の振動を強め,これが熱エネルギーになるからです.ここでも生体を構成する有機化合物が赤外線を吸収するという原理が働 いています.

固体や液体物質だけでなく,気体の赤外線吸収も近年よく利用されます.都市部の二酸化炭素や自動車排ガスの汚染度は赤外吸収計が街頭 で終日データを表示しています.

地表の物質は太陽光等の電磁波を反射・放射するとき、その種類や状態に応じた固有の特性を持っています。このような光(電磁波)の波長毎の反射・放射特性を表したものを分光反射率または反射スペクトルといいます。

植物では種類や活性状態の違いなどによりその反射特性も変化するため、その違いから農作物や樹木の種類や状態を判断することが可能です(図1.6)。

 

グラフの横軸は電磁波の波長を、縦軸は反射・放射の強度を示す。

SPOT, LANDSAT等は観測衛星の名称。HRV, TM等はその衛星に搭載されている観測センサの名称。

1,2 ・・・ 等は各センサが観測する各バンドの波長域。

図1.6 光(電磁波)の波長毎の反射・放射特性

人間の能力を超えた自然界の観察が様々な光センサーの力で可能となりました.光センサーは環境計測にとっては強力な味方で,大切に扱わなければなりませんが,それだけにどういう機構で作動し,どこまで使えるのかを知っておく必要もあると思います.

光の応用(物体の形や位置の測定)

光は、様々な物体の形や位置を測定する手段として、身の回りや社会生活の中に組み込まれています。

光をその様な手段として実現した装置は、フォトセンサーと呼ばれています。フォトセンサーとは、光によって物の有無・大きさ・長さ・などの物理量を検知する素子や装置のことをいいます。

フォトセンサーが使われているものでよく目にするものに、自動ドアがあります。また夕方暗くなってくると、いつの間にか点灯している街路灯、これには光を感知してスイッチを入れる自動点滅機がつけられています。でもこれらは、フォトセンサーの用途としてはごく一部です。実際には目に見えないところで、もっといろいろな用途に使用されています。

 たとえば銀行やコンビニエンスストアにあるATM(自動金銭支払機)では紙幣の有無を検知したり、取出口の中に手があるとフタが閉じないようにする安全装置にもフォトセンサーが使われています。銀行のATMでは紙幣の情報を読み取り、本物と偽札を判別する高度な使い方もしています。 缶コーヒーやジュースを買う、自動販売機ではコインの検出や在庫の有無を確認するのに使用されます。駅の自動改札では大人と子供を見分けたり、人の通過を確認したり、切符や定期券を有無や判別するのに使われます。 会社や学校、コンビニエンスストアにある複写機(コピー機)には、紙の大きさを検出したり、カセット内のコピー用紙の有無、トナー(インク)の残量検出、コピーした枚数のカウントなどに使用されています。

光と照明(照度の測定)

光は、照明として、直接的に人間の生活に役立っています。あらゆる生活環境において、照明を快適にし視作業を容易にして作業効率の向上、作業安全の確保、を行うことが極めて重要です。このため照明の質を客観的に測定する尺度として、照度の検討は非常に重要です。

「照度」とは「光があたっている表面の単位面積当たりの光束の量」のことで、つまりその場所にどれだけの光が届いているかを示しています。

照明の単位

名前

単位

意味

照度

lx(ルクス)

照らされる場所の明るさのこと。1ルクスとは、1㎡の面積に1ルーメンの光束が入射している時の照度を表す。

光束

lm(ルーメン)

光の量のこと。

光度

cd(カンデラ)

光の強さのこと。光源からある方向にどれだけの光の量が出ているかを表す。

輝度

nt(ニト)cd/㎡

光源が広がりを持っているとき光減免の明るさを表す量。1㎡当たり1カンデラの輝度を1ニトという。

照度計

4. 計測(測定):センシング+データ処理+説明(理解と検証)

狭い意味での計測は、被計測量を数値的に計測することを意味するが、広く捉えると観測や観察も含まれる。工学的な計測をする時、単に数値的な計測のみでは計測対象の物理的な意義を見失う恐れがある。観察によって現象を理解することが重要となる。この時の計測と観測は次のようになる。

図 4.1: 計測システム

実験において最初に計測対象を見るのは人間である。実際にそのものを見なくても経験から想定することはあっても元はといえば五感を通して計測対象を観察することになる。そして、計測対象の出す信号の大きさと性質を概略ながら判断することになる。この時、人は視覚(色、明度、彩度、形状、動き)・聴覚(圧力、衝撃)・臭覚・味覚・触覚(温度、比熱、材質)などの観察以外に、現象の物理的な理解を試みるため物理モデルを頭の中にイメージし、論理的に説明しようとする。

この計測対象を簡単な思考モデルだけで説明することはできない。たとえ説明できたとしても、思考モデルだけでは科学的な計測とはいえないのでそのモデルや説明の普遍性を保証することができない。この表現の基礎となるのは明確に定義された尺度に基づいていなければならない。そこで、測定対象とする物理量を数値的に計測し、想定したモデルを検証するためのデータ処理を施し適当なグラフや表にして説明をする。

計測システム論はこの全般を扱うことになるが、ここでは特に「観測」に力点をおいて、電子信号で得られたデータの評価方法と処理方法に限ることにする。

上の図での計測対象には、基本物理量として長さ、質量、温度、濃度、時間、電磁気などがある。さらにこれらを組み合わせて、

位置、速度、加速度、応力、圧力、歪み、エネルギー、電子、光、音

などであるが、位置測定のように直接測定できるものは少ない。多くの場合、何らかの簡単な原理や法則を元にして、対象となる物理量を別の計測しやすい物理量に変換し、加えてセンサー(エネルギー変換器)を用いて、電流や電圧に変換して計測する。現在ではこの計測はほとんどデジタル化しており、計算によるデータ処理を容易にするため、信号の整形を行った後、Analog/Digital 変換器を用いてコンピュータに取り込むことになる。

4.1 計測に対する一般的注意事項

一般的な計測システムには次のようにいくつかの注意しなければならない点がある。

· 選択された機器は信号に適合しているか。

· エネルギー変換は単価系(無非線形、無ヒステリシス、複合物理量に対して 線形和が成立する)であるか。

· 経時変化があるか、これは物質拡散や電磁的劣化,温度係数,宇宙線に よる劣化は無視できるほど小さいかと同じ。

· デジタル化された信号は、被計測物理量に正しく対応しているのか。

· S/N 比は有効桁数を保証できるほど大きいか。

· A/D 変換で有効データを失っていないか。

これらを検証するためには、センサー検定として、マノメータ,気体温度計,光テコ歪み計,浮き子式比重計などの原始的とも思われる計測方法を採用するか、液クロマトクラフやガス分析計のように既知の物理量を計測することをする。この検定も十分ではないので計測した後に、先ほど観察して得たモデルからの推定をもって洞察する必要がある。その中には経験的処理が必要であることもある。

4.2 計測対象の種類

計測量には,物理的に性質のわかっている物理量と,物理的にははっきり意味のわかっていないが計測するべきもの工業量と,人の感覚に左右される感覚量に分類できる。

感覚量は,振動や騒音,匂い,軟らかさなどであり,基本となる複数の物理量が複合して分離されていない場合が多い。

感覚量は,やがてはなんらかのスケールが決められて工業量となる場合がある。工業量は,物理的な重要性が付加されて,物理量になるという歴史がある。

4.3 計測方法の種類

計測方法には、アクティブな計測とパッシブな計測に、さらに接触法と非接触法に分けることがある。

パッシブな計測

信号源に故意に作用するすることなく、発生する信号をセンサーなどで検知する方法。非接触法と接触法に大別できる。

アクティブな計測

静的には無信号である状態量などを計測する場合、外部から系全体に影響しないような微弱な刺激を与えてその反応としての信号を検知する計測方法。広い意味では接触法である。

パッシブな方法はそのまま計測対象物からの信号がセンサーに対して比較的強い時利用され、計測対象物の性質をそのまま計測することになる。

計測対象に影響を与えない範囲では出力信号を制御することができ、そのため、目的とする物理化学量を明確に計測できる利点があるが,次のアクティブな方法に比較して複雑な計測方法となることがある。

アクティブな方法は人為的に信号を発生させることを意味する。対象物からの信号が微小かない場合,外部から刺激を加え,その反応として出力を観察する方法で,アクティブな方法の例は、2つの透明な水流の混合を計測する時、他方に染料 (蛍光染料)を混合しておいて、紫外線などによる染料の濃度測定から混合の進行度を計るような方法である。

非接触法(in situ method)、接触法の区別は計測対象物の計測物理量に干渉しない方法で計測するかしないかの判別に使用される。これは、多くの場合、センサーと計測対象物が物理的に接触しているかどうかと同意義に扱われることが多い。例えば棒状温度計や乾湿球は接触法であるが、超音波吸収法や透過光の照度測定は非接触法となる。

計測の中心は、センサーであるが、「センサー」という言葉には、明確な定義はない。検出器やトランスジューサの総称として考え、「対象の物理量を感知する機器」と定義することにする。多くの場合,この対象の物理量を感知することで得られた情報を処理するときコンピュータが使用される。このため、このセンサーは対象とする物理量を電流もしくは電圧の形に変換する機器であると言ってもよい。

このように、センサーが物理量の変換素子(機器)であることから正しく計測を行おうとする場合には、センサーは行う変換の原理や特性について知っておく必要がある。これがこの文書の目的でもある。

計測機器の代表的な構成は、図1.2に示す形態を取ることが多い。この図にはフィードバックによる制御に対応する部分は示していない。

図1.2 計測システム(その2)

このシステムを組み上げる場合には次のような予備の知識が必要である。

· 基礎的なアナログ・デジタル回路技術 (アンプとフィルター, サンプルホールド)

· AD,DA変換器とそのインターフェース

· アクチュエータ技術

· コンピュータやDSP(信号処理専用LSI)プログラミング

· 数学(ラプラス変換やフーリエ変換)

しかし、これら全部に対して十分な知識を必要とするわけではないが、少なくとも最新のセンサー技術とデータ処理法の基本的な部分についての知識は持っていてもよい。

4.4 不確かさ

今まで計測では誤差という呼び方をすることが多かったが、「不確かさ」という呼び方に変えた。

ISOの国際計量基本用語集では「測定の結果に付随した合理的に測定量に関係付けられる値のばらつきを特徴づ けるパラメータ 」と表現している。

誤差を定量的に定義することはほとんど不可能であるが、確率的に表現することで定量化することができる。それは、系統的な誤差、偶然誤差をも含むことになる。

不確かさの要因には

· 測定量に対する定義の欠陥

· 測定量の定義が測定できない

· 定義された測定値を代表し得ない測定値がある場合

· 環境条件が測定に与える影響が不明、もしくは未知

· アナログ機器などで計測者によるばらつき

· 計測機器の分解能

· 基準となる計測、標準物質測定の不正確さ

· 計測機器の企画、データ補正のためアルゴリズムの中の定数やアルゴリ ズムなど外部からの情報の不正確さ

· 計測の前提、計算の仮定の問題

· 計測者が気が付かない環境変動に起因する不確かさ

この不確かさは、標準偏差で表す。

4.5 グラフ

グラフは,製図の図面と同じように,直観的にどのような特性を持っているかを示す工学的言語に1つである。このグラフは,計測データの処理と類似点が多い。

2次元のグラフは,1入力1出力のシステムであり,横軸としての入力に対して,縦軸として出力を表現する。また,3次元は2入力1出力系に対応して考えることができる。

(1) グラフの意味

慣用的にはグラフは2Dでも3Dでも横軸には独立変数を配置し,従属変数は縦軸に配することになっている。つまり,横軸は操作量であり,縦軸は出力量を表すことでそのグラフに表現された計測量や計算結果の持つ意味はわかりやすくなる。

この表現方法には2つの方法がある。これらは

· 生のデータを直接そのまま表示。

実験や計測対象に対して,特に決まった仮説や理論を適用しないで,直観的に物理量を把握するために作成するグラフ。

· 処理後のデータを表示。

計測対象の持つ特性に対して,理論や仮説に基づいたモデルを構築し,そのモデルに対応する程度について,データを表示するグラフ。

である。

いずれにせよ,グラフを書くことは,データやデータ処理に対する考え方を表示することに他ならないばかりか,処理方法の妥当性をも表すことになる。

処理データのグラフには定説となっている理論や,先人の作成した有効なモデルを基礎として持つこともあるので,これらを無視したグラフを作成することは十分考えた上で行う必要があるが,創意に基づいたグラフを作成することは大切である。

つまり,計測器に添付されている処理ソフトから出てくるグラフをそのまま使用することは少なくとも工学的な創意を持つとは考えられない。

(2) グラフの種類

グラフの種類は棒グラフ・パイチャート・帯グラフなどビジネス用なども含めると無限にある。もちろん,これらも工学論文や,プレゼンテーションでは用いることもあるが,ここで種類というのは,軸の種類を指す。

グラフの軸には,線形,対数,逆数,ベキ乗,確率分布,平方根などさまざまであり,それぞれ数学的に処理される。その結果,単純な曲線や直線となるようにグラフを書くことになる。

つまり,人が直観的に物理量やモデルをイメージできるのは,定規などで測ることのできる単純な曲線や直線で構成されたグラフであり,この単純化のために軸に多様な数式を用いると考えてよい。

例えば,アイリングの反応速度理論から導出された式(アレニウス式という)は であるが,反応速度をプロットするため,アレニウスプロットというグラフを用いる。このグラフは横軸は逆数,縦軸は対数 であるがこの式を用いることで, となり,アレニウスプロットでは,指数関数をを直線で表すことができる。

同様に,,のような関数や,三角関数を用いることもたまにある。

EMBED Unknown

EMBED Unknown

この他に,定量的な物理量を表現する単位についても十分な考慮が必要となる。

4.6 単位と数値

共通な単位系として,1960年 SI 単位(Le Syteme International d'Unites)が作成された。

このSI単位は,階級として,7つの基本単位と,組立単位,補助単位の3つとこれらに対する接頭語が定められた。 SI単位は,異なる物理量に同じSI単位が用いられることがあっても,それぞれの物理量には一つのSI単位が対応するものとした。 つまり,長さという物理量は,m (メートル)を使用し,他の単位を使わないという申し合わせを行ったのである。

(1) 基本的な単位

7つの基本単位は次のようなものである。

1. 長さ

1m(メートル) は 1/299 792 458秒の時間に光が真空中を伝わる長さ。

2. 質量

1kg(キログラム) は国際キログラム原器の質量。

3. 時間

1s(秒) はセシウム133の原子の基底状態の2つの微細順位の遷移に対応する 光放射の9 192 631 770 周期の継続時間

4. 電流

1A(アンペア) は真空中に1m隔てた平行な無限に小さい円形断面を有する 無限長の直線導体に N の力を及ぼし合う電流値

5. 温度

1K(ケルビン) は水の3重点の熱力学的温度の 1/273.16

6. 物質量

1 mol(モル)は,0.0120kgの炭素12に存在する原子の数と等しい数の分子, 原子,イオン,電子,粒子の集合対で構成された物質量

7. 光度

1 cd(カンデラ)は,波数 Hz の単色放射を放出し, 所定の方向におけるその放射強度が 1/683 W/sr である光源のその方向 の光度

さらに,補助単位として,

1. 角度

1 rad (ラジアン)は円周上で半径に等しい長さの弧が作る円周角。一周 をで表す。

2. 立体角

1 sr(ステラジアン)は球面をその球の半径を一辺とする正方形と等しい 面積で切り取った時の立体角。全周をで表す。

(2) 組立単位と桁記号

表 1.2: 組立単位

量記号

単位記号

名称

備考

周波数

Hz

ヘルツ

1Hz=1s

N

ニュートン

1 N = 1 kgm/s

圧力,応力

Pa

パスカル

1 Pa = 1 N/m

エネルギー,熱

J

ジュール

1 J = 1 Nm

電力,工率,仕事率

W

ワット

1 W = 1 J/s

電気量,電荷

C

クーロン

1 C = 1 As

電圧,電位,起電力

V

ボルト

1 V = 1 A= 1 J/C

静電容量

F

ファラッド

1 F = 1 C/V

電流

A

アンペア

1 A = 1 V/

電気抵抗,インピーダンス

オーム

1 = 1 V/A

インダクタンス

H

ヘンリー

1 H = 1 Wb/A

電気のコンダクタンス

S

ジーメンス

1 S = 1 A/V = 1

磁束

Wb

ウェーバ

1Wb = 1 Vs

磁束密度

T

テスラ

1 T = 1 Wb/m

照度

lx

ルクス

1 lx = 1 lm/m

放射能

Bq

ベクレル

1 Bq = 1 s

吸収線量

Gy

グレイ

1 Gy = 1 J/kg

線量当量

Sv

シーベルト

1 Sv = 1 J/kg

電磁波の減衰量,レベル

dB

デシベル

 

音圧,振動,加速度

 

 

 

 

表 1.3: 他の単位

量記号

単位記号

名称

備考

長さ

 

オングストローム

1=10m

面積

b

バーン

1 b = 10 m

エネルギー,熱

cal

カロリー

1 cal = 4.182 J

気圧

atm

気圧

1 atm = 101.3k Pa

 

 

bar

バール

1 bar = 100 kPa

体積

 

ガロン

1 gallon = 0.003785 m

表 1.4: 桁記号

指数

記号

名称

指数

記号

名称

1018

E

エクサ

10-18

a

アト

1015

P

ペタ

10-15

f

フェムト

1012

T

テラ

10-12

p

ピコ

109

G

ギガ

10-9

n

ナノ

106

M

メガ

10-6

マイクロ

103

k

キロ

10-3

m

ミリ

102

h

ヘクト

10-2

c

センチ

101

D

デカ

10-1

d

デシ

(3) 有効数字

有効数字は、その計測方法に基づいて決まられる。測定した生データは、計測器の精度を考えて、数値を記述すべきであるが、計算した結果をまとめる場合にも、有効数字という概念は必要となる。 精度とは異なる概念である。

有効数字の定義方法にはいくつかある。

· 符号、小数点と10の巾乗の表示を除いた数字で、先頭から連続した0を除いて残った数字の数を有効数字という。

という定義が合理的に見えるが、ここでは次のように定義する。

· 符号、小数点と10の巾乗の表示を除いた数字で、先頭から連続した0を除き、さらに、先頭の一つの1を除いて残った数字の数を有効数字という。

これは、桁上がりや桁下がりがある場合の計算での精度劣化を考慮に入れた表現である。

,     ,    

(4) 物理定数

(省略)

5. 制御:センシング+目標+追従

制御とは“対象とするもの(またはシステム)を自分の思うように繰ること”である。

制御では、「センシング+目標+追従」の自立的な繰り返しにより対象を繰ることが、基本的な行動の仕組みとして現れる。例えば、温度制御の簡単な例では、水槽の温度→温度センサー→温度調節計→ヒータ→水槽の温度と言った一連の操作の連鎖により、温度を一定に保つことができる。

図 温度制御の簡単な例

検出→判断→操作と連なる一連の機器の機能(この場合は、温度センサー→温度調節計→ヒータ)を介して、定められた目標値に対し操作対象(温度)を一定に保つように自動的判断し、行動することを“自動制御”または“オートマチックコントロール”と言う。

制御は、物や物質の生産・加工などの様々な工場・プラントを効率よく且つ安全に運営していく上で、欠かせないものである。例えば、石油精製プラントの操業においては、プラント運転の自動制御によって省資源、省エネルギー、省力化、さらに、異常検出や誤操作・暴走防止や防爆などの危険回避がはかれる。

また、自動制御は、工場・プラント運営の目的の一つである運転コストの低減に寄与している。自動制御によって、操業に関わる温度や圧力などの条件が一定化されるため、生産対象物の性状のバラツキが減少し、均一性が確保できる。自動制御は、製品の性状を目的やコストに合わせて操作・改良し、あわせて品質も向上できるメリットがある。

最近では、環境保全のために、公害の少ない操業および公害防止装置などにも様々な制御がきめ細かく使われている。

5.1 身の回りの制御のシステム

身の回りの生活空間にも、以下の様な所に様々な制御のシステムが組み込まれている。これらの制御システムでは、我々の周辺を囲み生活住環境のなかで日常的に使用されているさまざまな物理量がセンシングされている。

自動ドア開閉

照明 on, off

ルーパ、

カーテン制御

空調機制御

温度、湿度、気流

湿度、温度、気流

ボイラ点火・消化

温度

温風速度

洗濯機、水量、水流

タンク温水温度

洗剤濃度

温度

椅子移動、位置

水量、流速

モータ作動、速度

5.2 産業用の制御のシステム

産業用には、物の生産や加工のために、さらに大規模な形で各種の制御システムが利用されている。

Drying

Burning

Spraying

Cooling

Washing

図 車体塗装ラインに組み込まれた制御システム

車両塗装ライン

車両を低速コンベアにて搬送しながら(チェーン式ミュール搬送方式)、ロボットによる塗装及び中赤外線による乾燥を行う自動塗装ライン。

環境対策として活性炭溶剤吸着装置・触媒燃焼式脱臭装置により、塗装ブース内・乾燥炉より排気される溶剤ガスを吸着、除去、脱臭してクリーンな空気として排気。また、サイレンサーにより、騒音防止対策をしています。塗装ブース内はプッシュプル式換気装置により、作業者の安全作業環境を確保し、ベンチュリー式水洗ブースにより、塗装ミストを効率よく落とします。ブース内の循環水をクリーンに保つ、塗料スラッジ除去装置も装備。

反応釜・圧力釜

Washing

Filling

Heating

Curing

Dumping

図 化学反応プロセスに組み込まれた制御システム

これらの、制御方式は“シーケンス制御”と“フィードバック制御” および“フィードフォワード制御”に大別される。

5.3 シーケンス制御

シーケンス制御は論路演算が主体の制御で、あらかじめ決められた条件に従って一連の工程を実施していく制御方式。

例;自動洗濯機で一連の操作を自動で行う

5.4 フィードバック制御

   フィードバック制御は、「センシング+目標+追従」の自立的な繰り返しにより対象を繰る制御方式である。例えば、エアコンで室温を一定にするような自動室温調節制御は、この方式の典型的な実施例である。 フィードバック制御では、制御対象の、制御したい量(制御変数)を目標値(設定値)と比較し、その差(偏差)をゼロにするように操作する量(操作変数)をコントロールする。

例1; エアコンによる自動室温調節

   室温はセンサーによって検出され、設定された温度と比較される。室温が設定温

度より低ければエアコンはヒータによって熱を発生する。逆に高ければ熱を部

屋から吸収する。結果、室温は一定に保たれる。

   例2;船舶のオートパイロット

     進行方向をセンサーにより検出し、目標の方向と比較する。目標と実際の進行方

向の差に応じて舵を操作し操舵角を決め、目標方向に船舶を自動的に進行させる。

5.5 フィードフォワード制御

様々な経験や知見により、予め制御しようとする対象の特性が十分にわかっているものがある。このような場合、,制御しようとする量が目標値に一致するように,操作量を逆算して、制御しようとする対象に加えてやればよい。これを、フィードフォワード制御と呼ぶ。

例1; 自動炊飯器

例えば、自動炊飯器では,あらかじめ予定したパターンで加熱し、炊飯を行う。ここでは、人が総合的な感覚としてとらえている“ご飯の炊き具合”を、センサー検出することは困難であるし、途中で炊飯器の蓋をあけて炊き具合を確認したのでは決しておいしいご飯は炊けない。 これはフィードフォワード制御でなければならない例である。

例2;生体の運動制御系

生体の運動制御系では,神経伝達,神経情報処理,筋や固有受容器(筋紡錘,ゴルジの腱器官など)などにより生じる時間遅れが存在するために,フィードバック制御のループ時間(1回の制御ループに必要な時間)が大きくなってしまう.例えば,単シナプス性の反射(伸張反射など)でさえ約30ミリ秒必要であり,さらに大脳皮質を介してはそのループ時間は50ミリ秒以上必要となり,視覚情報によるフィードバック系では少なくとも150ミリ秒程度以上必要となる.このため,単純なフィードバック制御だけで腕を安定に精度良く制御することは困難である.従って,腕の運動制御機構において,フィードバック制御機構だけでなくフィードフォワード制御機構(Feedforward Control Mechanism)が重要な役割を果たしていると考えられるようになり,20年程前から生理学や行動学の分野でその存在が実験的に確かめられた(例えば,Politら,1979; Bizziら,1984).

つまり、生体の運動制御は、多種多様な運動の学習によって、生体の運動制御系それ自身が、様々な経験や知見を蓄積し、制御しようとする対象の特性を十分に蓄積し理解することによっておこなわれているとかんがえられている。

センシング技術    ワークシート1  学生番号:        名前:         

1 私達の周辺を取り囲む対象物とそれに関連する物理量をあげよ

対象

検出

計測

応用例

  

   キーワード

   電気、音、光、電磁波、圧力、温度、長さ、重量、時間、熱

繰り返す

部屋(船)

エアコン(舵)

比較

熱量

室温

(進行方向)

操舵角

角角

センサー

電気信号

電圧/電流/抵抗

センサー

アナログ計測器

電圧計/電流計/抵抗計

物理現象

デジタル計測器

A/D変換器

コンピュータ

電子はマイナスの電気を持ちますからプラスの電気の方に引き寄せられます。一方電流はプラスからマイナスへ流れます。�このように電子の流れと電流の流れは向きが逆なのです。

何もこんなにややこしいことは言わずに、電子と電流の向きは同じだとしても大勢に影響はないのですが、一応このようになっています。

多くの物質では陽子も電子の数は一定で、電子は原子核の周囲を回転するだけですが、何かの拍子に軌道を離れる場合があります。この軌道を離れた電子を自由電子といいます。

電気とはこの自由電子の動きをいうのです。�もう少し突っ込んでいいますと、例えば電線の中を自由電子が移動すれば、それが電気の流れ(電流)となるのです。電流とは電子の移動なのです。

われわれは日常から電気に囲まれて生活している。 しかし電気は目に見えないから、改まって電気とは何か? と問われると簡単には説明できない。電気は目に見えないが、電気なるものが存在することは、 静電気摩擦現象や雷現象として太古から気づかれていた。 ここ200年ほどの間に、これらの現象の元が電気であり、 その本質は物質中の電子の過剰・不足・移動、であることが 多くの実験と理論から分かってきた。

物質を構成する最小単位は原子ですが、原子は中心となる原子核と、その周囲を回転する電子から成ります。原子核の中にある陽子はプラス、電子はマイナスの電気を帯びています(帯電状態)。�この帯電状態の物質は電荷(でんか)を持つといい、その大きさの単位はQ(クーロン)といいます。

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