シールド工事格言集 - japan tunnel...現 場 シールドのトラブル源の典型例、...
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目 次
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1.技術の継承 1 2.現 場 4 3.施 工 6 4.確 認 8 5.地質・土質 10 6.調 査 13 7.設 計 14 8.仮設計画 17 9.測 量 19
10.発進・到達 21 11.マシン 23 12.掘進管理 28 13.線形管理 35 14.急曲線施工 36 15.蛇行修正 38 16.地表面沈下 39 17.止 水 41 18.泥水品質 43 19.地山改良(凍結工法) 45 20.セグメント 47 21.二次覆工 49 22.安 全 50
まえがき
シールド工法は、手掘り式から密閉型への移行によって
安全性・確実性が増し、飛躍的に適用範囲が拡大され、都
市部における代表的なトンネル構築工法として定着してい
る。一方、昨今の経済情勢に伴う工事量の減少や専門技術
者の不足などにより、蓄積されたシールド技術が十分に伝
承されないことが危惧されている。
このような状況を鑑み、都市トンネル小委員会の中に格
言編集ワーキングを設置し、工事関係者が忘れてはならな
い事柄(調査・計画・設計・施工の留意点)について、会員
各社にアンケートを実施し 491 件の回答を頂いた。
この度、その多数の貴重な回答を集約し、格言の小冊子
としてまとめた。
本書が、シールド技術の安全施工や技術の伝承に貢献で
きれば幸いである。
平成 24 年 2 月
社団法人日本トンネル技術協会
都市トンネル小委員会編集ワーキング
■■ 技術の継承 ■■■
失敗は上手く活かせば次へのどうひょう
道標!
されど鵜呑みは重い足かせ!
【解説】
類似の施工条件や同じ施工法を採用する場合は、その前
例で検討されたトラブル対処法などを調べ活用すること
が、施工計画上、非常に重要である。
「あの時もそうだったのか」と施工後に後悔することが
無いよう、施工前の計画段階で過去の実績やトラブル事例
をフルに活かすことが工事の成功につながる。
一方で、過去の失敗にこだわり過ぎると、工事の裁量範
囲を狭めることになり、コストアップや工程遅延のトラブ
ル原因にもなりかねない。
社団法人 日本トンネル技術協会
-2-
■■ 技術の継承 ■■■
先輩の、耳に痛いが役立つ小言!
多々はずれ、しかし斬新、若者思考!
【解説】
トンネルは経験工学であり、年長者の経験に基づいた発
言には、現場状況の好転につながる貴重な示唆が含まれて
いる。
一方で、従来の手法にとらわれない若者の自由な発想に
は、問題の本質をブレイクスルーする解決策が潜んでいる。
お互いの考えを尊重し合い、ジェネレーションギャップ
を乗り越えることで、世代間の融合と技術の継承に結びつ
けることができる。
社団法人 日本トンネル技術協会
-3-
■■ 現 場 ■■■
シールドのトラブル源の典型例、
妥協・見過ごし、「まあいいか」。
【解説】
施工管理の様々な場面で大きなトラブルにつながる小さ
な変化や異常に関し、ついつい妥協や見過ごしをしてしま
う。
シールド工事は繰返し工程が特に多いため、これらの小
さなトラブルが積み重なり、大きな問題に発展しやすい。
シールド現場の心得として、「まあいいかと」と思う気
持ちを常に排除することが、トラブル回避につながる。
社団法人 日本トンネル技術協会
-4-
■■ 技術の継承 ■■■
工事へのヒントが潜む地名の字!
【解説】
沼、池、谷、沢、川など水に関係のある地名は古くは湖
沼、河川の存在が予想される。同じように、浜、島、沖は
海、川に由来していることが多い。
このような地名では、地下水が豊富で軟弱な地盤が多く、
出水や切羽崩壊などのトラブルを想定して工事を進めるこ
とが望ましい。また、城、堀、垣などの地名では、城跡や
掘割を埋め立てた経緯が推定され、切羽に転石などの支障
物が出現する可能性がある。古い地図や地域の歴史書を参
考に工事する取組みが重要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-1-
■■ 施 工 ■■■
起こってからでは手遅れだ!
現場百回、変化をつかめ!
【解説】
都市部の厳しい条件下で施工することが多いシールド工
事では、問題に直面してから計画を是正改善していく方法
はリスクが高い。
施工時は「現場百回」の精神で常に現場状況の変化把握
に努めて、トラブルを未然に防ぐことが必要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-6-
■■ 施 工 ■■■
シールド工事!
見えない切羽に、挑む魅力と難しさ。
【解説】
切羽を直視できない密閉型シールドは、得られる情報(土
水圧、推力、カッタートルク、掘進速度、排土性状等)か
ら切羽の状況を想像しながら施工するという特有の工事で
あり、難しさと同時に魅力を持った工事でもある。
シールド工事は、掘進・セグメント組立の繰り返し作業
が主体であるが、地山や地下水などの状況は常に変化して
いる。その変化を見過ごさず、適切に対応するための想像
力や判断力、行動力を合わせた総合的な技術力が必要であ
る。
日々の施工を通じて、経験や知識を習得し、技術力の向
上に努めることが肝要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-7-
■■ 確 認 ■■■
条件や設計図書は過信せず!
施工の前に要照査!
【解説】
工事条件や設計図面は、様々な調査の結果に基づいて作
成されるが、事前調査には限界があり、工事前の現地に即
した条件確認と設計照査が工事成功の鍵となる。
社団法人 日本トンネル技術協会
-8-
■■ 現 場 ■■■
シールドの掘進支えるあ と
後向むき作業!
【解説】
シールド掘進は、掘削に関わる作業ばかり注目されるが、
設備・機械メンテナンスや坑内清掃も1日の重要な作業で
ある。
掘進ばかりを追いかけてメンテナンスを怠れば、機械設
備のトラブルで何日間も掘進が止まることもあり、日々の
坑内の清掃を怠れば、到達後の坑内清掃に何ヶ月もかかる
こともある。
シールド現場の心得として、掘進を支えるこれら後向き
作業の重要性を認識しなければならない。
社団法人 日本トンネル技術協会
-5-
■■ 地質・土質 ■■■
頼りすぎるな試験データ!
見えない地山、見て・触って確認、
土質の性状!
【解説】
シールド掘進前に掘削地盤の土質状態を把握し、シール
ド機の設計や添加材の選択を行うことは、トラブル防止に
欠かせない。しかし、土質柱状図には調査技術者の主観が
入っており、記載されている情報にも限りがある。
そこで、サンプリング資料の実物を見て、土質を肌で感
じることで、試験データの数値やコメントだけではわから
ないより具体的な情報を得ることが必要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-10-
■■ 地質・土質 ■■■
忘れるな!
君が見ている縦断図、描かれた土層
はすべて想定!
【解説】
地質縦断図は、ボーリング結果による複数の土質データ
を基に、地質技術者が各々の経験や知識、地歴などの情報
を付加してデータのある地点間を補完して作成されてい
る。
また、ボーリング地点もシールド路線上のジャストポイ
ントでない場合が多く、ボーリングした時期(季節、年代)
や方法によって差異のある土質データが得られる場合もあ
り、必ずしも実態と合致しているものではないことを十分
に認識しておく必要がある。
社団法人 日本トンネル技術協会
-11-
■■ 地質・土質 ■■■
切羽の安定、決め手は土砂の細粒分!
【解説】
地山に含まれる細粒分(バインダー分)は、泥土圧シール
ドの塑性流動性や泥水シールドの逸泥に大きく影響を及ぼ
す要素であり、切羽の安定を保つために把握すべき重要な
ポイントである。
事前の土質データ、実際に排土された土砂性状から細粒
分の含有率を把握し、切羽の安定に必要な適正量を維持し
た加泥材添加量や泥水性状を管理する必要がある。
社団法人 日本トンネル技術協会
-12-
■■ 確 認 ■■■
思い込み、確認不足の解決は、ホウ
レンソウ(報告・連絡・相談)の正確化!
【解説】
設計,施工,資機材発注や各方の作業交代時など、数字
や引き継ぎ事項の思い込み・勘違いなどにより、大きな問
題を生じることがある。
昼夜間の施工交代が前提のシールド工事では、この問題
を防ぐため、口頭だけでなく必ずチェックリストや掘進指
示書等の記録を用いて正確な情報伝達と意思疎通を行うこ
とが重要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-9-
■■ 設 計 ■■■
マニュアルだのみの設計禁物!
現場の条件とマッチさせて!
【解説】
示方書や基準類などの教科書は、標準的で一般的なもの
であり、現場の特殊な条件等は反映されていない。
現地状況の把握や施工手順の検討がなく、示方書や計算
ソフトに頼りっぱなしの設計は、実際の条件に合致せず施
工に支障をきたす場合がある。
現地条件と設計モデルの妥当性を常にチェックしなけれ
ばならない。また、施工条件を考慮しているか、計算式は
適用範囲や条件が現場特性と合致しているかを確認する必
要がある。
社団法人 日本トンネル技術協会
-14-
■■ 設 計 ■■■
シールドは急に向きを変えられない!
方向転換は一旦まっすぐに!
【解説】
シールド機はクルマのハンドルのように駆動輪で操作し
ているわけではなく、機体を折り曲げることでカーブを曲
がることができる。
したがって、急激な方向転換のようなカーブを切ること
はできない。
例えば S 字カーブは、手前の曲線区間をシールド機全長
が抜け出て姿勢を直線に戻した後、次の逆方向のカーブに
入ることが可能となる。したがって、S 字カーブの曲線間
には最低1機長分の直線区間が必要となる。
社団法人 日本トンネル技術協会
-15-
■■ 設 計 ■■■
将来を考えていますか、その設計!
【解説】
コストダウンを図るあまり、体裁だけを整えた設計をす
ると、長距離や土質変化などのリスクを反映しないため、
かえってトラブル対策やメンテナンスで費用が発生する。
また、数年後にメンテナンスが必要となる場合もあるの
で、維持管理に向けた対策を講じておくべきである。
したがって、施工時のトラブル回避と供用後のライフサ
イクルコストを考えた先行投資が必要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-16-
■■ 調 査 ■■■
掘るより重要、事前調査!
必ず確認、支障物件!
【解説】
設計図に基づいたシールド掘進計画がいくら万全でも、
事前調査不足が原因で地中障害物に遭遇し、シールドが掘
進不能となることがある。
設計時の調査資料だけで判断することなく、周辺のあら
ゆる情報を集約することが重要である。
例えば埋設管であれば竣工図などの資料や、河川横断で
あれば川のできた歴史や護岸・堤防等の工事地域に関する
情報を収集する。さらに、掘進路線の地上部を綿密に観察
し、シールド掘進の障害となるものが地中に存在しないか
をイメージして調査する。
社団法人 日本トンネル技術協会
-13-
■■ 仮設計画 ■■■
進捗のカギは仮設備にあり!
【解説】
仮設備計画の良否が、シールド工事の施工を左右する。
工事着工から完了までの施工全体を考慮した仮設備を計画
することが重要である。
シールド掘進の施工サイクルは、関連する設備の中で能
力の最も小さい設備で決まる。特に土砂搬出計画の良し悪
しが、全体の施工サイクルに大きく影響することが多い。
また、消耗や故障を見越した消耗部品・予備品の手配、
トラブルの少ない構造・工夫、トラブル発生時の対処方法
も事前に計画しておく必要がある。
社団法人 日本トンネル技術協会
-18-
■■ 測 量 ■■■
いざ測量!
おっと、その前にダボ確認!
【解説】
現場での測量に伴なうミスは、使用するポイントの間違
えや勘違いなどのヒューマン・エラーに起因するものが非
常に多いのが現状である。また、ダボ点(基準点)は施工
中に何かが接触したり、周辺作業で動いたりする恐れもあ
る。
対象点の測量を行なう前に、まずはダボ点の確認をしっ
かりとすることが、測量ミスを防ぐ手立てである。
社団法人 日本トンネル技術協会
-19-
■■ 測 量 ■■■
自動測量でラクラク施工♪
だが、ちょっと待て! その前提は
日々の確認。
【解説】
近年、シールド工事では様々な計測器を装備し、施工の
効率化を担う有効なアイテムとして活用されている。
シールドマシンを自動追尾して常時計測する自動測量シ
ステムもそのひとつであり、採用している現場も多くなっ
ている。
しかしながら、その結果を鵜呑みにすれば計画線形から
の逸脱に気が付かない等の事態を生み出す要因となる。
従来の人による測量やチェックを怠らずに使用してこそ
有効な施工アイテムである。
社団法人 日本トンネル技術協会
-20-
■■ 仮設計画 ■■■
人の作業姿勢を意識していますか、
その設備!
【解説】
小口径でも大口径でも、セグメント組立やシールド設備
の延伸などの作業は人力作業が基本である。
したがって、小さいなら小さいなりに、大きければ大き
いなりの足場や作業空間、揚重設備など作業性を考慮した
設備計画が必要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-17-
■■ 発進・到達 ■■■
到達だ!
ホッとするのは未だ早い!
裏込め一番、祝杯二番。
【解説】
シールド到達後、ゴムパッキンをワイヤーで締付けても、
パッキンとの間に異物が噛み込めば出水が生じる。
地下水の流入により水みちが生じ立坑内が水没すること
もある。
シールド到達後は入念に裏込め注入を行い、シールドの
立坑進入時は、常に監視を行い、早期に再注入等を行う必
要がある。
社団法人 日本トンネル技術協会
-22-
■■ マシン ■■■
五感で感じよシールド異常!
直ちに行え手当て対策。
【解説】
シールド機は各種センサーや安全機構が組み込まれた高
性能機械であるが、人間はそれにも勝るセンサーを持って
いる。
シールド機等の異常に気付いたときは、目先の進行にと
らわれることなく、迅速に手当てをすることが、致命的な
損害を防ぐことに繋がる。
そのためには、毎日の作業に使用しているすべての機械
を、きれいに磨いて清掃・点検することで、早期に異常を
発見して対処することが可能となる。また、愛情を注いで
いる機械は取り扱いも丁寧になるため壊れにくいものであ
る。
社団法人 日本トンネル技術協会
-23-
■■ マシン ■■■
小さな節約、大きな損失!
ケチるな、惜しむな仮設備。
【解説】
少額をケチったばかりに大きな額の損失になる場合があ
る。
例えば、テールブラシの給油を節約すると摩耗や裏込め
の固着が生じ、出水トラブルなど多くの損失につながるこ
とがある。本当に必要な部分にはお金をかけるべきである。
社団法人 日本トンネル技術協会
-24-
■■ 発進・到達 ■■■
忘れるな!
鏡の奥に潜む水、切羽は常に生きて
いる
【解説】
地盤改良され堅固に見える発進・到達の鏡部の地山も、
その奥に潜んだ水の影響を受けて動き・崩壊する場合があ
る。
鏡切り後の切羽は生き物と思い、気を緩めることなく常
に監視を怠らないこと。
シールド工事では、発進と到達が最もリスクの高い状態
であり、発生するトラブルは多大な影響と損失を伴なう。
事前の調査や準備、万が一の対処方法などを十分に検討
し、慎重かつ速やかに作業を実施すること。
社団法人 日本トンネル技術協会
-21-
■■ マシン ■■■
シールド掘進!
出来るだけ、全数使えシールド
ジャッキ!
【解説】
シールド掘進時、使用ジャッキ本数が少ない片押し状態
になると、セグメントにひび割れや目開きが生じやすくな
る。また、軟弱地盤では地盤反力が取れずにセグメントが
押し出される傾向となる。
このため、中折れを利用し、全ジャッキ押しをすること
が望ましい。
社団法人 日本トンネル技術協会
-26-
■■ マシン ■■■
命運握るシールド機!
土質と相性良いですか。
【解説】
シールド工事においては土質に合ったシールド機の設計
が最も重要である。
過去の失敗例では設計条件の判断ミスが多い。ビットの
摩耗計算、カッタートルクには余裕が必要。
例えば、地盤の礫含有量を少なく見積もったため、面版
が摩耗した例もある。
社団法人 日本トンネル技術協会
-27-
■■ 掘進管理(全般) ■■■
ちょっと待て!
掘進止めて検討会。
【解説】
シールド掘進において線形・土砂の取り込み・安全設備
等に不安を感じた場合は、必ず一度掘進を停止して対応策
の検討を行い、不安要因を取り除いてから再開するべきで
ある。
シールドはバックできないので、勇気をもって止めるこ
とも必要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-28-
■■ マシン ■■■
セグメント組立!
出来るだけ、沢山突っ張れシールド
ジャッキ!
【解説】
セグメントの組立て時、作業性を優先し多くのジャッキ
を引き戻しがちになるが、そうした場合、シールドが後退
し、切羽圧が変動して地山に悪影響を及ぼす。
引き戻すジャッキは必要最小限にしなければならない。
社団法人 日本トンネル技術協会
-25-
■■ 掘進管理(切羽圧力) ■■■
切羽圧力は、計算で求めるのみに
あらず!
【解説】
地下水位や想定した土質から算出した設定切羽圧力は、
実際に掘っている地山条件とは必ずしも一致しない。
常に排土の性状・状況等を把握して、切羽圧を見直すこ
とが肝要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-30-
■■ 掘進管理(泥土圧シールド) ■■■
チャンバー内を、イメージしながら
土圧管理。
【解説】
実際に目視できる排土性状ばかりに気を取られている
と、切羽の安定管理がおろそかになる。
例えば、掘削残土改質のための固化材の添加量を減らし
たいため、加泥材を減量したりすると、チャンバー内の塑
性流動性が悪くなり、徐々にチャンバー内閉塞が進行する。
閉塞を解除するために加泥材の添加量を急激に増やすと、
今度は流動性が大きくなりすぎ、噴発状態になり切羽の不
安定化を招く要因となるので、土圧管理には注意が必要で
ある。
社団法人 日本トンネル技術協会
-31-
■■ 掘進管理(泥土圧シールド) ■■■
排土を見て、触って、嗅いで感じ取
る掘削地盤と土質の変化。
【解説】
土質の変化は、毎日切羽にて五感で感じ取ることが重要
である。
泥土圧シールドにおいてチャンバー内が塑性流動性と止
水性を持つ適切な状況であるか否かは、掘削土の現物を見
て・触って確認し、加泥材の配合や設定土圧が適正かどう
かを見極めて判断することが重要である。
手触り、臭いを感じ、異臭がしたら換気等の対策を行な
い、噴発のありそうな含水比の高い地山が想定されたら、
粘性の高い加泥材を使用するなどの対策を考えることが可
能となる。
社団法人 日本トンネル技術協会
-32-
■■ 掘進管理(切羽安定) ■■■
水は動かすな!
さすれば山は動かない。
【解説】
土は土粒子と水で成り立っているため、間隙水圧などの
水の動きによって地盤の状況は変化するものである。
極力水を動かさないことを念頭に切羽圧力の変動を少な
くするように施工管理すれば、地盤の変化を抑えることが
できる。
社団法人 日本トンネル技術協会
-29-
■■ 掘進管理(データ) ■■■
見落とすな!
いつもと違うぞこのデータ!
小さな変化に潜む大きな落とし穴。
【解説】
掘進管理データはたくさんあるが、その変化に気づき、
その原因を解き明かすことが大事である。
掘進管理におけるシールド機の特性や排出土量の傾向な
どは、それまでの実績が何よりの根拠となる。
ただし、日々のデータがほぼ安定していても1週間単位
でみると異常な場合もある。
目先のデータにとらわれず、あらゆる面から変化や傾向
を敏感に感じ取り、早期に気づくように心すべきである。
社団法人 日本トンネル技術協会
-34-
■■ 線形管理 ■■■
線形管理はまず可視化!
数値で考えるよりまずは図化!
【解説】
線形管理はシールド機の位置・向きについての設計線形
からのずれ量について、数値の大小、羅列だけにとどめず、
グラフを書いて大きな流れをつかむことが重要である。
掘進状況を可視化、図化することで計画線形に対する掘
進軌跡が具体的に見えてくる。
マシン測量を厳密にし、マシン先端の出来形に合わせて
セグメント組立計画を反映しないと、セグメントが組めな
い事態も発生する
社団法人 日本トンネル技術協会
-35-
■■ 急曲線施工 ■■■
急カーブ!
マシンは急に曲がれない。まずは
事前にシミュレーション。
【解説】
曲線施工では、基線の外側へ膨らむのは簡単だが、一度
外側に膨らんでしまうと、内側へ戻そうとするのは大変で
ある。
そのような事態を引き起こさぬように、余掘りの量・範
囲・開始・終了位置、中折れの角度・開始・終了位置(B.C.
手前何リング~E.C.から何リングまで等)の設定を計画し
たカーブシミュレーションを事前に実施することが重要
で、それが所定の線形を確保することにつながる。
社団法人 日本トンネル技術協会
-36-
■■ 掘進管理(データ) ■■■
施工管理、油断すれば山がくる!
【解説】
掘進管理データを逐次観察し、臨機応変の対応やデータ
変動要因の即時把握に努め対応を図れば、地盤変状を最小
限に抑えることができる。
順調な推移に油断をすると大きな地盤変状を引き起こす
ことがある。
社団法人 日本トンネル技術協会
-33-
■■ 蛇行修正 ■■■
ちょっと待て!
蛇行はすぐに戻さない。
【解説】
計画線からのマシンのずれを修正する際は、急に戻そう
とせずマシンの姿勢とセグメントの向きを確認し、セグメ
ントに損傷を与えず滑らかに計画線形にすり付けるようマ
シン方向修正量を設定することが重要である。
また、蛇行修正にあたっては、シールド操作だけでなく
テーパーセグメントも適正に使用する。
社団法人 日本トンネル技術協会
-38-
■■ 地表面沈下 ■■■
掘削土量の大きな変化は、地盤変状
の危険信号!
【解説】
土圧式では、掘進量とスクリューコンベヤからの排土量
のバランスを調整することが重要である。
掘削土の取り込み過ぎ、または、不足が原因で切羽が不
安定となり、地盤変位(沈下または隆起)が生じる。掘削
土量が多い場合には、裏込めを十分に行い、地表面の監視
を行うことが重要である。
泥土圧では、添加材の添加量や掘削土砂状態等の変化に
よって排土の体積や重量が変化するため、土量管理だけで
切羽の安定状態を的確に判定することは難しい。そのため、
切羽圧力と排土量で管理を行うことが必要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-39-
■■ 地表面沈下 ■■■
掘進管理に活かそう地表の変化。
日々確認で見逃すな!
【解説】
シールド掘進では、土被りや地盤によって、切羽圧力や
掘削土量の取り込み、裏込め注入圧等の影響を受け、地盤
の隆起や沈下だけでなく泥水や加泥材の噴発などが発生す
るおそれがある。
切羽安定管理、裏込め注入管理の適否の判断のため、シ
ールド掘進箇所の前後の地表の変化状況を、測量以外でも
日々確認することが重要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-40-
■■ 急曲線施工 ■■■
曲線に、入る前に正そうマシンの姿勢。
【解説】
急曲線ではシールド機の姿勢が悪くなると、立て直すこ
とが困難となるとともに、線形精度確保の支障にもつなが
るので注意が必要である。
特にローリングの発生では中折れが縦断方向にも効いて
くるため注意が必要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-37-
■■ 止 水 ■■■
ど た ん
土丹にも水あり!
【解説】
土丹(固結度の低い泥岩、洪積層の硬質粘土層)は、堆積
した砂質粘土が長年にわたって固く凝固したもので、一般
に水もなく自立する地層であり、安心して掘削できる地層
と考えられている。
しかし、介在している砂層から出水のおそれがあるため、
特にトンネル切拡げや地中接合の工事では止水対策に配慮
が必要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-42-
■■ 泥水品質 ■■■
泥水品質管理は、比重と粘性のみ
にあらず!
【解説】
透水性の高い砂礫層では、逸泥防止として目詰め効果を
発揮させる砂分の含有も管理することが大切である。
地盤中の粘土・シルト分や砂分量が変化すると泥水性状
が変化するため、施工中は、掘削土砂の土質の変化を把握
することや泥水を色や感触で性状を把握できるようにする
ことが必要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-43-
■■ 泥水品質 ■■■
塩分、セメント成分の混入が招く
泥水劣化!
掘進前にリフレッシュ!
【解説】
地下水に塩分がある場合やセメント系地盤改良区間掘進
によるセメント成分(Ca2+イオン)の混入では、泥水が凝
集反応を起こして劣化する可能性がある。
そのため、地下水の水質にも留意し、泥水調整材等によ
る対処方法を事前に検討しておくことが必要である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-44-
■■ 止 水 ■■■
目開き、目違い漏水の元!
セグメント組みで決まる止水の良否。
【解説】
トンネルの漏水は、いったん発生すると、あとで完全に
止めるのは容易ではない。
シールドトンネルでは、主な漏水箇所がセグメントの継
手面であることから、シール材が止水の要である。
そのため、セグメント組立て時は、シール材に損傷を与
えないようにするとともに、目開き、目違いを生じないよ
うに丁寧に組立て真円度を確保することが重要である。ま
た、一次覆工施工時に裏込め注入を確実に行うことが必要
である。
社団法人 日本トンネル技術協会
-41-
■■ 地山改良(凍結工法) ■■■
気をつけろ!
凍土解凍、地盤の緩み。
【解説】
凍結工法は、凍土の強度および遮水性が高いため一般的
に信頼性が高く確実な工法である。
しかし、粘性土など土質によっては凍結膨張と、解凍に
よって元の地山以上に緩むなど、周辺地盤に影響を与える
ことがあるため注意が必要である。
この場合には、他の地盤改良の併用や、解凍時に生じる
土粒子間の間隙を無機系材料で充填置換する等の対策を検
討する必要がある。
社団法人 日本トンネル技術協会
-46-
■■ セグメント ■■■
一次覆工、出来栄えでわかる腕の違い。
【解説】
セグメントの組立においてクリアランスが不足した状態
で組み立てるとセリなどが発生するため、常に測量してマ
シンの位置や姿勢をチェックし、クリアランスを確保する
ことが重要である。
また、必要に応じて適切なタイミングで修正セグメント
を使用して修正を行うことでセグメントはひび割れもな
く、きれいにセグメントが組める。ここに、職員の管理能
力が腕の違いとして表れる。
社団法人 日本トンネル技術協会
-47-
■■ セグメント ■■■
セグメント、大事に扱え”箱入り娘”。
【解説】
セグメントはシールド覆工体を形成する重要な本設構造
体であるとともに、最終的な仕上がりとなる場合も多い。
そのため、セグメント搬入、運搬、組立、掘進等の全ての
工程で、セグメントに損傷を及ぼさないように配慮する必
要がある。
特にRCセグメントが損傷すると漏水の原因となるた
め、慎重に扱う必要がある。
社団法人 日本トンネル技術協会
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■■ 地山改良(凍結工法) ■■■
地盤改良、過信は危険!
忘れずに効果の確認、対策準備。
【解説】
地盤改良したから大丈夫と考えていても、地盤条件の相
違などの理由により計画通りに地盤改良はできていない場
合がある。
そのため、過信せずに改良効果を確認するとともに、補
足注入などの対応ができるように準備することが必要であ
る。
社団法人 日本トンネル技術協会
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■■ 安 全 ■■■
最後まで、出ないと思うな!
水とガス。
【解説】
シールド工事では水とガスは常に念頭におき、注意して
施工すべきである。
水に関しては、到達や地中接合などでのマシン切断作業
で、シールドが変形し水を呼び込むことがある。最後まで
気を抜かないことが大切である。
また、ガスの発生の恐れがある場合は 1に十分な換気
設備、2に坑内定点でのガス濃度の測定と確認、3に坑内
火気使用禁止、を施工計画段階から三点セットとして計画
しなければならない。
ガスは目に見えないものなので、つい忘れがちである。
常にガスの存在を意識して注意する必要がある。
社団法人 日本トンネル技術協会
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