shinko hospital 神鋼記念病院 乳腺センターの業績(2016 … · 2019. 1. 30. ·...
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社会医療法人神鋼記念会SHINKO HOSPITAL 神鋼記念病院
乳腺センターの実績神鋼記念病院乳腺センターの実績
2017年度版
(人数)
0102030405060708090100
9080706050403020
2
32
9377 75
44
144(年齢)
(人数)
0100200300400500600700800
9080706050403020
21
212
721640
543
355
170
25(年齢)
050100150200250300350400
341
261293
262287
(例数)
(年)2012 2013 2014 2015 2016
2016年 乳がん手術症例の年齢分布(341症例 神鋼記念病院乳腺科)
グラフ
3グラフ
4
乳腺科設立後12年間(2005~2016年)における本科における乳がん手術症例(2687症例)の年齢分布
グラフ
2過去5年間の乳がん手術数グラフ
1
0% 20% 40% 60% 80% 100%85歳以上80-84歳75-79歳70-74歳65-69歳60-64歳55-59歳50-54歳45-49歳40-44歳 胃 結腸 卵巣乳房 子宮頸部肺
子宮体部 悪性リンパ腫
甲状腺 白血病その他
胆のう・胆管
直腸 肝臓
膵臓食道
年齢部位別がん死亡数割合(40歳以上)[女性 2014年]
(国立がん研究センターがん情報サービス)
兵庫県下で乳がん手術の多い基幹病院
として掲載されています。
乳癌の罹患率は上昇し、現在、日本人女性の11人に1名が生涯のうちに罹患する身近な病気となっています。日本において乳がんは女性で最も多いがんで、2016年の乳癌罹患数は約90000人、死亡数は約14000人と推定されております。グラフ1は本科における過去5年間の新規乳がん手術件数を示しており、6年連続、兵庫県下で乳がん手術件数の最も多い病院として紹介されました。 神鋼記念病院では、乳がん診療に特化するため、乳腺科が設立され12年が経過しました。この12年間の乳がん
手術件数は2687名に至り、その年齢分布を示します(グラフ2)。さらに、グラフ3は、昨年(2016年)の新規乳がん手術症例(341名)の年齢分布を示します。乳がんは、30代、40代女性の癌死亡の最大の原因となっています(国立がん研究センターがん情報サービス:グラフ4)。これらの時期は、結婚、出産、さらに仕事での活躍が期待される時期に重なり、事態は深刻です。根治(完全に治る)させるためには、早期発見、早期治療が重要で、ピンクリボンキャンペーンによる啓発活動が盛んに行われています。 本院では、乳がん診療を支える各診療部門が、年々充実、進化し、最先端の診療が行える環境となっています。特に診断部門としては乳腺エコー、乳腺MRI、乳腺病理、治療部門としては、ICG蛍光法によるセンチネルリンパ節生検、乳房再建手術(3ページ参照)に強みを持っています。
神鋼記念病院乳腺科は“手術数でわかるいい病院2017(朝日新聞出版)”、“病院の実力2017総合編(読売新聞医療部)” “名医が診断・治療のすべてを解説 乳がんと診断されました(朝日新聞出版)”において今回も兵庫県下で乳がん手術の多い基幹病院として掲載されています。
社会医療法人神鋼記念会SHINKO HOSPITAL 神鋼記念病院
〒651-0072 神戸市中央区脇浜町1丁目4-47 Tel 078-261-6711(代表)
(論文)・ Okumura K, Hashikawa K, Sakakibara S, Onishi H, Terashi H. A study of internal thoracic arteriovenous principal perforators by using multi-detector row computed tomography angiography. Eplasty. 2016; 16: e11. eCollection.
・ Yamashita Y, Murayama S, Okada M, Monzawa S et al: The essence of the Japan Radiological Society/Japanese College of Radiology Imaging Guideline. Jpn J Radiol. 2016; 34(1): 43-79.
・ Egawa C, Hirokaga K, Takao S, Yamagami K et al: Risk factors for joint symptoms in postmenopausal Japanese breast cancer patients treated with anastrozole: aprospective multicenter cohort study of patient-reported outcomes. Int J Clin Oncol. 2016; 21: 262-269.
・ Tane K, Egawa C, Takao S, Yamagami K et al: Body mass index and menopausal disorders during menopause affect vasomotor symptoms of postmenopausal Japanese breast cancer patients treated with anastrozole: a prospective multicenter cohort of patients reported outcomes. Breast Cancer. 2016, doi: 10. 1007/s 12282-016-0735-y
・ 門澤秀一ほか乳房 日本医学放射線学会編 画像診断ガイドライン 2016年版 第2版 pp493-521,金原,東京,2016.9
・ 門澤秀一ほか(翻訳) Mammography. 日本放射線科専門医会・医会 ACR BI-RADSR翻訳中央委員会編 ACR BI-RADSRアトラス」(電子版),M2PLUS,札幌,2016. 9
・ 門澤秀一,山神 真佐子 乳輪下膿瘍(subareolar abscess).角田博子編 編新乳房画像診断の勘ドコロpp244-245,メディカルビュー,東京,2016. 9
・門澤秀一,橋本隆 乳腺炎(mastitis).角田博子編 編新乳房画像診断の勘ドコロ pp246-247, メディカルビュー,東京,2016. 9
・門澤秀一肉芽腫性乳腺炎(granulomatous mastitis).角田博子編 編新乳房画像診断の勘ドコロ pp248-249,メディカルビュー,東京,2016. 9
・門澤秀一肝転移と鑑別疾患.角田博子編 編新乳房画像診断の勘ドコロ pp327-330, メディカルビュー,東京,2016. 9
(教育講演、特別講演)・ 待てる石灰化、待てない石灰化:石灰化病変:MRIの画像所見と乳癌診療における役割門澤秀一第25回 日本乳癌画像研究会 シンポジウム,2016年2月20日(名古屋)
・ インプラント乳房再建講座 Basic編 ~患者適応および合併症対策~奥村興第2回 アラガン webセミナー,2016年3月31日
・ 明日から役立つ乳房MRIの読影のポイント門澤秀一第4回青森乳腺診断フォーラム,2016年3月19日(青森)
・ ICG蛍光法の基礎と乳癌治療への応用山神和彦第44回京大外科関連施設癌研究会(手術手技ミニレクチャー)2016年7月2日(京都)
・ BI-RADS Mammography 2013の概要門澤秀一第35回兵庫乳腺画像診断研究会,2016年7月23日(神戸)
・ Nipple-sparing mastectomy(NSM)における乳輪乳頭温存の適応条件山神和彦、結縁幸子、奥村興第4回日本乳房オンコプラスティクサージャリー学会 シンポジウムI 2016年10月6日(千葉)
・ Cosmetic complications in implant reconstruction ~How to avoid~奥村興、山神和彦第4回日本乳房オンコプラスティクサージャリー学会 2016年10月6日(千葉)
・ 超音波検査・MRI・PET/CT門澤秀一第4回放射線セミナー 乳がんの早期診断と最新治療2016年10月29日(神戸)
・ インプラントで再建しやすい乳房?の再建について考える奥村興第1回 乳房再建セミナー in Tokyo,2016年11月6日(東京)
・ 産業医に必要な乳癌治療現状と労働支援の知識山神和彦平成28年度第2回産業医研修会,2016年11月13日(姫路)
(全国レベルの学会発表)・ 遊離腹部皮弁による乳房再建における術前移植床血管 評価の重要性奥村興,吉岡剛,久保あゆみ第59回日本形成外科学会総会・学術集会,2016年4月13日(福岡)
・ 男性乳癌7症例における超音波画像所見の検討山神真佐子,曽山ゆかり,村田あや,松本元,結縁幸子,松山瞳,伊藤利江子,伊藤敬,西川ユウコ,大矢ミカ,山神和彦日本乳腺甲状腺超音波医学会第36回学術集会,2016年5月28日(京都)
・ ステレオガイド下マンモトーム生検症例でマンモグラフィを参考にした乳房超音波検査の微小石灰描出の検討山神真佐子,曽山ゆかり,村田あや,結縁幸子,松本元,結縁幸子,松山瞳,伊藤利江子,伊藤敬,西川ユウコ,大矢ミカ,橋本隆,山神和彦第24回日本乳癌学会学術総会,2016年6月16日(東京)
・ 男性における腋窩リンパ節転移を伴った純型粘液癌(type A)の1例松山瞳,松本元,結縁幸子,一ノ瀬庸,橋本隆,出合輝行,門澤秀一,伊藤敬,藤盛孝博,市川一仁,伊藤利江子,山神真佐子,曽山ゆかり,村田あや,山神和彦第24回日本乳癌学会学術総会,2016年6月16日(東京)
・ 当科における妊娠・授乳期乳癌症例の検討 特に診断困難例について松本元,松山瞳,結縁幸子,山神和彦,一ノ瀬庸,橋本隆,出合輝行,門澤秀一,藤盛孝博,市川一仁,伊藤利江子,伊藤敬,山神真佐子,曽山ゆかり,村田あや第24回日本乳癌学会学術総会,2016年6月16日(東京)
・ 無床診療所がコーディネートする地域一体型乳癌診療の現状橋本隆,結縁幸子,松山瞳,松本元,山神和彦第24回日本乳癌学会学術総会,2016年6月16日(東京)
・ 乳癌サブタイプとMRI所見 各サブタイプのdiagnostic clueを探る結縁幸子,松山瞳,松本元,一ノ瀬庸,橋本隆,出合輝行,山神和彦,門澤秀一第24回日本乳癌学会学術総会,2016年6月16日(東京)
・ ER陰性乳癌の術前化学療法,Nab-paclitaxel followed by Anthracycline based regimenにおける腫瘍縮小効果山神和彦,松山瞳,松本元,諏訪裕文,木川雄一郎,加藤大典 第24回日本乳癌学会学術総会,2016年6月16日(東京)
・ 石灰化病変 MRIの画像所見と臨床的意義門澤秀一,結縁幸子,山神和彦,山神真佐子,松本元,松山瞳,湯淺奈美,山崎 晴菜,伊藤 敬第24回日本乳癌学会総会,2016年6月16日(東京)
・ 線維腺腫様過形成を伴う過誤腫の一例門澤秀一,伊藤利江子,中井登紀子,山神和彦,松山瞳,結縁幸子,湯淺奈美,大木穂高,山崎晴菜,松本元,矢内勢司,山神真佐子,藤盛孝博,杉村和朗第52回日本医学放射線学会秋季臨床大会,2016年9月16日(東京)
・ 当院における乳房再建法内訳の推移とその要因の検討奥村興,吉岡剛,酒井玲子第4回日本乳房オンコプラスティクサージャリー学会,2016年10月6日(千葉)
・ ステレオガイド下マンモトーム生検適応の再考 当院の結果から結縁幸子,一ノ瀬庸,松山瞳,矢内勢司,松本元,出合輝行,橋本隆,門澤秀一,伊藤敬第26回日本乳癌検診学会学術総会,2016年11月4日(久留米)
・ DIEP flapの皮弁内静脈還流不全を認め静脈還流路の再建を要した1例 奥村興,吉岡剛,酒井玲子第43回日本マイクロサージャリー学会,2016年11月17日(広島)
(地方会・講演会、研究会)・ ICG蛍光法を活用した乳癌手術における腋窩リンパ節郭清省略へむけた取り組み松本元第8回若手臨床研究発表会,2016年1月29日(神戸)
・ シリコン製人工乳頭は手術でNACを再建する場合にも有効である奥村興,吉岡剛,久保あゆみ第21回日本形成外科手術手技学会,2016年2月13日(さいたま)
・ 形成外科医が思う「できればここを・・・」奥村興第3回群馬乳房オンコプラスティックサージャリー研究会,2016年2月13日(前橋市)
・ ホルモン陽性乳がんの術前化学療法‥‥効果追及のための薬剤選択と支持療法山神和彦第16回神鋼外科フォーラム,2016年3月10日(神戸)
・ Nipple-sparing mastectomy(NSM)における乳輪乳頭温存の条件山神和彦第6回神戸乳癌手術手技懇話会,2016年3月18日(神戸)
・ 乳房再建術をうける患者の術前・術後の看護 中村貴子,奥村興第6回Hyogo Breast Oncoplastic Surgery研究会,3月25日(神戸)
・ コスト削減にも努力している乳腺科だ!松山瞳第21回院内合同研究会,2016年5月14日(神戸)
・ 若年者にみられた巨大腫瘤の症例 線維腺腫?門澤 秀一第2回 Nara Breast Meeting,2016年8月6日(橿原)
・ 自宅で出来るリンパ浮腫ケア中村貴子第2回兵庫乳がんの輪,2016年9月3日(神戸)
・ DIEP flapに高度の鬱血を認めた1症例 酒井玲子,奥村興,吉岡剛第30回神戸形成外科集談会,10月23日(神戸)
・ 乳がん薬物治療を考える 医師・薬剤師間の連携の必要性と知識の共有山神和彦第1回神戸エリアファマシーセミナー,2016年11月16日(神戸)
・アフィニトール投与14名の解析山神和彦Meet the Expert in Kobe,2016年11月18日(神戸)
神鋼記念病院 乳腺センターの業績(2016年)
また、昨年は読売新聞(11月6日)、神戸新聞(11月19日)に本科の取り組みが紹介されました。さらに本院乳腺センターは、新聞・雑誌だけではなく、テレビ番組にも取り上げられました(“おはよう朝日です”2013年10月8日、2014年10月14日、2015年10月22日)。
腋窩リンパ節郭清とセンチネルリンパ節生検の割合(2016年)
日本並びに世界におけるICG蛍光法の採用
~2009
~2012
日本人乳房の形状に合わせやすいインプラント
乳房切除術(同時再建の有無)と乳房温存術の割合(2012-2016年)
腋窩郭清
84例(25%)
センチネルリンパ節生検246例 (75%)
330例
262例293例261例 287例 341例
0
20
40
60
80
100
2012 2013 2014 2015 2016
151例58%
148例51%
142例54%
66例25%
100例34%
99例38%
44例17%
193例57%
85例25%
63例18%
169例59%
67例23%
51例18%45例
15%21例8%
再建なし
再建あり
(%)
(年)
乳切術
温存術
0
1000
2000
3000
4000
5000
20162014201220102008
4800
20422463 2664
29633252
3594
(年)
4429 4412 4192
過去10年間の乳腺エコー件数
光るセンチネルリンパ節 図2図1 グラフ
6
図3 グラフ
7
(件数)・乳腺超音波検査 2011年4月より乳腺に特化した乳腺エコー検査室を創設、乳がんに特化することで、診断能力を上げています。2016年も4800例の乳腺エコーが実施されました(グラフ5)。高度な診断能力が評価され、他施設からのエコー診断困難な患者さんの紹介も増加しています。現在2名の専門技師が対応していますが、期待されるレベルも高く、患者さん1名あたりの時間がかかり、予約待ちが長くなっています。さらに、重点的に強化したい分野で、本科の豊富な患者数を背景に、指導者の元、しっかり勉強していただける超音波検査技師を募集し教育していきます。
・画像、病理診断部門との連携強化 本院乳腺センターには、乳がんを専門とする画像診断専門医(特に乳房MRI画像)が在籍しております。そして、2017年4月より乳がんに特化した病理診断医が着任し、より質の高い診断が可能となりました。手術前、治療方針決定のためのカンファレンス(話し合い)では、各領域専門医師、乳がん認定看護師が参加、意見をだしあい、精度の高い診断、治療に導かれていきます。また、本院健診部門(新神戸ドック健診クリニック、健診センター)、本院画像診断部門、乳腺エコー室ならびに各所属医師(乳腺科、放射線診断科、病理診断科、健診部門)による定期的な画像診断カファレンスを開催し、診断レベルの向上に努めています。
・2nd Opinion 近畿圏内を中心に、多くの患者さん、ご家族が本院乳腺科の2nd Opinion外来に来られています。また、本科にて診断、治療中の患者さんも、希望があれば他施設の乳がん専門医の意見・考えを聞かれる事(2nd Opinion)を推奨しています。開かれた乳がん診療をめざしています。
診断部門の進化(2016年) 治療部門の進化(2016年)
精神的ケアをはじめ、乳がんに対し前向きに対峙し、新たな情報を共有し、相互親睦を楽しむ事を目的とした患者会(神鋼リボンの会)を設立し、2012年より1年に2回、患者さんの会を開いています。詳細は、神鋼記念病院ホームページを参照ください。
(1) 検査時痛みを伴うマンモグラフィは乳腺濃度の高い日本人、特に若年者において、腫瘍の描出が困難な場合が問題です。画期的な新規画像診断を企業や大学との連携にて開発に着手しました。
(2) 乳がんにおける新規薬剤の臨床応用に関わり、個別化医療を推進していきます。(3) 本院薬剤部、医科歯科連携を中心としたチーム医療のレベルアップを図ります。(4) 遺伝カウンセリング、遺伝性乳がんの診断が開始され、他施設からの依頼も受け入れます。
神鋼病院乳腺科では、民間病院であるにもかかわらず、乳がん患者さんの数、手術件数が多い事を背景に、大学病院、がんセンターと同等レベルの臨床試験が可能な施設に選ばれています。日本では認可されていない薬剤や新たな使用方法での治療を行える可能性があります。さらに、乳がん診療の向上のため、企業や大学と連携し、乳がんの診断機材の研究開発にも参加しています。本科は京都大学乳腺外科の重要関連施設で、京都大学と緊密に連携し、斬新な診断・治療を行っていきます。
本科は橋本クリニック(神戸市東灘区)、であい乳腺消化器医院(北区)、小柴クリニック(中央区)、高村クリニック(灘区)、ふくはら乳腺クリニック(垂水)、まさい乳腺クリニック(芦屋市)、さきたクリニック(西宮市)、兵庫県立尼崎総合医療センター乳腺外科(尼崎)、神戸中央病院外科(北区)、神戸市立医療センター中央市民病院乳腺外科(中央区)等と連携し、兵庫県での乳がん地域医療の向上を推進していきます。
患者会
2017年の重点的目標
臨床試験の参加
連携施設
・ICG蛍光法によるセンチネルリンパ節生検 以前は腋窩リンパ節を郭清する(根こそぎ切除する)手術が標準治療でしたが、超音波検査で転移が無い患者さんには、最初に転移するリンパ節(センチネルリンパ節、みはりリンパ節)を手術中に見つけ、転移がない場合は郭清を省略する方法が標準治療となっています。この方法で、多くの患者さんが、腕のリンパ浮腫、知覚障害を回避できるようになりました。さて、センチネルリンパ節を見つける方法として従来から色素法とラジオアイソトープ(RI)法がありました。色素法は検出感度がやや低く、RI法は放射線同位元素を取り扱える施設のみの使用となります。浜松ホトニクス社と連携し、臨床応用を進めてきたICG蛍光法は、簡便で、精度が高い方法として認知され、乳癌診療ガイドライン(治療編、2015年版)に掲載されました。図1はICG蛍光法にてセンチネルリンパ節を検出している写真です。2016年は246例(全体の75%)に、ICG蛍光法によるセンチネルリンパ節生検を施行しました(グラフ6)。2013年には各大学病院、がんセンター等約400施設で採用されるに至りました。ICG蛍光法は日本から発信される先端手技であり、本科は欧米を中心にICG蛍光法を世界に紹介しています。世界標準手技に育てて行きたいと考えています(図2)。
・乳房同時再建 根治を損なわずに整容性(美容)をも良好に保つために形成外科との連携による乳房同時再建も本院乳腺センターの特徴です。以前のように温存術に偏りすぎた手術選択(無理した温存術)は、整容性(美容)が悪く、再発のリスクが高くなります。乳房同時再建術の基盤となる学会が日本乳房オンコプラスティックサージャリー(腫瘍形成外科)学会です。同学会総会(第4回 2016年10月6日、千葉)にて本院乳腺科、形成外科が依頼講演を行いました(シンポジウム1、パネルデスカッション3)。また、本院は同学会の人工物(シリコンインプラント)(図3)、あるいは自家組織(背中の筋肉やお腹の脂肪組織)を用いた同時再建可能な施設として認定されています。本院では、乳腺切除術は乳腺外科医が、乳房再建手術は形成外科が行う、完全分担制をとっています。(A)自家組織による乳房再建は高度な技量が必要で、形成外科の専門領域である。(B)人工物による乳房再建においても形成外科が施行する方が,乳腺外科単独で行うよりも明らかに出来栄えは良好である。以上が主とした理由です。しかしながら、緊密に両科の連携がとれている施設が少ないのが現状です。グラフ7は、過去5年間の乳房切除術(同時再建の有無)と温存術の比率を示しています。2016年は63例の同時再建(全体の18%)を施行しており、同術式を希望される割合が増加しています。各地の乳がん専門病院から乳房同時再建術を目的とした患者さんの紹介を数多く受けています。また、本院乳腺科医、形成外科医に他施設から出張手術や手術指導を依頼される場合もあります。
・医科歯科連携と遺伝カウンセリング 両事案は、2016年度の重点目標でした。医科歯科連携は神戸市歯科医師会を通じて連携施設を御紹介していただき2017年5月で約330施設の歯科クリニックとの連携が可能となっています。口腔内ケア(清浄に保つ事)で手術の合併症の低減、抗がん剤、分子標的薬剤に起因する口腔内副作用(主として口内炎)の予防が期待できます。また、本院にて遺伝カウンセリングが開始されました。遺伝性乳がん(全乳癌の5-10%)の診断に関しては、十分なカウンセリング後に、検査を行う事の利益、不利益を考えていただき、希望される方に検査(血液検査)を行います。さらに、一部の遺伝性乳がんに効果のある新薬が本邦にても認可されると思われます。使用するにあたり遺伝性乳がんの診断が必要となり、遺伝カウンセリングは必須事項となります。これらは、本院だけでなく、地域の病院にも利用していただけたらと考えています。
【乳腺科】・山神和彦 部長兼乳腺センター長 京都大学医学部乳腺外科非常勤講師 :日本乳癌学会専門医、同評議員、日本乳房オンコプラステック サージャリー学会乳房再建用エキスパンダー/インプラント責任医師・松本 元 医長兼乳腺副センター長:日本乳癌学会専門医・矢田善弘 医長:癌治療認定医・結縁幸子 医長:日本乳癌学会専門医、日本医学放射線学会認定放射線診断専門医、 日本医学放射線学会画像診断ガイドライン委員・矢内勢司 医長:日本乳癌学会認定医・橋本 隆 非常勤医師:日本乳癌学会専門医・一之瀬庸 非常勤医師:日本乳癌学会専門医・出合輝行 非常勤医師:日本乳癌学会認定医【乳腺エコー室】・山神真佐子 乳腺エコー室長:日本超音波医学会認定超音波検査士(体表領域)・曽山ゆかり 乳腺エコー技師:日本超音波医学会認定超音波検査士(体表領域)【看護師】・中村貴子 乳がん看護認定看護師、リンパ浮腫指導技能者
【形成外科】・奥村 興 科長 神戸大学臨床講師 :日本形成外科学会専門医、 日本乳房オンコプラステックサージャリー学会 乳房再建用エキスパンダー/インプラント責任医師・吉岡 剛 医師:日本形成外科専門医・木下恵里紗 専修医【病理診断科】・田代 敬 医長 乳腺病理担当 :日本病理学会専門医、日本臨床細胞学会専門医【放射線診断科】・門澤秀一 部長:日本医学放射線学会認定放射線診断専門医、 日本医学放射線学会画像診断ガイドライン委員、 日本乳癌画検診学会ガイドライン委員・大木穂高 医長:日本医学放射線学会認定放射線診断専門医・川口晴菜 医師:日本医学放射線学会認定放射線診断専門医
神鋼記念病院乳腺センタースタッフ
グラフ
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