new 新商品・ソリューション・サービス解説 … · 2017. 11. 30. ·...

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新商品・ソリューション・サービス解説 富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014 149 ApeosPort/DocuCentre-V C 7775/6675/5575/4475/3375/2275 ApeosPort/DocuCentre-V C 7775/6675/5575/4475/3375/2275 ApeosPort-V, DocuCentre-V C7775/ C6675/ C5575/C4475/C3375/C2275シリーズは、お 客様提供価値にこだわったオフィスユースの高機能 複合機であり、機器を新たなステージへと変革させて いくことを意識した商品である。 複合機の基本性能である複写プリントの生産性を、 白黒/カラー共に25枚/分から70枚/分という広い レンジを同一の商品ラインナップとして揃え、お客様 使用時の利便性と快適性の向上を強く意識した新た な技術を導入し、これまでとは違った価値提供を追求 している。 本稿では、本商品の概要と導入した主要技術を紹介 する。 Abstract The ApeosPort-V and DocuCentre-V C7775/C6675/ C5575/C4475/C3375/C2275 series is a series of multifunction devices for office use that were designed with a focus on providing value to customers. This series aims to revolutionize multifunction devices, taking them to a new stage. This series provides a wide range of performance in a single product lineup; the print speed, a basic characteristic of multifunction device performance, ranges from 25 pages per minute to 70 pages per minute for both monochrome and color printing. This series also aims to provide new value to customers by introducing new technologies designed with a strong focus on improving customers' convenience and ease of use. This paper gives an overview of the products and introduces the main technologies implemented in them. 執筆者 岸本 一(Hajime Kishimoto*1 馬場 基文(Motofumi Baba*2 *1 商品開発本部 第二商品開発部 Product Development & Program Management II, Product Development Group*2 商品開発本部 グローバルプラットフォーム開発部 Global Platform Development & Program Management, Product Development Group

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  • 新商品・ソリューション・サービス解説

    富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014 149

    ApeosPort/DocuCentre-V C 7775/6675/5575/4475/3375/2275ApeosPort/DocuCentre-V C 7775/6675/5575/4475/3375/2275 要 旨 ApeosPort-V, DocuCentre-V C7775/ C6675/

    C5575/C4475/C3375/C2275シリーズは、お

    客様提供価値にこだわったオフィスユースの高機能

    複合機であり、機器を新たなステージへと変革させて

    いくことを意識した商品である。

    複合機の基本性能である複写プリントの生産性を、

    白黒/カラー共に25枚/分から70枚/分という広い

    レンジを同一の商品ラインナップとして揃え、お客様

    使用時の利便性と快適性の向上を強く意識した新た

    な技術を導入し、これまでとは違った価値提供を追求

    している。

    本稿では、本商品の概要と導入した主要技術を紹介

    する。

    Abstract

    The ApeosPort-V and DocuCentre-V C7775/C6675/C5575/C4475/C3375/C2275 series is a series ofmultifunction devices for office use that were designedwith a focus on providing value to customers. Thisseries aims to revolutionize multifunction devices,taking them to a new stage.

    This series provides a wide range of performance ina single product lineup; the print speed, a basiccharacteristic of multifunction device performance,ranges from 25 pages per minute to 70 pages perminute for both monochrome and color printing. Thisseries also aims to provide new value to customers byintroducing new technologies designed with a strongfocus on improving customers' convenience and easeof use.

    This paper gives an overview of the products andintroduces the main technologies implemented inthem.

    執筆者 岸本 一(Hajime Kishimoto)*1 馬場 基文(Motofumi Baba)*2 *1 商品開発本部 第二商品開発部

    (Product Development & Program Management II, Product Development Group)

    *2 商品開発本部 グローバルプラットフォーム開発部 (Global Platform Development & Program

    Management, Product Development Group)

  • 新商品・ソリューション・サービス解説

    ApeosPort/DocuCentre-V C 7775/6675/5575/4475/3375/2275

    150 富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014

    1. はじめに

    当社の中核カラー複合機における開発の歴史

    を振り返ると、これまで基本性能の向上と個々

    の要素技術による環境性能の追求をベースに開

    発 し て き た 第 1 世 代 の ApeosPort-IV

    /DocuCentre-IV(以下、AP-IV/DC-IV)C

    5570シリーズ、省エネ性とお客様使用時の利

    便性とを高い次元で両立する新開発システム技

    術 を 導 入 し た 第 2 世 代 の AP-IV/DC-IV

    C5575シリーズ1)と、商品を進化させてきた。

    特に環境性能については、「RealGreen®」と

    いう目指すコンセプトを掲げ、省エネ性とこれ

    に相反する利便性や快適性などを両立する商品

    を実現してきた2)。

    世界最速2.2秒で立ち上がるIH定着技術3)や、

    スリープ状態から体感待ち時間ゼロで機器が利

    用できるシステム技術4)などは当社を代表する

    「RealGreen」技術である。

    今回開発した第3世代となるApeosPort-V

    /DocuCentre-V(以下、AP-V/DC-V)C

    7775シリーズでは、広い生産性レンジの商品

    ラインナップをベースに、新たな取り組みとし

    て、「思考を止めない」快適な使用感実現へのこ

    だわりを追求している。「RealGreen」技術に

    「おもてなしの心」を加え、お客様の機器への

    アクセスの仕方から使用意図を検出してスリー

    プからの自動復帰と、お客様個人検出による操

    作レスによる認証サービスの導入、ユーザーイ

    ンターフェイス操作性の向上、オフィスの静音

    性への貢献といった3つの視点を織り交ぜ、新

    たな技術を導入している。

    2. 商品概要

    今回開発したAP-V/DC-V C7775シリー

    ズでは主に、広い生産性レンジの商品ライン

    ナップを実現するワイドレンジ化技術と、お客

    様の思考を止めない快適な使用感へのこだわり

    を追求した技術の2つに注力して商品開発を進

    めてきた。

    1)生産性ワイドレンジ化技術

    多様化する顧客ニーズに広く適用するため

    に同一商品群で白黒/カラー25枚/分から、

    70枚/分まで同じ機器サイズで商品提供で

    きるようにワイドレンジ化技術を2つ導入

    している。「省スペース高速用紙搬送制御技

    術」と、「IH定着技術の高生産性化技術」で

    ある。

    2)快適な使用感を実現するための技術

    「Smart WelcomEyes® Advance技術」

    (以下、SWE Advance技術)、「ユーザー

    インターフェイス操作性改善技術」(以下、

    UI操作性改善技術)、「静音化技術」3つの

    技術を導入している。特に、SWE Advance

    技術と静音化技術は、新たな価値創造に向

    けた当社のチャレンジ技術である。SWE

    Advance技術は、お客様の複合機使用意図

    検出によるスリープからの自動復帰、およ

    びお客様個人検出による操作レスによる認

    証サービスを目指して開発した独自技術で

    ある。UI操作性改善技術は、お客様のUI操

    作をスマートフォンライクに変え、使い勝

    手にこだわりの設計を加えた改善技術であ

    る。静音化技術は、自動原稿搬送装置、機

    器本体、フィニッシャーにおける、モーター

    やファン音・用紙の摺動音・衝突音など、

    さまざまな動作音を低減するための独自技

    術である。

    次章にて、上記の主要な5つの技術について

    紹介する。

    3. 主要技術

    3.1 省スペース高速用紙搬送制御技術

    オフィス複合機の高機能化に伴いソフトウェ

    アによる制御規模が加速度的に増加している状

    況において、高精度な用紙搬送制御を行うため

    の制御精度を確保し、「Cパス」(用紙トレイか

    らプリント出力までの用紙搬送路が最短となる

    Cの字形となる)構成で70ppmを実現している。

    Cパス70ppmでの非常に狭い用紙間ギャッ

    プで安定した用紙搬送を実現するために、

    AP-V/DC-V C7775/C6675ではテイクア

    ウェイ部とレジ部にステッピングモーターを採

    用しており、実際の用紙搬送状況をペーパーパ

    スセンサーでモニターしてステッピングモー

  • 新商品・ソリューション・サービス解説

    ApeosPort/DocuCentre-V C 7775/6675/5575/4475/3375/2275

    富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014 151

    0

    20,000

    40,000

    60,000

    80,000

    100,000

    120,000

    140,000

    160,000

    180,000

    200,000

    t≦0

    .8

    0.8

    <t≦

    1

    1<

    t≦1

    .2

    1.2

    <t≦

    1.4

    1.4

    <t≦

    1.6

    1.6

    <t≦

    1.8

    1.8

    <t≦

    2

    2<

    t≦2

    .5

    2.5

    <t≦

    3

    3<

    t≦4

    4<

    t≦5

    イベ

    ント

    実行

    回数

    [回]

    イベント遅延時間[ms]

    イベント遅延時間分布

    H/D Recover

    Hard Down

    Jam Recover

    Jam Down

    Duplex

    Simplex

    Power ON

    ターの複雑な駆動パターンを高精度で切り替え

    て い る 。 こ れ を 支 え る 技 術 と し て 、

    AP-V/DC-V C7775シリーズでは、当社独自

    開発の、①System-on-a-chip(以下SOC)に

    よ る ソ フ ト ウ ェ ア 処 理 の 高 速 化 、 ② IOT

    (Imaging Output Terminal)ソフトウェアプ

    ラットフォームを活用したCPU負荷の見える

    化、の2つの技術で対応している。

    3.1.1 SOCによるソフトウェア処理の高速化

    AP-V/DC-V C7775シリーズでは、従来機

    AP-IV/DC-IV C5575シリーズで導入した当

    社独自開発のSOCを採用し、その性能をフルに

    活用することでCパス70ppm実現に貢献して

    いる。まず、Flash-ROMに焼かれた制御プロ

    グラムをアクセス時間が短いDRAM上にロー

    ドして動作させることにより、ソフトウェア処

    理の高速化を図っている。さらに、SOCに組み

    込まれているタイマー機能、メモリー転送機能

    を活用し、複雑なステッピングモータープロ

    ファイルの制御とソフトウェア処理負荷の低減

    を両立させている。

    3.1.2 IOTソフトウェアプラットフォームを

    活用したCPU負荷の見える化

    IOTソフトウェアプラットフォームとは、低

    速機から中速機クラスの機種をターゲットに開

    発された複合機プリント部制御ソフトウェアプ

    ラットフォームである。このIOTソフトウェア

    プラットフォームには、制御プログラムが実際

    にIOT制御している時のCPU負荷を測定する機

    能が組み込まれており、この機能を活用して

    CPU負荷の見える化、検証を行っている。

    従来は特定の入出力信号や動作タイミングを

    ピンポイントで部分的に測定していたが、ソフ

    トウェアによる制御が複雑化しマルチタスク

    OS上で複数の処理が並列処理される現在の複

    合機制御ソフトウェアにおいて、IOT制御シス

    テム全体としてCPUのパフォーマンスを定量

    的かつ容易に判断する仕組みがなかった。

    IOTソフトウェアプラットフォームではこの

    課題に手を打ち、IOT制御実行中のイベント処

    理実行時間、イベント処理が実行されるまでの

    遅延時間を複数ポイントにおいて、自動で測

    定・集計することで、CPUパフォーマンスを

    イベント処理実行時間/処理遅延時間の度数分

    布として統計的に可視化することを可能として

    いる(図1)。この機能を活用することによりCPU

    パフォーマンスを適時容易に検証することがで

    き、課題の早期抽出と対応が可能となっている。

    3.2 IH定着技術の進化

    2009年発売の第1世代カラー複合機、

    AP-IV/DC-IV C5570 シリーズでは、独自の

    IH(誘導加熱)定着技術を導入し、当社が目指

    す「RealGreen」のコンセプトを、省エネ性と

    利便性を両立した技術として実現した。今回、

    第3世代となるAP-V/DC-V C7775シリーズ

    に搭載したIH定着技術では、カラー70枚/分に

    も対応できる高生産な定着器を新たに開発した。

    また同時に、生産性以外の性能においても、

    第1世代・第2世代機よりも省エネ性、高速復帰

    性(利便性)、信頼性、用紙汎用性で従来技術を

    上回るレベルに進化させている。

    3.2.1 高速生産に対応したIH定着技術

    富士ゼロックス独自のIH定着器は、急速立上を

    可能とした「急速立上IH」構成と、高生産性を可

    能とした「高速生産IH」構成の2種が存在する。

    どちらも、IHベルトとIHコイルを2つの強磁性体

    (フェライトと感温磁性合金)で挟み込み、さら

    に磁束漏洩を防止するアルミ遮蔽板でその外側

    を挟み込むことで、IHコイルから発生する磁界の

    磁気エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換

    できることが特徴である(図2)。

    図1 IOTソフトウェアプラットフォームによるCPUパフォー

    マンスの可視化

    Visualizing CPU performance using IOT Software Platform

  • 新商品・ソリューション・サービス解説

    ApeosPort/DocuCentre-V C 7775/6675/5575/4475/3375/2275

    152 富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014

    フェライト

    感温磁性合金

    (蓄熱体)

    加圧ロール

    定着ベルト

    IHコイル

    アルミ遮蔽板

    定着ニップ

    高速生産IHの特徴は、定着ベルトと感温磁性

    合金からなる蓄熱体が、電磁誘導加熱により直

    接発熱する構成である。電磁誘導により加熱さ

    れた蓄熱体の熱は、定着ベルトへ熱補給され、

    定着ベルトの発熱と蓄熱体からの熱により、通

    紙による急激な温度低下(以下、温度ドループ)

    を 低 減 し て い る 。 こ の 構 成 に よ り 、

    AP-IV/DC-IV C5570(従来機)ではカラー50

    /白黒55ppmまでの生産性を達成している。

    今回、さらなる「高生産性の定着器」を狙い、

    AP-V/DC-V C7775では、カラー70/白黒

    70ppmの生産性を達成した。

    70ppmを達成するために、定着ニップ設計

    と蓄熱体熱容量設計を実施した。定着ニップと

    は、加圧ロールと定着ベルトが一定の荷重でコ

    ンタクトし、ある一定の接触領域を構成する。

    この接触領域が定着ニップ(図2)であり、定

    着ニップの最適化設計により、高速領域でも

    低・中速領域と同等の温度でトナーを定着させ

    ることを可能とした。さらに、蓄熱体熱容量設

    計により、蓄熱体温度をベルト温度より常に20

    ~30℃高い温度に維持させて、温度ドループを

    低減している。これらとともに、立上時間を短

    縮するため、定着ベルトは25ppm機種と同径

    のφ30の定着ベルトを使用し、定着ベルトの熱

    容量を小さく抑えている。

    また、同時に電力損失の低減にも着手した。

    IHコイルに交流(V)を印加すると、そこに流

    れる電流(I)とIHコイル抵抗(R)の関係から、

    電力損失が発生する。この電力損失は、熱に変

    わり、IHコイル自身が自己発熱する。この電力

    損失を低減するために、IHコイルを形成してい

    る素線(銅線)の電気抵抗低減を図り、IHコイ

    ルの電力損失と自己発熱を抑制している。IHコ

    イルの抵抗値改善により、定着に寄与する実効

    電力の増加と、70ppm通紙に必要な大電力を

    投入しても、IHコイル温昇を使用可能範囲内に

    抑えることが可能となっている。

    こ れ ら の 技 術 を 集 結 さ せ た 結 果 、 当 社

    70ppmの従来技術である「フリー・ベルト・

    ニ ッ プ ・ フ ュ ー ザ ー 」 を 搭 載 し て い る

    AP-IV/DC-IV C7780に対して、立上時間は

    約80%低減、TEC値は約55%の低減を達成し

    つつ、同時に70ppmの生産性を達成すること

    ができた。

    3.2.2 用紙汎用性

    通常、2枚重ねで構成された封筒や薬袋を定

    着器に通紙すると、表面/裏面の搬送速度差か

    ら、「しわ」が発生しやすい。

    本定着器では、定着ニップ最適化により、表

    面/裏面の搬送速度差を改善し、封筒や薬袋の汎

    用性を拡大した(表1)。特に、AP-IV/DC-IV

    C5575シリーズ(従来機)では、プリントで

    「しわ」が発生していた70g/m2の薄紙封筒の

    プリントを可能とした。

    3.2.3 高速復帰性能のさらなる向上

    従 来 機 AP-IV/DC-IV C2275/C3375 の

    「急速立上IH」構成は、世界最速3秒立ち上げ

    を達成している。本シリーズではさらなる高速

    復帰を目指し、IHコイルの素線最適化による電

    力損失の低減、IH加熱に用いられる使用電源周

    波数の最適化、投入電力の増加により、世界最

    速2.2秒を達成することができた(図3)。

    AP-V/DC-V

    C7775

    シリーズ

    AP-IV/DC-IV

    C5575

    シリーズ

    AP-IV/DC-IV

    C7780

    シリーズ

    封筒 ○ △ 封筒専用の

    定着器が必要

    薬袋 ○ △ ↑

    図2 IH定着器概略図

    A schematic illustration of the IH fusing unit

    表1 定着器の封筒・薬袋性能従来器比較

    (△:プリント可能な封筒/薬袋に制限あり)

    Fusing unit compatibility with envelopes and flapless envelopes (comparison with previous models)

  • 新商品・ソリューション・サービス解説

    ApeosPort/DocuCentre-V C 7775/6675/5575/4475/3375/2275

    富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014 153

    2.2

    2.9

    0 1 2 3 4

    35ppm

    定着復帰時間[s]

    従来機

    今回

    約25%低減

    3.61

    2.38

    1.32

    8.14

    3.05

    1.68

    0 5 10

    70ppm

    55ppm

    35ppm

    TEC値[Wh/週]

    従来機

    今回

    55%低減

    約20%低減

    約20%低減

    (改善前) (改善後)

    3.2.4 TEC値低減

    さらなる省エネを達成するために、高速復帰

    技術、定着ニップ最適化、温度制御の最適化に

    よ り 、 35ppm 比 較 で 従 来 機 AP-IV/DC-IV

    C3375に対しTEC値を約20%低減、55ppm

    比較で従来機AP-IV/DC-IV C5575に対し

    TEC 値 を 約 20 % 低 減 、 70ppm 比 較 で

    AP-IV/DC-IV C7780に対してTEC値を約

    55%低減とそれぞれ達成した(図4)。

    3.2.5 高信頼性駆動設計

    一般的に駆動系で発生する課題(信頼性を阻

    害する課題)として、異音や摩耗が挙げられる。

    本定着器では、駆動系の異音防止、ギヤ摩耗の

    低減を狙い、信頼性を向上させる駆動設計に見

    直しをかけた。また、静音性の観点から、動作

    時の駆動音を静音化する駆動系の設計も同時に

    実施した。

    具 体 的 に は 、 駆 動 系 の ギ ヤ 数 を 従 来 機

    AP-IV/DC-IV C5575シリーズに対して、お

    よそ半減した。また、金属シャフトに樹脂で摺

    動させていたギヤをボールベアリング入りギヤ

    に変更した。

    ギヤ数低減/ボールベアリング導入により、ギ

    ヤ間の駆動伝達がスムーズとなり、伝達効率が

    向上している。これにより、駆動トルクの低減、

    ギヤ摺動部の摩耗低減、異音発生リスクの低減

    という3つの効果が得られた。この結果、低速

    から高速までのワイドレンジに渡る信頼性が向

    上し、同時に定着器の静音化も実現している。

    3.2.6 小型化・低コスト化設計

    高速化(70ppm)を達成するため、従来機

    AP-IV/DC-IV C5575シリーズに対して、定

    着ニップの高荷重化を行っている。そのため、

    高荷重化に耐える定着ユニット構成とする必要

    があった。高荷重化によるフレームの「ゆがみ」

    や「ねじれ」を改善するために、シミュレーショ

    ン解析から、荷重を支える両サイドフレームの

    形状最適化や複数枚構成を採用した。

    以下の図5は、シミュレーション解析の結果

    であり、サイドフレームにかかる応力の違いを

    表している。改善後のサイドフレームは、全面

    に均等な応力分布となっている。

    また、荷重を支える加圧レバーは、高荷重化

    によるレバーの倒れを起こさないような設計変

    更 を 実 施 し て い る 。 具 体 点 に は 、 従 来 機

    AP-IV/DC-IV C5575シリーズの形状をベー

    スに改良し、サイズアップによる剛性アップと、

    荷重作用点の分散、すなわち1点で荷重を支持

    する1点支持から、2点で荷重を支持する2点支

    持へと変更した。この結果、レバーの倒れを防止

    し、高荷重適性を持つ装置構成となっている。

    ただしこのままでは定着器が大きくなってし

    まうため、定着ユニット構成を全面的に見直し

    て シ ェ イ プ ア ッ プ し 、 ほ ぼ 従 来 機

    AP-IV/DC-IV C5575 シリーズの55ppmク

    ラスと同じサイズに抑えることに成功した。

    図3 復帰時間比較

    A comparison of recovery time from sleep mode

    図4 TEC値比較

    A comparison of TEC values 図5 シミュレーションによる応力解析

    Stress analysis using simulation

  • 新商品・ソリューション・サービス解説

    ApeosPort/DocuCentre-V C 7775/6675/5575/4475/3375/2275

    154 富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014

    こ の 結 果 、 70ppm の 従 来 機 で あ る

    AP-IV/DC-IV C7780定着器と比較すると断

    面積で約37%の大幅なサイズダウンを実現す

    ることができた(図6)。

    3.2.7 IH定着技術のまとめ

    2009年の第1世代の商品に導入した当社独

    自IH定着技術は、第2、第3と世代を重ね、これ

    に伴って技術も同時に進化を遂げてきた。

    今回の第3世代では、省エネ性、高速復帰性、

    高生産性、信頼性、用紙汎用性の面での高性能

    化と、低コスト設計を同時に検討し、技術の持

    つ価値の最大化を図った。

    当社のIH定着技術は、技術の本質が持つス

    ケーラビリティーから、今後まだ発展の余地を

    残しており、次のイノベーティブな進化のス

    テージへと開発を進めていく。

    なお、本技術は、我が国の科学技術の向上と

    産業の発展に寄与したことが認められ、「温暖化

    防止に貢献する誘導加熱(IH)技術の発明(特

    許第3901414号)」にて、平成25年度 全国

    発明表彰「発明賞」を受賞している。

    3.3 SWE Advance 技術

    富士ゼロックスでは、独自の自動センシング

    技術「Smart WelcomEyes 技術」(以下SWE

    技術)により複合機のスリープ状態からジョブ

    実行するまでの一連の操作において、「体感待ち

    時間ゼロ」を可能にしている4)。このSWE技術

    をさらに進化させ、よりインテリジェンスに利

    便性を向上させた「SWE Advance 技術」を

    新たに開発した。

    SWE Advance 技術では、新たに2つのカ

    メラを搭載している。SWE技術の人検知のため

    の反射センサーを人検知カメラに置き換え、広

    い範囲で操作者を検出できるようにした。さら

    に、操作者を識別して簡易認証するための顔認

    識カメラを搭載している。無償のオプションソ

    フトウェア「かんたんUI パッケージ2.0」と組

    み合わせることで、複合機に近づくだけで操作

    者を顔で識別し、個人専用の操作画面を表示可

    能にした。これにより、あたかも自分専用機の

    ような、快適なサービス環境を提供する。

    3.3.1 人検知カメラのセンシング設計

    図7に焦電センサーとカメラの取りつけ位置、

    図8に人検知の範囲を示す。

    焦電センサーは、SWE技術と同様に複合機正

    面のピラーカバー下部に開口部を設けて取りつ

    けている。人検知カメラによる人検出範囲が広

    いため、焦電センサーの取りつけ開口部を広げ

    ることで、従来の80cmから120cm付近まで

    検出範囲を拡張した。これにより人の動きを検

    出して、スリープ状態から素早く人検知カメラ

    を復帰させることを可能にしている。

    人検知カメラは、反射センサーと同じ位置に

    取りつけている。人検知カメラによる操作者の

    AP-Ⅳ/DC-Ⅳ C7775

    シリーズ新定着器

    AP-Ⅳ/DC-Ⅳ C7780

    シリーズ定着器(従来)

    図6 従来機と本定着器のサイズ比較

    A size comparison of the previous model's fusing unit and the new fusing unit

    図7 焦電センサーとカメラの取りつけ位置

    The pyroelectric sensor and position of the camera

    図8 人検知範囲

    The detection range of the human detection technology

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    富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014 155

    接近検知範囲は、複合機の操作パネルの中心

    から半径120cmの半円領域内になる。この視

    野角を確保するために、人検知カメラは若干突

    起させた配置設計を導入している。この領域内

    で、検知した人の身体の向きが複合機の方向を

    向いているか見極め、複合機の利用者なのか判

    別している。また、接近検知範囲内で利用者と

    して判断できなかった場合であっても、複合機

    正面35cmの半円領域を人検知範囲として、こ

    の範囲内に人が入ると必ず複合機の利用者であ

    ると判断させている。

    3.3.2 顔認識カメラによる本体認証

    図9に操作者の顔認識位置と顔認識画面を示す。

    顔認識カメラは、複合機本体操作パネルの左

    上部分に搭載し、この顔認識カメラの映像を操

    作パネルの顔認識画面に表示している。操作パ

    ネル正面に立ち、やや画面を覗き込むようにカ

    メラ画像中央のガイドに顔の大きさを合わせる

    ようにすることで顔を検出し、あらかじめ登録

    した顔情報と照合する。顔情報が同一であると

    判断すると複合機の本体認証機能により簡易認

    証してログインすることができる。

    3.3.3 省エネセンシングシステム

    図10に焦電センサー、カメラ、複合機、そし

    て操作者の動きの関係を示す。

    SWE技術同様、「もったいない」の設計思想

    を当社独自技術で実現する省エネ設計を導入し

    ている。複合機全体の消費電力を抑制するため、

    消費電力が極めて小さい焦電センサーのみ常時

    通電している。焦電センサーの検知エリア内で

    人を検知すると、カメラが起動する。そして人

    検知カメラが、近づいて来る人の身体の向きを、

    つま先のベクトルから検出し、複合機の方向に

    向かっている利用者であると判断した場合にス

    リープ復帰させる。複合機の方向を向かない通

    りすがりのケースでは、スリープ復帰をさせな

    いように設計している。

    3.3.4 ハードウェアシステム技術構成

    人検知カメラおよび顔認識カメラの映像処理

    には、車載カメラでも実績のある(株)東芝製

    の画像認識プロセッサーの第2世代である

    ViscontiTM2を採用している。このVisconti2は、

    高い画像認識処理性能を低消費電力で実現し、

    冷却ファンも必要としない。このように高い処

    理性能と省エネ性能を両立しているという点は、

    われわれが目指す「RealGreen」の考え方に合

    図9 操作者位置と顔認識画面

    The position of the user and the facial recognition screen

    図10 省エネ設計

    Energy-saving design

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    156 富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014

    致しており、またピラーカバーに収まる小型化

    を可能にする技術としても極めて優れているこ

    とからSWE Advance技術に搭載した。

    図11にSWE Advacne技術のハードウェア

    構成図を示す。Visconti2は、2台のカメラから

    の画像を取り込み、人検出、顔認識をリアルタ

    イム処理してビデオ画像として出力する。

    このビデオ画像出力をVsyncに同期して

    FPGAが受け取り、静止画に変換してSRAM上

    に保存している。この画像をUSB I/Fを介して

    複合機に取り込んでいる。画像の取り込みは、

    ストリーミング処理ではなく、このFPGAの

    SRAM上の静止画像を連続で取得することで

    動画のように見せている。

    節電制御に関しては、複合機が節電モードに

    移行するとUSB制御デバイスは、Visconti2と

    FPGAの電源をオフし、自らも節電モードに移

    行する。USB制御デバイスは、焦電センサーの

    復 帰 信 号 に よ り 節 電 モ ー ド か ら 復 帰 し 、

    Visconti2とFPGAに対して節電復帰を通知す

    る。Visconti2は、節電復帰するとともに人検

    知機能を復帰させ、操作者を検知すると人検知

    信号を出力する。人検知信号は、SWE技術の反

    射センサーの人検知入力I/Fに接続することに

    より、反射センサーと同様な節電復帰を可能に

    している。

    3.3.5 ソフトウェアシステム技術構成

    SWE Advance技術のソフトウェアは、コン

    トローラのファームウェアに組込む構成を取ら

    ず、プラグインで実装する構成を採用している。

    フレキシブルな変更が後から加えられるように

    考慮し、この構成を選択した。

    また、Visconti2のファームウェアもプラグ

    インに抱き込む構成としているので、市場で

    ファームウェアのバージョンアップも簡単にで

    きる。

    3.3.6 画像処理技術

    【人検出機能】

    図12に人検知カメラの操作者を検出してい

    る時の画像を示す。

    Visconti2は、魚眼レンズを用いたカメラか

    らの入力画像(1)の歪み補正(2)と視点変換

    (3)を行う画像処理を、ビデオ入力に対して

    リアルタイムに処理している。視点変換によっ

    て作り出された足元画像に「人検出範囲」、「常

    時検出範囲」、「滞在検出範囲」が緑色の図形で

    示されている。人検出範囲において人の爪先の

    向きを検出し、操作者を検知しているのが赤い

    点で示されている。

    図13に人検知カメラの人の通りすがり画像

    を示す。爪先を検出しているが、検出した赤い

    点が複合機の方向に向かっていないことから、

    操作者として検出していない。

    図11 SWE Advance技術ハードウェア構成図

    A configuration diagram of SWE Advance's hardware

    図12 人検知カメラ画像(操作者検出)

    Images captured by the human detection camera (detecting a user)

    図13 人検知カメラ画像(通りすがり検出)

    Images captured by the human detection camera (detecting a passerby)

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    富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014 157

    【顔認識技術】

    図14に顔検出と顔パーツ検出結果を示す。

    Visconti2では、顔の14部位を特徴点として検

    出し、顔のサイズ・向きなどを3次元的に補正

    した後に顔の特徴量を抽出している。

    顔の特徴量は、照明変動の影響を受けるため、

    登録時と認識時の照明条件が一致していないと

    個人の特定が難しくなる。また、カメラに直接

    光が当たることでレンズフレアによる白飛びが

    発生すると特徴点の検出が難しくなる。通常は、

    フレア対策した高価なレンズを採用するが、画

    面ガイドに顔を大きく合わせることにより、環

    境による外乱因子の影響を少なくする設計思想

    を導入し、低コスト設計を実現している。

    3.3.7 SWE Advance技術のまとめ

    以上、技術について示してきたが、SWE

    Advance 技術は、複合機が利用可能になるま

    でのユーザー操作手順をできるだけ減らし、お

    客様の思考を妨げないで効率的に働く環境を提

    供する、当社ユニークなチャレンジ技術である。

    今後ご利用いただいたお客様の声の分析を重ね

    て潜在ニーズを掘り起こし、さらなる価値追求

    を目指して技術を進化させていく。

    3.4 UI操作性改善技術

    スマートフォンのような新しい快適なUI操作

    感を提供するため、従来機から操作パネルの

    ハードウェアとソフトウェアに変更を加えた。

    3.4.1 CPU変更

    操作処理性能を4倍以上に向上させ、ユーザー

    入力に追従できるようにした。また、タッチパネ

    ルの座標分解能を2倍に向上させている。

    3.4.2 軽操作タッチパネルの採用

    抵抗膜式タッチパネルを操作力の軽いタイプ

    に変更し、フリック入力に対応した。抵抗膜式

    を採用したことにより、従来機にも導入してい

    るスタイラスペンを利用することも可能となり、

    ペン先による摺動入力への耐性にも配慮した。

    ハードウェアに加え、操作パネルのソフト

    ウェアにも以下の改善を加えている。

    ① 座標検知グリッドを従来の半分にし、押下

    座標演算アルゴリズムと補正処理も大幅に

    変更して位置精度を向上させた。

    ② 座標移動方向判定処理により、スムーズかつ

    安定したタッチ座標移動を行えるようにした。

    ③ ペンでもフリックドラッグができるよう、

    ペン/指の動的判定を可能とすることで、

    差異のない操作ができるようにした。

    ④ コントローラーとの通信速度を上げること

    により、操作追従性の向上を図った。

    ⑤ 操作パネルのソフトウェアをダウンロード

    可能にし、顧客要求向けの仕様アップグ

    レードに対応できるようにした。

    図15にフリック動作、図16にドラッグ動作

    のイメージを示す。

    図14 顔検出と顔パーツ検出結果

    Face detection and facial parts detection results

    図15 フリック動作

    Flick movement

    図16 ドラック動作

    Drag movement

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    158 富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014

    3.5 静音化技術

    静音化技術は、当社が追求する「RealGreen」

    のコンセプトを幅広く展開していくために、多

    様なアプローチからの検討を重ねた結果、着手

    に至った技術である。優れた省エネ商品を快適

    な環境で提供するという点で、静音化という新

    たな切り口を掲げ、技術開発を進めてきた。

    今回、装置の稼働音を極限まで抑えることで、

    オフィス環境におけるお客様の「思考を止めな

    い」という点にこだわった価値提供を目指した。

    自動原稿搬送装置、本体、フィニッシャーに

    おける、モーターやファン、用紙の摺動・衝突

    音など、さまざまな動作音を低減する静音化技

    術を今回新たに開発した(図17)。

    3.5.1 電子スキュー補正技術(自動原稿搬送

    装置)

    従来の自動原稿搬送装置では、原稿読取り時

    に原稿の傾き(スキュー)を補正する音が、装

    置から発生する音の約3割を占めていた。メカ

    機構によるスキュー補正は、用紙をレジロール

    に衝突させて用紙先端位置を合わせ、さらに用

    紙を押し込み、たわませることでスキューを補

    正しており、さまざまな用紙衝撃音が発生する

    要因となっていた(図18-a)。

    メカ機構で実現していたスキュー補正に替わ

    る新たな手段として、画像処理による「電子ス

    キュー補正技術」を開発することで、スキュー

    補正時に発生していた用紙衝撃音を大幅に低減

    することができた(図18-b)。また、これを実

    現するための専用ICを開発し、傾いたまま搬送

    された原稿のスキュー量(傾き角度)を算出し、

    この値に応じた画像処理を行うことで、ス

    キューを補正できるようにした。これにより、

    用紙衝撃音が大幅に低減し、原稿読取り時の騒

    音低減が可能になった(図18)。

    3.5.2 静音冷却技術および低負荷マーキン

    グ技術(複合機本体)

    複合機本体の遮音・密閉化と機内温度上昇の

    防止を両立させ、プリント時、待機時の双方の

    静音化を実現した。機内温度上昇の防止は、熱

    分散と発熱低減、および、エアフロー改善によ

    る「静音冷却技術(ヒートマネージメント)」に

    より実現した。従来、プリントエンジン近くに

    設置されていた大きな熱を発生する電源ユニッ

    トを、本体背面下部へ移動することで熱分散を

    図った。熱源の分散配置と、「低負荷マーキング

    技術」を導入することで、エンジン周辺の発熱

    量は従来機に対して、約1/3に低減することが

    できた。これによって、エンジン冷却効率が向

    上し、冷却に要していたファンの風量を約1/3

    に抑えることが可能となり、ファン騒音も約

    1/3に低減させることができた。また、電源ユ

    ニットに対しては、1個のファンによって広い

    図17 主な搭載技術と騒音低減量*1

    Main technology implemented and the amount of noise reduction*1

    *1 ApeosPort-V C3375 自動原稿装置PF2.03搭載モデル

    (静音モードにした状態で、自動原稿装置を使用しコピー

    したときの対従来機騒音低減量) *1 Using the ApeosPort-V C3375 model with the Duplex

    Automatic Document Feeder PF 2.03 installed, andmeasuring the noise level when running the copy functionusing the automatic document feeder with quiet modeturned on.

    図18-a 従来方式

    The previous method 図18-b 新方式

    The new method

    図18 用紙衝撃音を低減した部分

    The area in which noise caused by paper was reduced

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    富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014 159

    面積の集熱板に送風し冷却する、「集熱構造電源」

    を新たに開発し、冷却効率を向上させ、ファン

    騒音も大きく低減している(図19、図20)。

    3.5.3 静音フィニッシャー技術

    フィニッシャー固有の音源(ステープラー・

    コンパイラー部の騒音、メカ機構の騒音、駆動

    系騒音)の静音化を実現するために、メカ機構

    やメカトロ部品の静音化を図った。ステープ

    ラーの騒音に対しては、針綴じ工程ごとに用紙

    の種類や枚数によって速度を最適化し、必要な

    ときに必要な部分だけ必要最低限の力で動作さ

    せることで静音化した。さらに、静音化対策と

    して、嵌合部の密閉や用紙排出部の開口面積の

    最小化による音漏れ防止も行った。コンパイ

    ラーなどのメカ機構の騒音に対しては、機構解

    析シミュレーションを用いたパラメーター設計

    を実施し、用紙を揃えるラックと呼ばれる部品

    の形状最適化や速度パラメーターの最適化をす

    ることにより静音を実現した。また、装置の開

    口部から漏れ出る駆動騒音に対しては、音響解

    析により吸音材の最適配置を行い、静音化を実

    現している(図21)。

    3.5.4 静音化技術のまとめ

    以上の静音化技術を本商品に導入することで、

    稼働騒音を従来機に対して最大69%低減化し、

    (ApeosPort-V C3375+フィニッシャー

    C3モデル)、機器はこれまでにない静粛性を実

    現している。富士ゼロックスは今後、本技術群

    の他機種への展開を拡大し、また装置の稼働音

    低減のみならず、あらゆる音源に着目し、用紙

    切れなどの報知音や自動原稿送り装置の開閉な

    どの操作音に対しても「静音」を追求し、お客

    様に快適なオフィス環境を提供していく。

    4. まとめと今後の展望

    以 上 示 し て き た よ う に 、 AP-V/DC-V

    C7775シリーズでは、広い生産性レンジの商

    品ラインナップを実現するワイドレンジ化技術、

    お客様の「思考を止めない」快適な使用感への

    こだわりを追求した新たな技術を導入した。さ

    まざまな顧客ニーズに適用しながら「おもてな

    しの心」を技術で実現した高付加価値複合機で

    ある。

    しかし一方で、オフィスユースの複合機は、

    近年あまり代わり映えがしないというお客様の

    声をいただいている。コピー/スキャン/プリ

    ント/FAXが中心である複合機も、新たなサー

    ビス・ソリューションを提供する新機軸のファ

    ンクションが必要である。当社では、複合機の

    変革への取り組みを加速させるため、斬新な独

    図19 集熱構造電源の構成図

    A diagram of the power supply unit with heat-transfer cooling

    図20 従来電源装置と集熱電源装置のファン風量と

    騒音レベルの比較

    A comparison of fan air volume and noise levelsof the previous power supply unit and the newpower supply unit with heat-transfer cooling

    図21 フィニッシャーの静音化技術

    Noise reduction technology used in the finisher

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    160 富士ゼロックス テクニカルレポート No.23 2014

    自ファンクション、サービスの検討を進めている。

    今後、新たなステージへと機器を進化させる

    べく、当社の次の複合機がどのような変貌を遂

    げるか、是非ともご期待いただきたい。

    5. 商標について

    RealGreenおよびSmart WelcomEyesは、

    富士ゼロックス株式会社の登録商標です。

    Viscontiは、株式会社東芝の商標です。

    その他、掲載されている会社名、製品名は、

    各社の登録商標または商標です。

    6. 参考文献

    1) 安藤良他, “ApeosPort/DocuCentre-IV

    C2270/C3370/C4470/C5570 省 エ

    ネ大賞受賞”, 富士ゼロックステクニカル

    レポート, No.20 (2011).

    2) 富士ゼロックス株式会社, “Sustainability

    Report 2011”, pp.13-14.

    3) 上原康博, 馬場基文, “省エネ性と利便性を

    両立した「RealGreen」なIH定着技術”, 富

    士ゼロックステクニカルレポート, No.20

    (2011).

    4) 小野真史, 馬場基文他, “スリープ状態から

    「体感待ち時間ゼロ」での利用を実現する

    「RealGreen」システム技術”, 富士ゼロッ

    クステクニカルレポート, No.21 (2012).

    筆者紹介

    岸本 一 商品開発本部 第二商品開発部に所属

    専門分野:商品システム設計

    馬場 基文 商品開発本部 グローバルプラットフォーム開発部に所属

    専門分野:電磁気、加熱システム設計、定着技術、商品システム設計

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