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集団淘汰と頻度依存傾向の進化 進化シミュレーションと実験による検討 広島修道大学 中西 大輔 [email protected] 北海道大学 横田 晋大 [email protected] 2009826日~28日 日本心理学会第73回大会 (於立命館大学衣笠キャンパス)

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集団淘汰と頻度依存傾向の進化 進化シミュレーションと実験による検討

広島修道大学 中西 大輔 [email protected] 北海道大学 横田 晋大 [email protected]

2009年8月26日~28日 日本心理学会第73回大会 (於立命館大学衣笠キャンパス)

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+ 概要

 集団間葛藤状況 集団内の協力率上昇 (e.g., Choi & Bowles, 2007)  なぜ集団間葛藤時には集団内の社会的ジレンマ問題が“棚上げ”されやすいのか?

 ただ乗りの誘惑を超えて、なぜ人は協力してしまうのか?

 本研究の視点  この問題を解く鍵は、頻度依存傾向

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+ 集団間葛藤時の社会的ジレンマ問題

 集団間葛藤状況における社会的ジレンマ問題は理論的に未解決 (Tooby & Cosmides, 1988; Yamagishi & Mifune, 2009)

 群淘汰 (Wynne-Edwards, 1962)

 群れや種に利益をもたらす行動が進化する。  集団レヴェルの淘汰圧を仮定  ただし、個人レヴェルの淘汰圧を無視

$ こうした「古くさくてナイーヴな群淘汰」は現在は否定 (e.g., Williams, 1966)

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+ 社会的ジレンマ問題を解く鍵 多層淘汰理論 (Sober & Wilson, 1999)

 個体には個人と集団両方のレヴェルの淘汰がかかる  個人単位: 集団内ではサボっているやつの利得が高い。

 集団単位 (群淘汰): 集団間ではサボっているやつが少ない集団の平均利得が高い。

 個人単位の淘汰圧と集団単位の淘汰圧の相対的な力関係によって協力が進化するかどうかが決まる。  個人単位: 協力行動の進化に不利  集団単位: 協力行動の進化に有利

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+ 社会的ジレンマ問題を解く鍵 文化的群淘汰 (Boyd & Richerson, 2005)

 頻度依存的行動 (特に多数派同調) 集団特有の “文化”を形成

 多数派同調が、協力行動に関する集団間の分散の拡大および集団内の分散縮小をもたらすため。  協力的 / 非協力的な集団が形成される。  集団内の行動分散が少なければ、個人単位の淘汰 の影響は極めて小さくなる。

群淘汰をより有効に機能させる。

「非協力的な文化」を持つ集団は崩壊する。

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+ 集団間葛藤状況における協力傾向と頻度依存傾向の関連  頻度依存傾向と内集団協力傾向は正の相関関係

 群淘汰と頻度依存の相乗効果  集団内の協力傾向が高いとき

 頻度依存傾向が高=協力 協力的集団となり、生き残る確率が高くなる

 頻度依存傾向が低=無作為 相対的に生き残る確率が低  集団内の協力傾向が低いとき

 頻度依存傾向が高=非協力 非協力的集団となり、崩壊  頻度依存傾向が低=無作為 相対的に生き残る確率が高

 生き残るのは、頻度依存傾向が高く結果として協力した個体

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+ 本研究の仮説

 群淘汰の影響力 (集団間葛藤) が強くなるほど……  内集団に協力的になる (仮説1)。  多数派同調傾向と内集団協力の程度は強くなる (仮説2)。

 以上の仮説を以下の方法で検証  進化シミュレーション  場面想定法による実験

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+ 進化シミュレーションのモデル

1.  各個体はいずれかの集団に割り振られる

2.  各個体はコストを払って資源を供出するか否か選択 (社会的ジレンマ)  頻度依存戦略: 集団内の協力者数に応じて行動  協力傾向戦略: 自らの協力傾向に従う  内集団ひいき戦略: 内集団のみに資源を供出  外集団ひいき戦略: 外集団のみに資源を供出

3.  集団内での資源の分配

4.  淘汰  個体淘汰: 全母集団の中での相対的利得を算出し、死亡を決定    群淘汰: 集団に提供された資源を全集団で相対化し集団の絶滅を決定  絶滅した集団には、他集団の高い利得を持つ個体のコピーが侵入

5.  2. に戻る

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+ 条件 / パラメーター

 個人間淘汰圧に対する集団間淘汰圧の強さ   10条件 (0: 集団間淘汰圧低 ~ 11: 集団間淘汰圧高)

 他者の行動の参照 (頻度依存) 可能性   2条件 (社会 / 非社会)

 社会条件:他者行動の参照が可能。  非社会条件:他者行動の参照が不可能。

 各パラメータ値  グループサイズ: 50個体 / グループ数: 1,024グループ  協力のコスト: 1.00 / 協力の効果: 5.00倍

 各条件10レプリケーション行い、結果を平均

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+ 個体の遺伝子

遺伝子 行動

G1 協力確率 他者と無関係にこの確率で協力する

G2 協力の閾値 集団内の何%が協力していたら協力するか

G3 G1に従うかG2に従うかを決定する遺伝子

G4 内集団ひいき傾向 資源を内集団成員に分配する傾向

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+ 進化シミュレーションの結果

社会 / 協力者率……他者行動参照可能条件での協力率

500世代以降のデータを10レプリケーション分平均

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+ 考察 シミュレーション研究  進化シミュレーションの結果から、  仮説1、仮説2ともに支持

 集団間葛藤 (集団間淘汰の働く状況) の高低に反応して協力傾向や頻度依存傾向を調整する傾向を実際の人間は示すか?  場面想定法実験で検証

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+ 場面想定法実験の概要

 実験参加者: 大学生180名 (男性: 131名、女性: 49名)

 実験課題: 集団間競争状況に直面している場面について記述した4シナリオ  集団間葛藤状況

 自集団の多数が協力すれば、他集団に勝てる可能性が高まる。  集団内の社会的ジレンマ状況

 ただし、自集団に協力すると、自身の利益が損なわれる (e.g. 友達と遊びに行く予定を反故にしなければならない)。

 実験条件: 被験者間要因 (集団間葛藤低 / 集団間葛藤高)

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+ 場面想定法実験: 方法

 集団間葛藤の操作 (高 / 低) 被験者間  集団間の争いで敗れた場合、どの程度ひどいめにあうかの程度

 シナリオの提示順序の操作 (正順 / 逆順) 被験者間

 主な従属変数  自集団への協力意図

 1: 絶対に協力しない ~ 7: 絶対に協力する  頻度依存傾向 (他成員の行動を重要視する程度)

 1: 全く重要ではない ~ 7: 非常に重要

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+ シナリオ1 / シナリオ2

 シナリオ1 (グラウンド使用権を巡るチーム間の争い)

 集団間葛藤高条件: 負けると使用権を奪われる。  集団間葛藤低条件: 負けると使用権を奪われ、歩いて30分以上かかる水はけの悪い別の場所を使わざるを得ない。

 従属変数: 友達との約束を破り争いに参入するか?

 シナリオ2 (教室へのクーラー設置を巡る学部間の争い)

 集団間葛藤高条件: 1年生なので負けると4年間クーラーなし  集団間葛藤低条件: 4年生なので負けると半年間クーラーなし

 従属変数: 友達との約束を破りクーラー設置を要望する学生大会に参加するか?

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+ シナリオ3 / シナリオ4

 シナリオ3 (実習での成績を巡る班どうしの争い)

 集団間葛藤高条件: 負けると単位を落とす。  集団間葛藤低条件: 負けるとA評価を取れない。  従属変数: 別のレポートを後回しにして実習のデータ取りに協力するか?

 シナリオ4 (バイト先のコンビニと他店との売り上げ競争)

 集団間葛藤高条件: 負けると売り上げが伸びない。  集団間葛藤低条件: 負けると今月分の給与を受け取れない。  従属変数: 空き時間にレポートを書かず、売り上げアップに協力するか?

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+ 結果: 協力意図 17

1.00

2.00

3.00

4.00

5.00

6.00

7.00

1 2 3 4

協力意図

シナリオ

葛藤強 正順 葛藤強 逆順 葛藤弱 正順 葛藤弱 逆順

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+ 結果: 頻度依存傾向 18

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2.00

3.00

4.00

5.00

6.00

7.00

1 2 3 4

頻度依存の重要性

シナリオ

葛藤強 正順 葛藤強 逆順 葛藤弱 正順 葛藤弱 逆順

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+ 結果: 協力意図と頻度依存傾向の相関

 シナリオ1: r=0.21 (p<.01)

 シナリオ2: r=0.44 (p<.01)

 シナリオ3: r=0.19 (p<.05)

 シナリオ4: r=0.08 (p=.28)

 全シナリオ: r=.28 (p<.01)

 集団間葛藤の程度が強くなるほど、頻度依存傾向と協力傾向は共に強くなった。

(シナリオ4を除き) 仮説を支持

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+ 考察 結果のまとめ

 進化シミュレーション  群淘汰圧が高くなるほど、内集団協力と頻度依存戦略が支配的になった。一方、頻度依存的に振る舞えない非社会状況では、内集団への協力率は低下した。

 場面想定法実験  集団間葛藤の程度が強くなるほど、内集団協力及び頻度依存傾向が強くなった。また、頻度依存傾向と内集団への協力意図は正の相関を示した。

 シナリオ4で仮説が支持されなかったのは、集団間葛藤の操作が十分強くなかったため?

 = 他者の行動を気にする頻度依存的行動が、集団間葛藤状況の社会的ジレンマ問題を解決する可能性を示した。

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+ 考察 インプリケーション

 協力行動を支える適応的基盤の解明  評判システム (Nowak & Sigmund, 1998) や罰システム (e.g.,

Yamagishi, 1986) の導入なしに内集団協力を説明できる可能性が示された。

 社会性と協力  社会的影響は協力行動 (少なくとも「内集団協力」) と深い関係にあるのかもしれない。

 被社会的影響性と協力はセットで進化する。「悪い仲間の影響を受ける」のではなく、「よい友達の影響を受ける」行動が進化?

 今後の課題  行動実験による仮説の検証

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+ 付録: シナリオ1

  あなたは、有志が集まって作ったあるチームに所属しています。このチームでは、いつも近くのグラウンドを借りて、毎週末に練習を行っています。ある日、いつものように練習に行くと、違うグループがいて、グラウンドを使っていました。そのグループの代表は、許可をもらって使っていると言います。グラウンドの管理人に話をすると、今後グラウンドをそれぞれで分割して使って欲しいと言われました。しかし、グラウンドは2つのチームが使うにはあまりに小さいため、向こうのチームと話し合いました。その結果、今週末、それぞれグラウンドにメンバーを集め、集まった数の多かったチームがグラウンドを使用する権利を得ることにしました。もしこれで向こうのチームが勝ってしまうと、(集団間葛藤低「あなたたちは他の練習場所を探さなければなりません」 / 集団間葛藤高「あなたたちは今まで使っていた馴染みのグラウンドを奪われてしまい、歩いて30分以上かかる狭くて水はけの悪い別のグラウンドで練習せざるを得ません」)。しかし、その週末は遠くに住んでいる仲の良い友達があなたの街にやってくることになっていて、一緒に遊びに行く約束を1ヶ月前からしていました。

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+ 付録: シナリオ2

  あなたの通っている大学では、毎年、学生大会が開催されています。学生大会とは、全学部の学生が集まり、大学側に様々な要求を行うための組合のような活動です。この日は全ての講義が休講になり、全学生が学生大会に出席することができます。今回の大会で、学生委員会は大学側にある要求をしようと考えています。それは、教室にクーラーをつけて欲しいというものです。現在、大学には、クーラーは設置されておらず、夏になると学生はうだるような暑さに耐えて講義を受けなければなりません。あまりの暑さに、試験の時にも支障が出るほどです。しかし、クーラーを設置するには大工事が必要で、1千万円ほどの費用がかかるため、大学の理事会はこの出費を惜しんでいます。そこで、今年度の学生大会では、投票によってもっとも要望の多かった順により多くのクーラーを設置するよう理事会に要求することになりました。あなたの大学では、学部毎に使用する教室が異なります。各学部に所属する学生の人数は同じで、大会に出席しないと投票もできません。あなたは現在 (集団間葛藤低「4年生なので、もし他の学部にクーラーが設置されてしまっても、暑い教室で過ごさなければならない期間は半年間です」 / 集団間葛藤高「1年生なので、もし他の学部にクーラーが設置されてしまうと、残りの学生生活の大半を暑い教室で過ごさなければなりません」)。しかし、学生大会の日に、あなたは以前から別の大学の友人とドライブに行く計画を立てていました。

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+ 付録: シナリオ3

  あなたが履修している実習では、班単位で課題研究を行って発表することになっています。評価も班単位でなされ、相対評価制度 (A~Cのそれぞれの評価がもらえる人数の割合が決まっている) が取り入れられています。班は3つありますが、最も良いA評価は、このうち1つの班にしか与えられません。成績は、各班の研究内容とプレゼンテーションの結果で決まります。あなたの班では、あるテーマについてアンケート調査を行い、その結果を発表することにしました。アンケートは10分程度で回答可能な内容ですが、最低でも300人分は集める必要があります。さらに、このアンケートは、ビジネス街を歩いているサラリーマンに答えてもらわなければなりません。あなたは明日、授業がないので街に出てアンケートを集めることができます。しかし、その日の夕方には別の演習のレポート提出の締め切りがあって、できれば家でレポートを書きたいとも思っています。この演習は評価が非常に厳しく、質の低いレポートでは単位を落として卒業ができなくなる可能性があります。一方、実習のアンケートのデータが十分に集まらないと、あなたの班ではよい研究成果が得られず、(集団間葛藤低「単位は得られてもA評価は他の班に奪われてしまうでしょう」 / 集団間葛藤高「A評価が他の班に奪われてしまうだけでなく、単位を落として留年してしまう危険性もあります」)。

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+ 付録: シナリオ4

  あなたはあるコンビニエンスストアでアルバイトをしています。そのバイト先のコンビニの店長が、売り上げを伸ばすため、バイト全員に、店内にお客さんのいないときは店先に出て通行人に声をかけるようにと指示しました。この周辺にはもう一つ別のコンビニがあり、この店では呼び込みによって売り上げが伸びたそうです。もし1ヶ月間呼び込みを続けて売り上げが10%アップしたら、店長は時給を800円から1200円にすると約束しています。あなたの店では店番をするときは必ず1人です。従って、あなたが呼び込みをしなくても、店長や他のバイトに呼び込みをサボったことはばれません。あなたは、いつも空いた時間で毎週提出しなければならないレポートを書いていました。呼び込みをするのは面倒ですが、誰も呼び込みをしなければ (集団間葛藤低「売り上げの伸びはあまり期待できないでしょう」 / 集団間葛藤高「店はつぶれて別のコンビニに乗っ取られてしまい、あなたはクビになるでしょう。クビになったらあなたは今月分の給与を受け取ることができなくなってしまいます」)。

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