lbc/hpv 検査併用...

4
1. HPV 検査 子宮頸がん検診の受診歴があるにも関わらず浸潤がんが発見される ということは、みなさまも経験されたことがあるのではないかと思 います。自治医科大学でもこのような症例がしばしば経験されます ので、分析をしてみました。 過去4年間に自治医科大学で診断・治療された子宮頸がん(浸潤が ん)は128症例あり、そのうち18症例(Ib期以上)は過去3年以内 に細胞診検査の受診歴がありました。うち10例(56%)が腺癌でし た。従って、細胞診検査だけでは浸潤がんであっても見逃されること があり、特に腺癌でその傾向が強いことが明らかになりました。 HPV検査はすでに10年ほど前からWHOより「一次スクリーニング として子宮頸がんの発生と死亡率を減少させるであろう」との見解 が示されており、欧米ではすでに子宮頸がん検診にHPV検査が取入 れられています。HPV検査は細胞診に比べて特異度は若干劣るもの の、CIN2以上の検出感度は優るため、子宮頸がん検診のゴールド スタンダードである細胞診に加えて新たな子宮頸がん検診法となる と考えられます。 本邦においては、行政検診でHPV検査を取入れている自治体はまだ 10%ほどですが、今後の普及が期待されます。 LBC/HPV 検査併用 子宮頸がん検診 座長 齋藤 先生 札幌医科大学医学部産婦人科学講座 教授 演者 鈴木 光明 先生     新百合ヶ丘総合病院がんセンター センター長 日本産婦人科医会 常務理事 栃木県HPV-DNA検査併用検診推進委員会 委員長 LBC/HPV検査の併用検診に関しましては、海外を中心に エビデンスが出てきています。鈴木光明先生は、栃木県で 先進的に併用検診を取入れ、さまざまなデータを出し、 日本での併用検診をリードしてこられました。また、自治 医科大学産婦人科での主任教授、子宮がんのオンコロジ ーでも様々な要職を経られ、併用検診に関しては、重要 な研究者の1人でいらっしゃいます。その研究成果を踏ま え、HPV併用検診、およびLBC検診に関する知見をご紹介 いただきます。 鈴木 光明 先生(左)と齋藤 先生(右) 1. HPV 検査 2. LBC (液状化細胞診) 3. LBC)細胞診 / HPV 検査併用検診 4. 小山地区 LBC / HPV 検査併用検診モデル事業 5. これからの子宮頸がん検診 子宮頸がん症例のがん検診(細胞診)歴 検診歴(細胞診)が有るにも関わらず、 浸潤癌(Ib1期以上)が 18もみられた。 細胞診による子宮頸がん検診の感度は必ずしも十分ではない。 とくに腺癌が見逃されやすい傾向がある。 森澤、鈴木他、日本臨床細胞学会誌51: 164-168, 2012 全浸潤癌 128症例) 検診歴 18症例) 検診歴 110症例) 0 20 40 60 80 100% 80% 20% 44% 56% 85% 15% *過去3年間における細胞診による検診歴 扁平上皮癌  腺癌   組織型 ステージ分類 Ib1 (8) Ib1 (7) IIb (2) IIIb (1) 腺癌(10例) 扁平上皮癌(8例) 23回日本がん検診・診断学会総会・学術講演会 24回日本婦人科がん検診学会総会・学術講演会 ランチョンセミナー 講演録 共催:23回日本がん検診・診断学会総会・学術講演会 24回日本婦人科がん検診学会総会・学術講演会 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社 日時 2015822日(土)12:40~13:40 会場 ホテルさっぽろ芸文館

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Page 1: LBC/HPV 検査併用 子宮頸がん検診...LBC法においても直接塗抹法(0.28%)を凌駕したと報告されてい ます(図4)。LBCはCIN2以上の検出感度を

1. HPV 検査

子宮頸がん検診の受診歴があるにも関わらず浸潤がんが発見される

ということは、みなさまも経験されたことがあるのではないかと思

います。自治医科大学でもこのような症例がしばしば経験されます

ので、分析をしてみました。

過去4年間に自治医科大学で診断・治療された子宮頸がん(浸潤が

ん)は128症例あり、そのうち18症例(Ib期以上)は過去3年以内

に細胞診検査の受診歴がありました。うち10例(56%)が腺癌でし

た。従って、細胞診検査だけでは浸潤がんであっても見逃されること

があり、特に腺癌でその傾向が強いことが明らかになりました。

HPV検査はすでに10年ほど前からWHOより「一次スクリーニング

として子宮頸がんの発生と死亡率を減少させるであろう」との見解

が示されており、欧米ではすでに子宮頸がん検診にHPV検査が取入

れられています。HPV検査は細胞診に比べて特異度は若干劣るもの

の、CIN2以上の検出感度は優るため、子宮頸がん検診のゴールド

スタンダードである細胞診に加えて新たな子宮頸がん検診法となる

と考えられます。

本邦においては、行政検診でHPV検査を取入れている自治体はまだ

10%ほどですが、今後の普及が期待されます。

LBC/HPV検査併用 子宮頸がん検診

座長 齋藤 豪 先生 

札幌医科大学医学部産婦人科学講座 教授

演者 鈴木 光明 先生    新百合ヶ丘総合病院がんセンター センター長

日本産婦人科医会 常務理事

栃木県HPV-DNA検査併用検診推進委員会 委員長

LBC/HPV検査の併用検診に関しましては、海外を中心に

エビデンスが出てきています。鈴木光明先生は、栃木県で

先進的に併用検診を取入れ、さまざまなデータを出し、

日本での併用検診をリードしてこられました。また、自治

医科大学産婦人科での主任教授、子宮がんのオンコロジ

ーでも様々な要職を経られ、併用検診に関しては、重要

な研究者の1人でいらっしゃいます。その研究成果を踏ま

え、HPV併用検診、およびLBC検診に関する知見をご紹介

いただきます。鈴木 光明 先生(左)と齋藤 豪 先生(右)

1. HPV 検査

2. LBC(液状化細胞診)

3. (LBC)細胞診 / HPV 検査併用検診

4. 小山地区 LBC / HPV 検査併用検診モデル事業

5. これからの子宮頸がん検診

子宮頸がん症例のがん検診(細胞診)歴

● 検診歴(細胞診)が有るにも関わらず、浸潤癌(Ib1期以上)が 18例もみられた。  細胞診による子宮頸がん検診の感度は必ずしも十分ではない。

● とくに腺癌が見逃されやすい傾向がある。

森澤、鈴木他、日本臨床細胞学会誌51: 164-168, 2012

全浸潤癌(128症例)

検診歴*有(18症例)

検診歴*無(110症例)

0 20 40 60 80 100%

80% 20%

44% 56%

85% 15%

*過去3年間における細胞診による検診歴

扁平上皮癌  腺癌  

組織型 ステージ分類

Ib1 (8)

Ib1 (7)

IIb (2)

IIIb (1)

腺癌(10例)

扁平上皮癌(8例)

第23回日本がん検診・診断学会総会・学術講演会第24回日本婦人科がん検診学会総会・学術講演会 ランチョンセミナー 講演録

共催: 第23回日本がん検診・診断学会総会・学術講演会

第24回日本婦人科がん検診学会総会・学術講演会

日本ベクトン・ディッキンソン株式会社

日時 2015年8月22日(土)12:40~13:40

会場 ホテルさっぽろ芸文館

Page 2: LBC/HPV 検査併用 子宮頸がん検診...LBC法においても直接塗抹法(0.28%)を凌駕したと報告されてい ます(図4)。LBCはCIN2以上の検出感度を

2

図4

図3

図2

図1

2. LBC(液状化細胞診)

従来から行われている直接塗抹による細胞診では、採取する医師や採

取器具等によってまちまちな標本になり、細胞数が少ないもの、固定

不良、あるいは出血や炎症のため見づらい標本となる場合がありまし

た。これらがサンプリングエラーや見落としの原因となります。

一方、LBC標本(BD シュアパス™ 標本)は密度勾配法で作製するた

め、採取医師による差がなく、平面的できれいな標本ができること

が特徴です。塗抹不良や乾燥はほぼなく、不適正標本が明らかに減

少することが多くの論文で証明されています。すなわち、不適正標

本が極めて少なく、標準化された検体が得られるということがLBCの

最大のメリットです。

また、現段階でのメタアナリシスの結果では、直接塗抹法と感度・

特異度とも有意差はないとされていますが、今後データが蓄積され

ていけば、LBC法によりHSIL以上の高度病変の検出率が上昇する可能

性があると思われます。

LBC法のもう一つの利点は、残液を利用してHPV検査などの分子遺伝

学的な解析(プラットフォーム化)が可能になることが挙げられま

す。さらに、LBC標本は検鏡範囲が狭くなるため検鏡時間を短縮で

き、効率化が図れます。

LBCに関する論文を紹介します。Beermanら(2009年)は、オラン

ダにおいて子宮頸がんスクリーニングプログラムに登録している約

86,000人を対象に直接塗抹法とLBC法の比較を行いました。

研究デザインオランダにおける大規模検証事業(8万件以上に及ぶスクリーニングプログラム)

Beerman H. et al. Gynecologic Oncology 2009; 112:572-576.

調査対象:1997年7月~2002年6月

一般開業医に対して、直接塗抹法またはLBC法(BD SurePath)のどちらを実施するか無作為に指定

検体をオランダ南西部の病理検査施設に輸送 N=86,469

ASC-USまたはより異常度の高い患者に対する、組織診断による

フォローアップから偽陽性率と特異性を求める

細胞診結果が正常であり、その後病変が確認された患者を対象とした、

組織診断によるフォローアップ。また組織診断結果から偽陰性率と感度を求める

オランダ国立病理データベースの510日のフォローアップ期間

KOPAC-B分類に基づいて検体をスクリーニング・分類

集団1:直接塗抹法 N=51,132 集団2:LBC法 N=35,315

その結果、不適正標本に関して、直接塗抹法では0.89%であったの

に対して、LBC法では0.13%と、LBC法で有意に不適正検体が少なか

ったと報告しています(図1、2)。

LBCは不適正検体を有意に減少させた

結果:直接塗抹法とLBC法(BD SurePath)の比較

Beerman H. et al. Gynecologic Oncology 2009; 112:572-576.

Cohort 1Conventional N=51,132

n (%)

UnsatisfactoryWithin normal limitsAbnormal (ASCUS or higher) ASCUS LSIL HSILSquamous cell carcinomaEndocervical cells

43549856

845

443110288

4

44411

(0.89)(97.47)(1.65)

(0.87)(0.22)(0.56)(0.008)

(86.17)

4634219

1052

73094

2262

32328

<0.0001<0.0001<0.0001

<0.00010.12840.14930.2068

<0.0001**

(0.13)(96.9)(2.98)

(2.07)(0.27)(0.64)(0.006)

(89.01)

Cohort 2Liquid-based N=35,315

n (%)

p = value*

本邦でも、赤松らが新潟県で約236,000人を対象に両者の比較を

行っており、直接塗抹法では11.45%も不適正標本があったのに対

し、LBC法では1.38%と有意に不適正検体が少なかったことを報告

しています(図3)。

LBCは不適正検体を有意に減少させた

新潟県における2005 年度から2008 年度に実施された集団検診を対象とする、

大規模検証(後方視的研究)。

件数: 236,511 件

LBC法(BD SurePath): 108,206 件

直接塗抹法: 128,305件

Akamatsu S. et al. Acta Cytologica 2012; 56:370-374.

Comparison according to the methodYear

2.11

3.58

0.21

0.42

1.38

15.17

11.05

6.42

10.41

11.45

44,156

33,023

24,614

26,512

128,305

6,700

3,648

1,580

2,761

14,689

liquid-based

conven-tional

unsatis-factory

unsatis-factory% %

The number of unsatisfactory cases was significantlysmaller in specimens collected by the LBC than bythe conventional method every year(p<0.001).

The number of unsatisfactory cases was significantly The number of unsatisfactory cases was significantly The number of unsatisfactory cases was significantly

Table 1. Comparison of sampling adequacy with LBC and conventional methods (Total P<0.001)

11.45%

1.38%

不適正率

0

2

4

6

8

10

12

14(%)

Conventional SurePath

2005

2006

2007

2008

Total

19,832

24,242

32,180

31,952

108,206

419

868

68

135

1,490

子宮頸部病変の検出率に関する論文としては、Nanceら(2009年)

が行った10年間に及ぶ大規模な比較試験において、HSILの検出率が

BD シュアパス™ 法で0.50%、ThinPrep® 法で0.38%と、いずれの

LBC法においても直接塗抹法(0.28%)を凌駕したと報告されてい

ます(図4)。

LBCはCIN2以上の検出感度を有意に上昇させた

● LBCはConventional と比較して、高率にHSILを検出した(p < .0001)● BD SurePath は ThinPrepと比較して、高率にHSILを検出した(p < .005)

● n = 310,080件

● 3検査法の比較 - Conventional - ThinPrep - BD SurePath

Nance KV. Diagn. Cytopathol. 2007; 35:148-153.

0.28%

0.38%

0.50%

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60(%)

Conventional BD SurePathThinPrep

HSIL検出率

Page 3: LBC/HPV 検査併用 子宮頸がん検診...LBC法においても直接塗抹法(0.28%)を凌駕したと報告されてい ます(図4)。LBCはCIN2以上の検出感度を

3

また、オランダにおける4,200万検体の大規模比較試験では、BD シュア

パス™ 法は直接塗抹法に比べ、CIN2が10万人あたり31人、またCIN3

が30.4人多く発見されたとしています。その結果、BD シュアパス™ 法

は10万人あたり10例の浸潤がん予防効果があると結論しています。

近年、子宮頸がん検診においては、HPV検査とLBC検査という画期的

なツールが誕生したわけですが、これらを用いることによって、見

落としのない精度の高い検診が可能になるでしょう。

3.(LBC)細胞診 / HPV 検査併用検診

欧米においては、細胞診とHPV検査の併用による子宮頸がん検診が

ゴールドスタンダードになっていますが、その理論的裏付けとして

は、4つの大規模な無作為試験(RCT)があります。そのうちのひと

つにオランダでのPOBASCAM試験があります。約5万人の登録者を

約2万人ずつ介入群と対照群にランダム化し、浸潤がんと前がん病変

の発見率を、第1ラウンドと、その5年後の第2ラウンドで比較した

RCTです。その結果、第1ラウンドでは浸潤がんの発見率に差が見ら

れなかったものの、CIN2以上の発見数が併用群で50例以上多く発見

され、有意差が見られました。また、第2ラウンドにおいては、併用

群では浸潤がんは4例しか認められず、対照群(14例)に比べ有意に

低率でした。このRCTのデータは、HPV検査の併用は浸潤がんを減少

させる可能性を示唆します。

また、併用検診は病変の進行リスクの予知にも役立つと考えられま

す。KjaerらやShermanらの論文では、細胞診だけが陰性の場合に

は3~5年後には2~5%の症例がCIN3以上へ進行する可能性がある

一方、ダブルネガティブ(細胞診、HPV検査ともに陰性)の場合に

は、3年で0.2%程度、5年後でも1%弱しか進行しないとされてお

り、併用検診でダブルネガティブの場合には長期間安心が得られる

ことになります(図5)。

ダブルネガティブから のCIN3以上への進行リスク

細胞診、HPV検査両方陰性ではCIN3以上への進行リスクが低い

Susanne Kjaer, et. al: Cancer Res 2006;66:(21), 2006 より作図

8

6

4

2

00.18

13.88

0.73

2.28

0

5.64

2.86

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

10

12

14

16

18

20

年数

累積進展率(%

HPV検査(+)

HPV検査(-)

Mark E. Sherman, et.al: JNCI, Vol.95, No.1, 2003 より作図

4

3

2

1

00.09 0.13 0.21 0.24

6.92

1.73

2.96 3.61

4.4

0

0.87

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

5

6

7

8

9

10

年数

累積進展率(%

細胞診(-)/ HPV(+)

細胞診(-)/ HPV(-)

日本産婦人科医会は、2011年に細胞診とHPV検査の併用検診による

子宮頸がん検診のリコメンデーションを出しました。併用検診の場

合は、細胞診単独検診と比較してトリアージが若干複雑になります

が、5つのカテゴリーに分類されます(図6)。臨床的取扱い(ト

リアージ)としては、1)細胞診が陽性(HPV検査の結果は問わな

い)の場合と細胞診ASC-USかつHPV陽性の場合は精密検査, 2)細胞

診、HPV検査ともに陰性では3年後検診, 3)細胞診陰性だがHPV検査

陽性の場合と細胞診ASC-USでHPV陰性の場合は1年後検診, の3通り

となります(図6)。

細胞診とHPV-DNA検査併用による子宮頸がん検診

+ ; 陽性 - ; 陰性

日本産婦人科医会がん対策委員会

結果と運用

細胞診(-)HPV(-)

細胞診(-)HPV(+)

細胞診ASC-USHPV(-)

細胞診ASC-USHPV(+)

細胞診(+)

細胞診(-)HPV(-)

細胞診(-)HPV(+)

細胞診(+)

細胞診+HPV-DNA検査

細胞診+HPV(3年後)

コルポ診(精密検査)

コルポ診(精密検査)

細胞診+HPV(3年後)

細胞診+HPV((6)~12ヵ月後)

細胞診+HPV(12ヵ月後)

コルポ診(精密検査)

コルポ診(精密検査)

3年後 1年後 精検

4. 小山地区LBC/HPV検査併用検診モデル事業

この併用検診モデル事業は、前がん病変の発見数を増やし、それ

によって将来的には浸潤がんの発生率を減少させることを目的

に、2012年4月に栃木県小山地区の2市1町(小山市、下野市、野木

町)でスタートしました。このモデル事業は、検診実施母体である

市町村と検診を施行する指定医療機関、栃木県保健衛生事業団(バ

ス検診実施)に加え、データを集積・分析するためのモデル事業実

行委員会(自治医大産婦人科)を新たに設け、検証事業を企図した

ことに特長があります(図7)。

検証事業

「同意書」取得

栃木県小山地区LBC/HPV-DNA併用検診モデル事業実行委員会

自治医大産婦人科

住 民

検査会社

栃木県保健衛生事業団

集団検診(バス検診)

指定医療機関

個別検診(各医療機関)案内 予約

受診

結果 委託

検診結果市町村(行政)

自治医科大学生命倫理委員会にて承認

疫11-52「HPV-DNA検査併用子宮頸がん検診の

有効性評価および病態解明への基礎研究」

LBC/HPV検査併用 子宮頸がん検診

図5

図6

図7

Page 4: LBC/HPV 検査併用 子宮頸がん検診...LBC法においても直接塗抹法(0.28%)を凌駕したと報告されてい ます(図4)。LBCはCIN2以上の検出感度を

LBC/HPV検査併用 子宮頸がん検診

この検証事業で得られたこれまでの結果を要約します。

1)全体のHPV陽性率は6.5%でしたが、若年女性での陽性率が高

く、20歳代前半が16.3%、20歳代後半が13.7%を示しました(図8)。

2)細胞診陰性 / HPV陰性(ダブルネガティブ)が91.9%を占めまし

た。

3)細胞診陰性 / HPV陽性=2.6%、細胞診ASC-US / HPV陰性=1.4%

という結果で、4.0%が1年後検診になりました。

4)細胞診陽性=2.6%、細胞診ASC-US / HPV陽性=1.5%で両者をあ

わせ4.1%が要精検となりました。前年(2011年)の直接塗抹法検

査での要精検率(1.6%)よりも2.6倍に増えたことになります。こ

の最大の要因は、細胞診ASC-US / HPV陽性が新たに精検対象となっ

たことによりますが、LBCの効果も加わった可能性があります。

年代別HPV検査陽性率とNILM、ASC-US、及びLSIL以上の割合

栃木県小山地区HPV検査併用検診

H24年4月16日~H26年6月30日まで 受診者数17,805人

18.0

16.0

14.0

12.0

10.0

14

14

14

14

1420-24

16.3%

13.7%

10.5%

8.3%

6.8%6.2%

5.0%

2.6% 3.0% 3.3%

6.5%

25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65- 全体

38%

24%

39%

39%

22%

39%

44%

21%

35%

35%

26%

39%

45%

20%

35%

38%

26%

36%

31%

29%

40%

26%24%50%

16%

25%59%

21%25%

54%

36%

24%

41%

HPV検査陽性率(%

年齢

NILM ASC - US ≧LSIL

5)細胞診ASC-US / HPV陽性群の精検結果は約60%にCIN1~3を認

め、LSILの精検結果(約68%)とほぼ同率であり、この群を精密検

査(コルポ・組織診)としたことは理にかなっていると考えられま

した。すなわち、日本産婦人科医会のリコメンデーションの正当性

が検証されました。

6)また、不適正標本は1例(0.01%)のみであり、同時期の県内

他地区での不適性検体率0.53%に比べ顕著な減少が見られました

(図9)。

不適正標本が激減

栃木県小山地区LBC/HPV-DNA併用検診における

不適正標本率(2012.4-2013.3)

LBC(小山地区)

0.01%(1/11,582)

従来法(県内他地区)

0.53%(60/11,388)

P

<0.001

5. これからの子宮頸がん検診

我々が行っているHPV検査併用検診はLBC細胞診と同時併用ですが、

ヨーロッパではまずHPV検査でトリアージを行い、HPV陽性例に細胞

診を行うという方法が主流になりつつあります(図10)。この方法

は費用対効果が良いことが最大の利点ですが、日本では検診受診率

が40%弱と低率であるため、現状では同時併用検診を行い、見落と

しのない検診をすべきだと考えています。また近年では、自己採取

HPV検査や尿中HPV検査などがトライアルされており、未受診者対策

や発展途上国における検診体制として注目が集まっています。

今後も栃木県小山地区での子宮頸がん併用検診モデル事業を進め、

その結果を検証し、精度の高い子宮頸がん検診の普及に努めて行き

たいと考えています。

HPV検査→細胞診トリアージ法 による子宮頸がん検診

Cuzick J, 2012 EUROGIN2012

HPV(-) HPV(+)

細胞診(-)or(±)

細胞診(-)/ HPV(-) 細胞診(-)/ HPV(+)細胞診(±)/ HPV(-)

細胞診(+)

細胞診(+)

HPV検査

HPV検査

細胞診

コルボ診

コルボ診

細胞診 + HPV検査

細胞診 + HPV検査

HPV検査(対象:30-64歳)

(英国提唱モデル)

(5年後)

(5年後) (6-12ヵ月後)

(6-12ヵ月後)

細胞診(-):NILM

細胞診(±):ASC-US

細胞診(+):≧LSIL

45-034-00R0-1510-002-058

* BD、BD ロゴおよびその他の商標は Becton, Dickinson and Company が保有します。©2015 BD

図8

図10

図9