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松山赤十字病院 脳神経外科 瀬山 剛

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Post on 13-Mar-2020

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松山赤十字病院

脳神経外科 瀬山 剛

クモ膜下出血とは (subarachnoid hemorrehage,SAH)

クモ膜下腔内に出血が生じた状態

外傷性 非外傷性 脳動脈瘤の破裂 70-80% 脳動静脈奇形 15% その他、原因不明 10-15%

脳動脈瘤破裂に伴うSAH

本邦では人口10万人に対して約20人

49-59歳が半数を占める

我が国では女性に多い傾向(男女比1:2)

Willis動脈輪前半部が90%

個々の血管では、

前交通動脈 40%

内頚動脈系 17-25%

中大脳動脈瘤 15%

SAH発症時の症状

突然の激しい頭痛

嘔吐

意識障害

髄膜刺激症状

自律神経失調

発熱や脈拍、血圧の変化、呼吸、心電図異常

→ 約半数に見られる

→ 約半数に見られる

→ 約2/3の患者に見られる

→ 約2/3の症例に見られる

SAHの診断 ‐クモ膜下出血診療ガイドラインより‐

・頭部CT検査 クモ膜下出血の診断にはCTスキャンによるクモ膜下腔の高吸収の検出が適しており、発症24時間以内の診断率は92%で、以降時間の経過とともに低下する(グレードA)。

・腰椎穿刺 CTでクモ膜下出血が診断された場合は腰椎穿刺は行わないが、CT上クモ膜下出血を認めなくとも警告上昇を有する例や発症後時間が経過している例で臨床上クモ膜下出血が疑われる場合には腰椎穿刺を行うべきである(グレードA)。

・磁気共鳴画像法(MRI) MRIによるクモ膜下出血の診断はCTと比べて特に急性期の診断率に劣るとされるが撮影法の工夫(gradient echo T2* やFLAIR法)により改善が期待され、特に亜急性期、慢性期においては有用である(グレードB)。

SAHの診断

急性期 亜急性期 慢性期

頭部単純CT

腰椎穿刺

頭部MRI T2 flair

CT陰性+腰椎穿刺陰性の所見は、SAHを除外するのに有用である

Perry JJ Ann Emerg Med 2008

初期治療

原因精査

脳動脈瘤の治療

SAHの診断 初期治療の目的は再出血予防 再出血は24時間以内に多く発生 予防のためには、十分な鎮痛、鎮静が必要であり、 積極的な降圧剤投与が必要である(グレードA)

・脳血管撮影

従来の検査(グレードA)

・3DCTA

脳動脈瘤の80-90%以上診断できると言われる。

3-4mm以下の小さな動脈瘤の検出率に問題あり

(グレードB)。

・MRA

脳動脈瘤の大きさが5mm以上あれば診断可能

(グレードB)。3DCTAと同等の診断能。

SAHの予後

病院到着前の死亡も含めれば、50%が死亡

生存者の、

60-70%は社会復帰、あるいは介護を要しない程度に回復

30%は重篤な後遺症が残存

予後不良例の2/3は再出血を来している

症例

症例1 86歳女性

主訴:嘔気、発熱

現病歴:○/○に嘔気、○/○より膝痛あり。○/○より発熱、倦怠感を認め、外来を受診。髄膜炎を疑い、腰椎穿刺を行ったところ、血性髄液がみられ、当科に紹介あり。

既往歴:皮膚筋炎、間質性肺炎、認知症

診察時現症

意識レベルJCS1-2。認知症あり。

頭痛、吐気の訴えなし。頂部硬直あり。

四肢麻痺や脳神経脱落症状を認めない。

Vital:HR58、BP157/82、SPO2 100%

(room air)

頭部CT

H&H G3, WFNS gradeⅡ, Fisher group4

脳血管撮影

Acomに最大径10.2mm、blebを有する瘤を認める 同日脳動脈瘤コイル塞栓術を施行

症例2 45歳女性

主訴:嘔吐、下痢

現病歴:○/○より嘔吐と下痢が出現。下痢は消失したが、嘔吐が続くため、○/○に近医を受診。投薬治療を行われたが、症状は改善せず、○/○に近医脳神経外科を受診。頂部硬直を認め、紹介となった。

現症:意識清明。頂部硬直を認めるのみ。

H&H G2、W.F.N.S gradeⅠ、Fisher group2

頭部CT

脳血管撮影

右内頚動脈後交通動脈分岐部瘤、最大径4.5mm 同日脳動脈瘤コイル塞栓術を施行

まとめ

再出血=予後不良

診断および初期治療が重要

・クモ膜下出血を疑う症状がある場合は、問診、検査を大事にすること ・頭部CTは頭頂部まで確認すること ・クモ膜下出血と診断されればできるだけ早期に初期治療を開始すること

ありがとうございました。