title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4....

18
Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と くに前立腺分泌能との関係について-- Author(s) 眞田, 俊吾; 吉田, 修 Citation 泌尿器科紀要 (1985), 31(11): 1971-1987 Issue Date 1985-11 URL http://hdl.handle.net/2433/118663 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversion publisher Kyoto University

Upload: others

Post on 23-Mar-2021

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --とくに前立腺分泌能との関係について--

Author(s) 眞田, 俊吾; 吉田, 修

Citation 泌尿器科紀要 (1985), 31(11): 1971-1987

Issue Date 1985-11

URL http://hdl.handle.net/2433/118663

Right

Type Departmental Bulletin Paper

Textversion publisher

Kyoto University

Page 2: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

1971

泌尿紀要31巻11号

1985年11月

男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量一 と くに前 立腺 分泌 能 との関係 につ いて一

京都大学医学部泌尿器科学教室(主 任:吉 田 修教授)

眞 田 俊 吾*・ 吉 田 修

ZINC CONCENTRATIONS AND TOTAL AMOUNT OF ZINC

IN SEMINAL PLASMA OF INFERTILE MEN WITH SPECIAL

REFERENCE TO PROSTATIC SECRETORY FUNCTION

Shungo SANADA and Osamu YOSHIDA From the Department of Urology, School of Medicine, Kyoto Unioersity

(Director: Prof. 0. Yoshida)

The exact relationship between seminal plasma zinc and fertility is not known. Zinc is

secreted mainly by the prostate, and zinc concentration in seminal plasma is regarded as an excellent indicator of prostatic secretory function. However, low zinc concentration may result

not only from poor secretory function of the prostate but also from dilution due to excessive

secretion of seminal vesicular fluid. This assumption is supported by the present result that

zinc concentration was inversely correlated with fructose concentration. Therefore zinc con-centration is thought to reflect prostatic function in proportion to seminal vesicular function.

Total amount of zinc in seminal plasma seems to be an appropriate indicator for prostatic

secretory function. In the present study, concentrations and total amount of zinc were

examined in seminal plasma of men with various fertility problems.

There were no significant differences between men with normal spermodiagram and those with abnormal spermodiagram, seminal inflammation or varicocele in concentration or total

amount of zinc. No changes were observed in any of them after various therapies including

oral zinc sulfate. However, the percentage of men with normal spermodiagram was low in

the group with extremely low or high zinc concentration and total sperm count tended to

increase with increase in total amount of zinc. Furthermore, the spermatozoa) motility was

better in the prostatic fraction than in the vesicular fraction of split ejaculates, and the

percentage of men with decreased motility and normal sperm concentration was significantly high in the group with lower zinc concentration or decreased total amount of zinc. These

observations indicate that prostatic secretion has a stimulatory effect on spermatozoa) motility. The secretory activities of the prostate and the seminal vesicle are generally known to be

closely controlled by androgens, but our findings indicate that the secretory functions of

these accessory organs are independent because there was no correlation between total

amount of zinc and fructose.

Analysis of the relative concentrations in prostatic secretion, split ejaculates, and seminal

plasma confirmed an almost exclusively prostatic origin of zinc. As part of the routine andrologic examination, measurment of concentration and total amount of zinc in seminal

plasma is useful for evaluating prostatic function, but measurement of acid phosphatase, magnesium, calcium or potassium will provide almost as much information, since they also

seem to be secreted primarily by the prostate.

Key words : Male infrertility, Zinc in seminal plasma, Prostatic secretory function

*現:大 阪赤十字病院

Page 3: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

1972

緒 言

泌尿紀要31巻11号1985年

1921年BertrandとVladescoが は じめて 人精漿

中に高濃度の亜鉛が 存在す るこ とを 報 告 し1),そ の

後それが前立腺に由来す ることが あき らか に さ れ た

が2"'5),精漿中に高濃度の亜鉛 が存在する ことの 生理

的意義はあ きらか ではない,

精漿中亜鉛濃度 と男子不 妊症 の関係を検討 した報告

は多いが,そ れ らの相関性につ いては諸家に よって一

定 していない.精 子濃度,精 子運動性,生 存精子数,

精子の形態 などのパ ラメーターに異常を示す患者 では

亜鉛濃度が 低下 していた との報告」P5--9),亜鉛濃度が

低値 を示す患者では精子運動性や精子 の形態に異 常を

示す ものが多い との報告がみ られるほか10・11),精液所

見 とは無関係に,子 供 のいない男子 では低亜鉛 を示す

ものが多い とい う報告 もあ る12).し か し,こ れ ら精液

パラメーターと亜鉛濃度の間にはなん らの相関を も認

めなか った とい う報告 も少 くない13A'i7》.

い っぼ う,精 液パ ラメーターとは別に,慢 性前立腺

炎患者 では前立腺分泌液 あるいは精漿中 の亜鉛濃度 が

低下 しているとい う報告が多 く6・ll・16'v2e),前立腺炎 と

亜鉛濃度が低い ことの間には強い因果関係がある とさ

れ てい る,す なわ ち,前 立腺炎が前立腺か らの亜鉛分

泌を低下させ るとも考え られ るが,前 立腺 分泌能 の低

下が前立腺炎 の発生に原因的意義を有す るとも考え ら

れ る.

精漿 中亜鉛濃度が低値を示す不妊患者や慢性前立腺

炎患者 を硫酸亜鉛に よって治療 し,有 効 であ った とい

う報告 も散見 される6・11・19).それ らに よる と,硫 酸亜

鉛 の経 口投与に よって精漿中亜鉛濃度が上昇 したばか

りでな く,不 妊患老 では精子濃度や 運 動 性 な ど パラ

メーターの改善 がみ られたほか,一 部 に 妊 娠 が 得 ら

れ6・11),前立腺炎患者 では炎症 の軽快がみ られた とい

う6・19).

これ らの報告 ではいずれ も,精 漿中亜鉛濃度 を前立

腺分泌能を反映す るもの として,不 妊症や前立腺炎 と

の関係が検討 されてい る.し か し,精 漿 は単一臓器に

由来する ものではな く,睾 丸 と副性器(副 睾丸,精 管,

前立腺,精 嚢,Cowper腺,尿 道腺)に 由来す る諸成

分が混合 した ものであ り,亜 鉛濃度は前立腺以外の成

分,こ とに精嚢分泌液に よっても強 く影響 され ると考

え られ る.精 液はその容最 の30%が 前立腺,60%が 精

嚢に由来す るといわれ てお り21),亜鉛濃度 の低下の原

因 としては,Marmarら も指摘 しているよ うに6),前

立腺分泌能の低下に よる場合 と,精 嚢分泌液に よって

過剰 の希釈を受 ける場合 とが想 定され る.

われわれは,前 立腺個有 の分泌能を反映す るもの と

しては前立腺 よ り精液中に分泌 され る総亜鉛量が適当

であ り,精 漿中総亜鉛量(精 漿中亜鉛濃度 ×精液量)

がほぼそれに近い と考 えた.本 研究 では不妊男子の臨

床所見 との関係を,亜 鉛濃度 と総亜鉛量 の両面か ら検

討 したが,前 立腺 分泌能 と精子運動性に密接な関係が

あることや,い ずれ もア ン ドロゲ ン依存性 と考え られ

てい る前立腺 と精嚢 の分泌能がparallelな ものでな

く,互 いに独 立 していることを示唆す る結果を得 たの

で報告する.

また,お もに前立腺由来 とされ る精漿 中の酸 フォス

ファターゼ,Mg,Caに っ いて,前 立腺 分 泌能 の指

標 としての有用性を亜鉛 と比較検討 し,さ らに精漿中

の亜鉛結合物質について も若 干の検討 をおこな ったの

で,あ わせて報告す る.

対象および方法

対象は1981年3月 か ら1984年1月 の間に当科男子不

妊外来を受診 した患者 の うちの347症 例 であ り,染 色

体異常,精 路閉塞性疾患,内 分泌疾 患,全 身疾患を有

す るものは含 まれず,年 齢は20歳 か ら50歳,平 均32.4

歳である.大 部分が未 治療 の症例 であるが,す でに治

療 を受 けてい るもの も少数 含まれ ている(結 果1,W,

田 の一部).

精液は当科外来に て3日 以上 の禁欲期間の後,用 手

法に よ り重金属の汚染 のない清浄な ガラス容器に採取

された.採 取後2時 間以 内に精液量,粘 禰度,精 子濃

度,運 動率,運 動指数,奇 形率,白 血 球数 が算定 され

た.運 動指数は運動率に前進運動の強弱を加味 した も

のであ り,西 川 らの提案22)に従 った.な お本報告に お

け る運動率,運 動指数の算定は,光 学顕微鏡に よ りす

べ て同一人に よってお こなわれ た.一 般精液検査 の後,

精液を2,000rpm,20分 聞遠心 して精漿を分離 した.

精液採取直後 に得 られだ 末槍静脈血血 清 の 一 部 は

RI法 に よるLH,FSH,テ ス トステ ロン,プ ロラ ク

チ ンの測定に供 され,一 部は亜鉛測定用 として冷凍保

存 された.

前立腺分泌液はすべ て同一人に よる経直腸的前立腺

マ ッサ ージに よって採取 された.

亜鉛測定に用 いた血清,精 漿,前 立腺 分泌液は測定

まで 一20℃ に冷凍保存 し,測 定のさいには血清は3

倍に,精 漿お よび前立腺分泌液は1,000ま たは2,000倍

に,そ れぞれ蒸溜水で希釈 した後,原 子吸光法(島 津

原子吸光 計AA-646型,分 析 波 長213.8mm)に て

2度 測定 し,そ の平均値 を採用 した.

精漿中酸 フ才ス ファターゼ は精 液 採 取 後3~5時

Page 4: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

眞 田 ・吉田:男 子不妊症 ・精漿中亜鉛

間 の問 にKind-King法 に よ り 測 定 され た.ま た 果

糖 は 酵 素法 に よ り,Mgお よびCaは 比 色 定 量 法

(Magnesium。testWAKOお よびCalciumC-test

WAKO)に よ り,Na,Kは 炎 光 光 度 法 に よ り,Cl

は電量 滴 定 法に よ り,そ れ ぞ れ24時 間 以 内に 測 定 され

た,

統 計的 解 析 に は デ ー タ の性 質 に応 じてt検 定,x2検

定を 用 い,有 意 水準 は5%を 採 用 した.

結 果

1.前 立腺分泌能の指標 と しての精漿中亜鉛濃度 およ

び精漿中総亜鉛量の評価

われわれ も他 の報告老 と同様精漿中亜鉛濃度 と不 妊

男子 の臨床所見 の関係について検討 をは じめたが,精

漿中亜鉛濃度が低 くなるほ ど精液量 が多 くなる傾向に

気付いた(TablelA).精 液量 は前立腺分泌液量に よ

っても左右 されるが,も っとも強 く影響を与え るのは

精嚢分泌液量である.わ れわれは73症 例につい て亜鉛

と,精 嚢由来 とされる果糖23・24)の,精漿 中 濃 度 の 関

係を検討 した ところ,有 意な負の相関を認 め た(r=

-o .530,p〈o.ool)(Fig.IA).こ れ は前立腺分泌液

と精嚢分泌液が希釈に よって互 いに他方の成分 の濃度

に影響をお よぼ し合 うことを示す ものであ り,前 立腺

機能に異常が な くて も精嚢 分泌液が過多であれ ば,結

果的には精漿 中亜鉛濃度が低値 を示す ことになる.

精漿中の亜鉛を前立腺分泌能の指標 と見なす場 合,

亜鉛濃度は精嚢 との相対的な前立腺 の機能 を示す もの

1973

であ り,前 立腺個有 の機能 の指標 としては精嚢成 分の

影響 の少 い精漿中総亜鉛量が適当と考え られる.

H.精 液所見 と精漿中亜鉛濃度および精漿中総亜鉛量

1.精 液所見か らみた各種 不妊症 お よび精系静脈瘤

におけ る精漿 中亜鉛濃度,総 亜鉛 量(Fig.2)

精系静脈瘤 を認め ない患者を精子濃度,運 動率に よ

って,正 常(精 子濃度≧40×106/ml,運 動 率≧60%),

乏精子症(〈40×106/ml,≧60%),無 力 精 子 症(≧

40×io6/ml,<60%),乏 無力精子症(<40×106/mI,

<60%),無 精子症に分類 し,さ らに精子濃度,運 動

率 とは無関係に精系静脈瘤 の1群 を加 え て 計6群 と

し,そ れぞれの精漿 中亜鉛濃度(Fig.2A),総 亜鉛量

(Fig.2B)を 示 した.亜 鉛濃度,総 亜鉛量 ともに広い

範囲に分布 してお り,正 常群 と異常群の間に有意差を

認めず,ま た各異常群間に も有意差はなか った,

2.亜 鉛濃度お よび総亜鉛量に よって分類 した各群

の精液所見(Tab旦e1,Fig.3)

患者 を精漿中亜鉛濃度に よって7群 に,総 亜鉛量に

よって9群 にわけ,Table1に はそれ ぞれ の パ ラメ

ーターを,Fig.3に は各群の精液所 見の内分 け を示

した.な お精系静脈瘤の存 在が亜鉛濃度や総亜鉛量,

精液所 見に影響をお よぼす 可能性 を考慮 し,精 系静脈

瘤患者は除外 してある.

TableIAで は,前 述 した ように亜鉛濃度が高い群

ほど精液量が減少す る傾 向がみ られるほか,亜 鉛濃度

の著 しく低 い群(50μ9/ml以 下)ば か りでな く極端

に高い群(301μ9/ml以 上)で も精 子 濃 度,総 精子

6.0

葺50

嚢・・歪

蓮 ・・

§

塁 。。§

当蓋1沿

0

A

● △

覧 ●

\ ・,●  コ

\♂ ●● ム

・.※ ●・・● ご

'\ ・

、='…

     ロ サ

監:● ・

o

n=73

r=0.530(P〈0.00の

ソヨ  ロむお むメ ヨロフヨ

(A)

100200300400500600

Zinccor嘘entrat㎞insesnimalpbsπ に(μ9/m2)

30

蓋§9

置の

量203塾

§ヨ

塁§

10も

§童

0

●,

,;r

.二

=

● ●

● ●

● ●

壽 ● ・

さ軸 

亀●● ・ 

、=',

●●●

n=ア3

r呂O.079(N.S,)

(B)

10002000SOOO

Totalamountofzincinsemha:P幅5ma(P91Ejaculate)

●:Treeted

▲:Untreated

Fig.1.Correlatlonbctweenzincandfructoseconcentrationinseminalplasma(A)and

c・rrelati・nbetweent・talam・unt・fzincandfruct・seinscminalplasma(B).

Page 5: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

1974

(A)

550

500

450

4co

ミ35。

9

霧300

1250

12001

15・

嵩1。。

50

0

…:

 

署 馨卓

!∴・・:

蚤 臨 誓

毒'

:

:

:

蚕 三

終崔喜

8)

蹴釜

:

:

:

呂「

£∫

:

§

泌 尿紀要31巻11号1985年

コぼロ

1・・

:

:

:

望●

6

8

'

o

三峯

δ

i

1穿1宣

(B)

2750

奪昌

皇窪

§ロニ

三暑

2500

22㎝

2000

1750

1500

1250

1000

750

500

a50

0

:

2

葦… ξゴ ・ …の

璽●

董の

:

8

8

0

::

:

書3

}

言o

二鋤

:

i:

 

f●

:.sclo

:

:言

M.:Mean》a「ue

S.D.:Standardde》btゆn

1賓藤 紳1量

・遷

Fig.2,Zincconcentration(A)andtotalamountofzinc(B)insem童nalplas皿aofmen

wlth…m・z・ ・rP・・mi…li9・ ・…permi・ …th・n・ ・…perm至 ・,・lig・a・th・ ・・・…per-

1nla,azoospermlaandvaricocele.

数,運 動率,運 動指数が低 く,Fig.3Aか らもこれ

ら2群 ではその中間群に比較 して正常精液所見 を示す

ものの割合が小さいことがわかる.TablcIBを み る

と,総 亜鉛量が多 くなるほ ど,精 液量が多 く,ま た総

精子数が増加す る傾向を認 める.

もっとも注 目されたのは,亜 鉛濃度,総 亜鉛量がい

ちじる しく低下 した群に,精 子濃度は正常 であ って運

動性 のみ障害 された無力精子症の占める割合が高い こ

とである(Fig・3A,B)・ 亜鉛濃度 で50μ9/ml以 下

の患者 では26.7%と,51μg/m1以 上 の患者の5.9%よ

り有意に高率であ り(Pく0.05),ま た 総亜鉛量 で200

μ9/ml以 下 の患者 では24・o%と,201μ9/ml以 上 の

患者の5.3%よ り有意に高率であった(P〈0.005).

3.精 路炎症 と精漿 中 亜 鉛 濃 度 お よ び総 亜 鉛 墨

(Tablc2)

今回の対象 の中には前立腺炎 または精嚢炎 を疑わせ

る自覚症状 を持 った症例は含まれ ていないが,精 液検

査の さい400倍 で1視 野に10個 以上 の白血球を認めた

症例を精路炎症 と考 え,そ の精漿中亜鉛濃度,総 亜鉛

量について検討 した。精系静脈瘤がな く正常精液所見

を示す対照 群 と比較 したが,い ずれ も有 意差を認めな

か った。

皿.血 清亜鉛濃度,性 ホルモ ンレベルと精渡中亜鉛濃

度および総亜鉛量(Table3)

血 清中の亜鉛濃度,LH,FSH,テ ス トステ ロン,

プロラクチ ンの精漿中亜鉛濃度,総 亜鉛量にお よぼす

影響 を検討す るため,一 部の患老か ら精液採取時に同

時に採血 して,こ れ らを測定 した.Table3Aに は精

漿中亜鉛濃度 との関係を,Table3Bに は精漿 中総亜

鉛量 との関係を,相 関係数 で示 してあるが,精 漿 中亜

鉛濃度 と血清テス トステ ロンの間に弱い正の相 関を認

め る以外に有意 の相関はみ られなか った.

IV.各 種治療 による精漿中亜鉛濃 度および総亜鉛量の

変化(Table4,5)

Page 6: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

Table1.

貫田 ・吉 田:男 子不妊症 ・精漿中亜鉛

Semenparameteringroupsofmenwithdifferentzinc

concentrationinseminalplasma(A)andthosein

gro叩sofmenw三thdifferenttotalamountofzincin

seminalplasma(B).

1975

(A)Semenpararneter5(Mean±Standarddeviatioo》

ZincNL"nber

corcentrationof

("9/mのsujects

Vdum・㎝鼎 、ca讐mM・ ・ility

〔mの(Xloelm2)(X10'!EiaOdete)〔%)

Mσしility

sca'e

0~50

5T--100

101~150

151~200

201~250

251-・3eo

301~

15

47

56

48

33

18

19

4.4±2.3

4.0±1.7

4.1±L7

4.0±1.6

3,4±1.5

2.7±0.8

2.8±1.3

37±28

46±41

43±43

49±48

73±87

55±59

42±61

138±11654±3040±27

168±16064±2049±18

164±16964±2349±21

191±18859±2741±23

264±36266±2449±22

144±15158±1943±19

87±9853±2739±21

(B)

Semenparameters(Mean±StardSarddeviati㎝)

TetalamOUIt

ofzi「C

(tt9!Ej∂culate}

Number

of

馴bJ㏄ts

・・㎝・ ㎝ 翻,、 ㎝ 丁聯m…ili・ ・(mの(x1061m2){x10●1Ej礁}(%)

Mσしility

score

0~200

201~300

301~400

401~500

501~600

601~700

アOl--800

801~1000

1001~

25

25

29

34

24

25

21

25

26

2.6±1.2

3.6±1.9

3.7±1.2

3.4±1.3

3.5±1.7

3.8±1.5

4.2±1.3

4.8±1.9

5.3±1.8

52±42

47±48

49±44

60±71

46±55

38±41

47±46

47±59

52±60

124±11157±2343±20

145±12568±1553±15

175±17763±2849±23

165±15570±1754±17

159±19555±2137±18

132±13555±2932±24

181±17358±2539±23

206±25664±2649±23

287±36761±2644±22

精漿中亜鉛濃度が低値を示 した末治療 の患老22症 例

に対 して,硫 酸亜鉛 を連 日200mg,2,9ヵ 月か ら12.9

ヵ月(平 均7.4ヵ 月)経 口投与 し,精 液 パラメーター,

精漿中亜鉛濃度,精 漿中総亜鉛量,血 清LH,FSH

の変動を観察 したが,い ずれ も有意 な増減は認めなか

った(Table4).

また当科に おける不妊症 の代表的 な治療法や,精 系

静脈瘤に対す る内精静脈高位結紮術,精 路炎症に対す

る化学療 法などに よって も,亜 鉛濃度,総 亜鉛量 に著

明な変動はみ られなか った(Table5).

V.精 漿,前 立腺分泌液,分 画精液 の亜鉛濃度の比較

(Fig,4)

末治療 の13症 例に,そ れ ぞれ 同一 の禁欲期間を設 け

て,通 常の精液採取,マ ッサージに よる前立腺分泌液

採取,精 液 の分画採取 をおこない,亜 鉛濃度を比較 し

た.な お分画精液 も精漿 として亜鉛濃度を測定 してあ

る。分画採取に よって得 られた精液 の前半の ものはお

もに前立腺に由来 し(前 立腺 分画,fractionI),後 半

のものはお もに精嚢に 由来す る(精 嚢分画,fraction

II).こ れ らは純粋な前立腺分泌液 と精嚢分 泌 液 を 意

味す るものではな く,混 合比 も個人に よ り,採 取法に

よって一定 した ものではな いが,亜 鉛濃度は前立腺分

泌液〉前立腺分画〉精漿〉精嚢分画であ った,こ れ ら

の濃度 を比較 して も,精 漿中 の亜鉛の大部分が前立腺

分泌液に由来 し,精 嚢 分泌夜中には きわ めて希薄 であ

るこ とがあ きらかであった.

VI.前 立腺分泌液中亜鉛濃度 と精漿中亜鉛濃度お よび

精漿 中総亜鉛量(Fig.5)

126症 例に対 して,精 液採取後1ヵ 月以 内に精液採

取時 と同一 の禁欲期 間を設 けて,前 立腺 マ ッサージに

よる前立腺分泌液採取 を試みた.分 泌液 は膀胱 内に逆

流す ることが多いため,必 ず しも採取で きるものでは

ないが,そ の うち60症 例に分泌液が得 られた.前 立腺

分泌液中亜鉛濃度 と精漿 中亜鉛濃度(Fig.5A),前 立

腺分泌液中亜鉛濃度 と精漿 中総亜鉛量(Fig.5B)は,

いずれ も正の相関を有す るものの,予 想 した ような強

い相関は認め られなかった.な お,分 泌液 を採取 しえ

た60症 例 と採取 しえなかった66症 例(Nosecret量on)

の精漿中亜鉛濃度お よび精漿中総亜鉛量 にはいずれ も

有意差はなか った.

可.分 画 精液 における 精 液 パ ラメ ーター と亜鉛濃度

(Table6)

Table6に 精液の分画採取に よって得 られ た28症

例の前立腺 分画 と精嚢分画のパ ラメーターと亜鉛濃度

Page 7: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

1976 泌 尿紀要31巻11号1985年

(A)

Zincconcentrati◎n

(μ9/mのNormozoospermia Oligozoospermia

OligoasthenOZ◎ ◎spermle

・sthen・ …sp・ ・m・・ ↓ ・z・・spe…

O-50

51-100

101-150

151-200

201-250

251-300

301一

n=15

n=47

n=56

n=48

n=33

n=18

n=19

(B)

Totalamountsofzinc

(μ9/Ejauulate)

Normoz◎osperrn治 Oligoz◎ospermlaAsthenoz◎ospermia

Otigoasthenozoosper-rnia

↓一…0-200

201-300

301-400

401-500

501-600

601-700

701--800

801-1000

1001一

n=:25

n・25

n=29

n=34

n=24

n==25

n=21

n==25

n=26

*PくO.e5**P<0.005

Fig.3.Percentagesofnormozoospermia,oligozoospcrmia,asthenozoospermia,oligoasthe-

nozoospermiaandazoospermiaingroupsofmenwithdifferentzincconcentration

inseminalp正asma(A)andthQseingroupsofmenwithdifferenttotalamount

ofzincinseminalplasma(B).

Table2.Zincconcentrationsandtotalamount

ofzincinscminalplasmaofmenwith

normalspermodigramandofmenwith

selninalinflammation(mean±S,D.)・

NumberofZhcTbtalamount

suヒ)jectsconcentrationofzinc

(Pt9/m2)(μ9!Ejewlate)

Normozoospermia

Inf白mmation

71

49

168±87

148±80

581±331

484±305

を示 した.た だ し無精子症は含 まれていない.精 子濃

度,運 動率,運 動指数,亜 鉛濃 度のいずれ もが,前 立

腺分画 で有意に高か った.ま た運 動率に差が ない場合

で も,前 進運動を考慮 した運動指数 を比較す ると,前

立腺分画 で良好な ことが多か った.

なお同時に測定 した酸 フ ォスファターゼ,Mg,Ca

は,い ずれ も前立腺分画で有意に高 く,こ れ らもおも

に前立腺 よ り分泌 され ると考え られた。

W.精 漿中 亜鉛 と精 漿 申酸 フォスファターゼ,Mg,

Ca,果 糖,Na,K,C1(Table7,Fig,1,6)

一部 の症例において,精 漿中亜鉛 とともに精漿中酸

フ ォスファターゼ,Mg,Ca,果 糖,Na,K ,α を測

Page 8: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

Table3.

翼 田 ・吉 田:男 子 不 妊 症 ・精 漿 中 亜 鉛

Correlationcoefficientsbetweenzincconcentration

inscminalplasmaandzincconcentration,LH,

FSH,testosteroneandprolactin(PRL)inblood

serum(A)andthosebetweentotalamountof

zincinseminalplasmaandzincconcentration,

LH,FSH,testosteroneandPRLinbloodserum(B).

1977

(A)Concentrationinserum

Zinc LH FSH ↑estoste「one PRL

n

67

0.040

201

-0 .051

201

0.018

64

0.337*

123

0.053

*PくO.Ol

(B)

C㎝centrationinserum

Zinc LH FSH Test◎ste「one PRL

n

r

66

0.096

199

-0 .047

199

0.007

65

0.159

121

0.052

Table4.Semenparameter,zincconcentrationandtotal

amountofzincinseminalplasmaandserum

gonadotropinsbeforeandaftertreatmentwith

oralzincsulfate(mean±S.D.).

Before After

Volume(ml)

Spermconcentration(×106/ml)

Totalspermcount(×IO6/Ejaculate)

Motility(%)

Motilityscore

Zincconcentration(P9/ml)

Totalamourltofzinc(μ9/Ejacu[ate)

SerumLHlevel(ng/m2)

SerumFSHIevel(ng/m2)

4.7±1.94

22.9±21.28

98±88.5

55.0±21.04

38.0±18.69

108±40.9

492±274.1

19.1±7.44

14.1±7.49

4.8±2.04

25.2±29.23

111±101.6

57.2±22.44

40.0±19.93

119=ヒ65.1

540±361.7

18.6±9.44

16.8±15903

(n=22)

Table5 Zincconcentrationandtotalamountofzincinseminal

plasmabef()reandaftervarioustherapies(mean±S.D.).

叢 懸 ・Zincconcentration

(μg/nd)

Tc》talarnQし 」ntofzinc

(μ9/Ejaculate)

Befαre After Before After

Clomiphenecitrate

HCG十HMG

HMG

FIuoxymester◎ne

ATP十VB1十VB,2

ATP十VB匹 十VB聰2十Kallldlno琶ena5eH圏9hligeti◎nρfthespermatlCvelnfor》ar圏COGeleAntimicrobialsforlnflammat幽on

20

9

11

12

9

7

13

6

5.9

6.5

7.7

6.7

3.4

5.6

7.1

1.2

197±95

126±63

198±170

169±101

131±73

124±75

185±95

150±46

219±138

141±76

225±181

172±114

135±71

132±74

188±147

158±47

740±340

488±252

518±328

679±422

655±369

592±402

583±308

558±341

651±271

678±458

704±408

635±398

657±371

680±384

499±295

575±274

Page 9: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

1978

800

泌尿紀要31巻11号1985年

700

600

管葛500s

量笥400

§

器2300

8

,睾N200

100

 くり   

一π

Pく0,0el-Pく0.00TP<0.005一 一 一

OProstaticSeminalF

ractionIplasmasecretio自

Mean488260130

SD,12615064

FractionE

69

42

Fig.4.Zincconcentrationsinprostaticsec-retion,splitejaculatesandseminal

Plasmaofthirteenpatients.

定 し,亜 鉛 との相関性 を検討 した.精 漿 の量が限 られ

ているため,必 ず しも全項 目を同時に測定 してはいな

い.そ れぞれの精漿中 の濃度は血 清中濃度に比べ て,

酸 フォスファターゼ,亜 鉛はいち じる し く高 値 で あ

り,Mgは5~20倍,Caは2~5倍,Kは4~10倍

であ り,Naは やや低値,Clは1/3~1/5と 低値 であ

った.Table7Aに は亜鉛濃度 とそれ らの濃度 の関係

を,Table7Bに は総亜鉛量 とそれ らの総含有量(精

漿中濃度 ×精液量)の 関係を,相 関係数 で示 し て あ

る。

Wで 亜鉛 と同様,お もに前立腺に由来す ると考 え ら

れた酸 フォスファターゼ,Mg,Caは,濃 度,総 含有

量 ともに,亜 鉛 と強 い正の相関を有 してい る(Table

7,Fig.6).精 嚢由来 とされる果糖は,前 に述 べ た よ

うに濃度で亜鉛 と負の相関を有 してい るが,総 含有量

ではなん らの相関性を も認め ない(Table7,Fig.1)

生体の代表的電解質であるNa,K,Clの うち,Kは

濃度,総 含有量 ともに亜鉛 と強 い正の相関を有 し,K

がお もに前立腺 よ り分泌され ることを 示 して い る.

Naは 濃度,総 含有量 ともに亜鉛 と弱い正 の相関があ

り,Clは 濃度 で亜鉛 と負の相 関を有 してい るが,総

含有量 では相関性を認め ない.本 報告 では示 してい な

いが分画採取に よれば,Na濃 度は前 立腺分画 でやや

高 く,CI濃 度は精嚢分画でやや高 い.こ れ よ り,Na,

CIは 前 立腺,精 嚢 のいずれ よ りも分泌 され るが,Na

は前立腺か らよ り高濃度に,C1は 精 嚢か らよ り高濃

度に分泌 され るもの と考え られ る.

】X.亜 鉛 と酸 フォスフ ァターゼ,Mg,Caの 前立腺機

能の指標 と しての特異性(Fig.7)

酸 フ ォス ファターゼ,Mg,Caも 前立 腺 分 泌 能 の

指標 とな りうると思われ るが,そ の特異性を,分 画射

精に よって得 られた前立腺分画中 と精嚢分画中の濃度

比に よ り検討 した,亜 鉛 と同 じく大部分が前立腺 より

分泌 され,精 嚢 分泌液に よって同様 の希釈を受ける場

合にはFig.7に おけ るY=Xの 形 を とると考え ら

れるが,酸 フォス ファターゼ(Fig.7A)が もっとも

これに近 く,亜 鉛 とほぼ同様 の分 泌様式 と考 え られ

る.Mg(F三9.7B),Ca(Fig.7C)は 亜鉛 に比 ぺ て

前 立腺分画 と精嚢分画 の濃度比がやや低 いパター ンを

示 してお り,こ れ らの重金属は精嚢 よ りもある程度分

泌され るもの と考え られる.

X.ゲ ル クロマ トグラフィー によ る精漿中亜鉛結合物

質の検討(Fig.8)

SephadexG-75ゲ ル クロマ トグラ フィーに よ り亜

鉛結合物質を検討中であるが,そ の代 表 的 な結 果 を

Fig.8に 示す い まだ症例は少ないがいずれ も類 似

したパ ターンを示 し,約60%の 亜鉛 はfreeの 状態か

3,000以 下 の低分子物質 と結合 していると考え られ,分

子量80,000以 上に も小 さなpeakが 見 られ る,ま たこ

れ らの中間に も亜鉛 の分布 を認め る.

同時にMg,Caに つ いて も検討 したが,亜 鉛 と異

り大部分が分子量3,000以 下 の部分に分布 していて,こ

れ らの重金属は精漿 中ではfreeか,ご く低分子 の物

質 と結 合 した状態に あることを示 してい る.

考 察

亜鉛は1939年Kle三linとMannに よってCarbo-

nicanhydraseに0.33%含 有されている こ とが あ き

らかに され,生 体 の必須金属 として重視 される ように

な った.生 体に おける亜鉛 の機能は お もに 触 媒 作 用

であ り,各 種酵 素の活性に重要な役割を 果 た し て い

る.亜 鉛をその構成成分 としてい る金属酵素 としては

Carbonicanhydrase,Alkalinephosphatase,Car・

boxypeptidaseA,Bな ど多数あげ られ るが,DNA

合成に亜鉛 が必須 であることや,亜 鉛が各種細胞に膜

安定化作用 を有す ることも知 られてお り,DNA合 成

に必要 な酵素や細胞膜を調節す る酵 素の活性に も亜鉛

が重要 な働 きを してい ると考 え られ る.1961年 イラン

人男子にみ られた成長遅延,性 腺機 能 障 害,味 覚 異

常,皮 膚症状を主徴 とす る亜鉛 欠乏症 が報告 され て以

Page 10: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

眞田 ・吉田:男 子不妊症 ・精漿 中亜鉛 1979

869・

571.

3Sl〈一

《●

o瓢●

3

●の

・・

3

二・

!●

Zincconc●n塗r8tioni瞬

5●minalg暮05rn8μ9/ml,

200

1CO

(A)

●●

6

 

●●

`

n=60

r=零O.393(ρ<O.005)

Y=0.175X十57

●o

6

6・6

6

● ● ●

`

N。 。乙。,。ti。.0100 ㎜ 伽 400 細 600 700 800

Zincconcentrationin

prostaticsecretion(μ9/mt)

o

 

}

》 ・

 

ぎ:

TotalemountofZinc

ins●m轟naJp屡85ma(μ9!E」aculate)

15

1000

(B)

・ ↓

● 凸

6●

`

et

`

n=・60

r==0.400(ρ<0.005)

Y昌0.851X十176

●●`

A

●●

●o●

`

● ・

● ●

to

Nosecretion100 200 500 4co 500

Zincconcentrationin

prostaticsecretion(μ9/mt)

600 700 800

●:Untreated

▲:Treated

Fig.5。Correlationbetweenzincconcentrationinprostaticsecretion

andzincconcentrationinseminalplasma(A)andcorrela-

t三〇nbetweenzincconcentrationinprostaticsecretionand

t・talam・unt・fzinとi-nseminalplasma(B).

Page 11: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

1980

Table6.

泌尿紀要31巻11号1985年

Semcnparametersandzinc,acidphosphatase(AP),

magnes量um(Mg)andcalcium(Ca)concentrations

insplitejacu且ates(mean±S.D.).

FractionIFractionlSignificance

Volume(m2)

Sperrncencentration(x106/m2)

Motility(%)

Motility5core

Zincconcentration(A9/mの

APconcentratlon(K.A.U./mの

Mgconcentration(μ9/m2)

Caconcentration(μ9/rn2)

1.4±0.58

80,7±70.47

60.5±26.76

44.8=ヒ24.06

268±115.6

8780±4703

263±92.2

246±85.7

3.2±1.66P〈o.oo1

25.3±24.71P〈O.OOI

41.6±28.26Pくo.OOI

27.8±23.39Pく0.001

106±65.8P<0.001

3825±2417PくO.001

129±60.5P〈0.oo1

132±50.1P<0.001

(n=28)

Table7.Correlationcoe伍cientsbetweenz三ncconcentration

andacidphosphatase(AP),magnesium(Mg),

calcium(Ca),fructose,sodium(Na),potass三um

(K)andchlorine(Cl)concentrationinsemina正

plaslna(A)andthosebetwecntotalamountof

zincandtotalamountofAP,Mg,Ca,fructose,

Na,KandClinseminalplasma(B).

(A)

Concentrationinseminalplasma

AP Mg CaFructoseNa K Cl

nl1422021373207208144

rO.855零 亭0.881・ 尊0.830.傘 一〇.530事.0.264寧0.805ゆ 寧 一〇,551.寧

(B)

TotalamountinseminalPtasma

AP Mg CaFructoseNa K Cl

nl1422021373206208144

「0.787零00,872・ 寧0.791摩 竃0,0790.428◎.0,752・.0.IO7

*P<O.005,,**PくO.OO1

来25),生 体 での亜鉛 の必須性が さらに あきらか とな っ

た。亜鉛は鉄 についで人体中に多 く存在す る微量 金属

であ り,全 身各組織中に広 く分布 してい るが,と りわ

け前立腺は人体 中 もっとも亜鉛に富む臓器 であ る1,26)・

亜鉛は人をは じめ とす る哺乳動物 の雄性生殖器官に

おいて重要な働 きを してお り,そ れ ぞれ の器官が機 能

を果たす うえで不可欠 であ ることが知 られ てい る.畢

丸を例に とって も,そ の精上皮の維持 と精子形成に亜

鉛が不可欠であるこ とは,MMarら の ラ ットを用い

た亜鉛欠乏食 の実験 でもあ きらかに され ている27).

BertrandとVladescoが 人精漿 中に高濃度の亜鉛

が存在するこ とを報告 し1),そ れが前立腺 に由来する

ことがあ きらか に され てきたが2~5),人 では 血清に比

べて精漿 では100倍 以上,前 立腺 分泌液 では300倍 以上

もの高 濃 度 の亜 鉛 が 含 有 され て い る.人 以 外 の 哺 乳動

物 の精 漿 中 に も亜 鉛 が 豊 富 に 含 まれ て い るが,そ の由

来 は 種 に よ って異 っ て いて,た とえ ば犬,猫 で は人 と

同 じ前 立 腺,豚 で は 精 嚢に 由来 す る28).

前 立 腺 へ の 亜 鉛 の 集積 は ア ン ドロゲ ン依 存 とされ て

い るが29,30),他 方,人 前 立 腺 組 織 内 で の亜 鉛 はnega・

tivefeedback機 構 に よ っ てtestosterone→5α 一di-

hydrotestosteroneの 変 換 調 節に 関 与 してお り,同 時

に 亜 鉛 自身 の前 立 腺 へ の 集 積 を調 節 して い る とい う.

す なわ ち,前 立 腺 組 織 内 で は,高 濃 度 の亜 鉛 は 上記 変

換 に 抑制 的 に 作 用 し,低 濃 度 の亜 鉛 は 促 進 的に 作 用 す

る31).

精 子 も亜 鉛 を 豊富 に 含有 して い るが9・32~36),そ の由

来 は種 に よ って 異 る よ うであ る.ラ ッ ト精 子は 副 睾 丸

Page 12: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

虞 田 ・吉 田:男 子不妊症 ・精漿中亜鉛1981

ミ2'o

i≡

ξ1.5

量1・o

§§

当o .5

量§

0

n=114

r=0.855(P<O.001)

Y=23.6X十982

(A)

`

```▲

  ム

、譲 イい▲・`ぎ...亭

第="

¥.

A

6

1002003004eO500600700

Zincc㎝centrati㎝insemimalPlasrna{μ9!m2)

奪 ・.・

甚≧

≦5.o

窪4.0書

§3 。o,E

彗2'o

l1.。

謹王

§FO

n冨114

r軍0.781(P〈0.001》

Y量20.9X十5591

(B)

A

A

.㌦'幽

i▲^.::.;:Z{

`△ ・

.寝・ ・

44'

o●`

・!ぐ..

る`

`

.`

`

4

瓢 〕1000150020002500

Totalamountofzincinseminalplesma{μ9/Ejaculate)

o:Treated

`:Untreated

Fig.6.C・rrel・ti・nb・tween・i・ ・and・ ・idph・ ・ph・t・ ・ec・ncent・ati・ni・ ・emina1P1・ ・m・

(A)and・ ・rrel・ti・nb・tweent・t・1・m・ ・nt・f・i・ ・and・ ・idph・ ・ph・t・ ・ein

seminalplasrna(B)・

ですでに多量 の亜鉛を含有 していて,射 精 された精子

と差はないが32・33),人や犬 では射精された精子に比べ

て副睾丸や精管か ら得 られた精子の含有す る亜鉛はい

ち じるしく低 く,そ の由来は前立腺 分泌液 と考え られ

る9・33).精子の持 つ亜鉛 の役割 について も不 明な点が

多いが,近 年細胞 レベルでの研究が進んで,精 子の含

有す る亜鉛が細胞膜の構造に変化を もた らし,精 子の

各種機能の発現に重大な影響 をお よぼす こ とが知 られ

るよ うに なった.

一般に精漿中亜鉛濃 度は前立腺分泌能 の指標 とされ

ているが,わ れわれは,亜 鉛濃度は精嚢分泌能に よっ

ても変化す るものであ り,精 嚢に対す る前立腺の相対

的分泌能を反映す るもの と考 えた.こ の仮定 は,精 漿

中の亜鉛濃度 と果糖濃度が負の相関を有す ることか ら

も,妥 当な ものと言え よう.ま た,前 立腺 分泌液中亜

鉛濃度 と精漿 中亜鉛濃度の間にそれほ ど強い相関性が

み られ なか ったことも,精 漿中亜鉛濃度が前立腺 分泌

能ばか りでな く,そ れ以外 の成分に よっても強 く影 響

されることを裏づけるものである.い っぽ う,前 立腺

個有の分泌能 の指標 としては,精 嚢分泌液 の影響が少

い精漿中総亜鉛量が適当である.前 立腺分泌液 中亜鉛

濃度 と精漿 中総亜鉛量の間に も,そ れほ ど強い正の相

関関係を認 めなか ったが,こ れは前立腺 分泌液 の亜鉛

濃 度だ けを取 りあげ,前 立腺分泌液量を考慮 していな

いため と考 え られ る.

前立腺個有の分泌能 の指標 としては精漿 中総亜鉛量

が適当であるが,同 様 の観点か ら,精 嚢個 有の分泌能

を反映す るものとして精漿 中総果糖量があげ られ る.

今回の結果 で もっとも興味深 いもののひ とつは,総 亜

鉛量 と総果糖量の間に なん らの相関性 も認め られ なか

ったことであ り,こ れは前 立腺 と精嚢の個 々の機能 が

parallelな ものではな く,互 いに独立 していることを

示唆 している.前 立腺 と精嚢 はいずれ もア ン ドロゲ ン

依存性 とされているが24・29・30),この結果 か らは,こ れ

らの分泌能の調節に はア ン ドロゲソ以外に なんらか の

因子が関与 してい るもの と考 えられ る.血 清テス トス

テ ロン濃度は精漿中亜鉛濃 度 と弱い正 の相関を有す る

ものの総亜鉛量 とは相関性 がな く,ま たclomiphene,

HCGな ど睾丸 よ りテス トステ ロンの分泌増加が期待

され る薬剤や,fluoxymesterone,合 成 テス トステロ

ン(症 例が少ないため本報告 では示 し て い な い が,

testosteronereboundtherapyと して用 いた)な ど

のア ン ドロゲ ン作用を持つ薬剤に よっても,精 漿中亜

鉛濃度や総亜鉛量 の増加は認め られなか った.こ れ ら

の事実 よ りも,人 前立腺 の分泌能が単に ア ン ドロゲ ン

に依存 してい るものでないことが うかがわれる.

Page 13: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

1982 泌尿紀要31巻11号1985年

\皆

》 ・. ●

℃ヒロ  

\ ●。ら   

\"\ 、

δ'唆

室 含 寓 £ 諺 露 睾 塞 自3。ueqeJ;ue:uoo田 【1つ120∬/IUOI、:eJJ}oOt}ed

;

塞 §

£1§

諺1

諺暴

繧罐コ

§§

ま霊墓 § 亘

萱宣重

\甘

〉 、 .=

\く.

\、,

;≦

塞 §

。 婁K巴

。 §62

r乱め 〉

覇。§6や

;自 謹

:

塞 霧 器 ミ 塞 諺 等 睾 自 コ 。

uoq叫ua,uoown!seusロ 四 π!1UOI}oe■Ieel;e目

o

亀 §

e6

蟻 ε

誘§§匹E塁

鴨歪

》\

、\..

\、● ・\,

\ ●、、

、、 ● ・●

`'・、

、 ・

薫≡1

ll

義態

1歪

:塞 塞 霞 含 欝 睾 塞 自:。UOI;e4uaoue◎esme「dseHdPtoeE/Iuo110eJiiOo鴫eti

9

ヨ.ヨ

莞o

暑'日

窟咳

ε

自・募

冒●自

s

霧9

盛勢2幽

旨'目

量剛

8ぞ

£

話睾

8慧

臓おQ

卜●

.聾

精液所見正常群 と異常を示す各群 の亜鉛濃度,総 亜

鉛量に は有意差を認めず,ま た精系静脈瘤 においても

特別 な変動はみ られなか った.た だ亜鉛濃度が著 しく

低 い症例ばか りでな く,極 端に高 い症例 で も正常精液

所見を示す もの の割合が低 く,前 立腺 の精嚢に対する

機能 のバ ランスが異 常な ものでは,睾 丸に おけ る造精

機能 も正常に営 まれ ていない ことが多い と言え るかも

知れない.ま た睾丸 の造精能 は,副 性器由来の成 分に

影響 され る精子濃度 よ り,総 精子数に よってよ り強 く

反映 され ると考 え られ るが,総 亜鉛量が増加するに し

たが って総精 子数 が増加す る傾 向がみ られ た こ とか

ら,前 立腺個 有の分泌能は睾丸造精能 とある程度pa・

rallelな もの と言 え よう.

精漿 中亜鉛濃度 の低下 した患者へ の硫酸亜鉛の投与

は,わ れわれ の試み では無効 であ った.血 清中の亜鉛

濃度 と精漿 中亜鉛濃度 あるいは精漿中総亜鉛量 との間

に相関がなか った ことか らも,精 漿中亜鉛 レベルの低

下 は亜鉛 欠乏を意味す るものではな く,前 立腺 の亜鉛

の取 り込みや分泌 の機能的障害を示 す ものであろ う.

他家の報告にみ られ るような有効例は潜在 的な亜鉛欠

乏 が存在 していた可能性があ り,亜 鉛 の豊富 な魚介類

に恵 まれた本邦 では この ような症例 はまれ なのか も知

れ ない.

精漿中に高濃度の亜鉛が存 在す る ことの意義 のひ と

つに,尿 路,精 路への細菌の侵 入 に 対 す るdefense

mechanismが 考え られ る。 前立腺分 泌液や精漿に は

強 い抗菌作用があ るが,Fairら が 抗菌作用 を持つ物

質 を分析 した ところ塩 化亜鉛 であったとい う20).Fair

らはまた,慢 性細菌性前立腺炎患者 の前立腺分泌液 中

の亜鉛濃度は著 しく低下 してお り,し か も抗菌剤に よ

って治療 した後に も亜鉛 濃度 は正常化 しなか った こと

を報告 し,これ らの患者ではなん らか の原因 で,も とも

と前立腺分泌液中の亜鉛濃度 が低下 してお り,そ れが

前立腺へ の細菌の侵入を容易に した のであろ うと結論

してい る20).し か し,前 立腺炎患者 を抗菌剤 で治療す

ることに よ り精漿中亜鉛濃度 が上昇 した との報告 やID

非細菌性前立腺炎において も亜鉛濃度が低下 していた

との報告 もあ り6・!9),これ らか らは,前 立腺炎患者精

漿中亜鉛濃度の低下は炎症に よる2次 的 な前立腺分泌

能低下 の結果 と考え られ よう.今 回われわれが得 た結

果 では,精 路炎症における精漿中亜鉛濃度や総亜鉛量

に変動は み られなか った.Fairら は 非細菌性前立腺

炎におけ る亜鉛 の低下につい ては疑問視 してお り20),

われわれの症例は自覚症状を欠 くもの のみであ った と

ころか ら,そ の多 くは非細菌性炎であ った とも考え ら

れ る.今 後細菌学的検査を含めて,さ らに多 くの症例

Page 14: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

眞 田 ・吉 田;男 子不妊症 ・精漿中亜鉛 1983

(SephadexG-75,0.05M-TrisHCI,pH「7.7)

ZnMgCa

(μ9/mD)

0.75

0.50

0,25

0

1.50

1.00

0.50

0

15

10

5

0

%oftotalzinc

I且 皿

(>80000)(3000-80000)(くSOOO)

12,5%21.3966a1%

真P

.Mgz・ll

'

i

l

由岨ll

l,・

蝦Caノ

ノ 、

255075100

Fractionnumber

Fig.8.Distributionofzinc,magnesiumandcalciumin

onesampleofhumanseminalplasma・

で検討す る必要があろ う,

精漿中の亜鉛が,精 子の環 境因子のひ とつとして,

妊孕性に きわめ て重要 な役割を果た しているだ ろ うこ

とは諸家の一致 した見方であ るが,こ とに精子 の運動

性と関連 して論ぜ られ ることが多い.

精液 を分画採取す ると,精 子はお もに前 立腺分 泌液

とともに射出 され る た め,前 立腺分画は精子に富 ん

でお り精嚢分画 で は 乏 しい21・37・38).精子の運動性 も

前立腺分画で は 良 好 で あ り精嚢分画では不 良である

が9・37・38),これ よ り,前 立腺分泌液 には精子運動性に

促進的作用を 持つfactor(s)が 存在 し,精 嚢分泌液

には抑制的作用 を 持つfactor(s)が 存在 す ることが

想像され る38》.われわれ も同様の結果 を得たが,そ の

ほか前立腺分画 と精嚢分画で運動率に差が ない場合で

も運動指数では前立腺分画のほ うが良好なことが多 く,

前立腺分泌液 中 には 精子 運動性,こ とに前進運動に

不可欠 な因子 が存在す ると考え られ た.ま た精漿中の

亜鉛濃度や総亜鉛量が著 し く低下 した,前 立腺分泌能

が不良 であ ると考 えられ る症例に無力精子症 が高率に

認め られた ことも,こ れを裏づけ るものである.す な

わち,精 子数が減少 してい る患者 で精子運動性が不良

である場合に は,睾 丸に おける精子形成が不完全で,

精子自体に原因がある ことが 多い と考え られ るが,こ

れ ら精子数に異常のない無力精子症には副性器機能の

異常に よって,い わ ゆるpostgerminalな 原因に よ

って,運 動性が障害 されている症 例が含まれ ると考え

られるか らであ る.

前立腺 分泌液中に亜鉛が豊富 なことか ら,亜 鉛 その

ものが精子運動性に促進的作用を有す るとも考え られ

るが,Lindholmerら の一連 の報告では否 定的であ

り,精 子内の亜鉛はむ しろ運 動性に抑制的に作用す る

とい う.Lindhol・nerら が分画採取 した 精 液 中 の精

子の含有する亜鉛を測定 した ところ,精 漿中の亜鉛濃

度 とは逆 に,前 立腺分画では低 く,精 嚢分画では高か

った39).Lindholmerは また,通 常 の方法で 採 取 さ

れた精液 か ら得 た精子を洗灘 し(前 立腺や精嚢に 由来

する諸因子が 取 り除かれた 状態 と考え られる),こ れ

とは別に分画採取に よって得 られた前立腺分画 と精嚢

分画の精漿中 でそれぞれ培養 した後,精 子の運動性 と

亜鉛 含有量を比較 した.そ の結果,前 立腺分画の精漿

中の精子 は,運 動性が良好であ り,亜 鉛含有量 が低 く,

精嚢分画 の精漿中の精子は,運 動性が不良であ り,亜

鉛 含有量が高か った.こ れ は,運 動性に対 して,前 立

腺 分泌液 が促進的に働 き,精 嚢分泌液が抑制的に 働 く

とを示唆す るものであ ると同時に,前 者は,高 濃度 の

亜鉛を含有 していて,精 子の持つ亜鉛 の供給源 と考え

られ るに もかかわ らず,精 子への亜鉛 の移行に抑制的

作用を有 し,他 方,後 者は,亜 鉛に乏 しいに もかかわ

らず,精 子への亜鉛 の移行に促進的作用 を有す ること

を示 してい る38).さ らにLindholmerら が,正 常精

液 と前立腺機能が低下 していると考え られ る異常精液

(精漿中の亜鉛,Mg,酸 フォスファターゼが低値 を示

Page 15: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

1984 泌尿紀要31巻ll号1985年

す精液)の 射精後 の精子の亜鉛含有量を経時的に測定

した ところ,正 常精液に比較 して,異 常精液では精子

の亜鉛含有量 は速やかに高値に達 した.ま た正常精液

か ら分離 した精子 でも,洗 海 して異常精液か ら得た精

漿中で培養す る と多量 の亜鉛を取 り込み,逆 に異常精

液か ら分離 した精子 を洗瀞 して,正 常精液か ら得た精

漿中で培養 して も亜鉛 の取 り込 み は 低 か った.つ ま

り,亜 鉛の取 り込みに差があ るのは,精 子に原因があ

るのではな く,精 漿に原因があるのであ って,前 立腺

機能の低下 した患者 では精子への亜鉛 の移行を抑制す

る作用が低下 していると考え られ た4。).

一般 に亜鉛 は各種細胞 の活動性 に抑制的に働 き,勿

vitroで は,肥 膵細胞か らの ヒスタ ミンの遊離 血 小

板か らのセ ロ トニ ンの放出,大 食細胞や 白血球 の食作

用や遊走能,白 血球 の呼吸な どが,亜 鉛の添加に よっ

て抑制されることが知 られている41).亜 鉛の この抑制

的作用は,亜 鉛 が細胞膜の 各種酵素の活 性 に影 響 し

て,細 胞膜 の構造を よ り強固な,安 定な ものにす るこ

とに よって発現 され ると考え られ る.精 子に おいても

その活動性が亜鉛に よって抑制 され ることを示す報告

が少な くない.洗 海す るか,ア ル ブ ミン,ヒ スチヂ ン

またはキ レー ト剤に よって精子か ら亜 鉛 を 除 去 す る

と,コ ハ ク酸塩で誘 導され る精子の呼吸は増加 し,こ

れに亜鉛 を添加する と再 び呼 吸は抑制され る35・42・43).

また一般に生体膜における過酸化脂質の産生は細胞崩

壊 を意味す るが,人 精子 の過酸化脂質の産生は亜鉛の

添加 で抑制 され,キ レー ト剤で促進 され るとい う44)

ヒ トデの精子は ヒスチヂ ンを加える と運動性が誘導 さ

れ るが,そ の メカニズムとして,ヒ スチヂ ソのキ レー

ト作用に よって精子か ら亜鉛が取 り除 かれたため と考

えられ る45).

これ らの報告か ら精子運動性 と亜鉛 の関係を要約す

ると,精 子内での亜鉛は細胞膜安定化作用に よって運

動性を含む精子の各種活動性に抑制 的に働 くが,精 子

の含有す る亜鉛 の量は,精 漿 中の亜鉛濃度に依存す る

ものではな く,精 漿中 の前立腺 と精嚢に由来す る相反

す る作用を持 った因子に よって調節 され てい ることに

なる,Saitoら は,invitroの 実験 で,低 濃度 の亜

鉛が犬の精子の運動性に促進的に作用す ることを示 し

たが46),実 際の精漿 中の亜鉛はは るかに 高 濃 度 で あ

り,ま たSaitoら の実験 では亜鉛 の移行を調 節 す る

精漿中の諸因子は考慮 されてお らず,精 漿中 の亜鉛が

精子運動性に直接的促進作用を有す るこ とは疑問 であ

る.

精子の含有す る亜鉛 の雌性生殖器内での運 命も不 明

であ るが,Johnsenら は卵胞液 に精子か ら亜鉛 を奪

う作用 があることを報告 し,精 子のcapacitationに

は亜鉛 の放 出が不可欠なのであろ うと推察 している47)

この ように運動性や受精能の獲得には精子 が多量 の亜

鉛を含有す ることはむ しろ好 ましくない ようであ り,

精子 の大部分が前立腺分泌液 とともに射 出され ること

には,精 子運動性に とって重要な意 義があると考え ら

れ る.し か し受精に至る過程 においては,精 嚢分泌液

の持つ精子内の亜鉛 を高める作用に もまた,な ん らか

の意義があ るのであろ う.

以上 のよ うに前立腺 分泌液 中に あって精子運動性に

促進的に働 く因子のひ とつ として,精 子へ の亜鉛の移

行を抑制する作用が想定 され るが,そ の本体について

はあ きらかではない.最 近Stagrnayrら は それに関

して興味ある報 告を お こ なって い る。 精液 よ り遠心

分 離 した 精漿を さらに超遠心分離 した 沈 澱 中 に,

前立腺 組織にみ られ るもの と同様 の 小 胞organelles

(granulesandvesicles)を 認め,こ れ らは 亜 鉛,

Mg,Caを 豊富に 含有 して お り,し か もinvitroの

精子の前進運動には これ らの小胞が不可欠であった と

い う.Staglnayrら は これ ら小胞の精子運 動性調節の

メカ ニズムとして筋細胞内にみ られ る小胞を例にだ し

てお り,筋 細胞 内の小胞が細胞質 のCa濃 度 を 調 節

す るこ とに よって筋細胞の収縮,弛 緩に 関与 している

ように,精 漿中 の小胞は細 胞外 よ り精子 内外 の重金属

濃度 を調節す ることに よって,精 子運動性に関与 して

いるのであろ うと推測 している48・49)一

最近 では また亜鉛結 合物 質に関す る報告 も散見 され

る.Averが ゲル クロマ トグラフィーに よ り精漿中亜

鉛結合物質を検索 した ところ,分 子 量80,000以 上の

高 分子物質(highmolecularweight,HMW)と,

3,000以 下 の低分子物質(10w-,LMW)お よびその

中間の物質(intermediate-,IMW)が 存 在 した.

しか し,前 立腺分泌液中の結合物 質はLMWの みで

あ り,HMW,IMWは 認め られなか った28).Kava-

naghも 同様の事実を認めたが,そ のほか前立腺組織

では亜鉛がHMW,IMW,LMWの 各物質 にほぼ均

等に結合 してい ることを報告 している50).す なわち,

前 立腺組織中 の亜鉛はHMW,IMW,LMWの 各物

質と結合 しているが,そ の うち精液 中に 分 泌 され る

のはLMWと 結 合 した 亜鉛 のみ であ り,そ の一部は

LMWを 離れ ておそ らくは精嚢 由来 と考 えられ るH-

MWJMWと 再結合 す る(re-distribution)と 考え

られ る.精 子運動性 の不良な精液 ではHMWと 結合

した亜鉛の割合 が高 いとい うAverの 報 告28)からは,

HMWが 精嚢分泌液の 精子運 動性 抑 制 因 子 の ひ と

っ で あ る か もしれ ない こと,あ るいはLMWと 結

Page 16: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

眞 田 ・吉田:男 子不妊症 ・精漿中亜 鉛

合 した亜鉛だけが運動性に促進的に作用す るのか もし

れない ことが示唆 され る.こ れ らの結 合 物 質 の うち

HMWは ヒスチヂ ンに富 む糖蛋 白,LMWは クエ ン

酸,ま たIMWはHMWの 分解産物 と推定 され て

いる28・5。).

精漿中 の亜鉛 は精子 の運動性や受精能の獲得に重大

な影響をお よぼ し,そ の機能 の発現には前立腺 ばか り

でなく,精 嚢あ るいは雌性生殖器に由来す る諸因子 が

複雑に関与 している と考 え られ,詳 細 なメカニズ ムの

解明にはさらに基礎 的,臨 床的 な研究を要す る,亜 鉛

がほぼ特異的に前立腺 か ら分 泌され,酸 フ ォスファタ

ーゼのように経時的に活性が変 化す るものでない こと

を考え ると,前 立腺分泌能の指標 としての有用性は高

い.し か し臨床上単に精漿中の亜鉛濃度や総亜鉛量を

測定す ることに は,そ れ以上の意義 は薄 く,施 設に よ

っては,Mg,Caあ るいはKに よって,測 定法が一

般的でない亜鉛に代用 され うるものであろ う.

結 語

精漿 中亜鉛 レベル(亜 鉛濃度お よび総亜鉛 量)と 臨

床所見か ら,男 子不 妊症に おける精漿 中 亜 鉛 の意 義

を,お もに前立腺分泌能 との関係か ら検討 した.

1.精 漿中亜鉛濃度は一般に前立腺分泌能の指標 と

さてい るが,亜 鉛濃度は果糖濃度 と負 の相関を有 して

お り,精 嚢に対す る前立腺 の相対的 な分泌能を反 映す

るものと考えられた.い っぼ う前立腺個有 の分泌能の

指標 としては,精 漿中総亜鉛量 が適 当と思われ る.

2.精 漿 中の亜鉛濃度,総 亜鉛量 はともに,前 立腺

分泌液中亜鉛濃度 とは予想 した ような強 い正の相関を

示さなかった.

3,精 漿中の総亜鉛量 と総果糖量に は相関性が認め

られず,前 立腺 と精嚢 の個 々の分泌能は互 いに独立 し

たのであ り,こ れ らの調節にはア ン ドロゲ ン以外にな

ん らかの因子が 関与 してい ることが示唆 された.

4.精 液所見 が正常 な男子 と異 常を示す男子 の亜鉛

レベルに有意差 を認めず,精 系静脈瘤や精路炎症にお

いても特別な傾 向はみ られなか った.

5,精 漿中亜鉛 レベ ルと血清中の亜鉛濃度 あるいは

性ホルモン濃度 の間に,あ きらかな相関性 は認め なか

った.

6.硫 酸亜鉛 を含む 各種治療に よって も,精 漿 中亜

鉛 レベ ルに有意 な変動 はみ られなか った.

7亜 鉛濃度が著明な低値や高値 を示す,前 立腺 と

精嚢機能の相対的なバ ランスが異常 であると考え られ

る症例 では,正 常精液所見を示す ものの割合が低か っ

た.

1985

8.総 亜鉛 量の増 加 とともに総精子数 が増加す る 傾

向がみ られ,前 立腺個有の分泌能 と睾丸造精能はあ る

程度paralielな 関係に あると考え られ た.

9.精 液を分画採取す ると前立腺 分画中 の精子運動

性が良好な こと,亜 鉛 レベ ルの低下 した症例に無力精

子症が高率に認 め られた ことか ら,前 立腺分 泌液中に

は精子運動性に促進 的に働 く因子が存 在す ると考 えら

れた.た だ亜鉛が直接 関与 してい るか否かは不 明であ

った.

10.亜 鉛濃度は前立腺分泌液〉前立腺分画〉精漿〉

精嚢分画 であ り,精 漿 中の亜鉛はほぼ特異的に前立腺

よ り分 泌され ると考え られた.こ れに対 してMg,Ca

は一部精嚢 よ りも分泌 され る ようであるが,こ れ らも

前 立腺分 泌能 の指標にな りうる と考 えられた.

11.精 漿 中の亜鉛は分子量3,000以 下か ら80,000以

上 までの各物質 と結合 していたが,結 合物質の由来や

意義は不 明であった.

最後 に,ア ン ドロロジー全般 に広 く御 指導 を賜 わった桐 山

蕾夫前助教授,重 金属測定 な どに御懇意 なる御 助言をいただ

い た本学 医学部衛生学教室 糸川嘉 則教授,高 島 眞知 子助手,

種 々の協 力をお願 い した教 室の小倉 啓司,上 田眞,森 啓高,

鳶 巣賢一 の諸先生に心 よ り感謝いた します.

本 論文 の一部は第32回 泌尿器科中部連合総会,第26,27回

日本不妊 学会学術総会および第3回 日本 アン ドロロジー学会

において口演 された.

文 献

1)BertrandGandVladescoMR:Intervention

probableduzincdanslesph6nomen6sde

f6condationchezlesanimauxvert6br6s.

ComptRendAcadSci(Paris)173=176~

179,1921

2)MawsQnCAandFischerMI=Zincandcar-

bonicanhydraseinhumansemen.Biochem

I55=696~700,1953

3)SchirrenC,BcltermannR,HaenschM,

K6hnDandLossinJ=Biochemischeun-

tcrsuchungenammenschlichenSpermaplas-

ma:ZinkundPhQsphohexose-IsQmerase-Ak-

tivitat.ArchKlinExpDermatol218:323~

338,1964

4)EliassonRandLindholmerCH:Zincin

humanseminalplasma.Andrologia3:147~

153,1971

5)HonlonnaiZT,MatzkinH,FainmanN,

Page 17: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

1986 泌尿紀要31巻i1号 互985年

PazGandKraicerPF=Thecationcompo-

sitionoftheseminalplasmaandprostatic

fluidandltscorrclationtoscmenquality・

FertilSteril29:539~542,1978

6)MarmarJL,Katzs,PraissDEandDeBc・

nedictisTJ:semenzinclevelsininfertile

andpostvascctomypatientsandpatientswith

prostatitis.FertilSteri126:ユ057~1063,

1975

7)Stankovi6HandMikac-devi6D;Zincand

copperinhumanscmen.ClinChimActa

70=123~126,1976

8)SkandhanKP,SkandhanSandMchtaYB:

Semenelectrolytes五nnormalandinfertile

su切ects.II.ZincExperientia34:1476~

1477,1978

9)JanicJ,ZcitzLandWhitemQreWF:Sem五 一

nalfluidandspermatozoonzinclevelsand

thcirrelationshiptohumanspermatozoon

motility。FertilStcril22=573~580,1971

10)EliassonR;Correlationbetweenthesperm

density,Inorphologyandmotilityandthe

secrctoryfUnctionoftheaccessorygenital

glands.Andro互ogie2:165~169,1970

11)CaldamoneAA,FreytagMKandCockett

ATK:Seminalzincandmaleinfertility。

Urology13:280~281,1979

12)PandyVK,ParmcshwaranMandSoman

SD:Concentrationsofmorphologicallynor一

mal,motilespermatozoa:Mg,Caand

inthesemenoflnfertilemen.SciTQt

v圭ron27:49~52,1983

13)MawsonCAandFischerMIl

Zn

En一

Zincinas-

permichumansemen.Nature177:190,1956

14)ColleenS,MardhPAandSchytzA:Mag-

nesiumandzincinseminalfluidofhealthy

malesandpatientswithnon-acuteprostati-

tiswithandwithoutgonorrhoea.scandJ

UrolNcphro19:192~197,1975

15)SchoenfeldCY,AmelarRD,DubinLand

NumeroffM:Prolactin,fructose,andzinc

levelsfoundlnhumanseminalplasma.Fer-

tilSteril(Suppl)30:738,i978の16)AbyholmT,KofstadJ,MolneKandstray-

PedersenS;Scminalplasmafructose,zinc,

magnesiumandacidphosphataselncases

ofmaleinfertility.IntIAndrol4:75~81,

1981

17)Papad三masJ,BontisJ,IkkosDandManta-

lenakisS:Seminalplasmazincandmagne-

siumininfertilemen.ArchAndro110=261

~268,1983

18)Bostr6mKandAnderssonL:Greatine

phosphokinaserelativetoacidphosphatase,

lactatedehydrogenase,zincandfructosein

humansemenw三thspeialreferencetochro・

nicprostatitis.scandJurolNephrol5=123

~132,1971

19)BushIM:Personalcommunication.Inrefe-

rence6

20)FairwR,couchJandwencherN:Prosta-

ticantibacterialfactor=Identityandsignifi-

cance。Urology7:169~177,1976

21)LundquistF=Aspectsofthebiochemistry

ofhumansemen.ActaPhysiolScand(Sup-

pl)19:66,1949

22)入 谷 明=精 液 の 性 状 と そ の 検 査.新 家 畜 繁 殖 講

座 皿,人 工 授 精 編,69~70,朝 倉 書 店,東 京,

1979

23)MannT:Biochemistryofsemenandofthe

malereproductivetract.Mathuen&Co

Ltd,London,1964

24)EliassonR:Biochemicalanalysesofhuman

semeninstudyofthephysiologyandpa-

thophysiologyofthemaleaccessorygenital

glands.Fert五lSteril19:344~350,1968

25)PrasadAs,HalstedJAandNadimiM:

Syndromeof玉rondeficiencyanemia,hepa-

tosplenomegaly,hypogonadism,dwar丘sm,

andgeophagia.AmJMed31:532~546,

1961

26)MawsonCAandFischerMI:Theoccur-

renceofzincinthehumanprostategland.

canJMedsci30:336~339,1952

27)MillarMJ,FischerMI,ElcoatePvand

MawsonCA:Theeffectsofdietaryzincde-

ficiencyonthereproductivesystemofmale

rats.CanJBiochemPhysiol36=557~569,

1958

28)AverS:Studiesonzincandcalciuminhu・

mansemina正plasma・ActaPhysiolScand

(Suppl)507:1~21,1982

Page 18: Title 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量 --と ... · 2014. 4. 22. · 1971 泌尿紀要31巻11号 85年11月19 男子不妊症における精漿中亜鉛濃度および総亜鉛量

眞 田 ・吉田:男 子不妊症 ・精漿中亜鉛

29)HugginsC,MasinaMH,EichelbergerL

andwhartonJD:Q ,uantitativestudiesof

prostaticsecretion.1.Characteristicsofthe

normalsecretion;theinfluenceofthyro三d,

suprarena1,andtestisextirpationandan・

drogensubstitutionontheprostaticoutput.

JExpMed70=543~556,1939

30)MannT:Secretoryfunctionoftheprostate,

seminalvesicleandothermaleaccessory

organsofreproduction.JReprodFert37:

179~188,1974

31)wallaceAMandGrantJK:Effectofz三nc

onandrogenmetabolisminhumanhyper-

plasticprostate.Bioche皿SocTrans3:540

~542,1975

32)BirnbaumD,HallTHand正ceR:The

zinccontentofratspermcellsfromejacu-

1ate,vas,epididymisandtestis.ProcSoc

ExpB三 〇IMed108:321~324,1961

33)SaitoS,ZeitzL,BushIM,正eeRand

WhitmoreWF:Zinccontentofspermatozoa

fromvariouslevelsofcanineandratfe-

productivetracts.AmJphysio1213=749~

752,1967

34)LindholmerCHandEliassonR:Zincand

magnesiuminhumanspcrmatozoa.IntJ

Fert量117:153~160,1972

35)HuacujaL,SosaA,DelgadoNMandRa-

sadoA:Akineticstudyoftheparticipation

ofzincinhumanspermatozoametabolism.

LifeSci13:1383~1394,1973

36)AverSandEliassonR:Zincandmagne-

siuminbullandboarspermatQzoa.JRep-

rodFcrt60:481~484,1980

37)EliassonRandLindholmerCH=Distribu-

tionandpropertiesofspermatozoaindiffe-

rentfractionsofsplit(jaculates.FertilSte-

r三123:252~256,1972

38)LindholmerCH=Survivalofhumansper-

matozoaindifferentfractionsofsplitejacu-

late.FertilSteri124:521~526,1973

39)LindholmerCHandEliassonR:Zincand

magnesiuminhumanspermatozoafrom

differentfractionsofsplit〔)jaculates。IntI

Fertil19:45~48,1974

1987

40)LindholrnerCHandEliassonR:Invitro

re互easeanduptakeofz量ncandmagnesium

byhumanspermatozoa.IntJFertil19;56

~62,1974

41)ChvapilM:Effectofzinconcellsandbio-

membranes.MedGlinNorAm60:799~

812,1976

42)EliassonR,JohnsenφandLindholmerc:

Effectofzinconhumanspermrespiration.

LifeSci10:131フ ~1320,1971

43)JohnsenφandEliassonR:studiesonsuc藺

c量nateinducedrespirationofhumansper-

matozoainrelationtoz三nc三 〇ns.1stinter-

nationalcongressofandrology,Abstracts.

IntJAndro1(Suppl)1:175,1978

44)JohnsenφandEliassonR:Destabilization

ofhumanspermmembranesbyalbumin,

EDTAandhistidine.IntJAndrol1:485~

488,1978

45)FujiiT,UtidaSandMizunoTlRcaction

ofstarfishspermatozoatohistidineandcer-

tainothersubstancesconsideredinrelation

tozinc.Nature176:1068~1069,1955

46)SaitoS,BushIMandWhitmoreWF:Ef-

fectsofcertainmetalsandchelatingagents

onratanddogepididymalspermatozoan

motility.FertilSterill8:517~529,1967

47)JohnsenφandEliassonR:Follicularfluid

andsuccinateoxidationbyhumansperma-

tozoa.Andrologia8二283~284,i976

48)StegmayrBandRonquistG:Stimulation

ofspermprogressivemotilitybyorganelles

inhumanseminalplasma.Scand∫Urol

Nephrol16:85~90,1982

49)StegmayrB,BerggrenP-0,RonquistG

andHellmanB=Calcium,magnesium,and

zinccontentsinorganellesofprostaticori-

gininhurnanseminalplasma・scandJ

UrolNephrol16=199~203,1982

50)KavanaphJp:zincbindingPropertiesof

humanprostatictissue,prostatlcsec「etlon

andsemina1旦uid.JReprodFert68:359~

363,1983

(1985年6月3日 迅 速 掲 載 受 付)