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  • をサポートしてきました。例えば、踏切監視

    など鉄道系システムのほか、同社の会員向

    け情報の管理やコールセンターの業務を支

    援する営業系システムも提供しています。

     近畿エリアの列車運行にかかわる現場

    などで使われる「指令記録配信システム」も

    日本ユニシスが開発をサポートしたソリュー

    ションの1つです。「指令記録」とは、列車の

    運行に何らかのトラブル(列車が遅延する

    事象)が発生した時、その路線を管轄する

    指令所から、各駅や乗務員区所、車両区所

    などの関係拠点に送られる運転取り扱い

    の指示文書です。ダイヤを正常に修復する

    オペレーションにおいて、この指令記録は情

    報伝達の根幹を担っています。

     多くの社員の協力で成り立つ鉄道の運

    行業務では、トラブルが発生した時に「現場

    がバラバラに動かない」ことが鉄則。駅員や

    乗務員など現場の社員は、指令所の担当者

    (指令員)の運転計画に沿って行動すること

    が基本ルールとして定められています。鉄道

    本部運輸部において課長代理を務める久

    保和正氏は、次のように説明します。

    「指令所の指示は電話や列車無線でも伝え

    ますが、緊急を要する時にすべての関係拠

    点に電話している余裕はありません。トラ

    ブル発生時には、担当の指令員が状況を総

    合的に判断して、関連する全列車の動き方

    や各駅の対応方法に関する計画を立てま

    す。これに基づいて関係拠点すべてに各々の

    運転取り扱いを指示する指令記録を作成

    して送り、各拠点はこれを受け取って初め

    てダイヤ修復やお客様へのご案内のための

    行動に移れるのです」

     こうした事情から、近畿エリアを管轄す

    る大阪総合指令所だけでも、1年間に配信

    される指令記録の数は約6万枚にも上って

    います。

    「例えば、踏切の降下直前に通行者が横断

    したことなどで列車が一時停止したといっ

    たトラブルの場合でも、後続の列車や沿線

    の各駅、支線での運行などに影響する場合

    があるので、各拠点へそれぞれの運転取り

    扱いを指示する指令記録を送る必要があ

    ります。台風や大雨で広範囲にダイヤ乱れ

    が発生した時などは、数百枚の指令記録を

    配信することもあります」(久保氏)

     JR西日本様では、6年前までこの指令

    記録をファックスで配信していました。同社

    は専用の高速ファックス回線網を整備して

    おり、一般の通信回線を使うのに比べて遥か

    に速く文書を配信できる環境を整備してい

    ます。しかし、自然災害などで多くの路線に

    ダイヤ乱れが発生し、膨大な量の指令記録

    を一度に送らなければならないケースでは、

    高速ファックス網でも対応し切れなかった

    と藪上氏は言います。

    「何百枚も指令記録を送るような大規模輸

    送障害時には、ファックスが相手先に届くの

    に数時間かかることもしばしば。現場もお

    客様のご不便を最小限に抑えたいと指示

    を待っているのですが、指令記録が手元に

    届くまでは行動に移れません。何時間も

    待っている間に状況が変わってしまい、指令

    所側でも再度、計画を練り直すという悪循

    環も起こっていました」

     また、指令記録による指示は、受領駅な

    どからそれを受け取ったという受領連絡が

    あって完了となりますが、ファックス配信の

    遅延は受領連絡の確認業務にも支障をき

    たしていました。

    「大規模な輸送障害になると、受領連絡の

    電話が何百本と指令所にかかってきて、それ

    を受けるためだけに指令員が張り付かなけ

    ればならないこともありました」(藪上氏)

     指令記録の配信におけるこうした問題点

    を解決すべく、JR西日本様はJ-W

    ITS

    と連携して新システムの開発プロジェクトを

    スタートさせました。

    「指令記録は、路線や列車の動き方を示す

    番号や記号などを使って、指令員が専用の

    用紙に手で記入します。これを現場に送り、

    受領されたことを指令所側で確認します。

    従来からの業務フローは変えずに、配信のス

    ピードと伝達の確実性を高めることが、プ

    ロジェクトの目的でした」とIT本部で課長

    代理を務める後藤直樹氏は説明します。

     プロジェクトを進めるにあたっては、

    『Outlook

    』を用いた電子メールシステムを開

    発し、指令所と一部の重要拠点間で1年間

    の試行運用を実施しました。これは指令記

    録をスキャナで画像に変換し、電子メールに

    画像を添付してイントラネットで各拠点に

    配信するもので、受信側ではメールが着信

    するとプリンタに添付画像が自動で出力さ

    れる仕組みでした。

     この試行システムの運用によって指令業

    務をある程度効率化できた一方で、解決す

    べきいくつかの問題が残されていることが

    確認されたと後藤氏は言います。

    「例えば、指令所では、メールの配信先を

    Outlook

    上で1つひとつ選ばなければなら

    ず、メールへの画像添付も手作業だったた

    め、操作に時間がかかるだけでなく、配信

    先の選択漏れや添付ミスなどのリスクもあ

    りました。また、用紙切れなどで指令記録

    をプリンタ出力できなかった場合、配信側・

    受信側ともそれに気づくまでは動きがとれ

    ませんでした。さらに、受領連絡については

    従来どおり電話を使っていたので、それに

    かかる業務負荷も減りませんでした」

     プロジェクトでは、これらの問題点を現場

    へのヒアリングによって確認し、めざすべき

    新システムの機能要件を整理。2009年

    8月に日本ユニシスに開発を依頼しました。

     試行システムの運用によって要件を整理

    していたこともあり、新しいシステムの開発

    工程は非常にスムーズに進んだとJ-W

    ITS

    北林佳浩氏は振り返ります。

    「指令業務に関する専門用語や記号を理解

    してもらうなど、日本ユニシスさんにはいろ

    いろと苦労をかけましたが、ユーザーを交

    えた忌憚のないディスカッションを通してこ

    ちらの要望を伝え、求めるシステムを短期

    間で開発してもらいました」

     1987年、旧国鉄の分割民営化によって

    誕生した西日本旅客鉄道(JR西日本)様

    は、北陸・近畿・中国・九州北部地域の2府

    16県にわたる広いエリアで事業を展開してい

    ます。鉄道事業では、2015年3月に全線

    開業40周年を迎えた山陽新幹線、同じく3

    月に開業した北陸新幹線(金沢〜上越妙高

    間)、京阪神の都市圏を結ぶ「アーバンネット

    ワーク」をはじめ、金沢、岡山、広島など各地

    で都市間輸送や通勤・通学輸送を担い、毎日

    約500万人の乗客に利用されています。

     また、広域の鉄道ネットワークと1200

    以上の駅を活用して、流通、不動産、ホテル

    など、鉄道以外の領域でも事業の拡大を

    図っています。2015年4月には大阪駅

    の大規模商業施設「O

    SAK

    AST

    AT

    ION

    C

    ITY

    」に新館「LU

    CU

    A1100

    (ルクアイー

    レ)」がオープンし、国内最大級の駅型商業

    モールとして活況を呈しています。

     さらに、沿線エリアでのリハビリデイサー

    ビス事業や、鉄道との相乗効果が高い駅直

    結型カーシェアリング事業といった生活関

    連サービスの拡充にも力を入れており、多

    角的な事業展開によって地域の活性化と価

    値向上に貢献しています。

     「安全の確保は公共交通機関としての最

    大の使命です。当社グループは5カ年計画

    のもと、大規模な自然災害への対処やホー

    ムの安全性向上、労働災害の防止など、さ

    まざまな取り組みを進めています」と話す

    のは、鉄道本部運輸部で担当課長を務め

    る藪上政樹氏です。

     鉄道の安全管理においてはITも大き

    な役割を担っています。各列車の運行や信

    号・ポイントなどを一元的に管理する「運行

    管理システム」をはじめ、JR西日本様では

    車両管理や輸送計画管理、施設・保線管

    理、送電設備管理など多岐にわたる部門に

    システムを導入。鉄道輸送における安全性

    の向上に取り組んでいます。また、顧客サー

    ビスの面でも、ICカード乗車券や運行情

    報のWeb配信、各駅での電光表示など、

    ITを活用した多様なサービスを提供し

    て、利用者の満足度向上につなげています。

    「当社のCS調査を見てもお客様の満足度

    は年々高まっています。近年は、訪日外国人

    のお客様が急増していることから、駅構内

    の案内表示を多言語化するとともに、拠点

    駅には外国人案内スタッフを配置していま

    す」(藪上氏)

     事業推進におけるITの重要度が高ま

    るなか、同社では2007年にそれまで総

    合企画本部にあったIT推進室を「IT本

    部」として独立させ、グループ企業のJR西

    日本ITソリューションズ(J-W

    ITS

    )様との

    連携のもとで、より戦略的かつ機動的に

    ITを活用した施策を推進しています。

     日本ユニシスも、こうした同社の取り組み

     こうして完成した「指令記録配信システ

    ム」は、2010年4月から運用が開始さ

    れました。同システムでは、スキャナで読み

    込んだ指令記録が配信側パソコン画面にア

    イコン表示され、画面上のボタンで記録種

    別を割り当て、相手先を選択するだけで配

    信が完了します。配信先は路線や関係拠点

    ごとにグループ化されているので、配信ミス

    や漏れの心配はありません。また、受信側

    のパソコン画面には「受領」ボタンが表示さ

    れており、指令記録のプリンタ出力を確認

    後に受領者名を入力し、ボタンを押すだけ

    で受領連絡も完了します。

    「受信先で受領ボタンが押されると指令所の

    配信側パソコン画面に『○』マークが表示され

    るので、受領されたことが瞬時に確認でき

    ます。万一、用紙切れなどで出力できなかっ

    た場合は、『×

    』マークが表示され、状態が確

    認できる仕組みになっています」(北林氏)

     このシステムを運用するようになって以来、

    指令所でも配信先の各拠点でも業務効率が

    格段に向上していると藪上氏は言います。

    「指令所では従来のようにファックスの前に

    行列ができたり、受領電話の応答に張り付

    きになったりする必要がなくなって、スタッ

    フが本来業務に集中できるようになりまし

    た。大規模な輸送障害が発生した時の待機

    時間も大きく短縮し、ダイヤ修復に向けた

    的確な行動に素早く移れるので、お客様の

    不便を最小限に抑えられます。タイムロス

    による計画のやり直しも大幅に減ったと聞

    いています」

     また、後藤氏も次のように話します。

    「とくに、かつてのファックス時代を知る駅な

    どの現場社員からは『便利なものをつくって

    くれた』と高い評価をもらっています」

     JR西日本様では、指令記録配信システ

    ムのハードウェア交換を機に、システム改良に

    ついての要望を現場にヒアリングしました。

    「毎日使っていると操作性や機能面などで、

    改善の要望があるのではないかと思っていた

    のですが、結果は『現状で満足している』と

    いう回答でした。ヒアリングを通して、それ

    だけ完成度の高いシステムを当初から構築

    できたのだと実感しています」(後藤氏)

     一方、指令業務を担当する久保氏は次の

    ように話します。

    「唯一残っているアナログ業務は、指令記録の

    手書きですが、デジタル化は当分難しいと考

    えています。指令員は培った知識や経験に基

    づいて臨機応変に最適な計画を立て、専門の

    記号を使って指令記録をスピーディに作成

    しています。この業務を仮にプログラム化で

    きたとしても、おそらく『手書きの方が速い』

    ということになるのではないかと思います」

     そうしたなかで現在進めているのは、指

    令記録配信システムを他拠点に展開してい

    くための準備です。

    「京阪神以外のエリアは今も指令記録の配

    信にファックスを使っていますが、大阪から

    異動した社員などから評判が伝わって隣接

    地域などで導入の要望が出始めています。

    運行本数の少ない路線では現状の高速

    ファックスでも十分対応できるので、一斉に全

    エリアに導入する予定はまだないと聞いてい

    ますが、希望があれば随時切り替えられる

    よう準備を進めているところです」(後藤氏)

     最後に後藤氏は、日本ユニシスへの評価を

    語ってくれました。

    「エンドユーザーの使い勝手が非常に良いシ

    ステムを、スムーズに構築してくれたことに

    感謝しています。今後も培った知見によって

    当社グループのIT活用の高度化に役立つ

    情報提供や提案を期待しています」

     藪上氏も日本ユニシスへの期待を語ります。

    「指令記録配信システムは、アナログがあた

    りまえと考えていた指令業務をデジタルで

    効率化できることを気づかせてくれまし

    た。そうした領域はきっとまだまだあるは

    ず。これからも日本ユニシスさんの技術力と

    経験を活かして、安全性や業務効率を大き

    く高める画期的なソリューションをどん

    どん提案してもらいたいと思います」

    広域鉄道ネットワークを基盤に

    多様な領域で事業を展開

    戦略的・機動的なIT活用で

    鉄道の安全と快適を実現

    CASE STUDY

    C u s t o m e r S o l u t i o n s

    PROFILEPROFILE

    設立:1987年4月1日

    本社所在地:大阪市北区芝田2-4-24

    資本金:1,000億円

    事業内容:運輸業、流通業、不動産業ほか

    西日本旅客鉄道株式会社

    広域鉄道網で人々の生活を支える西日本旅客鉄道(JR西日本)様。

    同社は日本ユニシスのサポートによって、京阪神の列車運行をつかさどる

    大阪総合指令所とその管轄拠点の間に「指令記録配信システム」を構築。

    指令所の業務効率を高めると同時に、指示伝達を高速化・確実化し、

    トラブルにより列車に遅延が発生した時も管轄エリア内の各現場が

    迅速にダイヤ修復作業を実施できる体制を整備しています。

    「指令記録配信システム」の構築で

    指令所でのオペレーション負荷軽減と

    各現場での迅速なダイヤ修復作業を実現。

    西日本旅客鉄道株式会社 様

    INTERVIEWEES

    藪上 政樹 氏西日本旅客鉄道株式会社鉄道本部 運輸部 指令業務課担当課長

    久保 和正 氏西日本旅客鉄道株式会社鉄道本部 運輸部 指令業務課課長代理

    後藤 直樹 氏西日本旅客鉄道株式会社IT本部 IT計画(運輸系)課長代理

    北林 佳浩 氏株式会社JR西日本ITソリューションズ鉄道ソリューション本部鉄道情報ソリューション部 開発保全Ⅰグループ

    17 16Club Unisys + PLUS VOL.53Club Unisys + PLUS VOL.53

  • 指令記録配信システムの概要図

    指令所 システムセンター

    指令所

    IP/VPN受信拠点

    配信端末システムサーバー

    指令記録配信サーバー

    イントラネット受信拠点

    受信端末

    中央制御装置

    交換網

    高速ファックス網

    交換網受信拠点

    高速ファックス網受信拠点

    ファックス配信サーバー

    ファックス送信

    IP送信

    受信端末指令記録 指令記録 指令記録

    指令記録

    指令記録中央制御装置 高速ファックス網高速ファックス網高速ファックス網高速ファックス網受信拠点指令記録

    IP送信不可時の代替手段として設置

    指令記録配信システム

    高速ファックスシステム

    をサポートしてきました。例えば、踏切監視

    など鉄道系システムのほか、同社の会員向

    け情報の管理やコールセンターの業務を支

    援する営業系システムも提供しています。

     近畿エリアの列車運行にかかわる現場

    などで使われる「指令記録配信システム」も

    日本ユニシスが開発をサポートしたソリュー

    ションの1つです。「指令記録」とは、列車の

    運行に何らかのトラブル(列車が遅延する

    事象)が発生した時、その路線を管轄する

    指令所から、各駅や乗務員区所、車両区所

    などの関係拠点に送られる運転取り扱い

    の指示文書です。ダイヤを正常に修復する

    オペレーションにおいて、この指令記録は情

    報伝達の根幹を担っています。

     多くの社員の協力で成り立つ鉄道の運

    行業務では、トラブルが発生した時に「現場

    がバラバラに動かない」ことが鉄則。駅員や

    乗務員など現場の社員は、指令所の担当者

    (指令員)の運転計画に沿って行動すること

    が基本ルールとして定められています。鉄道

    本部運輸部において課長代理を務める久

    保和正氏は、次のように説明します。

    「指令所の指示は電話や列車無線でも伝え

    ますが、緊急を要する時にすべての関係拠

    点に電話している余裕はありません。トラ

    ブル発生時には、担当の指令員が状況を総

    合的に判断して、関連する全列車の動き方

    や各駅の対応方法に関する計画を立てま

    す。これに基づいて関係拠点すべてに各々の

    運転取り扱いを指示する指令記録を作成

    して送り、各拠点はこれを受け取って初め

    てダイヤ修復やお客様へのご案内のための

    行動に移れるのです」

     こうした事情から、近畿エリアを管轄す

    る大阪総合指令所だけでも、1年間に配信

    される指令記録の数は約6万枚にも上って

    います。

    「例えば、踏切の降下直前に通行者が横断

    したことなどで列車が一時停止したといっ

    たトラブルの場合でも、後続の列車や沿線

    の各駅、支線での運行などに影響する場合

    があるので、各拠点へそれぞれの運転取り

    扱いを指示する指令記録を送る必要があ

    ります。台風や大雨で広範囲にダイヤ乱れ

    が発生した時などは、数百枚の指令記録を

    配信することもあります」(久保氏)

     JR西日本様では、6年前までこの指令

    記録をファックスで配信していました。同社

    は専用の高速ファックス回線網を整備して

    おり、一般の通信回線を使うのに比べて遥か

    に速く文書を配信できる環境を整備してい

    ます。しかし、自然災害などで多くの路線に

    ダイヤ乱れが発生し、膨大な量の指令記録

    を一度に送らなければならないケースでは、

    高速ファックス網でも対応し切れなかった

    と藪上氏は言います。

    「何百枚も指令記録を送るような大規模輸

    送障害時には、ファックスが相手先に届くの

    に数時間かかることもしばしば。現場もお

    客様のご不便を最小限に抑えたいと指示

    を待っているのですが、指令記録が手元に

    届くまでは行動に移れません。何時間も

    待っている間に状況が変わってしまい、指令

    所側でも再度、計画を練り直すという悪循

    環も起こっていました」

     また、指令記録による指示は、受領駅な

    どからそれを受け取ったという受領連絡が

    あって完了となりますが、ファックス配信の

    遅延は受領連絡の確認業務にも支障をき

    たしていました。

    「大規模な輸送障害になると、受領連絡の

    電話が何百本と指令所にかかってきて、それ

    を受けるためだけに指令員が張り付かなけ

    ればならないこともありました」(藪上氏)

     指令記録の配信におけるこうした問題点

    を解決すべく、JR西日本様はJ-W

    ITS

    と連携して新システムの開発プロジェクトを

    スタートさせました。

    「指令記録は、路線や列車の動き方を示す

    番号や記号などを使って、指令員が専用の

    用紙に手で記入します。これを現場に送り、

    受領されたことを指令所側で確認します。

    従来からの業務フローは変えずに、配信のス

    ピードと伝達の確実性を高めることが、プ

    ロジェクトの目的でした」とIT本部で課長

    代理を務める後藤直樹氏は説明します。

     プロジェクトを進めるにあたっては、

    『Outlook

    』を用いた電子メールシステムを開

    発し、指令所と一部の重要拠点間で1年間

    の試行運用を実施しました。これは指令記

    録をスキャナで画像に変換し、電子メールに

    画像を添付してイントラネットで各拠点に

    配信するもので、受信側ではメールが着信

    するとプリンタに添付画像が自動で出力さ

    れる仕組みでした。

     この試行システムの運用によって指令業

    務をある程度効率化できた一方で、解決す

    べきいくつかの問題が残されていることが

    確認されたと後藤氏は言います。

    「例えば、指令所では、メールの配信先を

    Outlook

    上で1つひとつ選ばなければなら

    ず、メールへの画像添付も手作業だったた

    め、操作に時間がかかるだけでなく、配信

    先の選択漏れや添付ミスなどのリスクもあ

    りました。また、用紙切れなどで指令記録

    をプリンタ出力できなかった場合、配信側・

    受信側ともそれに気づくまでは動きがとれ

    ませんでした。さらに、受領連絡については

    従来どおり電話を使っていたので、それに

    かかる業務負荷も減りませんでした」

     プロジェクトでは、これらの問題点を現場

    へのヒアリングによって確認し、めざすべき

    新システムの機能要件を整理。2009年

    8月に日本ユニシスに開発を依頼しました。

     試行システムの運用によって要件を整理

    していたこともあり、新しいシステムの開発

    工程は非常にスムーズに進んだとJ-W

    ITS

    北林佳浩氏は振り返ります。

    「指令業務に関する専門用語や記号を理解

    してもらうなど、日本ユニシスさんにはいろ

    いろと苦労をかけましたが、ユーザーを交

    えた忌憚のないディスカッションを通してこ

    ちらの要望を伝え、求めるシステムを短期

    間で開発してもらいました」

     1987年、旧国鉄の分割民営化によって

    誕生した西日本旅客鉄道(JR西日本)様

    は、北陸・近畿・中国・九州北部地域の2府

    16県にわたる広いエリアで事業を展開してい

    ます。鉄道事業では、2015年3月に全線

    開業40周年を迎えた山陽新幹線、同じく3

    月に開業した北陸新幹線(金沢〜上越妙高

    間)、京阪神の都市圏を結ぶ「アーバンネット

    ワーク」をはじめ、金沢、岡山、広島など各地

    で都市間輸送や通勤・通学輸送を担い、毎日

    約500万人の乗客に利用されています。

     また、広域の鉄道ネットワークと1200

    以上の駅を活用して、流通、不動産、ホテル

    など、鉄道以外の領域でも事業の拡大を

    図っています。2015年4月には大阪駅

    の大規模商業施設「O

    SAK

    AST

    AT

    ION

    C

    ITY

    」に新館「LU

    CU

    A1100

    (ルクアイー

    レ)」がオープンし、国内最大級の駅型商業

    モールとして活況を呈しています。

     さらに、沿線エリアでのリハビリデイサー

    ビス事業や、鉄道との相乗効果が高い駅直

    結型カーシェアリング事業といった生活関

    連サービスの拡充にも力を入れており、多

    角的な事業展開によって地域の活性化と価

    値向上に貢献しています。

     「安全の確保は公共交通機関としての最

    大の使命です。当社グループは5カ年計画

    のもと、大規模な自然災害への対処やホー

    ムの安全性向上、労働災害の防止など、さ

    まざまな取り組みを進めています」と話す

    のは、鉄道本部運輸部で担当課長を務め

    る藪上政樹氏です。

     鉄道の安全管理においてはITも大き

    な役割を担っています。各列車の運行や信

    号・ポイントなどを一元的に管理する「運行

    管理システム」をはじめ、JR西日本様では

    車両管理や輸送計画管理、施設・保線管

    理、送電設備管理など多岐にわたる部門に

    システムを導入。鉄道輸送における安全性

    の向上に取り組んでいます。また、顧客サー

    ビスの面でも、ICカード乗車券や運行情

    報のWeb配信、各駅での電光表示など、

    ITを活用した多様なサービスを提供し

    て、利用者の満足度向上につなげています。

    「当社のCS調査を見てもお客様の満足度

    は年々高まっています。近年は、訪日外国人

    のお客様が急増していることから、駅構内

    の案内表示を多言語化するとともに、拠点

    駅には外国人案内スタッフを配置していま

    す」(藪上氏)

     事業推進におけるITの重要度が高ま

    るなか、同社では2007年にそれまで総

    合企画本部にあったIT推進室を「IT本

    部」として独立させ、グループ企業のJR西

    日本ITソリューションズ(J-W

    ITS

    )様との

    連携のもとで、より戦略的かつ機動的に

    ITを活用した施策を推進しています。

     日本ユニシスも、こうした同社の取り組み

     こうして完成した「指令記録配信システ

    ム」は、2010年4月から運用が開始さ

    れました。同システムでは、スキャナで読み

    込んだ指令記録が配信側パソコン画面にア

    イコン表示され、画面上のボタンで記録種

    別を割り当て、相手先を選択するだけで配

    信が完了します。配信先は路線や関係拠点

    ごとにグループ化されているので、配信ミス

    や漏れの心配はありません。また、受信側

    のパソコン画面には「受領」ボタンが表示さ

    れており、指令記録のプリンタ出力を確認

    後に受領者名を入力し、ボタンを押すだけ

    で受領連絡も完了します。

    「受信先で受領ボタンが押されると指令所の

    配信側パソコン画面に『○』マークが表示され

    るので、受領されたことが瞬時に確認でき

    ます。万一、用紙切れなどで出力できなかっ

    た場合は、『×

    』マークが表示され、状態が確

    認できる仕組みになっています」(北林氏)

     このシステムを運用するようになって以来、

    指令所でも配信先の各拠点でも業務効率が

    格段に向上していると藪上氏は言います。

    「指令所では従来のようにファックスの前に

    行列ができたり、受領電話の応答に張り付

    きになったりする必要がなくなって、スタッ

    フが本来業務に集中できるようになりまし

    た。大規模な輸送障害が発生した時の待機

    時間も大きく短縮し、ダイヤ修復に向けた

    的確な行動に素早く移れるので、お客様の

    不便を最小限に抑えられます。タイムロス

    による計画のやり直しも大幅に減ったと聞

    いています」

     また、後藤氏も次のように話します。

    「とくに、かつてのファックス時代を知る駅な

    どの現場社員からは『便利なものをつくって

    くれた』と高い評価をもらっています」

     JR西日本様では、指令記録配信システ

    ムのハードウェア交換を機に、システム改良に

    ついての要望を現場にヒアリングしました。

    「毎日使っていると操作性や機能面などで、

    改善の要望があるのではないかと思っていた

    のですが、結果は『現状で満足している』と

    いう回答でした。ヒアリングを通して、それ

    だけ完成度の高いシステムを当初から構築

    できたのだと実感しています」(後藤氏)

     一方、指令業務を担当する久保氏は次の

    ように話します。

    「唯一残っているアナログ業務は、指令記録の

    手書きですが、デジタル化は当分難しいと考

    えています。指令員は培った知識や経験に基

    づいて臨機応変に最適な計画を立て、専門の

    記号を使って指令記録をスピーディに作成

    しています。この業務を仮にプログラム化で

    きたとしても、おそらく『手書きの方が速い』

    ということになるのではないかと思います」

     そうしたなかで現在進めているのは、指

    令記録配信システムを他拠点に展開してい

    くための準備です。

    「京阪神以外のエリアは今も指令記録の配

    信にファックスを使っていますが、大阪から

    異動した社員などから評判が伝わって隣接

    地域などで導入の要望が出始めています。

    運行本数の少ない路線では現状の高速

    ファックスでも十分対応できるので、一斉に全

    エリアに導入する予定はまだないと聞いてい

    ますが、希望があれば随時切り替えられる

    よう準備を進めているところです」(後藤氏)

     最後に後藤氏は、日本ユニシスへの評価を

    語ってくれました。

    「エンドユーザーの使い勝手が非常に良いシ

    ステムを、スムーズに構築してくれたことに

    感謝しています。今後も培った知見によって

    当社グループのIT活用の高度化に役立つ

    情報提供や提案を期待しています」

     藪上氏も日本ユニシスへの期待を語ります。

    「指令記録配信システムは、アナログがあた

    りまえと考えていた指令業務をデジタルで

    効率化できることを気づかせてくれまし

    た。そうした領域はきっとまだまだあるは

    ず。これからも日本ユニシスさんの技術力と

    経験を活かして、安全性や業務効率を大き

    く高める画期的なソリューションをどん

    どん提案してもらいたいと思います」

    電子メールシステムの試行で

    必要な機能要件を析出し

    日本ユニシスに開発を依頼

    現場、指令員のオペレーションの効率化と

    迅速なダイヤ修復に大きく貢献

    CASE STUDY

    C u s t o m e r S o l u t i o n s

    西日本旅客鉄道株式会社 様

    トラブル発生時における

    各拠点への運転取り扱いの指示伝達を

    担う「指令記録配信システム」

    大規模輸送障害時における

    ファックス配信の限界

    19 18Club Unisys + PLUS VOL.53Club Unisys + PLUS VOL.53

  • をサポートしてきました。例えば、踏切監視

    など鉄道系システムのほか、同社の会員向

    け情報の管理やコールセンターの業務を支

    援する営業系システムも提供しています。

     近畿エリアの列車運行にかかわる現場

    などで使われる「指令記録配信システム」も

    日本ユニシスが開発をサポートしたソリュー

    ションの1つです。「指令記録」とは、列車の

    運行に何らかのトラブル(列車が遅延する

    事象)が発生した時、その路線を管轄する

    指令所から、各駅や乗務員区所、車両区所

    などの関係拠点に送られる運転取り扱い

    の指示文書です。ダイヤを正常に修復する

    オペレーションにおいて、この指令記録は情

    報伝達の根幹を担っています。

     多くの社員の協力で成り立つ鉄道の運

    行業務では、トラブルが発生した時に「現場

    がバラバラに動かない」ことが鉄則。駅員や

    乗務員など現場の社員は、指令所の担当者

    (指令員)の運転計画に沿って行動すること

    が基本ルールとして定められています。鉄道

    本部運輸部において課長代理を務める久

    保和正氏は、次のように説明します。

    「指令所の指示は電話や列車無線でも伝え

    ますが、緊急を要する時にすべての関係拠

    点に電話している余裕はありません。トラ

    ブル発生時には、担当の指令員が状況を総

    合的に判断して、関連する全列車の動き方

    や各駅の対応方法に関する計画を立てま

    す。これに基づいて関係拠点すべてに各々の

    運転取り扱いを指示する指令記録を作成

    して送り、各拠点はこれを受け取って初め

    てダイヤ修復やお客様へのご案内のための

    行動に移れるのです」

     こうした事情から、近畿エリアを管轄す

    る大阪総合指令所だけでも、1年間に配信

    される指令記録の数は約6万枚にも上って

    います。

    「例えば、踏切の降下直前に通行者が横断

    したことなどで列車が一時停止したといっ

    たトラブルの場合でも、後続の列車や沿線

    の各駅、支線での運行などに影響する場合

    があるので、各拠点へそれぞれの運転取り

    扱いを指示する指令記録を送る必要があ

    ります。台風や大雨で広範囲にダイヤ乱れ

    が発生した時などは、数百枚の指令記録を

    配信することもあります」(久保氏)

     JR西日本様では、6年前までこの指令

    記録をファックスで配信していました。同社

    は専用の高速ファックス回線網を整備して

    おり、一般の通信回線を使うのに比べて遥か

    に速く文書を配信できる環境を整備してい

    ます。しかし、自然災害などで多くの路線に

    ダイヤ乱れが発生し、膨大な量の指令記録

    を一度に送らなければならないケースでは、

    高速ファックス網でも対応し切れなかった

    と藪上氏は言います。

    「何百枚も指令記録を送るような大規模輸

    送障害時には、ファックスが相手先に届くの

    に数時間かかることもしばしば。現場もお

    客様のご不便を最小限に抑えたいと指示

    を待っているのですが、指令記録が手元に

    届くまでは行動に移れません。何時間も

    待っている間に状況が変わってしまい、指令

    所側でも再度、計画を練り直すという悪循

    環も起こっていました」

     また、指令記録による指示は、受領駅な

    どからそれを受け取ったという受領連絡が

    あって完了となりますが、ファックス配信の

    遅延は受領連絡の確認業務にも支障をき

    たしていました。

    「大規模な輸送障害になると、受領連絡の

    電話が何百本と指令所にかかってきて、それ

    を受けるためだけに指令員が張り付かなけ

    ればならないこともありました」(藪上氏)

     指令記録の配信におけるこうした問題点

    を解決すべく、JR西日本様はJ-W

    ITS

    と連携して新システムの開発プロジェクトを

    スタートさせました。

    「指令記録は、路線や列車の動き方を示す

    番号や記号などを使って、指令員が専用の

    用紙に手で記入します。これを現場に送り、

    受領されたことを指令所側で確認します。

    従来からの業務フローは変えずに、配信のス

    ピードと伝達の確実性を高めることが、プ

    ロジェクトの目的でした」とIT本部で課長

    代理を務める後藤直樹氏は説明します。

     プロジェクトを進めるにあたっては、

    『Outlook

    』を用いた電子メールシステムを開

    発し、指令所と一部の重要拠点間で1年間

    の試行運用を実施しました。これは指令記

    録をスキャナで画像に変換し、電子メールに

    画像を添付してイントラネットで各拠点に

    配信するもので、受信側ではメールが着信

    するとプリンタに添付画像が自動で出力さ

    れる仕組みでした。

     この試行システムの運用によって指令業

    務をある程度効率化できた一方で、解決す

    べきいくつかの問題が残されていることが

    確認されたと後藤氏は言います。

    「例えば、指令所では、メールの配信先を

    Outlook

    上で1つひとつ選ばなければなら

    ず、メールへの画像添付も手作業だったた

    め、操作に時間がかかるだけでなく、配信

    先の選択漏れや添付ミスなどのリスクもあ

    りました。また、用紙切れなどで指令記録

    をプリンタ出力できなかった場合、配信側・

    受信側ともそれに気づくまでは動きがとれ

    ませんでした。さらに、受領連絡については

    従来どおり電話を使っていたので、それに

    かかる業務負荷も減りませんでした」

     プロジェクトでは、これらの問題点を現場

    へのヒアリングによって確認し、めざすべき

    新システムの機能要件を整理。2009年

    8月に日本ユニシスに開発を依頼しました。

     試行システムの運用によって要件を整理

    していたこともあり、新しいシステムの開発

    工程は非常にスムーズに進んだとJ-W

    ITS

    北林佳浩氏は振り返ります。

    「指令業務に関する専門用語や記号を理解

    してもらうなど、日本ユニシスさんにはいろ

    いろと苦労をかけましたが、ユーザーを交

    えた忌憚のないディスカッションを通してこ

    ちらの要望を伝え、求めるシステムを短期

    間で開発してもらいました」

     1987年、旧国鉄の分割民営化によって

    誕生した西日本旅客鉄道(JR西日本)様

    は、北陸・近畿・中国・九州北部地域の2府

    16県にわたる広いエリアで事業を展開してい

    ます。鉄道事業では、2015年3月に全線

    開業40周年を迎えた山陽新幹線、同じく3

    月に開業した北陸新幹線(金沢〜上越妙高

    間)、京阪神の都市圏を結ぶ「アーバンネット

    ワーク」をはじめ、金沢、岡山、広島など各地

    で都市間輸送や通勤・通学輸送を担い、毎日

    約500万人の乗客に利用されています。

     また、広域の鉄道ネットワークと1200

    以上の駅を活用して、流通、不動産、ホテル

    など、鉄道以外の領域でも事業の拡大を

    図っています。2015年4月には大阪駅

    の大規模商業施設「O

    SAK

    AST

    AT

    ION

    C

    ITY

    」に新館「LU

    CU

    A1100

    (ルクアイー

    レ)」がオープンし、国内最大級の駅型商業

    モールとして活況を呈しています。

     さらに、沿線エリアでのリハビリデイサー

    ビス事業や、鉄道との相乗効果が高い駅直

    結型カーシェアリング事業といった生活関

    連サービスの拡充にも力を入れており、多

    角的な事業展開によって地域の活性化と価

    値向上に貢献しています。

     「安全の確保は公共交通機関としての最

    大の使命です。当社グループは5カ年計画

    のもと、大規模な自然災害への対処やホー

    ムの安全性向上、労働災害の防止など、さ

    まざまな取り組みを進めています」と話す

    のは、鉄道本部運輸部で担当課長を務め

    る藪上政樹氏です。

     鉄道の安全管理においてはITも大き

    な役割を担っています。各列車の運行や信

    号・ポイントなどを一元的に管理する「運行

    管理システム」をはじめ、JR西日本様では

    車両管理や輸送計画管理、施設・保線管

    理、送電設備管理など多岐にわたる部門に

    システムを導入。鉄道輸送における安全性

    の向上に取り組んでいます。また、顧客サー

    ビスの面でも、ICカード乗車券や運行情

    報のWeb配信、各駅での電光表示など、

    ITを活用した多様なサービスを提供し

    て、利用者の満足度向上につなげています。

    「当社のCS調査を見てもお客様の満足度

    は年々高まっています。近年は、訪日外国人

    のお客様が急増していることから、駅構内

    の案内表示を多言語化するとともに、拠点

    駅には外国人案内スタッフを配置していま

    す」(藪上氏)

     事業推進におけるITの重要度が高ま

    るなか、同社では2007年にそれまで総

    合企画本部にあったIT推進室を「IT本

    部」として独立させ、グループ企業のJR西

    日本ITソリューションズ(J-W

    ITS

    )様との

    連携のもとで、より戦略的かつ機動的に

    ITを活用した施策を推進しています。

     日本ユニシスも、こうした同社の取り組み

     こうして完成した「指令記録配信システ

    ム」は、2010年4月から運用が開始さ

    れました。同システムでは、スキャナで読み

    込んだ指令記録が配信側パソコン画面にア

    イコン表示され、画面上のボタンで記録種

    別を割り当て、相手先を選択するだけで配

    信が完了します。配信先は路線や関係拠点

    ごとにグループ化されているので、配信ミス

    や漏れの心配はありません。また、受信側

    のパソコン画面には「受領」ボタンが表示さ

    れており、指令記録のプリンタ出力を確認

    後に受領者名を入力し、ボタンを押すだけ

    で受領連絡も完了します。

    「受信先で受領ボタンが押されると指令所の

    配信側パソコン画面に『○』マークが表示され

    るので、受領されたことが瞬時に確認でき

    ます。万一、用紙切れなどで出力できなかっ

    た場合は、『×

    』マークが表示され、状態が確

    認できる仕組みになっています」(北林氏)

     このシステムを運用するようになって以来、

    指令所でも配信先の各拠点でも業務効率が

    格段に向上していると藪上氏は言います。

    「指令所では従来のようにファックスの前に

    行列ができたり、受領電話の応答に張り付

    きになったりする必要がなくなって、スタッ

    フが本来業務に集中できるようになりまし

    た。大規模な輸送障害が発生した時の待機

    時間も大きく短縮し、ダイヤ修復に向けた

    的確な行動に素早く移れるので、お客様の

    不便を最小限に抑えられます。タイムロス

    による計画のやり直しも大幅に減ったと聞

    いています」

     また、後藤氏も次のように話します。

    「とくに、かつてのファックス時代を知る駅な

    どの現場社員からは『便利なものをつくって

    くれた』と高い評価をもらっています」

     JR西日本様では、指令記録配信システ

    ムのハードウェア交換を機に、システム改良に

    ついての要望を現場にヒアリングしました。

    「毎日使っていると操作性や機能面などで、

    改善の要望があるのではないかと思っていた

    のですが、結果は『現状で満足している』と

    いう回答でした。ヒアリングを通して、それ

    だけ完成度の高いシステムを当初から構築

    できたのだと実感しています」(後藤氏)

     一方、指令業務を担当する久保氏は次の

    ように話します。

    「唯一残っているアナログ業務は、指令記録の

    手書きですが、デジタル化は当分難しいと考

    えています。指令員は培った知識や経験に基

    づいて臨機応変に最適な計画を立て、専門の

    記号を使って指令記録をスピーディに作成

    しています。この業務を仮にプログラム化で

    きたとしても、おそらく『手書きの方が速い』

    ということになるのではないかと思います」

     そうしたなかで現在進めているのは、指

    令記録配信システムを他拠点に展開してい

    くための準備です。

    「京阪神以外のエリアは今も指令記録の配

    信にファックスを使っていますが、大阪から

    異動した社員などから評判が伝わって隣接

    地域などで導入の要望が出始めています。

    運行本数の少ない路線では現状の高速

    ファックスでも十分対応できるので、一斉に全

    エリアに導入する予定はまだないと聞いてい

    ますが、希望があれば随時切り替えられる

    よう準備を進めているところです」(後藤氏)

     最後に後藤氏は、日本ユニシスへの評価を

    語ってくれました。

    「エンドユーザーの使い勝手が非常に良いシ

    ステムを、スムーズに構築してくれたことに

    感謝しています。今後も培った知見によって

    私たちの仕事はシステムの構築ではなく、お客様に喜んでい

    ただけるサービスの提供であることを常に意識して、「日本ユニ

    シスに任せれば安心」と思っていただける存在になることを心

    がけています。JR西日本様における「指令記録配信システム」

    の開発でも、これまでの実績を通じてお客様と信頼関係を築け

    ていたことが、プロジェクトの成功につながったと思っています。

    今回のプロジェクトでもっとも注力したのは、スタッフ全員が

    専門性の高いお客様業務を理解したうえで、ご要望の本質をつ

    かみ、共通認識をもって進めることでした。その結果、24時間使

    われるシステムにもかかわらず、6年間大きな障害もなく、お客

    様の社内アンケートで「満足度99%」という評価をいただいてい

    ることを嬉しく感じます。

    今後も、幅広い業界で培った独自のノウハウや製品に縛られ

    ない柔軟な発想など、日本ユニシスの強みを活かして、お客様に

    喜んでいただけるサービスを提供していきます。

    当社グループのIT活用の高度化に役立つ

    情報提供や提案を期待しています」

     藪上氏も日本ユニシスへの期待を語ります。

    「指令記録配信システムは、アナログがあた

    りまえと考えていた指令業務をデジタルで

    効率化できることを気づかせてくれまし

    た。そうした領域はきっとまだまだあるは

    ず。これからも日本ユニシスさんの技術力と

    経験を活かして、安全性や業務効率を大き

    く高める画期的なソリューションをどん

    どん提案してもらいたいと思います」

    ITと人の融合で運行管理を高度化

    より安全・快適な鉄道をめざす

    大規模輸送障害時は指令記録の配信に時間がかかり現場が迅速な行動をとれない

    配信先の選択漏れや用紙切れなどで連絡ミスが生じるリスクがある

    受領連絡を電話で行っていたため配信側・受信側ともに大きな業務負荷が発生

    システムで指令記録の配信を高速化迅速なダイヤ修復作業が実現

    タッチパネル操作で配信業務を省力化関係拠点に漏れなく一斉配信

    受領連絡が容易になり配信側もパソコン画面でリアルタイムに確認

    システム構築の背景と効果

    Before After

    専田 洋輔

    公共第二事業部トランスポーテーション部

    野口 忠弘

    公共システム本部第三統括部 関西公共サービス部

    VOICE

    担当者の声

    お客様との信頼関係を大切にしながら

    喜んでいただけるサービスを提供します。

    CASE STUDY

    C u s t o m e r S o l u t i o n s

    西日本旅客鉄道株式会社 様

    21 20Club Unisys + PLUS VOL.53Club Unisys + PLUS VOL.53