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R 使F₁ 2 F₁ 3 3 F₁ All America Selections F₁ F₁ ※「プラチナケール」とは、世界で 葉牡丹育種をリードするタキイが、 葉牡丹の枠を超えた新たなジャン ルの品種として考案・商品化した ブランドです。葉牡丹の名称をあ えて使用せず総称として「プラチ ナケール」と呼ぶことで、従来の イメージを脱却して新たな利用場 面を広げることをねらいとしてい ます。 《照葉葉牡丹の育成方法に関する特許》 タキイ種苗は、2009年に「葉面にワ ックス成分が実質的に分泌、付着さ れず葉面に光沢を持つ葉牡丹品種の 育成方法」に関する特許を取得しま した。 (特許第4256687号 発明の名称 『新奇なハボタン品種の育成方法』) Brassica Oleracea Glossy Lucir 2012 タキイ最前線 秋号 9

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Page 1: Glossy - TAKII2012/08/09  · Glossy Lucir 2012 タキイ最前線 秋号 9 部が広く見えます。葉はやや開きぎみで、光沢のある着色スマスの飾り付けにも向く品種です。色合いも落ち着きのある色調で、クリ

R

 冬の花壇材料として欠かせない葉牡

丹。葉牡丹といえば、「紅白」で正月の

門松などの飾り付けに使われるという

昔ながらの古風なイメージがある品目

です。そのイメージを一転させ、今ま

でになかった光沢とメタリックな質感

をもたらすのが、ニュータイプの葉牡

丹「プラチナケール」です。従来の葉

牡丹のような表面にブルーム(白いワ

ックス成分)のある葉とは異なった鮮

やかな彩りの照葉が生み出す高級感が、

冬の花壇や花材として新たな可能性を

引き出します。「F₁ルシール」

シリー

ズ2品種に今年新発売の矮性種「F₁グ

ロッシー

レッド」が加わり、プラチナ

ケールは3品種になりました。この光

り輝く3品種を新たな冬の花材として

提案いただき、栽培・出荷されてはい

かがでしょうか。

品種特性

 

F₁初の矮性照葉品種です。ブルーム

のない光沢のある鮮やかな緑の外葉と

中心の濃紅色のコントラストがよく映

える待望の花壇用紅色種です。葉の形

状は、ちりめん葉と切葉の中間程度の

縮み葉です。寄せ植え用のポット栽培

に向きますが、大株で作っても照葉が

より鮮明になり一品種でも存在感が増

します。この鮮烈な葉色が特に評価さ

れ、2011年に世界的な新品種コン

テストAAS(All Am

erica Selections

オールアメリカセレクションズ)を受

賞しました。

 

鮮明な発色で、外葉の緑色と着色部

「F₁グロッシー

レッド」

「F₁ルシール

ワイン」

※「プラチナケール」とは、世界で葉牡丹育種をリードするタキイが、葉牡丹の枠を超えた新たなジャンルの品種として考案・商品化したブランドです。葉牡丹の名称をあえて使用せず総称として「プラチナケール」と呼ぶことで、従来のイメージを脱却して新たな利用場面を広げることをねらいとしています。

《照葉葉牡丹の育成方法に関する特許》タキイ種苗は、2009年に「葉面にワックス成分が実質的に分泌、付着されず葉面に光沢を持つ葉牡丹品種の育成方法」に関する特許を取得しました。(特許第4256687号 発明の名称『新奇なハボタン品種の育成方法』)

Brassica O

leracea

タキイ研究農場  

佐さ

々さ

木き 

理まさ

之ゆき

プラチナケール

「F₁グロッシー

レッド」

「F₁ルシール

ワイン」

「F₁ルシール

バニラ」

Glossy

Lucir

2012 タキイ最前線 秋号 9

Page 2: Glossy - TAKII2012/08/09  · Glossy Lucir 2012 タキイ最前線 秋号 9 部が広く見えます。葉はやや開きぎみで、光沢のある着色スマスの飾り付けにも向く品種です。色合いも落ち着きのある色調で、クリ

の紅色とのコントラストが明瞭です。

色合いも落ち着きのある色調で、クリ

スマスの飾り付けにも向く品種です。

葉はやや開きぎみで、光沢のある着色

部が広く見えます。

 

葉色は従来種の灰色味ある緑色とは

違い、鮮明で着色部の白色を引き立た

せ、コントラストが美しい品種です。

葉は立葉で葉枚数の多い品種です。

「F₁ルシール

バニラ」

栽培のポイント

●ポット栽培

「F₁グロッシー

レッド」は花壇や寄せ

植えに威力を発揮します。矮化剤を利

用して10・5~12㎝のポット栽培がお

すすめです。従来種の「F₁つぐみ」シ

リーズや「F₁かもめ」シリーズと組み

合わせてより彩り豊かな葉牡丹のポッ

ト苗を出荷することができます。また、

高性種の「F₁ルシール」シリーズも同

様に小作りポット栽培が可能で、この

3品種を上手に組み合わせたプラチナ

ケールでの出荷も可能です。

 

また、「F₁グロッシー レッド」は、大

作りにすると照葉がより鮮明に、イン

パクトのある株に仕上がるので、18~

21㎝の大苗もおすすめです。

●播種

 

播種は8月上旬に行い、200穴プ

ラグトレイに1粒まきを基本とします。

用土は「タキイたねまき培土」などの

市販の清潔な用土を使います。発芽適

温は20~25℃ですが、高温時期の播種

なので遮光などをして管理します。播

種後3~4日で発芽がそろったらしお

れさせないように注意しながら潅水は

控えめにし、日の当たる風通しのよい

場所で徒長させないように管理します。

徒長を軽減する目的で、播種後5~7

日目の本葉が展開するステージで矮化

剤ビーナイン水溶剤80の300倍液を

噴霧器などで植物体全面に散布します。

●ポット上げ

 

播種後約15~20日で本葉3~4枚に

なるので、このステージがポット上げ

の適期になります。2~3日でも鉢上

げが遅れると徒長や老化苗になり、以

降の生長が悪くなるので注意します。

 

鉢上げ用土は市販の清潔な用土を用

います。肥料はロング70などを用い、

生育初期に葉数と株のボリュームを確

保するようにし、緩効性の肥料は避け

ます。鉢は、「F₁ルシール」シリーズで

9~12㎝、「F₁グロッシー レッド」で

10・5~15㎝のサイズに仕上げると、

それぞれ照葉の魅力がよりよく発揮さ

れるでしょう。

 

このポット上げのステージが、2回

目の矮化剤処理の時期で、小作り栽培

には欠かせない重要なポイントになり

ます。スミセブンP液剤の10倍液を葉

面に散布するのが効果的で、矮化剤を

処理する場合は、日中の高温時期を避

け気温が下がる夕方に行います。また、

トレイ用土はある程度湿り気をもたせ

て行うようにします。あまり乾燥して

いると溶液の吸収が強くなり過ぎるの

で注意が必要です。

●その後の管理

 

鉢上げ直後は乾かさないように潅水

管理し、その後表面が乾き始めたら十

分に潅水を行うようにします。輝きの

ある照葉を発揮するには、この時期の

極端なしおれや、肥料切れによる葉の

黄化を起こさないよう十分に管理する

のがポイントです。9月中旬には、追

肥として固形肥料を施すとよいでしょ

う。プロミックの中粒では9㎝ポット

で1粒、10・5~12㎝では2粒、IB

化成なら2~3粒程度施肥します。

 

また、適宜葉色を見て、色あせてく

るようであればさらに液肥を施します。

矮化剤は2回目の処理でほぼまとまり

ますが、効果が切れるようであれば10

月上旬までに3回目の処理として、ビ

ーナイン水溶剤80の200~300倍

液かスミセブンP液剤10倍液を葉面に

散布します。10月中旬以降の矮化剤処

理は着色に影響することがあるので、

避けるようにします。

 

18~21㎝の大作りの場合は、2回目

以降の矮化剤処理は必要ありませんが、

液肥などの追肥は、小作りと同様に葉

色を見て小まめに行うようにします。

「今までの葉牡丹のイメージを脱却する新たな商

材は考えられないか?」との思いを合言葉に、約

20年前から品種開発を進めてきました。そのアイ

デアの一つとして「葉のブルームが抜けたら色が

もっと美しくなるのでは?」との発想に基づき、

葉牡丹はいうに及ばず、キャベツなどその他のア

ブラナ属作物にまで素材探しを進める中で見つけ

たのが、ブルームレス葉牡丹です。それをもとに、

葉色・葉型各種の固定を進め、いくつかの劣悪な

形質を取り除くことに年月を重ね、ようやく20

08年に東京丸葉系の高性切り花用品種「F₁ルシ

ール ワイン」と「F₁ルシール バニラ」の2品種を

発表することができました。さらに、本年より新

たにちりめん葉の矮性種「F₁グロッシー レッド」

が新発表となりました。

「ルシール」とは、スペイン語で「光る」という

意味で、「グロッシー」は英語で「光沢のある」と

いう言葉です。いずれもプラチナケールのメタリ

ックな輝きをイメージして命名しました。

→矮性照葉品種の「F₁グロッシー レッド」。ポット栽培向きで、大作りにすると照葉がより鮮明になる。

→「F₁ルシール」シリーズのポット仕立て。9~12㎝鉢で照葉の魅力が発揮される。

10 2012 タキイ最前線 秋号

Page 3: Glossy - TAKII2012/08/09  · Glossy Lucir 2012 タキイ最前線 秋号 9 部が広く見えます。葉はやや開きぎみで、光沢のある着色スマスの飾り付けにも向く品種です。色合いも落ち着きのある色調で、クリ

「F₁ルシール」シリーズは切り花用品

種です。クリスマスシーズンから正月

にかけて、切り花需要での幅広い出荷

が可能です。

●播種

 

播種は7月中下旬に行い、ポット栽

培と同様に200穴プラグトレイに1

粒まきとしますが、シーダーテープを

利用して直播することで省力的に播種

することもできます。

 

また、ポット栽培と同様に発芽がそ

ろったらしおれさせないように注意し

ながら控えめに潅水を行い、日の当た

る風通しのよい場所で徒長させないよ

うに管理します。特にこの時期は1年

で一番気温が高い時期にあたるので軟

弱徒長にならないよう温度管理には十

分気をつけてください。徒長を軽減す

る目的で、播種後5~7日の本葉展開

時にビーナイン水溶剤80の300倍液

を散布するのもよいでしょう。

 

定植床は日当たりと排水のよい場所

を選びます。過湿になりやすい場所で

は畝を高くするなどして排水をよくす

るようにします。施肥量は土壌条件で

異なりますが、CDU化成などの速効

性肥料を10a当たりチッソ成分で8~

12㎏施用します。前作で圃場に残肥が

多い場合は元肥は入れず、生育状況に

応じて追肥を施すようにします。

●定植時期

 

播種後15~20日、本葉3~4枚が定

植適期になります。定植は遅れないよ

うに注意し、日差しの強い日中を避け

て行います。茎が真っすぐになるよう

に植え付け、子葉が埋まらない程度の

深植えにし、倒れないよう株元を押さ

えます。

 

定植間隔は10~12㎝とし、定植前に

フラワーネットを畝上に張り、そのマ

ス目に1~2本植えるとよいでしょう。

シーダーテープで直播する場合は、発

芽直後からネットを準備します。

●定植後の管理

 

定植後の潅水は、活着までは十分に

行い、茎の伸長を促します。フラワー

ネットは、植物体の伸長に合わせて小

まめに上げていき茎が曲がらないよう

にします。茎葉が大きくならないよう

に草丈30㎝程度になったら葉かき(草

勢を抑えるために生育中の葉を除去す

る管理)に入ります。目安としては、

草丈の3分の1程度の葉を残し、下部

の葉はすべて摘葉します。葉かきは、

葉柄のもとの部分を指で挟み、横にひ

ねるように折ります。下向きに行うと

茎が傷つくので注意します。葉柄の基

部が残りますが、自然に脱落します。

この時期までに、茎が太く葉が大きく

なるようであれば、早めに葉かきに入

り草勢を抑えます。順次3~4回程度、

生育に合わせて葉かきに入り、茎の伸

長と太さを調整します。逆に草丈が伸

びず、株も大きくならない場合は、初

期の活着不良、潅水不足あるいは過湿

による根傷みなどが考えられます。十

分な潅水および液肥による追肥も生育

に応じて必要になります。

 

葉牡丹は低温にあたることで着色し

てきます。最低気温が12~13℃くらい

に下がり始めてから約1カ月を経過し

て着色します。年による変動はありま

すが、一般平坦地で10月下旬から着色

が始まり、11月中旬以降に緑葉と着色

部とのコントラストがはっきりしたも

のになります。出荷の1週間前くらい

に最終の葉かきを行い、外葉を2~3

層残して草姿を整えます。

「F₁ルシール」シリーズは、従来品種

に比べピンチ後の枝の発生は多く、ブ

ーケ仕立てや1年物踊り栽培に適しま

す。播種期を前進することでバリエー

ションの幅は広がります。ピンチ時期

は本葉10枚時のころに4~5枚本葉を

残す程度に切り戻します。その後、生育

を促すように肥培管理を行い、分枝と

葉数を確保します。このピンチ栽培は、

ポットでも仕立てることが可能です。

●切り花栽培

病害虫防除 育苗段階では、シンクイムシやヨトウムシの被害に注意します。また、コナガについては従来種より発生しやすいので、生育初期から徹底した防除が必要です。病害では、べと病に注意が必要です。温度が下がり始める9月以降が発生時期になるので、予防的に薬剤散布を行います。

※文中で紹介している農薬や肥料は、タキイでは取り扱いのないものもございます。ご了承ください。また、農薬をご使用の際は必ず登録の有無や使用方法をご確認ください。(編集部)

↑「F₁ルシール バニラ」は外葉とのコントラストが美しい品種。

↑シックな色調の「F₁ルシールワイン」はクリスマスの装飾にも最適。

→「F₁ルシール」シリーズはピンチ後に枝の発生が多いため、1年物踊り栽培にも向く。本葉10枚時に本葉4~5枚を残す程度に切り戻すのがポイント。

2012 タキイ最前線 秋号 11