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グリホサートの IARC 評価に関連して(「食品安全情報」から抜粋・編集) -その2(2016 年 6 月~2017 年 8 月)- 「食品安全情報」(http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/index.html )に掲 載した記事の中から、グリホサートの IARC 評価に関連する記事を抜粋・編集したもので す。古い記事から順に掲載しています。 記事のリンク先が変更されている場合もありますので、ご注意下さい。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 27.グリホサートの BfR リスク評価に関連したよくある誤解と Q&A Popular misconceptions, opinions and questions in connection with the BfR risk assessment of glyphosate 19 May 2016 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfRhttp://www.bfr.bund.de/cm/349/popular-misconceptions-opinions-and-questions-in-conn ection-with-the-bfr-risk-assessment-of-glyphosate.pdf 「食品安全情報」No.13 (2016) BfR は、グリホサートのリスク評価に関連した各種報道と国民からの問い合わせで頻繁 に宣伝されている誤解についてコメントを出すことにした。 ・「WHO は最初にグリホサートを発がん性と分類し、現在は考えを変えた。」 ・「科学者の間では合意していない。そのため、政治家は判断を下せない。」 ・「BfR IARC 評価との違いの理由は、BfR は企業が出資した研究を使っているためで ある。」 ・「グリホサートによる腫瘍の有意な増加は動物実験で報告されている。」 ・「グリホサートは母乳でも検出されている。」 ・「尿のグリホサート量は毒性基準値をはるかに超えている。」 ・「グリホサートはビールにも見つかっている。」 ・「なぜグリホサートを禁止しないのか?」あるいは「申請を取り消せ!」 ・「BfR の専門家は公平ではない。」 ・「BfR のリスク評価を行ったのは実際には農業界(農薬製造業者)だった。」 ・「BfR はグリホサートの新たな承認を主張したのか?」 以下、これら誤解に対する BfR のコメント

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◆ グリホサートの IARC 評価に関連して(「食品安全情報」から抜粋・編集)

-その2(2016 年 6 月~2017 年 8 月)-

「食品安全情報」(http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/index.html)に掲

載した記事の中から、グリホサートの IARC 評価に関連する記事を抜粋・編集したもので

す。古い記事から順に掲載しています。

記事のリンク先が変更されている場合もありますので、ご注意下さい。

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

27.グリホサートの BfR リスク評価に関連したよくある誤解と Q&A

Popular misconceptions, opinions and questions in connection with the BfR risk

assessment of glyphosate

19 May 2016

ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)

http://www.bfr.bund.de/cm/349/popular-misconceptions-opinions-and-questions-in-conn

ection-with-the-bfr-risk-assessment-of-glyphosate.pdf

「食品安全情報」No.13 (2016)

BfR は、グリホサートのリスク評価に関連した各種報道と国民からの問い合わせで頻繁

に宣伝されている誤解についてコメントを出すことにした。

・「WHO は最初にグリホサートを発がん性と分類し、現在は考えを変えた。」

・「科学者の間では合意していない。そのため、政治家は判断を下せない。」

・「BfR と IARC 評価との違いの理由は、BfR は企業が出資した研究を使っているためで

ある。」

・「グリホサートによる腫瘍の有意な増加は動物実験で報告されている。」

・「グリホサートは母乳でも検出されている。」

・「尿のグリホサート量は毒性基準値をはるかに超えている。」

・「グリホサートはビールにも見つかっている。」

・「なぜグリホサートを禁止しないのか?」あるいは「申請を取り消せ!」

・「BfR の専門家は公平ではない。」

・「BfR のリスク評価を行ったのは実際には農業界(農薬製造業者)だった。」

・「BfR はグリホサートの新たな承認を主張したのか?」

以下、これら誤解に対する BfR のコメント

「WHO は最初にグリホサートを発がん性と分類し、現在考えを変えた。」

グリホサートをおそらく発がん性があると分類したのは世界保健機関(WHO)ではなく、

WHO のがん専門機関である国際がん研究機関(IARC)である。BfR や世界中の他の機関、

農薬評価に責任がある WHO の別の委員会である FAO/WHO 合同残留農薬専門家会議

(JMPR)は、グリホサートが意図した目的のために適正に使用されるなら、食品を経由し

た発がん性リスクや変異原性は予期されないという、最新の科学的知見に沿った結論に至

っている。BfR はその有効成分が適切に使用される時、使用者、作業者、近傍者、地域住

民にリスクとなるかどうかも評価した。自身の序文によると IARC はハザード同定を行っ

ただけで、その後のリスク評価の過程で国や国際機関はそれを検討することができる。

(http://monographs.iarc.fr/ENG/Preamble/CurrentPreamble.pdf)

この「ハザード同定」―特に、発がん性の観点からの物質の IARC 分類―は「リスク評

価」の過程の最初の段階である。(http://www.who.int/features/qa/87/en/)

ハザードと暴露が互いに関連して組み合わされるときにだけ、ヒトへの健康リスクがあ

るかどうか、またそれがどのくらい大きいかを評価することができる。これは、農業での

使用から予想されるグリホサート汚染の健康ハザードの可能性を考慮して、BfR、欧州評価

機関、JMPR が完了した健康リスク評価の最初の段階だけを IARC が完了したということ

を意味している。

「科学者間では合意していない。グリホサートに発がん性があるかないかが明らかでなけ

れば政治家は判断を下せない。」

健康リスク評価は現在議論の余地がない。BfR、欧州食品安全機関(EFSA)、世界中の全

ての他の機関、農薬評価に責任を持つ WHO の委員会(JMPR)は、最新の科学的知見に従っ

て、グリホサートが適切に特定の目的のために使用されるなら発がん性リスクがないこと

が予想されるという結論を出した。様々な側面で様々な分類がある。IARC と BfR は根本

的に異なる権限、科学的基準、アプローチをしている。IARC はリスク評価を行わず、どの

政府や機関のために助言を提供する目的ではなく、様々なハザードを分析する。ハザード

に関連した分類とは、たとえば、アルコール、ニコチン、加工肉(ソーセージ)、アスベスト

などの「発がん性のある」(カテゴリー1)、あるいは、グリホサート、赤身肉などの「おそ

らく発がん性のある」(カテゴリー2a)といった、ある物質が損傷を与える可能性についての

ものである。この種の分類はその物質の実際の摂取量とその結果生じるダメージの可能性

を考慮していない。他方リスク評価はヒトが現実的な条件下で実際に摂取する物質の量を

考慮する。このことは、IARC は、ある物質がどのような状況であっても基本的にがんの原

因となる可能性があるかどうかを検討し、一方 BfR は、加えてその物質が適切に使用され

るときに実際にリスクを引き起こすかどうかを検討することを意味する。

異なる判断の別の理由は、IARC がその規則に従って、発表された研究のみを検討するこ

とである。これは、EU の認可手続きに沿って提出されているが発表されていない多くの研

究が無視されていることを意味する。その結果、BfR は IARC が序文により考慮しなかっ

た多くのより最近の研究を含むことができた。逆に、BfR の報告書は IARC が参照してい

る研究の全てを評価している。

EFSA、米国環境保護庁(EPA)、JMPR を含む世界中の同等の機関が同じ評価になった事

実は、BfR が行ったリスク評価が最新の科学的知見に沿っているということを示す。

「BfR と IARC 評価との違いの理由は、BfR は企業が出資した研究を使用しているためで

ある。」

BfR は法的に申請者の提出書類を検証する義務がある。それはこの情報に頼るのではな

く、むしろ自身の科学的研究を行う。この報告書では、申請者による法的に規定された研

究の全てを細心の注意を払ってチェックして評価し、ほかの関連する入手可能な研究全て

も同様に検査し評価した。IARC は、その規定により発表されていない研究は評価には 1 つ

も含まないので、はるかに少ない情報源に基づいている。それが、申請者が提出した包括

的な研究のいくつかが考慮されていない理由である。

IARC の分類は企業が出資した研究にも基づいている。グリホサートに発がん性があると

いうことを示す「動物での十分な証拠」があるとする IARC の判断は、業界が出資した齧

歯類の長期研究の発表に基づいている。その試験を BfR、EPA、JMPR では、グリホサー

トにはヒトへの発がん性リスクがないと予想されると評価している。これは IARC の評価

も企業が出資した研究に基づいていることを意味している。だが BfR とは違い、これらの

研究の原本は IARC には入手できず、別の発表により間接的に入手しただけである。

IARC とは違い、これらの研究の原本を利用できるすべての責任のある機関は、グリホサ

ートのハザードを「おそらく発がん性がある」と分類することは科学的にはできず、適切

に意図した目的で使用するならグリホサートには発がん性のリスクがないという結論に達

した。

「グリホサートによる腫瘍の有意な増加が動物実験で報告されている。」

毒性試験での動物実験の知見の評価には特別な専門知識が必要である。BfR は齧歯類で

行った実験研究を統計学的有意差だけで評価するのではなく、他の知見とともにすべての

評価方法での結果を含む、証拠の重みづけアプローチも用いる。これらは、化学物質の試

験法についての OECD、ECHA、EFSA のガイドラインで提示されている、バックグラウ

ンド汚染、歴史的対照、最大用量に関する OECD の助言、用量反応関係に関連する各種統

計比較、影響の一貫性と再現性、作用メカニズムの妥当性、不確実性の影響についての検

討を含んでいる。この方法で、BfR はラットとマウスのどちらの研究もグリホサートの発

がん性や変異原性リスクの兆候はないという結論に達した。

欧州加盟国と JMPR、US EPA の専門家は、検討対象となったラットとマウスの 11 の長

期試験でどの投与群でもヒトに関連する生物学的に妥当な腫瘍発生率の増加がないと結論

した。他方、IARC の解釈では、2 つの試験で膵臓の非悪性腫瘍に統計的有意差があると主

張されている。IARC はオスのマウスの 2 つの研究で腎臓の腫瘍と血管肉腫の数でポジティ

ブ傾向もあるとしたが、悪性リンパ腫ではなかった。評価機関 BfR、EFSA、JMPR は全体

的な評価でより多数の研究を含むという事実を別にしても、個々の腫瘍の増加は極めて高

用量の場合にのみ観察されていて、予想される摂取量の点でヒトにはあてはまらず、動物

に対する一般毒性の影響であろうと考えた。OECD も動物福祉の理由から 1000 mg/kg bw

を上限に推奨している。

BfR、EFSA、欧州加盟国は農薬の有効成分が適切に使用されたなら、使用者、作業者、

近傍者、地域住人に健康リスクとなる恐れがあるかどうかも評価する。これらのリスクが

科学的に予期できなかった時にだけ、欧州委員会は有効成分を認可することができる。こ

れは、有効成分の欧州評価が WHO/FAO 委員会 JMPR の評価よりさらに先に行くことを

意味する。

「グリホサートは母乳でも検出されている。」

16 の母乳サンプルからグリホサートが測定されたことを一部報道機関が 2015 年に報道

した。この検査は母乳のグリホサートを測定するのにふさわしくない方法(ELISA)で実施さ

れた。どのようにしてこの検査が行われたかという詳細は発表されていない。検体のグリ

ホサート濃度は 1 ミリリットル (ml)あたり 0.21~0.43 ナノグラム (ng)あるいは

0.00000000021 ~0.00000000043 グラム (g)だったと主張されていて、それは ELISA 検

査の製造者が信頼できるとする 75 ng /ml の定量下限のおよそ 200 分の 1 であることを意

味している。これに加え、母乳で発見されたという主張は独立した分析法で確認されなか

った。そのため、BfR はこれらの結果の信頼性について科学的な疑いを表明し、妥当性を

立証された十分確認された結果を得るために独自の研究を行った。

BfR は 2 つの独立した高感度分析法の開発を欧州の高名な研究所に依頼し、それがその

後Lower Saxony とBavariaの114の母乳検体を調べるのに使用された。この研究により、

母乳に検出される可能性のある、農薬に使用される有効成分グリホサートは残留していな

いことが確証された。

http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2016/08/bfr_study_confirms__no_glyphosa

te_detectable_in_breast_milk-196578.html

BfR が研究を行った一つの重要な理由は、心配した母親が母乳の残留グリホサートリス

クについて BfR に情報を求めて質問をしたことである。母乳は最も自然で赤ちゃんには最

も良い食品であり続ける。

「尿のグリホサート量は毒性基準値をはるかに超えている。」

残留農薬は、ある程度の基準値までは食品に許容されている。それらは基準値までなら

健康を危険にさらすことなく摂取し分解できる。残留量は有効成分の毒性について結論で

きるものではない。尿に望ましくない物質の残留物が含まれるなら、これはその物質が排

出されたことのしるしである。体内にその物質がどれだけ残留するかがわかっているとき

にだけそれが健康を害するどうかを決めることができる。

これまでに発表された尿の値からグリホサートの一日摂取量を逆算するなら、ある人の

尿 1 ml あたりおよそ 4ng あるいは 0.0000000004 g のグリホサートだった場合、体重キロ

グラム(kg)あたり 0.5 ミリグラム (mg)の許容一日摂取量の 100 分の 1 以下を摂取したと計

算できる。これらのデータは、BfR が EU 有効成分吟味の際の残留評価で計算した推定摂

取量推定摂取量を確認するもので、入手可能な最新の科学的知見によれば懸念の原因とは

ならない。

http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2016/11/glyphosate_in_the_urine__even_f

or_children__the_detected_values_are_within_the_expected_range__without_any_adve

rse_health _effects-197173.html

飲料水のガイド値との比較は、それらがたいてい科学的ではないにもかかわらず、物質

による健康リスクについての議論によく引用されて混乱を招く。これは、飲料水の残留農

薬のガイド値は健康面から導出されたものではなく、むしろ政治的にすべての農薬に適用

される予防的な(precautionary)値に設定されていることを意味する。そのため、飲料水

のガイド値を超過していたら自動的に健康ハザードがあるということではない。決定要因

はある物質の摂取量(排出量ではない) が科学的に計算されたガイド値を超過するかどうか

である。ここで適用されている原則は、望ましいものと望ましくないもの両方の、非常に

多くの物質が尿に排出されているということである。今度は、尿にグリホサートがあるこ

とが科学的に予期されていて珍しいことではないことを意味する。

「グリホサートはビールでも見つかっている。」

マスコミの報告によると、2016 年の初めに 14 種類のビールの残留グリホサートが調べ

られた。マスコミで発表された(最高)値を計算に用いると、毒性基準値に達するには一

人の人間が毎日 1000 リットルのビールを飲まなければならないだろう。農薬に使用される

活性物質の残留は法的に許容できる濃度で許可されており、予想されている。絶えず改良

されますます高感度になる分析方法によって、事実上どこにでも、1 フェムトグラム

(0.000000000000001 g)という低い濃度でさえ、物質を検出できるようになった。そのため、

ある物質や残留物が存在するからといって健康リスクがあるということを意味しない。ビ

ールのグリホサートについての報道では、実際の健康リスク、すなわちアルコール摂取の

リスクは見落とされていた。アルコールはより少ない量で発がん性と生殖毒性がある。

「なぜグリホサートを禁止しないのか?」あるいは「申請を取り消せ!」

BfR には農薬の活性物質の認可を決定する法的権限はない。これはグリホサートにもあ

てはまる。この理由の一つが、ドイツと EU に適用されているリスク評価とリスク管理の

法的区別である。BfR は物質の科学的リスク評価の任務を負っている。他方、認可あるい

は禁止の決定はリスク管理に分類されるため、国家政府や欧州委員会やドイツ消費者保

護・食品安全庁(BVL) 、ドイツ連邦食糧農業省(BMEL)などの担当機関が行っている。

「BfR の専門家は公平ではない。」

BfR の公平性と独立性は法に支えられている。BfR は独立した、科学的な、党派に属さ

ないリスク評価を行うために、そして消費者健康保護を強化するために、2002 年 11 月 1

日に設立された。BfR で働く人は全ての公務員、給与を与えられている雇用者は、ドイツ

の行政機関の法規定に従わなくてはならない。これには、例えば、ドイツの法と内務省の

施行規則には(連邦公務員法、行政法令及び他の規則法令 10 参照)、公平性、有効性、専

門的知識、腐敗防止の公的規制が含まれる。BfR の主な仕事は、食品、製品、化学物質の

健康リスクの可能性についてであり、政策決定を行う連邦大臣に助言を提供している。独

立性のため、企業からの資金提供やこの種の研究プロジェクトへの財政的関与はない。

「BfR のリスク評価を行ったのは実際には農業界(農薬製造業者)だった。」

欧州農薬規則によると、再承認申請のレビューのために、製造業者は最初に申請者自身

のリスク評価を添えてすべての法的に求められた文書と研究を所轄機関に提出しなければ

ならない。これはドイツ連邦議会と欧州議会が決定していた。ドイツの承認機関はドイツ

消費者保護・食品安全庁(BVL)である。委任された機関はその後、この提出書類と自身の調

査と知見をもとに独立的なリスク評価を準備する。ヒトの健康に関するリスクの科学的評

価は、BfR 独自の職員、すなわち公務員と給与を受け取っている雇用者が、企業や協会あ

るいは会社の代表のような人からの外部のアドバイスや支援を受けず、BfR だけで行う独

立した仕事である。BfR は特定の民間機関からどんな種類や形式の資金も受けず、彼らと

共同計画も行わない。

BfR は独立しており、専門的な取り組みに関連した民間企業、協会、特定の個人などの

あらゆる金銭上のあるいはそのほかの利益も受けない。BfR はリスク評価とコミュニケー

ションに関しては BMEL が発表したどんな方針にも縛られない。その結果、BfR は政治的

及び経済的両方で独立し、あらゆる政治的または事業者の利益を代弁しない。リスクは単

に科学的基準に基づいて評価される。

28.欧州委員会ニュース

European Commission - Daily News

Daily News 29 / 06 / 2016

欧州委員会(EC)(一部抜粋)

農薬:EU 加盟国がグリホサートの延長についての決定に責任をとらなかったため欧州委員

会は ECHA が意見を出すまで認可を延長する

Pesticides: after EU Member States fail to take responsibility for the decision on

glyphosate extension, Commission extends the approval until European Chemical

Agency issues its opinion

http://europa.eu/rapid/press-release_MEX-16-2357_en.htm

「食品安全情報」No.14 (2016)

委員会がグリホサートの再認可について表明された懸念に対処しようと繰り返し努力し

てきたにもかかわらず、加盟国は特定多数に達しないということを理由に決定への責任を

とろうとしなかった。結果として、EFSA と各国機関による非常にしっかりとした科学的評

価を考慮して、委員会はグリホサートの認可を 2017 年末まで期間を限定して延長した。

2017 年末までに欧州化学品庁(ECHA)が追加の意見を出す予定である。また同時に、委

員会は加盟国に対して EU 内でのグリホサートの使用条件に制限をかけることを提案して

いる。この条件には、グリホサート製品での補助剤(POE-tallowamine:ポリエトキシル

化獣脂アミン)の使用禁止、収穫前使用の監視強化や特定地域(公園、運動場)での使用

低減の義務化を含む。委員会は、加盟国がこれらの制限条件にさえ合意できないことを残

念に感じている。

*欧州委員会ファクトシート

FAQs:グリホサート

European Commission - Fact Sheet

FAQs: Glyphosate

Brussels, 29 June 2016

http://europa.eu/rapid/press-release_MEMO-16-2012_en.htm

(ECHA の意見が出るまでグリホサートの認可を延長するという決定の後、FAQ を更新)

29.グリホサートについて

Learn about glyphosate

August 2016

ニュージーランド EPA

http://www.epa.govt.nz/hazardous-substances/pop_hs_topics/glyphosate_learn/Pages/de

fault.aspx

「食品安全情報」No.17 (2016)

グリホサートは雑草管理のために広範に使用される除草剤であり、EPA が国内での使用

を認可している。

EPA が前ニュージーランド国立中毒センター長の毒性学者 Wayne Temple 博士に委託し

たグリホサートのレビュー報告書が発表された。このレビューでは IARC 報告書で考慮さ

れた試験だけでなく、IARC は考慮しなかったものの EFSA や米国 EPA、JMPR では評価

された他の試験についても考慮している。

結論として、グリホサートの発がん性に関する根拠のレビューでは、グリホサートに遺

伝毒性やヒト発がん性はありそうになく、発がん物質や変異原性物質と分類する必要はな

い。報告書および要約が本ウェブサイトよりダウンロード可能。

30.FIFRA Scientific Advisory Panel

科学助言委員会:グリホサートの発がん性

Carcinogenic Potential of Glyphosate

Last updated on September 15, 2016

米国環境保護庁(EPA)

https://www.epa.gov/sap/carcinogenic-potential-glyphosate

「食品安全情報」No.20 (2016)

2016 年 10 月 18~21 日開催の会議の告知

*会議用資料

Glyphosate Issue Paper:Evaluation of Carcinogenic Potential

EPA’s Office of Pesticide Programs

September 12, 2016

https://www.epa.gov/sites/production/files/2016-09/documents/glyphosate_issue_pape

r_evaluation_of_carcincogenic_potential.pdf

グリホサートの変異原性は否定、発がん性も否定した内容となっている。

分類としては「人発がん性の可能性はありそうにない」“not likely to be carcinogenic to

humans”

31.グリホサート:EFSA は生データを共有する

Glyphosate: EFSA to share raw data

29 September 2016

欧州食品安全機関(EFSA)

https://www.efsa.europa.eu/en/press/news/160929a

「食品安全情報」No.21 (2016)

EFSA は、最近の EU のグリホサート安全性評価に用いられた生データを公開性の高い

リスク評価の一環として発表する予定である。

32.規制上の立場:グリホサートの公式再検討のための根拠の検討

Regulatory position: consideration of the evidence for a formal reconsideration of

glyphosate

SEPTEMBER 2016

オーストラリア農薬・動物用医薬品局(APVMA)

http://apvma.gov.au/sites/default/files/publication/20701-glyphosate-regulatory-position

-report-final.pdf

「食品安全情報」No.22 (2016)

2015 年 7 月の IARC モノグラフ 112 の発表を受けて、グリホサートの再検討について検

討した。結論として公式に再検討を行う科学的根拠はない。APVMA は科学的な根拠の重

み付けによりグリホサートへの暴露はヒトへの発がんリスクはないと結論している。

33.国際がん研究機関(IARC)

グリホサートは ECHA により発がん性とは分類されない

Glyphosate not classified as a carcinogen by ECHA

15/03/2017

世界保健機関(WHO)

http://www.iarc.fr/

「食品安全情報」No.7 (2017)

IARC の評価は ECHA のレビューに影響されない。IARC は他の国や国際委員会の専門

性や方法論、結論にはコメントしない。

34.ECHA はグリホサートを発がん物質とは分類しない

Glyphosate not classified as a carcinogen by ECHA

Helsinki, 15 March 2017

欧州化学品庁(ECHA)

https://echa.europa.eu/-/glyphosate-not-classified-as-a-carcinogen-by-echa

「食品安全情報」No.7 (2017)

ECHA のリスク評価委員会(RAC)は、グリホサートを目に傷害性があり水棲生物に有

害であるという現在の統一分類を維持することに合意した。RAC は CLP 規則に準じて、入

手可能な科学的根拠はグリホサートを発がん物質、変異原性物質あるいは生殖毒性と分類

する基準に合致しないと結論した。

採択された意見は通常の編集チェックを経て欧州委員会に送られる。同時に ECHA のウ

ェブサイトでも公開する。

背景

グリホサートについての発表された研究の他に、委員会は企業が行った研究のオリジナ

ルの報告を全て入手できた。RAC は 2016 年の夏に行ったパブリックコメントで受けとっ

たものも含む全ての科学的データを評価した。

この分類は物質のハザードのみに基づくものである。暴露の可能性は考慮せず、従って暴

露リスクについても考慮しない。認可を更新するかどうかは暴露によるリスクも考慮され

る。

*参考:食品安全情報(化学物質)No. 14/ 2016(2016. 07. 06)

【EC】農薬:EU 加盟国がグリホサートの延長についての決定に責任をとらなかったた

め欧州委員会は ECHA が意見を出すまで認可を延長する

http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2016/foodinfo201613c.pdf

35.グリホサートと同時調整剤 POE 獣脂アミンを含む植物保護製品

Plant Protection Products Containing Glyphosate and the Co-Formulant POE-

Tallowamine

Issued: 17th March 2017

英国健康安全局(HSE)

http://www.hse.gov.uk/pesticides/news/glyphosate-poe-ppps.htm

「食品安全情報」No.7 (2017)

規則(EU) 2016/1313 では EU のグリホサート認可条件を改定し、POE 獣脂アミンを含ま

ないことを要求している。英国では 109 製品が認可されており、そのうち 99 は 2017 年 6

月 30 日までに販売認可が切れ、使用や貯蔵、廃棄については 2018 年 6 月 30 日までに切

れる。残り 10 製品はそれより後で切れる。

*99 製品リスト

http://www.hse.gov.uk/pesticides/resources/U/uk-glyphosate-products-with-poe-expir

y-30june17.pdf

36.FIFRA 科学助言委員会会合議事録と最終報告書:EPA のグリホサートの発がん性評

価に関して

FIFRA Scientific Advisory Panel Meeting Minutes and Final Report

No. 2017-01

米国環境保護庁(EPA)

A Set of Scientific Issues Being Considered by the Environmental Protection Agency

Regarding:EPA's Evaluation of the Carcinogenic Potential of Glyphosate

December 13-16, 2016

https://www.epa.gov/sites/production/files/2017-03/documents/december_13-16_2016_fi

nal_report_03162017.pdf

「食品安全情報」No.7 (2017)

結論として、グリホサートはヒト発がん性ではなさそう“not likely to be carcinogenic to

humans”だという結論を支持する。

37.APVMA はグリホサートを公式に再検討する理由はないことを発見

APVMA finds no grounds to place glyphosate under formal reconsideration

23 March 2017

オーストラリア農薬・動物用医薬品局(APVMA

http://apvma.gov.au/node/26636

「食品安全情報」No.7 (2017)

国際がん研究機関(IARC)が提示した懸念を受けて、APVMA はグリホサートの使用に

関連するヒト健康リスクの詳細評価を行い、完全再検討は必要ないと決定した。

APVMA は、保健省から委託された IARC モノグラフのレビュー、他国の規制機関や国

際専門家委員会によるリスク評価を含む根拠の重み付け評価を行った。

APVMA はオーストラリアでのグリホサートの使用はヒトがんリスクとはならず、グリ

ホサートを含む製品はラベルの指示に従って使えば安全であると結論した。グリホサート

の再検討をする科学的根拠はなく、APVMA は新しい情報を監視し続ける。

ヘルスカナダ、EFSA、ECHA、NZ EPA、US EPA、JMPR は全てグリホサートを最近

評価し、ヒトがんリスクとはならないと結論している。

38.要約:2015-2016 グリホサート検査

Executive Summary:Glyphosate Testing in 2015-2016

2017-04-11 カナダ食品検査庁(CFIA)

http://www.inspection.gc.ca/food/chemical-residues-microbiology/food-safety-testing-rep

orts/2017-04-13/executive-summary/eng/1491843712800/1491843713434

「食品安全情報」No.9 (2017)

化学ハザードは食品生産における意図的な使用から、もしくは環境、加工過程上、また

は自然毒の存在の偶発的な汚染によって食品に含まれる可能性がある。カナダ食品検査庁

(CFIA)は食品安全リスクを見つけ、食品供給がカナダの基準を満たしていることを確認

するために食品中の農薬を検査する。

CFIA は除草剤グリホサートの残留について、様々な輸入食品、国産食品 3,188 検体を検

査した。これらの製品中の残留濃度がどれくらいか確認し、検出された残留濃度がカナダ

のガイドラインを満たしていることを確認するために実施された。検査から得られた結果

はヘルスカナダの設定した基準値と比較された。

調査結果は、検査した検体の 70.3%に検出可能なグリホサートが含まれていないという

ことを示した。全検体のうちカナダのグリホサート基準を遵守している割合は 98.7%であ

った。果物、野菜または子ども用食品の検体はどれも基準値を超える残留濃度は含まれて

いないことがわかった。

違反データはヘルスカナダによって評価され、ヒトへの健康懸念は確認されなかった。

CFIA はカナダの食品供給の安全性を保証するためにこのよく使われる除草剤の存在を引

き続き監視していく予定である。

全レポート:科学による安全を守る:2015-2016 グリホサート検査

Safeguarding with Science:Glyphosate Testing in 2015-2016

CFIA – Science Branch Survey Report

2017-04-11

http://www.inspection.gc.ca/food/chemical-residues-microbiology/food-safety-testing-rep

orts/2017-04-13/executive-summary/glyphosate-testing/eng/1491846907641/149184690

7985

化学ハザードは食品生産上の意図的な使用(例:動物用医薬品、農薬、食品添加物)か

ら、または環境、加工過程上、もしくは自然毒の存在の偶発的な汚染によって食品に生じ

る可能性がある。ハザードの原因に関わらず、食品生産者、製造者及び輸入業者は製品が

食べて安全なものでありかつ適用可能なカナダの基準に準拠していることを保証しなけれ

ばならない。カナダ食品検査庁(CFIA)の優先事項はカナダの食品供給の保護により消費

者を守ることである。食品の農薬検査は食品安全のリスクをみつけ、食品供給が安全であ

ると保証するために CFIA が使用するツールの一つである。

<グリホサート検査>

目的と理由

グリホサートは雑草を除去する除草剤で、収穫前の乾燥穀物や豆類に使用されることも

ある。ヘルスカナダは様々な種類の穀物への使用を認めており、最大残留基準(MRL)デ

ータベースで検索可能な食品中の残留グリホサートの MRL を設定している。MRL は農薬

がラベル表記の指示通り使用される場合、食品中や付着したまま残っていると思われる、

ヒトへの健康に懸念はないであろうとされる残留農薬の量である。

これらの検査業務は以下を目的としている:

食品中の残留グリホサートの存在と濃度に関する情報の作成

カナダの基準遵守と供給されている食品の安全性の確認

検体採取

残留グリホサートの検査はCFIAの 2015年の食品サーベイランスプログラムに加えられ

た。2015~2016 年には国内および輸入食品について 3,188 検体を採集し、次の 3 つのプロ

グラムにおいて検査を実施した:

全国化学物質残留モニタリング計画(NCRMP)の一環として、生鮮及び加工した果物

及び野菜の 482 検体を検査

穀類(大麦、ソバ及びキヌア)、飲料、豆類、エンドウ豆、レンズ豆、ヒヨコ豆及び大

豆製品の 2,497 検体の小売店調査

2015~2016 子ども用食品プロジェクトの一環として、幼児用食品の 209 を超える検体

の小売店調査

限界

分析したサンプルや製品の数が少ないため、これらの結果を見る場合は気を付けなけれ

ばいけない。地域差、製品保存期間の影響、保存条件または自由市場における商品コスト

はこの調査では分析されない。検体は販売された状態で検査しており、食べる状態での食

品中グリホサート濃度は推定できない。

結果評価

残留グリホサートが食品に検出された場合、その結果はヘルスカナダが設定した MRL と

比較された。食品サンプルに見つかった濃度が MRL より高かったならば、情報がレビュー

され適切なフォローアップがなされ、製造者や輸入業者への通知、是正措置の要求、追加

のサンプリングの指示または製品リコールを含む可能性がある。

検体は以下の MRL に従ってグリホサートと代謝産物アミノメチルホスホン酸(AMPA)

の総量に基づいて評価された:

大麦 – 10 ppm

豆類 (ヒヨコ豆を含む) – 4 ppm

レンズ豆 – 4 ppm

エンドウ豆 – 5 ppm

大豆 – 20 ppm

小麦 (カムート小麦とスペルト小麦を含む) – 5 ppm

上記に含まれない製品、general MRL (gMRL) 0.1 ppm

結果

カナダの MRL に基づいた全体のこの調査の遵守率は 98.7%であった。果物及び野菜、

大豆製品または乳幼児用食品にはカナダの基準を超える残留物を含む検体は見つからなか

った。カナダの基準を超える残留物の濃度が検出された多くのサンプルは圧倒的に穀物に

関連したものであった。

以下の表は 2015~2016 年の CFIA によるグリホサート検査の結果をまとめたものであ

る:

プログラム 食品の種類 検査

検体数

残留グリホサート

の検出率(%)

残留グリホサート

の MRL 超過率(%)

全国化学物質残留

モニタリング計画

生鮮果物・野菜 317 7.3% 0%

加工果物・野菜 165 12.1% 0%

ターゲット検査 穀類製品 869 36.6% 3.9%

ジュース及びその

他の飲料

496 16.3% 0.2%

豆/エンドウ豆/レン

ズ豆製品

869 47.4% 0.6%

大豆製品 263 11.0% 0%

子ども用食品

プロジェクト

幼児用シリアル 82 31.7% 0%

幼児用食品 127 30.7% 0%

計 3,188 29.7% 1.3%

まとめ

2015~2016 年に CFIA は合計 3,188 件の食品検体のグリホサートを検査した。グリホサ

ートは検体の 29.7%に検出された。MRL を超える残留グリホサートは検体の 1.3%にしか

検出されなかった。このデータはヘルスカナダによって評価されヒトへの健康懸念は確認

されなかった。

下記の図は各プログラムにおいて検査した検体について、グリホサートが検出されなか

った割合、グリホサートが MRL 以下で検出された割合、グリホサートが MRL を超えて検

出された割合を示している。

(以下図略)

39.悪い雑草は高く育つ

Bad weeds grow tall

19.04.2017

ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)

http://www.bfr.bund.de/cm/349/bad-weeds-grow-tall-conversation.pdf

「食品安全情報」No.13 (2017)

農薬グリホサートをめぐる論争は何年にもわたり盛んである。研究、発がん性物質、モ

ンサント社についての会話である。

このインタビューの後、EFSA はモンサント論文や企業とオブザーバーからの影響に関し

て、一部の関係者が表した懸念に関する内部調査に従って声明を出すことにした。グリホ

サートとモンサント論文に関する EFSA の声明は EFSA のホームページ上で入手可能

(EFSA, 2017):

*EFSA statement addressing stakeholder concerns related to the EU assessment of

glyphosate and the “Monsanto papers” (23, May, 2017)

https://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/170523-efsa-statement-glyphosate.pdf

インタビュー:JAN HEIDTMANN

ミュンヘン-グリホサートは神の恵みという人もいるし、悪魔の仕業と呼ぶ人もいる。除

草剤が農業従事者の作業を楽にすることは疑いの余地がない。除草剤が種の絶滅に寄与し、

その結果、鳥や野生のハムスターの自然生息地を破壊するする恐れがあることも明白であ

る。とりわけヒトに関するグリホサートの影響について論争がある。世界保健機関のがん

研究機関である IARC は、グリホサートががんの原因となりうると述べている。EU の欧州

食品安全機関(EFSA)のような他の国際機関は、この物質を無害だと考えている。ドイツで

は、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)がグリホサートの評価に責任を持つ。BfR はその使

用にはリスクがないと考えている。Roland Solecki 氏は評価を行う「農薬の安全性」部門

の議長である。

SZ:グリホサートを飲みますか?

Roland Solecki 氏:通常殺虫剤を飲んだりしません。

けれど何百万もの人が飲んでいます。例えば、彼らが飲むビールはすべてグリホサートを

含んでいます。

確かに、あらゆる種類の食品に痕跡程度の微量のグリホサートを見つけられます。問題

はその量です。ビールの例にこだわると、有害となるグリホサート量に達するには、一度

に約 1,000 リットルのビールを飲む必要があります。けれどそれより前にアルコール中毒

で死んでしまいます。

グリホサートは米国モンサント社が 40 年前に最初に使用し、それ以来販売されています。

それなのに、なぜ未だにそれがヒトのがんの原因となりうるかどうかを確実に言えないの

ですか?

私達はこれを科学的に表明できるという意見です:この物質は、農業で適切に使用され

るなら、ヒトにがんのリスクはありません。これは米国、カナダ、オーストラリア、日本、

ニュージーランドの当局の意見でもあります。

にもかかわらず、この物質が欧州で認可され続けるべきかどうかに関して激しい異論があ

ります。

私達はグリホサートが販売されて以来、定期的に評価しています。これは科学技術の最

新状況を考慮に入れることが求められているからです。このローテーションはおよそ 10 年

ごとです。私達の知見は今日まで広く受け入れられています。

ではなぜこの 2 年間激しく議論されているのですか?

多くの理由が考えられます。当時、南米のグリホサートの使用について欧州にも報告が

届きました。私の意見ですが、かなり困難な状況下で広範に使用されたのではないでしょ

うか。例えば、欧州で禁止されている農薬が飛行機からグリホサートと一緒に噴霧されて

いました。原因はまだ確認されていませんが、この大量使用が奇形との関連に起因すると

もいわれました。同時にここ欧州で食品の分析手段の効率がますます良くなり、以前は見

つけられなかったごく少量のグリホサートを現在は検出できるようになりました。

グリホサートががんの原因となりうるかどうかは有名な科学者らの間でもかなり熱い争点

になっています。BfR とは異なり、IARC はグリホサートを「おそらく発がん性がある」と

考えています。IARC は、なにしろ、世界保健機関のがん研究機関です。

私は IARC の同僚を非常に尊敬しています。しかし同様に高く評価する 10 以上の国際機

関、世界保健機関の担当機関、国連の食品及び農業機関が、適切に使用すればグリホサー

トはがんの原因にならないという結論に達しています。そして 1 つの団体が、おそらく発

がん性があるといっているのです。

化学は明確な科学だと考えられている―では異なる評価の理由は何ですか?

私は 40 年間科学者です、そしていつでも異なる意見はあります。これは評価の過程で規

定された目的によるのです。IARC の任務は、赤身肉からヘアカラーまで、それががんの原

因となりうるかどうか、全ての物質の様態を調査することです。グリホサートの場合、IARC

はこの除草剤に関する入手可能な研究のいくつかだけを使用しました。IARC の同僚は調べ

たデータの詳細な評価を行ったのですが、このデータはグリホサートの既存の知見の一部

だけでした。

IARC の研究はそれゆえ価値がない。これはそういうケースですか?

IARC 研究の影響の一つは、科学の分野での標準慣行通り、私達が徹底的にそれを分析し、

自身の評価をもう一度批判的にレビューしているということです。さらに実施したのは、

企業の研究知見を一般にも公開すべきかどうか議論を開始したことで、必要な法的要求が

整っていれば、私達はそれを強く支持します。

現在グリホサートの継続承認を支持する特定の研究への批判もあります。米国モンサント

社が機関や科学者に影響を与え、自身でいくつかの研究論文を書いたといわれています。

モンサントと接触したことがありますか?

はい、モンサントから 3 通の電子メールの問い合わせを受けました。彼らは追加データ

を誰に送るべきかを知りたがっていました。私はデータが属する消費者保護連邦オフィス

を紹介しました。私達は企業と接触するありとあらゆる電子メールを開示しなければなら

ないのです。ちなみに、私達の評価で批判された、グリホサートの継続認可を支持すると

されるどんな研究も私達は使用しませんでした。

おそらく直接ではなかった。けれど、これらの研究は欧州食品安全機関(EFSA)の評価過程

に組み込まれていて、それゆえグリホサートは肯定的評価になっています。

私は BfR に関することしか言えません。受けとった研究は科学的妥当性を決めるために

考察しています。それが科学的基準を満たしていなければ使用しません。ところで、現在

議論されている数少ない研究の妥当性は低いのです。EFSA と加盟国の評価は主にオリジナ

ル研究と基本となる加工されていないデータに基づいています。現在企業が直接あるいは

間接的に資金提供をした科学的意見が、グリホサートの EU リスク評価に影響を与えた、

あるいはグリホサートの肯定的な評価をもたらしたというしっかりした兆候はありません。

けれど、信頼の欠如はまさに、企業が研究を委託し監督しているという事実、そしてあな

たと欧州機関が評価の基本としてこれらの研究を使用するということから生じるのです。

はい、実際に米国、欧州、ドイツでは、車を販売したい人はその安全性の証拠を提出し

なければならないと国会が規定しているのは事実です。同様に薬を販売したい人もそれが

安全だということを証明しなければならない。もし誰かがグリホサートのような除草剤を

販売したければ、その時彼らは安全性の証明も提出しなければならない。私が前に述べた

ように、その結果はその後厳密にレビューされるのです。これらの研究には何百万ものコ

ストがかかるので、この規定はコストもどうにかしなければなりません。民間企業が行う

研究に納税者が支払うなら、私は人々の言うことを聞きたいと思っています。

しかしながら、手続きがとても偏っているように思われます:グリホサートの使用を支持

する機関は全て企業が提出した研究についての意見を基準として用いています―IARC の

ような独立した情報源は不適切だと断言されています。

これらの研究は明確に定義された公的規則に従ってレビューされています。この工程に

は互いに独立した団体で働く何百もの科学者が含まれています。すべてが企業の従業員名

簿に載っている人ではありません。それらは失う名誉を持つ高い評価のある専門家なので

す。私はあらゆる形のグリホサートを支持する機関を知りません;彼らがしたのは科学的

評価です。これらの評価全ては企業が提供した研究や文献の総合調査に基づいています。

私達は IARC を不適切だとみなしたのではありません:IARC の評価も企業が資金提供した

研究に基づいています。ですが BfR とは異なり、IARC はオリジナル研究を直接利用した

のではなく、公表文献を通して間接的に利用しただけです。

公的機関が研究を委託し監視し、企業がそれに支払わなければならないという方が良くな

いですか?

何年もの間、この問題について激しい政治討論が行われてきましたが、有効成分の評価

の規則を作るのは議員なのです。私達は何の影響力も持たないのです。科学者と評価者で

ある私にとって唯一重要なことは、もとになる研究とデータの科学的品質であり、情報源

ではないのです。

それは科学的にはもっともでしょう。でも人々がその結果としてグリホサートに心配して

いることは理解できますか?

確かに理解できます。私が言えることは、人々を守るための科学的見解から私達ができ

ること全てをするということです。植物保護製品の有効成分は、その他多くの化学製品よ

り大変詳しく検査されています。家庭の化学物質は、毎日皮膚に使用している化粧品でさ

え十分に検査されていません。

「家庭の化学物質は、化粧品でさえ十分に検査されていません。」

生物学者Roland Solecki氏は現在3年間ドイツ連邦リスク評価研究所の「農薬の安全性」

部門の議長を務めている。彼はこの部門はヒトの健康を守るための科学的見解からできる

こと全てを行うと述べている。

40.グリホサートのリスク評価に関して新しい発見はない

No new findings on the risk assessment of glyphosate

BfR Communication No 008/2017 of 30 May 2017

ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)

http://www.bfr.bund.de/cm/349/no-new-findings-on-the-risk-assessment-of-glyphosate.p

df

「食品安全情報」No.13 (2017)

欧州委員会委員長 Jean-Claude Juncker 氏への公開質問状のために、BfR は、グリホサ

ートのリスク評価の新しい知見とされることについての意見を発表する。Christopher

Portier 氏は、ラットとマウスで実施した餌投与試験の腫瘍結果が欧州のリスク評価で考慮

されていないといわれていることを報告するため、日曜に委員会の議長に公開質問状を出

した。

欧州化学庁(ECHA)と欧州食品安全機関(EFSA)による入手可能な科学的データ及び

論文に基づき、知見が見落とされているという主張は正しくない。言及された全てのオリ

ジナル研究は、その信頼性と妥当性について欧州機関の評価で十分検討された。

BfR は、Christopher Portier 氏による計算は科学論文として公開できるように科学雑誌

に発表するよう薦める。

Christopher Portier 氏はグリホサートの再評価に関して、EFSA と ECHA への評価報告

書のために、ドイツでの準備作業完了後に彼の統計分析を行った。BfR は、欧州化学庁と

バーゼル(CH)で開催されたスイス毒性学会年会 2016 で彼が行った発表から、彼の行った統

計的計算のことを知っている。残念ながら、Christopher Portier が行った個々の分析を含

む調査結果に一般人はまだアクセスできず、科学雑誌でピアレビューや出版もされていな

い。

Christopher Portier 氏は 2016 年 11 月のヒヤリングや 2016 年 7 月のパブリックコメン

ト募集で彼の予測と統計上の結論を ECHA に示す機会を得た。それらは ECHA の専門家

によって議論され、投票で検討された。非政府組織 HEAL の代表として彼が行った評価と

議論で、そしてプレゼンテーションの発表でも、Christopher Portier 氏の意図を含んでい

ることを透明性のある方法で ECHA は示した。全ての統計分析を考慮した技術的ガイドラ

インで推奨された「証拠の重みづけ」(WoE)アプローチを用いて、独自の統計学者と

Christopher Portier 氏の分析を組み入れ、発がん性の可能性についての他の証拠などと共

に、ECHA はグリホサートの発がん性あるいは遺伝毒性の影響の兆候はないという結論に

至った。ECHA の投票の総合的な理由は ECHA のホームページ上で発表されている。

Portier 氏の文書で言及された全てのオリジナル研究は、信頼性と妥当性について欧州機

関の評価で検討された。OECD の技術的ガイドラインよると、統計的有意差は基本的に生

物学的意義と同一だとみなすべきではない。入手可能な動物実験を個別に評価するのでは

なく、むしろ統一したガイドラインのもとで総合的に検討する WoE アプローチを採択した

方が良い。技術的ガイドラインで推奨された WoE アプローチの説明と方法論の違いについ

ての EFSA の研究はこちらで発表されている:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28374158.

毒性及び発がん性試験についての OECD ガイドライン(OECD ガイドライン文書 116)

は、データの評価のための統計的方法の選択は、計画段階、すなわち試験開始前に作成す

べきだと強調している。検査ガイドライン(451 から 453)を合わせて規定するのに加えて、

2012 年以降のこの OECD ガイドライン文書 116 は、試験施設による発がん性研究の実行

と評価のための重要なガイドも提供している。これに加えて、単に統計上の結果に加える

非常に多くの他の証拠を含むため、これらの文書は WoE アプローチを用いた発がん性研究

を評価する機関への重要な土台も形成する。これらには以下が含まれている:

(a) 腫瘍性及び非腫瘍性病変の、妥当性を区別した陽性と陰性の両方の結果

(b) 発がん性影響の評価にとって妥当な研究デザイン及び発がん性作用メカニズムの

評価

(c) 標的臓器への全ての有害影響及びその他全身影響

(d) 有害影響と発がん性作用メカニズムの間の生物学的妥当性と因果関係

(e) 一つの研究やいくつかの比較可能なデザインの研究での、結果パターンと統一性に

関するデータの質と頑健性

(f) 過剰な全体的毒性による二次的影響の可能性を考慮した、発がん性試験で推奨され

る最大用量に関する限度量の概念と国際的な助言

ドイツ当局の評価は、EC 規則 No. 1272/2008 の法で定める原則や分類と表示に関する項

目 3.6 で規定された基準に従って作られており、発がん性の分類で他の化学物質の評価でも

なされたように、他の独立した統計学者と協力して、全ての提示された統計上の検討を考

慮している独立した ECHA の評価の基礎の一つである。

連邦政府は Die Linke グループによる議会の質問への答えとしても発がん性試験の評価

に関する声明を出した(18/12284):

http://dip21.bundestag.de/dip21/btd/18/124/1812489.pdf

BfR ホームページ上のグリホサートの話題に関する追加情報

http://www.bfr.bund.de/en/a-z_index/glyphosate-193962.html

41.グリホサート:EFSA と ECHA が Christopher Portier に反応する

Glyphosate: EFSA and ECHA respond to Christopher Portier

6 July 2017

ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)

http://www.bfr.bund.de/cm/349/glyphosate-efsa-and-echa-respond-to-christopher-portier

.pdf

「食品安全情報」No.15 (2017)

NGOのコンサルタントChristopher Portierが 2017年 5月に欧州委員会の委員長宛に、

マウスとラットの試験が欧州のリスク評価で考慮されていないと主張する公開レターを書

いていた。これに対し、EU 委員会を代表して EFSA 及び ECHA が本日回答を公表した。

EFSA 及び ECHA は、明確にその主張は虚偽(false)であると述べている。いずれの研究

も考慮されている。

*EFSA の反応は以下

http://www.efsa.europa.eu/en/topics/topic/glyphosate

42.グリホサート

Glyphosate

欧州委員会(EC)

https://ec.europa.eu/food/plant/pesticides/glyphosate_en

「食品安全情報」No.17 (2017)

EU におけるグリホサートの現状をまとめたウェブサイトを公開。

グリホサートに関する事実

EU におけるグリホサートの現状

EU では 2002 年に農薬として初めて認可された。それ以前は各国規制に応じた認可だっ

た。2012~2015 年に認可更新のための包括的科学評価が EFSA により実施され、「グリホ

サートはヒトへの発がんハザードとなることはありそうにない」と結論された。2016 年上

旬に EC は加盟国に対しグリホサートの認可更新の提案をしたが、その提案について賛否と

もに十分な支持は得られなかった。IARC と EFSA の意見が異なることから、認可更新の

前に欧州化学品庁(ECHA)にハザード評価を依頼するのが適当であるとされた。2016 年

6 月 29 日に委員会は認可更新の投票を呼びかけたが決定には至らず、ECHA の結論受領後

6 ヶ月間又は少なくとも 2017 年 12 月 31 日までという限定で認可期間の延長を採択した。

ECHA が 2017 年 6 月 15 日に意見を EC へ提出したため、グリホサートの現行の認可は

2017 年 12 月 15 日までが期限となる。

ECHA の結論

入手可能な情報に基づき、グリホサートをヒトでの発がんに結びつける根拠はない。グ

リホサートを遺伝子傷害性(変異原性)又は生殖障害性を起こす物質として分類すべきで

ない。

EC の加盟国への現在の提案

2017 年 5 月 16 日、EC は加盟国とグリホサートの認可更新の可能性について議論を再開

することで合意した。更新は 10 年間を提案している。2017 年 7 月 20 日、EC と加盟国と

の議論が再開し、投票前の秋に議論の最終化を目指す。

EC による提案には、地下水・陸生動物、対象でない植物の保護を考慮すること、使用区

域など加盟国が評価や政策決定の際に確実にすべきこと、以前に補助剤と使用されていた

POE-tallowamine(ポリエトキシル化獣脂アミン)が 2016 年に禁止になったこと、が記さ

れている。2017 年 7 月 19~20 日、植物・動物・食品・飼料に関する常任理事会の会合が

開催された。

https://ec.europa.eu/food/sites/food/files/plant/docs/pesticides_phyphosate_paff_meeti

ng_sum_20170719.pdf

(加盟国からは、更新には賛同するが期間についてはまだ立場を決定できない、更新期

間を 15 年間ではなく 10 年間にする理由がない、認可更新には反対、など様々な意見が

出ている)

43.オーストラリアにおけるグリホサートの規制

Regulation of Glyphosate in Australia

3 August 2017

オーストラリア農薬・動物用医薬品局(APVMA)

https://apvma.gov.au/node/27261

「食品安全情報」No.17 (2017)

グリホサートは世界で最も広く使われている除草剤である。農業や家庭用、商業用に使

われている。2016 年に IARC がグリホサートを「おそらくヒト発がん性」と分類した報告

を発表した。この分類はリスク評価というよりハザード評価に基づく。APVMA はこの分

類によりオーストラリアでのグリホサートの安全性、登録、使用に関していくつかの懸念

が提示されていることを承知している。

我々は最近 IARC 報告やその他の関連科学文献の包括的レビューを行い、現時点ではグ

リホサートの登録を再検討する科学的理由はないと結論した。さらなる情報は以下のウェ

ブサイトを参照。

*Glyphosate

https://apvma.gov.au/node/13891

APVMA は評価を完了し、オーストラリアでのグリホサートの使用はヒトへのがんリ

スクがないと結論している。従って、グリホサートを含む製品はラベルの指示通りに使

用すれば安全である。オーストラリアではグリホサートを含む約 500 製品が登録されて

いる。

*******************************************************************************

最終更新: 2017 年 9 月

国立医薬品食品衛生研究所安全情報部

食品安全情報ページ(http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/index.html)