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1 まえがき 電磁接触器とは,電磁石操作することにより電気回路 開閉うもので,負荷自動開閉用として使用される。 この電磁接触器熱動形過負荷継電器(サーマルリレー) わせたものが電磁開閉器であり,電動機動運転用使用され,過負荷状態電動機焼損から保護 する機能えている。 富士電機電磁開閉器接触器は,1954 年発売以来 50 余年国内シェア No.1 累積生産数 2 億 7 千万台達成している。富士電機時代市場要求 技術動向先取りした特徴ある商品市場提供して, 電動機制御分野技術発展貢献しトップメーカーとして 地位堅持してきた。 市場のグローバルい,国際性んだ製品や,境性考慮した製品められていた1999 年電磁 開閉器接触器NEO SC シリーズ」〔「SC - N1」〜「SC - N16」(電動機容量 AC200 V5.5 200 kW)〕を発売した。 標準品CE マーキング(欧州規格)および UL/CSA米規格)に対応し,製品消費電力大幅低減したこと により,エネルギー(エネ)に貢献するグローバルとして,おさまから好評をいただいてきた。 環境配慮する取組みは,使用時消費電力低減どの製品使用時におけるエネだけでなく,製品製造輸送使用廃棄るまでのライフサイクル全体のエネ ルギー消費量および環境負荷最小化注目されている。 制御盤においても同様に,環境対策めている。 部品点数削減設置スペースの縮小による省資源化 制御盤軽量化による輸送エネルギーの低減 使用時消費電力低減 また,機械装置する安全規格整備され,制御盤感電保護する本質的安全設計方策として,DC24 V 回路化代表される制御回路低電圧直流化められて いる。上記環境対策安全対策要求により,直流電源小型小容量化制御盤開発設計において重要課題 となっている。 前述環境対策安全対策実施するで,制御盤内設置する電磁接触器小型軽量化低消費電力化直流 表₁ 「NEO SC シリーズ」(22kW以下)のシリーズ構成 フレーム N1 N2 N2S N3 N4 N5 定 格 モータ容量 AC200 V 5.5 kW 26 A 7.5 kW 35 A 11 kW 50 A 15 kW 65 A 18.5 kW 80 A 22 kW 93 A 操作方式 交直両用操作形 (スーパー マグネット付き) N1/SE N2/SE N2S/SE N3/SE N4/SE N5 交流操作形 N1 N2 N2S N3 N4 N5A 直流操作形 N1/G N2/G N2S/G N3/G N4/G N5/G :新製品 富士時報 Vol.83 No.2 2010 2 電磁開閉器・接触器「NEO SC シリーズ」の機種拡充 渡邊 勝昭 Masaaki Watanabe 代島 英樹 Hideki Daijima 有吉 広亙 Hironobu Ariyoshi Expanded Line-up of “NEO SC Series” Magnetic Contactors 電磁接触器小型軽量化操作回路低電圧直流化直流操作回路投入電力低減市場ニーズにえるため,富士電 従来品との互換性外形寸法取付寸法端子位置)を維持しつつ軽量化した交流操作形電磁接触器SC - N5A」,来品べて操作回路投入電力大幅低減した直流操作形電磁接触器SC - N4/G」「SC - N5/G」を開発し,5.5 kW 22 kW の「NEO SC シリーズ」の機種拡充した。多目的アルゴリズムを活用した消費電力電磁石寸法最適化磁界運動連成解析大変形解析熱流体解析などをい,新電磁石構造開発した。 In response to market needs for magnetic contactors with smaller size and lighter weight, and a low-voltage DC control circuit with re- duced inrush power consumption, Fuji Electric has developed the SC-N5AAC operated contactor that retains compatibility (external dimen- sions, mounting dimensions and terminal locations) with, but is lighter than, the previous model, and the SC-N4/Gand SC-N5/GDC oper- ated contactors which feature greatly reduced inrush power consumption of the DC control circuit, and these models, ranging from 5.5 kW to 22 kW, have been added to the NEO SC Series.Using a multi-objective algorithm, the power consumption and electromagnet dimensions were optimized and electromagnetic field analysis of coupled motion, large deformation analysis and thermal-hydraulic analysis were per- formed to develop a new electromagnet structure. 156( 52 )

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Page 1: Expanded Line-up of “NEO SC Series” Magnetic …...電磁開閉器・接触器「NEO SCシリーズ」の機種拡充 渡邊 勝昭 Masaaki Watanabe 代島 英樹 Hideki Daijima

1 まえがき

電磁接触器とは,電磁石を操作することにより電気回路の開閉を行うもので,負荷の自動開閉用として使用される。

この電磁接触器に熱動形過負荷継電器(サーマルリレー)

を組み合わせたものが電磁開閉器であり,主に電動機の自動運転用に使用され,過負荷状態の電動機を焼損から保護する機能を備えている。

富士電機の電磁開閉器・接触器は,1954 年の発売以来50 余年の間,国内シェア No.1 を歩み続け累積生産数 2 億7 千万台を達成している。富士電機は常に時代の市場要求や技術動向を先取りした特徴ある商品を市場に提供して,

電動機制御分野の技術発展に貢献しトップメーカーとして

の地位を堅持してきた。

市場のグローバル化に伴い,国際性に富んだ製品や,環境性を考慮した製品が求められていた中,1999 年に電磁開閉器・接触器「NEO SC シリーズ」〔「SC-N1」〜「SC-

N16」(電動機容量 AC200 V,5.5 〜 200 kW)〕を発売した。

標準品で CE マーキング(欧州規格)および UL/CSA(北

米規格)に対応し,製品の消費電力を大幅に低減したこと

により,省エネルギー(省エネ)に貢献するグローバル商品として,お客さまから好評をいただいてきた。

環境配慮に対する取組みは,使用時の消費電力の低減な

どの製品使用時における省エネ化だけでなく,製品の製造,

輸送,使用,廃棄に至るまでのライフサイクル全体のエネ

ルギー消費量および環境負荷の最小化も注目されている。

制御盤においても同様に,次の環境対策を進めている。

™ 部品点数の削減や設置スペースの縮小による省資源化™ 制御盤の軽量化による輸送エネルギーの低減™ 使用時の消費電力の低減また,機械装置に関する安全規格が整備され,制御盤の

感電保護に対する本質的な安全設計方策として,DC24 V回路化に代表される制御回路の低電圧直流化が進められて

いる。上記環境対策や安全対策の要求により,直流電源の

小型・小容量化も制御盤の開発・設計において重要な課題となっている。

前述の環境対策や安全対策を実施する上で,制御盤内に

設置する電磁接触器の小型・軽量化,低消費電力化,直流

表₁ 「NEO SC シリーズ」(22 kW 以下)のシリーズ構成

フレーム N1 N2 N2S N3 N4 N5

定 格 モータ容量AC200 V

5.5 kW26 A

7.5 kW35 A

11 kW50 A

15 kW65 A

18.5 kW80 A

22 kW93 A

操作方式

交直両用操作形(スーパー

マグネット付き)N1/SE N2/SE N2S/SE N3/SE N4/SE N5

交流操作形 N1 N2 N2S N3 N4 N5A

直流操作形 N1/G N2/G N2S/G N3/G N4/G N5/G

:新製品

富士時報 Vol.83 No.2 2010

特集2

特集2

電磁開閉器・接触器「NEO SC シリーズ」の機種拡充

渡邊 勝昭 Masaaki Watanabe 代島 英樹 Hideki Daijima 有吉 広亙 Hironobu Ariyoshi

Expanded Line-up of “NEO SC Series” Magnetic Contactors

電磁接触器の小型軽量化,操作回路の低電圧直流化,直流操作回路の投入電力低減の市場ニーズに応えるため,富士電機は従来品との互換性(外形寸法,取付寸法,端子位置)を維持しつつ軽量化した交流操作形電磁接触器「SC-N5A」,従来品に比べて操作回路の投入電力を大幅に低減した直流操作形電磁接触器「SC-N4/G」「SC-N5/G」を開発し,5.5 kW か

ら 22 kW の「NEO SC シリーズ」の機種を拡充した。多目的アルゴリズムを活用した消費電力と電磁石寸法の最適化,電磁界運動連成解析,大変形解析,熱流体解析などを行い,新電磁石構造を開発した。

In response to market needs for magnetic contactors with smaller size and lighter weight, and a low-voltage DC control circuit with re-duced inrush power consumption, Fuji Electric has developed the “SC-N5A” AC operated contactor that retains compatibility (external dimen-sions, mounting dimensions and terminal locations) with, but is lighter than, the previous model, and the “SC-N4/G” and “SC-N5/G” DC oper-ated contactors which feature greatly reduced inrush power consumption of the DC control circuit, and these models, ranging from 5.5 kW to 22 kW, have been added to the “NEO SC Series.” Using a multi-objective algorithm, the power consumption and electromagnet dimensions were optimized and electromagnetic field analysis of coupled motion, large deformation analysis and thermal-hydraulic analysis were per-formed to develop a new electromagnet structure.

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操作回路の投入電力低減への要求が一段と強まってきてい

る。

このような要求の変化に対応して,交流操作形電磁接触 器「SC-N5A」,直 流 操 作 形 電 磁 接 触 器「SC-N4/G」「SC-N5/G」を開発し(電動機容量 AC200 V,SC-N4:18.5 kW,SC-N5A:22 kW),NEO SC シリーズのライ

ンアップの充実を図った(表₁)。図₁にその外観を示す。

次に開発品の概要を紹介する。

2 開発の狙い

電磁接触器の電磁石操作方式は,交直両用操作,交流操作と直流操作の 3 種類に大別される(図₂)。

NEO SC シリーズの大型電磁接触器 SC-N5 〜 SC-N16(電動機容量 AC200 V,55 〜 200 kW)は,交直両用操作方式“スーパーマグネット

”を採用している。スーパー

マグネットは,AC 入力を整流して DC に変換し,DC 励磁方式の電磁石を駆動する方式であり,操作回路に電圧検出回路とパワースイッチング回路を搭載したことを特徴と

している。スーパーマグネットの操作回路にコイル電圧を

印加すると,電圧検出回路がその大きさを確認し,投入動作に支障がないと判断した場合のみ投入信号を発生しコイ

ルを励磁する。投入動作完了後は保持信号に切り換わり,

パワースイッチング回路によりコイル励磁電流を抑えて消費電力の低減化を図る。電圧変動などでコイル電圧がある

程度降下しても保持状態を維持する。コイル電圧が著しく

低下した場合は,接点ばたつきが生じる電圧に低下する前に電圧検出回路が開放の要否を判断し,電圧保持信号を停止して開放する。電圧検出回路がコイル電圧を常時監視す

ることにより,電圧変動,瞬時停電および低電圧領域での

電圧印加など,他の操作方式で不安定動作をするような条件においても接点ばたつきがない安定した動作を実現する。

このような特徴を持つ交直両用操作形電磁接触器は,電圧変動が大きい環境下での使用や電力コストを重視した用途に適した製品である。

一方,交流操作方式は,AC 入力 AC 励磁の交流電磁石を搭載したことを特徴としている。交流電磁石は開放状態での磁気抵抗が小さいためインダクタンスが小さくなり,

投入時に大きなコイル励磁電流が流れる。吸引後にはイン

ダクタンスが大きくなりコイル励磁電流も小さくなる特性を持つため,小型でシンプルな電磁石構造でありながら投入時の吸引力が比較的大きくとれる利点がある。

直流操作方式は,DC 入力 DC 励磁の直流電磁石を搭載したことを特徴としている。直流電磁石は開放時・保持時で励磁電流の変化がないため,投入時の吸引力を確保する

ためにアンペアターンを増大させる必要があり,コイル巻線の体積が大きくなるが,投入電力を低減できる利点があ

る。

各操作方式の特徴と制御盤のニーズを考慮し,交流操作形電磁接触器 SC-N5A は小型・軽量で,制御盤の環境対策に最適な製品である。直流操作形電磁接触器 SC-N4/G,SC-N5/G は投入電力低減により,直流電源の小型・小容量化に貢献し安全対策に最適な製品である。

これにより,顧客の多様な用途に合わせて最適な電磁接触器が提供できるようになった。

3 特 徴

以下に今回開発した交流操作形電磁接触器と直流操作形電磁接触器の主な特徴を述べる。

₃.₁ 交流操作形電磁接触器

SC-N5A と従来品 SC-N5(交直両用操作形)の仕様比較を表₂に示す。SC-N5A は,小型・軽量の交流電磁石の

採用により従来品との互換性(外形寸法,取付け寸法,端子位置)を維持しつつ軽量化を図ったので,制御盤の軽量化,省資源化に貢献する。

₃.₂ 直流操作形電磁接触器

SC-N4/G,SC-N5/G と従来品 SC-N5(交直両用操作形)の仕様比較を同じく表₂に示す。SC-N4/G,SC-N5/G は,世界最小クラスの消費電力と外形寸法を実現した。

特に,投入電力は交直両用操作形の 1/5 に抑えており,制御盤に搭載する直流電源の小型化および小容量化が図れ,

制御盤の小型化・省資源化・低コスト化に貢献する。

各操作方式の特徴を表₃に示す。各種用途に合わせて最

「SC-N5A」 「SC-N5/G」

図₁ 「SC-N5A」「SC-N5/G」の外観

コイル

(a)交直両用操作形 (b)交流操作形 (c)直流操作形

AC入力AC励磁

DC入力DC励磁

AC入力DC励磁

固定接点可動接点

固定鉄心可動鉄心

整流回路・電圧検出回路など

図₂ 電磁接触器の電磁石操作方式

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適な電磁接触器の選定が可能となった。

4 小型・軽量化を達成するための技術

₄.₁ 交流操作形電磁接触器

図₃に交流操作形電磁接触器 SC-N5A の構造を示す。

電磁石は可動鉄心,固定鉄心およびコイルにより構成され,

可動鉄心には可動接触子支えと呼ばれる可動接点を格納す

る部品が連結されている。また,可動接点には接点閉時に

固定接点に対し接触圧力が付加されるように接点ばねが取り付けられている。コイルに励磁電流を流すと可動鉄心が

固定鉄心に吸引され,可動接点と可動鉄心が固定鉄心の方へ移動し,この一連の動作により接点を投入する仕組みに

なっている。接点投入後,可動鉄心は最終的に固定鉄心と

衝突する。この衝突時の衝撃を吸収するために固定鉄心と

筐体(きょうたい)の間にクッションゴムを配置している。

SC-N5A は,小型・軽量化実現のため下位フレームで

ある SC-N4 と同一寸法の小さい交流電磁石を採用したこ

の電磁石の負荷は図₄に示すように可動部の復帰ばねと接点ばねの合成負荷力になるため,電磁石はこの負荷力を乗り越える吸引力を発生する必要がある。接点ばねの負荷力

(接点の接触圧力)は電磁接触器の通電性能や閉路電流性能で決定されるため,SC-N5A の通電性能,閉路電流性能確保に要するばね負荷力は大きくなる。これは,通電電

流が大きいほど接点部の発熱や電磁反発力が大きくなるた

め,より強いばね負荷力を必要とするからである。

ただし,その負荷力に見合った吸引力を与えると可動部の運動エネルギーが増大するため,SC-N5A の開発にお

いては,電磁石の鉄心が衝突するときの衝撃を緩和して機

表₂ 開発品(交流操作形・直流操作形)と従来品の仕様比較

交直両用操作形(スーパーマグネット付き) 交流操作形 直流操作形

モータ容量 200 V 18.5 kW 22 kW 22 kW 18.5 kW 22 kW

形 式 SC-N4/SE SC-N5 SC-N5A SC-N4/G SC-N5/G

外 観

コイル消費電力200 V, 50 Hz

投入(VA) 100 80 250 20

保持 (VA) 2.8 4 18.4 20

外形寸法(mm) H×W×D 127×88×132 127×88×132 127×88×159

質 量(kg) 1.8 1.5 2.3

:新製品

表₃ 各操作方式の特徴

交直両用操作形 交流操作形 直流操作形

小型化 ◎ ◎ ○

軽量化 ○ ◎ ○

省エネルギー化(保持電力) ◎ ○ ○

直流電源小容量化(投入電力) △ - ◎

電圧変動対応(SEMI 瞬低対応) ◎ × ◎

◎:最適である,○:適している,△:あまり適さない, :新製品×:不適である,-:対象外

可動鉄心 筐体

クッションゴム固定接点

可動接点

可動接触子支え

コイル

接点ばね

復帰ばね

固定鉄心

図₃ 「SC-N5A」の構造

開放主接点接触閉路

接点ばね(3相分)

吸引力

復帰ばね

ストローク

負荷力と吸引力

図₄ 電磁石の負荷力と電磁石が発生する吸引力

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特集2

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械的な開閉耐久性を確保することが課題であった。 この課題を解決するためクッションゴムの最適化設計を

行い,小型で軽量ながら強力な吸引力と耐久性を備えた電磁石構造を実現した。

鉄心衝突時の衝撃緩和が不十分な場合,鉄心や可動接触子支えは折損に至る。機械的開閉耐久性を確保するために

は,衝撃吸収機能を十分に発揮する圧縮変形量の大きい

クッションゴムを設計する必要がある。圧縮変形量を大き

くすると繰返し変形によるストレスでクッションゴムが損傷し,衝撃吸収機能が低下してしまう。

そこで,大きく変形する部材の解析に適した大変形解析を行った。クッションゴムの変形量と応力を求め,材料,

形状,保持構造の最適化設計を行い,衝撃緩和機能と強度を両立させたクッション構造を開発した。クッションゴム

は固定鉄心の両側面に配置し,両部品に形成した貫通穴に

支持板を挿入して連結され筐体内に収納される。図₅に本解析例を示す。

₄.₂ 直流操作形電磁接触器

図₆に直流操作形電磁接触器 SC-N5/G の構造を示す。

消弧部および接点部の構造は交直両用操作形 SC-N5 と同一構造である。電磁石部の高効率化を図ることにより,直流操作形における世界最小クラスの消費電力と外形寸法を

実現した。なお,SC-N4/G の基本構造は SC-N5/G と同一で,接点部のみ異なる。

⑴ 最適化手法の適用直流電磁石においてアンペアターンが一定の場合,消費

電力とコイル巻線の体積(電磁石寸法)はいわゆるトレー

ドオフの関係にある。消費電力を低減しようとするとコイ

ル巻線の巻数が増えて体積は大きくなる。逆にコイル巻線の体積を小さくしようとするとコイル巻線の巻数減を補う

ために電流が大きくなり,消費電力が増大する。新直流電磁石の開発において,多目的遺伝アルゴリズム(MOGA

〈注〉

と呼ばれる最適化手法を利用してトレードオフ関係にある

消費電力と電磁石寸法の最適解を導出し,電磁石形状,巻線仕様の最適化設計を実施した。図₇に MOGA による最適解の導出結果例を示す。

⑵ 直流電磁石の詳細設計電磁接触器が投入動作するためには,可動鉄心を駆動す

変形量

クッションゴム支持板支持板

固定鉄心

高応力

図₅ クッションゴムの応力分布と変形の解析例(1/2 モデル)

消弧部・接点部 電磁石部

図₆ 「SC-N5/G」の構造

大きい方が望ましい

(望大特性)

小さい方が望ましい(望小特性)

導出された最適解

図₇ MOGA による最適解の導出結果

時間(s)

電流(A)

解析結果

実測値

図₈ 電磁界運動連成解析によるコイル励磁電流波形例

〈注〉MOGA: 生物の遺伝と進化を模擬した確率的探索手法(遺伝ア

ルゴリズム)を用いて,トレードオフの関係にある複

数の関数の最適解(多目的最適化)をシミュレーショ

ンにより求めるものである。

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る吸引力を確保する必要がある。吸引力はコイル巻線の巻数とコイル励磁電流の積であるアンペアターンによって発生するため,直流電磁石の詳細設計をするには,精度の高いコイル励磁電流を求めなければならない。可動鉄心が変位している間は磁束が変化しインダクタンスが増加する

ため,投入時のコイル励磁電流は一時的に減少する。この

過渡現象は,静的な電磁界解析を用いて求めることはでき

ない。電磁界と運動の連成解析を行って過渡的なコイル励磁電流および吸引力を求め,新直流電磁石の高精度設計を

行った。図₈に電磁界運動連成解析による投入時のコイル

励磁電流波形の例を示す。

電磁石設計において,コイル巻線の熱寿命を確保する

ためコイル温度上昇を規格内に収めることが不可欠であ

る。空気の流れを考慮した熱流体解析を用いて放熱孔の位置,大きさの最適化を行いコイル温度上昇の最適化を図っ

た。図₉に熱流体解析例を示す。その結果,外形寸法と消費電力の制約のもと,コイル温度上昇を最小にできるよう

にコイルの発熱を効果的に分散させる筐体設計を行った。

5 あとがき

環境対応や安全対応などの市場要求に即応できる「NEO SC シリーズ」の機種拡充を行った。今後も市場の要求の

変化に的確に応えるよう積極的に商品の充実に努める所存である。

参考文献⑴  古川国幸ほか. NEO SCシリーズ新大形電磁接触器. 富士時

報. 1999, vol.72, no.7, p.370-376.

温度高

図₉ 筐体を含む直流電磁石内の熱流体解析の例

渡邊 勝昭電磁開閉器の開発・設計に従事。現在,富士電機機器制御株式会社技術・開発本部開発部。

代島 英樹制御機器のシミュレーション技術の開発を経て,

開閉器の開発・設計に従事。現在,富士電機機器制御株式会社技術・開発本部開発部。

有吉 広亙電磁開閉器の開発・設計に従事。現在,富士電機機器制御株式会社技術・開発本部開発部。

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* 本誌に記載されている会社名および製品名は,それぞれの会社が所有する

商標または登録商標である場合があります。