ministry of finance - mof.go.jp ·...

23
財務省 MINISTRY OF FINANCE http://www.mof.go.jp/about_mof/recruit/mof/ 〒100-8940 東京都千代田区霞ケ関3-1-1 TEL.03-3581-4111(内線5464) 財務省 大臣官房秘書課 [採用に関するお問い合わせ]

Upload: others

Post on 31-Aug-2019

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

財務省

MINISTRY OF FINANCE

http://www.mof.go.jp/about_mof/recruit/mof/

〒100-8940 東京都千代田区霞ケ関3-1-1TEL.03-3581-4111(内線5464)

財務省大臣官房秘書課

[採用に関するお問い合わせ]

0201

CONTENTS

CONTENTS

 今このページを開いている皆さんは、国家公務員になったらこん

な仕事をしたいとの想いをぼんやりながらも胸に秘めていると思い

ます。財務省はその皆さんそれぞれの想いに応えられる可能性を持

つ、懐の深い職場であることをここにお約束します。

 この冊子を読んでもらえれば分かるように、財務省職員が立ち向か

う課題は多岐にわたり、また深い洞察を要します。世の中の一時的な

雰囲気や流行りの言説に流されず、知力、体力、人間力を総動員して自

分の頭で誠実に考え抜き、説明し、納得を得て、実現すること。声なき

声を聞き取り、常に当事者であること。それが財務省職員の姿勢です。

 もちろん、誰しもが入省当初から課題に対応できる力を持っている

わけではありません。職員は皆、日々の悪戦苦闘と試行錯誤の連続

を経て、目まぐるしく変動する世界に立ち向かう力を高めてきました。

自分を高めることが、世界を良くすることにつながる。新しい世界に

踏み出し、新しい自分になっていく。国内、海外を問わず、財務省に

はそのフィールドが広がっています。

 何より、財務省の最大の魅力は、人材の多様さです。すべての職

員が十人十色の強みを発揮し、世界のあらゆる課題を相手にしてい

ます。その新しい仲間となる皆さんと、今後財務省で直にお話しする

機会を楽しみにしています。皆さんが今はまだ想像もしていないよう

なたくさんの将来の選択肢と共に、こちらに飛び込んできてもらう準

備はいつでも万全に整っています。 

 これからの日本を背負って立つべき皆さんの来省を、心よりお待ち

しております。

~採用担当者からのメッセージ~

はじめに

菅野 裕人 [平成9年入省]

財務省大臣官房秘書課調整室長

採用担当者からのメッセージ

【第1部】財務省の活動

特集1 予算編成:文部科学予算対談

【第2部】キャリアパス

特集2 女性職員からのメッセージ

特集3 特別寄稿:財務省から世界銀行の舞台へ

【第3部】財務省職員の活躍するフィールド

特集4 若手職員対談

01

03

17

19

31

33

35

43

0403 財務省の活動

FUNCTION/ORGANIZATION

財務省の活動【第1部】

FUNCT ION

国税庁

OR G AN I ZAT ION

[財務省の使命]

財務省の組織

大臣官房 主計局 主税局 関税局

本省

財務省

外局

内部部局 内部部局 地方支分部局地方支分部局施設等機関

理財局 国際局財務総合政策研究所

会計センター

税関研修所

関税中央分析所

財務局 税関 国税局本庁

税務署

財務大臣

副大臣 (2)

大臣政務官

事務次官

財務官

秘書官

(2)

局長

次長(2)

財政投融資総括課

国有財産企画課

国有財産調整課

国有財産業務課

総務課

国庫課

管理課

計画官(2)

国債企画課

国債業務課

官房長

総括審議官

参事官(10)

審議官(11)

サイバーセキュリティ・情報化審議官

政策評価審議官

秘書課

厚生管理官

文書課

会計課

地方課

総合政策課

政策金融課

局長

次長(3)

総務課

司計課

法規課

給与共済課

調査課

主計官(11)

総務課

調査課

税制第一課

税制第二課

税制第三課

主計監査官

局長

参事官

総務課

管理課

関税課

監視課

業務課

調査課

局長

信用機構課

局長 税関支署

税関出張所

税関監視署

次長

総務課

調査課

国際機構課

地域協力課

為替市場課

開発政策課

開発機関課

納税者としての国民の視点に立ち、効率的かつ透明性の

高い行政を行い、国の財務を総合的に管理運営すること

により、健全で活力ある経済及び安心で豊かな社会を実

現するとともに、世界経済の安定的発展に貢献すること。

内閣府

警察庁

金融庁

消費者庁

復興庁

総務省

法務省

外務省

文部科学省

厚生労働省

農林水産省

経済産業省

国土交通省

環境省

防衛省

日本銀行

不動産市場

株式市場

債券市場

為替市場

金融システム

G20、G7

発展途上国

WTO・WCO

ASEAN諸国中国、韓国、インド

IMF国際開発金融機関

財務事務所

出張所

財務省

財政政策

予算編成P05

税制企画P07

財政投融資P09

マクロ経済政策P10

政策金融政策P11

国際関連政策

関税政策P14

国際金融政策P15

途上国開発政策P16

マーケット関連政策

国債管理政策P12

為替政策P13

年度の予算編成の基本方針が議論され、地方からも公共事業関係費の大幅増に向けた陳情がたくさん来ます。審議会の正論に加え、政府・与党、更には地方に通じるキーワードが必要です。今回の予算では「安定的な確保」と「人手不足による供給制約」。削減はしないが、多くは増やせないということで、最終的に、公共事業関係費は5兆9,763億円、前年度比+26億円の微増で決着しました。その上で、物流効率化のための道路整備や訪日外国人の受入能力を拡充するための港湾・空港整備など成長力を強化する事業への重点化、公共工事の施工時期を平準化し建設現場の生産性を向上するための「ゼロ国債」の導入、PPP/PFIを推進するための制度改正など、質の面で大幅な充実を図りました。

 予算編成の期間は9月から12月の4か月という期間に過ぎませんが、この4か月の成果を大きく左右するのが1月から8月までの期間です。公共事業の現場を回り、何が起こっているかを把握することから始まり、公共事業についての国際的な潮流や、更には、経済財政政策のあり方まで、予算編成の基礎となる知見をどれだけ蓄積できるかが重要となります。こうした1日1日の積み重ねが数字という形で予算に現れ、将来世代を含めた国民の生活を左右します。この重責を果たすことこそ、まさに財務官僚の本分なのです。

その予算を効率化する必要があるのか、なぜ新たな負担をお願いする必要があるのか、関係者が納得できる理由を提示する必要があります。ファクトを積み重ね、その必要性を理解させる粘り強さ。まさに、財政当局の矜持が問われる局面です。

 こうした予算編成の最前線に立つのが主査の仕事です。これまでに培った知識・経験を総動員して、5年先、10年先といった将来も見据え、その年の予算をどのような姿にするかを考えます。こうした作業は机の上だけで終わる仕事ではありません。予算執行の現場に足を運び、実際に目で見て耳で聞いて、そして頭で考える必要があります。更に、要求官庁との信頼関係の構築も重要です。論理的・建設的な対話を通じ、どうやって我々の主張に納得してもらうか、人間としての総合力が問われます。このため、仕事は厳しいですが、その仕事をやり遂げた後の充実感もまた一入です。

 公共事業関係費は約6兆円。慢性的な低成長や災害の頻発化・激甚化を受けて、増額圧力が高まっています。こうした中で、公共事業関係費の水準をどうするか、また、道路や河川、港湾といった分野のうち、どの予算を伸ばし、どの予算を効率化するか、公共事業総括・国土交通係という約30人のチームが一丸となって対応することになります。

 8月末に国土交通省をはじめ各府省から概算要求が来ます。公共事業による景気刺激への期待の高まりを受けて、夏の暑さとともに、予算の増額に向けたボルテージも高まります。

 こうした中、冷静な議論を求めるため、財務省の審議会で平成29年度予算編成に向けた提言を行います。我々からは、社会資本の整備水準の向上や人口減少等を踏まえると、公共事業関係費は現在の水準で安定的に推移させていくことが基本であることを提言しました。その際、こうした提言が説得力を持つよう、「量」から「質」へという考え方の下、既存ストックの有効活用やPPP/PFI等による効率化を進めながら、潜在成長力の向上に役立つ事業等への重点化を行い、少ない費用で最大限の効果を実現すべきことを主張しました。これまでの資料を一新し、過去の政策の成功例と失敗例の比較、公共工事の施工時期の平準化など新たな論点も設定し、これらの資料の一部は政府部内でも広く共有されることになりました。

 財政審での議論が終わり、銀杏の葉が散り始める頃、予算の最終決定に向けたプロセスが始まります。政府・与党で来

財政政策

希望ある社会を次世代に

予算編成

𠮷田 武司Tak e s h i YO SH IDA

[平成12年入省]

平成12年 大臣官房文書課平成14年 大臣官房政策金融課平成15年 主税局調査課平成17年 留学(米・コロンビア大)平成18年 理財局国有財産調整課 課長補佐平成20年 理財局計画官補佐(農水・環境、経済産業係担当)平成21年 在英国大使館平成24年 主計局主計官補佐(厚生労働係担当主査)平成25年 内閣官房健康・医療戦略室平成25年 主計局主計企画官補佐(調整係担当主査)平成26年 主計局総務課 課長補佐平成27年 主計局主計官補佐(国土交通係担当主査)

主計局主計官補佐(公共事業係、国土交通係担当主査)兼公共事業企画調整室長

0605

 国の予算97兆円は、社会保障や公共事業、教育、安全保障など様々な政府の活動に充てられています。これらの予算は、少子高齢化や低成長、格差問題、緊迫する国際情勢をはじめ、日本が直面する諸課題に対応するためのものです。我々は予算の概要を説明する時に歳出・歳入の構成を示した円グラフを使いますが、この円グラフはまさに国の課題の断面図と言っていいものです。それぞれの予算を課題解決のためにいかに有効なものとするか、また、それぞれの課題のためにどの程度の財政資源を配分するか、そして、財政赤字と累積債務の問題を解決するため歳出と歳入のあり方をどうするか、日本国の予算の課題は尽きません。

 こうした課題に正面から向き合うのが予算編成です。例えば、経済再生のためには、成長力強化に役立つ予算への重点化が必要です。しかし、羊頭狗肉の予算要求があるのも事実。「成長」という看板を掲げている要求の中から有効な施策を見抜き、その内容に磨きをかける必要があります。また、政策金融や規制改革など予算以外の政策の有効性についても検討しなければなりません。まさに、政策分析のプロとして財政当局の見識が問われる局面です。 また、財政健全化のためには予算の効率化や歳入増により収支の改善を図っていかなければなりません。もっとも既得権の削減や新たな負担には抵抗がつきものです。なぜ、

予算~国の課題の断面図~

予算編成~財政当局の見識と矜持~

主査の仕事~人間としての総合力~

夏~概算要求~

秋~財政制度等審議会~

冬~予算の概算決定~

予算編成を終えて

公共事業・国土交通分野の予算編成(公共事業総括・国土交通係)

【業務の主なカウンターパート】各省庁、国会議員、各種業界団体、地方公共団体、経済界、学界、マスコミ、各国財政当局、国際機関

【概要】国の予算は97兆円で、このうち税収等で賄われているのは63兆円。残りの34兆円は借金で、政府の借金の残高は地方分もあわせるとGDPの2倍に達しかねない状況です。経済再生と財政健全化の両立ができなければ、急激なインフレといった厳しい解決策しかありません。将来世代を含め、国民に対して責任ある予算を編成することがますます重要になっています。

FISC

AL POLICY

財務省の活動

がゼロから税制改正事項を造り上げることもありますが、いずれの場合も、数多ある論点について検討を加え、制度の詳細を考えていく必要があります。12月に税制改正大綱が決定されると、速やかに法案を作成して国会に提出します。国会審議において政府としての正確な答弁を準備することも主税局の仕事です。 

 昨年4月以降、相次ぎ発生した熊本地震を契機に、災害関連税制に関する議論が始まりました。これまで、災害が発生した際には、その都度、必要性を判断して特別立法により対応してきました。しかし、大災害により自宅が滅失してしまった方と、落雷等で局地的に自宅が滅失してしまった方とで大きく取扱いが異なるのは公平でしょうか。どちらの場合も、被災者は同様に気の毒であるように思えます。一方、被災者の私有財産の形成を税制上支援することについては、保険等により自分で備えていた方とそうでない方との間に不公平が生じるという問題もあります。こうした様々な論点について整理するとと

財政政策

この世で確かなものは、税金と死だけ

税制企画

寺﨑 寛之Hi r o y u k i T E RA SAK I

[平成10年入省]

平成10年 理財局資金第一課平成12年 広島国税局平成12年 留学(英・ウォーリック大)平成14年 主税局総務課平成16年 在インド大使館平成19年 国税庁長官官房総務課 課長補佐平成20年 関税局業務課 課長補佐平成21年 内閣官房副長官補付平成23年 主計局給与共済課 課長補佐平成24年 主計局調査課 課長補佐平成25年 主計局主計官補佐(文部科学係担当主査)

主税局税制第一課 法令企画室長

0807

 “In this wor ld nothing can be sa id to be cer ta in , except death and taxes .” ベンジャミン・フランクリンの言葉です。洋の東西を問わずおよそ文明が起こり、広い意味での政府が存在する以上、その経費を賄うために、国民は税を負担しなければなりません。古代エジプトでは賦役提供が税の中心で、中国では清代に至るまで田賦が大きな役割を果たしていたようです。日本では現在、所得税、法人税、消費税の三税が基幹税と呼ばれています。このように、形態は様々に変化しますが、税は、政府が社会保障給付、教育、警察といった財・サービスを提供する上で、その財源を調達するという必要不可欠な機能を持っています。税は国家の基本であると言われる所以です。

 いま一度、前出のベンジャミン・フランクリンの言葉を見てみましょう。「税」は「死」と並べられているわけですから、「出来れば避けたいもの」というニュアンスが含まれているのかと思います。納税者の側から見れば、いくら政府から財・サービスの提供を受けるからといって、汗水垂らして稼いだお金を納めることには少なからず抵抗を感じる方もいらっしゃるはずです。政府支出の無駄を無くすのは当然として、税制自体が国民にとって納得の出来る仕組みとなっていなければ、国民の納税意識が著しく下がり、国家の基本的機能が不全に陥る危険すらあるのです。納税者から「ちょっといやだけどしょうがないよね」と言ってもらえる税制というのは意外と難しいものなのです。

税は国家の基本

国民が納得できる税制

求められるのは不断の見直し

災害関連税制の見直しより良い日本を実現したい

主税局の仕事

 「国民が納得出来る税制」を構築・維持していくためには、ある時点で好ましい仕組みを、そのまま放置しておけば良いということでは決してありません。経済社会の構造は常に変化を続けており、それに合わせた不断の見直しが必要です。例えば、使用従属性の高い「雇用的自営」の割合の増加は、サラリーマンと自営業主を明確に区別する現在の所得税制の根本的な見直しを迫るものかもしれません。多国籍企業の増加は、国際的な租税回避をより複雑化・巧妙化し、税制面での各国間の協調は一層重要になっていくでしょう。ICT技術の発達は、近い将来、納税手段や税務当局の調査手法を大きく変えるかもしれません。今ある制度に対する国民の理解、納得感を前提としながら、必ずしも現状にとらわれることなくダイナミックに見直していくという気概、探究心、根気が求められるのです。

 「主税局」は、大宝律令により体系化された官制の中で、税の徴収を担当した「主税寮」に由来する由緒正しい名前です。主税寮は「しゅぜいりょう」とは読まず、「税金を取る国家の力」という意味で、「ちからのつかさ」と読みます。このように税制については、古くから政府内に専門の部局が設けられ、長い歴史の中で一貫して重要な政策ツールであり続けてきました。毎年の税制改正の内容は、政府内で議論を重ね、さらに与党の議論を経て決定されていきます。8月末に各省から税制改正要望があり、年度改正の本格的な議論が始まります。税制改正要望を各省と協議しながら磨き上げていくことも、主税局

もに、熊本地震の被災状況について情報を集めて検討を行いました。その結果、29年度税制改正では、災害一般に適用することが適当なものと、災害を指定して適用することが適当なものとに分けて、災害関連税制をあらかじめ整備(常設化)しておくことになりました。その後発生した糸魚川市大規模火災に対応できたという意味でも、時宜にかなった改正であったと思います。

 今から20年前、採用面接で「なぜ大蔵省に入りたいのか」と問われて、学生テラサキは、「国のために働きたくて」とやや間の抜けた答えをしました。でも、それから20年経った今、中年テラサキは思うのです。「国のために働きたいのなら、やはり財務省だ」と。税、予算、為替、国債管理、関税・・・、財務省ほど多様な政策ツールをもった職場を、少なくとも私は知りません。自分の可能性を最大限に高めて、より良い日本を実現したいと思うのであれば、是非、財務省を訪れてみて下さい。

【業務の主なカウンターパート】国税庁、総務省(地方税担当部局)、各省庁、産業界、学者・エコノミスト、国会議員、マスメディア

【概要】税には、政府が提供する財・サービスの経費を調達するという重要な役割があります。他方で、納税者にとって税は「出来れば避けたいもの」かもしれません。国民にとって納得の出来る税制を構築・維持するために、毎年の税制改正プロセスで、主税局は様々な論点について検討を行い、制度の詳細を考えていく役割を担います。

瀧口 暉己 Te r u k i TA K I GUCH I [平成28年入省]

主税局調査課

 主税局は日本の税制をデザインできる日本で唯一の職場です。熾烈を極める諸国間の経

済競争においては、税制は単なる内政問題を超えた政策ツールとして他国のそれと相対しま

す。相手国をウォッチするにあたっての最新情報とは、大抵翻訳もされない原語資料です。私

が見つけたドイツ議会資料が意思決定の参考となったり、私のメールボックスを介して日本国

財務省がOECDに文言交渉を行ったりと、何とも壮大な仕事だと感じます。

財務省の活動

FISC

AL POLICY

財政政策

 民間金融が未発達な戦後~高度成長期には、東海道新幹線や東名高速等に財政投融資(財投)は積極的に活用されてきました。しかし、民間金融が大きく発達した現在においても、政府自ら公的資金を用いた投融資(貸付、出資等)を行う必要があるのでしょうか? 現在でも、社会的・政策的必要性が高いものの、民間だけでは十分な資金供給がなされない分野は依然として存在します。例えば、リニア中央新幹線のような、長期・大規模プロジェクト、リスクの高い新興国への投融資、低金利の有利子奨学金の供与等がその典型例です。 財投の融資の特徴は、貸付期間が長期(最長40年。一般的に民間では20年、30年の貸付は困難。)で、金利が固定・低利(国債金利と同水準)であることです。ただし、民間金融を阻害しないよう、民業補完に徹することが必要です。

 経済対策(平成28年8月)の目玉の一つとして、リニア中央新幹線への財投の積極活用が盛り込まれました。財投から3兆円(単純比較はできませんが、年間防衛費は約5兆円)を融資することで、全線(東京-大阪)開業を最大8年間(平成57年→49年)前倒しすることが可能になり、沿線での民間企業の先行投資等、地域経済の活性化が期待されています。

 新興国の旺盛なインフラ需要を取り込んでいくことは、我が国の経済成長にとって不可欠ですが、新興国への投融資はリスクも伴います。財投からの出資により国際協力銀行の財務基盤が強化され、更なるリスクテイクが可能となりました。民間銀行や商社と連携し、インフラ投資の拡大(アジアの火力発電所等)が見込まれています。

財政投融資=日本政府の“金融業”~リニアから奨学金まで~

内外経済情勢を的確に分析し、経済・財政政策の総合調整をリード

財政投融資

マクロ経済政策

久山 淳爾Jun j i KU YAMA[平成12年入省]平成12年 大臣官房文書課平成16年 大臣官房政策金融課平成17年 留学(英・ケンブリッジ大)平成18年 金融庁総務企画局企画課 課長補佐平成19年 金融庁総務企画局国際室 課長補佐平成21年 国際局調査課 課長補佐平成22年 在ベトナム大使館平成25年 国際局為替市場課 課長補佐平成27年 理財局計画官補佐(内閣・財務係担当)

理財局財政投融資総括課企画調整室長

森田 稔Min o r u MOR I TA[平成5年入省]平成 5年 証券局総務課平成 7年 米州開発銀行職員平成10年 主税局調査課平成11年 公正取引委員会事務総局経済取引局総務課 課長補佐平成13年 理財局財政投融資総括課 課長補佐平成13年 内閣官房行政改革推進事務局特殊法人等改革推進室平成14年 内閣府本府政策金融改革準備室参事官補佐平成15年 内閣官房行政改革推進事務局特殊法人等改革推進室  平成15年 主計局主計官補佐(農林水産係担当主査)平成16年 主計局主計企画官補佐(調整係担当主査)平成17年 主計局主計官補佐(農林水産係担当主査)平成18年 主計局主計官補佐(外務、経済協力係担当主査)平成19年 主計局主計官補佐(農林水産係担当主査)平成20年 金融庁総務企画局市場課 市場企画管理官          平成21年 大臣官房文書課 法令審査室長平成22年 大臣官房文書課 調査室長平成23年 JBICワシントン事務所 上席駐在員平成26年 主税局総務課 主税企画官

大臣官房経済財政政策調整官

1009

 財政投融資の関係部署は、制度や計画全体を担当する財政投融資総括課と各機関を担当する計画官室等からなります。私は入省18年目になりますが、室長というポジションでは、自ら企画立案を行いつつも、各課長補佐の業務を調整・指導し、円滑な政策立案・意思決定を図っていくことが任務です。 財投計画の編成に際しては、過去の行財政改革等に照らして計画総額は適切な規模か、民業を圧迫していないか、重点分野に適切な額が措置されているか、一方、実績の乏しい分野に不要な額が配分されていないか等の観点から、計画全体の絵姿を整えていきます。 例えば、全体としてあと○○○億円削らなければならない。A補佐は既に○○億円削っているが、追加で○○億円の削減が必要、一方、B補佐には○億円増額させるべき・・・追加削減を打診されたA補佐は当然難色を示しますが、計画の全体像や、政府の大方針を示して説得し、同時に、要求側を納得させる理由を一緒に考える・・・など。こうして、国会審議に耐えうるだけの説得力を伴うものになって初めて、政府案が出来上がります。

 金融業である以上、いわば「銀行家」として、会計・金融・投資・リスク管理等、高度のファイナンスの知識が必要になりますが、周囲には専門家も多く、また通信等の研修制度も充実しており、自己研鑽の機会には事欠きません。 また、経済政策の一環を金融的手法で支え、財政も金融も同時に経験でき、巨大なインフラ投資などの経済政策のダイナミズムを堪能できるのが財投の醍醐味です。 自ら血と汗を流して作り上げた計画案が、国家の正式な計画として成立する瞬間は、経済官僚として何物にも勝る達成感を感じる時です。士、一生を賭けるに値する壮大な仕事と言えましょう。この冊子を手にされた皆さんと、日本、ひいては世界の更なる繁栄のため、共に働ける時を楽しみにしています。

 マクロ経済政策と聞くと、財政政策や金融政策が端的に思い浮かびますが、財務省が関与するツールだけでも、予算・税制・財政投融資等、多岐にわたります。また、これらの施策は、日本銀行の金融政策や、政府が進める構造改革の取組みなどと、常に連携しながら最大限の効果を発揮することを求められます。経済財政諮問会議をはじめとする各種重要会議への参画、日本銀行の金融政策との連携などを通じて、各種マクロ経済政策が最適な形で総動員されるよう議論をリードしています。

 経済政策の立案・調整にあたっては、客観的な経済情勢の把握・分析が何よりも重要です。その客観性担保のためにも、10名程度の民間企業からの出向者が総合政策課職員として各種経済指標の分析に従事するほか、外部のエコノミストや学者との意見交換等を通じて、客観的でバランスのとれた経済分析能力の維持に努めています。様々なステイクホルダー、具体的には格付機関や外国人投資家に対する説明などを通じ、国内外に経済財政政策の最新情報やその意図などを発信していくことも重要な業務の一つです。

 昨年8月、政府は、総額28兆円にのぼる「未来への投資を実現する経済対策」をとりまとめました。その中で、「日本銀行とも連携しつつ、金融政策、財政政策、構造改革を総動員してアベノミクスを一層加速」という基本方針を謳っています。金利上昇を通じたクラウディングアウトのリスクを回避しながら財政政策も有効に動員しているという点で、日本では、世界に先駆けて最適なポリシーミックスが追及されているほか、日本経済の底力を引き上げるために必要な中長期的構造改革にも目配りしたものとなっています。中央銀行の

独立性を大前提としつつ、常日頃から日本銀行などとの密接な連携を図っていることなどが、こうした取り組みにつながっています。

 他方で、財政政策の積極活用という点から、ヘリコプターマネー(日本銀行保有の日本国債の無利子永久債化等)も含め、様々に極端ともいえる経済理論や政策提言が展開されたのも2016年の特徴です。こうした内外の最新の経済理論などにも、常日頃から目配りして分析を進めておくことが求められます。日本経済を単なる経済理論実践のための実験場に化すことなく、将来世代や納税者の代弁者という気概をもって、地に足の着いた責任ある経済政策論議を実践しています。

 英国のEU離脱問題(Br e x i t)、米国の大統領選挙等、2016年中も、市場変動をもたらす様々なイベントが相次ぎました。最新の情報を交換し、不測の事態に万全の備えをとる観点から、金融庁・財務省・日本銀行が一堂に会する「国際金融資本市場に係る情報交換会合」を開催しています。市場動向の把握、内外イベントの分析、関係部局間の密接な連携によって、タイムリーに同会合を開催し、市場の不安を打ち消すことに努めています。

 マクロ経済官庁ということで、数字・経済理論・理屈などはもちろん重要ですが、最後はヒト。将来世代や弱者の立場にたって「想像するちから」を常にフル発揮し、同僚・カウンターパートと喧々諤々議論して政策立案にあたっていく仕事です。この冊子を開いてくれた皆さまと一緒に仕事ができる日を楽しみにしています。

【業務の主なカウンターパート】政策金融機関(日本政策投資銀行、国際協力銀行等)、独立行政法人(JICA、鉄道・運輸機構等)、官民ファンド(産業革新機構等)、各省庁(経済産業省、国土交通省等)、メガバンク、証券会社、商社等

【概要】財政投融資とは、財投債という国債で調達した資金等を原資とする、政府の投融資(貸付、出資等)であり、いわば政府が行う“金融業”。残高では約150兆円と、メガバンク(総資産約190兆円~300兆円)に匹敵。国際協力銀行、鉄道・運輸機構等を通じ、リニア建設、海外インフラ投資、奨学金等、様々な分野に資金を供給。

【業務の主なカウンターパート】内閣府、日本銀行、経団連等の民間団体、民間エコノミスト、大学・シンクタンク、格付機関、外国人投資家

【概要】財政を含むあらゆる経済政策は、内外の経済動向や構造変化を的確に踏まえたものでなければなりません。経済やその変調に係る冷静で客観的な分析、経済構造変化の的確な把握、最先端の経済金融理論のフォロー、民間エコノミストや格付機関等との意見交換などを通じ、あるべき経済財政政策を日々 議論・調整しています。

具体例1:リニア中央新幹線への融資(総額3兆円!)

自己研鑽とやりがい

なぜ「政府が金貸し」を行うのか?

具体例2:海外インフラ投資の拡大に向けて̶ 国際協力銀行への出資 ̶

財政投融資総括課・企画調整室長の仕事 マクロ経済政策の総合調整

内外の経済分析

金融政策・財政政策・構造改革の総動員

最新の経済理論のフォロー

市場変動への対応

財務省の活動

FISC

AL POLICY

FISCAL POLICY

マーケット関連政策

1211

MARKET POLICY

財政政策

財務省の活動

日本の企業・地域の成長を後押しする全国大のネットワーク

 「銀行」や「金融機関」と聞いて多くの方がまず思い浮かべるのは、預金口座を設けてお金を預けている民間の金融機関だと思います。一方で、政策金融を行う「政府系金融機関」は、民間金融機関と異なり、基本的に預金を受け入れておらず、政府からの信用補完を受けてその業務を行っています。 では、このような特徴を持つ政府系金融機関がなぜ必要なのでしょうか?国際的な金融危機や大規模災害の発生時などにおいては、企業の資金需要に対し、預金者の保護が求められる民間金融機関だけでは必ずしも十分な資金を供給ができない場面が出てきます。そこで活躍するのが、預金に依らず、政府からの信用補完により金融活動を行う政府系金融機関です。 実際に、リーマンショックや東日本大震災の発生時においては、政府系金融機関は日本企業の資金繰りや復旧・復興を支援するための資金供給を行い、日本経済の立て直しに大きく貢献しました。また、近年は、日本の成長戦略の実現に向け、民間金融機関と連携しつつ、特に、中小企業・小規模事業者等の創業や新事業展開、海外展開等といった地域企業の更なる成長投資の後押しを行うことで、地域の活性化に対して積極的に貢献していくことが求められています。

 私が主に担当しているのは、中堅・大企業向けに長期の事業資金の供給を行っている日本政策投資銀行です。民業補完の原則の下、日本政策投資銀行の果たす役割は、戦後の経済復興期から高度経済成長期における重要産業の育成・社会資本の整備や、リーマンショックや東日本大震災等の危機時におけるセーフティーネット機能の発揮など、時代の求めに応じて変化してきています。 平成27年の日本政策投資銀行法の改正においては、企業に対する成長資金の供給が不十分である現状を打破し、地域

の自立的発展や日本企業の競争力強化を進めていくため、企業間連携や休眠技術の活用といった日本企業の成長投資に必要となる積極的な資金供給を、日本政策投資銀行が担っていくことになりました。この新たな日本政策投資銀行の役割が最大限果たされるよう、効果的な制度設計・運用を行うのが私の役目です。 「地域の自立的発展や日本企業の競争力強化のため」と言っても、地域の状況や企業のニーズは様々であり、効果的な制度の設計や運用を行うためには、日々変化している各地域における企業活動の状況をつぶさに把握することが必要不可欠です。そのためには、カウンターパートである各機関の担当者と日々の情報交換は欠かせませんし、実際に各地域の現場に足を運び、地域金融機関や事業者の意見や取組内容を直接聴いて回ることも重要になってきます。政府系金融機関は全国規模で地域に張り巡らされた支店網を有しており(日本政策金融公庫152支店、日本政策投資銀行10支店等)この各機関のネットワークを通じて得られる情報を活かして、私は政策の企画立案を行っています。 実際の投融資先に出向くと、「政府系金融機関による支援のおかげで、新たな取組に向けた一歩が踏み出せた」といった事業者の方からの声を聞くことがあります。やりがいを感じる瞬間であるとともに、より良い制度運営に向けて一層責任を感じる瞬間でもあります。このように、政府系金融機関の持つ全国大のネットワークや、民間金融機関や事業者等の生の声を通じ、日本全国で行われている成長に向けた様々な企業活動を間近で体感できることに加え、それらを活かして現場に根ざした政策立案や制度設計を行うことができるのが政策金融の醍醐味だと感じています。

政策金融とは

現在の業務について

政策金融

長畑 匡紀Mas a k i NAGAHATA[平成20年入省]平成20年 主計局総務課平成21年 主計局法規課平成22年 熊本国税局平成23年 厚生労働省老健局高齢者支援課平成25年 留学(米・カリフォルニア大サンディエゴ校)平成27年 国税庁長官官房人事課 課長補佐

大臣官房政策金融課 課長補佐【業務の主なカウンターパート】政府系金融機関(日本政策投資銀行、日本政策金融公庫、国際協力銀行、商工組合中央金庫等)/各機関の主務省庁(経済産業省、農林水産省、金融庁等) 等

【概要】財務省は、政策金融(政府からの信用補完を受けて一定の政策目的を実現するための金融活動)に従事する「政府系金融機関」を通じて、金融危機や大規模災害発生時など、民間金融が十分に機能しない場面で必要な資金が実体経済に適切に供給されるよう取り組んでいます。

国の信用のバトンをつなぐ

国債管理政策

神野 貴史At s u s h i J I NNO[平成17年入省]平成17年 主税局調査課平成18年 主税局参事官付平成19年 熊本国税局平成20年 主計局総務課平成22年 大臣官房秘書課平成23年 留学(米・シカゴ大)平成25年 大臣官房文書課 課長補佐平成26年 厚生労働省保険局国民健康保険課 課長補佐

理財局国債企画課 課長補佐

官民を問わず、必要な投資を行うためには、資金を調達します。現在、日本は過去に発行した国債が1,000兆円近く市中に出回っています。平成29年度に発行する総額は約150兆円。平成29年度予算の為に新規発行される34兆円の建設国債・赤字国債の他に、過去に発行した国債の償還の財源のために100兆円を超える借換債を発行しています。国債には1年から、40年までの償還期限のものがあります。他にも、国債の価値が物価に連動するもの、個人の保有を前提とした国債など、さまざまな種類のものがあります。毎年12月に、内外の投資家の需要に応じてどの国債をどれだけの量を発行していくかを国債発行計画において決定しています。海外で比較してもこうした規模の債券を発行しているのは米国政府についで日本国政府が2番手。世界の債券市場ひいては国際金融市場に与える影響は非常に大きいです。

こうした発行計画を実行に移すのも国債管理政策の重要な側面です。毎日のように国債の入札を行いますが、そのためには市場動向の把握が不可欠です。マーケットが材料とする事項は多く、経済統計から世界の政治情勢の動きまで。最近では英国のEU離脱の国民投票や米国大統領選の結果で大きく金利が動きました。日ごろから国債市場の最前線にたつディーラーや投資家と日々意見交換を行い生の声を聴くことが欠かせません。

 「米国大統領選挙の結果を受けてTPPはどうなるのか」、「ヘリコプターマネー政策を実施する可能性はあるのか」百戦錬磨の海外投資家から矢継ぎ早に質問されます。私は、現在、

国債管理政策の中でも海外投資家への日本国債の販売促進を担当しております。 最新の日本の政策や市場動向のデータを抱えて、世界各国の外貨準備を運用する中央銀行、アセットマネジメント、ヘッジファンドなどの投資家を訪問します。1億総活躍や働き方改革など、日本の潜在成長率を高める取組みと、財政健全化目標のための道筋を効果的にPRし、日本国債の保有につなげていくことが私のミッションです。彼らからすれば、国債を売買して利益をあげることが最大の目的、非常にシビアで緊張感のある面談が続きます。国債の価値を高めるため、投資家の意見に対応することもあり、例えば、海外との国債取引に関する税制改正を行い、市場の流動性向上につなげることとしています。 並行して海外の債務管理当局とも面会し、マーケット情勢や発行戦略について意見交換し、最新の国際金融市場の動向を国内に持ち帰ります。

 皆さんは物を販売したことがあるでしょうか。製品の機能や価格などに加えて、その製造者の信用が決定的に重要です。日本国債はあくまで元本と金利というシンプルな商品です。日本国債を販売するとはつまるところ、日本の信用を売るということではないでしょうか。 100年以上前、高橋是清は日露戦争を戦うための財源を調達するため、ロンドンで外債を発行しました。日本という国家が信用されていなければ調達は困難であったと思います。その後、第二次世界大戦後、債務再編交渉を行ったうえで、1962年に償還しております。 国の信用は一朝一夕で積み重ねることはできず、ただし崩れるのは一瞬かもしれません。先人たちの築いた国の信用を守っていく国債管理政策を行うことは大きなプレッシャーもありますが、とても誇らしい仕事です。

【業務の主なカウンターパート】証券会社、国内外の投資家(銀行、生命保険、投資運用会社、海外中央銀行等)、外国債務管理当局、日本銀行

【概要】国家が医療や教育、公共事業などのサービスを提供していくに当たっては、その資金が必要です。租税によって賄えない場合には、国債を発行して国を運営するための資金を調達することが国債管理政策の基本です。資金調達の原則は、①確実かつ円滑に行うということ、②できるだけ低コストで(=低い金利で)調達することにあります。

国債発行計画とは

計画から実施へ

現在の業務について

国債を売るということ

MARKET POLICY

マーケット関連政策 国際関連政策

為替市場の安定に向けて 日本・世界経済の発展、そして安全な社会のために

為替政策

関税政策

端本 秀夫Hid e o HA SH IMOTO[平成8年入省]平成 8年 大臣官房秘書課平成10年 留学(米・サザンメソジスト大)平成12年 主税局総務課平成14年 金融庁総務企画局市場課 課長補佐平成16年 金融庁総務企画局企画課 課長補佐平成17年 花巻税務署長平成18年 国際局開発機関課 課長補佐平成20年 国際局為替市場課 課長補佐平成22年 主計局総務課 課長補佐平成23年 主計局主計官補佐(文部科学係担当主査)平成25年 主計局主計官補佐(地方財政係担当主査)平成26年 主計局主計官補佐(厚生労働係担当主査)平成27年 主計局総務課 予算企画室長

国際局為替市場課 資金管理室長

老月 梓Azu s a O I ZUK I[平成21年入省]平成21年 主税局調査課平成23年 仙台国税局平成24年 厚生労働省職業安定局

需給調整事業課平成26年 留学(仏・ENA、パリ第二大)

関税局関税課 課長補佐

渡邊 慧 Ke i WATANABE [平成28年入省]

関税局関税課

1413

INTERNATIONAL POLICY

 為替市場の安定が重要であることについて異論はないです。一方、日々の為替相場は、各国の経済状況だけでなく、各国の金融・財政政策のスタンス、投資家のリスク許容度、資金フロー、政治、外交、安全保障など様々な事象の影響を受けて変動します。①各国の金融政策(例えば、FED(米国中央銀行)が利上げする、日銀がイールドカーブコントロールを導入する、ECB(ユーロ圏の中央銀行)が量的緩和を延長するといった金融政策の変更)に加えて、②各国の財政政策(アメリカのトランプ政権が減税を中心とした財政刺激策を取る、日本で補正予算が編成されるといった財政政策の変化)、③中国の成長鈍化やそれを背景とした資本流出・外貨準備の減少、人民元安といった資金フローの動き、④原油価格の動向(例えばOPECの減産合意、アメリカのシェールオイルの生産動向)、⑤各国の政治(例えば、イギリスのEU離脱(ブレグジット)、フランスの大統領選挙の動向など)など、幅広い事象が関係します。そして、時に、為替の乱高下が生じ、経済活動に影響を及ぼすことがあります。

 為替市場課は24時間体制で様々な情報をモニターし、そして、過度な変動や無秩序な動きをする場合は為替介入を行うことも手段の一つとしています。 過去の為替介入の結果、日本政府は、約1.3兆ドルの外貨資産(外貨準備)と約12 0兆円の短期負債を保有しています。この外貨準備は、将来急激に円安が進んだ際には、保有している外貨を売却するといった形で活用されることになります。

 過去の為替介入の結果である約1.3兆ドルの外貨資産を欧米諸国の債券を中心に運用しています。この運用に当たっては、欧米各国の金融政策、財政政策、政治、経済、マーケット動向の先を読むことが主な業務になります。「大局的に世界の先を読めること」が重要になります。

 毎朝、欧米の経済金融の新聞を読んで、世界で何が起きているか大きな流れをつかみながら、金融機関のレポートに目を通しつつエコノミスト、アナリストは何に注目しているか、マーケットの細部で起こっていることを含め把握します。その上で、海外の財務省の国債発行部門担当者、海外の中央銀行のエコノミストや市場部門担当者、金融機関の債券トレーダー、資産運用会社のポートフォリオマネージャー、他国の外貨準備運用担当者と、東京で意見交換することもあれば、電話会議で意見交換すること、世界各地に出張に行って意見交換をすることもあります。

 国籍の異なる多様な立場の人と議論することは、大局的にマーケット動向の先を読む上でとても重要なことです。私自身はお互いに率直な意見交換を行うことを一番大事にしています。日本の経済、金融政策、財政政策、構造政策の動向について聞かれることも多いですが、明快で骨太な説明を行うように心がけています。 欧米の経済金融新聞に記事が出た時点で、その背景までわかるようになっていれば、「大局的に世界の先を読めている」証左と言えます。

 2008年のリーマンショックに端を発した世界金融危機の際に、この外貨準備の運用を担当する課長補佐をしていて大きな衝撃を受けました。また、現職につく前は6年ほど日本の財政政策に携わってきました。投資家という視点から他国の金融・財政政策、経済社会の状況を評価し、先を読む業務に従事するのも面白いものです。

 自分の頭で考え、物事に情熱を持って取り組み、他の人の意見の良い点を素直に吸収することが大事です。それができる仲間、お待ちしています。

 関税・税関と聞いても、日常生活を送るうえではあまり馴染みがないかもしれませんが、経済のグローバル化が進むなか、ヒト、モノの出入りなしには私たち個々人の生活も日本経済も成り立ちません。海外から日本に入ってくる全ての物品が必ず通過する税関では、全国の9税関と多くの支署等で9,041名(平成28年度)の職員が日夜働いています。

 輸入申告や入国者の増加、経済活動のIT化・複雑化、といった変化に対し、どう対応するのか。例えば、検査業務にAIを活用することはできないか、など、関税局では日々新たな検討を行っています。 そして個々の物品に課される関税率や通関手続きにかかわる関税政策も、時代の潮流に密接に関連した政策の立案・執行が求められます。日本は現在15(発効済み)の国・地域とのEPA(経済連携協定)を結んでおり、個々の枠組みに基づき様々な制度が創設されています。こうした制度を的確に整備・執行していくことも関税局の重要な仕事です。

 担当は関税率に関する政策の企画・立案。GATTウルグアイ・ラウンドの交渉経緯から創設された制度も多く、時には数十年という歴史を紐解きながら制度を検討することもあります。最近の例でいえば、トランプ米大統領の発言をきっかけに舞い込む「日本の自動車に対する関税率は?」といった質問に答えるのも私のチームの仕事です。

 メイン業務の一つは関税率の年度改正です。我が国の関税制度は、自由貿易と国内産業の保護との両立を図るための様々な仕組みを有しています。また、国際競争力の観点から、ある品目の関税を引き下げる要望も寄せられます。これらについて、要望省庁と議論を重ねながら案を作り、その実現に向けて審議会、法案作成、国会審議などのプロセスを進めていきます。その中で、農林水産業から繊維産業、航空機・宇宙産業に至るまで内外の産業界の動向や貿易構造などに通じることになります。関税を通じて日本・世界のダイナミックな動きを目の当たりにする日々です。

 例年にない業務としては、途上国から輸入される産品に対し関税を減免し産業発展を支援する「特恵関税制度」の見直しを行いました。「なぜ今、なぜこの方法で見直すのか」「産業界への影響は」「外交関係は大丈夫なのか」といった様々な要素を一つ一つクリアし、地道に関係者の理解を取り付けながら政策の実現を図る。まさに政策の立案・調整を担う行政官の醍醐味を味わいました。

 私たちは組織で仕事をしています。時として硬直的だとか縦割りという批判もあります。しかし組織で仕事をするからこそ、自分の上司や関係者を説得し、組織を動かせれば、大きな政策を実現できるとも言えます。また、異動が多く、その都度勉強して即座に「スペシャリスト」にならないといけない苦労はありますが、その分、多彩な視点から社会を捉えることができるようになることは、この仕事の大きな魅力だと思います。

【業務の主なカウンターパート】欧米の財務省、中央銀行、金融機関、日本銀行など

【概要】日本は世界第三位の経済大国であり、為替市場の安定は、日本経済・世界経済の安定にとって必要不可欠です。財務省は、為替・金融市場の動向を常に注視し、外貨準備の活用を含め、為替市場の安定のために様々措置をとっています。

【業務の主なカウンターパート】農林水産省、経済産業省、外務省、日本の在外公館、各国在京公館、内閣法制局、産業界(事業者団体)、国会議員

【概要】関税局は、適正かつ公平な関税等の徴収、安全・安心な社会の実現、貿易の円滑化の3つを使命とする全国の税関を統括すると共に、関税法、関税定率法をはじめとする法令や関税制度の調査・企画・立案、経済連携協定(EPA)の交渉や各国の税関との協力といった国際的な業務も担っています。

 私は第一参事官室国際機構係というところで、関税に関する国際業務のとりまとめ等に携

わっています。昨年4月に配属されてから1年も経たないうちに、英国のEU離脱、TPP協定の

国会承認、そして米国新政権の誕生等、これほど規模の大きな出来事を相手にすることにな

るとは思ってもいませんでした。自らの小ささを痛感することも多々ありますが、社会、そして日

本をもっと良くしたいという矜恃を胸に抱いています。

現在の業務である外貨準備の運用とは

為替市場をどう見るか 世界の先をどう読むか

立場の異なる人との議論が重要

様々な経験を役立てよう

情熱を持って取り組もう

為替政策とは

関税を通して世の中の様々な面を見る経済活動の動脈を支える

時代の潮流に密着したダイナミックな分野

時には歴史を紐解きながら

政策の立案・調整を担う行政官の醍醐味

組織で仕事をするからこその魅力

財務省の活動

国際関連政策

世界における日本のプレゼンス強化に向けて 途上国の難題を自らの課題と捉えて

国際金融政策

途上国開発政策

德岡 喜一Ki i c h i T OKUOKA[平成12年入省]平成12年 理財局資金第一課平成13年 理財局財政投融資総括課平成14年 福岡国税局平成14年 留学(米・ジョンズ・ホプキンス大)平成16年 国際局国際機構課平成18年 総務省自治行政局行政課平成20年 IMF(国際通貨基金)職員平成24年 大臣官房文書課 課長補佐平成25年 主計局主計官補佐(外務・経済協力係担当主査)平成26年 主計局主計官補佐(内閣・復興係担当主査)平成27年 主計局調査課 課長補佐

国際局国際機構課 課長補佐

梶川 光俊Mit s u t o s h i K A J I K AWA[平成6年入省]平成 6年 証券局総務課平成 7年 証券局証券業務課平成 8年 留学(中・中国人民大、米・ハーバード大)平成11年 中央省庁等改革推進本部事務局平成12年 国際局国際収支課 課長補佐平成13年 在シンガポール大使館平成16年 主計局主計企画官補佐(財政分析係担当)平成17年 和歌山県庁平成20年 主計局主計官補佐(司法・警察係担当主査)平成21年 理財局計画官補佐(内閣・財務係担当)              平成22年 副大臣秘書官平成24年 在中華人民共和国大使館

国際局開発機関課 開発企画官

和田 直之 Nao y u k i WADA [平成28年入省]

国際局開発政策課

1615

 国際金融の業務の中心は、G7やG20などの国際会議を通じた各国との協力になります。

 G7伊勢志摩サミットをご記憶の方も多いでしょう。伊勢志摩サミットは、日本や米国を含め7か国の先進国から構成されるG7の首脳(総理)レベルの会合でした。後述するG20は、先進国と経済発展の面でその前段階にある新興市場国から構成されますが、G7は経済の発展段階や課題を共有する国による国際会議のため、率直な議論が行われ、それがG20の議論のベースになっていくこともあります。 一方、G20は参加する国々のGDPを合わせると、世界のGDPの太宗を占めることもあり、節目節目で、世界の政策面での協力をリードしてきました。リーマンショックの後、銀行をはじめ金融セクターの規制が強化されましたが、こうした議論を牽引したのはG20です。これは一例で、財政政策、金融政策などの分野でも、率直かつタイムリーに議論を交わしています。 こうしたG7、G20などの国際会議の場で、知的な貢献なども行いながら日本のプレゼンスを高めつつ、世界経済ひいては日本にとって望ましい方向にいかに議論を持っていくか、これが、国際金融の業務の柱になります。 国際金融の議論で、避けて通れないのが、危機に陥った国への貸し付けを行うIMF(国際通貨基金)という国際機関の存在です。IMFの果たすべき役割、IMFの改革は、G20でも、精力的に議論されています。詳細は後述しますが、IMFに、世界経済の安定にいかに貢献してもらうか、これも大事なテーマです。

 国際会議といっても、様々なレベルがあります。G7でも、首脳レベル、財務大臣レベル、事務レベルと様々なレベルで議論が交わされています。しばしば、このあらゆるレベルで、議論になるのが共同声明です。共同声明とは、各国の共通理解を示した文書であり、国際会議の目玉の一つです。この共同声明に、各国と協調しながら日本の主張を盛り込み、日本のプレゼンスを高めていくことが求められます。 G7伊勢志摩サミットでは、「G7伊勢志摩宣言」という名称の共同声明が採択されました。この宣言には、例えば、世界に

おいて質の高いインフラを広めていくという日本が牽引するイニシアティブを盛り込むことができました。 先進国の集まりであるG7と言えども置かれている経済状況は異なりますので、共同声明の採択に向けては、ただちに意見の一致を見ないことがあります。より多様の国から構成されるG20ではなおさらです。時に議論は混迷?し、昼夜を徹した議論になることもありますが、このダイナミックなプロセスが国際会議の醍醐味の一つです。

 IMFという国際機関との関係もご紹介します。2008年のリーマンショック後にギリシャが巨額の財政赤字を抱え、経済危機に陥ったことは日本国内でも大きく報じられました。IMFの重要な役割は、こうした危機に陥った国への貸付です。 IMFによる特定の国への貸付の決定や、貸付制度の変更など重要な決定は、各国の代表が決めます。ただ、IMF自身は2000人以上のスタッフを抱え、通常、スタッフ提案という形で、IMF自ら提案を行い、それをベースに各国の代表の議論は進みます。 このため、日本は、他国の代表のみならず、場合によってはそれ以上に、IMFのスタッフと議論を重ねていくことになります。例えば、貸付制度の変更であれば、それが、本当に借入国に対して健全な経済・財政政策運営のインセンティブを提供するのか、また、IMFの財務の健全性を損なうことはないのか(IMFは日本を含め各国の出資をベースに運営されています)といった点が大きな論点になります。 IMFスタッフは、経済分野の専門家になりますので、彼らと互角以上の議論を展開していくべく、こちらも日々の高いレベルの研鑽が必要となります。学問的な研究を含め最新の理論を吸収したり、詳細なデータ分析を行うこともあります。こうした知的な作業を通じて、世界の利益とともに日本の国益を追求しています。

 財務省の国際金融業務の醍醐味は、このようなG7、G20のようなダイナミックな国際会議を通じた日本のプレゼンスの発揮と、IMFとの知的な議論を通じた世界の利益そして日本の国益の実現にあります。

 途上国では、貧困問題のほか、難民問題、エイズ・マラリア等の感染症、震災・台風等の自然災害、大気汚染・砂漠化等の環境問題など、様々な問題を抱えています。国際社会の一員として、また、戦後に国際社会から支援を受けて貧しさから立ち直り、経済発展を遂げた国として、これらの問題の解決のために、途上国の開発支援を通じて貢献していくことは重要なことです。また、こうした支援は、日本の国益にも繋がります。

 例えば、私が担当している環境対策支援を考えてみましょう。環境の悪化は、その国だけでなく、周辺の国、そして国際社会全体に影響が及びます。隣の中国では、近年、PM2.5という微小粒子による大気汚染が深刻化しており、PM2.5は日本にも飛来しています。途上国の環境対策は、直接・間接に日本の環境対策となるのです。また、環境対策技術に長けている日本企業は少なくなく、途上国の環境対策プロジェクトを支援することは、日本企業のビジネスチャンスを増やすことになります。 途上国の環境対策に対して支援を行う国際環境関連基金には、GEF(G l o b a l E n v i r o nm e n t F a c i l i t y)、GCF(Green C l ima t e Fund)、CIF(Cl ima t e Inve s tment Funds)等があります。いずれも、先進国が資金を拠出し、途上国の環境対策プロジェクトへの資金支援を行っています。日本は、これらの基金の大口拠出国であり、年に数回、世界各地で開催される理事会に常に参加しています。

 開発企画官は、これらの基金の多くで理事を務めており、日本を代表して、重要課題の対処方針、支援対象プロジェクト等について英語で議論することが求められます。理事会には、資金の出し手である先進国のみならず、支援の受け手である途上国の代表も参加します。例えば、地球温暖化対策を目的とするGCFの理事会は、これまで先進国が温室効果ガスを排出してきた落とし前をどうつけるかを交渉する場としての色彩が濃く、しばしば途上国と先進国が対立します。 理事会で発言する際には、利害が異なる国にとっても説得力のある論理を構築し、合意形成を図ることを心がけています。理事会前に頻繁に開かれる電話会議や、理事会の現場での各国代表との個別協議は、合意形成に向けた重要な機会となります。

 私は、開発政策課で前述の業務を担当するほか、兼務として、調査課で中国(中国経済、日中金融協力等)を、開発機関課でAIIBを担当しています。その際、在中国大使館で勤務した中で得た人脈・知識を活用しています。同館勤務時代には、中国主催のAPEC関連会議で、主計局勤務で培った財政再建に係る知見を動員して英語でプレゼンし、それが中国語での雑誌への寄稿や講演に繋がりました。その過程で多くの知己を得ましたが、中国・米国留学で習得した語学力が役立ちました。財務省は、多彩な経験を積むことができ、その経験をダイナミックに活かせる職場です。「国の内外を問わず色々な経験をして人生の幅を広げたい。」このような思いがあれば、是非、財務省を訪問し、多彩な業務が行われている一端を覗いてみて下さい。

【業務の主なカウンターパート】G7・G20各国の財務省、IMF(国際通貨基金)、外務省、金融庁、日銀 など

【概要】グローバリゼーションが進み、貿易・投資・金融の面で、各国経済の結び付きが強まっています。こうした中、各国経済、そして世界の経済の安定が一層重要となっており、そのために、G7(7か国財務大臣・中央銀行総裁会議)やG20などの国際会議で、各国は頻繁に議論を交わしています。こうした国際会議やIMF(国際通貨基金)などの国際機関を通じて、各国と協力を進めながら、日本のプレゼンス向上を図っています。

【業務の主なカウンターパート】GEF、GCF、CIF等の国際環境関連基金/世界銀行/各国財務省・外務省・環境省等/各省庁(外務省、環境省等)/JICA

【概要】日本は、途上国の開発のため、JICAの円借款・JBICの出融資を用いた二国間の支援や、国際開発金融機関、国際環境関連基金等を通じた多国間の支援を行っており、財務省は、その企画立案をリードしています。効果的な資金の活用、開発プロジェクトでの日本の知見・技術の活用、日本の貢献のアピールといった視点が重要になります。

 開発政策課では、JICA(国際協力機構)を通じた開発途上国支援や、JBIC(国際協力銀

行)を通じた日本企業の海外展開支援に取り組んでいます。私は主にJICAやJBICの事業

の企画・調整に携わっていますが、自分の関わった案件が大きく報道されることも多く、日本が

掲げる「質の高いインフラ投資」の注目度の高さを日々実感しています。法改正や国際会議で

の議論にも触れることができ、若手でも活躍できる刺激的な環境だと感じています。

国際会議の現場

IMFとの知的な議論・折衝を通じた国益の実現

G7・G20、そしてIMF 開発企画官の職務途上国の開発を支援する理由

途上国の環境対策支援

経験を活かした兼務

財務省の活動

INTERNATIONAL POLICY

1817

1予算編成

特集SPECIAL ISSU

E

予算編成

統がある。科学技術予算を任された以上、知識も思い入れも沢山ある方がいいと思うよ。 ただ、科学技術のように専門性の高い分野は特にそうかもしれないが、どんなに勉強したって、予算を受け取る側の研究者に知識面で絶対にかなう訳がない。研究者や文科省は、自分の研究がいかに大切かを諄々と説くだろうが、主計局は、彼らとは違う地平に立ってものを考えることも大事。資源投入効果などに基づく研究開発の優先順位を、科学者も国民も納得できるような形で決める仕組みを作るというアプローチがその一つの例。「査定」という言葉から一般的にイメージされる「切った、貼った」とはだいぶ違うけど、そういう仕組み作りの知恵を相手省に提案していくのも主計局の重要な仕事だね。小嶋 科学的、言い換えればデータとかエビデンス(証拠)に基づいて議論すべきなのはもちろんです。ただ、役人だけがプレーヤーであればまだしも、マスコミを含む色んな人たちが関わってくると、そういった「キレイごと」だけではなくなってくる気がします。例えば、教職員定数をめぐる問題では、片山主査もだいぶ辛酸を舐めたのではないですか。片山 教育分野については「教育は将来の日本にとって大事だ!」「学校の先生は苦労してるんだ!」といった意見が多いです。それらには同意しますが、そこでストップして冷静な政策議論がなかなか前に進まない面もあります。少子化トレンドを反映する必要もあるし、限られたリソースの中、優先順位付けをしながら、効果的な教育手法で「質」を高めていく努力も不可欠です。そのため、査定で文部科学省からの要求額以上に措置した事業もあります。 記者にそうした政策パッケージを丁寧に説明しても、結局は相手省や政治と財務省の対立を煽り、短絡的に「財務省は予算削減しか考えていない」とする記事を目にすることが多かったように思います。予算編成期の風物詩になりつつありますね。“まじめな政策分析”よりも、“ケンカの中継”の方が分かりやすくて視聴率が稼げるということかもしれませんが、もう少しちゃんと解説してほしい気も・・・。 もちろん報道内容だけで政策が決まる訳ではありませんが、世間の理解も得られるよう、これからは財務省の建設的な提案をしっかり世の中に問うべく、伝え方やチャネルも一層工夫して考えていく必要があると思っています。

小嶋 学生の皆さん、こんにちは。主計局文部科学係です。我々は、その名の通り、主として文部科学省の予算を査定しており、大まかに言えば、片山主査が教育予算(旧文部省)を担当し、小嶋がその他の科学技術やスポーツ予算(旧科技庁及びスポーツ庁)を担当しています。それら全体をまとめあげ、前線の指揮を取っているのが、奥主計官です。総額で言えば、平成29年度予算で約5兆2,000億円ほど。これを、我々を含む文部科学係19名で分担して査定しているというイメージです。今日は、我々の仕事の一端について、3人で話をします。 平成29年度予算といえば、給付型奨学金の創設が目玉でした。私は隣から見ていましたが、片山主査の苦労は並大抵ではなかったと思います。片山 給付型奨学金は日本で初めての公的な支給型の奨学金で、世間から大きく注目される中での新制度の創設でした。大きな考え方の整理、規模も含めた詳細な制度設計、財源の捻出方法、どこで何を打ち出すかという段取り、その過程でのマスコミ対応など、様々なプロセスがあり、産みの苦しみを味わいました。 いくらでも支給すべきといった声もありましたが、そうも行かない。支給対象にならない人との公平性をどう考えるのか、モラルハザードを防ぐためにどうしたらよいか、という論点もありました。制度設計では悩みも深かったです。 結果的に、奨学金借入額が大きくて進学を断念していた低所得世帯の子供に対し、一般世帯の子供の平均借入額と同じ水準になるよう支給することで様々なバランスをとりました。また、一定の成績基準を設けることで、納税者への説明責任を果たしつつ、勉学へのインセンティブをつける形で合意できました。財務省発の提案も多く、まさに「提案型査定」を地で行った印象です。小嶋 私も予算査定では片山主査の話とはまた違う種類の悩みに直面しました。特に科学技術の場合は、事業の優先順

位付けが難しいように思います。例えば、100億円の財源があるとして、これをスパコンとか、ロケットとか、バイオとかにまんべんなく配分するべきなのか、それとも、思い切って一つの分野に集中投下するべきなのか、相当難しい問題です。 また、大隅教授がノーベル賞を受賞したことをきっかけに、基礎研究と応用研究のバランスも一つの論点になりました。教授自身は、成果が目に見えやすい応用研究に世の中全体が偏っていっているのではないか、と警鐘を鳴らされたわけです。が、ではどのようなバランスが最適なのか、というのは主査が一人で悩んでも答えが出る問題ではありません。といって、分野ごとの学者や応援団の政治力だけで決めるのが正解だとも思えません。 私の場合は、夜な夜な文科省のカウンターパートと議論して、予算を作っていきましたが、実は泣く泣く削った予算というのもたくさんあります。元々、理論物理学者になるのが夢だったので、そっちの方面には並々ならぬ思い入れがあるのですが。奥 どんな予算要求を見ても無性に削りたくなる性格の人を見かけるけど、別にそうする必要はない。昔から、主査たるもの、担当分野については、予算に一見関係ないようなどんな突飛な質問にも答えられないと一人前じゃない、みたいな伝

小嶋 主計官も今から13~4年前に、文部科学係の主査を経験したそうですが、当時と今の違い、あるいは、主査から見た風景と主計官から見た風景の違いなど感じることはありますか。奥 主査時代は、一つ一つの事業を全部自分で見るので、日々どんどん担当分野に詳しくなっていく実感があったね。予算は過去の経緯や政治的な要因で左右されることも多々あって、そうすっきり整理できるものじゃないから、制度を詳しく知れば知るほど迷宮の中に入っていくような感覚も覚えたけど、それも主査の醍醐味の一つかもしれない。 それから10年強経って主計官になってみると、分野が同じであっても、見える風景の違いに驚いた。当たり前と言えば当たり前だけど、普段付き合う相手の役職が高いだけあって、自ずと視野が広がるし、中長期の観点で考えたり議論したりする時間が圧倒的に長くなった実感がある。 あと役所の外で主計局のスタンスを責任もって説明する機会も増えるから、どうやったら正確さを損なわず、かつ相手の頭にすっと入る説明ができるか、なんてことを考える時間もすごく増えたなぁ。役所の外で勝負する局面が急に増えるのが課長クラスの特徴なのかな。主査時代とはまた全然違う苦労と面白さがあるね。小嶋 主計官だからこそ見える新しい世界があるわけですね。学生の皆さん、そろそろ紙面も限界かと思いますので、続きは官庁訪問の際にマンツーマンでゆっくり話すことにしましょう。予算査定の現場は、皆さんにはなかなかイメージし辛いと思いますが、一人でも多くの職員に触れて、その魅力の一端を感じてもらえたら、と思います。本日は、ありがとうございました。

予算査定の悩みと醍醐味―教育・科学技術をめぐって

文部科学予算対談

 このページでは、文部科学予算について、平成28年度補正

予算と平成29年度予算の編成を担当してきた主計官と主査2

名が対談をします。

奥 達雄Tatsuo OKU[平成2年入省]

主計局主計官(文部科学係担当)

片山 健太郎Kentaro KATAYAMA[平成13年入省]

主計局主計官補佐(文部科学第一、二係)

小嶋 龍亮Ryosuke KOJIMA[平成15年入省]

主計局主計官補佐(文部科学第四係)

2019 財務省職員のキャリアパス

CAREER PATH

財務省職員のキャリアパス

財務省でのキャリアパスのイメージ

【第2部】

係長/留学

P21

藤音 眞生子[平成28年入省]

国際局国際機構課企画係

P23

曲淵 季実子[平成26年入省]

広島国税局国税調査官

P23

山下 雄大[平成26年入省]

北陸財務局理財部金融証券検査官

P21

田中 豪[平成25年入省]

国際局国際機構課企画係長

課長補佐 企画官 課長

P25

瀧村 晴人[平成16年入省]

大臣官房秘書課財務官室課長補佐

P27

藤山 智博[平成9年入省]

主税局総務課税制企画室長

P29

泉 恒有[平成4年入省]

主計局主計官(総務・地方財政・財務係 担当)

P31

木村 秀美[平成2年入省]

理財局国庫課長

P32

林 ひとみ[平成20年入省]

大臣官房信用機構課課長補佐

P32

大山 珠林[平成26年入省]

大臣官房政策金融課

P24

永安 俊介[平成22年入省]

留学(英・LSE)

P24

田嶋 一基[平成23年入省]

留学(米・カリフォルニア大・サンディエゴ校)

係員係のマネジメントを行い、政策立案のサポートを行う。

語学の修得とともに、海外の大学院で修士レベルの勉強をする。

■地方の国税局・財務局で財務省行政の現場を学ぶ。

■ 行政の最前線で政策の企画・立案の中心的役割を務める。

■ 重要事項についての企画・立案に携わる。

■ 所掌事務の政策立案の責任を担う。

■財務省職員として必要な知識・ノウハウを学ぶ。

国税局/財務局

女性職員からのメッセージ

係長・係員インタビュー

係長と係員の一日

CAREER PATH

2221 財務省職員のキャリアパス

係長/留学

課長補佐

国税局/財務局係員 課長企画官

藤音係員 2017年3月にドイツ・バーデン=バーデンで行われたG20は、事前準備・会議中・会議後の対応も含めて、この1年で最も忙しい時期でした。ドイツ議長国下での初めて、かつ、トランプ政権誕生後初のG20でもあったため、会議の準備も手探りで進めていく場面が多くありました。田中係長 特に会議中は、係長は現地で、係員は東京で対応します。セッションを終えるごとに議論が進展し、そのたびに現場での対応が目まぐるしく変化する中で、各省とも緊密に連絡をとり、迅速な対応が求められます。私はドイツ、藤音さんは東京、という遠く離れた場所での仕事ですが、普段霞が関で仕事をする際と同様の作業リズムで、力を合わせて会議を乗り越えました。例えば、日本を含めた各国メディアの報道の分析など、現地で会議に出席していると手が回らない部分を中心に、藤音さんには東京からずいぶんと助けてもらいました。

藤音係員 海外とのやりとりも多く、スピーディーな対応が求められる局面が多いです。特にG7/G20等の大きな国際会議

田中係長 私たち企画係の主要業務は、G7・G20などの国際会議、そしてIMF対日4条協議の対応です。G7・G20関連では、会議での大臣のスピーチをドラフトすること、共同声明(コミュニケ)の文言を各国と調整することが主な仕事です。係長は会議本番も財務大臣に随行し、近くでサポートします。この部署に異動して1年弱ですが、中国(成都・杭州)、米国(ワシントンDC)、ドイツ(バーデン=バーデン)、イタリア(バーリ)へ出張しました。藤音係員 係員は、上司のG7・G20等の国際会議の出張、IMF対日4条協議の際にミッション団の日本受け入れを円滑に進めるための調整が主な仕事です。IMF対日4条協議というのは、IMFが日本の経済状況を調査し政策提言を行うためのプロセスのことで、IMFからミッション団が来日します。国際機構課宛てに事前送付される、日本でミッション団が調査したい内容を咀嚼し、調査が充実したものになるよう、対応する組織・課室と綿密に調整を行っています。財務省内だけでなく日本銀行・他省庁なども訪問するため、幅広く内容を理解する必要があります。国際会議の際には、上司が皆出張に行くため、国内対応を一手に担います。IMF対日4条協議や国際会議のテーマは、中央銀行の金融政策や各国の構造改革等、およそ経済関係すべての分野に及びます。中身の理解も当然必要で、日々勉強です。毎朝、日本だけでなく、海外の報道に目を通すのも習慣になりました。

田中係長 海外からの英語の電話やメールも含めて、外部とのコミュニケーションの多くを任せています。様々な案件にアンテナを高く立てつつ、膨大な量の情報をしっかり整理して、案件を着実にこなしています。また、例えば、国際会議でのスピーチの素材になる面白いロジックやデータを、論文や国際機関のレポートなどから見つけてきてくれることも多く、特に最近はその質とスピードがどんどん上がっています。1年目から戦力として活躍していて、非常に頼もしいです。

藤音係員 常に先を見据えての、指示・アドバイスをもらっています。係長は、各国大臣が集まり会議をする場で、何が論点となるか、日本として発信していくべきことは何か、ということを常に俯瞰的に考えていて、また、各トピックへの理解も深い点を特に尊敬しています。自分も足元の業務だけでなく長期的な流れを意識しつつ働けるようになりたいです。

の前は、準備しなければならない事も膨大で、課内が良い緊張感に包まれ、一日が一瞬で過ぎていきます。田中係長 一方で、常にばたついているわけではなく、国際機関等のレポートを読みつつ、国際金融情勢やIMFの政策等について、課内でじっくり考察し、深い議論も行っています。リアルタイムで世界的な様々な案件の情報が入ってくるスピーディーな環境と、じっくりと腰を据えて国際金融情勢を考えられる環境の二面があり、課内皆がその両面を楽しんでいる、雰囲気の温かい職場です。

田中係長 生き生きと働いている人に共通するのは、目の前の課題を楽しめること。多くの選択肢を見て、自分で決めた就職先なら、目の前の業務に全力で取り組めるようになっているはずです。応援しています!藤音係員 この先何十年働き続けるかもしれない会社を学生のうちに選ぶ就職活動は、とても悩むと思います。私自身、最後の最後まで、大いに悩みました。就職活動中は悩むこと自体が辛く感じましたが、今振り返ると悩む中で自分の将来等、様々に考えたことが今の財産となっています。多くの会社の方に会い、皆が親切に社会人として、また、その組織の人として話をしてくれる機会は、就職活動の時しかありません。その貴重な機会を多いに活かし、沢山悩んで、最後に財務省を選んでもらえると嬉しいです。

 日本の真夜中、議長国より、次に開催されるG20財務大臣・中央銀行総裁会合の共同声明のドラフトが送付される。G20の共同声明は各国で短い期間で合意に至る必要があるため、早急な対応が求められる。秘匿性が高いため、取り扱いに最新の注意を払いつつ、日本として受け入れられない点はないか、また、積極的に主張していく点はどこか等の視点で精査する。

 時差のある海外とのやりとりが多いため、登庁し次第、まずはメールのチェックから始める。夜中に届いている連絡を中心に、優先順位を付けて朝から迅速に対応。午前が終わるとひと段落つき、情報収集や案件の検討・議論等を経て、再度午後の会議に臨む。夕方には翌日以降を見据え、抱えている案件、今後やるべき仕事を整理し、退庁。

09:30 共同声明の検討

 課内での検討・各所との調整を早急に済ませた上で、幹部と協議。その議論の結果を踏まえ、財務省としての方針を定める。実際の共同声明のドラフティングの場では、こうして定めた方針をベースに、各国と調整を行い、20か国で合意できる声明を作り上げていく。

11:00 幹部会議

 午前の仕事を終えると、課で昼食へ。同じ課ではあるものの、各係で担当が異なっているため、ざっくばらんに係同士の情報を共有できる場でもある。仕事以外の話でも花が咲き、午後の仕事に向けてのつかの間の休憩時間。

12:00 昼食

 早急な対応が求められる共同声明の検討を終えたのち、実際の会議の場での発言内容を検討する。世界経済では現在何が問題となっているのか、会議ではどんな点が議論になりそうか、そうした問題に対する日本のスタンスは何なのか、今後日本として何を目指していくのか。G20の場での発言は日本の国際社会への公約ともなり、多様なメディアで報道される。このため慎重かつ大胆な姿勢が求められる一幕に。

13:00 会議の発言内容の検討

 IMFの職員と、世界経済情勢について意見交換。今日のテーマは、「労働分配率の低下と格差の拡大」について。日本は、アメリカに次ぐIMFの第2の出資国。国際金融システムの安定に何が必要かという観点から、IMFと常日頃から緊密にコミュニケーションを取っている。プロのエコノミスト集団であるIMFと正面から渡り合う為には、世界経済情勢やIMFの政策に加え、経済学についての理解も必要で、勉強の毎日。

16:00 IMF職員と世界経済情勢に関して意見交換

 日頃はリラックスの時間である夕食も今日は急いで済ませる。19:00 夕食

G20は、財務大臣・中央銀行総裁会合開催までに、複数回のワーキングループを開催し、実務者レベルで議論を深めていく。今日は、来週の対面での会合に備えた電話会議で、テーマはG20におけるアフリカ支援について。アメリカ、ヨーロッパ、アジア地域が同時に電話できる時間帯ということで、どうしても日本時間では夜の開催が多くなってしまう。眠い目をこすりながらメモを取る。 会議終了後、明日に向けて頭を整理しつつ、今日の業務は終了。

20:00 G20のワーキンググループ電話会議~

現在のお二人のお仕事について教えてください。

田中係長から見て、藤音さんの良いところ、特にこの一年で成長したところを教えてください。

この一年でやりがいのあった仕事、大変だった仕事について、教えてください。

お二人の働いている国際機構課の雰囲気について教えてください。

係長には、いつもどのように仕事を教えてもらっていますか?

就職活動中の学生へのメッセージをお願いします!

田中 豪Tak um a TANAKA[平成25年入省]

国際局国際機構課 企画係長

係長

藤音 眞生子Mao k o F U J I O TO[平成28年入省]

国際局国際機構課 企画係

係員

CAREER PATH

 トランプ氏が大方の予想を覆し、米国大統領に選出される前、私はその支持者に話を聞こうと思い、地元のクラスメイトに紹介をお願いした時、冒頭の答えを貰いました。それでも何とか支持者を探しだし、話を聞いてみると「嫌がらせを受けるから、大半の仲間は支持を隠しているんだ」とのこと。考え方の異なる人たちは、時に隔絶され、視界から消えてしまいます。

 昨夏から、私はカリフォルニアにある大学院に留学していますが、学んでいることの1つにトランプ氏の選挙戦でも活躍したとされるビッグデータ分析があります。膨大な量のデータ(ビッグデータ)を収集・分析するためには、統計学のみならず、プログラミングも必要なので、日々悪戦苦闘していますが、その分析からは様々な考え方を持った人々の本音が見えてきます。今、中国の短文投稿サイトを通じ、中国の人が何を考えていて、中国政府がどんな言葉を規制しているのか分析しています。それに基づき、中国人のクラスメイトと英語や中国語

で議論を交わしてみると今まで見えてなかったお互いの考え方の異なる点や同じ点などがより深く理解できます。

 財務省には、お金に関わる仕事が多いです。しかし、それは数字の大きさに一喜一憂し、その帳尻合わせをすることではありません。数字の先にある多種多様な人間一人一人の生活を意識しながら、制度を考え抜くことが重要です。その多様性を想像する必要がありますし、考え方の異なる人を消してはいけません。そのためにも、財務省自身も多様な人が集まり、データに基づいた議論を日々活発にしています。君も君自身の個性でもって、この議論に参加しましょう。

分析と利益衝突の調整を超えた規範論について真面目に悩まなければならない局面があると考えたからである。もちろん、哲学は(健全な)批判の繰り返しであり、都合の良い「正解」など与えてはくれない。歴代の哲学者たちの世界観や正義論は実に多様だし、人種も宗教も母国語も異なる友人たちとの議論はしばしば紛糾する。しかし、それでもなお、役人として「べき論」を考えること自体から逃げてはならない。そんなことを考えながら、異国の地にて、日々、政治哲学上の問いと格闘している。

 我々はどこまでも卑小な存在であって、個人として現実と対峙すると、不条理に満ちた世界に辟易してしまい、絶望しか感じられないことも多い。しかしながら、我々自身もそんな世界の一部であることは逃れられない事実なのであり、少しずつでも、より良き社会を創り上げるために足掻くことができるのもまた我々でしかない。混沌とし、矛盾に満ちたこの世界にあって、その「歪み」をも自分の一部として引き受けること。心が掻き乱される問題を他人事だと割り切ってしまうのではなく、不断の対話の先にこそ目指すべき未来が立ち現れると信じて、あるべき政策を堂々と語ること。そんな矜持を胸に抱きながら、今後、財務省の役人の担う幅広い政策課題と真摯に向き合ってゆきたいと考えている。採用の季節である。同じ志と希望を抱く、新たな仲間との対話を心から愉しみにしている。

CAREER PATH

2423 財務省職員のキャリアパス

国税局/財務局

課長補佐

係長/留学

課長係員 企画官 課長補佐

課長係員 企画官

 関税局での勤務を2年経験したのち、広島国税局に着任しました。現在は税務調査や徴収業務等、税収の最前線に立つ仕事をしています。 わが国の申告納税制度は、納税者からの自発的な申告・納税を基礎としています。その申告が間違っていると、適正・公平な課税が実現されません。また税額が算出できても、最後にきちんと納税されなくては、税制が成り立ちません。 税務調査では、実際に企業や個人の様子を見聞きして、申告の間違いを正したり、防いだりします。また徴収業務では、

適正・公平な課税の実現のために

地域と密着し実情を把握する財務局

滞納者と向きあって話をし、実現可能な納付計画を一緒に作り上げます。 

 関税局の勤務で制度の企画・立案に携わり、制度が執行される現場を経験したいという思いを持ちました。 税務調査の際、企業の担当者と深く話をしたところ、国のある制度が立法趣旨どおりに活用されていないことが分かりました。別の事案では、制度が分かりづらいという声をいただきました。その制度が現場で執行できるかという視点をより鋭く持つことが、行政官にとり不可欠であると痛感しました。 制度設計は、この国の「これから」を考える仕事です。その最適解を導くためには、この国の「今」を知らなくてはなりません。財務省には、日 「々今」と向き合う現場での経験があり、そしてそれを制度の企画・立案に活かすサイクルがあります。今実感しているのは、そのサイクルです。

 制度の企画・立案から執行まで、国内から海外まで、歳入から歳出まで。財務省は、こうした広大な地平を前に、この国の根幹を支える仕事を担っています。よりよい国づくりに、皆さんもチャレンジしてみませんか。

制度は本当に機能するか考えざるべからず

トランプ候補の支持者?カリフォルニアにはいないよ

大学院での学び

未来への希望と役人としての矜持

財務省の仕事

色々な角度から、国を支える

皆さんへ

 財務省本省総合職採用職員の多くは3年目に全国各地の財務局や国税局で勤務します。財務省で企画立案された政策が地域でどう受止められているかを垣間見る貴重な機会です。私は、昨年の8月北陸財務局に着任しました。 財務局の業務の位置づけは、財務省と各地域の「架け橋」のようなものです。具体的には国家予算の執行調査や、各地域の経済情勢の調査、企業等から政府への意見・要望等の収集・報告などです。また、金融庁から委託を受けた金融検査も行っており、非常に幅広い業務を扱います。 地域との距離が近く幅広い業務を扱う財務局だからこそ知りうる地域の実情があります。経済調査や金融検査では、多くの企業の担当役員を相手に対話し、企業や地域の現状や課題をあぶり出し、必要に応じ課題解決に向け取組む必要があります。長期に亘って地域で活動する企業の方から本音を聞き出すには幅広い視野や知識が必要であり、責任感は重く、事前準備は欠かせませんが、その分やりがいや達成感は非常に大きいです。また、地方自治体の首長から、直接地域の課題や政府への要望等を伺う機会などもあり、本省時代に取組ん

でいたTPPに対する地方企業や自治体の捉え方のほか、補助金の交付基準に対する意見等、現場ならではの気づきに触れています。

 私はより広い視野を持ち日本の為に働きたいと考え財務省を志望しました。企業や人々の活動の根幹に関わるありとあらゆる分野の基礎づくりに携わる財務省では、現場の経験も含めて幅広い視野を得ることができます。 日本の為に働きたいと考えている人はぜひ財務省を訪れてみてください。同様の志と幅広い経験を持った職員が皆さんをお待ちしています。

 民主主義の正統性について考察していると、国際局に所属していた際に直面した欧州債務危機を思い出す。自由や平等、あるいは人間の尊厳についての思索に耽っていると、厚労省時代に担当した特別養護老人ホームに入居する認知症高齢者の顔や、懸命に働く現場の方の姿が目に浮かぶ。公正な社会の在り方に想いを巡らせていると、国税局で勤務した際、差押えをせざるを得なかった旅館の所有者の嘆きの声がこだまする。留学で政治哲学を学ぶことにしたのは、「価値中立的な政策立案が可能である」という前提は欺瞞であり、役人には、事実の

係長/留学

国税局/財務局

税収の最前線から

地域の現状を知り視野の広がりを感じる

逃げるは恥だし役に立たない

君の個性が財務省を豊かにする

曲淵 季実子Kimi k o MAGAR I FUCHI[平成26年入省]

平成26年 関税局関税課

広島国税局 国税調査官

山下 雄大Tak a h i r o YAMA SH I TA[平成26年入省]平成26年 関税局関税課

北陸財務局理財部 金融証券検査官

永安 俊介Shun s u k e NAGAYA SU[平成22年入省]平成22年 国際局総務課平成23年 国際局地域協力課平成24年 IMF・世銀総会準備事務局平成24年 金沢国税局平成25年 厚生労働省老健局高齢者支援課平成27年 留学(英・ヨーク大)

留学(英・LSE)

田嶋 一基Kaz u k i TA SH IMA[平成23年入省]平成23年 主計局総務課平成24年 主計局調査課平成25年 関東財務局平成25年 金融庁総務企画局総務課

留学(米・カリフォルニア大・       サンディエゴ校)

CAREER PATH

CAREER PATH

瀧村 晴人Har u t o TAK IMURA

[平成16年入省]

大臣官房秘書課財務官室 課長補佐

2625

 2004年から財務省で働き始めて12年が経過しました。今でも若手のつもりですが、部下を指導することもあり、子供も2人産まれ、公私ともに責任のある立場になりつつあります。私の12年間のキャリアのうち、ちょうど半分にあたる6年間は、留学や国際機関勤務です。財務省では中長期的な人材育成の一貫として、海外、他省庁、地方、民間企業等、財務省の建物の外で活躍する機会が十分に与えられています。多様化する政策課題に対処していく人材を育てるためにも、財務省の外での武者修行はますます重要になるでしょう。私は、IMFで働くことによって、英語やマクロ経済の知識を深めることができましたし、

学生へのメッセージ

財務省職員のキャリアパス

 2004年、為替介入などの通貨政策を担当する国際局為替市場課の配属となりました。2003年当時、財務省は、投機的な動きによる為替の過剰な変動に対処するべく、大規模な介入を行っていました。円売りドル買いのオペレーションは短期円債の発行で調達した円を為替市場で売ってドルを買うものです。その結果、ドル資産は増えて、外貨準備は4785億ドル(2003年3月末)から8265億ドル(2004年3月末)に急増しました。安全性や流動性を踏まえた、外貨準備の適切な運用が一つの政策課題でした。こうした課題を解決するためには生半可の知識では対応できません。外貨準備の日々 の資金繰りなど運用業務に携わりながら、ポートフォリオ理論などの証券投資分野だけでなく、経済や金融について必死に勉強しました。

 仙台国税局に1年ほど出向して税務調査の実務を経験した後に、ニューヨークのコロンビア大学国際公共政策大学院に留学。せっかくなので2008年の夏期休暇中にウォールストリートでインターンをしようと考え、Bear Sternsという米国の投資銀行で研修することに決まりました。しかし、時は2008年であり、住宅バブル崩壊の足音が近づいており、Bear Sternsはサブプライムローン問題によって経営が悪化し、5月30日にJPモルガンチェースに救済買収されることになりました。リーマンブラザーズの倒産は9月15日です。リーマンショックを震源地とする世界的な金融危機の影響は、米国だけにとどまらず欧州や我が国をはじめ世界中に伝搬します。国際金融を学ぶ者にとって、毎日のニュースが生きた教材であり、大学院での勉強にも身が入りました。

2004年 国際局為替市場課

新人時代

2007年 コロンビア大学留学

世界金融危機を目のあたりに!

 2009年、2年間の留学の後は、主税局参事官室の係長として、国際課税の分野を担当することになりました。あるべき税制についても国内だけを見ていては、教育や福祉等必要な公共財を賄うための課税基盤を確保することができず、他方で、国際的に活躍する企業の経済活動を歪めることになりかねません。そうした現代的な課題に対処するために、主税局参事官室の仕事の範囲は、法人税法や所得税法等の国内法だけでなく、租税条約、OECD等国際会議と多岐に亘ります。 2008年の世界金融危機は、国際課税の政策分野にも大きな影響を与えました。タックス・ヘイブン(租税回避地)は、租税回避や脱税を誘発するのみならず、グローバルな資金の移動を不透明にしており、金融危機の遠因の一つであるとの批判がなされました。こうした批判を背景に、税の情報交換について国際的な基準が大きく変わり、特に銀行機密を理由にした税務情報提供の拒否が認められなくなりました。私は、こうした国際的なルールを策定し、タックス・ヘイブンにも遵守させていく取組みにかかわりました。何十幾百のメールのやりとり、電話会議、フェイス・トゥ・フェイスの会議を積み重ねて世界を変えて行くのです。その準備のための労力は大変なものですが、その知的刺激・ダイナミズムにはシビれるものがありました。

 2011年夏から米国ワシントンDCにあるIMFの日本理事室に理事補として出向することになりました。IMFは、世界銀行と並んで1945年に設立された、ブレトン・ウッズ体制の中核となる国際機関です。IMFは対外的な支払い困難に陥った国に対する一時的な貸付を行うという、国際金融システムを支える重要な機能を有し、世界金融危機によってその役割を再発見されたと言えます。私が赴任した2011年は、米国発の世界金融危機が欧州に伝搬し、ギリシャ問題となってユーロの存続が疑問視されるという欧州危機に転化していたタイミングでありました。日本理事を含む24名の各国の理事によって構成される理事会は、株式会社のたとえでいえば取締役会に相当し、ギリシャ・プログラムの承認など、重要な方針が議論されます。私は、重要案件について、IMFスタッフや他国の理事室と議論し、財務省とともに対処方針を策定していきました。理事から委任された案件については、理事会の日本席に座り、発言をすることもあります。日本の国益を確保することと同時に、国際金融危機への対処等より良い世界の構築に貢献すること、がまさに求められる仕事でした。

2009年 主税局参事官室係長

国際課税

2011年 IMF理事補

国益を背負って

 理事補として2年間働いた後、IMFの中途採用試験を受け、エコノミストに転職(?)しました。理事補の仕事も大変やりがいがあるのですが、一人のエコノミストとして担当国の抱えるマクロ経済政策上の問題解決の仕事をやってみたいという思いがむくむくと湧いてきました。上司や秘書課に相談したら、やってみたらということで、IMF出向の期間を延ばしていただきました。1年目は南アフリカの金融セクター評価プログラムの仕事を、2年目はエジプトの4条協議コンサルテーションというマクロ経済政策評価の仕事を主に担当しました。日本の財務省に入り、米国ワシントンDCの職場に行き、仕事の現場はアフリカ大陸、ということになろうとは、入省当時想像もしていませんでした。エジプトでは外貨不足が深刻になり、機能する為替市場をどのように設計するかが重要な論点であり、新人時代に為替市場課で得た知見がとても役に立ちました。エジプトは、2011年のアラブの春の影響によって政権が不安定化し、クーデターを含む2度の政権交代を経て、2014年に現在のエルシーシー政権が成立しました。カウンターパートの財務省や中央銀行の官僚たちは新しい国づくりに一生懸命であり、国づくりに直接的に関わることができる国家公務員という職業の魅力を再確認した思いです。

2013年 IMFエコノミスト

一人のエコノミストとして

 IMFから戻り、2015年夏から財務官室で働いています。霞ヶ関にはサブとロジという用語があります。サブとはサブスタンスの略であり、政策の中身を作る仕事です。他方で、ロジとはロジスティクス(兵站)から来ており、サブを支える黒子ですが、これもまた大切な仕事です。例えば、財務大臣がG20など大きな国際会議に出張する場合、議題に関係する政策(サブ)の事務方は多数にのぼるため、出張はかなり複雑になります。国際会議の合間にどの国の外国要人とのバイ面会を行うか、どのタイミング・場所で行うか、同席する必要がある事務方は誰か、などのロジを詰めて、サブ部隊を援護し、国際会議の成果を最大化するのが財務官室の役割です。当然現在のポストは外国への出張も多く、米、英、独、仏、伊、中国、バハマ、ペルー、パラグアイ、アルゼンチン、コロンビア、フィリピン、インド、ケニア、ザンビアと多くの国に出張することになりました。 2016年は日本がG7議長国の年でもあり、2016年5月に財務省と日本銀行はG7財務大臣・中央銀行総裁会議を仙台市の秋保温泉で開催しました。財務官室もその開催ロジを担当し、震災復興を世界にアピールするための視察ツアー、外国のお客様に出すメニューをどう工夫するか等、同僚と喧々諤々の議論をするなど、改めて財務省の仕事の幅広さに舌を巻きました。現在は、2017年5月に横浜で行われるADB(アジア開発銀行)年次総会に向けて準備を進めています。 最後に、「財務官室」補佐とありますように、私は財務官のスタッフでもあります。財務官は、国際金融政策を担当する次官級ポストであり、俗に通貨マフィアと呼ばれることもあります。世界で縦横無尽に活躍する浅川財務官と日常的に接して考えていることを聞いたり、また議論を交わしたりできるというのは、私のポストの特権でもあります。

2015年 財務官室補佐

国際会議のロジ

課長補佐

係長/留学

国税局/財務局

係員 課長企画官

国籍も含めた多様な同僚の中でのリーダシップやチームワークを学ぶ機会にもなりました。こうした経験は、財務省に戻ってからも現在の仕事を遂行していく上での武器になっています。また逆に、IMFという日本の財務省から離れた場所においても、しっかりとしたValue(仕事の成果)を出せたことで自信につながりました。財務省の中で積極的に仕事に取り組み、成長していけば、外の世界でも通用するという確信を持っています。 このパンフレットを読んでいるということは財務省に興味を持っているのでしょう。財務省は貴方の才能と情熱を投資するに相応しい場所である、と私は120%信じています!

財務省に就職した

と思ったら

ピラミッドにいた!?

CAREER PATH

CAREER PATH

藤山 智博Tomoh i r o F U J I YAMA

[平成9年入省]

主税局総務課 税制企画室長

2827

 財務省の仕事は実に多様です。主税局を例にとれば、所得税、法人税、消費税、相続・贈与税など様々な税目を扱っており、税目が違えば仕事も違うのはもちろん、同じ税目であっても中長期的な制度のあるべき姿を考える局面もあれば、足元の課題にどう応えるのかを検討することもあります。さらには国益を背負って国際交渉に臨むことも主税局の仕事です。また省外で経験を積む機会もたくさんあります。私自身、留学のほか、国税局、金融庁、在外公館での勤務を経験しました。 どの職場でも、「どうすればより良く出来るのか」を追求し、カウンターパートと、あるいは上司や同僚と議論する中で様々な考え方に接し、新たな発見がありました。こうした経験の一つ一つの積み重ねが、次のポジションで全く異なる分野を担当し、新たな政策課題にチャレンジする上で糧になってきたと思います。 そう言えば最近、わが家の6歳の末っ子が「これはどういう意味?」、「なんでこうなるの?」を連発し、説明を聞いては彼なりの理解で色んなことに取り組んでいます。発見とチャレンジは純粋に楽しいものなのでしょうね。さて、財務省での次の発見とチャレンジは何か、楽しみです。

学生へのメッセージ

財務省職員のキャリアパス

 入省した1997年4月1日は、消費税率が3%から5%に引き上げられた日であり、今振り返ってみると、財政にとって大きな意味を持つ日だったのだなと思います。入省して数か月経つとアジア通貨危機が発生しました。世界経済が揺れ動く中、担当した仕事は関税収入の見積もりでした。それまで輸入額は増加傾向にありましたが、日本経済も大きな影響を受け、為替レートの変動も激しく、輸入額を見込むことが難しい局面でした。見積もり作業にあたり、関係省庁や主要な輸入品目を扱う事業者団体などから懸命に情報収集したのを覚えています。関税収入は翌年度の歳入予算の一端を担うものであり、しっかりと見積もらなければいけないというプレッシャーを強く感じたものですが、入省して1、2年目のうちにこうした仕事に携われたのはいい経験だったと思います。また税関の現場の話を聞く機会にも恵まれ、この時の経験が後の在ベトナム大使館への出向時代や、現在の仕事にも役に立っています。

 入省して3年目と4年目に米国に留学して経営学を学び、帰国したのは2001年の夏でした。当時小泉政権下で財政健全化に向けて財政構造改革に取り組んでおり、「骨太の方針」でプライマリーバランスの黒字化目標が設定されたのもこの頃でした。こうした中で、フロー、ストックの両面で財政状況に関する情報を提供するため、予算を基にその後3年間の財政状況を示す「後年度影響試算」や、国の資産・負債を表す「国のバランスシート」の作成に取り組みました。「後年度影響試算」も「国のバランスシート」も、いわば日本の政策や制度を財政という横串を通して網羅的に俯瞰するもので、多岐に亘る政策や制度の内容を理解しながら情報を収集するのは大変な作業でしたが、企業のIR(株主向け広報)と同様、国家財政に関する情報を発信していくことも重要なのだと実感しました。この時の職場には、他省庁や民間企業から同年代の出向者が多数集まり、互いに刺激を受けあい、切磋琢磨しながら仕事に取り組んでいました。今でもよき友として酒を酌み交わしながら思い出話をしたり、カウンターパートとして仕事をともにしています。

1997年 関税局企画課

揺れ動く経済環境の中での新人時代

2001年 主計局主計企画官付

財政分析に取り組んだ係長時代

 金融庁には3年間出向しました。最初の2年は税制改正要望を担当しました。「貯蓄から投資」などの金融庁の政策を推進するため、金融業界の方々から金融の現場で起こっている問題を聞き、それを解決するための一つの手段として税制改正要望に落とし込み、主税局と折衝するという仕事でした。後に主税局で要望を受ける立場になるとは思っていませんでしたが、このとき、金融行政や税制がどのように経済活動に影響を及ぼすのかを学んだことは貴重な経験となりました。その後、監督局で銀行の監督業務を行いながら、新規の銀行設立の審査や当時社会問題になっていた偽造・盗難キャッシュカードやインターネットバンキングのフィッシング詐欺対策などを担当しました。銀行設立の審査ではいくつかの案件を担当し、それぞれにターゲットとする顧客層や提供するサービスが違い、様々なアイデアがあるのだと感心しました。こうした自由なアイデアを実現して経済発展につなげていくという要請と、金融システムの安全・安定を維持するという要請の双方を実現する必要があり、バランスをとりながら検討を進めることの重要性を学びました。

 見知らぬ国で仕事をし、生活をするという不安と、新しい世界を経験したいという思いが交錯する中、「ベトナム料理好きだよ」という妻の一言で在ベトナム日本国大使館への赴任を決意。当時、ベトナムは飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を遂げており、世界中から注目を集めていました。こうした中で、加熱するベトナム経済の調査、日系企業の支援、成長戦略プログラムへの財政支援、財務省関連のODAに関する現地調整などなど、色々な仕事をさせてもらいました。リーマンショックのときには、ベトナムの経済対策を財政面で支援する緊急財政支援円借款にも携わりました。ベトナム政府が経済対策を実施することは大々的にアピールされていましたが、詳細が公表されませんでした。このため、ベトナム財務省に赴き、各施策の担当者20名程度に一度に集まってもらい、情報を収集して報告書を作成しましたが、なかなか出来ない経験だったと思います。国は違えど同じ財務省の職員で(酒好きを含めて)共感することが多かったこともあり、ベトナム財務省には友人もたくさんでき、ビア・ハノイを片手に税務行政や税関行政などについて語り合ったのもいい思い出です。

2004年 金融庁

出向先での学び

2007年 在ベトナム日本国大使館

「ベトナムどう?」

 法人税を担当する税制第三課では3年半を過ごしました。最初の年は雇用の増加を実現するために何か出来ないか、2年目は東日本大震災からの復旧・復興のために何をすべきか、3年目は賃上げをどう促進していくか、4年目はどのような投資をどのように拡大していくか。同じ法人税であっても政策課題はその時々で様々です。各省庁からの要望は幅広い政策分野に及び、日々新たな知識を身につけながら、政策課題を解決するためにはどうしたらよいのか、各省庁の担当者とまた同僚達と日々議論を尽くし、税制改正案を創り上げていきました。そして最後の年には、法人税改革に携わりました。法人税の長い歴史を踏まえつつも、国際化をはじめとする企業活動を取り巻く環境の変化に対応するため、法人税の構造改革に取り組むものです。様々な制度の意義や現状をまとめつつ、企業活動の実態も調査し、政府税制調査会で報告書をまとめていただきました。ここで示された構造改革案の多くは後の税制改正で実現しています。法人税という一つの制度を通して、足元の経済状況に応じた政策課題への対応と、中長期的な税制の在り方の検討の双方に携われたことはとても貴重な経験となりました。

2010年 主税局税制第三課

議論を尽くした3年半

 現在の主税局総務課のポストでは、税制改正に向けた検討のスケジュール管理や、横串を通して検討を進める必要がある政策の調整・とりまとめを行っています。平成29年度税制改正全体を俯瞰すると、個人所得課税改革の一環としての配偶者控除制度の見直し、同一酒類間の公平性を回復するための酒税改革、企業の海外展開を阻害することなく租税回避を効果的に防止するための国際課税の見直しなど、公平・中立・簡素という租税の基本原則に立った骨太な改正が多かったと思います。例えば、酒税改革。現在、ビール系飲料にはビール、発泡酒、新ジャンルの3つにカテゴリーがあり、それぞれ違う税率が適用されています。今回の改正では、税率を一本化するとともに、ビールの定義(使える副原料の範囲)を拡大します。これによって、税率差を意識することなく、また独自性を発揮した商品の開発が可能となり、地域創生や日本ブランドの価値向上にもつながるものと期待されます。税制が生活や企業活動の様々な局面に影響するものであり、だからこそ経済や社会の変化に合わせてその構造を不断に見直していく必要があるものだと再認識しました。

2016年 主税局総務課

税制改正を俯瞰

多様性、発見、

そしてチャレンジ

〜財務省での経験〜

課長補佐

係長/留学

国税局/財務局

係員 課長企画官

CAREER PATH

CAREER PATH

3029 財務省職員のキャリアパス

 最初に配属されたのが「大蔵省全体の窓口」機能を担う文書課でした。各局の決裁案件を審査して次官・大臣まで説明するのが仕事で、役所の所管事項を幅広く知ることができました。 また、文書課は「国会対応の司令塔」の役割も担っています。立法府と行政府がどのように交錯して意思決定に至るのか、時として強い緊張関係を見せるプロセスを垣間見ました。特に二年目にはそれまでの自民党単独政権が細川連立政権へと変わり、予算や法案の与党手続も一変して手探りで対応したことを覚えています。 中でも一番記憶に残っているのは「国民福祉税」構想です。官邸、与党、野党、そして幹部の動きを文書課にいて間近に見ながら、役人の仕事のフィールドとは相当に幅広いものだなと感じた一方、最終的には構想が頓挫していくのを見ました。そしてこれが紆余曲折を経て、同じ年に消費税5%への引上げ法案成立につながっていきます。 文書課では新人として役人の基礎的な所作を学びましたが、学生のときは今一つピンと来ていなかった「政策立案」の実際を間近に見て、自分もその当事者になっているのだ、と実感しました。

 米国留学から戻った先が住専問題に揺れた銀行局でした。ここで戦後長い間手つかずのままだった日本銀行法の改正に携わったほか、当時の都市銀、長信銀、地方銀、信金・信組等の全体にわたって不良債権額を集計し、公表する取組みを行いました。 私が銀行局にいた二年間は日本の金融不安が極度に深刻化した時期と重なります。金融機関の経営破たんが毎週のように続き、「預金の取り付けが起こっている」との報告に神経を擦り減らしましたし、北海道拓殖銀行が破たん、山一証券が廃業したときには「日本経済は危機水域に達した」と感じて怖くなりました。職場は常に落ち着かず、騒然としていたように思います。 しかし、当時の私の記憶に刻まれ、今も意気に感じている姿があります。銀行局各課の若手課長補佐たちが各々の持ち場で「奮戦」していた姿です。公的資金の注入に国民理解が得られるのはまだ暫く先のことです。当時、破たん処理スキームが未整備のまま、悪戦苦闘の中で何とか金融システムの安定が維持されていきました。それだけで手一杯だったはずなのに、若手補佐たちは新しい金融行政を目指して多くの取組みを講じていきました。 「護送船団」と呼ばれた古い行政スタイルからの訣別という、若手が抱いた強い危機感の表れだったと思います。役人としての自分の原点を抱かせてくれた時期でした。

1992年 新人時代(大臣官房文書課)

1996年 銀行局総務課 企画係長

 若手補佐として主税局で所得税を担当しました。毎年多くの改正項目を抱える税目ですが、当時多くの時間と労力を注いだのが金融所得への課税のあり方でした。 補佐一年目のとき、株式譲渡益への課税方式をそれまでの「源泉分離選択課税」と呼ばれた方式から改め、「申告分離課税」方式へ一本化したのですが、「申告に手間がかかる」等の批判が湧き上がりました。 このため、翌年にスウェーデンやデンマーク等へ海外調査を実施するなどして課税の考え方を大転換し、利子・配当・株式譲渡益に対する税率を統一するとともに、申告の手間を失くすために「特定口座」方式を初めて導入しました。この間、多くの証券会社と実務的なヒアリングを重ねましたし、そもそも金融所得に対して累進的な税率ではなく、一定税率で課税することが社会にとって公正と言えるのかという点に大いに悩みました。この時に導入した「特定口座」方式は今のNISA(少額投資非課税制度)にもつながっていてご存知の方もいるかも知れません。 上司や同僚に助けられながら何とか過ごした日々 でしたが、自分たちが議論する課税の考え方や制度設計の一つ一つが、実際の投資家の行動やマーケットに大きな影響を及ぼしていくことを実感しました。

 主計局二年目に法務省・裁判所・警察庁予算を担当しました。日本の治安、そして司法分野の政策を鳥瞰して考えることのできる唯一の担当であり、責任も重く、緊張しながら編成に臨んだことを覚えています。 裁判員制度の導入、法科大学院や日本司法支援センターの設置・・、学生の皆さんにも聞き覚えのある事柄の多い「司法制度改革」の枠組みを決定するときでした。経済効果の測定が難しく、また、カネさえあるなら誰もが賛成するだろうといった性質のものでもない、一言で言えば、主査としての価値観、洞察力が問われるポストだったと思います。 司法制度改革の推進は将来の日本社会にとって必要と言えるのか。そのためのコスト(お金)をどこまで国民は許容するのか。検察官、裁判官、弁護士、その他多くの関係者と真摯に議論を重ねました。 また、司法・警察分野には、例えば犯罪被害者対策など「これこそ国がやらねば誰がするのだ」といった思いに駆られる施策が多いのです。一方で、これらに善意で携わる多くの人たちは永田町へのロビイングなどとは無縁な人たちです。予算を担当する自分こそがそうした人たちの思いを汲み取っていかなければ、と考えて過ごしていたように思います。

2001年 主税局税制第一課 課長補佐

2004年 主計局主査(司法・警察係 担当)

 管理職としての初仕事が財務省の広報責任者でした。社会保障・税一体改革を推進しようという時期で、室内で大いに議論し、HP全面改訂をはじめ、例えば「10人集まるなら全国各地どこへでも説明に行く」などといった新機軸にも試行錯誤しながら取組みました。 また、新聞、テレビ、通信各社、さらにフリーランスも含めた記者たちとの付き合いも広報室長の仕事です。記者に対して、ただ詳しく解説するよりも、記事の字数制限に合わせて「フレーズ(語句)を渡すこと」が重要な時もあるし、オンエアするには「とにかく画像が撮れないとダメ」な時もあります。彼ら・彼女らのペン、そして映像が世論を形成していくという現実を知るにつけ、報道されるニュースの裏側で記者たちが何を求め、そしてどう悩んでいるかを窺い知ることが出来たのは貴重でした。 広報室長時代には、記者だけでなく、様々な雑誌や文芸誌の編集者たちとも知り合う機会を得ました。在任時に生じた東日本大震災の際には、彼らと一緒になって実施した被災者支援の企画もあります。霞が関を超えたつながりは大きな財産になっています。

2010年 大臣官房文書課 広報室長

 総務省、そして財務省予算を担当する主計官として、主査4人のほか、係長・係員ら総勢20人のチームで働いています。 担当予算の中で最大のボリュームとなるのが16兆円規模となる地方交付税です。国の政策経費としては社会保障関係費に次ぐ大きさとなります。 国と地方の財政制度は今後どうあるべきなのか、地方創生の推進や東京一極集中の是正など将来に向けて改革すべき点は何かなど、総務省の担当者はもちろん、全国各地の議員、自治体関係者、研究者らと毎日議論を続けています。

2016年 主計局 主計官(総務・地方財政・財務係 担当)

 ニューヨーク総領事館の経済金融担当領事として赴任し、外交官として日本政府の立場を様 な々場で説明しました。NY連銀の担当者はもちろん、米系・欧州系はじめ様々な金融機関の債券・株式等の運用担当者やエコノミスト、投資ファンドや大学関係者、さらにNYに駐在する各国の外交官やメディア関係者らと意見交換・情報収集して過ごす日々 でした。 三年間の赴任期間中、日本では、民主党からの政権交代、大規模金融緩和の開始など政治・経済の転換が生じました。米投資家たちの日本経済への関心は大いに高まりましたし、ニューヨーク証券取引所で総理からアベノミクスを直接説明する場を設けるなど、米国側の関心に応えようと走り回りました。 ニューヨークで感じたことは、世界経済の中心にいる米国と議論し渡り合うためには、世界中の金融市場の動向のほか、石油・穀物等の商品価格、実体経済、そして中国や中東、ロシア等の外交面にも通暁しなければ務まらないということです。 日本の経済政策に厳しい注文を受けることも多々ありましたが、時として「自分たちが儲けられさえすれば」といった米投資家の本音を感じることもありました。「俺たち行政官の仕事は彼らとは違うのだ」と逆に奮い立ちつつ、粘り強く説明に回ったことを思い出します。

2011年 外交官(ニューヨーク総領事館 領事)

課長補佐

係長/留学

国税局/財務局

係員 企画官 課長

日本の政策を作っていく

――

財務省での体験

 自分が役人という職業に就いているのは、日本の現在、そして将来を純粋に考えることができる仕事だからです。日本という国のために仕事ができること。これが役人という職業のモチベーションだと思います。 公共政策はわれわれ国民の生活に否応なく影響を及ぼします。責任は重大で、だからこそ自分が担当者として考えた政策・価値判断を、真摯に社会に問いかけることになります。自分の知恵や独創性も大いに問われることになるでしょう。社会のためにという使命感、常に自ら学んでいく姿勢、これが最も大切な資質だと思います。 財務省は、予算、税制、関税、財政投融資や政策金融、国債、為替、通貨制度や国際金融制度など、経済政策を構成す

学生へのメッセージ

る「ツール」を所管する役所です。このため、どの分野の経済政策であっても関わりますし、決定する立場に置かれる場面も多くなります。また、永田町界隈をはじめ様々なネットワークを諸先輩が形成してきており、多くの情報が集まってきます。 霞ヶ関で働けば、どこであれ自分の政策立案能力を試されることになりますが、財務省は政策を実現していくための「舞台装置」がより整っている場ではないか、という気がしています。どうせ仕事をするのなら、自分が考える政策を実現させやすい舞台を活用してやろう、そんな気概をもった同僚をお待ちしています。

泉 恒有Koy u I ZUM I

[平成4年入省]

主計局主計官(総務・地方財政・財務係 担当)

CAREER PATH

女性職員からのメッセージ

3231

2特集

女性職員からのメッセージ

自分らしく生きていく

行政官として、一人の女性として

 財務省に入省して28年が経ちます。現在は、理財局国庫課長として、日々の国庫の資金繰りや適正な通貨の円滑な供給・偽造防止等による通貨の信頼維持に関する仕事をしています。 このパンフレットを手にしたみなさんは、他のページで財務省の幅広い仕事についての知識を十分に得ることができるでしょう。なぜ、この「特集2 女性職員からのメッセージ」のページを開いているのですか?それはこの組織で女性がどのように働き続けることができるのか、家庭と仕事の両立は可能なのか、といったことに興味があるからではないでしょうか? お答えします。いろいろな人生の形がある中で、私は、本省及び外局、米国留学、国際機関、独立行政法人、他府省でキャ

 財務省で働き始めて9年目を迎えた現在、私は大臣官房信用機構課にて、総括補佐として業務に励んでいます。総括補佐の業務は多岐に渡り、自分の所掌業務である課内の業務調整やマネジメントに加え、各係の抱える政策課題を把握し、共に検討することも重要な職務の一つです。入省後、財務省内外を問わず、様々な職場で業務経験を積んできましたが、総括補佐としてマネジメント業務等に携わるのは今回が初めてであり、各政策分野を所掌するのとはまた異なった難しさがあると感じる一方、新たな業務経験を積み重ねることで自らを成長させることができる機会だと感じています。また、現在妊娠しているため、上司をはじめとする課内のメンバーには、突然の体調変化に伴う業務調整を含め、様々な点で協力していただいており、この点にも大変感謝しています。 休日は専ら出産や子育ての準備をして過ごしています。生まれてくる子供のことを思いながら準備するのは楽しい一方、子供にとって何が最善なのかを考えるのは難しく、海外赴任中の主人と長時間電話することも。ただ、妊娠・出産・子育てというライフイベントを通じて、一国民として、また一人の女性として国の政策を客観視する機会を得られることは、今後の行政官としての職業人生にも大きな影響があると感じています。母親の視点を兼ね備えた自分自身が、今後どのように行政官としてそれを活かしていくことができるのか、今から楽しみです。

両方を追い求めて

 財務省は仕事は魅力的だけど、私生活は大事にできるのかな…。そう思っていませんか? 大丈夫。できます。例えば私は、平日も毎朝晩ヨガを欠かしませんし、帰宅後は読書や留学に向けての英語学習をしています。休日は家族や友人と語らい、ランニング、合唱、ガーデニングなど趣味を楽しんでいます。 もちろん、仕事は難しいものが多いです。当然です。日本を担う仕事をさせて頂いているのですから。直面している事態に夢中に取り組むうちに、気がつけば夜のいい時間になっていることもあります。でも、このように全力を注ぐ大好きな仕事が、私生活に張りを生むのだと日々感じています。 「ワーク」と「ライフ」は二者択一ではありません。両方に打ち込み、人としての幅を広げてこそ、良い仕事ができ、人生も充実すると思います。財務省には、そのようにして輝いている先輩がたくさんいます。一緒に両方を追い求めてみませんか?

リアを積み、結婚し、3人の娘に恵まれ、彼女たちの成長を助け、見守りながら、今に至っています。28年前、当時の大蔵省に4年ぶりの女性Ⅰ種職員として採用されたときには、結婚はできるのか、子供は持てても一人が限界だろうなど、いろいろな制約が頭をよぎりました。 しかし、意思あるところに道は開けるのです。育児休業法が施行されてまもなく長女が誕生したこともあり、3人の娘の育児休業は3回とも取得し、それぞれの赤ちゃん時代を母として十分に楽しむこともできました。一時期、育児と仕事の両立が難しく悩んだこともありましたが、仕事を少しスローダウンすることで乗り切ることができました。 仕事、家庭、趣味、社会貢献活動等のすべてを100%満足する状態で手に入れることは難しいことです。その時々に何が重要なのかを自分でよく考え、家族や組織の中で理解し、サポートしてくれる人の手助けも得ながら、前を向いて進んでいくことが大切だと思います。女性活躍という文字をいたるところで見るようになりましたが、法律や制度ができても、自動的に女性が活躍するということにはなりません。その実現には、本人の努力に加えて、職場の意識の変革や家族の理解と協力が必要なのです。 財務省の仕事は幅広く、社会全体を見据えた政策立案能力が必要とされています。そのためには、国内外、省内外を問わず、視野を広くして物事を考え、多様性のある社会を理解しようとする柔軟な姿勢が重要です。多様な人材が集まり、社会の課題を解決していく。財務省であなたをお待ちしています。

木村 秀美Hid em i K IMURA

[平成2年入省]

平成 2年 証券局総務課平成 3年 証券局業務課平成 4年 留学(米・デューク大)平成 6年 財政金融研究所研究部研究企画課平成 9年 大臣官房調査企画課 課長補佐平成 9年 藤枝税務署長平成10年 大臣官房政策金融課 課長補佐平成12年 IBRD(国際復興開発銀行)職員平成17年 独立行政法人経済産業研究所研究員平成19年 大臣官房文書課 課長補佐平成21年 理財局国庫課 国庫企画官平成23年 大臣官房総合政策課国際経済室長

兼財務総合政策研究所研究部国際交流室長平成25年 内閣府政策統括官(経済社会システム担当)付

参事官(財政運営基本担当)平成26年 東京国税局課税第一部長平成27年 理財局国有財産調整課長

理財局国庫課長

大山 珠林Ju r i n OHYAMA

[平成26年入省]

平成26年 大臣官房秘書課

大臣官房政策金融課

林 ひとみHi t om i HAYA SH I

[平成20年入省]

平成20年 主税局調査課平成22年 仙台国税局平成23年 関税局総務課平成25年 留学(米・ミシガン大)平成27年 大臣官房総合政策課 課長補佐平成27年 内閣官房一億総活躍推進室 参事官補佐

大臣官房信用機構課 課長補佐

SPECIAL ISSU

E

特別寄稿

特別寄稿 3433

3特集

Hi r o s h i NAKA仲 浩史 [昭和58年入省]

昭和58年 国際金融局調査課昭和62年 在ソヴィエト連邦大使館平成元年 在ロサンゼルス総領事館平成 3年 銀行局調査課 課長補佐平成 5年 東京国税局総務部総務課長平成 7年 国際金融局金融業務課 課長補佐平成 9年 JBIC開発金融研究所主任研究員平成12年 金融庁監督部銀行第二課 金融会社室長平成13年 金融庁総務企画局信用課 保険企画室長                平成14年 大臣官房企画官(マネロン担当)平成15年 米州開発銀行財務局次長平成18年 国際局調査課長平成20年 国際局開発政策課長平成21年 国際局総務課長平成23年 IMF・世銀総会準備事務局長平成25年 大臣官房審議官(国際局担当)平成26年 国際復興開発銀行副総裁

題は、市場の創設。電力市場から始まり金融市場まで、公的な開発資金の制約を民間資金動員で解決することを目指している。途上国への資金の提供を桁違いに増やすのが目的だ。この資金規模の拡大は「bil l ions to t r i l l ions」という掛け声の下、国際的に展開されている。 そのような世銀のオペレーションを内部監査するのが私の部局だ。どのような組織にもビジネス上の目的がある。その目的を達成するため、ガバナンス、リスク・マネジメント、内部統制の3つのビジネス・プロセスが仕組まれる。内部監査は、そのデザインが目的達成に有効か、デザインがいいとしてもそのとおりに実行されているかを見る。 気候変動を例にとってみよう。世銀は、2020年までに気候変動対策関連の融資などを全体の28%にする目標を掲げている(今は21%)。多くの部局がそのようなオペレーションをする中で、①誰が各部局を統率し、目標達成の責任を負うのか(アカウンタビリティ。ガバナンスの核。)、②気候変動関連の融資をただ増やすだけでなく、その質を確保するようになっているか(一種のリスク・マネジメント)、③何が気候変動関連の融資に当たるのか、その定義は統一的に適用される仕組みになっているか(内部統制)をチェックし、そのデザインと実施を内部監査は見ていく。内部監査の結果、問題点があれば指摘し、その対処策が実施されるところまでモニターする。 こうして世銀のビジネス・プロセスが改善されれば、最終的にはツイン・ゴールの達成が促されるわけである。世銀の効果的・効率的オペレーションを裏で支える仕事だが、インパクトの大きい監査が現実のカイゼンにつながったときの達成感は非常に大きい。財務省で国を動かす仕事をしたときの喜びにつながるものがある。

 30人ばかりの小さな内部監査部局だが、そのマネジメント

 2014年4月初め、世界銀行(世銀)の副総裁兼内部監査総長の職に向けて最後の総裁面接に駒を進めた。まだ複数の候補者が残っていた。キム総裁に聞かれた。「日本のカイゼンを世銀に広めたいと言ったが、日本の役所では実際に適用しているのかね。」机の上に肩掛けの書類かばんをひとつ置いた。「私が指揮したIMF世銀東京総会で参加者に配ったバッグです。異なるモデルを5つ作り、海外出張で使い勝手を実際にテストしました。それにさらなるカイゼンを加えてできたのがこのバッグです。」総裁はバッグを覚えていた。私に微笑んでから「ヒロシ」とファースト・ネームで呼びかけた。 内部監査の経験はないが、それでも採用してくれたのは、財務省の幅広いバックグラウンドとそこでの私の経験を理解してくれたからだと思う。国際局では、リーマンショックで資本不足に陥った途上国の民間銀行に資本注入するファンドをIFC(世銀グループの機関)と一緒に作る仕事に関与した。アジアの債券市場を作る国際協力にも従事した。世銀の開発オペレーションと変わらぬ経験だ。マネロン規制・経済制裁を銀行が順守しているかどうかの検査にも携わったが、

財務省の経験が世界銀行へとつながる開発の総本山を裏から支える内部監査

これは監査と同じようなものだ。米州開発銀行財務局次長としての出向経験は、世銀の財務活動を監査する上で役立つ。2万人も参加するIMF世銀東京総会を率いたことは、マネジメント能力を鍛える格好の場だった。途上国開発から財政、国際交渉から国内調整。人事・予算を通じた組織運営。財務省で経験できる幅広い業務や活動の延長線上に、途上国の開発支援をリードする世銀がある。

 世銀は日本を含め世界中の若い人たちにとってあこがれの職場になっている。知識水準の高い、開発に燃えた2万人近くの人たちが集まる開発の総本山。世銀のイニシアティブが途上国の開発の潮流を作っている。年間の融資等契約額が5兆円を超える巨大金融機関である。 その世銀のゴールは、「極度の貧困の削減」と「繁栄の共有」(各国の低所得者層の所得向上)の二本柱(ツイン・ゴール)だ。その下で、気候変動、災害、疫病、医療、教育、都市問題、インフラ、雇用創出など様々な問題に専門家を抱え、最高水準のノレッジを提供して、ツイン・ゴール達成のためのソリューションを途上国に提供している。最近の最もホットな課

を行うのが私の仕事だ。この部局が向かうべき方向をビジョンとして示す。ビジョンを実現する戦略を示さなければ、リーダーの資質が問われる。就任から1年以上かかり、いろいろな点がつながり線になったときに、ビジョンと戦略を示した。ジーンズにハイネックの黒のセーターを着て、スティーブ・ジョブズの力を借りてプレゼンした。今では、人材マネジメントなど、ビジョンと戦略を支える各種の「成功のための条件」について実施プランを策定し、実施している。行き先がはっきりすると、スタッフにも何をどうカイゼンすべきが見えてくるようだ。内部監査はときにマネジメントや理事会に対して言いにくいことをはっきり言う勇気も必要だ。英語でcourage o f con-vict ionsと言う。まだまだその勇気が十分とは言い難いが、キム総裁の前で、仏像を作っても目を入れないと魂が入らないように、せっかく作った新たなフレームワークもきちんと実施しないと何にもならないと言えた。 世銀に採用されるときもそうだったが、今の世銀での私の活動においても財務省での様々な経験が土台になっている。外為法のクロスボーダーの規制を撤廃するというビジョン作り、同時に経済制裁やマネロン対策をクロスボーダー取引の最低限の規制として整理するという戦略作りに携わった。東京国税局や国際局では人材マネジメントを直接行った。上司に正しいと信じることを言い切る経験もした。 世銀の職場での私は、途上国のようにまだまだ進化途上だが、これからも財務省での経験が私を救ってくれると信じている。

内部監査部局のマネジメント

財務省から世界銀行の舞台へ

世界銀行副総裁兼内部監査総長

撮影者/World Bank

SPECIAL ISSU

E

3635 財務省職員の活躍するフィールド

FIELD

財務省職員の活躍するフィールド【第3部】平成29年4月1日現在、約200名の財務省職員(留学を除く)が世界各地の在外公館や国際機関、シンクタンク等でグローバルな活躍をしています。また、国内各地の地方支分部局や地方自治体でも多くの職員が活躍しています。

P37

P37

地方公共団体 地方公共団体

三上 裕介[平成21年入省]

鯖江市地方創生統括監兼鯖江市政策経営部長

山田 耕太朗[平成18年入省]

青森県農林水産部団体経営改善課長

P38

金融庁

大江 亨[平成9年入省]

金融庁総務企画局市場課市場企画室長

P39

P40

総理官邸 厚生労働省

飯田 薫[平成18年入省]

総理大臣官邸事務所(内閣総理大臣秘書官付)

日向寺 裕芽子[平成19年入省]

厚生労働省年金局年金課長補佐

P42

在外公館

有利 浩一郎[平成8年入省]

OECD(経済協力開発機構)日本政府代表部参事官

P41

国際機関

長谷川 実[平成20年入省]

国際通貨基金エコノミスト

アメリカ大使館ニューヨーク総領事館IMF世界銀行米州開発銀行地球環境ファシリティハーバード大学コロンビア大学プリンストン大学ジョンズ・ホプキンス大学

ASEAN代表部

カンボジア経済財政省カンボジア大使館

台北交流協会ブータン大使館

ベトナム国家銀行

ミャンマー大使館

ハノイ

ミャンマー財務省

スリランカ大使館

ASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス

英国大使館

OECD

BISFATF

岐阜県庁

横浜市役所三重県庁

奈良県庁

大阪府庁徳島県庁

和歌山県庁熊本県庁

静岡県庁

青森県庁

山形県庁花巻税務署

新潟県庁

石巻市役所

名寄市役所

石川県庁

鯖江市役所

地方支分部局地方公共団体

日本

日本

通している。例えば、広くアンテナを張り情報を集めることや、タイミングが何より重要であること(失敗して初めて学ぶ)、くだらない縦割りに囚われず常に守備範囲は広めに構えておくこと、自分の立場や主張は常に国益の文脈で語れるようにすること(でないと説得力が全く無い)、などだろうか。 また、ある政策につき異なる立場から関与することで視野は圧倒的に広がる。ODAに関して言えば、予算要求の立場(国際局)、査定する立場(主計局)の経験に加え、ウィーンの日本大使館勤務時代にはマケドニアやコソボも管轄し、草の根無償資金協力の案件引渡しに日本政府代表として立ち会った。外務省や国際機関等、内外に多くの知己も得られた。 加えて、未知の分野に接することに慣れると、不安よりも「また知らない分野を学べる」というワクワク感や好奇心の方が勝るようになる。不勉強で周囲に迷惑をかけることも多々あろうが、色々な環境を与えてもらえるこの立場は意外と楽しいのではないか、という思いが、中堅と呼ばれる世代に入った今もなおある、というかむしろ強まっている。

 もし皆さんと共に仕事する機会があれば、恥ずかしげもなく「悪いけどこれ教えて」と近寄っていくかもしれない。そのときはよろしくお願いします。

戦であり、社会人としての経験の少なさを認識してばかりです。しかし、財務省で培ってきた物事を調整する力やバランス感覚は、こうした仕事に活きていると日々感じています。謙虚に全体を俯瞰し「舵を取る」という、責任者としての自覚は、国に戻った後も大事にしたいと思います。 財務省の職員は多様なフィールドで日々研鑽を積みながら活躍しています。このパンフレットを読んで、少しでも感じていただけたのならば、ぜひ一度、財務省に足を運んでみてください。

地方公共団体活躍のフィールド

大江 亨To r u O E

[平成9年入省]

平成 9年 理財局資金第一課平成11年 仙台国税局平成11年 留学(独・マンハイム大、ifo経済研究所)平成13年 主計局総務課平成15年 金融庁監督局証券課 課長補佐平成16年 内閣府大臣政務官(金融担当)秘書官平成17年 金融庁総務企画局企画課 課長補佐平成18年 在オーストリア日本大使館 一等書記官平成21年 主計局主計官補佐(公共事業係担当主査)平成22年 主計局主計官補佐(外務、経済協力係担当主査)平成24年 国際局開発政策課 開発政策調整室長平成25年 国際局開発機関課 課長補佐平成26年 金融庁総務企画局政策課政策管理官

兼 広報室長

金融庁総務企画局市場課市場企画室長

山田 耕太朗Ko t a r o YAMADA

[平成18年入省]

平成18年 大臣官房総合政策課平成19年 大臣官房政策金融課平成20年 仙台国税局平成21年 国際局国際機構課平成21年 留学(英・インペリアル・カレッジ・ロンドン、UCL)平成23年 主税局参事官付平成25年 国税庁調査査察部査察課 課長補佐平成26年 大臣官房秘書課兼文書課 課長補佐

青森県農林水産部団体経営改善課長

3837

 私は現在、福井県鯖江市に赴任して、「地方創生」の実現に向けて日夜汗を流しています。人口減少の克服を目標とするこの取組みは、産業振興、働き方改革、まちづくり等、そのアプローチは様々です。これは一朝一夕で成せるものでなく、また他の地域の成功例がそのまま通用するとは限りません。その中で、行政としての大きな役割は、無限のアイデアや選択肢の中から、限られた資源を前提に、課題解決までの道筋を定める「舵取り」であると感じています。ただ、この役割は簡単ではありません。携わる人々のやる気がある分、それぞれの経験やプライド、目指す目標の違いから、お互いの意見が衝突することもあります。ときには「地方の現実をわかっていない」「もっと行政がやってくれないと」など厳しいことも言われます。「舵を取る」という責任の大きさの裏返しです。

 「個々」の物事に目を向けつつも、一歩引いた立場から「全体」を俯瞰する。私が鯖江市で働く意味は、ここにあります。これは、財政を担う立場から国家の課題を俯瞰し、個々の政策課題に立ち向かうという財務省の使命に通じています。鯖江市での仕事は、地元出身でない自分にとって毎日が未知の挑

進む方向は舵取り次第

責任者としての自覚

 私は今、青森県庁で、農業政策に携わっています。青森に住むのも、農業政策に携わるのも初めての経験であり、りんごの味のように新鮮な日々を送っています。

 青森県は、「攻めの農林水産業」を掲げて生産を拡大し、日本の食を支えています。この「攻め」の姿勢を維持するには、農業分野の深刻な労働力不足を解消することが課題となります。そこで、私は県内の10農協を駆け周り、組合長さんと率直に意見交換をしました。それを踏まえ、新たな方法で求人を行う農協を県が補助する新規施策を立案しました。また、天候や価格変動のリスクに晒される農業者の収入を安定させることも課題です。国が導入する予定の「収入保険」に農業者が加入するには、青色申告(税務申告)の実績が必要です。そこで私は、農協や税務署等と連携して、セミナーを開催するなど、収入保険や青色申告に関する農業者の理解を促進するキャンペーンを展開しています。

 農協等の関係者との調整では、財務省で磨いてきた、人のホンネを聞き出す力、公益のための解を描く力、その解に向けて人を説得する力が活きています。また、収入保険に関しては、所得税制や保険の仕組みなど、財務・金融の知識が活きています。このように財務省での経験は汎用性があると感じています。

 私はこれまで、経済政策立案、国際交渉、脱税調査、今は自

農業の課題に取り組む

財務省での経験が活きる

多様な経験と仲間の存在

治体行政と、幅広く、やりがいのある仕事に恵まれてきました。この仕事を通じて苦労と喜びを分かち合った仲間が国内はもちろん世界中にいます。この多様な経験と仲間の存在があれば、新しく困難な課題にも「攻め」の姿勢で挑戦できると感じます。あなたも、より良い社会の実現に向け、新たな課題に挑戦する仕事を一緒にやりませんか。

どこにいても    爪は研げる

新たなフィールドでの挑戦

 私は現在、金融庁市場課に在籍し、国民の資産形成を支える金融・資本市場の実現に向けた諸施策を担当している。金融庁と言えば、規制を通じ金融機関を厳しく見張る存在、とのイメージが強いかもしれないが、金融を通じて国民生活を豊かなものとすることが金融行政の本来の目的である。日本の大きな武器とも言える1800兆円もの家計金融資産は有効に活用されているか、すなわち、今後の日本や世界を牽引し得る企業等に必要な資金が届き、またそれに由来する果実である収益が適切に国民に還元されているか、といった観点から、現状の課題や対応策を日々検討している。

 本稿をご覧の方の中には、個別具体的な分野への関心を持って公務員を志望する人もいれば、漠然と「何かの形で国や国民の役に立つ仕事をしたい」と思う人もいるかと思う。20年前、完全に後者の部類の学生として官庁の門を叩いた私の経歴を振り返ると、理財局(財政投融資)に2年、主計局に5年、国際局(開発政策)に2年、海外(ドイツ語圏)に5年、また、6年目を迎えた金融庁でも、証券監督、2度の法改正、秘書官、政策調整に対外広報等々、実にまとまりがない。不慣れな中で右往左往した経験は数知れず、「幅広い分野での豊富な知見がある」と胸を張る自信もないが、常に担当業務を学び、周囲と良好な関係を築き、与えられた場でどう国益に貢献できるか、部下から将来「大変だけど楽しかった」と言ってもらえる職場をどう作るか、それなりに取り組んできた自負は少しある。

 慣れない分野の仕事を行うのは未だに不安だし、担当分野の法令や過去の経緯等、勉強は必要である。一方で、様々な異なる分野を経験することで得られた発見も数多い。まず、仕事するうえで大事な要素は、分野に関係なくかなり共

現在の仕事

これまでの経験

国益を意識し、かつ楽しむ

おわりに

財務省職員の活躍するフィールド

金融庁活躍のフィールド

三上 裕介Yu s u k e M I KAM I[平成21年入省]平成21年 大臣官房総合政策課平成23年 主計局調査課平成26年 大臣官房文書課審査

第二係長兼大臣官房秘書課平成27年 厚生労働省社会・

援護局総務課主査

鯖江市地方創生統括監兼鯖江市政策経営部長

「攻め」の青森県

筆者は前列中央

FIELD

 また、外務・防衛・警察・経産の各省から来ている、同じくらいの年次・年齢の秘書官補達が、ともに戦う仲間になります。苦しい中でも笑いをとってみたり、誰かがテンパっているときには何も言わずにサポートし合ったり、縦割りなんてものはこの世に存在するのでしょうかという感じで仕事ができるのも、とても幸せなことです。 SPさんや、官邸内の案内係さん、報道室や会議係、他のいろいろな形で働く皆さんも、それぞれ違うバックグラウンドで、それぞれのプロの技を発揮しながら、総理や官邸を支えるという同じ目的の下、チームのメンバーとして互いに連携・協力しています。 その中で、財務省から来た秘書官補として、プロとしての自分が技とすべきものは何か。経済や財政・税などについての知識とともに、政策案の中の本質的なポイントや、関係者が真にこだわっている点を見抜く力であるようにも思います。

 財務省の特徴は、日本全体を見ていることだ、と表現することがあります。日本全体を、将来まで含めて、見なければならないこと、と言い換えられるかもしれません。 ただ、財務省で何年か仕事をすれば、自分も自然にそうなれる、というわけではありません。地方や海外、他省庁や内閣官房など、様々な環境で全力で仕事をする中で、そして、違う経験を積んだ同期や同僚に相談する中で、さらには、他省庁や政府外の友人と話す中で、どうにかそこに近づける、というものだと思います。 入省を待つ必要はありません。是非、就職活動・官庁訪問も含めて、積極的にいろいろな体験をしてみていただければと思います。財務省の魅力の一つは、どんな分野の、どんな経験も、決して無駄にならないことです。 政府を、財務省を進化させるためには、多様な本気の個人が、チームとして機能することが不可欠です。お互いの経験をシェアする機会があることを、楽しみにしています。

 そして・・広く社会に訴えていく。「年金は賦課方式です」というよりも「年金は若い世代が高齢者を支える世代間の分かち合い」といった方がわかりやすい。「将来世代の給付水準確保」ではなくて「子や孫の年金を守る」の方が身近に伝わる。政策は国民生活に関わるもので、何のため具体的に何をするか、しっかりと説明責任を果たしていく。 同時に・・・年金額改定のルールを全て落とし込んだ年金法の条文をどう改正するのか。迷路のような歴史ある条文を持って、担当者が連日法制局で熱い審査を受ける。 さらに・・・法案審議は連日緊張だ。総理や大臣が国会の論戦で法案の意義をアピールするためのストラテジーを力一杯準備し、支えていく。 年金課だけでも600問を超える質問に答える法案審議を経て、成立。こうして、生活に密接に関わる年金制度を紡いでいく。 

 そして、この作業は年金局が独立しては決してできない。日々、他の部局と密接な連携を取る。生活保護との関係は?医療・介護保険料も含めるとどういった負担になるのか?そして、自分の本籍地でもある財務省とも、日々やりとりをする。例えば、無年金の方への対応について、新たに年金の支給を行うため財源が必要となる。その財源を捻出することと、無年金で生活が苦しい方に対応すること、その両者の重さを考えて、悩みつつ解決方法を見つけていく。これをまさに財務省がリードしていく。勿論省庁間で意見が違うこともある。国の財政に責任を持つ財務省と激論になることもある。ただ、何をどうすればより良い制度になるのか、どうすれば将来に対して責任ある国にできるのかという思いは同じだ。各フィールドに責任感をもって、真剣に他の省庁と議論を交わす財務省は外から見ても熱くて、真剣で、嬉しくなる。 10年前、政策というのは国の価値観を左右し得るような決定になるのだ、という話に感動して財務省の門を叩いた。高齢化のトップランナーである日本はその在り方をどう考えるか。女性の働き方に対してどういった税制、社会保障があればいいのか。 簡単な答えなんてない中で、知恵と力とバイタリティを絞って向き合うこと。信頼できる国であるために、しっかりと機能する土台を作っていくこと。これこそ霞ヶ関でできる仕事の神髄であると思う。そして、その中で多くの難しい分野と向き合い、責任を持つ財務省での仕事が、今後も楽しみでならない。

 厚生労働省年金局年金課。この課では、年金制度がどうあるべきかに向き合っている。年金というと「将来もらえない」「破綻する」といった誤解が多いが、そんなことは全くない。基礎年金の半分は税金であり、これに、働く世代が納める保険料などを組み合わせて高齢者の年金を支えていく。年金制度は連綿と続く世代をつなぐ重要な分かち合いの仕組みであり、それを守ることは老後の安心を守ることでもある。 長い間信頼できるような年金制度とはどういったものか。果たして、老後の生活を支えるために年金はどのぐらい必要なのか。そして、未曾有の高齢化社会に立ち向かう中で、一人で対処できないリスクに備えて、社会はどのように連携していき、社会保障はどうあるべきなのか。こういったことがまさに厚生労働省、そして中央省庁で立ち向かっていることだ。

 では、具体的にどうやって「立ち向かう」のか。昨年秋の臨時国会。年金制度についての法律が二本成立した。一つは、現在、年金をもらえていない方がもらいやすくなる法律。一つは、将来の若い世代が受け取る年金を確保するための法律。制度の改正はすなわち法律改正であり、その法律を通すために多くの工程がある。 まず・・現状を把握し、考える。リーマンショックなどの経済状況に合わせて年金水準を見直す仕組みを徹底しなかったことから、将来の年金の受け取り水準が下がってしまった。年金の世代間の分配ルールをどう変えればこの状況が改善するのか。

総理官邸活躍のフィールド

4039

 総理秘書官補として働くことの魅力は、何といっても、行政府の長である内閣総理大臣のすぐそばで仕事ができることです。 「総理」「官邸」という言葉は、テレビや新聞などで知っていても、それがどのようなものかを理解することは簡単ではありません。秘書官補として働いていると、その言葉が少しずつ実体的な意味を持つようになります。行政の長たる総理が物事を判断するとは具体的に何をどうすることなのか。政府という巨大で複雑な組織が、どう、ある程度のカタマリとして動いていくのか。総理の言葉がどのように報じられ、伝わっていくのか。 もちろん、秘書官補の立場から、すべてが見えるわけではありません。それでも、今の日本について考える材料に溢れています。

 総理秘書官補の業務内容は、とてもシンプルなものです。総理秘書官の日程の調整、総理答弁・発言案の事前チェック、各省との連絡調整、総理出張の調整など。政策の中身を議論していく総理や総理秘書官をサポートするのが仕事です。 ハードなこの仕事に不思議な楽しさがあるのは、絶対に処理不能だと思われる量と質のタスクを、多くの人に助けてもらいながら、なんとかこなしていくからでしょうか。 秘書官補は、政府内のすべての人がカウンターパートであり、やるべきことをやるのに躊躇は不要です。(躊躇している暇がないとも言えますが。)局長に直接電話してお願いすることもあれば、係員さんの機転に助けてもらうこともしばしばです。形式的な配慮は最小限にさせていただいて、単刀直入にアウトプットを追うことになります。 その中で、重要案件の進展に少し貢献できたり、苦しんでいる各省原課のお手伝いができたりすると、大きなモチベーションになります。

「総理」「官邸」とは

シンプルでハード 躊躇や形式は不要

戦友

チームジャパンの重要な一員として

日本の在り方に   向き合うこと

より「機能する」日本政府とは 年金制度と社会保障

臨場感ある描写をすると・・・

財務省で働いていくということ

財務省職員の活躍するフィールド

厚生労働省活躍のフィールド

日向寺 裕芽子Yume k o H YUGA J I[平成19年入省]平成19年 理財局総務課平成20年 理財局国債企画課平成21年 金沢国税局平成22年 大臣官房秘書課財務官室平成23年 IMF・世銀総会準備事務局班長平成24年 留学(英・LSE)平成26年 大臣官房総合政策課 課長補佐

厚生労働省年金局年金課長補佐

飯田 薫Kao r u I I DA[平成18年入省]平成18年 大臣官房文書課平成20年 金沢国税局平成21年 文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課平成23年 留学(米・ミシガン大)平成25年 大臣官房総合政策課 課長補佐平成26年 主計局総務課 課長補佐平成27年 金融庁総務企画局市場課 課長補佐平成27年 金融庁総務企画局総務課 課長補佐

総理大臣官邸事務所(内閣総理大臣秘書官補)

FIELD

国際機関活躍のフィールド

有利 浩一郎Ko i c h i r o AR I TO SH I

[平成8年入省]

平成 8年 銀行局調査課平成10年 留学(仏・パリ第二大)平成12年 主計局主計企画官付平成13年 主計局調査課平成14年 農林水産省総合食料局品質課平成15年 農林水産省消費・安全局表示・規格課 課長補佐平成16年 理財局財政投融資総括課 課長補佐平成17年 武雄税務署長平成18年 国際局為替市場課 課長補佐平成20年 主税局税制第二課 課長補佐平成21年 主税局調査課 税制調査室長平成22年 主税局税制第三課 審査室長平成23年 主計局調査課 課長補佐平成24年 主計局主計官補佐(地方財政係担当主査)平成25年 大臣官房文書課 法令審査室長平成26年 大臣官房文書課 調査室長平成27年 大臣官房企画官

OECD(経済協力開発機構)日本政府代表部参事官

長谷川 実Min o r u HA S EGAWA

[平成20年入省]

平成20年 大臣官房総合政策課平成21年 大臣官房政策金融課平成22年 福岡国税局平成23年 留学(米・コロンビア大)平成25年 大臣官房秘書課財務官室平成27年 内閣官房健康・医療戦略室参事官補佐

国際通貨基金エコノミスト

4241

 「10年後、自分がどこでどんな仕事をしているか分からない世界に、飛び込んでみたくはないか?」 官庁訪問の際にとある財務省職員に言われた言葉を、今でも思い出します。 あれからちょうど10年。ワシントンDCにある国際通貨基金(IMF)に出向中の自分が、デンマーク人、イラン人、ナミビア人の同僚とともに、南スーダン政府とのミーティングのためにケニアに赴くことになるとは、当時の自分は全く想像もしていなかったと思います。

 私は現在、IMFで南スーダン担当のエコノミストとして、南スーダンの輸出入や外貨準備金に係る政策の分析・コンサルテーションを行っています。 2016年12月、私は南スーダンの財務・金融当局との協議のため、ケニアを訪れていました。南スーダンは2011年7月に独立した世界で最も新しい国で、アフリカ有数の産油国です。しかし、長引く紛争の影響により油田は閉鎖され、世界的な原油価格下落も重なって、石油依存の経済モデルは危機に陥っており、外貨準備金も枯渇しつつある切迫した状況でした。治安の懸念もあり、今回は第三国(ケニア)にて南スーダン当局と協議することになりました。 南スーダンのような独立して間もない国は財政・金融制度もまだきちんと整備されておらず、政府がそれらを設計するにあたり、マクロ経済の専門家集団であるIMFの分析・助言は非常に大きな影響力を持ちます。統計も未整備な部分が多く、データの入手も困難なため、分析の際には自ら推計モデルを構築し、中長期的な見通しを立てる必要があります。まさにマクロ経済の「現場」の最前線で戦うエコノミストとして、「理論」と「実践」の双方に渡る幅広い知見が求められます。30代前半の若手で、独立して間もない国の将来を左右するような重要な制度設計に関わるというのは、他ではできない経験であ

遠く離れたアフリカの地へ

ゼロからの国づくりに関わる

点と点の経験が、線で繋がる瞬間

「まだ見ぬ世界」に飛び込む勇気

りやりがいを感じる一方、責任の重さに身が引き締まります。

 約1週間に及ぶ協議の最終日。合意文書を取り交わした後、朝から晩まで会議室の中で膝をつき合わせ議論した南スーダン財務・経済計画省、中央銀行の担当者と固い握手を交わし、再会を誓います。国税局時代に帳簿上の細かな数字一つ一つを根気強く追った経験、留学時代に必死に学んだマクロ経済学の知識、係長・補佐時代に培った英語での交渉スキル・・・。財務省に入省してからの点としての数々の経験が、日本から遠く離れたケニアの地で、しっかりと線として繋がり実を結んだ瞬間です。財務省の、長期的な視座で人を育てる風土を改めて実感しました。

 地方赴任や留学、他省庁や在外公館・国際機関への出向。財務省で活躍できるフィールドは、皆さんの想像以上に広大です。常に何かを学ぶことが求められ、慣れない環境で苦労することもしばしばです。そうした環境に勇気を持って飛び込んで得られた経験は、何物にも代え難い財産となります。特に国際機関では、異なる文化を持つ各国の同僚と意見をぶつけ合い切磋琢磨することで、日本では得られないたくさんの新たな気づきが得られます。「まだ見ぬ世界」に飛び込む勇気を持った皆さんと、一緒に働けることを楽しみにしています。

国内・国際両方の    エキスパート

国際機関の  最前線から

 私は今、パリのOECD日本政府代表部に勤務しています。OECD(経済協力開発機構)は、国際社会が直面する経済・社会・環境分野の諸課題の解決を目指し、自らの研究分析を元に、各国政府への政策提言や各国政府間の政策の基準作りを行う国際機関です。日本政府代表部は、OECDと日本政府の間の連絡調整役を果たしており、その中で、私は財政・金融分野を担当しています。

 OECDといえば、多国籍企業の租税回避を防止するための行動計画をまとめ上げたBEPS(ベップス)プロジェクトが最近とみに有名ですが、これ以外の財政・金融分野でも、OECDは様々な活動を行っています。 例えば、各国の予算当局者が集まる「予算上級官吏会合」では、予算への成果主義の導入、国の会計報告への発生主義の導入などについて、各国の経験や優秀事例の共有が図られますが、私からは、日本の経験を話したり、今後の議論の方向性について意見を述べたりしています。 また、各国の資本規制の撤廃を目的としたOECD資本移動自由化規約の見直しが現在進められていますが、私は、それを担当する「諮問タスクフォース」の中心メンバー(ビューローメンバー)に本年から就任し、日本の立場を主張しつつ、会議を円滑に進めるのに貢献しています。

OECD日本政府代表部とは

OECDの仕事の間口の広さと何でも屋の財務省

消えつつある国内畑・国際畑の垣根

でも英語は苦手で・・・という方に

 しかし、OECDの間口の広さが影響して、思いもよらぬ仕事をしていることもあります。ある時は、環境政策委員会の作業部会に出席して、「パリ協定」発効で需要の高まる環境向け金融の議論に参加し、ある時には、OECDフォーラムという年一度の広報イベントに、著名な日本人をスピーカーとして呼んだり、日系企業の開発したロボットを出展してもらうべく奔走したり、といった具合に。 私は、こうした仕事を楽しみながらやっていますが、元をたどると、自分の仕事だけではなく、さまざまな省庁を集めて物事を取りまとめたり、他の省庁の政策のアイデアを一緒に考えたりといった、幅広い仕事を担う何でも屋の財務省での経験が活きていると感じます。

 私は、国際局での外貨準備の運用業務以外は、一貫して国内政策に携わってきました。だから、「君、国際的な仕事できたの?」と思われている気がしてならないのですが、実際、OECDで目撃するのは、国内政策担当の各国財務省職員が、そのまま国際的な会議にやってきて、英語でやりとりする場面です。そして、日本の財務省でも、国内政策のキャリアと国際的なキャリアの両方を積んでいる人が増えています。もはや、国際的な経験抜きにして、財務省の仕事を語れない時代が来るかもしれません。

 一方で、「国際的な仕事には興味はあるが、英語が苦手で・・・」といった方もいると思います。私も、英語は苦手で、それでフランスに留学した過去があるのですが、今回、英語で仕事をするうちにその苦手意識は払拭され、今は英仏両語を話せることが大きな武器になっています。それに、財務省の若手には留学機会も多く与えられています。ですから、今、英語ができないからといって、不安がる必要は全くありません。財務省は、国際的な活躍の場も用意して、あなたを待っています。

財務省職員の活躍するフィールド

在外公館活躍のフィールド

FIELD

4443

CROSS TALKINFORMATION

若手職員対談

財務省に興味を持ったきっかけや志望した理由を教えて下さい。

この1年間で印象に残っていることを教えて下さい。

現在の業務を教えて下さい。

これから先、どのような自分になっていたいですか?

平日の退勤後や休日はどのように過ごしていますか?

職場や同期の雰囲気を教えて下さい。

就職活動中の学生にメッセージをお願いします。

末松 予算編成において、関税収入額を試算することが私の仕事です。予算を作るには、「入り」に当たる税収額を正確に見積もることが不可欠となります。直近の輸入動向や国内外の経済状況を調査・分析して、輸入の見通しについて商社や専門家等にヒアリングを実施し、最終的には9,530億円の関税収入額という試算結果が予算書に掲載されました。皆さんと同じく私も問題意識を持って仕事にあたりましたが、その結果が予算書に掲載された時の達成感は一入でした。

服部 総合政策課では、オプジーボなどの高額な薬が、重い国民負担となっているという問題意識から、経済財政諮問会議の中で、従来、二年に一回だった薬価の調査・改定を、毎年行うことにするという改革を進めました。え、厚生労働省の話?と思うかもしれませんが、財務省の業務は、国の歳出と歳入の中にある全ての議論に係わります。このように、効率性や公平性を考えながら、あらゆる政策や制度に携わり、社会の骨格を作ることができるという点が、財務省の魅力だと感じました。冨田 平成29年度当初予算案の資料のとりまとめが最も印象に残っています。年末の当初予算案の公表は、主計局の最も重要なイベントであり、世間からの注目度も非常に高いです。公表に向けて、予算のポイントをまとめた資料の作成や、各予算係の資料のとりまとめ、ホームページへの掲載など、ミスが全く許されない状況での作業は、とても緊張感がありました。自分が作成に携わった資料を通じて、予算案がメディアに大きく取り上げられたのを見ると、歴史の一幕に携わることができたという大きな充実感を得ることができました。末松 各局の中の重要な仕事のとりまとめを1年目職員がやらせてもらえるのは、緊張感があるけれど同時にとてもやりがいがありますよね。私の場合は、関税収入額を試算するため、今後1年間の輸入動向を予測する必要がありました。その際、来年の世界経済や為替がどうなるのかというスケールの大きい話から、国内での豚の病気(PED)や冬物衣料品の流行、更には中東の政治情勢やオーストラリアの干ばつまで、世の中の様々なニュースが影響してきます。財務省は国の「お金」を管理する役所ですが、「お金」の動きの裏にはありとあらゆる経済活動が存在していて、人々の日々の生活が関わっているのだということを改めて実感しました。

末松 かっこいい大人になることが今の目標です。自分の職場には、政策判断のセンスが抜群な人、十ヶ国語を操る人、ユーモ

冨田 私は、海外生活が長かったので、人一倍「日本人」というアイデンティティーを深く刻み込みながら生きてきました。そのせいか、「もう日本はだめかもしれない」といった悲観論を耳にする度に、他人事ではない、自分に何かできることはないかと自然と考えるようになりました。もともと興味範囲が広かったので、業務の幅が広いことに魅力を感じたのが財務省に感心を持った最初のきっかけですが、どんな業務についても、日本の国づくりの根幹に携わることができるのではないかと考え、志望しました。服部 私も原体験がきっかけという点で冨田さんと似ているかもしれません。ゼミの活動でホームレスの人々の実態を目に

する中で、社会問題を解決し、多くの人が幸福になれる社会にしたいと思ったのです。他の選択肢として厚生労働省と迷いましたが、貧困という問題一つでも、社会保障だけでなく、経済

状況や産業構造、教育水準、税制度などが係わっていると考え、その全てにアプローチできる財務省を志望しました。末松 私はややスケールの大きな話になってしまいますが、人口減少や少子高齢化、財政赤字といった課題が山積している日本において、日本に生まれて良かったと思える社会を作りたいと思ったためです。日本は海外と比べて経済的に豊かな方ですが、多くの人々が日々の暮らしに満足しているわけではありません。財務省の政策は、増税や歳出削減など不満をもって受け止められがちな政策も多々ありますが、主権者である国民一人一人が納得できる世の中にするために、そういった政策であってもしっかり説明していきたいと思っています。掛林 末松君の考えに通ずるところがありますが、私はふらっと説明会に参加したときに聞いた職員の言葉に惹かれたことが最初のきっかけです。「財務省では原理原則に立ち、そもそもこの制度がなぜ必要なのか、その制度は目的を達成するために最適な方法なのか等様々な観点から政策の企画・立案に関わることができる」との言葉に、自分もそのような観点で国の政策に関わりたいと強く思いました。

服部 主に経済財政諮問会議に関する業務を担当しています。会議資料を内閣府と連携しながら作成し、その資料を基に、財務省としてどのようにアプローチをすれば日本が良くなるかということを日々考え、最終的に財務大臣の発言という形で発信しています。自分の仕事が財務大臣の発言につながっていることに最初は驚きました。掛林 私も、自分の仕事が大きなものにつながっていることを実感する機会は多いです。主税局調査課では毎年の税制改正や中

長期的な税制のありかたの検討に資するため、経済・社会の構造に関する調査や試算を行っています。この20年間で日本の経済・産業、働き方、家族の在り方、家計や再分配がどのように変化して

きたのか、税負担がどのように推移してきたかといった分析や平成29年度の税制改正が将来の税収にどのような影響を与えるのか、税収が成長率に応じてどれくらい伸びるのかという試算を行うのが私の仕事です。これらの資料が政策判断の基礎資料となるので、責任を感じると同時に、やりがいを感じています。冨田 主計局調査課では、我が国の最重要課題の一つである財政健全化に取り組んでいます。その中で私は、財政に関する基礎資料の作成や、財政制度等審議会財政制度分科会の運営を担当しており、掛林さんと同様、政策判断の基礎に携わっています。日本の財政をとりまく状況は依然として厳しいですが、次世代へ負担の先送りをしないためにどうすべきか、活発な議論を間近で見ることができるのはとても刺激になります。

アにあふれた人、課内に気を配り部下の成長を第一に考えている人、家庭を大切にして毎日定時前にササっと仕事を終わらせる人、、、など、かっこいい上司が大勢います。どんなに忙しくても周りへの感謝の気持ちを忘れず、誰も取り組んだことがない仕事でもアウトプットを出せるような人間になりたいと思います。他省庁や地方自治体、国際機関にも出向してみたいです。冨田 私もかっこいい大人、それも、家庭を持ち、将来世代のために働くかっこいい母親になっていたいです。家庭と仕事の両立は大変かもしれませんが、近い将来、男女問わずそれが当たり前の社会が来ていると思います。また、財務省はそのサポート体制がしっかりしているので、大きな不安はありません。社会のために働くことが、自分や身の周りの大切な人を幸せにするためでもありたい、そんな欲張りを実現させることが目標です。

冨田 学生時代の友人や、入省後の研修で知り合った他省の同期と過ごすことが多いです。仕事とプライベートの区別を意識することで休日をより充実して過ごすことができています。旅行に行く頻度も、月に1~2回と増えました。また、平日でも、飲みに行ったり、朝は喫茶店で読書をしてから登庁したりすることもあり、自分の時間を満喫することができています。服部 私も業務時間内は全力で働く分一旦仕事が終われば全力で休むということをモットーにしています。就職してから北海道、長野、新潟(キャンプ)、香川、岡山などに旅行に行きましたし、平日にも課内の同僚とボーリングに行ったり、最近始めたゴルフを上達させるべく、打ちっぱなしに行ったりしています。

掛林 職場では仕事の時はみな真面目ですが、その分上司との距離が近く可愛がって頂いています。課内の皆で同じ目標に向かっているという意識があるからか結束も強く、まるで家族のように温かく、楽しい職場です。末松 ここにいる4人だけでなく、同期は非常に仲が良いです。金曜日の夜や土日は同期で集まって飲み明かす時もあり、日本の未来を熱く語り合うこともあれば誰それの恋愛話に耽ることもあります。どんな悩みでも相談できて、互いに切磋琢磨できる同期の存在にはいつも支えられています。

掛林 就職活動とは、単に仕事を決めるものではなく、改めて自分を見つめ直し、将来を考えるとても良い機会だと思います。ぜひ肩肘張らずに、素直に、じっくり自分と向き合って下さい。その結果として皆さんが財務省を選んでくれるのを、一職員として心待ちにしています!

若手職員対談

4特集

入省2年目の若手職員4人に、就職活動の思い出や入省してからの1年間を振り返ってもらいました。

理系学部出身者数

女性数

採用数

1

7

22

平成29年度

0 2 2 3

2 5 7 7

18 22 23 23

平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度

採用実績

服部 大樹Daiki HATTORI[平成28年入省]

大臣官房総合政策課

冨田 絢子Ayako TOMITA[平成28年入省]

主計局調査課

末松 智之Tomoyuki SUEMATSU[平成28年入省]

関税局関税課

掛林 美智Michi KAKEBAYASHI[平成28年入省]

主税局調査課

SPECIAL ISSU

E