ロシア:nord stream 2に対して加熱する欧米の攻 …...2009...

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1Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれ るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投 資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任 を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 更新日:2020/2/14 調査部:原田大輔 公開可 ロシア:Nord Stream 2 に対して加熱する欧米の攻撃とロシア・ウクライナガストランジット契約 交渉の経緯と妥結を振り返る 1.独露パイプライン(Nord Stream 及び Nord Stream 2)に対して加熱する欧米の攻撃 2019 年に入り、欧米による Nord Stream 2 への攻撃が過熱。欧州は、デンマークのルート承 認延期、欧州議会によるガス指令修正案通過。欧州裁判所による Gazprom OPAL パイプラ インへの 100%アクセス撤回判断。米国はポーランド及びウクライナと共にロシア産ガスを排 除し、米国産 LNG を供給することによるエネルギー安全保障推進をすることを目的とした暫 定的協力協定を締結。更にトランプ大統領は 2020 年国防授権法に署名し、 Nord Stream 2 及び Turk Stream に関する制裁を発動。 ・欧米政府が足並みを揃えたように Nord Stream 2 を止める又は遅延させようとする背景には ウクライナへの配慮がある。同パイプラインの稼働を遅らせられれば、ロシアはその間ウクラ イナ経由でガス供給を行う必要に迫られ、それがウクライナへタリフ収入をもたらす。また、 2019 年という年は奇しくも 2009 年のウクライナ天然ガス供給途絶問題後、ロシア・ウクラ イナが協議の末合意したガストランジット契約が満了するタイミングでもある(2.で詳 述)。さらに米国の思惑はさらに実利的であり、シェール革命で急増する米国産 LNG を欧州 市場に売りたいという思惑がある。 2.ロシア及びウクライナによるガストランジット契約交渉の推移と妥結 ・同契約は 2009 年のウクライナ及びロシア間で発生したガス供給途絶問題の解決策として、 2009 1 19 日にウクライナ・Naftogaz とロシア・Gazprom が調印したもので、10 年間 超の契約期間の満了を 2019 年末に迎えようとしていた。この 10 年の間、ウクライナでは親 露政権がクーデターで倒れ、ロシアはクリミアを併合し、欧米制裁が発動。ウクライナ東部地 域では内戦に発展しているという状況で、当該契約更新交渉は一筋縄ではいかないと見られて おり、もし契約更改が遅延すれば、ウクライナ経由の欧州向けガストランジットが出来なくな り、2009 年同様に再度供給途絶のリスクが高まる状況にあった。 ・年末まで交渉は継続。12 19 日、ベルリンでの閣僚級会合で漸く年内合意に向けた方向性

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-1- Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれ

るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投

資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任

を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

更新日:2020/2/14 調査部:原田大輔

公開可

ロシア:Nord Stream 2に対して加熱する欧米の攻撃とロシア・ウクライナガストランジット契約

交渉の経緯と妥結を振り返る

1.独露パイプライン(Nord Stream及び Nord Stream 2)に対して加熱する欧米の攻撃

・2019 年に入り、欧米による Nord Stream 2 への攻撃が過熱。欧州は、デンマークのルート承

認延期、欧州議会によるガス指令修正案通過。欧州裁判所による Gazprom の OPAL パイプラインへの 100%アクセス撤回判断。米国はポーランド及びウクライナと共にロシア産ガスを排

除し、米国産 LNG を供給することによるエネルギー安全保障推進をすることを目的とした暫定的協力協定を締結。更にトランプ大統領は 2020 年国防授権法に署名し、Nord Stream 2 及び

Turk Streamに関する制裁を発動。

・欧米政府が足並みを揃えたように Nord Stream 2 を止める又は遅延させようとする背景にはウクライナへの配慮がある。同パイプラインの稼働を遅らせられれば、ロシアはその間ウクラ

イナ経由でガス供給を行う必要に迫られ、それがウクライナへタリフ収入をもたらす。また、

2019 年という年は奇しくも 2009年のウクライナ天然ガス供給途絶問題後、ロシア・ウクライナが協議の末合意したガストランジット契約が満了するタイミングでもある(2.で詳

述)。さらに米国の思惑はさらに実利的であり、シェール革命で急増する米国産 LNGを欧州市場に売りたいという思惑がある。

2.ロシア及びウクライナによるガストランジット契約交渉の推移と妥結

・同契約は 2009 年のウクライナ及びロシア間で発生したガス供給途絶問題の解決策として、

2009 年 1 月 19 日にウクライナ・Naftogazとロシア・Gazpromが調印したもので、10 年間超の契約期間の満了を 2019 年末に迎えようとしていた。この 10 年の間、ウクライナでは親

露政権がクーデターで倒れ、ロシアはクリミアを併合し、欧米制裁が発動。ウクライナ東部地

域では内戦に発展しているという状況で、当該契約更新交渉は一筋縄ではいかないと見られており、もし契約更改が遅延すれば、ウクライナ経由の欧州向けガストランジットが出来なくな

り、2009 年同様に再度供給途絶のリスクが高まる状況にあった。

・年末まで交渉は継続。12 月 19 日、ベルリンでの閣僚級会合で漸く年内合意に向けた方向性

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るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投

資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任

を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

が示され、12 月 20 日、ミンスクにて遂にロシアとウクライナは既存のトランジット契約の後

継となるウクライナ経由で欧州に天然ガスを輸出することを定めたプロトコールに署名。12

月 30 日、関係当該企業(Gazprom、Naftogaz及びウクライナガス輸送システムオペレータ)はプロトコールに基づき、5 年間のガストランジット契約を締結したことを発表(2020 年~

24 年で合計 225BCMをトランジット)。

・今回の交渉結果については、契約期間及び輸送容量では双方の要求の間を採った結果になっ

ている。ウクライナに支払われるトランジットタリフについては最大の争点になったと考えら

れるが、これが 1.9%の上昇幅となり、インフレを加味したとしても驚くほどの上昇ではなく、また輸送容量では Naftogazが望む量(60~90BCM)を大幅に下回る量(年平均

45BCM)で妥結している。また、ストックホルム仲裁裁判所で確定した Gazpromに対する罰

金(29.18 億ドル)の支払いを除き、まだ最終決定に至っていない双方の全ての賠償請求訴訟を取り下げ、また、Naftogazが欧州等で進める Gazpromに対する資産等差し押さえを取り下

げることとなった。総体的に見れば、ロシア側に軍配が上がったと見ることもできるだろう。

・他方で、Naftogazはロシアに対し、ロシアのクリミア併合により失った同社のクリミア資産

の減損についての新たな訴え(70 億ドル以上)を 1 月 10 日にロシアに対して提起したことを

明らかにしており、さらに 2 月に入って、Gazpromが実質コントロールしているロシアの独立系ガス生産者のガス輸送や中央アジアのガストランジットについてデリバリーポイントを見

直すことや 2009 年の RosUkrEnergo を巡って Naftogazが負った負債に関する内容について

正していくことを表明し始めている。

・年末ぎりぎりまで関係者を騒がしたガストランジット契約という嵐は過ぎ去り、5 年間のモラ

トリアムに入ったが、ロシア及びウクライナの係争問題は今後も予断を許さない。

1.独露パイプライン(Nord Stream及び Nord Stream 2)に対して加熱する欧米の攻撃

(1)欧米による Nord Stream及び Nord Stream 2に対する横槍

2019 年に入り、欧米による Nord Stream 2 への攻撃が過熱してきた。まず、3 月には Nord Stream

2 が通過する排他的経済水域の中で、承認を延期してきたデンマークが、既に出されている 2 つのルート案に加えて、第三のルートの提示を Gazpromに対して求めた 1(既に他の通過水域について

はフィンランドが 2018 年 4 月に、スウェーデンが同年 6 月に承認。最終的にデンマークは 10 月

29 日にルートを承認)。4 月に入り、欧州議会は昨年から協議が行われていたガス指令修正案を通過。閣僚会議でも承認され、5 月には加盟国での法制化段階へ移った。内容は生産者及び輸送者を

分離すること(Unbundling)、パイプラインへの第三者アクセス及び輸送タリフの透明性を謳った 1 IOD(2019年 3 月 28 日)

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資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任

を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

第三次エネルギーパッケージを全パイプラインに適用し、Gazprom(つまり Nord Stream 2)を排

除する方向性を盛り込むものである。9 月には、欧州裁判所が、欧州議会による Gazpromの OPAL

(Ostsee-Pipeline-Anbindungsleitung/バルト海・パイプライン・リンク/470km/年間容量

35BCM)パイプラインへの 100%アクセスを認めた 2016 年 10 月の決定は EU 加盟国のエネルギ

ー連帯の原則に違反しているとして撤回するべきとの判断を示した 2。これはポーランド(国営石油ガス会社 PGNiG)が提訴していたもので、この判決を受けて、ドイツ連邦ネットワーク庁

(Bundesnetzagentur)も「Gazpromは OPALパイプラインのガス輸送の半分を直ちに停止しなけ

ればならない。」と判断 3。OPAL パイプラインオペレータ(OPAL Gastransport)は 9 月 14 日(土)から Gazpromの送ガス量の制限を開始せざるを得なくなった 4。

図 1 建設進む Nord Stream 2 に対して激化する欧米の攻撃と背景

出典:筆者取り纏め

米国でも Nord Stream 2 を敵視する動きが継続している。昨年 7 月には国務省が同パイプライン計画を「欧州、特にウクライナに対する政治圧力の道具を提供することにより欧州のエネルギー安

全保障を弱体化する。」と発言 5。トランプ大統領も「ベルリンはロシアの捕虜となっている。」と

述べたのに対し 6、メルケル首相は「我々は独立した独自の政治を行い、我々が独自の決定を下し 2 Prime(2019 年 9 月 10日) 3 Bloomberg(2019年 9 月 12 日) 4 Prime(2019 年 9 月 13日) 5 ロイター(2018年7月12日)https://www.reuters.com/article/us-nato-summit-nordstream/u-s-warns-of-sanctions-risk-for-firms-invested-

in-russian-pipeline-idUSKBN1K12X6 6 ロイター(2018 年 7 月 11 日)https://www.reuters.com/article/us-nato-summit-pipeline/trump-lashes-germany-over-gas-pipeline-deal-

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ている。」と反論するに至った。最終的には同月 16 日にヘルシンキで行われた米露首脳会談後の記

者会見でトランプ大統領から「ドイツが決定したこと。我々は LNG で競争する。」と述べ、Nord

Stream 2はその後順調に建設が進められてきた。他方、2019 年に入ってから米国議会に提出され

た対露制裁法案は 40 を超え、Nord Stream 2 に対するものだけでも既に 5 つに上っていた。最終

的には後述の通り、年末になり 2020 年国防授権法に盛り込む形で、制裁が発動されることとなる。

(2)背景にロシア及びウクライナ間のガストランジット契約更改交渉と米国シェール LNG販促

欧米政府が足並みを揃えたように Nord Stream 2を止める又は遅延させようとするこの背景にはまずウクライナへの配慮がある。同パイプラインの稼働を遅らせられれば、ロシアはその間ウクラ

イナ経由でガス供給を行う必要に迫られ、それがウクライナへタリフ収入をもたらす。2019 年という年は奇しくも 2009 年のウクライナ天然ガス供給途絶問題後、ロシア・ウクライナが協議の末

合意したガストランジット契約が満了するタイミングでもある。契約条件を巡っては Gazprom 及

び Naftogazとの間で国際調停裁判所での係争が続いてきたが、Nord Stream 2 を遅らせることで、欧州への供給義務を負うロシアがウクライナルートを使用せざるを得ない状況を作り出し、ウクラ

イナによるガス供給契約交渉を有利に運ばせようという意図や欧州(特に東欧諸国)にとっての対

露フロントであり緩衝地帯であるウクライナを支援・バックアップしたいという欧州の思惑もあると見られている(当該ガストランジット契約更改交渉の推移については次章 2.参照)。

米国の思惑はさらに実利的であり、シェール革命で急増する米国産 LNG を巨大消費国であるドイツに売りつけたいという下心は明らかだ。5 月 14 日には米国ルイジアナ州にてキャメロン LNG

第一トレインの建設完了式典が開催され、トランプ大統領が出席し、「この施設がフル稼働すれば、

最大で年間 1500 万 tの LNG を輸出することとなる。最大容量では、ドイツが 2017 年にロシアから輸入した天然ガスの 40%超を、または EU が 2018 年に輸入した LNG の 25%を供給できる規模

である。」と述べたが 7、明らかにドイツひいては欧州をシェール LNG の新市場として開拓したい

という意図を隠さない。実際、2006 年を境にシェール革命による天然ガス増産基調が始まった米国については、エネルギー省エネルギー情報局(EIA)の最新の見通しでも、図 2 の通り、LNG輸

出量は 2050 年という長期に亘って年間 143.6BCMを維持するという分析を行っており、ウクライナ経由でのロシア産ガスパイプライン容量(142BCM)に近い大きな数量ガスが米国から欧州・ア

ジア太平洋地域へ市場を求めて長期に亘って供給されることが見込まれている。

9 月には、ペリー・エネルギー長官(米国)、ナイムスキー戦略エネルギーインフラ担当代表(ポーランド)及びダニリュク国家安全国防会議議長(ウクライナ)がワルシャワにて、ロシア産ガス

を排除し、米国産 LNG を通じてエネルギー安全保障を高めることを目的とした暫定的協力協定を

calls-it-russias-captive-idUSKBN1K10VI

7 ホワイトハウス HP: https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-promoting-energy-infrastructure-economic-growth-hackberry-la/

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締結。ポーランド(PGNiG)は米国産 LNGではシェニエール、Venture Global LNG及びポートア

ーサーLNGとの間で長期供給契約を締結しており、その LNGをポーランドで受け入れるだけでなく、ウクライナへ輸送する天然ガスパイプライン(110km)を建設する計画も打ち出し、反露姿勢

の先鋭化を内外にアピールした 8。

図 2 米国対露制裁の背景にシェール革命

米国の天然ガス生産量の推移 米国の天然ガス輸出入量の見通し

出典:BP統計 2019及び米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)9

(3)米国による Nord Stream 2及び Turk Streamに関する制裁発動(2020年国防授権法)

12 月 20 日、トランプ大統領は 2020 年国防授権法に署名し、即日発効した。1119 ページ、全 7612

条から成る同法の最後、1103 ページから始まる第 75 章「欧州エネルギー安全保障の防御」に第

7501 条から 7503 条に亘って、Nord Stream 2 及び Turk Streamに対する新たな制裁が盛り込まれている 10(次頁に主要内容を含む第 7503 条の抄訳)。国防授権法は、翌年の軍事予算措置のため

に、必ず年内に成立する性格の法律であり、「独露間のパイプライン」という米国の国防とは直接関

係のないものまで抱き合わせて通過させた今回の事例は、今後同じ方法で毎年末新たな制裁が盛り込まれる可能性も示唆するものとなっている。

翌日には Nord Stream 2 及び Turk Streamのパイプライン敷設を請け負っている、スイス登記のAllseas社(1985 年設立。大水深パイプ敷設及びオフショアメジャー企業。2011年稼働を開始した

最初の Nord Streamも同社による敷設)が、Nord Stream 2 についての全作業をサスペンドする旨

のリリースを公表し 11、同パイプラインは 94%まで進捗したにもかかわらずサスペンドとなった。

8 POG(2019年 9 月 3日) 9 EIA Energy Outlook 2019:https://www.eia.gov/outlooks/aeo/ ※スライド 15に筆者加筆。 10 https://www.congress.gov/116/bills/s1790/BILLS-116s1790enr.pdf 11 https://allseas.com/news/allseas-suspends-nord-stream-2-pipelay-activities/ 「国家授権法の制定に鑑み、Allseas 社は Nord Stream 2 パイプ敷設活動を停止した。同法律の猶予期間条項(Wind-Down Period)に従うと共に、米国の関連当局からの必要な規制、技術及び状況のクラリフィケーションを含むガイダンスを期待している。」

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<参考>2020年国防授権法 第 75章 7503条(抜粋/抄訳) ※下記下線は筆者加筆

第 7503条 (a)この法律の制定後 60日以内に、かつ、その後 90 日ごとに、国務長官は、財務長官と協議の

うえ、議会の関連委員会に対し、Nord Stream 2及び Turk Stream又はそれらの後継パイプライン事業の建設のために海底 100フィート(約 30.5m)以深でパイプ敷設に従事する船舶、並びに、かかる船舶を販売し、リースし、若しくは提供し、又はかかる船舶の提供取引を促している外国の者(注:以下対象者)を特定する報告書を提出しなければならない。

(b)対象者の米国査証発給、入国の禁止 (c)対象者の資産凍結 (d)猶予期間の設定:大統領は(a)に基づいて提出された最初の報告書(上記)で特定された

対象者に関して、もしその対象者が本法の制定日から 30日以内に、本条に基づく制裁の対象となる業務を縮小するために誠実な努力をしたことを証明したと大統領が認めた場合このセクションに基づく制裁を課してはならない。

(e)例外規程:以下の事例には制裁は適用されない。 ---米国の諜報機関、法執行機関、または国家安全保障の各活動 ---国連協定 ---船舶に乗船する乗組員の安全とケア、船舶に乗る人命の保護、または環境またはその他の重大な損害を回避するための船舶の保守を目的とする場合

---Nord Stream 2及び Turk Streamの修理、保守または環境修復に必要なまたは関連する活動

---機器の輸入 (f)制裁免除:大統領が国益に適うと判断し、その理由を議会の該当委員会へ提出した場合。 (g)罰則:International Emergency Economic Powers Actに基づく。 (h)制裁の終了:

---ロシア連邦が所有または管理する事業体(Gazprom)がパイプラインネットワークをコントロールしないように、生産と輸送の分離を達成することを含め(原田注:EU第三次エネルギーパッケージを模倣)、Nord Stream 2及び Turk Streamを強制および政治的レバレッジのツールとして使用する能力を最小限に抑えた場合。

---予期せぬ状況を除き、2018年のロシアの平均エネルギー輸出容量と比較して、Nord Stream 2及び Turk Streamが、他の国、特にウクライナの既存のパイプラインを通過する輸出量を 25%以上減少させないことを保証する場合。

(i)各術語定義

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るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投

資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任

を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

第 7503 条における注目点については以下が挙げられる。

①大統領の署名から 30日以内は猶予期間が設けられていること。つまり、1月下旬までは建設(撤退)の猶予が与えられていた。

②大統領の署名から 60日以内に国務省が財務省と協力し、対象者(Nord Stream 2、Turk Stream

建設に従事する船舶)を割り出す報告書がまとまるまでにも猶予期間が更に発生する可能性もあった。

③他方、この報告書に名前が載る個人・企業(Nord Stream 2のスイス登記会社の敷設船等)には、

本条文では SDN(特定国籍指定者)と同様の罰則が設けられることになる。

この決定に対して、各国政府及び関係企業は批判を繰り広げたが、現在に至るまで表立った動きや進展は出てきていない。

・独:ウルリケ・デンメア首相報道官

「こうした種類の域外制裁は認められない。ドイツおよび欧州企業が痛手を受ける。制裁はわが国に対する内政干渉だ。」

・露:ラヴロフ外相

「Nord Stream 2 及び Turk Stream は米国の制裁に関係なく、立ち上がる。ロシアは米国への対抗制裁を計画している。」

・露:マリア・ザハロヴァ報道官

「ロシアからのエネルギー供給をヨーロッパから奪おうとしている行い。ヨーロッパ経済の発展

を減速させるもの。アメリカは地政学的な野望のためには NATO のパートナーであるドイツを

いたわろうともしない。」

・欧:広報担当者

「原則として、EUは完全に合法的な活動に参加している欧州企業に制裁を課すことに反対。欧州

委員会は現在、アメリカの制裁の可能性のある影響を分析している。」

※ウクライナとのトランジット供給契約交渉を受け、欧州の反応と独露の反応に温度差があることが注目される。

・墺:ライネル・シーレ OMV社長

「欧州政府は米国の Nord Stream 2 への制裁に対し至急対応すべき。法的に承認されたプロジェ

クトに数十億 EURを投資したのに、欧州の了解なしに一方的な外部制裁によって中断させられ

ることがどうして可能なのか」12

また、今回の制裁発動によって制裁規定に従った時計が動き出している点も注目される内容だっ

たが、こちらも米国政府及び Allseas社を含め、執筆時点(2 月 14 日)で動きは見られない。 12 IOD(2020年 1 月 29 日)

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るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投

資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任

を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

①大統領の署名から 30日以内は猶予期間 ➡2020年 1月 18日(土)迄

②大統領の署名から 60日以内に国務省が財務省と協力し、対象者(Nord Stream 2、Turk Stream

建設に従事する船舶)を割り出す報告書を提出 ➡2020年 2月 17日(月)迄

Nord Stream 2 については、Allseas社が現時点では猶予期間中の作業も含めサスペンドしたことから、稼働開始は遅延する見込みとなった。1 月 11 日、プーチン大統領はドイツのメルケル首相と

の共同記者会見において、Nord Stream 2 の稼働開始は 2020 年末以降、おそらくは 2021 年第 1四

半期になると発表している 13。また、米国が Allseas 社を制裁対象会社と指定するかどうかもポイントであるが(上記②・2 月 17 日までの対象者割り出し)、既に Nord Stream 2 建設を止めるとい

う目標は達成しており、その必要性がなくなった今、対象者指定の報告書の重要性が薄れているのも確かだ。

最も重要な役割を演じるのはドイツ(欧州)の対応となるだろう。例えば、既に米国に対して、

水面下で米国産 LNG 購入検討を条件に作業継続を認めさせる交渉が行われている可能性もあるかもしれない。他方、ロシアでは、自らの敷設船で Nord Stream 2の残る 6%を完成させる動きも出

ている。2016 年、Gazpromはパイプライン敷設船「アカデミック・チェルスキー」を購入してお

り、制裁時点ではナホトカに係留されていたものが、2 月初旬に出航し、2 月 22 日にシンガポールへ到着する予定との一報が入っている。これは Nord Stream 2 完成のための保有設備アップグレー

ドのためと見られている 14。米国が同パイプライン敷設船を制裁対象として指定する場合には、シンガポールへの寄港とアップグレードは難しくなるが、船の所有者が Gazprom 本体である場合に

は、同社を SDN 級の制裁対象とすることは同社との全ての取引が禁止されることを意味し、欧州

だけでなく世界のガス市場に多大な影響を与えることになることから、選択肢とはならないと考えられる。いずれにせよ同敷設船と米国国務省の対象者指定の動向に注目が集まる。

*** 2.ロシア及びウクライナによるガストランジット契約交渉の推移と妥結

時計を 9 月まで巻き戻して、そのような中で行われてきたロシア、ウクライナ及び欧州政府による 2020 年以降のガストランジット契約交渉について振り返る。同契約は 2009 年のウクライナ及

びロシア間で発生したガス供給途絶問題 15の解決策として、2009 年 1 月 19 日にウクライナ・ 13 コメルサント(2020 年 1 月 13日) 14 Prime(2020 年 2 月 10日)

なお、バルト海までの移動まではスエズ経由で 45日必要。また、この他、ロシア他企業が「フォルチュナ」を保有しており、200m水深までの敷設が可能(現在位置はドイツ。バルト海浅海での敷設経験もある。バルト海の Nord Stream 2敷設水深は 20~80m。

15 ウクライナがガス代金を支払えず、ロシアがウクライナに対するガス供給を停止するも欧州向けのガスをウクライナが抜き取った結果、発生したガス供給途絶問題。詳細は本村真澄著「繰り返されたロシア・ウクライナ天然ガス紛争」(石油天然ガスレビュー/2009.3 Vol.43 No.2)を参照されたい。

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれ

るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投

資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任

を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

Naftogaz とロシア・Gazprom が調印したもので、10 年間超の契約期間を 2019 年で満了を迎えよ

うとしていた。この 10 年の間、ウクライナでは親露政権がクーデターで倒れ、ロシアはクリミアを併合し、欧米制裁が発動。ウクライナ東部地域では内戦に発展しているという状況で、当該契約

更新交渉は一筋縄ではいかないと見られており、もし契約更改が遅延すれば、ウクライナ経由のガ

ストランジットが出来なくなり、2009 年同様に再度供給途絶のリスクが高まる状況にあった。

9 月 19 日、ブリュッセルにて 2020 年以降のロシア産ガスのトランジット契約に関する協議が欧

州委員会、ロシア(Gazprom)及びウクライナ(Naftogaz)との間で開催され 16、シェフチョヴィ

ッチ欧州委員会委員が契約条件について、以下の提案を行った 17。

<ウクライナも支持する欧州委員会からの提案(9月)> ①契約期間: 10年契約 ②トランジット量: 年間最低 60BCMのトランジット保証+30BCM追加オプション ③タリフ 18: 60BCMの場合、3.21ドル/千 CM/100km。 90BCMの場合、2.56ドル/千 CM/100km。 ④その他: 契約は欧州原則・基準に則ること。

ノヴァク・露エネルギー大臣は、協議は建設的だったと表明。しかし、合意には至らず協議は 10 月に持ち越された。当該協議では三者、特にロシア及びウクライナの間の争点が明確化された点が成果

であり、それは、①ガス中継輸送において、ウクライナは欧州原則・基準を導入する予定であること、②ロシア・ウクライナ間の未解決の係争解決(賠償問題)、③ガス輸送量(保証)、④輸送タリフ(ウ

クライナの収益)、⑤契約期間の 5 点であるとされた 19。この内、ウクライナが欧州原則・基準を契

約に適用することは、ウクライナのガス輸送システムの輸送容量が入札にかけられることを意味するが、現時点では他にウクライナに対する供給者は存在せず、単独応札となる可能性や十分な輸送容

量、価格競争力を有する Gazpromが最終的に必要な輸送容量と期間を確保することを意味するもの

と考えられている 20。他方、プーチン大統領は、「ロシアはウクライナが欧州法制準拠を実現できる場合に契約を署名する。しかし、それはウクライナにとって簡単ではない。その場合には、現契約の

1 年間の延長も選択肢として準備している。」と発言し、ウクライナの能力に疑問を呈した 21。ミレル社長はメドヴェージェフ首相との面談で、「ウクライナに対しては現在より 20%安いガス価格を提

https://oilgas-info.jogmec.go.jp/_res/projects/default_project/_project_/pdf/2/2561/200903_001a.pdf 16 トランジット交渉自体は 2019年に入ってから 3回目となる(IOD/2019年 9 月 20 日) 17 ロイター(2019年 9 月 20 日) 18 コメルサント紙(2019年 9 月 19 日)掲載の記事より(https://www.kommersant.ru/doc/4101598?query=%D0%93%D0%B0%D0%B7%D0%BF%D1%80%D0%BE%D0%BC) 19 IOD(2019年 9 月 20 日) 20 コメルサント(2019 年 9 月 20日) 21 Interfax(2019 年 10 月 2 日)

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供できる。」と発言し、ウクライナの交渉姿勢の軟化を促す情報発信を行っている 22。

賠償問題に関しても、当該契約交渉ではウクライナ側のカードとして活用されてきた。2018 年 2

月末にストックホルム仲裁裁判所が下した判決によって、2010 年のガストランジット契約に則り、

ウクライナ・Naftogaz は 2013~2014 年のガス供給に対する債務 20 億ドルを Gazprom に支払う

義務を負っている一方、Gazprom は Naftogaz に対してトランジット代金の未払い 47 億ドルがあることが確認され、相殺後に Gazprom が Naftogaz に対して 25.6 億ドルを支払うことを認定。金

利を含んだ額は 29 億ドルに上っていると言われていた。更に、Naftogaz は Gazprom の資産差し

押さえをアムステルダム地方裁に訴え、支持される判決が下った 23。追い打ち攻勢を掛けるように、11 月初めには Naftogazはストックホルム仲裁裁判所に対して、2018 年 3 月 13 日から 2019 年 12

月末までにタリフ再考を受け付けなかったことについて、Gazpromに対して 122.48 億ドルの賠償を請求する訴えを起こした 24。ウクライナ側の訴えを総計すると、総額 220 億ドル余りに上る。ま

た、ルクセンブルク裁判所においても、2018 年 12 月に 650 億円分の円貨建て 10 年ユーロ債を起

債した Gazpromの子会社 GazAsia Capital社(ルクセンブルク)の資産凍結を勝ち取ることに成功する 25。

<ウクライナ Naftogazによる Gazpromへの賠償請求合計>

①029億ドル: ストックホルム仲裁裁判所も認める 26.5億+利息(約 29億ドル)。 ②122.48億ドル: 2018年 3月 13日から 2019年 12月末までにタリフ再考を受け付けなかっ

たことについて、Gazpromに対して 122.48億 USD ③070億ドル: ウクライナ国内の独禁法違反 70億 USD

221.48億ドル

10 月 28 日、9 月に続く三者協議がブリュッセルで開催されたが、実質的な成果はなく、11 月下

旬に更に持ち越された 26。11 月 18 日、Gazpromは Naftogaz に対してガストランジット契約案に

関して、以下の内容を骨子とする公式提案を送付した。

<Gazpromから Naftogazへのカウンター提案(11月)> ①期間: 1年契約 ②前提条件: 双方の国際係争・訴訟を取り下げる。 ③その他: 既存契約の延長も選択肢(2015 年にウクライナ向けガス輸出の停止をし

た当該契約の活用)。 22 Tass(2019 年 10 月 18日) 23 IOD(2019年 10月 28日) 24 Tass(2019 年 11月 5日) 25 Interfax(2019年 11 月 12 日) 26 IOD(2019年 10月 29日)

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当然ながら、欧州委員会及びウクライナ共に同提案を拒絶し 27、双方の認識の隔たりが大きいこ

とを示した。但し、その間、実務者協議を 11 月 8 日にブリュッセルで開催し、更に 18日の週、そして直前の 27 日にも行われることとなった 28。これらの実務者協議の進捗が功を奏したのか、そ

れにつれて、政府間も含め双方の態度軟化が見られ始める。まず、19 日にはロシアがアゾフ海で拿

捕したウクライナ艦船を返還し、緊張緩和をアピールすると共に 29、Naftogazはロシアが要請している 1 年間の契約も検討可能だが、欧州政府との協議は必要であること、また、ストックホルム仲

裁裁判所で確定した罰金(26.5 億 30+ウクライナは利息を要求/合計 29 億ドル)について現物(ウ

クライナへのガス供給)で支払うことも可能との見解を示した 31。また、三者会合直前の 11 月 25

日には、プーチン大統領とゼレンスキー大統領が電話会談(ゼレンスキー大統領から電話)を行い、

ガストランジット契約交渉について詳細を議論し、各レベルでの協議継続を確認すると共に、12月9 日開催予定のパリ・ノルマンディーフォーマットでの初の首脳会談に合意している 32。クレムリ

ンのサイトでは、26 日、プーチン大統領、ノヴァク大臣、ミレル社長が面談を行い、詳細は未公開

ながらロシアとウクライナのエネルギー協力について特出しで協議が為されており 33、交渉妥結に向けたロシア側の対応が議論された模様だ。

写 1 11 月 26 日、クレムリンで開催されたプーチン大統領、ノヴァク大臣及びミレル社長の面談

出典:クレムリン HP

27 Prime(2019 年 11 月 18日) 28 Prime(2019 年 11 月 11日) 29 日経(2019 年 11月 19 日) 30 なお、Gazprom はストックホルム仲裁裁判所の判決を不服として控訴していたが、スウェーデンのスヴェア裁判所はストックホルム仲裁裁判所の判決を支持し、提訴を却下している(Prime/2019 年 11 月 27日)。

31 Prime(2019 年 11 月 26日) 32 Interfax(2019年 11 月 26 日) 33 クレムリン HP/Prime(2019 年 11月 26日)http://en.kremlin.ru/events/president/news/62126

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最終的に当初 11 月 29 日を予定していた三者協議は 28 日に開催され、ノヴァク大臣は建設的で

あったとの感想を述べるも条件合意には至らなかった。

なお、ガストランジット契約更改交渉と同じタイミングで契約更改を迎えるウクライナ経由のロ

シア・欧州間の原油のトランジット契約について、12 月 3 日に Transneft及び UkrTransNafta が契

約更改に合意し、2020 年 1 月から 10 年間の契約を締結したことが注目される 34。日量 27 万バレル(内、ウクライナ向け 4 万バレル)と限定的な量ながら、両国首脳の初会談を前に融和ムードを

演出するような出来事となった。

図 3 ウクライナにおける天然ガス及び原油パイプラインネットワーク

天然ガスパイプライン 原油パイプライン

出典:Naftogaz及び UkrTransNafta35

12 月 9 日、仏独露宇四カ国首脳がパリで首脳会合を開催し(ノルマンディーフォーマット)、続いてロシア・プーチン大統領とウクライナ・ゼレンスキー大統領の初のバイ会談で、双方は年内に

完全な停戦を履行するとともに、2020 年 3 月までに部隊の追加撤収を行うことを目指して作業を

進めることで合意に至った 36。ガストランジット契約交渉については、プーチン大統領は「ウクライナと合意に至れば、ウクライナの産業向けガス価格を現在よりも 25%安く供給できる。」と述べ、

ゼレンスキー大統領は、「合意はまだないが、もっと良い条件で合意できるチャンスはまだある。1

年契約については議論に上っていない」ことを強調し、年末までに新しい取引合意が可能であり、

妥協の余地があることを示した(「私たちは途中で何かを見つけるだろう。」)37。また、ロシアから 34 AFP 及び Interfax(2019 年 12 月 4日) 35 2018年、パイプラインによるウクライナからヨーロッパへの石油の輸送量は 1335 万トン(26.7 万 BD/前年比 4.3%減少)。内、ウクライナ向けは 210万トン(4.2万 BD)。ウクルトランスナフタの保有する原油輸送 PLシステムは、直径が 159 mm から 1,220 mm、全長 4,767km。容量は 1 億 1400 万トン(280万 BD)、欧州向け容量は 5630 万トン(112.6 万 BD)。

36 AFP(2019 年 12 月 10 日) 37 Prime(2019 年 12月 10日及び 11日)

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は 3 年という妥協案も出ていることを明かした 38。また、プーチン大統領は「ウクライナにとって

も受け入れ可能なガストランジット契約に合意できるだろう。ストックホルム仲裁裁判所の判決は自分も法学を修めた身として政治的なものと考えている。判決ではウクライナの経済悪化を理由に

挙げている時点でナンセンス。しかし、判決は判決。ロシアはそれに従い、解決策を見出していく。」

と発言した 39。

12 月 19 日、漸く年内合意に向けた方向性が示される。ベルリンで開催された閣僚級協議では、

まず、両者は契約失効後も近隣国とのガス供給関係を維持することを発表し 40、シェフチョヴィッ

チ欧州委員会副委員長は「原則合意に達した。」と述べ、協議が前進したとの認識を表明。ノヴァク・エネルギー大臣は合意について「すぐに署名されることを望む。」と語るも、文書は文言の調整

が残っているため、20 日以降に公表されるとの見通しを示した。

12 月 20 日、ミンスクにて、遂にロシアとウクライナ、欧州政府は既存のトランジット契約の後

継となるプロトコールに署名し、2020 年以降もウクライナ経由で欧州に天然ガスを輸出すること

を定め、供給途絶は回避された。署名者は各国政府代表として、シェフチョヴィッチ欧州委員会副委員長(1 名)、ロシアはコザーク副首相(エネルギー担当)及びノヴァク・エネルギー大臣(2 名)、

ウクライナはイェルマーク大統領補佐官、クリョーバ副首相及びオルジェル・エネルギー大臣(3

名)に加え、関係企業として、Gazprom・ミレル社長、Naftogaz・ヴィトレンコ Executive Officer

及びウクライナの新たなガス輸送システムオペレータからマコゴン社長が同プロトコールに署名

した 41。内容(ロシア語のみ)については翌日ウクライナ政府が公開しており、次の点が特徴として挙げられる(詳細は巻末抄訳を参考)。

特徴①:契約期間は双方要望(Gazpromは 1 年、Naftogaz は 10 年)の中間(5 年間)に落ち着いた。

特徴②:ウクライナが攻勢を掛けていた賠償請求については、ストックホルム仲裁裁判所の判決(約29億 USD)を受入れ、Gazpromが支払うことで、その他の訴訟を Naftogazが取り下げる。

特徴③:容量は年平均 45BCM。5 年間で 225BCM。これも双方要望(Gazpromは 30BCM以下、Naftogazは 60BCM以上)の中間に落ち着いた。

特徴④:トランジットタリフについてはプロトコール署名時点では未解決。 特徴⑤:本プロトコール及びそれに続く契約はあくまでウクライナ領内を経由(トランジット)す

る欧州向けガスに関するもの。ロシアからウクライナへ販売するガスについては、欧州向けのガストランジット問題解決が実現した後に議論することになっている。

38 Tass(2019 年 12 月 11日) 39 Prime(2019 年 12月 19日) 40 IOD(2019年 12月 20日) 41 IOD(2019年 12月 20日)

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報道では 30BCM程度という情報も出ていたが、ロシアが希望する量は Nord Stream 2 の実現に

も左右されることから明言を避けてきたと考えられる。もし Nord Stream 2 が実現し、EUによるガス指令をクリアするというハードルを乗り越えれば、55BCM の輸送量拡大が実現する。ウクラ

イナの近年のトランジット量は 80BCM台で推移していることから、最悪の場合、ウクライナには

25BCM しか流さなくてよくなる。他方、現状のように同パイプラインが米国制裁によってサスペンドに追い込まれる懸念が高まり、2020 年もウクライナ・トランジットを活用しなくてはならな

い状況となれば、80BCMを確保しておく必要がある。実際、2020 年内は Nord Stream 2 の稼働開

始が不透明となっており、プロトコールの最終合意でも 2020 年が 65BCM と他の年に比べて多いのは、その遅延を織り込んだ最低限の数値ということになるだろう(他方、2021 年以降は Nord

Stream 2 稼働開始を織り込んだ 40BCMという数字を採用している)。

12 月 30 日、プロトコールに従い、Gazprom及び Naftogaz

は 5 年間のガストランジット契約を締結したことを発表

(2020 年~24 年で合計 225BCM をトランジット。Ship or

Pay べース。更に Gazprom は増量することができるが、そ

の場合のタリフ(含関税)は上昇する)。Naftogazによれば

Gazprom が欧州基準の Ship or Pay ベースの契約を結ぶのは史上初との宣伝が為された。また、ゼレンスキー大統領は

5 年間の輸入を 70 億 USDと見込んでいると発言し 42、タリフ(ロシアからウクライナへ支払われる)についての手掛か

りを与えることとなった。

写 2 Gazprom ミレル社長(右)Naftogaz ヴィトレンコ Executive

Officer(左)

情報筋によれば、ウクライナ国内の輸送距離は契約上 1192.48kmに設定され 43、今回合意した価格は、2.66 ドル/千立方メートル/100km となったと言われている。5 年間のトランジット数量

225BCM から計算すると、ウクライナが受け取るトランジット料は合計で 71.4 億ドルとなり、ゼ

レンスキー大統領が述べた 70 億ドルと符合する。

なお、プロトコール上では 12 月 29 日までに Gazprom-Naftogaz 及びウクライナガス輸送シス

テムオペレータが関係契約の締結を完了することとなっていたが、Gazprom のプレスリリースは12 月 30 日の日も変わる直前の深夜 44、Naftogaz のプレスリリースは Gazprom から丸 1 日遅れ、

年も変わろうとする 12 月 31 日深夜でかつ締結日は 12 月 31 日となっていることから 45、双方の 42 IOD(2019年 1 月 2日) 43 ウクライナを東西に経由するパイプラインは複数あり、どのパイプラインをどの容量・距離で通過するかは複雑であるため、一義的に 1192.48km という距離が設定されていると考えられる。

44 Gazprom 社 HP:https://www.gazprom.com/press/news/2019/december/article497259/ 45 Naftogaz 社 HP:

http://www.naftogaz.com/www/3/nakweben.nsf/0/24DE3C1B1D52B136C22584E00079DA9E?OpenDocument&year=2019&month=12&nt=News&

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交渉がプロトコールでの規定を超えて続いていたことを推察させている。

表 1 ロシア、ウクライナ及び欧州政府によるガストランジット契約交渉の経緯と妥結

宇・EU提案(9 月) ロシア提案(11 月) 両者合意(12月)

契約期間 10 年間 1 年間 5 年間 輸送容量

60BCM +30BCM追加オプション

30BCM (不確定情報)

2020 年:~65BCM 2021 年:~40BCM 2022 年:~40BCM 2023 年:~40BCM 2024 年:~40BCM (年平均:45BCM)

タリフ 60BCM の場合、 3.21ドル/千 CM/100km 90BCM の場合、 2.56ドル/千 CM/100km46

NA 2.66ドル/千 CM/100km ※但し、上記より輸送量が増加する場合には関税増加。

その他 契約は欧州原則・基準に則る。 - 〇 - 双方の訴訟を

取り下げる。 〇

Gazpromは判決が確定した29.18 億ドルは支払う。

出典:筆者取り纏め

プロトコールを受けて、関係国・関係企業はそれぞれの義務を果たしており、Gazprom は 29 億ドル余りの支払いを、Naftogazは提訴に基づくGazpromの欧州資産差し押さえの全面解除を実行

した 47。

表 1 の通り、今回の交渉経緯と結果を見ると、契約期間及び輸送容量では双方の要求の中道を採

った結果になっているのが分かる。ここには前述の通り、Nord Stream 2 に対する米国による横槍

を受けて、建設がサスペンドとなった結果、しばらくはウクライナ経由での欧州向けガストランジットに頼る必要が出てきたという「反露」要因も働いたのは確かだろう。双方にとって最も重要な

通過料(トランジットタリフ)については、2019年の価格が 2.61 ドルであったという Naftogazの

情報からすれば(コメルサント紙/2019 年 9 月 21 日付)、1.9%の上昇幅であり、インフレを加味 46 コメルサント(2019 年 9 月 21日)

https://www.kommersant.ru/doc/4101598?query=%D0%93%D0%B0%D0%B7%D0%BF%D1%80%D0%BE%D0%BC 47 Prime(2020 年 1 月 20日)

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したとしても驚くほどの上昇ではなく、また輸送容量では Naftogaz が望む量(60~90BCM48)を

大幅に下回る量(年平均 45BCM)で妥結していることから、総体的にはロシア側に軍配が上がったと見ることもできるだろう。

他方で不穏な動きも出てきている。1 月 10 日、Naftogaz ヴィトレンコ Executive Officer はロシ

アに対し、ロシアの併合による同社のクリミア資産の減損に対する新たな訴え(70億ドル以上)をロシアに対して提起したことを明らかにした 49。さらに、同氏は 2 月に入ってからも Gazprom に

対する新たな訴訟を国際調停裁判所及び EU独占禁止局に行うことを検討していることを明らかに

しており、Gazprom が実質コントロールしているロシアの独立系ガス生産者のガス輸送や中央アジアのガストランジットについてデリバリーポイントを見直すことや 2009 年の RosUkrEnergo を

巡って Naftogazが負った負債に関する内容について正していくことを表明している 50。

年末ぎりぎりまで関係者を騒がしたガストランジット契約という嵐は過ぎ去り、5 年間のモラト

リアムに入ったが、当然ながらクリミア併合を巡るロシア及びウクライナの係争は今後も予断を許

さない。

48 米国が発動した 2020年国防授権法による Nord Stream 2 及び Turk Stream に関する制裁(2019 年 12 月 20日)では、興味深い規定

として、制裁終了の条件として以下の内容が規定されている。第 7503 条(h)「(中略)予期せぬ状況を除き、2018年のロシアの平均エネルギー輸出容量と比較して、Nord Stream 2 及び Turk Stream が、他の国、特にウクライナの既存のパイプラインを通過する輸出量を 25%以上減少させないことを保証する場合」。これは、例えば 2018 年のウクライナ・トランジット量は 87BCM だったことから、ウクライナ向けを少なくとも 64BCM 確保するという意味であり、ウクライナと欧米はこの点でも密接な連携を示していたことが分かる。

49 Prime(2020 年 1 月 10日) 50 Interfax・Prime(2020 年 2月 6日)

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれ

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資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任

を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

<12月 20日三者で締結されたプロトコール(ウクライナ政府公開)及び抄訳>

出典:ウクライナ政府 51

51 ウクライナ政府 HPから筆者抄訳作成:https://www.kmu.gov.ua/en/news/protokol

https://www.kmu.gov.ua/en/news/ukrayina-dosyagla-domovlenosti-shchodo-tranzitu-gazu-v-yevropu

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欧州委員会、ウクライナ及びロシア連邦代表と各国企業(ウクライナガス輸送システムオペレータ、Naftogaz及び Gazprom)との会議に関するプロトコール

(2019年 12月 19日~20日/ベルリン及びミンスク) ※下記下線は筆者加筆 欧州委員会、ウクライナ及びロシア連邦代表(以下、関係国)はロシア産ガスのウクライナ領内トランジットを 2020 年 1月 1 日から継続するためにウクライナ及びロシア連邦の利害関係企業間で以下の合意に至ったことを歓迎する。 1. 2019年 12月 29日までに法的文書に合意するために: 1.1 2.2で規定されるパッケージに従い、Gazprom及び Naftogazはキャンセルことのできない合意を

実現する。 -ストックホルム仲裁裁判所の 2017年 12 月~2018年 2 月に決定された内容に従い、2019年 12 月

29日までに Gazpromは Naftogazに約 29億ドル 52を支払う。 -Naftogaz が訴えている 122億ドルと 13.3BCM(金額換算はない)に対する訴訟を含む、まだ最終決定に至っていない双方の全ての賠償請求訴訟を取り下げる。

-Gazpromに対する資産等差し押さえを取り下げる。また、2009年 1月 19日以降のガス輸送及びトランジットに関する契約について、将来可能性のある全てのクレイムを取り下げる。

1.2 2019 年 12 月 29日までに Gazprom及び Naftogazは、現在スイス・ジュネーブで調停裁判が行われている「ПТСNo2019-10≪ウクライナに対する Gazprom≫」の枠組みで、和平協定に署名する。 その和平協定は、ウクライナ独占禁止委員会による 2016 年 1 月 22 日以降の決定 No18-p及びキエフ民事裁判所による 2016 年 12 月 5 日の判決を基に、今後ウクライナがクレイムを行うことを止めることを意味する。

2. ウクライナ領内を経由するロシア産ガスの途切れることのない継続のために: 2.1 Gazprom及び Naftogaz(以下、会社-オーガナイザー)はウクライナ領内を経由するガス輸送を成

立させる合意書を締結する。 2.2 1.で示された合意の履行と同時に、2019年 12月 29日までに以下を完了する。 2.2.1 オペレーションアグリーメント締結:Gazprom及びウクライナガス輸送システムオペレータ。 2.2.2 ガストランジット契約締結:Gazprom-Naftogaz及びウクライナガス輸送システムオペレータ。

2020 年内は、НКРЭКУ(ウクライナ・エネルギーインフラ国家規制委員会)は当該輸送契約を調整し、モデル契約として必要な修正を行う。なお、交渉パラメータ(期間、容量及びタリフ)については変更しない。

2.2.3 Gazprom-Naftogazはウクライナガス輸送システムオペレータに対して、トランジット容量を確保する。年間の輸送容量は次の通り。

2020年:~65BCM 2021年:~40BCM 2022年:~40BCM 2023年:~40BCM

52 正確には 29億 1800万ドル(Naftogaz による支払受入れ発表より/

http://www.naftogaz.com/www/3/nakweben.nsf/0/24DE3C1B1D52B136C22584E00079DA9E?OpenDocument&year=2019&month=12&nt=News&)

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資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任

を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

2024年:~40BCM НКРЭКУ(ウクライナ・エネルギーインフラ国家規制委員会)はタリフについて欧州を基準とする競争性のあるものを設定し、Gazprom-Naftogazが承認する。 関係国は 2025年~2034年のガストランジット契約の更新の可能性についても検討していく。

3. 2019年 12月 27日まで、関係国は上記の取り決めを達成するための以下の不可欠な対策を講じる: 3.1 欧州委員会は、書面でウクライナ輸送システムオペレータを新たなウクライナのガストランジットシ

ステムオペレータとして承認し、同様にウクライナ法制に従い、欧州委員会のガス輸送規制にも従っていることを保証する。

3.2 ウクライナは、2019年 12月 29日までに以下を実現。 -前述 1.1及び 1.2で規定された Gazpromとの和平協定。 -ウクライナ輸送オペレータの設立を実現。

-ウクライナ輸送システムオペレータを新たなウクライナのガストランジットシステムオペレータとして承認。

-2.2.2 で規定された今後修正される新たなガス輸送契約に関する НКРЭКУ(ウクライナ・エネルギーインフラ国家規制委員会)の決定の法的妥当性を保証。 -国家規制の独立性、法制の安定性、トランジットサービスにおける法的権利の保護、会計説明責任、透明性、経済性及びタリフの安定性を確保。

3.3 ロシアは 1.1で規定されたのウクライナ側との合意及びストックホルム仲裁裁判所の 2017年 12月~2018年 2月に決定された内容に基づく支払いを実行する。

4. これら全ての合意が実行された場合において、関係国はウクライナへのガス価格を考慮しながら、ウ

クライナへガスを輸送する可能性について検討する。

<※各代表の署名>

シェフチョヴィッチ 欧州委員会副委員長

イェルマーク ウクライナ大統領補佐官

コザーク ロシア連邦副首相

クリョーバ ウクライナ副首相

ノヴァク ロシア連邦エネルギー大臣

オルジェル ウクライナエネルギー大臣

Gazprom(ロシア) ミレル社長 Naftogaz(ウクライナ) ヴィトレンコ Executive Officer53

ガス輸送システムオペレータ(ウクライナ) マコゴン社長

(了)

53 プロトコール後の Gazprom との関係契約締結でもミレル社長のカウンターパートとして出て来るユーリ・ヴィトレンコ氏は

Gazprom との係争担当 Executive Officer という肩書にあり、Naftogaz のコボリェフ CEO よりも序列は数段下である。http://www.naftogaz.com/www/3/nakweben.nsf/0/A0E940A45393645AC2257F3B004BF27D?OpenDocument&Expand=3&