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Title マウス胚を用いた後腎初期発生におけるレチノイン酸応 答遺伝子の解析( Dissertation_全文 ) Author(s) 髙山, 真美 Citation Kyoto University (京都大学) Issue Date 2015-03-23 URL https://doi.org/10.14989/doctor.k19141 Right Type Thesis or Dissertation Textversion ETD Kyoto University

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Page 1: Title マウス胚を用いた後腎初期発生におけるレチノイン酸応 … · した。Elf5 はRA 応答候補遺伝子として定した 33 個の中にも含まれており、

Title マウス胚を用いた後腎初期発生におけるレチノイン酸応答遺伝子の解析( Dissertation_全文 )

Author(s) 髙山, 真美

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 2015-03-23

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k19141

Right

Type Thesis or Dissertation

Textversion ETD

Kyoto University

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マウス胚を用いた後腎初期発生における

レチノイン酸応答遺伝子の解析

髙山 真美

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1

目次

要旨 2

序論 4

材料と方法 8

結果 14

考察 31

引用文献 38

謝辞 48

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要旨

哺乳類の腎臓である後腎の発生は、上皮管である尿管芽が後腎間葉へ伸長、侵

入することで開始する。後腎間葉はその後、尿管芽を取り囲むキャップ状間葉と

その外側を囲む間質細胞に分化し、尿管芽はそれらと相互作用して、分岐形態形

成を起こす。この過程には、多様なシグナル伝達経路が協調して働くことが知ら

れている。その中で、尿管芽の突出とその後の分岐形態形成で、重要な役割を果

たすシグナル経路のひとつにレチノイン酸 (RA) シグナル経路がある。しかし、

腎臓において RA シグナル経路が転写制御している遺伝子について、これまで

詳細な解析は行なわれていなかった。

そこで私は、腎発生初期に RA によって発現が誘導される新規遺伝子を同定

するため、マウス胚から摘出した腎臓を単離し、培養する in vitro 培養系を立ち

上げた。そして、マイクロアレイを用いて、単離培養した腎臓における網羅的遺

伝子発現解析を行なった。その結果、RA の添加によって発現量が上昇する遺伝

子を 33 個同定した。また、RAR アンタゴニストの添加によって、同定した RA

応答候補遺伝子の多くで、発現量が減少することを示した。

RA 応答候補遺伝子の転写を制御する共通の転写因子を調べるため、転写開始

点上流についてプロモーター解析を行ない、転写因子の候補として Elf5 を見出

した。Elf5 は RA 応答候補遺伝子として同定した 33 個の中にも含まれており、

Elf5 が RA によって誘導され多数の遺伝子の転写制御に関与する可能性が示唆

された。つづいて、Elf5 に加えて他の RA 応答遺伝子の中から4つの遺伝子、

上皮性ナトリウムチャネルのサブユニットである Scnn1b, 分泌糖タンパク質

Ecm1, サイトカイン Tnfsf13b, IL-33 に着目した。これらの遺伝子の発現場所

を調べるため、単離培養した腎臓を用いたホールマウント in situ ハイブリダイ

ゼーション実験を行なった。Elf5 と Scnn1b はそれぞれ尿管芽枝幹部分で、

Ecm1, Tnfsf13b ならびに IL-33 はそれぞれ間質細胞で、RA によって発現が誘

導されていた。

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Tnfsf13b と IL-33 はどちらも下流で NF-B (nuclear factor B) を活性化す

ることが知られている。そこで私は腎臓の初期発生に NF-B シグナル伝達経路

が関与しているのではないかと予想し、単離した腎臓を、NF-B シグナル伝達

経路を阻害する 2 種類のインヒビターをそれぞれ加えて培養した。すると、ど

ちらのインヒビターを加えた場合も、尿管芽の分岐形態形成が著しく阻害され、

尿管芽先端を取り囲むキャップ状間葉が消失した。

以上のように本研究で私は、マウス胚の腎臓の in vitro 培養系を立ち上げ、こ

の培養系を用いて腎臓の初期発生における複数の RA 応答遺伝子の同定を行な

い、NF-B シグナル伝達経路の尿管芽分岐形態形成への関与を明らかにした。

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序論

分岐形態形成は、個体発生における重要な過程のひとつであり、ショウジョウ

バエの気管からヒトの肺や腎臓などの上皮管の形態形成まで、種を超えて保存

されている (Lu & Werb 2008)。腎臓の発生の研究は、ゼブラフィッシュやアフ

リカツメガエル、マウスなどさまざまなモデル生物を用いて広く行なわれてき

た。特に哺乳類で機能する腎臓である後腎は上皮管の分岐形態形成のモデルと

して広く研究されている (Nigam & Shah 2009)。

後腎を形成する細胞の種類は多く、その複雑さから再生困難であると考えら

れてきた。そのため、腎機能不全を起こした患者に対する治療方法が臓器移植や

人工透析に限られており、このことは深刻な問題である。これら従来の治療法よ

りも患者への負担が少なく、かつ安全性の高い方法が切望されるが、効果的な手

法はいまだに確立されていない。近年、マウスやヒトの細胞を用いた細胞や組織

の再生に関わる研究が活発になり、これまで再生困難とされていた組織や臓器

の再生医療の実現への期待が高まっている。そして腎臓に関しても、ES 細胞や

iPS 細胞を用いた分化誘導により、腎臓を形成する前駆細胞を作製する研究が急

速に進んでいる (Taguchi et al. 2013; Takasato et al. 2014)。腎臓のさまざまな

疾患を治療する再生医療を実現するためには、腎発生における、細胞分化や形態

形成の過程全体をより詳細に解析し、そのメカニズムの全貌を解明することが

非常に重要である。

哺乳類の腎臓は前腎、中腎、後腎という3つの段階を経て形成される。前腎と

中腎は発生途中でほとんど退化するため、前述のように生後機能するのは後腎

である。後腎は複雑な臓器であり、集合管の先端に糸球体と尿細管が結合したネ

フロンと呼ばれる構造が多数形成される (Saxén 1987)。マウスにおいて、胎生

10.5 日目(E10.5) に後脚の位置に後腎間葉 (metanephric mesenchyme, MM)

と呼ばれる細胞塊が形成される。そして、E11.0 に中腎管の尾側から尿管芽

(ureteric bud, UB) が後腎間葉からの誘引因子によって伸張することで後腎の

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発生が開始される(図 1A; Constantini & Kopan 2010)。その後、後腎間葉は尿

管芽先端を取り囲むキャップ状構造の間葉 (以後、キャップ状間葉と呼ぶ) とそ

れ以外の間質細胞と呼ばれる部分を形成し、これらと尿管芽の相互作用により

腎臓の形態形成が進行する(図 1A; Constantini & Kopan 2010)。後腎間葉のう

ち、キャップ状間葉は間葉・上皮転換を起こして、後に糸球体と尿細管となり、

間質細胞は間質を形成する(図 1B; Shah et al. 2004)。そして尿管芽は分岐形

態形成を起こし、後に分化して集合管や尿管になる(図 1A; Constantini &

Kopan 2010)。これまで後腎の発生の研究はノックアウトマウスを用いた解析

を中心に広く行なわれ、重要な役割を果たす遺伝子やシグナル伝達経路が多数

同定されてきた (Constantini & Kopan 2010)。なかでも GDNF/Ret シグナル

伝達経路は、尿管芽が中腎管から突出する過程やその後の分岐形態形成におい

て、きわめて重要である。キャップ状間葉から放出される液性因子 GDNF (Glial

cell line-derived neurotrophic factor) は尿管芽先端に発現する受容体型チロシ

ンキナーゼ Ret と結合して下流にシグナルを伝達し、多様な遺伝子の転写を活

性化して分岐形態形成を起こす(図 1C)。Gdnf-/-, Ret-/-マウスや Ret の共受容体

Gfr1 (Gdnf-family receptor-1) を欠失した変異マウスでは尿管芽の形成不全

が起こり、腎臓が形成されないため周産期に致死となることが報告されている

(Shuchardt et al. 1994, 1996; Moore et al. 1996; Pichel et al. 1996; Sanchez et

al. 1996; Cacalano et al. 1998; Enomoto et al. 1998)。また、Ret のキナーゼイ

ンヒビターである SU5416 が in vitro 培養系で尿管芽の形成を阻害することも

報告されている (Mologni et al. 2006; Grote et al. 2008)。

レチノイン酸 (RA) はビタミン A の代謝産物として知られ、腎臓を含む個体

の多くの組織の発生過程において、細胞の増殖や運動、分化の制御に非常に重要

な役割を果たす (Mendelsohn et al. 1994, 1999; Niederreither & Dolle 2008)。

RA は核内受容体であるレチノイン酸受容体(RARs や RXRs)のリガンドとし

て働き、さまざまな標的遺伝子発現を制御する。腎臓の発生において、RA シグ

ナル経路は尿管芽先端の Ret の発現を誘導、維持する役割があることが知られ

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ており、Rar-/-Rar2-/-マウスの胎児では、Ret の発現が抑制され、腎臓が形成

不全に陥ることが報告されている(図 1C; Batourina et al. 2001; Rosselot et al.

2010)。しかし、腎発生において RA シグナル経路によって転写活性制御を受け

るその他の遺伝子については詳細に調べられていなかった。

本研究で私は、マウスの胎児の腎臓を単離、培養する in vitro 培養系を用いる

ことにより後腎発生初期において RA によって発現が誘導される遺伝子を複数

同定し、NF-B シグナル経路による尿管芽分岐形態形成の制御を示唆する結果

を得た。

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図 1 マウスにおける腎発生とレチノイン酸 (RA) とのかかわり(A) E11.0 から出生後までの腎臓の発生。Constantini & Kopan (2010) を改変。(B) ネフロン形成過程。Shah et al. (2004)を改変。(C) 尿管芽分岐形態形成に関わる主なシグナル伝達経路。

A

B

CRA

RARs

?

GDNF

RET/GFRa1

FGF10

FGFR2

Branching Morphogenesis

Ret

Mesenchyme

Ureteric bud

7

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材料と方法

【組織培養】

野生型 C57BL/6 NCr Slc 系統の時限妊娠マウスを用いた。腎臓はマウス胚 11.5

日目 (E11.5) または 12.5日目 (E12.5) の胎児から回収した。摘出した腎臓を、

Polyester Membrane 6 well Transwell Permeable Supports (Corning) の、

Transwell のメンブレン上に置き、メンブレン下のウェルに無血清のダルベッコ

変法培地 (DMEM) または 10% fetal bovine serum (FBS) を含む DMEM を加

え、培養した。摘出は、実体顕微鏡 SMZ800 (Nikon) 下で行なった。また、37°C、

5% 二酸化炭素存在下で培養した。All-trans-RA (Sigma) と 9-cis-RA

(BIOMOL) を培地に加える条件について、その終濃度を Batourina ら (2001)

の方法に従い、200 nM となるようにした。インヒビター添加実験は Hida ら

(2002) の方法に基づいて行なった。まず E11.5 の胎児から摘出した腎臓を 10%

FBS DMEM で 24 時間培養し、その後、コントロールの腎臓には DMSO を加

え、インヒビターの効果を調べる腎臓には、本文と各図に示した濃度のインヒビ

ター、BMS493 (TOCRIS), BAY 11-7082 (Merck), あるいは IKK-2 inhibitor IV

(Santa Cruz) をそれぞれ加え、48 時間培養した。DMEM はすべて 1% ペニシ

リン/ストレプトマイシンを含んでいる。

【免疫染色】

培養した腎臓は、4% パラホルムアルデヒドを用いて細胞を固定した。その後、

50 mM NH4Cl を用いて反応を停止させてから、0.1% Triton X-100 で透過処理

を行ない、10% NGS/0.05% Triton X-100 を用いてブロッキングを行なった。一

次抗体を 4°C で 16 時間反応させた後、二次抗体を 4°C で 16 時間反応させた。

一次抗体は、Six2 抗体(11562-1-AP, Proteintech; 1/100 で使用)、pan

cytokeratin 抗体(C2562, SIGMA; 1/500 で使用)、二次抗体は、Alexa 488 で

標識したマウス IgG 抗体(A-11001, Molecular Probes; 1/1000 で使用)と

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Alexa 546 で標識したラビット IgG 抗体(A-11010, Molecular Probes; 1/1000

で使用) を用いた。二次抗体を洗った試料は最後にスライドガラスに Mowiol で

封入した。観察は Axiovision (Zwiss) を用いた。この免疫染色の手法は Tomita

ら (2013) の方法に基づいている。

【マイクロアレイ実験】

RNeasy mini kit (Qiagen) を用いてプロトコルに従い、腎臓全体からの調製し

た RNA を Affymetrix のプロトコルに従い、まず逆転写、2 本鎖合成、プロー

ブ作成を行なった。そして、GeneChip Mouse Gene 1.0 ST Array (Affymetrix)

を用い、ハイブリダイズしてから洗い、スキャンした。

【マイクロアレイデータ解析】

チップをスキャンして得られた CEL ファイルは、Expression Console version

1.1 と、GeneSpring 11.5.1 (Agilent Technologies) を用いて解析した。各プロ

ーブのシグナル強度を標準化し、プローブセットの発現値を GeneSpring11.5.1

を用いて GCRMA (GC robust multi-array analysis) により計算した。遺伝子

の発現プロファイルは GeneSpring 11.5.1 を用いて示した。遺伝子オントロジ

ーは、同じく GeneSpring11.5.1 に内蔵されている Gene Ontology analysis で

解析して示した。プロモーター解析は Pscan (http://www.beaconlab.it/pscan)

という解析ソフトを用いて示した (Zambelli et al. 2009)。また、配列データベ

ースとして JASPAR データベースを用いた (Portales-Casamar et al. 2010)。

マイクロアレイデータは the National Center for Biotechnology Information

(NCBI) Gene Expression Omnibus (GEO) へ登録した(アクセッション番号

GSE57656)。

【定量的 RT-PCR】

RNeasy mini kit (Qiagen) を用いてプロトコルに従い、調製した RNA を M-

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MLV Reverse Transcriptase (Invitrogen) と Oligo random hexamers を用いて

cDNA へと逆転写した。定量的 RT-PCR は、Light Cycler (Roche) と SYBR

Green PCR Kit (Qiagen) を用いて行なった。得られた結果は-actin の値を用

いて規格化した。PCR に用いたプライマーの配列は次の通りである。

-actin forward 5’-GGCTGTATTCCCCTCCATCG-3’

reverse 5’-CCAGTTGGTAACAATGCCATGT-3’

Slco4c1 forward 5’-GGGGTCACAGCTAAGCGAG-3’

reverse 5’-ACAGTAGTGAAGCAAAAAGCCTT-3’

Scd1 forward 5’-TTCTTGCGATACACTCTGGTGC-3’

reverse 5’-CGGGATTGAATGTTCTTGTCGT-3’

Gpx6 forward 5’-ACGTCACGGTTTTGGGCTTT-3’

reverse 5’-CGCCTGGACGCACATACTT-3’

Arg2 forward 5’-ACCGGAAGGACCTTGCTAAAC-3’

reverse 5’-ACTGTAGTCGATTCAAATGCTCG-3’

Cpm forward 5’-CGGGAAATCTGTGAGAGGTAGA-3’

reverse 5’-GTCTGCCCCACAACGAGAAC-3’.

Dhrs3 forward 5’-TGAAAAATGCCTCAAGGAGACG-3’

reverse 5’-GGCCATCTGGTACACCTCTTC-3’

Hapln1 forward 5’-TGTGAGGTGATTGAAGGGCTA-3’

reverse 5’-GCGTCCCAGTCGTGGAAAG-3’

Mc2r forward 5’-AAGCCTCGTGGCAGTTTTGAA-3’

reverse 5’-AGGATGAACATGCAGTCAATGAT-3’

Rar forward 5’- CTGCTCAATCCATCGAGACAC-3’

reverse 5’-CTTGTCCTGGCAAACGAAGC-3’

IL-33 forward 5’-ATTTCCCCGGCAAAGTTCAG-3’

reverse 5’-AACGGAGTCTCATGCAGTAGA-3’

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Ecm1 forward 5’-AAGACATCCCTGTGTACGAGG-3’

reverse 5’-GCAGGCGGGTCTATTTCCTTC-3’

Tnfsf13b forward 5’-ATGATCCCATCACTCCGCAGA-3’

reverse 5’-AGCCAACTGGTACAAGGACAT-3’

Gabra3 forward 5’-AGACGACAAGAACCTGGGGA-3’

reverse 5’- GCCGATCCAAGATTCTAGTGAAG-3’

Csn3 forward 5’-AACTGCCGTGGTGAGAAGAAT-3’

reverse 5’-AAAGATGGCCTGTAGTGGTAGTA-3’

Pcp4 forward 5’-GAGTGAGAGACAAAGTGCCGG-3’

reverse 5’-GAATTTTCTGAACTGAGACTG-3’

Tgm5 forward 5’-GGCATGGACAGTATCATGTTTGT-3’

reverse 5’-CTTCCAGGGACGCAATCCAG-3’

Ret forward 5’-TTTCTCAAGGGATGCTTACTGGG-3’

reverse 5’-GGTAGACGCCATAGAGATGCT-3’

Rbp1 forward 5’-ACGCTGAGCACTTTTCGGAA-3’

reverse 5’-GCGGTCGTCTATGCCTGTC-3’

Cyp7b1 forward 5’-GGAGCCACGACCCTAGATG-3’

reverse 5’-GCCATGCCAAGATAAGGAAGC-3’

Calb1 forward 5’-GCTGGATTGGAGCTATCACCG-3’

reverse 5’-ACGTGAGCCAACTCTACAATTC-3’

Ros1 forward 5’-AGCTGGACTTTCACGGAGAC-3’

reverse 5’-GGTGGGGAATAAAGATGCAGTT-3’

Elf5 forward 5’- AAATTTCTGCATGTCTCAGC-3’

reverse 5’-ATAACACTGGCTCCCTTAGC-3’

Klf9 forward 5’-GCCGCCTACATGGACTTCG-3’

reverse 5’-GGTCACCGTGTTCCTTGGT-3’

Krt23 forward 5’-AGCTTTAACCAGACCTACTCGG-3’

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reverse 5’-GGAAAGGGAGATGCGGACAC-3’

Vsnl1 forward 5’-GTGACGGCAAGATCACCCG-3’

reverse 5’-AGGCCATCCTCATTCATTTTCAT-3’

Scnn1b forward 5’-TGGTACTGCAATAACACCAACAC-3’

reverse 5’-AGCAGCGTAAGCAGGAACC-3’

Lhx1 forward 5’-TGCGTCCAGTGCTGTGAAT-3’

reverse 5’-AACCAGATCGCTTGGAGAGAT-3’

Papss2 forward 5’-TACCGTGTGGCTAACAGGTCT-3’

reverse 5’-GGCGTGAGATACAAGGTACTCT-3’

Pax8 forward 5’-ATGCCTCACAACTCGATCAGA-3’

reverse 5’-ATGCGTTGACGTACAACTTCT-3’

Aldh1a1 forward 5’-TGTGGGAATACCGTGGTTGTC-3’

reverse 5’-GTGAAGAGCCGTGAGAGGAG-3’

Cntn6 forward 5’-TCGTTTCAGCCGTCCTATTTTT-3’

reverse 5’-GGAGAAGGGTATCCATTTGCAG-3’

Wnt4 forward 5’-TGCGAGGTAAAGACGTGCTG-3’

reverse 5’-CTTGAACTGTGCATTCCGAGG-3’

Tmem150c forward 5’-AATCCACAACGTGGGGACATC-3’

reverse 5’-GCCCCTCGTTCTTGATATTGACT-3’

【ホールマウント in situ ハイブリダイゼーション】

E12.5 の腎臓を摘出後、48 時間培養し、4% パラホルムアルデヒドで、4°C で

一晩固定した。その後メタノールで脱水し、100%メタノール中で保存した。ホ

ールマウント in situ ハイブリダイゼーションは標準的なプロトコルを参考にし

て行なった (Piette et al. 2008)。DIG 標識されたプローブの合成は、まず遺伝

子の cDNA 全長配列を組み込んだ pCS2 ベクターを直鎖化し、これを鋳型とし

て DIG RNA Labelig Mix (Roche) を用いて、SP6 RNA Polymerase (Takara)

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あるいは、T7 RNA Polymerase (Takara) で行なった。プローブを作製した遺

伝子は Elf5 (GenBank accession number AF049702), Scnn1b (AF112186),

Ecm1 (BC138693), Tnfsf13b (AF119383),IL-33 (BC003847) である。発色反

応は BM purple alkaline phosphatase substrate (Roche) を用いて行なった。

【統計解析】

統計解析において、検定方法に unpaired Student’s t-test を用いた。データは

平均値±標準偏差で示し、p value が 0.05 以下である場合を統計的に有意とし

た。

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結果

【単離培養した腎臓におけるレチノイン酸存在、非存在下での遺伝子発現プロ

ファイル】

尿管芽形態形成はさまざまなシグナル伝達経路が関与して進行するが、その

中のひとつであるレチノイン酸 (RA) もまた液性因子として働き、尿管芽が後

腎間葉から突出するメカニズムとその後の分岐形態形成機構に重要な役割を果

たすことが知られている (Vilar et al. 1996; Gilbert 2002)。いくつもの遺伝子

組み換えマウスの実験が行なわれ、その結果から、間質細胞と尿管芽の間でのパ

ラクリン RA シグナル経路が、尿管芽の分岐形態形成に必須であることが明ら

かとなっている (Batourina et al. 2001; Rosselot et al. 2010)。私はまず、腎臓

の発生における RA の機能を確かめるため、先行研究の実験プロトコル

(Schuchardt et al. 1996; Batourina et al. 2001) をもとに、in vitro 培養系を立

ち上げた。胎生 11.5 日目 (E11.5) のマウスから摘出した腎臓を3つの培地の条

件、10% FBS DMEM (+Serum), 血清を含まない DMEM (-Serum), 血清を含

まない DMEM に RA を加えた培地 (+RA) で 48 時間培養し、形態形成への影

響を調べた(図 2A)。摘出時、E11.5 胎児の腎臓の尿管芽は T 字の形態をして

いるが、血清を含む培地で 48 時間培養した腎臓 (+Serum) は、尿管芽 (UB) の

分岐が活発に起こっており、枝の数が非常に増加していた(図 2B, E)。これは

過去の報告 (Grobstein 1953) と一致しており、in vitro 培養系で腎臓の発生が

正常に起こっていることを示唆している。また、血清存在下で培養した腎臓

(+Serum) と比較したところ、無血清培地で培養した腎臓 (-Serum) では、過去

の報告 (Thesleff & Ekblom 1984) と同様に尿管芽の分岐形態形成は顕著に阻

害されることが確認できた(図 2B, C, E)。RA を加えた無血清培地で培養した

腎臓 (+RA) の尿管芽の枝の数は、無血清培地で培養した時の枝の数と比べて、

部分的に回復した(図 2C-E)。以上から、先行研究 (Batourina et al. 2001) の

結果と同様に、RA は血清を欠くことによる尿管芽分岐形態形成の異常を部分的

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に回復させるということを確認した。

次に、RA によって発現が誘導される遺伝子を網羅的に解析するため、この3つ

の培養条件下で培養した腎臓を用いて、マイクロアレイ実験を行なった。その結

果、血清を含む培地における発現量と比較して、無血清にすることにより発現量

が半分以下になった遺伝子が 82 遺伝子(86 プローブ)存在した(図 2F)。その

うち、RA を加えた無血清培地での発現量が無血清のときと比較して 1.5 倍以上

に回復している遺伝子は 33 遺伝子(36 プローブ)であった(図 2F, 表 1)。こ

の 33 個の遺伝子の中には Rar と Ret が含まれていた。Rar と Ret は RA

シグナル経路によって直接転写が活性化される標的遺伝子としてよく知られて

いるものであることから、このマイクロアレイ実験の結果が妥当なものである

ことが示唆される。選び出した 33 個の RA 応答候補遺伝子について Gene

Ontology analysis を行なった結果、尿管芽の発生や器官形成、管腔形成に関わ

る遺伝子が有意に濃縮されていた(図 2G)。なかでも、尿管芽の発生に関わる遺

伝子がもっとも有意に濃縮されていることから、RA シグナル経路は尿管芽の形

成に関わるさまざまな遺伝子の転写活性を制御していることが示唆される。

マイクロアレイ実験の結果をさらに調べるため、同定した 33 個の候補遺伝子

について、無血清培地と RA を加えた無血清培地のそれぞれで E11.5 の腎臓を

48 時間培養したときの mRNA 発現レベルを定量的 RT-PCR 実験により解析し

た(表 2)。その結果、5 遺伝子を除くすべての遺伝子で RA を添加することに

より発現レベルが 1.5 倍以上に上昇した(表 2)。

次に、これら 33 個の RA 応答候補遺伝子の発現量が RAR アンタゴニストで

ある BMS493 の添加によって減少するのかについて検討した。まず、BMS493

の腎発生への影響を調べた。E11.5 マウス胎児から摘出した腎臓を通常の血清を

含む培地で 24 時間培養後、0 (DMSO), 1, 2, 5 M の BMS493 を加えた培地で

48 時間培養し、腎臓の形態を比較した。すると、コントロールである DMSO を

加えて培養した腎臓と比較して、BMS493 を加えた腎臓では尿管芽の枝の数が

BMS493 の濃度依存的に減少していた(図 3A-E)。また、分岐パターンも、コ

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16

ントロールの腎臓では左右対称に新しい枝が生じるのに対し、BMS493 を添加

した腎臓ではその対称性が崩れ、分岐パターンが異常になっていた(図 3A-D)。

この岐の数の減少、分岐対称性の崩壊という表現型は、Rar-/-Rar2-/-マウスの

腎臓の表現型と類似している (Batourina et al. 2001)。よって今回の実験でも、

BMS493 は確かに RA 受容体の機能を阻害して、その結果として尿管芽の分岐

形態形成を阻害していることが示唆された。このとき、BMS493 を添加して培

養した腎臓において、RA シグナル経路の直接の標的遺伝子である Rarと Ret

はいずれも BMS493 の濃度依存的に発現量は著しく減少していた(図 4)。ま

た、他の RA 応答候補遺伝子のほとんどで BMS493 の添加により発現量が減少

していた(図 4)。

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0 4×10 8×10

Ureteric bud development

Tissue development

Tube development

Developmental process

Urogenital system development

Retinol metabolic process

Multicellular organismal development

Multicellular organismal process

Anatomical structure development

-5 -5

GO enrichment P value

+Seru

m-S

erum

+RA

Col

or ra

nge

1.7

-1.7

0

(log

) 2

図2 レチノイン酸依存的発現を示す遺伝子の網羅的解析(A) マウス胎児の腎臓の器官培養方法を示す(詳細は材料と方法を参照)。(B-E) E11.5 で摘出した腎臓を血清を含む培地 (+Serum)、血清を含まない培地 (-Serum)、血清を含まない培地にレチノイン酸を加えた培地 (+RA) の条件で 48 時間培養した後に固定し、尿管芽上皮マーカーである pan cytokeratin 抗体とキャップ状間葉のマーカーである Six2抗体で染色した。スケールバーは 100 µmを示す。(E)尿管芽の先端の数を定量した。各条件につき 4個以上の腎臓の平均 ±標準偏差を示す。 **P < 0.01であることを示す。(F) 前に示す (B-D)の3条件で培養した腎臓でマイクロアレイ実験を行い、その遺伝子発現プロファイルから、血清を含む培地で培養したとき (+Serum) の発現量で規格化し、血清を含まない培地で培養したとき (-Serum) の発現量が 1/2 以下になった 86 プローブ(83 遺伝子)を抜き出してヒートマップで示した。 (G) マイクロアレイ実験の結果、+Serumと比較して -Serumで mRNA発現量が 1/2 以下になり、かつ -Serum と比較して +RA で mRNA 発現量が 1.5 倍以上になった遺伝子(表1参照)について Gene Ontology (GO)解析を行なった結果。

A

-Serum

+RA

+SerumB

C

D

E

E 11.5 mouse embryo

F

G

0

10

20

30

40

50

60

**

# of

UB

bra

nche

s****

Permeablemembrane

Transwell incert

10% FCS DMEM (+Serum)or Serum-free DMEM (-Serum) orSerum-free DMEM with RA (+RA)

Embryonic kidney

17

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表1 レチノイン酸 (RA)応答候補遺伝子

- Serum/+ Serum + RA/- Serum

10356886 Slco4c1 solute carrier organic anion transporter family, member 4C1 NM_172658 0.25 1.5910467979 Scd1 stearoyl-Coenzyme A desaturase 1 NM_009127 0.31 1.6610403911 Gpx6 glutathione peroxidase 6 NM_145451 0.36 1.6110396831 Arg2 arginase type II NM_009705 0.27 1.9910366546 Cpm carboxypeptidase M NM_027468 0.50 3.1310510129 Dhrs3 dehydrogenase/reductase (SDR family) member 3 NM_011303 0.24 9.8110406519 Hapln1 hyaluronan and proteoglycan link protein 1 NM_013500 0.43 3.6810459611 Mc2r melanocortin 2 receptor NM_008560 0.45 3.3010538269 - - - 0.48 3.1210417713 Rarb retinoic acid receptor, beta NM_011243 0.26 7.5010462442 IL-33 interleukin 33 NM_001164724 0.43 4.5510477600 - - - 0.43 4.4710500204 Ecm1 extracellular matrix protein 1 NM_007899 0.15 37.710570018 Tnfsf13b tumor necrosis factor (ligand) superfamily, member 13b NM_033622 0.28 11.610604961 Gabra3 gamma-aminobutyric acid (GABA) A receptor, subunit alpha 3 NM_008067 0.49 3.7410522895 Csn3 casein kappa NM_007786 0.48 4.8510437205 Pcp4 Purkinje cell protein 4 NM_008791 0.36 3.5210486681 Tgm5 transglutaminase 5 NM_028799 0.30 4.7610547227 Ret ret proto-oncogene NM_001080780 0.45 2.7610588037 Rbp1 retinol binding protein 1, cellular NM_011254 0.47 2.8110497381 Cyp7b1 cytochrome P450, family 7, subfamily b, polypeptide 1 NM_007825 0.30 3.9410503416 Calb1 calbindin 1 NM_009788 0.27 4.5010369040 Ros1 Ros1 proto-oncogene NM_011282 0.42 1.9410474171 Elf5 E74-like factor 5 NM_010125 0.42 1.9310462091 Klf9 Kruppel-like factor 9 NM_010638 0.31 2.3910390860 Krt23 keratin 23 NM_033373 0.31 2.5410399407 Vsnl1 visinin-like 1 NM_012038 0.40 2.0910557124 Scnn1b sodium channel, nonvoltage-gated 1 beta NM_011325 0.47 1.8310389283 Lhx1 LIM homeobox protein 1 NM_008498 0.28 2.2610462507 Papss2 3'-phosphoadenosine 5'-phosphosulfate synthase 2 NM_011864 0.29 2.2910480477 Pax8 paired box gene 8 NM_011040 0.45 1.6110461979 Aldh1a1 aldehyde dehydrogenase family 1, subfamily A1 NM_013467 0.48 1.9010540333 Cntn6 contactin 6 NM_017383 0.38 2.2810509267 Wnt4 wingless-related MMTV integration site 4 NM_009523 0.45 2.1210531653 Tmem150c transmembrane protein 150C NM_182841 0.45 2.1610509273 Wnt4 wingless-related MMTV integration site 4 NM_009523 0.38 2.58

Gene Symbol Gene DescriptionFold changeProbe Set

IDNCBI Ref Seq

18

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*

qPCR (Microarray)

Slco4c1 2.43 (1.59)Scd1 1.44 (1.66)Gpx6 1.24 (1.61)Arg2 0.81 (1.99)Cpm 2.90 (3.13)Dhrs3 25.3 (9.81)Hapln1 3.80 (3.68)Mc2r 11.3 (3.30)Rarb 9.66 (7.50)IL-33 4.71 (4.55)Ecm1 112 (37.7)Tnfsf13b 19.2 (11.6)Gabra3 3.03 (3.74)Csn3 46.6 (4.85)Pcp4 4.16 (3.52)Tgm5 74.2 (4.76)Ret 9.17 (2.76)Rbp1 3.54 (2.81)Cyp7b1 4.03 (3.94)Calb1 4.24 (4.50)Ros1 2.60 (1.94)Elf5 2.63 (1.93)Klf9 1.75 (2.39)Krt23 11.0 (2.54)Vsnl1 3.41 (2.09)Scnn1b 2.13 (1.83)Lhx1 2.25 (2.26)Papss2 1.66 (2.29)Pax8 0.97 (1.61)Aldh1a1 5.27 (1.90)Cntn6 3.56 (2.28)Wnt4 1.22 (2.12)Tmem150c 1.94 (2.16)

Gene Fold change (+RA/-Serum)

**

*

*

表2 RA応答候補遺伝子の定量的 RT-PCR実験のおける発現定量的 RT-PCR (qPCR) 実験は独立した 2 回の実験の平均値を示す。マイクロアレイ実験での結果を参考のため、右列括弧内にて示した。*は定量的 RT-PCR 実験 で +RA での発現量が -Serum と比較して 1.5倍以上回復が見られなかったもの。

19

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0102030405060708090

100

1 μM 2 μM 5 μM

DMSO BMS493

# of

UB

bran

ches

** ** **

DMSO

図3 RARアンタゴニスト BMS493は尿管芽の分岐形態形成を阻害した(A-E) E11.5 で摘出した腎臓を 24 時間培養後、BMS493 を 0 (DMSO), 1, 2, 5 µM となるよう加えた培地上で48 時間培養した後に固定し、尿管芽上皮マーカーである pan cytokeratin 抗体とキャップ状後腎間葉のマーカーである Six2抗体で染色した。スケールバーは 100 µm。(E)図3 (A-D)の実験から尿管芽の枝先端の数を定量した。各条件につき 5個以上の腎臓の平均 ±標準偏差を示す。 **P < 0.01であることを示す。

A 1 μMBMS493 2 μM 5 μMB C D

E

BMS493 BMS493

20

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Relative expression0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6

Slco4c1

Scd1

Gpx6

Arg2

Cpm

Dhrs3

Hapln1

Mc2r

Rarb

IL-33

Ecm1

Tnfsf13b

Gabra3

Csn3

Pcp4

Tgm5

Ret

Rbp1

Cyp7b1

Calb1

Ros1

Elf5

Klf9

Krt23

Vsln1

Scnn1b

Lhx1

Papss2

Pax8

Aldh1a1

Cntn6

Wnt4

Tmem150c

DMSOBMS493 1 μMBMS493 2 μMBMS493 5 μM

図4 RARアンタゴニスト BMS493は多くの RA応答候補遺伝子の mRNA発現を抑制するE11.5 マウス胚から摘出した腎臓を血清を含む培地 で 24 時間培養した後、0 (DMSO), 1, 2, 5 µM の BMS493 を添加して 48時間培養した腎臓(図3参照)における 33個の候補遺伝子の mRNA発現レベルを定量的 RT-PCR実験により解析した。独立した 3回の実験の平均 ±標準偏差を示す。

21

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【Elf5 と Scnn1b は RA シグナル経路によって発現が制御され、尿管芽枝幹部

分で特異的に発現している】

同定した RA 応答候補遺伝子を制御する共通の転写因子を探索するため、こ

れらの遺伝子の転写開始点上流配列を用いてプロモーター解析を行なった。こ

の解析には Pscan という解析ソフトを用いた。また、配列データベースは

JASPAR データベースを用いた。解析の結果、転写開始点上流に Gata3 (GATA

binding protein 3) と Elf5 (E47-like factor 5) の結合配列が有意に濃縮してい

た(表 3)。Gata3 は-catenin のメディエーターであり、尿管芽で-

catenin/Gata3 経路は細胞の未分化状態を保つことに機能していることが既に

知られている (Grote et al. 2008; Marose et al. 2008)。Elf5 は上皮特異的 Ets

ファミリー転写因子のひとつである。Elf5 は腎臓上皮に発現していることが報

告されている (Lapinskas et al. 2004)。そして今回のマイクロアレイ実験と定

量的 RT-PCR 実験によって、Elf5 は RA 応答遺伝子として同定されたもののひ

とつであった(図 2F, 表 1, 図 4)。そこで私は、Elf5 に着目し、その発現場所

を調べるために、単離培養した腎臓を用いてホールマウント in situ ハイブリダ

イゼーション実験を行なった。Elf5 は尿管芽の先端では発現がほとんど見られ

ず、一方で枝幹部分に強く発現しており(図 5A, A’)、血清を欠くことによりそ

の発現量が低下し、RA を添加することによって顕著に上昇することが分かった

(図 5A-C)。

また私は、RA 応答候補遺伝子である Scnn1b (sodium channel, nonvoltage-

gated beta, ENaC) についても解析した(図 2, 表 1)。Scnn1b は上皮性ナト

リウムチャネル (epithelial sodium channel, ENaC) のサブユニットのひとつ

であり、腎臓の集合管のマーカー遺伝子として知られている (Thiagarajan et al.

2011)。ENaC は成熟した腎臓の連結管や集合管において、ナトリウム再吸収に

重要な役割を果たす (Schild 2010)。私は腎発生初期における Scnn1b の発現場

所を同定するため、単離培養した腎臓のホールマウント in situ ハイブリダイゼ

ーション実験を行ない、Scnn1bの発現も尿管芽の枝幹部分のみに局在し(図 5D,

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D’)、RA 依存的に発現が誘導されることを示した(図 5D-F)。尿管芽枝幹部分

は、形態形成後期に分化し、成熟した腎臓における集合管を形成する部位であり、

この結果は Scnn1b が腎発生初期から部位特異的に発現し、RA シグナル経路が

その発現に関与する可能性を示唆している。

以上から、RAシグナル経路が Elf5と Scnn1b が尿管芽の枝幹部分に発現し、

RA シグナル経路によって発現が制御されることが示唆された。

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Transcrptionfactor name P-value

GATA3 4.32E-03ELF5 4.45E-03FEV 7.30E-03Mafb 8.39E-03

NFE2L2 1.12E-02Myf 1.30E-02

MZF1_1-4 2.40E-02SPI1 3.09E-02En1 3.94E-02

NHLH1 4.56E-02

表3 RA応答候補遺伝子のプロモーター解析の結果RA応答遺伝子として同定した Elf5は赤く強調している。

24

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+Serum

-Serum

+RA

Elf5 Scnn1b

UB

A

B

UB

A’ D’

C

D

E

F

図5 RA 応答遺伝子として同定した Elf5 と Scnn1b は RA によって尿管芽の枝幹部分で特異的に発現が誘導される遺伝子である(A-F) E12.5 マウス胎児の腎臓を摘出して 48 時間培養し、Elf5 (A-C), Scnn1b (D-F) の mRNA の発現場所をホールマウント in situ ハイブリダイゼーション実験により解析した。 (A’ , D’ ) それぞれ A, D の四角で囲まれた部分を拡大した図。白色破線は尿管芽 (UB) の輪郭を示す。

25

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【間質細胞に局在して RA 依存的発現パターンを示す遺伝子の解析】

RA 応答遺伝子として同定した遺伝子の中で、RA の有無によって発現変化が

もっとも大きかった遺伝子は Ecm1 であったので、Ecm1 について着目し、解析

した。Ecm1 (extracellular matrix protein 1) は分泌糖タンパク質であり、この

遺伝子に変異が起きると脂質蛋白症や潰瘍性大腸炎の原因となることが報告さ

れている (Hamada et al. 2002; Fisher et al. 2008)。さらに最近、Ecm1 は RA

によって腎臓の間質細胞特異的に発現が誘導され、尿管芽の分岐点の割れ目部

分で Ret の発現を減少させることで、分岐形態形成を制御することが報告され

た (Paroly et al. 2013)。私の行なったマイクロアレイ実験と定量的 RT-PCR 実

験で、in vitro 培養系でもこの報告と同様に Ecm1 の発現が RA によって著しく

誘導されることを示し、さらに RAR アンタゴニストによって抑制されることを

示した(図 2, 4, 表 1)。また、単離培養した腎臓のホールマウント in situ ハイ

ブリダイゼーションで Ecm1 が間質細胞で特異的に発現し(図 6A, A’)、発現量

が無血清培地で培養することで低下し、RA を加えることで著しく上昇すること

を示した(図 6A-F)。これは Paroly (2013) らの報告と一致している。

また、腎臓の発生は尿管芽、キャップ状間葉、間質細胞の相互作用によって進

行するため、さまざまな分泌因子がその相互作用において重要な役割を果たす

と考えられる。そこで私は、今回同定した RA 応答遺伝子に含まれるサイトカイ

ン Tnfsf13b と IL-33 について着目し、さらに解析することにした。Tnfsf13b

[tumor necrosis factor (ligand) superfamily member 13b, B-cell-activating

factor (BAFF), BLyS, TALL1 という名前でも知られる] は TNF ファミリーサ

イトカインであり、B 細胞の分化、生存、増殖に重要な役割を果たしていること

が知られている (Goodnow et al. 2005)。IL-33(Interleukin 33, IL-1F11 とい

う名前でも知られる)は、IL-1 receptor-related protein である受容体 ST2 に

結合して下流のシグナル経路を制御するが、転写因子として働く機能もあるこ

とが報告されている遺伝子である (Schmitz et al. 2005; Carriere et al. 2007)。

私は、Tnfsf13b、IL-33 の発現場所を同定するため、単離培養した腎臓でそれぞ

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27

れについてホールマウント in situ ハイブリダイゼーションを行ない、いずれも

間質細胞特異的に発現し(図 6G, G’ , J, J’)、無血清培地で培養することで発現

量が低下し、RA によって誘導されることを見出した(図 6G-L)。

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図6 RA応答遺伝子として同定した Ecm1, Tnfsf13b, IL-33は間質細胞で特異的に RAによって発現が誘導される(A-L) E12.5 マウス胎児の腎臓を摘出し 48 時間培養した後、Ecm1 (A-F), Tnfsf13b (G-I), IL-33 (J-L) の mRNA 発現をホールマウント in situ ハイブリダイゼーション実験により解析した。Ecm1は発色時間を 4時間(Long)と 1.5時間(Short)の二つの条件で行なった。(A’ , G’ , J’)それぞれ A, G, J の四角で囲んだ部分を拡大した図。白色破線は間質細胞(Stroma, St)の領域を示している。

+Serum

+RA

ShortLongEcm1

A

B

C

D

E

F

St

A’

-Serum

IL-33Tnfsf13b

+Serum

+RA

G

H

I

J

K

L

St

G’St

J’

-Serum

28

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【NF-B シグナル経路を阻害すると尿管芽の分岐形態形成が阻害される】

Tnfsf13b と IL-33 はどちらもサイトカインであり、ともに下流で NF-B

(nuclear factor B) シグナル伝達経路を活性化することが知られている

(Akira et al. 2001; Chackerian et al. 2007; Funakoshi-Tago et al. 2008;

Matsuzawa et al. 2008; Vallabhapurapu et al. 2008)。私は、NF-B シグナル

伝達経路が腎臓の形態形成に関わっているのではないかと予想した。そこで、in

vitro 培養系で 2 種類のインヒビター、BAY 11-7082 と IKK-2 inhibitor IV をそ

れぞれ添加し、腎発生への影響を調べた。BAY 11-7082 は、IBa (inhibitor of

NF-B a) のリン酸化を阻害する薬剤であり(Mori et al. 2002)、IKK-2 inhibitor

IV は TPCA-1 としても知られ、IKK-2 の ATP 競合性阻害剤である (Podolin et

al. 2005)。E11.5 マウス胎児から摘出した腎臓を、血清を含む培地で 24 時間培

養後、コントロールの培地には DMSO を加え、BAY 11-7082 は終濃度 10, 20,

40 M、IKK-2 inhibitor IV は終濃度 5, 10, 20 M となるように、それぞれ濃

度勾配をつけて培地に加え、さらに 48 時間培養した。その結果、どちらのイン

ヒビターを加えた場合でも、DMSO を加えたコントロールの腎臓と比較して、

尿管芽の枝の数が濃度依存的に著しく減少した(図 7A-H)。またコントロール

の腎臓では、キャップ状間葉は尿管芽先端を取り囲む構造をとるのに対し、どち

らのインヒビターを処理した腎臓の尿管芽でも、枝の数の減少に加え、尿管芽の

枝先端からキャップ状間葉が消失するという表現型が見られた(図 7B-C’, E, F

の白矢頭)。また、コントロールの腎臓の場合には、キャップ状間葉に取り囲ま

れた尿管芽先端は枝幹部分と比較して膨らんでいるが(図 7A’黄色矢頭)、キャ

ップ状間葉が消えた尿管芽先端は膨らんでおらず、分岐形態形成を起こしてい

なかった(図 7C’白矢頭)。これらの結果から、NF-B シグナル経路は腎臓の尿

管芽の分岐形態形成に関与することが示唆された。

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0102030405060708090

100

10 μM 20 μM 40 μM 5 μM 10 μM 20 μM

DMSO BAY 11-7082 IKK-2 inhibitor Ⅳ

# of

UB

bra

nche

s

* ** **** **

n.s.

DMSO BAY 11-7082

40 μM

IKK-2 inhibitor Ⅳ

20 μM

10 μM20 μM

10 μM 5 μM

図7 NF-κBシグナル伝達経路を阻害すると尿管芽の分岐形態形成が異常になる(A-H) E11.5 で摘出した腎臓を 24 時間培養後、DMSO (A), BAY 11-7082 (B-D), IKK-2 inhibitor IV (E-G) を加えた培地で 48 時間培養して固定し、尿管芽上皮マーカーである pan cytokeratin 抗体とキャップ状間葉 (CM)のマーカーである Six2抗体で染色した。白色矢頭で示すように、インヒビターを添加した腎臓では CMで先端をキャップされていない尿管芽が見られた。スケールバーは 100 µm を示す。(A’ , C’ ) DMSO で培養した腎臓 (A) と 20 µM の BAY 11-7082 で培養した腎臓 (C) の白四角で囲んだ部分を拡大した写真。黄色矢頭はCM が尿管芽の膨らんだ先端を囲んでいる部分、白色矢頭は CM が消え、尿管芽先端が膨らんでいない部分を示す。(H) で尿管芽の先端の数を定量した。各条件につき 4 個以上の腎臓の平均 ± 標準偏差を示す。n.s., not significant, *P < 0.05, **P < 0.01であることを示す。

A A’ B

C C’

D

E

F

G

H

30

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31

考察

レチノイン酸 (RA) シグナル経路はこれまでの研究から、腎臓を含む多くの

器官の形成や細胞分化に広く関わり、個体発生全体を通して重要な役割を果た

すことが知られている (Mendelsohn et al. 1994; Niederreither & Dolle 2008)。

特に腎臓に関しては、げっ歯類の研究で妊娠中、母体のビタミン A 不足によっ

て生まれてくる子どものネフロンの数が 20%減少するという報告がある

(Lelièvre-Pégorier et al. 1998)。ヒトの研究においても、母体からの栄養でビタ

ミン A が不足していると、生まれたヒトが将来、高血圧になるリスクが高まる

危険性が指摘されている (Bhat & Manolescu 2008)。

RA シグナル経路は、腎臓の発生において尿管芽の後腎間葉への伸長や分岐形

態形成に際し、重要な役割を果たす (Mendelsohn et al. 1999; Batourina et al.

2001; Rosselot et al. 2010)。Rar-/-Rar2-/-マウスでは、RA シグナル経路の標

的遺伝子である受容体型チロシンキナーゼRetの発現が抑制されることにより、

尿管芽の形成が阻害され、腎形成不全の表現型を示すことが報告されている

(Batourina et al. 2001; Rosselot et al. 2010)。しかし、腎発生において Ret の

ほかに、RA シグナル経路によって発現が制御される遺伝子にどのようなものが

含まれるのかについて、詳細に解析されていなかった。本研究で私は、腎臓の発

生初期に RA によって発現が誘導される遺伝子をマイクロアレイ実験で網羅的

に解析した。その結果、RA シグナル経路によって発現が誘導される候補遺伝子

として 33 個を同定した。さらに、定量的 RT-PCR 実験でそのうち 28 個で確か

に RA によって発現が誘導されることを示し、RAR アンタゴニストの添加によ

り、多くの候補遺伝子で発現量の減少が見られた。しかし、定量的 RT-PCR 実

験の結果、RA によって 1.5 倍以上強く発現量を増加させる遺伝子の中でも、

RAR アンタゴニストによる発現量の減少の割合に違いが見られる。本研究では

RAR アンタゴニストである BMS493 を終濃度 1M, 2M, 5M と濃度勾配を

つけてそれぞれ加えて腎臓を単離培養し、RA 応答遺伝子の発現量が減少するか

Page 34: Title マウス胚を用いた後腎初期発生におけるレチノイン酸応 … · した。Elf5 はRA 応答候補遺伝子として定した 33 個の中にも含まれており、

32

を調べた。BMS493 を 1 M 添加することによって既に発現量がコントロール

の半分以下に強く抑制される遺伝子が RA 標的遺伝子である Rarや Ret を含

め、28 個中 17 個であった。ところが、BMS493 を 5 M 添加しても発現量が

コントロールと比較して半分以下にならなかった遺伝子が 28 個中 8 個あった。

残りの 3 遺伝子は BMS493 の 1 M 添加では、発現量は半分以下にはならない

が、5 M 添加によって半分以下に抑制された遺伝子である。このことから、RAR

アンタゴニストの発現抑制効果が小さい 8 遺伝子は RA シグナル経路の直接の

標的遺伝子ではないか、RA シグナル経路と並行して転写制御する他のシグナル

伝達経路が存在する可能性が考えられる。これを明らかにするには、それぞれの

RA 応答遺伝子の転写開始点上流の配列をさらに詳細に解析し、レチノイン酸応

答配列 (RARE) の有無と RAR アンタゴニストへの応答性の違いの関連につい

て調べる必要があると考える。

また私は、RA 応答候補遺伝子のプロモーター解析により、それらの多くが転

写開始点上流の配列に、RA 応答遺伝子として同定した転写因子 Elf5 の結合配

列を持つことを見出した。Elf5 は Ets ファミリー転写因子のひとつであり、コ

ンセンサス配列 GGAA/T に結合し、さまざまな遺伝子の転写活性を制御してい

る (Wang et al. 1992; Wasylyk et al. 1992; Oettgen et al. 1999)。これは Elf5

が腎発生においてさまざまな遺伝子の転写を制御する可能性を示唆している。

今後、in vitro 実験系を用いて Elf5 をノックダウンし、他の RA 応答遺伝子の

発現が変化するかを調べる実験や、RA 応答遺伝子の転写開始点上流配列につい

て、クロマチン免疫沈降 (ChIP) 法により Elf5 の結合が見られるかを調べる実

験により、Elf5 が制御する遺伝子について解析する必要がある。

Elf5 がどのようなメカニズムで制御されているのかについて、さまざまな器

官で研究されている。発現は、腎臓だけでなく肺や乳腺、前立腺など分泌上皮を

持つ臓器、さらに毛包や、ケラチノサイトで広く分布していることが知られてい

る (Zhou et al. 1998; Oettgen et al. 1999; Choi et al. 2008; Lapinskas et al.

2004)。また、肺上皮の分岐形態形成初期において FGF シグナル伝達経路によ

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33

って肺上皮先端特異的に発現が誘導されることが分かっている (Metzger et al.

2007)。本研究で私は、ホールマウント in situ ハイブリダイゼーション実験に

よりElf5が単離培養した腎臓の尿管芽枝幹部分で特異的に発現し RAシグナル

経路によって発現が制御されることを示した。また私は、in vitro 培養系で単離

した腎臓に FGF 受容体のインヒビターである SU5402 を添加し培養して Elf5

の発現量を解析した。だが、RAR アンタゴニストに対する変化と比較しても、

顕著な発現量の減少は見られなかった (data not shown)。よって、腎臓では Elf5

は FGF シグナル経路を介さず、RA シグナル経路を介して転写制御を受けてい

ることを示唆している。また、Elf5 の腎臓における機能解析はまだ報告されて

いない。しかし、肺における解析については報告があり、Elf5 は肺上皮形態形

成後期には本来消失するのだが、その Elf5 の発現が後期で過剰に維持されるよ

うなトランスジェニックマウスを解析した結果、肺上皮細胞の分化が阻害され

た (Metzger et al. 2008)。一方で腎臓の尿管芽では、上皮先端では発現せず枝

幹部分に発現しており、しかも後期になると発現量が上昇することが示されて

いる (Schwab et al. 2003)。よって肺上皮では Elf5 が形態形成後期の細胞分化

を抑制する方向に働くが、腎臓では後期における細胞分化に正の方向に働き、そ

の発現に RA シグナル経路が関わる可能性がある(図 8)。今後、Elf5 の腎臓特

異的ノックアウトマウスなどが作製されれば、Elf5 が腎臓の発生における形態

形成や細胞分化にどのように機能するのか、さらに解析できると考えられる。

私は RA 応答遺伝子として同定した Scnn1b についても解析し、Scnn1b もま

た、尿管芽枝幹部分で特異的に発現し RA シグナル経路によって発現が制御さ

れていることを明らかにした。Scnn1b はENaC としても知られ、上皮性ナト

リウムチャネル (ENaC) のサブユニットのひとつで、腎臓の集合管に発現する

マーカー遺伝子である (Thiagarajan et al. 2011; Schild 2010)。Scnn1b-/-マウス

では水やナトリウムイオンの再吸収、カリウムイオンの排出といった主要な腎

機能に重篤な異常が見られることが報告されている (Brooker et al. 1995;

Bonny & Hummler 2000)。Scnn1b は、将来集合管となる部位である、尿管芽

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枝幹部分で RA シグナル経路によって発現制御を受けている。これは RA シグ

ナル経路が腎発生後期の集合管形成における細胞分化に関わる遺伝子発現を制

御する可能性を示唆している(図 8)。今後、転写開始点上流配列の RARE など

転写因子結合配列の詳細な解析やその転写因子が実際に結合するか ChIP 実験

で解析することなどから RA シグナル経路が Scnn1b をどのように転写制御し

ているか、さらに明らかにすることができると考えられる。

つづいて私は、間質細胞特異的に RA によって発現が誘導される遺伝子とし

てサイトカイン Tnfsf13b, IL-33 をそれぞれ同定した。Tnfsf13b と IL-33 はい

ずれも分泌因子として働き、その下流で NF-B シグナル伝達経路を制御するこ

とが知られている (Akira et al. 2001; Chackerian et al. 2007; Funakoshi-Tago

et al. 2008; Matsuzawa et al. 2008; Vallabhapurapu et al. 2008)。そこで本研

究にて私は、NF-B シグナル伝達経路の 2 種類のインヒビターをそれぞれ添加

して培養した腎臓を解析し、尿管芽の分岐形態形成が著しく阻害されることを

見出した。このことから、NF-B の活性が、腎発生の正常な進行に必須である

ことが示唆された。しかしながら、NF-B シグナル伝達経路のインヒビターの

効果は、RAR アンタゴニストによる腎発生への効果と比較すると、キャップ状

間葉が消失し、尿管芽先端の形態に異常が生じるという表現型が見られ、より重

篤であることが分かった。これは、NF-B シグナル伝達経路が RA シグナル経

路から受ける制御とは別に、他の分泌因子やシグナル経路からも制御を受けて

いる可能性を示唆している(図9)。NF-Bシグナル伝達経路は細胞死を阻害し、

細胞の生存を制御することから、この表現型でも細胞死が引き起こされている

可能性が考えられる。そこで今後はまず、それぞれのインヒビターが尿管芽と後

腎間葉のどちらか一方に作用しているのか、両方で重要なのかについて検討す

る必要がある。このためには、単離した腎臓の培養時にインヒビターを添加し、

添加開始時点から回収のタイミングを細分化してそれぞれ TUNEL 染色などの

死細胞染色を行なう。死細胞が検出されればそれがどこで引き起こされている

のか解析することでNF-Bシグナル伝達経路の機能について示唆が得られるは

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ずである。さらに、Tnfsf13b と IL-33 のタンパク質をインヒビターと同時に添

加して、インヒビターによる異常が緩和されるのか、さらに死細胞が減るのかに

ついて調べることで、Tnfsf13b と IL-33 が実際に単離培養した腎臓で働くかど

うか、RA シグナル経路が細胞生存の制御に関与しているのかについて解析でき

ると考える。

本研究で、腎臓の初期発生における RA シグナル経路によって転写が誘導さ

れる遺伝子が複数同定され、NF-B シグナル経路が尿管芽分岐形態形成に重要

であることが明らかになった。しかしながら今回の研究であきらかにできたの

は、新しい RA 応答遺伝子と尿管芽分岐形態形成に関わるシグナル経路の存在

のみであり、詳細な機能や分子メカニズムに関する示唆は得られていない。

今後、さらに腎臓の初期発生における RA シグナル経路の下流制御因子の働

きに関する研究や、腎発生を制御する多様なシグナル伝達経路同士の関連につ

いて、さらに洞察されていくことが期待される。

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Scnn1b Elf5?

RA

RARs

Cell differentiation

Other RA-responsive genes

??

Collecting duct

Ureteric trunk

図 8 RA応答遺伝子 Elf5と Scnn1bと集合管成熟との関係本研究で解析した RA応答遺伝子 Elf5と Scnn1bを赤く強調している。

36

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図 9 尿管芽分岐形態形成と RA応答遺伝子 Tnfsf13bと IL-33、NF-κBシグナル伝達経路の関係本研究で解析した RA応答遺伝子 Tnfsf13bと IL-33を赤く、NF-κBシグナル伝達経路の分岐形態形成への関与を青く強調している。

RA

RARs

?

GDNF

RET/GFRa1

Branching Morphogenesis

RetNF-κB

?

Tnfsf13bIL-33

37

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謝辞

本研究を行なうにあたり、多くのご指導ご鞭撻を賜りました西田栄介教授に

厚く御礼申し上げます。そして、研究に取り組む姿勢など、技術や知識だけにと

どまらない貴重なご助言を数多くいただきましたことを記すとともに、深甚の

謝意を表します。

実験系の立ち上げやそれに関わるさまざまな知識・技術の習得にあたり、京都

大学大学院医学研究科腎臓内科学講座の柳田素子教授には、多くの貴重なご助

言をいただき、ひとかたならぬお世話になりました。厚く御礼申し上げます。

本研究のマイクロアレイ実験など、本学位論文に関わるさまざまな場面でご

助力頂きました、宮竹功一さんに深く感謝いたします。

西田研究室の皆様には、さまざまな議論を通じて、多くのご助言をいただきま

した。特に満島勝博士には研究の進め方や考え方、必要な技術について、ご指導

いただきました。心より感謝いたします。また、研究室の同期である、阿部佐耶

さん、鄭小娜さん、高橋知佳さんとはいつも切磋琢磨し、励ましを頂きました。

深く御礼申し上げます。

最後に、いつも温かく見守り応援してくれた両親と夫、侑也に、この場を借り

て心から感謝します。

本学位論文は以下の学術論文の内容に基づいて書かれたものである。

Mami Takayama, Koichi Miyatake, and Eisuke Nishida

Identification and characterization of retinoic acid-responsive genes in mouse

kidney development

Genes to Cells, 19, 637–649, 2014