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Hoji (1985)*- Chapter Four

2012/06/11

理論言語学研究I

Hoji (1985)*- Chapter Four-設計図

21. B成分

21.1. Lexicon

21.2. D-structure

21.3. S-structure

21.4. LF

32. 検算

32.1. numerationが{QPガ, NPヲ, ...}の場合

32.1.1. (13a) のS-structureの場合

42.1.2. (13b)のS-structureの場合

42.2. numerationが{QPヲ, NPガ, ...}の場合

52.2.1. (29a) のS-structureの場合

52.2.2. (29b) のS-structureの場合

62.3. numerationが{QPガ, QPヲ, ...}の場合

62.3.1. (39a) のS-structureの場合

72.3.2. (39b)のS-structureの場合

82.4. numerationが{QPニ, QPヲ, ...}の場合

92.4.1. (55a) のS-structureの場合

92.4.2. (55b)のS-structureの場合

102.5. numerationが{WHガ, QPヲ, ...}の場合

112.5.1. (65a) のS-structureの場合

112.5.2. (65b) のS-structureの場合

122.6. numerationが{WHヲ, QPガ, ...}の場合

122.6.1. (76a) のS-structureの場合

132.6.2. (76b) のS-structureの場合

143. empty pronominalのbound variableの解釈ができない場合を考察する

143.1. objectの内部にWHがあってSの内部にQPがある場合を考察するための前提

143.2. objectの内部にWHがあってSの内部にQPがある場合

143.2.1. WH句を含むNPに「一体」があるとbound variableの解釈が容認されなくなる

153.2.2. WH句を含む前置したNPにeiがあるとbound variableの解釈が容認されなくなる

174. 先行研究

174.1. Kuroda (1970)

184.2. Kuno (1973)

195. appendix

195.1. coreference

195.1.1. 顕在化している「彼」とbound variableの解釈が生じない

205.1.2. empty pronominalのcoreference

215.2. AdvP

215.3. 中間trace

225.4. subject NPの前置ができない

1. B成分

1.1. Lexicon

(1)QP

ジョンも/ジョンもビルも/[NP[S 誰が招待した] 人も/ジョンやビル/ジョンとビル/ジョンかビル/ジョンさえ…

(2)WH

誰/何…

(3)"bound variable"の解釈を表す表現

自分/empty pronominal…

1.2. D-structure

(4)a.ガとヲを選択するVのときには、まずヲ格名詞句がMergeし、次にガ格名詞句がMergeする。

b.ガと二とヲを選択するVのときには、まずヲ格名詞句がVにMergeし、次に二格名詞句がMergeし、ガ格名詞句がMergeする。

1.3. S-structure

(5)格助詞付名詞句のadjunctionにおける制約

a.ヲ格名詞句はSへadjoinすることができる。

b.ガ格名詞句はadjunctionが許されない。

c.二格名詞句はVPへのadjunctionが許されない。

1.4. LF

(6)QR

LFでQPはSに必ずadjoinする。

(7)WHのQR

LFでWHはS'(もしくはCOMP)にadjoinする。

(8)

中間traceは削除してもよい。

(9)

at LF *QPi QPj tj ti where each member c-commands the member to its right

[Hoji 1985:234, (76)]

(10)

QPのscopeはLFでのc-command domainである。

(11)bound variableの解釈

S-structureでQPが(3)をc-commandすると、bound variableの解釈をすることができる。

2. 検算

2.1. numerationが{QPガ, NPヲ, ...}の場合

 (4a)より、

(12)のD-structureになり、(5a)より、(13a)のS-structureになる可能性(→section 2.1.1.)と、(13b)のS-structureになる可能性(→section 2.1.2.)がある。

(12)

(13)a.

b.

2.1.1. (13a) のS-structureの場合

 (13a)のS-structureの場合、(6)のQRによって、(14)のLF表示になる。

(14)

すると、(11)より、(3)がQPのc-command domainにあるNPに含まれていれば、bound variableの解釈が可能であるはずである。事実、(15)-(22)のように可能である。

(15)

OKQP が 自分/e を V

(16)a.ジョンもi自分iの車を買った

b.ジョンもi [NP[S ei [VP 銀座でej 買った]] 指輪j]を捨てた [Hoji 1985:215, (7)]

(17)a.ジョンもビルもi 自分i の車を買った

b.ジョンもビルもi [NP[S ei [VP 銀座でej 買った]] 指輪j]を捨てた [Hoji 1985:216, (8)]

(18)a.[NP[S 誰が ej 招待した] 人j]もi 自分i の車を買った

b.[NP[S 誰が ej 招待した] 人j]もi[NP[S ei [VP 銀座で ej 買った]] 指輪j]を捨てた

[Hoji 1985:216, (9)]

(19)a.ジョンやビルiが 自分i の車を買った

b.ジョンやビルiが [NP[S ei [VP 銀座でej 買った]] 指輪j]を捨てた [Hoji 1985:216, (10)]

(20)a.ジョンとビルiが 自分i の車を買った

b.ジョンとビルiが [NP[S ei [VP 銀座で ej 買った]] 指輪j]を捨てた [Hoji 1985:216, (11)]

(21)a.ジョンかビルiが自分i の車を買った (らしい)

b.ジョンかビルiが [NP[S ei [VP銀座で ej 買った]]指輪j]を捨てた (らしい)

[Hoji 1985:216, (12)]

(22)a.ジョンさえi(が) 自分i の車を買った

b.ジョンさえi(が) [NP[S ei [VP 銀座で ej 買った]] 指輪j]を捨てた [Hoji 1985:216, (13)]

(23)a.ジョンとビルiが[VP [NP[S ei ej かくまっていた] 男j]を裏切った](こと)

b.山田先生や鈴木先生iが [VP 今でも[NP[S ei 昔 ej 教えた] 学生j]を覚えている/嫌っている] (こと)

c.ビルさえi [VP [NP[S ei ジョンから ej あずかっていた/借りていた] 指輪j]をなくした] (こと)

d.どのクラスの子供もi [VP [NP[S ei ej 壊した/汚した]窓]を直している/きれいにしている] (こと)

e.ジョンもビルもi [VP 今でも [NP[S ei 昔 ej 教えた] 学生i]を覚えている/嫌っている] (こと)

[Hoji 1985:220, (29)]

2.1.2. (13b)のS-structureの場合

 また、(13b)のS-structureの場合、(6)のQRによって、(24)のLF表示になる。

(24)

すると、(11)より、「.. eci ... を QPが」で、(3)がQPのc-command domainに含まれていれば、bound variableの解釈が可能であるはずである。事実、(26)のように可能である。

(25)

OK ... eci ... を QPが V

[Hoji 1985:224, (37)]

(26)(16)-(22)の(b)の目的語を前置して作った(25b)の構造の具体例

a.[S [NP[S ei [VP銀座でej 買った]] 指輪j] をk [Sジョンもi [VP tk 捨てた]]]

b.[S [NP[S ei [VP 銀座で ej 買った]] 指輪j] をk[S ジョンもビルもi [VP tk 捨てた]]]

c.[S [NP[S ei [VP 銀座で ej 買った]] 指輪j] をk[S [NP[S 誰が ej 招待した] 人j]もi [VP tk 捨てた]]]

d.[S [NP[S ei [VP銀座で ej買った]] 指輪j] をk [Sジョンやビルiが [VP tk 捨てた]]]

e.[S [NP[S ei [VP銀座で ej買った]] 指輪j] をk [Sジョンとビルiが [VP tk 捨てた]]]

f.[S [NP[S ei [VP銀座で ej買った]] 指輪j] をk [Sジョンかビルiが [VP tk 捨てた]]] (らしい)

g.[S [NP[S ei [VP銀座で ej買った]] 指輪j] をk [Sジョンさえi(が) [VP tk 捨てた]]]

[Hoji 1985:224, (38)]

(27)a.[S [NP[S ei e 一目見た] 人]をk [S 誰もが [VP tk 好きになった]]] (こと)

b.[S [NP[S e ei ぶった] 人]をk [S 誰iが [VP tk うったえた]] の[Hoji 1985:250, (126)]

2.2. numerationが{QPヲ, NPガ, ...}の場合

 (4a)より、(28)のD-structureになり、(5a)より、(29a)のS-structureになる可能性(→section 2.2.1.)と、(29b)のS-structureになる可能性(→section 2.2.2.)がある。

(28)

(29)a.

b.

2.2.1. (29a) のS-structureの場合

 (29a)のS-structureの場合、(6)のQRによって、(30)のLF表示になる。

(30)

すると、(11)より、variableがQPのc-command domainに含まれていても、bound variableの解釈ができないはず。

確かに:

(31)

*...e...が QPを V

(32)a.*[NP[S ei ej かくまっていた] 男j] が [VPジョンとビルiを 裏切った]

b.*?[NP[S ei 昔 ej 教えた] 学生j]が [VP 今でも山田先生や鈴木先生iを覚えている/慕っている] (こと)

c.*?[NP[S ei ジョンから ej あずかっていた/かりていた]学生i] が[VP あの指輪さえj(を)なくした] (こと)

d.??[NP[S ei ej 壊した/汚した] 子供i] が [VP どの教室の窓もj直している/きれいにしている] (こと)

e.*[NP[S ei 昔 ej 教えた] 先生i]が[VP 今でも ジョンもビルもj 覚えている/嫌っている] (こと)

[Hoji 1985:219, (28)]

2.2.2. (29b) のS-structureの場合

 また、(29b)のS-structureの場合、(6)のQRによって、のLF表示になる。

(33)

すると、(11)より、variableがQPのc-command domainに含まれていれば、bound variableの解釈が可能であるはずである。事実、可能である。

(34)

OK... ec ...が QPを V

(35)

*[NP[S ei 一目 ej 見た] 人i]が誰jを好きになったの [Hoji 1985:221, (30)]

(36)

[S誰をj [S [NP[S ei 一目 ej 見た] 人i]が [VP tj 好きになった]]] の[Hoji 1985:221, (31)]

(37)a.[Sジョンとビルをi [S [NP[S ei ej かくまっていた] 男j]が[VP ti 裏切った]]] (こと)

b.[S山田先生や鈴木先生をi [S [NP[S ei 昔 ej 教えた]学生j]が [VP 今でも ti 覚えている/慕っている]]] (こと)

c.[S あの指輪さえj [S [NP[S ei ジョンから ej あずかっていた/借りていた]学生i]が [VP tj なくした]]] (こと)

d.[S どの教室の窓もj [S [NP[S ei ej 壊した/汚した] 子供i]が [VP tj 直している/きれいにしている]]] (こと)

e.[S ジョンもビルもj [S [NP[S ei 昔 ej 教えた] 先生i]が[VP 今でも tj 覚えている/嫌っている]]] (こと)

[Hoji 1985:221, (32)]

2.3. numerationが{QPガ, QPヲ, ...}の場合

 (4a)により、(38)のdeep structureになる。

(38)

(5ab)により、(39a)のS-structureになる可能性(→section 2.3.1.)と、(39b)のS-structureになる可能性(→section 2.3.2.)がある。

(39)a.

b.

2.3.1. (39a) のS-structureの場合

 (6)によりQPがQRするので、(39a)は(40)のLF表示になる。

(40)a.OK

b.*

ただし、「QPj QPi ti tj」という順になっている(40b)の表示は、(9)の制約により非文法的になるため、(40a)の表示のみ文法的である。つまり、(39a)の語順の場合に、(40a)の「QPが>QPを」という解釈は可能だが、(40b)の「QPが<QPを」という解釈は不可能になるはずである。

(41)a.[Sジョンやビルが [VP誰かを招待した]]

(OKジョンやビル>誰か、*ジョンやビル<誰か)

b.[S誰かが [VPジョンやビルを招待した]]

(OKジョンやビル>誰か、OKジョンやビル<誰か)

[Hoji 1985:225, (39)]

(42)a.[Sジョンかビルが [VP 酒もビールも飲んだ]]

b.[Sジョンもビルも [VP 酒かビールを飲んだ]]

[Hoji 1985:225, (40)]

(43)a.[Sジョンかビルが [VP酒とビールも飲んだ]]

b.[SJジョンとビルが [VP酒かビールを飲んだ]]

[Hoji 1985:226, (42)]

(44)a.[Sジョンかビルが [VP酒とビールも飲んだ]]

b.[SJジョンとビルが [VP酒かビールを飲んだ]]

[Hoji 1985:226, (42)]

(45)a.[NP[S誰が [VP ei 教えた]]学生i]も [VP何かを持ってきた]]

b.[S誰かが [VP [NP[S誰が [VP ei 書いた]] レポートi]も持ってきた][Hoji 1985:226, (44)]

(46)a.誰もが誰かを責めた(誰も>誰か)

b.誰かが誰もを責めた(誰か>誰も)

[Hoji 1985:226, (45)]

(47)a.[S [NPジョンとビル]がそれぞれ[VP誰かを招待した]]

b.[S誰かが [VP [NPジョンとビル]をそれぞれ招待した]] [Hoji 1985:226, (46)]

2.3.2. (39b)のS-structureの場合

 また、(39b)のS-structureの場合、(6)のQRによって、(48)のLF表示になる。(8)で中間traceは削除してもよいので、中間traceが残る場合((48ab))と残らない場合((48cd))があるあり、4通りの表示がありうる。

(48)a.OK

b.*

c.*

d.OK

しかし、(9)の制約によって、(48bc)の表示が非文法的になる。その結果、このS-structureの場合は、「QPが>QPを」と「QPが<QPを」の両方の解釈が可能になるはずである。

(49)a.QPが QPを V (OKQPが>QPを、*QPが<QPを)

b.QPを QPが V (OKQPが>QPを、OKQPが<QPを) [cf. Hoji 1985:228, (51)]

(50)

(Cf. (41a).)

[S 誰かをi [S [NPジョンやビル]が [VP ti 招待した]]] [Hoji 1985:230, (61)]

(51)

(Cf. (43a).)

[S [NP酒とビール]をi [S [NPジョンかビル]が [VP ti 飲んだ]]] (らしい)

[Hoji 1985:230, (62)]

(52)

(Cf. (45a).)

[S 何かをi [S [NP[S誰が [VP el 教えた]] 学生l]も[VP ti 持ってきた]]]

[Hoji 1985:231, (63)]

(53)

(Cf. (47a).)

[S誰かをi [Sジョンとビルがそれぞれ [VP ti 招待した]]] [Hoji 1985:231, (64)]

2.4. numerationが{QPニ, QPヲ, ...}の場合

 (4b)より、(54)のD-structureになり、(5c)より、(55a)のS-structureになる可能性(→section 2.1.1.)と、(55b)のS-structureになる可能性(→section 2.1.2.)がある。

(54)

(55)a.

b.

2.4.1. (55a) のS-structureの場合

 LFでは、(6)でQPがQRするので、(55a)からは(56ab)の表示なる。

(56)a.

b.

(56)の場合、(9)の制約により、(56b)の表示が非文法的になるため、(56a)の表示のみが残る。その結果、「QPに QPを V」の語順では「QPに>QPを」の解釈は可能だが、「*QPを<QPに」の解釈は不可能になるはずである。事実、(57)、(58)のようになる。

(57)ニヲ

a.ジョンが誰もに [NPビルかメアリー] を紹介した (こと)(誰も>ビルかメアリー)

b.ジョンが三人の女に二人の男を紹介した(こと)(三人の女>二人の男)

[Hoji 1985:241, (98)]

(58)a.ジョンが[VP[NPスーザンやメアリー] に[V'[NPバラかワイン] を送った]] (こと)

b.ジョンが [VP [NPスーザンかメアリー] に [V'[NPバラやワイン]を送った]]

c.ジョンが[VP [NPスーザンとメアリー] に [V'何かをあげた]] (こと)

d.ジョンが [VP誰かに [V'[NPバラとワイン]を送った]] (こと)

2.4.2. (55b)のS-structureの場合

 また、(55b)のS-structureの場合、(6)のQRによって、(59)のLF表示になる。(8)で中間traceが残る場合と((59ab))残らない場合が((59cd))があるので、4通りの表示がありうる。

(59)a.OK

b.*

c.*

d.OK

しかし、(9)の制約によって、(59bc)の表示が非文法的になる。その結果、「QPを QPに V」の語順では、「QPに>QPを」「QPに<QPを」の両方の解釈が可能になるはずである。事実、(61)、(62)のとおりである。

(60)a.QPに QPを V (OKQPに>QPを、*QPを<QPに)

b.QPを QPに V (OKQPに>QPを、OKQPに<QPを)[Hoji 1985:242, (103)]

(61)(57)のヲニ

a.ジョンが [NPビルかメアリー]を誰かに紹介した (こと)

b.ジョンが二人の男を三人の女に紹介した(こと) [Hoji 1985:241, (99)]

(62)a.∀ x, x=person, ∃ y, y∊{Bill, Mary}, John introduced y to x((61a)の意味)

b.∃ y, y∊{Bill, Mary}, ∀ x, x=person, John introduced y to x((61b)の意味)

[Hoji 1985:241, (100)]

(63)a.ジョンが [VP[NP バラかワイン] を[VP [NPスーザンやメアリー] に [V' ti 送った]]] (こと)

[Hoji 1985:243, (104)]

b.ジョンが [VP [NPバラやワイン]を [VP [NPスーザンかメアリー] に [V' ti 送った]] (こと)

[Hoji 1985:245, (105)]

c.ジョンが [VP 何かを [VP[NPスーザンとメアリー] に[V' ti あげた]]] (こと)

[Hoji 1985:243, (106)]

d.ジョンが [VP[NPバラとワイン]を [VP誰かに [V' ti 送った]] (こと)[Hoji 1985:243, (107)]

2.5. numerationが{WHガ, QPヲ, ...}の場合

 (4a)より、(64)のD-structureになり、(5ab)より、(65a)のS-structureになる可能性(→section 2.5.1.)と、(65b)のS-structureになる可能性(→section 2.5.2.)がある。

(64)

(65)a.

b.

2.5.1. (65a) のS-structureの場合

 (65a)のS-structureの場合、(6)のQRによって、(66)のLF表示になる。

(66)a.OK

b.*

(66)の場合、(9)の制約により、(66b)の表示が非文法的になる。また、(66b)は(7)によって、WH句がS'にadjoinするため、QPjがSにadjoinできない点でも非文法的になる。その結果、(56a)の表示のみが残り、「WHが QPを V」の語順では「WHが>QPを」の解釈は可能だが、「* WHが<QPを」の解釈は不可能になるはずである。

(67)

[S 誰が [VP [NP酒かビール]を飲みました]]か 誰が>酒かビール

[Hoji 1985:244, (110 a)]

(68)

[S誰が [VP何かを飲みました]] か

[Hoji 1985:248, (121a)]

(69)

[S 誰が [VP 誰もを招待した]] か

[Hoji 1985:248, (122 a)]

2.5.2. (65b) のS-structureの場合

 また、(65b)のS-structureの場合、(6)のQRによって、(70)のLF表示になる。(8)で中間traceが残る場合と((59ab))残らない場合が((59cd))があるので、4通りの表示がありうる。

(70)a.*

b.*

c.OK

d.*

しかし、(9)の制約((70ad))と、QPがS'にadjoinしないこと((70bd))から、(70abd)が非文法的になる。その結果、「QPをWHがV」の語順では、「WHが>QPを」の解釈のみが可能であるはずである。

(71)a.WHiが QPjを V(OKWHが>QPを、* WHが<QPを)

b.QPjをWHiがV(OKWHが>QPを、* WHが<QPを)

(72)

[S [NP酒かビール]をi [S 誰が [VP ti 飲みました]] か [Hoji 1985:244, (110 a)]

(73)

[S何かを [S 誰が [VP ti飲みました]]] か

[Hoji 1985:248, (121b)]

(74)

[S 誰もを [S 誰が [VP ti 招待した]]] か

[Hoji 1985:248, (122 b)]

2.6. numerationが{WHヲ, QPガ, ...}の場合

 (4a)より、(75)のD-structureになり、(5ab)より、(76a)のS-structureになる可能性(→section 2.6.1.)と、(76b)のS-structureになる可能性(→section 2.6.2.)がある。

(75)

(76)a.

b.

2.6.1. (76a) のS-structureの場合

 (76a) のS-structureの場合、(6)でQPがQRするので、(77ab)のLF表示になる。

(77)a.*

b.*

(77a)は、QPがS'にadjoinしているため、(77b)は、(9)の制約に違反するため、それぞれ非文法的になる。その結果、「QPがWHをV」の語順では「QPが>WHを」、「QPが<WHを」のどちらの解釈も容認されないはずである。

(78)

*[S [NPジョンかビル] が [VP 何を飲みました]] か [Hoji 1985:244, (110)]

(79)

??[S誰かが [VP 何を飲みました]] か

[Hoji 1985:248, (121c)]

(80)

??[S 誰もが [VP 何を買いました]] か

[Hoji 1985:248, (122 c)]

「それぞれ」をつけると容認性がはっきりとする。

(81)

*[S 誰もがそれぞれ [VP 何を買いました]] か

[Hoji 1985:248, (123 a)]

(82)

*[S ジョンやメアリーがそれぞれ [VP 何を買いました]] か [Hoji 1985:249, (124 a)]

2.6.2. (76b) のS-structureの場合

 また、(76b)のS-structureの場合、(83)のLF表示が生じうる。(8)で中間traceが残る場合と((83ab))残らない場合が((83cd))があるので、4通りの表示がありうる。

(83)a.OK

b.*

c.*

d.*

しかし、(9)の制約((83bc))と、QPがS'にadjoinしないこと((83bd))から、(83abd)が非文法的になる。その結果、「WHをQPがV」の語順では、「WHが>QPを」の解釈のみが可能で、「WHが<QPを」の解釈は不可能なはずである。

(84)a.QPがWHをV(*QPが>WHを、*QPが<WHを)

b.WHをQPがV(OKWHが>QPを、*WHが<QPを)

(85)

[S何を [S[NPジョンかビル]が [VP ti 飲みました]]] か [Hoji 1985:247, (120b)]

(86)

[S何を [S 誰かが [VP ti飲みました]]] か

[Hoji 1985:248, (121d)]

(87)

[S何をi [S 誰もが [VP ti 買いました]]] か

[Hoji 1985:248, (122 d)]

(88)

[S 何をi [S 誰もがそれぞれ [VP ti 買いました]]] か [Hoji 1985:248, (12 3 b)]

(89)

[S 何をi [S ジョンかメアリーがそれぞれ [VP ti 買いました]]] か

[Hoji 1985:249, (124 b)]

3. empty pronominalのbound variableの解釈ができない場合を考察する

3.1. objectの内部にWHがあってSの内部にQPがある場合を考察するための前提

 日本語において、(90)は容認されない。(i)QPがWHをc-commandできないため。(ii)表層構造でc-commandするには、LFでquantifierがWHをc-commandしなければならないため。

(90)

[SQPが [VPWHを V]]

[Hoji 1985:249, (125)]

 (91)の例は、(92)のhisのように、eiがbound variableとして解釈されうる。

(91) a.[S [NP[S ei e 一目見た] 人]をk [S 誰もが [VP tk 好きになった]]] (こと)

b.[S [NP[S e ei ぶった] 人]をk [S 誰iが [VP tk うったえた]] の[Hoji 1985:250, (126)]

(92)a.Which of hisi own books did every authori recommend? (Engdahl; 1980, 190)

(Answer: His last book.)

b.Which friend of hisi father did everyonei attack?

(Answer: A linguist friend of his father (as opposed to a musicianfriend of his father))

[Hoji 1985:250, (127)]

LFで(91)はeiが「誰も」のc-command domain内にいると考えることができる。つまり、(91)は(93)のLFになるはずである。

(93)

[S/S' QPi/WHi [S [NP ... ei ...]を [ .... ]]] [Hoji 1985:251, (128)]

3.2. objectの内部にWHがあってSの内部にQPがある場合

3.2.1. WH句を含むNPに「一体」があるとbound variableの解釈が容認されなくなる

 この構造を前提にして、(94)のような、objectの内部にWHがあって、Sの内部にQPがある場合を考える。

(94)S-structure

[S [NP WH ...ei...]をj [S QPiが [VP tj V]]] [Hoji 1985:251, (129)]

bound variableの解釈をするためには、QPがWHをc-commandしていなければならないので、LFは(95)のようになっている。

(95)

at LF

[X QPがi[Y [NP WH ...ei...]をj [ ..... ]][Hoji 1985:251, (130)]

XもYもSにならなければならないが、WHを含むNP自身が、COMPかS'に移動する。(96)でsubjacencyがみられないということは、WHがLFで移動していないということである。つまり、日本語の「何」や「誰」はD-linkableな性質を持つ。

(96)

メアリーは [NP[Sジョンに何をあげた] 人]に会ったの [Hoji 1985:251, (131)]

このことは、「一体」をwh句に付けた(97)で見ることができる。

(97)

(Pesetsky's (43a))

*メアリーは [NP[S ジョンに 一体 何をあげた] 人]に会ったの

[Hoji 1985:251, (132)]

Pesetsky (1984)は、主節を含む広いscopeを取るために節を超えたいが、subjacencyによって非文法的になってしまうとしている。このように考えると、(98)もNPから移動しなけらばならず、subjacencyに違反するはずである。

(98)

君は [S'[S ジョンが [VP 一体 [NP [S 誰が書いた] 本]を読んだ]] か] 知っていますか

[Hoji 1985:252, (133)]

「一体」はNPの外にあると考えるべきで、(99)のようにNP内にあるとsubjacencyにより容認されなくなる。

(99)

[NP[S一体 誰が書いた]本]

[Hoji 1985:252, (134)]

(100)のような例でWH句を含むNP全体がLF movementをすることが示されたが、(100)は(101)のdonkey sentenceと呼ばれる現象に似ている。

(100)

[NP[S ei 何jを書いた] 人i]が [VP ej 出版した] の [Hoji 1985:252, (135)]

(101)では、itが主節名詞句への移動を起こしている。

(101)

Everyone who owns a donkeyi beats iti.

[Hoji 1985:252, (136)]

ということは、(100)では、bound variable readingのためにejが「何」を含む主節NPへ移動しているのである。parasitic gapの例でも、(100)の確証を得ることができる。

(102)

[S 何をj [S [NP[S ei ej 書いた] 人i]が [VP tj出版した]]] の

このように、(100)や(102)でejのbound variableの解釈ができないのは、Hasegawa (1985)が指摘する統語的要因が関わっているからである。この分析にのっとれば、「何」に「一体」を付けると、ejのbound variableの解釈ができなくなることが予測される。事実、(103)のように、subjacency違反になる。

(103)

*[NP[S ei 一体何jを書いた] 人i]が [VP ej 出版した] の[Hoji 1985:253, (138)]

一見似ているが、(103)と(104)は異なっていて、(104)は容認される。(104)は「一体」がNP全体についているためである。

(104)

一体 [NP[S ei 何jを書いた] 人i]が [VP ej 出版した] の [Hoji 1985:253, (139)]

3.2.2. WH句を含む前置したNPにeiがあるとbound variableの解釈が容認されなくなる

 1.4の例をwhを使って考えてみる。

(105)a.ジョンかビルiが [NP[S ei NYで買った]人形]をなくした(こと)

b.[NP ei NYで買った] 人形] をj [S ジョンかビルiが [VP tj なくした]] (こと)

[Hoji 1985:255, (140)]

(106)

*[S [NP[S どこで ei 買った] 人形]をj [S ジョンかビルiが[VP tj なくした]]の

[Hoji 1985:255, (141)]

(107)

[NP[S 誰が NYで 買った] 人形]をj [S ジョンかビルが[VP tj なくした]] の

[Hoji 1985:255, (142)]

(106)のeiでbound variableの解釈ができないのは、LFでQPがWHをc-commandできないためである。すなわち、empty empty pronominalがWH句内にあると(106)のようにbound variableの解釈ができないのである。

(108)a.[S WHをi [S QPが [VP ti V]]]

b.[S QPをi [S WHが [VP ti V]]]

[Hoji 1985:255, (143)]

(109)は、(108b)が許されないことの裏づけとなる。

(109)a.*?[Sジョンかビルをi [S[NP[S ej どこで人目 ei 見た]人j]が[VP ti 好きになった]]]の

b.*?[S山田先生や鈴木先生をi [S [NP[S ei どこで昔 ej 教えた] 学生j]が[VP今でも ti 覚えている]] の

[Hoji 1985:256, (144)]

(109b)は、eiがQPにc-commandされていないので、非文法的になる。

(110)

[S' [NP ei どこで] [S [NP Y 先生やS 先生]iが [S ... [Hoji 1985:256, (145)]

「何」がeiを含んでいなければ容認される。

(111)a.[Sジョンかビルiを [S [NP[S ej どこで酒を飲んでいた] 人j]が [VP ti 好きになった]]] の

b.[S山田先生や鈴木先生をi [S [NP[S どこでジョンが昔 ej 教えた] 学生j]が [VP今でも ti 覚えている]]] の

[Hoji 1985:256, (146)]

(112)のように、ヲ格複合名詞句にWHが含まれない限りeiはNPに生じうる。

(112)a.[Sジョンかビルをi [S [NP[S ej 銀座で人目 ei 見た] 人j]が [VP ti 好きになった]]] の

b.[S山田先生や鈴木先生をi [S [NP[S ei 大阪で昔 ti 教えた] 学生j] [VP今でも ti 覚えている]]] の

[Hoji 1985:257, (147)]

つまり、前置した句にeiとWHがなく、QPがWHをc-commandできる位置にないと非文法的になる。

(113)a.[S[NP (*WH) ...ei...]をj [S QPiが [VP tj ]]]

b.[S QPをi [S [NP (*WH) ...ei...]が [VP ti ]]]

(114)a.[S[NP WH ..(*ei.)..]をj [S QPiが [VP tj ]]]

b.[S QPをi [S [NP WH ..(*ei)...]が [VP ti ]]]

[Hoji 1985:257, (149)]

 (115)のように、WH句の中にQPとbound variableの解釈を生じさせるようなものを含むことはできないのである。

(115)

QPが WHを V

[Hoji 1985:257, (150)]

たとえば、(116)はSの内部にejが含まれており、容認されない文である。ただし、(116b)で「ジョンかビル」グループとして捉えてejとの間でcoreferenceが成り立つ可能性はある。

(116)a.*ジョンかビルiが [NP[S ei どこで ej買った] 人形j]をなくしたの

b.*?ジョンやビルiが(それぞれ) [NP[S ei どこで [VP ej ぶった] 男]を 訴えたの

[Hoji 1985:258, (151)]

(116)のWHをreferencial phraseに変えると、(117)のように容認されるようになる。

(117)a.[NPジョンかビル]iが [NP[S ei 銀座で ej 買った] 人形j]をなくしたの

b.[NPジョンやビル]iが (それぞれ) [NP[S ei 銀座で[VP ej ぶった] 男j]を訴えたの

[Hoji 1985:258, (152)]

しかし、(114)と違い、eiをWH句を含むNPからなくすと、(118)のように容認されなくなる。

(118)a.*ジョンかビルが [NP[S 誰が 銀座で買った] 人形]をなくしたの

b.*ジョンやビルが (それぞれ) [NP[S 銀座で誰をぶった] 男]を訴えたの

[Hoji 1985:259, (153)]

このように、(115)は表層構造のQP間でのc-command関係とQRの仮定によって除外されるのである。

4. 先行研究

4.1. Kuroda (1970)

 Kuroda (1970)は、quantifierの表層語順がscope解釈に影響を与えるとした。たとえば、(119)と(120)は語順を変えると解釈に違いがある。Kuroda (1970)はこれを(121)のように一般化した。

(119)

(=Kuroda's (126), p.136)

(この家の) 誰かが (この部屋の) 全ての本を読んだ。 [Hoji 1985:227, (47)]

解釈:誰か一人がすべての本を読んだ

(120)

(Kuroda's (131), p.137)

(この家の) 全ての本を (この部屋の) 誰かが読んだ。 [Hoji 1985:227, (48)]

解釈1誰か一人がすべての本を読んだ

解釈2すべての本に対して誰か読んだ人がいる

(121)Kuroda (1970)のgeneralization

If a predicate corresponds to a sentence frame with the "preferred" word order, the semantic order of quantifiers is given by their linear order; if a predicate corresponds to a sentence frame with "inverted" word order, the semantic order of quantifiers is ambiguous.

(Kuroda;1970, 138) [Hoji 1985:227, (49)]

もし、predicateが望ましい語順と文の構造が一致したら、Qの意味は線形語順によって決められる。もし、predicateが倒置された語順と一致したら、そのQの意味は多義的になる。

たとえば、(122)の日本語の「望ましい」語順であれば、Subject QPが広い解釈になる。つまり、(123)のようなスコープの関係になっている。

(122)

NPが NPを V(Subject QP>Object QP) [cf. Hoji 1985:228, (50)]

(123)a.QPが QPを V(Subject QP>Object QP)

b.QPを QPが V(Subject QP<Object QP) [cf. Hoji 1985:228, (51)]

4.2. Kuno (1973)

 Kuno (1973)はquantifierの解釈について、(124)のように分析した。(124a)は基本的にKuroda (1970)の一般化と同じである。

(124)Kuno (1973)のgeneralization

Kuno's Rules for Quantifier Interpretation (for Japanese)

a.Rule 1. If a simple sentence contains two quantifiers Q1 and Q2 in that order in the basic word order representation, assign to Q1 "the same Q1" interpretation, and to Q2 the "different Q2 for each member of Q1" interpretation.

もし単文が、基本的な語順である場合に、二つのquantifier、Q1・Q2を含むのなら、Q1をグループとしての解釈を与えよ。そして、Q2には、メンバーとしての解釈を与えよ。

b.Rule 2. If Q1-Q2 reverses [obtains H.H.] its word order because of the preposing of Q1, assign "the same Q2, the same Q1" interpretation.

もしQ1とQ2がQ1の前置によって語順を転換するなら、Q2のグループ、そしてQ1のグループという解釈を与えよ。

c.Rule 3. If Q1-Q2 reverses [obtains H.H.] its word order because of the postposing of Q2, retain interpretation that obtained before word order changes.[Kuno (1973, 384)]

もし、Q1とQ2がQ2の後置によって語順を転換するなら、語順を転換する前の解釈を保持せよ。

[Hoji 1985:228, (52)]

 まず、Rule1について考察する。

(125)

(Kuno's (21), p. 360)

a.4人の少年が3人の少女を招待した 4人の少年>3人の少女

b.3人の少女が4人の少年に招待された 3人の少女>4人の少年

[Hoji 1985:228, (53)]

(126)(125)の解釈(それぞれ2通り持つ)

(Cf. Kuno's (22), p. 360.)

a.Each of the same four boys has invited three (possibly) different girls. (4 boys, and minimum 3, maximum 12 girls involved)

b.Each of the three girls has been invited by four (possibly) different boys. (minimum 4, maximum 12 boys, and 3 girls involved.)

[Hoji 1985:228, (54)]

Rule1はKuroda (1970)で観察されたことと同じ結論である。

 次に、Rule2を(127)で考察してみる。Kuno (1973)は、(127)には多義性がなく、(128)の解釈のみあるとしている。

(127)

(Kuno's (23), p.361)

三人の少女を四人の少年が招待したことがある [Hoji 1985:229, (55)]

(128)

(Kuno's (22a))

Each of the same four boys has invited each of the same three girls. (4 boys and 3 girls involved)

[Hoji 1985:229, (56)]

ところが、Rule2には問題点がある。

問題点1:(127)にもKuroda (1970)の(120)のようなスコープによる解釈の多義性がある。

問題点2:Rule2は、グループもしくはそれぞれの QPのことを述べていて、「AかB」のようなグループの読み方、もしくは、特定する読み方ができないquantifierをRule2で捉えることができない。

 (129)と(130)がその証拠である。

(129)(131ab)両方の解釈が可能

酒かビールをジョンもビルも飲んだ (らしい)

[Hoji 1985:229, (57)]

(130)(131b)のみの解釈が可能

(=(42b))

ジョンもビルも酒かビールを飲んだ (らしい)

[Hoji 1985:229, (58)]

(131)a.∃ x, x∊{sake, beer}, ∀ y, y∊{John, Bill}, y drank x

b.∀ y, y∊{John, Bill}, ∃ x, x∊{sake, beer}, y drank x [Hoji 1985:230, (59)]

5. appendix

 ここで、May (1977)に基づいて、日本語のquantifier について(10)の仮定をする。May (1977)によれば、(132)は(133)の二つのLF表示を持っている。

(132)

[Ssomeone [VPloves everyone]]

[Hoji 1985:231, (66)]

(133)a.[Ssomeonei [Severyonej [S ti [VP loves tj]]]]

b.[Severyonej [Ssomeonei [S ti [VP loves tj]]]]

[Hoji 1985:231, (67)]

5.1. coreference

5.1.1. 顕在化している「彼」とbound variableの解釈が生じない

 (134)のように、「誰も」と「誰」は顕在化している「彼」とbound variableの解釈が生じない。

(134)a.誰iが [NP[S ei [VP 銀座で ej 買った]] 指輪j]を捨てたの

b.*誰iが [NP[S 彼iが [VP 銀座で ej 買った]] 指輪j]を捨てたの

[Hoji 1985:217, (14)]

この現象は(135)でも観察できる。(135)では、「ジョンも」と「彼」にbound variableの解釈が生じない。一方で、(16)では、eiなので、bound variableの解釈が生じる。

(135)

*ジョンもi [NP[S 彼iが [VP銀座で ej 買った]] 指輪j]を捨てたの

(16)b.ジョンもi [NP[S ei [VP 銀座でej 買った]] 指輪j]を捨てた [Hoji 1985:215, (7b)]

ちなみに、「彼」はジョンとのcoreferenceは可能である。

(136)

ジョンiも [NP[S彼iが [VP 銀座で ej 買った]] 指輪j]を捨てたの

[Hoji 1985:217, (16)]

(135)で意図された「彼」の解釈と(136)の「彼」の解釈の違いは英語の(137ab)の違いと同様である。

(137)a.[Only John]i loves hisi mother.

b.[Only Johni] loves hisi mother.

[Hoji 1985:217, (17)]

(138)(137a)の解釈

[No one but John]i loves hisi(own) mother.

[Hoji 1985:217, (18)]

(139)(137b)の解釈

Johni's mother is loved by no one else but Johni. [Hoji 1985:217, (19)]

 QPは、empty pronominalと「彼」に対して、bound variableの解釈で同じコントラストを示す。例えば、(140)-(145)はeiが「彼」に置き換えられると解釈ができなくなる。

(140)

*ジョンもビルもi [NP[S 彼iが [VP 銀座で ej 買った]] 指輪j] を捨てた

[Hoji 1985:218, (20)]

(141)

*?[NP[S 誰が ej 招待した] 人j]もi[NP[S 彼iが [VP銀座で ek 買った]] 指輪k] を捨てた

[Hoji 1985:218, (21)]

(142)

*ジョンやビルiが [NP[S 彼iが [VP銀座で ej 買った]] 指輪j] を捨てた

[Hoji 1985:218, (22)]

(143)

*ジョンとビル iが [NP[S 彼iが [VP 銀座で ej 買った]] 指輪j] を捨てた

[Hoji 1985:218, (23)]

(144)

*ジョンかビルiが [NP[S 彼iが [VP銀座で ej 買った]] 指輪j] を捨てた

[Hoji 1985:218, (24)]

(145)

*ジョンさえi(が) [NP[S 彼iが [VP 銀座で ej 買った]] 指輪j] を捨てた

[Hoji 1985:218, (25)]

5.1.2. empty pronominalのcoreference

 (146)は主節の名詞句とempty pronominalのcoreferenceが可能である。

(146)a.[NP[S' ei ej かくまっていた] 男j]が [VP ジョンiを裏切った] (こと)

b.[NP[S' ei 昔 ej 教えた] 学生j]が[VP 今でも山田先生iを覚えている/慕っている] (こと)

c.[NP[S' ei ジョンからej あずかっていた/かりていた]学生i] が[VP その本jをなくした] (こと)

d.[NP[S' ei ej 壊した/汚した] 子供i]が [VP その窓jを直している/きれいにしている] (こと)

e.[NP[S' ei 昔 ej 教えた] 先生i]が [VP 今でもその学生jを覚えている/嫌っている(こと)

[Hoji 1985:219, (26)]

 確かに、(148)は(147)のような「ジョンとビル」とeiのcoreferenceの解釈は可能である。

(147)

The man/men that theyi were empty pronominaltecting betrayed John and Billi.

[Hoji 1985:223, (33)]

(148)

*[NP[S ei ej かくまっていた] 男j] が[VPジョンとビルiをそれぞれ裏切った] (こと)

[Hoji 1985:223, (34)]

5.2. AdvP

(149)-(150)に多義性がない。

(149)a.ジョンが日曜日か土曜日に駅前や公園でギターを弾いている(こと)

b.ジョンが駅前や公園で日曜日か土曜日にギターを弾いている(こと)

[Hoji 1985:233, (72)]

(150)a.ジョンが日曜日や土曜日に駅前か公園でギターを弾いている(こと)

b.ジョンが駅前か公園で日曜日や土曜日にギターを弾いている(こと)

[Hoji 1985:233, (73)]

(151)(149)のcleft((149)の解釈)

a.[Sジョンが駅前や公園でギターを弾いている]のは日曜日か土曜日(に)だ

b.[Sジョンが日曜日か土曜日にギターを弾いている]のは駅前や公園(で)だ

[Hoji 1985:233, (74)]

(152)(150)のcleft((150)の解釈)

a.[Sジョンが駅前か公園でギターを弾いている]のは日曜日や土曜日(に)だ

b.[Sジョンが日曜日や土曜日(に)ギターを弾いている]のは駅前か公園(で)だ

[Hoji 1985:234, (75)]

(149)-(150)は語順を入れ替えてもscopeの広さを入れ替えることはできず、解釈に多義性がないようである。つまりこれらの観察から得られることは、表層語順、つまり、表層構造のc-command関係がscopeの解釈を決めるということである。

5.3. 中間trace

 (123b)の構造について考える。(123b)の表層構造は(153)のようになると考えられる。

(153)

[S QPをi [S QPが [VP ti V]]]

Its logically possible LF representations should then be as in (154).

[Hoji 1985:236, (85)]

(154)a.[S QPをi [S QPjが [S ti [S tj [VP ti V]]]

b.[S QPjが [S QPをi [S ti [S tj [VP ti V]]]

[Hoji 1985:236, (86)]

(123b)は、(154)のLFがありうるが、(154a)は文法的でも、(154b)は(9)によって非文法的になると予想される。しかし、実際には、(123)には多義性がある。そこで、実際には、LFでQPガがQPヲをc-commandしていると考えたい。一つの可能性としては、(154b)の中間traceをカウントしないという手がある。そこで、道すがらLasnik and Saito (1984)を見つつ、中間traceがopionallyに残されると仮定しても妥当そうであると考える。

 このように仮定すると、(123b)は(155)のようになり、(9)に違反することなくQPガがQPヲをc-commandしうる。そのため、(123b)では、(155)のLFが文法的であり、多義性が生じる。

(155)(123b)のLF

[S QPjが [S QPをi [S __ [S tj [VP ti V]]]

[Hoji 1985:237, (87)]

(156)

QPを QPが V

[Hoji 1985:237, (88)]

5.4. subject NPの前置ができない

 (157)が予想される表層構造の表示でないことを示す理由が二つある。

(157)

[ QPi [ QP [ ti ...]]]

[Hoji 1985:238, (91)]

しかし、まず、前置されたであろうものがsubject NPだということ。そして、Subject NPが移動しないと仮定する独立の理由がある。根拠を簡単に挙げる。ガ格NPがadjanct化しない。

 Saito (1984)は、(158a)のヲ格表示がoptionallyで、(158b)のガ格表示がobligatllyであることから、(158a)の「何を」は項位置にあり抽象格をもらい、(158b)の「誰が」は非項位置にあり構造格をもらう考えた。

(158)a.誰が何(を)食べたの

b.誰*(が)何を食べたの

[Hoji 1985:238, (92)]

「誰が」は統語操作でadjoinされ、(159)によって格付与される。

(159)

Variables must have Case.

[Hoji 1985:238, (93)]

 このSaito (1984)の議論は、基数詞が遊離した場合も説明する。

(160)a.酒を学生が三本飲んだ

b.*学生が酒を三人飲んだ

[Hoji 1985:238, (94)]

基数詞はsubject NPとではなく、object NPと連結しているのである。(160a)が容認されるのは、(161)のようにobject NPがtiを残してadjoinしているからである。一方で、(160b)が容認されないのは、(162)のようなsubject NPの移動は構造的にできないからである。つまり、もしsubject NP が前置できないとしたら、(157)のような表示はできないのである。

(161)

[S 酒をi [S 学生が [VP ti 三本飲んだ]]]

(162)

*[S 学生が [S 酒をj [S ti 三人 [VP tj 飲んだ]]]]

* Hoji, Hajime (1985) _Logical Form Constraints and Configurational Structures in Japanese_, Doctoral dissertation, University of Washington, chapter 4.

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