title ハリスンの原価会計観 - 原価計算思考における転換 - 經...

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Title ハリスンの原価会計観 - 原価計算思考における転換 - Author(s) 野村, 秀和 Citation 經濟論叢 (1968), 101(4): 341-357 Issue Date 1968-04 URL https://doi.org/10.14989/133262 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversion publisher Kyoto University

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  • Title ハリスンの原価会計観 - 原価計算思考における転換 -

    Author(s) 野村, 秀和

    Citation 經濟論叢 (1968), 101(4): 341-357

    Issue Date 1968-04

    URL https://doi.org/10.14989/133262

    Right

    Type Departmental Bulletin Paper

    Textversion publisher

    Kyoto University

  • 司号泊h・吾珂第 4号第101巻

    昭和二七年一三月一日第三種郵便物認可

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    1 勲本市場調査論の成立・・ ...…... …・・・・ ・・・・・・橋

    17 辛口秀中古ハリ λ ンの原価会計観・…………...・H ・....ーー野

    34 徳正津部門連関パラ γスの諸形態と

    固定フォンド (2).......…...・H ・..・H ・H ・- ・・・野

    58 彦勝石利潤・平均利潤範鴎と諸資本の競争・・H ・H ・目・・松

    昭和43年 4月

    京郡大事経等専事曾

  • ハリスンの原価会計観

    一←原何計算思考における転換ー←

    (341) 17

    野村秀和

    はじめに

    標準原価計算理論の研究におb、て, G. C ・ハリスンの原価理論をとくに採

    りあげる意味は,すでに)JIJ稿の「ハリスyの標準原価計算論における原価差異

    分析について」の冒頭に述べたとおりわ、リスンが標準原価計算の闘拓者の一

    人であり,またマースソによって説明された諸原則に基づく最初の標準原

    価制度をとりあげた人といわれているからであるJ"。

    別稿では,ハりスyの原価美異分析の公式に焦点をあてて,彼の標準原価計

    算理論をとり扱ったのであるが,本稿では,日l稿を補完する意味において,ハ

    りスY の標準原価計算理論の性格を浮ぼりにし,もって,ハリスYの原価会計

    観の特徴を全体として捉えてみたいと思う。

    かかる試みは,原価計算理論のなかに標準原価計算理論を導入し,在来の原

    価計算理論に対する強い批判を展開し,新しい原価会計観いうならば原価計算

    思考における転換を提起し,しかもそれを確立したハリスンの原価会計観の特

    徴を整理することを意味する o 啓蒙的な意義を意識しながら提起された初期ハ

    りスンの論文をもとに以上の点を捉えてみたいと思ったのは,標準原{曲計算思

    考の成立が,一つには科学的管理法の原価計算分野における具体化の過程であ

    るという一般に普及している考え方勺ことどまらず, もう一つの柱 一般に,

    U 拙稿 ハリスγの標準原価計算論における原価差異分析について 「経済論叢」第96巻第1号,昭和40年7月 23へージ。

    2) 例えばJ 長谷川安兵衛!科学的管理法と標準原価, i会計」第四巻第6号,昭和5年12月,山辺プミ郎, r標準原価計算」昭和24年,序文,および97-99~ージ;松本雅男, i標準原価計草論」昭和36年, 48-51へージ;Monard V. Hayes, Accou抗ti吋 1MExecuh四 Conirol,1928, pp. 1 4; L. CJeveland Amidon and Theodore Lang, Essentials 01 Cost Ac印刷~ting, 1928, p. 1; H. E.Kearsey, Standard Cost返 1933,p. 2 なお,この書物の副題は SιienHftcMethod間 th,D四 elOP'抑制tand Use 01 Cost Standa-rdsとある。

  • 18 (342) 第 101巷第4号

    原価管理の分野ではあまり重視されてし、ないところの協同と調整 (Co-operation

    and Co-ordination) の視点 が,標準原価計算思考の成立の重要なポイント

    になコていると思われるからである。

    標準原価計算理論をとり扱う !fあい,科学的管理法との関連について触れて

    いない論者壱みつけることは今では貯っかしいことであるが,協同と調整の視

    点が標準原価計算思考の成立にと〈に重要な役割を果すということについて

    は,原価計算研究の上でそれほど重視はされていないし,またほとんど問題に

    もされていないのである。

    しかし,標準原価計算理論の確立者ノ、リスYにおいては,協同と調整の視点

    は,原価管理の立場からは欠くことのできない重要なファクターと Lて扱われ

    ており,ある意味では,科学的管理法を原価会計分野へ直線的に応用するので

    はなく,協同と調整の視点心、う換言すれば企業管理の視点によって媒介され

    ることにより,標準原価計算思考が原価会計分野に確立されたのであるといい

    うるのではなかろうか。

    このような問題意識から,今までに何人かの論者によって述べられているハ

    リスンの原価会計理論と科学的管理法との関係には簡単に触れた上で,ハリス

    ンの標準原価計算理論いうならば原価管理の思考が,協同と調整の視点をし、か

    にふまえて確立したかをみてみたいと思う。

    そして,彼の思考がかかる標準原価計算理論の性格にし、かなる特徴を与えた

    か,また,初期の啓蒙的論文のなかにおいて,どの程度の成熟度を示してし、る

    か,さらに,協同と調整の視点がし、かなる具体的内容としてハりスV によって

    説かれているか,そのばあい,企業管理とくに企業の利益計画と原価管理がど

    のような関係におかれてし、るかなどを明らかにすることにより,技術者的見地

    と経営者的見地の統一体といわれている彼の原価理論のなかで,後者の見地の

    優位性が,いかにその融合過程のなかで示されているか壱明らかにしたいと思

    つo

    なお,ここで初期ハり旦Yの論文としてとりあげるのは,別稿でも示したご

  • J、yスンの原価会計観 (343) 19

    左¥, 1多~dust内at Manage怖の,t誌上に 1918年から 1920年の聞に発表した以下町 4論文である九

    [ 1 J Cost Accounting to Aid Produdion, Vol. 56, No. 4~ Vo1. 57, No

    6, Oct. 1918~ June 1919

    [2 J Cost Aceollnting in the "New lndustrial Day ヘVol.58, No. 6,

    Dec. 1919

    [ 3 J Cost Accounting in the “N ew Industrial Da'γ" Vol. 59 No. 1,

    Jan. 1920.

    [4) Scient国 cBasis for Cost Accounti月, Vol.59, No. 3, Mar. 1920

    I 在来の原価計算批判

    ハリスンによる在来の原価計算批判の内容を端的に示す彼自身のことばを選

    ぶならば,われわれがとりあげようとしている彼の発表した一連の論文の冒頭

    に以下のようなことばを見いだすことができる。すなわち!とくに奇妙なこと

    に,工業管理の他の全ての部分はここ数年間に目ざましく進歩してきたのに,

    原価計算法一般は実質的な前進壱みせてはし、なし、」ヘそして,さらに,職業会

    計士たちはもともと原価計算法の発展に指導的な役割を果さなければならない

    のに, ["近年になって導入された製造方法の基本的変化にもかかわらず,とれ

    らの工業発展に準拠した原価計算法の修正について,職業会計士はほとんど重

    要な寄与をしてとなかったF左不満争表明するのである。そして後の論文のな

    かでは「人は最近数年間の原価計算文献をただ以下のことを悟るだけのために

    も読まなければならない。すなわち,その大部分はほとんど旧し、考えの焼直し

    であれそれらの著者達は工業法の革命的な変化が原価計算にもそれ』こ応じた

    変化を必要としていることを認識していない・ 製造家が近代工業が必要とす

    るものについての実際上の認識なしで作られた (designedwithout any real app-

    3) 拙稿,前掲論文, 25ベ ジ。ここでも別稿のごとく, C 1)論文とし、うように略称して用いる。4) G. C. Haロison,(1), Vol. 56, No. 4, Oct. 1918, p. 273 5) Ibid., p. 274

  • 20 (344) 第 101巻第4号

    reciation) 原価計算制度に満足するなら, 原価計算の発展は漸進的な結果とな

    るであろう。最高に重要な問題は,アメリカの企業家が生死にかかわる問題の

    悠長な解決を待っていられるかどうかであるJ"と結ぶことによれ在来の原価

    計算に対する包括的な批判と危機意識を明瞭に表明しているのである。

    さて,ハリスY による在来の原価計算批判の内容をさらに立ち入って捉える

    ことにしよう。

    その第 1は,能率視点からする在来の原価計算批判である。ハリスYはこの

    点について「ガγ トの示唆するごとし非能率を訂正する第 1歩はその存在壱

    決定することにある。 エマースY その他の技師たちが普通の原価計算法の

    欠陥を十分に認識し,将来の原価計算が確実にどの道をたどらねばならなし、か

    をはっきりと予見していたにもかかわらず,彼等は求められた結果壱実現する

    ために採られるべき方法についての詳細な情報を,ほとんど与えなかったこと

    は認められねばならない」ηということにより,能率技師であるガγ トやエ7 ー

    スンの欠陥をすでに認識してはいたが,しかしなお強い影響を受けていたこと

    を示している。

    かかる技術者的見地は,不働費の生産原価否認となってあらわれ「認められ

    た原価計算制度のもっとも重大な欠陥は,生産費と不1動費の区別ができないι

    とである・,不{動費を生産原価の中へ算入することは作業効率の指針とみられ

    る原価報告書の価値を完全になくしてしまう ー 我々にとっては,監督が直接

    責任を負う費用と管理しえない費用を区別することが必要であれそしてさら

    に彼ができるかf町経済的に生産しているかどうかを述べる位置にあるために

    は,我々は実際原価と標準とを比較しうるために全費用に対して標準壱必要左

    することも明らかである」むというように,在来の原価計算批判が能率視点から

    標準原価計算思考の主張にまで発展して〈るのである。そして,かかる主張は

    6) G. C. HarnsoIl, (3). p. 17 7) G C. Harrison, (1J, Vol. 57, No. 6. June l~l!:l, pp. 483-84 8) G. C. Haruson, (2J. p. 443 また別のところではj 標準原価を超過した「かかる特別経費が,結局は生産物に含まれることになるにせよ z 最初にまずj 記録や原価報告書には特別経慣と明記されなければならなし、」と書いている。 [3J.p. 14

  • ハリスγの原価会計観 (345) 21

    原価計算理論への科学的管理法の適用によって完成されてくるのは後にみると

    おりである。

    さらに第2の批判視点は,一般にはほとんど問題とされていないようである

    が,私にはとくに重要と考えられるところの,協同と調整の視点を重視する立

    場からの批判である。

    企業管理の立場から,企業内の各部門の協同と調整が一般に強調されること

    は当然のことではあるが,ハリ:A"/が乙のなかでとくに重視していることは,

    販売部門への正確で利用可能な原価情報の提供による原価計算部門と販売部門

    との協同と調整である o

    彼はいう「一般的lこし、って,能率的な企業活動における最大の障碍は,原価

    と利益に関する不十分,不適切かつ不正確な情報である。普通の脹売管理者は

    その販売価格を製造販売費が一様な競争者の相場に某いてつけることがしばし

    ばあるが,その結果,販売活動の方向はたいてい盲が盲を導くようなものとな

    ってしまう。全競争者が原価に関して同じように無知である限りは,このよう

    な事態から生ずる障碍は,多かれ少なかれ一様ではあるが,若干のより進取的

    な競争者が,熱心にかつ組織的に,信顧しうる原価計算法の導入に着手したな

    らば,事情はまったく変ってしまうPしかし,彼の現状認識としては「多くの

    ばあい,原価計算部門より販売管理者に提出される情報は無いほうがまし j町と

    いったものであった。

    したがって,その結果「在来の会計制度は販売部門の努力による利益と製造

    部門によりなされた経済性からくる利益との区別がつかず,その結果,不十分

    な表示は一般に他の部門の欠陥をある部門のせいとする」叫ことになる o したが

    って,この点を改善し,業績評価を各部門ごとに正確になしうるような原価情

    報が必要になってくるのである。ハリスY 自身「多分,この論文で述べられた

    原価計算法のもっとも価値ある特徴の一つは,販売部門と製造部門との聞に明

    9) G. C. Harrison, (1), VuL 57" No. 5, May 1919, 1-'-400 10) lbid., p. 400 11) lbtd., p. 401

  • 22 (346) 勢 101巻第4号

    確な一線を容易に引きうる点にあるといえようJ2)というこ Eにより,まず,部

    門の業績評価に直結する原価計算制度を,そしてそれを前提としての部門聞の

    協同と調整のための正確な原価情報の提供を必要と考えていたのであり,この

    意味から在来の原価計算批判を展開するのである。そして今や「事実にうとい

    競争者のあて推量や判断の代りに,正確な情報に基いて事業壱経営しうるよう

    な情報を原価部門が提供するように,販売担当重役が要求する時代が急速に近

    づきつつある」同として,新L-¥、原価計算思考を,内容的にみると,販売競争

    とのさらに換言してし、えば企業の利益計画との関連のもとで展開し,位置づけ

    ようとしているのである。

    もちろん, "リスY は「すべての産業問題の解決が,原価計算の有効な使用

    法の導入に見いだされるとは主張しないが」叫,原価計算の適切な方法は「基礎

    的で基木的な工場の改善であり」町,不十分な原価計算は「企業の販売および財

    務の両部門に重大な障碍」問宇与えると主張し,こうしたハリスンの主張が正し

    いといえるなら, rわれわれは,原価計算法の広範な革命の前夜にいるのだと考えることは理にかなっているように思われる」町と結論づけるのである。

    そして,このような「認められた原価計算法の非効率は,単にアカデミック

    な問題であるだけではない。 それは会計課や公共会計士の慣習に限定されな

    い。ぞれはわれわれの工業生活を根本的に打破るものである。J明と言い切る己

    とによれ彼の新しい原価計算思考の啓蒙的で実践的な性格を明示するのであ

    る。そしてこのことは,在来の原価計算に対する根本的な批判を意味している

    とみるととができょう。

    それでは以下において, まず, 能率視点(科学的管理法)からの批判,次

    に,協周と調整の侃点からの批判についで,さらに一歩進め,ハリ7-:/の見解

    12) lbid., p. 401

    13) G. C. Harrison, (1J, Vol. 57, No. 6, June 1919, p. 484 14) lbid., p. 486 15) Ibid., p. 486

    16) lbid., p. 486

    17) Ibzd., p. 486

    18) G. C. Harrison, (2J, p. 441

  • ハリスγの原価会計観 (347) 23

    を特徴づけてみよう。

    E 原価会計思考への科学的管理法の適用

    ハリスンの標準原価計算思考ほ,ガY トやエマースγ の影響を受けて,能率

    増進の立場から在来の原{曲計算思考を批判して形成され,とくに科学的管理法

    の原価計算領域への適用とみられてし、ることはすでに述べたとおり周知のこと

    ではあるが,この点について直接ノ、リ)'.;/に聞いてみることにしよう。

    当時においては「標準実務指示言の重要性は,工場実務の分野でますます認

    識されてきたが,原価計算の領域では科学的管理法のとれや他の原則は犬部分

    無視されてきた」り伏態であっ?。だからこそ,ハリス:/:fl彼の論文を「少くと

    も会計学の分野でこの原則の利用がたいへん効果のあることを示す目的で書い

    た最初のもの」叫と述べたのであるが,当時はまだ. I科学的管理法の完全なる

    意義は,実業界にあってはなお理解する必要」叫が多かったのである。ハリスy

    によれば「非木質的なことをすべて捨象すると, 科学的管理法の基本的思考

    は,結果の予定および諸方法と諸条件の標準化J22)として捉えられており. I開

    拓者としてのテイラーには,科学的管理は本質的に工場管理の制度であったJ3)

    が,ハリスンはエマース γ と同じしもっと広い効用を見いだし,原価計算へ

    の適用による標準原価計算思考形成への重要な柱となったのである。

    だが,かかる科学的管理法の適用の拡大は,当時は一般に十分理解されてい

    たわけではなし |この適用は,なお,主として工場に限られていた」叫のであ

    る。

    それでは科学的管理法の原個会計への適用は,原価会計をし、かに変えること

    になるのであろうか。

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  • 24 (348) 第 101巻第4号

    特徴的な表現を借りれば, それは回顧より展望への変化と言えるものであ1

    ~ ,能率技師たちの努力もすべてこのような態度の変化壱製造界に促すもので

    あった。

    ハリス Yの見解として述べているところをみると, I企業家は序々に回顧的

    から展望的な態度に移りつつあれ著者の意見では,将来の会計士は過去のこ

    との記録すなわち単なる歴史的記録よりも,ただちに利用できる将来叩知的な

    予測のために多くの時聞をついやすであろうj25)として,当時の企業家の態度の

    将来についての見とおしをもちながら I製造界が回顧的原価計算。古い思考

    から離れ,予定原価というより新しいそしてより広い概念を認めるや否や,原

    価計貨の権威k重要きのより十分なる評価が生じるであろう」町というととに

    より,原価会計思考の転換が原価計算をして,より重要な経営管理の手段とな

    ること壱指摘するのである。

    この展望的態度を支えるものは,科学的管理法に支えられた展望的原価計算

    である。すなわち「科学的管珪法に基く基本思考は,あらゆる漠然とした理想

    を,確定的で科学的に決められた標準に置換ること」町であり, I標準の原理の

    原価計算への適用は,原価の事前決定壱必要とする。それは原価計算の全

    体的視点を回顧的から展望的なものへと変える」叫のである。

    このばあい,標準の設定は会計士ではなく,作業原価の見積りに必要な実際

    的経験を有する「技術者かあるいは会計士と協力するところの経験ある工場管

    理者 (shopman) の領分である J29)ことは言うまでもない。

    それでは,かかる標準壱原価計算のなかに導入して標準原価計算を行う会計

    部門は,技術部門に対し, ,、かなる位置にあると考えられているのであろうか。

    この点では,後にみる協調視点がここでも貫かれており,それぞれの部門の役

    割jが次のように明示されている,すなわち「標準を決定し,標準遂行の手段を

    25) G. C. H出 USOll,(1). Vυ1, [;6, No. 4, Ocl. 1918, p. 278 26) G. C. Hauison, (1). Vol. 56, No. 6, Dec. 1918. p. 459 27) G. C. Hara;on, (1), Vol. 50, No. 5, Nov 1918, p. 391 28) Ibid., p. 392

    29) Ibirl., p. 392

  • ハリスゾの原価会計観 (349) 25

    提供することは技術部門の分野であれ他方,標準がどの程度まで実現された

    かを示す記録を提供することおよび技術部門の努力が成功しているところとし

    ていないところを明らか巳することは会計部門の機館である」町。

    このように会計部門によって行なわれる各部門の業績評価は,実際原価と標

    準原価との対比によって行なわれるのであるが, I実際原価と標準原価の対比

    表は,増減分析を必要とし,これがなされ志とき能率増進の問題は半ば以上解

    決される。というのは,普通の製造工場の困難さは,非能率の存在の発見後に

    それを正すことよりも,むしろ原価引下をどこからはじめるべきか壱正しく確

    定することにあるから」町と述ベているところからも判るよう~.::.会計部門の役

    割は,原価会計領域への科学的管理法の適用に上勺て,その機能が果しうるの

    だということの強い指摘となっている n

    このように,ハリス γの原価理論は, 意欲的できわめて実践的な性格をも

    ち,啓蒙論文としての特徴を端的に示しているのであるがこのような内容にと

    どまらず,これをさらに一歩進めた実践的な主張に発展する o

    彼は工場管理に科学的管理法が適用されているとき,それを原価計算の領域

    lにまで拡大適用すべきであるという考え方から一歩進めて,むしろ,原価計算

    制度に標準原価概念を導入することによれ科学的管理の行なわれていない工

    場管理に刺激を与え, その採用をいっそう早めることになろうというのであ

    る。すなわち「著者は,原価計算の正しい方法の設定は,基本的で基礎的な干し

    場改良であるとするべYジャミ γ ・フラ y クリ y と恵見を異にする。標準ない

    し予定原価の制度の導入は,著者の意見では,計画や処程の方法の設定におけ

    るごとき干し場内での科学的管理法の導入に先行すべきである。これはとくに能

    率的でありたいとする決意が十分に展開されていないような組織にあてはま

    る。というのは,この方向での原価制度の実施 (OperatlOn)は,おのずから広

    汎に,正しい見解や科学的管理法を採用する必要性をかかる組織に促すであろ

    30) G. C. Ha["Dson, (1), Vol. 57, No. 2, Fcb. 1919, p. 137 31) G. C. Harrison, (司.p. 14 32) G. C. Han:ω011, (1). Vol. 56, No. 5, Nov. 1918, p. 393

  • 26 (350) 第 101巻第4号

    うから」叫。

    すでにみてきたとおり,ハ Pスγにおいては,標準原価計算という新しい原

    価会計観は原価計算領域への科学的管理法の適用であると同時に,能率技師た

    ちの見かたと同様に,工場管理の強化,能率増進の手段として,また,部門業

    績評価のための正確な情報提供のためにも必要とされたものであった。乙のよ

    うに,きわめて技術者的視点に限られた立場からの換言すれば能率増進,ロス

    排除の立場から,標準原価会計観の成立壱説くことができるし,また,一般に

    そのような評価が普及しているのであるが,かかる側面(しかも,かなり重要

    な側面)があることを認めた上で,さらに, もう一つの沖回すペ曹点一一ーしか

    も,一般にはあまり問題とされていない一一一に移ってゆくことにしよう。

    この後者の視点、すなわち協同と調整の視点こそ,技術者的見地からの能率増

    進側面よりも,標準原価理論を企業の利益計画いうならば管理会計的視点のな

    かへ含めうる土台になっており,標準原価概念が原価管理視点で真に捉えられ

    るためのポイ γ トになると考えられるのである。

    E 協同と調整の視点

    新しい原価計算思考が在来の原価計算の批判のなかから形成されてくるばあ

    い,とくに協同と調整の視点を内包しているところがハリス γの新しい原価会

    計観の特徴と考えられるのであるが,この点について,初期ハリスy の論文の

    なかではどのような展開や位置づけがなされていたのであろうかo

    在来の原価計算思考のばあいにおいて,過去に発生した実際原価の計算,記

    録という意味からすれば3 ただ,過去の「事実」を捉えたというこ止だけで,

    企業内の協同と調整の視点が欠如していたととはいうまでもないことである

    が,企業家の見地が回顧より展望へと変化する傾向壱示したばあいでも. rこれらの努力からえられる諸便宜は,しかしながら,集中化と調整の欠如のため

    に,大きく減殺されていた」町のが現状であった。

    33) G. C Harrison, (1J, Vo1. 57, No. 4, Apr. 1919, p_ ::115

  • ,、リスソの原価会計観 (351) 27

    ハリスン』こあっては,能率増進の効果は 3 単に,製造部門だけで実現される

    のではなしいわば企業全体の協同と調整という企業管理の有効な働きのなか

    でのみ実現されるという考えからs そして,その協同と調整は,まさに正しい

    原価資料,会計資料の作成と報告によってのみ行ないうるという考え方から,

    協同と調整の視点が,標準原価計算思考の形成に大きな柱となってくるのであ

    るC

    そして,その協同と調整の中心ともなるべき部門は,正しい会計資料を作成

    する会計部門とみなされ-cし、る。すなわち,企業のなかのそれぞれの部門とい

    うものは, 直接にかまたは間接にかは別として, 互いに影響しあうものであ

    る。このような相互の関係を正しく調整することな L,には,企業管理ひいては

    原価管理の有効な働きはありえないであ弔う。このばあい,かかる調整役が会

    計部門であるとして,ハリス Yは次のようにいう「他のあらゆる部門の努力を

    調整する立場にある部門が一つある。これこそが会計部門である。そして,こ

    の部門こそ,普通の企業ではその改革が遅れている部門なのである」刊と。

    会計部門が正しい会計記録一一この中心は原価記録であるーーによって,企

    業の各部門の協同と調整の役害刊を担っていると考えられていることはすでにみ

    たとおりであるが,かかる協同と調整は,企業のし、かなる部門を中心にして行

    なわれるのであろうか。いうならば,企業活動のどの側面を指導側面として企

    業管理が行なわれるのであろうか。

    ハリスγは,この点について,販売中心の協同と調整の視点を明確に打ちだ

    しており, 原価計算思考もこのような販売中心の協調側面からみることによ

    れ真に管理的な標準原価計算思考として成立するとみるのである。彼は正し

    い原価制度を確立するために,販売統計資料の重要性を強調して r相対的にみて,販売統計の問題にあまり注意が払われていないことは驚〈ベきことであ

    る」町と指摘し,どんな企業でも,販売人や地域ごとに総売上高を示す記録を持

    34) Ibid., .p. 315 35) G. C. Ha口 悶on,(1). Vol. 56, No. 4, Oct. 1918, p. 281

  • 28 (352) 第 101巻第4号

    っているのに, I販売人ごとに稼得された実際の純益についての信頼しうる情

    報を入手することは,単純生産物で利益が容易に計算されるばあいを除いてほ

    とんどない。この情報の欠乏の直接的結果は,売上高によって手数料の支払壱

    受けないような販売人でさえも,純益の実現よりも販売量の拡大へと努めさせ

    てしまう。種々の複雑な生産物を扱う企業では,原価計算制度が目的に十分そ

    ぐわないなら,そしてまた,会計機構を使って,必要な情報の組合せそ迅速に

    しかも費用をかけずに行なうことで,原資料が編集されないなら」ペ企業管理

    は決して成功しないのである。そして,乙のような点からして,正しい原価情

    報が企業の利益計画をたて,またそれを実現するための重要な企業管理手段と

    考えられてくるのである。

    そして,このばあい Iその内容となる原理は大変単純なものであるJ7}/-~-y

    チカードγ丸子ムの「広範な適用は,多くの製造企業に非常に複雑な諸統計を

    もたらし,また,売上高が,販売員,地域,顧客層等のいろいろな項目別に分

    解されるようになった」明ということも同時に考慮するならば,ハリスンのいう

    新しい原価会計思考の採用の必要性と可能性が,非常に現実的な意味をもって

    おり,彼の主張の実践性がこの点からもうなづけるのである。

    にもかかわらず, Iアメリカの実業界は企業の内部での協同と調整の重要性

    を,なお十分に認識してはいない。このことの証拠はいたるところにみうけら

    れる。 ー数年前のとと,ある自動車の意匠が,広汎にしかもばく大な費用

    をかけて広告された。しかし,この広告キャ V ベーンで生じた需要に対し,在

    庫があまりに少なかったため,この広告キャ Yベ ンは非常に高くついたので

    あるj叫と述べることにより,現実の企業管理に対する積極的な改善策としての

    協同と調整の必要性を説き,その計数資料として,標準原価計算思考の導入を

    説いていると考えられるの Cある。

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  • ハリスンの原価会計観 (353) 29

    ハリスYは,このような企業管理における協同と調整の視点を重視すること

    によって得られる利点としては,経常的な (routine) 作莱の費用減少効果と用

    語の統ーをあげるのみでぺ企業の利益計画といった大きな観点を意識した体

    系的な協調視点を展開してい吾わけではないが,無意識的にしろ,販売統計資

    料をふまえて正確な利益情報入手のために正確な原価情報(標準原価計算思考に

    よるところの〉を必要とするとしサ形で, 原価会計部門の原価資料作成が企業

    の利益計画に対し重要な意味をもち,企業管理上の調整役害Iを果す左し寸意味

    壱内容的に捉えているとみることがで雪るのではなかろうか。

    とはし、え,実際には,かかる協調の欠如の例が多いのである叫。 とくに「技

    師によって導入された在来の計画および生産体系の顕著な欠陥は,計画機能と

    原価機能との協調の重要性を無視している」均点にあり,かかる調整視点の欠如

    を克服することは,新Lい原価会計観の真の誕生のためには不可欠のものと思

    われるのである o

    例えば,計画部門の仕事は原価部門の仕事とは結合されてはおらず, I計画

    部門の諸方法が,時間および生産の標準使用に基いているような諸例において

    さえも,原価部門は計画部門によって使用される諸標準とは全く分離され,独

    立した詳細な原価計算法でいとなまれるであろう。このような状況は明らかに

    小合理である」叫。したがって,当然のことではあるが,時間および材料の標準

    に基いて,工場作業が事前に計画部門で決定されているばあし、,この諸標準は

    明らかに原価部門で使用されることが必要であれまた,有益であるにもかか

    わらず,このような簡明な事柄についてさえも,ハリス yに「計画部門左原価

    部門との真に完全な協調体制が叙述されている科学的管理ないし会計に関する

    書物も論文も拝見したこ左がないJ44)土言わしめるような状況が一般的であっ

    40) Ibid., pp. 136-37; (11, Vol. 56, No. 4, Oct. 1918, p. 281なお,協調の利点としてハリスγのあげている興味深い内容としては 労働者を必要に応じて,他の仕事の応援などに廻し 仕事の協調をはかることにより,労働者乃隠された能力を尭見しうると」寸副産物が得られるなどと書いている。

    41) G. C. Harrison, [1). Vol. 57, No. 2, Feb. 1919, p. 136 42) G C. Harrison, (1), Vol. 57, No. 6, June 1919, p 484 43) G. C. Harrison, [1]. Vol. 57, Ko.2, Feb. 1919, p. 137

  • 30 (354) 第 101巻第4号

    たとみられるのである。このようなハリスYの叙述からも判るように,彼の標

    準原価計算思考は,科学的管理法の原価計算領域への単純な適用ではなし企

    業のなかの協同と調整という視点が,たとえ,不十分ではあるにせよ,一貫し

    て流れており,それによって彼の原価会計観というものを特徴づけない限札

    ;::r_-=?_J-;1..,.:/やガソトから一歩進めて,標準原価計算思考の確立者というための

    真の特徴づけに欠けるのではなかろうか。

    lYむすび

    ハリス Yの提起した新しい原価会計観は,すでに述べてきたように,在来の

    原価計算の欠陥壱認識し,その克服を課題として登場してきたものである o 在

    来の原価計算とは全部配賦原価計算を意味しており,この原価計算思考の重大

    な欠陥は,生産原価と不能率とを区分できないところにあった。

    不能率な原価には,生産標準からはずれたロスと不働設備費の両者を含み,

    とくに後者は, 当時すでに生産過剰からする不働設備の存在がみられるため

    に,このような不働設備費は企莱の操業度の変化に大きく影響され,固定的な

    製造間接費のなかに含まれる不働設備費の配賦により生ずる製品原価の変動

    が,在来の原価計算による原価情報の最大の欠陥と考えられたのである。

    科学的管理法の原価計算領域への適用の問題は,科学的管理法の性格からし

    て,直接労働過程におけるロスを生産原価から除去するととが中心的なねらい

    であったし,また,そのために,製造過程に応じた標準原価吾基本的には技術

    者的見地より作句あげ,それを超過する実際発生原価をロスとみるという形を

    とったのである。これはまさしく,作業を前もって予定し,展望的に将来の作

    業原価を標準原価として計算することである。

    かかる考え方は,ハリスンに始ったものではなく,エマースンやガ:/~によ

    ってすでに提唱され,ハリスンは彼等に大きく影響されたのである。ただ,こ

    のような見解は,すでに周知のとおり,当該企業の製造能力が 100パーセソト

    44) lbid.. p. 137

  • ρ リスンの原価会計観 (355) 31

    稼動されるという前提のもとでの展望的原価計算なのであり, この点におい

    て,きわめて技術者的能率増進視点に限定されたところの作業原価を予想しよ

    うと Fる一面性がみられるのである。

    したがって,とのような技術者的視点からは,不完全操業による不働設備費

    問題は最初から議論にならず,不完全操業壱完全操業に変えることが能率増進

    になるということ以上の結論は出てこないのである。

    エマース yや 7:l:/トの影響壱強〈受けているハリスソは,原価計算領域へ科

    学的管理法の適用を説く部分では,まさに,かかる技術者的見地壱強〈主張し

    ていると解釈されるのは当然のことかもしれなし九

    しかし,ェマ一月 YやガY トのような能率技師とハリ λ νのちがし、は,ハリ

    旦ンが能率技師とちがって,企業全体の管理という立場から,原価管理をとり

    あげた点ではないかと思われる。

    能率技師たちは,製造活動の合理化と能率増進のための原価標準を作ること

    によれ実際原価に対する規範を提起したのであるが,それは,企業活動のー

    側面たる製造過程における「合理的な資本運動」壱客観化しただけであり,全

    面的な企業活動を対象とはしていないのである。

    それに対し,ハリス Yは,協同と調整の視点を付加することによれ企業内

    の各部門の協力とパラ γスの重要性壱強調し,かかる企業の全体としての管理

    の中心となり,協周と調整を行ないうるのは会計部門の役割であるとし,原価

    計算資料もこのような企業管理に役立ちうるような「正確」なものが必要であ

    り,そのために標準原価計算思考への転換を説くのである。

    このような考え方には企業の各部門の「正しし、」業績評価とそれに対応せる

    責任の明確化ということが随伴する。しかも,企業の管理は,いうまでもなく

    利益管理であり,そのためには,販売部門を中心とする売上活動を塞点として

    企業の他の部門のそれぞれの業績評価,そして責任会計が問題となるのであり,

    このような部門業績の烹確な評価争前提としての協調体制がねらいとなってい

    るとみるべきではなかろうか。

  • 32 (356) 第 101巻第4号

    かくて,標準原価計算思考は,ハリ7>'-'にあっ 1は,単に製造過程における

    能率増進〔もちろん,とれは重要な中心課題であり,原価差異分析はまさにこれの具体

    化 Cめる〕ということにとどまらず, その原価管理思考としては企業全体の管

    理(協同と調整の視点を重視するとし、う考え方がこの点で具体的に貫かれる川、うなら

    ば企業の利益計画達成のために有効な原価情報の作成によって,企業の調和あ

    る管理が達成できるとみる考え方を内包しているのである。

    「船の上手な運航は,いつでも必要な時に船の位置を決定する能力壱はるか

    に越えた多くの事柄を要求するものであるが, しかし,機関室の能率は,航海

    術の拙劣のために暗礁に乗りあげたようなばあいには,さほど重要なものとは

    ならなし、。適切な原価計算制度だけが,企業の正確な位置を恒常的にかつ正確

    に決定しうる唯一の方法なのであるJ'めというハリスYのことばは,機関室の能

    率を製造過程の能率に読みかえるならば,伎の標準原価計算思考の性格が,協

    同と調整の視点に立った企業管理の考え方に規定されていることが理解される

    はずである。

    かかる協同と調整の視点はさらに拡大されて,カノレテノレの擁護とし、う独占弁

    護論にまでも発展する,すなわち「われわれは今や個々の企業の内部経済のみ

    ならず,同業種および産業一般における競争者聞の関係についても,協同と調

    整の時代に入りつつあるo この精神は, 統一会計手法 (Unifor皿 method:; uI

    Accounting) を設定するために種々なる産業においてなされつつある努力によ

    って実証されてU、る。この会計手法は,製造および配給原価についての知識の

    欠如より生じる無差別な価格引下げを無くすことにより,そして,より良好な

    営業方法の採用を促進することにより,業界全般における諸条件を改良するも

    のである」叫。

    ここでは独占の形成左いう現実の反映が示;'

  • ハリスソの原価会計観 (357) 33

    によれ当該産業を支配する独占体の指導による企業間協定の弁護とその推賞

    が,企業管理の考え方の業界管理への適用によって主張され,ひいては,企業

    管院のなかで展開されている協同と調整の視点が結果的に補強される効果をあ

    fj'てし、る。

    とのようにみてくると,ハリスYによって提起された新しい原価会計観は,

    科学的管理法の通用による技術者的見地に強く影響を受けてし、る製造過程の能

    率増進側面と協同と調整の視点が販売を出発点として,企業の利益言l画の達成

    を正確に測定する原価情報の作成とし寸側面(そしてこの後者の内容は,財務会計

    上の決算公表利益計算へも後に反作用を及ぼすこともある6りだが〕を含み, 原価管理

    に有効な武器としての標準原価計算思考として確立されてきたのであって,技

    術者的視点からの科学的管理法の原価計算領域への適用のみといった単純な内

    容ではなし協同と調整という思考lこ貫かれることによって,原価管理が技術

    者の手から経営者の手へ移ったのであれ管理視点からの標準原価計算思考の

    真の確立はま古にかかる内容,換言すれば部門の業績評価を可能』とするような

    内容をもつことにより,はじめて規定できるのではなかろうか。