gaia sh-01 シンセ音作り入門 - roland corporation · 2016-08-26 ·...

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シンセ音作り入門 Exploring Sound 日本語版

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  • シンセ音作り入門 Exploring Sound 日本語版

  • ようこそ

  • ii

     刺激的な音作りの世界へようこそ!この本では、音とは何かを発見するためのアプローチをレッスン形式で進めていきます。でも「発見する」なんて言われてもピンと来ないかもしれません。なぜなら、私たちは音とは何かをすでに知っていますよね。毎日音を聴いていますが、うまく聞き分けられますし、子猫の喉を鳴らす音と通り過ぎる列車の音を区別することだって簡単にできます。

     さらに言うと、私たちはミュージシャンのように、とても簡単にドラムとギターの違いを聞くことができます。弦楽セクションと金管セクションの違いもそうです。フルオーケストラを聞いて、そのオーボエ・パートを聞き分けられる人も少なくないでしょう。フルートやトランペット・パートも同様です。おそらく、私たちはバイオリンとビオラの微妙な違いについてさえわかってしまいますが、それはなぜでしょうか。それらはなぜ違っているのでしょう。

     確かに楽器の大きさや形の違いは手がかりとなるかもしれませんが、ではなぜ目を閉じていてもその違いを聞き分けることができるのでしょうか。それを説明する科学的な背景がきっとあるに違いありません。それをこのテキストの中で探求したいと思います。

     このコースでは、とても楽しく弾ける魅力的な楽器、ローランドのGAIAシンセサイザーを活用していきます。この楽器は、1970年代および1980年代の歴代のアナログ・シンセの音を、すべて忠実に再現させることができる現代のデジタル楽器です。

     また、専用のソフトウェアも使います。 これは、コンピューターのパワーを最大限に活用して、ただ楽しいというだけなく、科学的な音の探求をレッスンの流れに沿って、存分に実現してくれるはずです。今回、私たちはGAIAとそのソフトウェアに焦点を合わせていますが、この原理は他の多くの楽器にもあてはまります。「減算合成方式」(Subtractive Synthesis)として知られていることを主要テーマとしていますので、何か他の減算合成方式のシンセサイザー(または、ソフト・シンセ)をお持ちでしたら、それでもこのレッスンは当てはまるでしょう。

     おそらく今、たくさんの疑問点が浮かんで来ているでしょう。デジタル楽器とは何?アナログ・シンセとは? 楽器が違うと、どうして音が違って聞こえるの?

     これらの答えは、これから続くレッスンで出てきます。まだ一足飛びに考えを進めないでください。一歩一歩あなたをガイドしていきますので、じっくりと楽しみながら取り組んでください。

  • レッスン 1

    はじめに

    最初のレッスンでは、GAIAと専用ソフトウェアに慣れ親しみましょう。とても基本的なことを、楽しみながら学習できるはずです。

  • では始める前に、いくつかの共通用語に慣れ親しんでおきましょう。

    GAIAとソフトウェアこのコース中では、GAIAシンセサイザーとコンピューター・ソフトSynthesizer Sound Designerの両方をフルに活用します。と言っても呼び名が長くて難しく感じるかもしれませんので、ここからは楽器は単に「GAIA」、コンピューターとDesigner Softwareの組み合わせを「サウンド・デザイナー」と呼ぶことにしましょう。

    パッチ初期のシンセサイザーの外観は、目の前のGAIAとずいぶん違うように見えます。いわゆる「一体型」の製品ではありませんでした。 通常は、ケーブルによって接続された箱の集まりで出来ていました。

    これらのケーブルは「パッチ・ケーブル」と呼ばれました。古い映画の中で電話オペレータが「I’ll patch you through.(おつなぎします。)」と言ったのを思い出すかもしれません。その結果、シンセサイザーの各機能を組み合わせた状態を「パッチ」と呼ぶのが一般的になりました。

    セクション 1 用語解説

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    Figure 1.1 1Roland SYSTEM−700 (1976年)

  • では、GAIAを見てください。とてもはっきりと区切られたいくつかのセクションがあるのがわかると思います。

    ここでは、しばらく1つのセクションに集中するとしましょう。 後の章に進むと、GAIAはこの写真で見るよりもずっと分かりやすく思えてくるでしょう。

    それでは、Figure1.3、鍵盤中央すぐ上のエリアから始めましょう。

    すぐに、なじみ深い用語が見つけられます。PATCH(パッチ)ですね。ここはGAIAの楽しさや音の魅力を経験できるところです。

    それではしばらく、このパッチを使ってみましょう。[PRESET PATCH]ボタンを選択して始めましょう。[NUMBER]ボタンのどれか1つを選んで鍵盤を弾いてみてください。

    最初に8つの[PRESET PATCH]があるように見えますが、実際は64個あります!見つけられますか。そうですね。[BANK]ボタンを使います。

    [BANK]ボタンを押しながら、[NUMBER]ボタンを選択することによって、8つのバンクにアクセスができます。 8個のパッチで8つのバンクです。試してみてください。

    もう一度最初の8つのプリセット・パッチを弾いてみてください。

    1. すべてのパッチで和音を弾くことができましたか?

    2. すべての音色について音楽的な響きを感じられましたか?

    3. それぞれに名前を付けられるでしょうか?音のイメージを文章で説明できますか?

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    Figure 1.2 Roland GAIAシンセサイザー

    Figure 1.3 パッチ・セレクター

    パッチの詳細については、GAIAの取扱説明書のP. 18(音色を選ぶ)を参照してください。

  • トーンとトーン・カラー

    この本の中で、よく使われる共通の単語があります。シンセシス(=シンセサイザーで音色を合成して行く作業・工程)で使われるいくつかの単語では、1つの単語がさまざまな意味合いに使われる場合があります。その1つがtoneです。

    声の「tone」とか、オーボエの「tonal character」などと言うのを聞いたことがあると思いますが、シンセシスでは、音を構成する一つのパートを説明するために「TONE」という言葉をよく使います。実際GAIAは、合成して1つの音が作れる3つのシンセサイザーを持っていますが、これらを「3つのTONE」と呼んでいます。

    Figure 1.4を見てください。(GAIAの左サイドを表示)

    GAIAが3つのTONEを持っていることを確認できます。

    「TONE」と「tone」のように、2つの意味合いを持つ同じ単語をどのように見分けたら良いでしょう。

    もし、「tone」という単語を使って音のキャラクタあるいは明るさについて説明する場合には、とても簡単な方法があります。

    トーン・カラー(Tone Color)という単語を使います。

    それでは、明確にするために、この本では以下の定義を用いましょう。

    トーン(TONE):GAIAが持つ3つのシンセサイザーの1つ。

    トーン・カラー(Tone Color):音のキャラクタあるいは明るさ。

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    Figure 1.4 トーン・セレクター

  • パッチを初期化するには小さな一歩ですが、これは大変重要です。GAIAのパッチの初期化は、強力な出発点になるのです。とても基本的な音を作るだけでなく、いつも同じ状態から始められるので、説明も簡略化できます。

    「サウンド・デザイナー」でのパッチの初期化は、とても簡単なのですが、しばらくはGAIAだけを使います。GAIAのパッチの初期化については、目立った表示はありませんが、操作自体はとても簡単です。Figure1.5を見てください。

    [CANCEL/SHIFT]ボタン、そして[WRITE]ボタンがありますね。

    この場合、はじめのボタンを[SHIFT]ボタンとして考え、[SHIFT]ボタンを押しながら次に[WRITE]ボタンを押します。するとGAIAは、基準となる音色に戻ります。

    試してみてください。これから音楽的な音色に磨きあげられそうですが、かなり荒削りな音ですね。ここで大切なことは、この本を通じてこれらの基準音色が、重要な出発点になるということです。つまり、レッスンの中で次のようなメッセージが何度も出てくることになります。

    パッチを初期化してください。

    [SHIFT]+[WRITE]の手順は、パッチを書く上での特別な作業であると考えてください。単純に[WRITE]を押すと、設定したパッチはメモリへセーブされますが、[SHIFT]+[WRITE]は、新しくスタート地点となる基準音に戻る作業(初期化)を行います。

    セクション 2 パッチの初期化

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    Figure 1.5 SHIFTと WRITE

    「サウンド・デザイナー」では、[INITIALIZE]ボタンを押すことで同じように初期化できます。両方のやり方を知っておくと便利でしょう。好みの方を選んでください。

  • さて、もう少し深くGAIAとサウンド・デザイナーを探ってみましょう。

    まず、音を基本的な形に落し込みましょう。すべての楽音には、3つの基本的な構成要素があります。

    ピッチ  トーン・カラー  ボリューム

    「もっと多くの構成要素、例えばリズム、テンポ、抑揚などもあるという指摘があるかもしれませんが、当面はこれら3つの要素に焦点をあてて行きましょう。」

    Interactive 1.1を見ると、GAIAがこの3つの基本的な構成要素に基づいているのがわかります。

    セクション 3 基本的な音の構成要素

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    ボリュームピッチ

    トーン・カラー

    Interactive 1.1 3つの音の構成要素

  • Interactive 1.1のGAIAのパネル上の表記名(OSC/FILTER/AMP)と構成要素(ピッチ/トーン・カラー/ボリューム)を示す吹き出しのラベル名は、あいにく別の表現をしていますが、しばらくはそのパネル名は無視してください。では最初に、以下のステップでポイントを立証しましょう。

    パッチを初期化してください。([SHIFT]+[WRITE])

    鍵盤で1音、弾いてみてください。

    「ピッチ」で示されたエリアの上部左側のつまみを回してください。このつまみはつまみ自体も[PITCH]と呼ばれています。何が起こるでしょうか。中央位置につまみを戻してください。

    今度は、ゆっくりと「トーン・カラー」で示されたエリアの上部左側のつまみを回してみてください。それはCUTOFFと呼ばれますが、それについては、後ほど説明するつもりです。音は変化するでしょうか。音そのもの以外に何かが変化しているように感じられるでしょうか。試し終わったら、つまみを時計回りいっぱいに回してください。

    今度は、「ボリューム」で示されたエリアに一つだけあるつまみを回してみてください。それはLEVELと呼ばれます。音量が変化するでしょうか。CUTOFFつまみと明らかに違う変化をするでしょうか。さてもう一度、GAIAを見てください。特に3つの構成要素のエリアに注目してください。 (Figure1.6を参照)

    この図をよく見ると、それぞれのエリアの下に、右向きの3個の小さい矢印があることに気付くと思います。 それらは何を示しているでしょう。

    シンセサイザーの信号経路シンセサイザーの構成要素は、ある特定の順番で並んでいます。それを信号経路と呼ぶことにしましょう。

    このパネル面からはすぐにフロー図あるいはフローチャートを連想できますね。フローチャートは、論理的な方程式やコンピューター・プログラミングなどで、ある項目または決定事項が次のセクションに向かう道筋を表現するためによく使われます。

    GAIAのようなスタンダード・シンセサイザーでは、構成要素はFigure 1.7のようにつながっています。

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    Figure 1.6 構成要素とその経路

    Figure 1.7 音楽的フローチャート

  • もっと正確には、Figure1.8に示すとおりです。

    これらの2つの図表をまとめると、シンセサイザーの信号経路は、まずピッチで作られた信号がトーン・カラーを変えるフィルターを通ってボリュームに渡され、最終的に出力に送られます。簡単なポイントですが、とても重要な流れです。

    このイメージをしっかりと持っていると、音やパッチの制作がとても簡略化できるでしょう。

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    Figure 1.8 シンセサイザーのフローチャート

  • それでは、サウンド・デザイナーを見てみましょう。GAIAがコンピューターに接続された状態でサウンド・デザイナーを起動すると、次の2つの画面のいずれかが出ます。

    この2番目の画面(ナビゲータ・スクリーン)を表示させないようにする場合は、「Show this at Startup」と書かれたチェックボックスのチェックを外し、スクリーンを閉じてください。 また、他のスクリーンが開いているようでしたら、いまはそれらを閉じてください。

    セクション 4 ハードウェアとソフトウェア

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    Figure 1.9 サウンド・デザイナーのメイン画面

    GAIAと「サウンド・デザイナー」の設定についての解説は、「サウンド・デザイナー」に付属されたセットアップ・ガイドを参照してください。

    Figure 1.10 ナビゲーター・スクリーン

  • それでは、「サウンド・デザイナー」を体験してみましょう。 GAIAの1番目のプリセット・パッチを選択してください。少し経つと、「サウンド・デザイナー」はそのパッチのすべての設定を表示します。

    今度は、GAIAでいくつかスライダーを動かしてください。 音が変化して、「サウンド・デザイナー」はそれらの変化を画面に表示します。

    では、「サウンド・デザイナー」上でマウスあるいはトラック・パッドでスライダーを動かしてみてください。残念ながら、GAIAのスライダーは連動して動きません。スライダーは、モーター化されていません。もしモーター化されていたら、かなり高価な買い物になるでしょう。

    直接パッチを初期化する方法を試してみましょう。「サウンド・デザイナー」の画面上部に[INITIALIZE]ボタンがあります。(Figure 1.11を見てください。)

    それを押してください。どうでしょうか?設定が一気に初期化されたのが分かりましたか?

    以前、GAIAには一連の信号を制御するエリアがあると説明しましたが、そこでのコントロールはGAIAに内蔵されている個別の3つのシン

    セサイザーに適用されます。これらのシンセサイザーをトーンと呼びます。

    しばらく1つのGAIAトーンに集中したいと思いますので、[サウンド・デザイナー]の他の2つのトーンを隠しましょう。TONE3の灰色の領域内をダブルクリックして、次に、TONE 2の灰色の領域内をダブルクリックしてください。

    簡単ですね。それらをまた表示させることができるでしょうか。

    この本では、この手順を表示の最小化と呼ぶことにしましょう。

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    Figure 1.11 サウンド・デザイナーのイニシャライズ・ボタン

    Movie 1.1 表示の最小化

  • このレッスンの締めくくりとして、イニシャル・パッチについて説明しておきたいと思います。簡単に言えば、すべてつまみとスライダーをスタート状態に戻す方法です。そうだとすると、なぜそれぞれ違う値のように見えるのでしょう?

    それを見てみましょう。パッチを初期化してください。2つの方法を覚えていますか。これを見てください。

    サウンド・デザイナーの画面に表示されているすべてのスライダーを見てください。18個ありますが、それらのほとんどは完全に下がっています。そのうち5つは中央位置にあります。その他2つがの最大位置にあります。なぜでしょう。よく見ると、中央位置にあるスライダーは、すべて値が0になっていることがわかりますね。ここからプラスかマイナスに移動できることを意味します。おそらく、理由は推測で

    きると思います。後ほど説明しましょう。完全に下がっているスライダー11個もその位置が0であると考えます。結局、18個のスライダーのうち16個は、値が0になっているということです。

    では、他の2つのスライダーはなぜ最大位置にあるでしょう。 実は、もしそうでなければ、音がまったく出ないことになってしまいます。試しにFigure 1.12で示されたスライダーを下げて弾いてください。

    つまみに関しても同様です。センター・ポイント付きのものは中央になります。 通常、他のつまみは、必要に応じて最大か最小になっています。

    それでは、サウンド・デザイナーで見えるすべてのつまみとスライダーの位置をGAIA本体にコピーしてみてください。イニシャル・パッチの音と同じに聞こえますか。

    中央付近の位置にあると思われるつまみやスライダーを少し動かしてノッチ(=中央位置でのひっかかり)を感じられますか?

    何も見ないでイニシャル・パッチを作り直すことができますか? なぜ、すべてコントローラーには明確な開始位置があるのか、すぐにわかると思います。

    セクション 5 イニシャル・パッチを理解する

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    Figure 1.12 最小化したイニシャル・パッチ画面

  • レッスン 2

    音声信号の波形

    レッスン2では3つの基本的な構成要素のうち、第1番目に注目します。レッスン1で、それはピッチ・セクションであると学びましたが、これはさらに強力なものであると分かるでしょう。3つの要素の中で、「縁の下の力持ち」のような存在なのかもしれません。

  • これまで、シンセサイザーのピッチ・セクションとして述べてきましたが、もう一度見てください。セクションは、"OSC"と名付けられています。それはなぜでしょう。音の基本的な原理にその答えがあります。それでは、まず理論を探りましょう。

    私たちは「音波」という言葉を聞いたことがありますね。稲妻が見えた何秒も後に雷鳴が聞こえるのは、音が光より遅く伝わるからであると教えられました。 ジェット戦闘機が「音の壁を打ち破る」とも教わりました。私たちは音の本質に関していろいろなことを理解しています。

    学校で使われる音叉を思い浮かべてください。先生が机のかどで音叉を叩くと、私たちにははっきりと楽音が聴こえます。それは、なぜでしょう。 叩くことによって、音叉は前後に振動して、周りの空気を私たちに向かって押し動かしていました。これは池に小石を投げた時の様子によく似ています。

    音叉の振動は、音叉が振動する方向に圧縮した空気の波を作ります。 音叉が前後に振動して、私たちの方向へ動いたときは空気が圧縮され、離れると空気は薄くなります。

    この振動を別の単語で表現すると、オシレーション(発振)です。

    オシレート: 揺れ動くこと。

    耳に向かってくる空気の波が鼓膜を振動させます。 私たちはこの振動を楽音として知覚します。驚きですね。

    では、GAIAのようなシンセサイザーではどうやって振動を作っているのでしょう。たまたま初期のシンセサイザーには、非常に簡単な発振回路がありました。

    その回路は、スピーカーを通じて耳に音波を伝える電気信号を生成しました。非常に簡単な装置でしたが、まったく新しい世界の音を生み出す手段を提供してくれました。 それがオシレーターです。

    セクション 1 ピッチ、オシレーター

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    Figure 2.1 音叉

  • さて、興味深いところに話が進んできました。

    シンセサイザーのオシレーター(ピッチ・セクション)が音のピッチを制御できることはすでに述べましたが、それだけではありません。

    海の波を描いてみてください。それは通常、このような形になります。

    今度は、波が岸に近づくのを想像してください…

    どちらの波が、より大きく聞こえるでしょうか。より攻撃的に聞こえるのはどちらでしょうか。

    波形が違うと聞こえる音も違うと言えます。 音の世界では、常にそうなります。もし音が違って聞こえるなら、おそらくその波形も違って見えます。逆もまた同様です。

    「違って見える?」どうやって音の波形を見ましょうか。

    では、ここで新たに便利なツールを紹介します。いま使っているサウンド・デザイナーには、ウェーブ・ビューワーが搭載されています。私たちは、聴いているものをまさに見ようとしています!

    サウンド・デザイナーの画面右上にウェーブ・ビューワーを選択できるボタンがあります。 それを押してください。

    さて何が見えますか?

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    Figure 2.3 巨大な波

    Figure 2.4 ウェーブ・ビューワー

    Figure 2.2 洋上の波

  • では、どの音でも良いので鍵盤を弾いて、ウェーブ・ビューワーを見てください。

    GAIAのフロントパネルにあるEXT IN端子にmp3プレーヤーを接続し、再生してみてください。私たちには、聴いている音が見えているのです。

    鍵盤に戻りましょう。 パッチを初期化してください。 レッスン1で学んだ初期化の方法を思い出してみてください。

    Figure 2.5のような滑らかな波形を選ぶために、OSC(ピッチ)セクションの[WAVE]ボタンを4回押してください。

    今度は、鍵盤で最も低い音(低いドの音)を弾いてください。そして、ウェーブ・ビューワーの画面を見てください。それはMovie 2.1と同様でしょうか。

    画面上にいくつの波の繰り返しが見えますか?17

    Figure 2.5 滑らかな波形

    Movie 2.1 低いC(ド)の音

  • 次に、1オクターブ上の高い音を弾いてください。今度は画面にいくつの波の繰り返しが見えますか?

    さらに1オクターブ上の音も試してください。 今度はいくつの波が見えますか。Movie 2.3と同じように見えますか。

    いま、私たちは音楽理論あるいはサウンド理論の基礎に触れているのです。最初の音は、約2.5回の波を表示していました。 次のオクターブには、5回を超える波がありました! 最初の2倍ですね。 次のオクターブには、10回を超える波がありました。 最初の4倍です。

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    Movie 2.2 1オクターブ高いC(ド)の音 Movie 2.3 さらに1オクターブ高いC(ド)の音

  • 周波数少しまとめてみましょう。 第一に、高い音を弾いたとき、波が「より頻繁に」現れました。すなわちそれは高い音は高い周波数を持っているということです。

    第二に、各オクターブは最初の音の整数倍でした。 オクターブを上げてください。周波数は倍になりました。 2つオクターブを上げてください。すると今度は、周波数は4倍になりました。

    簡単に計算すれば、オクターブ上がる毎に、波形の周期が2倍になるというわけです。

    ところで、私たちは周波数を1秒間のサイクルで測定します。 すなわち、音叉が1秒間に440回振動するなら、440回/秒で振動すると言います。これには特別な単位名があります。 ドイツ人の物理学者のハインリッヒ・ルドルフ・ヘルツにちなんで名付けられた、Hertzです。 440回/秒が440Hertz(または、略して440Hz)となります。

    これで、音が高いか低いかということを周波数で表す理由が明確に理解できると思います。 音にはお互い数学的な関係があるというわけです。

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  • あらためて、パッチを初期化してください。

    Figure 2.6の5つのコントローラーを見てください。

    再度、[PITCH]と書かれたつまみを試してください。 すでにお分かりのように、それは半音ずつ音の高さを調整できます。

    今度は、[DETUNE]つまみを試してください。ピッチがごくわずか変化します。[PITCH]つまみは半音単位での調整、[DETUNE]つまみは半音の間を微調整できることがわかります。

    さて、もう少し実験をしましょう。

    ENV DEPTHスライダーを最大に上げてから始めてください(Figure2.7に示されているように)。 さて、1音を弾いてみましょう。 何が変化しましたか。奇妙なクリック音のように聞こえますね。では、その理由を確かめていきましょう。

    セクション 2 ピッチ・コントロール

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    Figure 2.6 ピッチ・コントローラー Figure 2.7

  • その左側にある2つのスライダーを上げてみてください。それぞれAとDというマークが付いています。おおよそ真ん中の位置くらいまで上げて、音を弾いてみてください。何が起こっているでしょう。 ピッチは変化しますか。また、どのように変わっているでしょう。

    今度は、ENV DEPTHスライダーに戻って、一番下に下げてください。 ピッチは予想したように変わりましたか。

    これら3つのスライダーについて、いろいろ位置を変えて実験してみてください。そして、何か面白そうな音、あるいは何か変な音を作ってみても構いません。

    とりわけ重要なのは、Figure 2.6にある5つのコントローラーがすべてピッチに作用することを確認することです。

    各コントローラーを操作しながら、それぞれのコントローラーがどのような働きを持つのかを考えてみてください。

    数値の表示ピッチ・セクションを学んでいるついでに、サウンド・デザイナーの他の機能について調べてみましょう。

    サウンド・デザイナーの画面左上に、とても役に立つボタンが2つあります。「SHOW NUMBERS」と「SHOW POPUPS」ボタンです。両方を試してみてください。

    つまみなどの数値の読み取りについては、小さな数字でもすべての数値を読める方を好む人もたくさんいますが、大きな数字で一時的に表示できる方が良いという人も少なくありません。 Figure 2.7からFigure 2.9で、すでにSHOW NUMBERS機能を使っていたのにお気づきですね。

    この本では、それぞれのポイントをより明確に示す必要がある時には、この機能をどんどん使っていきます。

    オクターブ・コントロールGAIAには、ピッチ・セクション以外の場所に、別のピッチ・コントロールがあります。 それはオクターブ・コントロールと呼ばれています。演奏用のコントロールとして通常考えられるので、鍵盤のすぐ上に配置されています。 これは、ただ音を変えるというより、ライブ・パフォーマンスを際立たせるために使います。

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    Figure 2.8

    Figure 2.9

  • 低周波と可聴性これから、私たち人間の聴力の限界を調べていきましょう。

    いつもどおり、パッチを初期化してください。

    低い C(ド)を弾いて音を聞いてください。

    今度は、一度だけオクターブ・ダウン・キーを押して音を弾いてください。低い音で鳴っていますね。1オクターブ下の音です。

    もう一度、オクターブ・ダウン・キーを押してください。音が聞こえますか。 私たちがやっていることは単純にピッチを下げているだけですが、まだ楽音のように聞こえているでしょうか。

    さらにオクターブ・ダウンを試みてください。 何かピッチらしきものが聞こえますか。違いますね。もはや連続した「クリック音」にしか聞こえませんね。

    そうです、これが人間の聴力の限界です。とても低い音を弾くと、あるポイントで人間の耳は、ピッチあるいは音を認識しなくなります。 実際には約20Hzで、人間はピッチを認識できなくなります。

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    もちろん他の限界もあります。人間の耳は、どこまで高い音が聞こえるのでしょうか。人間の可聴範囲は、一般的に20Hzから20,000Hz(20kHz,キロヘルツといいます。)と言われています。

    犬は人間より高い音が聞こえ、女性や子供は男性よりも高い音が聞こえるというのも興味深いですね。

    Audio 2.1 低周波の聴力の限界(のこぎり波のクリック音)

  • さて、オシレーター・セクションの中でも、興味深い部分に入ってきました。このセクションは「ピッチ」セクションと呼んできました。

    しかし、初期のシンセサイザーにあったオリジナルのオシレーター回路には、別の機能、おそらくもっと強力な機能がありました。

    沖合の滑らかな波と浜辺に打ち寄せる波とはまったく異なる、と述べたことを思い出してください。その時、波の形が関係すると説明しました。

    今度は、初期のシンセサイザー回路で作った波形を思い起こしてください。 それはスピーカーを通じて私たちの耳に送られます。波形の違いは、どのように聞こえるでしょうか。

    パッチを初期化して、ウェーブ・ビューワーに切り替えてください。どの音でも良いので弾いてください。そして、画面を見てください。

    何が見えますか。このような感じでしょうか。

    セクション 3 波形コントロール

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    数学的に正確ではないが、音が良いのこぎり波

    Gallery 2.1 のこぎり波

    Audio 2.2 のこぎり波

  • さて、サウンド・デザイナーのオシレーターまたはピッチ・セクションの[WAVE]と書かれたボタンを見てください。「のこぎり」波と呼ばれる波形がはっきり見えます。

    最初に1つ説明させてください。サウンド・デザイナーのイラストは、とても直線的に見えますが、ウェーブ・ビューワーでは、少し丸くなっています。それはなぜでしょうか。「直線的な」のこぎり波は数学的に正しいのですが、初期のシンセサイザー・デザイナーには、数学的に正確な音が必ずしも良い音に聞こえないという事実がありました。GAIAは楽器ですから、音楽のテイストが一番重要となります。

    二度[WAVE]ボタンを押してみましょう。

    これを「パルス」波と呼びます。 なぜでしょうか。

    これは病院の心拍計で見る波形にたいへん似ています。 音を少し弾いてみてください。のこぎり波とは、聴こえ方がまったく違うのがわかると思います。

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    音の良いパルス波

    Gallery 2.2 パルス波

    Audio 2.3 パルス波

  • 波形の重要性音の分類を始める前に、理解を助ける2つの用語を説明します。あらためて各波形を良く見ると、スクリーン上に波形が繰り返しているように見えます。このように周期的に繰り返す波形を周期波形と呼びます。

    それでは[Noise]と呼ばれる波形を選択してみてください。それは周期的に見えるでしょうか。この波形には、反復性がありませんね。このような波形は非周期波形と呼ばれます。

    今度は、ノートや紙にこの表を写してみてください。

    波形 特徴 どんな音か?

    のこぎり波 金属的、弦のような チューバ(低い音域)

    矩形波

    パルス波

    三角波

    正弦波

    ノイズ波

    最初に、それぞれの波形につけた名前に注目してください。なぜこれらの名前が使われているかわかるでしょうか。

    では、表を完成させてください。 特徴の欄には、それぞれの音の簡単な説明を書き留めてください。どんな音か?の欄には、最も似ていると思う楽器の名前を書き留めます。

    のこぎり波について、一例として回答をつけました。 人それぞれ音楽の趣向が異なりますので、すべての波形について自由に自分の意見を書いてください。

    この課題の最も重要なポイントは、音を聴いてそれぞれの波形を認識できるようになるという点です。 後のレッスンを学ぶうちに、これらの音にもっとなじみ深くなるでしょう。早く波形認識の感覚を確立できれば、それは今後あなたにとって大きなアドバンテージになるでしょう。

    ところで、SUPER SAWと呼ばれる波形があります。聴いてみてください。これらは長年にわたってさまざまなローランドのシンセサイザーで使用されたユニークな音です。 しかし、今の段階で説明するのが難しいので、後のレッスンに残しておきます。

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    バリエーションまで含めてすべての波形を試してください。やがて音色ごとにすべての波形を認識できるようになるでしょう。このように音に慣れ親しむことは、自分のパッチを作り始めるときに、必ず強力な武器になるでしょう。

  • 演習ふたたびパルス波を選びましょう。PWMとPWと書かれた2つのスライダーを使った実験です。

    ウェーブ・ビューワーを使うと、これら2つのコントローラーは別々の方法でパルスの幅を変えられる、ということがわかります。

    ここで一番大事なことは、パルス幅を意味するPWコントローラーは、パルスをより狭くする、あるいは薄くさせるということです。

    面白いことに、波の「パルス」部分はいつも下向き(マイナスの向き)です。もしそれが上向きだったら、どのように聞こえるでしょうか。実は同じに聞こえるのです。人間の耳は、波形の向きについては判断ができません。パルス幅を変えると、音がどのように変わるか確認してみてください。

    まとめオシレーターで生成された波形はそれぞれずいぶん異なっており、特徴的な音を持っています。

    低周波域の話に戻しましょう以前、低周波と可聴性についてお話しました。 ある周波数以下ではのこぎり波が一連のクリック音として聞こえ始めるということが分かりました。ではなぜクリック音に聞こえるのでしょうか。もう一度、のこぎり波を見てください。この波をスピーカーに送ると、スピーカーの表面は徐々に前に押され、一気に戻るという様子をイメージしてみてください。この急激な変化がクリック音の原因です。

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    Figure 2.10 パルス幅のコントローラー

    Figure 2.11 のこぎり波

    Audio 2.4 のこぎり波(低周波)

  • 矩形波では何が起こるのでしょう。1サイクルあたり2つの「急激な変化」があります。 2倍のクリック音が聞こえるでしょうか。それを試してください。

    正弦波ではどうでしょう。

    なにか「クリック音」が聞こえるでしょうか。

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    Figure 2.12 矩形波 Figure 2.13 正弦波

    Audio 2.5 矩形波(低周波) Audio 2.6 正弦波(低周波)

  • レッスン 3

    音声信号の成り立ち – 倍音について

    このレッスンでは倍音について学びます。決して些細なことではないです。倍音を学ぶ事は大変重要なことです。多くの数学者や音楽家たちが長きにわたって、この理論を研究してきました。そして私たちは、このレッスンと次のレッスンで、幸運にもその成果を体験することができます。単に理論だけでなく、実際に倍音を目で見て理解を深めましょう。

  • 倍音の研究を始める前に、知っておきたいGAIAの大事な機能があります。

    3つのシンセサイザー先に述べたように、ガイアは実質的には3つのシンセサイザーを内蔵しています。それは、フロントパネルには最初から多くのコントローラーがあり、すぐに一つまたは複数の音ないしはトーンを変化させられることです。このレッスンでは、「3つのトーンすべて」を使った簡単な実験を行います。

    GAIA本体かサウンド・デザイナー、どちらかを使ってパッチを初期化してください。

    次に、GAIAのパネル左端のボタン(Figure3.1のボタン)を見てください。

    これらボタンは操作してみると、機能もすぐにわかると思います。[ON]ボタンは、基本的に3つのシンセサイザーをそれぞれオン、オフし、赤く点灯します。しかしながら、それらのスイッチをすべて同時

    にオフできないようになっています。

    [SELECT]ボタンはもう少し複雑で、3つのトーンのうちどのトーンがつまみやスライダーで操作できるかを示します。例えばトーン1のみ、トーン2のみ、あるいは3つのトーンを同時に操作することさえできます。2つのトーンのスイッチを押すことによって、両方をオンにすることができます、そして、選択されたトーンのランプが緑色になり、オンになっていることがわかります。

    実験トーン1だけを選択してください、そして、[PITCH]つまみを調整してください。トーン2とトーン3についても同じ操作をしてください。今度は、すべてのトーン(3個の緑色ランプ)を選択してください、そして、ピッチを調整してください。

    後のレッスンでは、3つのトーンの機能をフルに活用しますが、当面は題材をピッチに絞って機能を活用していきます。

    セクション 1 3つの初期パッチ

    29

    Figure 3.1 トーン・ボタン

  • 正弦波次に進みましょう、ふたたびパッチを初期化してください。そしてすべてのトーンをオンにしましょう。大きな音になったでしょうか?音色は変化しましたか?それぞれのトーン選択ボタンを操作すると、それらトーンが、すべて異なった波形を使用しているのがわかるでしょう。

    トーン1はのこぎり波を使用しています。

    トーン2は矩形波です。

    トーン3、先の実験で聴いたあの滑らかな音です。それは、形も海の滑らかな波に似ているものです。

    数学を学んだ方は、正弦波というものを目にしたことがあると思います。それは、自然界に起こる非常にシンプルな波形です。海の波でそれを観察することができます、光の波も、もちろん音の波も正弦波から成っています。それは、純粋な響きですが、非常に重要です。なぜ重要なのか探っていきましょう。

    次へ進む前に、それぞれのトーンをオン、オフしてみてください。それぞれの波形の音のイメージを意識の中で強く保つことができるかどうかを試してください。これを試すことは、後のレッスンにおいて、あるいはパッチを一から作成し始めるときにおいて、たいへん役立ちます。

    30

    Figure 3.2 のこぎり波

    Figure 3.3 矩形波

    Figure 3.4 正弦波

  • まずパッチを初期化します。

    鍵盤を一つ弾いてみてください。そして、それがウェーブ・ビューワー画面上でのこぎり波のように見えることを確認してください。

    のこぎり波にそっくりではありますが、すでに説明したように、それがより音楽的に聞こえるよう、わずかにカーブがかかっていると説明しました。それも確認してください。

    セクション 2 減算合成方式

    31

    Figure 3.5 のこぎり波 興味のある方は、OSCセクションの[VARIATION]ボタンを押してみましょう。[WAVE]ボタンの色が変化し、のこぎり波のさらに2つのバリエーションがあることがわかります。これらはのこぎり波と同じように聞こえますが、見た目はずいぶん違います。他の有名なシンセサイザーの波形をそっくり再現したものなので。

    Audio 3.1 のこぎり波

  • 今度は、トーン2だけをオンにします(トーン1をオフしておきます)。鍵盤を弾いてみると、「矩形波」に似ているでしょうか?

    試しにVARIATION3(緑色)をやめて、VARIATION2(赤色)にすると、幾何学的な四角形に近いことがわかります。VARIATION3になると、波形はもはやまったく違う見え方になります。

    トーン3だけをONにして聞いてみてください。3つのVARIATIONの違いは、ほんのわずかで、波形はどちらかというと数学で出てくる正弦波に近く見えます。

    32

    Figure 3.7 正弦波

    Figure 3.6 矩形波

    Audio 3.2 矩形波

    Audio 3.3 正弦波

  • ふたたびトーン2だけを選び、[VARIATION]ボタンを操作し、[WAVE]ボタンを赤く点灯させます。

    低い音域のCを弾きながら、ふたたびパネルの[CUTOFF]つまみを時計回りいっぱいにまわし、次に、ゆっくり戻るように[CUTOFF]

    つまみを、およそ半分まで戻してください。何が聞こえたでしょうか?

    音から何かが失われたように聞こえますか?

    ウェーブ・ビューワーを見てください。そして、その動きを繰り返してください。[CUTOFF]を時計回りいっぱいにまわし、そして、次に逆向きに半分くらい戻します

    何かの要素が失われているように感じられるでしょうか?

    わかりやすいよう、反時計回りに[CUTOFF]を完全に動かしてください。何かが本当になくなっています。

    これは、私たちがこのタイプの音源方式を「減算合成方式」と呼ぶ理由です。減産合成方式のシンセシスでは、明るい音や、ざらついた音から何かの要素を取り除いています。いったい何を取り除いているのでしょう?

    33

    Figure 3.8 矩形波 #2

    Figure 3.9 カットオフつまみ

  • 何を取り除いているのか?簡単に言えば、音の明るさを原音から取り除いているのですが、それでは技術的な説明ではないですし、そもそもCUTOFFを最小値に絞ると何が起こるのか、要素のすべてが取り除かれててしまうのか、もう少しわかりやすい説明が必要になってきました。

    では、もう1つ別のコントローラーを使ってみましょう。

    ふたたび矩形波を選び、鍵盤の低いほうのCを弾いてみましょう。そして[CUTOFF]つまみの位置をおよそ半分にします。

    ウェーブ・ビューワーを見ましょう。さらにそのスクリーンで[RUN/STOP]ボタンを押してください。

    おそらくFigure 3.11のように見えるでしょう。(この図と似たものが見えるまで、何度か[RUN/STOP]を押す必要があるかもしれません。)

    このイメージを覚えてください、そして、次のセクションでもこれに言及します。

    1. パッチを初期化します。

    2. トーン2だけを選択します。

    3. [CUTOFF]をおよそ半分に調整します。

    4. 鍵盤の低いほうのCを弾きます。

    5. ウェーブ・ビューワーのスクリーンにて[RUN/STOP]ボタンを押します。

    Figure 3.10 [RUN/STOP]ボタン

    Figure 3.11 明るさを取り除いた矩形波

    34

    Audio 3.4 明るさを取り除いた矩形波

  • パッチを初期化します。

    今度は、以下のステップに従います:

    1. すべてのトーン(3個の赤ランプ)をONにしてください。

    2. すべての[SELECT]ボタンを同時に押し、3個の緑ランプを点灯させます。これで3つのトーンを同時に選択できました。

    3. [WAVE]ボタンを何度か押し、正弦波にしてください。

    4. トーン2だけを選択してください。そして、PITCH値を1オクターブを上げてください(表示される数値は+12半音になるはずです)。

    5. トーン3だけを選択してください。そして、PITCHを+19半音上げてください。(1オクターブと5度上がっています。)

    6. いちばん下のCを鳴らしてください。そして、ウェーブ・ビューワーを見てください。

    単に純粋な正弦波を重ねただけで、複雑な波形を作ることができました。これは加算合成方式と呼ばれている方法で、この本とはまた別の方式になります。

    セクション 3 倍音

    35

    Figure 3.12 トーン選択ボタン

    Figure 3.13 複雑な波形

    Audio 3.5 複雑な波形

  • 音をリファインするトーン2だけを選択してください。そして、[LEVEL]つまみをおよそ半分の音量に調整します(サウンド・デザイナー上では50と表示されるように)。

    トーン3だけを選択してください。そして、約3分の1(サウンド・デザイナーでは33)に音量を調整してください。

    いちばん下のCを弾いてください。そして、ウェーブ・ビューワー上の[RUN/STOP]ボタンを押してください。

    図のようになったでしょうか?もしそうでなければ、数回[RUN/STOP]ボタンを押してみてください。

    のこぎり波のようなものを作れたことに気づきましたか?トーンが3つよりも多ければ、もっとのこぎり波に近づけることができるのではないでしょうか。

    倍音とは?倍音とはすなわち加算された一連の正弦波です。それは、いくつかの法則性を持っています。

    例えば、私たちはちょうど3つの倍音を使用していました。いちばん下のC、それより高い音域のC、およびそれの上のG。また、音量の設定もしました。

    最初の音(いちばん下のC)を第一の倍音と呼び、いちばん下のCから1つのオクターブ上に移るとき、周波数が倍になっていることを覚えましょう。その次のオクターブ上では周波数はさらに倍になります。これは元の周波数の4倍でもあります。

    3つめの音にGを選んだことで、第一倍音の周波数の3倍になっている、と知って興味を持たれたでしょう。面白く感じられたかも知れません。

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    Figure 3.14 生成されたのこぎり波

    この理論の正しさを証明することができました。複雑な周期波は、倍音から成っています。

    Audio 3.6 リファインした音

  • メモ:第1倍音はしばしば基音と呼ばれます。

    まとめ:基音を最大音量で、2次の倍音を半分の音量で加え、そして、3次の倍音を1/3の音量で加えました。

    次は4次の倍音を1/4の音量で加えることになります。

    この法則にのっとって、数百の倍音を加えることができれば、完全なのこぎり波を生成できるでしょう。

    この図が、ポイントをイラストで示したものです。

    理論の背景にある数学を完全に理解する必要はなくて、ただ単にグラフの形を理解してください。すなわち、のこぎり波形の倍音の周波数はすべて基音の整数倍になっており、徐々に音量が小さくなります。

    先に浮かんだ「減算合成方式では何を取り除いているか」という重要な疑問に、ここで答えることができます。

    のこぎり波が本当に多くの正弦波の倍音で作られるなら、私たちは倍音を取り除いているにちがいありません。高域の倍音を取り除くと、のこぎり波は明るさを失うのでしょう。

    もう少し倍音を取り除くと、正弦波のように見え、聞こえ始めるに違いありません。それが第1倍音すなわち基音ということです。

    さらに取り除き続けると、先に発見したように、基音さえ取り除いてしまい、音をまったく消し去ってしまうこともできます。

    これだけでも本当におもしろいのですが、実はそれだけではないのです。

    倍音の可能性を示すことによって音の探求のお膳立てが出来上がってきました。次のレッスンでは、さらに倍音の存在を証明するための方法を見つけていきましょう。

    37

    Figure 3.15 のこぎり波(100Hz)のスペクトラム

  • 倍音列もう少し掘り下げてみましょう。

    基音としていちばん下のCを使用し、次の5つの倍音を加えたと仮定してください。第2倍音は1オクターブ上でしょう。第3倍音は、音楽的に言うと、第2倍音の5度上のGでしょう。第4倍音はその4度上のC、第5倍音はその3度上のE、などでしょう。難しいですか?このテーブルでは、それが、より明確であるかどうかを見てください。以下のように書き出せばよりはっきりと分かるかも知れませんね。

    倍音 1番目 2番目 3番目 4番目 5番目 6番目

    音の高さ

    音量

    間隔

    C1 C2 G2 C3 E3 G3

    100% 1/2 1/3 1/4 1/5 1/6

    - オクターブ 5度 4度 長3度 短3度

    連続した倍音の間隔に注意してください。

    基音

    オクターブ

    5度

    4度

    3度

    短3度

    ...など。倍音同士の間隔は徐々により近づいています。論理的に、高くなるにしたがって、間隔がよりせばまり続けますから、通常の西洋音階からはみ出てしまいます。しかしこれまでのところ、音楽的な間隔を保っています。結果として、C、C、G、C、E、Gという並びになります。

    38

  • 倍音についての演習倍音についてもう少し学びましょう。

    基音を最大音量で、第2倍音を1/2の音量で、第3倍音を1/3の音量で、実験を行いました。

    もし奇数だけを使ったなら、つまり、1番目、3番目、および5番目の倍音だけを使ったなら、何が起こるでしょうか?

    この実験のために、まず以下を試してください。

    パッチを初期化します。

    すべてのトーンをオンにし、正弦波にします。

    トーン1のピッチをマイナス12半音にします。

    トーン2のピッチをプラス7半音にし、音量を33に変えます。

    トーン3のピッチをプラス16に、音量を20に変えます。下から2番目のCを演奏します、そして、ビューワーを見ましょう。

    波形の頂上がやや平坦に見えるまで、[RUN/STOP]を押します。

    どんな波形に近づいてきましたか?

    ヒントとして、Figure 3.11で作成した波形と、この新しい波形を比べてください。

    セクション 4 奇数次倍音

    39

    Figure 3.16 生成された矩形波

    Audio 3.7 生成された矩形波

  • 倍音チャートここまで扱ってきた倍音を見直しましょう。最初は基音100Hzののこぎり波です。

    1番目 2番目 3番目 4番目 5番目 6番目

    周波数

    音量

    100 200 300 400 500 600

    1 1/2 1/3 1/4 1/5 1/6

    0%

    25%

    50%

    75%

    100%

    100 200 300 400 500 600Hertz

    そして、基音100Hzの矩形波を同じように見てみましょう。

    1番目 3番目 5番目 7番目 9番目 11番目

    周波数

    音量

    100 300 500 700 900 1.1k

    1 1/3 1/5 1/7 1/9 1/11

    0%

    25%

    50%

    75%

    100%

    100 300 500 700 900 1100Hertz

    パルス波の波形はいったいどんなものになると思いますか?次のレッスンで、その答えをさがしましょう。

    40

    倍音列について焦点をあてて、長時間学んできましたが、これらを合理的に理解することで、続く2つのレッスンがとても容易になるでしょう。

  • 次の表を完成させてみましょう。これはいちばん低いE(ここではE1と呼びます)を弾いた際ののこぎり波に基づいています。

    上の表をグラフ上で略図で表してみましょう。そして37ページの Figure 3.15 と比較しましょう。

    セクション 5 3つの課題

    41

    Gallery 3.1 のこぎり波

  • レッスン 4

    フィルター

    このレッスンでは、GAIAのフィルター・セクションの能力を確かめます。これにより倍音についての概念をより正しく理解できるようになります。

  • 音の3つの基本構成要素を思い出しましょう。冒頭にて、それらをピッチ、トーン・カラー、ボリュームと呼びました。レッスン2では、ピッチ・セクションが実際にオシレーターと呼ばれていることを学びました。

    それでは、トーン・セクションがなぜフィルターと呼ばれるか、その理由を学んでいきましょう。

    オーディオ機器のトーン・コントローラー以下の写真をご覧ください。ステレオ・アンプの標準的なコントローラーです。

    ステレオ・アンプにはトーン・コントローラーと呼ばれるつまみがあり、通常はバス(低音)とトレブル(高音)のコントローラーがあり

    ます。これらのコントローラーはどのように音に作用しますか?たとえばベース・ギターとピッコロによる楽曲を再生すると想像してください。2つの楽器が同じ音量の場合Figure 4.2のように表現できるでしょう。

    ここで、バス・コントローラーを上げて、トレブルを下げると、このようになるでしょう。

    セクション 1 トーン・コントローラー

    43

    Figure 4.1 ステレオ・アンプのトーン・コントローラー

    Figure 4.2 トーン・コントローラー

    Figure 4.3 バスを上げ、トレブルを下げる

  • バス・コントローラーを下げ、トレブルを上げると以下のようになります。

    バス・コントローラーを上げることによって、ベースの音を強調できますし、下げることによって、ベースの音量を小さくすることができるでしょう。ピッコロについてもトレブル・コントローラーを使うことで同じ変化が起こります。しかしながら、最小値まで下げた場合でさえ、私たちはまだ両方の楽器を聴きとることができます。

    ここでレッスン3を思い出し、[CUTOFF]と比較しましょう。それを最小値まで下げたとき、すべての音を完全に取り除くことができました。GAIAの「トーン・コントローラー」すなわち[CUTOFF]がステレオ・アンプのものよりはるかに強力であることは、明らかです。

    フィルターかつて化学の授業でフィルターを使って実験をしたことがあると思います。その実験では、濾紙に液体を通すことによって液体から粒子を取り除くことができる、ということが分かります。または、料理の際に、大きい粒子や不純物を取り除くために小麦粉をふるいに通したこともあるでしょう。これらもフィルターの一種です。

    私たちが減算合成方式について「倍音を取り除いている」と説明しました。では、Figure 4.3のトーン・コントローラーとは別に、この図表によるフィルター・コントローラーの形を表すほうがよさそうです。

    レッスン3で学んだように、この表はのこぎり波形の倍音の列を示しています。右から2つの倍音が、ステレオ装置の標準的なトーン・コントローラーによって、ただ単純に下げられているわけではない、という点に注意しましょう。それらはごっそりまるごと取り除かれています。言い換えれば、それらは「断ち切られて(CUT OFF)」います。

    では、赤い矢印で示されたカットオフ周波数(カットオフ)を見てみましょう。カットオフより上の周波数の倍音は取り除かれます、そして、カットオフの下のすべての周波数がフィルターを通り抜けることができます。

    44

    Figure 4.4 バスを下げ、トレブルを上げる

    Figure 4.5 強力なフィルター

    Level

    Frequency

  • これが、このタイプのフィルターをロー・パス・フィルターと呼ぶ理由です。

    ロー・パス・フィルター理論を実践してみましょう。パッチを初期化します。

    ウェーブ・ビューワーを見ていちばん下のCを押さえたまま、ゆっくりカットオフを下げます。倍音が徐々に取り除かれているのがわかりますか?

    慎重に操作すれば、カットオフを下げて純粋な正弦波にそっくりな波形をつくることができます。基音以外のすべてを取り除けばよいのです。

    実際には、伝統的なアナログのシンセサイザーは、高域の倍音を正確にカットできませんでした。そのフィルターのはたらきはFigure 4.7のようなものでした。

    ところで、フィルターのカットオフには傾斜があります。Figure 4.7では、最初の4つの倍音が変わることなく素通りできたのに、次の2つの倍音が少し下がっているのがわかるでしょう。もちろん、予想どおり、高い方から4つの倍音は取り除かれました。

    GAIAには[SLOPE]ボタンがあります。それは2つのタイプのスロープを正確に再現できるのです。Figure 4.7はスロープの急なフィルターを示しており、これは「-24dB/オクターブのスロープ」と呼ばれます。名前を理解することはそんなに重要でないので、それをただ単に「急峻なスロープ」と呼びましょう。

    そして、Figure 4.8はゆるやかなスロープの効果(-12dB/オクターブ)を示しています。

    45

    Figure 4.6 カットオフを下げた状態

    Figure 4.7 より精密にあらわしたもの

    Figure 4.8 ゆるやかな傾斜

  • 標準的なトーン・コントローラーとフィルターとのもう一つの重要な違いはその切れ味です。

    先ほどは標準的なトーン・コントローラーがどのように上下するかを説明しました。

    一方で、フィルターは「斜めに削ぎとる」ように動きます。

    このやりかたで、いくつの倍音がフィルターを通り抜けるかを選ぶことができます。

    標準的なトーン・コントローラーは倍音の音量を上げ下げします。

    フィルター・カットオフはある倍音は通過させたり、別の倍音は通過させなかったりして、倍音を上下にふるい分けていきます。

    したがって、標準的なトーン・コントローラーは音量を変えますが、フィルター・カットオフは周波数を直接コントロールしています。

    46

    Figure 4.9 トーン・コントローラーのふるまい

    Figure 4.10 フィルターのふるまい

  • レゾナンスでは、GAIAのフィルター・セクションにおける2番目のコントローラーを調べます。それはレゾナンスと呼ばれる機能です。

    [RESONANCE]つまみは、このようにカットオフ周波数の倍音を強調します。

    図表ではカットオフより低域のすべての倍音が通り抜けます。カットオフより高域のすべての倍音が弱められるか、または取り去られます。これは、これまで説明してきたとおりです。しかしながら、カットオフ周波数付近の倍音がすべて持ち上げられています。

    パッチを初期化し、カットオフとレゾナンス・コントローラーの実験をしましょう。ウェーブ・ビューワーを必ず使用し、観察に役立ててください。あなたは、レゾナンス・コントローラーがいくつかの非常に「電子的」な効果を引き起こすのがわかるでしょう。

    モードガイアのフィルターには、もうひとつの便利なコントローラーがあります。[MODE]ボタンです。

    私たちが今までどのように、いわゆるロー・パス・フィルターを使用していたかを思い出してください。これは低域の倍音周波数を通過(=パス)させる一方で、高いものを取り除くことができます。

    [MODE]ボタンで3つのフィルター・タイプを選ぶことができます。

    次のページの図表を参照してください。

    セクション 2 レゾナンスとモード

    47

    Figure 4.11 レゾナンス付きフィルター

    HPF ハイ・パス・フィルター 低い周波数を取り除く

    BPFバンド・パス・フィルター 低い周波数と高い周波数を取り除く

    PKG ピーキング・フィルターどの周波数も取り除かないが、

    レゾナンスをかける

  • 3つのコントローラー[CUTOFF]、[RESONANCE]、[MODE]、すべてを実験してください。

    3つのフィルター・モードのそれぞれで、以下の図で示した動きがどのように音色に作用するのか聞いてみてください。これらのフィルターの働きはすべて必要な用途があり、それをレッスンの後半で学んで行きます。

    48

    GAIAの取扱説明書P. 33とP. 34に図解と詳しい説明があります。

    Figure 4.12 ハイ・パス・フィルター

    Figure 4.13 バンド・パス・フィルター

    Figure 4.14 ピーキング・フィルター

  • 倍音の検証を続けましょう。

    パッチを初期化します。

    [CUTOFF]を最小限にします。[RESONANCE]の値を90にします(サウンド・デザイナーのSHOW NUMBERS を使って数値を表示させながら)。

    いちばん下のCを押し続けます、そして、ゆっくり31まで[CUTOFF]を上げてください。純粋な正弦波が聞こえます。ウェーブ・ビューワー上で正弦波が見えます、スクリーン上に約2.5周期が表示されます。

    今度は、慎重に[CUTOFF]を40まで上げてください。音が、1オクターブ上にあがり、ウェーブ・ビューワーに約5サイクル表示されていることに注意してください。これが第2倍音です。

    慎重に[CUTOFF]を約45まで上げてください。別の音が聞こえますか?それは何ですか?スクリーンにはいくつの周期が表示されますか。

    この表を完成してみてください(サイクルを数えるのに[RUN/STOP]を何度か使用する必要があります)。

    セクション 3 倍音-検証

    49

    Gallery 4.1 のこぎり波の測定結果

  • 聞こえているもの、見ているものはすなわち、のこぎり波の倍音列です。

    これは、どのようにつくられたのでしょうか?簡単に言えば、フィルターのレゾナンスを上げ、カットオフ付近の倍音を強調することで、ある周波数を強調しています。

    つまりこれは、以下の3つの考えを検証したことになります。

    1. 倍音列の概念は正しい。

    2. フィルター・カットオフはどんな帯域の周波数であれ、それを強調しつつ他の周波数を取り除くことができる。

    3. レゾナンスは特定の倍音を強調する。実際に、いくつかのシンセサイザーではレゾナンス・コントローラーは「エンファシス」と呼ばれている。

    50

  • GAIAのフィルターの3番目のつまみは[KEY FOLLOW](キー・フォロー)と呼ばれます。キー・フォローについて説明するのは、そんなに簡単ではありませんが、GAIAを使って容易にそれを示すことができます。

    パッチを初期化します。

    オシレーターでノイズ波形を選択します。ノイズ波形は倍音構造の特定の型がなく非周期的な波形です(周波数、レベルが無作為でまちまちな、たくさんの周波数の混ざった音、と表現するのが最も妥当です)。

    [RESONANCE]つまみを最大に上げ、[CUTOFF]つまみの値を70に上げます。

    鍵盤のいろんな箇所(音符)を弾いてください。ホイッスルのような音が聞こえるでしょう。これはフィルターのレゾナンスを上げたことによって、カットオフで生じるランダムな倍音を強調しているからです。

    ホイッスルのピッチが鍵盤と無関係であることに注意してください。

    今度は、[KEY FOLLOW]つまみを最大まで上げてください。

    もう一度鍵盤を弾きましょう。正しい音階でホイッスルを演奏できるのがわかるでしょう。これはカットオフ周波数が鍵盤のピッチに従うからです。;キー・フォロー[KEY FOLLOW]

    つまみを最小限に下げましょう、そして、もう一度鍵盤を弾きます。音階は完全にさかさまになります。

    [KEY FOLLOW]をいろいろなレベルに設定して、音階の変化が起こることを試してみてください。

    これで、キー・フォローを理解できました。それは、カットオフ周波数を決定するのに鍵盤(のピッチ)を使用します。一見、単純なコントローラーのように見えますが、それは非常に強力なものであることが、続くレッスンでわかります。

    セクション 4 キー・フォロー

    51

    GAIAの取扱説明書P.34に更に詳しい説明があります。

  • レッスン 5

    エンベロープ

    ここまではシンセシスの基本理論である、オシレーター、フィルター、倍音などを中心に学んできました。ここでは、モジュレーターのしくみについて学びましょう。ここで学ぶ新しいコントローラーは、音色を形作るのに役立ちます。

  • レッスン1では、GAIAの信号の流れを以下のようなフローチャートで説明しました。

    この図は正しい信号の流れを表しています。オシレーターは、初期信号を供給し、次にフィルターに渡し、そこからアンプを通り、最終的にはスピーカーを通して我々の耳に届きます。

    それでは、Figure 5.2のようにフローチャートを拡張してみましょう。

    この図を見ると、オシレーターからの信号がフィルターとアンプを通る過程で、それぞれをいろいろな方法で変調できることが分かります。

    セクション 1 拡張フローチャート

    53

    Figure 5.1 簡単なフローチャート

    信号がスピーカーに達するまでは、音がまったく出ないことに気づかれたかもしれません。オシレーターを「ピッチ・セクション」と呼んでいたこともありましたが、実際にはピッチはありません。単に周波数と波形を伴った電気信号を供給するだけで、信号は次へ渡されます。したがって、オシレーターからの信号を表すときは「周波数」という言葉を使うほうがより正確です。同様にフローチャートの最後の過程をアンプと呼びますが、本当は耳に聞こえる音の「量」を変化させている訳ではありません。まだ電気信号の話をしているだけなので、音としては聞こえないのです。ですから、AMPセクションについて説明するときには「ボリューム」ではなく、「レベル」や「振幅」のような言葉を使っていきましょう。

    Figure 5.2 拡張したフローチャート

    変調する:~をコントロール信号で変化させること

  • エンベロープモジュレーターにはエンベロープと呼ばれるものがあります。ここではAMPセクションを使って、エンベロープを説明します。すでにメインの[LEVEL]つまみについては理解していると思いますので、残りの4つのスライダーの説明に移ります。

    パッチを初期化すると、サウンド・デザイナーにはFigure 5.3のような表示が現れます。それでは、実験をしてみましょう。

    まず、いずれかの鍵盤を押さえ、すぐに離してください。音の始まりと終わりが突然なので、非常に電子的な音に聞こえるでしょう。まるで古い電子オルガンを聞いているようで、アコースティック楽器のようには聞こえません。

    それでは、1番目のスライダーを半分(50)ぐらいまで上げてください。鍵盤を弾くと、音がゆっくり鳴り始めます。どんなタイプの楽器がこのように聞こえるでしょうか?

    スライダーを最大まで上げてください。ここまで鳴り始めが遅いと、もはや当てはまる楽器はほとんどありませんが、効果音としては役に立つかもしれません。

    それでは、1番目のスライダーを最小にしてから、4番目のスライダーを上下させてください。どんな音が鳴りますか?どんな楽器の音に聞こえますか?

    アタックとリリース1番目のスライダーは音の始まり、4番目のスライダーは音の終わりを変えることが分かりました。

    音の始まりをアタック、終わりをリリースと呼びます。音の立ち上がりと音の消えていくところを、それぞれのスライダーでコントロールできます。

    Figure 5.3を見ると、GAIAには4つの文字が書かれた図が表示されていることが分かります。まさに「A」の文字はアタック、「R」はリリースを表しています。それでは、「D」や「S」は何を表しているのでしょうか?

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    Figure 5.3 アンプ・エンベロープ

  • サスティン・レベルアタックとリリースのスライダーを最小に戻してください。鍵盤を弾きながら[S]スライダーを動かしてみましょう。何が起こりますか?

    最初のうちは、[S]スライダーは、ただのレベル・コントロールのように思われるかもしれません。なぜこれが必要なのでしょうか?

    「D」と「S」の両方のスライダーを半分ぐらいに設定してから、鍵盤を弾いてください。どんな音が聞こえますか?最初は大きな音で始まり、1、2秒の間に減衰(ディケイ)します。その後、鍵盤を弾いている間は、音は伸び続けて(サスティン)います。これが、これらのスライダーを「ディケイ」と「サスティン」と呼ぶ理由です。

    これで、時間的な音量変化を形作る方法を手に入れました。この全体の形をエンベロープと呼びます。エンベロープはアタック、ディケイ、サスティン、およびリリースから成り、A-D-S-Rと呼ばれることもあります。

    A-D-S-Rの動作を知りましょう!

    アタック、ディケイ、リリースを半分(50)ぐらいまで上げ、サスティンを80ぐらいまで上げます。

    ウェーブ・ビューワーに切り替えて、Figure 5.4にあるつまみに着目してください。

    このつまみを回して「ENVELOPE VIEW」に切り替えます。

    いずれかの鍵盤を3秒ほど弾いてください。そして、鍵盤を離したすぐ後に[RUN/STOP]ボタンを押します。すると、このように見えるでしょう。

    GAIAのパネルにある図は、この信号の上半分のような形をした図に

    なっていることが分かります。アタック音が遅く、サスティン・レベルに達するまでがディケイで、最終的にリリースになっていることがわかります。以前にも触れましたが、ウェーブ・ビューワーは、このように聴いている音を目で見ることができます。

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    Figure 5.5 エンベロープ・ビュー

    Figure 5.4 ディスプレイ・セレクター

  • レッスン2では、GAIAのオシレーターが作り出す波形の違いを学んできました。

    さらに、のこぎり波を「ブラスのような」音と言いました。

    それでは試してみましょう。パッチを初期化してから、[OCTAVE DOWN]ボタンを一度押します。

    次のようなフレーズを弾いてみてください(ヘ音記号に注意)。

    チューバのように聞こえますね。良いチューバではありませんが、のこぎり波が「ブラスのような」音であることが分かるでしょう。

    それでは、この知識を使用して、GAIAでトランペットの音を作ることに挑戦しましょう。

    [OCTAVE UP]ボタンを2回押します。すると、鍵盤は通常より1オクターブ高い音になりますので、次のようなフレーズを弾いてみましょう(ト音記号)。

    音自体は「ブラスっぽい」ですが、トランペットの音とは言い難いですね。それでは役に立つキャッチフレーズを紹介します。

    「この音のどこがおかしいですか?」

    セクション 2 トランペット パート1

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    Audio 5.1 低音のこぎり波のフレーズAudio 5.2 高音のこぎり波のフレーズ

  • この音のどこがおかしいですか?もう少し具体的に「このトランペット音はどこがおかしいのか」を考えましょう。以下のステップにしたがって、音を改良するために考慮すべき点や方法を説明します。

    1. このレッスンのはじめで学んだことから、問題はエンベロープにあると考えられるでしょう。特に音のアタックが不自然です。トランペットをたたいているような音がしますが、マウスピースに息を吹き込むような音であるべきです。

    2. それでは、アタック・スライダーで試してみましょう。スライダーを上げすぎると、トランペットらしい音になりません。まずは値を3ぐらいに設定してください。マウスピースに息を吹き込むような「プッ」といった音がしましたか?

    3. まだどこか音に不自然なところはありませんか?トランペットはアコースティック楽器です。マウスピースに息を吹き込むと、空気はトランペットのボディを通って、私たちの耳へ届きます。したがって、音がすぐに止まるということは起こりえないと考えられます。音が自然に聞こえるようにリリースをコントロールしてみましょう。おそらく、8ぐらいの設定になったのではないでしょうか?

    4. まだトランペット音としておかしなところがあるでしょうか?実は非常に有効な2つのコントローラーがまだ残っています。今までに金管楽器を演奏したことがあれば、音の鳴り始めが難しいことをご存知でしょう。それに比べて、音を保つことは比較的簡単です。それでは、音の鳴り始めの難しさを再現するにはどのようにしたらよいのでしょうか?どのようにしたら、音の立ち上がりの「プッ」という感じが出せるでしょうか?

    5. もう一度、Figure 5.6のエンベロープの形を見てください。音が始まるとすぐに最大音量になることが分かります。しかし、それからだんだん小さくなっていきます。この部分がトランペットの音の始まりに関係していそうですね。それでは、どのようにしてその形を作ったらよいのでしょうか?

    6. サスティンを90、ディケイを約20に設定してください。これで、かなりトランペットの音に近づいたのではないでしょうか。事実、1960年代前半の電子オルガンに内蔵されていたトランペット音が、まさにこのような音なのです。

    7. 次にサスティン・レベルにも着目してください。レベルが最大のままであれば、ディケイはまったく効果がありません。ディケイとサスティンはしばしばこのように関連して働きます。

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    Figure 5.6 エンベロープの形

  • これらの手順に従えば、シンセサイザーのエンベロープとそのコントロール、すなわちA-D-S-Rのしくみについて、よりはっきりと理解できたでしょう。

    しかし、完璧なトランペットの音にするにはまだ長い道のりがあります。このトランペットの音はどこを修正すべきでしょうか?

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    ところで、アコースティック音を作ろうとするのはなぜだと思いますか?アコースティック音は、誰にでもなじみ深いので、似ているポイントを参照しやすいからです。どんなミュージシャンもトランペットやバイオリンの音に対して、かなりしっかりしたイメージを持っています。

    もし、80年代のポップバンドのシンセ音を1つ選んで作ってみることになったら、大変なことになるでしょう、

    「シンプル・イズ・ベスト」ですね。

  • フィルター・エンベロープこれまでは、のこぎり波を選び、アンプのエンベロープを調整することによって、簡単なトランペット音を作りました。つまり、作り上げたトランペットの音量には、ある一定の形ができています。

    しかし、このトランペットの音色には動きがありません。どの音を弾いても、音色にはまったく変化がありません。これはアコースティック楽器としては非常に不自然な状態です。音色(トーン・カラー)も音量と同様に変化すべきものなのです。

    効率よく理解するために、トーン・カラーは音量と同じように変化すると仮定します。実はGAIAのFILTERセクションにも、エンベロープをコントロールするまったく同じの4つのスライダーがあります。それでは、ボリュームとフィルターのエンベロープを両方とも以下のように設定してください。

    A D S R

    3 20 90 5

    鍵盤を弾いてみてください。音は変化しましたか?

    音はまだ変化していませんね。なぜなら、さらに2つのコントロールを動かす必要があるからです。

    はじめのコントローラーは簡単です。サウンド・デザイナーを見ると、カットオフは最大に設定してあることが分かります。これはフィルターが開いていて、すべての倍音が何の影響も受けずに通り抜けている状態です。だからフィルター・エンベロープはまだ効果を与えていないのです。

    つまり、フィルターを開けたままになっているので、エンベロープをコントロールするポイントがまったくないのです。

    フィルターのカットオフを最小に設定して、鍵盤を弾いてみましょう。するとまったく音が鳴りません。なぜでしょう?

    エンベロープを適切な設定にしているのに、なぜトーン・カラーが変わらないのでしょう?

    ここでFILTERセクションの最後のスライダーである[ENV DEPTH]スライダーが必要になります。このスライダーは、フィルター・エンベロープ全体の効き具合をどれぐらいにするかをコントロールします。

    温度設定のつまみと蛇口のついた給湯器を想像してください。温度を設定することはできますが、それだけではお湯は得られません。蛇口を開けないと、お湯はタンクの中のままです。

    セクション 3 トランペット パート2

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  • 蛇口を少し開ければ、お湯が出てきます。蛇口をいっぱいに開ければ、たくさんのお湯が出てきます。

    これは、まさにフィルター・エンベロープと同じことです。「フィルターがどのように振る舞うか」を表すエンベロープの形は設定できますが、「どれぐらい効かせるか」という効果の深さを決めるまでは働かないのです。

    ここで、前ページのボリュームとフィルターのエンベロープの設定を思い出してください。

    鍵盤を弾きながら、ゆっくり[ENV DEPTH]スライダーを上げてみてください。値が小さいときはトランペットというよりフリューゲルホルンのようにまろやかな音になり、値が大きくなるほど明るくなることが分かるでしょう。

    スライダーを最大に上げるとサスティンにはその効果がなくなり、連携して動いているディケイの効果もなくなることに注意してください。

    また、エンベロープ・デプスには負の値があることに着目してください。カットオフを開けた状態で負の値に設定すると、なかなかおもしろい効果をかけることができますので、試してください。

    さて、このトランペットの音ですが、まだ不自然なところがあるでしょうか?

    音を改良するには、さらに情報が必要になってきます。それでは次のレッスンに進みましょう。

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    もう一度この章の63、64ページを読んで、完全に理解しているかどうかを確認してください。特にカットオフ、エンベロープの設定、エンベロープ・デプスの設定と関係について、しっか�