lng 海上輸送の動向lng...

27
LNG 海上輸送の動向 2015 6 公益財団法人 日本海事センター

Upload: others

Post on 05-May-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

LNG海上輸送の動向

2015年 6月

公益財団法人 日本海事センター

Page 2: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

目次

1. はじめに ........................................................................................................ 1

2. 天然ガス・LNG輸送の概要 .......................................................................... 1

2-1. 天然ガスの概要 ....................................................................................... 1

2-2. LNG輸送の概要 ...................................................................................... 3

3. LNG輸送の動向 ............................................................................................ 4

3-1. 天然ガス需給動向 ................................................................................... 4

3-2. LNG貿易動向 ......................................................................................... 8

3-3. LNG船市況動向 .................................................................................... 12

3-4. 日本の LNG船隊の動向 ....................................................................... 13

4. 今後の展望 ................................................................................................... 17

4-1. 新規プロジェクトの動向 ...................................................................... 17

4-2. LNGトレードの多様化 ......................................................................... 20

4-3. 上中流への進出 ..................................................................................... 22

5. まとめ .......................................................................................................... 23

[参考資料] .................................................................................................... 24

Page 3: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

図表一覧 図 1 天然ガス・石油・石炭の二酸化炭素排出量等 .................................. 1

図 2 発電電力量の推移(一般電気事業用) ............................................ 2

図 3 都市ガス用途別販売量(2012年度) ………………………………….2

図 4 天然ガスの輸入先(2012年度) ..................................................... 2

図 5 天然ガスの生産から消費までの流れ ................................................ 3

図 6 LNG船のタンク方式 ....................................................................... 4

図 7 世界の一次エネルギー消費量の推移 ................................................ 4

図 8 天然ガスの確認埋蔵量と可採年数 .................................................... 5

図 9 主要国・地域別天然ガス生産量の推移 ............................................ 6

図 10 主要国・地域別天然ガス消費量の推移 .......................................... 6

図 11 天然ガスの需要予測 ....................................................................... 7

図 12 天然ガス貿易量の推移 ................................................................... 8

図 13 LNGの主要貿易フロー(2013年) .............................................. 9

図 14 主要国の LNG輸出量の推移 .......................................................... 9

図 15 主要国の LNG輸入量の推移 ........................................................ 10

図 16 天然ガス価格の推移 ..................................................................... 11

図 17 短期(4年未満)・スポット契約による LNG貿易量の推移 ........ 11

図 18 短期(4年未満)・スポット契約による LNG貿易量(2013年) 11

図 19 LNG船船腹量の推移 ................................................................... 12

図 20 契約期間別 LNG船用船料(各年平均)の推移 ........................... 13

図 21 日本の LNG船保有船腹量 ........................................................... 14

図 22 主要船主別 LNG船船腹量の推移 ................................................ 14

図 23 実質船主国別 LNG船船腹量の推移 ............................................. 15

図 24 主要船主別 LNG船船腹量(2014年 7月初め現在) .................. 15

図 25 日本寄港 LNG船に占める日本企業関与船の割合(2014年) .... 16

図 26 各国の天然ガス液化プラント年間処理能力(2014年末時点) ... 17

図 27 豪州における主な新規 LNGプロジェクト .................................. 18

図 28 米国における主な新規 LNGプロジェクト .................................. 18

図 29 主要国・地域における LNG輸出量 ............................................. 19

図 30 主要国・地域における天然ガスの純輸出入量 .............................. 19

図 31 LNGトレードの多様化 ................................................................ 21

図 32 LNG受入基地の年間処理能力 ..................................................... 22

Page 4: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

1

1. はじめに

近年、国際海運分野では米国シェール革命による天然ガスの生産拡大や国際

的な需要増大による液化天然ガス(LNG: Liquefied Natural Gas)の輸送需要

増加を見越した LNG船の発注が進められている。本報告書では、成長分野とし

て注目を集める LNG輸送の動向を整理するとともに、今後の展望について考察

する。

2. 天然ガス・LNG 輸送の概要

2-1. 天然ガスの概要

天然ガスはメタン(CH4)を主成分とする可燃性ガスであり、他の化石燃料(石

油、石炭)と比べて二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)

の排出量が少ないクリーンエネルギーである(図 1参照)。

図 1 天然ガス・石油・石炭の二酸化炭素排出量等

(注)石炭を 100とした場合の排出量比較(燃焼時)

(出典)資源エネルギー庁『エネルギー白書 2010』

資源エネルギー庁によれば、日本では天然ガスの約 7 割が発電用、約 3 割が

都市ガス用に使われている。発電電力量の推移を見ると(図 2参照)、1970年代

のオイルショック以降は石油の代替エネルギーとして、また、2011 年以降は原

子力の代替エネルギーとして LNGの利用比率が高まっていることが分かる。都

市ガスの用途別販売量は、2000年頃までは家庭用が最大シェアを占めていたが、

近年は工業用が増加しており、2012 年度は全体の 52%が工業用となっている

(図 3参照)。

常温・常圧では気体である天然ガスを輸送するためには、気体のままパイプラ

インで移送するか、マイナス 162℃に冷却・液化して LNG船で輸送するか、い

ずれかの方法がとられる。日本では新潟県、千葉県、北海道、秋田県などで国産

天然ガスが生産されているが、大部分は海外から LNG という形で輸入してい

二酸化炭素(CO2) 窒素酸化物(NOx) 硫黄酸化物(SOx)

天然ガス 60

天然ガス 40 天然ガス 0

石炭 100 石炭 100 石炭 100

石油 80 石油 70 石油 70

Page 5: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

2

る。2012年度の LNG輸入量は 8,687万トンで輸入比率は 97.2%である。

日本の LNG 輸入量の 7 割以上は豪州や東南アジアなど中東以外の地域で占

められており、中東依存度は 28.6%(図 4参照)と石油の同比率(2012年度は

83.2%)と比べて低い。天然ガスの確認埋蔵量も中東地域は 43.2%と石油の

47.9%より低く、天然ガスは地政学的リスクの少ない、供給安定性に優れたエネ

ルギーであるといえる。

図 2 発電電力量の推移(一般電気事業用)

(注)グラフ右の数字は 2012年度のシェア。

(出典)資源エネルギー庁『エネルギー白書 2014』

図 3 都市ガス用途別販売量(2012 年度) 図 4 天然ガスの輸入先(2012 年度)

(出典)図 3と図 4はいずれも資源エネルギー庁『エネルギー白書 2014』を基に作成

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

1952

1955

1960

1965

1970

1971

1972

1973

1974

1975

1976

1977

1978

1979

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

新エネ等

揚水

石油等

LNG

一般水力

石炭

原子力

(億kWh)

(年度)

原子力 1.7%

石油等 18.3%

LNG 42.5%

揚水 0.9%

石炭 27.6%

一般水力 7.5%

新エネ等 1.6%

家庭用

410(27%)

商業用

188(13%)

工業用

796(52%)

その他用

126(8%)(単位:1015J)

豪州

19.6%

マレーシア

16.4%

ロシア

9.6%ブルネイ

6.8%

インドネシア

6.6%

ナイジェリア

5.2%

赤道ギニア

3.3%

その他

3.8%

カタール

17.6%

UAE

6.4%

オマーン

4.4%

イエメン

0.3%

総輸入量

8,687万t

中東以外

71.4%

中東

28.6%

Page 6: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

3

2-2. LNG 輸送の概要

LNGを輸送するためには、ガス田や油田などで採掘された天然ガスをパイプ

ラインで液化基地に移送し、不純物の除去など必要な前処理を経た上で、マイナ

ス 162℃に冷却・液化してタンクに貯蔵し、船積みするという工程が踏まれる

(図 5参照)。LNG船で輸送した LNGは、受入基地のタンクに貯蔵され、再ガ

ス化(再気化)した後、発電所燃料や都市ガスとして消費される1。

図 5 天然ガスの生産から消費までの流れ

(出典)JX日鉱日石エネルギーホームページを基に作成

(http://www.noe.jx-group.co.jp/binran/part06/chapter03/section03.html)

LNG輸送は 1959 年にMethane Pioneer号が 2,000トンの LNGを米国ルイ

ジアナ州レイク・チャールズから英国キャンベイ島に輸送したのが世界初であ

り、日本では 1969 年に 7万 1,500 ㎥型の Polar Alaska 号が米国アラスカ産の

LNGを横浜根岸基地に輸送したのが最初である2。

LNG は超低温の液体であるため、LNG 船には防熱機能があり、ガス漏洩を

防止できる特殊なタンクが備え付けられている。タンク方式としてはモス型、メ

ンブレン型など様々なタイプが開発されており(図 6参照)、船型もかつてはタ

ンク容量 12 万 5,000 ㎥型の LNG 船が主流であったが、現在では大型化が進み

14万 5,000-17万 7,000㎥型が標準的な船型となっている。

LNGは超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約 600分の 1に圧

縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。

このため、LNG輸送には高い安全管理技術が求められる。

1 化学肥料の原料として利用される場合もある。LNGプロジェクトの概要や LNGの生産

から消費に至るまでの工程等については JX日鉱日石エネルギー『石油便覧』

(http://www.noe.jx-group.co.jp/binran/part06/chapter03/index.html)が分かりやすい。 2 臼井潔人「海の物流システム革新事例:商船の変遷史(10)LNG船/船型と受け入れ基

地標準化で貿易振興」『日本海事新聞』(2013年 3月 25日付)、日本郵船 LNG船運航研究

会『LNG船運航の ABC』(成山堂書店、平成 18年)25頁。LNG船を着想したのはシカ

ゴの食肉業者であったとの糸山博士の解説も面白い。糸山直之『LNG船がわかる本(新

訂版)』(成山堂書店、平成 24年)38-39頁。

ガス田

油田

など

ガス

前処理

装置

液化

プラント

再ガス

化装置 消費 LNG 船

パイプライン

【液化基地】 【海上輸送】 【受入基地】

受入用 貯蔵 タンク

出荷用 貯蔵 タンク パ

イプライン

Page 7: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

4

図 6 LNG 船のタンク方式

“Al Wakrah”

(写真提供)商船三井

3. LNG 輸送の動向

3-1. 天然ガス需給動向

BPによれば、2013 年の世界の天然ガス消費量は 3.3兆㎥(石油換算で 30億

トン)であり、一次エネルギー消費量(同 127 億トン)の 24%を占める(図 7

参照)。世界の一次エネルギー消費量は 1965 年から年平均 2.6%の割合で増加

しているが、天然ガス消費量の年平均増加率は 3.5%であり、石油や石炭(いず

れも 2.1%)と比べて高い。天然ガスは石油や石炭と比べて燃焼時の環境負荷が

低く、埋蔵量も豊富であることから新興国を中心に需要は堅調に伸びると予測

される。

図 7 世界の一次エネルギー消費量の推移

(注)グラフ右の数字は 2013年の内訳(括弧内は同シェア)。

(出典)BP, Statistical Review of World Energy 2014 を基に作成

0

20

40

60

80

100

120

140

1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

(石油換算 億トン)

(年)

石油

天然ガス

石炭

原子力

水力 再生可能エネルギー

42[33%]

30[24%]

38[30%]

6[4%] 9[7%] 3[2%]

2013 年の合計:127

【モス型】 【メンブレン型】

“LNG Pioneer”

Page 8: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

5

世界の天然ガスの確認埋蔵量3は 2013 年末で 185.7 兆㎥であり、地域別シェ

アは中東が 43.2%、欧州・旧ソ連圏が 30.5%と高く、国別シェアではイラン

(18.2%)、ロシア(16.8%)、カタール(13.3%)、トルクメニスタン(9.4%)、

米国(5.0%)の順に高い(図 8参照)。2013 年末時点の可採年数(確認埋蔵量

/年間生産量)は 55.1年であり、石油の 53.3年より若干長い。

図 8 天然ガスの確認埋蔵量と可採年数

(出典)BP, Statistical Review of World Energy 2014 を基に作成

天然ガスの生産量と消費量は、いずれも 2009年には世界的な景気後退で落ち

込みを見せたものの、2000年以降は堅調に伸びており、地域別で見ると、欧州・

旧ソ連圏、北米、中東及びアジア・大洋州の占める割合が大きい(図 9 及び図

10参照)。

2013年の生産上位 5カ国は米国(6,876億㎥、シェア 21%)、ロシア(6,048

億㎥、同 18%)、イラン(1,666億㎥、同 5%)、カタール(1,585 億㎥、同 5%)、

カナダ(1,548 億㎥、同 5%)であり、消費上位 5 カ国は米国(7,372 億㎥、同

22%)、ロシア(4,135億㎥、同 12%)、イラン(1,622億㎥、同 5%)、中国(1,616

億㎥、同 5%)、日本(1,169億㎥、同 4%)である。

3 「技術的に回収可能な資源量」のうち、90%以上の回収可能性があるものを「確認埋蔵

量」と呼ぶのが一般的とされる。岩瀬昇『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』(文春

新書、2014年)88-89頁。

50

52

54

56

58

60

62

64

66

68

70

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012

(年)(兆㎥)

アジア・大洋州

アフリカ

中東

欧州・旧ソ連

中南米

北米

可採年数

米国5.0%

カナダ1.1%

メキシコ0.2%

ベネズエラ3.0%

トリニダード・

トバゴ0.2%

その他

中南米0.9%

ロシア16.8%

トルクメニスタン9.4%

その他欧州・

旧ソ連4.2%

イラン18.2%

カタール13.3%

サウジアラビア 4.4%

UAE 3.3%

その他中東4.0%

アルジェリア2.4%

ナイジェリア2.7%

その他

アフリカ2.5%

豪州2.0%

中国1.8% インドネシア

1.6%

その他アジア・

大洋州2.9%

確認埋蔵量

185.7兆㎥

(2013年)

Page 9: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

6

図 9 主要国・地域別天然ガス生産量の推移

(出典)BP, Statistical Review of World Energy 2014 を基に作成

図 10 主要国・地域別天然ガス消費量の推移

(出典)BP, Statistical Review of World Energy 2014 を基に作成

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

(10億㎥)

(年)

その他アジア・大洋州

豪州

マレーシア

インドネシア

中国

その他アフリカ

ナイジェリア

エジプト

アルジェリア

その他中東

サウジアラビア

カタール

イラン

その他欧州・旧ソ連トルクメニスタン・ウズベキスタン

ノルウェー・オランダ・英国

ロシア

その他中南米

アルゼンチン・ブラジル

トリニダード・トバゴ

メキシコ

カナダ

米国

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

(10億㎥)

(年)

その他アジア・大洋州

インド

韓国

日本

中国

その他アフリカ

アルジェリア

エジプト

その他中東

サウジアラビア

イラン

その他欧州・旧ソ連

トルクメニスタン・ウズベキスタン

英独仏伊トルコ

ロシア

その他中南米

アルゼンチン・ブラジル

メキシコ

カナダ

米国

北米 26.9%

中南米 5.2%

欧州・旧ソ連 30.6%

中東 16.8%

アフリカ 6.0%

アジア・ 大洋州 14.5%

アジア・大洋州 19.0%

北米 27.8%

中南米 5.0%

アフリカ 3.7%

欧州・旧ソ連 31.7%

中東 12.8%

Page 10: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

7

天然ガスの需要は今後も堅調に伸びると予測されており、年平均増加率は 2%

前後で推移するとの見方が多い。例えば、国際エネルギー機関(IEA)の予測で

は 2012/2040 年の年平均増加率は 1.6%、BPの予測では 2012/2035年の年平均

増加率は 1.9%、日本エネルギー経済研究所(IEEJ)の予測では 2012/2040 年

の年平均増加率は 1.9%となっている(図 11参照)。2014年 11月に開催された

「LNG産消会議 2014」では、エクソンモービルが 2025年にかけての年平均増

加率を 2.4%、トタールが 2030 年にかけての年平均増加率を 2%と予測してい

る4。

図 11 天然ガスの需要予測

(注)IEAは New Policies Scenario、IEEJはレファレンスケースの下での予測値。

(出典)IEA, World Energy Outlook 2014、BP, World Energy Outlook 2014、日本エネルギー

経済研究所『アジア・世界エネルギーアウトルック 2014』を基に作成

天然ガスは生産国で消費される割合が高く、2013年の貿易量は 1兆 359億㎥

と全消費量の約 3分の 1となっている。

貿易量の約 7割はパイプラインによるもので、2013年は 7,106 億㎥となって

いる。この内、ロシアから欧州及び旧ソ連諸国(ウクライナ、ベラルーシなど)

向けが 2,113 億㎥、ノルウェーやオランダなどを供給源とする欧州域内トレー

ドが 1,927億㎥、米国、カナダ、メキシコ間のトレードが 1,233 億㎥と多い。

LNG貿易量は 3,253億㎥(LNG換算で約 2.4億トン)で天然ガス貿易量の約

3割、同消費量の約 1割であるが、過去 10年間の年平均伸び率はパイプライン

貿易の 4.6%に対して、LNG貿易は 6.8%と高い5(図 12参照)。LNG貿易の今

後の伸び率は年平均 4-6%前後で推移するとの見方が多く、例えば、BP の予測

では 2012/2035 年の年平均増加率は 4%、IHS-CERA レポートを参考に日本郵

船が集計した予測値では 2013/2035 年の年平均増加率は 3.8%、トタールの予

4 LNG産消会議 2014関連資料は http://www.lng-conference.org/からダウンロード可能。 5 要因として 2009年以降のカタールからの輸出量の急増(図 14参照)が背景にあると考

えられる。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2012 2020 2030 2035 2040

(10億㎥)

(年)

IEA BP IEEJ

Page 11: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

8

測では 2013/2030 年の年平均増加率は 5%、シェニエール・エナジーの予測で

は 2015/2025 年の年平均増加率は 6%となっている6。

図 12 天然ガス貿易量の推移

(出典)BP, Statistical Review of World Energy(各年版)を基に作成

3-2. LNG 貿易動向

国際 LNG輸入者協会(GIIGNL)によれば、2013年の LNG輸出上位 5カ国

はカタール(7,802 万トン、シェア 33%)、マレーシア(2,514万トン、同 11%)、

豪州(2,241万トン、同 9%)、インドネシア(1,836万トン、同 8%)、ナイジェ

リア(1,647 万トン、同 7%)であり、輸入上位 5 カ国は日本(8,798 万トン、

同 37%)、韓国(4,039万トン、同 17%)、中国(1,860万トン、同 8%)、イン

ド(1,305万トン、同 6%)、台湾(1,272万トン、同 5%)である。図 13は LNG

の主要貿易フローを示したものであるが、同図より、主要供給地である中東、東

南アジア、アフリカ及び豪州から、主要消費地である東アジアと欧州に輸出され

る構図が見て取れる。

BP 統計を基に過去 10 年間の LNG 貿易動向を見てみると、供給サイドでは

以下の特徴が挙げられる(図 14参照)。中東ではカタールが 2009年頃から急激

に輸出量を増加させており、豪州も堅調に輸出量を伸ばしている。東南アジアで

はマレーシアが増加傾向にあるが、ブルネイは横ばい、インドネシアは減少傾向

にある。アフリカでは元々、主要供給国であったアルジェリアが輸出量を減少さ

せる一方、ナイジェリアは 10年間で倍増させている。このほか、大西洋ではト

リニダード・トバゴが輸出量を堅調に伸ばしており、また、ロシアやイエメンと

いった新たな供給国も登場している。

需要サイドでは、圧倒的シェアを誇る東アジアで伝統的に輸入が多い日本、韓

国及び台湾が堅調に輸入量を増加させているが、近年は 2006年に輸入を開始し

6 BPの予測値は Energy Outlook 2035、日本郵船の予測値は『NYK Fact Book I 2014』、

トタールとシェニエール・エナジーの予測値は LNG産消会議 2014の資料に基づく。

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(億㎥)

(年)

パイプライン貿易量

LNG貿易量

Page 12: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

9

た中国の伸びの大きさが目を引く(図 15 参照)。同様に新興国として成長著し

いインドも 2004年の輸入開始以降、輸入量を大きく増やしている。欧州は 2011

年まで増加傾向にあったが、景気低迷などの影響により、2012 年と 2013 年は

いずれも前年比減を記録している。

図 13 LNG の主要貿易フロー(2013 年)

(注)再輸出を含む。円グラフの大きさは輸出入量と必ずしも比例しない。

(出典)GIIGNL, The LNG Industry 2013 を基に作成

図 14 主要国の LNG 輸出量の推移

(出典)BP, Statistical Review of World Energy(各年版)を基に作成

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(万トン)

(年)

カタール

マレーシア

豪州

インドネシア

ナイジェリア

トリニダード・トバゴ

アルジェリア

ロシア

オマーン

イエメン

ブルネイ

スペイン9

英国7フランス

6

トルコ4

イタリア4

その他3

欧州 輸入34

[単位:百万トン]

トリニダード・トバゴ 14

ペルー 4

アルゼンチン5

ブラジル 4

チリ3

その他2

11

日本88

韓国40

中国19

台湾13

東アジア 輸入160

13

48 22

15

17

11

12

世界合計: 237

62

豪州 輸出22

中南米 輸出18

中南米 輸入13

ロシア 輸出11

インド 輸入13

カタール78

オマーン8

イエメン7

アブダビ5

中東 輸出 98

マレーシア25

インドネシア18

ブルネイ7

東南 アジア

輸出 51 ナイジェリア

16アルジェリア

11

赤道ギニア

4

その他3

アフリカ 輸出34

Page 13: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

10

図 15 主要国の LNG 輸入量の推移

(注)欧州はスペイン、英国、フランス、トルコ、イタリア及びベルギーの合計。

(出典)BP, Statistical Review of World Energy(各年版)を基に作成

更に特筆すべき特徴として、2009年以降、アジア、欧州及び北米間における

天然ガスの価格差の拡大(図 16参照)を背景に、短期(4年未満)・スポット契

約による取引が増加しており、2013年は約 6,500万トンと LNG貿易量の 27%

を占めるに至っている点が挙げられる7(図 17参照)。これら短期・スポット契

約による取引量は、輸出国ではカタール、ナイジェリア、トリニダード・トバゴ、

輸入国では東アジア、インド、中南米諸国が特に多い(図 18 参照)。さらに、

2010年以降は欧州(スペインやベルギーなど)を中心に余剰分を中南米やアジ

アに再輸出する動きが拡がっているが(2013 年は 421 万トン)、これらは全て

短期・スポット契約によるものである。

7 但し、「現実の LNG需給を反映した、カーゴ毎かつ指値で取引される「真のスポット取

引」は全体の 1割に満たない」との指摘がある(LNG産消会議 2014の中部電力プレゼ

ン)。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(万トン)

(年)

日本

韓国

中国

インド

台湾

スペイン

英国

フランス

メキシコ

アルゼンチン

欧州

Page 14: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

11

図 16 天然ガス価格の推移

(注)Btuは英国熱量単位(British thermal unit)の略。

(出典)BP, Statistical Review of World Energy 2014 を基に作成

図 17 短期(4 年未満)・スポット契約による LNG 貿易量の推移

(出典)GIIGNL, The LNG Industry(2006-2013年版)を基に作成

図 18 短期(4 年未満)・スポット契約による LNG 貿易量(2013 年)

(出典)GIIGNL, The LNG Industry 2013を基に作成

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(米ドル/百万Btu)

日本LNG輸入価格(CIF)

ドイツLNG輸入価格(CIF)

英国天然ガス価格(Heren NBP Index)

米国天然ガス価格(Henry Hub)

カナダ天然ガス価格(Alberta)

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

0

10

20

30

40

50

60

70

2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年

(百万トン)

スポット・短期契約のLNG貿易量

スポット・短期契約の比率(右軸)

日本2,169 (33%)

韓国1,095 (17%)インド 554

(9%)

アルゼンチン472 (7%)

ブラジル415 (6%)

中国 392 (6%)

台湾331 (5%)

クウェート159 (3%)

マレーシア150 (2%)

タイ 145 (2%)

その他617 (10%)

輸入量

6,498万トン

カタール2,510 (39%)

ナイジェリア912 (14%)

トリニダード・

トバゴ 772 (12%)

イエメン 314 (5%)

インドネシア307 (5%)

ペルー 241 (4%)

赤道ギニア234 (3%)

ノルウェー208 (3%)

エジプト206 (3%)

ロシア 185 (3%)

その他608 (9%)

[単位:万トン]

輸出量

6,498 万トン

Page 15: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

12

3-3. LNG 船市況動向

LNG 貿易の拡大に伴い LNG 船船腹量も大幅に増加しており、クラークソン

によれば 2015 年初めの時点で 415 隻(中小船型を含む)、総タンク容量 6,026

万㎥と過去 10年間で隻数は 2.4倍、容量は 3倍となっている(図 19参照)。特

に 2000 年代半ばから 2008 年頃までの新造発注ブームで船腹量は 2011 年にか

けて急激に増加している。2009年以降は世界的な景気後退と需給ギャップの拡

大により発注量は減少したが、2012年頃から再び増え始め、2015年初めの時点

で発注残は 159隻 2,530万㎥と全船腹量の約 4割を占めるに至っている。

図 19 LNG 船船腹量の推移

(出典)Clarkson Research Services の Shipping Intelligence Network データを基に作成

Drewryによれば、LNG船短期用船料は 2007年から 2009年にかけて大幅に

下落し、その後、上昇に転じて 2012 年には 13 万ドル台にまで達したが、その

後は再び下落傾向にあり、2014年以降は 5-6万ドル台と低調に推移している(図

20参照)。

当初の下落は米国向け輸送用に発注された新造船がシェール革命に伴う国内

生産量の増加により行き場を失ったことによるものであり、その後の上昇は新

造発注が一服したことによる供給圧力の低下8や原発事故後の日本での需要増、

南米向け長距離トレードの増加、さらに、その後の軟化傾向は 2013 年から加速

した新造船の竣工や欧州での需要減、地域間の価格差の縮小に伴う欧州からア

ジアへのスポットカーゴの減少、新規プロジェクトの遅延などの影響によるも

8 2010年秋にマーケットの潮目が変わった背景には、カタールによる大型船係船とマーケ

ットからの標準船の調達があったとの指摘がある。(船社関係者へのヒアリングによる)

0

100

200

300

400

500

600

700

0

10

20

30

40

50

60

70

Jan-01 Jan-02 Jan-03 Jan-04 Jan-05 Jan-06 Jan-07 Jan-08 Jan-09 Jan-10 Jan-11 Jan-12 Jan-13 Jan-14 Jan-15

(隻数)(百万㎥)

船腹量(総容量)

発注残(総容量)

船腹量(隻数)

発注残(隻数)

Page 16: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

13

のと考えられている。

2015 年以降も新造船の投入により弱含みの状態が続くことが予想されるが、

北米や豪州などで新規の LNG輸出プロジェクトが稼働し、スポット需要が増大

すれば徐々に上向く可能性はあると考えられる。

図 20 契約期間別 LNG 船用船料(各年平均)の推移

(注)2005-06年は 125-138,000㎥型 LNG 船、07年以降は 140-150,000㎥型 LNG 船。

(出典)Drewry Maritime Research, Shipping Insight

3-4. 日本の LNG 船隊の動向

LNG の最大輸入国である日本は世界有数の LNG 船隊を保有する。テックス

レポート『ガス年鑑(2014年度版)』によれば、2014年 9月時点で日本買主(ガ

ス・電力会社、商社)が保有又は用船する LNG船は 28隻 329 万㎥、邦船社の

関与船は、商船三井が 69隻 981万㎥(発注残 22隻 365万㎥)、日本郵船が 69

隻 1,012万㎥(発注残 6隻 102万㎥)、川崎汽船が 43隻 664万㎥(発注残 4隻

68万㎥)、飯野海運が 26隻 418万㎥(発注残ゼロ)となっている9。

LNG船は投資コストが高く、リスク軽減のため複数の企業による共同保有が

一般的であるため、実質的な保有船腹量を見るためには、各社の持分の割合に応

じて按分計算する必要がある。テックスレポートなど各種情報を基に 2014年 9

月時点での日本の実質保有船腹量を推計すると、海運企業の保有船腹量は 944

万㎥(世界シェア 16%)、電力・ガス会社の保有船腹量は 161 万㎥(同 3%)、

商社の保有船腹量は 261 万㎥(同 5%)であり、保有隻数は海運企業が 65 隻、

電力・ガス会社は 11隻、商社は 18隻に相当すると考えられる(図 21参照)。

データによって数字に若干のばらつきはあるものの、日本が実質的に所有す

9 但し、各社ホームページで公表されている 2014年度第 2四半期決算説明資料によれ

ば、商船三井の関与船隻数(2014年 9月末時点)は 67隻、日本郵船は同 68隻となって

いる。

0

2

4

6

8

10

12

14

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

(万ドル/日)

長期(15年以上)

短期

Page 17: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

14

る LNG船船腹量は世界最大であり、世界シェアは概ね 2割前後で推移している

と考えられる(図 22 及び図 23 参照)。一方、企業別では、2014 年 7 月初め時

点での就航船腹量上位 5社は QGTC(カタール)、MISC(マレーシア)、Teekay

LNG Partners(カナダ)、商船三井、日本郵船の順となっており、今後は発注残

の多いギリシャ船主が船腹量を伸ばすことが予想される(図 24参照)。

図 21 日本の LNG 船保有船腹量

(注)隻数は「船腹量/全世界の一隻当たり平均容量(約 14.4万㎥)」で推計。

(出典)テックスレポート『ガス年鑑(2014年度版)』、Clarkson Research Services 等

図 22 主要船主別 LNG 船船腹量の推移

(注1)2005年及び 2012-14年は 3月期中完工分、2006-11年は前年 12月期中完工分まで。

(注2)保有キャパシティは 1隻に対する共有持分の割合に応じて按分計算がなされている。

(出典)日本郵船『NYK Fact Book I』(各年版)を基に作成

944万㎥(16%)

[65隻相当]

161万㎥(3%)

[11隻相当]

261万㎥(5%)

[16隻相当]

4,414万㎥(76%)

[308隻相当]

日本海運

日本電力・ガス

日本商社

海外船主

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

0

10

20

30

40

50

60

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

(百万㎥)

その他海外船主

Golar

Bergesen Worldwide

Teekay Shipping

MISC

QGTC

韓国船主

その他日本船主

川崎汽船

商船三井

日本郵船

日本船主のシェア

(右軸)

世界合計

5,779 万㎥

[400 隻]

Page 18: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

15

図 23 実質船主国別 LNG 船船腹量の推移

(注)各年 1月 1日現在の船腹量。2015年の上位 10カ国を表示。

(出典)Clarksons Research Services のデータを基に作成

図 24 主要船主別 LNG 船船腹量(2014 年 7 月初め現在)

(注1)既存船船腹量の世界上位 20社を表示。括弧内は船主又は同親会社の本社所在国。

(注2)共有船の場合は船舶管理会社の所有船として計上されているため、本文 15頁に記載の

関与船の船腹量とは一致しない。

(出典)Clarkson Research Services, LNG Trade & Transport 2014 を基に作成

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

0

10

20

30

40

50

60

70

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

(百万㎥)

(年)

その他

ナイジェリア

英国

シンガポール

韓国

マレーシア

カナダ

ノルウェー

ギリシャ

カタール

日本

日本のシェア

(右軸)

0 200 400 600 800

China LNG Shipping[中国]

Australia LNG Ship Operating Co.[豪州]

Hyundai M.M.[韓国]

BP Shipping[英国]

Dynagas LNG[ギリシャ]

National Gas Shipping[UAE]

Knutsen OAS Shipping[ノルウェー]

Malt LNG[デンマーク]

川崎汽船[日本]

Maran Gas Maritime[ギリシャ]

Nakilat, JC[日本・カタール]

Golar LNG[キプロス]

Bonny Gas Transport[ナイジェリア]

BW Gas[シンガポール]

GasLog[ギリシャ]

日本郵船[日本]

商船三井[日本]

Teekay LNG Partners[カナダ]

MISC[マレーシア]

Qatar Gas Transport Company (Nakilat)[カタール]

(万㎥)

就航船 発注船

Page 19: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

16

日本の LNG船は長期輸送契約に従事する「プロジェクト船」が大半と考えら

れ、日本の LNG 輸入において重要な役割を担っている。IHS Sea-Web データ

によれば、2014 年における日本寄港 LNG 船に占める日本企業関与船(日本企

業が持分を有する LNG船)の割合は船腹量ベースで約 6割であり、また、日本

海運大手が船舶管理を行う LNG 船の割合は全体の 4 割強を占める。LNG 船で

は安全運航と品質管理が特に重要とされるが、日本の海運大手は 30年以上の経

験と実績に基づく高い技術力と船舶管理能力を有しており、日本の LNG輸入に

おいても欠かせない存在となっている。

さらに、日本の海運大手は米国シェールガスの輸入や豪州の新規プロジェク

トに関連した新造発注を進めており、今後も日本の LNG輸入において重要な役

割を果たすものと考えられる。特にヘンリーハブ価格に基づく米国シェールガ

スの調達は日本が輸入する LNG の価格体系多様化に資する点で大きな意義が

あると考えられ10、同輸入を支える日本海運の存在は日本経済及び国民生活にと

って重要と考えられる。

図 25 日本寄港 LNG 船に占める日本企業関与船の割合(2014 年)

(注)日本寄港 LNG 船の「DWT×換算係数(1.82)×寄港回数」で船腹量を推計。

(出典)IHS Sea-webデータ等を基に作成

10 「LNG市場の構造変革と新たな取引形態の展開」『海運』(2015年 4月号)22頁。

2億6,224万㎥(57%)

[延3,458隻]

2億156万㎥ (43%)

[延1,323隻]日本関与船舶

その他の船舶合計 4 億 6,380 万㎥ [延 4,781 隻]

Page 20: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

17

4. 今後の展望

前述のように、LNG船の短期用船市場は新造船の供給圧力や短期的な需要の

伸び悩みにより、豪州や米国の新規プロジェクトが本格化するまで大幅な回復

は見込めないとの見方が強いが、長期的には LNG輸送需要は堅調に推移するこ

とが予想され、今後有望な市場としての期待は高いと考えられる。

その中で今後、日本海運が輸送シェアの拡大を図っていく上では、①供給増が

有力視される北米、豪州、アフリカ、ロシアから需要国向けの長期輸送案件をい

かに確保するか、②多様化する LNGトレードにいかに対応していくか、③LNG

サプライチェーンの上中流への進出拡大をいかに図るか、という点が重要にな

ってくるものと考えられる。

4-1. 新規プロジェクトの動向

テックスレポート等によれば、全世界の既存の液化プラントの年間処理能力

は 2014 年末時点で約 3.1 億トン、最終投資決定(FID: Final Investment

Decision)済み又は建設中のものが約 1.5 億トンあり、全世界の LNG輸出能力

は 2020年までに約 1.5倍に増えることが予想される(図 27参照)。

特に豪州と米国からの輸出量は大幅に増える可能性が高い。豪州では 2015年

中にオーストラリア・パシフィック、ゴーゴン及びグラッドストーン、2016年

にはイクシス、ウィートストーン及びプレリュードの各プロジェクトが生産開

始を予定しており、これらが順調に進めば同国の LNG輸出能力は年間 3,300万

トンから 8,600万トンに拡大することが予想される(図 28参照)。米国では 2015

年末又は 2016年にサビンパス、2017年にコーブ・ポイント、2018 年にキャメ

ロン及びフリーポートの各プロジェクトが開始予定となっており、同国の生産

能力は年間 5,600 万トンに拡大する見込みとなっている(図 29参照)。

図 26 各国の天然ガス液化プラント年間処理能力(2014 年末時点)

(出典)テックスレポート『ガス年鑑(2014年度版)』等を基に作成

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

リビアノルウェー

ペルーアンゴラ

UAEイエメン

パプアニューギニアブルネイ

赤道ギニアオマーンエジプト

トリニダード・トバゴアルジェリア

ロシアナイジェリアマレーシア

インドネシア米国

カタール豪州

(百万トン/年)

既存 最終投資決定(FID)済み又は建設中

Page 21: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

18

図 27 豪州における主な新規 LNG プロジェクト

図 28 米国における主な新規 LNG プロジェクト

(出典)図 28と図 29はいずれもテックスレポート『ガス年鑑(2014年度版)』等を基に作成

日本を含むアジアの需要家と欧米メジャーはこれらのプロジェクトへの出資

や生産者との売買契約を通じた LNGの調達に動いており、これまでの状況を踏

まえれば、これら両国の新規プロジェクトからアジアにもたらされる LNGは年

間約 8,000万トン(豪州から約 5,000万トン、米国から約 3,000 万トン)、その

内、日本企業の購入分は年間約 3,700万トン(豪州から約 2,000 万トン、米国か

ら約 1,700万トン)に達すると考えられる。

さらに、豪州と米国を含め、カナダ、モザンビーク、ロシアなどでは、FIDに

向けて計画中のプロジェクトが多数ある。特にカナダでは日本企業が参画する

Ichthys LNG

年産能力:840 万トン

開始予定:2016 年

Scarborough LNG

年産能力:600-700 万トン

開始予定:2020-21 年

計画中のプロジェクト

FID 済み又は建設中のプロジェクト

Australia Pacific LNG

年産能力:年 900 万トン

開始予定:2015 年

Gladstone LNG

年産能力:年 780 万トン

開始予定:2015-16 年

Prelude LNG

年産能力:360 万トン

開始予定:2016-17 年

Gorgon LNG

年産能力:1,560 万トン

開始予定:2015 年

Wheatstone LNG

年産能力:890 万トン

開始予定:2016 年

Browse LNG

年産能力:400-1,200 万トン

開始予定:2020 年

Cash Maple

年産能力:200 万トン

開始予定:2019 年

Arrow LNG

年産能力:900 万トン

開始予定:2019 年 Fisherman’s Landing LNG

年産能力:300 万トン

開始予定:未定

Freeport LNG

生産能力:1,320 万トン

開始予定:2018-19 年

Sabine Pass

生産能力:2,400-2,800 万トン

開始予定:2015 年

Cameron LNG

生産能力:1,200 万トン

開始予定:2018 年

Cove Point LNG

生産能力:560 万トン

開始予定:2017 年

Elba Island LNG

生産能力:250 万トン

開始予定:2017-18 年

Magnolia LNG

生産能力:800 万トン

開始予定:2018 年

Lake Charles LNG

生産能力:1,500 万トン

開始予定:2019-20 年

Golden Pass LNG

生産能力:1,560 万トン

開始予定:2019 年

Corpus Christi LNG

生産能力:1,350 万トン

開始予定:2018-19 年

Oregon LNG

生産能力:900 万トン

開始予定:2019 年

Jordan Cove LNG

生産能力:600-900 万トン

開始予定:2019 年

計画中のプロジェクト

FID 済み又は建設中のプロジェクト

Page 22: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

19

LNGカナダ、パシフィック・ノースウェスト、トリトン、オーロラなど多数の

プロジェクトが西岸ブリティッシュ・コロンビア州で計画されており、同国で計

画中の全プロジェクトを足し合わせると年間生産能力は 1 億トンを超える。ま

た、東アフリカのモザンビーク沖合でも年間 1,000-5,000万トンの生産能力が見

込めるプロジェクトの計画が検討されている。

実際にこれらのプロジェクトが順調に進むかどうかは、原油や石炭価格の動

向、アジア及び欧州における需要国の動向など様々な要因が影響してくるもの

と考えられるが、現時点においては、LNGの長期的な輸送需要は堅調に伸びて

いくとの見方が一般的といえる(「3-1. 天然ガス需給動向」参照)。

国際エネルギー機関(IEA)によれば、2012 年から 2040 年にかけて豪州の

LNG年間輸出量は約 6,000万トン、北米は約 5,800万トン、東アフリカ(モザ

ンビーク、タンザニア)は約 5,000万トン、ロシアは約 3,900万トン増えるとさ

れ、また、生産量から需要量を差し引いた年間純輸入量は中国が 1.4億トン、欧

州 OECD 諸国が 1.3 億トン、インドと東南アジアがそれぞれ 0.5 億トンずつ増

加するとされる(図 30及び図 31参照)。欧州や中国などはロシア及び中央アジ

アからのパイプライン輸送分を差し引いて考える必要があるが、IEA の上記予

測を踏まえれば、長期的には豪州、北米、アフリカ及びロシアを供給地とし、ア

ジア及び欧州を消費地とする LNG輸送が増えていく可能性が高いといえる。

図 29 主要国・地域における LNG 輸出量

図 30 主要国・地域における天然ガスの純輸出入量

(出典)図 23と図 24はいずれも IEA, World Energy Outlook 2014 を基に作成

0

20

40

60

80

100

120

北米 豪州 中東 北アフリカ 西アフリカ 東アフリカ ロシア

(百万トン)

2012年 2040年

-300

-200

-100

0

100

200

300

北米 中南米 欧州OECD

ロシア 中東 北アフリカ サブサハラ 豪州 中国 日本・韓国 インド 東南アジア

(百万トン)

2012年 2040年

Page 23: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

20

日本の海運大手は豪州と米国の新規プロジェクトに関連した長期用船契約の

受注確保に乗り出しており、既に発注されている30隻超のLNG船の大部分は、

これらのプロジェクトに関連した日本企業向けのものが中心となっている(一

部ロシアのヤマルプロジェクトなど海外向けもある)。今後は欧米メジャー向け

の輸送商談が本格化するといわれており11、計画中のプロジェクトの動向を注視

しつつ、長期輸送案件の積み増しをいかに図っていくかが重要といえる。

特に日本の海運企業は、他の国内海運企業や国内買主(ガス・電力・商社)又

は産ガス国の売主と LNG 船を共有するケースが多く、欧米メジャーや海外買

主、外国の海運企業と組んで LNG船を共有するケースは相対的に少ないといえ

る。最大輸入国である日本の買主との関係強化は今後も重要となるが、海外案件

の受注拡大を図る上では、海外企業との提携推進という選択肢も場合によって

は有効となる可能性があると考えられる。

4-2. LNG トレードの多様化

近年の LNGトレードの特徴として、生産国及び需要国の増加や変化などを背

景に輸送ルートが多様化している点が挙げられる。2013 年末時点で LNG の輸

出国は 17カ国、輸入国は 29カ国であるが、2006年以降の 7年間で輸出国は 4

カ国、輸入国は 11カ国増加している。今後も、新たな供給源からの輸出や供給

地を特定しないポートフォリオ契約の進展などと相俟って、輸送ルートや輸送

パターンが多様化していく可能性があると考えられる。

今後の新たな輸送ルートとして注目されるのが米国発アジア向けのシェール

ガス輸送である(図 32 参照)。特に米国のメキシコ湾岸及び東岸からは、2016

年に開通予定の新パナマ運河経由で輸送される予定となっている。同運河経由

の場合、代替ルートと比べて輸送日数が短縮され、コスト低減が期待されるが、

通航料や混雑状況といった懸念材料も指摘されており12、開通に向けた今後の動

向に注視が必要といえる 。

米国以外では、ロシアのヤマルプロジェクトから夏場に北極海航路を利用し

たアジア向け輸送も予定されている。同航路はスエズ運河経由と比べて輸送日

数の短縮とコスト低減を可能とするものであり、北極海資源の新たな輸送ルー

トとして発展していく可能性がある。また、カナダ西岸や東アフリカからアジア

向けの輸送など、計画中のプロジェクトの進捗状況によって輸送ルートが更に

拡充する可能性がある。

11 「LNG船商談/海外に主戦場シフト。邦船大手 欧州勢と競争激化」『日本海事新聞』

(2015年 3月 17日付) 12 Hal Brown, “MOL prepares for big impact of Panama Canal on its growing LNG

fleet”, Lloyd’s List, 25 February 2015.

Page 24: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

21

図 31 LNG トレードの多様化

アジアにおいても LNGトレードにおける変化の兆しが見られる。日本を筆頭

とするアジアの需要家は LNG調達コスト引き下げを目指し、供給源の多角化や

仕向地制限のない契約拡大を進めているが、こうした状況を背景に、近年は米国

や豪州の新規プロジェクトから仕向地制限のない契約で調達するケース、ある

いは、欧米メジャーとの間でポートフォリオ契約(産地を特定せずに売主が保有

する複数の供給源から購入する契約)を結ぶケースが目立つ。また、アジアでは

原油連動方式から天然ガス需給に基づく値決め方式への移行を図るため、LNG

取引市場の創設に向けた取り組みが進められているが、こうした動きに呼応す

るかのように、シンガポールでは LNG貯蔵能力の拡張や再輸出が可能な「オー

プンアクセス」方式の導入により、LNG取引のハブを目指す動きも見られ、欧

米メジャーやトレーダーも同国を拠点とした活動を活発化させている13。こうし

た状況が進展すれば、従来の固定ルート往復配船とは異なり、多様な積揚げ地を

経由する新たな輸送パターンが拡がる可能性がある。

これまで日本の海運企業は安定収益が見込める長期契約に基づく固定ルート

配船を主体としてきたと考えられるが、今後は、取引拠点からの再輸出や東南ア

ジア、中南米など新たな消費地向けの輸送など、多様化する LNGトレードへの

柔軟な対応を図ることが重要と考えられる。また、今後需要増加が見込まれる

LNG船船員の育成と資金調達をいかに進めるかといった課題への対応も必要に

なってくると考えられる。

13 「シンガポール、LNGの要衝へ―貯蔵所整備、割高な取引解消 シェルやガスプロム

が拠点」『日本経済新聞』(2014年 8月 19日付)

中国・インド・東南アジアの

需要増

欧州の需要増

アフリカの供給増

北米の供給増

豪州の 供給増

シンガポールの取引ハブ化

新パナマ運河

北極海航路

ヤマル半島

Page 25: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

22

4-3. 上中流への進出

近年、陸上受入基地と比べて低コストかつ短期間で整備可能な FSRU(浮体

式 LNG貯蔵・再ガス化設備)の利用が拡大しており、国際ガス連合(IGU)に

よれば、2013 年末時点で FSRU の年間再ガス化能力は 4,430 万トンで前年比

34%増となっている(図 33参照)。クラークソンによれば、2014年 7月初め時

点で 13隻の FSRUが稼働中、9隻が建造中であるが、ウルグアイ沖でのプロジ

ェクト向けに商船三井が発注している分を除けば、欧米船社の独壇場となって

いる。

図 32 LNG 受入基地の年間処理能力

(出典)International Gas Union, World LNG Report -2014 Edition を基に作成

生産基地としての FLNG(浮体式 LNG生産・貯蔵設備)の利用も注目されて

いる。クラークソンによれば、海底からの天然ガス生産が全生産量に占める割合

は約 3 割であり、その割合は今後も増大し続けるとされる。FLNG を活用した

プロジェクトでは、2015年末の生産開始が予定されるマレーシア沖でのプロジ

ェクトに続き、2017年には豪州沖、2018年にはモザンビーク沖でのプロジェク

トが予定されており、計画中のプロジェクトが全て実現すれば、45 隻分の需要

が発生するとされる(2014年 7月時点で建造中の 5隻を含む)14。

こうしたオフショア事業は市場としてのポテンシャルがあるだけでなく、欧

米メジャーや新興国のエネルギー大手との関係深化を図る好機でもあり、LNG

輸送案件への波及効果も少なからず見込めるのではないかと考えられる。

14 Clarkson Research Services Limited, LNG Trade & Transport 2014, p.12.

0

100

200

300

400

500

600

700

800

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(百万トン/年)

FSRU

陸上LNG受入基地

Page 26: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

23

5. まとめ

2013年の世界の LNG貿易量は約 2.4 億トンであり、主に中東、東南アジア、

豪州及びアフリカから東アジアと欧州に供給されている。2013 年までの 10 年

間の LNG 貿易の年平均増加率は 6.8%と高く、今後も年平均 4-6%前後で推移

するとの見方が多い。特に豪州と米国で建設中の新規プロジェクトが順調に進

めば両国からの輸出量は大幅に増える可能性が高い。また、両国を含め、カナダ、

モザンビーク、ロシアなどで計画中のプロジェクトが多数ある。これらのプロジ

ェクトが順調に進むかどうかは原油・石炭価格の動向や需要国の動向などが影

響してくるものと考えられるが、IEAの予測によれば、長期的には豪州、北米、

アフリカ、ロシアからアジア及び欧州への供給が増えていく可能性が高いとい

える。

日本は世界最大の LNG 船隊を保有しており、LNG 船船腹量の世界シェアは

2割前後と考えられる。日本の海運大手は米国と豪州の新規プロジェクトに関連

した新造発注を進めており、計 30隻超の発注残の大部分は、これらのプロジェ

クトに関連した日本企業向けのものが中心となっている。特にヘンリーハブ価

格に基づく米国シェールガスの調達は価格体系の多様化に大きな意義があると

考えられ、同輸送を担う日本海運の存在は日本経済及び国民生活にとって重要

と考えられる。

今後は計画中のプロジェクトの動向を注視するとともに、場合によっては海

外企業との提携といった選択肢も視野に入れつつ、長期輸送案件の積み増しを

図ることが重要といえる。また、生産国と需要国の増加や変化、仕向地制限のな

い契約やポートフォリオ契約の進展、シンガポールなど取引拠点からの再輸出

や東南アジア、中南米といった新たな消費地向けの輸送など、LNGトレードの

多様化が進む可能性がある。日本の海運企業は安定収益が見込める長期契約に

基づく固定ルート配船を主体としてきたと考えられるが、今後は多様化する

LNG トレードへの柔軟な対応を図ることが重要と考えられる。また、LNG 船

船員の育成や資金調達といった課題への対応も必要になってくると考えられる。

Page 27: LNG 海上輸送の動向LNG は超低温であり、また、天然ガスを液化すると容積は約600 分の1 に圧 縮されるため、積卸し時や輸送時には適切な温度管理や圧力調整が必要となる。このため、LNG

24

[参考資料]

- BP, Energy Outlook 2014, January 2014

- BP, Statistical Review of World Energy(各年版)

- Clarkson Research Services Limited, LNG Trade & Transport(各年版)

- Drewry Maritime Research, Shipping Insight

- GIIGNL, The LNG Industry(各年版)

- Hal Brown, “MOL prepares for big impact of Panama Canal on its growing

LNG fleet”, Lloyd’s List, 25 February 2015.

- IEA, World Energy Outlook 2014

- International Gas Union, World LNG Report -2014 Edition

- 糸山直之『LNG船がわかる本(新訂版)』(成山堂書店、平成 24年)

- 岩瀬昇『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』(文春新書、2014年)

- 臼井潔人「海の物流システム革新事例:商船の変遷史(10)LNG船/船型と

受け入れ基地標準化で貿易振興」『日本海事新聞』(2013年 3月 25日付)

- 資源エネルギー庁『エネルギー白書』(各年版)

http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/

- 「シンガポール、LNGの要衝へ―貯蔵所整備、割高な取引解消 シェルや

ガスプロムが拠点」『日本経済新聞』(2014年 8月 19日付)

- テックスレポート『ガス年鑑(2014年度版)』(2014年 11月)

- 日本エネルギー経済研究所『アジア・世界エネルギーアウトルック 2014』

(2014年 10月)

- 日本郵船『NYK Factbook I』(各年版)

- 日本郵船 LNG 船運航研究会『LNG 船運航の ABC』(成山堂書店、平成 18

年)

- LNG産消会議 2014関連資料(http://www.lng-conference.org/)

- 「LNG 市場の構造変革と新たな取引形態の展開」『海運』(2015 年 4 月号)

- 「LNG船商談/海外に主戦場シフト。邦船大手 欧州勢と競争激化」『日本海

事新聞』(2015年 3月 17日付)

- JX日鉱日石エネルギー『石油便覧』

(http://www.noe.jx-group.co.jp/binran/part06/chapter03/index.html)