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進化するネットワーク・ スライシング www.abiresearch.com リサーチ・ディレクター ディミトリス・マブラキス 【協力】インテル株式会社

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進化するネットワーク・ スライシングwww.abiresearch.com

リサーチ・ディレクターディミトリス・マブラキス

【協力】インテル株式会社

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図 1: 通信事業者のクラウド・フレームワーク引用元: ABI Research

1. ネットワーク・スライシング市場の発展

現在の通信事業者は、ソフトウェアやクラウド、自動化テクノロジーなどにおける

市場の大きな変革に直面しており、ネットワークにかかわる事業計画や展開、維持管理、

収益化の見直しを迫られています。通信の接続サービスは長期的な収益の確保を期待

できますが、そのサービスだけで事業を継続することは明らかに不可能な状況になって

います。しかし、通信事業者のラストマイル(事業者とユーザーを結ぶ末端の通信)には、

スペクトラム方式でも固定接続方式でもエンドユーザーに関する大量のデータがあり、

それを有効活用すれば、深刻なトラブルが起こる可能性を予知する、ユーザーの使用感

を改善する、ユーザーの将来のニーズを予測するなどといった高度なサービスの提供が

可能になります。また、その高度なサービスは、接続サービスを基盤に、さまざまな展開が

可能になります。その可能性を示したのが、次の図表に掲げた通信事業者のクラウド・フ

レームワークです。

システムの統合・管理

サービスの展開

OSS/BSS

PNFs/VNFs

NFV インフラストラクチャー(NFVI)

SDN/SD-WAN

クラウドノード

パブリック・クラウド プライベート・クラウド

ネットワーク要素 コントロール要素

分析・SON・LCMPNFs/VNFs

VIM

SDN コントローラー

MEC

NFV オーケストレーター

ETSI NFVドメイン

そして、そのような高度なサービスを支えているのがネットワーク・スライシングです。

通信事業者は、ネットワーク・スライシングを通して、例えば帯域幅の消費の激しい

動画を配信する、シグナリングの複雑なIoTのセンサー・アプリケーションを提供するなど、

ニーズに応じてネットワークの機能を分割(スライシング)し、エンドユーザーにきめ

細かなサービスを提供することが可能になります。

1.1. ネットワーク・スライシングの展開

現在の市場はネットワーク・スライシングの実証実験の場となっています。その多くは、

ベンダーがネットワーク・サービスで競争を行う場ではなく、さまざまなネットワーク

設備の集約化が進む場となっています。市場ではネットワーク・スライシングに関してさ

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縦割りのネットワーク・スライシング

eMBB + 縦割りのスライシング

エッジ / デバイス・ネットワーク

横割りのネットワーク・スライシング

eMBB + eVertical + コンシューマー

大規模な単一ネットワークモバイル・ブロードバンド(MBB)

流動的または固定的な

ネットワーク・クラスター

各機器の限界を超えることが

可能に

局所的なネットワークターミナル⇨ネットワーク・ノード

コンピューティング+通信 ネットワークの仮想化

서비스 노Discovery andcontrol on LTE

Pico/HomeeNB

D2DCoordinator

Pico/HomeeNB

D2D Cluster #4

Mesh

D2D UnicastLink

D2D Cluster #0

Spatial Reuse inOne Cell Area

D2D UnicastLink

D2DBroadcast

Link

D2D Cluster #1

D2DCoordinator

D2DCoordinator

D2D Cluster #2D2D Broadcasting

D2D UnicastLink

MacroeNB

D2D Cluster #3

Multi-hop

Data on WiFi Direct

図2: ネットワーク・スライシングにおける縦割りから横割りへの進化引用元: インテル

まざまな議論が行われていますが、そのコンセプトの商用分野への応用については開発

途上で標準化の初期段階にあるといえます(例えば、ヨーロッパでは、2017年第3四半期に

ネットワーク・スライシングのフレームワークに関する本格的な開発プロジェクト

(5G-MoNArch)が始動し、今後2年にわたり継続される予定。中国では、2017年初頭に

FuTURE Forum(未来移動通信論壇)を開催し、以来エンドツーエンドのネットワーク・

スライシングに関するホワイトペーパーの作成が進行中です。3GPPでは、RANおよび

SA 両方のワーキンググループが、標準化のために、ネットワーク・スライシングが有する

さまざまな技術的な側面を検討しています)。この動きは、先ほど解説したような、通信

事業者にとって収益力の要となる高度な機能とも関連しています。また、ネットワーク・

スライシングの概念を技術的あるいは商業的に進化させるならば、一般市場に投入した

際に常に成功するものでなくてはならないともいえます。ある技術が一気に進歩を遂げ

ると、その初期段階では、コンセプトを商業利用したい通信事業者の方がやむを得な

い理由で追いつけなくなる可能性もあります。例えば、数十年間接続サービスばかりを

提供してきたため、ビジネスニーズの急激な変化に対応できず事業に支障をきたしてし

まうといった事態です。

通信事業者は、今後数年にわたり、OSS/BSSや次世代移動通信技術5G、ネットワーク・

スライシングを可能にするテクノロジーなど、必要なインフラを導入していくでしょう。

そのときまでには、ネットワークの方も進化を遂げ、例えば、x86サーバーなどの一般的

なプラットフォーム上で稼働し、ネットワーク全体を網羅して商業利用に耐えるクラウドが

提供できるようになっているでしょう。どの最新テクノロジーでも同じことがいえますが、

ネットワーク・スライシングは時間とともに進化を続け、その用途の幅を広げていくでしょう。

現在、通信事業者は、モバイル・ブロードバンド・ネットワークを縦割りにスライシング

して特定の分野にエンドツーエンドで提供していますが、将来は、ネットワーク・スライシ

ングをさらに応用し、モバイル・エッジ・コンピューティング(MEC)サーバーといったネッ

トワーク・ノードとの連携をはかった横割りのスライシングも実現する可能性があります。

リソースを横割りにスライシングする技術は、5G NR(New Radio)に代表されるような、

データレートが高く、レイテンシーが低い無線接続に対応したモバイルデバイスへの

活用が期待されます。横割りのスライシングは、図2に示したように、モバイルデバイスの

物理的な限界を超えた処理容量の増加を促進し、新世代ネットワークの登場にもつなが

るでしょう。

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2. ネットワーク・スライシングの次の進化

縦割りのネットワーク・スライシングでは、ネットワークを用途に応じてさまざまな領域に

分割(スライス)します。スライスされた領域は、同じくスライスされた他の領域と連携をと

りながら、完全なネットワーク・スライスを形成します。ただし、全く同じ割合でスライスさ

れているわけではありません。それは、ユーザーのニーズや負荷(ペイロード)によって、

アプリケーションが使用するネットワークが異なるためです。

横割りのネットワーク・スライシングでは、実行処理やデータの保存、ネットワークの

機能が、インフラとデバイスの間、またはデバイス同士で共有することができるため、

機能がデバイスの物理的な性能に左右されることがありません。言い換えれば、機能と

機器とを切り離すことができます。例えば、医療分野に従事する人のスマートフォンなら、

診療に使う低レイテンシーの遠隔医療用映像アプリケーションや、通常のインター

ネットに必要なeMBBを活用する場合、縦割りのスライシングが役立ちます。また、処理の

一部をスマートフォンに任せて軽量化したウェアラブル・センサーには、横割りの

ネットワーク・スライシングが役立ちます。横割りのスライシングでは、縦割りのスライシ

ングがネットワーク上で行うことを、デバイス上で実現させることができます。リソースは、

互いに連携して、用途に応じたスライスを活用します。ウェアラブル・デバイスとスマー

トフォンを使用した横割りスライシングの事例を図3に示します。

図3: 横割りのネットワーク・スライシング(例)引用元: インテル

クライアント(ウェアラブル / ポータブル)

ホスト(ポータブル / BS)

アプリケーション

クライアント OS

クライアント OS 用 VM

分散コンピューティング用仮想化プラットフォーム

コンテナー

無 線

管理プレーンの論理チャネル

エッジサーバー

OS

エッジサーバー OS 用 VM

ホスト OS 用 VM

ホスト OS

コンテナーエンジン

実行処理 実行処理

通 信 通 信

コンテナーエンジン管理

プレーン管理

プレーン

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横割りスライシングなら、数多くのアプリケーションを実現でき、一般用の通信にも

業務用の通信にもメリットがあります。例えば、ウェアラブル・デバイスや一般のデバイスの

電力効率が向上し、さらなる小型軽量化が可能になります。さらに、デバイス側の実行

処理をなくすことができるため、新しい形状のデバイスと、それに対応した新しいアプリ

ケーションが登場する可能性もあります。例えば、拡張現実 (AR)や仮想現実(VR)機能に

対応したヘッドマウント・ディスプレーは、現在、処理容量や接続回線の面で性能的な

限界がありますが、将来、5Gを活用した縦割り・横割りのネットワーク・スライシングで次

のような機能の強化が期待されます。

• ネットワーク・スライシングによる低レイテンシー・広帯域幅のARやVRの実現

• 横割りのスライシングによる新型スマートフォンまたは端末機器の実現 (ヘッドマウント・

ディスプレーを使用して処理や保存容量の共有ができ、接続回線の制約を受けない

アプリケーションに対応)

このAR とVR の例は、通信事業者が資金を投入することにより、高度なネットワーク・

スライシングが新たな市場を生み出す可能性があることを示しています。また、自動車や

医療、交通、物流などの分野でも事例を挙げることが可能です。場所を問わずアプリケー

ションを実行できるという特徴は、通信事業者やその他の企業に新たなビジネスチャ

ンスをもたらすことが期待されます。ネットワーク・スライシングはまだその第一歩を

踏み出したにすぎませんが、横割りスライシングについては、将来に向けて、さまざまな

角度から議論を重ねながら導入を進めていく必要があります。また、縦割りスライシングは

まだ初期段階にすぎませんが、特に改良を加えなくても、縦割りと横割りのスライシング

の両立は可能になるでしょう。

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【 発 行】 2017 年11月2日©2017 ABI Research

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