winners チャイナ・モバイル - huawei ·...

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/ JAN.2012 16 世 界 最 多の加 入 者 数を誇るチャイナ・ モバイルは、中国および世界を代表する通 信事業者の1つだ。同社はGSM ※1 時代に 安定したネットワーク、高品質の音声サービ ス、優れた顧客サービスで競合他社に対し て優位性を築いた。GPRS ※2 /EDGE ※3 時 代もその勢いを維 持していたが、3 G 時 代に入ると、運用するTD-SCDMA ※4 ネッ トワークに関する業界全体の制約から、 ネットワーク、ブランド、経営陣の能力という 強みを生かせなくなり、チャイナ・モバイル・ グループと地域子会社はモバイル・ブロード バンド分野をリードしつづけられるのか、疑 問視されるようになっていた。 モバイル・ブロードバンド市場におけるビ ジネスチャンスを生かすために、通信事業 者は加入者を迅速に獲得する手段として 3Gネットワーク・カードを推進した。このアプ ローチは、データ・トラヒックの急増こそもた らしたが、チャイナ・モバイルの増収にはつ ながらなかった。チャイナ・モバイルの王建 宙(ワン・ジェンジォウ)会長によれば、既存 のGSMとTD-SCDMAネットワークでは、 高まる一方のデータ・トラヒック需要に対応 するには不十分だった。そして、この課題に 対するソリューションの1つとして、ワイヤレ ス・データ・トラヒックをオフロードする効 果 的な手段であるWLANの採用があった。 2010年、チャイナ・モバイル・グループ は、GSM、TD-SCDMA、TD-LTE、および WLANと、4種類のネットワークを同時に開 発することによって将来のネットワーク成長 を支えるという戦略を策定した。WLANの 低コスト性、展開の柔軟性、高速性はもち ろん、大容量データ・トラヒックをオフロード できるという強みを生かして、加 入 者に対 し、より高速のネットワーク体験を提供する ことがチャイナ・モバイル・グループと地 域 子会社の共通目標だった。 この戦略の先陣を切ったのがチャイナ・ モバイル山東だ。中国東部の先進地域の 1つである山東省は、急速な経済成長を遂 げ、データ・サービスに対するユーザーの需 要 の 高まりと多 様 化がますます進んでい た。コストの高さや建設サイクルの長さを考 えると、3 Gネットワークだけではそうした需 要への対応が現実的でないことは明らか だった。だが、WLANを補完ネットワークとし て使用すれば、GSMおよびTD-SCDMA ネットワークからデータ・トラヒックを効果的 にオフロードし、ネットワーク負荷を軽減する と同時に広帯域幅サービスを提供すること が可能となる。 チャイナ・モバイルは、2008年には一部 の重要な都市で早くもWi-Fiを展開してい た。しかし、WLANの真価を発揮させ、リソー スの利用率を最大限に高めるため、現実的 なアプローチを考え出す必要があった。 1 加 入 者リソースにおける強みをいかに 生かすべきか チャイナ・モバイル地 域 子 会 社 の 間で は、チャイナ・モバイルの大 規 模な加 入 者 基盤をWLANネットワーク展開にどう生か すかに関心が集まっていた。チャイナ・モバ イル山東は、ロイヤリティの高い大規模な 3Gネットワーク・カード加入者基盤を持って いる。こうした質 の 高い加 入 者をW L A N ネットワークに振り替えることができれば、 3Gネットワークの負荷軽減につながるだけ でなく、新規の3Gネットワーク加入者に対 相乗効果型ネットワーク開発の先駆者 マクロ・ネットワークに対する容量拡大という絶え間ないニーズに応えるために、通信 事業者は次々にWLANネットワークの構築を進めてきた。共存する複数のネットワー クの開発から相乗効果を引き出すにはどうするべきか。その答えは、チャイナ・モバイ ル山東の取り組みにある。 チャイナ・モバイル WINNERS 4種類のネットワークの 相乗効果型開発 WLANに伴う2つの課題 チャイナ・モバイル(中国移動通信)は中国 最大の移動通信キャリア。携帯電話の契 約者数は、世界最大級を誇る。2011年10 月時点の契約者数は、約6億3889万人。 China Mobile 『Win Win』 (ファーウェイ刊)編集部 Li Junfeng

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Page 1: WINNERS チャイナ・モバイル - huawei · 採用されたのが、ファーウェイのSingleSDB UIM(User Identity Module)ソリューション だ。このソリューションは、TD-SCDMAと

/ JAN.2012/ JAN.201216

 世界最多の加入者数を誇るチャイナ・

モバイルは、中国および世界を代表する通

信事業者の1つだ。同社はGSM※1時代に

安定したネットワーク、高品質の音声サービ

ス、優れた顧客サービスで競合他社に対し

て優位性を築いた。GPRS※2/EDGE※3

時代もその勢いを維持していたが、3G時

代に入ると、運用するTD-SCDMA※4ネッ

トワークに関する業界全体の制約から、

ネットワーク、ブランド、経営陣の能力という

強みを生かせなくなり、チャイナ・モバイル・

グループと地域子会社はモバイル・ブロード

バンド分野をリードしつづけられるのか、疑

問視されるようになっていた。

 モバイル・ブロードバンド市場におけるビ

ジネスチャンスを生かすために、通信事業

者は加入者を迅速に獲得する手段として

3Gネットワーク・カードを推進した。このアプ

ローチは、データ・トラヒックの急増こそもた

らしたが、チャイナ・モバイルの増収にはつ

ながらなかった。チャイナ・モバイルの王建

宙(ワン・ジェンジォウ)会長によれば、既存

のGSMとTD-SCDMAネットワークでは、

高まる一方のデータ・トラヒック需要に対応

するには不十分だった。そして、この課題に

対するソリューションの1つとして、ワイヤレ

ス・データ・トラヒックをオフロードする効果

的な手段であるWLANの採用があった。

 2010年、チャイナ・モバイル・グループ

は、GSM、TD-SCDMA、TD-LTE、および

WLANと、4種類のネットワークを同時に開

発することによって将来のネットワーク成長

を支えるという戦略を策定した。WLANの

低コスト性、展開の柔軟性、高速性はもち

ろん、大容量データ・トラヒックをオフロード

できるという強みを生かして、加入者に対

し、より高速のネットワーク体験を提供する

ことがチャイナ・モバイル・グループと地域

子会社の共通目標だった。

 この戦略の先陣を切ったのがチャイナ・

モバイル山東だ。中国東部の先進地域の

1つである山東省は、急速な経済成長を遂

げ、データ・サービスに対するユーザーの需

要の高まりと多様化がますます進んでい

た。コストの高さや建設サイクルの長さを考

えると、3Gネットワークだけではそうした需

要への対応が現実的でないことは明らか

だった。だが、WLANを補完ネットワークとし

て使用すれば、GSMおよびTD-SCDMA

ネットワークからデータ・トラヒックを効果的

にオフロードし、ネットワーク負荷を軽減する

と同時に広帯域幅サービスを提供すること

が可能となる。

 チャイナ・モバイルは、2008年には一部

の重要な都市で早くもWi-Fiを展開してい

た。しかし、WLANの真価を発揮させ、リソー

スの利用率を最大限に高めるため、現実的

なアプローチを考え出す必要があった。

1加入者リソースにおける強みをいかに

生かすべきか

 チャイナ・モバイル地域子会社の間で

は、チャイナ・モバイルの大規模な加入者

基盤をWLANネットワーク展開にどう生か

すかに関心が集まっていた。チャイナ・モバ

イル山東は、ロイヤリティの高い大規模な

3Gネットワーク・カード加入者基盤を持って

いる。こうした質の高い加入者をWLAN

ネットワークに振り替えることができれば、

3Gネットワークの負荷軽減につながるだけ

でなく、新規の3Gネットワーク加入者に対

応する余裕も生まれるため、WLANネット

ワークのスタートとして理想的だ。そこで、

チャイナ・モバイル山東は、3Gの補完ネット

ワークとしてWLANを開発する戦略を採用

することにした。

2ネットワーク・リソースの利用率をいかに

最大化すべきか

 2008年、チャイナ・モバイルは「Wireless

City」戦略を立ち上げ、WLAN加入者を開

発する計画を策定した。しかし、WLANに加

入するには新規アカウントの申請に加え、従

来型のポータル認証を受けなければならな

かったため、十分な数のユーザーを確保する

には至らず、ネットワークの利用率は上がら

なかった。また、GSM/TD-SCDMAから

WLANへスムーズに移行できなかったこと

も不評を買った。

 その間もGSM/TD-SCDMAネット

ワークの過負荷状態は悪化の一途をたど

り、ホットスポットで輻輳が頻繁に発生す

るようになっていた。そのため、加入者を

WLANネットワークにどう移行させるかが

チャイナ・モバイルにとって頭の痛い問題

となっていた。

 チャイナ・モバイル山東は、従来の不便な

Wi-Fiアクセス方法とユーザーの習慣に移

行が進まない原因があることに気づいた。つ

まり、ユーザーの習慣に適応し、不便や支障

を感じさせることなくTD-SCDMAからWLAN

に移行できるようにすることこそが、WLANへ

の移行を促進し、GSM/TD-SCDMAから

WLANへのトラヒックの迂回を実現する唯一

の方法ということである。そこで、チャイナ・モ

バイル山東は、ユーザーが最も簡単な方法

でネットワークにアクセスできるようにすること

を最優先課題として掲げた。

 2010年、チャイナ・モバイル山東は、多くの

ベンダーからソリューションを募り、数回に分

けてコンペを実施した。そのコンペで優位性

が認められ、チャイナ・モバイル山東によって

採用されたのが、ファーウェイのSingleSDB

UIM(User Identity Module)ソリューション

だ。このソリューションは、TD-SCDMAと

WLANの統合認証を実現するもので、ユー

ザーはユビキタスなTD-SCDMAネットワーク・

サービスと高速Wi-Fiサービスの両方を利用

することができる。

TD-SCDMA + Wi-Fi をパッケージに

 チャイナ・モバイル山東は、既存の3G

ネットワーク・カード加入者をターゲットとし

て、ファーウェイのUIMソリューションをベー

スとするTD+Wi-Fiパッケージの提供を開

始した。このパッケージにより、加入者はク

ライアント側ソフトウェアをアップグレードす

るだけで、Wi-Fiホットスポットで既存の3G

ネットワーク・カードを利用して高速WLAN

にアクセスできるようになる。

 Wi - F iサービス提供エリア内では、

TD-SCDMAの替わりにWLANネットワー

クが自動的に選択され、より高速なアクセ

スが提供される。一方、提供エリア外では、

相乗効果型ネットワーク開発の先駆者

マクロ・ネットワークに対する容量拡大という絶え間ないニーズに応えるために、通信

事業者は次々にWLANネットワークの構築を進めてきた。共存する複数のネットワー

クの開発から相乗効果を引き出すにはどうするべきか。その答えは、チャイナ・モバイ

ル山東の取り組みにある。

チャイナ・モバイル

17

WINNERS

WINNERS

4種類のネットワークの相乗効果型開発

WLANに伴う2つの課題

解決策としての統合認証

チャイナ・モバイル(中国移動通信)は中国最大の移動通信キャリア。携帯電話の契約者数は、世界最大級を誇る。2011年10月時点の契約者数は、約6億3889万人。

China Mobile

『Win Win』 (ファーウェイ刊)編集部 Li Junfeng

ふくそう

Page 2: WINNERS チャイナ・モバイル - huawei · 採用されたのが、ファーウェイのSingleSDB UIM(User Identity Module)ソリューション だ。このソリューションは、TD-SCDMAと

/ JAN.2012/ JAN.201216

 世界最多の加入者数を誇るチャイナ・

モバイルは、中国および世界を代表する通

信事業者の1つだ。同社はGSM※1時代に

安定したネットワーク、高品質の音声サービ

ス、優れた顧客サービスで競合他社に対し

て優位性を築いた。GPRS※2/EDGE※3

時代もその勢いを維持していたが、3G時

代に入ると、運用するTD-SCDMA※4ネッ

トワークに関する業界全体の制約から、

ネットワーク、ブランド、経営陣の能力という

強みを生かせなくなり、チャイナ・モバイル・

グループと地域子会社はモバイル・ブロード

バンド分野をリードしつづけられるのか、疑

問視されるようになっていた。

 モバイル・ブロードバンド市場におけるビ

ジネスチャンスを生かすために、通信事業

者は加入者を迅速に獲得する手段として

3Gネットワーク・カードを推進した。このアプ

ローチは、データ・トラヒックの急増こそもた

らしたが、チャイナ・モバイルの増収にはつ

ながらなかった。チャイナ・モバイルの王建

宙(ワン・ジェンジォウ)会長によれば、既存

のGSMとTD-SCDMAネットワークでは、

高まる一方のデータ・トラヒック需要に対応

するには不十分だった。そして、この課題に

対するソリューションの1つとして、ワイヤレ

ス・データ・トラヒックをオフロードする効果

的な手段であるWLANの採用があった。

 2010年、チャイナ・モバイル・グループ

は、GSM、TD-SCDMA、TD-LTE、および

WLANと、4種類のネットワークを同時に開

発することによって将来のネットワーク成長

を支えるという戦略を策定した。WLANの

低コスト性、展開の柔軟性、高速性はもち

ろん、大容量データ・トラヒックをオフロード

できるという強みを生かして、加入者に対

し、より高速のネットワーク体験を提供する

ことがチャイナ・モバイル・グループと地域

子会社の共通目標だった。

 この戦略の先陣を切ったのがチャイナ・

モバイル山東だ。中国東部の先進地域の

1つである山東省は、急速な経済成長を遂

げ、データ・サービスに対するユーザーの需

要の高まりと多様化がますます進んでい

た。コストの高さや建設サイクルの長さを考

えると、3Gネットワークだけではそうした需

要への対応が現実的でないことは明らか

だった。だが、WLANを補完ネットワークとし

て使用すれば、GSMおよびTD-SCDMA

ネットワークからデータ・トラヒックを効果的

にオフロードし、ネットワーク負荷を軽減する

と同時に広帯域幅サービスを提供すること

が可能となる。

 チャイナ・モバイルは、2008年には一部

の重要な都市で早くもWi-Fiを展開してい

た。しかし、WLANの真価を発揮させ、リソー

スの利用率を最大限に高めるため、現実的

なアプローチを考え出す必要があった。

1加入者リソースにおける強みをいかに

生かすべきか

 チャイナ・モバイル地域子会社の間で

は、チャイナ・モバイルの大規模な加入者

基盤をWLANネットワーク展開にどう生か

すかに関心が集まっていた。チャイナ・モバ

イル山東は、ロイヤリティの高い大規模な

3Gネットワーク・カード加入者基盤を持って

いる。こうした質の高い加入者をWLAN

ネットワークに振り替えることができれば、

3Gネットワークの負荷軽減につながるだけ

でなく、新規の3Gネットワーク加入者に対

応する余裕も生まれるため、WLANネット

ワークのスタートとして理想的だ。そこで、

チャイナ・モバイル山東は、3Gの補完ネット

ワークとしてWLANを開発する戦略を採用

することにした。

2ネットワーク・リソースの利用率をいかに

最大化すべきか

 2008年、チャイナ・モバイルは「Wireless

City」戦略を立ち上げ、WLAN加入者を開

発する計画を策定した。しかし、WLANに加

入するには新規アカウントの申請に加え、従

来型のポータル認証を受けなければならな

かったため、十分な数のユーザーを確保する

には至らず、ネットワークの利用率は上がら

なかった。また、GSM/TD-SCDMAから

WLANへスムーズに移行できなかったこと

も不評を買った。

 その間もGSM/TD-SCDMAネット

ワークの過負荷状態は悪化の一途をたど

り、ホットスポットで輻輳が頻繁に発生す

るようになっていた。そのため、加入者を

WLANネットワークにどう移行させるかが

チャイナ・モバイルにとって頭の痛い問題

となっていた。

 チャイナ・モバイル山東は、従来の不便な

Wi-Fiアクセス方法とユーザーの習慣に移

行が進まない原因があることに気づいた。つ

まり、ユーザーの習慣に適応し、不便や支障

を感じさせることなくTD-SCDMAからWLAN

に移行できるようにすることこそが、WLANへ

の移行を促進し、GSM/TD-SCDMAから

WLANへのトラヒックの迂回を実現する唯一

の方法ということである。そこで、チャイナ・モ

バイル山東は、ユーザーが最も簡単な方法

でネットワークにアクセスできるようにすること

を最優先課題として掲げた。

 2010年、チャイナ・モバイル山東は、多くの

ベンダーからソリューションを募り、数回に分

けてコンペを実施した。そのコンペで優位性

が認められ、チャイナ・モバイル山東によって

採用されたのが、ファーウェイのSingleSDB

UIM(User Identity Module)ソリューション

だ。このソリューションは、TD-SCDMAと

WLANの統合認証を実現するもので、ユー

ザーはユビキタスなTD-SCDMAネットワーク・

サービスと高速Wi-Fiサービスの両方を利用

することができる。

TD-SCDMA + Wi-Fi をパッケージに

 チャイナ・モバイル山東は、既存の3G

ネットワーク・カード加入者をターゲットとし

て、ファーウェイのUIMソリューションをベー

スとするTD+Wi-Fiパッケージの提供を開

始した。このパッケージにより、加入者はク

ライアント側ソフトウェアをアップグレードす

るだけで、Wi-Fiホットスポットで既存の3G

ネットワーク・カードを利用して高速WLAN

にアクセスできるようになる。

 Wi - F iサービス提供エリア内では、

TD-SCDMAの替わりにWLANネットワー

クが自動的に選択され、より高速なアクセ

スが提供される。一方、提供エリア外では、

相乗効果型ネットワーク開発の先駆者

マクロ・ネットワークに対する容量拡大という絶え間ないニーズに応えるために、通信

事業者は次々にWLANネットワークの構築を進めてきた。共存する複数のネットワー

クの開発から相乗効果を引き出すにはどうするべきか。その答えは、チャイナ・モバイ

ル山東の取り組みにある。

チャイナ・モバイル

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WINNERS

WINNERS

4種類のネットワークの相乗効果型開発

WLANに伴う2つの課題

解決策としての統合認証

チャイナ・モバイル(中国移動通信)は中国最大の移動通信キャリア。携帯電話の契約者数は、世界最大級を誇る。2011年10月時点の契約者数は、約6億3889万人。

China Mobile

『Win Win』 (ファーウェイ刊)編集部 Li Junfeng

ふくそう

Page 3: WINNERS チャイナ・モバイル - huawei · 採用されたのが、ファーウェイのSingleSDB UIM(User Identity Module)ソリューション だ。このソリューションは、TD-SCDMAと

/ JAN.2012/ JAN.201218 19

WINNERS

マクロ・ネットワーク(GSMまたはTD-SCDMA)

が自動的に選択され、十分なカバレッジと間

断のないネットワーク・サービスが提供される。

 この自動ネットワーク転送を使用すれば、

高カバレッジのGSM/TD-SCDMAを高速

なWLANによって完全に補完し、トラヒック

のオフロードとネットワーク品質の向上とい

う2つの目標が実現する。

 まず、チャイナ・モバイル山東の新しい

パッケージは、従来とは異なり、追加の

Wi-Fiサービスを無料で提供することで、料

金面での障害を取り除いている。

 また、不便なポータル認証プロセスを排

除し、加入者がWLANネットワークにアク

セスする際のユーザー名とパスワードの入

力を不要にした。UIMソリューションによっ

て加入者のSIM認証が可能になり、認証

プロセスは3Gネットワークを利用する場合

と同様に透過的に行われる。また、WLAN

接続を維持したまま、PSエリアのサービス

に従来どおりアクセスすることも可能だ。

 ネットワーク体感速度の向上を除けば、

ユーザー・エクスペリエンスの違いは特にな

い。このシームレスな転送によって、チャイ

ナ・モバイル山東は3G加入者のWLAN移

行を促進し、WLANネットワーク利用率を

高めることが可能になり、ワイヤレス・ブロー

ドバンド開発に対する加入者の信頼性向

上につながっている。

 チャイナ・モバイルは、Wi-Fiホットスポット

の大規模展開に向けて極めて強固な基盤

を持っている。その理由として、GSM/TD-

SCDMAネットワークの屋内カバレッジに

ついて中国全土で定評を得ていることに

加え、ほとんどのリソースをWLANと共有で

きることが挙げられる。

 そのため、チャイナ・モバイル山東はUIMの

パイロット成功を受けて、次のステップについ

て非常に楽観的な見通しを示している。ほと

んどのデータ・サービスが屋内で利用されるこ

とを踏まえ、同社は山東省全域にWi-Fiホット

スポットの展開を進め、学校のキャンパス、オ

フィスビル、住宅、およびビジネス拠点をほぼ

完全にカバーした。Wi-Fiスポットは、データ・

サービスのアクセス・ポイントとして主流になり

つつあり、それと共にデータ・トラヒックの迂回

効果が徐々に高まっている。

 ファーウェイのSingleSDBプラットフォー

ムをベースとするUIMソリューションにより、

チャイナ・モバイル山 東はG S M 、

TD-SCDMA、およびWLANネットワークの

統合を実現した。その結果、データ・トラヒッ

クが効果的に迂回され、ネットワーク負荷の

軽減につながった。また、加入者に高速

データ・サービスを提供できるようになり、長

期的なネットワーク開発への弾みがついた。

 2010年12月に開催された第4回モバ

イル・インターネット国際セミナーの席上、

チャイナ・モバイル研究所の黄暁慶(ファ

ン・シャオチン)所長は、「チャイナ・モバイ

ルは、複数のアクセスに対応したネット

ワークを提供する必要があります。われわ

れがGSM、TD-SCDMA、TD-LTE、

WLANの統合に長年取り組んできたのは

そのためです。複数のネットワークから選択

できれば、加入者は音声サービスには主流

のGSMやTD-SCDMAネットワークを、デー

タ・サービスにはLTEまたはWLANといった

形での使い分けが可能です。これにより、

ユーザー・エクスペリエンスの期待に応える

だけでなく、モバイル通信リソースやネット

ワークの効果的な代替も可能になります」と

語った。チャイナ・モバイル・グループは戦略

上、WLANをGSMやTD-SCDMA、TD-LTE

と同等に位置づけている。統合認証とネット

ワーク統合は、相乗効果型ネットワークという

戦略的構想への道を開くはずである。

相乗効果型ネットワーク開発の先駆け

シームレスな認証に移行

高まるトラヒック迂回効果

過酷な気象条件への挑戦

※1 GSM:Global System for Mobile Communications

デジタル携帯電話に使われている無線通信方式の1つ。

ヨーロッパやアジアを中心に100カ国以上で利用されており、

デジタル携帯電話の事実上の世界標準。

800MHzの周波数帯を利用する。

※2 GPRS:General Packet Radio Service

GSM方式の携帯電話網を使ったデータ伝送技術で

第2.5世代(2.5G)と呼ばれる技術の1つ。

パケット単位でのデータ送受信が可能であり、

通信速度は最大115kbpsと従来のGSM(最大9.6kbps)

よりもはるかに高速になる。

※3 EDGE:Enhanced Data GSM Environment

GSM方式、TDMA方式の携帯電話網を使った

データ伝送技術の1つ。GPRSの後継技術にあたり、

第3世代技術(3G)の1つとして扱われる。

最大で384kbpsのデータ転送が可能。

GSMをベースとした方式であるため、

既存の通信設備を有効利用することができる。

※4 TD-SCDMA:Time Division Synchronous Code

Division Multiple Access

第3世代携帯電話方式(3G)の1つで、中国独自の仕様。

国際的な3G規格であるW-CDMA、CDMA2000とは別に、

中国国内向けに独自開発されたもの。

 人口3,000人足らずのスヴァールバル

諸島は、北緯74度から81度に位置する群

島で、人が住む環境としては世界地図上で

も類を見ない極寒の場所だ。スヴァールバ

ルには、遺伝子バンクの種子が失われた場

合や世界各地または地球規模の危機が発

生した場合に備えて、幅広い種類の植物

種子を保存する「スヴァールバル世界種子

貯蔵庫」がある。またこの地域には、北極圏

の手付かずの大自然を目当てに旅行者が

絶え間なく訪れる。氷河や岩山は、シロク

マ、トナカイなどの野生動物、キョクアジサ

シ、ツノメドリといった野鳥の生息地でもあ

る。テレノールが同地域における営業開

始100周年を飾る記念事業としてLTE

ネットワークを展開することを決定した背

景には、スヴァールバルを訪れる人々の

ニーズに応え、ヨーロッパ全土に押し寄

北極圏初のLTE展開テレノール・ノルウェー

世界最北端の町ロングイェールビーンは、ノルウェー本土と北極の中間に位置するス

ヴァールバル諸島にある。2011年3月、ノルウェーの通信事業者「テレノール」は、同地

域における営業開始100周年を世界最北端のLTEネットワーク展開で飾ることを決め、

ファーウェイに支援を要請した。本土から遠く離れ、北極圏の極めて厳しい環境下にも

かかわらず、5月末日開催の「100周年記念式典」におけるLTE VOD(Video On Demand)

のデモのため、ファーウェイは世界トップレベルのSingleRANソリューションによって、

スヴァールバルにおけるテレノールのLTE展開をわずか数週間で完了させた。

『Win Win』(ファーウェイ刊)編集部

テレノールは、1855年に創業したノルウェーの携帯電話などの無線通信サービスを提供する通信事業者。オスロ証券取引所の上場企業である。

Telenor Norway

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