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第 35 号(平成 28 年 2 月) 植村 太郎 精神科部長 良質で心のこもった医療を 働く人と地域のために Open Dialogue への招待 神戸労災病院精神科部長の植村太郎でございます。出来るだけ薬に頼らない精神医療をモットーに、日々臨床に勤し んでおります。勿論、当科外来の予約診療の枠内で、患者様一人にかけられる診察時間は、平均すれば 10 分前後です。 これでは「薬に頼らない」方針にも限界が生じます。そこでカウンセラーに助けてもらう事になります。当科にも臨床 心理士が二人おりまして、カウンセリングが必要と私が判断した方のセラピーを担当してもらっています。そのニーズ は高く、二人のスケジュールはほぼ常に予約で埋まっています。 今セラピーと言いましたが、これはサイコセラピーの略称です。日本語にすれば、心理療法、あるいは精神療法とい うことになります。カウンセリングとほぼ同じものと考えていただいてかまいません。今日は、ともすれば薬漬けと誤 解されやすい精神医療のイメージを払拭する、最新のサイコセラピーの知見をご紹介させていただきます。 取り上げるのは、Open Dialogue になります。これはフィンランドの西ラップランドで実践されている、急性期の精 神病 ( 主として統合失調症をイメージして下さい ) に対する新しい支援、介入法であり、現在日本でも急速に注目を集 めています。直訳すれば、 「開かれた対話」ということになりましょうか。依頼から24時間以内に専門家チームが出向き、 状態が改善するまで毎日、患者と家族や関係する重要人物を交えて対話する。大雑把に言えばこれだけなのですが、こ のアプローチによって、抗精神病薬をほとんど使うことなく、2 年間の予後調査で初発患者の 82% の症状を、再発が ないか、ごく軽微なものに抑えるなど、目覚ましい成果が得られているのです。 背景にはシステム論的家族療法があり ( 家族療法もサイコセラピーの一種です )、コラボレイティブ・アプローチ、 リフレクティング・プロセスとの共通点も多いと言われています。優れた治療成績とともに、その治療姿勢がH.アンダー ソン、T. アンデルセン、リン・ホフマンなどの家族療法コミュニティのセラピストに強いインパクトを与えています。 やや専門的になりましたが、この辺りのことを一般の方にも分かりやすく紹介する入門書を、引きこもりの臨床や「萌 え」に詳しいことで有名な精神科医の斎藤環先生が書かれています。「オープンダイアローグとは何か」がその本のタ イトルになりますが、現在 Amazon の精神医学カテゴリでベストセラー 1 位の座を占めています。興味を持たれた方は、 是非一度この本を手に取り、数ページで構いません、目を通してみて下さい。精神医療のイメージがガラッと変わること、 請け合いです。 最後になりましたが、私、実は日本家族療法学会の評議員をしております。OD が日本で広まることを切に願う者の 一人でありまして、今年 9 月に長崎のハウステンボスで開催される当学会の学術大会では、OD を巡るシンポジウムや ワークショップが行われる予定です。関心を持たれた方には、長崎まで足を運ばれることを強くお勧めいたします。 神戸労災病院理念

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Page 1: Open Dialogue への招待...Open Dialogue への招待 神戸労災病院精神科部長の植村太郎でございます。出来るだけ薬に頼らない精神医療をモットーに、日々臨床に勤し

第 35 号(平成 28 年 2月)

植村 太郎精神科部長

良質で心のこもった医療を    働く人と地域のために

Open Dialogue への招待

 神戸労災病院精神科部長の植村太郎でございます。出来るだけ薬に頼らない精神医療をモットーに、日々臨床に勤しんでおります。勿論、当科外来の予約診療の枠内で、患者様一人にかけられる診察時間は、平均すれば10分前後です。これでは「薬に頼らない」方針にも限界が生じます。そこでカウンセラーに助けてもらう事になります。当科にも臨床心理士が二人おりまして、カウンセリングが必要と私が判断した方のセラピーを担当してもらっています。そのニーズは高く、二人のスケジュールはほぼ常に予約で埋まっています。 今セラピーと言いましたが、これはサイコセラピーの略称です。日本語にすれば、心理療法、あるいは精神療法ということになります。カウンセリングとほぼ同じものと考えていただいてかまいません。今日は、ともすれば薬漬けと誤解されやすい精神医療のイメージを払拭する、最新のサイコセラピーの知見をご紹介させていただきます。 取り上げるのは、Open Dialogue になります。これはフィンランドの西ラップランドで実践されている、急性期の精神病 ( 主として統合失調症をイメージして下さい ) に対する新しい支援、介入法であり、現在日本でも急速に注目を集めています。直訳すれば、「開かれた対話」ということになりましょうか。依頼から24時間以内に専門家チームが出向き、状態が改善するまで毎日、患者と家族や関係する重要人物を交えて対話する。大雑把に言えばこれだけなのですが、このアプローチによって、抗精神病薬をほとんど使うことなく、2 年間の予後調査で初発患者の 82% の症状を、再発がないか、ごく軽微なものに抑えるなど、目覚ましい成果が得られているのです。 背景にはシステム論的家族療法があり ( 家族療法もサイコセラピーの一種です )、コラボレイティブ・アプローチ、リフレクティング・プロセスとの共通点も多いと言われています。優れた治療成績とともに、その治療姿勢がH.アンダーソン、T.アンデルセン、リン・ホフマンなどの家族療法コミュニティのセラピストに強いインパクトを与えています。 やや専門的になりましたが、この辺りのことを一般の方にも分かりやすく紹介する入門書を、引きこもりの臨床や「萌え」に詳しいことで有名な精神科医の斎藤環先生が書かれています。「オープンダイアローグとは何か」がその本のタイトルになりますが、現在Amazonの精神医学カテゴリでベストセラー1位の座を占めています。興味を持たれた方は、是非一度この本を手に取り、数ページで構いません、目を通してみて下さい。精神医療のイメージがガラッと変わること、請け合いです。 最後になりましたが、私、実は日本家族療法学会の評議員をしております。OD が日本で広まることを切に願う者の一人でありまして、今年 9 月に長崎のハウステンボスで開催される当学会の学術大会では、OD を巡るシンポジウムやワークショップが行われる予定です。関心を持たれた方には、長崎まで足を運ばれることを強くお勧めいたします。

神戸労災病院理念

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1年間育児休暇を頂き、昨年9月より復帰致しました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

2 週間を基本とした糖尿病教育入院を行ってまいりましたが、さらに来年度より労災病院の基本理念である ‘勤労者医療の推進’ のため、週末入院を開始させて頂くこととしました。仕事を理由に糖尿病治療がうまくいっていない患者様、仕事を理由に入院を拒否されている患者様がおられましたらご紹介頂けると幸いです。内容はハッピーマンデーを利用し、金曜日午後入院~火曜日午前退院とし、その間に栄養指導・薬剤指導・運動指導・低血糖やフットケアなど基礎知識の指導、血糖自己測定の指導、血糖日内変動の記録 (SMBGによる )、インスリン分泌能・抵抗性評価、ABPM、便潜血、蓄尿 ( アルブミン測定 ) を行います。入院前の外来初診日に心電図や ABI、眼科受診など可能な限りの検査と、入院の流れについて説明させて頂きます。検査結果はご本人へは退院日午前中にご説明、ご紹介医へは後日結果をまとめてご報告させて頂きます。GW 中は 4月 28日木曜日~ 5月 2日月曜日、5月 2日月曜日~ 6日金曜日 2パターンで予定しております。詳しい予定日につきましては、地域医療推進室にお問い合わせください。

最大7日間連続で24時間の血糖変動が可視化されます。日々の糖尿病治療にお役立て頂けると思います。・2型糖尿病患者の薬剤導入や変更時・インスリン治療中の血糖コントロール不良患者・夜間低血糖の確認・血糖変動が激しい患者・糖尿病合併妊娠、妊娠糖尿病など食後高血糖管理が大切な患者・HbA1c 7%前後で1,5-AG低下の患者(隠れた食後高血糖の存在)上記のような患者様がおられましたらご紹介下さい。外来にて栄養指導と共に結果説明を行っております。

① 糖尿病教育入院について

② CGM(Continuous Glucose Monitoring)について② CGM(Continuous Glucose Monitoring)について

④ 外来糖尿病教室④ 外来糖尿病教室

③ 糖尿病専門外来について③ 糖尿病専門外来について

ハッピーマンデー入院、始めます!!

現在、水曜日以外の診察日となっておりますが、来年度より月曜日から金曜日まで毎日糖尿病の専門外来を行う予定ですのでどうぞご紹介下さい。

月 1 回ではありますが、テーマを変えて糖尿病に関する教室を行っております。前もっての参加申し込みは不要ですので、患者様やご家族の方、糖尿病に興味をもっておられる方がおられましたらご案内下さい。

西海 智子糖尿病内科副部長

★機械は500円玉位の大きさで 入浴も可能です。

★血糖自己測定だけでは分からなかった 低血糖や高血糖に気付かされます。

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中央区・灘区の南部から当院へのアクセス向上のため、患者送迎バスの運行を開始しました。地域医療機関からの紹介患者さんにもぜひご案内いただければと思います。

外来患者さん、お見舞いの方、付添の方など、当院に御用の方はどなたでもご利用いただけます。(無料・お申し込み不要・平日のみ運行)※ 患者送迎バスリーフレット・ポケット版時刻表を多数用意しております。  ご入用の際はお手数ですがご連絡ください。  ( 担当 地域医療推進室 黒田 電話 078-231-5925 )

次回開催日: 4 月 12 日(火) (以降も毎月テーマを変えて開催予定)テーマ :  ①運動療法 ②栄養について時 間 :  13 時 30 分~ 14 時 30 分

(当日 13 時 20 分までに 2 階ロビーのピアノ前にお集まりください。)場 所 :  神戸労災病院 7階大会議室参加費 :  無料お申し込み: 不要

(担当: 医事課 野中 電話 078-231-5901)

  当院正面玄関出発⇒ JR灘駅南口(南口ロータリー)⇒ 阪急王子公園駅(なかじまクリーニング店付近)⇒ 水道筋 3 丁目大阪ガス(宮村ガスセンター付近)⇒ 当院正面玄関到着

  当院正面玄関出発⇒ 熊内 1 丁目(熊内 1 丁目交差点付近)⇒ 阪急春日野道駅(ほっかほっか亭付近)⇒ 当院正面玄関到着

運行ルート①:JR灘駅・阪急王子公園駅方面(1 日 8 便)

運行ルート②: 阪急春日野道駅方面(1 日 8 便)

▶糖尿病教室のご案内(患者さんだけでなく、どなたでもご参加いただけます。)

お 知 ら せ

患者送迎バスの運行を開始しました!!

王子動物公園

春日野道駅阪急神戸線

灘駅JR東海道本線

岩屋駅阪神電鉄本線

大 石阪神電鉄本線

王子公園駅阪急神戸線

神 戸 労 災 病 院

J R 灘 駅 南 口

阪急春日野道駅

熊 内 1 丁 目

阪急王子公園駅

水道筋 3 丁目大阪ガス

宮村ガスセンター付近

なかじまクリーニング店付近

ほっかほっか亭付近

熊内 1丁目交差点付近

南口 ロータリー付近

至 六甲山

7 : 30 7 : 38 7 : 40 7 : 47

8 : 30 8 : 40 8 : 48 8 : 50 8 : 57

9 : 30 9 : 40 9 : 48 9 : 50 9 : 57

10 : 30 10 : 40 10 : 48 10 : 50 10 : 57

12 : 00 12 : 10 12 : 18 12 : 20 12 : 27

13 : 00 13 : 10 13 : 18 13 : 20 13 : 27

14 : 00 14 : 10 14 : 18 14 : 20 14 : 27

15 : 00 15 : 10 15 : 18 15 : 20 15 : 27

JR灘駅・阪急王子公園駅方面

① ② ③ ④ ①

神戸労災病院 JR灘駅南口水道筋3丁目大阪ガス

阪急王子公園駅

神戸労災病院

7 : 50 7 : 58 8 : 02 8 : 06

9 : 00 9 : 08 9 : 12 9 : 16

10 : 00 10 : 08 10 : 12 10 : 16

11 : 00 11 : 08 11 : 12 11 : 16

12 : 30 12 : 38 12 : 42 12 : 46

13 : 30 13 : 38 13 : 42 13 : 46

14 : 30 14 : 38 14 : 42 14 : 46

15 : 30 15 : 38 15 : 42 15 : 46

阪急春日野道駅方面

① ② ③ ①

神戸労災病院阪急

春日野道駅熊内1丁目 神戸労災病院

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〇第3回ロッサくん健康市民講座 対象:一般市民の方

 3月26日(土)、灘区の BB プラザ(阪神岩屋駅前)で「第3回ロッサくん健康市民講座」(お申し込み制、参加費無料)を開催します。今回は当院の脇田副院長、前田外科部長が地域の皆さまに病気や当院の治療についてわかりやすくお話しさせていただきます。どなたでもご参加いただけますので、ぜひ患者さんにもご案内ください。(詳細は当院ホームページをご覧ください。)

〇第2回新神戸臨床医学セミナー 対象:地域の医療関係者

 3月26日(土)、灘区の BB プラザ(阪神岩屋駅前)で地域の医療関係者の方々を対象として、「第2回新神戸臨床医学セミナー」(お申し込み制、参加費無料)を開催します。兵庫県健康福祉部医監の山本光昭先生を講師としてお招きし講演と懇親会を予定しています。

〒651-0053 神戸市中央区籠池通 4丁目 1-23独立行政法人労働者健康福祉機構 神戸労災病院 地域医療推進室TEL 078-231-5925 

神戸労災病院マスコットキャラクター

ロッサくん

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お問合せ先

イベント情報

※ 金額は全て税込みです。0 7 8 - 2 3 1 - 5 9 0 10 7 8 - 2 3 1 - 5 9 0 1-お問い合わせ・ご予約-医事課 まで

HorizonX 線骨密度測定装置

● 外来日 ●

栄養士がご案内します栄養士がご案内します

当外来宛てに紹介状を作成のうえ地域医療推進室までご連絡いただき、ご予約ください。

 骨粗鬆症外来の開設に伴い、当院の骨粗鬆症治療チームとしての取り組みを地域の先生方にも開かれた体制とするため、登録制の「骨粗鬆症リエゾンネットワーク(OLS Network)」を立ち上げました。 本ネットワークを通じて骨粗鬆症患者さんを当外来にご紹介いただければ、病態を評価のうえ治療方針についてご提案させていただきます。その後は関係を維持させていただきながら協力して診療を継続いたします。

● お申し込みは地域医療推進室までご連絡ください。(TEL 078-231-5925(直通)) ●

骨粗鬆症リエゾンネットワーク

毎週水曜日 午後

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