データオープン化のためのライセンス選定・導入

渡辺智暁 国際大学 GLOCOM

平成 25 年度我が国情報経済社会における基盤整備事業（ CG ・ VFX 産業クラウド活用・高連携実証事業）における

二次利用及び改変可能な 3D モデルデータ公開事業 -Ark Project- キックオフイベント

於 : 　 東京大学駒場第Ⅱキャンパス , 2014.1.25 　

自己紹介・ GLOCOM・ CCJP （ NPO 法人コモンスフィア）・ OKFJ・ OD 実務者会議、利用・普及等 WG・（ Wikipedia 日本語版）

→ 弁護士ではない。　ライセンスの解釈はいろいろありうる。

本日のメニュー１．オープンデータにとってのライセンス　 - とは何か、何を心がけ、どう選定するか

２．ライセンシングの実際　ライセンスの表示法、工夫や留意点は

１．オープンデータにとっての　ライセンス

オープンデータとは政府機関などの保有するデータを民間利用に開放する。※ 民間によるデータオープン化と区別してオープン・ガバメント・データとも。

オープン = 複製・改変などが可能。商業利用も。利用者や利用目的の区別なく利用可能。データ = 数値や地図、文字など何でも。

目的：経済的便益、透明性向上

OD におけるライセンシング

・データは著作物であることも多い。・著作権法の大原則は「許諾なしに他人の著

作物を利用してはいけない」というもの。　　←→データを広く利用させる OD・ライセンスはこの矛盾を解消するツール「誰でも一定の条件に従えば広い範囲の利用

をしてよい」 と許諾を与えるために使う。

データ、データベースと著作物

・思想や感情の創作的表現か？・（事実の記述などであっても、）　取捨選択、配列、体系化などに創意工夫が

あるか？

数値データや、単純な図表であれば、著作物に該当しないこともある。

厳密な判断は極めて困難。

3D のモデルデータは・・・キャラクターのモデルデータを想定してみると、典型的には・・・・キャラクターは著作物・マネキン人形は・・・？・顔や表情、外見上の特徴が無いようでも、体型、基本動作などが思想や感情

を表現するために作成されていればいいのでは？・表面部分のデータも、同様では？

・写実的であるよりも想像性やデフォルメの入った造形の方が著作物性は認められやすそう。

・実用性のあるモノの類になると、意匠権の範囲になり、著作物性は非常に独創性が高いレベルでない限りは認められない、ということも。

・クライアントからの発注を受けて制作されたものについては、権利者が誰になるか要確認

→個別の案件について弁護士などの専門家に専門することが賢明。

オープンライセンス・オープンライセンスの例： GPL 、 CC-

BY 、 ODC-BY 、…・オープンライセンスされているもの- オープンソース・ソフトウェア、フリーソフ

トウェア- ウィキペディア- オープン・ストリート・マップ…

ライセンスの種類・相対契約のライセンス：権利者（ライセンサー）と利用者（ライセンシー）

・パブリックライセンス：ライセンシーが公衆一般

・オープンライセンス：ライセンシーが公衆一般 + ライセンスが広い利用を許諾し、制約条件も限定されている

おススメのライセンスは・・・？CC0 　（パブリックドメインとして提供す

るためのツール）　　利用者から見て最も使いやすい

CC-BY 　（著作者へのクレジット表示を主な内容とするライセンス）

　 OD で選ばれやすいライセンス。互換ライセンスもある。

CC ライセンスの構成要素４つの基本要素BY 表示 AttributionNC 非営利 NonCommercialSA 継承 ShareAlikeND 改変禁止 NonDerivs

これにバージョン名、準拠法コードを足すと、ライセンスの名前になる。例 ) クリエイティブ・コモンズ　表示－継承 2.1 日

本　 Creative Commons BY-NC 3.0 US

CC ライセンスとオープンライセンス

CC ライセンスの中で　「オープン」なライセンス　　　　 CC-BY, CC-BY-SA　「オープン」でないライセンス　　　　 ND （改変しない利用のみ）や　　　　 NC （非営利利用のみ）　　　　を含むライセンス群（ BY-NC, BY-

ND, BY-NC-SA, BY-NC-ND ）

ライセンス選びのキモ原則：オープン化の目標：「データを利用してもらい、

経済効果や透明性向上を実現すること」→　ユーザー目線が重要

３ DCG の場合は？　・再利用を広く起こしたい　・オープン化する側の宣伝効果を高めたい　・人材育成や業界のレベルアップに貢献したい　→こういう利用者を想定してライセンスを選

定するのがよい

4要素：手続き、表現、共通性、体制

・利用者と相談して選ぶ　　（←→提供者側の事情・意向で選ぶ）

・わかりやすい表現　　簡潔・厳密・具体的（極めて困難）　　（←→長い・複雑・専門的・抽象的）　　　名称、構成、デザイン等にも注意※CC ライセンスの長さ・読みやすさについては

批判がある。専門性は比較的評判がよい。

4要素（承前）・他のデータのライセンスとの共通性　　広く統一されているのが理想　　せめて各種標準化、互換性確保を　　（←→各主体ごとの独自ライセンス）

・疑問・要望に答える体制　　解説資料やサポート体制、改訂手続き　　（←→ライセンスの提供だけ）

利用者にとってのライセンス

3つのデータに 3種類のライセンス　→利用者はデータを組み合わせ可能か？　　すぐにそれが判断できるか？　→読んだことのあるライセンスか？　　新しく解読しなければならないか？・ややこしければ、利用をあきらめる・ライセンス本文を読みたくないかも・誤解したまま利用する例も出てくる

懸念事項：悪用・乱用をどう考えるか

アダルトサイトに使われてもいいか？マイナーな宗教の勧誘は？政治的な主張は？著名人への攻撃的な言論は？差別発言の多くあるブログは？戦争の当事者の一方がサイトに使ったら？暴力的ゲームに使ったら？ギャンブル・サイトで使われたら？・・・

懸念事項・細かい禁止事項をたくさん盛り込む → ライセンスが長くなる。懸念事項を網羅しきることも難しい。

（アダルト表現の一部には使われないが、そういう表現もあるようなサイトの一部に使われたら？　投稿型のサイトで、他の投稿者が投稿しただけだったら？）

・曖昧な禁止事項を盛り込む → 広い範囲の利用が「巻き添え被害に遭って」萎縮する可能性が出る

（「他人が不快に思うようなサイトでの利用を一切禁止します」「法的・道義的・倫理的に問題のある利用を一切禁止します」など）

懸念事項オープン化のよくある考え方・利用者の発想や想像力を活かすために制約は少なくする。・問題のある表現に利用した場合は、利用者の責任で行う

もので、データを提供した側が非難されるべきものではない。

（例：自動車で乱暴な運転をして人を傷つける事故があったからといって、自動車メーカーや販売会社が非難されるいわれはない。責任はドライバーにある。）

・ CC ライセンスには、著作者へのクレジットを削除するように、利用者にリクエストできる規定がある。

懸念事項その２：商業利用・自分の提供したデータを使って、他の人だけが利益を得たら・・・？

・非商業目的に限定したライセンスでもインパクトは出せるのか？・そもそも非商業目的とは？（アマチュアの活動？実費回収活動？ NPO

は？人件費分も回収する場合は？入場料の必要なイベント会場の中で無料提供していたら？広告が掲載されているサイトだったら？ Etc. ）→非商業限定のライセンスの採用は慎重に考えた方がよい。

・中心になるコンテンツがあれば、その一部をオープン化することでかえって認知度が高まり、売上げが伸びることも。

・有能な利用者を発掘してパートナーにする、といった別の目的があれば投資と考えることも可能。

・ SA 条項を入れておくというのも一案ではある。・大きな利益が出たら相応の寄付をお願いします、と法的に義務付けはせずに掲示しておいて、社会的なプレッシャーによって実現することも。

２．ライセンシングの実際

ライセンス情報の表示・「このデータはどういう条件で利用できる

のか？」→O 　データの近傍に情報があるX 　「利用規約」「著作権について」などを読み合わせないとわからない

出典表示など： CC の例合）著作者名合）作品のタイトル合）作品に添付するよう指定された URL*合）作品を原作として利用している旨の記載 **

それぞれあれば記載。記載の方式は合理的であること、他の同様の記載に比べて小さい扱いなどになっていないこと。

* 作品と一定の関連がある URL のみ対象** 作品使って二次的著作物を作った場合のみ

出典表示など（承前）保）ライセンスに関する注意書き( 「このデータは CC-BY 2.1 JP で提供されています」など )

保）免責事項に関する注意書き保）著作権表示 ( 「 2013 (c) 渡辺」など）

必）ライセンスの URLまたはライセンス全文

(http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ 　など )

・保）あればそのままの形で記載・必）は必ず記載

表示方法O 　データ近傍に記載O 　著作者名、タイトル、などを記載O 　存在しないものはそのように明記する

となお親切

例・作品近くかサイトのフッターに「著作権について」

のようなページへのリンクがある・「このサイトに掲載されている著作物は、特に断り

のない限り、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示 2.1 日本 < http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/> で提供されています。

　作品のタイトル、著作者名はそれぞれの作品の付帯情報を参照してください。

　作品に添付すべき URL はありません。免責事項に関する注意書き、著作権表示はありません。　」

第三者著作物への注意・被写体が著作物・引用を含む・委託調査の成果物を含む・謝金を支払った原稿を含む･･･

第三者著作物　２原則： CC ライセンスは、典型的には許諾を

する著作者が持っている権利のみを扱う。→ 第三者の権利について勝手に許諾するわけ

ではない。→ 第三者の著作物が混じっていても、ライセ

ンスを適用することはできる。留意点：何がライセンスされているか、利用

者がわかるか？　誤解に基づく利用のリスクが高いか？

第三者著作物　３CC ライセンスの例「 許諾者は… いかなる保証（…第三者の権

利の非侵害…を含む…。）もしない。 」 - 第 6 条

著作権以外の権利・世の中で使われているオープンライセンス

は典型的には、著作権のみを扱うライセンス。

・データベース権（欧州など）は含まれる傾向に

・肖像権は含まれない（人物写真は、撮影者の著作権については許諾しているが、被写体の肖像権については許諾していない）

権利まわりまとめつまり･･･

・どのような利用をしても、誰の権利も、何の権利も侵害しない、という保証はない。

→ 利用者にはわかりづらい点

O 　注意喚起O 　予想される利用を踏まえた権利処理　（調達・契約の内容に折り込む等）