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ファームテクジャパン 第31巻第3号 平成27年2月1日発行(毎月1回1日発行) Vol.31 No.3 February 2015

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Page 1: Vol.31 No.3 February 2015 · 2015-01-23 · 後,QRMの分野における査察官への上級トレーニング の提供のため,第2次QRMエキスパートサークルを

Vol.31 No.3 February 2015

ファームテクジャパン 第31巻第3号 平成27年2月1日発行(毎月1回1日発行)

Vol.31 No.3 February 2015

発行所

じほう

(株)

平成二十七年二月一日発行(毎月一日発行)

©

〒  

 東京都千代田区猿楽町一│五│一五 猿楽町SSビル

TEL

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定価﹇本体一、九〇〇円+税﹈

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ARTICLES █PIC/S加盟後に初めてPMDAで開催した第1回PIC/S QRMトレーニングについて /櫻井信豪,長嶋孝司,山下晃枝,ケビン・オドネル  7 █異業種融合による製剤/包装技術革新のための打ち手 /中原美恵,中島崇文,中川隆之  15 █【医薬品容器用ガラスの特性を知る(第1回)】 注射剤用一次包装材の要求特性と選択/竹内 稔,Bettine Bolters  21 █第5回製剤技師認定試験 問題と解説(基礎編)/公益社団法人 日本薬剤学会 製剤技師認定試験委員会  27 █微生物試験法Q&A-現場の困った! に答える誌上セミナー(第16回)/加藤良悦,中村光晴  33 █ポビドンまたはヒドロキシプロピルセルロースを用いた新規口腔内崩壊錠の研究[Ⅲ]/島谷隆夫,他  35 █連続プロセス処理装置CTSシリーズ「CTS-MiGRAシステム」の紹介/長谷川浩司  43 █【医薬品包装設計へのユーザビリティ工学からのアプローチ(第8回)】 PTPシートの外観類似に関するアンケートの解析/大倉典子  51 █【相図から読み解く界面活性剤の物性(第7回)】界面活性剤と水溶性添加物/山下裕司  57 █ヒロズキンバエ幼虫の抗菌活性についての研究 /Qin Xian Ng(監修)川上浩司(翻訳)宮本義久  63 █欧州連合における医薬品の販売承認と品質評価(第4回)/秦 武久  67 █【企業経営と知的財産(第9回)】企業活動に必要な特許業務の分担/宇佐見弘文  75 █ISPE 日本本部2014年度 冬季大会レポート/松木章洋  79 █【医療機器ソフトウェア-ソフトウェアライフサイクルプロセス(第4回)】目的および適用範囲(その1)/宇喜多義敬  83 █製剤研究者が注目する一押しトピック  86 █医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団ニュース(No.88)/津田重城,最上紀美子  89

REPORT █そーせいグループ株式会社-“破壊的なペプチド合成技術”を武器に幅広い事業展開へ  10INTERVIEW █ 美里工場を加え年間100億錠の生産体制を構築-武州製薬株式会社 代表取締役社長 笠井隆行氏  12

█ 改善活動+リスク評価手法を取り入れ,コスト競争力を強化へ-大日本住友製薬株式会社 鈴鹿工場  14

Study of GMP █【図解で学ぶPIC/S GMP(製剤)/第20回】製造(改訂された)/榊原敏之  95 █海外当局からの査察の変化/藤井達也  105 █社会に貢献する無菌医薬品の製造・品質管理の在り方(第3回)/高橋和宏  111 █PIC/SとCSV(4)/荻原健一  117

製剤技術 █【製剤と粒子設計】低置換度ヒドロキシプロピルセルロースNBDシリーズの開発 /丸山直亮,平間康之  129 █【製剤と粒子設計】第7回標準処方研究フォーラム印象記/荒川崇城  134

●行政ニュース 124新薬承認の予見性向上と総審査期間の考え方 ●News Topics 136●New PRODUCTS 141◆次号予告 172

■World News Topics 142 ガイダンス関連,GMP関連,製剤技術関連,原薬関連,警告書関連

◇編集顧問大矢晴彦 横浜国立大学名誉教授仲井由宣 千葉大学名誉教授

◇編集委員川嶋嘉明 愛知学院大学特任教

授・岐阜薬科大学名誉教授

園部 尚 公立大学法人宮城大学 理事永井恒司 (財)永井記念薬学国 際交流財団理事長長江晴男 NPO-QAセンター 代表副理事

製剤技術とGMPの最先端技術情報誌

(Vol.31 No.3)

2015

2 CONTENTS

5(529) Vol.31 No.3(2015)

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1.GMP分野において高まっているリスクベースのアプローチ

Recognizing the fact that GMP is changing in many parts of the world in order to refl ect the increasing use of risk based approaches, PIC/S established an Expert Circle on QRM which ran from 2006-2011. That Expert Circle developed training material for GMP inspectors as well as risk based approaches to support inspection activities. A second Expert Circle on QRM was then established in 2012 to provide more advanced training to inspectors in the area of QRM.

 世界の多くの地域において,リスクベースのアプロー

チの適用がますます増加していることを反映しGMPが

変化しているという事実を認識したPIC/Sは,QRMに

関するエキスパートサークルを設立し,2006年から2011

年に活動を行った。このエキスパートサークルはGMP

査察官のトレーニング資料とともに査察業務をサポート

するためのリスクベースのアプローチを開発した。その

後,QRMの分野における査察官への上級トレーニング

の提供のため,第2次QRMエキスパートサークルを

2012年に設立した。

GMP inspection work has also become increasingly complex, with the introduction of risk based approaches in many areas of manufacturing, such as change control, deviation management, validation, etc. Furthermore, inspectors are now seeing many different types of risk assessment tools during inspection. Also, GMP inspectorates around the world have been adopting more risk based approaches in their own work, e.g. in inspection planning.

 GMP査察業務もまた,変更管理,逸脱管理,バリデー

ション等の製造の多くの分野でリスクベースアプローチ

が導入されたことにより複雑さが増加した。さらに,査

察官も,査察の場面において多くの異なったタイプのリ

スク評価ツールに直面することになった。

 また,世界のGMP査察当局は自身の業務,例えば査

察計画作成において,より多くのリスクベースのアプロー

In December 2014, the PIC/S Expert Circle ran a QRM training event at PMDA. This was the first major PIC/S training event for regulators hosted by PMDA following Japan’s joining PIC/S in July 2014. It was also the fi rst of three such events being run for GMP inspectors(in Japan, US and Europe)and it focused on moderately advanced QRM. The 64 participants were regulators from almost 20 countries, including trainers, and all of them were involved in GMP inspection. From Japan, staffs from MHLW, PMDA and pre fec tura l governments were participated. The training was a great success and much sharing of knowledge occurred. This event illustrates the leading role Japan is taking in developing inspector competency and in contributing to the GMP environment.

Abstract

▲ケビン・オドネル氏 ▲ワークショップ開催前に ▲ワークショップ会場

PIC/S加盟後に初めてPMDAで開催した第1回PIC/S QRMトレーニングについて

First PIC/S QRM Training Event held at PMDA after Accession

医薬品医療機器総合機構1),HPRA2)

櫻井信豪,長嶋孝司,山下晃枝,ケビン・オドネル2)

SHINGO SAKURAI 1), TAKASHI NAGASHIMA 1), AKIE YAMASHITA 1), KEVIN O’ DONNELL 2)

Pharmaceutical and Medical Devices Agency(PMDA)1),Health Products Regulatory Authority(HPRA)2)

₇(531) Vol.31 No.3(2015)

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 先日,某企業のユーザ会において「PIC/S GMPへの

対応はMUSTと捉えるべきか」というテーマで議論した

が,参加した製薬企業のほとんどが法的な要求事項とと

らえて対応すると回答した。本来,わが国においては

「GMP省令」が法的要件である。それにもかかわらず,

PIC/S GMPが参考情報としてではなく,限りなく要求

事項として取り組まれているということをあらためて認

識させられた。

 今後の当局査察は,PIC/S GMPを基準とした調査や

指導が行われることも予想され,すでに従来では問題に

ならなかったことが指摘対象となったということも伝え

られている。査察の厳格化が予想されるなかで,すでに

PIC/S GMPへの対応を進めている企業も少なくない。

 CSVにおけるPIC/S GMPの要件としては,「Annex

11 Computerized System」(以下,Annex 11)が該当す

るが,厚労省ガイドラインで取り組んできたユーザ企業

においては,部分的ではあるが補強することが必要とな

る。

 前回に引き続き,今回もAnnex 11の後半部分を解説

する。

はじめに

 定期的評価は,コンピュータ化システムが規制要件へ

の適合性を維持していること,意図した用途に適合して

いること,あるいは場合によってはビジネス上の要求を

満たしていることなどの検証を目的として実施されるこ

とになり,システムのライフサイクルを通して取り組む

ことが必要である。また,システムの広範囲にわたって

求められるサポートや維持管理のためのプロセスが確立

され,要求される規制の管理,例えば各種の計画書,手

順書,および記録書等が最新状態を反映し,正しく運用

されていることを確認することも含まれている。

 定期的評価のポイントは変更管理と逸脱管理である。

前回評価から今回までの間に発生した逸脱と変更に関す

る記録に着目し,それらが社内規定どおりに正しく処理

されていることを確認することが効率的で合理的な取り

3.PIC/S GMP「Annex 11Computerized System」の要件と解説(前回の続き)

運用段階

11.定期的評価

バリデートされた状態が維持され,GMPに合致して

いることを確認するため,コンピュータ化システムを

定期的に評価するものとする。このような評価には,

必要に応じて,最新の機能範囲,逸脱記録,障害,問

題,更新履歴,性能,信頼性,セキュリティ,バリデー

ション状態に関する報告を含むものとする。

PIC/SとCSV(4)

PIC/S and Computerized System Validation(Part4)

株式会社シー・キャスト

荻原健一KEN-ICHI OGIHARA

C-CAST CORPORATION

117(641) Vol.31 No.3(2015)

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 厚生労働省は,平成24年3月9日に医薬品査定協定・

医薬品査察協同スキーム(The Pharmaceutical Inspection

Convention and Pharmaceutical Inspection Co︲

operation Scheme : 以下PIC/S ※)へ加盟申請を行い,平

成26年5月のPIC/S総会で45番目のメンバーとして日本

の加盟が承認され,平成26年7月1日に正式加盟した。

このことは,日本の製薬企業におけるGMP基準がグロー

バルなGMPを包括しなければならなくなったこと,また,

PIC/S GMPを遵守した製造および品質管理が不可欠な

ものとなったことを意味している。当社では,1990年代

より米・EU向け製品に対する海外当局からの査察を継

続的に受けてきたこともあり,米国や日本のPIC/S加盟

承認前後において,米・EU当局の査察スタイルの変化

を直に感じることができた。本稿では,当社において,

PIC/Sに加盟している米・EU当局が行う査察が過去か

ら現在までにどのように変化していったかを,査察前の

準備や査察における指摘事項を例に報告する。

 図1は,現在PIC/Sに加盟している海外当局からの当

社における査察実績である。当社の国内5工場では,

1995年以降,米国FDAを中心にPIC/S加盟当局の査察を

合計32回受けており(2014年8月時点),2014年には国内

5工場で合計6回の米国FDAの査察を受けた。

はじめに

 図2は,査察スタイルの変遷をまとめたものである。

これらの変化が,PIC/S GMPのグローバル化およびそ

の基準に基づく査察の増加と直接関係しているかは定か

ではないが,少なくともわれわれの感覚では,海外当局

査察が時代とともに,実地でのGMP適合性調査から各

製造所における品質保証システムの実効性確認へとシフ

トし,現在ではその製造所の対象製品に対する科学的な

品質の作り込みと,継続的な製品品質の維持向上を実地

で確認するスタイルに変わりつつあるよう感じられる。

 図3は,当社における査察対応に向けた変化を具体的

1.進化する査察スタイル

1995年以降に当社国内工場へ実施された海外当局からの査察

A工場 B工場 C工場 D工場 E工場

FDA(米) 2 11 2 3 5

TGA(豪州) 1 1 1 1

EMA(英,北欧) 2 2 1

ANVISA(ブラジル) 1

MFDS(韓国) 1 2 1

TITCK(トルコ) 1

*海外からの行政査察のみ記載。QP査察の数は含まない。

図1 当社への海外当局査察

海外当局からの査察の変化~指摘事項の変遷と今後の査察対応のあり方~

Change of the inspection from the competent authorities

大塚製薬株式会社 生産本部 品質管理部 品質管理課(徳島板野工場駐在) 課長補佐

藤井達也TATSUYA FUJII

Assistant Manager, Quality Control Section (Tokushima Itano Factory),Quality Control Department, Production Headquarters, Otsuka Pharmaceutical Co., Ltd.

105(629) Vol.31 No.3(2015)

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造所を連続して査察される機会が多くなり,その準備の

段階で,各製造所間の相互の品質保証システムのGAP

が問題になった。例えば,変更管理のフローや逸脱の処

理手順,状態表示ラベルの種類,原材料や中間品の保管

期間などにおけるGAPをいかに埋めるかが焦点となった。

各製造所特有の管理はある程度まで残すものの,品質保

証に関する考え方や大きなフローに関してはハーモナイ

ズを行い,1つの企業としての統一した考えを示すこと

に重点が置かれた。また,各製造所がサイトマスターファ

イルを整備し査察に臨むようになったのも,ちょうどこ

のころからであった。

 ここからは,2009年から2014年現在に至るまで,当社

がどのように海外当局からの査察に備え,その結果どの

ような指摘を受けたかを具体的に報告する。

(1)2009年以前 現在もそうであるが,海外当局からの査察が予定され

た際,該当する製造所関係者の気持ちの高揚感は唯なら

ぬ状態である。査察日から逆算して,何をいつまでにど

うしなければならないか,資料のチェックは誰がするか

など,多くの人々が図4の写真のような状況下で,査察

当日まで眠れぬ日々を送ったものである(査察中も十分

な睡眠は得られないが…)。

 特に準備において苦戦したのが,当日使用する製造所

のGMP状況を説明するための英訳されたスライドや基

準書,手順書やマスターバッチレコードの準備である。

すべての資料を英訳するのは困難なため,変更や逸脱等

の手順書については,手順のフローと該当品目に関する

リストを英訳する程度としていた。

2.具体的な査察の変化にまとめたものである。当社では1995年ごろから,それ

まで行っていた海外への医薬品出荷がEUを含めた大き

なビジネスとなり,各製造所では,既存の製造および品

質管理にEU︲GMPの要素を取り込んだGMPのグローバ

ル化が促進された。特に参考品保管や,年次レビューの

実施についてその色合いが濃くあらわれ,新たな概念と

して浸透していった。

 2000年頃には,米国において21 CFR Part 11が1997年

に施行されたことを受け,コンピュータバリデーション

を実施し,データの信頼性を保証するための新たな管理,

得られる電子記録と紙記録との区分についての明確化が

行われた。これら電子化の流れは現在も継続中で,その後

試験室へのLIMS(Laboratory Information Management

System)の 導 入, 生 産 現 場 へ のMES(Manufacturing

Execution System)の導入等により,さらなるデータの

信頼性向上を図っている。

 2009年頃,同一の原薬を2つの製造所から供給する品

目があることから,1回の訪日で複数の原薬と製剤の製

査察における着眼点の変化

1990年代

GMP適合の確認

2000年代

品質システムの運用

2010年代

製品品質の科学的なアプローチ

品質システムの運用から製品品質の理解へ

図2 査察スタイルの変遷

具体的には・・・

欧州査察準備(EU-GMPの導入)年次レビュー,参考品保管

電子記録導入(LIMS, MES)データ信頼性強化

より完全な製品品質の確保に向けた対応

コンピュータバリデーション(Part 11)3極GMPの強化

GMP管理図書としてSMF管理を追加

2サイト供給体制の導入(工場間の統一)

本項の内容

~2009年 2009~2012年

2012~2014年

2014年~

図3 当社における査察対応に向けた変化

2009年以前の査察準備

テーマ:わかりやすい説明用資料作りとデータ整理

英訳する資料 SOP等はフロー図と概略のみ

重要記録類(ブランクMBR*等)はすべて

変更や逸脱の記録は管理リストだけ

製品品質の一貫性

開発レポート

技術移管

バリデーション

バッチ記録

変更管理

*Master Batch Record : マスターバッチレコード

図4 2009年以前の査察準備

海外当局からの査察の変化海外当局からの査察の変化

106(630)  Vol.31 No.3(2015)

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 EU GMPガ イ ド ラ イ ンPartⅠ 第 5 章「 製 造

(Production)」の改訂版が2014年8月13日に発出され,

2015年3月1日を目途にしてEU各国で改訂が実行される。

いずれPIC/S GMPガイドにも取り込まれるであろう。

本連載はPIC/S GMPガイドをベースにしているが,近々

取り込まれるのであるのなら先取りしてEU GMPガイド

ラインの最新版を紹介しようと思う。

 図解20.1に改訂箇所および改訂の理由を示した。EU

GMPガイドライン第5章旧版(PIC/S GMPガイド2013

年版と同じ)から変更されたのは交叉汚染防止の節と出

発原料の節である。また,追加されたのは製品欠損の節

である。その他の節でも小さな変更がなされた箇所はあ

るが,内容そのものに変化はない。

 EU GMPガイドライン旧版と同じ内容のPIC/S GMP

ガイドの第5章は,本連載の第10回(2013年10月号)〜第

13回(2014年1月号)で解説している。前回との重複をで

きるかぎり避けつつ,以下で改訂された部分を解説する。

 PIC/S GMPガイド第5章の交叉汚染防止節を,本連

載の第12回(2013年12月号)では図解20.2(第12回の図解

12.8と同一)のように示した。

 「原料または製品が他の原料や製品で汚染されること

EU GMPガイドライン第5章「製造」

20.1

製造中の交叉汚染防止20.2

を交叉汚染というが,これは特別に有害な物質による汚

染で,少量の混入が製品の品質に重大な影響を与える場

合である。交叉汚染を絶対に避ける対象物は高感さ性物

質,生菌を含有する生物学的製剤,ある種のホルモン,

PIC/S GMP(2013年版)EU GMP(旧版)

原則

一般事項

製造中の交叉汚染防止

バリデーション

出発原料

加工工程(中間製品等)

包装材料

包装作業

最終製品

不合格品,回収品,返品品

EU GMPガイドライン第5章「製造」の改訂

EU GMP(2015年版)

原則

一般事項

製造中の交叉汚染防止

バリデーション

出発原料

加工工程(中間製品等)

包装材料

包装作業

最終製品

不合格品,回収品,返品品

製品欠損(製造上の理由で)

赤字は変更または追加された箇所

1)交叉汚染防止および毒性予測に関する内容を変更した。(5.17項〜5.21項)

2)供給業者の適格性確認に関する内容を改めた。「原薬がGMPを遵守して製造されている」ことを「製造販売承認

保有者が確認する」という法的義務を明確にした。供給経路の明確化を求めた。(5.27項〜5.30項)

3)出発物質の試験に関する製造業者の見込みの明確化と調和の

規定を新たに加えた。(5.35項,5.36項)

4)供給量を減らすときの報告義務の規定を追加した。(5.71項)

EU GMPガイドライン 第5章 「製造」(2015年版)の序文より

<改訂の理由>

図解20.1

第₂₀回

製造(改訂された)revised “Production”

ジーエムピーコンサルティング有限会社

榊原敏之TOSHIYUKI SAKAKIBARAGMP Consulting, Inc.

図解で学ぶPIC/S GMP(製剤)PIC/S GMPガイドをベースにして

95(619) Vol.31 No.3(2015)