fx monthlyドル円は106 円台半ばから107 円台後半までまとまった上げ幅を記...

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FX Monthly | 令和 2 年(2020 年)6 30 1 Table of contents 1 為替相場の見通し 2 予想レンジ 3 マーケットカレンダー 4 為替相場推移表 1. 為替相場の見通し 1)ドル円(内田) ドル vs 頑健な通貨.............................................. 2 6 月のドル円は 110 円目前に迫ったものの、その後のリスクオ フへの揺り戻しによって、106 円台まで急反落した。しかし、依 然として感染拡大第 2 波への懸念は燻るものの、足元の経済活動 の再開とともに改善する経済指標を支えに、リスクオフの程度は 限定的となっており、ドル円は底堅さもみせた。 年前半を振り返ると総じてドルは堅調に推移したものの、円を はじめユーロやスイスフランなど、ファンダメンタルズに頑健性 のみられる通貨に対しては軟化している。今後、低金利の長期化 も見込まれ、ドルは対円ではじり安に推移しそう。また、日本の デフレ回帰への懸念も根底の円高圧力として効いている可能性が 高く、ドル円の年末 105 円割れを見込む。 2)ユーロ(平松) 上昇するも、ペースは緩やか ................................... 7 3)英ポンド(亀井) 集中交渉に注目も、早期の進展は見込みづらい .... 13 4)豪ドル(井野) 反発局面も一旦ここまでか..................................... 16 5)カナダドル(栗田) 経済活動再開を受けカナダドルは続伸................... 17 6)人民元(石丸) 尽きない不安 .......................................................... 18 令和 2 年(2020 年)6 30 FX Monthly GLOBAL MARKETS RESEARCH チーフアナリスト 内田 シニアアナリスト 亀井 純野、井野 鉄兵、石丸 伸二 アナリスト 平松 誠基 栗田 大地 三菱 UFJ 銀行 A member of MUFG, a global financial group

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Page 1: FX Monthlyドル円は106 円台半ばから107 円台後半までまとまった上げ幅を記 録。日銀が臨時の金融政策決定会合を開催すると発表した19日にも、

FX Monthly | 令和 2年(2020年)6月 30日 1

Table of contents

1 為替相場の見通し

2 予想レンジ

3 マーケットカレンダー

4 為替相場推移表

1. 為替相場の見通し

(1)ドル円(内田)

ドル vs 頑健な通貨 .............................................. 2

6 月のドル円は 110 円目前に迫ったものの、その後のリスクオ

フへの揺り戻しによって、106 円台まで急反落した。しかし、依

然として感染拡大第 2 波への懸念は燻るものの、足元の経済活動

の再開とともに改善する経済指標を支えに、リスクオフの程度は

限定的となっており、ドル円は底堅さもみせた。

年前半を振り返ると総じてドルは堅調に推移したものの、円を

はじめユーロやスイスフランなど、ファンダメンタルズに頑健性

のみられる通貨に対しては軟化している。今後、低金利の長期化

も見込まれ、ドルは対円ではじり安に推移しそう。また、日本の

デフレ回帰への懸念も根底の円高圧力として効いている可能性が

高く、ドル円の年末 105 円割れを見込む。

(2)ユーロ(平松)

上昇するも、ペースは緩やか ................................... 7

(3)英ポンド(亀井)

集中交渉に注目も、早期の進展は見込みづらい .... 13

(4)豪ドル(井野)

反発局面も一旦ここまでか ..................................... 16

(5)カナダドル(栗田)

経済活動再開を受けカナダドルは続伸 ................... 17

(6)人民元(石丸)

尽きない不安 .......................................................... 18

令和 2年(2020年)6月 30日

FX Monthly

GLOBAL MARKETS RESEARCH

チーフアナリスト 内田 稔

シニアアナリスト 亀井 純野、井野 鉄兵、石丸 伸二

アナリスト 平松 誠基

栗田 大地

三菱 UFJ 銀行 A member of MUFG, a global financial group

Page 2: FX Monthlyドル円は106 円台半ばから107 円台後半までまとまった上げ幅を記 録。日銀が臨時の金融政策決定会合を開催すると発表した19日にも、

為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 2

ドル vs 頑健な通貨

欧米での経済活動の再開や日・欧の財政出動への期待1などから、

総じて市場のリスク許容度が高まる中、6 月初旬のドル円は堅調に

推移した。107.71 で寄り付くと翌 2 日には、OPECプラスの減産延長

との報道を手掛かりに 108 円台後半まで上昇。予想を大きく上回っ

た米雇用統計2を受け、5 日には今月の高値 109.85 を記録した。しか

し、110 円に届かなかったことから、ドル円はFOMCを控えた翌週に

入ると売りが優勢となり、急反落。さらに、米国での新型コロナウ

イルスの感染拡大第 2 波への懸念も高まったほか、FOMCも市場の

楽観ムードに水を注した模様だ(後述)。また、11 日にフロリダ州

で一日の新規感染者数が過去最多を記録したと報道されるとダウ工

業株 30 種平均が前日比▲1,861 ドルと過去 4 番目の下げ幅を記録す

るなど、市場はリスク回避へと傾いた。もっとも、信用不安の台頭

やドルの流動性低下懸念は限定的な範囲にとどまったことから、ド

ル円も下げ渋った(第 1 図)。月間安値 106.08 を記録した 23 日も、

予想を上回ったユーロ圏やドイツ、フランスの製造業PMI指数を受

けたユーロ高ドル安の影響がドル円にも波及した影響によるものだ。

結局、下値の堅さも確認したドル円は月末にかけて持ち直すと、長

期金利の低下が続伸を阻んでいるが、107 円台後半で月末の東京時

間を迎えた(第 2 図)。

第 1図:米国の債券スプレッド(10年物社債と国債の金利差) 第 2図: ドル円相場(年初来)

(資料)Bloombergより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloombergより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

FOMCは 6 月の会合で、政策の据え置きを決定した。これまでの

対応により、当面様子をみるスタンスだ。しかし、2022 年末でも失

業率、物価ともに長期的な均衡水準(Longer Run)には届かないと

の慎重な見通しを示した(第 1 表)。また、参加者 17 名中 15 名は

2022年の年末まで現在のゼロ金利が適切であるとの見方を示してお

り、低金利は当面、続く公算が大きい。記者会見で、パウエル議長

も先行きの不確実性が高いことを強調しており、今後の状況次第で

1 独・仏や欧州委員会から相次いで EU復興基金が提案されたほか、本邦でも第二次補正予算が 5/27 に閣議決定された。 2 非農業部門雇用者数▲750 万人、失業率 19.0%の予想に対して実績は+250.9 万人および失業率 13.3%

0

1

2

3

4

5

6

7

8

1 2 3 4 5 6 7

(%)

(月)

対BB

対BBB

101.0

102.0

103.0

104.0

105.0

106.0

107.0

108.0

109.0

110.0

111.0

112.0

113.0

1 2 3 4 5 6 7

(円)

(月)

6 月のレビュー

強いリスクオンから

リスクオフへ傾斜

慎重姿勢に徹した FRB

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 3

は、追加緩和もあるだろう。その点、パウエル議長は、現在の金融

政策が適切であるとしつつ、フォワードガイダンスや資産買入れに

関して議論したこと、イールドカーブコントロールについても向こ

う数回の会合で議論を続けていくことを明かした。かねてマイナス

金利政策を明確に否定してきたFRBだけに、今後イールドカーブコ

ントロールは有力な選択肢として浮上しそうだ(第 2 表)。もっと

も、パウエル議長も、財政出動の必要性を今後とも声高に求めてい

く考えを示した通り、7 月以降、米国のインフラ投資の行方に市場

の注目も集まりそうだ。現在、トランプ政権が 1 兆ドルのインフラ

整備計画の策定に着手しており、下院民主党も 18 日に 1 兆 5,000 億

ドル規模のインフラ整備に関する法案を発表している。上下両院の

過半数政党が異なる「ねじれ議会」である上、共和党内の財政保守

派による反対も見込まれ、実現の見通しは決して明るくない。それ

だけに実現の道筋が見えれば、市場もリスクオンの反応を示すだろ

う。

第 1表:経済見通し(中央値) 第 2表:追加緩和の選択肢

(資料)FRBより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(GDP、PCEデフレーターは第 4四半期の前年比、失業率は第 4四半期の平均)

(資料)三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

年前半の為替市場を振り返ると、ドルは多くの通貨に対して上昇

したが、必ずしも全面高とはなっていない。そこで 5 月号でも紹介

した手法にて、28 通貨を 3 つの切り口によってグループ分けした上

で、対ドル変化率をみると、ドルは頑健な条件を揃えたグループ 1

(G10 かつ経常黒字かつ非資源国)に対して下落していることがわ

かる(第 3 表)。根強い取引需要に支えられ、今後もドルが全面安

となる展開は見込みにくいが、米国の低金利は長期化すると見込ま

れる。経常赤字と低金利の組み合わせが続く限り、今後とも対円で

は緩やかなドル安の継続が見込まれる。

直近実績 2020 2021 2022LongerRun

実質GDPの伸び 0.25(Q1) -6.5 5.0 3.5 1.8

(12月) - 2.0 1.9 1.8 1.9

失業率 13.3(5月) 9.3 6.5 5.5 4.1

(12月) - 3.5 3.6 3.7 4.1

PCEデフレーター 0.5(5月) 0.8 1.6 1.7 2.0

(12月) - 1.9 2.0 2.0 2.0

コアPCEデフレーター 1.0(5月) 1.0 1.5 1.7 -

(12月) - 1.9 2.0 2.0 -

上半期の為替市場の

振り返りとドルの展望

追加緩和の選択肢 現状や今後の見通しなど

フォワードガイダンス強化可能性高い。具体的には、ゼロ金利を継続する期間やゼロ金利解除条件の明示。

量的緩和の拡大

国債とMBS、CMBS(商業用不動産MBS)を上限を定め

ずに買入れ実施中。6月のFOMCでは少なくとも向こう

数カ月は現在の買い入れペース維持と表明。市場の混乱時には有力な選択肢として再び浮上する公算大。

イールドカーブコントロール

債券利回りに目標を設定し、金利上昇を抑制するもの。一段の金利引き下げを狙う場合、選択肢として浮上しそう。但し、5年国債の利回りは既に政策金利付近

まで接近しており、緩和効果はどの程度の年限まで低く抑え込むかによる。

マイナス金利政策

パウエル議長をはじめFOMC参加者は否定的。金融機関

への悪影響、MMFからの資金流出を誘発するおそれなど副

作用が強く、導入の可能性は極めて低い。

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 4

第 3表:各通貨の 8分類とグループ毎の対ドル変化率

(資料)Bloomberg、Jetroより、三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

※輸出に占める一次産品比率が概ね 3 割を上回る国を資源国とした。メキシコとマレーシアは OPEC プラスの枠組みに入っ

ている為、資源国とした。トルコは経常黒字に転じているが、長らく高水準の赤字が続いた為、経常赤字国に分類した。

また、円の事情に照らしても、やはりドル円には下押し圧力が加

わりそうだ。円の名目実効相場は、年初来、約 3.5%上昇している(第

3 図)。日本では 2 月以降、インフレ期待がマイナス圏にまで低下

した結果、欧米とは対照的に実質金利(=名目金利-インフレ期待)

がプラス圏へと浮上しており、これが円を押し上げている可能性が

高い(第 4 図)。日本の貿易収支は、赤字となる月が散見され、対

外証券投資をみても年初来、既にネットで約 13.3 兆円もの取得超と

なっている3。それでも円高が進む理由として、対外証券投資の高い

ヘッジ比率も挙げられよう。現在、3 カ月物(年率)の為替ヘッジ

コストは約 0.5%。米国債見合いでは、ヘッジコスト勘案後のリター

ンが極めて低いものの、クレジット投資などにより、原資産の利回

りを高めれば、為替相場への影響が出ないヘッジ付きドル建資産投

資の妙味が増す。対外証券投資が円安圧力となる程度は限定的なも

のとなりそうだ。

第 3図:円の名目実効相場(6/23現在) 第 4図:日米独の実質金利

(資料)BIS(Broad)より三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloombergより、三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(実質金利は 10年物国債利回りからブレークイーブン・インフレ率を引いたもの)

3 財務省の指定報告機関ベースにおける中長期債と株式・投資ファンド持ち分の年初来の累計(6/20 までの週次データ)

G 属性 経常収支 資源特性 対象通貨対ドル変化率(平均、%)

1 G10 黒字 非資源国 JPY、EUR、CHF、SEK 0 .7

2 G10 赤字 非資源国 GBP -7 .2

3 G10 黒字 資源国 AUD、NOK -5 .6

4 G10 赤字 資源国 NZD、CAD -4 .7

5 新興国 黒字 非資源国 CNY、KRW、TWD、SGD、THB、CZK、PLN -2 .7

6 新興国 赤字 非資源国 PHP、INR、HUF、TRY -6 .0

7 新興国 黒字 資源国 MYR、RUB -8 .0

8 新興国 赤字 資源国 IDR、ZAR、ARS、BRL、MXN、CLP -14 .7

84

86

88

90

92

94

96

98

1 2 3 4 5 6 (月)

(円高)

(円安)-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

15 16 17 18 19 20

(%)

(年)

日本 米国 ドイツ

じり高が続く円相場

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 5

IMFは 6 月 24 日に世界経済見通しの改定値を公表した。そのベー

スラインシナリオによると 2020年の世界経済の成長率は 4月時点の

▲3.0%から▲4.9%へとさらに下方修正された(第 4 表)。ワクチン

開発には年単位の時間を要するとの一般的な見方に立てば、今後と

も世界経済は社会的距離を保ちながら経済活動を何とか維持してい

くシナリオの蓋然性が最も高い(標準シナリオ)。年初来のドル円

は、強力なリスクオフと強力なリスクオンの場面でこそ強含むもの

の4、総じて上値を徐々に切り下げながら、緩やかな下落トレンドを

辿ってきた。今後も上下動を繰り返しながら、ドル円は軟化し、年

末にかけて 105 円割れが定着する可能性が高いとみる(第 5 表)。

第 4表:IMFの世界経済見通し(6/24)

(資料)IMFより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

第 5表:予想レンジおよび各四半期末の予想値(標準シナリオ)

7 月~9 月 10 月~12 月 1 月~3 月 4 月~6 月

予想レンジ 104.0~110.0 102.0~109.0 100.0~108.0 99.0~107.0

期末予想値 106.0 105.0 104.0 103.0

(予想レンジは四半期中を通じた高値と安値の予想。期末予想値は各四半期末のニューヨーク 17時時点の予想)

一方、世界的に感染の拡大が止まらない上、経済活動を再開した

地域が再びロックダウンを迫られるような悲観シナリオの場合、市

場は強いリスクオフへと傾斜する可能性が高い(第 6 表)。その場

合、3 月上旬と同様に当初はドルの急騰により、ドル円も上昇しそ

うだ。もっとも、そうした極度のリスクオフは、当局の迅速な政策

対応によってさほど長続きしないと見込まれる。実際、3 月中旬の

強いリスクオフ相場も概ね 10 営業日で落ち着きを取り戻した。この

為、急騰した反動からドルが反落する上、世界的な一段の低成長も

見込まれる中、日本の実質金利上昇が、円高圧力を強めそうだ。結

4 強力なリスクオフの際は円高を超えるドル高によって、強力なリスクオンの際はドル安を超える円安圧力が生じる為。

世界GDPに2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 占める比率(%)

世界 3.8 3.6 2.9 -4.9 5.4 100.0先進国 2.5 2.2 1.7 -8.0 4.8 60.3

米国 2.4 2.9 2.3 -8.0 4.5 24.2ユーロ圏 2.5 1.9 1.2 -10.2 6.0 16.1ドイツ 2.5 1.5 0.6 -7.8 5.4 4.7フランス 2.3 1.7 1.3 -12.5 7.3 3.3イタリア 1.7 0.8 0.3 -12.8 6.3 2.4スペイン 3.0 2.4 2.0 -12.8 6.3 1.7

日本 1.9 0.3 0.7 -5.8 2.4 5.9その他 2.7 2.6 1.7 -4.8 4.2 8.8

新興国及び発展途上国 4.8 4.5 3.7 -3.0 5.9 39.7アジア 6.6 6.3 5.5 -0.8 7.4 22.5中国 6.8 6.7 6.1 1.0 8.2 15.7インド 7.2 6.1 4.2 -4.5 6.0 3.2アセアン5 5.3 5.3 4.8 -2.0 6.2 2.9

欧州 3.9 3.2 2.1 -5.8 4.3 4.5ロシア 1.6 2.5 1.3 -6.6 4.1 2.0

中南米・カリブ 1.2 1.1 0.1 -9.4 3.7 6.2メキシコ 2.1 2.1 -0.1 -10.5 3.3 1.4ブラジル 1.1 1.3 1.1 -9.1 3.6 2.2

予測実績

ドル円の見通し

標準シナリオは年末の

「105 円割れ定着」

悲観シナリオでは一旦、

ドル円急騰後、反落し

100 円割れも

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 6

果的に、ドル円の下げ幅は標準シナリオよりも広がるおそれが強く、

年内の 100 円割れの蓋然性が増す。

反対に、早期終息が期待できる楽観シナリオの場合、市場は強い

リスクオンに傾斜するだろう。これまでの通貨の強弱の序列は概ね

反転するとみられる。ドル安と円安によって、5 月下旬から 6 月上

旬にみられた通り、クロス円の上昇幅が拡大しそうだ。その上、米

国ではYCC導入観測も薄れ、国債増発懸念と相まって長期金利にも

じわりと上昇圧力が加わろう。これが、株式相場への強い逆風とな

らない限りにおいて、ドル円も上昇すると見込まれる。もっとも、

リスクオンのドル安圧力が加わっている為、次第にドル円の上値も

重さを増すと考えられる。

第 6表:各シナリオの前提条件

(資料)筆者作成

チーフアナリスト 内田 稔

シナリオ 標準シナリオ 悲観シナリオ 楽観シナリオ

蓋然性(参考) 60% 30% 10%

新型コロナウイルスコロナと共存社会的距離が経済活動を抑制

第2波到来経済活動再停止も

パンデミックの年内終息

世界経済のイメージ(今年のマイナス成長後)

「し」の字(「U」には数年)

L字 V字

原油先物相場(WTI) 30㌦大台でもみ合い 20㌦台以下に反落コロナショック以前の

水準を回復

クレジットスプレッド拡大に歯止めも一段の縮小鈍い

再拡大 さらに縮小

為替市場の概況G10かつ経常黒字かつ非資源国通貨に対し、ドルは軟化。

当初、円高凌ぐドル高も次第にドルが供給され、ドル反落へ。

ドル安と円安でクロス円上昇。日米金利差によりドル円も上昇。

20年末のドル円 105円割れ定着 100円割れ 110円以上の定着

楽観シナリオならクロ

ス円急騰、ドル円も 110

円大台定着へ

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 7

(2)ユーロ 上昇するも、ペースは緩やか

6 月のユーロドル相場は上昇後に、上値を抑えられた(第 1 図)。

6 月 1 日にユーロドルは 1.1116 で寄り付いた。世界的な財政出動へ

の期待から、市場のリスク選好姿勢が強まり、ドルが軟調に推移す

るとユーロドルは上昇した。4日にECBが追加緩和策を決定すると、

独伊スプレッドの縮小や景気改善期待から、ユーロドルは 1.13 台後

半まで続伸。その後、FOMCで米国の金融緩和長期化が示唆され、

米 10 年国債利回りが低下したことも、ドル売りの材料となり、ユー

ロドルは 10 日に 3 月以来の高値 1.1422 を付けた。月央にかけては、

新型コロナウイルスの感染拡大第 2 波への懸念からドルが買い戻さ

れたことに加え、19 日には復興基金をめぐるEU首脳の協議が難航し

たことから、ユーロドルは 1.11 台半ばまで押し戻された。23 日に、

ユーロ圏と独仏のPMIが市場予想を上回り、ユーロドルは23日に1.13

台半ばまで回復する場面がみられた。ただし、米中対立や第 2 波が

懸念されて、ドルへの逃避需要が高まったことで、ユーロドルは続

伸を阻まれ 1.12 台半ばで引けそうだ。

ユーロ円相場は月初に 119.69 で寄り付いた。世界的な財政出動へ

の期待やECBの金融政策決定を受け、ユーロ買い円売りが優勢とな

り、ユーロ円は 5 日に昨年 5 月以来の高値 124.43 まで急騰した。し

かし、徐々に月初の円売りが調整されたことや、新型コロナウイル

ス感染拡大が懸念されたことから、円が買われ、ユーロ円は 12 日に

120 円台前半まで反落した。月央にかけては、復興基金に関する合

意が持ち越されたため、ユーロが軟調に推移し、ユーロ円は安値 119

円台前半まで押し戻された。その後、ユーロ圏と独仏のPMIを好感

し、ユーロ円は 23 日に 121 円まで戻すも、米中対立やコロナ感染再

拡大への懸念から、上値重く推移している(第 2 図)。

第 1図 : ユーロドルの推移 第 2図 : ユーロ円の推移

(資料)Bloombergより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloombergより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

ユーロ圏では、6 月に入りイタリアやスペインの移動制限が徐々

に解除され、経済は持ち直し始めた。ユーロ圏の景況感を確認する

と、23 日に公表された 6 月のユーロ圏PMI(速報値)は 47.5 となり、

2 カ月連続で大幅に上昇した(4 月 13.6、5 月 31.9)。依然として、

1.0700

1.0900

1.1100

1.1300

1.1500

20/04 20/05 20/06 20/07

(ドル)

(年/月)

↑ユーロ高

↓ユーロ安114.00

116.00

118.00

120.00

122.00

124.00

126.00

20/04 20/05 20/06 20/07

(円)

(年/月)

↑円安

↓円高

ユーロ圏景気は持ち直

すか

6 月のレビュー

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 8

好不況の分かれ目となる 50 を下回っているが、最悪期は脱したと言

えそうだ。業種別にみると、製造業PMIが 46.9(4 月 33.4、5 月 39.4)、

サービス業PMIが 47.3(4 月 12.0、5 月 30.5)となった。休業が解除

されたことで、サービス業PMIの復調が著しい。ただし、ユーロ圏

でも新型コロナウイルスの感染拡大第 2 波到来が徐々に現実味を帯

びており、先々でPMIが反落する可能性もある。実際ドイツでは、

食肉加工工場で 1,500 人超の集団感染が確認され、同工場のあるノ

ルトライン・ウェストファーレン州政府は州内の一部にロックダウ

ンを課した。欧州で感染の再拡大が現実化し、リスク回避姿勢が強

まった場合、ドルや円が買われ易く、ユーロの上値は抑えられよう。

第 3図: ユーロ圏 PMI

(資料)マークイット Bloombergより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

こうした中、経済復興に向け、市場は欧州の財政支援の動きに注

目している。6 月 19 日に、EU首脳は復興基金について議論した。独

仏共同案や欧州委員会案が発表されて以降、EU首脳が復興基金につ

いて話し合う、最初の場となった(第 1 表)。

第 1表: 復興基金案について

独仏共同案 欧州委員会案

規模 5,000 億ユーロ 7,500 億ユーロ

分配方法 5,000 億ユーロの助成金 5,000 億ユーロの助成金と

2,500 億ユーロの融資

財源 欧州委員会の発行する債券 欧州委員会の発行する債券

(資料)各種報道より三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

結果から言えば、市場の想定通り、EU加盟国内での意見相違が改

めて浮き彫りとなっている。争点となったのは、以下の 2 点だ。

1 点目は 5,000 億ユーロの助成金(返済なし)の扱いだ。国によっ

ては受け取る助成金よりも返済負担が大きくなる可能性もあり、実

質的には、財政に余裕のある加盟国から余裕の乏しい南欧諸国への

財政移転といった側面が強い。

10

20

30

40

50

60

70

06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

ユーロ圏総合PMI ユーロ圏製造業PMI ユーロ圏サービス業PMI

(年)

復興基金設立をめぐり、

EU 首脳が協議

争点は 2 点

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 9

2 点目もそれに関連するが、偏った配分が問題となっているよう

だ。欧州委員会案では、イタリアへの配分は全体の 20.4%、スペイ

ンへの配分は全体の 19.9%と上位 2 カ国で全体の 40%のシェアを占

める(第 2 表)。これが実現されれば、イタリアは 1,530 億ユーロ

の補助金の受け取りに対し、EU予算への拠出が 960億ユーロと、ネッ

トで 570 億ユーロを得ることになる。

第 2表: 欧州委員会案による各国の配分比率と GDPシェア

単位(%) 予算シェア

…①

GDPシェア

…② ①-②

予算シェア

…①

GDPシェア

…② ①-②

イタリア 20.4 12.8 7.6 チェコ 1.5 1.6 -0.1

スペイン 19.9 8.9 11.0 スウェーデン 1.2 3.4 -2.2

フランス 10.4 17.4 -7.0 オーストリア 1.0 2.9 -2.0

ポーランド 8.6 3.8 4.8 リトアニア 0.9 0.3 0.6

ドイツ 6.9 24.7 -17.8 フィンランド 0.7 1.7 -1.0

ギリシャ 5.8 1.3 4.5 ラトビア 0.7 0.2 0.5

ルーマニア 4.4 1.6 2.8 デンマーク 0.6 2.2 -1.6

ポルトガル 4.2 1.5 2.7 スロベニア 0.6 0.3 0.3

ブルガリア 2.0 0.4 1.6 アイルランド 0.4 2.5 -2.1

クロアチア 2.0 0.4 1.6 キプロス 0.4 0.2 0.2

スロバニア 2.0 0.7 1.3 エストニア 0.3 0.2 0.1

ハンガリー 2.0 1.0 1.0 マルタ 0.1 0.1 0.0

オランダ 1.7 5.8 -4.1 ルクセンブルク 0.0 0.5 -0.5

ベルギー 1.6 3.4 -1.9

(資料)欧州委員会より三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

これに対し、財政規律を順守するオランダ、オーストリア、デン

マーク、スウェーデンが難色を示している。最終的には、EU首脳が

全会一致で承認する必要があり、反対を表明している国の説得や意

見調整が必要になる。メルケル首相らが早期合意の必要性を示して

いるものの、上述した国々を説得できず、協議は難航した。ただし、

難航は事前に予想されていたことから、ユーロへの影響は限定的と

なっている。また、予算が承認されたとしても、実際の分配は 2021

年以降となり、時間的に猶予があることも、ユーロを下支えしたと

みられる。7 月 17、18 日に開催される欧州理事会でEU首脳は再び復

興基金について話し合う予定だ。目先は、それまでに発表されるで

あろう、欧州委員会の修正案に注目が集まりそうだ。反対国の承認

を取り付けるため、欧州委員会は助成金の割合の引き下げや配分の

是正などを実施する可能性が高い1。それでも復興基金が承認されれ

ば、景気回復期待や独伊スプレッドの縮小から、ユーロは上昇しよ

う(第 4 図)。

1 例えば、配分の算出方法の中に、過去 5 年間の失業率なども考慮されており、今回のコロナショックとの関連性が不明瞭と

の見方もあり、算出方法が変更される可能性がある。

協議は予想通り難航

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 10

第 4図: ドイツとフランス・スペイン・イタリアの 10年国債利回り差

(資料)Bloombergより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

ECBもユーロ圏景気を支えるため、金融緩和策を拡大している。6

月4日の定例理事会で、ECBはパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)

の拡充を決定した(第 3 表)。同時に発表されたECBスタッフによ

る経済・物価見通しでは、新型コロナウイルス感染拡大を受け、2020

年の実質GDP成長率見通しが前年比▲8.7%(前回 3月時点:同+0.8%)

に下方修正された(第 4 表)。また、ユーロ圏の物価見通しに関し

ては、HICPとHICP(除く食料品、エネルギー)ともに下方修正した。

特に、足元の原油価格の急落を受け、HICPは前年比+0.3%(前回 3

月時点:同+1.1%)まで下方修正された。仮に足元の原油価格が横

ばい圏で推移した場合、しばらくHICPは 0.0%近辺で推移しそうだ

(第 5 図)。今回、PEPP拡大の目的は物価見通しの下方修正に対応

するためと声明文に表記されたことから、緩和的な政策がしばらく

続くとみられる。

第 3表: パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の変更点

項目 従前 今回

規模 7,500 億ユーロ 1 兆 3,500 億ユーロ

期間 少なくとも 2020 年末 少なくとも 2021 年 6 月末

買入対象 既存の資産購入プログラム(APP)と同様

(国債や社債など) 変更なし

買入ルール

キャピタルキーは維持も、PEPP のもとで

は資産買入は柔軟に行う。33%の購入制限 2

は適用しない

変更なし

再投資 -

PEPPのもとで購入された資産が満期を迎え

た場合、少なくとも 2022 年末まで再投資す

(資料)ECBより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

2 ECBによる資産買入では、財政ファイナンスやその疑義を招くことを防止するため、各発行体の発行残高の33%以内とした。

ただし、CAC(債券を保有する投資家の多数決によって事後的に償還期限や金利などの条件を変更できるようにする契約条

項)が 25%以上で付与される銘柄の場合は、25%が上限とされている。

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

19/1 19/4 19/7 19/10 20/1 20/4

独仏スプレッド 独 スプレッド 独伊スプレッド

(年/月)

資産買入を拡充

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 11

第 4表:ECBスタッフによる景気・物価見通し 第 5図:HICP と原油価格の推移

2019 2020 2021 2022

実質 GDP成長率 1.2% ▲8.7% 5.2% 3.3%

20年 3月分 1.2% 0.8% 1.3% 1.4%

HICP 1.2% 0.3% 0.8% 1.3%

20年 3月分 1.2% 1.1% 1.4% 1.6%

HICP(除く食料品、エ

ネルギー 1.0% 0.8% 0.7% 0.9%

20年 3月分 1.0% 1.2% 1.4% 1.5%

(資料)ECB、Bloombergより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (注)7月以降の原油価格に関しては、1バレル 36.8ユーロで横置きしている。

(資料)ユーロスタット、Bloombergより作成

PEPP導入から5月末までの約2カ月間でECBはPEPPを通じて2,346

億ユーロの資産を購入していた(第 6 図)。このペースでの買入が

続けば、10 月末には 7,500 億ユーロの購入上限に到達していた。そ

のため、6,000 億ユーロ(市場の事前予想は 5,000 億ユーロ)拡大さ

れたことで、PEPPによる月額 1,000 ユーロ規模の資産買入が約 6 カ

月延長できる。これを市場は好感し、独伊スプレッドが縮小したこ

とで、ユーロは上昇した。先々に関しては、独伊スプレッドが既に

コロナショック前の水準まで戻りつつあり、PEPPのさらなる拡大が

ユーロ高に直結しにくくなっていそうだ。中長期的にはECBの緩和

的な金融政策が長期化すれば、ユーロの重石となる点には、留意が

必要だ。

第 6図: ECBの資産買入(月額)

(資料)Bloombergより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

上述した通り、①ユーロ圏の景気が改善していること、②復興基

金が年内にも承認されそうなこと、③財政政策・金融政策により南

欧諸国の財政不安が後退しそうなことから、ユーロは上昇していく

とみている。ただし、①EUと英国の通称協定をめぐる不透明感(詳

細は英ポンド相場の見通しをご参照)や、②新型コロナウイルスの

-1.0%

0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

-70%

-35%

0%

35%

70%

15 16 17 18 19 20

ユーロ建 (前年同月比、 )

HICP(前年同月比、 )

(年)

-200

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

15 16 17 18 19 20

PEPP 既存の資産買入

(億ユーロ)

(年)

中長期的には金融緩和

の長期化はユーロの重

石に

ユーロの見通し

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 12

感染拡大第 2 波懸念も燻ることから、ユーロの上昇ペースは緩やか

なものとなりそうだ。

対ドルでは、独米金利差の水準に照らせば、ユーロドルは徐々に

下値を切り上げるとみられる。対円では、円も堅調に推移するとみ

ており(詳細はドル円相場の見通しをご参照)、ユーロ円は幾分軟

調に推移しそうだ。

予想レンジ

7 月~9 月 10 月~12 月 1 月~3 月 4 月~6 月

EUR/USD 1.09 ~1.15 1.09~1.17 1.10~1.20 1.11~1.22

EUR/JPY 117.0~123.0 116.0~123.5 115.0~124.0 114.0~124.5

予想レンジは四半期中を通じた高値と安値の予想

アナリスト 平松 誠基

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 13

(3)英ポンド 集中交渉に注目も、早期の進展は見込みづらい

6 月のポンドの対ドル相場は、月初 1.23 台前半で寄り付いた。そ

の後、10 日にはドル売りが進む中、1.28 台前半まで上昇する場面が

みられた。だが、11 日には、12 日のEUとの合同委員会で、ゴーブ・

ランカスター公領大臣兼内閣府担当大臣が移行期間の延長を正式に

否定すると報じられるなか、ポンドはじり安に転じた。その後、29

日に安値 1.22 台後半まで下落した後、本稿執筆時点では 1.23 台前半

にて推移している。

ポンドは対円では 132 円台後半で寄り付くと、市場のリスク回避

姿勢が和らぐなか、高値139円台後半まで上昇する場面がみられた。

だが、市場のリスク回避姿勢が強まるに連れ、131 円台後半まで反

落した後、足元では 132 円台後半に値を戻して推移している。

ポンドは 6 月、主要通貨の中で唯一ドルに対して下落した通貨で

あった。その理由として、英国が新型コロナウイルスの問題に加え、

EUとの貿易交渉という課題を抱えていることが挙げられる。先月の

本稿では、6 月の注目点としてEU離脱に伴う移行期間の延長可否を

挙げた。だが、6 月 12 日に 29 日の週から 5 週連続で英国とEUの交

渉ラウンドが開催されることが発表された後は、市場参加者の関心

も次第にその交渉ラウンドに移り、6 月末時点での移行期間延長の

可否をめぐる短期的な相場の混乱は回避された(第 1 表)。また、

15 日の英国とEUのハイレベル会合で、双方が「新たなモメンタム」

が必要と合意したことで、7月の交渉進展期待も幾分高まっている。

第 1表:EU離脱及び英国国内の当面の主なスケジュール

(注)青字は英国国内イベントスケジュール

(資料)各種資料、報道より三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

日付 内容

20年6月29日~7月3日 英国とEUの交渉チームの貿易交渉(第5ラウンド)

20年6月30日 金融分野の同等性評価期限、漁業権交渉期限

20年6月30日英国・EUの合同委員会による移行期間延長(1年または2年)の判断期限

(before July 1st)

20年7月6日の週 英国とEUの交渉チームの貿易交渉(第6ラウンド)

20年7月13日の週 英国とEUの交渉チームの貿易交渉(第7ラウンド)

20年7月22日 英国議会、夏季休会(~9月7日)

20年7月20日の週 英国とEUの交渉チームの貿易交渉(第8ラウンド)

20年7月27日の週 英国とEUの交渉チームの貿易交渉(第9ラウンド)

20年8月6日 BOE四半期金融政策報告、金融政策発表、議事要旨公表、ベイリー総裁記者会見

20年8月中 英国とEUの交渉チームの貿易交渉(第10ラウンド)

20年9月初旬 英国・EUの合同委員会会合

20年9月中 英国とEUの交渉チームの貿易交渉(第11ラウンド)

20年9月末 EU側の考える交渉期限(by October)

20年10月中 臨時欧州理事会開催?

20年11月5日 BOE四半期金融政策報告、金融政策発表、議事要旨公表、ベイリー総裁記者会見

20年11月26日 EUの考える年内批准に向けた欧州議会への貿易協定案の提示期限

20年12月10日~11日 欧州理事会

20年12月31日 移行期間の終了予定日

21年1月1日 (英国とEUが合意できていれば)貿易協定が発効

6 月のレビュー

EU との集中交渉で「新

たなモメンタム」はみ

られるか

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 14

ただし、早期の交渉進展を期待するのは時期尚早とみている。ジョ

ンソン首相は 15 日の会合後のインタビューで「合意は早いに越した

ことはない」と、7 月中の交渉決着に意欲をみせた。だが、EU側の

出席者の発言をみると「野心的かつ包括的な合意」や「公正な競争

環境」を望む姿勢は不変である。6 月下旬にはバルニエEU首席交渉

官も「貿易交渉の正念場は 10 月中に行われる(であろう)貿易協定

案について協議する欧州理事会」と述べており、交渉の早期進展は

見込みづらい。そうしたなか、どのような形で「新たなモメンタム」

を作り、双方が折り合いをつけるのか依然不透明である。

英国とEUが 6月末に移行期間の延長を決定しなかったことを踏ま

え、今後のシナリオを修正する。メインシナリオ(=標準シナリオ)

では、年末にかけて貿易交渉で合意することを見込む。ただし、交

渉期間が限られることから、「包括的な合意」には至らず、限定的

な合意にとどまるとみている(第 2 表、標準シナリオ)。もっとも、

年末にかけて交渉が続き、最終的に合意できないまま移行期間終了

を迎える展開も想定される(第 2 表、悲観シナリオ)。

第 2表:EU との貿易交渉の今後のシナリオ

(注) 楽観シナリオは早期に包括的な合意に至る場合を想定。

(資料)各種資料、報道より三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

このほかのポンド下押し要因として、イングランド銀行(BOE)

によるマイナス金利導入観測が挙げられる。6 月の金融政策委員会

(MPC)でBOEは大方の事前予想通り、資産買入枠の 1,000 億ポン

ド増額を決定した。ただし、決定が全会一致ではなく、反対票が 1

票投じられたこと、今後の資産買入ペースが緩やかになる可能性が

示されたことから、BOEは量的緩和の拡大にあまり積極的でないと

受け止められた。マイナス金利に関して、ベイリー総裁は今回の会

合では議論しなかったと述べた。また、他国・地域での効果を検証

英国

2020年1月31日 EU離脱

2020年2月1日 移行期間開始

2020年6月30日まで

(移行期間延長判断期限)

楽観シナリオ 標準シナリオ 悲観シナリオ5% 50% 45%

包括的な合意 限定的な合意 合意できず

2020年12月末まで 締結・発効 締結・発効 移行期間終了

FTAなし

移行期間延長せず

貿易交渉開始

早期の交渉進展期待は

時期尚早

年内の限定的な合意を

見込むも、不確実性は

依然として高い

マイナス金利導入観測

は依然燻る

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 15

しているが、複雑な問題であり「いわゆる積極的な政策論議には利

用されていない」とした。ただし、BOEはいかなる手段も(選択肢

から)除外したわけではないとの見解を繰り返し、マイナス金利は

引き続き選択肢の一つであると示唆した。

なお、ベイリー総裁は、Bloombergへの寄稿記事で、金融正常化を

開始する際には利上げ前にバランスシートの縮小に着手する考えを

示した。これにより、今後、金利は長期間にわたり低水準にとどま

る可能性が高まったとみている。

イングランドでは7月から外出規制措置の緩和が一段と進められ、

飲食店や美容室の営業が再開される1。企業及び家計の予防的な行動

は一定程度続くと見込まれ、景気の回復には依然時間を要するとみ

られるが、これは景気とポンド相場にとっては支援材料となる。英

国とEUの集中交渉は注目材料ながら、早期の進展は見込みづらく、

関連報道に一喜一憂する展開が続きそうだ。一方、景気の回復が緩

やかにとどまるとみられるなか、マイナス金利導入観測は引き続き

ポンドの下押し要因となろう。こうしたなか、7 月のポンド相場は

方向感出づらく、レンジ内での推移が続くと見込んでいる。

シニアアナリスト 亀井 純野

1 外出制限措置及びその緩和方針はイングランド、スコットランド、ウェールズ、 アイルランドでそれぞれ異なる。

7月は決め手に欠き方向

感出づらい

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 16

(4)豪ドル 反発局面も一旦ここまでか

豪ドルの対ドル相場は 0.66 台半ばで始まった。5 月下旬からの上

昇基調は、消費者信頼感指数の改善などで加速。5 日には 0.70 台を

回復し、米FOMCを受けたドル安も相まって、10 日には 0.7063 まで

上昇した。しかし、その後は米国、中国での新型コロナウイルス感

染症拡大第 2 波への警戒や、米中関係の悪化懸念などにより上値重

く推移。ただ、10 日に 0.6777 まで下落した後は、0.68 台を維持し、

底堅く推移している。

豪ドル相場は、対ドルで 0.70 台、対円で 76 円台を直近のピーク

に、3 月以降の反発は一服した格好となっている。いわゆる「コロ

ナショック」の下げを全戻ししたこともあり、一段の上昇には更な

る買い材料が必要だ。大手格付会社の一角が豪州の(最上格)格付

け見通しを「安定的」に維持するとの発表や、IMFの世界経済見通

しにおける豪州の上方修正など、ポジティブな材料は散見されたも

のの、力不足だったということだろう(第 1 表)。

もちろん、こうした好材料は、豪ドルの底値固めには一役買って

いると言える。このほか、ロウ準備銀総裁は、急速に反発した豪ド

ル相場について、豪ドル安が志向されるものの、現状「過大評価と

は言えない」と発言しており、豪ドル高を牽制することはなく、静

観の構えをみせた。さらに、5 月の消費者信頼感指数のほか、小売

売上高速報値でも行動制限緩和で経済活動が回復に向かい始めてい

ることが確認された。足もとのような経済、金融市場環境では、準

備銀が金融政策スタンスをさらなる緩和方向に変更するとの思惑は

台頭しづらい(第 1 図)。したがって、かかる環境下、豪ドル相場

は一段と底堅さを増していると考えられる。もちろん、世界的には

金融市場に調整が入るリスクは残っていることから、豪ドルも連れ

安となる可能性も踏まえる必要があり、大きく強気に出ることはで

きないが、今一度予想レンジを上方修正することとする。

第 1表: IMFの実質 GDP成長率見通し 第 1 図: 小売売上高前月比・前年比

(注)前回見通し発表は 4月

(資料)国際通貨基金より三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(注)5月分実績は速報ベース

(資料)豪州統計局より三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

シニアアナリスト 井野 鉄兵

4月時点 6月時点

世界 3.6 2.9 -3.0 -4.9

米国 2.9 2.3 -5.9 -8.0

日本 0.3 0.7 -5.2 -5.8

中国 6.8 6.1 1.2 1.0

ASEAN5 5.3 4.8 -0.6 -2.0

インド 6.1 4.2 1.9 -4.5

豪州 2.8 1.8 -6.7 -4.5

ニュージーランド 3.2 2.2 -7.2 -7.2

2018 20192020

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

Jan-18 Jul-18 Jan-19 Jul-19 Jan-20

(%)

前月比 前年比

6 月のレビュー

「コロナショック」の

全戻し達成も、その後

の上値は重い

一方、底堅さは増して

きている

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 17

経済活動再開を受けカナダドルは続伸

6 月のカナダドル(対米ドル)相場は緩やかに上昇した(第 1 図)。

カナダ銀行(中銀)は、6 月の金融政策決定会合で金融政策スタン

スを変更しなかった。中銀は 3 月に 3 回、合計 150bpの利下げを実

施しており、政策金利は過去最低水準の 0.25%で据え置かれた。

世界的な経済活動再開から、投資家のリスク選好回復が継続した

ことを受けて米ドルが大幅に下落したのに伴い、6 月のカナダドル

相場は一段と強含んだ。カナダ産原油価格も、世界経済の復調に対

する市場の期待感を反映して、一時 1 バレル=30 ドル台まで回復す

るなど、カナダドル相場のサポート材料となっている。一方、原油

価格が上昇する中でも、豪ドルや南アフリカランドといった他の資

源国通貨に比して、カナダドルの反発は小幅にとどまっている。こ

れについては、カナダ経済に対する潜在的な下押しリスクの存在を

指摘できよう。下方リスクの一つとして、カナダ政府の債務水準が

上昇したことで、今後の経済成長に対する構造的阻害要因となる可

能性が生じていることが挙げられる。事実、債務水準の上昇を一因

として、大手格付会社フィッチレーティングスはカナダ国債の格付

をAAAからAA+に引き下げている。二つ目の要因として、カナダが

地理的・経済的に米国と密接な関係を持つことが挙げられよう。米

国では現在、第 2 波となる新型コロナウイルスの感染拡大が現実味

を帯びてきている。現状では、感染の中心地は南部地域となってい

るものの、米国と国境を接するカナダにとって、リスク要因となり

うる。三つ目の要因として、中銀の積極的な緩和姿勢が挙げられる。

中銀バランスシートの拡大ペースは、年初来GDP比+17%と米FRB(同

+13%)を上回っている(第 2 図)。最後に、カナダの家計債務残高

が米国に比して高水準にある点だ。今後景気低迷が長引けば内需の

回復ペースを鈍化させる可能性もあるだろう。以上の諸要因により、

今後もカナダドルが米ドルに対して強含むとはみるが、他のG10 通

貨よりもその程度は限られそうだ。

第 1図: カナダドル相場とカナダ産原油価格の推移 第 2図:米加中銀の B/S規模の推移(対 GDP比)

(資料)Bloombergより三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloombergより三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

グローバルマーケットリサーチEMEAヘッド デレク・ハルペニー / 栗田 大地

-5

0

5

10

15

20

25

30

35

40

451.28

1.30

1.32

1.34

1.36

1.38

1.40

1.42

1.44

1.46

1.48

20/1 20/2 20/3 20/4 20/5 20/6

(USD/バレル)(USD/CAD)

(年/月)

↑カナダドル安

カナダ産原油価格( 逆目盛)

カナダドル相場( 目盛)

↓カナダドル高0

5

10

15

20

25

30

35

05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

FRBバランスシート規模

カナダ銀行バランスシート規模

(%)

(年)

6 月のレビュー

緩やかなカナダドル高

が継続

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 18

(6)人民元 尽きない不安

6 月の人民元(対ドル相場)は総じて堅調に推移した(第 1 図)。

香港への統制を強める国家安全維持法に対して米国が過激な制裁措

置を避け、米中間の緊張感が和らぐと、リスク回避的な思惑が後退

し 6 月初めから人民元買いが進展。加えて、経済活動の再開や金融・

財政政策に対する期待が投資家心理の支えとなり、世界的に株価が

上昇したことも人民元高を促した。もっとも、欧米で感染の再拡大

が報じられ、景気の先行きに対する不透明感が意識されると、株価

の反落とともに人民元高は一服。その後、人民銀行による景気の下

支え1や米中関係を巡る懸念の後退2などを材料に株価(上 総合指

数)が上昇する中(第 2 図)、下旬に掛けて人民元を買う動きが再

燃。24 日には 1 ドル=7.051 人民元と約 2 ヵ月ぶりの高値を付ける展

開となった。

第 1図 : 人民元 第 2図 : 株価

(注)対ドル相場。

(資料)Bloombergより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(注)上海総合指数。

(資料)Bloombergより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

本日 30 日に、全人代の常務委員会は「香港国家安全維持法3」を

全会一致で可決した。政府は直ちに施行する方針であり、9 月 6 日

の立法会(議会)選挙4に向けて、民主派への締め付けが勢いを増す

事態も想定される。一方、米国は 25 日に議会上院で「香港自治法」

を可決し、香港へ干渉した関係者5に対する制裁措置の準備を進めて

いる。香港における言論の自由などが制限され「一国二制度」の根

幹が揺らぎかねないだけに、今後、米国が牽制を強める可能性は十

分にある。ここ数年、市場の一大関心事となっている米中関係が再

び悪化する展開には注意したい。

1 6 月 18 日に人民銀行の易総裁は、国内の融資残高について年内に約 20 兆元の増加を見込むと発言。同時に財政ファイナン

スの否定や出口戦略の検討も説明されたが、人民銀行が景気の下支えに注力する姿勢を市場は重視した。 2 中国が米国の農産物について輸入を強化する方針が報じられ、第 1 段階の通商合意が履行されるとの安心感に繋がった。 3 国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託の 4 つに分類される反体制的な行為を取り締まる。同法は香港の法律よ

りも優先される。 4 立候補の届け出は 7 月 18~31 日。 5 香港への干渉に関係した組織や個人だけでなく、それらと取引のある金融機関も制裁の対象とする。

7.00

7.05

7.10

7.15

7.20

20/4 20/5 20/6

(対ドル相場、人民元)

(年/月)

2,700

2,750

2,800

2,850

2,900

2,950

3,000

20/4 20/5 20/6

(1990年12月19日=100)

(年/月)

6 月のレビュー

香港問題は大詰めを迎

える

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為替相場の見通し | 令和 2年(2020年)6月 30日 19

マクロ経済を点検しておくと、生産や消費は持ち直しが続いた(第

3 図)。もっとも、引き続き消費の復調が遅れる形となっており、

新型コロナの「第 2 波」に対する懸念が燻る中、日常生活を取り戻

すハードルの高さが見受けられる。他方、企業の景況感は、製造業・

非製造業ともに好不況の分岐点となる 50 を超えており、経済活動の

再開が素直に反映されている(第 4 図)。ただし、感染の再拡大を

受けて 京近郊で都市封鎖(ロックダウン)が講じられる6などして

おり、国内の情勢は楽観できない。国外でも同様に感染の再拡大で

経済活動の再開が止まる例が増えており、外需の牽引力はしばらく

期待し難く、先行きは予断を許さない状態にある。

第 3図 : 鉱工業生産と小売売上高 第 4図 : 国家統計局 PMI

(注)春節の影響を除くため 1-2 月分の平均値を 2 月分として表示。

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(資料)Bloombergより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

香港問題を巡る米中関係の緊迫化を材料に、目先、人民元には下

落圧力が掛かり易いとみる。なお、米大統領選に関しては、トラン

プ大統領が支持率を落としており、挽回のため対外的に強硬姿勢を

強める可能性は否定できない。11 月の選挙に向けては、引き続き米

中関係の悪化が人民元の重石として意識されると読む。また、国内

外で新型コロナの「第 2 波」に対する警戒感が強まっているため、

世界経済の下振れリスクに市場の関心が集まり、株価が調整色を強

める展開も想定できる。政治・経済に伴う不確実性が高く、リスク

性資産としての人民元は買い辛い環境が続くだろう。

予想レンジ

7 月~9 月 10 月~12 月 1 月~3 月 4 月~6 月

USD/CNY 6.98~7.20 6.96~7.22 6.94~7.22 6.94~7.22

CNY/JPY 14.6~15.5 14.5~15.4 14.3~15.3 14.1~15.2

予想レンジは四半期中を通じた高値と安値の予想

シニアアナリスト 石丸 伸二

6 6 月 28 日に河 省安新県に対して武漢市と同様の措置を講じると発表。生活必需品の購入などを除き、原則的に外出が禁止

される。

▲ 24

▲ 20

▲ 16

▲ 12

▲ 8

▲ 4

0

4

8

12

19/1 19/4 19/7 19/10 20/1 20/4

鉱工業生産

小売売上高

(前年比、%)

(年/月)

28

30

32

34

36

38

40

42

44

46

48

50

52

54

56

18 19 20

非製造業

製造業

(指数)

(年)

「第 2 波」による下振

れリスクは不変

香港問題や「第 2 波」

が人民元の重石に

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予想レンジ | 令和 2年(2020年)6月 30日 20

予想レンジ

7 月~9 月 10 月~12 月 1 月~3 月 4 月~6 月

USD/JPY 104.0~110.0 102.0~109.0 100.0~108.0 99.0~107.0

EUR/USD 1.09~1.15 1.09~1.17 1.10~1.20 1.11~1.22

EUR/JPY 117.0~123.0 116.0~123.5 115.0~124.0 114.0~124.5

GBP/USD 1.180~1.270 1.150~1.290 1.140~1.310 1.130~1.320

EUR/GBP 0.885~0.950 0.880~0.960 0.875~0.965 0.870~0.970

GBP/JPY 126.0~137.0 124.0~138.0 123.0~139.0 121.0~140.0

AUD/USD 0.64~0.73 0.65~0.74 0.66~0.75 0.67~0.76

AUD/JPY 70.0~78.0 69.5~77.5 69.0~77.0 68.5~76.5

USD/CAD 1.33~1.40 1.32~1.39 1.31~1.38 1.30~1.37

CAD/JPY 76.0~81.0 75.5~80.6 75.0~80.2 74.5~79.8

USD/CNY 6.98~7.20 6.96~7.22 6.94~7.22 6.94~7.22

CNY/JPY 14.6~15.5 14.5~15.4 14.3~15.3 14.1~15.2

(1)ドル円

(2)ユーロ

90

100

110

120

130

16 17 18 19 20 21(年)

1.00

1.05

1.10

1.15

1.20

1.25

1.30

16 17 18 19 20 21(年)

対ドル

100

110

120

130

140

150

16 17 18 19 20 21(年)

対円

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予想レンジ | 令和 2年(2020年)6月 30日 21

(3)英ポンド

(4)豪ドル

(5)カナダドル

(6)人民元

(注) 網掛け部分は当面の予想レンジ

(資料)Bloombergより三菱 UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

100

120

140

160

180

200

16 17 18 19 20 21(年)

対円

1.00

1.10

1.20

1.30

1.40

1.50

1.60

16 17 18 19 20 21(年)

対ドル

50

60

70

80

90

100

16 17 18 19 20 21(年)

対円

0.50

0.55

0.60

0.65

0.70

0.75

0.80

0.85

16 17 18 19 20 21(年)

対ドル

65

70

75

80

85

90

95

16 17 18 19 20 21(年)

対円

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1.6

16 17 18 19 20 21(年)

対ドル

12

14

16

18

20

16 17 18 19 20 21(年)

対円

6.0

6.2

6.4

6.6

6.8

7.0

7.2

7.4

16 17 18 19 20 21(年)

対ドル

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マーケットカレンダー | 令和 2年(2020 年)6月 30日 22

マーケットカレンダー 月 火 水 木 金

2020/7/1 2 3 米/FOMC 議事要旨(6/9, 10分) 米/雇用統計(6月)

ADP 雇用統計(6月) 貿易収支(5月)

建設支出(5 月) 製造業受注(5月)

ISM製造業景気指数(6月) ユーロ圏/生産者物価指数(5月)

自動車販売(6月)* 失業率(5月)

独/小売売上高(5月) 日/日銀短観 調査全容

日/日銀短観 概要

日・東京都知事選挙[5日]

米・シカゴ連銀総裁討論会 米市場休場

6 7 8 9 10 米/ISM非製造業景気指数(6月) 米/求人労働異動調査(5月) 米/消費者信用残高(5月) 独/貿易収支(5月) 米/生産者物価指数(6月)

ユーロ圏/小売売上高(5 月) 独/鉱工業生産(5月) 日/国際収支速報(5月) 中/消費者物価指数(6月) 中/マネーサプライ M2(6 月)*

日/家計調査(5月) 対外対内証券売買契約等 生産者物価指数(6月)

景気動向指数速報(5月) の状況(6月) 日/機械受注(5月)

豪/RBA 理事会 景気ウォッチャー調査(6月)

米・30年債入札

米・10年債入札 日・黒田日銀総裁挨拶

米・3年債入札 欧州議会本会議(~10日) ユーロ圏財務相会合 EU経済・財務相理事会

13 14 15 16 17 米/財政収支(6月) 米/消費者物価指数(6月) 米/地区連銀経済報告 米/小売売上高(6月) 米/住宅着工件数(6月)

ユーロ圏/鉱工業生産(5 月) NY連銀景況指数(7月) フィラデルフィア連銀景況 建設許可件数(6月)

独/ZEW 景況指数(7月) 輸出入物価指数(6月) 指数(7月) ミシガン大消費者信頼感

中/貿易収支(6月) 鉱工業生産(6月) 企業在庫(5月) 指数速報(7月)

日/日銀金融政策決定会合 設備稼働率(6月) 証券投資収支(5 月)

(~15日) 日/日銀金融政策決定会合 ユーロ圏/ECB 理事会

経済・物価情勢の展望 ECB 総裁定例会見

日銀総裁定例会見 EU新車登録台数(6月)

加/金融政策決定会合 貿易収支(5月)

中/GDP(2Q)

鉱工業生産(6月)

小売売上高(6月)

都市部固定資産投資(6月)

EU首脳会議(~18日)

米・シカゴ連銀総裁討論会 G20財務相・中央銀行総裁会議

20 21 22 23 24 ユーロ圏/経常収支(5月) 日/消費者物価指数(全国、6月) 米/FHFA 住宅価格指数(5月) 米/景気先行指数(6 月) 米/新築住宅販売(6月)

日/日銀金融政策決定会合 中古住宅販売(6月) ユーロ圏/消費者信頼感指数 ユーロ圏/製造業 PMI 速報(7月)

議事要旨(6/15, 16 分) 速報(7月) サービス業 PMI 速報(7月)

貿易収支速報(6月)

米・10年 TIPS債入札 EU経済・財務相理事会

米・20年債入札 日市場休場 日市場休場

27 28 29 30 31 米/耐久財受注速報(6月) 米/FOMC(~29日) 米/FOMC 米/GDP 速報(2Q) 米/個人所得・消費支出(6月)

ユーロ圏/マネーサプライ M3 ケース・シラー住宅価格指数 FRB 議長定例記者会見 ユーロ圏/失業率(6 月) シカゴ PM景気指数(7月)

(6月) (5月) 卸売在庫速報(6月) 欧州委員会景況指数(7月) ユーロ圏/GDP 速報(2Q)

独/ifo 景況指数(7月) CB消費者信頼感指数速報 独/消費者物価指数速報(7月) 消費者物価指数速報(7月)

小売売上高(6月)* (7月) 中/製造業 PMI(7月)

日/日銀金融政策決定会合 日/完全失業率(6月)

主な意見(7/14, 15 分) 鉱工業生産速報(6月)

住宅着工戸数(6月)

米・2年債/5年債入札 米・7年債入札

*印は作成日(6/30)現在で日程が未確定のもの

(資料)各種報道等より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

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為替相場推移表 | 令和 2年(2020年)6月 30日 23

為替相場推移表

2020年 6月

U$/円 U$/円 EUR/円 SF/円 £/円 A$/円

日付 寄付 高値 安値 終値 公表相場 公表相場 公表相場 公表相場 公表相場

6月 1日 107.71 107.85 107.38 107.60 107.74 119.82 112.16 133.35 72.11

6月 2日 107.55 108.77 107.52 108.69 107.58 119.78 112.02 134.72 73.17

6月 3日 108.81 108.98 108.42 108.91 108.72 121.73 113.07 137.00 75.59

6月 4日 108.99 109.20 108.62 109.14 108.88 122.10 113.15 136.49 75.05

6月 5日 109.15 109.85 109.05 109.59 109.09 123.65 114.17 137.43 75.66

6月 8日 109.61 109.61 108.24 108.42 109.48 123.69 113.78 139.11 76.45

6月 9日 108.41 108.41 107.63 107.74 108.08 122.14 112.92 137.70 75.87

6月 10日 107.80 107.87 106.99 107.13 107.79 122.26 113.33 137.16 74.81

6月 11日 107.01 107.23 106.58 106.86 107.01 121.80 113.42 136.34 74.67

6月 12日 106.81 107.55 106.59 107.37 106.69 120.38 112.97 133.96 72.65

6月 15日 107.33 107.49 107.00 107.33 107.24 120.68 112.71 134.14 73.06

6月 16日 107.48 107.63 107.22 107.33 107.32 121.63 113.15 135.57 74.59

6月 17日 107.40 107.44 106.95 107.01 107.35 120.97 112.85 134.87 73.85

6月 18日 106.88 107.12 106.67 106.97 106.78 120.05 112.54 134.05 73.43

6月 19日 107.01 107.04 106.77 106.89 106.95 119.84 112.43 132.76 73.23

6月 22日 106.84 107.00 106.76 106.90 106.77 119.37 112.12 131.78 72.86

6月 23日 106.90 107.22 106.08 106.51 106.96 120.54 112.95 133.56 74.06

6月 24日 106.42 107.07 106.39 107.04 106.52 120.55 112.79 133.46 74.02

6月 25日 107.03 107.45 107.02 107.19 107.06 120.52 112.92 133.04 73.56

6月 26日 107.16 107.36 106.80 107.20 107.12 120.07 112.89 133.00 73.58

6月 29日 107.22 107.88 107.04 107.58 107.24 120.38 113.15 132.43 73.64

6月 30日 107.59 107.99 107.53 107.93 107.74 121.08 113.22 132.51 73.88

月間平均 107.60 107.91 107.24 107.61 107.55 121.05 112.94 134.75 74.08

(注)四本値の出所:弊行 4 本値

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FX Monthly | 令和 2年(2020年)6月 30日 24

照会先:三菱UFJ銀行 グローバルマーケットリサーチ

チーフアナリスト 内田 稔

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作物であり、著作権法により保護されております。当行の書面による許可なく複製又は第三者、個人顧客もしくは一般投資家への配布をすることはできませ

ん。

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株式会社三菱UFJ銀行(以下「MUFG Bank」)は、日本で設立され、東京法務局(会社法人等番号 0100-01-008846)において登記された有限責任の株式会社で

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MUFG Bankは、日本の金融庁によって認可及び規制されています。MUFG Bankロンドン支店は、英国プルーデンス規制機構より認可を受けており(FCA/PRA

番号 139189)、英国金融行為監督機構の規制とプルーデンス規制機構の限定された規制の対象となっています。英国プルーデンス規制機構によるMUFG Bank

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