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Oracle Database 12c Release 2を使用した 空間およびグラフ分析 Oracle ホワイト・ペーパー | 2017 3

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Oracle Database 12c Release 2を使用した 空間およびグラフ分析 Oracle ホワイト・ペーパー | 2017 年 3 月

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Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

免責事項

下記事項は、弊社の一般的な製品の方向性に関する概要を説明するものです。また、情報提供を唯一の目的とするものであり、いかなる契約にも組み込むことはできません。マテリアルやコード、機能の提供をコミットメント(確約)するものではなく、購買を決定する際の判断材料になさらないで下さい。オラクルの製品に関して記載されている機能の開発、リリース、および時期については、弊社の裁量により決定されます。

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Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

目次

免責事項 ........................................................................................................................................................... 1

概要 ................................................................................................................................................................... 1

プロパティ・グラフの概要 .......................................................................................................................... 3

空間機能の概要 .............................................................................................................................................. 9

Oracle Database 12c Release 2 における新たな空間機能 .................................................................. 20

RDF セマンティック・グラフ機能の概要 .............................................................................................. 23

Oracle Exadata Database Machine .......................................................................................................... 25

Oracle Multitenant のサポート ................................................................................................................ 28

オープン・スタンダード ............................................................................................................................ 29

Oracle Spatial and Graph のパートナー ................................................................................................. 29

結論 ................................................................................................................................................................. 30

付録 1:Oracle Spatial and Graph 12c の機能 ...................................................................................... 31

付録 2:Oracle Database 12c Release 2 の新機能 ............................................................................... 33

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1 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

概要

Oracle Cloud の一機能であり、Oracle Database 12c Enterprise Edition のオプションである Oracle Spatial and Graph では、業界をリードする空間およびグラフ・データベース管理プラットフォームが提供されます。Oracle Spatial and Graph には、空間データの高度な管理および分析機能、ソーシャル(プロパティ)グラフ、RDF リンクト・データ・アプリケーションが搭載されています。Oracle Database 12c Release 2(12.2)では、汎用のプロパティ・グラフ・モデルのサポートが導入されました。

空間およびグラフ分析は、関係を把握するためのものです。アプリケーションとインフラストラクチャが進化し、新たなテクノロジーとプラットフォームが出現する中で、私たちはソーシャル情報と位置情報を業務および分析ワークフローに組み入れて利用する新たな方法を見出しています。モノのインターネット、クラウド・サービス、モバイル追跡、ソーシャル・メディア、そしてリアルタイム・システムの登場により、大量のデータを管理するだけでなく、パターン、つながり、関係を発見するという新たな課題が生じています。

このような機会に取り組むために、Oracle Database 12c にはさまざまな空間分析機能とサービスが搭載されています。これらの機能とサービスを使用することで、対象物の相互の距離や、対象物が境界内(領域内)にあるかどうかに基づきデータを評価したり、地理空間パターンをマップや画像で可視化したりできます。オラクルは Oracle Database 12c Release 2 において、推奨事項の作成、コミュニティやインフルエンサの検索、パターン・マッチング、不正や他の異常の特定など、グラフのユースケースに対応する強力な新しいプロパティ・グラフ分析機能を導入しました。

Oracle Spatial and Graph 12c Release 2 には、独自の汎用プロパティ・グラフ機能が導入されています。現在業界の製品では、分析かグラフ・データベースのどちらか一方を提供することに重点を置く傾向にあります。Oracle Spatial and Graph は、他の製品よりも多く(40)の組込み分析を備えた強力なインメモリ分析と、スケーラブルなグラフ・データベースの双方を有しているという点で際立っています。これは革新的な特長です。今日生成される多くのビッグ・データには、収集されたデータ・エンティティ間に内在する関係が含まれているためです。そのような関係は、容易にプロパティ・グラフ(結合されたエンティティ一式)に構造化して分析できるため、ユーザーはビジネス機会を見出し、より良いビジネス上の決断を下すことができます。プロパティ・グラフでは、エンティティは頂点、関係はエッジとしてモデル化され、関連のプロパティや属性は双方に対する鍵と値のペアとして保存されます。

地理空間データ機能は、地理情報システム(GIS)、エンタープライズ・アプリケーション、および位置情報に対応したビジネス・アプリケーションや Web アプリケーションの極めて複雑な要件をサポートするように設計されています。より高度な空間分析・処理機能により、Oracle Databaseで Oracle Locator の空間問合せや分析機能を拡張しています。これらの地理空間データ機能では、Open Geospatial Consortium(OGC)と ISO 標準に準拠するジオコーディング、ルーティング・エンジン、空間 Web サービスがネイティブにサポートされます。

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2 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

ネットワーク・データ・モデル、GeoRaster(空間参照画像とグリッド入りデータ向け)、トポロジ、および TIN(triangulated irregular network)、点群(LIDAR データをサポート)、線形参照などの 3D をはじめとする高度な空間モデルと空間タイプもサポートされます。これらの高度な機能により、防衛、土地管理、小売り、保険、金融などの多くの領域で、地理空間アプリケーション向けの完全なプラットフォームが実現します。

Oracle Database 12c Release 2 では、空間演算子はより高速で、クラウドに対応しており、開発者にとって使いやすいものとなっています。GeoJSON のサポート、数千の地域で数百万のオブジェクトを追跡する位置追跡サービス、より高速な空間機能、およびインタラクティブな HTML5 のマップ可視化コンポーネントを備えており、オラクルがこれまで提供してきた中でもっとも高度な空間プラットフォームです。

Oracle Spatial and Graph では、World Wide Web Consortium(W3C)の規格に準拠する高機能の専用 RDF グラフも提供されます。この RDF グラフにより、パラレル処理される RDF データ・ストレージ、問合せ、およびセマンティック・データ統合とリンクト・オープン・データ・アプリケーションで使用される推論が提供されます。Oracle Spatial and Graph の RDF のサポートは、業界をリードするオープンでスケーラブルかつセキュアな RDF データベースが対象となりました。新たな特長として、SPARQL 1.1 の更新操作、問合せオプションの RDF ORDER BY、プロパティ・グラフ統合、SPARQL 問合せを SQL に変換する機能、さらなる SPARQL 問合せ関数、Oracle Flashback Query のサポートなどが挙げられます。

Oracle Spatial and Graph の空間機能は、データベース・カーネルの一機能です。地理空間とグラフの実装により Oracle Database の機能がネイティブに活用され、スケーラビリティ、セキュリティ、パーティショニング、パラレル処理を実現します。複雑な空間およびグラフのロジックをデータベースに移行することで、アプリケーション・ロジックを削減し、実世界の分析をサポートします。また、Oracle Exadata Database Machine の処理能力と帯域幅を活用することで、これまでとは桁違いの極めて高い性能を実現します。

本ホワイト・ペーパーでは、Oracle Spatial and Graph の機能の概要について説明します。付録には、主要機能と新機能の一覧を記載しています。Oracle Database と Oracle Spatial and Graph オプションの空間機能の一覧については、『Oracle Spatial and Graph 開発者ガイド』の付録 B を参照してください。

Oracle Spatial and Graph は、Oracle Database のパフォーマンス、スケーラビリティ、セキュリティと完全に統合されており、エンタープライズ・クラスの実装が可能なもっとも高度な空間およびグラフ・データベース・プラットフォームです。

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3 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

プロパティ・グラフの概要

汎用プロパティ・グラフのサポートは、Oracle Spatial and Graph 12c Release 2 で導入されました。最近生成されているビッグ・データの多くには、収集されたデータ・エンティティ間に固有の関係があります。これらの関係を、プロパティ・グラフ(一連の関連付けられたエンティティ)として容易に構造化できます。プロパティ・グラフの頂点はエンティティを表し、エッジは関係を表します。関連付けられたプロパティまたは属性はエンティティとエッジを表すキー/値ペアとして保存されます。

プロパティ・グラフのデータ・モデル

おもな機能は、インメモリ分析とデータ・アクセス・レイヤーです。インメモリ・アナリスト(PGX)は、40 の強力な組込みのパラレル・グラフ分析エンジンです。グラフ・データベースのデータ・アクセス・レイヤーには、Groovy ベースのコンソール、Java API、テキスト索引付けによる高速検索、高速なパラレル・バルク・ロード、グラフ問合せの空間フィルタリング、およびマルチレベルのセキュリティが含まれます。

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4 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

プロパティ・グラフのアーキテクチャ

グラフ分析

グラフ分析には、ソーシャル・ネットワーク分析用のランキング、中心性、推奨事項、コミュニティ検出、パス検出といった、40 もの強力なパラレルの組込みインメモリ分析を備えた、インメモリ・アナリスト(PGX)が使用されます。

プロパティ・グラフのユースケース例

インメモリ分析では、複数のコアと大容量のメモリ構成を使用して計算をパラレル処理する最新のサーバー・アーキテクチャが活用されるため、メモリに読み込まれるグラフの大部分で、非順次の高速なデータ・アクセスが実現します。データベースに対するパラレル化されたフィルタ問合せでは、対象の部分グラフがメモリに読み込まれます。

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5 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

分析は、Java アプリケーションで実行するか、Oracle WebLogic Server、Apache Tomcat、またはEclipse Jetty で稼働するマルチユーザー、マルチグラフのインメモリ・アナリスト・サーバー環境で実行できます。グラフ分析は、2 部グラフ、フィルタ・グラフ、無向グラフ、ソート・グラフ、シンプルなエッジ・グラフなどの別のグラフとして出力できます。

分析のカテゴリと出力グラフの種類

容易な開発と管理

Groovy ベースのコンソールと Java API 一式によって、容易な開発と管理が促進されます。組込みの Groovy シェルでは、グラフ・データベースへのアクセスとインメモリ・アナリストの操作が提供されます。このコマンドライン・シェル・インタフェースでは、その機能の Java API を使用して、プロパティ・グラフの作成と削除、頂点とエッジの追加と削除、鍵と値のペアを使用した頂点とエッジの検索、テキスト索引の作成、他の操作の実行が可能です。Java API には、Apache TinkerPop インタフェースの実装が含まれています。Groovy や Python などのスクリプト言語のサポートも含まれています。Groovy スクリプトを使用すると、開発者はオブジェクトやコンパイルを定義せずに、Java コード・スニペットをより容易にテストできます。

高速で柔軟な問合せ

プロパティ・グラフには、Tinkerpop Gremlin API を実装した Java API を使用して問合せできます。Java API により、頂点とエッジのパラレル・スキャンが実行されます。パラレル取得では、表パーティション全体に分散されたデータが活用されるため、各パーティションには、別々のデータベース接続を使用して問合せが行われます。

プロパティ・グラフには、SQL を使用して問合せすることもできます。以下は、頂点 ID を使用した頂点の問合せ例です。

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6 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

頂点IDを使用した頂点の問合せ例

テキスト索引付けを使用した高速検索

Apache Lucene と Apache SolrCloud(オプション)により、高速検索が可能です。プロパティでのテキスト索引付けにより、頂点やエッジをすばやく取得できます。ネイティブの Oracle Text 索引付けがサポートされており、テキスト問合せが"CONTAINS"句を使用する SQL SELECT 文に自動的に変換されます。

Apache Lucene

プロパティ・グラフ要素の問合せでは、Apache Lucene を使用してテキスト検索と索引付けを行うことができます。たとえば、Twitter フィードがあれば、通常の検索構文を使用して“Oracle”という言葉を含むツイートを問合せできます。グラフ要素では、手動(選択的)と自動、双方の索引付けがサポートされています。Apache Lucene には、その索引をユーザーとアプリケーション間で直接共有できないという制限が設けられています。

自動索引の使用は容易です。自動索引は、索引名と、何に索引を作成するか(頂点かエッジか)を指定して作成される B ツリー索引です。グラフ要素が変更されると、B ツリー索引も自動的に更新されます。

手動の(選択的な)索引付けは、より柔軟な手作業によるプロセスです。索引の内容は、開発者が決定し、ロードします。どのグラフ要素に索引を作成するかを柔軟に選択できるため、索引により重点を置くことができます。

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7 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

Apache SolrCloud

ファセット検索は、SolrCloud の強力な機能です。複数のユーザーとアプリケーションで、SolrCloud 索引を共有できます。SolrCloud は、Lucene とともに実装されます。SolrCloud のロード・バランサにより、索引のレプリケーションを使用した異なるサーバーで複数のシャードが有効化されます。ドキュメントは HTTP インタフェースに送信され、シャードされ、索引が有効化されている場合はレプリケートされます。問合せコーディネータにより、シャードに透過的に問合せが行われ、最終結果が組み立てられます。

Apache LuceneとApache SolrCloudの使用

Oracle Textの索引付けと検索

Oracle Text を使用した自動テキスト索引付けがサポートされます。Oracle Text では、標準 SQL を使用して、頂点およびエッジ表のプロパティ列に保存されたテキスト値の索引付け、検索、分析が行われます。Oracle Text により、プロパティ・グラフに存在するすべての鍵と値のペアに索引が作成されます。

高速なパラレル・バルク・ロード

データ・タイプが豊富で使いやすい Oracle フラット・ファイル形式と Oracle SQL*Loader を使用することで、非常に大規模なグラフの高速なパラレル・バルク・ロードが実現します。データは、複数のデータベース・パーティションにロードできます。Oracle の表と CSV(カンマ区切り)ファイルをフラット・ファイル形式に容易に変換できるユーティリティが提供されます。オープン・ソースのグラフ・ファイル形式である GraphSON、GraphML、および GML もサポートされています。

グラフ分析を向上する空間フィルタリング

グラフ問合せで空間をフィルタリングすると、グラフ分析を強化できます。住所の座標などの空間ジオメトリを、プロパティとして保存し、分析できます。たとえば、ある“距離内”の問合せにより、さらなる分析の関連エンティティを検討するかどうかを決定できます。点、線、ポリゴンの各ジオメトリおよび関数ベースの空間索引付けのサポート、ならびに空間分析関数のアクセスにより、これが強力な機能となっています。

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8 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

マルチレベルのセキュリティ

グラフレベルのアクセス制御や Oracle Label Security(オプション)を使用してマルチレベル・セキュリティを適用し、個々の頂点とエッジに対してファイングレイン・アクセス制御を実行できます。

Oracle Label Securityのグラフ要素への適用

グラフ可視化

プロパティ・グラフの機能では、Cytoscape のオープン・ソースのグラフ可視化と、Tom Sawyer Perspectives の商用グラフ可視化がサポートされます。

CytoscapeとTom Sawyer Perspectivesを使用したグラフ可視化

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9 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

空間機能の概要

Vector Performance Acceleration

ベクトルとは、2 次元および 3 次元の頂点の集合です。点、線、ポリゴン、面、立体などのジオメトリを説明する緯度、経度、高さなどがその例です。ジオメトリは通常、実世界のオブジェクトを表します。ベクトル演算では、距離内、最近傍などのジオメトリ間の空間関係、接触、重複、含有、覆う、距離などのジオメトリ同士の相互関係、およびジオメトリ周囲のバッファ・ゾーン生成について評価します。

Oracle Spatial and Graph 12c のベクトル・アクセラレーション機能は、ベクトル演算のパフォーマンスを飛躍的に向上させます。ベクトル・アクセラレーションでは、計算アルゴリズムが強化され、CPU とメモリが増強されているため、空間索引の作成、ファンクションにおける幾何学的計算、および空間演算子の 2 次フィルタ演算のパフォーマンスが向上します。Oracle Spatial and Graph のVector Performance Acceleration は、Oracle Locator の全般的な改善に基づいています。Locator については、以下の"Locator の演算子およびファンクションの機能向上"のセクションで説明します。

パラメトリック曲線のサポート

Oracle Spatial and Graph 12c では、2 次元および 3 次元のパラメトリック曲線がサポートされます。パ ラ メ ト リ ッ ク 曲 線 は 、 Non-Uniform Rational B-Spline ( NURBS ) と も 呼 ば れ ま す 。 Oracle Database の空間データ型 SDO_GEOMETRY では、自由曲線を数理的に精密に表現し、正確に再現できるようになりました。NURBS は、道路、幹線道路、鉄道の設計やモデル化を簡素化するために使用されます。

Locatorの演算子およびファンクションの機能向上

Oracle Database 12c の Locator 機能には、SDO_GEOM パッケージ内の RELATE、DIFFERENCE、INTERSECTION、UNION、VOLUME、XOR というファンクションが含まれます。これらのファンクションは、以前は Oracle Spatial and Graph で提供されていました。空間集計ファンクションのSDO_AGGR_UNION も、Locator に含まれます。

よく使用される位置演算に対する Oracle Database 12c のパフォーマンスは、以前のリリースのANYINTERACT、INSIDE、DISTANCE、WITHINDISTANCE、および VALIDATEGEOMETRY 演算子と比較して、最大で 40 倍向上しました。また、地理空間ファンクションの relate と validate のアルゴリズムは、以前のリリースと比較して 4~5 倍高速になりました。

Oracle Spatial and Graph 12c の Vector Performance Acceleration は、Oracle Database の全般的な改善に基づいており、索引メタデータのキャッシュ、同時更新メカニズム、最適化された空間条件選択とコスト計算ファンクションなどの領域におけるすべての SDO_GEOMETRY 演算に適用されます。

これらの最適化によって、CPU、メモリ、パーティショニングの利用効率が上がり、その結果、問合せのパフォーマンスが大幅に向上します。たとえば、内部で実施したテストの結果によれば、非測地点データとポリゴンの問合せウィンドウでは、以前のリリースと比較して、問合せのパフォーマンスが最大で 100 倍向上しています。

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10 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

ベクトル・ジオメトリのファンクション

Oracle Spatial and Graph では、Locator のファンクションの他にも、ポリゴンの面積、長さ、外周など、ジオメトリに関する計算を実行するファンクションが 400 以上提供されます。これらのファンクションを使用して、ある国のすべての周辺国の合計面積、州間幹線道路の距離、県境の距離などを求めることができます。

バッファ(BUFFER)、和集合(UNION)、共通部分(INTERSECTION)など、新しいジオメトリを生成するファンクションもあります。これらのファンクションを使用して、すべての販売オフィスの周囲に 8km のバッファを作成して販売地域を定義したり、2 つの販売地域の和集合を表す新しいジオメトリを特定したり、あるいは 2 つの販売地域の共通部分を見つけたりすることが可能です。

他にも、内部の点(INTERIOR_POINT)や凹型部分(CONCAVEHULL)を表現するファンクションや、ドロネー三角形分割による TIN(Triangulated Irregular Network)生成などのファンクションがあります。トランスポータブル表領域のクロスエンディアン演算もサポートされます。

測地座標向けの全地球ジオメトリ・モデルのサポート

全地球ジオメトリ・モデルでは、測地データに対する計算の実行時に地球表面の曲率が考慮されます。そのため、Oracle Spatial and Graph のファンクションは、投影データと測地データの両方で、正確な長さと面積を返します。フィート/平方フィート、メートル/平方メートル、キロメートル/平方キロメートルなど、よく使用される 30 以上の距離単位と面積単位がサポートされます。

投影と座標系

Oracle Spatial and Graph では、座標系と投影を管理する包括的なツールが提供されるため、空間情報の効率的かつ正確な表現と統合が可能です。よく使用される 4,000 以上の地図座標系がサポートされるほか、ユーザーが新しい座標系を定義することもできます。Oracle Spatial and Graph では、異なる座標系間の暗黙的および明示的なデータ変換もサポートされるため、ベクトル・オブジェクトの地図投影をある座標系から別の座標系へ明示的に変換できます。このような変換は、ジオメトリ・レベルで行うことも、レイヤー全体で一度に行うこともできます。

座標系のサポートは、European Petroleum Survey Group(EPSG)のデータ・モデルとデータセットに基づいています。このモデルは、石油/ガス業界によって作成されたものですが、すべての業界、GeoRaster データ・ベンダー、および一般的な GIS ユーザーは、標準化、拡張サポート、柔軟性といった利点を享受できます。

Oracle Spatial and Graph では、緯度と経度(または投影された x、y 座標)に加えて、高さ("z"座標)も扱う 3D 座標系が必要に応じてサポートされます。また、ラスターの再投影にも対応しています。

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11 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

空間集計

SQL にはかなり以前から、SQL 問合せの結果を集計するための集計関数が存在します。Oracle Spatial and Graph の集計ファンクションは、入力値のジオメトリ・セットに対して指定された集計演算を実行し、単一のジオメトリ・オブジェクトを返します。文たとえば、以下の文は、テネシー州のすべての群から生成したテネシー州の州境を返します。

select sdo_aggr_union(sdoaggrtype(geom,0.5)) state

from geod_counties

where state_abrv='TN';

他にも、和集合(UNION)、重心(CENTROID)、凸包(CONVEXHULL)などの集計ファンクションがサポートされます。ユーザーが他の集計ファンクションを定義することもできます。空間集計を利用すれば、パフォーマンスが向上し、コードが簡素化されます。

線形参照のサポート

Oracle Spatial and Graph では、属性やイベントを保存し、線形ジオメトリ上の指定したセグメントに関連付けることができます。属性やイベントはジオメトリとは別の表に保存されるため、属性の表でジオメトリを重複して管理する必要はありません。線形参照は、輸送、公益事業、および遠隔通信業界でよく使用されます。

線形参照されたジオメトリを操作するファンクションもあります。たとえば、線形フィーチャに沿って点の位置を特定したり、線形フィーチャの一部をクリップ(動的セグメント分割)したりすることができます。また、ある点にもっとも近い線形フィーチャ上の点にスナップしたり、標準的なジオメトリと線形参照されたジオメトリ間で変換を行ったりすることもできます。Oracle Spatial and Graph 12c の線形参照システムのファンクションでは、3D 測地データを利用できます。

GeoRasterのサポート

ジオメトリは、ベクトルまたはラスター、あるいはその両方によって表現できます。衛星画像や航空写真などを扱うイメージ処理システムでは、ラスター・データは通常、イメージと呼ばれます。GIS で使用されるラスター・データは通常、グリッド・データと呼ばれます。Oracle Spatial and Graph の GeoRaster を使用すると、ラスターのイメージ、グリッド・データ、およびその関連メタデータの保存、索引付け、問合せ、分析、配信を行うことができます。GeoRaster では、ラスターを覆うセルのマトリックスに位置データを割り当て、それらのセルを配列として保存することで、ラスター内のジオメトリに位置情報を関連付けます。

GeoRaster では、地球の表面上の位置(地理参照)またはローカル座標系として参照できる多次元グリッド・レイヤーとデジタル・イメージが保存されます。地理参照データの場合、ユーザーはイメージ内の特定のセルに対応する地球上の位置(または逆に、地球上の特定の位置に対応するイメージ内のセル)を把握できます。GeoRaster は、環境モニタリングとアセスメント、地質工学と地質学的調査、天然資源管理、防衛、緊急時対応、遠隔通信、輸送、都市計画、ホームランド・セキュリティなどの幅広い業界において、さまざまなデータ型とオブジェクト・リレーショナル・スキーマを使用して、ラスターの処理と分析に対応しています。

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12 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

GeoRaster のロードとネイティブ記憶域は、柔軟性、費用対効果、パフォーマンスに優れています。GeoTiff、JPEG 2000、DigitalGlobe RPC のファイル形式が、GeoRaster オブジェクトのロードとエクス ポ ー ト で サ ポ ー ト さ れ ま す 。 JPEG フ ァ イ ル は 圧 縮 解 除 せ ず に ロ ー ド で き ま す 。 Oracle SecureFiles を使用すると、透過的な可逆圧縮が可能です。もしくは、JPEG ベースライン(非可逆)や Deflate(可逆)など、GeoRaster 固有の業界標準画像圧縮技術を代わりに使用することもできます。GeoRaster ではオープン・プラグイン・アーキテクチャを採用しているため、他のサード・パーティの圧縮技術を使用することも可能です。自動ブロック・サイズ最適化により、取得や処理を最適化しながらも、記憶域を最小化する GeoRaster のブロック・サイズが選択されます。GeoRaster では、ピラミッド化によって、サイズや解像度の異なるラスター・イメージやラスター・データに対応しており、四角形処理によって、非常に大規模なイメージにも対応しています。また、3 つのインタリーブ方式をサポートすることで、ラスター内のデータへのアクセスを最適化しています。

GeoRaster では、高度な高速イメージ処理が可能です。パラレル化によって、SQL や GeoRaster プロシージャの実行が高速化されます。業界標準のリサンプリング方法と内挿方法を使用して、イメージやラスターの変換と処理が行われます。4,000 を超える座標系へのラスター再投影に対応しており、2D/3D 地上座標と 2D セル座標間の変換、およびその逆方向の変換がサポートされます。幾何補正されていないイメージ(均等スケールのために幾何学的に修正されていないイメージ)は、GeoRaster の柔軟な関数フィッティング多項式地理参照モデルを使用して地理参照できます。地上基準点ベースの地理参照では、既知の座標点に基づいて、ラスター内の座標を定めます。不規則な多角形ベースをクリップする問合せでは、GeoRaster オブジェクトの正確なサブセットが返されます。グリッド点の内挿では、セルとセルの間、またはセル内部の空間位置にある値が推論されます。イメージ内部の非定型の領域は、ビットマップ・マスクによって定義できます。

GeoRaster は、開発、利用、管理の容易性を実現します。GeoRaster DML トリガーが、システムによって自動的に作成され、監視されます。ユーザーは、多くのリソースを消費する GeoRaster システム・データの操作を監視できます。ラスターの部分的な更新もサポートされます。また、GeoRaster オブジェクトを操作する抽出/変換/ロード(ETL)ツールやイメージ処理システムなど、GeoRaster アプリケーションを開発するための GeoRaster テンプレートが用意されています。統計分析ファンクションを使用すると、GeoRaster オブジェクトのすべての統計値や個別の統計値を動的に計算できます。さらに、異なる GeoRaster オブジェクトの複数のバンドやレイヤーを単一のGeoRaster オブジェクトにマージする機能によって、イメージの分類、時系列分析、およびラスターGIS のモデル化に対応しています。Oracle Database の Workspace Manager 機能を使用したラスター・データのバージョニング、および Oracle Label Security によるラスター・データの行レベルのセキュリティもサポートされます。

Java API では、問合せ、操作、ラスター管理がサポートされます。ETL ツール、Web アプリケーション、ラスター処理アプリケーションの開発もサポートされるため、Oracle Database に保存されたラスターやグリッド・データセットを使用、アクセス、操作する Java アプリケーションを容易に開発できます。

GeoRaster のデータ型は、代表的なすべてのサード・パーティ GIS ベンダーやイメージ処理ツール・ベンダーによってサポートされています。ラスター・データに使用できる代表的なオープン・ソースの地理空間 ETL ツールおよび API である Geospatial Data Abstraction Layer(GDAL)でも、このデータ型がサポートされます。GDAL では、50 個を超えるラスター形式の SDO_GEORASTERに対するインポートとエクスポートがネイティブでサポートされています。GDAL は、大規模なファイル・サイズに対応した、パフォーマンスに優れた C++ツールです。GDAL には、GeoRaster

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13 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

へのアクセスを提供する C/C++ API、Java API、Python API のほか、ラスター形式の変換、ラスターのワープ、DEM ラスターからの等高線生成、その他の多数のラスター操作を行うユーティリティも搭載されています。

Oracle Spatial and Graph 12c の GeoRaster 機能は、パフォーマンス、データ管理性、ユーザビリティ、セキュリティに関する多数の機能によって大幅に強化されました。

仮想モザイクのサポート、ラスター代数と分析

Oracle Spatial and Graph 12c では、個々のラスター・セルまたはピクセルを扱うラスター代数操作がサポートされるため、複数のラスター・レイヤーから新しいマップを生成できます。ラスター代数操作を使用すると、Normalized Difference Vegetation Index(NDVI)、TCT(Tasseled Cap Transformation)などの高度な分析アルゴリズムをアプリケーションに実装できます。ラスター操作のパフォーマンスも大幅に向上されており、大規模なデータセットでは、パラレル化によりパフォーマンスを最大で数百倍向上できます。

強化されたイメージ処理

Oracle Spatial and Graph 12c のイメージ処理機能は他にもあります。イメージの幾何補正、オルソ補正、イメージのストレッチ、イメージのセグメント化、イメージの更新と追加、高度なモザイク処理、大規模仮想モザイク、即時空間問合せなどです。

より多くのイメージ処理が、クライアントではなくサーバーで実行されるようになり、中にはパラレル化される処理もあります。これにより、より大規模なデータセットを使用した、より大規模なイメージ処理でパフォーマンスが向上します。ますます多くのラスター・データが利用可能になる中で、このようなイメージ処理は、政府向けアプリケーションや商用アプリケーションで利用が増加しています。

Java API の機能強化

Oracle Spatial and Graph 12c の GeoRaster Java API では、地上基準点(GCP)の保存と操作、GCP地理参照、再投影、グリッド内挿、getCellValue などの機能がサポートされます。これらの機能は、以前は PL/SQL API でサポートされていました。

この機能強化によって、Java 開発者は Oracle Spatial and Graph の GeoRaster データ管理機能を利用しやすくなりました。

メタデータ・コンテンツ

Oracle Spatial and Graph 12c では、リレーショナル・ラスター・データ表(RDT)がサポートされるため、ユーザーは、デフォルトのアルファ・チャネルとピラミッド・レベルをメタデータ内で指定できます。この機能には、多くの操作で解像度単位の指定とパラレル処理をサポートするリサンプリング・アルゴリズムが含まれています。また、ロード機能とエクスポート機能も拡張されています。

GeoRaster について詳しくは、Oracle Technology Network の Oracle Spatial and Graph のページにあるホワイト・ペーパーを別途参照してください。

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14 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

GDAL ベースの ETL ウィザードを使用したロードとエクスポートの同時バッチ処理

Oracle Spatial and Graph 12c に含まれる GDAL ライブラリは、データベースとともにインストールされます。

付属する ETL ウィザード・ツールにより、GDAL を使用するさまざまなイメージ・ファイルとラスター・ファイルをロードおよびエクスポートする同時バッチ処理が自動化され、有効化されます。このツールを使用すると、多数のラスター・ファイルやイメージ・ファイルを一括で同時にロードおよびエクスポートできます。このツールにより XML スキーマが定義され、ロードおよびエクスポートの XML 記述ファイルを作成するためのグラフィカル・ユーザー・インタフェースが提供されます。各記述ファイルには、ラスター・ファイル一式を一括で GeoRaster にロードする、またはGeoRaster からエクスポートする方法が記述されます。XML 記述ファイルの作成後、このツールを使用して複数の記述ファイルを呼び出し、ラスター・ファイルを一括で同時にロードおよびエクスポートできます。実行時障害が発生した場合はログに記録されますが、ロードやエクスポートのバッチ処理は停止されません。このツールは、GDAL でサポートされるすべてのラスター形式に対応しています。

12.2におけるGeoRaster機能の強化

12.2 では、GeoRaster 機能はデータの管理性、分析、ユーザビリティ、パフォーマンスの点でさらに強化されています。

ネイティブな JPEG 2000 圧縮により、圧縮率とイメージ品質が大幅に向上しました。モザイク処理は高度な色バランスのアプローチを使用して強化され、イメージの覆い焼き、フィルタリング、ワープ、アフィン変換など、一連の新たなイメージ処理とイメージ変換が追加されています。ラスター代数では、25 以上の新たな演算子と関数により、より複雑で論理的、数理的、統計的な分析が可能になりました。GeoRaster の新たなコア・ファンクションには、より高速な単一セルの問合せや、DEM ベースの 3D 表面積計算などが含まれます。GeoRaster のパフォーマンスは、新規アルゴリズム、カスタマイズ可能なメモリ制御、パラレル化によって大幅に向上しました。GeoRaster Java API では、すべてのサーバー側ファンクションとプロシージャがサポートされ、新たな仮想モザイク API が提供されます。GeoRaster ETL と GeoRaster Viewer は 1 つのツールに統合されたため、デプロイと使用が容易になりました。

3Dデータ型のサポート

Oracle Spatial and Graph では、点、線、面、TIN、ラスターの代替形式、点群など、3 次元(3D)データに対するネイティブな保存、問合せ、取得が可能です。3D データ用の空間 R ツリー索引付け、SQL 演算子、分析ファンクションも提供されます。

都市モデル、点群、地形モデルなどの非常に大規模な 3D データセットを、セキュリティ、スケーラビリティ、パフォーマンスに優れたオープンな Oracle 3D データ型に保存して管理できます。3Dデータセットは、都市計画や都市設計、政府、ホームランド・セキュリティ、軍隊、石油/ガス調査、輸送工学、ゲームやシミュレーション、地球工学、医療、ビジネス・インテリジェンス(不動産や広告など)、LIDAR ベースの地図製作などでよく利用されます。

Oracle Spatial and Graph では、3D データのモデル化と可視化が行われ、3D データのシミュレーション・インフラストラクチャが提供されます。一連のメタデータ表には、テーマ、シーン、テクスチャ、ビューポイント、光源、非地理データ、および 3D コンテンツを可視化するために使用されるその他の要素が記述されます。このようにメタデータをサポートすることで、すべての 3D

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データ、ラスター・データ、ベクトル・データ、および非幾何学データを、統一された可視化フレームワークに一貫した方法でまとめることができます。情報がテーマごとに論理的に分類されることで、3D アプリケーションの開発、分析、利用、および保守が容易になります。

Oracle Spatial and Graph 12c では、3D および点群の分析と可視化機能がさらに充実しました。すでに説明したとおり、3D パラメトリック曲線(自由曲線)がサポートされます。Java API のインメモリ関数では、3D 投影された測地ジオメトリ・タイプに対応しています。2 つの 3D 点の距離が概算され、計算ではこれら 2 つの点の高さが考慮されます。3D 可視化/分析ツールでは、3D のテーマ、シーン、ビュー・フレームのメタデータ・ビューを利用できます。点群および TINS では、異なる粒度の可視化を行うためのピラミッド化がサポートされます。等高線を点群から生成でき、2D点を TIN に投影して点の高さを求めることができます。線形参照システムのファンクションでは、3D 測地データに対応しています。

トポロジ・データ・モデル

Oracle Spatial and Graph には、トポロジを Oracle Database に永続的に保存するためのデータ・モデルとスキーマが含まれています。この機能は、高度なフィーチャ編集が必要であり、かつマップやマップ・レイヤー全体でデータ整合性が強く要求される場合に有用です。一般的に、隣接、接続、包含などの関係では、トポロジベースの問合せは他の方法よりも高速に実行されます。土地管理(地籍)システムおよび空間データのプロバイダは、これらの機能から恩恵を受けることができます。

アプリケーション開発者や DBA は、Oracle Database の一機能である Workspace Manager を使用して、Oracle Spatial and Graph のトポロジ・データ・モデルに保存されたトポロジをバージョニングできます。データベースに永続的に保存されたトポロジに対して、フィーチャ・レベルの空間トランザクションを実行できます。フィーチャの挿入または更新は 1 回の操作として実行されるため、トポロジ・データセットの更新や保守のプロセスが簡素化され、アプリケーション・ロジックも平易になります。

空間分析ファンクション

Oracle Spatial では、Oracle Advanced Analytics のコンポーネントの 1 つである Oracle Data Mining(ODM)での空間分析およびマイニングがサポートされます。Oracle Data Mining では、データベースの知識情報を自動検出できます。たとえば、さまざまなデータ属性間に潜む関連性の検出、いくつかのサンプルに基づいたデータの分類、クラスタ化による本質的なパターンの特定が可能です。

空間データは、マテリアライズしてデータ・マイニング・アプリケーションに取り込むことができます。多くの場合、特定の位置にあるデータは、近隣のデータの影響を受けます。Oracle Spatial and Graph の空間分析/マイニング機能によって、そのような空間相関を次のように利用できます。

» データの特定領域へのビニング – 特定の年齢や収入カテゴリに属する米国東南部の顧客が通常のソーダとダイエット・ソーダのどちらを好む傾向にあるかを調査する

» 空間相関(近隣の影響)のマテリアライズ – ある物件の価値を評価する際に、近隣にある類似物件の価値を調査する

» コロケーション・マイニング – ピザ・レストランのフランチャイズ店をビデオ販売店と一緒に展開すれば売上が増加するかどうかを調査する

» 空間クラスタ化 – 犯罪率が高い地域を特定し、警察を多く配備すべき場所を判断する

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» 立地調査 – それぞれの近隣地域に住む患者の人口に基づいて、新しい病院を開設するのにふさわしい最適な立地を特定する

空間分析ファンクションについて詳しくは、Oracle Technology Network の Oracle Spatial and Graph のページにあるホワイト・ペーパーを参照してください。

ジオコーディング

ジオコーディングとは、住所や郵便番号などの地理参照情報を、位置座標(緯度と経度)に関連付けるプロセスです。Oracle Spatial and Graph では、完全なジオコーディング機能が提供されます。国際的な住所規格に対応しており、対象点(POI)をジオコーディングして Oracle Database に保存されているジオコードされたデータにマッチングさせることができるほか、リバース・ジオコーディング、バッチ・ジオコーディング、その他のジオコーディング機能が提供されます。未解析の住所も独自にサポートされるため、顧客のアプリケーションにさらなる柔軟性と利便性がもたらされます。ジオコーディング用の SQL API、Java API、XML API が提供され、これらの API は、中間層(Oracle Fusion Middleware)またはデータベース・サーバー層のいずれかにデプロイできます。

サンプル・データはオンラインで入手できます。Oracle Spatial and Graph でサポートされる形式のデータセットは、大手のデータ・プロバイダから入手できます。詳しくは、Oracle Technology Network の Oracle Spatial and Graph のページで、Partners タブにアクセスしてください。

Oracle Spatial and Graph のジオコーディングでは、内挿に基づく標準的な住所ジオコーディングと、住所、交差点、対象点の正確な位置がデータセットに含まれる点ベースのジオコーディングがサポートされます。点ベースのジオコーディングは、より正確な結果を取得でき、内挿が不可能な状況でも使用できるため、普及が進んでいます。

Oracle Spatial and Graph 12c のジオコーディングでは、住所の範囲がない国に対応した点ベースの住所ジオコーディングと、住所が複数の言語で表される国に対応した言語がサポートされます。リバース・ジオコーディングは、国コードを指定せずに実行できます。

ルーティング・エンジン

ルーティング・エンジンは、あらかじめジオコーディングされた住所間や位置間の運転距離、運転時間、運転案内を算出するものです。Oracle Spatial and Graph のルーティング・エンジンは、JEEサーブレット・コンテナに容易にデプロイできる Java クライアント・ライブラリとして提供されます。最速ルートと最短ルートのどちらを算出するかを設定でき、ある地点から複数の目的地への道路網に沿った大まかな運転案内と詳細な運転案内、運転時間、および運転距離を算出できます。また、ドイツ、英国、フランスなど、12 か国以上の西欧諸国で住所間の運転距離、運転時間、運転案内を算出できるため、物流、輸送、位置情報サービスのアプリケーションを支援できます。

サンプル・データはオンラインで入手できます。Oracle Spatial and Graph でサポートされる形式のデータセットは、大手のデータ・プロバイダから入手できます。詳しくは、Oracle Technology Network の Oracle Spatial and Graph のページで、Partners タブにアクセスしてください。

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ルーティング・エンジンでは、運転案内がドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語など、西欧諸国の言語で提供されます。右左折別の対象点データを必要とする位置情報サービス・アプリケーション向けに、右左折別のジオメトリを生成できます。計算されたルートは、点と点との関係セットとして返すことができ、その関係セットはその後の分析に使用できます。

Oracle Spatial and Graph 12c のルーティング・エンジンでは、トラック固有のルーティングなど、高度なルーティング・アプリケーションに必要な制限や条件がサポートされます。商用アプリケーションや物流アプリケーションに適用される道路、重量、高さ、時間帯などの条件、および論理的な右左折制限に基づいた、トラック固有のルーティングを提供できます。一般車両の速度制限とは通常異なるトラックの速度制限に基づき、運転時間を計算できます。また、ルート上にある重量検査所やトラック運転者用施設など、トラック向けサービスに関する情報も提供できます。さらに、ルート・ジオメトリ内で 2 方向以上の点が関わる論理的な右左折制限も処理できます。これらの機能強化によって、物流アプリケーションやトラック・ルーティング・アプリケーションで、より正確な結果が得られるようになります。

空間Webサービス

Oracle Spatial and Graph では、ジオコーディング、ルーティング、マッピング、ビジネス・ディレクトリ、カタログ、地理空間フィーチャ・トランザクションなどのサービスを含む地理空間サービスを利用し、取り込み、公開し、デプロイできる Web サービス・プラットフォームを構築できます。Oracle Spatial and Graph は、Oracle Database および Oracle Fusion Middleware と強固に統合されており、エンタープライズ・クラスのセキュリティを備えた、トランザクション型のサービス指向アーキテクチャ・プラットフォームを実現します。また、セキュリティに関しては、認可、認証、転送の機密性と完全性が保証されます。

Oracle Spatial and Graph はこれまで多くのリリースで、Open Geospatial Consortium(OGC)とISO TC211 の規格をサポートしてきました。現在は、XML ベースの地理空間 Web サービス規格である OGC OpenLS 1.1、OGC Web Feature Service – Transactional(WFS-T)1.0、OGC Web Feature Service 1.0、OGC Catalogue Service 2.0 を、さまざまなクライアント・テクノロジーとプラットフォームでサポートしています。

Oracle Spatial and Graph では、SQL による WFS-T フィーチャ表へのデータベース・トランザクションが制限なしで完全にサポートされるほか、Workspace Manager のバージョニング機能と WFSフィーチャ表もサポートされます。Java および PL/SQL によるクライアント API も提供されます。

Oracle Spatial and Graph 12c では、Web Feature Server 1.1 向けの Web ベースの管理コンソールが提供されます。このコンソールは、メニュー形式のユーザー・インタフェースであり、このコンソールを使用すると、Web Feature Server 1.1 の空間レイヤーを容易に登録できます。ユーザーは、コンソールを使用して既存の空間レイヤーを参照できるため、DBA は、空間レイヤーを公開するための PL/SQL スクリプトを実行する必要がなくなります。WFS の構成と利用に関するチュートリアルが付属しており、WFS 問合せのサンプル・リクエストおよびレスポンスのサンプル・ページもあります。このユーザー・インタフェースは、別の WFS サーバーへのクライアントとして使用することもできます。

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Oracle Spatial and Graph 12c では、さらなる Open Geospatial Consortium(OGC)規格をサポートしています。Web Coverage Service Interface Standard(WCS)が実装され、WCS のバージョン2.0.1 と多くの拡張機能をサポートしています。

Catalog Services for the Web(CSW)のバージョン 2.0.2 もサポートされるようになりました。このリリースでは、DCMI レコード・タイプがサポートされます。以前のバージョンの CSW を実装することは推奨されません。

WFS、WCS、CSW の統合フレームワークと統合管理コンソールの提供により、デプロイ、管理、診断が容易になりました。

ネットワーク・データ・モデル・グラフ機能の概要

ネットワーク・データ・モデル(NDM)は、輸送、公益事業、石油/ガスなどの業界で一般的に使用される物理的かつ論理的なネットワーク・データ構造を保存する機能です。この機能により、ネットワークの接続性を明示的に保存して維持し、最短パス、最近傍、コスト内、到達可能性などのネットワーク分析を実行できます。

NDM には、データベース内のネットワーク・データを管理するための PL/SQL API と、ネットワーク分析を実行し、ネットワークの制約を作成して適用するための Java API があります。

Oracle Spatial and Graph の NDM ユーザーは、利用可能なメモリよりもサイズが大きいネットワークを使用した、高速のインメモリ分析の利点を享受できます。NDM では、大規模ネットワークをパーティショニングして管理可能な複数のサブネットワークに分割できます。また、効率的なインメモリ分析のために、必要に応じてネットワーク・パーティションをメモリ内に自動的にロードできます。パーティショニング・ユーティリティも利用できます。

NDM は、Oracle Spatial and Graph のジオコーディングおよびルーティング・エンジンと統合されます。これらの機能を利用するアプリケーションでは、NDM ファンクションを使用して分析を実行できます。NDM では、Nokia の商用道路網データ(Navteq)が Oracle Delivery Format(ODF)でサポートされます。

NDM には、公益事業ネットワーク、物流、輸送、およびその他のネットワーク・ベースのアプリケーションの要件を満たす多くのモデル化機能と分析機能が搭載されています。

モデル化機能

» すべての分析ファンクションで、リンクに沿ったあらゆる点をモデル化して表現する(例:ノードとリンクの任意の数のプロパティを使用して、道路網内の特定の住所をモデル化して表現する)。

» 部分リンク・パス(サブパス)をモデル化する。

» リンクおよびノードのプロパティ(例:コスト)をカスタマイズする。

» 複数のリンクおよびノードのプロパティを使用してパス分析を実行する(例:距離/時間/ホップ数のコスト)。

» 論理ネットワークのパーティショニングを実行する(例:社会的経路ネットワークや生化学的経路ネットワークを、アプリケーションに適したメトリックに基づいてパーティショニングする)。

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ネットワーク分析機能

» あるノード・セットに接続する最短ルートを計算する。

» あるノードから特定のコストで到達できる領域を表すポリゴンを生成する(通常の用途では、運転時間と運転距離のポリゴンを生成する)。

» プロパティ(例:幹線道路、地方道路)に基づいてリンクが優先順位付けされている階層型ネットワークで最短パスを生成し、問合せを支援する(2 つの住所間のルートを検索する際に、地方道路よりも幹線道路をできる限り優先させるなど)。

» ネットワーク・コストに基づいてバッファを計算する。バッファ表現にはカバレッジ情報とコスト情報が含まれる。

» 2 つのノード間の K 最短経路を計算する。

NDM には JSP ファイルと Java ファイルのサンプルが付属しているため、アプリケーション開発者は、NDM に保存されたデータを使用して、ルーティング機能やその他のネットワーク分析機能を迅速かつ容易にデプロイできます。ユーザーは、Web ブラウザで分析結果を可視化できます。サンプルは Nokia ODF ネットワーク・データとともに機能し、NDM のロード・オンデマンド API、Oracle Fusion Middleware MapViewer、および Oracle Spatial and Graph ジオコーディング・エンジン を 利 用 し て い ま す 。 こ の サ ン プ ル は 、 Oracle Technology Network(oracle.com/technetwork/database/options/spatialandgraph/spatial)からダウンロードできます。

Oracle Spatial and Graph 12c の NDM 機能および時間モデル化の機能強化によって、複雑な空間ロジックがデータベースに移行されるため、アプリケーション開発が容易になり、実態に即した分析が可能になります。

フィーチャのモデル化と分析

Oracle Spatial and Graph 12c の NDM では、フィーチャ表現をネットワーク要素に関連付けるフィーチャ分析ファンクションが提供されるため、フィーチャの編集と分析が容易になります。フィーチャのモデル化は、実世界の具体的な対象オブジェクトと抽象的なネットワーク要素のギャップを埋める作業です。

フィーチャのモデル化によって、実世界のオブジェクトがネットワーク要素に関連付けられるため、アプリケーション開発が容易になります。たとえば、変電所の停電時に影響を受ける世帯を公益事業ネットワーク・アプリケーションで把握する必要がある場合、アプリケーションのフィーチャ(変電所、送電線、変圧器)をネットワーク要素(リンクとノード)に関連付ける必要があります。フィーチャ・モデリングでは、フィーチャ・メタデータによってこれらの関係が維持されるため、アプリケーションの開発や保守が容易になります。

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時間の概念を含むネットワークのモデル化:マルチモーダル輸送ルーティング

Oracle Spatial and Graph 12c では、時間の次元を含むネットワークのモデル化が新たにサポートされます。ユーザーは時間のプロパティをノードやリンクに関連付けて、ネットワーク分析の問合せで時間に関する入力値を指定できます。

ほとんどの実世界のネットワークには時間要素が存在します。道路セグメントでの移動時間は、時間帯によって異なります。公益事業ネットワークでは、季節的な需要や時間帯によって、求められる負荷が異なります。分析/計画アプリケーションでは、実世界の条件をより正確に表現することで効果を期待できます。NDM では、指定した時間帯での最速移動ルートを検索するなどの問合せや、マルチモーダル輸送ネットワークのモデル化と分析、マルチモーダル輸送ネットワークでの最速パス計算がサポートされます。

12.2におけるNDM機能の強化

ネットワーク機能編集

ネットワーク機能編集(NFE)を使用すると、NFE モデルの作成と管理が可能です。NFE モデルでは、Java Swing コンポーネントと PL/SQL API を使用してフィーチャを可視化し、操作できるようにすることで、フィーチャのモデル化機能を拡張します。既存のネットワーク上にフィーチャを定義することもできます。

Oracle Spatial and Graph の Network Data Model について詳しくは、Oracle Technology Networkの Oracle Spatial and Graph のページにあるホワイト・ペーパーを参照してください。

Oracle Database 12c Release 2における新たな空間機能

GeoJSONのサポート

Oracle Spatial and Graph では、GeoJSON オブジェクトを使用して、JSON(JavaScript Object Notation)形式の地理データを直接 Oracle Database に保存し、索引付けし、管理することが可能です。データは JSON オブジェクトから Oracle Spatial and Graph の SDO_GEOMETRY オブジェクトに、また SDO_GEOMETRY オブジェクトから JSON オブジェクトに変換できます。空間演算子、ファンクション、および特別な SDO_GEOMETRY メソッドを使用して GeoJSON データを扱うことができます。アプリケーションで JSON データ・ストアが必要な場合、GeoJSON データを JSON ストアに組み込み、その後それらの JSON ドキュメントを空間的に索引付けし、空間問合せで使用できます。GeoJSON 機能では、Oracle Database 12c の機能を活用して JSON ドキュメントを保存、管理、索引付けします。開発者は、REST サービスまたは他の API 経由で JSON にアクセスし、SQLを使用して JSON ドキュメントを問合せることができるため、最新の開発環境での柔軟なアプリケーション開発と強力な SQL 分析が実現します。

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位置データ機能の強化

Oracle Spatial and Graph には、HERE から始まる階層型の地理データを持つ場所名データセットがあります。このデータセットは、データベースにロードして、新たな SDO_UTIL.GEO_SEARCH ファンクションを使用して検索できます。データセットには、場所名、住所、部分住所、および緯度情報や経度情報など、一般的に使用されるテキストの位置データが含まれます。

場所タグは、顧客のテキスト・データから抽出し、Oracle Text を使用して有名な場所の名前と一致させ、その場所に関連する他の地理情報で拡張します。結果は、追加属性として元のデータと一緒に保存できます。この機能により、あまり構造化されていない地理データと位置データを処理できるため、情報の分類、比較、フィルタリング、他のデータとの関連付けが可能になります。たとえば、一部の名前のみを持つデータを、市、郡、州、国を含むように補強することで、州レベルの情報を持つ他のデータセットと結合したり、それらのデータセットを使用して分析したりできます。この機能は、ビッグ・データの結果を業務系システムやデータウェアハウス内の構造化された情報と比較する際に特に有用です。

空間索引の向上

空間索引では、これまではリスト・パーティショニングのみがサポートされていましたが、リスト・パーティショニング、インターバル・パーティショニング、ハッシュ・パーティショニングを含むすべてのパーティショニング方式がサポートされるようになりました。これにより、パフォーマンスが向上します。

さらに、空間索引をシステムで管理できるようになりました。おもな利点は、空間索引の管理が簡素化されることです。これはパーティショニングを行う上でもっとも有益です。この新たな索引タイプにより、索引のパーティションに関するすべての、またはほとんどの管理操作が不要になるためです。Oracle Database のほぼすべての実表パーティショニング・モデルが完全にサポートされます。空間表や空間索引がパーティショニングされているかどうかにかかわらず、作成したすべての新規空間索引にこの索引タイプを使用することが強く推奨されます。

ポイント・データ向けに最適化された索引タイプ

移動オブジェクト、対象点、イエロー・ページのデータなど、位置情報サービスでよく使用されるポイントのみのデータセットは膨大になる可能性があり、アプリケーションでは通常、更新および問合せに高いパフォーマンスが求められます。大量の同時 DML が空間表で実行されている場合、Rツリー索引を使用したパフォーマンスには困難が伴います。

新たな索引タイプである混合 B ツリー索引を使用すると、空間索引を作成する際のパフォーマンスを 20~30 倍、ポイントのみの大量のデータセットを更新する際の DML 操作のパフォーマンスを10 倍向上できます。

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地理データのマップ可視化機能

空間可視化機能は、HTML5 ベースのマッシュアップ・コンポーネントです。SQL や JavaScript を使い慣れている開発者は、この機能を使用してさまざまなマップ・スタイルと空間分析機能をビジネス・アプリケーションに組み込むことができます。マッピング・エンジンにより、Oracle Spatial and Graph のデータが可視化されるため、開発者はこのデータを WMS、WFS、GeoRSS ストリーム、WMTS などの外部 Web サービスと結合できます。さらに、プラグイン・インタフェースを使用して、独自のサード・パーティ・マップ・タイル・レイヤーを定義できます。サード・パーティのGeoJSON ファイルもサポートされます。動的なタイル・レイヤーにより、大規模なデータセットをインタラクティブに可視化でき、必要に応じて個々の機能を検索することもできます。

これまで Oracle Fusion Middleware MapViewer で提供されていたこれらの機能を、Oracle Spatial and Graph ユーザーも使用できるようになりました。マップ可視化機能は、JEE コンテナ、またはOracle Java Cloud Service にデプロイする必要があります。

位置追跡サーバー

Oracle Spatial and Graph の新たな位置追跡サーバーにより、対象地域を定義し、対象地域内または対象地域外へのオブジェクトの移動を追跡し、特定の移動が発生した場合に通知を受け取ることが可能です。位置は私たちの生活にとってますます重要な側面となり、今や位置を検知するデバイスは至る所に存在します。このような状況の中で、サブスクライバの位置データをアプリケーションで継続的に監視することがますます求められています。位置データの監視結果によっては、システムで警告が生成される場合もあります。

たとえば、あるトラック運送企業が、それぞれの目的地に向かって特定のルートを移動する 10,000台のトラックのネットワークを監視したいとします。トラック運送企業は、指定した範囲のルート内でトラックの移動を追跡し、望ましいルートから逸脱したトラックを検知した場合は警告を生成することができます。プロアクティブな位置情報サービス(LBS)により、指定した対象範囲の内外にいるサブスクライバの位置を追跡するこのようなアプリケーションが普及しています。位置に基づき広告を作成したり、近くにいる友達を通知したりするなど、追跡の目的はさまざまです。

Oracle Spatial and Graph の位置追跡サーバーにより、PL/SQL インタフェースを使用してデータベース内に位置追跡ネットワークを設定するシンプルなフレームワークが実現します。追跡ネットワーク内のオブジェクトの位置を継続的に監視するための API が提供されます。キューイング・メカニズムにより、位置更新の受信やリクエストの追跡が処理されます。また、関連通知の送信には、Oracle アドバンスト・キューイングが使用されます。これにより、データベース内の数千もの関連オブジェクトの位置を効率的かつ継続的に監視できます。

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RDFセマンティック・グラフ機能の概要

Oracle Spatial and Graph の RDF セマンティック・グラフ機能は、World Wide Web Consortium 規格を順守するリンクト・データとセマンティック Web アプリケーション専用のグラフ機能です。RDF と OWL は、複雑で意味的に関連性のあるデータを表現し定義するための規格であり、SPARQLは、グラフ分析専用に設計された問合せ言語です。アプリケーション開発者は、Oracle Databaseと統合された、業界を代表するオープンでスケーラブルなグラフ・データ・プラットフォームを利用して、スケーラビリティ、セキュリティ、パフォーマンス、高可用性を実現できます。

保存、ロード、データ操作

RDF セマンティック・グラフは、1 兆以上のトリプルにまで拡張できるスケーラビリティを備えていることが実証されています(LUBM ベンチマークより)。RDF/OWL モデルでは、標準的なすべてのデータベースのロード、保存、データ操作がサポートされます。各モデルには、有向のラベル付きエッジのグラフとして管理される主語-述語-関係のトリプル一式が含まれます。エッジとは、サブジェクト(主語)ノードをオブジェクト(述語)ノードにつなげるリンク(関係)のことであり、条件(プロパティ)によってラベル付けされます。スペース効率に優れた記憶域によって、必要なディスク領域が最大 60%削減されるため、スケーラブルでパフォーマンスに優れたロード、問合せ、推論が実現します。

ネイティブ推論

RDF セマンティック・グラフには、ネイティブで永続的な前向き連鎖推論の機能があります。この機能では、RDF、RDFS、OWL 2 RL/EL プロファイルが任意の組合せで使用され、さらに専門的な推論機能のためにユーザー定義ルールも使用できます。また、サード・パーティの専門推論機能をサポートするプラグイン・フレームワークも搭載されています。最適化された大規模な owl:sameAsセット、トリプル挿入後に伴意を更新する増分推論、マルチコア/マルチ CPU アーキテクチャでのパラレル推論などの最適化機能も提供されます。

Oracle Spatial and Graph 12c では、新たに推論されたトリプルが適切なセキュリティでラベル付けされるラダーベース推論がサポートされ、ユーザー定義の推論のサポートも追加されています。

Oracle DatabaseでのRDFグラフの問合せ

RDF セマンティック・グラフでは、オープン・ソースの Apache Jena/Joseki および Sesame により、SPARQL 1.1 エンドポイント Web サービスと Java API が提供されます。SQL を使用して RDF/OWLデータを問い合わせることもできます。Oracle SQL SEM_MATCH テーブル・ファンクションでは、SPARQL グラフ・パターン問合せが SQL 問合せに埋め込まれます。仮想モデル機能では、問合せ用に複数のモデルを結合するビューに似た機能が提供されます。

Oracle Spatial and Graph 12c の SEM_MATCH テーブル・ファンクションでは、SPARQL 1.1 がサポートされます。RDF グラフへの空間データの保存および問合せには、OGC GeoSPARQL 規格がサポートされます。

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24 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

RDFトリプルとしてのリレーショナル・データの参照

Oracle Spatial and Graph 12c では、リレーショナル表、ビュー、および SQL 問合せ結果に対してRDF ビューを作成できます。さらに、自動マッピング(Direct Mapping)のための W3C 規格、カスタム・マッピング(W3C R2RML 言語を使用)、およびビューのマテリアライズがサポートされます。RDF ビューでは、リレーショナル・データは RDF トリプル形式で提示されるため、SPARQLを使用して問合せできます。また、他のリンクト・データや RDF グラフと接続できるため、企業データを関連付け、企業データの統合を推進します。

RDF、XML、JXON、リレーショナルの相互運用性

オントロジを使用した SQL 問合せによって、リレーショナル・データが、データのドメイン知識を整理するオントロジと関連付けられるため、より意味的に完全な結果を表データから抽出できます。

Oracle Spatial and Graph 12c には、SPARQL Gateway という機能があります。この機能は、XMLデータ・ソースをサポートする可視化ツール(Oracle Business Intelligence(OBIEE)など)向けに、SPARQL 問合せ結果を XML 形式で表す機能です。RDF 問合せ結果は、相互運用性のある JXON 形式で返すことができます。

きめ細かなセキュリティ

RDF グラフ・データのアクセス制御はデフォルトではモデル・レベルです。もっとも厳しいセキュリティ・レベルに対応するために、Oracle Label Security オプションを使用したトリプルレベルのセキュリティもサポートされています。個々のトリプルやユーザーに機密性ラベルを定義することで、RDF モデルに保存されている個々のトリプルへのユーザー・アクセスを条件付きで制限できます。

グラフ分析

Oracle Spatial and Graph 12c では、あらゆる長さのパスでグラフ・パターンを検索できる SPARQL 1.1 のプロパティ・パス式がサポートされます。グラフの問合せ結果は、Oracle Advanced Analyticsの Oracle Data Mining や Oracle R Enterprise で利用できます。

ドキュメントのセマンティック索引付け

ドキュメントのセマンティック索引付け機能により提供される索引タイプを使用して、サード・パーティの自然言語プロセッサやアノテータによって抽出された構造化されていないドキュメント、表データ、URL 内の情報に意味のある索引を付けることができます。意味のある索引が付けられたドキュメントは、標準 SQL 問合せの中で SEM_ CONTAINS 演算子を使用して検索できます。これらのドキュメントの検索基準は、ドキュメントから抽出された情報に影響を及ぼす SPARQL 問合せパターンを使用して表現されます。

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25 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

高度なパフォーマンスとスケーラビリティ

RDF セマンティック・グラフでは、パラレル処理、圧縮、パーティショニング、Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)、Oracle Exadata Database Machine がサポートされるため、エンタープライズ・レベルのパフォーマンスとスケーラビリティが実現します。この機能を利用するために必要なライセンスは、Oracle Database Enterprise Edition、Oracle Spatial and Graph オプション、および Oracle Partitioning オプションです。

12.2におけるRDFセマンティック・グラフ機能の強化

セ マ ン テ ィ ッ ク ・ モ デ ル で SPARQL 更 新 演 算 子 を 実 行 で き る よ う に な り ま し た 。 新 た なSEM_APIS.UPDATE_MODEL プロシージャにより、Oracle Database のセマンティック・テクノロジーで W3C SPARQL 1.1 更新がサポートされます。プロパティ・グラフとの統合は、SPARQL 問合せ向けプロパティ・グラフ・データの RDF ビューと、プロパティ・グラフのソーシャル・ネットワーク分析向け RDF データのプロパティ・グラフ・ビューによって有効化されます。SPARQL ORDER BY セマンティクスを使用する RDF データの問合せでは、より効率的な演算のために、MDSYS.RDF_VALUE$メタデータ表の ORDER_TYPE、ORDER_NUM、および ORDER_DATE 列を使用できます。SEM_MATCH 問合せで DISABLE_ORDER_COL オプションを指定すると、この機能を無効化できます。新たな SEM_APIS.SPARQL_TO_SQL ファンクションにより、SPARQL 問合せの SQL 変換 と 実 行 が 可 能 で す 。 ま た 、 新 た な SPARQL 問 合 せ フ ァ ン ク シ ョ ン 、 orardf:like 、orardf:sameCanonTerm、orardf:textScore が提供されます。Oracle フラッシュバック問合せとの統合もサポートされるようになりました。

Oracle Exadata Database Machine

エンジニアド・システムは、大量のワークロードが引き起こす問題に対処するために膨大な容量を備え、優れたパフォーマンス、高帯域幅、大規模なパラレル処理を実現します。Oracle Spatial and Graph の高度な分析機能と、Oracle Exadata Database Machine のパフォーマンスおよびスケーラビリティを組み合わせれば、もっとも要求の厳しいアプリケーションにとって理想的なプラットフォームが実現します。

Oracle Spatial and Graph では、Oracle Exadata のバランスの取れたハードウェアと高度なパラレル・アーキテクチャを十分に活用しており、他の空間データベースのマシンやソリューションと比較して、150 倍を超えるパフォーマンスを達成できます。さらに、実際の顧客のシナリオやテスト結果、戦略によって、大規模な空間/グラフの計算やデータ取得のパフォーマンスが最大化されています。

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Oracle Spatial and Graph の機能は、アプリケーションを変更せずに、Oracle Exadata のパラレル処理、パーティショニング、索引付け、スケーラビリティ機能をネイティブに利用できるように設計されています。完全にパラレル化された Oracle Exadata の結合処理および集計処理を、Exadata Storage Server の広範な I/O 帯域幅と優れたパフォーマンスと組み合わせることで、サーバーベースの地理情報処理やグラフ・アプリケーションに必要な処理能力が Oracle Spatial and Graph にもたらされます。OLTP 索引圧縮によって、空間/グラフの索引を圧縮し、メモリ常駐率を上げることで、問合せのパフォーマンスが向上します。また、Exadata Hybrid Columnar Compression によって、大規模な空間/グラフ・データセットや、推論で使用されるルール・セットのメモリ常駐率が向上します。

Oracle Exadata と Oracle Spatial and Graph を使用した顧客のシナリオやテスト結果、戦略などの詳細については、Oracle Technology Network の Oracle Spatial and Graph のページを参照してください。

Oracle Database 12cでサポートされるエンタープライズ機能

Oracle Database 12c では、組織のミッション・クリティカルなアプリケーションに対して、信頼性の高い強力なサポートが提供されます。柔軟なインターネット・デプロイ・アーキテクチャ、オブジェクト機能、堅牢なデータ管理ユーティリティなどのエンタープライズ機能により、Oracle Spatial and Graph の機能が強化され、データ整合性、データ・リカバリ、データ・セキュリティが確保されます。このレベルのサポートは、エンタープライズ・データベース・ソリューションの同種環境にのみ提供されるものです。外部の位置情報ソリューションと従来型のエンタープライズ・ソリューションを統合したハイブリッド・ソリューションでは、これら 2 つのコンポーネントがいかに密接に統合されているように見えても、このレベルのサポートを効果的に再現することはできません。

Oracle Spatial and Graph では、拡張されたデータベース・サイズの上限、高パフォーマンスのVLDB メンテナンス、ユーティリティ、レプリケーション、地理空間データのバージョニング(Workspace Manager)、高速なバックアップとリカバリ、パーティショニングが十分に活用されます。Oracle Database のネイティブな地理空間データ型とグラフ・データ型を利用するユーザーだけが、パーティショニング、レプリケーション、パラレル空間索引の構築と問合せ、地理空間やグラフに基づくマルチレベルのセキュリティなどの機能を最大限に利用することができます。幅広い Oracle ユーティリティ(SQL*Loader など)も利用できるため、移行が容易になり、空間機能を利用するアプリケーションのアップグレードにも役立ちます。これらの主要なエンタープライズ機能の一部について、以下に説明します。

空間索引のパーティショニングのサポート

Oracle Database アーキテクチャには、パーティショニング機能が含まれます。この機能では、単一の論理表とその索引が 1 つまたは複数の物理表に分割され、それぞれの物理表に独自の索引が付けられます。パーティショニングされた表に関連する空間索引もパーティショニングできます。レンジ・パーティション化は、空間索引でサポートされるパーティショニング・スキームです。Oracle Database のグラフはモデルに分割され、モデルは別のパーティションに保存されます。

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パーティショニングによって、以下のようにパフォーマンス、スケーラビリティ、管理性が大幅に向上します。

» パーティショニングによってディスク I/O 操作を削減できるため、長時間実行される問合せの応答時間が短縮されます。

» I/O 操作が各パーティションに対して同時に実行されるため、同時に実行される問合せの応答時間が短縮されます。

» 作成と再構築の操作がパーティション・レベルで実行されるため、索引のメンテナンスが容易になります。

» 他のパーティションへの問合せに影響を及ぼさずに、一部のパーティションで索引を再構築できます。

» 他のパーティションとは無関係に、各ローカル索引の記憶域パラメータを変更できます。

» パーティションの分割、マージ、交換を実行できます

索引のパラレル作成

空間/グラフの索引と索引パーティションは、パラレルで作成できます。地理空間 R ツリー索引とグラフ B ツリー索引の作成を小さいタスクに分割し、それらのタスクを、未使用のハードウェア(CPU)リソースを利用しながらパラレルで実行できます。特定の空間データセット、索引タイプ、およびパラメータについては、索引のパラレル作成によって索引構築のパフォーマンスが大幅に向上し、処理時間が著しく短縮されます。大規模な非点データセット(標準的な GIS アプリケーションでよく使用されるデータセット)では、パフォーマンスが劇的に向上する場合もあります。

パラレルのロード、問合せ、推論

パーティショニングされた空間索引に対して空間問合せをパラレルで実行すると、"距離内"、"最近傍"、"関係付け"の問合せのパフォーマンスを向上できます。パフォーマンスは、問合せの実行に利用される CPU 数に従って向上します。大量の空間問合せを即座に実行する必要のある位置情報サービスや土地管理アプリケーションでは、CPU を増加させると効果的です。RDF グラフ・データのロード、グラフ問合せ、および推論の演算も完全にパラレル化されます。

レプリケーション

Oracle GoldenGate で は 、 ネ イ テ ィ ブ の 地 理 空 間 デ ータ 型 の デ ー タ を レ プ リ ケ ート で き 、SDO_GEOMETRY、SDO_GEORASTER、SDO_TOPO_GEOMETRY のデータ型がサポートされます。地理的に離れた場所にありながらも論理的にレプリケートされている Web サイトが存在する分散システムでは、複数のデータベースにまたがって空間データ・オブジェクトの同期レプリケーションを実行できます。

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注:Oracle Database Advanced Replication のマルチマスター構成は、Oracle Database 12c Release 1 ではサポートされていますが非推奨であり、Release 2 でサポートが廃止されます。この構成は、Oracle Database Enterprise Edition のみで利用できます。Oracle Database Advanced Replication の機能について詳しくは、Oracle Database Advanced Replication のマニュアルを参照してください。マルチマスター・レプリケーション、更新可能なマテリアライズド・ビュー、多重化マテリアライズド・ビュー、デプロイメント・テンプレートなどの Advanced Replication 機能をすべて置き換えるには、Oracle GoldenGate を使用してください。

データベース作業領域とロング・トランザクション

Oracle Database の一機能である Workspace Manager では、空間データの現在値、推定値、履歴値を同じデータベース内で管理できる仮想環境(作業領域)が提供されます。作業領域を共有することで、本番データに対する一連の変更内容を分離し、承認を得た後にまとめて本番環境に適用できます。また、データの長期的な変更履歴の維持や、"What if"分析用の共通データセットに基づいた複数のデータ・シナリオの作成を行うこともできます。Workspace Manager は、ほとんどの GIS ベンダーによってサポートされています。

Oracle Multitenantのサポート

Oracle Multitenant は、Oracle Database 12c のオプションの 1 つであり、アプリケーションを変更することなくデータベースを統合できる機能です。クラウドに対応した設計であり、多数のデータベースを 1 つのデータベースとして管理しながらも、個々のデータベースの独立性とリソースの優先順位付けも維持できます。マルチテナント・アーキテクチャにより、複数の Oracle Database(各データベースはプラガブル・データベースと呼ばれる)が統合され、単一の Oracle Databaseソフトウェア群(マルチテナント・コンテナ・データベース)の下で動作します。アーキテクチャ上は、各プラガブル・データベース(ユーザー・データおよびメタデータ)とそのマルチテナント・コンテナ・データベース(Oracle メタデータ)の間で分離されます。プラガブル・データベースは、マルチテナント・コンテナ・データベースに含まれない従来の Oracle Database と互換性を持ちます。

Oracle Spatial and Graph のファンクションは、マルチテナント・アーキテクチャにおいても透過的に機能します。そのため、空間/グラフ・アプリケーションでは、1 つのマルチテナント・コンテナ・データベースを管理する効率性、および複数のプラガブル・データベースによって実現される独立性やリソースの優先順位付けなどの利点を享受できます。

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オープン・スタンダード

オラクルは、空間、位置情報サービス、グラフ・データベースの分野で、最新のオープン・スタンダードを構想、推進、実装、およびサポートできるよう絶えず尽力しています。オラクルは、Open Geospatial Consortium (OGC)の 設立 時 からの 主要 メ ンバーで す。 また、World Wide Web Consortium(W3C)のメンバーでもあり、W3C RDF、SPARQL、OWL、RDB2RDF、OGC GeoSPARQLなどのさまざまな技術ワーキング・グループに積極的に貢献し、編集を担当しています。

Oracle Spatial and Graph の複数のバージョンは、OGC Simple Features Specification for SQL, Revision 1.1, Types and Functions Alternative、OGC OpenLS 1.1、OGC Web Feature Service – Transactional 1.0、OGC Web Feature Service 1.0、OGC Catalogue Service 2.0 に準拠しています。Oracle Spatial and Graph では、"ISO 13249-3, Information technology - Database languages - SQL Multimedia and Application Packages - Part 3: Spatial"で仕様が定められている SQL/MM のデータ型と演算子もサポートされます。この規格で定義されている演算子に相当する Oracle Spatial and Graph の演算子は、SDO_NN 演算子、SDO_WITHIN_DISTANCE 演算子と同様に、SQL Multimediaルート型に格納されているデータに対して使用できます。

プロパティ・グラフでは、Tinkerpop、Lucene、SolrCloud、Groovy、Tomcat をはじめとする複数のオープン・ソースの Apache プロジェクト、Eclipse Jetty、Python といった他のオープン・ソース、およびファイル形式の GraphSON、GraphML、GML などがサポートされます。

RDF セマンティック・グラフでは、W3C セマンティック規格と OGC GeoSPARQL 規格がサポートされます。サポートされる W3C 規格は、RDF、RDF Schema(RDFS)、SPARQL 1.1 問合せ言語、オントロジ記述のための OWL 2(RL/EL プロファイル)知識表現言語、Simple Knowledge Organization System(SKOS)、およびリレーショナル表の RDF ビューを作成するための RDB2RDF規格である Direct Mapping(DM)と Mapping Language(R2RML)です。また、RDF グラフに保存された地理空間データの問合せと分析のために、OGC GeoSPARQL 1.0 – A Geographic Query Language for RDF Data 規格がサポートされます。

Oracle Spatial and Graph の規格準拠テストは現在も継続中であり、既存規格の最近のバージョンや新しい規格への準拠については、随時発表されます。規格への準拠に関する最新情報については、Oracle Technology Network の Oracle Spatial and Graph のページを参照してください。

Oracle Spatial and Graphのパートナー

オラクルは、代表的なデータ・プロバイダ、システム・インテグレータ、地理空間/グラフ・ツール・プロバイダ、アプリケーション・プロバイダ、およびサービス・プロバイダとの積極的なパートナーシップを構築し、維持しています。長年にわたって広く深いパートナーシップ関係の構築に努めてきたことで、ユーザーには、柔軟性と可能な限り多くの選択肢がもたらされています。開発者や IT マネージャーは、業界や組織固有の要件に対応できる最先端のツールとアプリケーションを選択し、スケーラブルでセキュアなエンタープライズ地理空間/位置情報サービス・ソリューションを迅速にデプロイできます。顧客は、地理空間分野とエンタープライズ IT 分野における代表的なデータ・プロバイダやシステム・インテグレータからサポートを受けることができるため、ニーズを満たすようにカスタマイズされたソリューションを迅速にデプロイできます。

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この業界で広く使用されているすべての GIS ソフトウェア・テクノロジーが、Oracle Spatial and Graph をサポートしています。代表的な地理空間データ・ベンダーは、世界中の地域を網羅したデータ製品をオラクルの空間データ形式で提供しています。また、世界中のインテグレータは、オラクルの空間ソリューションを導入する上での専門知識や経験を有しています。

RDF セマンティック・グラフ機能は、Oracle Business Intelligence、Oracle Advanced Analytics 製品に加えて、代表的なサード・パーティのグラフ・ツールやグラフ・アプリケーションとも直接統合されます。RDF セマンティック・グラフでは、代表的なオープン・ソース・アプリケーション開発フレームワーク、Apache Jena、関連のオープン・ソース・ツール、さらにはリンクト・オープン・データ・オントロジもサポートされます。

すべてのパートナー一覧、およびサンプル・データ、無料ダウンロード、その他のリソースへのリンクについては、Oracle Technology Network の Oracle Spatial and Graph のページを参照してください。

結論

空間およびグラフ分析は、関係を把握するためのものです。モノのインターネット、クラウド・サービス、モバイル追跡、ソーシャル・メディア、そしてリアルタイム・システムの登場により、大量のデータを管理するだけでなく、パターン、つながり、関係を発見するという新たな課題が生じています。このような機会に対処するために、Oracle Database 12c の Oracle Spatial and Graphオプションには、距離や近接性に基づきデータを評価し、地理空間パターンをマップや画像で可視化するためのさまざまな空間分析ファンクションやサービスが搭載されています。また、Oracle Database 12c Release 2 では、強力な新しい汎用プロパティ・グラフ機能を使用して、推奨事項の作成、コミュニティやインフルエンサの検索、パターン・マッチング、不正や他の異常の特定をはじめとするさまざまなグラフのユースケースにおいて、収集されたデータ・エンティティ間の特有の関係を分析できます。

Oracle Spatial and Graph では、Oracle Cloud と Oracle Database 12c Enterprise Edition の高度な機能が提供されます。防衛機関および情報機関、ホームランド・セキュリティ、土地管理、輸送といった従来型の地理空間領域、および金融、小売り、ライフサイエンス、出版、メディア企業といったグラフや位置テクノロジーを必要とする幅広いビジネス領域において、ビジネスクリティカルな顧客ニーズに対処します。Oracle Spatial and Graph のユーザーには、位置情報を取得できるミッションクリティカルなエンタープライズ・システムを使用する世界最大手企業も複数社含まれています。顧客とパートナーはオラクルに信頼を寄せ、自社の空間/グラフ・アプリケーションでパフォーマンス、スケーラビリティ、セキュリティ、使いやすさを実現しています。代表的なすべての地理空間および位置情報サービス・ベンダーとシステム・インテグレータが、Oracle Spatial and Graph をサポートしています。

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新たな 空間機 能では 、JSON(JavaScript Object Notation )形式 の地 理デー タを 直接 Oracle Database に保存し、索引を作成し、管理する GeoJSON オブジェクトがサポートされます。位置データは、顧客のテキスト・データと HERE から始まる階層型の地理データから抽出された位置タグを使用して強化できます。HTML5 ベースのマッシュアップ・コンポーネントを使用した空間可視化機能により、SQL や JavaScript を使い慣れている開発者は、さまざまなマップ・スタイルと空間分析機能をビジネス・アプリケーションに組み込むことができます。

専用の RDF セマンティック・グラフ・モデルでは、SPARQL 更新操作のサポート、プロパティ・グラフ分析や Oracle フラッシュバック問合せとの統合が新たに導入されました。

Oracle Spatial and Graph は、10 年前の発表以来すべてのリリースにおいて、もっとも高度な空間/グラフ・データ管理機能をデータベース管理システムで実現してきました。この比類ない Oracle Database 12c のデータ管理機能を搭載した Oracle Spatial and Graph は、オンプレミスとクラウドの双方において、地理空間を利用する企業の空間/グラフ・システム向けの、世界をリードするデータベース管理プラットフォームであり続けます。

付録1:Oracle Spatial and Graph 12cの機能

Oracle Database 12c の位置情報機能

» 演算子の追加:DIFFERENCE、INTERSECTION、RELATE UNION、VOLUME、XOR

» 実 行 速 度 が 40 倍 の 演 算 子 : ANYINTERACT 、 INSIDE 、 DISTANCE 、 WITHINDISTANCE 、VALIDATEGEOMETRY

» 実行速度が向上したファンクション:RELATE(最大 5 倍の実行速度)、VALIDATE(最大 4 倍の実行速度)

空間機能

» Vector Performance Acceleration:問合せ速度と、CPU、メモリ、パーティショニングの使用効率が大幅に向上

» パラメトリック曲線(NURBS):自由曲線を数理的に精密に表現し、2D/3D データを正確に再現可能

» GeoRaster 仮想モザイク:1 つまたは複数の GeoRaster 表またはビューから得た、幾何補正の有無を問わない GeoRaster オブジェクトの大規模コレクションを、1 つの GeoRaster オブジェクトとして扱うことが可能

» GeoRaster ラスター代数:新しい分析アルゴリズムとより高速なパラレル・ラスター操作

» GeoRaster イメージ処理:処理機能が追加され、サーバー側でのパラレル処理が増加

» GeoRaster Java API:以前は PL/SQL API でのみサポートされていた API の追加

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» GeoRaster メタデータ・コンテンツ:デフォルトのアルファ・チャネルとピラミッド・レベルの指定、リサンプリングにおける解像度の単位とパラレル処理のサポート、ロードおよびエクスポート・オプションの追加

» GeoRaster GDAL ベースの ETL ウィザード:ETL ウィザード・ツールにより、GDAL を使用するさまざまなイメージ・ファイルとラスター・ファイルをロードおよびエクスポートする同時バッチ処理を自動化および有効化

» 3D:2 つの 3D 点の距離を計算する際に高さを考慮

» 3D:3D のテーマ、シーン、ビュー・フレームのメタデータ・ビューによる可視化と分析

» 3D:点群と TINS でピラミッド化をサポート

» 3D:点群から等高線を生成可能

» 3D:線形参照システムのファンクションで測地データをサポート

» ジオコーディング:住所の範囲がない国に対応した点ベースの住所ジオコーディングと、住所が複数の言語で表される国に対応した言語をサポート

» ルーティング・エンジン:トラック固有のルートなど、高度なルーティングの制限および条件

» 空間 Web サービス:Web Feature Server 1.1 向けの Web ベースの管理コンソール

» ネットワーク・データ・モデルのフィーチャ・モデル化:アプリケーション・オブジェクトのネットワーク要素への自動マッピング

» ネットワーク・データ・モデルの時間モデル化:時間属性をノードやリンクと関連付けて、ネットワーク分析の問合せで指定可能

» ネットワーク・データ・モデルのマルチモーダル輸送モデル化:最速パスを計算可能

RDF セマンティック・グラフ機能

» RDF ビュー:SPARQL 問合せのためにリレーショナル・データを RDF 形式で提示し、他のリンクト・データや RDF グラフと接続して企業データと関連付け、企業データの統合を推進

» データベースでの SPARQL 1.1:SEM_MATCH テーブル・ファンクションで SPARQL 1.1 をサポート

» RDF の空間データの保存/問合せ:OGC GeoSPARQL 規格をサポート

» 推論のセキュリティ:ラダーベース推論により、推論されたトリプルを適切なトリプルレベルのセキュリティでラベル付け

» 推論サポートの拡張:ユーザー定義の推論と完全な OWL 2 EL プロファイルをサポート

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» グラフ分析:SPARQL 1.1 のプロパティ・パス式により、あらゆる長さのパスでグラフ・パターンを検索

» インメモリ・グラフ分析:最短パス、到達可能性、コスト内、最近傍

» グラフのマイニングと統計:Oracle Advanced Analytics の Oracle Data Mining および Oracle R Enterprise をサポート

» SPARQL Gateway:Oracle Business Intelligence など、XML データ・ソースをサポートするツールで、SPARQL 問合せ結果を可視化して提供

付録2:Oracle Database 12c Release 2の新機能

新たなプロパティ・グラフ機能

» 頂点、エッジ、k/v プロパティを保存するためにスキーマを最適化

» グラフ・データで Java/Tinkerpop API、Groovy/Python スクリプト、SQL 問合せを使用し、開発が容易に

» ソーシャル・ネットワーク分析に対応した、40 もの強力なパラレルのインメモリ分析

» 分析は、Java で実行されるか、WebLogic、Tomcat、または Jetty のマルチユーザー、マルチグラフのインメモリ・アナリスト・サーバーで実行

» 分析結果を 2 部グラフ、フィルタ・グラフ、無向グラフ、ソート・グラフ、シンプルなエッジ出力グラフに抽出可能

» Oracle Text、Apache Lucene、または SolrCloud(オプション)でプロパティのテキスト索引付けを使用し、頂点とエッジをすばやく取得

» プロパティの空間データで空間のフィルタリング、索引付け、および分析関数を実行

» プロパティ・グラフ・ビューを使用して RDF グラフのプロパティ・グラフ分析を実行

» 最適化された Oracle フラット・ファイル形式と豊富なデータ型を使用し、リレーショナル・データと CSV データからパラレルのバルク・ロードを実行

» オープン・ソース・フォーマットの GraphSON、GraphML、および GML をサポート

» Groovy 管理コンソール

» グラフとグラフ要素のセキュリティを確保

新たな空間機能

» GeoJSON のサポートと REST API:最新の開発環境で空間データを利用

» 位置データ・サービスの強化:API を地理階層および場所名データセットと組み合わせることで、非構造化テキスト・レコードの大規模なコレクションを位置タグを使用して分析のために検索して分類

» ポイント・データの空間索引最適化:混合 B ツリー索引により、ポイントのみのデータにおける索引の更新および作成パフォーマンスを向上

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34 | Oracle Database 12c Release 2を使用した空間およびグラフ分析

» 空間索引の向上:すべての索引パーティショニング方式とシステムによって管理される索引をサポートすることで、パフォーマンスを向上し、管理を簡素化

» マップの可視化:HTML5 ベースのマッシュアップ・コンポーネントにより、Oracle Spatial and Graph の地理データ、または外部サービスからの地理データを空間的に可視化(JEE コンテナ、または Oracle Java Cloud Service にデプロイする必要がある)

» 位置追跡サーバーにより、対象地域内または対象地域外へのオブジェクトの移動を、物流および IOT のために大規模に追跡

» 空間 Web サービスで、OGC Web Coverage Service(WCS)2.0.1 と Catalog Services for the Web(CSW)2.0.2 をサポート

» 空間 Web サービス:WFS、WCS、CSW の統合フレームワークと統合管理コンソールを提供

» GeoRaster 圧縮:ネイティブな JPEG 2000 圧縮のサポート

» GeoRaster モザイク:高度な色バランスによるモザイク処理

» GeoRaster イメージ処理:より多くの処理操作と変換操作

» GeoRaster ラスター代数:25 以上の新たな演算子と関数

» GeoRaster Java API:全く新しいサーバー側関数とプロシージャ

» GeoRaster の新たなアルゴリズム、カスタマイズ可能なメモリ制御、およびパラレル処理により、パフォーマンスが向上

» GeoRaster ETL ウィザードと GeoRaster ビューアが拡張され、1 つのツールに統合

» ネットワーク・データ・モデルのフィーチャ編集モデル:フィーチャのモデル化機能を拡張(Java Swing コンポーネントと PL/SQL API を使用したフィーチャの可視化と操作、および既存のネットワーク上でのフィーチャの定義)

新たな RDF セマンティック・グラフ機能

» SPARQL1.1 の更新操作と RDF ORDER BY 問合せオプション

» プロパティ・グラフ・データの RDF ビューと RDF データのプロパティ・グラフ・ビュー

» SEM_APIS.SPARQL_TO_SQL 関数による SPARQL 問合せの SQL 変換

» sameCanonTerm、textScore など、SPARQL 問合せの orardf 関数

» Oracle Flashback Query のサポート

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たは登録商標です。UNIX は、The Open Group の登録商標です。0116

Oracle Database 12c Release 2 を使用した空間およびグラフ分析

2016 年 11 月

著者:William Beauregard および Siva Ravada

共著者:Jean Ihm