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全国国立大学附属学校連盟幼稚園部会 ②協同して遊ぶことに関する指導の在り方 研究テーマ及び研究の観点 テーマ して する 育ち らえた いった から, における して する われている。 かかわり がら しい をしたり したりするこ が多く ている。 かかわりに 題を えるこ 涯にわたって する ある。 ,コミュニケーション 育ちに影 えている。 に, 感に えられた るこ ある。 17 から,「 学び」が げら れ,「 いう われるように た。 らか るため に, よう ていけ 」を するこ か, から 学びをつ するこ められている。 20 域「 して 」に たに わった。他 域において いにかかわりを める した について わった。 こうした 題を け, ,「 いう から 育を し, して よう らえ, するこ た。 地域の概要 大学 園( 49園) ,各 されており,そ 多く に位 し, に大きくかかわっている。これら 130 におよび, 「学 して 育」 げてきた。 各園 する に, し,各 っている。 して び大学 かし がら, して している。また,各園 ,各 し, させるために, し, 割を ている。 大学 園において け3 から5 における られてきている。 まえた され,それに づいた「 育」が されている。 また,多く にあ り, から して, にした 育を ってきており, から いる。ま た, されており, 園・ し,いわ 員そ 園・ に大きくかかわっている いえよう。 これら 大学 かし, ある「 学び 学び」について い,これま リーフレット している。 研究協力機関 大学 育学 大学 育学 大学 大学 学域 育大学 大学 育学 大学 育学 育大学 大学 育学 大学 育学 研究の内容及び方法 大学 ,これま 大学 りつつ, 育をめぐる 題に 142

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全国国立大学附属学校連盟幼稚園部会

②協同して遊ぶことに関する指導の在り方

1 研究テーマ及び研究の観点

研究テーマ

協同して遊ぶことに関する指導の在り方

研究の観点

今,子どもの育ちの変化への対応,幼稚園教育と小学

校教育の接続の在り方,幼児期の発達をとらえた幼稚園

教育の充実といった観点から,幼児期における協同して

遊ぶことに関する指導の在り方が問われている。

近年,人とかかわりながら新しい発見をしたり新たな

関係を生み出したりすることが苦手な子どもが多くなっ

ている。人とのかかわりに困難や課題を抱えることは,

生涯にわたって直面する課題でもある。規範意識の低下

や,コミュニケーション能力の低下など大人社会の課題

が子どもの育ちに影響を与えている。幼児期に,人への

愛情や信頼感に支えられた協同の基盤となる経験を重ね

ることが重要である。

平成17年の中央教育審議会では,幼稚園教育と小学校

教育の接続の観点から,「協同的な学び」が取り上げら

れ,「協同的な活動」という文言が使われるようになっ

た。幼稚園教育と小学校教育の滑らかな接続を図るため

に,幼稚園でどのような経験を重ねていけば「協同的な

活動」を展開することが可能になるのか,幼児期から児

童期への発達と学びをつなぐ指導の在り方を検討するこ

とが求められている。平成20年の幼稚園教育要領の改訂

では,領域「人間関係」で「協同して遊ぶこと」に関す

る記述が新たに加わった。他の領域においても,子ども

同士が互いにかかわりを深める過程を重視した指導の在

り方についての記述が加わった。

こうした背景や課題を受け,本事例集では,「協同」

という観点から保育を見直し,幼児が協同して遊ぶよう

になる過程をとらえ,指導の在り方を検討することとし

た。

2 地域の概要

国立大学附属幼稚園(全国49園)は,各都道府県に配

置されており,その多くは県庁所在地に位置し,地域の

幼児教育の発展に大きくかかわっている。これらの幼稚

園の歴史は130余年におよび,現在の「学校教育として

の幼児教育」の基礎を築き上げてきた。

各園は,毎年研究紀要を発行するとともに,公開研究

会を介在し,各地域で幼児教育の情報交換や研究交流の

中心となっている。特に全国組織としての利点及び大学

の教育財を生かしながら,国の幼児教育の拠点としての

活動を展開している。また,各園は,各地域の幼児教育

諸機関とも連携し,幼児教育の内容を深化させるために,

広く都道府県内外に情報を発信し,中心的な役割を担っ

ている。

国立大学附属幼稚園においては,全国に先駆け3歳児

から5歳児までの3年間の幼児期における教育課程及び

指導計画,指導方法の研究が積み重ねられてきている。

幼児教育の独自性を踏まえた幼児期の教育の在り方が検

討され,それに基づいた「保育」が展開されている。

また,多くの幼稚園は附属小学校と同一の敷地内にあ

り,従来から日常的な交流を通して,小学校との関連を

大切にした教育を行なってきており,現在の小学校生活

科の成立以前から様々な形(総合,合科等)で,幼稚園

教育と小学校教育の接続期の研究に取り組んでいる。ま

た,附属幼稚園の教員の大半は,地域の小中学校教員と

の人事交流で配置されており,幼稚園・小学校の教員免

許状を併有し,いわば教員そのものが幼稚園・小学校の

連携に大きくかかわっているといえよう。

これら国立大学附属幼稚園の特質を生かし,現在の教

育課題である「幼児期の学びと児童期の学び」について

研究を交換し合い,これまでにもリーフレット等を通し

て広く研究成果を発信している。

3 研究協力機関

弘前大学教育学部附属幼稚園

宇都宮大学教育学部附属幼稚園

お茶の水女子大学附属幼稚園

金沢大学人間社会学域附属幼稚園

上越教育大学附属幼稚園

静岡大学教育学部附属幼稚園

滋賀大学教育学部附属幼稚園

京都教育大学附属幼稚園

香川大学教育学部附属幼稚園

熊本大学教育学部附属幼稚園

4 研究の内容及び方法

全国国立大学附属学校連盟幼稚園部会では,これまで,

大学と連携を図りつつ,幼児教育をめぐる様々な課題に

142― ―

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協同して遊ぶこと

に関する指導

対応して,実践的な研究を進めてきた。「協同して遊ぶ

ことに関すること」については,研究協力園においてす

でに実践研究を進めており,その成果を各地域に公表し

てきた。しかし,5歳児の保育と小学校1年生の授業と

の滑らかな接続については,3歳から5歳までの発達を

おさえながら,それぞれの時期における「協同して遊ぶ

ことに関する指導の在り方」を具体的に見直し,検討し

ていく必要があることが課題となっていた。

そこで,本研究では,講演会,研修会を通して,協同

して遊ぶことに関する基本的な考え方を共通理解し,幼

児期の協同性をとらえる視点にそって,幼児の発達に応

じた指導の在り方について研修を深めた。こうした基本

の理解に基づいて,3歳から5歳の発達をおさえ,「協

同して遊ぶようになる過程」を明らかにした。また,研

究協力園による特色ある調査研究を実施し,事例集「協

同して遊ぶことに関する指導の在り方」を作成した。

講演会・研修会の実施

協同して遊ぶようになる過程と指導について,明らか

にするために,幼児期の協同性をとらえる視点をもち,

以下の講演会・研修会を開催し,共通理解を深めた。

ア.講演会の実施・内容

イ.研究協力園での研究会等の実施

事例集「協同して遊ぶことに関する指導の在り方」

の作成

本研究の目的を達成するために,研究協力園を中心と

する調査研究実行委員会を立ち上げ,調査研究運営委員

会及びワーキング委員会を中心として事例集を編集・作

成した。その際,全国国立大学附属学校連盟幼稚園部会

研究集会において,全国49園から持ち寄った約150事例

をもとに事例検討会を行った。さらに,ワーキング委員

会による検討を重ね,3歳から5歳までの「協同して遊

ぶようになる過程」を明らかにした。

その結果,図(右上)に示す第Ⅰ期から第Ⅲ期までの

発達に即して,協同して遊ぶようになる過程と経験内容

について,15の内容をおさえた。

【事例集目次】

第1章 協同して遊ぶとは

第1節 基本的な考え方

第2節 幼児期の協同性をとらえる視点

第3節 幼稚園における「協同して遊ぶようにな

る過程」

第3章 指導事例集(研究協力園)

※各章の構成

第1章

「協同して遊ぶ」とはどのようなことなのか,

どのような保育を展開していくことが「協同し

て遊ぶ」幼児を育てることにつながっていくの

かについて,理論と実践を交えながらまとめて

いる。

第2章

研究協力園による地域の実態に応じた特色あ

る実践事例を紹介している。

リーフレットの作成と配布

本調査研究の事例検討で明らかになった「協同して遊

ぶようになる過程」と指導のポイント及び実践事例等を

掲載したリーフレット(発行:全国国立大学附属学校連

盟幼稚園部会-第5号-)を作成し,全国関係諸機関に

配布した。

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5 研究の成果及び今後の課題

研究成果

① 3歳から5歳までの幼児期の発達に即して前述の

【図:協同して遊ぶようになる過程】に示すように,3

つの発達の時期における経験内容を明らかにした。

〔第Ⅰ期 初めての集団生活の中で様々な環境と出

会う時期〕

・同じ場で見たり触れたり行為を模倣したりする。

・場を共有し,つながり合う気分を味わう。

・イメージの世界に浸り,感情を共有する。

・友達の存在を好意をもって受け入れようとする。

・友達のしていることを感じながら個々の遊びを

楽しむ。

〔第Ⅱ期 遊びが充実し自己を発揮する時期〕

・場やものを共有し,友達とかかわって遊ぶ楽し

さを知る。

・イメージや考えを伝え合い,表現する楽しさを

味わう。

・葛藤を乗り越え,友達と一緒に遊びをつくりだ

す。

・友達と刺激し合いながら,自分の世界を広げる。

・体験を深め,友達と遊びの楽しさを共有する。

〔第Ⅲ期 人間関係が深まり学び合いが可能となる

時期〕

・目的を共有し,友達と相談しながら遊びを進め

る。

・新しいアイディアや遊びのルールを生み出す。

・グループや学級の中で,役割を意識して取り組

む。

・友達のよさや持ち味を感じながら,目的を実現

し達成感を味わう。

・様々な人とのかかわりの中で刺激を受けながら,

自分の見方や考えを広げる。

第Ⅲ期において,仲間と相談したり刺激し合った

りしながら関係を深め,自分の見方や考え方を広げ

ていく「協同する経験」が可能となるには,第Ⅰ期

において,空間や時間を共有し,一人一人の幼児が

安心して過ごせるようになる「共同する生活の経

験」を,第Ⅱ期において,様々な人とのかかわりや

つながる喜びを感じ,自己を十分に発揮して遊ぶ

「協同の基盤となる経験」を,それぞれ積み重ねて

いくことが重要である。

② 協同して遊ぶことに関する指導の在り方について,

3つの発達の時期における「指導のポイント」を以

下のようにまとめた。

〔第Ⅰ期 初めての集団生活の中で様々な環境と出

会う時期〕

・集団で生活することへの安心感がもてるように,

生活の流れに配慮する。

・安定した園生活の中で,ありのままの自分を発

揮できるように,一人一人の思いを十分に受け

止める。

・友達とつながる気分を味わえるように,教師も

一緒に幼児の行為を模倣したり,動きのリズム

を合わせたりする。

・自分の思いが通じる喜びを味わえるように教師

は体や言葉でのやりとりの仕方を知らせるモデ

ルとなる。

〔第Ⅱ期 遊びが充実し自己を発揮する時期〕

・想像の世界を広げられるように,様々な素材に

触れられるような環境を構成し,その子なりの

表現を受け止める。

・遊びをつくりだす楽しさや友達との遊びの楽し

さが味わえるように,教師はアイディアを提供

したり,幼児同士をつなぐ材料や用具,空間の

構成などの環境を工夫したりする。

・友達の様々な思いや考えに気付き,新たな視点

を見出していけるように,いざこざや葛藤の場

面を大切にして援助する。

・みんなの中の自分を感じられるように,体験が

共有されていくような状況をつくる。

〔第Ⅲ期 人間関係が深まり学び合いが可能となる

時期〕

・幼児が互いの思いや考えに気付き,自分たちで

解決していこうと調整していけるように,周囲

の幼児も巻き込みながら,幼児同士で考えたり

相談したりする状況をつる。

・幼児が仲間と共に一人では得られない遊びの面

白さを味わえるように,それぞれの活動が互い

に関連しあって新しい活動が生み出されるよう

な保育を,見通しをもって構想していく。

・幼児が自己課題を見いだし,友達と一緒にやり

遂げた満足感を味わえるように,より挑戦的な

活動が展開できるような状況をつくったり,協

力の必要な環境を提案したりする。

・幼児一人一人のよさや持ち味を発揮できるよう

に,幼児同士をつなぎ,互いに認め合い支え合

う生き生きとした関係をはぐくむ学級の雰囲気

をつくる。

今後の課題

○幼稚園から小学校への接続の観点から,特に5歳児

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兵庫県

地域の範囲

(市区町村名)人口

幼稚園 小学校 保育所

幼稚園数 幼児数 学校数 児童数 保育所数 幼児数

(平成21年5月1日現在)

兵庫県

千人

5,598

園(国) 2(公) 498(私) 242

72,088

校(国) 4(公) 810(私) 10

352,442

(公) 370(私) 500

82,286

合 計 5,598 742 72,088 824 352.442 870 82,286

協同して遊ぶこと

に関する指導

における指導内容・方法について,さらに検討を進

める。特に,幼稚園と小学校の教員の交流を深め,

発達と学びの連続性をとらえた教育内容・方法の改

善につなぐ。

○各地域における保育所等との研究会・研修会等を通

して,幼児期における「協同して遊ぶ」ことについ

て,事例集やリーフレットを活用して情報交換や研

修を行い,発達と学びの連続性を確保した保育所,

幼稚園,小学校の連携を図る。

1 研究テーマ及び研究の観点

研究テーマ

「協同する経験」を通してかかわり合って学ぶ力をは

ぐくむ

研究の観点

近年,子どもの育ちについて,基本的生活習慣の欠如,

自制心や規範意識の希薄化,コミュニケーション能力の

不足等が指摘され,この背景として少子化,核家族化等

の進行による人間関係や地域社会における地縁的なつな

がりの希薄化等により,家庭や地域社会の教育力が低下

していることが考えられる。このため,幼稚園には,こ

のような幼児の現状を踏まえ,幼児の生活の連続性や発

達や学びの連続性を確保し,計画的に環境を構成するこ

とを通して幼児の健やかな成長を促していくことが求め

られている。

実際の教育活動においては,家庭や地域において,幼

児が「人とかかわる力」を身に付けていく機会が失われ

つつある現状を踏まえ,幼児が初めて経験する集団生活

の場で幼児が互いにかかわりを深め,協同して遊ぶこと

の重要性が改訂幼稚園教育要領で新たに示された。この

ことから,遊びを通して幼児同士が折り合いを付けるこ

と,充実感や達成感,ときには挫折感など様々な感情体

験を経験することなど,「協同する経験」を通してどの

ように「人とかかわる力」がはぐくまれていくのかを,

研究協力園の実践事例を通して検証し,その成果等につ

いて普及啓発していく。

2 地域の概要

本県は,742園の幼稚園が設置されており,72,088人

の園児が在籍している。近年の傾向として,少子化等の

影響から幼稚園の統廃合が行われ,昨年に比べ園数は6

園,園児数は1,902人減少している。また,市町におい

ては,就学前教育の在り方を見直すため,幼稚園と保育

所の管轄の一本化や認定こども園の認定等の動きが見ら

れ,平成21年度は4園増加し,19園となった。

本県の就学前教育に携わる幼稚園・保育所・認定こど

も園等の総合計は1,612園であり,そのうち公立幼稚園

は498園で全体の約30.9%である。今まで,県教育委員

会においては,公立幼稚園の教員等を対象とした研修を

中心に行ってきたが,今後は,本県の就学前教育の充実

を図っていく観点からも,公私立,幼稚園,保育所にか

かわらず,幼児教育にかかわる教員等への指導の充実を

図っていくことが重要であり,それには,幼稚園,保育

所の教員・保育士がともに研修する機会の確保が必要で

ある。

3 研究協力機関

西宮市立春風幼稚園・明石市立清水幼稚園

西脇市立西脇幼稚園・相生市立平芝幼稚園

豊岡市立出石幼稚園・篠山市立今田幼稚園

4 研究の内容及び方法

「協同する経験」とは

本研究において,「協同する経験」を次のようにとら

える。

・ 友達とともに遊びをすすめる中で自分の考えを表

現し,相手との考えの違いに気付いたり,トラブル

や意見交換を通して相手の考えを理解するように

なったりするなど,幼児同士が「折り合いを付ける

経験」を通して「様々な感情体験」を重ね,人との

かかわりを広げ深めていくこと。

・ このような人とのかかわりを通して,よいことや

悪いことに気付き,考えながら行動したり,きまり

の大切さに気付き,守ろうとしたりするなど,生活

のために必要な習慣や態度を身に付けていくこと。

「協同する経験」を通して「友達が好きになる」「友達

と仲間になる」「友達と育ち合う」という経験を重ねて

145― ―

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いくことが重要であると考え,そのために教師は,「協

同する経験」の過程を大切にするとともに,幼児の「協

同する経験」を見取る確かな視点をもち幼児理解を深め

ること,「協同する経験」につながっていくための意図

的な援助の工夫等,教師自身の「協同する経験」のとら

えを明確にもつことが大切である。

共通課題の設定

本研究を進めていく上で,各研究協力園の実践研究の

成果をより豊かなものにするため共通の課題を定める。

「協同する経験」と幼児の育ちの関係性の理解をとら

えるために

共通課題1 発達の過程に即した協同する経験の在

り方

つぎに,「協同する経験」を重ね,人とかかわりを深

めるための援助の在り方をとらえるために

共通課題2 「協同する経験」が深まっていくため

の教師の援助・環境の構成の在り方

さらに,「協同する経験」を研究していくための仕組

みや園内体制が必要であることから

共通課題3 PDCA サイクルに基づく園内研究体

制の在り方

これらの課題は,今後各幼稚園において,研究保育,

園内研究を進めていく上での課題になるものであり,こ

のような観点を研究課題において進めていくことで,よ

り充実した教育の推進につなげていくことができると考

える。

幼児の姿を見取る視点を設定

幼児の「協同する経験」を理解し,適切な援助を行う

ためには,その内面も含めた幼児の姿を見取っていく視

点が必要なことから次の3つを幼児の姿を見取る視点と

する。

視点A 遊びを工夫する力はどのようにはぐくまれて

いくか

視点B ルールをつくり出し,守って遊ぶ力はどのよ

うにはぐくまれていくか

視点C 言葉による伝え合う力はどのようにはぐくま

れていくか

これらの視点は,下記,近年の子どもの育ちの変化に

対応するため幼稚園教育の目標に新たに加えられた3つ

の内容

ア 思考力の芽生えを培うこと

イ 規範意識の芽生えを培うこと

ウ 言葉による伝え合いを重視すること

に関連するものと考えられる。

日々の保育の中で,幼児理解を図っていくために,た

だ漠然と幼児の姿をとらえるのではなく,このように幼

児の姿を見取る視点を職員共通の理解のもとでもつこと

が大切であり,複眼的に幼児の姿を見取っていくことで

より確かな幼児理解につなげていくことができる。

実践事例の収集・分析

研究協力園6園は上記の視点A・B・Cについて,そ

れぞれ各2園ずつで取り組み,各視点からとらえた幼児

の姿を実践事例として書き記した。また,実践事例にま

とめる際,各園が個々の形式で書き記すのではなく,

「幼児の姿」「教師の援助・環境の構成」「事例から見え

る幼児の発達する姿(育ち)」「考察」を書き記し,それ

らのまとめとして「実践から明らかになったこと」をと

らえていくように共通の様式を設定した。

各園で内容を十分検討した実践事例をもとに,幼児教

育支援委員会で,それぞれA・B・Cの視点から事例分

析を行うとともに,共通課題の3点からも分析し,それ

らを「指導の手引き」―人とのかかわりを豊かにする教

育の推進― 幼児が「協同する経験」を重ねるための教

師の援助の実践事例にまとめた。

研究協力園においては,研究を進める中で,「協同す

る経験」についての共通理解が深まり,幼児を見取る力

が高まるとともに,教師の援助や環境構成の工夫につな

がった。また,フォーラムを行うことで県下の幼児教育

にかかわる教員等の「協同する経験」に対する認識が深

まり,研修に対する意欲を向上することができた。

今後は,「指導の手引き」の活用を促し,県下で実践

モデル園を指定し研究を深め,その成果の普及啓発を行

うとともに,より広く「協同する経験」について幼児教

育にかかわる教員研修を実施することとしている。

5 研究の成果及び今後の課題

研究成果

ア 「協同する経験」の理解を深める

次項の写真を通して,どのような幼児の姿を見取る

ことができるのか,それが,「協同する経験」を通し

てどのようにかかわり合って学ぶ力がはぐくまれてい

るのかということをこの写真から,「協同する経験」

を見取る視点ごとにとらえた。

146― ―

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協同して遊ぶこと

に関する指導

視点A 遊びを工夫する力はどのようにはぐくま

れていくか

・ 樋をどのようにつなげれば水がうまく流せるか

・ 段差のあるところはどのようにつなげればいい

・ 水をいつ流せばいいのか,どのくらい流せばい

いのか

等について試行錯誤する姿や新しいアイディアを考

え出すなど,幼児たちの工夫が生まれた。

このように「協同する経験」を通して,遊びを工夫

する力がはぐくまれていると考えられる。

視点B ルールをつくりだし、守って遊ぶ力はど

のようにはぐくまれていくか

・ 樋がつながるまで待つ

・ うまくつながるように手伝う

・ 樋がつながってから水を流そう等

一緒に遊ぶ友達の様子をうかがいながら自分が何を

すればいいのかなど遊びの手順や約束事が生まれた。

このように「協同する経験」を通して,ルールをつ

くりだし,守って遊ぶ力がはぐくまれていると考えら

れる。

視点C 言葉による伝え合う力はどのようにはぐ

くまれていくか

・ 「つながった?」「水流してもいい?」「まだ,

待って」等,自分の思いを友達に伝え,友達

の返事を待って気持ちを通わせた。

このように,「協同する経験」を通して,言葉によ

り伝え合う力がはぐくまれていると考えられる。

このように,「協同する経験」を通して,幼児は,

友達の思いを汲みながら,自分は何をすべきかなどい

ろいろ思いをめぐらせ,自分一人の目的ではなく,自

分たちの目的をかなえようとするようになる。幼児は,

「協同する経験」を通して,総合的な力を身に付けて

いく。「協同する経験」をとらえる上で,一人一人の

幼児が自己発揮していることが基盤になるので,自発

性を育てていくことが大切である。幼児は「協同する

経験」を通して,様々な感情をめぐらし「自己主張す

ること」「自己抑制すること」を学んでいると考えら

れる。

イ 「協同する経験」を重ね,人とのかかわりを深め

ていくために

人とかかわる力と「協同する経験」の関連性

(P149,図1参照)

研究協力園の実践事例より,発達に即して「協

同する経験」がどのようにはぐくまれていくかを

イメージ図(図1)で表す。この図では,縦には

「幼児の発達のプロセス」中央には「遊びの系

統」両サイドには,幼児の自己主張と自己抑制が

協同する経験を重ねる中でどのように変容してい

くかという観点でとらえている。

①幼児が安定して過ごせる場を確保していくこと,

それには教師が一番の心の拠り所になることが

大切である(居場所づくり・安定する)。

②教師との安定した関係が構築されてくると,幼

児はようやく周りの環境が気になり始め,自ら

かかわろうと動き出す(好きな遊び)。この時

期に十分好きなことに取り組ませていくことが

大切である。

③徐々に,「こうしたい」「やってみたい」と様々

なことに挑戦しようとする(やりたい遊び)。

じっくり時間を掛けて納得いくまで取り組ませ

ることが大切である。

④その中で,気の合う友達ややろうとしているこ

とに同じ目的をもった幼児たちが一緒に遊び始

める(協同的な遊び)。そのかかわりの中で,

自分のやりたいことや伝えたいことをはっきり

ともち,相手にも分かるように説明し,やりと

りをする中で自分の思いを抑えても一緒に遊ぼ

うとするいわゆる「協同して遊ぶ」ようになっ

てくる。

このように,幼児の発達の過程を教師がとらえ,

その時期を逃さず,その時期に即した様々な体験,

できるかぎり豊かな体験を積み重ねていくことが

必要である。そのためには,確かな幼児理解のも

と,教師の意図を援助・環境の構成の中に生かし

ていくことが大切である。

147― ―

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また,幼児が協同して遊ぶようになるためには,

友達と対等の関係性が築けるような自己主張と自

己抑制のバランスが保たれることが大切である。

視点からとらえた幼児の姿と協同性をはぐくむ

教師の援助の関連

研究協力園の実践から顕著に見られた幼児の姿

と教師の援助のポイントを発達の時期と整合させ

ながらまとめた。

例えば,

・ 発達の時期Ⅰ「初めての集団生活の中で,

様々な環境に出会い試す時期」には,「幼児

自ら動き出すように心の安定を図る教師の援

助が必要な時期」ととらえ,この時期には,

幼児一人一人の安定した居場所づくりと友達

が意識できるような教師の援助が大切である。

・ 発達の時期Ⅱ「遊びが充実し,自己表現を

楽しむ時期」には「幼児が他児の存在に気付

けるような教師の援助が必要な時期」ととら

え,この時期には自分と同じように,相手に

も様々な思いがあるということに幼児自身が

気付けるような教師の援助が大切である。

・ 発達の時期Ⅲ「人間関係が深まり,学び合

いが可能となる時期」では,「幼児同士のか

かわりを促す教師の援助が必要な時期」とと

らえ,この時期には,友達とのかかわりが深

められるように幼児の様子を見守り,幼児の

達成感や充実感等,学びにつなげていくよう

な教師の援助が大切である。

これらの基本的な考え方を,幼児の発達をとら

えた援助・環境の構成のポイントとして示し,各

園が,幼児の実態に応じてこれを具現化させてい

くことで,「協同する経験」を踏まえた教育課程

を編成することにつながっていくと考える。

ウ 「協同する経験」は幼児にとって大切な学びの場

である

幼児が協同して遊ぶことを通して,友達と目的を

共有化し,その具現化に向け試み,繰り返し工夫し

て取り組み,達成感や満足感を共有するという学び

のプロセスを身に付けていく。このような学びのプ

ロセスを繰り返し経験していく中で,自ら考え行動

する力,人と豊かにかかわっていく力を身に付けて

いく。

今後の課題

ア 人とかかわる力を豊かにはぐくんでいくために幼

児の発達に必要な体験を積み重ねられるよう保育内

容を見直していくことが必要である。

イ 教師が,幼児にとって一番の理解者になるために

は,様々な研修の機会を通じて,幼児理解,具体的

な援助等について教師の指導力を高めていくことが

必要である。

ウ 保育の検証・改善を図り,充実した保育を展開す

るためには,各幼稚園において園長のリーダーシッ

プのもと,組織的な園内研究体制を構築し,保育の

検証・改善を図る園内研究の工夫が必要である。

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Page 8: qt b ¦ wO M - 文部科学省ホームページ...2011/01/14  · Ot® qTT ¯UxYX oMXwT | Z wî «Ä « è`oU Â`|fw RL stm Mo Ót C`oMX{ ¬w A ]x|þûùw . U ^ oS | þùó÷ÿÿ

協同して遊ぶこと

に関する指導

図1

149― ―