ソーチエンの目立てについて · pm408 16h7 -10 .l1 j4.11 682 51ac ts3 6 34 c6sj lo4hcr...

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ソーチエンの目立てについて ある。 テザブスゲージ カッター各部の役割 カッターの木の切り方は、一般の手鋸とは全く 異なりいわゆる、みぞ切り、の原理で木を切って いる。それはあたかも大工がノコギリとノミで「み ぞ切り」作業をしているのと同じである。 (1) 横刃と上刃 -3 に示すように、まずカッターの横刃でみ ぞの側面を切り上刃がみぞの底面を削る。しかも 左右のカッターが高速で、回転しながら一瞬のうち にこのみぞ切り作業を行うのである。 リベ y ト穴 上刃 -2 前底部 カッターの構造 右カンター 底力 y l 現在、県下の民有林では、約 14 000 台のチェン ソーが使用されており、林業機械のうちでは最も 多く普及している。 チェンソーを使用して安全で、能率のよい仕事を するためには、正しい目立てが必要であることは 当然であるが、それは同時に振動障害の予防のた めにも極めて大切なことである。そこで現場にお ける正しい目立て技術の要点について述べる。 目立ての重要性 最近市販されているチェンソーは、以前に比べ ると非常に低振動(振動値 3G 以下)になり、な かには 1G 以下の機種も出廻っているが目立てが 悪ければ撮動は高くなり、そのメリットも全〈無 意味となってしまう。 チェンソーを使用していて 切れ味が悪い 切り曲がりする o 丸太の木口が汚い。 燃料を消費しすぎる 振動が激しい。 などの現象は、目立ての不良から起る場合がほ とんどである。しかもこのようなチェンソーを使 用していると疲労が激しく身体に無理がかかり、 振動障害病や思わぬ大事故の原因ともなる。 ソーチェン及びカッターの構造 正しい目立てをするためには、 ッターの構造を十分知る必要がある。 ソーチェンの構造は図 1 のとおり、カ y ター サイドリンク、 ドライフリンク及びそれらを継ぐ リベットから成り立っている。 ガード・ドライプリンク 後底部 3 O O O O O l ソーチェンとカ 2 カッターの切り方 (2) デプス 上刃の刃先からデプスゲージの最上部までの間 隔がデプスである。(図 -4 参照) デプスが小さ過ぎるとカッターが滑り切れ味が 悪くなるばかりでなく、長〈使い続けるとカッタ ー前底部とリベット穴の聞に亀裂が入りソーチェ -3 リベ y f ¥ 、と、 G うよ¥ 可時五?¥ "の 4 ソーチェンの構造 またカッターの構造は、図 -2 に示すとおりで -1

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Page 1: ソーチエンの目立てについて · pm408 16h7 -10 .l1 j4.11 682 51ac ts3 6 34 c6sj lo4hcr f15 52ac 0.404 13/64 84.85.86.87.88 14g22a-24a 3/8 7/32 72d 73d 22.23.24 646 18.38

ソーチエンの目立てについて

ある。

テザブスゲージ

カッター各部の役割

カッターの木の切り方は、一般の手鋸とは全く

異なりいわゆる、みぞ切り、の原理で木を切って

いる。それはあたかも大工がノコギリとノミで「み

ぞ切り」作業をしているのと同じである。

(1) 横刃と上刃

図-3に示すように、まずカッターの横刃でみ

ぞの側面を切り上刃がみぞの底面を削る。しかも

左右のカッターが高速で、回転しながら一瞬のうち

にこのみぞ切り作業を行うのである。

リベ

y

ト穴

上刃

図-2

ミご

前底部

カッターの構造

右カンター

底力y

l

現在、県下の民有林では、約14,000台のチェン

ソーが使用されており、林業機械のうちでは最も

多く普及している。

チェンソーを使用して安全で、能率のよい仕事を

するためには、正しい目立てが必要であることは

当然であるが、それは同時に振動障害の予防のた

めにも極めて大切なことである。そこで現場にお

ける正しい目立て技術の要点について述べる。

目立ての重要性

最近市販されているチェンソーは、以前に比べ

ると非常に低振動(振動値 3G以下)になり、な

かには 1G以下の機種も出廻っているが目立てが

悪ければ撮動は高くなり、そのメリットも全〈無

意味となってしまう。

チェンソーを使用していて

切れ味が悪い

切り曲がりする o

丸太の木口が汚い。

燃料を消費しすぎる

振動が激しい。

などの現象は、目立ての不良から起る場合がほ

とんどである。しかもこのようなチェンソーを使

用していると疲労が激しく身体に無理がかかり、

振動障害病や思わぬ大事故の原因ともなる。

ソーチェン及びカッターの構造

正しい目立てをするためには、

ッターの構造を十分知る必要がある。

ソーチェンの構造は図 1のとおり、カ y ター

サイドリンク、 ドライフリンク及びそれらを継ぐ

リベットから成り立っている。

ガード・ドライプリンク

後底部

3

O

O

O

O

O

l

ソーチェンとカ

2

カッターの切り方

(2) デプス

上刃の刃先からデプスゲージの最上部までの間

隔がデプスである。(図-4参照)

デプスが小さ過ぎるとカッターが滑り切れ味が

悪くなるばかりでなく、長〈使い続けるとカッタ

ー前底部とリベット穴の聞に亀裂が入りソーチェ

図-3リベ y ト

fン¥

コ夜、と、

Gうよ¥

可時五?¥"の

4

ソーチェンの構造

またカッターの構造は、図-2に示すとおりで

図-1

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上刃にげ角

.1..__ーオーーーーーー

横刃にげ角

にげ角図-6

カッターの型と正しい目立て

カッターの型式

カッターの型式は、次の 3種である。

4

(1)

デプス図-4

ンの切断事故につながる。

7匝?可g目Em

凶一町VUUチ

正しい目立て角度

正しい目立てを行うためには、まずチェンソー

をしっかり固定することである。現場で手軽に

行う方法には、切株等に切り目を付けそこにか‘イ

ドバーを固定するか、または図一 7に示すように

Uパイス(固定器具)等を用いて固定する。

また、使用する丸ヤスリは、チェンピッチに合

った規格のものを使用することがよい。

カッターの正しい形は図-8に示すとおりであ

7伊7につながる。

デプスの大ききは表-1に示すとおりであるが、

通常現場においては約O.7mm程度とするがよい。

(2)

木のかたさ別のデプス量

木のかたさ デプスの大きさ

かたい木 15-20 インチ 約 0.4-U.5m/m 1000

f虫25-30

1/ 1/ 0.65 -0.751/

1000

や わらかい木30-35

1/ /1 0.79-0.91/

1000

デプスが大き過ぎるとカッターのくい込みが大

きくなり抵抗が増して振動が激しくなるほか燃料

を浪費し、クラッチやスプロケットの異常摩耗の

大きな原因となる。また長〈使い続けるとカッタ

ー後底部とリベット穴の聞に亀裂が入り、デプス

が小さ過ぎる場合と同様にソーチェンの切断事故

表-1

アサリ及びにげ角

アサリはカッターの「横への広がり」のことで、

具体的には右カッターの最外側から左カッターの

最外側までの間隔を言う。

(3)

る。

Uパイスによる固定図-7

右カ

ソタl

にげ角は、図-6に示すように、上刃、横刃の

傾き角度であり、アサリと共に木を切っていると

きにカッターの受ける抵抗を少なくする役目をす

る。にげ角の角度は一定に保たれており、目立て

アサリ

左カ

ッター

図-5

5

によっても変化しない。

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孟lt

⑤デプス約0.7mm

Tーとコた己一一④,ιぺ①4V,Jf! , • . ,

図-8 カッターの正しい形, , .

表-2 チェーン別ヤスリ基準

図-9 ヤスリの当て方

チェーン ヤスリオレゴン

マッカ サンド トーヨオ レミン ノf イピ ッチ f圭 フ

ス チ ー ルヴイック

タカサゴセパー ト ン オニア

ドJt,r手ー

1/2" 1 / 4" 9AC PM508 652

9AC TS6515 53. 58

F6EH

10A C 10AC TS6625 F6EJ

7/16 7/32 61AC

485 TS4517

73. 78 06EH 1l4HCR

62AC TS4627 F6ES 125HCR

50AC 51AC 52AC 9L6-8 10J4-6 681 50C TS35 14.24 C6SH 7/32

58AC 59 AC 26.27 PM408 16H7 -10 .l1J4.11

682 51AC

TS36 34 C6SJ lO4HCR

F15 52AC 0.404

13/64 84.85.86.87.88 14G22a-24a

3/ 8 7/32 72D 73D 22.23.24 646 18.38

48

0.354 3/16 45C PM358 357

0.325 3/16 20. 21

0.250 1/8 102C PM250

O チッパー型

丸ヤスリの当て方は、ヤスリの直径の 5分の l

(メーカーによっては 5分の 1-10分の lとなっ

ているものもある)を上刃の刃先より上に出し、

ガイドパーの方向と直角に交わる線より 35度の角

度を取って水平に直すぐ前方に押して目立てを行

うと上刃切削角は約60度、横刃切削角は55度とな

り正しい目立てができる。

又、図-10に示すように丸ヤスリを下に下げ過

ぎたり、手元を上げて斜下方にするとフック形と

なり、逆に上に上げ過ぎたり、手元を下げて斜上

方にするとパックスローフ形となり共に正しい形

にはならない。

- 6ー

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リですりその刃長に合せる。そして刃長を揃える

と必然的に刃の高さとアサリが揃ったことになる。

又、刃長の長きが2分の l以下になれば、 1段

細い丸ヤスりを使用する。

デプスゲージ

目立てにより刃長は次第に短かくなってい〈。

刃長が短かくなるとにげ角のため刃の高さも次第

に低くなる。この結果相対的にデプスゲージは高

定規

¥

6

フγ ク形(;ウギ形)

鈍角

セミチゼル型

セミチゼル型の場合は、丸ヤスリの手元を10度

下げて、やや斜上方に向けて行う。その他はチッ

ノマー型と同じである。

チセワレ型

3つの型のなかでは、最も切れ味は良いが、角

ヤスリで上刃、横刃それぞれに分けて目立てをす

るので技術的にむづかしい。

丸ヤスリを使う場合には、セミチゼノレ型と同 じ方

法で行うが、ややフ ック形になることは避けられ

ノ〈ーー

パ γ クスロープ形

図-10

O

2

J

o

六三.一

15・・パJ.u

・)山一三一

-、J

-

、、

F

O

デプスゲージのすり方(デプスの調整)

~

図-11O

懇い目立て

目立ての良否と鋸屑の状況

良い目立て

図-12

7

ない。

刃長

刃長が揃っていないと振動が大きくなり、能率

が低下し、切り曲りを生じたり、ソーチェンや方、

イドパーを変形摩耗きせる。

刃長を揃えるには、ソ チェンの各カ ッターの

なかで最も短い刃長を見い出し、他の刃を丸ヤス

5

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くなるので、時々デプスゲージを平ヤスリですり

適正な高さに調整する必要がある。

デプスゲージのすり方は、図-11に示すとおり

デプスゲージ用の定規を使用し出た部分を平ヤス

リで水平にすって低くする。なおその際デプスゲ

ージの肩に角がつくので必ず平ヤスリで丸味をつ

けることを忘れてはならない。

7 ドライブリンクの足のヤスリがけ

ドライブリンクの足の先が丸くなると、パーミ

ゾのごみをかき出す能力がなくなるので、時おり

点検を行い、丸ヤスリをかけて先をとがらせる。

なお、ヤスリがけの結果、横の方へ少しめくれ

出るので、その部分を平ヤスリですり落してパー

ミゾにうまく入るようにする。

8 目立て

目立てが終了したら、試し切り等で切れ味等を

点検する。目立ての良い悪いは鋸屑の状態でおお

むね判断ができる。図-12に示すとおり正しい目

立てをしたカッターでは、切れ味が良〈、鋸屑は

一定の幅で薄片となり両端が鋭い刃物で切ったよ

うになっている。振動は少なく、木口の切り口は

平滑で美しく真直に切れる。

正しくない目立をしたカッターでは、鋸屑に細

かい粉が多〈混っていたり、鋸屑の両端が切れて

おらず、かきむしったようなものが多く混ってい

る。又、振動が大きく切り口は組雑で、切り曲り

等が生じたりする。

9 むすび

目立ての良い悪いは作業の能率や安全性に大き

く影響するので、常に正しい目立てを行い、作業

能率や安全性の向上、振動障害の予防等に努める

ことが大切である。

(教育指導部冨坂)